JP6276487B1 - 汗腺の動態の観察方法 - Google Patents

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Abstract

生きている状態で単離された全汗腺を染色試薬によって染色し、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって支持体に全汗腺を保持させた観察試料を用いる、化粧料などの外用剤の開発などに有用な汗腺の動態の観察方法および被験物質の評価方法。

Description

本発明は、汗腺の動態の観察方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、化粧料などの外用剤の開発などに有用な汗腺の動態の観察方法および被験物質の評価方法に関する。
過度の発汗は、肌のベタつきおよび不快感を招くことがある。そこで、汗腺を閉塞させることによって発汗を抑制する成分を含む制汗剤などが開発されている。しかしながら、近年の清潔志向の高まりに伴い、過度の発汗などをより効果的に抑制することが求められている。そこで、過度の発汗などをより効果的に抑制する成分を開発するために、汗腺の状態を観察するための技術が求められている。
一方、前記汗腺に含まれる汗腺細胞には、ケラチン5が発現していることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、本発明者らは、現時点では、汗腺の動態を観察する方法を具体的に記載した文献を発見していない。
ローランド・モール(Roland Moll)ら、「上皮の2相性中皮腫の顕著な特徴としてのケラチン5の発現;モノクローナル抗体AE14を用いた免疫組織学的研究(Expression of keratin 5 as a distinctive feature of epithelial and biphasic mesotheliomas An immunohistochemical study using monoclonal antibody AE14)」、ウィルヒョー・アーカイブ・ビー・セル・ペイソロジー・インクルーディング・モレキュラー・ペイソロジー(Virchows Archiv B Cell Pathology Including Molecular Pathology)、1989年発行、第58巻、pp.129−145
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、生きている状態の汗腺の動態を的確に観察することができる汗腺の動態の観察方法および被験物質が有する発汗制御作用を容易に評価することができる被験物質の評価方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨は、
(1)(A)単離された全汗腺を、細胞膜に対する染色試薬、核に対する染色試薬および細胞骨格構成物質に対する染色試薬からなる群より選ばれた少なくとも1種の染色試薬によって染色するステップ、
(B)前記ステップ(A)で染色された全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって前記染色された全汗腺を支持体上に保持させて観察試料を得るステップ、および
(C)前記ステップ(B)で得られた観察試料に含まれる全汗腺の動態を観察するステップ
を含む汗腺の動態の観察方法、
(2)前記ステップ(B)において、支持体上に保持された全汗腺上に緩衝液を添加する前記(1)に記載の汗腺の動態の観察方法、
(3)前記緩衝液が塩化ナトリウム100〜150mMと塩化カリウム3〜7mMと塩化カルシウム0.5〜2mMと塩化マグネシウム0.5〜2mMと炭酸水素ナトリウム20〜30mMとリン酸二水素ナトリウム0.5〜2mMとグルコース2〜8mMと脂肪酸不含ウシ血清アルブミン5〜15mg/100mLとを含有し、pHが7.1〜7.6である緩衝液である前記(2)に記載の汗腺の動態の観察方法、
(4)前記ステップ(C)において、前記観察試料に含まれる全汗腺と刺激薬とを接触させ、前記刺激薬に起因する全汗腺の動態を観察する前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の汗腺の動態の観察方法、
(5)被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価する被験物質の評価方法であって、
(a)単離された全汗腺を、細胞膜に対する染色試薬、核に対する染色試薬および細胞骨格構成物質に対する染色試薬からなる群より選ばれた少なくとも1種の染色試薬によって染色するステップ、
(b)前記ステップ(a)で染色された全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって前記染色された全汗腺を支持体上に保持させて観察試料を得るステップ、
(c)前記ステップ(b)で得られた観察試料に含まれる全汗腺と被験物質とを接触させ、当該全汗腺の動態を観察するステップ、および
(d)前記ステップ(c)で観察された全汗腺の動態に基づき、被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価するステップ
を含む被験物質の評価方法、
(6)前記ステップ(b)において、支持体上に保持された全汗腺上に緩衝液を添加する前記(5)に記載の被験物質の評価方法、
(7)前記緩衝液が塩化ナトリウム100〜150mMと塩化カリウム3〜7mMと塩化カルシウム0.5〜2mMと塩化マグネシウム0.5〜2mMと炭酸水素ナトリウム20〜30mMとリン酸二水素ナトリウム0.5〜2mMとグルコース2〜8mMと脂肪酸不含ウシ血清アルブミン5〜15mg/100mLとを含有し、pHが7.1〜7.6である緩衝液である前記(6)に記載の被験物質の評価方法、および
(8)前記ステップ(c)において、前記観察試料に含まれる全汗腺と被験物質と刺激薬とを接触させ、当該全汗腺の動態を観察する前記(5)〜(7)のいずれか1項に記載の被験物質の評価方法
に関する。
本発明の汗腺の動態の観察方法によれば、生きている状態の汗腺の動態を的確に観察することができるという優れた効果が奏される。また、本発明の被験物質の評価方法によれば、被験物質が有する発汗制御作用を容易に評価することができるという優れた効果が奏される。
ヒトの汗腺の構造を示す概略説明図である。 実施例1において、核染色試薬に由来する蛍光と細胞骨格染色試薬に由来する蛍光とに基づき、タイムラプス撮影によって汗腺の動態を観察した結果を示す図面代用写真である。 実施例1において、図2の図面代用写真に示されるパネル(A1)が拡大された図面代用写真である。 実施例1において、図2の図面代用写真に示される汗腺中の2つの細胞間の距離の経時的変化を示すグラフである。 実施例1において、図2の図面代用写真に示される汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を示すグラフである。 実施例2において、核染色試薬に由来する蛍光と細胞膜染色試薬に由来する蛍光とに基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を示す図面代用写真である。 実施例3において、核染色試薬に由来する蛍光に基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を示す図面代用写真である。 実施例3において、図7の図面代用写真に示される汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を示すグラフである。 実施例4において、核染色試薬に由来する蛍光に基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を示す図面代用写真である。 実施例4において、図9の図面代用写真に示される汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を示すグラフである。 実施例5において、核染色試薬に由来する蛍光に基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を示す図面代用写真である。 実施例5において、図11の図面代用写真に示される汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を示すグラフである。 実施例6において、核染色試薬に由来する蛍光に基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を示す図面代用写真である。 実施例6において、図13の図面代用写真に示される汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を示すグラフである。 実施例7において、核染色試薬に由来する蛍光に基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を示す図面代用写真である。 実施例7において、図15の図面代用写真に示される汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を示すグラフである。 実施例8において、汗管の外径指標値の経時的変化の測定部位を示す図面代用写真である。 実施例8において、汗管の内径指標値の経時的変化の測定部位を示す図面代用写真である。 実施例8において、図17の図面代用写真に示される測定部位における外径指標値の経時的変化を示すグラフである。 実施例8において、図18の図面代用写真に示される測定部位における内径指標値の経時的変化を示すグラフである。 実施例9において、実験番号1の汗腺の動態を観察した結果を示す図面代用写真である。 実施例9において、実験番号2の汗腺の動態を観察した結果を示す図面代用写真である。 実施例9において、実験番号1の汗腺における細胞の移動距離の経時的変化を示すグラフである。 実施例9において、実験番号2の汗腺における細胞の移動距離の経時的変化を示すグラフである。
本発明の汗腺の動態の観察方法は、
(A)単離された全汗腺を、細胞膜に対する染色試薬、核に対する染色試薬および細胞骨格構成物質に対する染色試薬からなる群より選ばれた少なくとも1種の染色試薬によって染色するステップ、
