本発明の実施例である複眼撮像装置は、互いに画角(焦点距離)が異なる複数の単焦点結像光学系を有することで、変倍用の光学素子を光軸方向に移動させるズーム機構を設ける必要をなくし、高いズーム比を確保しつつも装置の薄型化を図っている。そして、本実施例の複眼撮像装置は、離散的に画角が異なる複数の結像光学系を通した撮像により得られた(以下、単に結像光学系を通して得られたという)の画像を用いて、連続的に画角が変化する画像を生成することが可能である。ある画角の結像光学系を通して得られた画像の一部をトリミングし、このトリミングした範囲を所定のサイズに拡大することによって擬似的なズーミング効果を得られるデジタルズームは一般の撮像装置にも搭載されている。本実施例の複眼撮像装置は、複数の結像光学系が有する離散的な画角間をデジタルズーム処理によって補間することにより連続ズーミングを可能とする。本実施例では、このデジタルズーム処理を、中間画角画像生成処理ともいう。
また、本実施例の複眼撮像装置は、デジタルズームにより得られる画像の一部に、望遠レンズに相当する結像光学系を通して得られる望遠画像を合成する。これにより、該望遠画像の部分は解像度が高く、かつ他の部分の解像度は低いが広い画角を有する合成画像を生成することができる。本実施例では、この画像合成を、異画角画像合成処理という。
これら中間画角画像生成処理や異画角画像合成処理では、得たい画角の画像の合成に用いる画像をその画角に近い画角を有する結像光学系を通して取得する。このため、一つの画角の結像光学系を通して得られた画像から単純にデジタルズームのみによって画角を変化させる場合に比べて高いズーム比を得つつも高画質の画像を生成することができる。
ただし、実施例の複眼撮像装置に設けられている複数の結像光学系は、それぞれの光軸に直交する方向に互いに離間して配置され、これら結像光学系のそれぞれを通した被写体の撮像を行うための撮像領域(光電変換領域)が結像光学系ごとに設けられている。このため、画角が異なる結像光学系を通して得られる画像間には視差がある。そして、この視差によって、画角の変更に伴い画像内での被写体の位置が大きく移動してしまう。その原因と原理について図13および図14を用いて説明する。
図13には、撮像装置C1,C2,C3がそれぞれある距離(基線長)だけ離間して配置され、各撮像装置から被写体距離Laだけ離れた被写体Aと、被写体距離Lbだけ離れた被写体Bとを撮像している様子を示している。図14には、撮像装置C1,C2,C3での撮像によりそれぞれ得られる画像を示している。これらの図から分かるように、基線長と被写体距離とに応じた幾何学的な関係により、画像内での被写体Aおよび被写体Bの位置がそれぞれ異なる量ずつずれる。つまり、視点に応じて画像上の被写体の位置が移動する。
このため、本実施例の複眼撮像装置は、画角と視点が異なる結像光学系を用いて画像内での被写体位置のずれを低減した画角の変更を行えるように、以下の構成を有する。すなわち、本実施例では、複数の結像光学系として、それぞれ第1の画角を有する複数の第1の結像光学系と、第1の画角よりも広い第2の画角を有する少なくとも1つの第2の結像光学系とを設ける。そして、光軸方向視において、複数の第1の結像光学系のそれぞれの光軸の位置を結ぶ線によって囲まれた第1の領域内に第2の結像光学系の光軸を配置している。このような構成によれば、第1の領域内に光軸が配置された第2の結像光学系を通して得られた画像を基準として、複数の第1の結像光学系を通して得られた画像のそれぞれの視点位置を精度良く変更することができる。そのため、画角の変更に伴う被写体位置ずれを容易に低減することができる。
また、本実施例においては、複数の結像光学系の互いに異なる画角(第1および第2の画角だけでなく、これらの間の第3の画角や第4の画角も含む)のうち、いずれかの画角Wと該画角Wの次に狭い画角Wnとが、以下の式(1)の条件を満足することが望ましい。
1.1≦W/Wn≦3 ...(1)
W/Wnの値が式(1)の下限値を下回ると、複眼撮像装置の高ズーム比を達成するために非常に多くの結像光学系が必要となるため、装置が大型化してしまうので好ましくない。また、W/Wnの値が式(1)の上限値を上回ると、後述する画素ずらし合成画像を生成しても高解像度を保つことが困難となり、ズーム後の画質が劣化するので好ましくない。
