以下の説明の導入部として、最初に、テープ・ストレージ媒体、テープ・ドライブ、およびテープ・ストレージ媒体を作動する方法に関して、本発明の全般的な特徴を示す。
テープとも略称されるデータを格納するためのテープ・ストレージ媒体、具体的には磁気テープ・ストレージ媒体は、カートリッジ中に配置され、そのカートリッジは、テープ・ストレージ媒体からデータを読み取り該テープ・ストレージ媒体にデータを書き込むためのテープ・ドライブの中に挿入することができる。テープ・ストレージ媒体は、長手方向の延長およびその長手方向の延長と直交方向の幅を有する。テープは一つ以上のリールに巻かれ、リールは、テープ・ストレージ媒体に対するデータの読み取りもしくは書き込みまたはその両方のためにテープがテープヘッドのデータ・リーダおよびライタを通過するように、テープ・ドライブによって駆動される。テープ・ストレージ媒体には、通常、サーボ情報がプリフォーマットされる。サーボ・パターンの形を取るこのサーボ情報は、テープ・ヘッドのサーボ・リーダが、データの読み取りもしくは書き込みまたはその両方を行う間、テープ・ストレージ媒体に対するテープ・ヘッドの横方向位置に関するサーボ情報を採取することを可能にし、この横方向位置とは磁気テープ・ストレージ媒体の長手方向の延長と直交方向の位置である。かかる位置情報は、横方向基準位置からの偏位(deviation)が検知された場合にテープ・ヘッドを横方向に再調整するための制御信号に変換することができ、専用のデータ・リーダおよびライタによってデータを正確にテープから読み取りテープに書き込むために、この横方向基準位置がテープ・ヘッドによって維持されていることが望まれる。位置誤差信号(PES:position error signal)とも称される偏位信号は、通常、テープ・ヘッドの専用サーボ・リーダからのリードバック信号を処理するサーボ・チャネルによって供給され、この信号は、アクチュエータがテープに対するテープ・ヘッドの横方向位置を制御するための制御信号に変換することができる。一つの実施形態において、サーボ・リーダと、データ・リーダおよびライタとが機械的に結合され、アクチュエータによって一緒に作動可能であれば、テープに対するデータの読み取りもしくは書き込みまたはその両方を行っている間に、テープ・ヘッド偏位の迅速な是正が達成可能である。当然のことながら、テープ・ヘッドという用語は、一つ以上のサーボ・リーダとデータ・リーダもしくはライタまたはその両方とを機械的に結合されているテープ・ヘッド・モジュールを意味することもあり、同時に、機械的に結合された他のサーボ・リーダとデータ・リーダもしくはライタまたはその両方とを包含するさらなるテープ・ヘッド・モジュールがあってもよく、それらのテープ・ヘッド・モジュールは横方向位置を個別に制御可能とすることができる。
通常、サーボ・パターンは、例えばテープ・メーカーによってテープの専用域にプリフォーマットされ、この領域は、テープの長手方向の延長に沿って延びるサーボ・バンドとも言われる。一つ以上のサーボ・バンドが、データ格納のためのデータ・バンドに隣り合って延びる。各データ・バンドは、複数のデータ・トラックを包含することができ、各データ・トラックは逐次的にデータを格納するように設けられる。サーボ情報は、データとは異なる形状をとることができる。
好適な実施形態において、テープ・ストレージ媒体は、少なくとも一つのサーボ・バンドを含み、該サーボ・バンドは、テープ・ストレージ媒体の長手方向の延長に沿って延びる第一サーボ・サブバンドと、テープ・ストレージ媒体の長手方向の延長に沿って第一サブバンドに隣り合って延びる少なくとも一つの第二サブバンドとを包含する。複数のサーボ・バンドの場合、以下で述べるように、各サーボ・バンドが、相異なるサーボ・パターンを包含する少なくとも一つの第一サブバンドと少なくとも一つの第二サブバンドとの構造体を包含することが望ましい。とりわけこの場合、各サーボ・バンドは、サーボ・バンド識別子などサーボ・バンド固有またはサーボ・トラック固有の情報がある場合はそれを除いて、それぞれのサブバンド中に同一のサーボ情報を包含してもよい。
第一サブバンドは、望ましくは、位置情報の判定を支援するため、サーボ・フレーム中に編成された第一サーボ・パターンを包含し、サーボ・フレームは、テープ媒体の長手方向の延長と直交する方向に対し第一角度で傾斜する少なくとも一つのサーボ・ストライプを含む第一バーストと、それに続いて、テープ媒体の長手方向の延長と直交する方向に対し第二角度で傾斜する少なくとも一つのサーボ・ストライプを含む第二バーストとを少なくとも包含し、この第二角度は第一角度とは異なる。
かかるサーボ・パターンは、タイミングベース・サーボ(TBS:timing−based servo)パターンとも言われる。TBSは、90年代後半にリニア・テープ・ドライブのために特に開発された技術である。TBSシステムでは、レコーディングされたサーボ・パターンは、少なくとも二つの異なる方位角傾斜(azimuthal slopes)を使う転移を含む。テープ・ヘッドの横方向位置は、サーボ・パターンを読み取るサーボ・リーダによって生成されたパルスの相対的なタイミングから得ることができる。TBSは、リニア・テープ・オープン(LTO:linear tape open)コンソーシアムによって採択され、第一世代のLTOテープ・ドライブに対する一式のフォーマットが、2001年に欧州電子計算機工業会(ECMA:European Computer Manufacturers Association)によってECMA−319として標準化された。LTOのサーボ・パターンは、四つのデータ・バンドにまたがって位置する五つの専用サーボ・バンド上に書き込まれる。
したがって、第一サブバンド中のサーボ情報は、複数のサーボ・フレーム中に編成されたフレーム・サーボ・パターンである。サーボ・フレームは、例えば、特定の配列によるサーボ情報を包含する単位体と見なすことが可能で、かかるサーボ・フレームに包含された情報は、サーボ・フレーム全体が読み取られた後においてだけ利用可能となる。しかして、以下で第一横方向位置値とも言う横方向位置値は、第一サーボ・サブバンド中のサーボ・フレームの繰り返し周波数(repetition frequency)によるフレーム・サーボ・パターンからだけ算定が可能で、テープ・ヘッドの横方向位置は、最大で、繰り返し周波数で調整することができる。
或る実施形態において、サーボ・フレーム、望ましくは第一サーボ・サブバンドの各サーボ・フレームは、複数のバーストを包含し得る。各バーストは、望ましくは、本実施形態では、相互に平行に配列された複数のストライプの方向付けによって定義されるサブパターンを含む。相異なる方向のストライプを有する二つのバーストが、テープの移動方向に相互に隣り合って配置されているとき、サーボ・リーダは、これら相異なるバースト中のストライプに起源するリードバック信号中の二つのパルス群の間の時間間隔から、テープ・ストレージ媒体に対する該サーボ・リーダの横方向位置を得ることができる。したがって、フレーム・サーボ・パターン上のサーボ・リーダのどの横方向位置に対しても、サーボ・リードバック信号中のこれらパルス群がそれぞれ異なった時間に出現し、これにより横方向位置の測定が可能になる。
但し、リードバック信号中のパルス群間の上記のタイミングは、テープの速度にも左右される。具体的には、最初の二つのバーストの一つのストライプと同じ方向に傾斜するストライプを備えた、少なくとももう一つのバーストがさらにあれば、同じ方向に傾斜したストライプを有するそれらのバーストに起源するリードバック信号中のパルス群のタイミングから、テープ速度を見積もることができる。すなわち、同じ方位角を有するストライプのペアの間の時間差を測定し、且つ相反対の方位角を有するストライプのペアの間の時間差を測定することによって、テープ・ヘッドの横方向位置を見積もることが可能である。テープ・ヘッドとテープとの間の偏位が測定されれば、制御ユニットが、閉ループ制御でテープ・ヘッドのアクチュエータを制御し、テープ・ヘッドがテープと横方向に再整列されるようにテープ・ヘッドを横方向に再位置付けすることができる。但し、新しい横方向位置値が、フレーム全体が読み取られた後にだけ算定できることからして、かかるパラメータの更新のレートはテープ速度と共にサーボ・フレームの長さによって制限される。
上記を鑑み、第二サーボ・サブバンドは、該繰り返し周波数よりも高い、第二周波数とも言われる或る周波数で、横方向位置の更新を望ましくは可能にする、異なったサーボ・パターンを望ましくは包含する。このため、複数のサーボ・トラックが、サーボ・バンドの長手方向の延長に沿って、すなわちテープ・ストレージ媒体の長手方向の延長に沿って延びている。かかる複数のサーボ・トラックは、正確な位置制御を可能にするため相異なるサーボ・パターンを包含することができる。一実施形態において、サーボ・バンドは、相互に隣接する少なくとも二つのサーボ・トラックを包含することが可能である。望ましくは、これら相互に隣接するサーボ・トラックは相異なるサーボ・パターンを包含する。テープ・ストレージ媒体が、通常は磁気ストレージ媒体であるものとして、各サーボ・トラック中のサーボ・パターンはサーボ・トラック沿いの磁気転移(magnetic transitions)によって表される。これら磁気転移は、かかるサーボ・パターンが個別に読み取られたとき、割り当てられたサーボ・リーダのリードバック信号中の波形として表れる。この文脈において、個々のサーボ・トラック中のサーボ・パターンから得られる波形は、時間ドメインおよび周波数ドメインの両方における対象信号の表現を包含するものであることを強調しておく。
