JP6275369B2 - 流体動圧軸受用の素材、同素材を用いた軸部材および同軸部材を用いた流体動圧軸受 - Google Patents

流体動圧軸受用の素材、同素材を用いた軸部材および同軸部材を用いた流体動圧軸受 Download PDF

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Description

本発明は、流体動圧軸受用の素材、同素材を用いた軸部材および同軸部材を用いた流体動圧軸受に関する。
流体動圧軸受は、その高回転精度および静粛性から、各種ディスク駆動装置(例えばHDDの磁気ディスク駆動装置や、CD−ROM等の光ディスク駆動装置等)のスピンドルモータ用、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ用、プロジェクタのカラーホイールモータ用、又は電気機器の冷却等に使用されるファンモータなどの小型モータ用として好適に使用されている。
この種の流体動圧軸受をHDD等のディスク駆動装置に使用した例を図6に示す。同図で1は流体動圧軸受、2は軸部材、3はディスクハブ、4はステータコイル、5はロータマグネット、6はモータベース、7はハウジング、8は軸受スリーブ、10は蓋部材、21は軸部、22はフランジ部、Dはディスクを示す。
前記軸部材2は、通常、図7(A)のようにその外周面21aの一部に径を僅かに小さくした円筒状の逃げ部2aを形成し、当該逃げ部2aと軸受スリーブ8との間に所定量の潤滑油を保持し、同時にラジアル隙間を増大することで摩擦トルクを低減する。そして当該逃げ部2aの両側の円筒部2b、2cの一部にラジアル軸受部を構成する動圧溝パターンA1、A2が形成される。
前記動圧溝パターンA1、A2は、図7(B)のように逃げ部2aの両側に円筒部2b、2cを形成した軸素材2’を、上下一対の転造型の間に挟んで公知の転造法により形成する(特許文献1:特開平7−114766号公報、図4参照)。これにより例えば複数本のヘリングボーン形状の動圧溝Gが形成される。なお、前記ラジアル軸受部を構成する動圧溝パターンA1、A2は、軸部材2の外周面に形成する代わりに、軸受部材9の内周面に転造ボール等を使用して形成することもある(特許文献2:特開平10−137886号公報、図1参照)。転造により形成した軸部材2は、その後、熱処理を施して焼入れ軸とし、当該焼入れ軸の外周面に研削等の最終仕上げを施すことで、外周面が所定精度にされた完成品としての軸部材2を得る。そして軸部材2の端部、すなわち動圧溝形成領域2bの端部に、スラスト軸受部を形成するフランジ部22が取り付けられる。
特開平7−114766号公報 特開平10−137886号公報
転造法は塑性変形により素材表面の材料を移動させることで所望形状を得る加工法であるため、軸素材の表面に窪んだ逃げ部があると当該逃げ部側に向かう材料流れが生じやすい。従来の軸部材2は図7(A)のように動圧溝Gを形成した動圧溝パターンA1、A2の片側A1a、A2aが一段低い逃げ部2aに隣接し、当該逃げ部2aから動圧溝パターンA1、A2に流体を引き込むようにしているが、動圧溝パターンA1、A2の反対側は軸部材2の同じ高さの円筒部2b、2cにそのまま連続している。
このため、当該動圧溝Gの深さは逃げ部2aに隣接した側A1a、A2aが反対側A1b、A2bに比べてより深くなり、逃げ部2aと反対側A1b、A2bは材料が逃げるスペースがないため相対的に動圧溝Gの深さが浅くなる傾向がある。この結果、図8の溝深さ測定結果に示すように溝深さが軸方向で傾斜して左右でアンバランスとなり、安定した動圧効果とラジアル方向軸受剛性が得られないという課題がある。転造治具の動圧溝形成用凸部の高さ変更で当該課題を解消することも不可能ではないが、凸部の加工が難しくコスト高となる。