図1には、本発明の実施例1である複眼撮像装置の結像光学部100を光軸方向から見て(つまりは光軸方向視にて)示している。結像光学部100は、複数の結像光学系110a,110b,110c,110d,120a,120b,120c,120dを有する。これら複数の結像光学系110a〜110d,120a〜120dは、それぞれの光軸に直交する2次元方向に互いに離間して配置されている。また、これら結像光学系110a〜110d,120a〜120dの光軸は互いに平行に延びている。
結像光学系110a〜110dは、第1の画角(焦点距離)θを有する第1の結像光学系であり、以下、これら第1の結像光学系110a〜110dをまとめて第1の結像光学系群ともいう。第1の画角θは、本実施例の複眼撮像装置において最も狭い画角である望遠端画角に相当する。また、結像光学系120a〜120dは、第1の画角θよりも広い第2の画角(本実施例では第1の画角θの2倍である2θ)を有する第2の結像光学系であり、以下、これら第2の結像光学系120a〜120dをまとめて第2の結像光学系群ともいう。第2の画角2θは、本実施例の複眼撮像装置において最も広い画角である広角端画角に相当する。本実施例では、垂直方向に並んだ2つの第1の結像光学系と垂直方向に並んだ2つの第2の結像光学系とが、水平方向に(図1中の左から右に)交互に配置されている。
図2には、本実施例の複眼撮像装置1の全体構成を示している。複眼撮像装置1は、上述した結像光学部100と、撮像素子部(撮像手段)10と、A/D変換器11と、画像処理部12と、情報入力部16と、撮像制御部17と、画像記録媒体18と、システムコントローラ19と、表示部(表示手段)20とを有する。さらに、複眼撮像装置1は、距離情報算出部(距離算出手段)21も有する。
複眼撮像装置1は、結像光学部100が一体に設けられた結像光学系一体型の撮像装置であってもよいし、結像光学部100が撮像装置本体に対して着脱(交換)が可能な結像光学系交換型の撮像装置であってもよい。本実施例では、結像光学系一体型である場合について説明する。
撮像素子部10は、上述した8つの結像光学系110a〜110d,120a〜120dのそれぞれに対応する(すなわち、結像光学系ごとに設けられた)撮像領域を構成する8つの撮像素子10a〜10hを有する。各撮像素子は、対応する結像光学系により形成された被写体像(光学像)を光電変換してアナログ撮像信号を出力する。アナログ撮像信号は、A/D変換器11によってデジタル撮像信号に変換され、該デジタル撮像信号は画像処理部12に入力される。画像処理部12は、デジタル撮像信号に対して画素補間処理や色変換処理等の各種画像処理を行って画像を生成する。これにより、8つの結像光学系110a〜110d,120a〜120dのそれぞれを通した撮像により(それぞれを通して)8つの画像を生成することができる。画像処理部12は、生成した画像に対するデジタルズーム処理等も行う。画像処理部12にて処理された画像は、システムコントローラ19に送られる。
画像処理部12には、画像合成部(画像合成手段)13と、中間画角画像生成部(画像生成手段)14と、プレビュー画像生成部15とが設けられている。
画像合成部13は、第1の結像光学系110a〜110dのそれぞれを通して得られた4つの画像を互いの画素をずらして合成し、図3に示す第1の合成画像(画素ずらし合成画像)110を生成する。また、画像合成部13は、第2の結像光学系120a〜120dのそれぞれを通して得られた4つの画像を互いの画素をずらして合成し、図3に示す第1の合成画像110よりも広い撮像画角の第2の合成画像(画素ずらし合成画像)120を生成する。
ここで、図1には、第1の結像光学系110a〜110dの光軸の位置を垂直方向と水平方向に延びる実線(直線)で結んでおり、この実線で囲まれた領域を第1の領域とする。また、第2の結像光学系120a〜120dの光軸の位置を垂直方向と水平方向に延びる破線(直線)で結んでおり、この破線で囲まれた領域を第2の領域とする。なお、図1では、実線と破線が見やすいように、破線を第2の結像光学系120a〜120dの光軸の位置から若干ずらして示している。
この図から分かるように、本実施例では、第1の領域内に複数の第2の結像光学系120a〜120dのうち1つの第2の結像光学系120cの光軸が配置されている。以下、この第2の結像光学系120cからの視点を基準視点RPとし、第2の結像光学系120cを基準光学系ともいう。このような配置関係を持つことにより、第1の結像光学系110a〜110dを通して得られた4つの画像を合成して第1の合成画像を生成する際に、基準視点RPとなる基準光学系120cを通して得られた画像を合成の基準(基準画像)として使用することができる。
