JP6277141B2 - 分岐を有する長距離光ファイバの試験方法、及び装置 - Google Patents

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Description

この発明は、分岐を有する長距離光ファイバの試験方法、及び装置に関する。
光ファイバの破断や故障等による損失増加を測定するための手法として、光時間領域反射測定法(OTDR:Optical Time Domain Reflectometry)や、光周波数領域反射測定法(OFDR:Optical Frequency Domain Reflectometry)がよく知られている。
これらの手法は、いずれも試験対象の光ファイバの一端から試験光を入力し、光ファイバ内部でレイリー散乱された光のうち、後方に散乱される光(以下、レイリー後方散乱光)の振幅を、距離の関数として観測する。故障等によって光ファイバの損失が増加し、損失変動が生じた場合、OTDRやOFDRで観測される後方レイリー散乱光の振幅が減少するため、光ファイバ内の損失の分布を測定することで、故障地点を特定できる。
しかしながら、光ファイバが分岐を有する場合、分岐下部の光ファイバの全ての後方レイリー散乱光が重なって観測されるため、故障が生じた光ファイバを特定することが不可能である。
このような問題を解決するため、特許文献1には、分岐を有する光ファイバのレイリー散乱光の複素振幅を個々の光ファイバについて独立に測定せずに、分岐部以降(以下、分岐下部という。)の光ファイバにおける損失増加等のモニタリングを可能とする手法が提案されている。以下に手法の概要を説明する。
従来の手法は、図5に示すように、N(Nは複数)本の分岐を有する光ファイバ10−1〜10−Nの遠端に全反射フィルタ30を備え、光ファイバの分岐部20から個々の光ファイバ10−1〜10−Nの遠端までの距離が各々異なる分岐を有する光ファイバに適用される。
事前のステップでは、モニタ装置50は、分岐部20からN本に分岐された状態の光ファイバ10−1〜10−Nのレイリー散乱光複素振幅ftotal(z)を分岐部20からの距離zの関数として測定し、測定したデータを保管しておく。測定されるレイリー散乱光複素振幅ftotal(z)は、N本に分岐された光ファイバ10−1〜10−Nのレイリー散乱光複素振幅の和であり、次式で記述される。
Figure 0006277141
ここで、f(z)は、分岐下部のn番目の光ファイバ10−nのレイリー散乱光複素振幅である。
故障発生時のステップでは、故障発生時、即ち分岐下部のある特定の光ファイバに損失変動が生じた場合、事前のステップと同様に、分岐部20からN本に分岐された状態の光ファイバ10−1〜10−Nのレイリー散乱光複素振幅s(z)を分岐部からの距離zの関数として測定する。
計算ステップでは、k番目の光ファイバ10−kの全反射フィルタ30までの距離をLとした時、以上の測定を基に、<s(z)f total(2L−z)>z=Zを計算することにより、k番目の光ファイバ10−kにおける故障発生時に生じた損失増加分を算出する。
ここで、<>z=Zは、Z近傍における空間的な平均操作を表し、空間的な相関を求めることに相当する。また、*は、位相共役を意味する。<s(z)f total(2L−z)>z=Zの平均操作は、測定の空間分解能に対して十分に長い範囲にわたって行う。
以上の測定並びに計算ステップを経て、k番目の光ファイバ10−kにおける故障発生時に生じた損失増加分を正しく導くことができることを理解するには、以下の知見を必要とする。
レイリー散乱光複素振幅ftotal(z)は、各光ファイバ10−1〜10−Nについて、全反射フィルタ30によって折り返されたレイリー散乱光複素振幅を含んで測定される。したがって、n番目の光ファイバ10−nの全反射フィルタ30までの距離をLとすると、f(z)は、見かけ上の距離2Lの波形として測定される。
0<z≦Lの範囲では、f(z)は、次式のように記述される。
Figure 0006277141
ここで、α(z)は、n番目の光ファイバ10−kの距離zに対する損失分布である。σ(z)は、光ファイバを構成するガラスの屈折率揺らぎ分布から生じる振幅揺らぎを示す。
また、L<z≦2Lの範囲では、全反射フィルタ30で反射されて反対向きに進行する試験光による散乱光振幅が測定される。したがって、σ(z)は、z=Lを中心に鏡像対称となり、次式の関係が成り立つ。
Figure 0006277141
式(3)の関係から、L<z≦2Lの範囲におけるf(z)は、次式のように記述される。
Figure 0006277141
また、k番目の光ファイバ10−kに故障が発生し、その損失がΔα(z)だけ変動(増加)したとすると、測定されるトータルのレイリー散乱光複素振幅s(z)は、次式で記述される。
Figure 0006277141
以上のように測定されたs(z)と、保管されたftotal(z)から<s(z)f total(2L−z)>z=Zを計算することにより、損失変動Δα(z)を算出する。具体的には、ftotal(z)をz=Lで空間反転させた波形ftotal(2L−z)と、s(z)との相互相関を計算する。ftotal(2L−z)は、次式のように記述される。
Figure 0006277141
ここで、γ(z)は、k番目の光ファイバ10−k以外からの寄与であり、f(z)の関数である。
<s(z)f total(2L−z)>z=Zは、次式のように計算する。
Figure 0006277141
ここで、σ(z)の生じる要因であるガラスの屈折率密度揺らぎ分布は、光ファイバによって不規則に分布しているため、σ(z)の波形は、光ファイバによって異なる。したがって、σ(z)の相互相関については、以下の直交関係が成立する。
Figure 0006277141
ここで、δijは、クロネッカーのデルタであり、i=jの時に1で、i≠jの時に0である。式(8)の関係から、
Figure 0006277141
であるから、式(7)は、第1項以外全て0となる。また、exp[−α(L)]は、定数であり、exp[−α(z)−α(2L−k)]も損失の対称性から定数となる。したがって、結局式(7)は、Aを定数として
Figure 0006277141
となる。Δα(z)は、k番目の光ファイバ10−kにおける損失変動を表しているから、同様にして<s(z)f total(2L−z)>z=Z、<s(z)f total(2L−z)>z=Z、…、<s(z)f total(2L−z)>z=Zを計算することで、分岐下部の個別の光ファイバ10−1〜10−Nについて、損失変動を算出できる。
特許第4469318号公報
D.K. Gifford et al., Proc. Of SPIE, Vol. 6770, 67700F, 2007.