かかる第二サーボ・サブバンドの読み取りが、この第二サブバンド中の少なくとも個別サーボ・トラックの幅を有し、且つ望ましくは全サーボ・トラックの幅の集積よりも小さい幅を有するサーボ・リーダによって行われる場合、かかるサーボ・リーダは、該サーボ・リーダがトラックの一つの中央上に正確に位置し、しかして専らそのトラックを覆っている場合であって、且つその幅がサーボ・トラックの幅と等しいという条件の場合にだけ、単一のトラックに起源する単一の波形を有するリードバック信号を提供することができ、もしくは、サーボ・リーダが二つ以上のサーボ・トラックを少なくともある程度にまで覆っているときは、それら二つ以上のトラックに起源する二つ以上の相異なる波形を包含するリードバック信号を提供することができる。後者は、サーボ・リーダの幅がサーボ・トラックの幅より大きい場合について言えるほか、その幅がサーボ・トラックの幅と等しい場合についても言えることもある。このとき、対象の波形群はオーバーラップされる、すなわち、サーボ・リーダのリードバック信号中に加えられる。言い換えれば、サーボ・リーダのリードバック信号は、サーボ・リーダが現在スキャン中の隣接するサーボ・トラック群の磁気転移から生じる二つ以上の重なり合う相異なる波形により構成され得る。サーボ・リーダのリードバック信号中に、どの波形が存在するかの判定を可能にするために、隣接するサーボ・トラックの波形が相互に直交することが望ましい。このことは、波形、しかしてその基礎をなす、少なくとも二つの隣接するサーボ・トラック中のサーボ・パターンは、それらが、時間ドメインまたはスペクトル・ドメインのうちの少なくとも一つにおいて共通の信号またはチャネル中に存在するとき、区別が可能であって、それらドメインのいずれかに適切な分析を適用することによって、リードバック信号中に包含されている波形を識別することができる、ということを意味する。
2より多くの異なった波形がサーボ・トラック中で使われている場合、各波形が、他の使用波形の各々と直交することが望ましい。
マルチチャネル信号送信における直交性は、望ましくは、対象波形と、隣接するトラック中の波形との、スペクトルの積または時間関数の相関がゼロであれば実現される。このことは、適用される全ての異なる波形につき、任意の二つの異なる波形間の交差相関(cross-correlation)が、時間ドメインもしくはスペクトル・ドメインのいずれかにおいて望ましくはゼロであり、したがって、望ましくは相異なるサーボ・トラックで用いられる波形、しかしてそれらの基礎をなす相異なるサーボ・パターンを定義する磁気転移スキームが、望ましくは直交することを意味する。
一実施形態において、相異なるサーボ・トラックの基礎をなすサーボ・パターンにより表される各波形は、スペクトル・ドメインにおいて、対象サーボ・トラック中の磁気転移の相異なって定義された周波数によって特徴付けられる。具体的には、スペクトル・ドメインにおいて定義された周波数を有する波形は、時間ドメインにおける周期波形であり、望ましくは該時間ドメインにおける正弦波形である。それらの波形はスペクトル・ドメインにおいて直交しており、このことがそれら波形を適格な波形とする。サーボ・リーダのリードバック信号は、次いで、望ましくはスペクトル・ドメインで分析される。相異なるサーボ・トラック中に配置された、基礎をなすサーボ・パターンは、望ましくは、エネルギ・ベースのサーボ(EBS:energy based servo)パターンの一つのクラスに属し得る。複数のサーボ・トラックのかかるサーボ・パターンが、読み取り過程で複数のサーボ・トラックをカバーする単一のサーボ・リーダに読み取られる場合、該サーボ・リーダからのリードバック信号は、それら相異なるサーボ・トラックのカバー状況の如何によって、相異なった周波数の相異なるエネルギを提供する。リードバック信号中の様々な周波数のエネルギを評価することによって、具体的には様々なエネルギ間の比率を形成することによって、サーボ・リーダのテープに対する横方向位置が測定可能となる。データを読み取るためのデータ・リーダおよびデータを書き込むためのデータ・ライタが、対象サーボ・リーダと機械的に結合されている場合、第二サーボ・サブバンドを読み取ることによって検知された対象サーボ・リーダのどのような横方向の偏位も、データ・リーダおよびデータ・ライタに対して適用可能である。したがって、対象サーボ・リーダ、データ・リーダ、およびデータ・ライタを含むテープ・ヘッドの任意の横方向の作動により、検知された偏位を是正し、データ・リーダおよびデータ・ライタをそれらの望ましい横方向位置に戻すことができる。
これらサーボ・トラックのセットのいずれかのサーボ・トラックの磁気転移の最低周波数が、第一サブバンド中のサーボ・フレームの繰り返し周波数よりも高くありさえすれば、第二サーボ・サブバンドは、繰り返し周波数を上回る第二周波数で、テープ・ヘッドの横方向位置に対してより高い頻度での更新レートを可能にする。望ましくは、繰り返し周波数に対する第二周波数の比は10倍を上回り得る。
別の実施形態において、相異なるサーボ・トラックの基礎をなすサーボ・パターンによって表される各波形は、時間ドメインにおいて、例えば、疑似ノイズ・シーケンスまたはゴールド・シーケンスなど、良好な交差相関特性を備えた各種ビット・パターンによって特徴付けられる。これは、例えばリードバック信号を、適用される相異なる波形と相関させることによって、サーボ・リーダのリードバック信号を時間ドメインで分析した場合、これらの波形が時間ドメインにおいて直交していると見ることができるということを意味し、このことがそれら波形を適格な波形とする。この実施形態において、様々なサーボ・トラック中のサーボ・パターンは、疑似ノイズ・ビット・パターンとも言われる、疑似ノイズ・シーケンスである。望ましくは、単一の疑似ノイズ・シーケンスが、サーボ・トラックの長手方向の延長(longitudinal extension)に沿って繰り返され、相隣接するサーボ・トラックの疑似ノイズ・シーケンスは相互に直交し、それらによるリードバック信号への寄与は確実に検出することができる。このために、相隣接するサーボ・トラックの疑似ノイズ・シーケンスは、適切に設定された位相関係によって書き込まれることが望ましい。リードバック信号と適用される個別の疑似ノイズ・シーケンスとの相関結果を評価することによって、対象サーボ・リーダのリードバック信号中に存在する疑似ノイズ・シーケンスが識別され、識別されたPN(pseudo noise:疑似ノイズ)シーケンスのエネルギが評価される。再述するが、データを読み取るためのデータ・リーダおよびデータを書き込むためのデータ・ライタが、対象サーボ・リーダと機械的に結合されている場合、第二サーボ・サブバンドを読み取ることによって検知された対象サーボ・リーダのどのような横方向の偏位も、データ・リーダおよびデータ・ライタに対して適用可能である。したがって、対象サーボ・リーダ、データ・リーダ、およびデータ・ライタを含むテープ・ヘッドの任意の横方向の作動により、検知された偏位を是正し、データ・リーダおよびデータ・ライタをそれらの望ましい横方向位置に戻すことができる。
相異なるサーボ・トラック中で用いられる全ての疑似ノイズ・シーケンスが同じ長さを有するとの仮定の下で、該疑似ノイズ・シーケンスの長さが、第一サーボ・サブバンド中のサーボ・フレームの長さより短くなっていさえすれば、第二サーボ・サブバンドは、繰り返し周波数より高い周期で横方向位置値(第二横方向位置値(lateral position value)と言う)を算定することを可能にし、しかして、第一サーボ・サブバンド中のサーボ・フレームの繰り返し周波数より高い第二周波数で、テープ・ヘッドの横方向位置を更新することができる。望ましくは、第二周波数の、繰り返し周波数に対する比は10倍を上回り得る。
第二サブバンドに用いられる波形の種類に関係なく、第二サブバンドは、望ましくは、横方向位置情報の迅速且つ粒度の細かい取得を目的とした追加サーボ・パターン用に確保される。これらのサーボ・パターンは、横方向位置などのサーボ・チャネル・パラメータに対するより高頻度の、および(第二サブバンド中のサーボ・トラックの粒度の如何にもよるが)より高精度の見積もりを可能にし、これにより、はるかに大幅なテープ速度範囲における改良されたテープ・ヘッド位置決めと、より大きなバンド幅のヘッド作動への対応とを可能にするために、望ましくは固有の高密度の磁気転移を有する(これが、これらサーボ・パターンを本明細書で高密度パターンとも称する所以である)。
要約すれば、サーボ・バンドの相隣接する少なくとも二つの異なったサーボ・サブバンド中に配置された、二つの別個のサーボ・パターン法を用いるハイブリッドのサーボ・パターン・スキームが提供される。
第二サーボ・サブバンド中のサーボ・パターンは、第一サーボ・サブバンド中のフレーム・サーボ・パターンよりも高い更新レートを可能にできるが、以下の理由により、第二サブバンド中のサーボ・パターンに加えてフレーム・サーボ・パターンをなお維持することが想定される。好適な実施形態において、第一サーボ・バンド中のフレーム・サーボ・パターンは、テープ・ヘッドの当初の横方向位置取得および位置決めのため、もしくは、テープ速度またはヘッダとテープとの間の傾斜など他のサーボ・チャネル・パラメータの取得のため、またはその両方のために用いられる。また、フレーム・サーボ・パターンは、サーボ・バンド識別子、長手方向テープ位置(LPOS:longitudinal tape position)、または製造情報などの追加情報をコード化するためにも使うことができる。第一サブバンドからのこの種のサーボ情報が使われるので、第二サブバンド中のサーボ・パターンに対しては、特別なサーボ・フレームまたはバースト構造体は必要がなく、しかして、大きく改良されたパラメータ更新レートが可能になる。
