JP6269970B2 - リサイクル性に優れる無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

リサイクル性に優れる無方向性電磁鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主に電気機器の鉄心材料として用いられる無方向性電磁鋼板に関し、具体的には、リサイクル性に優れる無方向性電磁鋼板と、その製造方法に関するものである。
近年、地球資源の枯渇や廃棄物の増加に対する懸念が強まり、様々な分野で資源をリサイクルする動きが活発となってきている。鉄鋼業においても、各種の鉄スクラップ、例えば、自動車や家電製品等の鉄スクラップを、製鉄原料の一部として再利用している。鉄スクラップの発生量は、今後、さらに増加していくと予想されるが、鉄スクラップには、現在の製鋼工程では除去することが難しいCuやSn等の不純物元素が多量に含まれているため、鉄鋼製品の品質が劣化するという問題があり、使用が制限されている。
また、地球環境を保護する観点から、省エネルギーに対する関心が高まってきており、例えば、家庭用エアコンに用いるモータ等の分野では、消費電力が少なく、エネルギー損失の小さいモータに対する要求が強い。そのため、モータの鉄心材料に用いられる無方向性電磁鋼板に対しても高性能な特性が要求されるようになってきており、モータの鉄損を低減するために鉄損が低い無方向性電磁鋼板や、モータの銅損を低減するために磁束密度が高い無方向性電磁鋼板の開発が望まれている。
さらに、最近では、鉄心材の打抜加工時に発生する鉄スクラップを鋳物銑の原料に使用することが多くなってきているが、鋳物銑のAl含有量が0.05mass%以上になると、鋳巣(引け巣)が生じ易くなる。そのため、鋳物銑の鋳造性を確保する観点からは、鋼板のAl含有量を0.05mass%未満に低減する必要が生じている。
Alの含有量を低減した無方向性電磁鋼板としては、例えば、特許文献1には、Al含有量を0.017mass%以下、好ましくは0.005mass%以下とすれば、集合組織の改善によって磁束密度が向上するとともに鉄損が向上することが開示されている。
特開2001−316729号公報
しかしながら、特許文献1には、無方向性電磁鋼板のAl含有量のみを低減した場合には、熱延板焼鈍の冷却中にAlNが微細に析出して再結晶焼鈍時の粒成長を阻害し、鉄損が劣化するという問題があることが記載されている。この問題に対して、特許文献1の発明は、Alの低減とともに、Nを低減することで、磁気特性を向上できるとしているが、完全に磁気特性のバラツキを解消するには至っていないのが実情である。
そこで、本発明の目的は、従来技術が抱える上記問題点を解決し、リサイクル性に優れるだけでなく、低鉄損で高磁束密度の無方向性電磁鋼板を提供するとともに、上記鋼板を安定して製造することができる製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記の課題を解決する、即ち、リサイクル性に優れ、かつ、低鉄損で高磁束密度の無方向性電磁鋼板を安定して製造するため、鋼板中に含まれる不純物元素に着目して鋭意検討を重ねた。その結果、Alの含有量が0.005mass%以下の極低Al材においては、スクラップに起因して混入するCuが磁気特性のバラツキに大きく影響していること、そして、上記極低Al材におけるCuの弊害を抑止し、磁気特性のバラツキを防止するには、Mgの添加が有効であることを知見し、本発明を開発するに至った。
上記知見に基く本発明は、C:0.0050mass%以下、Si:1.0〜4.0mass%、Mn:0.10〜3.0mass%、sol.Al:0.0050mass%以下、P:0.01〜0.20mass%、S:0.0050mass%以下、N:0.0050mass%以下、Cu:0.02mass%以上0.10mass%未満、および、Mg:0.0005〜0.0100mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する無方向性電磁鋼板である。
本発明の上記無方向性電磁鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、SnおよびSbのうちから選ばれる1種または2種を合計で0.01〜0.1mass%含有することを特徴とする。
