JP6277475B2 - 固体燃料の燃焼装置および固体燃料の燃焼方法、並びに、気体加熱装置、液体加熱装置、発電システムおよび冷房システム - Google Patents

固体燃料の燃焼装置および固体燃料の燃焼方法、並びに、気体加熱装置、液体加熱装置、発電システムおよび冷房システム Download PDF

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本発明は、木質系バルク状可燃物(木材、炭化物、あるいは、バイオ系バルク状可燃物)などの固体燃料を燃焼炉で燃焼するための固体燃料の燃焼装置および固体燃料の燃焼方法、並びに、気体加熱装置、液体加熱装置、発電システムおよび冷房システムに関する。
木質系バルク状燃料の燃焼装置が提案されている(特許文献1〜特許文献4)。木質系バルク状燃料とは、丸太、間伐材、流木、木株、剪定材、製材端材、木工端材、集成端材、建築木材、農業木材、土木木材等として多くの形態のものを指すが、これ等の外に、加工燃料の、薪、木屑、木炭、石炭類、木質チップ、木質ペレットや、草木類の藁、もみ殻、これ等を成形したもの等、多くのバイオマス系のものが含まれる。本発明は、これ等バイオ系バルク状可燃物や石炭類をも含む固体燃料を大きな形状のままで燃焼することが出来るボイラに関するものであり、以下ではこれらの燃料を総称して木質系バルク燃料と称する。
木質系バルク燃料は、人類の歴史とともに有用なエネルギー源として利用されてきており、化石燃料以外は地球温暖化に関する炭酸ガス対策上カーボンニュートラルな燃料でありゼロエミッション型燃料として重要であるが、固体燃料であるため燃焼時に不完全燃焼を伴うので、排煙による大気汚染を防ぐのは容易ではない。
他方、化石燃料である、石炭、石油、天然ガス、石炭由来の都市ガス、プロパンガス等の利用では、ガス燃料、液体燃料、石炭類の固体燃料等の燃焼技術や燃焼装置が発達しているが、大気中の炭酸ガスや煤塵の濃度を増加させるためPM2.5による煤塵や地球温暖化対策上その利用は制限されているが、大気汚染を伴うことが多い。
木質系バルク燃料の燃焼方法として、焚火、いろり、かまど、薪ストーブ、チップボイラ、ペレットボイラ、火床移動型ボイラ、木屑発電機等、人類の歴史と共に多くの方法が知られている。これ等の燃焼方法では、燃料の燃焼と給気がバランスよく制御されているとき、排煙の汚れは最も低くなるが、固体燃料である木質燃料の排煙は、従来から不完全燃焼による汚れを無くするのは困難であり、クリーンにするには燃料系を1000℃〜1100℃の高温で燃焼することが必要と考えられているが、決して十分な条件と言うわけではない。
バルクの薪を使う方法では、燃焼状態にあわせて薪燃料を絶え間なく供給することと、薪の積み上げ方や燃え方に応じて燃焼を管理するために常に人手が必要であるという不都合がある。規模の大きい薪蒸気機関や薪ストーブでは、燃料は大きくても5〜20cm程度に切断し人的または機械的手段で連続的な供給がはかられる。また、排煙には不完全燃焼による煤や一酸化炭素等が排出されるので、環境汚染対策が難しいという欠点があった。また、オイルバーナによる二次燃焼装置を用いて不完全燃焼による煙の発生を抑制する方法が知られており焼却装置としての機能をもつものが知られているが、本来暖房装置として備えるべき長時間の制御機能を持つものは知られていない。
チップやペレット燃料の利用では、燃料の定量供給が可能になるというメリットがあるが、連続供給装置を備える炉が必要であり、いわゆる、開放系の炉を使う必要がある。このため、厳しい環境対策を施した設備と管理が必要となる。また、チップやペレット燃料では、チップ化や成型に費やす生産エネルギーとコストが化石エネルギーと比較して無視することが出来ないという問題がある。また、燃焼に伴い、発煙と環境汚染の発生を伴うので、木質系燃料の使用を安易に広げることができないという問題がある。
この改善策として、特許文献1では、暖炉型暖房機の燃焼筺体内の薪の支持板の下にガス又はオイル燃料の第1バーナを設置し、更に後方に一対のバーナを設置するなど複雑な燃焼系が提案されている。しかしながら、一般的には、多数のバーナを用いるのは効果的な方法ではないという問題があるうえに、クリーンな排ガスが得られないという問題がある。特許文献2と特許文献3では、薪燃料を埋薪法という非常に緩慢な方法で燃焼し発煙を抑制する方法が提案されているが、燃焼初期には長時間の発煙が発生するのでこれを処理する必要がある上に適切な発熱量を得るには大量の酸化触媒と巨大な炉が必要となり、工業的に有用な熱量を取り出すのは困難である。
木質系バルク燃料である固体燃料をボイラで燃焼し排煙による環境汚染を防ぐには、燃料の品質として、形状やサイズが揃い連続的に定量供給ができ、樹脂量の違いを少なくし、含水率(乾燥度)等を最適化して、定量燃焼する必要がある。また、ボイラの運転には、煤塵や排気ガス対策、ドレンの処理、残灰の処理等、多くの課題がクリアーされる必要があり、これ等の環境対策が出来るのは大型設備が必要になるという問題がある。
また、木質燃料の品質を高め使い易くするため、運搬、集積、乾燥、切削、成形等を施すと、加工に消費されるエネルギーとコストは、絶乾木質燃料が内蔵するエネルギー量(最大5,000kcal/kg)に匹敵する化石燃料のコストに比べ、無視できなくなるという問題がある。
木質系バルク燃料の排煙は、大量の水蒸気、煤塵、煤、タール類、悪臭、ダイオキシン類等を含むので、排煙による大気汚染を防ぐのは容易でなく、燃料の形状、種類、含水率、品質等に多くの制限がある上に、燃焼に伴う、大気汚染、水質汚染、熱効率、取扱い方法、経済性等に多くの制約があるため、関連技術や装置の向上が求められる。
本発明者は、上記の課題の認識の下、大容量のバルク状木材等の木質系燃料を容易に利用できる燃焼技術とボイラを開発し、それにより暖房装置としての機能を持つ装置を提供した(特許文献4)。
特開2006−183920号公報 特開2004−245563号公報 特開2003−343840号公 特許第4734462号
大容量のバルク状木材等の木質系燃料をバッチ式で大量に閉鎖型の炉内に設置して点火し、長期にわたり燃料の必要量のみを燃焼させて燃焼状態を継続するのは容易ではない。つまり、投入した燃料の一部のみを燃焼させながら最終的には全量を燃やすことができるならば、バルク状燃料の有効利用が可能になる。また、燃焼条件として実用上不可欠な、燃焼状態を自由に変えて必要な燃焼熱を取出したり、発熱を抑制したり、更には休眠状態(実質的に燃焼の進行をストップさせる状態)にしたり、休眠状態から再稼動のために再燃焼状態に復帰する必要があるので、これ等の燃焼技術の問題が解決される必要がある。特許文献4は、このような課題を解決することができる。
しかし、特許文献4には、木質系バルク燃料を燃焼させるために必要な燃焼炉の構造と燃焼に必要な基本的な制御方法が開示されたもので、燃焼制御方法は手動による基本的なものである。このため、特許文献4に開示された技術は、炉の運転には熟練を必要とする問題があり、自動的に運転制御する技術を開発する必要があった。
本発明の目的は、燃焼効率が向上した固体燃料の燃焼装置および固体燃料の燃焼方法、並びに、気体加熱装置、液体加熱装置、発電システムおよび冷房システムを提供することにある。
本発明の一つとして、固体燃料の燃焼装置は、
固体燃料を燃焼させるための燃焼炉と、
前記燃焼炉に対して酸素を含む気体を供給する気体供給装置と、
前記燃焼炉の排出口から排出された排煙を排気するための排気装置と、を含み、
前記気体供給装置および前記排気装置を連動して制御し、前記燃焼炉の炉圧を制御する制御部を含むことができる。
通常、固体燃焼の燃焼装置は、空気の取入れ口から空気を取り入れ、煙突の排出機能により煙を排出する構造が一般的である。また、場合によっては、ブロワーなどの空気を供給するための気体供給装置と、排煙を外に排出するための排出装置を設けることもある。しかし、その空気の気体供給装置と排煙の排出装置とを、連動させて炉内の固体燃料の燃焼を減圧下の低温で燃焼させるために炉圧を制御するという発想はなかった。
本発明者は、気体供給装置と排気装置とを連動させて、燃焼炉の炉圧を制御する制御部を含むことで、固体燃料の燃焼を容易に制御することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明において、前記制御部は、さらに、前記気体供給装置および前記排気装置を制御することで、前記燃焼炉の燃焼量と温度を制御することができる。
燃焼炉の温度を制御することで、燃焼炉の温度が高温にならないために、燃焼炉の損傷を抑えることができる。また、燃焼炉がクロム系の材質からなる場合に、1000℃を超えると六価クロムが生じ易くなるが、燃焼炉の温度を1000℃以下に制御することができるため、六価クロムが生じるなどの問題も発生しない。一般にバイオマス燃料の場合には、燃料の完全燃焼をめざし煤煙の発生を抑制するため、1000℃〜1100℃の高温で燃焼することが望まれ、還元雰囲気下の燃焼になるという課題がある。
本発明において、前記制御部は、さらに、前記気体供給装置および前記排気装置を制御することで、前記燃焼炉の排出口における排煙温度を500℃以下、好ましくは400℃以下に制御することができる。燃焼炉の排出口における排煙温度を500℃以下、好ましくは400℃以下に制御することで、燃焼炉の損傷をより確実に抑えることができる。
本発明において、前記制御部は、さらに、前記気体供給装置および前記排気装置を制御することで、前記燃焼炉の酸化雰囲気の度合いを制御することができる。
酸化雰囲気の度合いを低い温度で制御することで、燃焼炉がクロム系の材質からなる場合に高温と還元雰囲気下で生じるクロムの還元を抑えることができ、六価クロムの問題を確実に防ぐことができる。
本発明において、前記制御部は、前記燃焼炉で前記固体燃料を燃焼させている際に、前記燃焼炉の炉圧を−10Pa以下に制御することができる。燃焼炉の炉内圧が−10Pa以下であることにより、従来常圧下でおこる燃焼を、低い温度で促進させることが出来るようになるため、逆に炉圧を高くすることにより燃焼を抑制して燃焼量の制御を容易にすることができる事を見出した。また、燃焼時に固体燃料を追加するための燃料追加口がある場合に、その燃料追加口を開けたときに、燃焼炉から排煙や煤塵が外に飛び出すのを防ぐことができる。−10Pa以下であると、外部へ向かう圧力がかからないため、厚くて大きな鉄鋼材料を用いなくても、大きな燃料追加口を閉じる開閉扉を設けることができる。燃焼炉の炉内圧が負圧であることで、開閉扉を設けた場合には、頑丈な固定具を用いなくてもよい。固体燃料を逐次、炉内に安全に供給することもでき、燃料の連続供給もすることが容易になる。燃焼炉の炉内圧が−10Pa以下であることにより、燃焼炉を開けた時に、不完全燃焼の排煙が燃料追加口から外部に放出されないため、バックファイアの問題も発生し難くなる。
