以下、図面を参照しつつ、臨床検査システムの実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
[第1の実施の形態]
(臨床検査システムの全体構成)
図1は、臨床検査システムの構成を概略的に示す図である。図1に示されるように、臨床検査システム500は、4つの分析システム(第1分析システム10、第2分析システム20、第3分析システム30、および、第4分析システム40)を含む。また、臨床検査システム500は、第1〜第4分析システム10〜40を統括する総合システム50を含む。第1分析システム10は、サーバ90を介して、総合システム50と通信可能である。第2〜第4分析システム20〜40も、それぞれ、総合システム50と通信可能である。
臨床検査システム500では、第1分析システム10は、試料の画像を処理するための画像処理装置を含む。第1分析システム10は、当該画像処理装置において撮影された画像を、サーバ90を介して、総合システム50へ送信する。総合システム50は、第1分析システム10から受信した画像を蓄積する。第1〜第4分析システム10〜40は、総合システム50にアクセスすることにより、総合システム50に蓄積された画像を利用して、各システムが目的とする検査結果を導出することができる。
本明細書において、「試料」という文言は、有形成分を含む可能性があり、臨床検査システム500のユーザ(たとえば、医師)が検査を希望する、あらゆる試料を意味することが意図される。たとえば、「試料」は、生物から取得される生体試料や非生物学的な試料を含む。生体試料は、特定の試料に限定されるものではなく、たとえば、全血液、脊髄液、前立腺液、尿、腹水、関節液、涙液、唾液、血清、血漿などである。特に、尿は、たとえば、原尿、濃縮尿、尿沈渣等、尿そのものだけでなく、当該尿が加工されたものをも含むことが意図される。また、非生物学的な試料としては、非生物学的性質の他の流体試料、たとえば水質検査用・環境調査用等の試料等を挙げることができる。
本明細書において、「有形成分」とは、試料中に含まれる有形の固体成分であればよく、その他の具体的な構成については限定されない。生体試料中の有形成分の具体例としては、たとえば、生体試料中に分散し、または、生体試料を懸濁するものであればよい。たとえば、生体試料として尿を用いた場合、「有形成分」の具体例としては、正常赤血球、変形赤血球などの赤血球群、Pale細胞、Dark細胞、Glitter細胞などの白血球群、扁平上皮、移行上皮、尿細管上皮、円柱上皮などの上皮群、硝子円柱、顆粒円柱、ろう様円柱、上皮円柱、赤血球円柱、白血球円柱、脂肪円柱、空胞変性円柱、ヘモグロビン円柱、ヘモジデリン円柱、ミオグロビン円柱、ビリルビン円柱、アミロイド円柱、Bence Jones円柱、血小板円柱、細菌円柱、塩類円柱、結晶円柱、幅広円柱などの円柱群、球菌、桿菌、真菌、酵母用真菌などの菌類、トリコモナス原虫、マラリア原虫、ダニなどの寄生虫群、シュウ酸カルシウム結晶、尿酸結晶、尿酸塩、尿酸アンモニウム結晶、リン酸カルシウム結晶、リン酸アンモニウムマグネシウム結晶、ビリルビン結晶、チロシン結晶、ロイシン結晶、シスチン結晶、コレステロール結晶、2,8−ジヒドロキシアデニン(DHA)結晶、炭酸カルシウム結晶、外因性結晶などの結晶群、無晶性尿酸塩、無晶性リン酸塩などの無晶性塩類、卵円形脂肪体、脂肪球、細胞質内封入体、核内封入体、精子、マクロファージなどを挙げることができる。
第1の実施の形態では、第1分析システム10の画像処理装置は、試料について複数の画像を撮影する。当該複数の画像は、好ましくは互いに視野が重ならないように撮影される。当該複数の画像の撮影によって生成される画像のそれぞれを、本明細書では「部分画像」と呼ぶ。視野が「重ならない」とは、互いに共通部分を全く持たない場合のみならず、互いの視野の少なくとも一部が重ならない場合をも含み得る。
図2は、部分画像の一例を説明するための図である。図2において、画像処理装置における試料の全体的な視野が全体視野200として示されている。図2では、全体視野200が部分視野201〜209に分割されて示されている。部分視野201〜209のそれぞれが撮影されることによって生成されるそれぞれの部分視野に対応する複数の画像が、「複数の部分画像」の一例である。図2では、全体視野および部分視野が、正方形で示されているが、これらの形状は正方形に限定されない。
図2に示された例では、部分視野201の左上の領域には、丸型の図形で示された有形成分が示されている。部分視野204の右下の領域には、星型の図形で示された有形成分が示されている。部分視野206の右上の領域には、三角形の図形で示された有形成分が示されている。部分視野202,203,205,207,208,209は、有形成分を含まない。各図形は、たとえば赤血球または白血球などの有形成分に対応する。
第1分析システム10の画像処理装置は、全体視野200について部分視野201〜209のそれぞれに対応する部分画像を生成し、さらに、複数の部分画像を合成することによって「合成画像」を生成する。
図3は、部分画像および合成画像の関係の一例を説明するための図である。図3において、部分視野201〜209のそれぞれに対応する部分画像は、部分画像301〜309として示されている。部分画像301〜309が合成されることによって生成される合成画像は、合成画像310として示されている。合成画像310は、部分視野201(部分画像301)中の丸型の図形と、部分視野204(部分画像304)中の星型の図形と、部分視野206(部分画像306)中の三角形の図形とを含む。
以下に、部分画像および合成画像のそれぞれの生成の態様の一例を説明する。
(部分画像の生成)
部分画像の撮影方法は特に限定されない。たとえば、以下のような方法が例示される。
まず、透光板上に試料を適量を滴下し、その上にカバーグラスを重ねて置き、プレパラートを作製する。透光板の材質としては限定されず、ガラスやプラスチック製のものが好適に使用できる。プレパラートを作製する際に、有形成分を必要に応じて染色してもよい。