また、本発明は、C:0.0050mass%以下、Si:1.0〜4.0mass%、Mn:0.10〜3.0mass%、sol.Al:0.0050mass%以下、P:0.01〜0.20mass%、S:0.0050mass%以下、N:0.0050mass%以下、Cu:0.02mass%以上0.10mass%未満、および、Mg:0.0005〜0.0100mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するスラブを熱間圧延し、熱延板焼鈍を施すことなく冷間圧延し、仕上焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法において、前記熱間圧延後のコイルへの巻取温度を650℃以上とすることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
また、本発明は、C:0.0050mass%以下、Si:1.0〜4.0mass%、Mn:0.10〜3.0mass%、sol.Al:0.0050mass%以下、P:0.01〜0.20mass%、S:0.0050mass%以下、N:0.0050mass%以下、Cu:0.02mass%以上0.10mass%未満、および、Mg:0.0005〜0.0100mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するスラブを熱間圧延し、熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延し、仕上焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法において、上記熱延板焼鈍を900〜1150℃の温度で行うことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
本発明の上記無方向性電磁鋼板の製造方法における上記スラブは、上記成分組成に加えてさらに、SnおよびSbのうちから選ばれる1種または2種を合計で0.01〜0.1mass%含有することを特徴とする。
本発明によれば、低鉄損、高磁束密度であるだけでなく、スクラップを鋳物銑としても再利用できるリサイクル性に優れた無方向性電磁鋼板を安定して提供することができる。
極低Al材において、Cuが磁気特性に及ぼす影響を示すグラフであり、(a)はCuと鉄損の関係、(b)はCuと磁束密度の関係を示す。 Al添加材において、Cuが磁気特性に及ぼす影響を示すグラフであり、(a)はCuと鉄損の関係、(b)はCuと磁束密度の関係を示す。 Mgを添加した極低Al材において、Cuが磁気特性に及ぼす影響を示すグラフであり、(a)はCuと鉄損の関係、(b)はCuと磁束密度の関係を示す。 Mgを添加したAl添加材において、Cuが磁気特性に及ぼす影響を示すグラフであり、(a)はCuと鉄損の関係、(b)はCuと磁束密度の関係を示す。
まず、本発明を開発するに至った実験について説明する。
<実験1>
無方向性電磁鋼板において、極低Al(≦0.005mass%)とすることによる磁気特性への影響を確認するため、C:0.002mass%、Si:1.6mass%、Mn:0.5mass%、P:0.04mass%、N:0.002mass%およびS:0.002mass%を含有し、Alを0.0005mass%以下に低減した成分組成の鋼を8チャージ溶製し、スラブとした後、熱間圧延して板厚2.8mmの熱延板と、酸洗し、冷間圧延して板厚0.5mmの冷延板とし、その後、20vol%H−80vol%N雰囲気中で1000℃×10秒の仕上焼鈍を施し、無方向性電磁鋼板とした。
上記のようにして得た鋼板から、圧延方向(L)および圧延直角方向(C)にエプスタイン試験片を切り出し、JIS C2550に記載のエプスタイン法で、磁束密度B50(磁化力5000A/mにおける磁束密度)および鉄損W15/50(磁束密度1.5T、周波数50Hzで励磁したときの鉄損)を測定したところ、チャージ間で磁気特性が大きく変化していることが明らかとなった。
そこで、上記鋼板の成分分析を行ったところ、磁気特性が劣る鋼板は、磁気特性が優れる鋼板よりもCuの含有量が多く、0.02mass%以上含有していることがわかった。この結果から、磁気特性の劣化は、Cuの微細析出物などによるものと推察された。
上記のような高濃度のCuの混入は、鉄スクラップに由来したものと考えられる。鉄スクラップ中には、洗濯機やエアコン等の電化製品が多く含まれているため、銅線に用いられているCuの混入は避けらないからであり、特に、近年の鉄源としてのスクラップ使用比率の高まりに伴い、顕在化したものと考えられる。