しかしながら、本発明者の検討によれば、従来の手法をPON(Passive Optical Network)のような実際の光通信設備に適用することは、非常に困難である。
PONは、光通信設備の形態の一つであり、分岐を有する光ファイバの応用例である。PONにおいて、分岐下部の光ファイバが収容されるケーブルは、屋外に敷設されている場合が多く、外部の天候等の影響によって光ファイバの温度及び歪み状態は常に変化していることが想定される。また、試験装置が設置される局舎から光ファイバ遠端までの距離は、10km以上に及ぶ場合もある。
従来の手法を適用するためには、式(8)に示すσ(z)の直交関係を利用するため、故障後に測定されるσ(z)は、事前に測定して保管されているσ(z)と同じ波形である必要がある。しかしながら、σ(z)は、光ファイバ中の温度及び歪み状態が変化することで波形が変化するため、式(8)の直交関係が成立しなくなってしまう(非特許文献1参照)。すなわち、従来の試験方法は、温度及び歪み状態を考慮することができない、という不都合がある。
また、光ファイバの損失増加を測定するために用いられる測定手段であるOFDRは、測定距離が長距離になるほど空間分解能が劣化し、σ(z)が再現性良く測定できない。σ(z)を再現性良く得られる距離は、使用する光源のコヒーレンス長に依存し、現在のOFDRの性能では数kmが限界である。すなわち、従来の試験方法は、長距離化に伴う空間分解能劣化の影響を考慮することができない。
すなわち、従来の試験方法は、長距離化に伴う空間分解能劣化の影響を抑え、温度及び歪み状態を考慮することができない。
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、長距離化に伴う空間分解能劣化の影響を抑え、温度及び歪み状態を考慮しつつ、分岐下部の個別の光ファイバについて損失変動をモニタリングできるようにした分岐を有する長距離光ファイバの試験方法、及び装置を提供することにある。
上記目的を達成するためにこの発明の第1の観点は、以下のような構成要素を備える。すなわち、N(Nは複数)本に分岐する分岐部を有する光ファイバの遠端に、試験光を全反射する全反射フィルタを備え、上記光ファイバの分岐部から個々の光ファイバの遠端に備えられた全反射フィルタまでの距離が各々異なる光ファイバの試験方法である。第1の測定ステップは、参照振幅データ測定時に、参照振幅データとして、N本の光ファイバからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅ftotal(z)を、上記分岐部からの距離zの関数として測定する。保管ステップは、上記測定された参照振幅データを保管する。第2の測定ステップは、特定の光ファイバに損失変動が生じる故障時に、故障時振幅データとして、N本の光ファイバからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅s(z)を、上記距離zの関数として測定する。第1の算出ステップは、上記保管された参照振幅データと、上記測定された故障時振幅データとに基づき、光ファイバの所定の区間z<z<zにおける、上記参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、上記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとをそれぞれ算出する。第2の算出ステップは、上記算出された参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、相関値が最大値を取るように周波数方向にシフトされた上記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとの相互相関を計算することにより、k番目の光ファイバの区間z<z<zに生じた損失変動を算出するようにしたものである。
また、この発明の第1の観点は、以下のような態様を備えることを特徴とする。
第1の態様は、上記k番目の光ファイバの全反射フィルタまでの距離をLとした時に、上記参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルを区間2L−z<z<2L−zの上記参照振幅データから算出し、上記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルを区間z<z<zの上記故障時振幅データから算出するようにしたものである。
第2の態様は、上記所定の区間の長さz−zにおいて、上記測定された各レイリー散乱光複素振幅の空間分解能よりも十分長くなるようにしたものである。
第3の態様は、上記相関値が最大値を取るようにシフトされた周波数のシフト量は、上記k番目の光ファイバの温度及び歪みの変化量と対応するようにしたものである。
この発明の第1の観点によれば、試験装置は、故障前と故障後のレイリー散乱光複素振幅をそれぞれ参照振幅データ、及び故障時振幅データとして測定し、これらに基づき光ファイバの所定の区間z<z<zにおけるレイリー散乱光パワースペクトルを算出する。算出したレイリー散乱光パワースペクトルに基づき、相関が最大値を取るように、故障時のレイリー散乱光パワースペクトルを周波数方向にシフトさせ、相互相関を計算することで、損失変動を算出する。このため、相互相関の相関値が最大値を取る周波数方向のシフト量から、光ファイバの故障前と故障後における温度及び歪みの変化量を考慮することができる。また、レイリー散乱光パワースペクトルを所定の区間の長さで切出して算出することにより、長距離に及ぶ光ファイバにおいても、空間分解能の劣化の影響を抑えることができる。
第1の態様によれば、試験装置は、参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルを区間2L−z<z<2L−zの参照振幅データから算出し、故障時のレイリー散乱光パワースペクトルを区間z<z<zの故障時振幅データから算出する。このため、相互相関の相関値が最大値を取るような周波数方向のシフト量以外は、相関値が0となるような相互相関を計算できる。