前記課題を解決するため、本発明は、軸受部材に軸部材を挿入し両部材間にラジアル軸受部を形成した流体動圧軸受に使用する前記軸受部材又は軸部材のための流体動圧軸受用素材であって、前記ラジアル軸受部に動圧作用を発生させる複数の動圧溝を形成するための動圧溝形成領域と、当該動圧溝形成領域の片側に隣接して前記動圧溝に供給する流体を保持可能に前記動圧溝よりも大きな深さを有する逃げ部と、前記動圧溝形成領域の他側に隣接した逃げ溝とを有し、当該逃げ溝の深さを前記動圧溝の深さ以上かつ前記逃げ部の深さ以下にしたことを特徴とする流体動圧軸受用素材である。
このように、動圧溝形成領域の反対側に逃げ部方向への材料流れと同様の材料流れを生じさせる逃げ溝を設けることで、動圧溝転造形成における材料流れを動圧溝形成領域の両側で等しくし、動圧溝深さの軸方向勾配をなくすことができる。これにより動圧溝深さのバランスが取れて安定した動圧効果とラジアル方向軸受剛性が得られる。
前記動圧溝形成領域は、逃げ部を間に挟んで少なくとも2箇所に形成することができる。こうすることで、逃げ部によって回転トルクの上昇を抑制しつつ、離隔配置した少なくとも2つのラジアル軸受部によって軸部材のモーメント剛性を高めることができる。また、逃げ部に保持した流体をラジアル軸受部に潤沢供給することが可能となり、ラジアル方向における回転精度の安定化が図られる。なお、軸部材側に逃げ部を形成した場合、軸受部材側の内周面を径一定の真円状円筒面に形成して、その製造コストを低廉化しつつ、軸部材の外周面と軸受部材の内周面との間に流体溜りを設けることができる。
前記逃げ溝の深さは、動圧溝の深さ以上であって逃げ部の深さ以下に設定し、望ましくは、逃げ部の深さと同程度にするのがよい。具体的には、逃げ溝の深さは20μm以上50μm以下に設定するのが望ましい。環状溝の深さが20μm以下であると材料流れを促進する効果が不十分である一方、50μm以上にしても材料流れを一段と促進する格別の効果が得られないためである。また、逃げ溝の深さを逃げ部の深さと同程度にすることで、動圧溝の深さのバランスがより良好に取れてより安定した動圧効果とラジアル方向軸受剛性が得られる。
前記逃げ溝の幅は0.5mm以下にするのが望ましい。逃げ溝の幅を0.5mm超にしても、材料流れを一段と促進する格別の効果は得られないためである。特に、逃げ溝の外側にシール部を形成する流体動圧軸受用の軸素材では、逃げ溝の幅を0.5mm超にすると、逃げ溝の一部がシール空間(テーパー部)に入り込み過ぎてシール空間の隙間間隔が広くなり、毛細管力が弱まってシール性が低下する。
前記軸素材は、動圧溝の転造形成前に予め熱処理を施して表面硬化させておくことが後工程での作業を容易化等するために望ましい。軸部材の外周面に形成される動圧溝は、必要とされる深さ寸法がミクロンオーダーであることから、熱処理により形成された表面硬化層(焼入れ軸)に転造加工を施した場合でも所定の深さ寸法を具備した動圧溝を形成することができる。
また、動圧溝を転造形成した後、すなわち軸素材に内部応力が蓄積された状態で軸素材に熱処理を施す必要がなくなるため、歪みによる変形が生じ難くなる。従って、場合によっては最終仕上げを省略することができ、また、最終仕上げを施す場合であってもその加工量を少なくすることができる。
さらに、転造加工を施すよりも先に、表面硬化層の表層部(焼入れ軸の外表面)に形成された黒皮の除去加工を実行することができる。転造加工前の焼入れ軸の外周面は、動圧発生用の凹部等の微小な凹凸が存在しない概ね平滑な円筒面状を呈することから、黒皮を容易に除去することができる。これにより、黒皮が軸部材から剥離してコンタミとなり、軸受性能が低下するような問題が生じ難くなる。
前記軸受部材は多孔質体又は焼結金属で構成することができる。これにより、多孔質体又は焼結金属の内部空孔に潤滑油を含浸保持することができ、逃げ部内の潤滑油がラジアル軸受隙間側に引き込まれて当該逃げ部における潤滑油の圧力が低下しても、軸受部材の内部空孔に含浸された潤滑油が逃げ部の表面開孔から逃げ部内に供給され、逃げ部内の負圧の発生を防止できる。