既存のボイラーでは、煙突効果による負圧により空気中の酸素が炉内に供給されるが、外気に対する圧力差は−10Pa程度である。燃焼空気と燃料の燃焼による高い温度の燃焼ガスにより、煙突による排煙力が煙突効果であり、煙は炉外に放出されるが、排煙に含まれる粉塵を回収するために煙道に誘引ファンを設置し、サイクロンに排煙を供給して粉塵を回収することがあるが、燃料の燃焼温度を下げる目的で排気装置により炉内圧を大幅に下げる例は見られない。
本発明において、
前記燃焼炉に設けられた前記固体燃料を供給するための供給口と、
前記供給口を塞ぐために設けられた開閉扉とを含み、
前記供給口の周囲の少なくとも一部に設けられ、かつ、前記開閉扉により押圧力が加わる部分に、外部の気体が侵入しないようにするため耐熱性の封止部材が設けられ、
前記封止部材は、耐熱性のガラス繊維、炭素繊維、又は、同じ目的のセラミックス繊維を主成分として構成することができる。
封止部材がガラス繊維、炭素繊維、又はセラミックス繊維を主成分として構成されるものでなることにより、燃焼炉が正圧になったときに、開閉扉の押圧力が弱まり、繊維状の封止部材を通して炉内の気体が逃げ、燃焼炉内の圧力が過度に高圧になることを回避することができる。
本発明において、
前記燃焼炉と前記排気装置との間に、前記燃焼炉から排出された排煙に含まれる水蒸気を凝縮させる凝縮部が設けられ、
前記凝縮部は、水蒸気が凝縮して発生した熱を液体又は気体の媒体に移行させるための熱交換体により構成されていることができる。
排煙に含まれる水蒸気を凝縮させ、その凝縮で発生した凝縮熱を液体又は気体の媒体に移行することで、その凝縮に当たって生じた熱を有効に利用することができ、燃焼効率を高めることができる。一般的には、排煙中の水蒸気は回収されずに、排気される。また、排煙の熱が熱交換体を通じて、液体又は気体の二次の熱媒体に移行するため、排煙の温度が低くなる。このため、煙突などの排気路の損傷を抑えることができる。また、水蒸気を凝縮させているため、排煙に含まれる水蒸気が少なくなり、その分、水蒸気による排気路の損傷も抑えることができる。この熱交換体で排煙の温度を低くすることができる。この凝縮部の入り口においてたとえば800℃以上の高温の排煙を、凝縮部内でたとえば200℃以下に急冷させることで、分解したダイオキシン類の再結合を抑制することができる。
本発明において、
前記燃焼炉の排出口と前記排気装置との間に設けられた排煙を排気するための排気路と、
前記排気路に接続された、酸素を含む気体を供給するための酸素供給路と、
前記排気路に設けられた着火部とを含み、
前記排煙は、前記酸素供給路から供給された酸素を含む気体と混合され、前記着火部により誘引された火により燃焼されることができる。
排煙を燃焼させることで、燃焼炉の排出口から不完全燃焼の排煙が排出されたとしても、その二次燃焼部にて、その排煙に含まれる一酸化炭素や炭化水素などの未燃焼ガス成分を燃やすことができる。また、補助バーナなどで排煙を燃やそうとしても、排煙を燃やすほどの酸素が十分にバーナから供給されない。燃焼炉の炉内圧を高めることなく、燃焼炉に対して酸素供給を少なくしつつ、排煙を燃焼させる排気路に酸素を供給することができる。給気ノズルにより排気路に酸素を含む気体を直接供給することが好ましい。
本発明において、前記酸素供給路は、前記燃焼炉内を通り、前記酸素を含む気体が前記燃焼炉内の熱によって加熱されるようにされていることができる。
酸素供給路が燃焼炉内を通過するように設けられていることで、燃焼炉の熱によって酸素供給路内の酸素を含む気体が加熱されることになる。酸素を含む気体が加熱されることで、その気体が前記排煙と混合されて燃焼されるときに、その燃焼がより促進され、排煙が燃焼しやすくなる。
本発明において、前記燃焼炉内における酸素供給路は、前記燃焼炉内の上部を通るように設けられていることができる。
燃焼炉では燃焼ガス成分が上に上昇していくため、燃焼炉の上部で燃焼させることが好ましい。このため、酸素供給路が燃焼炉の上部にあることで、酸素供給路内の酸素を含む気体が燃焼で発生した熱によって、加熱されやすい。
本発明において、前記着火部は、前記酸素供給路と前記排気路とが接続する箇所よりも、前記排気路の下流側に設けられていることができる。
本発明において、前記排気路において、排煙を燃やすためのバーナが設けられており、前記バーナは、前記酸素供給路と前記排気路とが接続する箇所よりも、前記排気路の下流側に設けられており、前記着火部としても機能する固体燃料の燃焼装置。
排煙をバーナで燃やすことにより、排煙の温度は600〜1000℃まで上昇することになる。このため、ダイオキシン類を分解することができる。また、酸素供給路から供給された酸素を含む気体と排煙とが混合されて燃焼させる際の着火部としても機能するため、部品点数を減らすことができる。
本発明において、
前記酸素供給路は、前記気体供給装置に接続され、
前記燃焼炉内における前記酸素供給路に導通孔が設けられ、
前記導通孔を通じて、前記酸素供給路内の酸素を含む気体の一部が前記燃焼炉に供給されると共に、前記燃焼炉に供給されなかった酸素を含む気体は、前記酸素供給路を通過し、前記排煙と混合されることができる。
本発明において、前記酸素供給路は、前記燃焼炉内の上部を通り、前記酸素供給路の導通孔は、前記燃焼炉内の上部に設けられていることができる。
燃焼炉では燃焼成分が上に上昇していくため、燃焼炉の上部で燃焼させることが好ましい。このため、酸素供給路が燃焼炉の上部にあることで、酸素供給路内の酸素を含む気体が燃焼炉で発生した熱によって、加熱されやすい。
本発明において、前記排気路側における前記酸素供給路の先端は、ノズル状となっていることができる。排煙と酸素を含む気体とが混合し、燃焼する箇所において、酸素を確実に供給することができる。
本発明において、前記排気路において、排煙の成分の酸化を促進させるための触媒部が設けられていることができる。このような触媒部を設けられていることで、排煙の酸化をより確実に行うことができ、ダイオキシン類の分解も図ることができる。
本発明において、前記触媒部は、アルカリ土類金属の酸化物を主成分として構成された、ハニカム型のセラミックスからなることができる。触媒部がこのようなセラミックスからなることで、効果的に排煙の酸化をすることができる。
本発明において、前記触媒部は、燃焼時において、酸化雰囲気下におかれ、かつその温度が300℃以上になるように、前記気体供給装置および前記排煙装置を制御することができる。これにより、より確実にダイオキシン類を分解することができる。
本発明において、前記排気路に流れる排煙の流量は、燃焼時において、前記気体供給装置から前記排気装置までの空間の体積の気体が0.1〜2秒にて流れる流量とすることができる。この流量により、燃焼化学反応の制御と高い熱交換機能の維持を行い易くできる。また、ダイオキシンの発生を抑制することができる。
本発明の一つとして、固体燃料の燃料装置は、
固体燃料を燃焼させるための燃焼炉と、
前記燃焼炉の排出口から排出された排煙を排気するための排気装置と、を含み、
前記燃焼炉で前記固体燃料を燃焼させている際に、前記排気装置にて前記燃焼炉の炉圧を−10Pa以下に制御するものであることができる。
これによれば、固体燃料を容易に燃焼させることができる。
本発明の一つとして、固体燃料の燃焼装置は、
固体燃料を燃焼させるための燃焼炉と、
前記燃焼炉の排出口から排出された排煙を排気するための排気装置と、を含み、
前記燃焼炉の排出口と前記排気装置との間に設けられた排煙を排気するための排気路と、
前記排気路に接続された、酸素を含む気体を供給するための酸素供給路と、
前記排気路に設けられた着火部とを含み、
前記排煙は、前記酸素供給路から供給された酸素を含む気体と混合され、前記着火部により誘引された火により燃焼されるものであることができる。
これによれば、燃焼炉から排出された排煙を確実に燃焼させることができる。
本発明の気体加熱装置は、本発明の固体燃料の燃焼装置で発生した熱によって、気体を加熱するものである。
本発明の液体加熱装置は、本発明の固体燃料の燃焼装置で発生した熱によって、液体を加熱するものである。
本発明の発電システムは、本発明の固体燃料の燃焼装置で発生した熱を用いて液体の熱媒体を気体に蒸発させるための蒸発器と、前記蒸発器において発生した気体のエネルギーを回転運動に変換するためのタービンとを含む。
本発明の冷房システムは、本発明の固体燃料の燃焼装置で発生した熱を用いて液体の熱媒体を気体に蒸発させるための蒸発器と、前記蒸発器において発生した気体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器において凝縮した熱媒体を蒸発させ、冷媒から熱エネルギーを吸収するための蒸発器とを含む。
本発明の一つとして、固体燃料の燃焼方法は、
固体燃料を燃焼させるための燃焼炉に対して、気体供給装置が酸素を含む気体を供給し、
排気装置が前記燃焼炉の排出口から排出された排煙を排出し、
制御部が前記気体供給装置および前記排気装置を連動して制御し、前記燃焼炉の炉圧を制御し、固体燃料を燃焼させることができるものである。
本発明の一つとして、固体燃料の燃焼方法は、
固体燃料を燃焼させるための燃焼炉の排出口から排出された排煙を排気するための排気装置により、前記固体燃料を燃焼させている際に、前記排気装置にて前記燃焼炉の炉圧を−10Pa以下に制御し、固体燃料を燃焼させるものであることができる。
本発明の一つとして、固体燃料の燃焼方法は、
排気装置により、燃焼炉で生じた排煙を排出口から排出させ、
前記燃焼炉の排出口と前記排気装置との間に設けられた排煙を排気するための排気路に、酸素を含む気体を供給し、前記酸素を含む気体と前記排煙とを混合し、前記排気路に設けられた着火部により誘引された火により、前記排煙を燃焼するものであることができる。
本発明において、固体燃料とは、木質系、石炭系、バイオマス(生物)、プラスチック、石油製品など酸化して燃焼されるものであれば特に限定されない。
実施の形態に係る固体燃料の燃焼装置を模式的に示す斜視図である。 実施の形態に係る固体燃料の燃焼装置を模式的に示す断面図である。 図2のI−I線に沿った断面を模式的に示す図面である。 燃焼炉一部、開閉扉の一部および小扉の断面を模式的に示すである。 熱交換体の断面を模式的に示す図である。 実施の形態に係る液体加熱装置を模式的に示す図である。 実施の形態に係る発電システムを模式的に示す図である。 実施の形態に係る冷房システムを模式的に示す図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