(B)前記ステップ(A)で染色された全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって前記染色された全汗腺を支持体上に保持させて観察試料を得るステップ、および
(C)前記ステップ(B)で得られた観察試料に含まれる全汗腺の動態を観察するステップ
を含む。
図1のヒトの汗腺の構造を示す概略説明図に示されるように、汗腺1は、分泌腺2と分泌腺2につながった汗管3とからなる。分泌腺2は、皮膚4の真皮5内に存在し、コイル状にねじれまがったコイル構造6を有する不分枝単一管状腺である。分泌腺の表面には、筋上皮細胞(図示せず)が存在している。
前記全汗腺の起源は、特に限定されるものではない。本発明の汗腺の動態の観察方法をヒトにおける汗の分泌の際の汗腺の動態の観察などに用いる場合、前記汗腺のなかでは、ヒトの汗腺が好ましい。
本明細書において、「全汗腺」とは、汗腺全体を意味する。また、本明細書において、「単離された全汗腺」とは、皮膚組織から取得され、生きている状態の全汗腺を意味する。なお、全汗腺は、一部が欠損したものであってもよい。
前記全汗腺は、生きている状態の汗腺の動態を的確に観察する観点から、通常、ドナーから摘出した後、好ましくは70時間以内、より好ましくは15時間以内の皮膚組織から単離したものである。また、前記単離時から10時間以内の全汗腺であることが好ましい。
なお、本明細書において、「生きている状態」とは、生体内における生物学的活性および動きと同様の生物学的活性および動きを示す状態をいう。
前記汗腺の動態としては、例えば、汗腺の収縮の動きなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
従来の生体から得られた組織の顕微鏡観察では、前記組織を染色する前に、組織固定、前記組織の透明化処理などが行なわれる。組織固定は、前記組織における生化学的反応を停止させて前記組織中の細胞の形態が変わらないようするために行なわれる。しかし、前記組織固定および透明化処理を行なった場合、得られた組織が死んだ状態であるため、動態を観察することができない。これに対して、本発明の汗腺の動態の観察方法では、前記ステップ(A)により、単離された全汗腺を生きている状態のまま染色する。さらに、本発明の汗腺の動態の観察方法では、前記ステップ(B)により、前記染色された全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって前記染色された汗腺を生きている状態のまま支持体上に保持させ、観察試料を得る。このように、本発明の汗腺の動態観察方法によれば、前記ステップ(A)および前記ステップ(B)の両方が採用されているので、汗腺の動態を的確に観察することができる。
前記ステップ(A)では、単離された全汗腺を前記染色試薬によって染色する。単離された全汗腺の染色は、単離された全汗腺と、前記染色試薬とを接触させることによって行なうことができる。これにより、前記全汗腺における細胞膜、核および細胞骨格構成物質の少なくとも1種と対応の染色試薬とを結合させ、前記染色試薬によって染色された全汗腺を得る。
前記細胞膜に対する染色試薬(以下、「細胞膜染色試薬」ともいう)は、細胞膜マーカーに特異的に結合する物質(以下、「細胞膜結合物質」ともいう)と検出可能な物質とを含む。なお、前記細胞膜染色試薬は、細胞膜結合物質であり、かつ、検出可能な物質である物質を含んでいてもよい。
前記細胞膜マーカーとしては、例えば、細胞膜キナーゼなどが挙げられるが、本発明は、特に限定されるものではない。前記細胞膜結合物質は、生きている状態の細胞膜に結合する物質であればよい。
前記細胞膜結合物質としては、例えば、抗細胞膜キナーゼ抗体、その抗体断片などの抗細胞膜マーカー抗体;細胞膜の糖鎖に結合するレクチンなどの細胞膜マーカーに特異的に結合する化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記細胞膜染色試薬に含まれる検出可能な物質としては、例えば、モレキュラープローブス社製の商品名:Alexa fluor 488などのAlexa fluorシリーズ蛍光色素分子、Cy5などの蛍光物質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
なお、本発明において、抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。
前記核に対する染色試薬(以下、「核染色試薬」ともいう)は、核を構成する物質に特異的に結合する物質(以下、「核結合物質」ともいう)と検出可能な物質とを含む。なお、前記核染色試薬は、検出可能な核結合物質を含んでいてもよい。
前記核を構成する物質としては、例えば、DNAなどの核酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記核結合物質は、細胞膜を透過する物質であればよい。前記核結合物質としては、例えば、Hoechst 33342などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記核染色試薬に含まれる検出可能な物質としては、例えば、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール;Hoechst 33342などのHoechstシリーズ蛍光色素などの蛍光物質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、前記核結合物質であるHoechst 33342は、蛍光物質として用いられる。
前記細胞骨格構成物質に対する染色試薬(以下、「細胞骨格染色試薬」ともいう)は、細胞骨格構成物質に特異的に結合する物質(以下、「細胞骨格結合物質」ともいう)と検出可能な物質とを含む。なお、前記細胞骨格染色試薬は、細胞骨格結合物質であり、かつ検出可能な物質である物質を含んでいてもよい。
前記細胞骨格構成物質としては、例えば、アクチン、ミオシンなどの収縮タンパク質;ケラチンなどの中間径フィラメント;チューブリンなどの微小管構成タンパク質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記細胞骨格結合物質は、生きている状態の細胞膜に結合する物質であればよい。前記細胞骨格結合物質としては、例えば、抗アクチン抗体、抗ミオシン抗体、抗ケラチン抗体、抗チューブリン抗体、これらの抗体それぞれの抗体断片などの抗細胞骨格構成物質抗体;ファロイジンなどの細胞骨格構成物質に特異的に結合する化合物などが挙げられるが、本発明は、特に限定されるものではない。
前記細胞骨格染色試薬に含まれる検出可能な物質としては、例えば、モレキュラープローブス社製の商品名:Alexa fluor 488、商品名:Alexa fluor 555などのAlexa fluorシリーズ蛍光色素分子などの蛍光物質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記核染色試薬に含まれる検出可能な物質、前記細胞膜染色試薬に含まれる検出可能な物質および前記細胞骨格染色試薬に含まれる検出可能な物質は、核、細胞膜および細胞骨格のそれぞれを区別して同時に視覚化する場合には、それぞれ異なる波長を有するシグナルを生じる物質であることが好ましい。
前記細胞膜染色試薬としては、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)社製の商品名:CellMaskなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記細胞骨格染色試薬としては、Hoechst33342などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記細胞骨格染色試薬としては、例えば、サイトケラチン(Cytoskelton)社製、商品名:Acti−stain 488、商品名:Acti−stain 555などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記単離された全汗腺と前記染色試薬との接触に際し、前記単離された全汗腺と前記染色試薬との混合比および接触時間は、前記染色試薬の種類などによって異なるため、一概には決定することができないことから、前記染色試薬の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。
汗腺の動態をより的確に観察する観点から、前記単離された全汗腺と前記染色試薬との接触後、染色された全汗腺を適切な洗浄液で洗浄することが好ましい。前記洗浄液としては、例えば、リン酸緩衝生理的食塩水、リン酸緩衝液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、前記染色試薬が抗体またはその抗体断片を含む場合、汗腺の動態をより的確に観察する観点から、前記染色された全汗腺に対し、ブロッキング剤を用いてブロッキング処理を施すことが好ましい。前記ブロッキング剤としては、例えば、アルブミンを含有するリン酸緩衝生理的食塩水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
つぎに、前記ステップ(B)において、前記ステップ(A)で染色された全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって前記染色された汗腺を支持体上に保持させる。前記ステップ(B)において、支持体上に保持された前記汗腺の乾燥を抑制する観点から、当該支持体上に保持された前記汗腺上に緩衝液を添加することが好ましい。これにより、生きている状態の汗腺を含む観察試料が得られる。
前記観察試料によれば、生きている状態の汗腺が位置ずれしないように前記支持体上に保持されているので、汗腺の動態の観察時において、前記汗腺自体の動態とは関係がない動きを抑制しながら、前記汗腺の収縮などの動きを的確に観察することができる。したがって、前記観察試料は、例えば、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡などの光学顕微鏡下での汗腺の動態の観察に好適である。