以上で述べた本発明に係る流体動圧軸受用素材を使用した流体動圧軸受は、ステータコイルと、ロータマグネットとを有するモータ、例えばディスク駆動装置用のスピンドルモータに組み込んで好適に使用可能である。
本発明によれば、動圧溝形成領域の逃げ部とは反対側に逃げ溝を設けたことで、動圧溝転造形成時の材料流れを動圧溝形成領域の両側で等しくし、動圧溝の軸方向の溝深さ勾配をなくして動圧溝の深さバランスを取り、安定した動圧効果とラジアル方向軸受剛性が得られる。
本発明の実施形態に係る流体動圧軸受の含軸断面図である。 (A)は軸部材の側面図であり、(B)は軸素材の側面図である。 軸部材の製造工程を示すブロック図である。 軸部材の動圧溝の深さの測定結果を示す図である。 (A)は軸部材の変形例の側面図であり、(B)は軸素材の側面図である。 従来の流体動圧軸受が組み込まれた情報機器用スピンドルモータの一例を概念的に示す断面図である。 (A)は従来の軸部材の側面図であり、(B)は軸素材の側面図である。 従来の軸部材の動圧溝の深さの測定結果を示す図である。
以下、本発明を図6と同じHDD等のディスク駆動装置に使用する流体動圧軸受に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。図1の流体動圧軸受1は、軸方向の両端部が開口した軸受部材9と、軸受部材9の内周に挿入された軸部材2と、軸受部材9の一端開口を閉塞する蓋部材10とを構成部材として備え、内部空間には潤滑流体としての潤滑油(密な散点ハッチングで示す)が充填されている。
(軸受部材)
本実施形態では、軸部材2を内周に挿入した軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8を内周に保持(固定)したハウジング7とで軸受部材9が構成される。なお、以下では、便宜上、蓋部材10が設けられた側を下側、その軸方向反対側を上側として説明を進める。
軸受スリーブ8は、焼結金属からなる多孔質体、例えば、銅あるいは鉄を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。軸受スリーブ8は、焼結金属以外のその他の多孔質体、例えば多孔質樹脂やセラミックスで形成することもできるし、黄銅、ステンレス鋼等の中実(非多孔質)の金属材料で形成することもできる。
軸受スリーブ8の内周面8aは、凹凸のない平滑な円筒面に形成され、また軸受スリーブ8の外周面8dは、円周方向の一又は複数箇所に軸方向溝8d1が設けられている点を除き、凹凸のない平滑な円筒面に形成されている。軸受スリーブ8の下側端面8bは凹凸のない平坦面に形成されており、上側端面8cには、環状溝8c1と、外径端が環状溝8c1に繋がった径方向溝8c2とが形成されている。
蓋部材10は、金属材料でプレート状に形成される。詳細は後述するが、蓋部材10の上側端面10aは、軸部材2のフランジ部2fの下側端面2f2との間に第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する環状領域を有する。この環状領域は平滑な平坦面に形成されており、動圧溝等、スラスト軸受隙間に介在する潤滑油に動圧作用を発生させるための凹部は設けられていない。
ハウジング7は、溶製材(例えば、黄銅やステンレス鋼等の中実の金属材料)で軸方向両端が開口した略円筒状に形成されており、軸受スリーブ8および蓋部材10を内周に保持した本体部7aと、本体部7aの上端から内径側に延びたシール部7bとを一体に有する。本体部7aの内周面には、相対的に小径の小径内周面7a1と、相対的に大径の大径内周面7a2とが設けられ、小径内周面7a1および大径内周面7a2には、軸受スリーブ8および蓋部材10がそれぞれ固定されている。