<実験2>
そこで、磁気特性に及ぼすCuの影響を調査するため、C:0.002mass%、Si:1.6mass%、Mn:0.5mass%、P:0.04mass%、Al:0.0005mass%以下、N:0.002mass%およびS:0.002mass%を含有する成分系(極低Al材)と、C:0.002mass%、Si:1.3mass%、Mn:0.5mass%、P:0.04mass%、Al:0.3mass%、N:0.002mass%およびS:0.002mass%を含有する成分系(Al添加材)をベースとし、それらにCuを0.005〜0.04mass%の範囲で種々に変化させて添加した鋼を溶製し、<実験1>と同じ条件で無方向性電磁鋼板を製造し、<実験1>と同様にして磁束密度B50および鉄損W15/50を測定した。
図1に極低Al材の測定結果を、図2にAl添加材の測定結果を示した。
図2に示すAl添加材では、Cu増加による磁気特性の劣化は比較的小さいのに対して、図1に示す極低Al材では、Cuが増加すると、磁気特性が劣化するだけでなく、バラツキも大きくなり、同じCu量で最も劣化したときの磁気特性は、非常に劣位にある。しかし、Cuが0.01mass%未満の材料では、極低Al材の方がAl添加材よりも磁気特性が良好である。すなわち、極低Al材は、優れた磁気特性を有するものの、Cuを添加した場合には、磁気特性の劣化し、ばらつきが増大することがわかった。
上記の原因については、現時点では十分に明らかとなっていないが、極低Al材では、Cuを十分に低減すれば、良好な磁気特性が得られていることや、極低Al材には、窒化物を粗大化させる元素がないことなどから、AlNやTiN、VN等の窒化物が微細に析出して、Cu硫化物の析出物との間で何らかの相互作用があり、磁気特性の劣化やバラツキが増大したものと考えている。したがって、極低Al材において、磁気特性を向上するためには、Cuの含有量を極微量に低減することが有効であると考えられる。
しかし、Cuの含有量を制限するには、鉄スクラップの使用比率を減少させる必要があり、リサイクル率の向上を図る観点からは好ましくない。そこで、Cuによる弊害を軽減するため、Mgを添加することを検討した。ここで、Mgを添加する理由は、Mgは硫化物形成元素であり、硫化物が粗大に析出することで硫化物の個数密度を減少させる効果が期待できるからである。
<実験3>
極低Al材である、C:0.002mass%、Si:1.6mass%、Mn:0.5mass%、P:0.04mass%、Al:0.0005mass%以下、N:0.002mass%、S:0.002mass%を含有し、さらに、Mg:0.004mass%を含有する成分系(極低Al、Mg添加材)と、比較のための、C:0.002mass%、Si:1.3mass%、Mn:0.5mass%、P:0.04mass%、Al:0.3mass%、N:0.002mass%、S:0.002mass%を含有し、さらに、Mg:0.004mass%を含有する成分系(Al添加、Mg添加材)の鋼に、Cuを0.005〜0.04mass%の範囲で種々に変化させて添加した鋼を溶製し、スラブとした後、熱間圧延して板厚2.6mmの熱延板と、酸洗し、冷間圧延して板厚0.5mmの冷延板とし、その後、20vol%H−80vol%N雰囲気中で1000℃×10秒の仕上焼鈍を施し、無方向性電磁鋼板とし、<実験1>と同様にして磁束密度B50および鉄損W15/50を測定した。
図3に極低Al、Mg添加材の測定結果を、図4にAl添加、Mg添加材の測定結果を示した。これらの図から、Mgの添加によって、Cu含有量の増加による磁気特性の劣化やばらつきが抑制されること、また、前述した図1や図2と比較することで、Mg添加の効果は、図3の極低Al材で顕著であり、Cu含有量に依らず、安定してAl添加材より良好な磁気特性が得られていることがわかる。
以上の実験結果から、極低Al材であっても、Mgを添加することによって、Cuによる悪影響を抑制することができ、ひいては、鉄源としてのリサイクル性に優れるだけでなく、低鉄損で高磁束密度の無方向性電磁鋼板を安定して製造することができることがわかった。
次に、本発明の無方向性電磁鋼板の成分組成について説明する。
C:0.0050mass%以下
Cは、磁気時効を起こして鉄損を劣化させる。特に、Cが0.0050mass%を超えると上記鉄損劣化が顕著になることから、Cの上限は0.0050mass%とする。好ましくは、0.0030mass%以下である。なお、Cは少ないほど好ましいので、下限値は設けないが、製造コスト上、0.0003mass%程度とするのが好ましい。