1.燃焼装置の背景および基本構成
固体燃料は、ガス燃料や液体燃料と違って、燃料全体を均一な温度にして燃焼することは出来ない。強いて、一様な温度にして燃焼するには、粉状にした燃料をノズルから高温の空間へ噴出させて燃やすことになる。しかし、固体燃料のサイズを薪や丸太の様に大きくすると、表面燃焼が進んでも内部は未燃焼であり、必ず燃焼部分と高度に不完全燃焼している未燃焼部分が共存する。不完全燃焼すると、熱分解を伴って炭化水素分であるチャー、一酸化炭素、煤塵等、煤煙の発生を伴う。従って、大気汚染を防止しPM2.5の発生を防ぐために、煤煙の発生を抑制し完全燃焼させてクリーンにする必要がある。
このように木質系バルク燃料を燃焼する炉では、一般に高度な不完全燃焼状態が起こるので、バッチ式の炉や薪ボイラ、又は、小型暖房装置等で、排気ガスをクリーンに保てる装置類は知られてなく、一般にクリーンな燃焼を得るのは困難である。また、固体燃料よりはるかに燃焼し易い重油や軽油を燃料とする自動車エンジンやボイラの排気ガスをクリーンに保つのも決して容易ではない。
固体燃料用の燃焼炉において、燃焼量の制御には給気量の制御を伴うが、空気量を急激に増加したり、減少したりすると、不完全燃焼が高まり多量の煙や煤塵を発するという事実がある。従って、発熱量の制御では給気の増減を適切に制御しなけれバーナらないという問題がある。
木質燃料の成分は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、揮発性成分、微量金属、及び、水分であるが、主要な燃焼成分はセルロースであり、燃焼により、セルロース分子 (C122011)は分解して式(I)に示すように炭酸ガスと水蒸気になる(空気中のN2ガスは簡単化のため除外)。
数1
(C12H20O11)+Air(11.5O2)=10H2O +12CO2
比較的低い温度でも燃焼する炭化水素は、セルロースが内蔵する酸素により優先的に燃焼し、高い温度で燃える炭素は主に供給された空気によって酸化される傾向がある。このため、給気下で燃料の熱分解が始まると燃料が持つ酸素により燃焼が加速され、更に、燃料の加熱が進むと自己放出する酸素によって燃焼が過剰に進み燃焼量の制御は困難になるという問題がある。
木質燃料の燃焼で完全燃焼すると、排気ガスにはHO とCOが排出され、水蒸気が10量(45.5vol%)に対して炭酸ガス12量(54.5vol%)が発生する。更に含水率で示す水分と燃焼用の空気が含む湿度が加わると、燃焼により多量の水蒸気が発生することになる。燃料の含水率が20Wt%、又は、40Wt%になると、発生する水蒸気はCOに対してそれぞれ61vol%、又は、68vol%になり、燃焼熱の約半分が蒸発潜熱に費やされることになり燃焼不良つまり不完全燃焼を生じる問題がある。
従って、本実施の形態による木質バイオマスボイラでは、熱交換器を通過する排煙温度は100℃以下まで冷却され大量の水蒸気の凝縮熱を回収することを可能にし、更に、反応ダクトで熱分解されたダイオキシン類は熱交換器内で低温に急冷されて再結合が抑制されるようになっている。
木質燃料は、温度の上昇に従って水蒸気の発生とセルロース成分の分解がすすみ、水素ガスH、メタンガスCH、一酸化炭素CO等、燃焼し易い低分子のガスが先に発生し燃焼して、リグニンの分解が最後になる。その結果、低分子量の炭化水素であるチャーを中心に水溶性のメタノール、酢酸、フエノール類、タール成分、場合によってはダイオキシン類等が発生し、その熱分解温度は次表に示すように200℃から500℃まで幅がある。しかし、ダイオキシン類の分解には800℃以上の酸化雰囲気の中で2秒以上の滞留時間が一般的に必要とされている。
このように、燃料の部分的な燃焼により熱分解と酸化が進むと、周辺が加熱され、温度は上昇し燃焼が更に広がる。木質系バルク燃料の燃焼では必ず不完全燃焼が起こり、排煙には、一酸化炭素CO、炭水化物C、炭化物(煤)、臭気、又は、ダイオキシン類が加わるため、これ等を完全に酸化し、クリーンな排煙を保ちたいという問題がある。
Figure 0006277475
炉内に投入したバルク状木質燃料の燃焼を制御するには、手動操作であれ、自動操作であれ、次の燃焼プロセスの組み合わせが必要なことがわかった。
(1)加温・乾燥と点火が必要な初期燃焼
(2)多量の燃料が火炎と共に燃える定常燃焼
(3)炭状の炭化物が主に燃える熾火燃焼
(4)燃焼を停止させて焼け木杭や木灰中の炭に火種を閉じ込めておく休眠状態
(5)休眠状態から燃焼状態に戻す再燃状態
(6)燃料を追加して燃焼時間を延ばす追焚き燃焼
(7)火を消し止める消火
これら(1)〜(7)のプロセスに適した燃焼運転には、手動では熟練が必要であり、誰でも運転できる自動運転方法が必要であり、適切な制御方法が求められる。
炉の発熱量は、一次燃焼から四次燃焼に至る全ての発熱量と管状熱交換器における凝縮顕熱と排煙熱量の総和であり、燃焼量の適切な測定方法を見つけ出す必要があった。燃焼量を増やすと、炉室、反応ダクト、触媒、熱交換器等、構造上の耐熱限界の問題があり、更に、クリーンな排煙を実現するための実用的な燃焼システムの開発が求められる。
炉の運転では、排煙は、PM2.5として問題になる煤煙や煤塵、又は、ダイオキシン類を排出しやすいので、クリーン化が求められる。また、燃焼に伴う排出物として、煙突からの排煙、煙道で発生する凝縮液であるドレン(木酢液)と、炉底には金属酸化物である燃焼残渣の木灰が堆積する。
本実施の形態は、このような多くの課題に鑑み、木質系固体燃料(木質系バルク燃料)の加工にエネルギーを消費したりしないで、最も廉価なバルク状のままで燃焼させることができ、かつ、その燃焼状態を自由に変えて必要な燃焼熱を有効利用することが可能で、かつ、燃焼制御が容易な木質系バルク燃料用燃焼炉の自動燃焼制御方法を提供することである。
本実施の形態により提供される木質系バルク燃料ボイラは、地域に分散している木質系バルク燃料を最も廉価に利用できるうえ、運転が自動制御により容易になると、この木質系バルク燃料ボイラを熱源とする、気体加熱装置、乾燥装置、又は、温水供給装置等を高い熱効率で利用することが容易になり廉価な熱エネルギーの利用に道が開ける。また、当該ボイラは、環境対策に適した機密度の高いゼロエミッション型の燃焼方法であり、汚染物質の灰化処理等への利用を開拓することも求められている。
2.燃焼装置の具体的構成
実施の形態に係る固体燃料の燃焼装置100は、燃焼炉20と、燃焼炉20に酸素を含む気体を供給するための気体供給装置40と、燃焼炉20内の気体を排出するための排気装置42と、を含む。気体供給装置40と排気装置42とは、制御装置46により制御される。
固体燃料の燃焼装置100は、燃焼炉20で発生した排煙を排気路を通じて、排気口44から排気する。排気路の途中には、燃焼炉20で発生した排煙を燃焼させる反応ダクト50と、反応ダクト50から排出された排煙を気体又は液体の媒体と熱交換するための熱交換体60が設けられている。
燃焼炉20に固体燃料を供給するための開閉扉30が設けられている。燃焼炉20は、筐体10によって囲まれている。熱交換体60は、筐体10内に供給された気体又は液体の熱媒体と熱交換する。筐体10は、たとえば、燃焼炉20の前面以外の面との間に空間が生じるように設けることができる。より具体的には、筐体10は、燃焼炉20の背面と側面と上面との間に所定の空間が生じるように、燃焼炉20を覆うことができる。
燃焼炉20は、固体燃料を燃焼させるものである。燃焼炉20は、気体供給装置40から供給される酸素を含む気体が供給される。酸素を含む気体は、燃料炉の上部から供給されるようにすることができる。燃焼炉20は、排煙を排出するための排出口24が設けられている。排出口24は、たとえば、燃焼炉20の下部に設けることができる。燃焼炉20には、たとえば、給気ノズルにより燃焼炉20の上面側より酸素を含む気体を供給してもよい。排煙を排出するための排出口24は、たとえば、背面下方に排出口24を設けることができる。燃焼炉20内の排煙を排出口24に導くための内部煙道26を設けることができる。内部煙道26は、たとえば、燃焼炉20の上側から排出口24に煙を導くことができる。内部煙道26は、排出口24側の壁面に対向するように耐熱鋼からなる仕切板28を設けることで、構成してもよい。内部煙道26の入口を燃焼炉20の上部に設けることで、燃焼ガス成分が上側に導かれ、燃焼ガス成分が燃焼炉20の上部で燃焼し易くなる。
燃焼炉20には、設けられた固体燃料を供給するための燃料供給口22と、燃料供給口22を塞ぐために設けられた開閉扉32とを含む。燃焼炉20の供給口の周囲の少なくともには、外部の気体が侵入しないようにするための封止部材36が設けられている。封止部材36は、開閉扉30により押圧力が加わる部分に設けられている。封止部材36は、耐熱性のガラス繊維、セラミックス繊維、又は、炭素繊維を主成分として構成される。封止部材36がガラス繊維、セラミックス繊維、又は、炭素繊維を主成分として構成されるものでなることにより、燃焼炉20が高圧になったときに、開閉扉30の押圧力が弱まり、ガラス繊維、セラミックス繊維、又は、炭素繊維から炉内の気体が逃げ、燃焼炉20内の圧力が過度に高圧になることを回避することができる。開閉扉30は、たとえば、筐体10の前面側に設けられている。開閉扉30は、たとえばヒンジ38により燃焼炉20に開閉可能に取り付けることができる。開閉扉30には、燃料を追加可能にするための燃料追加口16と、その燃料追加口16を開閉するための小扉32とを設けることができる。小扉32もたとえばヒンジ38により、開閉扉30に開閉可能に取り付けることができる。
燃焼炉20は、一般的な鋼板や耐熱鋼板からなることができる。開閉扉30の両サイドには、たとえば、開閉扉30の締め付け圧を調節する複数のハンドル34が備えられており、そのハンドル34によって開閉扉30を締め付けて封止部材36としてのパッキンの締め代を広範囲に渡って調節できるようすることができる。また、開閉扉30の上部に焚口を設け、この焚口を開閉する小扉32も前記開閉扉30と同様、ハンドル34によって小扉32に設けた封止部材36としてのパッキンの締め代を調節できるようにすることができる。
気体供給装置40は、たとえば、出口に電磁弁が付いた周波数調整ができるファンとすることができる。気体供給装置40は、電磁弁にて最少空気量0%と最大空気量100%の間で正確な風量を供給できる構造とすることができ、燃焼炉20の燃焼を停止させる休眠状態では火種を維持することが出来る微量の空気の供給が保証され、消火するには空気を完全に遮断することができる。排気装置42は、たとえば、出口に電磁弁が付いた周波数調整ができるファンとすることができる。気体供給装置40および排気装置42は、たとえば、インバーター制御をしてもよい。