ハウジング7に対する軸受スリーブ8および蓋部材10の固定手段は特に問わず、圧入、接着、圧入接着、溶接等、適宜の手段で固定することができる。本実施形態では、本体部7aの小径内周面7a1に軸受スリーブ8を隙間嵌めし、この隙間に接着剤を介在させるいわゆる隙間接着により、ハウジング7の内周に軸受スリーブ8が固定されている。小径内周面7a1の軸方向所定箇所には、接着剤溜りとして機能する環状溝7a3が形成されており、この環状溝7a3内に接着剤が充填され、固化することにより、ハウジング7に対する軸受スリーブ8の接着強度の向上が図られる。
シール部7bの内周面7b1は、下方に向けて漸次縮径したテーパ面状に形成され、対向する軸部材2の外周面21aとの間に下方に向けて径方向寸法を漸次縮小させたくさび状のシール空間Sを形成する。シール部7bの下側端面7b2(の内径側領域)には、軸受スリーブ8の上側端面8cが当接しており、これにより、ハウジング7に対する軸受スリーブ8の軸方向における相対的な位置決めがなされている。
シール部7bの下側端面7b2の外径側領域は、外径側に向かって徐々に上側に後退して軸受スリーブ8の上側端面8cとの間に環状隙間を形成している。この環状隙間の内径端部は、軸受スリーブ8の上側端面8cの環状溝8c1に繋がっている。
以上の構成を有するハウジング7は、樹脂の射出成形品とすることもできる。この場合、軸受スリーブ8をインサート部品としてハウジング7を樹脂で射出成形しても良い。また、ハウジング7は、マグネシウム合金やアルミニウム合金等に代表される低融点金属の射出成形品とすることもできるし、いわゆるMIM成形品とすることもできる。
(軸部材)
軸部材2は図1、図2(A)に示すように、外周面21aの軸方向の二箇所に、対向する軸受スリーブ8の内周面8aとの間にラジアル軸受隙間を形成する動圧溝パターンA1、A2が形成されている。この軸部材2は、図2(B)の形状の軸素材2’から形成する。この軸素材2’は、例えば焼入れされたステンレス鋼(例えばSUS420J2)等を鍛造等により図示の形状に形成したもので、その外周面には、円筒状の逃げ部2aと、当該逃げ部2aを両側から挟むように形成された動圧溝形成領域としての円筒部2b1、2c1と、その外側の環状の逃げ溝2d、2eと、さらにその外側の円筒部2b2、2c2が形成されている。
逃げ部2aの深さは、円筒部2b1、2c1に形成する動圧溝Gの深さよりも深く、例えば20μm以上50μm以下とすることができる。円筒部2b1、2c1は転造形成により動圧溝Gが形成される部位であり、その外径は円筒部2b2、2c2の外径と同じにしてある。環状の逃げ溝2d、2eの深さW1は(図1の部分拡大図参照)、例えば20μm以上50μm以下とすることができ、望ましくは逃げ部2aの深さと同程度にするのがよい。
逃げ溝2d、2eの幅W2は、例えば0.5mm以下とすることができる。特に、一方の逃げ溝2eの外側(上側)にはシール部Sがあるので、この逃げ溝2eがシール部Sに食い込まないようにする。通常、軸受スリーブ8の端部の面取りCの分だけ動圧溝パターンA2とシール部Sとの間隔が0.3mm程度とシール端面の面取りおよびフラット部の余裕があるので、これを利用して逃げ溝2eの幅0.5mmを確保する。逃げ溝2eの幅を0.5mm超にすると、設計条件によっては逃げ溝2eの一部がシール空間Sに入り込むこともあり、そうするとシール空間Sの先端隙間が広くなり、毛細管力が弱まってシール性が低下する。
動圧溝パターンA1、A2には、それぞれ、ラジアル軸受隙間に介在する潤滑油に動圧作用を発生させる動圧溝G(図1中、クロスハッチングで示す)が円周方向に複数設けられており、ここでは、複数の動圧溝Gがヘリングボーン形状に配列されている。なお、ヘリングボーン形状以外の動圧溝を形成することも勿論可能である。