本発明の諸実施形態は、テープ・ヘッドの横方向位置、および潜在的にヘッドのテープに対する傾斜が、従来型のテープ・ストレージ・システムに比べてより細かなスケールでより迅速に測定できることを考えれば、将来のテープ・ドライブに対して想定されるデータ・トラック密度の増大を可能にすることができる。周知のTBSサーボ・パターンと高密度のサーボ・パターンとが組み合わされているので、テープ・ストレージ媒体に対するテープ・ヘッドの横方向テープ位置は、データ・トラックに沿って移動するデータ・リーダおよびデータ・ライタの適切な位置決め精度を確保するために十分な正確さにすることが可能となる。さらに、このとき、ヘッドの横方向位置見積もりの繰り返しレートは、非常に低いテープ速度にあっても適切なトラック追従動作を保証するのに十分な高さにできる。加えて、大きなバンド幅を使う将来のテープ・ヘッドのアクチュエータにも対応可能である。しかして、本明細書で導入されたテープ・ストレージ媒体に対する新規のサーボ・フォーマットは、可能な応用対象として、とりわけ、四つまたは八つのデータ・バンド、および32または64の並列データ・チャネルを備えたBaFeテープ媒体を目標としている。上記によって、位置誤差信号(PES)中の偏位は最小化され、しかして数百テラバイトまでに上るテープ容量に対する(データ)トラック密度のスケーリングが可能になる。加えて、より大幅な速度範囲への対応を通して、ホスト・コンピュータの必要条件に合わせ、データ転送速度のスケーリングを改良することが可能となる。さらに、本高密度パターンは、データ・チャネル中のデータ検出に対するタイミング回復プロセスを助力するための、基準周期信号(reference periodic signal )(パイロット信号)を発生させるために用いることもできる。
本種類のサーボ・パターンは、テープ製造の過程で書き込むことも、あるいは、テープ・ドライブ中でテープ・ストレージ媒体の作動中に書き込むことも可能であろう。第二サーボ・サブバンドの中に、特にサーボ・パターンを書き込むための書き込みヘッドは、相異なるサーボ・トラックに相異なるサーボ・パターンを同時に書き込むことを可能にするものが望ましい。すなわち、サーボ・パターンが複数の相隣接するサーボ・トラックによどみなく書き込まれるようにする、つまり、所望のサーボ・パターン群を書き込むために、テープが書き込みヘッドを通過する必要性は一度だけとするのが望ましい。好適な実施形態において、テープにサーボ・パターンを書き込むために連続書き込みが適用される。トレーリングエッジ書き込みとも言われる連続書き込みにおいて、書き込みヘッドは、中断なく連続して、すなわち、書き込みヘッドに印加される電流が正電流値と負電流値との間で連続して切り替えられながら、書き込みを行う。これは、パルス書き込みを用いるときよりも、はるかに小型の書き込み機能を可能にする。パルス書き込みでは、テープが移動する間に書き込みヘッドによって電流のオン・オフ切り替えが行われる。
本発明の別の態様によれば、テープ・ヘッドを含むテープ・ドライブが提供される。本テープ・ヘッドは、サーボ・バンドからの読み取りに割り当てられた第一サーボ・リーダおよびサーボ・バンドからの読み取りに割り当てられた第二サーボ・リーダを少なくとも包含する。テープ・ドライブの作動の間に、共通のサーボ・バンドからのサーボ情報の読み取りに割り当てられたサーボ・リーダのセットのうち、一つのサーボ・リーダは第一サーボ・サブバンドから読み取りを行うことができ、サーボ・リーダのセットの別のサーボ・リーダは第二サブバンドから同時に読み取りを行うことができる。但し、これらサーボ・リーダの相異なるサブバンドへの割り当ては、例えば、テープ・ストレージ媒体の移動方向に応じて変更することが可能である。例えば、順方向のテープ移動におけるこれらサーボ・リーダへの割り当ては、逆方向テープ移動における割当てとは異なり得る。二つより多いサーボ・リーダが共通のサーボ・バンドに割り当てられている場合、それらリーダの一つ以上を、テープ移動方向の片方など或る作動状況において、アイドル・モードにすることさえ可能である。
或る好適な作動方法において、第一および第二サーボ・サブバンドは同時に読み取られ、読み取られた情報を有する二つのリードバック信号が同時に分析される。両方のサーボ・リーダが本質的に横方向位置情報を提供するものとすれば、第一サーボ・リーダからの信号を処理するサーボ・チャネルであれ、または第二サーボ・リーダからの信号を処理するサーボ・チャネルであれ、どちらかのサーボ・チャネルによって新しい横方向位置値が算定されたときには、常にテープ・ヘッドの横方向位置の調整が遂行されることが望ましい。しかして、テープ・ヘッド・アクチュエータに対するコントローラは、第一横方向位置値と第二横方向位置値との重み付け選択、もしくは重み付け組み合わせ、またはその両方を使って、テープ・ヘッド・アクチュエータに対する制御信号を得るように設計することができる。
図1は、データ・バンドおよび場合によってはさらなるサーボ・バンドと共に、テープ・ストレージ媒体TPに寄与するサーボ・バンドSBの一部分の図を提示する。サーボ・バンドSBは、長手方向軸xに沿って延びており、この軸は、同時にテープ・ストレージ媒体TPが延びる方向を表し、これに沿って作動中にテープ・ストレージ媒体TPが移動する方向、すなわちテープ移動方向TMDも表している。サーボ・バンドは、二つのサブバンドSB1およびSB2を包含し、第一および第二サブバンドSB1およびSB2は相互に隣り合って配置され、基本的に相異なるサーボ・パターンを包含する。望ましくは、サーボ・バンドSBは、テープ・ストレージ媒体TPの長手方向の延長全体に沿って延びており、図示のサーボ・パターンは、非常に小さなカット部だけを表しており、実際には、図示のサーボ・パターンは、各サーボ・バンドSBでテープ・ストレージ媒体TP沿いに数千回も繰り返されている。
テープ・ストレージ媒体上のサンプルのサーボ・バンド/データ・バンド構造体を説明するために、該構造体が図2に示されている。テープ・ストレージ媒体TPの一部分のこの概略上面図において、テープTPは、x方向に長手方向の延長を、y方向に横方向の延長を有する。テープ傾斜がないものと仮定すれば、x方向における長手方向の延長はテープ移動方向TMDと平行である。サーボ・バンドSBおよびデータ・バンドDBは、テープTPの長手方向の延長に沿って延びている。各データ・バンドDBは、二つのサーボ・バンドSBの間に配置される。各データ・バンドDBは、詳しくは示されていない複数のデータ・トラックを包含し、望ましくは、テープ・ドライブのテープ・ヘッドが複数の書き込みもしくは読み取りエレメントまたはその両方を備えている場合、データ・バンドDBのこれらデータ・トラックの複数トラックに同時に書き込みもしくは読み取りまたはその両方が行われる。各サーボ・バンドSBは、例えば図1に示されるように、テープTPの長手方向の延長に沿って配置されたサーボ・パターンを包含する。具体的には、図2の最上部のサーボ・バンドSBの切り抜き部分Zを図1に示すことができる。
図1に戻り、本発明の或る実施形態によれば、二つのサーボ・サブフレームSFR1およびSFR2を包含するサーボ・フレームFR中にサンプルのサーボ・パターンを含む、フレーム・サーボ・パターンとも言われるタイミング・ベースのサーボ・パターンが、第一サブバンドSB1の中に配置される。本事例において、サーボ・フレームFRは、五つまたは四つのストライプSP1、SP2の四個のバーストA、B、CおよびD中に編成された、18のサーボ・ストライプSP1およびSP2を含む。各ストライプSP1は、y方向のテープ1の横方向延長に対する方位角αに方向付けられ、各ストライプSP2は、y方向のテープ1の横方向延長に対する方位角βに方向付けられており、本事例では、α=+6°またはβ=−α=−6°である。但し、例えば、サーボ・パターンの高さまたは他の幾何的寸法、バーストの数、あるいはバースト当たりのサーボ・ストライプの数を変化させた他の構成を用いることも可能である。
しかして、バーストとは、相互に平行なストライプのセットであると理解すればよい。少なくとも二つのバーストの第一のバースト中では、少なくとも二つのサーボ・ストライプが、テープ媒体の長手方向の延長と直交する方向に対し第一角度で傾斜しており、この角度は方位角とも言われる。第一バーストに続いて第二バーストがあり、該第二バースト中では、少なくとも二つのサーボ・ストライプが、テープの長手方向の延長と直交する方向に対し第二角度で傾斜しており、この第二角度は第一角度とは異なる。これは、隣り合うバーストのストライプは、相互に対して平行でないことを意味する。好適な実施形態において、横方向軸に対し、第一角度は+αであり第二角度はβ=−αである。引き続きのバースト内のストリップのかかる配置において、第一および第二バーストをスキャンしたときに、割り当てたサーボ・リーダによって生成されるパルス間の間隔は、該サーボ・リーダの横方向位置を、しかして該サーボ・リーダの基準位置からの偏位、および同様にテープ媒体に対するテープ・ヘッドの位置の偏位を示す。例えば、横方向基準位置がサーボ・バンドの中央にあり、サーボ・ヘッドがかかる中央位置からずれた場合、横方向オフセット状態における第一バーストのストライプと第二バーストのストライプとの間の距離は、これら二つのバースト中の異なった角度で傾斜しているストライプに起因して、サーボ・リーダがサーボ・バンドの中央の基準位置に合致しているときの対応距離とは異なる。異なった距離は、第一および第二サーボ・バーストをスキャンする際にサーボ・リーダによって供給されるパルスのタイミングの変化に反映される。かくして、割り当てたサーボ・リーダによってパルスの形で供給される位置誤差信号のタイミング・ベースの評価が行われる。