前記コラーゲンとしては、例えば、コラーゲン タイプI−A、コラーゲン タイプI−BなどのI型コラーゲン;III型コラーゲン;IV型コラーゲンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ステップ(B)において、前記コラーゲンを用いる場合、支持体上における染色された全汗腺の保持は、例えば、支持体上における染色された全汗腺に、氷上で冷却されたコラーゲン含有液を滴下し、支持体上の前記全汗腺を22〜38℃でインキュベーションしてコラーゲンをゲル化させることなどによって行なうことができる。
前記アガロースは、汗腺を構成する細胞が生存することができる温度を融点として有するアガロースであればよい。ステップ(B)において、前記アガロースを用いる場合、支持体上における染色された全汗腺の保持は、例えば、支持体上における染色された全汗腺に、融解状態のアガロースを滴下し、支持体上の前記全汗腺をアガロースの融点以下の温度でインキュベーションしてアガロースをゲル化させることなどによって行なうことができる。
前記基底膜マトリックスは、構成必須成分としてラミニン、コラーゲン タイプIV、ニドゲンおよびヘパラン硫酸プロテオグリカンが含まれていればよい。前記基底膜マトリックスとしては、例えば、コーニング社製の商品名:マトリゲル基底膜マトリックスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ステップ(B)において、前記基底膜マトリックスを用いる場合、支持体上における染色された全汗腺の保持は、例えば、支持体上における染色された全汗腺に、基底膜マトリックスを滴下し、支持体上の前記全汗腺を22〜37℃でインキュベーションして基底膜マトリックスをゲル化させることなどによって行なうことができる。
前記ポリ−D−リジンは、汗腺を構成する細胞を支持体に接着する程度の分子量を有していればよい。ステップ(B)において、前記ポリ−D−リジンを用いる場合、支持体上における染色された全汗腺の保持は、例えば、支持体の表面を前記ポリ−D−リジンで被覆し、前記支持体における前記ポリ−D−リジンで被覆された表面に染色された全汗腺を載置することなどによって行なうことができる。なお、前記ポリ−D−リジンと前記全汗腺との間の接着性を高め、全汗腺の位置ずれをより一層抑制する観点から、前記ポリ−D−リジンと前記全汗腺との間の接着性を高める物質、例えば、ラミニンなどをさらに用いてもよい。
前記メンブランは、全汗腺を通過させず、緩衝液、後述の刺激薬および後述の被験物質を通過させることができる孔径の孔を有するメンブランであればよい。前記孔径は、全汗腺の通過を抑制する観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは0.4μm以下であり、後述の刺激薬などを通過させる観点から、好ましくは0.1μm以上である。ステップ(B)において、前記メンブランを用いる場合、支持体上における染色された全汗腺の保持は、例えば、支持体上に染色された全汗腺を載置し、載置された全汗腺の上にメンブランを載置することなどによって行なうことができる。
前記緩衝液としては、例えば、塩化ナトリウム120〜160mMと塩化カリウム3〜7mMと塩化カルシウム1〜3mMと塩化マグネシウム1〜3mMとHEPES緩衝液8〜12mMとグルコース8〜12mMとを含有し、pHが7.1〜7.6である緩衝液(以下、「緩衝液A」という)、塩化ナトリウム100〜150mMと塩化カリウム3〜7mMと塩化カルシウム0.5〜2mMと塩化マグネシウム0.5〜2mMと炭酸水素ナトリウム20〜30mMとリン酸二水素ナトリウム0.5〜2mMとグルコース2〜8mMと脂肪酸不含ウシ血清アルブミン5〜15mg/100mLとを含有し、pHが7.1〜7.6である緩衝液(以下、「緩衝液B」という)、リン酸緩衝生理食塩水などの等張液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記緩衝液Aとしては、例えば、細胞外溶液などが挙げられるが、本発明は、特に限定されるものではない。前記緩衝液Bとしては、例えば、クレブス・リンガー液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの緩衝液のなかでは、刺激薬による汗腺の刺激を良好に観察することができることから、緩衝液A、緩衝液Bおよびリン酸緩衝生理食塩水が好ましく、緩衝液Bがより好ましく、クレブス・リンガー液がより好ましい。前記緩衝液として緩衝液B、好ましくはクレブス・リンガー液を用いた場合、刺激薬非存在下における汗腺の動きを観察することができる。
その後、前記ステップ(C)において、前記ステップ(B)で得られた観察試料に含まれる全汗腺の動態を観察する。
全汗腺の動態の観察は、例えば、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡などの光学顕微鏡などを用いて行なうことができる。具体的には、全汗腺の動態の観察は、例えば、染色された全汗腺をそのままライブ観察すること、染色された全汗腺における染色試薬に由来するシグナルを検出して観察することなどによって行なうことができる。全汗腺の動態は、例えば、特定の細胞の移動距離の経時的変化、特定の細胞間の距離の経時的変化、汗腺の汗管の体積の経時的変化、汗腺の汗管の外径の経時的変化、汗腺の汗管の内径の経時的変化などを指標として用いて評価することができる。
なお、本発明の汗腺の動態の観察方法は、前記全汗腺と刺激薬とを接触させ、前記刺激薬に起因する全汗腺の動態を観察するステップ(以下、「刺激薬接触ステップ」ともいう」)をさらに含んでもよい。この場合、前記刺激薬接触ステップは、前記ステップ(B)と(C)との間に行なってもよく、前記ステップ(C)中に行なってもよい。汗腺の動態、特に汗腺の収縮をより的確に観察する観点から、前記刺激薬接触ステップは、前記ステップ(C)中に行なうことが好ましい。
前記刺激薬としては、例えば、コリン作動薬、アドレナリン作動薬などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記コリン作動薬としては、例えば、アセチルコリン、ピロカルピン、ベタネコール、カルバコールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、前記アドレナリン作動薬としては、例えば、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどのカテコールアミンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
以上説明したように、本発明の汗腺の動態の観察方法によれば、単離された全汗腺を、細胞膜染色試薬、核染色試薬および細胞骨格染色試薬からなる群より選ばれた少なくとも1種の染色試薬によって染色し、染色された全汗腺を、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって支持体上に位置ずれしないように保持させて観察試料を得るという操作が行なわれている。そのため、本発明の汗腺の動態の観察方法によれば、生体組織の生化学反応を停止させる組織固定、生体組織の透明化処理などを行なわなくてもよいので、汗腺の収縮の際の動きなどを観察することができる。また、汗腺の収縮は、発汗と関連すると考えられる。このことから、本発明の汗腺の動態の観察方法は、汗腺の動態に基づき、制汗成分、発汗成分などの発汗制御成分のスクリーニングまたは評価に用いられることが期待される。したがって、本発明の汗腺の動態の観察方法は、化粧料などの外用剤の開発などに用いられることが期待される。
本発明の汗腺の動態の観察方法によれば、被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価することができる。例えば、本発明の汗腺の動態の観察方法において、汗腺と被験物質を接触させ、汗腺の動態を観察することにより、当該被験物質が発汗制御作用を有するか否かを評価することができる。
本発明の被験物質の評価方法は、被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価する被験物質の評価方法である。本発明の被験物質の評価方法は、
(a)単離された全汗腺を、細胞膜に対する染色試薬、核に対する染色試薬および細胞骨格構成物質に対する染色試薬からなる群より選ばれた少なくとも1種の染色試薬によって染色するステップ、
(b)前記ステップ(a)で染色された全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって前記染色された全汗腺を支持体上に保持させて観察試料を得るステップ、
(c)前記ステップ(b)で得られた観察試料に含まれる全汗腺と被験物質とを接触させ、当該全汗腺の動態を観察するステップ、および
(d)前記ステップ(c)で観察された全汗腺の動態に基づき、被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価するステップ
を含む。なお、本明細書において、「発汗制御作用」には、「制汗作用」および「発汗誘導作用」が含まれる。「制汗作用」とは、発汗を抑制する作用をいう。「発汗誘導作用」とは、発汗させる作用または発汗を促進する作用をいう。
前記ステップ(a)および前記ステップ(b)は、前記汗腺の動態の観察方法におけるステップ(A)およびステップ(B)と同様の手法により行なうことができる。
前記ステップ(c)では、前記ステップ(b)で得られた観察試料に含まれる全汗腺と被験物質とを接触させ、当該全汗腺の動態を観察する。
前記被験物質としては、例えば、発汗制御作用を有することが期待される物質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。被験物質としては、具体的には、無機化合物、有機化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記被験物質は、そのまま用いてもよく、必要に応じて、溶媒に溶解させて用いてもよい。前記溶媒としては、例えば、本発明の汗腺の動態の観察方法に用いられる緩衝液、生理的食塩水、水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記観察試料に含まれる全汗腺と被験物質との接触は、例えば、前記観察試料上の全汗腺に前記被験物質を含有する溶液(以下、「被験液」ともいう)を添加して当該観察試料をインキュベーションすることなどによって行なうことができる。
