JP6269008B2 - 電磁波−表面ポラリトン変換素子。 - Google Patents

電磁波−表面ポラリトン変換素子。 Download PDF

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Description

本発明は、表面フォノンポラリトンや表面プラズモンポラリトンと、伝搬光との結合を利用した電磁波−表面ポラリトン変換素子に関する。表面フォノンポラリトンは、固体中の電気双極子と表面の電磁波とがカップリングした表面波をいい、表面プラズモンポラリトンとは表面電荷(自由電子)のプラズモンと表面の電磁波とがカップリングした表面波をいう。本発明は、特に、光源、熱マネジメントなどに応用される熱輻射制御や熱吸収制御用、特定方向への電磁波の放射及び特定方向からの電磁波の吸入を可能とした電磁波−表面ポラリトン変換素子に関する。本変換素子は、方向性を有した輻射冷却又は輻射加熱、又は、光源、光検出器などに応用可能である。
表面プラズモンポラリトンや表面フォノンポラリトンなどの表面ポラリトンと言われる表面波は、非線形光学効果の増強や、分子吸着の検出などで応用されている。近年、誘電率の実部がプラズマ周波数以下の周波数で負となる金属(Au、Ag、Alなど)や極性を有する誘電体(SiC、SiO2 など)の表面に回折格子を形成し、表面波と一定方向に回折する伝搬光を結合させて、特定波長による特定角度への熱輻射を実現する装置が提案されている。キルヒホッフの法則によれば、ある放射角、ある波長における輻射率は、その角度の入射角、その波長における光の吸収率に等しい。したがって、吸収率も、輻射率も同一の波長、角度特性を示す。
特許文献1は、放射光の波長以下の周期を有する回折格子をシリカ基板の表面にエッチンングにより形成して、波長9μm付近の光を選択的に熱輻射させる装置を開示している。その装置では、0°から60°に及ぶ広範囲な熱輻射が実現されている。
特許文献2は、金基板の表面にシリコンとシリカから成るフォトニック結晶を積層し、熱輻射を制御した装置を開示している。その装置では、フォトニック結晶のバンド構造により、輻射波長と輻射角度の関係が制御されており、各波長毎に異なる放射角で強く輻射する特性が実現されている。
また、特許文献3は、基板上に導波路を設け、その導波路上に回折格子を設けた導波モード共鳴格子素子を開示している。その素子は、共鳴条件満たす特定の波長のみを選択的に反射する特性を有している。また、特許文献4は、特許文献3と同様な構造の波長選択フィルタやそのフィルタを用いた物質の屈折率を測定する方法を開示している。
非特許文献1には、図18に示すように、SiC基板の表面に所定の周期の凹凸構造による回折格子が形成された熱輻射源が開示されている。この熱輻射源では、基板表面に励起された表面フォノンポラリトンが回折格子により回折され、伝搬光として、所定の放射角で熱輻射される。輻射を起こす波長と輻射角度との関係は、表面フォノンポラリトンの分散特性と回折格子の周期により決定される。したがって、この熱輻射源は、図19に示すように、波長11.04μm、11.36μm、11.86μmの輻射率−輻射角特性521,522,523を、それぞれ、有し、各波長毎に異なる放射角で強く輻射される特性が実現されている。
非特許文献2は、SiC基板の表面に比較的深いトレンチの周期構造を形成した熱輻射源を開示している。この熱輻射源は、トレンチをキャビティとして、各キャビティ間で共鳴させて表面波を励起させる熱源である。垂直方向に強く放射する特性が得られている。
WO2006/117789 A2 WO2006/086117 A2 特開2006−350126 特開2009−229196
GREFFET J-J ET AL: "Coherent emission of light by thermal sources" NATURE, NATURE PUBLISHING GROUP, LONDON, GB LNKD-DO1:10.1038/416061A, vol. 416, no. 6876, 7 March 2002(2002-03-07), pages 61-64, XP002276869 ISSN: 0028-0836 Extraordinary Coherent Thermal Emission From SiC Due to Coupled Resonant Cavities, Nir Dahan, Avi, Gabriel Biener, Yuri Gorodetski, Vladimir Kleiner, Erez Hasman,J.of Heat Transfer NOVEMBER 2008,Vol.130