テープに対しデータの読み取りもしくは書き込みまたはその両方を行いながら、テープはテープ・ヘッドに対して長手方向xに移動する。さらに、望ましくは、テープ・ヘッドは、適切なアクチュエータを使って横方向y、すなわち方向xを横切る方向に移動可能である。しかしながら、テープ・ヘッドに対するテープの横方向オフセットによって、両方向の不整合が生じ得る。テープをテープ・ヘッドに再整列するために、テープに対するテープ・ヘッドの位置が、前述のように、テープ駆動動作の間、第一サブバンドSB1からサーボ・ストライプ/パターンを読み取るサーボ・リーダ(以下、第一サーボ・リーダSR1とも言う)によって生成されたパルス(別名、双ビット)の相対的なタイミングから見積もられる。具体的には、TBSサーボ信号を処理するサーボ・チャネルは、同一の方位角を有するストライプSP1またはSP2のペアの間、例えば、AバーストとCバーストとのストライプ/パルスの間、もしくはBバーストとDバーストとのストライプ/パルスの間またはその両方の間の時間差を測定することによってテープ速度を見積もることができる。サーボ・チャネルは、例えば、AバーストとBバーストとのストライプ間、およびCバーストとDバーストとのストライプ間など、相反対の方位角を有するストライプSP1とSP2とのペアにより生成されるパルスの相対的なタイミングを比較し、それを上記の速度見積もりと組み合わせることによって、第一サーボ・リーダが機械的に結合されているテープ・ヘッドの横方向位置をさらに見積もることができる。テープ・ヘッドとテープとの間の偏位が測定されれば、制御ユニットは、閉ループ制御でテープ・ヘッドのアクチュエータを制御し、テープ・ヘッドが横方向にテープと再整列されるように、テープ・ヘッドの横方向の再位置付けをすることが可能である。しかしながら、フレームまたはサブフレーム全体が読み取られた後においてだけ新しい横方向位置値が算定できることを考えれば、かかるパラメータの更新のレートは、更新のレートを決めるテープ速度と共にサーボ・フレームの長さによって制限される。
一般に、サーボ・バンドのサーボ・フレーム中に追加情報をコード化することができる。例えば、かかる追加情報は、M−ary(M>1)シンボル・アルファベットを使って長さgの符号語中にコード化することが可能である。一実施形態において或る数g個のシンボルが符号語を構成しているとすれば、各サーボ・フレームがかかる符号語の一シンボルを包含するようにして、g個のサーボ・フレームを使い符号語を表すことができる。具体的には、アルファベットAを、シンボル「0」および「1」を用いるバイナリ・アルファベットとすることが可能である。連続する各サーボ・フレーム中に、単一のシンボル、すなわち「0」もしくは「1」をコード化すればよい。但し、シンボル群のシーケンスを、連続するサーボ・フレーム群に、エラー是正を可能にする追加の冗長性と併せコード化することもできる。
本発明の別の実施形態において、追加情報をサーボ・パターンの中にコード化することができる。具体的には、M−aryアルファベットの単一のシンボルをサーボ・フレームごとにコード化することが可能である。したがって、xディジットを包含する語をコード化するためには、x個のサーボ・フレームが使われてもよい。一つのサーボ・フレーム内で、複数のサーボ・バースト中にシンボルを冗長的にコード化することもでき、あるいは、単一のバーストだけにコード化情報を保持させ、サーボ・バースト・ベースで冗長的にはコード化しないようにしてもよい。サーボ・バースト内で、サーボ・バーストが平行ストライプのセットの形でサブパターンを保持していることを前提として、ストライプのセットの一つのサブセットだけを一シンボルのコード化のために用いてもよい。具体的に、この追加情報は、現在スキャンされているテープの長手方向位置に関する情報であり得る。一実施形態において、LPOSとも称されるかかる長手方向位置情報はサーボ・パターン中にコード化することができる。しかして、テープの長手方向位置は、サーボ・リーダによって読み取られたLPOS情報に基づいて識別することが可能である。LPOS情報は、テープ媒体を所定の長手方向位置に巻き戻すため、および、例えば、かかる指定された長手方向位置で読み取りもしく書き込みまたはその両方を開始するために用いることができる。製造情報など他の情報も追加することも可能で、これには、例えば、テープ・カートリッジのメーカー、テープ・カートリッジの製造日付、当該カートリッジが適合できる規格に関する情報などを示すことが可能である。一実施形態において、この追加情報は、図1の例のAおよびBバースト中の第二および第四ストライプなど、バースト中の特定のストライプのオフセットによってコード化することができる。別の実施形態において、追加情報をコード化する方法としてストライプの極性変調(polarity modulation)を使うことができる。すなわち、一つ以上のストライプを相異なる極性で書き込み、これにより追加情報をコード化することが可能である。
第二サーボ・サブバンドSB2は、複数の平行サーボ・トラックSTxで編成される。本実施形態では、六つの隣接するサーボ・トラックST1〜ST6が設けられているが、達成しようとする横方向位置感知の感度に応じ、第二サブバンドSB2のために設けられた幅に応じ、さらに、第二サーボ・リーダSR2とも称する割り当てられたサーボ・リーダの幅wSR2に応じて、1より多い任意の数のサーボ・トラックを設けることが可能である。各サーボ・トラックSTxは、横方向次元yに、すなわちテープTPの長手方向延長と直交方向に同一の幅wSTを有すると仮定されている。各サーボ・トラックSTxは専用のサーボ・パターンを包含する。第二サーボ・サブバンドSB2のサーボ・トラック中のサーボ・パターンは、望ましくは、サーボ・バンド全体に沿って延び、したがってテープ・ストレージ媒体TP全体に沿って延びる連続したサーボ・パターンであることによって特徴付けられるとよく、さらに、第一サブバンドSB1からのサーボ・フレームFRまたはサブフレームSFR全体の読み取りの完了を待つ必要なしに、第二サーボ・リーダSR2による読み取りの間、連続的にサーボ・パターンから横方向位置情報を得ることが可能なフレームなしのサーボ・パターンであることによって特徴付けられるとよい。
望ましくは、前述したように直交するよう、少なくとも相隣接するサーボ・トラックのサーボ・パターンは、相互に異なる。
図1に示された実施形態において、各サーボ・トラックSTx中のサーボ・パターンは、相異なる周波数の磁気転移を包含することができる。本事例において、磁気転移は三つの相異なる周波数f1、f2、またはf3を使って設けられており、図1中の白の領域から黒の領域へまたはその逆の各転移は磁気転移を表す。本事例において、周波数はf1>f2>f3であり、どの二つの隣接するサーボ・トラックSTxも、相異なる周波数fxによる磁気転移のサーボ・パターンを包含する。さらに、サーボ・トラック二本おきに同じサーボ・パターンが適用され、サーボ・トラックST1とST4とは同一のサーボ・パターンを包含する。サーボ・トラックST2とST5、およびST3とST6とも同様である。しかして、サーボ・トラックSTxの三つ組みは互いに同一である。好適な実施形態において、サーボ・トラックのセットが同一のサーボ・トラックの三つ組みに編成され、各三つ組みにおいて三つの相異なる周波数を有する周期波形が用いられることが望ましい。
テープTPの第二サブバンドSB2を現在読み取るために割り当てられた第二サーボ・リーダSR2は、少なくとも各サーボ・トラックSTxの幅の幅wSR2を有し(すなわち、wSR2≧wST)、相異なる幅のサーボ・トラックの場合は、少なくとも最小幅のサーボ・トラックの幅を有する。第二サーボ・リーダSR2の幅wSR2は、その横方向の、すなわちテープTPの長手方向の延長と直交方向への延長を示す。望ましくは、第二サーボ・リーダSR2の幅wSR2は、例えば図1の実施形態に示されたような、各サーボ・トラックSTxの幅wSTよりも大きい。
本事例では、第二サーボ・リーダSR2に加えて、第一サブバンドSB1中のフレーム・サーボ・パターンを同時に読み取るため、第一サーボ・リーダSR1が設けられる。図1から導き出せるように、第一および第二サーボ・リーダ、SR1とSR2とは、相互に間隔取りされ、別個のセンサ信号を提供する別個のサーボ・リーダである。但し、第一および第二サーボ・リーダ、SR1とSR2とは、固定距離を置いて一つのテープ・ヘッド中に機械的に結合されていて、テープTPに対する第一サーボ・リーダSR1の位置のいかなる変化も第二サーボ・リーダSR2にも適用されると想定される。本実施形態において、第一サーボ・リーダSR1の幅wSR1は第二サーボ・リーダSR2の幅wSR2と等しい。他の実施形態では、これらの幅wSR1とwSR2とは異なり得る。