制御部46は、たとえば温度センサにより温度を検知して、気体供給装置40および排気装置42を制御する。制御部46によって気体供給装置40および排気装置42を連動して制御することによって、燃焼炉の内圧を調整することができる。その燃焼炉20の圧力は、たとえば−10Pa以下、好ましくは−10Pa未満で−1000Pa以上の範囲内、好ましくは−10Pa未満で−500Pa以上の範囲内、より好ましくは−50〜−500Paの範囲内、さらなる好ましくは−150Pa〜−300Paの範囲内とすることができる。炉内圧の適切な値は炉の構造と機能により選ぶことが出来る。制御部46は、制御回路を有する制御盤により構成してもよいし、中央演算装置(CPUなど)、ROM及びRAMを含む制御装置46により構成してもよい。制御部46は、固体燃料の燃焼装置100の各部を制御する機能も有していてもよい。制御部46は、温度センサT1〜T8で計測した温度に基づき、各部を制御してもよい。
燃焼炉20の炉内圧を−10Pa以下に制御することにより、燃焼を低い温度で促進させ、制御し易くなる。また、燃焼時に固体燃料を追加するための燃料追加口がある場合に、その燃料追加口16を開けたときに、燃焼炉20から排煙や煤塵が外に飛び出すのを防ぐことができる。−10Pa以下であると、外部への圧力がかからないため、厚くて大きな鉄鋼材料を用いなくても、大きな燃料供給口を閉じる開閉扉30を設けることができる。燃焼炉20の炉内圧が負圧であることで、開閉扉30を設けた場合には、頑丈な固定具を用いなくてもよい。固体燃料を逐次、安全に供給することもでき、燃料の連続供給もすることができる。
既存のボイラでは、炉内に空気を供給して、排気装置42により排気している場合があるが、炉内圧を制御していないため、燃焼ガスによる炉内圧が正圧になり易く最大で約+500Paが稼働限界圧とされている。燃焼炉20の炉内圧が−10Pa以下であることにより、燃焼炉20の開口部を開けた時に、不完全燃焼の排煙が開けた部分から放出されないため、バックファイアによる事故も避け易くなる。
制御部46によって気体供給装置40および排気装置42を連動して制御することによって、燃焼炉20内の温度、酸化雰囲気度合い、固体燃料の燃焼を制御することができる。燃焼炉20の排出口24での排煙温度は、500℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは200〜400℃とすることができる。また、固体燃料の燃焼を制御することで、一気に固体燃料が燃えたりすることを防ぐことができる。
通常、固体燃料の燃焼装置100は、空気の取入れ口から空気を取り入れ、煙突の排出機能により煙を排出する構造が一般的である。また、場合によっては、ブロワーなどの空気を供給するための供給装置と、排煙を外に排出するための排出装置、又は、排煙から粉塵を回収するためのバグフイルター、旋回装置、及び、サイクロン集塵機を設けることもある。しかし、その空気の供給装置と排煙の排出装置とを、連動させて炉内圧を負圧にして固体燃料の燃焼を制御するという発想はなかった。
本発明者は、前記気体供給装置と前記排気装置42とを連動させて、前記燃焼炉20の炉圧を制御する制御部46を含むことで、固体燃料の燃焼を容易に制御することができることを見出した。
本実施の形態によれば、燃焼炉20内の温度を減圧下で制御することができるため、高温にならないことから、燃焼炉20の損傷を抑えることができる。また、燃焼炉20がクロム系の材質からなる場合に、1000℃を超えると六価クロムが生じ易くなるが、燃焼炉20の温度を1000℃以下に制御することができるため、六価クロムが生じるなどの問題も発生しない。一般にバイオマス燃料の場合には、完全燃焼の条件に近付けるため燃焼炉20内の温度を1000〜1100℃まで高くしていることが多い。
本実施の形態によれば、酸化雰囲気の度合いも容易に制御することができるため、燃焼炉20がクロム系の材質からなる場合に還元下で生じるクロムの還元を抑えることができ、六価クロムの問題を確実に防ぐことができる。
反応ダクト50は、排煙を完全燃焼させるためのものである。反応ダクト50により排煙を燃焼させることができるため、不完全燃焼の排煙を容易に完全燃焼させることができる。反応ダクト50は、たとえば、第1の排煙燃焼部52、第2の排煙燃焼部54および第3の排煙燃焼部56を設けることができる。反応ダクト50は、耐熱鋼板からなることができる。反応ダクト50と燃焼炉20とが異なる材質からなる場合には、熱膨張が異なるため、反応ダクト50と燃焼炉20との接続部は互いに柔軟な構造で接続され、熱による大きな伸縮を自由に吸収できるようにすることができる。
第1の排煙燃焼部52は、バーナなどの着火手段を火種として、排煙と酸素を含む気体とを混合して、排煙を燃やすためのものである。酸素を含む気体は、酸素供給路70より供給される。酸素供給路70は、燃焼炉20内を通るように設けることができる。これにより、酸素供給路70を通る酸素が燃焼炉20で加熱されることができる。酸素供給路70は、気体供給装置40に接続され、燃焼炉20内における酸素供給路70に導通孔72が設けられ、導通孔72を通じて、酸素供給路70内の酸素を含む気体の一部が燃焼炉20に供給されると共に、燃焼炉20に供給されなかった酸素を含む気体が、酸素供給路70を通過し、排煙と混合するようにしてもよい。第1の排煙燃焼部52は、第2の排煙燃焼部54で適用する燃焼手段の火を誘引して、排煙を燃焼してもよい。第1の排煙燃焼部52における排煙の温度は、たとえば、200〜600℃の範囲とすることができるが、より好ましくは250〜500℃とすることができる。酸素供給路70の先端74をノズル状とし、その先端74から酸素を含む気体を第1の排煙燃焼部52に排出し未燃焼成分を含む排煙と混合することができる。
酸素供給路70は、燃焼炉20内の上部を通るように設けることができ、酸素供給路70の導通孔72は、燃焼炉20内の上部に設けられていることができる。燃焼炉20では燃焼成分が上に上昇していくため、燃焼炉20の上部で燃焼させることが好ましい。このため、酸素供給路70が燃焼炉20の上部にあることで、酸素供給路70内の酸素を含む気体が燃焼炉20で発生した熱によって、加熱されやすい。
第1の排煙燃焼部52があることで、燃焼炉20の排出口24から不完全燃焼の排煙が排出されたとしても、その排煙に含まれる一酸化炭素や炭化水素などを燃やすことができる。バーナなどで排煙を燃やそうとしても、排煙を燃やすほどの酸素が十分にバーナから供給されるわけではない。燃焼炉20の炉内圧を高めることなく、燃焼炉20に対して酸素供給を少なくしつつ、排煙を燃焼させる反応ダクト50内の排気路に酸素を直接供給することができる。
酸素供給路70が燃焼炉20内を通過するように設けられていることで、燃焼炉20の熱によって酸素供給路70内の酸素を含む気体が加熱されることになる。酸素を含む気体が加熱されることで、その気体が前記排煙と混合されて燃焼されるときに、その燃焼がより促進され、排煙が燃焼しやすくなる。
燃焼炉20では燃焼成分が上に上昇していくため、燃焼炉20の上部で燃焼させることが好ましい。このため、酸素供給路70が燃焼炉20の上部にあることで、酸素供給路70内の酸素を含む気体が燃焼炉20で発生した熱によって、加熱されやすい。
第2の排煙燃焼部54は、バーナなどの燃焼手段などにより第1の排煙燃焼部52で燃え残った排煙を燃焼させるためのものである。第2の排煙燃焼部54における排煙の温度は、たとえば、600〜1000℃とすることができる。排煙をバーナで燃やすことにより、排煙の温度は通常800〜900℃まで上昇することになる。このため、ダイオキシン類を容易に分解することができる。
第3の排煙燃焼部56は、排煙の成分の酸化を更に促進させるための触媒部からなることができる。触媒部は、アルカリ土類金属の酸化物を主成分として構成された、ハニカム型のセラミックスとすることができる。特に、触媒部は、300℃以上、好ましくは1000℃でも用いることができるセラミックスであることが好ましい。触媒部は、燃焼時において、酸化雰囲気下におかれ、かつ、その温度がたとえば、300〜1000℃の範囲になるような構成とすることができる。酸化雰囲気下にするためには、気体供給装置40および排気装置42を制御して、酸素を含む気体の供給量を増やすことで実現することができる。第3の排煙燃焼部56においても、ダイオキシン類を分解することができる。
当該目的に適した酸化触媒の化学成分は、たとえば、CaOSiO、CaOAl、又は、MgOAlであり、これ等の融点はそれぞれ1540℃、1600℃、及び、2135℃であり、これ等の実用最高温度はそれぞれ900℃、1000℃、及び、1100℃である。いずれも、単位のCaO、SiO、MgO、又は、Alの当量混合物を成形した後、酸化雰囲気下の高温で焼結することにより得ることが出来る。焼結温度は用いる原料の粒度に依存するので規定する必要がないが、実用温度よりは200℃〜400℃高くするのが良い。尚、これ等の酸化触媒の化学成分は、上記した3種類に限定する必要はなく、相互の混合成分にて構成することも出来る上に、焼結助剤としてSiO等一部の金属酸化物を余剰に含むことが出来る。
排煙は、これら酸化触媒の表面又は壁で囲まれたハニカム型空間内で直接化学反応により酸化されるので、高価なPt,又は、Pd等の貴金属を使用する必要が無い。また、これら貴金属を触媒活性に利用するのは、高温での酸化や蒸発と化学反応による消耗が大きく不都合である。
排煙と酸化触媒の接触面積を大きくとるためにハニカム構造をとるのが良く、木質バルク燃料ボイラーでは、自動車用エンジンの様に排煙抵抗を大きく下げる必要はなく、1インチ平方当たりのセル密度は200〜300あれば数10Pa以下の圧損にすることが出来る。セル壁は排煙との直接の化学反応により痩せるためセル密度を大きくする必要はないが、第1の排煙燃焼部52における2次燃焼、第2の排煙燃焼部54における3次燃焼、及び、第3の排煙燃焼部56における4次燃焼の熱により300℃以上〜1000℃の温度で効果的な排煙処理ができる反応ダクト50を実現することができる。
熱交換体60では、排煙に含まれる多量の水蒸気が熱媒体と熱交換することで凝縮し、凝縮熱が発生する。凝縮した水は回収される。熱交換体60は、たとえば管状熱交換器から構成され、表面積を増やすために、図5に示すようにフィン62を設けることができる。熱交換体60の入口での排煙温度は、たとえば、500〜700℃以下とすることができる。熱交換体60の出口の排煙温度は、たとえば200℃以下とすることができる。熱交換体60において凝縮した水は、熱交換体60の内部を移動して、外部に排出される。熱交換体60は、燃焼炉20の横部にあってもよいし、又は、燃焼炉20の上部にあってもよい。熱交換体60は水平に設けてもよいし、排気口44側にいくにしたがって下方にさがるように設けてもよい。熱交換体60が排気口44側にいくにしたがって下がるように設けることで、熱交換体60で生じた凝縮水を排気口44側に確実に導くことができる。
