JP6274184B2 - スラグの熱回収方法および熱回収システム - Google Patents

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Description

本発明は、スラグの熱回収方法および熱回収システムに関し、特に、スラグの熱回収を高効率に行うことができ、かつ高品質の凝固スラグを得ることができるスラグの熱回収方法および熱回収システムに関するものである。
鉄鋼製造プロセスで排出されるスラグは、水砕処理または徐冷処理などを経て、水砕砂やスラグ骨材として利材化されている。後者のスラグ骨材については、通常はドライピットに排出されたスラグを徐冷して固めた後、破砕処理および篩い分け等を経て所定の粒度分布(例えばJIS A5011−1など)を有するスラグ骨材が製造される。あるいは、特許文献1に開示されるように、金属製の移動鋳型を設けた鋳滓機を用いて溶融スラグを厚さ10mm〜30mmになるように凝固成形し、緻密で強度の高い板状の凝固スラグを作成した後、同様に破砕処理および篩い分け等を行い、骨材を製造する方法もある。
一方で、近年、省エネルギー対策としてスラグの保有熱も注目されており、上記のようなスラグ利材化と同時にスラグ保有熱の回収利用もスラグ利用面での目標に掲げられている。溶融スラグの熱量は、銑鉄トン当たり0.5GJほどの大きさを有し、このスラグの熱を回収出来れば大きい省エネルギー効果が期待できる。
スラグの熱回収方法として、例えば特許文献2には、鋳滓機を用いて溶融スラグを比較的肉厚な形状に凝固成形し、凝固スラグを熱回収装置に高温状態で装入して熱回収する方法が開示されている。スラグを肉厚に凝固成形した場合、スラグ単位体積当たりの表面積が小さくなるため、凝固スラグが保温されやすく、搬送等による凝固スラグの温度低下が抑えられ、高温で熱回収装置に供給することができる。また、厚みを有するため、凝固スラグ板厚中心の温度が高い状態で保持されやすいため、高い熱量を有する状態で熱回収装置に供給することが可能となる。
上記特許文献2に開示された方法は、コークス乾式消火設備(Coke Dry Quenching,CDQ)と同様の設備構成でスラグの熱回収を行う方法である。CDQでは、赤熱コークスの顕熱と同時に、コークスの熱回収時に発生する可燃性ガスの熱量も同時に回収されるため回収熱量が大きい。しかしながら、特許文献2に開示された方法は、熱源がスラグであるため、CDQよりも回収熱量が小さい。また、スラグの熱伝導率はコークスより低いため、スラグから熱を奪いにくく、CDQより熱回収効率が悪い。そのため、特許文献2に記載の方法では、装置規模の大きさに対して回収熱量が小さい設備になる問題があった。
こうした背景の下、非特許文献1において、スラグの保有熱の利用方法として、溶融スラグに炭材を混合して改質ガス化する方法が開示されている。この方法では、溶融スラグ中に炭材を混合した後に回転体で微粒状に凝固した後、流動層方式により凝固スラグから熱回収を行い、この熱回収過程で炭材を可燃性ガスにしている。
特開2003−82606号公報 特開昭57−182086号公報
Applied Energy 112(2013),p964
しかしながら、装入する炭材の比重(0.5〜1.0)は溶融スラグの比重(2.7〜3.0)よりも低いため、非特許文献1の方法では、溶融スラグに対して炭材を均一に混合することは困難である。また、回転体で微粒状に凝固する方式では、スラグ処理量が多い場合に広大な設置スペースが必要になる問題もある。さらに、スラグ粘度が高い場合に繊維状の凝固スラグが発生するため、凝固スラグの品質制御が極めて困難である。さらにまた、熱回収に関して、流動層方式で熱回収を行う場合には、充填物であるスラグが流動するため、スラグと熱回収ガスとの接触温度が変動して一定の反応条件を得られないことも懸念される。
そこで、本発明の目的は、スラグの熱回収を高効率に行うことができ、かつ高品質の凝固スラグを得ることができるスラグの熱回収方法および熱回収システムを提供することにある。