第二サーボ・リーダSR2の幅wSR2がサーボ・トラックSTxの幅wSTを超えているので、テープTPが第二サーボ・リーダSR2を含むテープ・ヘッドを横切ってテープ移動方向TMDに移動している間、第二サーボ・リーダSR2は、三つの周波数f1、f2、f3のうちの少なくとも二つの成分を包含する、リードバック信号とも称されるセンサ信号を提供する。第二サーボ・リーダSR2の横方向位置に応じて、リードバック信号中の二つまたは三つの周波数成分のエネルギが変化する。識別されたプレゼンス(presence)およびそのエネルギから、第二サーボ・リーダSR2のテープTPに対する横方向位置値を得ることができる。
図3は、二つのサーボ・バンドSBの間にデータ・バンドDBを備えるテープ・ストレージ媒体の一部分を示す。各サーボ・バンドSBは、TBSフレーム・サーボ・パターンを包含する第一サーボ・サブバンドSB1を含む。本事例において、第一サブバンドSB1がサーボ・バンドSBの幅wSBの半分を占め、しかして、第二サーボ・サブバンドSB2はサーボ・バンドSBの幅wSBの他の半分を占めることができ、該第二サブバンドは、れんが様のパターンで示されている。一般に、現行のテープ・ストレージ・システムでは、より高いデータ転送速度に対する要求は、単一回で書き込まれ読み取られるデータ・トラックの数を増やすことによって達成することができるが、但し、単一回で、データ・バンドDBのこれら複数のデータ・トラックに対する読み取りもしくは書き込みまたはその両方を行うための、対応する数の相隣接するリーダもしくはライタまたはその両方がテープ・ヘッドに対し割り当てられることが条件となる。例えば、並列のデータ・チャネルの数が16から32に増やされた場合、達成可能なデータ転送速度は基本的には倍になる。横方向位置感知/サーボ・メカニズムの感度が、データ・トラックおよびデータ・チャネルそれぞれの以前の数の使用時と同じままであるとすれば、チャネルの数を倍にすることで一度に二倍の量のデータの書き込みまたは読み取りが得られ、これにより、必要なサーボ位置探索(servo locations)および関連するヘッドの横方向位置付けの回数が半分に低減される。結果として、例えば図3に示すように、以前のフレーム・サーボ・パターンの幅が半分に削減可能になる。サーボ・バンドSBの幅wSBが、以前に定義された、すなわち前の世代に対して定義されたのと同じままであるとすれば、フレーム・サーボ・パターンの幅の削減はサーボ・バンドSB中に未使用のスペースをもたらす。しかしながら、増加された数のデータ・チャネルを備えた新しい世代のテープ・ドライブ・システムに、まだなお旧世代のものとの下位互換性が求められる可能性があること、すなわち、旧世代のテープ・ストレージ・システムのテープ・ストレージ媒体に対してなお読み取りもしくは書き込みまたはその両方が可能であるべきであって、このためには諸世代を通してサーボ・バンドおよびデータ・バンドの幅を変えるべきでない、ということを考えれば、各サーボ・バンドSBの幅wSBおよび各データ・バンドDBの幅wDBを含め、テープTPの全体的な幅が諸世代を通して同じままであることが望ましい。かくして、新規世代品中の別途の使用のないスペースを、提案されたサーボ・パターンのような別のサーボ・パターンのために今まさに活用し、フレーム・サーボ・パターンを包含する第一サブバンドSB1に隣り合う第二サブバンドを表すことができる。
図4は、二つのサーボ・バンドSBを有するテープ・ストレージ媒体TPの概略図に対し配置された二つのテープ・ヘッド・モジュールTH1およびTH2を備えたテープ・ヘッドTHを含む、テープ・ドライブを概略的に示す。各サーボ・バンドSBは、フレーム・サーボ・パターンを包含する第一サーボ・サブバンドSB1と、高密度サーボ・パターンを包含する第二サーボ・サブバンドSB2とを含む。第一サーボ・バンドSBの下方には、様々なデータ・サブバンドおよび追加のデータ・トラック域を包含するデータ・バンドDBがある。本例では、データ・バンドは12のラップを包含する。テープ・ヘッド・モジュールTH1およびTH2は相互に同一で、データの書き込み後のモニタリングのための読み取りを可能にする。
このテープ・ヘッドは、各サーボ・バンドSBに割り当てられた三つのサーボ・リーダSR0、SR1、およびSR2を包含する。テープが、テープ・ヘッドに対し順方向に移動する間、サーボ・リーダSR1は、「サーボ位置(servo locations)0〜5」と記載された基準位置にある第一サブバンドSB1中のフレーム・サーボ・パターンを読み取るために使われ、サーボ・リーダSR2は、第二サブバンドSB2中の高密度サーボ・パターンを読み取る。サーボ・リーダSR0は、テープが順方向に移動している間は使用されない。
テープ・ヘッドに対しテープが逆方向に移動している間、サーボ・リーダSR0は、「サーボ位置6〜11」と記載された基準位置にある第一サブバンドSB1中のフレーム・サーボ・パターンを読み取るために使われ、サーボ・リーダSR1は、第二サブバンドSB2中の高密度サーボ・パターンを読み取るために使われる。サーボ・リーダSR2は、テープが逆方向に移動している間は使用されない。
この事例において、各サーボ・バンドSBの幅は、例えば図1または図3の事例に用いられたサーボ・バンドの幅の半分に、特定の実施形態では約93/2μmに低減される。この幅は、以前の各サーボ・バンドSBの幅、特定の実施形態では93μmであった幅に比べ、より高い更新レートまたは一定の更新レートでの方位角の増大を可能にする。したがって、第二サブバンドSB2中のサーボ・パターンは、カートリッジの容積に関しいかなる不利な条件もなく導入することができる。それどころか、「追加のデータ・トラック」と記載された領域が、前の世代と比べて追加されるデータのため解放されている。データ・バンド中に同じ数のラップを維持しながら、サーボ・バンドの幅を半分にする方法は、縮小されたサーボ・バンドを読み取るために使われるサーボ・リーダの数を一つから少なくとも二つに増やすことにかかっている。「元の」サーボ・リーダに隣接して配置されるどの追加サーボ・リーダも、縮小されたサーボ・バンドの幅にほぼ等しい距離間隔で配置される。提案された実施形態において、各テープ・ヘッド・モジュールには第三のサーボ・リーダSR2が含まれ、三つのサーボ・リーダのうち、常に二つが、第一および第二サーボ・サブバンドSB1およびSB2の両方を読み取るため作動している。
図5は、略図a)に本発明の実施形態によるサーボ・バンドSBの一部分を示す。再述するが、第一サブバンドSB1はTBSサーボ・パターンを包含し、一方、第二サーボ・サブバンドSB2は、互いに平行ないくつかのサーボ・トラックST1〜ST4中に配置された複数の高密度サーボ・パターンを包含しており、この四つのサーボ・トラックST1〜ST4は、単なる説明のための例示である。この実施形態では、高密度パターンは、マルチトーン・パターンとも言われる多周波数パターンによって表されている。具体的には、スペクトル成分のごくわずかなオーバーラップを有する磁気転移の周期的シーケンスが、スペクトル成分のごくわずかなオーバーラップを有する相隣接するサーボ・トラックST1〜ST4中に用いられている。例えば、略図5a)の第二サーボ・サブバンドSB2の切り抜き部分である略図5b)に関連して示すように、高周波数波形は、フレーム・サーボ・パターンのサブフレームの長さにあたる76μm内に100周期を有する、サーボ・トラックST1中で用いられ、これにより0.76μmの周期長が得られる。サーボ・トラックST2では、フレーム・サーボ・パターンのサブフレームの長さにあたる76μm内に50周期を有する低周波数波形が用いられ、これにより1.52μmの周期長が得られる。略図5b)の中の矢印は、前述のどの周波数関係に合わせたものでもなく、磁気転移を一般的に示したものでしかない。サーボ・トラックST3中で使われる波形は、サーボ・トラックST1のものと同一であり、サーボ・トラックST4で使われる波形は、サーボ・トラックST2のものと同一である。したがって、サーボ・トラックST1とST3とは同じサーボ・パターンを包含し、サーボ・トラックST2とST4とは同じサーボ・パターンを包含するが、但し、相隣接するサーボ・トラックST1〜ST4のサーボ・パターンは、どの二つの隣接するサーボ・トラックについても相異なっている。略図5b)中には、サーボ・トラックSTxの幅に合致する幅を有する第二サーボ・リーダSR2が示されている。
説明目的のため、略図5c)では、第二サーボ・トラックST2中へのいかなるオーバーラップもなく、専ら第一サーボ・トラックST1をカバーしている第二サーボ・リーダSR2に対する波形が、時間ドメインに示されており、二つの磁気転移を含む単一の周期だけが、第一サーボ・トラックST1中の該二つの磁気転移の左側と右側とに隣り合う磁気的に消去された領域と共に、提示されている。略図5d)には、第一サーボ・トラックST1中へのいかなるオーバーラップもなく、専ら第二サーボ・トラックST2をカバーしている第二サーボ・リーダSR2に対する波形が、時間ドメインに示されており、二つの磁気転移を含む単一の周期だけが、第二サーボ・トラックST2中の該二つの磁気転移の左側と右側とに隣り合う磁気的に消去された領域と共に、提示されている。略図5e)には、図5b)に従って配置され、第一および第二サーボ・トラックST1およびST2を同程度にカバーしている第二サーボ・リーダSR2のリードバック信号の周波数スペクトルが示されている。かかる周波数表現から、第二サーボ・リーダSR2がサーボ・トラックST1およびST2両方に同程度にオーバーラップしているとすれば、周波数f1およびf2の両方が同じエネルギを有して見えることになると推定することができる。略図5e)は、これらの磁気転移からもたらさられる調和周波数(harmonic frequencies)を表す追加的二重周波数ピークをさらに示している。いずれの場合も、相隣接するサーボ・パターンの周波数スペクトルは、これら二つのパターンが、区別可能で干渉がごくわずかになるように選択される。本事例では、テープは5.1m/sの速度で移動すると想定されている。