ところが、そのような表面波を用いた装置は、複数の波長、複数の角度において熱輻射を発生させる特性を有している。そのため、それらの装置では、熱輻射の放射角を制御して特定の方向だけに強く輻射して方向性輻射型冷却器として用いたり、特定の方向に存在する物体だけを温める方向性輻射型加熱器として用いることは困難である。また、センサ用の光源を考えた場合、センシング対象への影響を最小限とするために、特定の波長の光を特定の放射角でのみ強く放射させたい、すなわち、急峻な波長選択性と、急峻な放射角特性を得たいという要求が考えられる。また、受光器についても同様である。しかし、上記の従来の装置をそのような用途に用いることは困難である。
そこで、本発明の目的は、急峻な波長選択性と急峻な放射角又は入射角選択性を有した電磁波−表面ポラリトン変換素子を実現することである。
本発明は、電磁波と表面ポラリトンとの変換を可能とした電磁波−表面ポラリトン変換素子において、表面に表面ポラリトンを生成する基台と、電磁波を入射又は放射し、厚さ方向に垂直な少なくとも一つの第1方向に沿って、屈折率が周期的に変化する回折格子層と、基台と回折格子層との間に介在するスペーサ層とを有し、回折格子層とスペーサ層との界面にエバネッセント波が生成され、そのエバネッセント波と、基台の表面に生成された表面ポラリトンとを、スペーサ層内に存在する電磁波を介して共鳴させ、スペーサ層の厚さは、回折格子層とスペーサ層との第1界面と、基台とスペーサ層との第2界面との間で、回折格子層を透過した透過光が多重反射して、エバネッセント波が増幅される厚さに決定されていることを特徴とする電磁波−表面ポラリトン変換素子である。
本発明において、電磁波は、光を含む概念であり、特に、遠赤外から近赤外までの赤外領域の波長の光を含む概念である。また、表面ポラリトンは、表面プラズモンポラリトン、表面フォノンポラリトンの概念を含む表面波である。また、回折格子層は、屈折率の大きい第1領域と、第1領域より屈折率が小さい第2領域とから成る周期構造とすることが望ましい。スペーサ層の屈折率は、回折格子層の第1領域の屈折率よりも小さい。また、第2領域とスペーサ層とは、同一物質で構成されていても、別の物質で構成されていても良い。一般的には、空気、真空、第1領域よりも屈折率の小さい樹脂、その他の誘電体などである。
本発明においては、エバネッセント波の波数と表面ポラリトンの波数とを一致させることが望ましい。また、回折格子層の周期は、電磁波の所望の入射角又は放射角と周波数に対して、エバネッセント波の波数と表面ポラリトンの波数とが一致するように決定されていることが望ましい。これらの条件は、エバネッセント波と表面ポラリトンとの共鳴条件である。本発明においては、スペーサ層内に存在する電磁波により、エバネッセント波と表面ポラリトンとが結合して共鳴状態にあれば良い。この電磁波は、スペーサ層内に存在するエバネッセント波、回折格子層を透過した電磁波を含む。したがって、スペーサ層の厚さは、スペーサ層内を多重反射する電磁波によりエバネッセント波が増幅されるように決定されていることが望ましい。
エバッネセント波や表面ポラリトンを励起させるためには、電磁波の電界が、回折格子層の周期性のある方向の成分を有することが必要である。周期性のある方向の電界成分を有さない電磁波では、エバッネセント波や表面ポラリトンを励起させることができない。そこで、回折格子層は、第1方向と異なる方向にも、屈折率が周期的に変化する2次元周期構造としても良い。このように構成すると、偏光と入射角に対する設計の自由度が向上する。
また、回折格子層は、屈折率の大きい第1領域と、第1領域より屈折率が小さい第2領域とから成る周期構造とすることが望ましい。また、回折格子の1周期は、周期構造の配列の向きに沿って、第1領域、第2領域、第3領域及び第4領域が配列された構造であり、第3領域の幅は第1領域の幅よりも広く、第4領域の幅は第2領域の幅よりも狭く、第2領域及び第4領域の屈折率は、第1領域及び第3領域の屈折率よりも小さい構造とすることもできる。そして、第1領域、第3領域には、シリコンや酸化チタンを用いることができ、これらの材料による膜をエッチングして第1領域と第2領域、又は、第1領域、第2領域、第3領域及び第4領域を形成することができる。また、シリコン膜を酸化シリコン膜を介して基台に貼り付けて、シリコン膜をエッチングして、第1領域と第2領域、又は、第1領域、第2領域、第3領域及び第4領域を形成した後に、他のエッチング液で酸化シリコンだけをエッチングすることで、回折格子層の下方にスペーサ層を形成することができる。