発明者は、上記課題を解決する方途について鋭意検討した結果、高炉において発生する溶融スラグを凝固させて凝固スラグとし、この凝固スラグと炭材を固体状態で混合させることにより、スラグと炭材を均一に混合させることができ、その結果、スラグの熱を高効率に回収することができるとともに、高品質の凝固スラグも得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)高炉において発生する溶融スラグから熱を回収するに当たり、前記溶融スラグを厚さ5mm以上で凝固させて凝固スラグとし、次いで前記凝固スラグを熱回収装置に装入して充填層を形成した後に熱回収を行う装置において、前記熱回収装置へのスラグ装入時に炭材を混合装入して充填層の上部に部分的に凝固スラグと炭材との混合充填部を形成するとともに、前記熱回収装置の充填層に、二酸化炭素および水の少なくとも一方を含む熱回収ガスを、前記充填層の流動化開始ガス速度Umf未満で送風することにより、前記熱回収ガスを介して前記凝固スラグの熱を回収するとともに、前記炭材を可燃性ガスに改質することを特徴とする凝固スラグの熱回収方法。
(2)前記炭材の装入量は、前記凝固スラグの装入量および温度に基づいて調整される、前記(1)に記載の凝固スラグの熱回収方法。
(3)前記炭材の装入量は、前記熱回収装置から排出された熱回収ガスの組成を分析し、その分析結果に基づいて調整される、前記(1)に記載の凝固スラグの熱回収方法。
(4)前記炭材の装入は、前記熱回収装置から排出された熱回収ガスの温度に基づいて制御される、前記(1)に記載の凝固スラグの熱回収方法。
(5)前記熱回収装置から排出された熱回収ガスを前記熱回収装置に再度供給して前記熱回収装置内を循環させ、前記炭材に含まれる水分を前記炭材の熱回収ガスへの改質に利用する、前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の方法。
(6)前記凝固スラグを前記炭材と混合して前記熱回収装置に装入する際、前記炭材と混合する直前に前記凝固スラグの破砕を行う、前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の凝固スラグの熱回収方法。
本発明によれば、高炉において発生する溶融スラグを凝固させて凝固スラグとし、この凝固スラグと炭材を固体状態で混合させるようにしたため、比重の異なるスラグと炭材を均一に混合させることができ、更にスラグ充填層上部の高温領域に滞留させて炭材と熱回収ガスとを反応させることができるため、スラグの熱を高効率に回収することができるとともに、高品質の凝固スラグを得ることができる。
本発明に係る熱回収システムの好適な一例を示す図である。 炭材改質時の反応温度と生成されたガスの組成との関係を示す図である。 熱回収装置におけるスラグ充填槽内のスラグ温度および熱回収ガス温度の分布を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明に係る凝固スラグの熱回収方法は、高炉において発生する溶融スラグから熱を回収する方法である。先ず、溶融スラグを凝固させて凝固スラグを作成する。凝固スラグの大きさが小さいと熱回収の際に流動化して飛散し易くなるため、凝固スラグの厚さは5mm以上とする。次に、当該凝固スラグを熱回収装置へ装入してスラグ充填層を形成した後に熱回収を行う。ここで、凝固スラグ装入部に炭材装入装置を設けて、凝固スラグと炭材を固体状態で混合した後に熱回収装置へ装入する。この際、熱回収時のスラグ温度および熱回収ガス温度が高い充填層上部に部分的に凝固スラグと炭材の混合充填部が形成されるようにする。そして、当該スラグ充填層へ二酸化炭素および水の少なくとも一方を含む熱回収ガスを供給することにより、高温の熱回収ガスとともに、高温の熱回収ガスと炭材との反応で生成された可燃性ガスも同時に得ることができる。なお、「充填層の上部」とは、凝固スラグが装入される充填層の上面近傍でスラグ温度1000K以上である高温領域を表す。