本実施形態において、下側の動圧溝パターンA1に設けられた各動圧溝Gは軸方向対称に形成されている。上側のラジアル軸受面A2に設けられた各動圧溝Gは、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。各動圧溝Gの溝深さは、数μm程度、例えば2.5μm以上5μm以下の範囲で設計される。
軸部材2の外周面21aのうち、2つの動圧溝パターンA1、A2間には、動圧溝Gの底部よりも低い方に後退した(小径に形成された)円筒状の逃げ部2aが設けられている。軸部材2の外周面21aにこのような逃げ部2aを設けたことにより、一定内径の円筒面に形成された軸受スリーブ8の内周面8aとの間に円筒状の潤滑油溜りが形成される。これにより、軸受運転中には、潤滑油溜りと軸方向に隣接する2つのラジアル軸受隙間を常時潤沢な潤滑油で満たすことが可能となるので、ラジアル方向における回転精度の安定化が図られる。また、前記半径方向隙間の隙間幅がラジアル軸受隙間のそれよりも大きく確保されていることから、ロストルクを小さくすることができ、モータの低消費電力化に寄与する。
軸部材2及び軸素材2’は以上のように構成され、軸素材2’を焼入れした焼入れ軸を上下一対の転造型の間に導入した後、当該転造型を水平方向に相対移動させ、転造型の動圧溝形成部を焼入れ軸の外周面に押し付ける。これにより、焼入れ軸の外周面のうち、動圧溝形成領域の凸部が押し付けられた部位にあった肉が塑性流動して周囲に押し出され、動圧溝を画成する丘部が形成され、またこれと同時に動圧溝Gが形成される。
(軸部材の製作工程)
以上の構成を有する軸部材2は、図3に示すように、軸素材形成工程P1、熱処理工程P2、除去工程P3、転造工程P4および仕上げ工程P5を順に経て製作された軸部材2の下端に、別工程で製作したフランジ部2fを固定することで完成する。
(1)軸素材形成工程P1
この軸素材形成工程P1では、長尺のバー材から所定長さに切り出された短尺のバー材に所定の加工を施すことにより、動圧溝Gを除く部位が完成品としての軸部材2に近似した形状に仕上げられた図2(B)の軸素材2’を得る。図2(B)の形状は鍛造等の塑性加工や旋削等の機械加工で得ることができる。
(2)熱処理工程P2
この熱処理工程P2では、軸素材形成工程P1で得られた軸素材2’のうち、少なくとも外周面に熱処理を施すことにより、硬度がHV450以上、より好ましくはHV500以上の表面硬化層を有する焼入れ軸を得る。この熱処理工程P2は通常は転造工程P4の後に行うのが普通であるが、順番を逆にすることで後工程での作業を容易化等することができる。熱処理方法は特に問わず、高周波焼入れ、真空焼入れ、浸炭焼入れあるいは浸炭窒化焼入れ等の焼入れ、および焼入れ後の焼戻しなどを適宜組み合わせることができる。熱処理は、形成すべき動圧溝Gの溝深さよりも厚みの大きい表面硬化層が形成されるように施せば良く、必ずしも軸素材2’の全体が高硬度化(焼入れ)されるように施さなくても良い。
(3)除去工程P3
この粗仕上げ工程P3では、軸素材2’に熱処理を施すことにより焼入れ軸(表面硬化層)を形成するのに伴って、焼入れ軸の表面に形成される黒皮とも称される酸化皮膜が除去される。黒皮(酸化皮膜)は、例えば焼入れ軸にセンタレス研磨を施すことによって除去される。なお、当該センタレス研磨により、熱処理による変形の除去と寸法出しも期待できる。
(4)転造工程P4
この転造工程P4では、(表面の黒皮が除去された)焼入れ軸の表面硬化層に転造加工を施すことにより、焼入れ軸の外周面の動圧面形成領域としての円筒部2b1、2c1に動圧溝Gによる動圧溝パターンA1、A2を形成する。本実施形態では、相対スライド可能に設けられた一対の転造型を用いて焼入れ軸の外周面に動圧溝パターンA1、A2を転造形成する。
この動圧溝パターンA1、A2を転造形成する時、各円筒部2b1、2c1の両側が逃げ部2aと逃げ溝2d、2eに隣接しているので、転造に伴う円筒部2b1、2c1の軸方向外側方向への材料流れが左右均等に生じ、図4の溝深さ測定結果に示すように逃げ部2a側と逃げ溝2d、2e側で動圧溝Gの深さ勾配のバランスが取れた動圧溝パターンA1、A2が得られる。