画像合成部13は、この基準画像を用いた後述するブロックマッチング法等の対応点探索手法を用いて、同一画角を有する結像光学系を通して得られた画像同士または互いに異なる画角を有する結像光学系を通して得られた画像同士を合成する。これにより、全ての撮像画角に対応する合成画像を仮想的に基準視点RPからの撮像により得られた画像として生成することができる。この結果、第2の結像光学系群を通した第2の合成画像120の撮像状態から第1の結像光学系群を通した第1の合成画像110への撮像状態へと撮像画角の変更(ズーミング)を行った際の合成画像110,120間での被写体位置ずれを低減することができる。
中間画角画像生成部14は、第1および第2の結像光学系群が離散的に有する異なる画角の間の画角(中間画角)を補間するための中間画角画像を生成する。中間画角画像の生成方法としては、複数画像を用いた高解像度化処理を行う超解像処理を用いることができる。超解像処理には、ML(Maximum-Likelihood)法、MAP(Maximum A Posterior)法、POCS(Projection Onto Convex Set)法、IBP(Iterative Back Projection)法、LR(Lucy-Richardson)法等を用いることができる。さらに本実施例では、デジタルズームによって得られる画像の一部領域に望遠レンズに相当する第1の結像光学系群を通して得られる望遠画像を合成する(嵌め込む)。これにより、該一部領域の解像度が高く、かつその他の領域の解像度は低いが中間画角の画像を得ることができる異画角画像合成を行う。
プレビュー画像生成部15は、基準光学系120cを通して得られた基準画像からプレビュー画像を生成する。ユーザから画角の変更が指示された場合、基準視点RPとなる基準光学系120cを通して得られた画像をトリミングして表示部20に拡大表示することで、常に同一視点からの画像をプレビュー画像として表示することができる。
情報入力部16は、ユーザが所望の撮像条件(絞り値や露出時間等)を選択して入力する情報を検知してシステムコントローラ19にそのデータを供給する。撮像制御部17は、システムコントローラからの情報に基づいて、各結像光学系に含まれるフォーカスレンズ(図示せず)を光軸方向に移動させ、また各結像光学系の絞り値を制御し、さらに撮像素子部10での露出時間を制御することで必要な画像を取得する。
画像記録媒体18は、複数の静止画や動画を格納したり、画像ファイルを構成する場合にはファイルヘッダを格納したりする。
表示部20は、前述したようにプレビュー画像を表示したり、撮像により得られた画像や、メニュー画面や、現在選択されている画角(焦点距離)の情報等を表示したりする。表示部20は、液晶パネル等の表示素子を含む。
距離情報算出部21は、基準画像選択部22と、対応点抽出部23と、視差量算出部24とを含む。
基準画像選択部22は、複数の結像光学系を通して得られた互いに視差を有する複数の画像(視差画像)の中から被写体距離算出用の基準画像を選択する。
対応点抽出部23は、被写体距離算出用の基準画像と他の視差画像(参照画像)との間において互いに対応する対応画素(対応点)を抽出する。
視差量算出部24は、対応点抽出部23で抽出された全ての対応画素の視差量をそれぞれ算出する。距離情報算出部21は、その算出された視差量から画像内の被写体までの距離(被写体距離情報)を算出する。
次に、主としてシステムコントローラ19および画像合成部13がコンピュータプログラムとしての第1の画像処理プログラムに従って実行する撮像画角切り替えのための画像合成処理を、図4のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS100では、システムコントローラ19は、情報入力部16によりユーザからの撮像条件および撮像の準備を指示する信号(撮像準備信号)が入力されると、撮像制御部17に対して撮像条件の情報および撮像準備信号を転送する。撮像制御部17は、入力された撮像条件に基づいて、第1および第2の結像光学系群の絞り値や撮像素子部10での露光時間(シャッタスピード)等を設定する。なお、このステップでは、ユーザが第1の結像光学系群の画角か第2の結像光学系群の画角のいずれかの画角を入力するのとする。