前記熱回収装置において、熱回収ガスG0の供給速度は、凝固スラグS’および炭材Cからなる充填層の流動化開始ガス速度Umf未満である必要がある。これにより、スラグ充填層が流動化することなく、前記スラグ充填層上部が高温状態に保たれるため、炭材Cの可燃性ガスへの改質反応を安定的に行うことができる。流動化開始ガス速度Umfは、例えば以下の式(3)で与えられる。
Figure 0006274184
ここで、φは粒子形状係数、dpは粒子サイズ、ρsは粒子密度、ρgはガス密度、gは重力加速度、μgはガス粘度である。スラグ処理量が多い場合には、充填層の断面積を大きくすることでガス流速を下げるように設計する。なお、スラグS’と炭材Cとでは、比重や粒子サイズが異なるため、それぞれ単独で上記式(3)にて流動化条件を計算する。
図1は、本発明に係る熱回収システムの好適な一例を示す図である。この熱回収システム1は、高炉において発生する溶融スラグMを受滓する鋳型11を有し、受滓された溶融スラグMを凝固させる鋳滓機12と、凝固スラグSを収容して該凝固スラグSの熱を回収する熱回収装置15と、凝固スラグSを破砕する破砕機16と、炭材Cを熱回収装置15に装入する炭材装入装置17と、炭材Cを可燃性ガスに改質する二酸化炭素および水の少なくとも一方G1を含み、凝固スラグSの熱を回収する熱回収ガスG0を供給する熱回収ガス供給装置18を備える。以下、この熱回収システム1を用いた熱回収方法を説明するが、この実施形態に限定されない。
まず、高炉において発生する溶融スラグMを鋳型11に供給し、鋳造して凝固スラグSを得る。上述のように、高炉においては大量の溶融スラグMが発生するが、この溶融スラグMの熱を回収することにより、非常に大きな省エネルギー効果が期待できる。しかし、液体状の溶融スラグMから熱を直接回収することは困難である。そこでまず、溶融スラグMを鋳型11に供給して凝固スラグSを鋳造する。こうした凝固スラグSを鋳造することにより、スラグ粘度が高い場合であっても、非特許文献1に記載された技術のように繊維状の凝固スラグを発生させることなく、高品質の凝固スラグSを得ることができる。
凝固スラグの形状は、例えば板状とすることができる。ここで、凝固スラグSが「板状」であるとは、溶融スラグMの凝固に用いる鋳型の深さ方向に対応する方向を厚み方向とする板であって、板厚が厚み方向に互いに直交する2方向の寸法よりも小さいことを意味している。
板状の凝固スラグSの鋳造は、図1に例示した鋳滓機12を用いて行うことができる。この鋳滓機12は、連続して搬送される複数の鋳型11を有しており、スラグ鍋13から溶融スラグMがスラグ樋14を介して鋳型11に供給されると、コンベアにより搬送され、この搬送の間に鋳型11中の溶融スラグが冷却されて板状の凝固スラグSが鋳造される。こうして鋳造された凝固スラグSは、鋳滓機12の末端で鋳型11を反転させることにより、鋳型11から剥離させて地面や容器内等に落下させて回収する。
凝固スラグSが剥離した鋳型11は、その後溶融スラグMの供給位置へと戻されて再び反転し、スラグ鍋13から溶融スラグMを再び受滓して、凝固スラグSが連続的に鋳造されることになる。こうして、溶融スラグMから板状の凝固スラグSを連続的に鋳造することができる。なお、上記鋳滓機12は用途や目的に応じて適切に変更することができ、図1に示された構成に限定されない。
なお、連続的に搬送される鋳型11を用いて、凝固スラグSの鋳造を繰り返し行うと、鋳型11の温度が徐々に上昇し、ある一定の温度を超えると、溶融スラグMが冷却されにくくなるばかりでなく、鋳型11自身の強度が低下する場合や、スラグと鋳型11とが焼付いて凝固スラグSが剥離できなくなる場合がある。そこで、鋳型11の過剰な温度上昇を防止するために、例えば凝固スラグSを排滓した際の鋳型11を水で洗浄する等により、鋳型11を冷却することが好ましい。