画像処理装置は、このプレパラートを、たとえば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、3CCDイメージセンサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどに代表されるカメラ装置で撮影し、デジタルデータの電気信号に変換し、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色で構成された格子状の画像(ビットマップ画像)として、半導体メモリや固定磁気ディスク等の記憶装置に保存する。これらのカメラ装置はオートフォーカス機能を有することが好ましい。
1枚の部分画像として撮影されるプレパラートの面積は特に限定されないが、撮影するカメラの解像度やレンズなどの倍率に依存する。たとえば、生物顕微鏡(オリンパス光学社製BX−50)に20倍の対物レンズを装着して、CCDカメラ(ソニー社製XC−003)で撮影する場合には被写体の撮影範囲が0.0432mm2となる(横0.24mm、縦0.18mm)。
1つの試料に対する部分画像の撮影の際には、プレート面と平行にカメラまたは被写体を移動する。移動は、各部分画像のプレパラートを撮影した撮影視野が重複しないように、別部分を上記同様に撮影し、保存する。撮影視野が重ならないよう被写体を移動する方法は、手動で行なわれてもよいし、機械的な動力が利用されても良い。機械的な動力の具体例としては、たとえば、ステッピングモータ、サーボモータやリニアモータなどを利用した機構が挙げられる。
画像処理装置は、上記のように撮影された複数の部分画像を記憶装置に保存する。1つの試料に対して撮影される部分画像の枚数は、2枚以上で任意に決められる。たとえば、試料中に含まれることが想定される有形成分の量が極めて少ない場合、遠心操作を行い濃縮させた状態で実施する用手検査と同程度の正確性および精密性を保証するために、当該枚数は、通常5〜500枚とされる。再現性や作業効率の観点から、当該枚数は、10〜200枚の範囲で選択されるのが好適である。
各部分画像について、撮影視野においてカメラから得られた画像の電気信号を記憶装置に保存する方法としては、特に制限なく、公知の技術を使用することができる。当該方法としては、たとえば、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色で構成される小さな光の点の格子状の並び(ビットマップ画像)として記録する方法が一般的である。より具体的には、CCDカメラより得られた画像の電気信号をコンピュータに取りつけられたキャプチャーボード回路によって量子化し、部分画像をビットマップ画像としてコンピュータ上の記憶装置に保存する方法が挙げられる。
(画像処理装置のハードウェア構成)
図4は、第1分析システム10の画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図4に示されるように、画像処理装置は、中央処理部11と、撮像部12と、記憶部13と、入力部14と、入出力インタフェース15と、表示部16とを含む。なお、図4に示された構成は、単なる一例である。第1の実施の形態の画像処理装置の構成が図4に示されたものに限定されないことを、念のため付言しておく。
中央処理部11は、画像処理装置の各部の動作を制御する制御手段として機能する。より具体的には、中央処理部11は、本明細書に記載された制御を実現するプログラムの命令を実行するCPU(Central Processing Unit)、上記プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、および、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)を含む。ここで言うプログラムは、第1分析システム10の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、第1分析システム10に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体の具体例としては、たとえば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、第1分析システム10を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークは、特定の種類のネットワークに限定されない。通信ネットワークとして、たとえば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体は、特定の種類の媒体に限定されない。伝送媒体として、たとえば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本開示の中央処理部11によって実行されるプログラムは、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
撮像部12は、ステージを備える。当該ステージ上には、プレパラートが載置される。プレパラートは、スライドガラスとカバーガラスとを含む。試料は、スライドガラスとカバーガラスの間に保持される。ステージは、プレパラートを載置するための試料搭載手段として機能する。かかるステージとしては、たとえば、従来公知の顕微鏡等に用いられる試料ステージを好適に用いることができ、その具体的な構成については特に限定されない。また、ステージは、視野移動を目的としてx,y軸方向へ移動可能であり、また焦点調節を目的としてz軸方向へ移動可能であるという3次元の移動が可能なように構成されているものであればよい。なお、ステージの3次元移動は、後述する駆動部によって駆動される構成であればよい。