また、回折格子層の第1領域は、シリコン又は酸化チタンから成り、第2領域は真空、空気、その他の誘電体から成ることが望ましい。
また、回折格子層の第1領域及び第3領域は、シリコン又は酸化チタンから成り、第2領域及び第4領域は、真空、空気、その他の誘電体から成ることが望ましい。
スペーサ層は、真空、空気、二酸化ケイ素、その他の誘電体のうち少なくとも1種から成ることが望ましい。
本発明において、基台は極性誘電体であり、表面ポラリトンは、表面フォノンポラリトンとすることができる。
また、基台は、炭化ケイ素、二酸化ケイ素のうち少なくとも1種で構成しても良い。
また、基台は金属又は不純物の添加されたシリコンであり、表面ポラリトンは、表面プラズモンポラリトンとすることができる。本発明の電磁波−表面ポラリトンの変換の原理は、表面フォノンポラリトンであっても表面プラズモンポラリトンであっても同一であり、同一の用途に用いることができる。
本発明は、基台に接続された熱源を有し、回折格子層から赤外領域の特定波長の電磁波を特定の放射角又は入射角で放射又は吸収させる素子とすることができる。すなわち、特定方向のみを加熱する方向性輻射型加熱装置、特定方向のみに輻射して基台の温度を低下させる方向性輻射型冷却装置を実現することができる。
また、本発明は、基台の温度を検出する温度検出器を有し、回折格子層に対して特定の入射角度で入射する赤外領域の特定波長の電磁波を、温度検出器により検出する検出素子とすることができる。
また、本発明は、スペーサ層の厚さを変化できる可変手段を設けても良い。また、本発明は、スペーサ層を、誘電率を可変できる部材としても良い。例えば、液晶、圧電材料を用いて、印加電圧により誘電率を可変制御するようにしても良い。これらにより、輻射率や吸収率(反射率)を感度良く制御することができる。
本発明によると、回折格子層とスペーサ層との界面に電磁波により励起されるエバネッセント波と、スペーサ層と基台との界面に励起される表面ポラリトンとを、スペーサ層に存在する電磁波を介在させて、共鳴させているので、急峻な波長選択性と急峻な放射角又は入射角選択性を有した、放射効率又は吸収効率の高い電磁波−表面ポラリトン変換素子を実現することができる。また、スペーサ層の厚さや誘電率を電気的に制御することで、放射率や吸収率を感度良く制御することが可能となる。また、回折格子層を2次元配列の格子とすることで、偏光と入射角や放射角に対して、よりきめ細かい制御が可能となる。
本発明の具体的な実施例1に係る電磁波−表面ポラリトン変換素子の構造を示した断面図。 実施例1の電磁波−表面ポラリトン変換素子の波長をパラメータとする輻射率の放射角依存性を示した特性図。 実施例1の電磁波−表面ポラリトン変換素子の波長をパラメータとする輻射率の放射角依存性を0°付近の角度について拡大して示した特性図。 実施例1の電磁波−表面ポラリトン変換素子の放射角をパラメータとする輻射率の波長依存性を示した特性図。 実施例1の電磁波−表面ポラリトン変換素子の輻射率のスペーサ層の厚さ依存性を示した特性図。 実施例1の電磁波−表面ポラリトン変換素子の表面ポラリトンの分散特性とエバネッセント波の分散特性との関係、共鳴状態にある角周波数と波数との関係を示した特性図。 本発明の具体的な実施例2に係る電磁波−表面ポラリトン変換素子の構造を示した断面図。 実施例2の電磁波−表面ポラリトン変換素子の波長をパラメータとする輻射率の放射角依存性を示した特性図。 実施例2の電磁波−表面ポラリトン変換素子の波長をパラメータとする輻射率の放射角依存性を60°付近の角度について拡大して示した特性図。 実施例2の電磁波−表面ポラリトン変換素子の放射角をパラメータとする輻射率の波長依存性を示した特性図。 本発明の具体的な実施例4に係る電磁波−表面ポラリトン変換素子を気体分光に応用した分光装置の構成図。 本発明の具体的な実施例5に係る輻射率を制御できる電磁波−表面ポラリトン変換素子を示した構成図。 