第2の態様によれば、試験装置は、レイリー散乱光パワースペクトルを算出する際にレイリー散乱光複素振幅を切出す区間の長さz−zを、レイリー散乱光複素振幅の空間分解能よりも十分長くして測定する。レイリー散乱光パワースペクトルの波形は、この区間における散乱光の足し合わせの結果生じるため、レイリー散乱光複素振幅測定の空間分解能劣化の影響を軽減し、レイリー散乱光パワースペクトルの波形の再現性を保つことができる。したがって、長距離に及ぶ光ファイバに対しても損失変動を算出する試験方法を適用することができる。
第3の態様によれば、試験装置は、相関値が最大値を取るようにシフトされた周波数のシフト量が、光ファイバの温度及び歪みの変化量と対応している。これにより、レイリー散乱光パワースペクトルが光ファイバの温度及び歪みの状態変化に対して周波数方向にシフトすることから、波形のシフトを追随するように相互計算を計算することで、温度及び歪み変化のある環境下にも適用することができる。
すなわち、この発明によれば、長距離化に伴う空間分解能劣化の影響を抑え、温度及び歪み状態を考慮しつつ、分岐下部の個別の光ファイバについて損失変動をモニタリングできるようにした分岐を有する長距離光ファイバの試験方法、及び装置を提供することができる。
この発明の一実施形態に係る試験装置の機能構成の一例を示す模式図である。 同実施形態におけるモニタ装置の機能構成の一例を示すブロック図である。 同実施形態における試験装置の動作の一例を示すフローチャートである。 同実施形態におけるレイリー散乱光パワースペクトルの一例を示す模式図である。 従来の試験装置の機能構成の一例を示す模式図である。
以下、図面を参照してこの発明に関わる実施形態を説明する。
[一実施形態]
図1は、この発明の一実施形態に係る試験装置の機能構成を示す模式図であり、図2は、同実施形態におけるモニタ装置の機能構成を示すブロック図である。試験装置1は、光ファイバ10−0〜10−N、分岐部20、全反射フィルタ30、及びモニタ装置40を備えている。すなわち、試験装置1は、分岐部20からN(Nは複数)本に分岐された個々の光ファイバ10−1〜10−Nの遠端に、試験光を全反射する全反射フィルタ30を備え、上記分岐部20から個々の光ファイバ10−1〜10−Nの遠端に備えられた全反射フィルタ30までの距離が各々異なる光ファイバ10−1〜10−Nを試験するための装置である。なお、以下の説明において、「複数本」は、「N本」と読み替えてもよく、「複数本に分岐された」は、「N本に分岐された」、又は「N分岐された」と読み替えてもよい。ここで、Nは、2以上の任意の整数である。
光ファイバ10−0は、一端をモニタ装置40に接続され、他端を分岐部20に接続されている。分岐部20に接続された光ファイバ10−0の一端は、分岐部20でN本の光ファイバ10−1〜10−Nに分岐される。
光ファイバ10−1〜10−Nは、光ファイバ10−0が分岐部20においてN本に分岐された、分岐部20以降の光ファイバである。なお、光ファイバ10−kは、1≦k≦Nにおける任意の光ファイバである。光ファイバ10−1〜10−Nは、遠端に試験光を全反射する全反射フィルタ30を備えている。なお、以下の説明において、「分岐部20以降」は、「分岐下部」と読み替えてもよい。
なお、個々の光ファイバ10−1〜10−Nにおける、分岐部20から個々の光ファイバ10−1〜10−Nの遠端に備えられた全反射フィルタ30までの距離zは、各々異なるように設置する必要がある。
分岐部20は、一端をモニタ装置40に接続された光ファイバ10−0をN本の光ファイバ10−1〜10−Nに分岐する。分岐部20は、例えば、光スプリッタによってN分岐する構成となっている。
全反射フィルタ30は、光ファイバ10−1〜10−Nの遠端に取り付けられ、モニタ装置40から送出される試験光を全反射する。なお、通常、光ファイバで構成される通信ネットワークは、通信光とは異なる波長の試験光が用いられ、入力された試験光が通信信号に影響を及ぼさないよう、試験光のみを全反射する全反射フィルタ30が挿入されることが多い。
モニタ装置40は、図2に示すように、レイリー散乱光複素振幅測定部41、測定データ保管部42、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43、及び相互相関算出部44を備えている。
レイリー散乱光複素振幅測定部41は、光ファイバ10−0の一端から試験光を入力し、当該試験光を全反射フィルタ30によって反射することにより折り返されたレイリー散乱光を観測する機能を有する。また、レイリー散乱光複素振幅測定部41は、当該観測したレイリー散乱光の複素振幅を分岐部20からの距離zの関数として測定する機能を有する。例えば、レイリー散乱光複素振幅測定部41は、OFDR装置である。
なお、レイリー散乱光複素振幅測定部41のOFDR装置によって、光ファイバのレイリー散乱光の複素振幅強度を距離zの関数として測定できることは、公知の技術である。それらによれば、OFDR装置は、光ファイバなどからの散乱光の複素振幅の測定で数十ミクロン程度の空間分解能を達成することができることが知られている。
レイリー散乱光複素振幅測定部41は、参照振幅データ測定時に、参照振幅データとして、N本の光ファイバ10−1〜10−Nからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅ftotal(z)を、分岐部20からの距離zの関数として測定する。なお、レイリー散乱光複素振幅測定部41は、試験光を全反射フィルタ30によって反射することにより折り返されたレイリー散乱光を含めて観測し、分岐部20から個々の光ファイバ10−1〜10−Nの遠端に備えられた全反射フィルタ30までの距離の最大値をLmaxとした時に、見かけ上、分岐部20から2Lmaxまでの距離にわたる参照振幅データftotal(z)を測定する。レイリー散乱光複素振幅測定部41は、測定した参照振幅データftotal(z)を、測定データ保管部42に送信する。
また、レイリー散乱光複素振幅測定部41は、特定の光ファイバに損失変動が生じる故障時に、故障時振幅データとして、N本の光ファイバ10−1〜10−Nからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅s(z)を、上記距離zの関数として測定する。レイリー散乱光複素振幅測定部41は、測定した故障時振幅データs(z)を、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43に送信する。