前記観察試料に含まれる全汗腺と被験物質との接触に際し、前記全汗腺に接触させる被験物質の量および接触時間は、前記被験物質の種類などによって異なるため、一概には決定することができないことから、前記被験物質の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。
前記被験液における被験物質の含有量は、被験物質の種類、本発明の被験物質の評価方法の用途などによって異なるため、一概には決定することができないことから、被験物質の種類、本発明の被験物質の評価方法の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。
前記全汗腺の動態の観察は、前記汗腺の動態の観察方法におけるステップ(C)と同様の手法によって行なうことができる。
前記ステップ(d)では、前記ステップ(c)で観察された全汗腺の動態に基づき、被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価する。なお、被験物質と接触させた全汗腺の動態のみに基づいて被験物質の発汗制御作用の有無を評価してもよく、被験物質と接触させた全汗腺の動態および被験物質と接触させていない全汗腺(被験物質と未接触の全汗腺)の動態に基づいて被験物質の発汗制御作用の有無を評価してもよい。
本発明の被験物質の評価方法は、被験物質が発汗制御作用を有するかどうかをより的確に評価する観点から、前記ステップ(c)において、被験物質と未接触の全汗腺の動態も観察することが好ましい。この場合、ステップ(d)において、被験物質と未接触の全汗腺の動態と、被験物質と接触後の全汗腺の動態とを比較することで被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価することが好ましい。
被験物質と未接触の全汗腺の動態を観察する場合、前記ステップ(c)およびステップ(d)において、下記操作1または操作2を行なうことができる。
(操作1)
前記ステップ(c)において、1つの観察試料を用い、観察試料に含まれる全汗腺の動態を観察した後、当該観察試料に含まれる全汗腺と被験物質とを接触させて前記全汗腺の動態を観察し、前記ステップ(d)において、被験物質の接触前後の前記全汗腺の動態の違いに基づき、被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価する。
前記操作1を行なう場合、被験物質が制汗作用を有することの判断基準としては、例えば、被験物質接触後の全汗腺の動態の経時的変化が、被験物質と未接触の全汗腺の動態、すなわち被験物質と接触前の全汗腺の動態の経時的変化と比べて小さいことなどが挙げられる。また、被験物質が発汗誘導作用を有することの判断基準としては、例えば、被験物質接触後の全汗腺の動態の経時的変化が、被験物質と未接触の全汗腺の動態、すなわち被験物質と接触前の全汗腺の動態の経時的変化と比べて大きいことなどが挙げられる。
なお、前記操作1を行なうことにより、被験物質が制汗作用を有する物質であるかどうかを評価する場合、より的確に評価を行なう観点から、刺激薬を用いることもできる。この場合、前記ステップ(c)において、1つの観察試料を用い、観察試料に含まれる全汗腺と刺激薬とを接触させて前記全汗腺の動態を観察した後、当該観察試料に含まれる全汗腺と被験物質とを接触させて前記全汗腺の動態を観察し、前記ステップ(d)において、被験物質の接触前後の前記全汗腺の動態の違いに基づき、被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価することができる。
(操作2)
前記ステップ(c)において、少なくとも2種類の観察試料を用い、
(c2−1)前記少なくとも2種類の観察試料から選ばれた1種の観察試料に含まれる全汗腺における被験物質と未接触の動態を観察するステップ、および
(c2−2)前記ステップ(c2−1)で用いられた観察試料とは異なる観察試料に含まれる全汗腺と被験物質とを接触させ、当該全汗腺の動態を観察するステップ
を行ない、前記ステップ(d)において、前記ステップ(c2−1)で観察された全汗腺の動態と、前記ステップ(c2−2)で観察された全汗腺の動態との違いに基づき、被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価する。
前記操作2を行なう場合、被験物質が制汗作用を有することの判断基準としては、例えば、前記ステップ(c2−2)で観察された全汗腺の動態の経時的変化が、前記ステップ(c2−1)で観察された全汗腺の動態の経時的変化と比べて小さいことなどが挙げられる。また、被験物質が発汗誘導作用を有することの判断基準としては、例えば、前記ステップ(c2−2)で観察された全汗腺の動態の経時的変化が、前記ステップ(c2−1)で観察された全汗腺の動態の経時的変化と比べて大きいことなどが挙げられる。
なお、前記操作2を行なうことにより、被験物質が制汗作用を有する物質であるかどうかを評価する場合、より的確に評価を行なう観点から、刺激薬を用いることが好ましい。この場合、前記ステップ(c2−1)として、
前記少なくとも2種類の観察試料から選ばれた1種の観察試料に含まれる全汗腺と刺激薬とを接触させ、当該全汗腺における被験物質と接触させていないとき(被験物質と未接触のとき)の動態を観察するステップ(c2−1A)
を行なうことができる。前記刺激薬に加え、被験物質の対照となる対照物質をさらに用いる場合は、前記ステップ(c2−1)として、下記ステップ(c2−1A−1)、ステップ(c2−1A−2)およびステップ(c2−1A−3)の少なくとも1つを行なうことができる。
ステップ(c2−1A−1)
前記少なくとも2種類の観察試料から選ばれた1種の観察試料に含まれる全汗腺と対照物質とを接触させた後、当該全汗腺に刺激薬を接触させ、当該全汗腺の動態を観察するステップ。
ステップ(c2−1A−2)
前記少なくとも2種類の観察試料から選ばれた1種の観察試料に含まれる全汗腺と刺激薬とを接触させた後、当該全汗腺に対照物質を接触させ、当該全汗腺の動態を観察するステップ。
ステップ(c2−1A−3)
前記少なくとも2種類の観察試料から選ばれた1種の観察試料に含まれる全汗腺と対照物質と刺激薬とを同時に接触させ、当該全汗腺の動態を観察するステップ。
また、前記操作2を行なうことにより、被験物質が制汗作用を有する物質であるかどうかを評価する際に、前記刺激薬を用いる場合、前記ステップ(c2−2)として、
前記ステップ(c2−1)で用いられた観察試料とは異なる観察試料に含まれる全汗腺と被験物質と刺激薬とを接触させ、当該全汗腺の動態を観察するステップ(c2−2A)
を行なうことができる。前記ステップ(c2−2A)として、例えば、下記ステップ(c2−2−1)、ステップ(c2−2−2)およびステップ(c2−2−3)の少なくとも1つを行なうことができる。
ステップ(c2−2−1)
前記ステップ(c2−1)で用いられた観察試料とは異なる観察試料に含まれる全汗腺と被験物質とを接触させた後、当該全汗腺に刺激薬を接触させ、当該全汗腺の動態を観察するステップ。
ステップ(c2−2−2)
前記ステップ(c2−1)で用いられた観察試料とは異なる観察試料に含まれる全汗腺と刺激薬とを接触させた後、当該全汗腺に被験物質を接触させ、当該全汗腺の動態を観察するステップ。
ステップ(c2−2−3)
前記ステップ(c2−1)で用いられた観察試料とは異なる観察試料に含まれる全汗腺と被験物質と刺激薬とを同時に接触させ、当該全汗腺の動態を観察するステップ。
本発明の被験物質の評価方法で用いられる刺激薬は、前記汗腺の動態の確認方法における刺激薬と同様である。
前記全汗腺に接触させる刺激薬の量および接触時間は、前記刺激薬の種類などによって異なるため、一概には決定することができないことから、前記刺激薬の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。
以上説明したように、本発明の被験物質の評価方法は、被験物質が発汗制御作用を有するかどうかを評価することができることから、制汗成分、発汗成分などの発汗制御成分のスクリーニングまたは評価に用いることができる。したがって、本発明の被験物質の評価方法は、化粧料などの外用剤の開発などに用いられることが期待される。
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例などにおいて、略語の意味は、以下のとおりである。
<略語の説明>
BSA:ウシ血清アルブミン
HEPES:2−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]エタンスルホン酸
PBS:リン酸緩衝化生理食塩水
5×PBS:5倍濃度のリン酸緩衝化生理食塩水
10×PBS:10倍濃度のリン酸緩衝化生理食塩水
製造例1
リン酸緩衝化生理食塩水500μLに細胞骨格染色試薬〔サイトケラチン(Cytoskelton)社製、商品名:Acti−stain 488、Acti−stain 488の濃度:14μM〕3.5μLと、細胞膜染色試薬〔サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)社製、商品名:CellMask〕4μLと、核染色試薬〔Hoechst33342〕1μLとを添加し、染色試薬混合液を得た。
製造例2
コラーゲン タイプI−A液(コラーゲン タイプI−Aの含有率:3質量%)〔新田ゼラチン(株)製〕700μLと、5×PBS〔組成:685mM塩化ナトリウム、13.5mM塩化カリウム、50mMリン酸水素二ナトリウム十二水和物および9mMリン酸二水素カリウム、pH7.4〕200μLと、コラーゲン再構成緩衝液〔組成:50mM水酸化ナトリウム、260mM HEPESおよび200mM炭酸水素ナトリウム、pH10.0〕100μLとを混合することにより、コラーゲン含有液Aを得た。また、コラーゲン タイプI−A液(コラーゲン タイプI−Aの含有率:3質量%)〔新田ゼラチン(株)製〕800μLと、10×PBS〔組成:1370mM塩化ナトリウム、27mM塩化カリウム、100mMリン酸水素二ナトリウム十二水和物および18mMリン酸二水素カリウム、pH7.4〕100μLと、前記コラーゲン再構成緩衝液100μLとを混合することにより、コラーゲン含有液Bを得た。