撮像部12は、光源を備える。光源は、上記ステージの下方に配置されており、試料の下方から光を照射することにより、第1分析システム10の分析動作や撮像部12の撮影に対して十分な光量を提供できるものであればよく、従来公知の光源によって実現される。光源の具体的な構成は特に限定されるものではなく、たとえば、ハロゲンランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、発光ダイオード等である。これらの中でも、光源寿命の長い発光ダイオードがより好ましい。
スライドガラスとカバーガラスとしては、従来公知のプレパラートに使用可能なものを用いることができ、その具体的な構成は特に限定されるものではない。たとえば、東洋紡績製のU−SCANNER(登録商標)専用スライドを好適に用いることができる。
撮像部12は、対物レンズを備える。当該対物レンズは、ステージ上の試料を観察するための対物レンズであればよく、その具体的な構成は特に限定されず、従来公知のレンズを用いることができる。
撮像部12は、合焦検出部を備える。合焦検出部は、対物レンズの合焦状態、特に、試料に対する合焦状態を検出する。合焦状態を検出する手法については、特に限定されるものではなく、公知の合焦状態の検出手法を利用することができる。たとえば、合焦検出部は、自動合焦動作中における輝度レベルの分散値を評価値として決め、この評価値が最小値となるときを検出し、その最小値となったときの対物レンズの位置を合焦状態であると判断するように構成され得る。なお、合焦状態の検出手法については、後述の自動合焦部についての説明時でも詳説する。
撮像部12は、駆動部を備える。駆動部は、対物レンズと試料と相対位置を3次元方向に変動させる。換言すれば、当該駆動部は、ステージと対物レンズとの間の相対位置を3次元方向に変動させる。かかる駆動部としては、従来公知の駆動手段が採用され得、たとえば、サーボモータ、ステッピングモータまたはリニアモーターなどの、機械的に駆動するものが採用され得る。
また、第1の実施の形態では、駆動部は、ステージを移動させることにより、対物レンズと試料との間の相対位置を変動させたが、駆動部の構成はこれに限定されない。当該駆動部は、対物レンズを駆動させてもよいし、対物レンズとステージの両方を駆動させてもよい。ただし、構成の容易さ、駆動の安定性等の観点から、ステージを駆動させる構成が好ましい。
自動合焦部は、合焦検出部の検出結果に基づいて、駆動部を制御することにより、対物レンズを自動的に合焦させる。自動合焦部が行う自動合焦動作の方式としては、従来公知の自動合焦方式を採用することができる。自動合焦部の具体的な構成については、特定の構成に限定されず、たとえば、アクティブオートフォーカス方式、パッシブオートフォーカス方式の両方であり得るが、好ましくは、パッシブオートフォーカス方式である。
また、上記パッシブオートフォーカス方式を用いた場合における、具体的な合焦状態の検出方法としては、(i)撮影対象の光強度を電気信号に変換して、電気信号の変化を利用して合焦点を検出する方法、(ii)位相差検出を行い、位相差解析を利用して合焦点を検出する方法、(iii)光源とは別に補助発光装置を内蔵し撮影対象からの反射光を測定することで距離換算し、算出された距離に基づいて合焦点を検出する方法などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、撮影対象の光強度を電気信号に変換して、電気信号の変化を利用して合焦点を検出する方法である。さらにいえば、撮影対象となる画像撮影用の撮像素子の光強度をコントラストとしてとらえ、コントラストの高周波成分の検出で行う方式、いわゆるコントラスト方式であることが好ましい。すなわち、自動合焦部による自動合焦動作は、コントラスト方式自動合焦点調節機能により行われることが好ましい。
また、上記(ii)位相差解析を利用する方法としては、銀塩フィルム、光電子変換素子等の撮像素子を配置する撮像面と等価な面の近傍に、ラインセンサ等の撮影画像検出用センサを一対または複数対配置して対物レンズを透過した光のうち異なる部位の光束を異なるセンサに導き、対を成すセンサ上の撮影対象の位置のずれから対物レンズの焦点を検出する位相差検出方式が挙げられる。
さらに、上記(iii)撮影対象からの反射光よりカメラから撮影対象までの距離を算出し、算出された距離に基づいて合焦点を検出する方法としては、赤外線等の補助光を発光する装置を内蔵し、撮影対象から反射された赤外線の入射角度を距離に換算する三角測量に基づいて撮影対象との距離の絶対値を算出する赤外線方式が挙げられる。
つまり、上述した合焦検出部は、自動合焦部の自動合焦方式に合わせて、上述した合焦状態の検出方法のうち、適切な手法を選択し構成することができる。
また、第1の実施の形態では、自動合焦部は、駆動部を制御して、ステージを駆動することで、対物レンズと試料とのz軸方向の相対距離を変動させて自動合焦動作を行う構成である。このステージの移動方式としては、(i)連続的な移動方式と、(ii)一定距離ずつ移動する段階的な移動方式とが採用可能であり、どちらの方式が選択されるかについて、特に限定されるものではない。また、どちらの方式が選択されても、その具体的な移動方法については従来公知のものを用いることができ、特に限定されない。たとえば、(i)連続的な移動方式としては、ステージを極めて微小な所定周期毎に移動させ、各周期で、焦点状態を評価し、最も良好な焦点状態を示す位置を合焦状態と設定する方式を挙げることができる。一方、(ii)段階的な移動方式としては、予め定めた複数の位置にオフセット駆動を行い、その中での焦点状態を評価し、最も良好な焦点状態を示す移動位置を合焦点状態と設定する方式を挙げることができる。