熱交換体60にて、排煙に含まれる水蒸気を凝縮させ、その凝縮で発生した熱を液体又は気体の媒体に移行することで、その凝縮に当たって生じた熱を有効に利用することができ、燃焼効率を高めることができる。一般のボイラでは、排煙中の水蒸気は回収されずに、排気される。また、排煙の熱が熱交換体60を通じて、液体又は気体の熱媒体に移行するため、排煙の温度が低くなる。このため、煙突などの排気路の損傷を抑えることができる。また、水蒸気を凝縮させているため、排煙に含まれる水蒸気が少なくなり、その分、水蒸気による排気路の損傷も抑えることができる。この熱交換体60で排煙の熱を外側の熱媒体に移行させることができるので、排煙の温度を低くすることができる。熱交換体60からなる凝縮部の入り口においてたとえば700℃の排煙を、熱交換体60からなる凝縮部内で200℃以下に急冷させることで、分解したダイオキシン類の再結合を有効に防ぐことができる。
固体燃料の燃焼装置100には、各所の温度を計測する温度計T1〜T8を設けることができる。温度計は、たとえば、熱電対等による温度センサーからなることができる。計測をする温度としては、たとえば、燃焼炉20の天井付近の温度、排煙が燃焼炉20から排出される排出口24付近の温度、第2の排煙燃焼部54付近の温度やバーナなどの温度、触媒の温度などを挙げることができる。
燃焼炉20内の燃焼は「1次燃焼」、第1の排煙燃焼部52における燃焼は「2次燃焼」、第2の排煙燃焼部54における燃焼は「3次燃焼」、第3の排煙燃焼部56における燃焼は「4次燃焼」と定義し、本明細書にて各用語を使用する。
本実施の形態では、本発明者が、誰にとっても使い易い木質系バルク燃料ボイラの自動燃焼制御システムを提供することを目的とし、そのために、装置の内外にたとえば合計8個の温度センサT1〜T8を設置して、固体燃料である木質系バルク燃料をクリーンに燃焼する方法を提供する。
第1の温度センサT1は、たとえば、筺体の天井中央の一部に熱媒体の通路と連通する第1の開口部12を設けた場合において、その熱媒体(たとえば加温用空気)の取り入れ口の温度を測るためのセンサである。第2の温度センサT2は、たとえば、燃焼炉20の側面の空間部である温風通路を覆う筺体との間に設けられた熱交換体60の直下に加熱された熱媒体(たとえば熱せられた空気)を測定するセンサである。第3の温度センサT3は、たとえば、燃焼炉20内の天井中央部の温度を測定するセンサである。第4の温度センサT4は、たとえばバーナの付近の温度を測定するセンサである。第5の温度センサT5は、触媒の直上の温度を測定するためのセンサである。第6の温度センサT6は、温風送風機80の排出口24の温度を測定するセンサである。第7の温度センサT7は、温風を供給すべき温室内の温度を測定するセンサである。第8の温度センサT8は、外気温度計である。第1〜第8の温度センサの温度計が指示する温度とそれぞれの設定値との比較により、前記木質系バルク燃料用燃焼炉20の自動燃焼制御を行うことができる。
全発熱量は、気体供給装置40と排気装置42との関係により決まる給気量の増減により制御される。目標の温風温度と実際の温風温度との乖離に応じて電磁弁の開閉で対応し、燃焼量の最大許容量は、炉室内の天井温度T3、バーナ温度T4、及び、触媒温度T5に基づき自動制御することができる。
本実施の形態においては、燃焼炉20の運転には、燃焼量の制御が大切であり、その発熱量は、一次燃焼から四次燃焼に至る全ての発熱量と熱交換体60における凝縮顕熱と排煙の持つ熱量の総和である。燃焼炉20の燃焼量を把握する手段として、燃焼炉20の1次燃焼熱、反応ダクト50の2次燃焼、補助燃焼用バーナによる3次燃焼、及び、酸化触媒による4次燃焼と熱交換体60を通過する煙道の中で、管状熱交換器の直下に指定する位置で得られる熱風温度T2を燃焼量を表す因子として用いることが出来ることを見出した。
バイオマスを燃焼するボイラの排煙は、煤塵や微粒子のPM2.5、ピッチ類、又は、ダイオキシン類等を含むとしてクリーン化が求められる。本実施の形態においては、1次燃焼(燃焼炉20での燃焼)後に煙道に設けた2次燃焼(第1の排煙燃焼部52)、3次燃焼(第2の排煙燃焼部54)、及び、4次燃焼(第3の排煙燃焼部56)のシステムを通してクリーンな排煙を得る方法を説明する。
木質系バルク燃料を燃焼炉20で燃やす運転を行う場合には、使う立場からも効率のよい使用方法が好ましく、利用形態により、たとえば2通りの方法を使えるようにした。1つの方法は、バッチ式であり、一度に大量の燃料を燃焼炉20一杯に投入し、典型的な例では5日間の運転で燃料を消費した後、炉温を下げて新たな燃料を投入する、1週間サイクルにより燃焼運転を再開する方法である。2つ目の方法は、追い焚き式であり、燃焼運転の途中で燃料の不足に合わせて、希望する量の燃料を小扉32、又は、自動投入口から炉室に投入して燃焼運転し、翌日新たに追い焚き燃料を投入して、一日サイクルで燃焼運転を繰り返すことが出来る方法である。炉底にたまる木灰は半年に一度取り出すことで連続使用が出来る。
3.制御技術
木材及び木質系バルク燃料や炭化物を燃料とする燃焼炉20では(以下では木質バルク燃料ボイラと呼ぶ)、丸太や木株を加工しないで最も廉価な燃料として利用できるのであるが、自然環境で乾燥させた気乾燃料を用いて、バッチ式や追い焚き式のいずれの方法でも使用できて、不完全燃焼による環境汚染を防ぐため、次の基本的な燃焼制御技術が用いられる。
第1に、木質系バルク燃料ボイラの基本構造とそれに付随する燃焼制御方法は、本発明者によって上記の特許文献4で開示されている。しかし、バルク燃料ボイラを手動で運転するには多くの課題があるため、相当の熟練を必要とした。その理由は、クヌギ、スギ、カラマツ、竹等樹種の違い、燃料の太さや形状、含水率(乾燥度)等の違いにより、燃焼温度、燃焼速度、排煙等が影響を受けるため、必要な燃焼制御条件が異なることである。そのため、炉の燃焼制御を手動で行うには相当の熟練が必要であり、誰でも容易に運転できる自動運転制御の機能が求められた。
木質系バルク燃料である薪等に燃え易い燃料から燃えにくいバルク燃料に点火すると、煙を発する火炎によりその燃焼範囲が拡大する。火炎で直接加熱されるところに燃料があると、未燃焼部は燃焼熱を受けて更に火炎が拡大して行くが、当該バルク燃料ボイラの特徴として、燃焼は燃料の上部から下方に向かうので、火炎による燃焼熱は周囲の燃料を加熱し発炎させるが、下方にある燃料の温度の上昇は少なく、少し温度が上がって乾燥が進む程度である。燃焼の始まりは、初めに水素や軽量の炭化水素が発炎を伴って燃焼し、次に炭化部分や炭火を中心にした熾火燃焼が主体になり、最後には木灰が残ることになる。
木質系バルクなどの固体燃料を燃焼炉で燃焼させるには、その燃焼状態の特徴に即した燃焼プロセスとして理解するのが良く、それぞれのプロセスの制御の特徴を以下に示す7種類の燃焼モードに分類し制御することにより、炉の運転に必要な全プロセスに対応できることが判明した。
バルク状木質燃料の燃焼を制御する方法として、(1)燃料への点火が必要な初期モード、(2)燃料が火炎と共に燃える定常モード、(3)燃焼残渣の炭化物が燃える熾火モード、(4)燃焼を停止させて焼け木杭や木灰中に火種を閉じ込めておく休眠モード、(5)休眠状態から燃焼状態に戻す再燃モード、(6)燃料を追加して燃焼時間を延ばす追焚きモード、(7)火を消し止める消火モードに分類し、それぞれのモードに適した燃焼制御方法を設定することで解決される。システムとしては(8)緊急安全対策を自動化してもよい。
初期モードとは、燃料の投入作業、装置の点検作業の後、燃料への点火作業をいう。点火作業は自動又は手動作業のいずれかになるが、簡単のため基本になる手動作業にて説明する。一般に炉内に投入するバルク燃料は丸太、流木、製材端材、木株等、点火し難い燃料が多いので、燃え易い焚付け材を燃料の頂部中心前方に置いて着火することになる。焚付け材としては、焚付け材に消し炭を使うと大変楽で確実に点火できる。消し炭は、炉の運転を最後まで行って完全燃焼させて木灰だけにしないで、少し早めに炉を消火すると大量に得ることが出来る。
点検と点火作業の間に、炉室の大扉を開き、補助バーナを点火し、気体供給装置40(給気ファン)と電磁弁、及び、排気装置42(誘引ファン)を最高能力にて駆動する。異常がなければ、焚付けへの点火をすすめ、反応ダクト50、触媒、熱交換器、誘引ファン、煙突等の予熱をすすめ、15分程度の作業で燃料本体に着火したのを確認した後、大扉を閉じ、自動燃焼する定常モードに移行することが出来る。
初期モードにおける、バーナ点火、気体供給装置40、電磁弁、誘引ファン等の駆動は、プログラマブルコントローラで設定したそれぞれの設定値により稼働させ、燃料点火の確認と大扉を閉じる作業は手動操作となる。
燃料が火炎と共に燃える定常モードでは、燃料への着火後の燃焼状態が、燃料の樹種の違い、乾燥度、形状、サイズ等、燃料の品質により大きく異なるため、全燃焼モードの中で最も自動制御が困難な部分である。
燃料に着火し、点火モードから定常モードに移行したとき、点火の状態により燃焼状態が大きく異なっていることが普通であり、自動制御に移る前には、落ち着いた燃焼状態を実現する必要がある。まず小扉32を開くと、炉内は煙が充満している様子がうかがえ炉圧はマイナスになっており、煙が小扉32から吹き出してこないのが普通である。少し時間が経つと、小扉32から吸入される空気により火炎が大きく発生するのを見ることが出来る。他方、小扉32から煙が炉外へ噴き出してくる状態は、過燃焼状態であり直ちに小扉32を閉じて空気の流入を避け、電磁弁の開度を下げる必要がある。
先ず、(2)定常モードでは、たとえば、気体供給装置40の電磁弁を30%〜60%に閉じるのが良く、より好ましくは40%〜50%に閉じて10分〜60分維持するのが良く、より望ましくは30分〜40分維持することにより、燃料の品質の違いと(1)初期モードでの燃料着火の違いによる燃焼状態を調整する。この初期燃焼状態の調整以後は、排気装置42は40Hz〜50Hzに維持し、炉内圧は−10Pa以下、好ましくは−10Pa未満で−1000Pa以上の範囲内、より好ましくは−10Pa未満で−500Pa以上の範囲内、さらに好ましくは−50〜−500Paの範囲内、さらに好ましくは−150Pa〜−300Paの範囲内と負の炉内圧を維持し、発生する熱風温度T2が設定値を達成するように電磁弁を自動調整するのを特徴とする自動燃焼制御方法を用いる.