こうして鋳滓機12により鋳造された凝固スラグSは、次いで破砕機16により破砕することが好ましい。破砕された凝固スラグS’は、破砕前よりも大きな表面積を有しているため、後の熱回収行程において、凝固スラグSの熱を効率的に回収することができる。破砕後の凝固スラグS’は表面積が大きく、空冷のみでも冷えやすくなるため、熱回収工程に送る直前に破砕をすることが望ましい。
続いて、破砕した凝固スラグS’および炭材Cを熱回収装置15に混合装入する。熱回収装置15は、スラグとガスとの熱交換効率がよく、高温ガスを容易に得ることができることから、図1に示したような縦型向流充填層方式のものが好ましい。縦型向流充填層方式の熱回収装置15の場合には、上部にスラグ装入口(図示せず)を有しており、破砕された高温の凝固スラグS’がスラグ装入口(図示せず)から装入される。なお、本発明における混合装入とは、凝固スラグS’および炭材Cが熱回収装置15内において混合されるように装入することを意味する。具体的には、凝固スラグS’および炭材Cを予め混合した後に熱回収装置15に装入することや、凝固スラグS’を装入シュートを介して熱回収装置15内に装入する途中で炭材Cを凝固スラグS’に添加して熱回収装置15に装入すること等を意味している。後者では、装入シュートを流れる間に凝固スラグS’および炭材Cが混合される。
一方、炭材Cは炭材装入装置17から供給され、凝固スラグS’とともに熱回収装置15に装入される。上述のように、炭材の比重が溶融スラグよりも低いため、非特許文献1に記載された方法では、溶融スラグと炭材を均一に混合させることは困難であったが、本発明においては、スラグと炭材Cの混合は固体同士の混合であるため、両者に比重差がある場合にも均一に混合させることができる。装入された炭材Cは、高温の凝固スラグS’との接触、およびスラグS’からの輻射熱により急速に加熱される。
炭材Cとしては、石炭(無煙炭,褐炭など)やバイオマス、コークス等を用いることができる。中でも、カーボンニュートラルである植物由来のバイオマス炭を用いれば、炭材装入によるCO2排出量の増加を考慮しなくてよいため、CO2削減の観点で好ましい。
また、炭材Cの形状は、装入シュート上での流動性が良く、スラグと混合しやすい粒状とすることが好ましい。
こうして炭材Cが高温の凝固スラグS’により加熱された状態の下で、炭材Cを可燃性ガスに改質する二酸化炭素および水の少なくとも一方G1(以下、「改質剤」とも言う)を含む、凝固スラグS’から熱を回収する熱回収ガスG0を熱回収装置15に供給する。これにより、熱回収ガスG0を介して凝固スラグS’から熱を回収するとともに、炭材Cを可燃性ガスに改質することができる。なお、本発明において、スラグの熱とは、顕熱を意味している。
熱回収ガスG0に含まれる二酸化炭素および水は、以下に示すBoudouard反応および水性ガス反応により、凝固スラグS’により加熱された炭材Cを可燃性ガスに改質する。
C + CO2 → 2CO ΔH°298K=172kJ/mol (1)
C + H2O → CO + H2 ΔH°298K=175kJ/mol (2)
上記の反応はいずれも吸熱反応であり、温度が高いほど生成側に反応がシフトするため反応効率がよい。鋳滓機12の凝固直後のスラグSは1000℃以上の高温状態で熱回収装置15に装入され、また向流充填層方式で熱回収を行う場合には下部から送風される熱回収ガスG0も高温となる。図2は、炭材改質時の反応温度と生成されたガスの組成との関係を示す図である。図2から、例えば温度1000K(723℃)以上では得られるガス組成のうち80%以上が一酸化炭素(CO)および水素(H2)となる。
図3は、熱回収装置15におけるスラグ充填槽内のスラグ温度および熱回収ガス温度の分布を示す図である。この図は、25mm角に凝固成形した1000℃のスラグをφ5m×充填高さ6mで充填し、ガス供給量30000Nm3/hで熱回収した際のスラグ充填層内のスラグ温度と熱回収ガス温度分布の計算結果を示したものである。この図から、熱回収ガス温度は充填層上部で900℃以上となり、上記炭材改質反応に必要な熱をスラグの保有熱から供給可能であることが分かる。