なお、第1の実施の形態では図示されないが、第1分析システム10は、試料を採取し、プレパラートに分注する分注部と、プレパラートを供給するプレパラート供給部と、プレパラートをステージまで搬送する搬送部とを備えていてもよい。より好ましくは、第1分析システム10は、これらの部材に加え、試料を採取した容器を複数架設するためのラックを保持するラック保持部と、当該ラックを装置内で搬送するためのラック搬送部とを備えていてもよい。上記の各部を備えることにより、第1分析システム10によれば、試料をセットするだけで試料の採取から結果表示まで自動で実施することが可能となる。上記各部としては、従来公知の自動分析装置に用いられる部材を用いることができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。第1分析システム10は、たとえば、東洋紡製のU−SCANNER(登録商標)に用いられる各種部材を備えることができる。
中央処理部11は、たとえば、撮像部12の自動合焦部および/または駆動部を制御することにより、スライドガラスとカバーガラスとの間における自動合焦動作を実行する。自動合焦動作は、所定の分析開始位置から予め設定された分析終了位置までの範囲で行なわれる。「分析開始位置」と「分析終了位置」とは、スライドガラスとカバーガラスとの間の鉛直方向の高さ位置(z軸上の位置)が異なるが、水平位置(xy軸上の位置)は同一な位置である。また、分析開始位置・分析終了位置の具体的な位置については、ユーザが検査目的や検査対象等に応じて任意に設定可能であり、特に限定されるものではない。
中央処理部11は、試料中に有形成分が存在するか否かを判定する判定手段としても機能する。中央処理部11は、たとえば、上記自動合焦動作において、合焦検出部によって合焦状態が検出された場合、当該合焦位置に有形成分が存在すると判定する。
撮像部12は、試料の画像を取得するための撮像手段として機能する。たとえば、撮像部12は、中央処理部11によって有形成分が存在すると判定されたときの合焦位置において、試料の画像を取得することが好ましい。また、撮像部12は、中央処理部11によって当該撮像部12のその時点での撮影視野内には有形成分が存在しないと判定された場合、上記自動合焦動作が完了した分析終了位置において、試料の画像を取得することが好ましい。
撮像部12の撮像手段としては、公知のものを採用することができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。当該撮像手段としては、たとえば、光に反応する半導体素子を使って映像を電気信号に変換し、デジタルデータとして記憶媒体に記憶することができる撮像手段が採用されることが好ましい。かかる撮像手段としては、たとえば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、CCDデジタルカメラ、及びCMOSデジタルカメラ等を挙げることができる。
中央処理部11は、撮像部12によって取得された画像に基づき、試料中の有形成分を分類する分類手段として機能し得る。中央処理部11は、試料中に含まれる有形成分を撮像部12により撮影した画像を基に、自動で分類及び/又は計測する有形成分分類手段として機能するものと換言できる。中央処理部11による具体的な分類動作としては、従来公知の分類手法を利用することができ、特に限定されるものではない。
たとえば、中央処理部11は、有形成分の大きさ、形態、色などに基づいて分類する分類プログラムを実行することによって、上記分類動作を実現し得る。当該分類プログラムは、コンピュータソフトウェアとして提供され得る。当該ソフトウェアは、第1分析システム10の出荷時に予め第1分析システム10内にインストールされていても良いし、出荷後に、第1分析システム10の操作者によってダウンロードされてインストールされても良い。上記分類プログラムは、たとえば、撮影した有形成分において、(i)RGB値を明度と色度に分離する色抽出工程、(ii)穴埋め、線分の書き込み、画像の分離からなる2値画像処理工程、(iii)面積、円形度係数、円相当径、周囲長、絶対最大量、フェレ径X/Y比、最大弦長X/Y比、短軸長/長軸長比等の特徴量算出工程を実施し、予め設定しておいた有形成分の設定値と比較することで分類するものであることが好ましい。さらに上記分類プログラムは、最適な分類ができるように、学習機能を有していることが好ましい。かかる分類プログラムとしては、たとえば、上記特許文献1に開示のものを利用することができる。
記憶部13は、撮像部12によって撮影された画像、上記分類プログラム、および、第1分析システム10において生成された分析結果等の、各種データを格納するための記憶装置である。かかる記憶部13としては、従来公知のメモリ、記憶部材を用いることができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。また、ハードディスクのように内蔵型であってもよいし、外部記憶装置等の外付型であっても構わない。すなわち、記憶部13としては、たとえばハードディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、デジタルビデオディスク等を用いることができる。
入力部14は、第1分析システム10に対する情報の入力のインタフェースであり、たとえば、キーボード、マウス、および/または、ボタンによって実現される。また、入力部14は、外部から入力された音声を解析し、当該解析結果を入力情報として受け付ける機構によって実現される場合もあり得る。当該音声の解析手法としては、公知の音声解析技術が採用され得る。
入出力インタフェース15は、第1分析システム10が他の装置と通信するときのインタフェースであり、たとえばネットワークインタフェースカードによって実現される。