燃焼量の調整は熱風温度T2の乖離に対する電磁弁で調整するが、木質燃料ボイラの特徴として、燃焼炉20全体の熱容量が大きい上に燃焼に伴って燃料の温度が高くなり燃料が放出する酸素により自己燃焼が進むため、過燃焼になり易い問題がある。過燃焼では、熱風温度T2、ひいては温風温度T5が設定値より高くなり、触媒温度T4や燃焼炉20内温度T3も高くなる。過燃焼状態になる前に、又は、過燃焼状態を速やかに抑制するためには、給気弁からの酸素の供給を減じるだけでなく、排気装置42による吸引速度を下げて負圧だった炉内圧を高くすることにより、発煙を抑制しながら効果的に火炎の消火を促進できることがわかった。
このように、過燃焼状態から急速に燃焼力を弱めるには、たとえば、電磁弁の急速な開閉動作による発煙を抑制するため緩やかな開閉速度を用い、適切な開閉速度は1分当り1%〜10%とし、より望ましくは4%〜6%とする。同時に排気装置42の排気速度を下げるのがよく、35Hzから、30Hz、25Hz、20Hzとステップ操作で下げてやるのが良い。この場合、排気装置42の回転数を一分当り0.5Hzで減じ最小限度値を約10Hzとすることにより、過剰な燃焼と発煙を抑制するのに適していることがわかった。
定常モードの燃焼を続けると、熱風温度T2の上昇が始まり、通常は少し遅れて温風温度T5も上昇する。温風温度T5の設定値は季節や用途により異なり、20℃〜60℃となるのが普通であり、特に植物や動物の暖房には、最高温度は温風送風機(温風ファン)80やプラスチックダクトの耐熱限界である60℃となるのが普通である。この場合、空気取り入れ口の温度T1と温風出力の温風温度T5との差となる最大の加温能力は略ΔT〜50℃となる。
熱出力は温風温度T5と風量に依存するので、一定の熱出力に対して、高い温風温度を必要とするときは風量を少なくし、低い温風温度では風量を多くすることができる。温風送風機80はインバータ駆動するので機械的には容易に風量を変えることが出来るが、温風送風機80の風量変化は燃焼炉20の燃焼の安定性、つまり熱平衡状態を損なうため、安定した燃焼状態と燃出力を保つには、多くとも1時間に一度の変更に限るのが良い。
しかし、乾燥機としての利用等では、温風温度90〜120℃が用いられることがある。この場合、温風送風機80の耐熱限界には180℃以上のものが使用される。又、空気取り入れ口には使用した高温の帰還温風50℃〜60℃を取り入れ、加温されて最高100℃〜110℃の温風が供給されるが、風量は温風温度50℃の場合に比べ50%以下に減じることになる。
乾燥した燃料(含水率約20%前後)を使用すると、温風温度の加温は燃料に着火後2時間程度で設定値に達することが多い。多湿燃料(含水率が30%〜40%)では、樹種や品質に依るが、燃焼炉20の温度の上昇に時間がかかる場合が多く、熱風温度T2が十分昇温するのに5時間〜10時間を要する場合がある。しかし、一度加温すると、次回以降の再燃モードでの加温は通常1時間程度で昇降温できるようになる。また、多湿燃料では、熱交換器から排出されるドレンの量が日量100リットルを超えることがある。
定常モードでは、軽量な炭化水素中心のガス類が優先的に燃焼し、次に炭化物である炭素類が燃焼する状態に移行する。所謂燃焼途中に見られる炭化物、つまり消し炭様黒炭が燃える熾火モードとなり、発煙は少なくなる。定常モードから熾火モードへ急激に移行するのではなく、その燃焼プロセスに対する時間帯は、略、定常モード1/3、移行モード1/3、熾火モード1/3となる。
熾火モードでは炭素成分の燃焼が主になり水素分の燃焼が少なくなるので、炭酸ガスが発生するが水素成分の2倍の酸素が必要になる。燃焼システムの給気能力として定常モードの約2倍の酸素供給能力が必要であり、定常燃焼モードと同等の熱量を得るために、気体供給装置40の供給量を大幅に増やし、通常1.5倍〜2倍にすることで解決できることがわかった。
熾火モードでは、炭化水素の発生が少ないので煤塵の発生や煙の発生は少ないが、一酸化炭素の濃度が増える。しかし、触媒温度が約500℃以上ならば、排ガスの浄化に補助バーナの点火は必ずしも必要でないことがわかった。また、黒炭が燃焼するため大きな熱量を発生させると燃焼炉20内温度は高くなり、周辺の煤塵やピッチ類も完全燃焼する。
熾火燃焼の途中で燃焼炉20内への給気を止めると、消炭様黒炭が得られる。黒炭を生産する場合に、炭化する燃料を燃焼炉20の底部におき、上部に燃焼させる燃料を置いて燃焼させ、適切な時に消火することで、黒炭や竹炭が得られることがわかった。
燃焼炉20の運転には、連続運転や一時的に休止する場合など、多様な使い方がある。乾燥機や寒冷地の様に24時間の暖房を利用する場合、工場、集会所、事務所等、昼の時間帯に暖房を利用する場合や、施設農業、畜舎、工場等で夜間に暖房を利用する場合等、用途により燃焼を一時休眠させ、必要になれば燃焼を再開する必要がある。つまり、燃焼している燃焼炉20をプログラムに沿って一時中止して休眠させ、その後、希望する時間にプログラムに沿って再度燃焼させることが求められる。
定常燃焼モードや熾火燃焼モードの運転中にプログラムした時間に休眠モードへ移行できるが、休眠モードに移行するには、給気用電磁バルブを1%〜10%に調整することができ、望ましくは3%〜約7%にする。また、排気装置42の速度を給気量相応に低くすることにより、給気量を大幅に減じて燃えさしの焼け木杭の内部、又は、木灰に埋もれた炭火の中に種火を保存することができる。休眠モード移行後バーナの点火は止めるが、ノズル部の汚染を防ぐためバーナファンは駆動する。
種火の量は、電磁弁の開度や燃焼状態に依存するので、再燃時の立ち上がり時間を調節するため等必要に応じて対応する。休眠時の開度が低いと休眠中の燃料の消費が少ないが、再燃時の立ち上がり時間が長くなることがある。
休眠状態から燃焼状態に戻す再燃モードでは、プログラムした時間に、再燃焼させ、燃焼炉20の熱出力を上げることができる。再燃焼モードでは、急速な火力の上昇が求められるが、燃焼運転した後であり燃料は乾燥気味であり着火と昇温は容易になっている。
バッチ運転と異なり、燃料を追加しながら継続的に燃焼炉20を運転する追い焚きモードを利用することが出来る。燃料の消耗が進んで熱量の不足がおこると、給気量を100%まで増しても熱風温度T2が上昇しなくなるので、燃料不足を検知した後、追い焚きモード又は消火モードに移行することになる。燃焼時間を延ばす追焚きモードに移行した後、追い焚き用燃料の追加が出来る。
燃料の追加量は絶え間なく連続的に追加するのが一般の燃焼方法であるが、木質バルク燃料炉では、追加量、つまり追い焚き量を略一日単位にできる特徴がある。追い焚き量は使用する燃料の品質に依るが、使用している燃料から一日分を把握することが出来る。追い焚き量、一般にはバッチ量の1/5〜1/7を小扉32、又は、自動投入口から燃焼炉20内へ投入する。
追い焚きするに当たり、燃焼炉20内の燃焼状態の把握が肝要である。火炎や発煙を伴う通常燃焼モード、又は、熾火燃焼モードのいずれにおいても、燃焼炉20内の火力が高いときに追い焚き燃料を投入すると過燃焼を起こし易いので、休眠モードに約30分置いて火力が鎮まってから追い焚き燃料を投入するよう時間プログラムを組む必要がある。燃料投入後、自動的に通常モードに移行することにより、燃料は適切な速度で燃焼することになる。
燃焼炉20の停止には、すべての燃焼モードにおいて、手動により、又は、プログラムされた時間に消火モードに移行し、電磁弁を使用状態から0%まで順次減じて行くのであるが同時に誘引ファンの回転速度を落とし約10Hzにした後、燃焼炉20内の火を完全に消すことができる。熱容量の大きいボイラでは避けることが出来ないのであるが、加熱された燃焼炉20体を短期に冷却できる事が求められる。
本実施の形態の燃焼装置100では、温風送風機80の稼働により燃焼炉20体全体を冷却することが出来るので、温風送風機80を50Hz〜60Hzで2時間から4時間駆動し、更に望ましくは約3時間駆動することにより、熱風温度T2が略25℃以下になった後(外気温10℃の場合)停止することが出来る。
上に説明した燃焼制御における燃焼モードごとの制御条件とその制御方法は、ファクトリーオートメーションシステム用の電子制御機器を使って実現することが出来る。自動制御用の主要電装品には、高機能プログラマブルコントローラに燃焼制御ソフトプログラムを搭載し、更に、稼働機器と高速で接続するシリアルコミュニケーションユニット、及び、制御機器で使い分けが必要なアナログ出力ユニットや温度センサーユニットを用いる。又、これ等制御システムの操作にはタッチパネルによる運転状況の確認と運転操作状態の表示ができる。
この燃焼制御における特徴点の一例を以下に列挙する。
(i)燃焼量の調整を行う前記給気用電磁弁の開閉に伴って発生する発煙を抑制するため、電磁弁の開閉速度を緩慢にする条件を解明し、適切な開閉速度を使えることである。
排煙量を調整する排気装置42と供給熱量を調整する温風送風機80それぞれの風量又は回転速度は、インバータ制御により発熱量、温風温度、及び、風量とを自動的に調整して対応し、前記ミキシングダンパー14では、電動開閉器にて吸入する外気T1と熱風T2とをミキシングして、目的の温風温度T6の温風を得る方法である。
(ii)各燃焼モードにおける自動運転可能な運転方法と制御条件をあきらかにし、自動制御が可能になる方法を整理した。初期モードでは、第2の排煙燃焼部54における燃焼手段(補助バーナなど)による煙道の予熱、炉室燃料への着火方法、排気装置42の稼働条件とタイミングを明らかにして、燃料着火後に炉室の大扉を閉じたのち、定常モードへの移行に必要な燃焼状態の安定化につながる排気装置42の稼働条件を明らかにする。定常モードでは、燃料の品質の違いと初期モードでの燃料着火状態の違いにより、炉内の燃焼状態が大きく異なるため、自動運転を可能にするために燃焼状態を一定の状態に調整することにより、制御システムを自動的に動かすことを可能にする。それには、気体供給装置40の電磁弁を30%〜60%に閉じるのが良く、より好ましくは40%〜50%に閉じて10分〜60分維持するのが良く、より望ましくは30分〜40分維持することにより、燃料の品質の違いと(1)初期モードでの燃料着火の違いによる燃焼状態を調整する。
(iii)この初期燃焼状態の調整以後は、排気装置42は40Hz〜50Hzに維持し、炉内圧は−10Pa以下、好ましくは−500〜−50Paと負圧にし、より好ましくは−300〜−150Paと負の炉内圧を維持して燃料の低温での燃焼を可能にし、発生する熱風温度T2が設定値を達成するように前記電磁弁を自動調整するのを特徴とする自動燃焼制御方法である。しかし、それでも燃料の品質や炉内の燃料の組み込み状態の違い、又は、その他の因子により、一次燃焼による炉室温度T3の上限温度や四次燃焼の触媒の上限温度T5に達する過剰燃焼がおこる場合がある。
過剰燃焼を抑制するため電磁弁の開度を適切な開閉速度で減じるが、急激な開閉は発煙を高めるので、穏やかな開閉が必要であり、1分当り1〜10%とするのが良く、より望ましくは4〜6%とする緩慢な開閉が求められる。給気弁の開閉で過剰燃焼の抑制が進まない場合、炉内圧を高めて燃焼を抑制するのが効果的であることがわかった。それには、排気装置42の回転数を一分当り0.5Hzで減じ最小限度値を約10Hzとすることにより、過剰燃焼を効果的に抑制することが出来ることがわかったので、炉内圧の制御を並行して利用する。
熾火モードでは、炭化物や炭を主とする燃焼であるため、炭化水素分の燃焼は少なく炭素分の燃焼が主になる為、発煙は少ないが多量の酸素が必要になるので、電磁弁による給気量は前記定常モードの1.5倍から2.5倍の給気能力を持つ必要があった。また、熾火モードでは炭火が燃焼するため炉内温度は高くなる傾向があり、炉室の耐熱性が求められた。その結果、炉室内や煙道に堆積する排煙やピッチ類の汚れは完全燃焼してクリーンになり、熾火モードは炭と同様の燃焼条件となる石炭類の燃焼も可能となった。