次に、ステップS101では、システムコントローラ19は、情報入力部16によりユーザからの撮像の開始を指示する信号(撮像開始信号)が入力されると、撮像制御部17に、撮像素子部10(撮像素子10a〜10h)の露光を開始させる。撮像素子10a〜10hからそれぞれ出力されるアナログ撮像信号は、A/D変換器11によりデジタル撮像信号に変換された後、画像処理部12に送られる。画像処理部12は、該デジタル撮像信号から撮像素子10a〜10h上にそれぞれ形成された被写体像に対応する画像を生成する。この際、画像処理部12において、それぞれの画像の輝度レベルやホワイトバランスを互いに一致させる処理を行うことが好ましい。この処理により、後段で行う画像合成処理における輝度むらや色むらといった弊害を低減することができる。
次に、ステップS102では、システムコントローラ19は、ユーザが入力した画角が基準光学系120cを含む第2の結像光学系群の画角(基準画角)と同一か否かを判定する。基準画角としては、複眼撮像装置1が有する複数の結像光学系群の画角のうち最も広い画角であることが好ましい。図3から分かるように、狭い画角の画像(110)には広い画角の画像(120)の周辺領域の情報が存在しない。このため、狭い画角の結像光学系群によって得られる画像を基準として広い画角の結像光学系群を通して得られる複数の画像の位置合わせを行うことは困難だからである。ユーザ入力画角が基準画角と同じである場合はS103に移行し、そうでない場合はS104に移行する。
ステップS103では、画像合成部13は、基準光学系120cを通して得られる基準画像に対して他の第2の結像光学系120a,120b,120dを通して得られた画像を合成する。
ここで、基準光学系120cと同一画角を有する第2の結像光学系120a,120b,120dを通して得られる画像の合成方法について説明する。図5(a),(b)にはそれぞれ、図13にも示した被写体A,Bを、複眼撮像装置1を用いて撮像した場合に第2の結像光学系120c,120dを通して得られる画像を示している。第2の結像光学系120c,120dから得られる画像上では、第2の結像光学系120c,120d間の光軸間の距離である基線長と被写体A,Bまでの距離である被写体距離とに応じた幾何学的な関係により被写体A,Bの位置がそれぞれ異なる量ずれる。また、両視差画像の視点が異なることに起因して、同一の被写体においても画像上に写る部分とそうでない部分とが生じる。例えば、第2の結像光学系120cを通して得られる画像(図5(a))では、被写体Aの面A3と被写体Bの面B3が写っているが、第2の結像光学系120dを通して得られる画像(図5(b))にはこれらの面が写っていない。逆に、第2の結像光学系120dを通して得られる画像(図5(b))には、第2の結像光学系120cを通して得られる画像(図5(a))には写っていない被写体Bの面B4が写っている。このように、視点の違いによって一方の画像には写っている被写体領域が他方の画像には写っていないことを、オクルージョンと称する。
本実施例における画像合成処理では、基準光学系120cを通して得られる画像(図5(a))を基準画像とする。そして、基準光学系120cではない第2の結像光学系を通して得られる画像のうち基準画像に写っている被写体領域に対応する被写体領域(対応点)を抽出して、これを基準画像上の被写体領域に合成する。
対応点の抽出手法について、図6を用いて説明する。図6の左側には図5(a)に示した基準画像501を、右側には該基準画像に合成される図5(b)に示した画像としての参照画像502を示している。ここでは、画像上の水平方向および垂直方向での位置を示す画像座標(X,Y)を用いる。画像座標(X,Y)は、図6に示す各画像の左上を原点として定義する。また、基準画像501における画像座標(X,Y)の輝度をF1(X,Y)とし、参照画像502における画像座標(X,Y)の輝度をF2(X,Y)とする。
基準画像501における任意の座標(X,Y)の画素(ハッチングして示す)に対応する参照画像502中の画素(ハッチングして示す)は、参照画像502のうち基準画像501中の輝度F1(X,Y)と最も類似した輝度を有する画素を探すことで求められる。ただし、任意の画素の輝度と最も類似する輝度を有する画素を単純に探すことは難しいため、画像座標(X,Y)の近傍の画素も用いたブロックマッチング法にて輝度が類似した画素を探索する。
例えば、ブロックサイズが3である場合のブロックマッチング処理について説明する。基準画像501中の任意の座標(X,Y)の画素と、その前後(X−1,Y),(X+1,Y)の2つの画素の計3つの画素の輝度値はそれぞれ、