測定データ保管部42は、読出し/書込み可能なメモリであり、レイリー散乱光複素振幅測定部41から、参照振幅データftotal(z)を受信し、保管する。測定データ保管部42は、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43からの読出しに応じ、参照振幅データftotal(z)をレイリー散乱光パワースペクトル算出部43に送信する。
レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、レイリー散乱光複素振幅測定部41から故障時振幅データs(z)を受信すると、測定データ保管部42から参照振幅データftotal(z)を読出す。レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、保管された参照振幅データftotal(z)と、測定された故障時振幅データs(z)とに基づき、光ファイバの所定の区間z<z<zにおける、参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとをそれぞれ算出する。レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、算出された各レイリー散乱光パワースペクトルを相互相関算出部44に送信する。
具体的には、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、k番目の光ファイバ10−kの全反射フィルタ30までの距離をLとした時に、光ファイバの所定の区間をz<z<zとして、参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルf’total,2Lk−zb,2Lk−za(ν)を区間2L−z<z<2L−zの参照振幅データから算出し、故障時のレイリー散乱光パワースペクトルs’za,zb(ν)を区間z<z<zの故障時振幅データから算出する。
なお、後述するように、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43において、所定の区間の長さz−zは、レイリー散乱光複素振幅測定部41で測定される各レイリー散乱光複素振幅の空間分解能よりも十分長い必要がある。
相互相関算出部44は、算出された各レイリー散乱光パワースペクトルをレイリー散乱光パワースペクトル算出部43から受信する。相互相関算出部44は、算出された参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、相関値が最大値を取るように周波数方向にシフトされた上記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとの相互相関を計算することにより、k番目の光ファイバの区間z<z<zに生じた損失変動を算出する。
なお、相関値が最大値を取るようにシフトされた周波数のシフト量は、上記k番目の光ファイバの温度及び歪みの変化量と対応する。
次に、以上のように構成された試験装置の動作について図3に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下の説明において、レイリー散乱光複素振幅測定部41にはOFDR装置を用いるものとする。また、故障時には、k番目の光ファイバ10−kの区間z<z<zにおいて損失増加Δαk,zaが発生することを想定し、当該k番目の光ファイバにおける損失増加Δαk,zaが正しく求められることについて併せて説明する。
レイリー散乱光複素振幅測定部41は、参照振幅データ測定時に、試験光を光ファイバ10−0から入力する。レイリー散乱光複素振幅測定部41は、当該試験光を全反射フィルタ30によって反射することにより折り返されたレイリー散乱光を観測する。レイリー散乱光複素振幅測定部41は、参照振幅データとして、N本の光ファイバ10−1〜10−Nからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅ftotal(z)を、分岐部20からの距離zの関数として測定する(ST110)。なお、レイリー散乱光複素振幅測定部41は、分岐部20から個々の光ファイバ10−1〜10−Nの遠端に備えられた全反射フィルタ30までの距離の最大値をLmaxとした時に、見かけ上、分岐部20から2Lmaxまでの距離にわたる参照振幅データftotal(z)を測定する。レイリー散乱光複素振幅測定部41は、測定した参照振幅データftotal(z)を測定データ保管部42に送信する。
具体的には、ftotal(z)は、N本の光ファイバ10−1〜10−Nのレイリー散乱光複素振幅の和であり、式(1)のように表される。また、n番目の光ファイバの光複素振幅f(z)は、式(2)、及び式(4)のように表される。なお、光ファイバは、OFDRでは分岐部20から全反射フィルタ30に向かって散乱体が一次元的にM個並んだモデルでモデル化できる。したがって、式(2)、及び式(4)におけるσ(z)は、次式のように記述される。
Figure 0006277141
ここで、ainは、分岐部20からi番目の散乱体による後方散乱光の振幅、zinは、i番目の散乱点の位置である。νは、OFDRにおける試験光の周波数掃引の初期周波数であり、Δνは、周波数掃引幅である。また、cは、真空中の高速であり、nは、光ファイバ中の有効屈折率である。
Figure 0006277141
光ファイバ中のガラスの屈折率揺らぎ分布は、空間分解能と比べて微小であるため、空間分解能の範囲で複数の散乱光が足し合わさることにより、σ(z)は、zに対して不規則なジグザグの波形になる。
測定データ保管部42は、参照振幅データftotal(z)を受信し、保管する(ST120)。
次に、k番目の光ファイバ10−kの区間z<z<zにおいて、損失変動Δαk,zaが生じる故障が発生したとする。