Si:1.0〜4.0mass%
Siは、鋼の電気抵抗を高めて鉄損を低減する効果を有するため、1.0mass%以上添加する。一方、4.0mass%を超えると、冷間圧延を困難とし、製造性の低下をもたらすため、上限は4.0mass%に制限する。好ましくは、1.5〜3.3mass%の範囲である。
Mn:0.10〜3.0mass%
Mnは、Siと同様、鋼の電気抵抗を高めて鉄損を低減するのに、また、S起因の熱間脆性を防止するのに有効な元素でもあり、0.10mass%以上添加する必要がある。しかし、3.0mass%を超えると、磁束密度が低下するため、上限は3.0mass%とする。好ましくは、0.20〜1.0mass%の範囲である。
P:0.01〜0.20mass%
Pは、極微量の添加で鋼の硬さを高めて、打抜加工性を改善する効果のある元素であるため、ユーザーからの要求硬さに応じて、0.01〜0.20mass%の範囲で含有させる。Pの添加量が0.01mass%未満では上記効果は得られない。一方、Pの過剰な添加は、冷間圧延性の低下をもたらすので、上限は0.20mass%に制限する。好ましくは、0.03〜0.10mass%の範囲である。
S:0.0050mass%以下
Sは、析出物や介在物を形成し、製品の磁気特性を劣化させるので、少ないほど好ましく、本発明では0.0050mass%以下に制限する。下限については、少ないほど好ましいため、とくに限定しない。好ましくは0.0025mass%以下である。
Al:0.0050mass%以下
Alは、鉄スクラップを鋳物銑の原料として使用する場合には、鋳造性を確保するため、0.05mass%未満であることが推奨されているが、本発明では、集合組織を改善し、磁束密度を向上させため、Alをさらに低減し、0.0050mass%以下とする必要がある。好ましくは、0.0020mass%以下である。
N:0.0050mass%以下
Nは、前述したCと同様、磁気特性を劣化させるので0.0050mass%以下に制限する。下限については、少ないほど好ましいため、とくに限定しない。
Cu:0.02mass%以上0.10mass%未満
Cuは、鉄源として使用しているスクラップ等から混入してくる不可避的不純物であり、磁気特性に悪影響を及ぼす有害元素である。特に、Cuの含有量が0.02mass%以上となると、上記悪影響は顕著となる。そこで、本発明は、Cu:0.02mass%以上を対象とする。しかし、Cuが、0.10mass%以上となると、磁気特性が大きく劣化し、Mg添加効果が得られなくなるので、0.10mass%未満に制限する。
Mg:0.0005〜0.0100mass%
Mgは、極低Al材において、Cuによる磁気特性への悪影響を抑制する効果があり、本発明において、最も重要な元素である。上記効果は、0.0005mass%未満では充分ではなく、一方、0.0100mass%を超えると、Mg酸化物が増加し、却って鉄損が劣化するようになる。よって、Mgは、0.0005〜0.0100mass%の範囲で添加する。好ましくは、0.001〜0.005mass%の範囲である。
Sn,Sb:合計で0.01〜0.1mass%
本発明の無方向性電磁鋼板は、上記必須成分に加えてさらに、SnおよびSbのうちから選ばれる1種または2種を合計で0.01〜0.1mass%の範囲で添加することができる。
SnおよびSbはいずれも、集合組織を改善し磁気特性を高める効果を有するため、単独または複合して添加することができる。この効果を得るためには、合計で0.01mass%以上添加することが好ましい。一方、過剰に添加すると鋼が脆化し、製造過程で鋼板が破断を起こしたり、ヘゲが発生したりするため、上限は合計で0.1mass%とするのが好ましい。より好ましくは、0.02〜0.08mass%の範囲である。
本発明の無方向性電磁鋼板は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、Vは0.004mass%以下、Nbは0.004mass%以下、Bは0.0005mass%以下、Niは0.05mass%以下、Crは0.05mass%以下、Tiは0.002mass%以下の含有量であれば、許容され得る。
次に、本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、まず、転炉あるいは電気炉などで溶製した鋼を脱ガス処理設備等で二次精錬し、所定の成分組成に調製した後、連続鋳造法または造塊−分塊圧延法により鋼素材(スラブ)とする。