休眠モードでは、プログラムされた時間に、前記給気用電磁バルブを1%〜10%に調整するのが良く、望ましくは3%〜約7%にすることにより、給気量を大幅に減じて燃えさしの焼け木杭の内部、又は、木灰に埋もれた炭火の中に種火を保存することができることがわかった。また、この種火は燃料がある間は何日でも維持することが出来、必要に応じて、望む時間に再燃焼することができた。
再燃モードでは、プログラムされた時間に、休眠モードを解除して定常モードに切り替えて、燃料を再燃焼するプロセスであり、種火の量が適切ならば再加熱するのに必要な時間は1〜2時間である。
追い焚きモードでは、燃料の消耗が進んで発熱量が低下したとき、十分な追い焚き燃料を投入して加温能力を維持する方法である。追い焚きモードを安全に稼働するために、先ず制御系を前記休眠モードに切り替え、20分から40分経過後、望ましくは約30分経過後に火力が鎮まった後、小扉32から、又は、自動投入口から追加燃料を炉内に投入した後、再燃モードに切り替えることを特徴とする。
追い焚き量として、一度に投入できる燃料の量には安定な燃焼を維持するために制限が必要である。この場合、火種は投入した追い焚き燃料の下部にあり、大量の燃料を一度に燃焼するのを避けるため10時間分、又は、1日分の燃焼量以下にする必要があり、定常モードで運転できる。
消火モードは、すべての燃焼モードにおいて、手動により、又は、プログラムされた時間に、電磁弁を使用状態から0%に閉じ、更に排気装置42の速度を約10Hzに減じて、炉内の火を完全に消すことができる。しかし、加熱された炉体の冷却を促進するため温風送風機80は50Hz〜60Hzで2時間から4時間駆動するのが良く、更に望ましくは約3時間駆動して炉体の温度が下がってから停止させる。
(iv)木質燃料の燃焼排煙には、炭化水素、炭素系の煤塵、一酸化炭素、ピッチ類、ダイオキシン類、その他の酸性ガス類、及び、臭気等が、高温の水蒸気と共存しており、これ等の排煙成分を酸化して炭酸ガスCOや水蒸気HOに変換する必要がある。それには、排煙を強力に酸化できる耐熱性の触媒材料を探索し、強塩基性のアルカリ土類であるCaO系とMgO系の一部の複合金属酸化物に注目し、その効果を達成出来ることがわかった。
(v)木質系バルクなどの固体燃料を燃やす燃焼炉20において、その特徴を生かした運転、又は、使用の方法を提供するものである。大量の燃料を一度に燃焼炉20一杯に投入し、燃料が消耗した後、炉室の大扉を開いて新たな燃料を投入して燃焼運転を再開するバッチ式による運転方法と、燃焼運転の途中で燃料の消耗で不足した場合、約1日分の燃料を焚口又は自動投入口から投入して前記追い焚きモードにて燃焼運転し、翌日新たに1日分を投入して燃焼運転を繰り返すことが出来る追い焚き方式による方法を利用でき、炉底にたまる木灰は長期の使用後に取り出せばよく、連続使用が出来る。
4.作用効果
(i)身近に利用する、天然ガス、都市ガス、プロパン等のガス燃料、ガソリン、軽油、重油等の液体燃料、又は、バイオマス、及び、石炭等のうち、固体燃料のバイオマスと石炭の燃焼で排煙をクリーンにするのは容易ではない。近年、木質バイオマスボイラーとして、ペレットボイラやチップボイラの利用が進んでいる一方、いずれも煤塵発生量やダイオキシン対策などは不十分である。
本実施の形態によれば、固体燃料の低温燃焼方法と排煙浄化方法によりクリーンな排煙が得られるようになった。本実施の形態によれば、煤塵量は代表的なペレットボイラの約50分の1であり、PM2.5対策に大きく貢献することができる。バイオマス燃焼では、度々ダイオキシン類の発生を無視できない場合があるが、本実施の形態では、ダイオキシン類の発生を抑制することができる。
(ii)本実施の形態によれば、天然乾燥した丸太を燃やすことができる。このため、燃料を燃やすために加工するエネルギーを必要としない。一方、ペレットの場合、丸太からペレットにするまでに相当のエネルギーが必要である。
(iii)本実施の形態によれば、燃料が木質燃料の場合、含水率が40%以下、好ましくは30%以下のものであれば燃やすことができる。なお、切ったばかりの含水率が高い木であっても、燃料の一部として使用するのであれば、燃焼させることができる。一般に、薪ボイラーの薪の含水率は20%程度、ペレットは10%程度と言われている。
(iv)本実施の形態によれば、排煙内の水蒸気を凝縮し、その凝縮で発生する凝縮熱を利用するため、燃焼効率が90%以上にすることができる。
(v)一般的に、燃焼炉20から排煙を排出する排気ファンがあるが、その排気ファンを用いて燃焼炉20内の圧力を負圧に制御し低い燃焼温度を利用するという発想はない。
ペレットや薪を燃やす燃焼装置100において、空気の入りにより燃焼を制御するという発想はあるが、徐々に燃やすという発想はない。本実施の形態によれば、固体燃料を徐々に燃やすことができるように、燃焼制御をすることができる。
(vi)白金系の触媒を用いていないため、触媒部において高熱にすることができる。白金系の触媒は、300℃以上になると白金が酸化または気化してしまうため、300℃以上で長期的に使用することが難しい。しかし、本実施の形態によれば、酸化金属のセラミックス触媒であるため、400〜1000℃でも長期間にわたって容易に使うことができる。
(vii)本実施の形態によれば、燃焼炉20内で発生した不完全燃焼の排煙をダクト内で確実に完全燃焼させることができ、煤塵を少なくすることができる。また、不完全燃焼によるバックファイアの問題なども発生し難い。このため、防爆弁をつける必要が認められなかった。
(viii)本実施の形態は、木質系バルク燃料や炭化物燃料を最も廉価な状態で、当
該ボイラに用いて高い熱効率で燃焼することのできる炉に、誰でも利用できる自動燃焼制御方法を適用することができる。これにより、煤塵やダイオキシン類の発生を抑制できるクリーンな燃焼システムの利用が容易になり、バッチ式、又は、追い焚き方式による運転を容易に使用することが出来るという利点があり、化石燃料を利用するオイル系燃料ボイラやガス燃料ボイラを代替する熱エネルギー源としての利用が見込まれる。
最も廉価な木質系バルク状燃料の有効利用が出来るため、木質系燃料の需給が活発になり、森林の管理・再生や雇用の推進に貢献し、排煙による大気の汚染を抑制し環境の浄化とグリーンエネルギーとして地球温暖化の防止に貢献することができる。又、当該ボイラは、工場、乾燥機、施設園芸、畜産、集会施設の暖房等、広い分野での利用が期待できる。
(ix)本実施の形態によれば、固体燃料である木質系バルク燃料や炭化物及び石炭類を含む燃料を最も廉価な方法で高い熱効率で燃焼することのできる燃焼炉20を、誰でも使用することが出来るという効果を有する。あらゆる木質系バルク状燃料の有効利用が出来、環境の浄化とグリーンエネルギーとして地球温暖化の防止に貢献することが出来、さらに、燃料の需給が活性化され森林資源の管理や雇用の推進等にも適している。
5.気体加熱装置
気体加熱装置200は、実施の形態に係る固体燃料の燃焼装置100を利用して実現することができる。たとえば、筺体の天井中央の一部に温風路と連通する第1の開口部12から外気を取り入れるか、又は、循環空気を、燃焼炉20外壁、熱交換体60、及び、反応ダクト50外壁と熱交換して熱風を発生させることができる。その熱風を温風送風機80に吸引できるように通路を設け、温風送風機80に吸引される熱風の温度を所定の温風温度にするため、筺体10の一部に温風路と連通する第2の開口部14を開閉して外気を取り入れるミキシング機構により所定の温風温度にすることができる。これにより、所定の温度の温風を温風送風機80から排出できるように構成することができる。なお、第1の開口部12から空気が取り入れられた場合に、反応ダクト50にその空気が接触するように、筐体10と燃焼炉20との間における両側において、案内板(図示せず)を設けることができる。
気体加熱装置200は、燃焼炉20内圧と煙道内の排煙流速を調整する気体供給装置40及び排気装置42、外気を取り入れて温風温度を調節するミキシングダンパー14、及び、温風供給量を調節する温風送風機(温風ファンなど)80が使われる。温風送風機80はインバータ制御されることができる。ミキシングダンパー14は低い温度の外気を取り入れるための電動開閉器またはファン等を利用することができる。
より具体的には、気体加熱装置200では、たとえば燃焼炉20の上から吸入される外気は、炉の天井と炉頂外壁の間に設けたダンパにより二分されることができる。外気の一部は燃焼炉20の外周部と熱交換体60を経て加温されて熱風になり、他の一部は反応ダクト50の外周部と熱交換して加温され熱風になる。当該熱風は、外気取入れ用ダンパ14からの外気と混合されて適切な温度の温風となり、温風送風機80により送り出される。
この気体加熱装置200は、環境対策に適切な燃焼システムとして、負圧の炉室内で燃料が低温で燃焼する1次燃焼と、排煙を浄化する2次燃焼、補助燃料による3次燃焼、及び、強力な酸化触媒による4次燃焼を経て、クリーンな燃焼システムが得られている。
6.液体加熱装置
本実施の形態に係る固体燃料の燃焼装置100は、液体加熱装置300にも適用することができる。筺体10の第1の開口部12などから液体(水など)を取り入れ、筐体10内に液体を循環させるようにして、燃焼炉20外壁、熱交換体60、及び、反応ダクト50外壁などと熱交換して液体を加熱させることができる。液体は、管路を通して筐体10内に導入することができるが、第1の開口部12や、その管路を筐体10内に入れるための入口を筐体10の上面または側面に設けてもよい。その加熱された液体をポンプなどで外部に排出し、加熱された液体を何らかの目的に使用してもよいし、または、放熱部により放熱し、熱媒体など何らかの物の加熱に使用してもよい。
一具体例として、図6に示すように、燃焼炉20の上にタンク310を設け、燃焼炉の熱が直接タンク内の液体を加熱することができ、さらに、そのタンク310内に排煙が通過する熱交換体60を設けることができ、排煙の熱は、熱交換体60により、液体である熱媒体を加熱することができる。そのタンク310にシスターン320を接続することができる。水の温度が高くなりタンク310内の液体の圧力が高まると、タンク310内の圧力が常圧になるまで、シスターン320に液体が移行する。液体の圧力が常圧より下回ると、シスターン320から液体がタンク310に戻り、タンク310内の水が常圧になるまで供給される。また、必要に応じて、タンク310から加温した液体を排出したり、貯湯タンクに液体を供給してもよい。
7.発電システム
図7を参照しながら、実施の形態に係る固体燃料の燃焼装置100を利用した発電システム400を説明する。発電システム400において、熱交換体60が蒸発器410を通過するように、排煙の煙道が構成されている。蒸発器410内には、液体の熱媒体(たとえば水)が貯留している。排煙の熱は、熱交換体60により、液体の熱媒体に移る。蒸発器410は、たとえば、燃焼炉20の上に設けることができる。これにより、燃焼炉20の熱を燃焼炉20の上面を通じて蒸発器410内の液体の熱媒体に熱を移行させることができる。
排煙の熱が熱交換体60より液体の熱媒体に移行することで、液体の熱媒体が蒸発することになる。その気体の熱媒体をタービンとしての膨張機420に供給し、気体の熱媒体のエネルギーを膨張機420にて回転エネルギーに変換し、発電機430により発電させることができる。膨張機420から排出された熱媒体は、凝縮器440にて液体に凝縮し、凝縮された液体の熱媒体は蒸発器60内に戻る。この膨張機420としては、たとえば、スクリュータービンと発電機とを一軸一体構造とした半密閉スクリュータービン方式の発電機を挙げることができる。
8.冷房システム