(5)仕上げ工程P5
この仕上げ工程P5では、転造工程P4にて外周面に動圧溝パターンA1、A2が転造形成された焼入れ軸の外周面が所定精度に仕上げられる。これにより、完成品としての軸部材2が得られる。
そして、完成品の軸部材2の一方の円筒部2b2に、図1のようにフランジ部2fが取り付けられる。フランジ部2fは、例えば、軸素材2’と同種のステンレス鋼、あるいは焼結金属の多孔質体で円環状に形成され、軸部材2の下端外周に対して圧入、接着、圧入接着、溶接等の適宜の手段で固定される。また他方の円筒部2c2に、図6のようにディスクハブ3が取り付けられる。
(流体動圧軸受の作動)
以上の構成からなる流体動圧軸受1において、軸部材2が回転すると、軸部材2の動圧溝パターンA1、A2と、これらに対向する軸受スリーブ8の内周面8aとの間にそれぞれラジアル軸受隙間が形成される。そして軸部材2の回転に伴い、両ラジアル軸受隙間に形成される油膜の圧力が動圧溝G、Aaの動圧作用によって高められ、その結果、軸部材2をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部R1、R2が軸方向の二箇所に離隔形成される。
これと同時に、フランジ部2fの上側端面2f1に設けたスラスト軸受面とこれに対向する軸受スリーブ8の下側端面との間、および、フランジ部2fの下側端面2f2に設けたスラスト軸受面とこれに対向する蓋部材10の上側端面10aとの間に、第1および第2スラスト軸受隙間がそれぞれ形成される。そして、軸部材2の回転に伴い、両スラスト軸受隙間に形成される油膜の圧力が動圧溝の動圧作用によってそれぞれ高められ、その結果、軸部材2をスラスト両方向に非接触支持する第1および第2スラスト軸受部T1、T2が形成される。
また、シール空間Sが、ハウジング7の内部側に向かって径方向寸法を漸次縮小させたくさび形状を呈しているため、シール空間S内の潤滑油は毛細管力による引き込み作用によってハウジング7の内部側に向けて引き込まれる。また、シール空間Sは、ハウジング7の内部空間に充填された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能を有し、想定される温度変化の範囲内で潤滑油の油面を常にシール空間S内に保持する。そのため、ハウジング7内部からの潤滑油漏れが効果的に防止される。
また、上述したように、上側の動圧溝Gは、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっているため、軸部材2の回転時、動圧溝G
による潤滑油の引き込み力は上側領域が下側領域に比べて相対的に大きくなる。このような引き込み力の差圧により、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の外周面21a1との間の隙間に充満された潤滑油は下方に流動し、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間→軸受スリーブ8の軸方向溝8d1で形成される軸方向の流体通路11→軸受スリーブ8の上端外周チャンファ等で形成される環状空間→軸受スリーブ8の環状溝8c1および径方向溝8c2で形成される流体通路という経路を循環して、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間に再び引き込まれる。