実施例1
(1)全汗腺の単離
皮膚組織として、生体から摘出後すぐに冷蔵され、4℃で15時間保存された皮膚組織を用いた。皮膚組織を10μMニュートラルレッド(Neutral Red)含有リン酸緩衝化生理食塩水に浸すことにより、前記皮膚組織中の汗腺にNeutral Redを取り込ませた。つぎに、前記皮膚組織の真皮部分を細かく裁断し、真皮細片を得た。光学顕微鏡下にピンセットを用い、前記真皮細片から全汗腺を採取した。
(2)染色
実施例1(1)で得られた全汗腺を製造例1で得られた染色試薬混合液中に室温(24℃)で30分間浸漬させることにより、全汗腺を染色した。染色された全汗腺をPBSで洗浄した。
(3)支持体上への染色された全汗腺の位置固定
実体顕微鏡〔ライカ(Leica)社製、商品名:M125〕下において、実施例1(2)で得られた洗浄後の全汗腺をガラスボトムディッシュに静置した。ガラスボトムディッシュに静置された全汗腺に、製造例2で得られたコラーゲン含有液Aを滴下した。つぎに、前記ガラスボトムディッシュを37℃で5分間インキュベーションすることにより、前記全汗腺にコラーゲン含有液Aに含まれるコラーゲン タイプI−Aをゲル化させた。
その後、全汗腺が乾燥しないように、前記全汗腺上に等張液(PBS)を添加した。これにより、全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン タイプI−Aによって前記全汗腺を支持体であるガラスボトムディッシュに保持させて観察試料を得た。
(4)観察
ゲル化したコラーゲン タイプI−Aによって全汗腺がガラスボトムディッシュに接着していることを実体顕微鏡下で確認しながら、ゲル化したコラーゲン タイプI−Aに、ダルベッコリン酸緩衝液〔ギブコ(Gibco)社製、カタログ番号:14190−144〕400μLを添加した。
前記緩衝液の添加時から5分間経過後に、生物用共焦点レーザー走査型顕微鏡〔オリンパス(株)製の商品名:FV1200を搭載した倒立顕微鏡(オリンパス(株)製、商品名:IX−83)〕を用いて、ガラスボトムディッシュ上の全汗腺のタイムラプス撮影による観察を開始した。このとき、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光と、細胞骨格に結合した細胞骨格染色試薬に由来する蛍光とを検出することにより、全汗腺を視覚化した。観察開始時から60秒間経過後に、汗腺収縮誘導試薬(刺激薬)であるピロカルピンをその濃度が10mMとなるように前記全汗腺に添加した。タイムラプス撮影の条件は、以下のとおりである。
<タイムラプス撮影条件>
X:126.728μm
Y:76.136μm
Z:16μm
Zインターバル:2μm
Z枚数:9枚
タイムインターバル:40秒間
全フレーム数:51フレーム
全観察時間:30分間以上
実施例1において、核染色試薬に由来する蛍光と細胞骨格染色試薬に由来する蛍光とに基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を図2に示す。図2に記載のパネル(A1)〜(G1)は核染色試薬と細胞骨格染色試薬とによる二重染色像である。また、図2に記載のパネル(A2)〜(G2)は、それぞれ、パネル(A1)〜(G1)に対応する核染色試薬による染色像である。図2に記載のパネル(A3)〜(G3)は、それぞれ、パネル(A1)〜(G1)に対応する細胞骨格染色試薬による染色像である。図2に記載のパネル(A1)〜(G3)と、観察開始時からの経過時間との対応関係を表1に示す。また、図2に記載のスケールバーは、50μmを示す。
また、図2において、細胞A、細胞B、細胞Cおよび細胞D(図3参照)を選択し、各細胞の移動距離の経時的変化及び細胞間の距離の経時的変化を調べた。細胞の移動距離を求めるために、まず、各細胞のx座標およびy座標を用い、連続するフレーム間での座標の変化(差)を、式(I)および(II):
n+1-X (I)
(式中、nは1〜30の整数を示す)
n+1-Y (II)
(式中、nは前記と同じ)
にしたがって求めた。つぎに、三平方の定理(a+b=c)により、式(III):
(Xn+1−X2+(Yn+1−Y2 (III)
(式中、nは前記と同じ)
の平方根を算出することにより、連続するフレーム間毎の細胞間の移動値を求めた。さらに、実際の移動距離を求めるため、取得画像の大きさ〔126.728×76.136(単位:μm)〕とピクセル(512×306)から、座標1あたりの単位(μm/ピクセル)を求めた。移動値と座標1あたりの大きさを乗じて実際の細胞の移動距離(μm)を算出した。
実施例1において、図2における汗腺中の2つの細胞間の距離の経時的変化を図4に示す。図4において、(A)は細胞Aと細胞Bとの間の距離、(B)は細胞Aと細胞Cとの間の距離、(C)は細胞Aと細胞Dとの間の距離、(D)は細胞Bと細胞Cとの間の距離、(E)は細胞Bと細胞Dとの間の距離、(F)は細胞Cと細胞Dとの間の距離を示す。
また、実施例1において、図2における汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を図5に示す。図5において、(A)は細胞Aの移動距離、(B)は細胞Bの移動距離、(C)は細胞Cの移動距離、(D)は細胞Dの移動距離を示す。
図4に示された結果から、細胞Aと細胞Bとの間の距離、細胞Aと細胞Cとの間の距離、細胞Aと細胞Dとの間の距離、細胞Bと細胞Cとの間の距離、細胞Bと細胞Dとの間の距離および細胞Cと細胞Dとの間の距離は、経時的に変化することがわかる。
また、図5に示された結果から、細胞A、細胞B、細胞Cおよび細胞Dそれぞれの移動距離は、観察開始時から150〜300秒間経過時点に移動距離が大きくなることがわかる。
したがって、これらの結果から、生きている状態で単離された全汗腺を細胞骨格染色試薬、細胞膜染色試薬および核染色試薬のいずれかによって染色し、前記全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン タイプIによって前記全汗腺を支持体に保持させることにより、生きている状態の汗腺の動きが観察できることがわかる。
実施例2
実施例1において、下記(i)、(ii)、(iii)および(iv)の変更点を除き、実施例1と同様の操作を行ない、汗腺の動態を観察した。
(i)コラーゲン含有液Aを用いる代わりに、製造例2で得られたコラーゲン含有液Bを用いた。
(ii)核に結合した核染色試薬に由来する蛍光と、細胞骨格に結合した細胞骨格染色試薬に由来する蛍光とを検出する代わりに、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光と、細胞膜に結合した細胞膜染色試薬に由来する蛍光とを検出した。
(iii)汗腺収縮誘導試薬ピロカルピンの代わりに、汗腺収縮誘導試薬アセチルコリンを用いた。
(iv)観察開始時から60秒間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加する代わりに、観察開始から10分間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加した。
タイムラプス撮影の条件は、以下の通りである。
<タイムラプス撮影条件>
X:116.127μm
Y:185.679μm
Z:34.6μm
Zインターバル:5μm
Z枚数:8枚
タイムインターバル:30秒間
全フレーム数:66フレーム
全観察時間:30分間以上
実施例2において、核染色試薬に由来する蛍光と細胞膜染色試薬に由来する蛍光とに基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を図6に示す。図6に記載のパネル(A1)〜(G1)は、核染色試薬と細胞膜染色試薬とによる二重染色像である。
また、図6に記載のパネル(A2)〜(G2)は、それぞれ、パネル(A1)〜(G1)に対応する核染色試薬による染色像である。図6に記載のパネル(A3)〜(G3)は、それぞれ、パネル(A1)〜(G1)に対応する細胞膜染色試薬による染色像である。図6に記載のパネル(A1)〜(G3)と、観察開始時からの経過時間との対応関係は、表2に示されるとおりである。また、図6に記載のスケールバーは、50μmを示す。
図6に示された結果から、経時とともに汗腺が動いていることがわかる。したがって、前記結果から、生きている状態で単離された全汗腺を細胞骨格染色試薬、細胞膜染色試薬および核染色試薬のいずれかによって染色し、前記全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲンによって前記全汗腺を支持体に保持させることにより、生きている状態の汗腺の動きが観察できることがわかる。
実施例3
(1)全汗腺の単離
実施例1(1)と同様の操作を行ない、全汗腺を単離した。
(2)染色
実施例1(2)と同様の操作を行ない、染色を行なった。
(3)支持体上への染色された全汗腺の位置固定
実体顕微鏡〔ライカ(Leica)社製、商品名:M125〕下において、実施例3(2)で得られた洗浄後の全汗腺をガラスボトムディッシュに静置した。つぎに、前記全汗腺に、40℃に保たれた3質量%低融点アガロース含有PBSを滴下した。低融点アガロース滴下後の全汗腺を室温(24℃)で10分間放置することにより、低融点アガロースをゲル化させた。その後、全汗腺が乾燥しないように、ゲル化された低融点アガロース上に等張液〔細胞外溶液(組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mMエンカカルシウム、2mM塩化マグネシウム、10mM HEPES緩衝液および10mMグルコース、pH7.4)〕を添加した。これにより、全汗腺が位置ずれしないように、低融点アガロースによって前記全汗腺を支持体であるガラスボトムディッシュに保持させて観察試料を得た。
(4)観察