表示部16は、自動合焦動作等の機械動作、取得した画像の一覧表示や取得した画像を合成した画像の表示、画像及び計測結果の保存等の各手段・部材についての付帯制御、並びに、分析結果・分類結果等の第1分析システム10に関する各種の情報を表示する。表示部16は、公知のディスプレイによって実現される。なお、第1分析システム10では、メニュー選択によって、測定結果および画像データの他に、時刻、現在の装置の状況(各検体の測定状況、各検体又は選択した検体の測定終了予定時刻もしくは必要残時間、廃液タンクの廃液量、純水タンクの残量、各試薬の残量、または洗剤の残量)等を表示部16に表示する機能を備えていても良いし、選択指定した情報のみを離れた場所から読み取れるように表示部16において拡大表示する機能を備えていても良い。なお、表示部16は、必要に応じて、従来公知の印刷手段を備えて、必要な情報をハードコピー(紙等)として出力しても良い。
(第1分析システムにおける分析動作の具体例)
次に、第1分析システム10における分析動作の一具体例を説明する。なお、以下、説明の便宜上、第1の実施の形態では、尿中の有形成分を分析する場合を例に挙げて説明する。勿論、第1分析システム10の分析対象は、これに限定されるものではない。
最初に、試料のプレパラートを作成する手順から説明する。まず、不図示の容器(たとえば、試験管)を複数架設するラックから、試料の一例である尿を、所定の反応槽(不図示)に必要量分注する。このとき、均一な試料を分注するため、尿を攪拌操作後に採取し、分注してもよい。また、予めバーコードなど個体識別手段が貼付してある容器を用いる場合はバーコード読取装置にて分注時に読み取ることができる。
次に、尿中の有形成分を染色するための染色液(たとえば、東洋紡績製のU−SCANNER(登録商標)専用染色液)を上記反応槽に分注し、尿中有形成分の染色を実施する。反応槽中にて、よく混和後、反応槽から染色後の尿を一定量採取し、スライドガラスに分注し、カバーガラスを載置して、均一に展開させるために数分静置して、試料が保持されたプレパラートを作成する。
上述の手順で作成されたプレパラートをステージに載置する。上述したように、ステージは、プレパラートをxyz軸座標方向、すなわち3次元方向に自在に移動・停止できるように構成されている。プレパラートをステージに載置後、光源からの照射光をプレパラートに集光させる。ステージが駆動し、撮影視野が重複しないように50枚の部分画像が撮影される。
(部分画像の撮影の実施例)
部分画像の撮影の一実施例を説明する。
尿カップに採取された尿を、ピペットにより25マイクロリットル分取し、縦26mm横76mm厚み1.5mmのプレート上に25マイクロリットル滴下した。滴下した尿の上に縦22mm横22mm厚み0.17mmのカバーグラスを載せ、尿を均一に広げ、プレパラートを作製した。
できあがった観察用スライドを生物顕微鏡(オリンパス社製BX−50)の観察ステージに固定し、観察ステージを手動によりフォーカスが合うように位置を調整した。
顕微鏡に装着した対物レンズは、20倍の対物レンズ(オリンパス社製UPlan Fl20x)である。顕微鏡には、カメラアダプタを取り付け、CCDカメラ(ソニー社製XC−003)を取り付けた。
本実施例での機器構成で得られる画像サイズは、横240マイクロメートル、縦180マイクロメートルであった。
観察ステージを前後左右方向に0.5mmずつ移動させて、縦横10×10の撮影点に移動し、それぞれの撮影点において上下方向のレンズ移動を行い、スライド上の尿中有形成分に対し焦点を合わせ、CCDカメラ(ソニー社製XC−003)を用いて撮影を行った。
それぞれの撮影点においてCCDカメラで得られた画像の電気信号を、画像処理装置のコンピュータに取り付けられた画像取り込みキャプチャーボード回路にて量子化し、部分画像を赤(R)、緑(G)、青(B)の色の3原色のデータの格子状の集まりとして、当該コンピュータ上のRAM(Random Access Memory)に保存した。
(合成画像の生成)
第1の実施の形態の画像処理装置は、たとえば特許文献2に記載の態様で、合成画像を生成することができる。以下、合成画像の生成態様の一例について、概略的に説明する。
合成画像の生成の際には、第1分析システム10の操作者によって、部分画像の種類(具体的には、面積やアスペクト比など)が任意に設定される場合があり得る。合成画像の生成に利用される複数の部分画像は、互いに、同面積でありかつ同数の画素で構成されていることが好ましい。第1の実施の形態において、合成画像を作成する処理は典型的には次の工程によって実行される。
有形成分を含む試料を撮影した部分画像を撮影視野が重複しないように複数枚撮影し、合成しようとする撮影した部分画像それぞれについて、画像を構成する画素ごとに、赤(R)、緑(G)、青(B)の光の3原色のそれぞれの強度を算出する。
次に、赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれについて、複数の部分画像の同じ座標の画素ごとに平均値(M)を算出する。
次に、算出した赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの平均値(M)に、定数(A)を加算して閾値上限値(M+A)を算出する。このときの定数は、光源のちらつきやプレパラートの製造誤差から生じるばらつきを考慮し、下限は1以上の値が好ましく、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上である。上限は100以下の値が好ましく、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。光源のフリッカー現象による明滅の影響を回避することができるため、定数は30以下であることが特に好ましい。
同様に、算出した赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの平均値(M)に定数(A)を減算して閾値下限値(M−A)を算出する。このときの定数は、光源のちらつきやプレパラートの製造誤差から生じるばらつきを考慮し、下限は1以上の値が好ましく、より好ましくはより好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上である。上限は100以下の値が好ましく、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。光源のフリッカー現象による明滅の影響を回避することができるため、定数が30以下であることが特に好ましい。