また、上記反応に必要な反応時間については、スラグ充填高さを調整して充填層内でのスラグS’および炭材Cの滞留時間を調整することにより確保することができる。
熱回収ガスG0としては、製鉄所副生ガスから分離した二酸化炭素ガスや、加熱炉等から排出される二酸化炭素を含む燃焼排ガスなどを使用する。また、当該熱回収装置にて得られる熱回収ガスを循環使用しても良い。熱回収ガスG0は、ブロワー等の熱回収ガス供給装置18により供給することができる。
改質剤として水を利用する場合には、例えばボイラーで水蒸気を生成して、ブロワー等の改質剤供給装置19により熱回収ガスG0に混合して熱回収装置15に供給ことができる。あるいは、熱回収ガスG0と別に熱回収装置15内に供給することもできる。
また、改質剤として、炭材C自身の水分を利用することもできる。すなわち、褐炭等の低品位炭は水分含有量が多く、この水分を利用することができる。
炭材C自身の水分を利用する場合、図1に示した向流充填層方式の熱回収装置15では、装置15の上部から装入された炭材Cに含まれる水分は、接触した高温の凝固スラグS’の熱および熱回収ガスG0の熱により揮散して、炭材Cと十分に反応する前に熱回収ガスG0(および可燃性ガス)とともに熱回収装置15から排出されてしまう。
そこで、熱回収装置15から排出された熱回収ガスG0を熱回収装置15の下部から再度供給して熱回収装置15内を循環させる。これにより、熱回収ガスG0に含まれる炭材C由来の水分がスラグ充填層を通して高温化されて、上記式(2)の反応に基づいて炭材Cを可燃性ガスに改質することができる。炭材C中の水分含有量は炭材Cの種類により異なるため、上記改質反応を行う上で炭材C自身が含有する水分だけでは不足する場合には、水を別途供給して調整する。
なお、熱回収装置15から排出された熱回収ガスG0を熱回収装置15の下部から再度供給して熱回収装置15内を循環させる際には、熱回収ガスG0に含まれる可燃性ガスを分離した残りのガス、熱回収ガスG0に含まれる可燃性ガスを燃焼(反応)させた後の排ガス、あるいは熱回収ガスG0を除塵(散水)した後のガスを循環させることができる。
さらに、熱源である凝固スラグS’の装入温度および装入量に対して炭材Cが過剰に装入されないように、炭材Cの装入量をスラグの装入量およびスラグ装入温度に応じて調整することが好ましい。スラグ装入量は、鋳滓機12により鋳造された凝固スラグSの厚み、スラグSの送り速度、およびスラグ比重から計算することができる。また、スラグ装入温度については、スラグ装入口近傍に温度測定装置を設けることにより、オンラインで測定することができる。
ここで、炭材Cの装入量の調整は、具体的には以下の指針に基づいて行うことができる。すなわち、スラグ供給量は鋳滓機の鋳型サイズと鋳型移動速度からモニタリングできるため、スラグ供給量に応じて前記炭材供給装置、例えばローターリーフィーダー、カットゲート、振動フィーダー等の供給量調整可能な装置を用いることにより炭材供給量を可変制御する。スラグS’と炭材Cの混合時の均一性を高めるため、回転シュート等の混合装置を追加で設けてもよい。
さらにまた、炭材Cの装入量は、熱回収装置15から排出された熱回収ガスG0の組成を分析し、その分析結果に基づいて調整することが好ましい。これは、熱回収装置15内あるいは近傍に熱回収ガスG0の組成を連続的に測定可能なガス分析装置(図示せず)を設けることにより行うことができる。熱回収ガスG0は高温であるため、分析に供するガスをサンプリングして急冷した後にガス分析装置に導入するようにする。そして、分析したガス組成と熱回収ガスG0の供給量および炭材Cの供給量から炭材Cの反応率を求めて、未反応状態で残存する炭材が少なくなるように炭材Cの供給量を調整する。こうしたガス分析装置としては、例えば赤外吸収分析装置などを用いることができる。