したがって、一般に、第二サーボ・リーダは、第一サーボ・バンド中のフレーム・サーボ・パターンに起源する第一横方向位置値とは別に、第二横方向位置値を算定するため、周期的波形に対する離散フーリエ変換ベースの検出器によって検出可能なリードバック信号を提供する。また、第二サブバンド中のサーボ・パターンは、データ・トラック中のデータのタイミング回復プロセスを支援するパイロット信号を生成するために用いることも可能である。第二サーボ・サブバンド中の相隣接するサーボ・トラックの隣接するサーボ・パターン間のエッジに対する第二サーボ・リーダの位置は、第二サーボ・リーダのリードバック信号を、第二サーボ・リーダによって感知された相異なるサーボ・パターン中に包含されるエネルギを検出し区別する検出器に供給することによって得ることができる。例えば、xより多い数のサーボ・トラック中でx種だけの異なったサーボ・パターンを用いる場合などの、繰り返しサーボ・パターン間の曖昧さは、フレーム・サーボ・パターンを読み取る第一サーボ・リーダのリードバック信号によってテープ・ヘッドの粗精度の位置決め測定を行うことにより回避することができる。
対照的に、図6は、三つのサーボ・トラックST1〜ST3を包含し、これらサーボ・トラックST1〜ST3の各々が相異なる周波数f1、f2、およびf3での磁気転移のサーボ・パターンを包含する、第二サブバンドSB2の別の例を示す。本事例において、第一サーボ・トラックST1は第一周波数f1によるサーボ・パターンを包含し、第二サーボ・トラックST2は第二周波数f2による第二サーボ・パターンを包含し、第三サーボ・トラックST3は第三周波数f3によるサーボ・パターンを包含し、f1<f2<f3である。これも同様に、第二サーボ・リーダSR2は、各サーボ・トラックSTxの幅に合致する幅を有するように設けられる。しかして、略図6a1)に示された第二サーボ・リーダSR2の横方向位置によって表されるように、第二サーボ・トラックST2と第一サーボ・トラックST1との間のエッジは、略図6a2)および6b2)それぞれに示されるようにリードバック信号中の各種の周波数を識別しそれらのエネルギを評価することによって、略図6b1)に示された第二サーボ・リーダSR2の横方向位置に表されるように、第二サーボ・トラックST2と第三サーボ・トラックST3とのエッジから区別することができる。略図6a1)の状況において、第二サーボ・リーダSR2のリードバック信号中には、第二周波数f2に加え、第一のより低い周波数f1が存在し、これをスペクトル分析によって検出することが可能である。スペクトル成分f1およびf2のエネルギは、第二サーボ・リーダSR2が、第一サーボ・トラックST1と第二サーボ・トラックST2とにオーバーラップしている関係を表す。周波数f1のスペクトル成分のエネルギが第二周波数f2のスペクトル成分のエネルギより小さいことを考えれば、当然、第二サーボ・リーダSR2が、第一サーボ・トラックST1よりも第二サーボ・トラックST2をより多くカバーしているということになる。対応するエネルギの比率から、テープに対する第二サーボ・リーダSR2の細かな位置付けが得られる。略図6a2)の状況において、第二サーボ・リーダSR2のリードバック信号中には、第二周波数f2に加え、第三のより高い周波数f3が存在し、これをスペクトル分析によって検出することが可能である。スペクトル成分f2およびf3のエネルギは、これらも同様に、第二サーボ・リーダSR2が、第二サーボ・トラックST2と第三サーボ・トラックST3とにオーバーラップしている関係を表す。第三周波数f3のスペクトル成分のエネルギが第二周波数f2のスペクトル成分のエネルギより小さいことを考えれば、当然、第二サーボ・リーダSR2が、第三サーボ・トラックST3よりも第二サーボ・トラックST2をより多くカバーしているということになる。対応するエネルギの比率から、テープに対する第二サーボ・リーダSR2の細かな位置が得られる。
しかして、一般に、サーボ・トラックごとに相異なるサーボ・パターンを設けることは、たとえ隣接していないにせよ異なったトラックに同一のサーボ・パターンを設けるのとは対照的に、位置誤差信号の計算における曖昧さの回避を可能にする。
図7は、略図a)に、本発明の別の実施形態によるサーボ・バンドSBの一部分を示す。これも同様に、第一サブバンドSB1は、TBSサーボ・パターンを包含し、一方、第二サーボ・サブバンドSB2は、互いに平行ないくつかのサーボ・トラックST1〜ST4中に配置された複数の高密度サーボ・パターンを包含している。但し、これら四つのサーボ・トラックST1〜ST4は説明のための単なる例示である。この実施形態では、高密度パターンは疑似ノイズ・シーケンスで表されている。具体的には、良好な交差相関特性を備えた疑似ノイズ・パターンを表す磁気転移が、相隣接するサーボ・トラックST1〜ST4中に用いられている。例えば、略図7a)の第二サーボ・サブバンドSB2の切り抜き部分である略図7b)に関連して示されているように、第一疑似ノイズ・シーケンスPN_Aがサーボ・トラックST1中に用いられ、第二疑似ノイズ・シーケンスPN_Bがサーボ・トラックST2中で用いられている。例えば、疑似ノイズ・シーケンスPN_AおよびPN_Bの各々は、良好な交差相関特性を有する、長さ31の、すなわち31のバイナリ・シンボルを含む疑似ノイズ・シーケンスを表す。本実施形態において、各疑似ノイズ・シーケンスPN_AおよびPN_Bは、76μmにわたって延び、この長さは、望ましくは第一サブバンド中のサーボ・フレームの長さより短いとよい。上記の疑似ノイズ・シーケンスの長さは、2.45μmの長さのバイナリ・シンボルを生成する。例えば、5.1m/sのテープ速度に対し、このPNシーケンスの繰り返し間隔は14.9μsに等しい。サーボ・トラックST3中で用いられるシーケンスは、サーボ・トラックST1のものと同一であり、サーボ・トラックST4中で用いられるシーケンスは、サーボ・トラックST2のものと同一である。したがって、サーボ・トラックST1とST3とは同じ疑似ノイズ・シーケンスPN_Aを包含し、サーボ・トラックST2とST4とは同じ疑似ノイズ・シーケンスPN_Bを包含するが、但し、相隣接するサーボ・トラックのサーボ・パターンは、どの二つの隣接するサーボ・トラックについても相異なる。略図7b)には、サーボ・トラックSTxの幅に合致する幅を有する第二サーボ・リーダSR2が示されている。
第二サーボ・リーダSR2のリードバック信号は、望ましくは二つ以上の相関器でフィルタされ、しかして、第二サーボ・リーダSR2の、したがってテープ・ヘッドの細かな位置を測定するために十分な情報を提供する。略図7c)には、略図7b)に示された第二サーボ・リーダSR2の横方向位置に対する、第二サーボ・リーダSR2の関連サンプル・リードバック信号が時間ドメインで示されている。本実施形態において、疑似ノイズ・シーケンスPN_AおよびPN_Bに対応する信号成分のエネルギは、二つの異なった疑似ノイズ・シーケンスが使われる場合、二つの相異なる相関器によって提供される。第一相関器では、リードバック信号は、時間ドメインにおいて第一疑似ノイズ・シーケンスPN_Aに相関付けられ、リードバック信号中に第一疑似ノイズ・シーケンスPN_Aの成分が存在する場合、非ゼロの自己相関応答(non zero auto correlation response)が提供される。第二相関器では、リードバック信号は、第二疑似ノイズ・シーケンスPN_Bに相関付けられ、リードバック信号中に第二疑似ノイズ・シーケンスPN_Bの成分が存在する場合、非ゼロの自己相関応答が提供される。これら二つの疑似ノイズ・シーケンスの波形が、時間ドメインにおいて相互に直交することを所与として、リードバック信号中の各成分のエネルギを検出することができる。略図7d)では、これら二つの相関器の出力信号が時間ドメインで示されている。用いられた二つの疑似ノイズ・シーケンスPN_AおよびPN_Bの成分はかくして区別が可能である。これらは、疑似ノイズ・シーケンスが直交するように選択されるので、相関器の出力端では無視可能な干渉が生じるだけである。
したがって、一般に、少なくとも二つの相隣接するトラックST1〜ST4にまたがる第二サーボ・リーダSP2が、リードバック信号中に包含されている可能性のある直交する波形のプレゼンスもしくはエネルギまたはその両方を識別するための、相関演算に付されるリードバック信号を提供し、該演算から第二横方向位置値を得ることができる。また、第二サブバンドSB2中のサーボ・パターンは、データ・トラック中のデータのタイミング回復プロセスを支援するためのパイロット信号を生成するために用いることもできる。第二サーボ・サブバンドSB2中の相隣接するサーボ・トラックの隣接するサーボ・パターン間のエッジに対する第二サーボ・リーダの位置は、相隣接するトラック群にまたがる第二サーボ・リーダSR2のリードバック信号から得ることができ、該リードバック信号は、第二サーボ・リーダのリードバック信号中に存在する相異なる疑似ノイズ・シーケンス中に包含されるエネルギを検出して評価する相関器のセットに、供給される。例えば、2より多い数のサーボ・トラック中で用いられるのが二つだけの異なった疑似ノイズ・シーケンスの場合などの、繰り返しサーボ・パターンの間の曖昧さは、フレーム・サーボ・パターンを読み取る第一サーボ・リーダのリードバック信号によってテープ・ヘッドの粗精度の位置決め測定を行うことにより、回避することができる。しかして、一般に、サーボ・トラックごとに相異なるサーボ・パターンを設けることは、たとえ隣接していないにせよ異なったトラックに同一のサーボ・パターンを設けるのとは対照的に、位置誤差信号の計算における曖昧さの回避を可能にする。