次に、合成しようとする複数の部分画像それぞれについて、同じ座標の画素ごとにその部分画像の赤(R)、緑(G)、青(B)強度と上記で算出した閾値を比較する。
そして、部分画像の画素のすべての光学的特徴量の強度が閾値内ならば平均値(M)を採用し、少なくとも1つの光学的特徴量の強度が閾値を越えたならば、その部分画像の、閾値を越えた光学的特徴量の強度の値を採用する。
すなわち、赤(R)、緑(G)、青(B)の強度のすべてが、M−A<(部分画像の画素)<M+Aならば平均値(M)の色を採用する。たとえば、赤(R)のみが閾値を越えたならば、赤色の強度を持つ部分画像の画素を採用する。た、同じ座標で複数の部分画像が閾値を外れる場合は、最も平均値から外れている部分画像の画素を使用することが好ましい。
全画素について上記の工程を実施して1枚の合成画像を生成する。
(合成画像の生成の実施例)
合成画像の生成の実施例を説明する。
合成する撮影した部分画像それぞれについて、画像を構成する画素ごとに、赤(R)、緑(G)、青(B)の光の3原色のそれぞれの強度を算出する工程を実施した。
次に、赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれについて、複数の部分画像の同じ座標の画素ごとに平均値(M)を算出した。
算出した赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの平均値(M)に定数(A)を加算して閾値上限値(M+A)を算出した。このときの定数は、20であった。
算出した赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの平均値(M)に定数(A)を減算して閾値下限値(M−A)を算出した。このときの定数は、15であった。
複数の部分画像について、同じ座標の画素ごとにその部分画像の赤(R)、緑(G)、青(B)強度と算出した閾値を比較した。
部分画像の画素が閾値内ならば平均値(M)を採用し、閾値を越えるならばその部分画像の赤(R)、緑(G)、青(B)強度の値を採用した。すなわち、赤(R)、緑(G)、青(B)強度のすべてが、M−A<(部分画像の画素)<M+Aならば平均値(M)の色を、外れるならば、その外れた色強度を持つ部分画像の画素を採用する。同じ座標で複数の部分画像が閾値を外れる場合は、最も平均値から外れている部分画像の画素を使用した。
全画素について上記工程を実施して、1枚の合成画像を作成した。
(成分データベース)
第1分析システム10は、試料中に含まれ得る有形成分が登録されている成分データベースを利用する。図5は、成分データベースの構成の一例を模式的に示す図である。
図5に示された成分データベースでは、当該成分データベースに登録された成分のそれぞれは、成分IDに関連付けられている。図5において、登録された成分は、成分ID「0001」に関連付けられた「赤血球」と、成分ID「0002」に関連付けられた「白血球」と、成分ID「0003」に関連付けられた「上皮」と、成分ID「0004」に関連付けられた「円柱」とを含む。
第1の実施の形態では、成分データベースは、画像処理装置の記憶部13に格納されていても良いし、ネットワーク上で画像処理装置(第1分析システム10)が通信可能な記憶装置に格納されていても良いし、中央処理部11がアクセス可能な記録媒体に格納されていても良い。
(表示例)
第1分析システム10では、部分画像と合成画像は、表示部16において表示され得る。図6〜図8は、表示部16における表示例を示す図である。なお、図6〜図8では、成分ID「0001」で特定される成分は、丸型の図形で模式的に示される。成分ID「0002」で特定される成分は、三角形の図形で模式的に示される。成分ID「0003」で特定される成分は、星型の図形で模式的に示される。
まず図6を参照して、表示部16に表示されるウィンドウ600は、ボタン表示部610と、画像表示部620とを含む。ボタン表示部610には、ソフトウェアボタン(以下、「ボタン」と略す)611〜616が表示されている。ボタン611〜614のそれぞれは、成分データベース(図5参照)中の成分ID「0001」〜「0004」のそれぞれに対応する成分を含む画像を選択的に画像表示部620に表示するために操作される。ボタン615は、処理対象の試料についてのすべての部分画像を画像表示部620に表示するために操作される。ボタン616は、合成画像を画像表示部620に表示するために操作される。図6における画像表示部620には、ボタン615が操作されたときの内容、つまり、すべての部分画像が、部分画像651〜659として示されている。
図7における画像表示部620には、ボタン611が操作されたときの内容、つまり、成分ID「0001」で特定される成分(図7では、丸型の図形)を含む部分画像が、部分画像651として示されている。なお、成分ID「0001」は、合成画像にも含まれる。このため、ボタン611が操作されたときに、成分ID「0001」を含む部分画像だけでなく、合成画像も、画像表示部620に表示されても良い。図8における画像表示部620には、ボタン616が操作されたときの内容、つまり、合成画像が、合成画像660として示されている。
(画像転送の処理の流れ)
第1の実施の形態の第1分析システム10は、試料を撮影することによって生成した部分画像および/または合成画像を、サーバ90に送信する。なお、第1分析システム10は、必ずしも、試料の撮影によって生成された部分画像および合成画像のすべてをサーバ90に送信するのではない。第1分析システム10は、試料の撮影によって生成された部分画像および合成画像の中から、予め定められた条件に従って選択された画像のみを、サーバ90へ送信する。サーバ90は、第1分析システム10から受信した画像を、総合システム50へ送信する。ここで、第1分析システム10からサーバ90への画像転送の処理の流れを説明する。