さらにまた、炭材Cの装入は、熱回収装置15から排出された熱回収ガスG0の温度に基づいて制御することが好ましい。具体的には、熱回収ガスG0の温度の実測値、または、スラグの粒子サイズおよび装入温度から計算される熱回収ガス温度の計算値を用いて、炭材装入タイミングを判定して炭材Cの装入を制御することが好ましい。
熱回収装置15は、スラグS’の粒子サイズ、装入温度、スラグ充填層の高さ等の操業条件により、熱回収ガスG0の到達温度が異なる。特にスラグ供給量の変動が大きい場合には、スラグ充填層内の温度分布が一様にならないため、熱回収ガス温度の変動が大きい。スラグ充填層方式の熱回収装置15において昇温した熱回収ガスG0を用いて炭材Cを可燃性ガスに改質する場合には、熱回収ガスG0の温度低下により反応効率が低下する。そのため、熱回収ガスG0の目標温度Tminを定めて、熱回収ガス温度の実測値がTmin以上となるタイミングにおいてのみ炭材装入を行うようにし、実測値がTmin以上の場合には炭材装入装置17から炭材Cを装入し、Tmin未満の場合には炭材装入装置17からの炭材装入を停止する。
例えば、上記Boudouard反応を用いて炭材改質を行う際のCO転化率の目標値を90%とした場合、少なくとも800℃以上の温度が必要となるため、上記Tminを800℃に設定して炭材装入タイミングを制御する。熱回収ガス温度の実測ができない場合には、スラグS’の粒子サイズおよび装入温度等から計算される熱回収ガス温度の計算値を用いることができる。
こうして、スラグの熱を高効率に回収することができるとともに、高品質の凝固スラグを得ることができる。
本発明によれば、高炉において発生する溶融スラグを凝固させて凝固スラグとし、この凝固スラグと炭材を混合させるようにしたため、スラグと炭材を均一に混合させてスラグの熱を高効率に回収することができるとともに、高品質の凝固スラグを得ることができるため、製鉄業において有用である。
1 熱回収システム
11 鋳型
12 鋳滓機
13 スラグ鍋
14 スラグ樋
15 熱回収装置
16 破砕機
17 炭材装入装置
18 熱回収ガス供給装置
19 改質剤供給装置
C 炭材
M 溶融スラグ
S,S’ 凝固スラグ
0 熱回収ガス
1 改質剤

Claims (6)

  1. 高炉において発生する溶融スラグから熱を回収するに当たり、前記溶融スラグを厚さ5mm以上で凝固させて凝固スラグとし、次いで前記凝固スラグを熱回収装置に装入して充填層を形成した後に熱回収を行う装置において、前記熱回収装置へのスラグ装入時に炭材を混合装入して充填層の上部に部分的に凝固スラグと炭材との混合充填部を形成するとともに、前記熱回収装置の充填層に、二酸化炭素および水の少なくとも一方を含む熱回収ガスを、前記充填層の流動化開始ガス速度Umf未満で送風することにより、前記熱回収ガスを介して前記凝固スラグの熱を回収するとともに、前記炭材を可燃性ガスに改質することを特徴とする凝固スラグの熱回収方法。
  2. 前記炭材の装入量は、前記凝固スラグの装入量および温度に基づいて調整される、請求項1に記載の凝固スラグの熱回収方法。
  3. 前記炭材の装入量は、前記熱回収装置から排出された熱回収ガスの組成を分析し、その分析結果に基づいて調整される、請求項1に記載の凝固スラグの熱回収方法。
  4. 前記炭材の装入は、前記熱回収装置から排出された熱回収ガスの温度に基づいて制御される、請求項1に記載の凝固スラグの熱回収方法。
  5. 前記熱回収装置から排出された熱回収ガスを前記熱回収装置に再度供給して前記熱回収装置内を循環させ、前記炭材に含まれる水分を前記炭材の熱回収ガスへの改質に利用する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記凝固スラグを前記炭材と混合して前記熱回収装置に装入する際、前記炭材と混合する直前に前記凝固スラグの破砕を行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載の凝固スラグの熱回収方法。
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