F1(X,Y),F1(X−1,Y),F1(X+1,Y)
となる。
これに対し、座標(X,Y),(X−1,Y),(X+1,Y)からX方向にkだけずれた参照画像502中の画素の輝度値はそれぞれ、
F2(X+k,Y),F2(X+k−1,Y),F2(X+k+1,Y)
となる。
このとき、基準画像501中の座標(X,Y)の画素との類似度Eを以下の式(2)で定義する。
この式(2)において逐次kの値を変えて類似度Eの値を計算し、最も小さい類似度Eを与える(X+k、Y)が、参照画像502のうち基準画像501中の座標(X,Y)に対応する画素(対応点)である。ここでは、水平方向に視差を有する画像間での対応点抽出方法について説明したが、同様にして垂直方向や斜め方向に視差を有する場合の対応点を抽出することもできる。
このようにして得られた対応点としての被写体領域を画素単位で基準画像に合成することで、基準画像内のノイズレベルを低減させることができ、出力される合成画像の画質を向上させることができる。
図5(a)に示した被写体Aの面A3と被写体Bの面B3は、図5(b)においてはオクルージョン領域として対応する被写体領域が存在しないため、第2の結像光学系120dを通して得られる画像からは合成されない。また、図5(b)にのみ写っている被写体Bの面B4も基準画像上には写っていないため、合成には使用されない。このように、オクルージョン領域は合成することができないが、その他の大部分については、基準視点RPとは異なる視点からの撮像により得られた画像を基準画像に合成することができるため、合成画像全体としてのノイズレベルを低減することができる。
なお、そのままではブロックマッチング法では対応できないほど視差が大きく基準画像と参照画像間で被写体領域の形状が大きく異なる場合には、参照画像に対してアフィン変換等の幾何変換を行った後に、ブロックマッチング法を用いて合成処理を行ってもよい。以上説明した画像合成方法と同様にして、他の第2の結像光学系120a,120bを通して得られた画像も基準画像に合成することができる。
一方、ステップS104およびステップS105において、システムコントローラ19は、ユーザ入力画角が基準画角と異なる場合の画像合成処理である異画角画像合成処理を行う。
ここで、異画角画像合成処理について、図7を用いて説明する。図7(a),(b)にはそれぞれ、図13にも示した被写体A,Bを、複眼撮像装置1を用いて撮像した場合に第1の結像光学系110c,110dを通して得られる画像を示している。また、図7(c)には、図13と同様の被写体A,Bを複眼撮像装置1を用いて撮像した場合の基準光学系120cを通して得られる基準画像を示している。
第1の結像光学系110c,110dを通して得られる画像は、基準光学系120cを通して得られる基準画像よりも画角が狭い。このため、画像上での被写体A,Bのサイズが異なり、このままではこれらの画像を合成することができない。このため、まずステップS104において、画像合成部13は、基準光学系120cを通して得られる基準画像をユーザ入力画角(ここでは、第1の結像光学系群の画角)に合わせるために、基準画像の一部のトリミングと拡大処理を行う。図7(d)には、図7(c)に示した基準画像の一部(中心領域)をトリミングし、そのトリミングした部分が第1の結像光学画系110c,110dの画角に対応する画角の画像となるように拡大処理した画像を示している。トリミングおよび拡大処理によって画像の解像度は劣化するが、第1の結像光学系110c,110dを通して得られる画像上での被写体と同等のサイズの被写体が写った新たな基準画像(以下、拡大基準画像という)を得ることができる。
そして、ステップS105では、画像合成部13は、ステップS104で得られた拡大基準画像を用いて、第1の結像光学系110a〜110dを通して得られた画像を合成する。ここでの画像合成方法は、ステップS103にて説明した画像合成方法と同様に、図7(d)に示す拡大基準画像に対して、第1の結像光学系110a〜110dを通して得られた画像中の被写体領域を画素単位で合成することも可能である。また、上述したように拡大処理によって図7(d)に示す基準画像の解像度が劣化している。このため、拡大基準画像を用いて第1の結像光学系110a〜110dを通して得られた画像における相互に対応する被写体領域を決定し、これらの位置を合わせるようにして、拡大基準画像以外の画像同士を合成する(拡大基準画像は合成しない)ようにしてもよい。