図9は、第1分析システム10からサーバ90への画像転送処理のフローチャートである。図9を参照して、ステップS10で、中央処理部11は、撮像部12に、処理対象の試料の部分画像を撮影させる。
次に、ステップS20で、中央処理部11は、ステップS10で撮影された部分画像を利用して、合成画像を生成する。
次に、ステップS30で、中央処理部11は、表示部16に、たとえば図6〜図8を参照して説明したように、部分画像および/または合成画像を表示させる。
次に、ステップS40で、中央処理部11は、ステップS10における撮影によって生成された部分画像およびステップS20で生成された合成画像から、サーバ90へと送信する画像を選択する。ステップS40の内容は、図10を参照して後述する。
次に、ステップS50で、中央処理部11は、ステップS40で選択した画像のデータを圧縮する。第1の実施の形態におけるデータの圧縮方式としては、公知のいかなる形式をも採用され得る。
次に、ステップS60で、中央処理部11は、入出力インタフェース15を介して、サーバ90へ、ステップS50で圧縮した画像データを送信する。
図10は、図9のステップS40のサブルーチンのフローチャートである。図10を参照して、ステップS40の画像の選択では、中央処理部11は、ステップS410で、変数Nの値を0にセットする。変数Nは、ステップS10の撮影によって生成される部分画像のそれぞれを特定する値である。たとえば、ステップS10の撮影によって、M枚の部分画像が生成される場合、変数Nの値によって、当該M枚の中のN枚目の部分画像が特定される。なお、変数Nの値「0」は、ステップS20で生成された合成画像を特定する。
次に、ステップS420で、中央処理部11は、N枚目の部分画像(または、合成画像)が、成分データベースに登録されている成分を含むかどうかを判断する。そして、中央処理部11は、N枚目の部分画像(または、合成画像)が、成分データベースに登録されている成分を含むと判断するとステップS430へ制御を進め(ステップS420でYES)、含まないと判断するとステップS440へ制御を進める(ステップS420でNO)。
中央処理部11は、成分データベースに登録されている成分が画像に含まれるか否かを、たとえば、当該成分に対応する画像パターンが含まれるか否かに基づいて判断する。
ステップS430では、中央処理部11は、N枚目の部分画像(または、合成画像)について、選択された画像であることを示すフラグを立てた後、ステップS440へ制御を進める。
ステップS440では、中央処理部11は、変数Nの値を1加算更新する。
次に、中央処理部11は、変数Nの値が、部分画像の枚数である値Mを超えたかどうかを判断する。中央処理部11は、変数Nの値がまだ値Mを超えていないと判断するとステップS420へ制御を戻し(ステップS450でNO)、変数Nの値が値Mを超えていると判断すると図9のステップS40へ制御を戻す(ステップS450でYES)。
以上、図10を参照して説明された処理では、ステップS10の撮影により生成されたすべての部分画像およびステップS20で生成された合成画像の中から、成分データベースに登録されている成分を含む画像が選択される。選択された画像には、当該画像に対応するフラグが立てられる。
そして、図9を参照して説明された処理では、ステップS50において、フラグを立てられた画像のデータが読み出されて、圧縮される。圧縮されたデータは、ステップS60で、サーバ90へと送信される。
第1の実施の形態では、すべての部分画像が成分データベースに登録された成分を含まない場合、部分画像と合成画像のいずれも、第1分析システム10からサーバ90(総合システム50)に送信されない。なお、第1の実施の形態は、このような場合でも、少なくと合成画像は、第1分析システム10からサーバ90(総合システム50)へと送信されるように変更される場合もあり得る。
第1の実施の形態におけるステップS50の画像の圧縮は、選択的なものである。つまり、第1分析システム10は、サーバ90に対して、圧縮されない画像を送信することもあり得る。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態の臨床検査システムでは、成分データベースには、患者ごとに、成分が登録されている。第2の実施の形態の臨床検査システム500の各分析システムのハードウェア構成は、第1の実施の臨床検査システム500におけるそれらのハードウェア構成と同様とすることができる。以下、第2の実施の形態の臨床検査システムについて、第1の実施の形態の臨床検査システムからの変更点を、主に説明する。
図11は、第2の実施の形態の臨床検査システムにおける成分データベースの構成の一例を模式的に示す図である。図11に示されるように、第2の実施の形態における成分データベースは、患者IDごとに、成分IDと成分とが関連付けられている。患者IDは、各患者を特定する情報である。図11の成分データベースは、過去の各患者の試料に含まれていた有形成分を、各患者に関連付ける。たとえば、図11の成分データベースは、患者ID「P001」の過去の検査における試料には、成分ID0001で表される有形成分(赤血球)と、成分ID0002で表される有形成分(白血球)とが含まれていたことを示す。
図12は、第2の実施の形態における図9のステップS40(画像の選択)のサブルーチンのフローチャートである。図12に示されたフローチャートは、図10に示されたフローチャートに対して、ステップS402が追加され、また、図10のステップS420がステップS422に置き換えられている。