実施例1(4)において、実施例1(3)で得られた観察試料を用いる代わりに、実施例3(3)で得られた観察試料を用いたこと;実施例1(4)において、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光と、細胞骨格に結合した細胞骨格染色試薬に由来する蛍光とを検出する代わりに、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光を検出したこと;実施例1(4)において、観察開始時から60秒間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加する代わりに観察開始から10分間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加したことを除き、実施例1(4)と同様の操作を行ない、汗腺の動態を観察した。タイムラプス撮影の条件は、以下の通りである。
<タイムラプス撮影条件>
X:319.194μm
Y:227.286μm
Z:30.0μm
Zインターバル:2μm
Z枚数:16枚
タイムインターバル:10秒間
全フレーム数:201フレーム
全観察時間:30分間以上
実施例3において、核染色試薬に由来する蛍光に基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を図7に示す。図7に記載のパネル(A1)〜(G1)は、核染色試薬による染色像である。図7に記載のパネル(A1)〜(G1)と、観察開始時からの経過時間との対応関係を、表3に示す。また、図7に記載のスケールバーは、100μmを示す。
また、図7に記載の矢印で示された細胞を選択し、細胞の移動距離の経時的変化を調べた。
実施例3において、図7の隣り合うパネル間での汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を図8に示す。
図8に示された結果から、時間の経過に伴い、細胞の移動が見られることがわかる。したがって、前記結果から、生きている状態で単離された全汗腺を細胞骨格染色試薬、細胞膜染色試薬および核染色試薬のいずれかによって染色し、前記全汗腺が位置ずれしないように、アガロースによって前記全汗腺を支持体に保持させることにより、生きている状態の汗腺の動きが観察できることがわかる。
実施例4
(1)全汗腺の単離
実施例1(1)と同様の操作を行ない、全汗腺を単離した。
(2)染色
実施例1(2)と同様の操作を行ない、染色を行なった。
(3)支持体上への染色された全汗腺の位置固定
実施例1(3)において、コラーゲン タイプI−Aを用いる代わりに、基底膜マトリックス〔コーニング(Corning)社製、商品名:マトリゲル基底膜マトリックス〕を用いたことを除き、実施例1(3)と同様の操作を行ない、観察試料を得た。
(4)観察
実施例1(4)において、実施例1(3)で得られた観察試料を用いる代わりに、実施例4(3)で得られた観察試料を用いたこと;実施例1(4)において、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光と、細胞骨格に結合した細胞骨格染色試薬に由来する蛍光とを検出する代わりに、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光を検出したこと;実施例1(4)において、観察開始時から60秒間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加する代わりに観察開始から10分間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加したことを除き、実施例1(4)と同様の操作を行ない、汗腺の動態を観察した。タイムラプス撮影の条件は以下の通りである。
<タイムラプス撮影条件>
X:274.482μm
Y:401.166μm
Z:44.0μm
Zインターバル:2μm
Z枚数:23枚
タイムインターバル:20秒間
全フレーム数:101フレーム
全観察時間:30分間以上
実施例4において、核染色試薬に由来する蛍光に基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を図9に示す。図9に記載のパネル(A1)〜(G1)は、核染色試薬による染色像である。図9に記載のパネル(A1)〜(G1)と、観察開始時からの経過時間との対応関係は、表3に示されるパネル(A1)〜(G1)と、観察開始時からの経過時間との対応関係と同様である。また、図9に記載のスケールバーは、200μmを示す。
また、図9に記載の矢印で示された細胞を選択し、細胞の移動距離の経時的変化を調べた。
実施例4において、図9の隣り合うパネル間での汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を図10に示す。
図10に示された結果から、時間の経過に伴い、細胞の移動が見られることがわかる。
したがって、前記結果から、生きている状態で単離された全汗腺を細胞骨格染色試薬、細胞膜染色試薬および核染色試薬のいずれかによって染色し、前記全汗腺が位置ずれしないように、基底膜マトリックスによって前記全汗腺を支持体に保持させることにより、生きている状態の汗腺の動きが観察できることがわかる。
実施例5
(1)全汗腺の単離
実施例1(1)と同様の操作を行ない、全汗腺を単離した。
(2)染色
実施例1(2)と同様の操作を行ない、染色を行なった。
(3)支持体上への染色された全汗腺の位置固定
200μg/mLポリ−D−リジン含有水溶液をガラスボトムディッシュの表面に塗布した。塗布後のガラスボトムディッシュを37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション後のガラスボトムディッシュを滅菌水で2回洗浄した。これにより、ポリリジン被覆ガラスボトムディッシュを得た。
つぎに、実体顕微鏡〔ライカ(Leica)社製、商品名:M125〕下において、実施例1(2)で得られた洗浄後の全汗腺をポリリジン被覆ガラスボトムディッシュに静置した。その後、全汗腺が乾燥しないように、全汗腺上に等張液(細胞外溶液)を添加した。これにより、全汗腺が位置ずれしないように、ポリ−D−リジンによって前記全汗腺を支持体であるガラスボトムディッシュに保持させて観察試料を得た。
(4)観察
実施例1(4)において、実施例1(3)で得られた観察試料を用いる代わりに、実施例5(3)で得られた観察試料を用いたこと;実施例1(4)において、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光と、細胞骨格に結合した細胞骨格染色試薬に由来する蛍光とを検出する代わりに、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光を検出したこと;実施例1(4)において、観察開始時から60秒間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加する代わりに観察開始から10分間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加したことを除き、実施例1(4)と同様の操作を行ない、汗腺の動態を観察した。タイムラプス撮影の条件は以下の通りである。
<タイムラプス撮影条件>
X:403.65μm
Y:271.988μm
Z:70μm
Zインターバル:2μm
Z枚数:36枚
タイムインターバル:20秒間
全フレーム数:101フレーム
全観察時間:30分間以上
実施例5において、核染色試薬に由来する蛍光に基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を図11に示す。図11に記載のパネル(A1)〜(G1)は、核染色試薬による染色像である。図11に記載のパネル(A1)〜(G1)と、観察開始時からの経過時間との対応関係は、表3に示されるパネル(A1)〜(G1)と、観察開始時からの経過時間との対応関係と同様である。また、図11に記載のスケールバーは、200μmを示す。
また、図11に記載の矢印で示された細胞を選択し、細胞の移動距離の経時的変化を調べた。
実施例5において、図11に記載の隣り合うパネル間での汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を図12に示す。
図12に示された結果から、時間の経過に伴い、細胞の移動が見られることがわかる。
したがって、これらの結果から、生きている状態で単離された全汗腺を細胞骨格染色試薬、細胞膜染色試薬および核染色試薬のいずれかによって染色し、前記全汗腺が位置ずれしないように、ポリ−D−リジンによって前記全汗腺を支持体に保持させることにより、生きている状態の汗腺の動きが観察できることがわかる。
実施例6
(1)全汗腺の単離
実施例1(1)と同様の操作を行ない、全汗腺を単離した。
(2)染色
実施例1(2)と同様の操作を行ない、染色を行なった。
(3)支持体上への染色された全汗腺の位置固定
200μg/mLポリ−D−リジン含有水溶液をガラスボトムディッシュの表面に塗布した。塗布後のガラスボトムディッシュを37℃で30分間インキュベーションした。インキュベーション後のガラスボトムディッシュを滅菌水で2回洗浄した。これにより、ポリリジン被覆ガラスボトムディッシュを得た。
つぎに、20μg/mLラミニン含有水溶液を前記ポリリジン被覆ガラスボトムディッシュの表面に塗布した。塗布後のガラスボトムディッシュを37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション後のガラスボトムディッシュを滅菌水で2回洗浄した。これにより、ポリリジン−ラミニン被覆ガラスボトムディッシュを得た。
その後、実体顕微鏡〔ライカ(Leica)社製、商品名:M125〕下において、実施例1(2)で得られた洗浄後の全汗腺を前記ポリリジン−ラミニン被覆ガラスボトムディッシュに静置した。その後、全汗腺が乾燥しないように、全汗腺上に等張液(細胞外溶液)を添加した。これにより、全汗腺が位置ずれしないように、ポリ−D−リジンとラミニンとを併用することによって前記全汗腺を支持体であるガラスボトムディッシュに保持させて観察試料を得た。
(4)観察