ここで、本実施例では、基準光学系120cが図1に示した第1の結像光学系群の光軸が含まれる第1の領域内に配置されている。しかも、これらの結像光学系は、それぞれの光軸が平行になるように2次元的に配置されている。これにより、図7に示すように、基準視点RPに配置された基準光学系120cを通して得られる画像に写っている被写体領域のすべてが、第1の結像光学系群を通して得られる複数の画像のうちいずれかに写る。すなわち、基準画像中の被写体領域についてはオクルージョンが生じない。
例えば、図7(d)に示す拡大基準画像に写っている面A1〜A3および面B1〜B3は、図7(a)示す画像においては面A1,A3,B1,B3が写っており、図7(b)に示す画像には面A2,B2が写っている。このため、拡大基準画像に写っている全ての被写体領域は、図7(a),(b)の画像のいずれかから得られる。また、拡大基準画像は、トリミングおよび拡大処理後の画像ではあるが、基準視点RPからの被写体位置情報が明確に判定できるため、ブロックマッチング法による位置合わせ精度も向上させることができる。さらに、距離情報を用いた視点補間処理等を行う必要がないため、演算処理の負荷を大幅に低減することができる。また、上記のように異なる画角の画像の合成においても、常に基準視点RPとしての基準光学系120cを通して得られる画像を基準として合成が行われるため、撮像画角を切り替えた際の被写体位置ずれを少なくすることができる。
ステップS103およびステップS105からステップS106に移行すると、システムコントローラ19は、合成された画像を記録媒体18に保存して、画像合成処理を終了する。
次に、主としてシステムコントローラ19、画像合成部13および中間画角画像生成部14によって行われる連続ズーミングを実現するための中間画角画像生成処理を、図8のフローチャートを用いて説明する。この中間画角画像生成処理は、コンピュータプログラムとしての第2の画像処理プログラムに従って実行される。
まず、ステップS200では、システムコントローラ19は、情報入力部16からユーザにより指定された撮像条件や画角が入力されると、撮像制御部17に対してこれら撮像条件や画角の情報を転送する。ここでは、ユーザによって第1の結像光学系群の画角と第2の結像光学系群の画角との間の中間画角が入力されたものとする。
次に、ステップS201では、撮像制御部17は、ユーザにより入力された画角に応じて撮像を行う結像光学系を選択する。ここでは、中間画角が入力されたので、第1の結像光学系群と第2の結像光学系群の全てを撮像に用いる結像光学系として選択する。
次に、ステップS202では、撮像制御部17は、撮像素子部10のうち選択した結像光学系に対応する撮像素子の露光を開始する。そして、画像処理部12は、該撮像素子からA/D変換器11を介して入力されたデジタル撮像信号から画像を生成する。これにより、第1の結像光学系群を通して得られる同一画角の画像群と、第2の結像光学系群を通して得られる同一画角の画像群とが生成される。
この際、画像処理部12において、それぞれの画像の輝度レベルやホワイトバランスを互いに一致させる処理を行うことが好ましい。この処理により、後段で行う画像合成処理における輝度むらや色むらといった弊害を低減することができる。
次に、ステップS203では、画像合成部13は、第1の結像光学系群を通して得られた画像群に対して画像合成処理を行って第1の合成画像を生成し、また第2の結像光学系群を通して得られた画像群に対しても画像合成処理を行って第2の合成画像を生成する。画像合成処理は、図4のステップS103およびステップS104,S105で行った処理である。この時点で、互いに画角が異なる第1および第2の合成画像はいずれも、基準視点RPから撮像された画像に相当する同一視点画像となる。
次に、ステップS204では、中間画角画像生成部14は、第2の結像光学系群を通して得られた広角合成画像である第2の合成画像からユーザ入力画角に応じた領域をトリミングし、該領域を拡大処理する。さらに、中間画角画像生成部14は、第1の結像光学系群を通して得られた望遠合成画像である第1の合成画像を、ユーザ入力画角に応じて縮小処理する。
次に、ステップS205では、中間画角画像生成部14は、上述した異画角画像合成処理によって、第2の合成画像からトリミングおよび拡大処理により得られた拡大画像と第1の合成画像の縮小処理により得られた縮小画像とを合成して中間画角画像を生成する。そして、本処理を終了する。