次いで、上記スラブを熱間圧延に供するが、この熱間圧延については、通常の無方向性電磁鋼板に適用されている条件で行うことができ、特に制限はない。続く熱間圧延後の熱延板焼鈍は、施しても、省略してもよいが、製造コストを低減する観点からは、省略した方が有利である。
ここで、熱延板焼鈍を省略する場合には、上記熱間圧延後のコイル巻取温度を650℃以上とする必要がある。熱間圧延後の鋼板、即ち、冷間圧延前の鋼板が十分に再結晶していないと、冷間圧延でリジングが発生したり、製品板の磁束密度が低下したりするため、再結晶を促進させる必要があるからである。好ましくは、670℃以上である。
一方、熱延板焼鈍を施す場合には、熱延板焼鈍の均熱温度を900〜1150℃の範囲とするのが好ましい。均熱温度が900℃未満では、圧延組織が残存し、磁気特性の改善効果が十分に得られない。一方、1150℃を超えると、結晶粒が粗大化し、冷間圧延で割れが発生し易くなる他、経済的にも不利となるからである。好ましくは950〜1050℃の範囲である。
なお、熱延板焼鈍を行う場合でも、コイル巻取温度を650℃以上としてもよいことは勿論である。
なお、熱間圧延する板厚は、1.5〜3.0mmの範囲とするのが好ましい。1.5mm未満では、熱間圧延での圧延トラブルが増加し、一方、3.0mm超えでは冷延圧下率が高くなり過ぎて、集合組織が劣化するからである。より好ましい熱延板厚は1.7〜2.8mmの範囲である。
次いで、上記熱間圧延後あるいは熱延板焼鈍後の鋼板(熱延板)は、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とする。この際、磁束密度を高めるためには、板温を200℃程度の温度に上昇して圧延するいわゆる温間圧延を採用するのが好ましい。なお、冷延板の厚さ(最終板厚)は、0.10〜0.50mmの範囲とするのが好ましい。0.10mm未満では、生産性が低下し、0.50mm超えでは鉄損低減効果が小さいからである。より好ましくは0.10〜0.35mmの範囲である。
上記の冷間圧延した鋼板(冷延板)は、その後、連続焼鈍による仕上焼鈍を施す。この仕上焼鈍の均熱温度は700〜1150℃の範囲とするのが好ましい。均熱温度が700℃未満では、再結晶が十分に進行せず、良好な磁気特性が得られない他、連続焼鈍による形状矯正効果も得られない。一方、1150℃を超えると、結晶粒が粗大化し、特に高周波数域での鉄損が増加する。
次いで、上記仕上焼鈍後の鋼板は、鉄損をより低減するため、鋼板表面に絶縁被膜を塗布焼付けることが好ましい。なお、上記絶縁被膜は、良好な打抜き性を確保したい場合には、樹脂を含有した有機コーティングとするのが好ましい。また、溶接性を重視する場合には、半有機や無機コーティングとするのが好ましい。
表1に示したA〜C2の成分組成が異なる鋼を溶製し、連続鋳造法でスラブとした後、上記スラブを1120℃の温度に1hr再加熱した後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とした。この際、熱間圧延における仕上圧延終了温度は950℃とし、コイル巻取温度は680℃とした。ただし、鋼Fは、コイル巻取温度を540℃とし、鋼C2は、コイル巻取温度を540℃とし、さらに、1000℃×30秒の熱延板焼鈍を施した。
次いで、上記熱延板あるいは熱延板焼鈍後の鋼板を酸洗し、冷間圧延して板厚:0.35mmの冷延板とした後、980℃×10秒の仕上焼鈍を施し、無方向性電磁鋼板(製品板)とした。なお、鋼Fは、冷延時にリジングが発生したため、鋼Hは、熱間圧延時に割れが発生したため、鋼G,MおよびTは、冷間圧延時に割れが発生したため、それ以降の工程は中止した。
斯くして得た製品板から、圧延方向(L)および圧延直角方向(C)にエプスタイン試験片を切り出し、JIS C2550に記載のエプスタイン法で、B50(磁化力:5000A/mにおける磁束密度)およびW15/50(磁束密度:1.5T、周波数:50Hzで励磁したときの鉄損)を測定した。
Figure 0006269970
上記測定の結果を表1中に併記した。表1に示したように、本発明の条件に適合した条件で製造した場合には、熱間圧延や冷間圧延での割れ等のトラブルもなく、高磁束密度でかつ低鉄損の無方向性電磁鋼板を製造することができることがわかる。すなわち、本発明に適合する条件の鋼板は、鉄損W15/50が3.08W/kg以下と低鉄損で、かつ磁束密度B50が1.672T以上と高磁束密度であり、優れた磁気特性を有していることがわかる。