図8は、図3のものと同様なテープ・ストレージ媒体の一部分を示す。データ・バンドDBは、サーボ・バンドSBの間にサンドイッチ状に挟まれている。各サーボ・バンドSBは、TBSフレーム・サーボ・パターンを包含する第一サーボ・サブバンドSB1と、垂直のストライプで単に簡略的に図示されている高密度サーボ・パターンを包含する第二サーボ・サブバンドSB2とを含む。垂直のストライプ間の距離の変化は、第二サブバンドSB2中のかかる高密度サーボ・パターンが、例えば、LPOS情報、サーボ・バンドID情報、製造情報など、埋め込みの追加情報も包含できることを示している。このとき、好適な実施形態において、かかる追加情報を一切、第二サーボ・サブバンドSB2にコード化し、第一サーボ・サブバンドSB1中のフレーム・サーボ・パターンはこのような追加情報を一切包含しないようにすることができる。この実施形態では、フレーム・サーボ・パターンは、もはやサーボ・フレームFR当たり2を超えるバーストを提供せず、図1のバーストCおよびDは、これらバーストCおよびDが以前は追加情報をコード化するために使用(同時使用)されていた場合もあることを考えると、除去され得る。サーボ・フレームFR内の付加的なバーストが冗長となり除去可能となったときは、いつにおいてもかかるサーボ・フレームFRの長さを短縮することができる。さらに、追加情報のコード化のためだけに多数のストライプが使われ得る状況では、バースト当たりのストライプの数を削減することによって、単一のバーストの長さをさらに短縮することが可能である。
非常に好適な実施形態において、このとき、フレーム・サーボ・パターンのサーボ・フレームFRは、各バーストAおよびB中に四つのストライプだけを持たせて、二つのバーストAおよびBだけを包含することができる。サーボ・フレームの任意の短縮された長さは繰り返し周波数の増加につながり、続いてこれが第一横方向位置値の更新レートの増大につながり、それがより正確な横方向位置付けの助力となり、しかしてより高いデータ密度が可能になる。
別の実施形態において、追加情報は、第一サブバンドSB1中のTBSパターンおよび第二サブバンド中の高密度パターンの両方の中にコード化することもできる。
図9に示された実施形態では、図3の実施形態と比べて、第一サブバンドが第一下位サブバンドSB11と第二下位サブバンドSB12とにさらに分割されており、一方、第一サブバンドSB1の幅は、単一のフレーム・サーボ・パターンだけを包含している第一サブバンドSB1と比較して同じままである。下位サブバンドSB11とSB12との各々は、図9に示されるように、それ自体のフレーム・サーボ・パターンFWDとBWDとを包含している。第二サブバンドSB2は、例えば、前述で紹介したサーボ・パターンのいずれかなどの高密度サーボ・パターンを包含する。
テープ・ストレージ媒体のデータ・バンドDBにおいて、データ・トラックが、蛇行的に書き込まれ読み取られることを所与として、相隣接するデータ・トラックは、相異なる方向に、すなわちテープの順移動方向とテープの逆移動方向とにリニアに書き込まれたデータを包含する。このとき、第一および第二下位サブバンドSB11とSB12との中の二つのフレーム・サーボ・パターンFWBとBWDとは、テープの相異なる移動方向に対するサーボ情報を提供する。第一下位サブバンドSB11中のフレーム・サーボ・パターンFWBは、テープがテープ・ヘッドを横切って順方向に移動するときにサーボ・リーダによって読み取られ、一方、第二下位サブバンドSB12中のフレーム・サーボ・パターンBWDは、テープがテープ・ヘッドを横切って逆移動方向に移動するときにサーボ・リーダによって読み取られ、この逆移動方向は順移動方向の反対方向である。したがって、テープの順移動方向においてデータ・トラックを読み取りまたはこれに書き込むときは、第一フレーム・サーボ・パターンFWDから横方向位置情報が得られ、テープの逆移動方向においてデータ・トラックを読み取りまたはこれに書き込むときは、第二フレーム・サーボ・パターンBWDから横方向位置情報が得られる。前述のように、この手法において、各フレーム・サーボ・パターンFWD、BWDの幅は、基本的には、テープの順および逆移動方向に対し共用される単一のフレーム・サーボ・パターンの幅の半分となろう。かかる構成において、単一の第一サーボ・リーダが、第一フレーム・サーボ・パターンFWDおよび第二フレーム・サーボ・パターンBWDを読み取るために割り当てられると想定されている。
この構成において、第一サーボ・パターンFWDおよびBWDの各々内のサーボ・フレームの長さは、例えば、図3の単一フレーム・サーボ・パターンの幅の半分だけが各々の方向に用いられているとすれば、図3に関連して用いられた単一のフレーム・サーボ・パターン内のサーボ・フレームの長さに比べて短縮されることになろう。より短縮されたフレーム長さは、これによりサーボ・フレームの繰り返し周波数の増加および第一横方向位置値の更新レートの増加をもたらし、それによって、テープ・ヘッドのより迅速な位置決めをもたらす。好適な実施形態において、二つのフレーム・サーボ・パターンFWDとBWDとの間の曖昧さを回避するために、テープ移動方向の情報を、フレーム・サーボ・パターンFWDおよびBWDの中にコード化することができる。
図10は、図9の実施形態と同様な、二つのフレーム・サーボ・パターンが設けられたさらなる実施形態を示す。但し、図9の実施形態と違って、本例では、第二サブバンドSB2のサーボ・トラックが、二つのフレーム・サーボ・パターンの間にサンドイッチ状に挟まれている。図10の実施形態において、二つのフレーム・サーボ・パターンおよびサーボ・トラックは、各々、同じ幅wSB1=wSB2=wSB3に広がっている。好適な実施形態において、このサーボ・バンドSBの合計幅は、図4サーボ・バンドの幅の1.5倍であり、しかして、例えば、図4のサーボ・バンドSBの下方の追加データ・トラックのスペースの半分を占めるだけである。しかして、本例では、下側のフレーム・サーボ・パターンの領域を第三サーボ・サブバンドSB3と称することにする。
第一および第二サーボ・サブバンドからサーボ情報を読み取るために三つのサーボ・リーダが含まれている図4の構成と対照的に、現在の図10では、第一サーボ・リーダSR1および第二サーボ・リーダSR2を包含するテープ・ヘッドTHが簡略的に示されている。本サーボ・バンドの構成は、それがテープ・ヘッドTHを横切るテープの順移動方向のサーボにも逆移動方向のサーボにも役割を果たすという利点を有する。図9の実施形態では、順移動方向および逆移動方向において同じサーボ・リーダがフレーム・サーボ・パターンに割り当てられ、別のサーボ・リーダが第二サーボ・サブバンドSB2中のサーボ・パターンの読み取りに割り当てられるが、本実施形態では、テープの順移動方向においては、第一サーボ・リーダSR1は第一サブバンドSB1およびそのフレーム・サーボ・パターンに割り当てられ、一方、第二サーボ・リーダSR2は第二サブバンドSB2に割り当てられる。但し、テープの逆移動方向においては、第一サーボ・リーダSR1は第二サブバンドSB2に割り当てられ、一方、第二サーボ・リーダSR2は第三サブバンドSB3に割り当てられる。したがって、サーボ・リーダSR1およびSR2は、テープの移動方向に応じて、異なる種類のサーボ・パターンを読み取ることになる。
図11は、本発明の実施形態によるフローチャートを示す。ステップS1で、例えば、テープ・ドライブ中に挿入されたテープ・カートリッジ中のテープ・ストレージ媒体に対しデータの読み取りもしくは書き込みまたはその両方を行うため、テープ・ドライブを作動させることによって本方法が開始される。テープは既に所望の長手方向位置に位置付けられているものと仮定する。次いで、ステップS1でテープが所望のテープ速度で既に移動されている間、ステップS2およびS3で、サーボ情報が、第一サーボ・サブバンドと(ステップS2)第二サーボ・サブバンドと(ステップS3)から同時に読み取られる。ステップS4で、第一サブバンドからの情報が分析され、該分析は、図1での説明によるフレーム・サーボ・パターンから得られた、現在のテープ速度の算定および横方向位置値の算定を含み得る。しかしながら、かかる一切の情報は、サーボ・フレームが、関連するサーボ・リーダを通過した後でだけ判定が可能である。ステップS6で、S4で算定された第一横方向位置値は、次いで、テープ・ヘッドを横方向に位置付けるためのテープ・ヘッドのアクチュエータに対する制御信号に変換することができる。
ステップS5で、第二サーボ・サブバンドに割り当てられたサーボ・リーダによって読み取られたサーボ情報が分析され、該サーボ・リーダのリードバック信号から第二横方向位置値が算定される。望ましくは、リードバック信号中の波形が識別され、その識別された波形に基づいて第二横方向位置値が見積もられる。この第二横方向位置値は、同様に、ステップS6で、テープ・ヘッドを横方向に位置付けるためのテープ・ヘッドのアクチュエータを制御するための信号に変換することができる。第二横方向位置値を提供するレートは、横方向位置に関する情報を得る前にまず完全にスキャンされるべきフレームの制限は受けない。その代わりに、第二横方向位置値のレートは、用いられる波形の周期性の如何により、当然のことながら、さらにテープ速度の如何による。