このような中間画角画像生成処理によれば、基準視点RPからの撮像により得られた画像に相当する中間画角画像が生成される。このため、連続ズームによって中間画角が選択された場合でも被写体位置ずれが少ない中間画角画像を生成することができる。
さらに、プレビュー画像生成部15は、基準視点RPとなる基準光学系120cを通して得られた基準画像からプレビュー画像を生成して表示部20に表示する。このため、ユーザが画角変更(ズーミング)を指示した場合も、基準画像をトリミングして拡大表示することで、常に同一視点からの画像としてのプレビュー画像を生成および表示することができる。これにより、プレビュー画像から画角変更時の最終画角画像までが全て同一の基準視点RPからの撮像により得られる画像として生成されるため、ユーザは被写体位置ずれによる違和感の少ない画像を見ることができる。
次に、主としてシステムコントローラ19および距離情報算出部21によって行われる被写体距離情報記録処理を、図9のフローチャートを用いて説明する。この被写体距離情報記録処理は、コンピュータプログラムとしての第3の画像処理プログラムに従って実行される。ここでは、まず、最も広い被写体空間を撮像する第2の結像光学系群(第2の結像光学系120c,120d)によって得られる視差画像を用いた被写体距離情報記録処理について説明する。
まず、ステップS300では、システムコントローラ19は、情報入力部16からユーザにより入力された撮像準備信号を受ける。これに応じて、撮像素子部10のうち第2の結像光学系120c,120dに対応する撮像素子からの撮像信号をA/D変換器11を介して画像処理部12に転送する。画像処理部12は、該撮像信号から、第2の結像光学系120c,120dを通して得られる2つの視差画像を生成する。
次に、ステップS301では、基準画像選択部22は、生成された2つの視差画像のうち一方を視差量算出(つまりは被写体距離算出)のための基準画像として選択する。本実施例では、第2の結像光学系120cによって得られる画像を基準画像として選択する。
次に、ステップS302では、対応点抽出部23は、第2の結像光学系120dを通して得られる画像を参照画像として、上記基準画像と参照画像との対応画素(対応点)を検出する。対応画素とは、例えば、被写体Aを撮像して得られた2つの視差画像において、該被写体Aの同一点が写っている画素同士である。対応画素の検出方法は、先の画像合成処理で説明した対応点抽出方法を用いることができる。
次に、ステップS303では、視差量算出部24は、抽出された対応点間での視差量を算出する。具体的には、視差量を、基準画像と参照画像の対応画素間での画素位置の差分として算出する。
次に、ステップS304では、距離情報算出部21は、ステップS303で算出された視差量と、既知の情報である第2の結像光学系120c,120dの焦点距離および基線長とから、被写体距離を算出する。なお、ここでは、第2の結像光学系120c,120dを用いた場合の被写体距離の算出について説明しているが、同様の原理によって、他の結像光学系の対(例えば、第2の結像光学系120a,120bの対)を用いても被写体距離を算出することが可能である。また、画角が異なる視差画像に対して上記手法を用いる場合は、広い画角の視差画像から、狭い画角の視差画像に対応する部分を切り出して、その切り出した部分から対応画素を抽出することが望ましい。
以上説明したように、本実施例によれば、複眼撮像装置を薄型化し、高ズーム比を得つつも、ズーミングに伴う画像上での被写体位置ずれを低減することができる。
また、本実施例によれば、様々な撮像モードを実現することができる。例えば、ハイダイナミックレンジモードでは、複眼を構成するそれぞれの結像光学系およびこれに対応する撮像素子の露出条件を変えながら複数回の撮像を行う。そして、複数回の撮像によって得られた複数の画像を合成することによって、ダイナミックレンジの広い画像を取得することができる。また、ぼけ付加モードでは、算出した被写体距離の情報に基づいて背景にぼけを付加することにより、主たる被写体を強調する画像を得ることができる。また、背景除去モードでは、上記のように算出した被写体距離に基づいて主たる被写体以外の背景を除去した画像を得ることができる。さらに、立体撮像モードでは、水平方向に配列された複眼を構成するそれぞれの結像光学系および対応する撮像素子によって左右の視差画像を取得する。そして、狭い画角の画像とそれに対応する他方の広い画角の画像の一部とを用いて立体画像として画像を保存することができる。