レイリー散乱光複素振幅測定部41は、特定の光ファイバ10−kに損失変動Δαk,zaが生じる故障時に、故障時振幅データとして、N本の光ファイバ10−1〜10−Nからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅s(z)を、距離zの関数として再び測定する(ST130)。故障時振幅データs(z)は、式(5)のように記述される。レイリー散乱光複素振幅測定部41は、測定した故障時振幅データs(z)をレイリー散乱光パワースペクトル算出部43に送信する。
レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、参照振幅データftotal(z)及び故障時振幅データs(z)を受信する。レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、保管された参照振幅データftotal(z)と、測定された故障時振幅データs(z)とに基づき、光ファイバの所定の区間z<z<zにおける、参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとをそれぞれ算出する(ST140)。なお、参照振幅データ測定時は、光ファイバ10−kの故障前であり、故障時振幅データ測定時は、光ファイバ10−kの故障後である。
具体的には、レイリー散乱光パワースペクトルは、OFDR等で観測されるレイリー散乱光複素振幅について、z軸方向の所定の区間を切出し、切出した複素振幅を逆フーリエ変換して得られた波形の絶対値の2乗を計算することで算出される。
OFDRでは、試験光の周波数を時間的に掃引して得られる信号を受信するため、得られる信号の時間軸は、試験光の周波数に対応している。したがって、OFDRでは、受信した信号をフーリエ変換することにより、距離zの関数であるレイリー散乱光複素振幅が算出される。本実施形態では、この距離zの関数であるレイリー散乱光複素振幅について任意の区間を切出し、切出した波形を逆フーリエ変換することによって試験光の周波数の関数に戻すことが可能である。
なお、本実施形態では、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、図4に示すように、レイリー散乱光複素振幅を区間の長さz−zで切出す。具体的には、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、k番目の光ファイバ10−kの全反射フィルタ30までの距離をLとした時に、区間2L−z<z<2L−zにおけるレイリー散乱光複素振幅を切出し、参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルf’total,2Lk−zb,2Lkーza(ν)を算出する。
ここで、算出されるレイリー散乱光パワースペクトルf’total,2Lk−zb,2Lk−za(ν)を表式化するために、レイリー散乱光パワースペクトルf’total,za,zb(ν)について検討する。f’total,za,zb(ν)は、レイリー散乱光複素振幅ftotal(z)を区間z<z<zで切出して算出されるレイリー散乱光パワースペクトルである。
レイリー散乱光パワースペクトルf’total,za,zb(ν)は、ftotal(z)と同様にN本の光ファイバ10−1〜10−Nのレイリー散乱光パワースペクトルの和であり、次式のように記述される。
Figure 0006277141
ここで、f’n,za,zb(ν)は、区間z<z<zにおけるf(z)から算出されるレイリー散乱光パワースペクトルである。f(z)の区間z<z<zを切出すことは、式(13)においてa番目からb番目までの散乱体の寄与を抜き出すことを意味する。したがって、f’n,za,zb(ν)は、次式のように記述される。
Figure 0006277141
ここで、σ’n,za,zb(ν)の第2項は、区間z<z<zの範囲で足し合わされる散乱光の位相差によって変動する項である。例えば、z−zが常にmc/2nν(mは、整数)である時、強め合う干渉によって周波数νの光が最も強く後方に散乱されるが、実際には光ファイバ中でガラスの屈折率揺らぎは不規則に分布しているため、σ’n,za,zb(ν)は、不規則なジグザグの波形になる。
σ(z)は、σ(z)がOFDRの空間分解能の範囲での散乱光の足し合わせにより生じる。したがって、OFDRにおいて、用いる光源のコヒーレンス長を超える長距離地点では、空間分解能が劣化してしまうために、σ(z)を再現性良く得ることができなくなってしまう。
一方、σ’n,za,zb(ν)は、複素振幅を切出す距離zの区間の長さz−zにおける散乱光の足し合わせにより生じる、という点でσ(z)と異なる。したがって、σ’n,za,zb(ν)は、空間分解能に対して十分長い区間の長さでf(z)を切出していれば、空間分解能劣化の影響は小さく、波形を再現性良く得ることができる。
したがって、レイリー散乱光パワースペクトルを算出することにより、従来技術と比較して長距離にかけて試験を行うことが可能となる。つまり、各レイリー散乱光パワースペクトルを切出す所定の区間の長さz−zは、測定された各レイリー散乱光複素振幅の空間分解能よりも十分長いことが望ましい。
以上のように表式化されたf’total,za,zb(ν)を用いて、f’total,2Lk−zb,2Lk−za(ν)を表式化する。
前述の通り、k番目の光ファイバ10−kのレイリー散乱光複素振幅f(z)は、全反射フィルタ30で全反射された試験光によって折り返された波形を含む。ここで、区間2L−z<z<2L−zにおけるf(z)の波形と、区間z<z<zにおける波形とは、どちらも光ファイバ上の区間z<z<zのレイリー散乱光複素振幅を表す。したがって、図4に示すように、当該2つの区間におけるレイリー散乱光複素振幅からそれぞれ算出されたレイリー散乱光パワースペクトルは、光損失の寄与を除けば、互いに等しい。よって、σ’k,za,zb(ν)に関して、次式の関係が成立する。
Figure 0006277141
式(17)の関係より、ftotal(z)の区間2L−z<z<2L−zから算出されるレイリー散乱光パワースペクトルf’total,2Lk−zb,2Lk−za(ν)は、次式のように記述される。
Figure 0006277141