したがって、ステップS4とS5とでそれぞれ提供される、第一横方向位置値と、第二横方向位置値とは、相異なるレートで利用可能である。但し、テープ・ヘッド・アクチュエータに対する制御信号は、新しい横方向位置値がS4またはS5から利用可能な場合は何時においても、ステップS6で、第一横方向位置値と第二横方向位置値との重み付き選択または重み付き組み合わせを使って得ることまたは更新することができる。
図12は、本発明の実施形態によるテープ・ドライブのブロック図を示す。二つのサーボ・リーダSR1およびSR2はそれらのリードバック信号を制御ユニットCUに提供する。具体的には、フレーム・サーボ・パターンを包含する第一サーボ・サブバンドを読み取る第一サーボ・リーダSR1のリードバック信号は、フレーム・サーボ・パターン中のストライプによって生成されるパルス間の時間間隔を第一横方向位置値に変換するための、タイミング・ベース分析TBAユニットによって受信され、次いで、該位置の値は、ユニットPES1で第一位置誤差信号に変換される。同時に、複数のサーボ・トラックを包含する第二サーボ・サブバンドを読み取る第二サーボ・リーダSR2のリードバック信号は、個々のサーボ・トラック中の基礎をなすサーボ・パターン(マルチトーンまたは疑似ノイズ)に応じスペクトル・アナライザ・ユニットSAまたは相関器ユニットCOにより受信され、第二横方向位置値が算定される。次いで、第二横方向位置値は、算定ユニットPES2によって第二位置誤差信号に変換される。テープ・ヘッド・アクチュエータ・コントローラACユニットは、ユニットPES1およびPES2からの位置誤差信号を、テープ・ヘッド・アクチュエータTHAに対する制御信号に変換し、次いで、該アクチュエータが、サーボ・リーダSR1およびSR2が取り付けられたテープ・ヘッドの横方向位置を調整する。
なお、本高密度パターンは、考えられる全ての実施形態において、データ・チャネルにおけるデータ検出のためのタイミング回復プロセスを助力するための基準信号としても活用が可能である。
当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく多くの修改および置換を加えることが可能なのを理解していよう。
当業者には当然のことながら、本発明の態様は、テープ・ストレージ媒体、テープ・ストレージ媒体に対しデータの読み取りもしくは書き込みまたはその両方を行うための方法、またはコンピュータ・プログラム製品として具現化することができる。したがって、本発明の態様、とりわけコントローラ/制御ユニットの形の態様は、全体がハードウェアの実施形態、全体がソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、あるいは、ソフトウェア態様およびハードウェア態様を組み合わせた実施形態の形を取ることができ、これらは一般に本明細書では全て「回路」、「モジュール」、または「システム」と称することがある。さらに、書き込み方法など、本発明の態様は、コンピュータ可読プログラム・コードが具現化されている一つ以上のコンピュータ可読媒体(群)中に具現化されたコンピュータ・プログラム製品の形を取ることも可能である。
一つ以上のコンピュータ可読媒体(群)の任意の組み合わせを用いることが可能である。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読ストレージ媒体とすることができる。コンピュータ可読ストレージ媒体は、例えば、以下に限らないが、電子的、磁気的、光学的、電磁気的、赤外的、または半導体の、システム、装置、またはデバイス、あるいはこれらの任意の適切な組み合わせであり得る。コンピュータ可読ストレージ媒体のさらに具体的な例(非包括的リスト)には、一つ以上の配線を有する電気接続、携帯型コンピュータ・ディスケット、ハード・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM:random access memory)、読み取り専用メモリ(ROM:read−only memory)、消去およびプログラム可能読み取り専用メモリ(EPROM:erasable programmable read−only memoryまたはフラッシュ・メモリ)、光ファイバ、携帯型コンパクト・ディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM:compact disc read−only memory)、光ストレージ・デバイス、磁気ストレージ・デバイス、または前述の任意の適切な組み合わせが含まれよう。本明細書の文脈において、コンピュータ可読ストレージ媒体は、命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって、またはこれらに関連させて使用するためのプログラムを、包含または格納できる任意の有形媒体であり得る。
コンピュータ可読信号媒体には、例えばベースバンド中にまたは搬送波の一部として具現化されたコンピュータ可読プログラム・コードを有する、伝播データ信号を含めることができる。かかる伝播信号は、以下に限らないが、電磁気的、光学的、またはこれらの任意の適切な組み合わせを含め、さまざまな形態の任意の形を取ることが可能である。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読ストレージ媒体ではないが、命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって、またはこれらに関連させて使用するためのプログラムの通信、伝播、または伝送が可能な任意のコンピュータ可読媒体であり得る。
コンピュータ可読媒体上に具現化されたプログラム・コードは、以下に限らないが、無線、有線、光ファイバ・ケーブル、RFなど、または前述の任意の適した組み合わせを含め、任意の適切な媒体を用いて送信することができる。
本発明の態様の動作を実行するためのコンピュータ・プログラム・コードは、Java(R)、Smalltalk(R)、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、および、“C”プログラミング言語または類似のプログラミング言語などの従来式手続き型プログラミング言語を含め、一つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述することができる。このプログラム・コードは、スタンドアロン・ソフトウェア・パッケージとしてユーザのコンピュータで専ら実行することも、ユーザのコンピュータで部分的に実行することもでき、一部をユーザのコンピュータで一部を遠隔コンピュータで実行することもでき、あるいは遠隔のコンピュータまたはサーバで専ら実行することもできる。後者の場合は、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN:local area network)または広域ネットワーク(WAN:widearea network)を含む任意の種類のネットワークを介して、遠隔コンピュータをユーザのコンピュータに接続することもでき、あるいは(例えばインターネット・サービス・プロバイダを使いインターネットを介し)外部のコンピュータへの接続を行うことも可能である。
コンピュータ・プログラム命令を、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、またはマシンを形成する他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供し、そのコンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行されるこれらの命令が、フローチャートもしくはブロック図またはその両方のブロックもしくはブロック群中に特定されている機能群/動作群を実装するための手段を生成するようにすることができる。
また、これらのコンピュータ・プログラム命令を、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他のデバイスに対し特定の仕方で機能するよう命令することができるコンピュータ可読媒体に格納し、そのコンピュータ可読媒体に格納された命令が、フローチャートもしくはブロック図またはその両方のブロックまたはブロック群中に特定されている機能/動作を実装する命令群を含む製造品を作り出すようにすることができる。
さらに、コンピュータ・プログラム命令を、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他のデバイスにロードし、そのコンピュータ上、他のプログラム可能装置上、または他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させて、コンピュータ実装のプロセスを作り出し、当該コンピュータ上もしくは他のプログラム可能装置上で実行される命令が、フローチャートもしくはブロック図またはその両方のブロックもしくはブロック群中に特定されている機能群/動作群を実装するためのプロセスを提供するようにすることも可能である。