図12を参照して、ステップS40の画像の選択では、ステップS402で、中央処理部11は、ステップS10(図9参照)において部分画像を撮影された試料に対応する患者IDを抽出する。第2の実施の形態では、第1分析システム10に送られる試料には、患者IDが関連付けられている。第1分析システム10は、第1分析システム10へと試料を送る装置から受信することにより、各試料に対応する患者IDを取得しても良い。また、第1分析システム10は、(たとえば光学的に)情報を読み取る機構を有し、試料を収容する容器に貼られたラベルに記載されている情報を当該機構で読み取ることにより、各試料に対応する患者IDを取得しても良い。
次に、中央処理部11は、ステップS410で、第1の実施の形態と同様に、変数Nの値を0にセットする。
次に、ステップS422で、中央処理部11は、図11に示されたような成分データベースにおいて、処理対象の部分画像(または合成画像)が、ステップS402で取得した患者IDに関連付けられている成分を含むか否かを判断する。中央処理部11は、処理対象の部分画像(または合成画像)が当該成分を含むと判断するとステップS430へ制御を進め(ステップS422でYES)、含まないと判断するとステップS440へ制御を進める(ステップS422でNO)。
その後、中央処理部11は、第1の実施の形態と同様に、ステップS430で、処理対象の部分画像(または合成画像)についてのフラグを立ててステップS440へ制御を進める。
ステップS440では、中央処理部11は、変数Nの値を1加算更新する。
ステップS450では、中央処理部11は、変数Nの値が部分画像の数を示す値Mを超えているか否かを判断する。中央処理部11は、変数Nの値が値Mを超えていないと判断するとステップS422へ制御を戻し(ステップS450でNO)、超えていると判断するとステップS40(図9)へ制御を戻す(ステップS450でYES)。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態の臨床検査システムでは、ステップS10の撮影によって生成される部分画像とステップS20で生成される合成画像の中から外部へ送信される画像を選択するための条件が、外部から入力される。当該条件は、たとえば入力部14(図4参照)を介して入力される。なお、当該条件は、第1分析システム10の外部の装置から入力される場合もあり得る。入力された条件を特定する情報は、画像処理装置の記憶部13に格納されていても良いし、ネットワーク上で画像処理装置(第1分析システム10)が通信可能な記憶装置に格納されていても良いし、中央処理部11がアクセス可能な記録媒体に格納されていても良い。
第3の実施の形態の臨床検査システム500の各分析システムのハードウェア構成は、第1の実施の臨床検査システム500におけるそれらのハードウェア構成と同様とすることができる。以下、第3の実施の形態の臨床検査システムについて、第1の実施の形態の臨床検査システムからの変更点を、主に説明する。
図13は、第3の実施の形態における図9のステップS40(画像の選択)のサブルーチンのフローチャートである。図13に示されたフローチャートは、ステップS462とステップS464とステップS466とを含む。
図13を参照して、ステップS40の画像の選択では、ステップS462で、中央処理部11は、上記した条件を読み出す。
次に、ステップS464で、中央処理部11は、ステップS462で読み出された選択の条件に従って、ステップS10の撮影によって生成された部分画像およびステップS20で生成された合成画像の中から画像を選択する。当該選択の条件は、たとえば、いかなる条件でもあり得、たとえば、特定の成分を含むこと、複数の指定された成分の組み合わせを含むこと、もしくは、特定の数(種類および/または量)以上特定の成分を含むこと、または、これらの組み合わせであっても良い。
次に、ステップS466で、中央処理部11は、ステップS464で選択した画像についてのフラグを立てた後、制御を図9のステップS40へリターンさせる。
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態の臨床検査システムでは、第3の実施の形態において入力された画像の選択条件が、患者ごとに入力され、登録されている。「患者ごと」とは、患者IDごとに条件が登録されていることだけではなく、患者IDごとに対応する患者の特性(たとえば、年齢、性別、病歴、等)ごとに条件が登録されていることをも意味し得る。
第4の実施の形態の臨床検査システム500の各分析システムのハードウェア構成は、第3の実施の臨床検査システム500におけるそれらのハードウェア構成と同様とすることができる。以下、第4の実施の形態の臨床検査システムについて、第3の実施の形態の臨床検査システムからの変更点を、主に説明する。
図14は、第4の実施の形態における図9のステップS40(画像の選択)のサブルーチンのフローチャートである。図14に示されたフローチャートでは、図13のステップS462が、ステップS461とステップS463に置き換えられている。
図14を参照して、ステップS461で、中央処理部11は、ステップS10(図9参照)で部分画像を撮影された試料に対応する患者IDを抽出する。当該患者IDの抽出は、たとえば、ステップS402(図12参照)と同様の動作である。
次に、ステップS463で、中央処理部11は、ステップS461で抽出した患者IDに対応する画像の選択の条件を読み出す。当該条件の読み出しは、患者IDに関連付けられている条件を読み出すことだけでなく、患者IDに関連付けられている患者の特性(年齢、性別、病歴等)を取得し、当該取得した特性に関連付けられた条件を読み出すことをも含み得る。
次に、ステップS464で、中央処理部11は、ステップS462で読み出された選択の条件に従って、ステップS10の撮影によって生成された部分画像およびステップS20で生成された合成画像の中から画像を選択する。
次に、ステップS466で、中央処理部11は、ステップS464で選択した画像についてのフラグを立てた後、制御を図9のステップS40へリターンさせる。
今回開示された実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。