図8を参照しながら、実施の形態に係る固体燃料の燃焼装置100を利用した冷房システム500を説明する。冷房システム500において、熱交換体60が再生器510内を通過するように、排煙の煙道が構成されている。再生器510内には、液体の熱媒体(たとえば水)が貯留している。排煙の熱は、熱交換体60により、液体の熱媒体に移すことができる。再生器510は、たとえば、燃焼炉20の上に設けることができる。これにより、燃焼炉20の熱を燃焼炉20の上面を通じて再生器510内の液に移行させることができる。
再生器510において、第1の熱媒体(たとえば水)は、第1の熱媒体を吸収する溶液(たとえば臭化リチウム水溶液)に取り込まれた状態で存在している。熱交換体60により排煙の熱が第1の熱媒体(たとえば水)に移行し、第1の熱媒体が蒸発する。第1の熱媒体は、凝縮器520にて凝縮する。凝縮した第1の熱媒体は、減圧された蒸発器530に供給され、蒸発器530にて蒸発する。その際に、第1の熱媒体は、熱交換器にて室内機との間で循環する第2の熱媒体から蒸発熱を吸収する。冷却された第2の熱媒体は、室内機540へ供給される。第1の熱媒体は、吸収器550にて第1の熱媒体を吸収する溶液に吸収される。第2の熱媒体を吸収する溶液は、ポンプなどにより再生器510に戻る。
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例に係る固体燃料の燃焼装置として、燃焼装置Aと燃焼装置Bの2機種を製造し、自動燃焼制御機能の検証を行った。
燃焼制御で重要な要素は、燃焼炉体構造と燃焼機能、及び、制御機能であり、表2に示す燃焼炉の大きさ、気体供給装置と排気装置の能力、及び、温風送風機である。
Figure 0006277475
燃焼炉のサイズは、バッチ式で燃料を投入できる量を直接制限することになるので、用途に応じて重要な因子になっている。燃焼装置Aの燃焼炉では2m、燃焼装置Bの燃焼炉では4mの燃焼炉に燃料を投入するが、投入できる燃料の量は燃料の形状により大きく異なってくる。大小の丸太を隙間が少なくなるように投入しても、Aでは多くても1t、Bでは2t程度になる。
これ等の燃料を1週間で燃焼すると、それぞれ一日当り140kg、又は、280kgの消費となる。これ等の燃料による発熱量は、含水率に相当する水分を加熱蒸発する熱量を減じる低位発熱量と、乾燥した絶乾燃料による高位発熱量では大きな違いがあるが、加工しない木材では北洋材と南洋材のいずれの高位発熱量は同じとされており、5,000kcal/kgである。従って、上記燃焼装置のAとBでは、それぞれ1日当り790kWh、及び、1580kWhの熱エネルギーを発生する。発熱量は具体的に把握するのが難しいが、燃焼炉の燃焼運転を1日に10時間とすれば、1時間当たりの発熱量は79kWh/h、又は、158kWh/hに相当する。
燃焼、つまり、発熱量は気体供給装置による空気の量と密接に関係していて、送風能力はファンの構造や性能に依存するが、関連技術が円熟している現在では、その機能は略消費電力の大きさに比例するといえる。表2には、ファン類の機能を簡潔に示す方法として消費電力を示してある。
燃焼炉内では1次燃焼による不完全燃焼による発煙が有り、2次燃焼により未燃焼成分を更に燃焼させるが、補助バーナにより更に燃焼を促進している。補助バーナには化石燃料の一種の灯油、又は、ガス類等を使用できる。又、簡便な方法として電気ヒータを使用することもできるが、費用対効果の結果として灯油を使うことができる。1時間当たりの灯油使用料として1.5Lのバーナを用いたが、発熱量は15.3kWh/hに相当する。従って燃焼炉の発熱量は木質燃料の発熱量とバーナの発熱量の和になる為、燃焼装置Aの燃焼炉と燃焼装置Bの燃焼炉では、それぞれ全発熱量の18.8%と10.4%がバーナ熱量になっている。
本実施例では、燃焼装置Aの燃焼炉と燃焼装置Bの燃焼炉を用い、上記の実施の形態で説明したように、(1)燃料への点火が必要な初期モード、(2)燃料が火炎と共に燃える定常モード、(3)燃焼残渣の炭化物が燃える熾火モード、(4)燃焼を停止させて焼け木杭や木灰中に火種を保持しておく休眠モード、(5)休眠状態から燃焼状態に戻す再燃モード、(6)燃料を燃焼炉内に追加して燃焼時間を延ばす追焚きモード、(7)火を消し止める消火モードに分類し、明らかにした燃焼モードごとの制御条件をファクトリーオートメーションシステム用の電子制御機器を使って実現することが出来た。
つまり、各モードに適した温度計出力に対する設定値に基づいて、気体供給装置の電磁弁により給気量を調節し、排気装置の回転数を変えて燃焼炉内圧と煙道の流量を調節し、前記ミキシングダンパーの開度を調整し、温風送風機による温風供給量を調節することにより、木質系バルクなどの固体燃料用の燃焼炉の自動燃焼運転を行った。
自動制御用の主要電装品には、プログラマブルコントローラPLCに燃焼モードごとの制御ソフトプログラムを搭載し、更に、稼働機器と高速で接続するシリアルコミュニケーションユニット、及び、制御機器で使い分けが必要なアナログ出力ユニットや温度センサーユニット等を用いた。又、これ等制御システムの操作にはタッチパネルによる運転状況の確認と運転操作状態の表示を行った。
プログラマブルコントロールユニットPLCとパソコンPCの接続はFA通信ソフトウエア―を利用することで、パソコンにて、データ処理、データ表示、WEBとの通信接続を容易にすることが出来た。又、通信接続を通したコントロールプログラムの修正や警報の送信を可能にした。
気体加熱装置の試験施設の煙突から排出される排煙の排煙分析を行い、表3に示す分析結果を得た。
Figure 0006277475
排煙分析結果から、排ガスの平均温度は70℃であり、煤塵発生量やダイオキシン類の排出は排出基準量に比べ1/10以下となっていることが示された。
標準の木質バイオマスボイラ(表2の燃焼装置Bの燃焼炉)では、バッチ当り薪燃料2トンを消費するので、平均960万kcal/batchの熱量を発生する。オイル燃料に換算すると1056リットルの熱量に相当する。1月に4バッチの燃料を消費すると、当該ボイラは1か月に4.2mの石油燃料を代替できる。また、補助燃料用のオイル熱量は10%以下なので、本発明に基づく温風発生機により、石油熱エネルギーの90%以上を木質バルク燃料で代替することができる。
木質バイオマス燃料として使用する建築端材、製材所端材、間伐材、農業廃材、建築廃材、炭、炭化物、石炭等のコストはその品質や供給状態により大きな巾が見込まれるが、平均¥5/kgである。オイル燃料として軽油、A重油、廃油、バイオ系オイル等コストの巾は広いが、今後¥50〜100/kg/リットルと見込まれるので、燃料費はオイル系の5%〜10%に圧縮される見通しであり経済効果は格段に高くなる。
また、木質バイオマスボイラは、循環型の炭酸ガスゼロエミッションシステムであり、化石燃料とその装置を代替すると、補助燃料としての化石燃料分を考慮して、排出する温暖化ガスの90%以上を削減することが出来る。この、温暖化ガスの排出権は、更に燃料経費の削減に利用することが出来、本発明になる木質系バルク燃料ボイラの燃費は、今後、限りなく低く抑えられることになる。
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、燃焼炉の形状や主燃料あるは煙道路や温風路の配置あるいは開閉扉のパッキン構造といった燃焼炉としての基本的構造などは適宜選定することができる。また、上記の実施の形態では木質系バルク状可燃物の燃焼例について説明したが、他の固体燃料の燃焼にも本実施の形態は適用することができる。
本発明は、木材、炭化物、あるいは、バイオ系バルク状可燃物などの固体燃料の燃焼装置として広く適用することができる。
10 筐体
12 第1の開口部
14 第2の開口部
16 燃料追加口
20 燃焼炉
22 燃料供給口
24 排出口
26 内部煙道
28 仕切板
30 開閉扉
32 小扉
34 ハンドル
36 封止部材
38 ヒンジ
40 気体供給装置
42 排気装置
44 排気口
46 制御装置
50 反応ダクト
52 第1の排煙燃焼部
54 第2の排煙燃焼部
56 第3の排煙燃焼部
60 熱交換体
62 フィン
70 酸素供給路
72 導通孔
74 酸素供給路の先端
80 温風送風機
100 燃焼装置
200 気体加熱装置
300 液体加熱装置
310 タンク
320 シスターン
330 放熱部
400 発電システム
410 蒸発器
420 膨張機
430 発電機
440 凝縮器
500 冷房システム
510 再生器
520 凝縮器
530 蒸発器
540 室内機
550 吸収器

Claims (7)

  1. 固体燃料を燃焼させるための燃焼炉と、
    前記燃焼炉の排出口から排出された排煙を排気するための排気装置と、
    前記燃焼炉に対して酸素を含む気体を供給する気体供給装置と、
    前記気体供給装置および前記排気装置を連動して制御し、前記燃焼炉の炉圧を制御する制御部と、
    前記燃焼炉の排出口と前記排気装置との間に設けられた排煙を排気するための排気路と、
    前記排気路に接続された、酸素を含む気体を供給するための酸素供給路と、
    前記排気路に設けられた着火部とを含み、
    前記排煙は、前記酸素供給路から供給された酸素を含む気体と混合され、前記着火部により誘引された火により燃焼され、
    前記酸素供給路は、前記気体供給装置に接続され、
    前記燃焼炉内における前記酸素供給路に導通孔が設けられ、
    前記導通孔を通じて、前記酸素供給路内の酸素を含む気体の一部が前記燃焼炉に供給されると共に、前記燃焼炉に供給されなかった酸素を含む気体は、前記酸素供給路を通過し、前記排煙と混合される固体燃料の燃焼装置。
  2. 請求項1において、
    前記酸素供給路は、前記燃焼炉内の上部を通り、
    前記酸素供給路の導通孔は、前記燃焼炉内の上部に配置された酸素供給路に設けられている固体燃焼の燃焼装置。
  3. 請求項1または2に記載の固体燃料の燃焼装置で発生した熱によって、気体を加熱する気体加熱装置。
  4. 請求項1または2に記載の固体燃料の燃焼装置で発生した熱によって、液体を加熱する液体加熱装置。
  5. 制御部が燃焼炉に対して酸素を含む気体を供給する気体供給装置および前記燃焼炉の排出口から排出された排煙を排気するための排気装置を連動して制御し、前記燃焼炉の炉圧を制御して、前記燃焼炉において固体燃料を燃焼させる工程と、
    前記排気装置により、前記燃焼炉で生じた排煙を排出口から排出する工程と、
    前記燃焼炉の排出口と前記排気装置との間に設けられた排煙を排気するための排気路に、酸素供給路で酸素を含む気体を供給し、前記酸素を含む気体と前記排煙とを混合し、前記排気路に設けられた着火部により誘引された火により、前記排煙を燃焼する工程とを含み、
    前記酸素供給路は、前記気体供給装置に接続され、
    前記燃焼炉内における前記酸素供給路に導通孔が設けられ、
    前記導通孔を通じて、前記酸素供給路内の酸素を含む気体の一部が前記燃焼炉に供給されると共に、前記燃焼炉に供給されなかった酸素を含む気体は、前記酸素供給路を通過し、前記排煙と混合される、固体燃料の燃焼方法。
  6. 請求項1または2に記載の固体燃料の燃焼装置で発生した熱を用いて液体の熱媒体を気体に蒸発させるための蒸発器と、前記蒸発器において発生した気体のエネルギーを回転運動に変換するためのタービンとを含む、発電システム。
  7. 請求項1または2に記載の固体燃料の燃焼装置で発生した熱を用いて液体の熱媒体を気体に蒸発させるための蒸発器と、前記蒸発器において発生した気体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器において凝縮した熱媒体を蒸発させ、冷媒から熱エネルギーを吸収するための蒸発器とを含む、冷房システム。

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