本発明の無方向性電磁鋼板は、磁気特性に優れるので、家電製品等に用いられるモータの鉄心材料として好適に用いることができる。また、本発明の無方向性電磁鋼板は、Alの含有量が0.0050mass%以下であるので、スクラップとなったときでも鋳物銑の原料として好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. C:0.0050mass%以下、
    Si:1.5〜4.0mass%(ただし、1.5mass%を除く)
    Mn:0.10〜3.0mass%、
    sol.Al:0.0050mass%以下、
    P:0.03〜0.20mass%、
    S:0.0050mass%以下、
    N:0.0050mass%以下、
    Cu:0.02mass%以上0.10mass%未満、および、
    Mg:0.0005〜0.0100mass%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    板厚が0.35mmであるときの鉄損W 15/50 が3.08W/kg以下、磁束密度B 50 が1.672T以上である無方向性電磁鋼板。
  2. 上記鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、SnおよびSbのうちから選ばれる1種または2種を合計で0.01〜0.1mass%含有することを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  3. C:0.0050mass%以下、
    Si:1.5〜4.0mass%(ただし、1.5mass%を除く)
    Mn:0.10〜3.0mass%、
    sol.Al:0.0050mass%以下、
    P:0.03〜0.20mass%、
    S:0.0050mass%以下、
    N:0.0050mass%以下、
    Cu:0.02mass%以上0.10mass%未満、および、
    Mg:0.0005〜0.0100mass%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するスラブを熱間圧延し、熱延板焼鈍を施すことなく冷間圧延し、仕上焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記熱間圧延後のコイル巻取温度を650℃以上とすることで、板厚が0.35mmであるときの鉄損W 15/50 が3.08W/kg以下、磁束密度B 50 が1.672T以上の磁気特性とすることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. C:0.0050mass%以下、
    Si:1.5〜4.0mass%(ただし、1.5mass%を除く)
    Mn:0.10〜3.0mass%、
    sol.Al:0.0050mass%以下、
    P:0.03〜0.20mass%、
    S:0.0050mass%以下、
    N:0.0050mass%以下、
    Cu:0.02mass%以上0.10mass%未満、および、
    Mg:0.0005〜0.0100mass%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するスラブを熱間圧延し、熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延し、仕上焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記熱延板焼鈍を900〜1150℃の温度で行うことで、板厚が0.35mmであるときの鉄損W 15/50 が3.08W/kg以下、磁束密度B 50 が1.672T以上の磁気特性とすることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 上記スラブは、上記成分組成に加えてさらに、SnおよびSbのうちから選ばれる1種または2種を合計で0.01〜0.1mass%含有することを特徴とする請求項3または4に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
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