実施例1(4)において、実施例1(3)で得られた観察試料を用いる代わりに、実施例6(3)で得られた観察試料を用いたこと;実施例1(4)において、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光と、細胞骨格に結合した細胞骨格染色試薬に由来する蛍光とを検出する代わりに、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光を検出したこと;実施例1(4)において、観察開始時から60秒間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加する代わりに観察開始から10分間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加したことを除き、実施例1(4)と同様の操作を行ない、汗腺の動態を観察した。タイムラプス撮影の条件は以下の通りである。
<タイムラプス撮影条件>
X:351.486μm
Y:614.79μm
Z:34.0μm
Zインターバル:2μm
Z枚数:18枚
タイムインターバル:20秒間
全フレーム数:101フレーム
全観察時間:30分間以上
実施例6において、核染色試薬に由来する蛍光に基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を図13に示す。図13に記載のパネル(A1)〜(G1)は、核染色試薬による染色像である。図13に記載のパネル(A1)〜(G1)と、観察開始時からの経過時間との対応関係は、表3に示されるパネル(A1)〜(G1)と、観察開始時からの経過時間との対応関係と同様である。また、図13に記載のスケールバーは、200μmを示す。
また、図13に記載の矢印で示された細胞を選択し、細胞の移動距離の経時的変化を調べた。
実施例6において、図13の隣り合うパネル間での汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を図14に示す。
図14に示された結果から、時間の経過に伴い、細胞の移動が見られることがわかる。
したがって、これらの結果から、生きている状態で単離された全汗腺を細胞骨格染色試薬、細胞膜染色試薬および核染色試薬のいずれかによって染色し、前記全汗腺が位置ずれしないように、ポリ−D−リジンとラミニンとを併用することによって前記全汗腺を支持体に保持させることにより、生きている状態の汗腺の動きが観察できることがわかる。
実施例7
(1)全汗腺の単離
実施例1(1)と同様の操作を行ない、全汗腺を単離した。
(2)染色
実施例1(2)と同様の操作を行ない、染色を行なった。
(3)支持体上への染色された全汗腺の位置固定
メルクミリポア社製の商品名:ミリセルセルカルチャーインサートのメンブラン部分を切り取り、メンブランを得た。
つぎに、実体顕微鏡〔ライカ(Leica)社製、商品名:M125〕下において、実施例1(2)で得られた洗浄後の全汗腺をガラスボトムディッシュに静置した。ガラスボトムディッシュに静置された全汗腺上に前記メンブランを載置した。その後、全汗腺が乾燥しないように、全汗腺上に等張液(細胞外溶液)を添加した。これにより、前記全汗腺が位置ずれしないように、メンブランによって全汗腺を支持体であるガラスボトムディッシュに保持させて観察試料を得た。
(4)観察
実施例1(4)において、実施例1(3)で得られた観察試料を用いる代わりに、実施例7(3)で得られた観察試料を用いたこと;実施例1(4)において、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光と、細胞骨格に結合した細胞骨格染色試薬に由来する蛍光とを検出する代わりに、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光を検出したこと;実施例1(4)において、観察開始時から60秒間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加する代わりに観察開始から10分間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加したことを除き、実施例1(4)と同様の操作を行ない、汗腺の動態を観察した。タイムラプス撮影の条件は以下の通りである。
<タイムラプス撮影条件>
X:473.202μm
Y:515.43μm
Z:30μm
Zインターバル:2μm
Z枚数:16枚
タイムインターバル:20秒間
全フレーム数:101フレーム
全観察時間:30分間以上
実施例7において、核染色試薬に由来する蛍光に基づき、汗腺の動態をタイムラプス撮影によって観察した結果を図15に示す。図15に記載のパネル(A1)〜(G1)は、核染色試薬による染色像である。図15に記載のパネル(A1)〜(G1)と、観察開始時からの経過時間との対応関係は、表3に示されるパネル(A1)〜(G1)と、観察開始時からの経過時間との対応関係と同様である。また、図15に記載のスケールバーは、200μmを示す。
また、図15に記載の矢印で示された細胞を選択し、細胞の移動距離の経時的変化を調べた。
実施例7において、図15に記載の隣り合うパネル間での汗腺中の細胞の移動距離の経時的変化を図16に示す。
図16に示された結果から、時間の経過に伴い、細胞の移動が見られることがわかる。
したがって、これらの結果から、生きている状態で単離された全汗腺を細胞骨格染色試薬、細胞膜染色試薬および核染色試薬のいずれかによって染色し、前記全汗腺が位置ずれしないように、メンブランによって前記全汗腺を支持体に保持させることにより、生きている状態の汗腺の動きが観察できることがわかる。
比較例1
(1)全汗腺の単離
実施例1(1)と同様の操作を行ない、全汗腺を単離した。
(2)染色
実施例1(2)と同様の操作を行ない、染色を行なった。
(3)支持体上への染色された全汗腺の位置固定
20μg/mLラミニン含有水溶液をガラスボトムディッシュの表面に塗布した。塗布後のガラスボトムディッシュを37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション後のガラスボトムディッシュを滅菌水で2回洗浄した。これにより、ラミニン被覆ガラスボトムディッシュを得た。
その後、実体顕微鏡〔ライカ(Leica)社製、商品名:M125〕下において、実施例1(2)で得られた洗浄後の全汗腺を前記ラミニン被覆ガラスボトムディッシュに静置した。その後、全汗腺が乾燥しないように、全汗腺上に等張液(細胞外溶液)を添加し、観察試料を得た。
(4)観察
実施例1(4)において、実施例1(3)で得られた観察試料を用いる代わりに、比較例1(3)で得られた観察試料を用いたこと;実施例1(4)において、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光と、細胞骨格に結合した細胞骨格染色試薬に由来する蛍光とを検出する代わりに、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光を検出したこと;実施例1(4)において、観察開始時から60秒間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加する代わりに観察開始から10分間経過後に汗腺収縮誘導試薬を全汗腺に添加したことを除き、実施例1(4)と同様の操作を行ない、汗腺の動態を観察した。
その結果、汗腺が位置ずれしてしまい、汗腺の動態を観察することができなかった。
以上説明したように、生きている状態で単離された全汗腺を細胞骨格染色試薬、細胞膜染色試薬および核染色試薬の少なくとも1種の染色試薬によって染色し、前記全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって前記全汗腺を支持体に保持させた観察試料を用いることにより、生きている状態の汗腺の動きが観察できることがわかる。
実施例8
実施例1において、PBSを用いる代わりにクレブス・リンガー液(組成:125mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、1mM塩化カルシウム、1.2mM塩化マグネシウム、25mM炭酸水素ナトリウム、1.2mMリン酸二水素ナトリウム、5mMグルコースおよび10mg/100mL脂肪酸不含ウシ血清アルブミン、pH7.48)を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、全汗腺のタイムラプス撮影による観察を行なった。観察開始時から10分間経過後に、汗腺収縮誘導試薬(刺激薬)であるピロカルピンをその濃度が10mMとなるように前記全汗腺に添加し、全汗腺のタイムラプス撮影による観察を続けた。
つぎに、画像解析ソフトウェア〔ビットプレーン(BITPLANE)製、商品名:Imaris〕を用い、図17に示される測定部位(A)〜(C)それぞれにおける外径指標値の経時的変化を求めた。外径指標値は、データをZ方向に積み重ね、サーフェス(Surface)モードで下記の設定条件で画像解析ソフトウェアを用いることによって算出された値である。
<測定部位(A)の設定条件>
Manual Threshold Value = 650.963、
Manual Threshold Value B = 1539.68、および
Number of Voxels above 2.37e4。
<測定部位(B)の設定条件>
Manual Threshold Value = 588.389、
Manual Threshold Value B = 1629.69、および
Number of Voxels above 2.84e4。
<測定部位(C)の設定条件>
Manual Threshold Value = 353.494、
Manual Threshold Value B = 1720.12、および
Number of Voxels above 2.69e4。
なお、図17において、測定部位(A)は筋細胞に包まれている部分、測定部位(B)と測定部位(C)は筋細胞に包まれておらず、汗の通り道となる部分である。また、図17中、スケールバーは50μmを示す。
また、前記データのZ方向への積み重ねを解除し、Z方向において、1種類のデータを用い、図18に示される測定部位(A)〜(C)それぞれにおける内径指標値の経時的変化を求めた。内径指標値は、サーフェス(Surface)モデルを作成した後、画像解析ソフトウェアに含まれるMaskツールを用いてサーフェス(Surface)モデル中の成分を抽出し、下記の設定条件で画像解析ソフトウェアを用いることによって算出された値である。