このような構成とすることで、潤滑油の圧力バランスが保たれると同時に、局部的な負圧の発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや振動の発生等の問題を解消することができる。前記の循環経路には、シール空間Sが連通しているので、何らかの理由で潤滑油中に気泡が混入した場合でも、当該気泡が潤滑油に伴って循環する際にシール空間S内の潤滑油の油面(気液界面)から外気に排出される。従って、気泡による悪影響は一層効果的に防止される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば前記実施形態では流体動圧軸受1の内部空間に充填する潤滑流体として潤滑油を例示したが、潤滑グリース、磁性流体、さらには空気等の気体を潤滑流体として用いた流体動圧軸受1にも本発明を好ましく適用し得る。
また、前記実施形態では軸部材2を回転側、軸受スリーブ8等を静止側とした流体動圧軸受1に本発明を適用した場合について説明を行ったが、これとは逆に、軸部材2を静止側、軸受スリーブ8等を回転側とした流体動圧軸受1にも本発明は好ましく適用することができる。
また、軸部材ないし軸素材の形状としては図5(A)(B)に示す形式も可能である。この形式は、軸部材102(軸素材102’ )の逃げ部102aの一方にある動圧溝形
成領域としての円筒部102b1にのみ動圧溝Gを有する動圧溝パターンAを形成し、反対側にある円筒部102cには動圧溝がない形式である。動圧溝パターンAの逃げ部102aとは反対側に図2の逃げ溝2dと同様の逃げ溝102dが形成され、さらにその外側の円筒部102b2に図1のフランジ部2fが取り付けられる。この形式の軸部材102においても、動圧溝パターンAの片側Aaと反対側Abの動圧溝Gの深さは、図4と同様に軸方向勾配がなく左右でバランスが取れて安定した動圧効果とラジアル方向軸受剛性が得られる。
また、前記実施形態では軸部材2の外周面21aに動圧発生用の動圧溝Gを転造により形成したが、軸部材2の動圧溝パターンA1、A2に代えて、当該動圧溝パターンと対向する軸受部材の内周面に公知の転造ボール等を使用して動圧溝を転造形成する場合にも本発明を適用可能である。
1 流体動圧軸受
2 軸部材
2’ 軸素材
2a 逃げ部
2b1、2c1 円筒部(動圧溝形成領域)
2d、2e、102d 逃げ溝
2f フランジ部
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
9 軸受部材
10 蓋部材
A、A1、A2 動圧溝パターン
Aa 動圧溝
R1、R2 ラジアル軸受部
T1 第1スラスト軸受部
T2 第2スラスト軸受部

Claims (6)

  1. 軸受部材に軸部材を挿入し両部材間にラジアル軸受部を形成した流体動圧軸受に使用する前記軸受部材又は軸部材のための流体動圧軸受用素材であって、前記ラジアル軸受部に動圧作用を発生させる複数の動圧溝を転造によって形成するための動圧溝形成用領域と、当該動圧溝形成用領域の片側に隣接して前記動圧溝に供給する流体を保持可能に前記動圧溝よりも大きな深さを有する逃げ部と、前記動圧溝形成用領域の他側に隣接した逃げ溝とを有し、当該逃げ溝の深さを前記動圧溝の深さ以上かつ前記逃げ部の深さ以下にしたことを特徴とする流体動圧軸受用被転造素材。
  2. 前記動圧溝形成用領域が前記逃げ部を間に挟んで少なくとも2箇所に形成されていることを特徴とする請求項1の流体動圧軸受用被転造軸素材。
  3. 前記逃げ溝の深さを20μm以上50μm以下にしたことを特徴とする請求項1又は2の流体動圧軸受用被転造軸素材。
  4. 前記逃げ溝の幅を0.5mm以下にしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1の流体動圧軸受用被転造軸素材。
  5. 前記逃げ部と逃げ溝の深さを同じにしたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載の流体動圧軸受用被転造軸素材。
  6. 前記軸素材に表面硬化層が形成された請求項1から5のいずれか1の流体動圧軸受用被転造軸素材。
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