ここで、γ’n,2Ln−zb,2Ln−za(ν)は、光ファイバ10−1〜10−Nのうち、k番目の光ファイバ10−kを除く光ファイバの寄与である。
以上より、f’total,2Lk−zb,2Lk−za(ν)が表式化された。
次に、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、区間z<z<zにおける故障時のレイリー散乱光パワースペクトルs’za,zb(ν)を算出する。
ここで、算出されるレイリー散乱光パワースペクトルs’za,zb(ν)を表式化について検討する。s’za,zb(ν)は、レイリー散乱光複素振幅s(z)を区間z<z<zで切出して算出されるレイリー散乱光パワースペクトルである。
s’za,zb(ν)は、k番目の光ファイバの区間z<z<zに損失変動Δαk,zaが発生したとすると、次式のように記述される。
Figure 0006277141
なお、レイリー散乱光パワースペクトルは、光ファイバの温度及び歪み状態が変化すると、波形が横軸、即ち周波数方向にシフトすることが知られている(非特許文献1参照)。レイリー散乱光パワースペクトルは、光ファイバの温度の変化量がΔT、歪みの変化量がΔεの時の周波数方向のシフト量Δνが次式のように記述される。
Figure 0006277141
ここで、νは、OFDRにおける試験光の周波数掃引の中心周波数であり、K及びKεは、それぞれ光ファイバの温度変化、及び歪み変化に対するスペクトルシフトの定数である。
したがって、参照振幅データ測定時と比較して、故障時のn番目の光ファイバ10−nの温度及び歪み状態が異なる場合、光ファイバ10−nのレイリー散乱光パワースペクトルの周波数方向のシフト量をΔνとすると、次式の関係が成り立つ。
Figure 0006277141
式(21)の関係より、s(z)の区間z<z<zから算出されるレイリー散乱光パワースペクトルs’za,zb(ν)は、次式のように記述される。
Figure 0006277141
以上より、s’za,zb(ν)が表式化された。
以上の計算により、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、保管された参照振幅データftotal(z)と、測定された故障時振幅データs(z)とに基づき、光ファイバの所定の区間z<z<zにおける、参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとをそれぞれ算出する。レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、算出した各レイリー散乱光パワースペクトルf’total,2Lk−zb,2Lk−za(ν)、及びs’za,zb(ν)を相互相関算出部44に送信する。
相互相関算出部44は、各レイリー散乱光パワースペクトルf’total,2Lk−zb,2Lk−za(ν)、及びs’za,zb(ν)を受信する。相互相関算出部44は、レイリー散乱光パワースペクトルf’total,2Lk−zb,2Lk−za(ν)と、相関値が最大値を取るように周波数方向にシフトされたレイリー散乱光パワースペクトルs’za,zb(ν+ν’)との相互相関を計算することにより、k番目の光ファイバ10−kの区間z<z<zに生じた損失変動を算出する(ST150)。
ここで、ν’は、s’za,zb(ν)を周波数方向にシフトさせる周波数のシフト量である。
具体的には、相互相関算出部44は、次式にしたがい、相互相関を計算する。
Figure 0006277141
ここで、σ’n,za,zb(ν)の波形は、光ファイバ10−1〜10−Nによって異なるため、レイリー散乱光複素振幅と同様に、次式の関係が成り立つ。
Figure 0006277141
ここで、δ(ν’−Δν)は、クロネッカーのデルタであり、ν’=Δνの時に1で、ν’≠Δνの時に0である。式(24)の関係から、
Figure 0006277141
となるため、ν’≠Δνの時、式(23)は、第1項以外全て0となる。
また、exp[−α(L)]は、定数であり、exp[−α(2L−z)]exp[−α(z)]も損失の対称性から定数となる。したがって、式(23)は、距離zに依存しない定数A’を係数として、
Figure 0006277141
と表される。
式(29)は、周波数のシフト量ν’の値を変化させながら式(23)を計算すると、ν’≠Δνの時、式(23)の値は、0になり、ν’=Δνの時、式(23)の値は、A’exp[−Δαk,za]となることを示している。
なお、計算された相互相関の相関値がA’であった場合、当該k番目の光ファイバの区間z<z<zにおいて、損失変動は生じていないことが分かる。
したがって、計算された相互相関の相関値を正常な地点において計算されるA’と比較することにより、k番目の光ファイバ10−kの区間z<z<zにおける損失変動Δαk,zaを算出することができる。
つまり、相互相関算出部44は、レイリー散乱光パワースペクトルf’total,2Lk−zb,2Lk−za(ν)と、相関値が最大値を取るように周波数方向にシフトされたレイリー散乱光パワースペクトルs’za,zb(ν+ν’)との相互相関を計算することにより、k番目の光ファイバ10−kの区間z<z<zに生じた損失変動を算出することができる。
また、相互相関の相関値が最大となる周波数方向のシフト量ν’は、上述の通り、k番目の光ファイバ10−kの温度及び歪みの変化量と対応する。したがって、相互相関算出部44は、参照振幅データ測定時と、故障時とで光ファイバの温度及び歪み状態が異なっていても、損失変動を算出することができる。
なお、相互相関算出部44は、様々な周波数方向のシフト量ν’について相互相関を計算し、相互相関の相関値が最大値になるシフト量ν’を導出してもよい。また、相互相関算出部44は、光ファイバ10−1〜10−Nに予め設置された図示しない温度センサや歪みセンサ等の観測値に基づき、当該シフト量ν’の初期値を導出してもよい。
また、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43及び相互相関算出部44は、ステップ(ST140−ST150)を、区間を変えて実行することで、k番目の光ファイバ10−kの任意の地点で生じた損失変動を算出することができる。