<測定部位(A)の設定条件>
Manual Threshold Value = 159.839、
Manual Threshold Value B = 289.434、および
Distance to Image Border XY Between 40.6μm and 2450μm。
<測定部位(B)の設定条件>
Manual Threshold Value = 305.011、
Manual Threshold Value B = 585.989、および
Number of Voxels between 1.00 and 1091
Distance to Image Border XY Between 43.0μm and 55.1μm。
<測定部位(C)の設定条件>
Manual Threshold Value = 365.977、
Manual Threshold Value B = 518.235、
Number of Voxels between 1.00 and 1021、
Distance to Image Border XY Between 53.6μm and 72.8μm、および
Distance from Origin between 166μm and automatic threshold。
なお、図18に示される測定部位(A)〜(C)は、図17に示される測定部位(A)〜(C)に対応する。図18中、スケールバーは50μmを示す。
実施例8において、図17の図面代用写真に示される測定部位における外径指標値の経時的変化を図19に示す。図19中、(A)は図17中の(A)の測定部位における外径指標値の経時的変化、(B)は図17中の(B)の測定部位における外径指標値の経時的変化、(C)は図17中の(C)の測定部位における外径指標値の経時的変化を示す。また、実施例8において、図18の図面代用写真に示される測定部位における内径指標値の経時的変化を図20に示す。図20中、(A)は図18中の(A)の測定部位における内径指標値の経時的変化、(B)は図18中の(B)の測定部位における内径指標値の経時的変化、(C)は図18中の(C)の測定部位における内径指標値の経時的変化を示す。
図19に示された結果から、測定部位(A)における外径指標値は、刺激薬による刺激後に低下した後、上昇するので、測定部位(A)は、刺激薬による刺激後に収縮した後、膨張することがわかる。また、測定部位(B)における外径指標値は、刺激薬による刺激後に上昇するので、測定部位(B)は、刺激薬による刺激後に膨張することがわかる。さらに、測定部位(C)における外径指標値は、刺激薬による刺激後にほとんど変化しないことがわかる。
図20に示された結果から、測定部位(A)における内径指標値は、刺激薬による刺激後に大きく低下した後、上昇するので、測定部位(A)は、刺激薬による刺激後に収縮した後、膨張することがわかる。また、測定部位(B)における外径指標値は、刺激薬による刺激直後にはほとんど変化しないが、しばらく時間が経過した時点で上昇するので、測定部位(B)は、刺激薬による刺激後から時間が経過した後に膨張することがわかる。さらに、測定部位(C)における外径指標値は、刺激薬による刺激直後にはほとんど変化しないが、しばらく時間が経過した時点で上昇するので、測定部位(C)は、刺激薬による刺激後から時間が経過した後に膨張することがわかる。
これらの結果から、汗管は、筋肉に包まれた部分がいったん収縮した後、膨張することにより、汗の通り道に汗を輸送することが示唆される。
なお、クレブス・リンガー液の代わりにPBSまたは細胞外溶液を用いたときの汗腺の収縮および膨張を調べたところ、PBSまたは細胞外溶液を用いたときの汗腺の収縮および膨張の度合いは、クレブス・リンガー液を用いたときの汗腺の収縮および膨張の度合いと比べて小さいことが示された。
以上説明したように、生きている状態で単離された全汗腺を細胞骨格染色試薬、細胞膜染色試薬および核染色試薬のいずれかによって染色し、前記全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって支持体に保持された全汗腺上に緩衝液としてクレブス・リンガー液を添加することにより、汗腺の収縮および膨張の動きを良好に観察できることがわかる。
実施例9
実施例1において、PBSを用いる代わりにクレブス・リンガー液を用いたこと、全汗腺のタイムラプス撮影による観察前に被験物質としてアトロピンをその濃度が40μMになるように全汗腺に添加して当該全汗腺を30分間インキュベーションしたこと、および観察開始から10分間経過後にピロカルピンをその濃度が10mMとなるように全汗腺に添加したことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、全汗腺のタイムラプス撮影による観察を行なった(実験番号1)。つぎに、図21において、細胞E、細胞F、細胞G、細胞Hおよび細胞Iを選択し、実施例1と同様の操作を行なうことにより、各細胞の移動距離を調べた。つぎに、各細胞の移動距離を用いて細胞の移動距離の平均値を求めた。なお、図21中、スケールバーは、50μmを示す。
また、実施例1において、PBSを用いる代わりにクレブス・リンガー液を用いたこと、および観察開始から10分間経過後にピロカルピンをその濃度が10mMとなるように全汗腺に添加したことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、全汗腺のタイムラプス撮影による観察を行なった(実験番号2)。つぎに、図22において、細胞J、細胞K、細胞L、細胞Mおよび細胞Nを選択し、実施例1と同様の操作を行なうことにより、各細胞の移動距離を調べた。つぎに、各細胞の移動距離を用いて細胞の移動距離の平均値を求めた。なお、図22中、スケールバーは、50μmを示す。
実施例9において、実験番号1の汗腺における細胞の移動距離の経時的変化を図23、実験番号2の汗腺における細胞の移動距離の経時的変化を図24に示す。
図23および24に示された結果から、アトロピンを接触させた実験番号1の汗腺における細胞の移動距離の経時的変化(図23)は、アトロピンを接触させていない実験番号2の全汗腺における細胞の移動距離の経時的変化(図24)と比べて小さいことがわかる。これらの結果から、アトロピンは、制汗作用を有する物質であると判断することができる。したがって、生きている状態で単離された全汗腺を染色試薬によって染色し、前記全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって前記全汗腺を支持体に保持させた観察試料を用いることにより、被験物質が制汗作用などの発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価することができることがわかる。
1 汗腺
2 分泌腺
3 汗管
4 皮膚
5 真皮
6 コイル構造

Claims (8)

  1. (A)単離された全汗腺を、細胞膜に対する染色試薬、核に対する染色試薬および細胞骨格構成物質に対する染色試薬からなる群より選ばれた少なくとも1種の染色試薬によって染色するステップ、
    (B)前記ステップ(A)で染色された全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって前記染色された全汗腺を支持体上に保持させて観察試料を得るステップ、および
    (C)前記ステップ(B)で得られた観察試料に含まれる全汗腺の動態を観察するステップ
    を含む汗腺の動態の観察方法。
  2. 前記ステップ(B)において、支持体上に保持された全汗腺上に緩衝液を添加する請求項1に記載の汗腺の動態の観察方法。
  3. 前記緩衝液が塩化ナトリウム100〜150mMと塩化カリウム3〜7mMと塩化カルシウム0.5〜2mMと塩化マグネシウム0.5〜2mMと炭酸水素ナトリウム20〜30mMとリン酸二水素ナトリウム0.5〜2mMとグルコース2〜8mMと脂肪酸不含ウシ血清アルブミン5〜15mg/100mLとを含有し、pHが7.1〜7.6である緩衝液である請求項2に記載の汗腺の動態の観察方法。
  4. 前記ステップ(C)において、前記観察試料に含まれる全汗腺と刺激薬とを接触させ、前記刺激薬に起因する全汗腺の動態を観察する請求項1〜3のいずれか1項に記載の汗腺の動態の観察方法。
  5. 被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価する被験物質の評価方法であって、
    (a)単離された全汗腺を、細胞膜に対する染色試薬、核に対する染色試薬および細胞骨格構成物質に対する染色試薬からなる群より選ばれた少なくとも1種の染色試薬によって染色するステップ、
    (b)前記ステップ(a)で染色された全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン、アガロース、基底膜マトリックス、ポリ−D−リジンおよびメンブランからなる群より選ばれた少なくとも1種によって前記染色された全汗腺を支持体上に保持させて観察試料を得るステップ、
    (c)前記ステップ(b)で得られた観察試料に含まれる全汗腺と被験物質とを接触させ、当該全汗腺の動態を観察するステップ、および
    (d)前記ステップ(c)で観察された全汗腺の動態に基づき、被験物質が発汗制御作用を有する物質であるかどうかを評価するステップ
    を含む被験物質の評価方法。
  6. 前記ステップ(b)において、支持体上に保持された全汗腺上に緩衝液を添加する請求項5に記載の被験物質の評価方法。
  7. 前記緩衝液が塩化ナトリウム100〜150mMと塩化カリウム3〜7mMと塩化カルシウム0.5〜2mMと塩化マグネシウム0.5〜2mMと炭酸水素ナトリウム20〜30mMとリン酸二水素ナトリウム0.5〜2mMとグルコース2〜8mMと脂肪酸不含ウシ血清アルブミン5〜15mg/100mLとを含有し、pHが7.1〜7.6である緩衝液である請求項6に記載の被験物質の評価方法。
  8. 前記ステップ(c)において、前記観察試料に含まれる全汗腺と被験物質と刺激薬とを接触させ、当該全汗腺の動態を観察する請求項5〜7のいずれか1項に記載の被験物質の評価方法。

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