また、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43及び相互相関算出部44は、ステップ(ST140−ST150)を、分岐下部の各光ファイバ10−1〜10−Nの全反射フィルタ30までの距離L、L、…、Lについて実行することで、個別の光ファイバに生じた任意の区間における損失変動を算出することができる。
以上詳述したように、一実施形態では、試験装置1は、分岐部20から複数本に分岐された個々の光ファイバ10−1〜10−Nの遠端に試験光を全反射する全反射フィルタ30を備え、上記分岐部20から個々の光ファイバ10−1〜10−Nの遠端に備えられた全反射フィルタ30までの距離が各々異なる光ファイバ10−1〜10−Nに対して損失変動を算出する。レイリー散乱光複素振幅測定部41は、参照振幅データ測定時に、参照振幅データとして、N本の光ファイバ10−1〜10−Nからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅ftotal(z)を、上記分岐部20からの距離zの関数として測定する。ここで、レイリー散乱光複素振幅測定部41は、上記試験光を上記全反射フィルタ30によって反射することにより折り返されたレイリー散乱光を観測し、上記分岐部20から上記全反射フィルタ30までの距離の最大値をLmaxとした時に、見かけ上、上記分岐部20から2Lmaxまでの距離にわたる参照振幅データを測定する。測定データ保管部42は、上記測定された参照振幅データを保管する。レイリー散乱光複素振幅測定部41は、特定の光ファイバに損失変動が生じる故障時に、故障時振幅データとして、N本の光ファイバからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅s(z)を、上記距離zの関数として測定する。レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、上記保管された参照振幅データと、上記測定された故障時振幅データとに基づき、光ファイバの所定の区間z<z<zにおける、上記参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、上記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとをそれぞれ算出する。相互相関算出部44は、上記算出された参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、相関値が最大値を取るように周波数方向にシフトされた上記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとの相互相関を計算することにより、k番目の光ファイバの区間z<z<zに生じた損失変動を算出するようにしている。このため、相互相関の相関値が最大値を取る周波数方向のシフト量から、光ファイバの故障前と故障後における温度及び歪みの変化量を考慮することができる。また、レイリー散乱光パワースペクトルを所定の区間の長さで切出して算出することにより、長距離に及ぶ光ファイバにおいても、空間分解能の劣化の影響を抑えることができる。
したがって、長距離化に伴う空間分解能劣化の影響を抑え、温度及び歪み状態を考慮しつつ、分岐下部の個別の光ファイバについて損失変動をモニタリングすることができる。
また、レイリー散乱光パワースペクトル算出部43は、上記k番目の光ファイバ10−kの全反射フィルタ30までの距離をLとした時に、上記参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルを区間2L−z<z<2L−zの上記参照振幅データから算出し、上記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルを区間z<z<zの上記故障時振幅データから算出するようにしている。このため、相互相関の相関値が最大値を取るような周波数方向のシフト量以外は、相関値が0となるような相互相関を計算できる。
したがって、相互相関の相関ピーク値と損失変動が明確に関連付けられ、損失変動をより明確に算出することができる。
また、上記所定の区間の長さz−zは、測定された各レイリー散乱光複素振幅の空間分解能よりも十分長くなるようにしている。このため、レイリー散乱光複素振幅測定の空間分解能劣化の影響を軽減し、レイリー散乱光パワースペクトルの波形の再現性を保つことができる。
したがって、長距離に及ぶ光ファイバに対しても損失変動を算出する試験方法を適用することができる。
また、上記相関値が最大値を取るようにシフトされた周波数のシフト量は、上記k番目の光ファイバの温度及び歪みの変化量と対応するようにしている。これにより、レイリー散乱光パワースペクトルが光ファイバの温度及び歪みの状態変化に対して周波数方向にシフトすることから、波形のシフトを追随するように相互計算を計算することで、温度及び歪み変化のある環境下にも適用することができる。
したがって、光ファイバの温度及び歪み状態が故障前と故障後で異なっていても、当該状態の変化を考慮して損失変動を算出することができる。
すなわち、長距離化に伴う空間分解能劣化の影響を抑え、温度及び歪み状態を考慮しつつ、分岐下部の個別の光ファイバについて損失変動をモニタリングできるようにした分岐を有する長距離光ファイバの試験方法、及び装置を提供することができる。
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
1…試験装置、10−0〜10−N…光ファイバ、20…分岐部、30…全反射フィルタ、40、50…モニタ装置、41…レイリー散乱光複素振幅測定部、42…測定データ保管部、43…レイリー散乱光パワースペクトル算出部、44…相互相関算出部。

Claims (8)

  1. 分岐部からN(Nは複数)本に分岐された個々の光ファイバの遠端に試験光を全反射する全反射フィルタを備え、前記分岐部から個々の光ファイバの遠端に備えられた全反射フィルタまでの距離が各々異なる光ファイバの試験方法であって、
    参照振幅データ測定時に、参照振幅データとして、N本の光ファイバからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅ftotal(z)を、前記分岐部からの距離zの関数として測定する第1の測定ステップと、
    前記測定された参照振幅データを保管するデータ保管ステップと、
    特定の光ファイバに損失変動が生じる故障時に、故障時振幅データとして、N本の光ファイバからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅s(z)を、前記距離zの関数として測定する第2の測定ステップと、
    前記保管された参照振幅データと、前記測定された故障時振幅データとに基づき、光ファイバの所定の区間z<z<zにおける、前記参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、前記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとをそれぞれ算出する第1の算出ステップと、
    前記算出された参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、相関値が最大値を取るように周波数方向にシフトされた前記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとの相互相関を計算することにより、k番目の光ファイバの区間z<z<zに生じた損失変動を算出する第2の算出ステップとを有し、
    前記第1の測定ステップは、前記試験光を前記全反射フィルタによって反射することにより折り返されたレイリー散乱光を観測し、前記分岐部から前記全反射フィルタまでの距離の最大値をLmaxとした時に、見かけ上、前記分岐部から2Lmaxまでの距離にわたる参照振幅データを測定することを特徴とする試験方法。
  2. 前記第1の算出ステップは、前記k番目の光ファイバの全反射フィルタまでの距離をLとした時に、前記参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルを区間2L−z<z<2L−zの前記参照振幅データから算出し、前記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルを区間z<z<zの前記故障時振幅データから算出することを特徴とする、請求項1に記載の試験方法。
  3. 前記所定の区間の長さz−zは、前記測定された各レイリー散乱光複素振幅の空間分解能よりも十分長いことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の試験方法。
  4. 前記相関値が最大値を取るようにシフトされた周波数のシフト量は、前記k番目の光ファイバの温度及び歪みの変化量と対応することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の試験方法。
  5. 分岐部からN(Nは複数)本に分岐された個々の光ファイバの遠端に試験光を全反射する全反射フィルタを備え、前記分岐部から個々の光ファイバの遠端に備えられた全反射フィルタまでの距離が各々異なる光ファイバの試験装置であって、
    参照振幅データ測定時に、参照振幅データとして、N本の光ファイバからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅ftotal(z)を、前記分岐部からの距離zの関数として測定する第1の測定手段と、
    前記測定された参照振幅データを保管するデータ保管手段と、
    特定の光ファイバに損失変動が生じる故障時に、故障時振幅データとして、N本の光ファイバからのトータルのレイリー散乱光の複素振幅s(z)を、前記距離zの関数として測定する第2の測定手段と、
    前記保管された参照振幅データと、前記測定された故障時振幅データとに基づき、光ファイバの所定の区間z<z<zにおける、前記参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、前記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとをそれぞれ算出する第1の算出手段と、
    前記算出された参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルと、相関値が最大値を取るように周波数方向にシフトされた前記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルとの相互相関を計算することにより、k番目の光ファイバの区間z<z<zに生じた損失変動を算出する第2の算出手段とを有し、
    前記第1の測定手段は、前記試験光を前記全反射フィルタによって反射することにより折り返されたレイリー散乱光を観測し、前記分岐部から前記全反射フィルタまでの距離の最大値をLmaxとした時に、見かけ上、前記分岐部から2Lmaxまでの距離にわたる参照振幅データを測定することを特徴とする試験装置。
  6. 前記第1の算出手段は、前記k番目の光ファイバの全反射フィルタまでの距離をLとした時に、前記参照振幅データ測定時のレイリー散乱光パワースペクトルを区間2L−z<z<2L−zの前記参照振幅データから算出し、前記故障時のレイリー散乱光パワースペクトルを区間z<z<zの前記故障時振幅データから算出することを特徴とする、請求項5に記載の試験装置。
  7. 前記所定の区間の長さz−zは、前記測定された各レイリー散乱光複素振幅の空間分解能よりも十分長いことを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の試験装置。
  8. 前記相関値が最大値を取るようにシフトされた周波数のシフト量は、前記k番目の光ファイバの温度及び歪みの変化量と対応することを特徴とする、請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の試験装置。
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