本発明の具体的な実施例7に係る距離測定に応用した電磁波−表面ポラリトン変換素子の構成図。 本発明の具体的な実施例8に係る電磁波−表面ポラリトン変換素子の構造を示した構成図。 本発明の具体的な実施例8に係る電磁波−表面ポラリトン変換素子の構造を示した構成図。 本発明の具体的な実施例9に係る電磁波−表面ポラリトン変換素子の構造を示した構成図。 実施例9の電磁波−表面ポラリトン変換素子の輻射率の放射角依存性を示した特性図。 従来例に係る輻射素子の構成図。 従来例に係る輻射素子の波長パラメータとする輻射率の放射角依存性を示した特性図。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
本発明の具体的な一実施例に係る電磁波−表面ポラリトン変換素子10の構造を図1に示す。
炭化ケイ素(SiC)から成る表面が長方形状の基板2に、スペーサ層3を介して、基板2と同一形状の回折格子層4が形成されている。スペーサ層3は厚さtの空気層から成る。スペーサ層3の長方形の周囲は、枠形の保持部材13で囲まれており、回折格子層4は、この保持部材13により基板2の上に支持されている。回折格子層4は、基板2の主面12に平行な第1軸であるx軸方向に、第1領域5と第2領域6とが繰り返して配列された周期構造から成る。第1領域5のx軸方向の幅WR は、第2領域6のx軸方向の幅WS よりも狭く、周期構造の1周期はpである。第1領域5はシリコン(Si)から成り、第2領域6は空気から成る。第1領域5の幅WR は5.71μm、第2領域6の幅WS は6.19μmであり周期pは11.90μmである。また、回折格子層4の厚さhは1.01μmであり、スペーサ層3は厚さtは36.15μmである。
波長12.12μmのp偏光(入射面に電界が平行、回折格子層の周期性の方向(第1方向)に平行)の入射光7を、回折格子層4の表面4aに垂直に入射させると、回折格子層4とスペーサ層3との界面(回折格子層4の表面)14上に、x軸方向にのみ伝搬し、スペーサ層3の厚さ方向であるz軸方向には伝搬しないエバネッセント波が励起する。上記の入射角の場合、エバネッセント波は、p偏光の光で高効率に励起できるので、入射光7にはp偏光が用いられる。このエバネッセント波は、基板2の表面12上に励起し得る表面フォノンポラリトンの分散曲線上において、エバネセット波の波数と一致した波数の表面フォノンポラリトンを励起させる。回折格子層4を透過した0次の透過光17は、表面12上で反射されて回折格子層4とスペーサ層3との界面14に入射し、エバネッセント波を励起させる一方、回折格子層4で垂直に反射される。結局、透過光17はスペーサ層3の両側の界面12、14で多重反射を繰り返し、界面14においてはエバネッセント波を励起させる。これにより、回折格子層4とスペーサ層3との界面14において、エバネッセント波が増幅され、基板2とスペーサ層3との界面12において、エバネッセント波と共鳴して表面フォノンポラリトンが増幅される。
このエバネッセント波と表面フォノンポラリトンとの増幅条件は、エバネッセント波の角周波数ωe 、x軸方向の波数kexと、表面フォノンポラリトンの角周波数ωh 、x軸方向の波数khxとを、それぞれ、一致させ、且つ、スペーサ層3の内部で多重反射する透過光17がエバネッセント波を増幅するように多重反射することである。これを満たす条件は、回折格子層4の周期p、スペーサ層3の厚さt、第1領域5の幅WR と周期pとの比WR /pを適正に設定することで実現できる。
図6に、空気中を伝搬する光の分散特性、エバネッセント波の分散特性、及び、表面フォノンポラリトンの分散特性との関係を示す。また、エバネッセント波の分散特性と表面フォノンポラリトンの分散特性の交点72の付近の拡大図も示されている。図6の曲線71は、基板2の表面12上に励起される表面フォノンポラリトンの分散特性である。曲線73は、回折格子層4とスペーサ層3との界面14に励起されるエバネッセント波の分散特性である。表面フォノンポラリトンの分散特性は次式で表される。
ただし、ksphp、ωは、それぞれ、表面フォノンポラリトンの波数、角周波数である。εair 、εSiC 、は、それぞれ、スペーサ層3の材料である空気の誘電率、基台2の材料であるSiCの誘電率である。cは光速である。
また、エバネッセント波の分散特性は、(2)式を満たすkx 、ωで表される。
ただし、hは、回折格子層4の厚さ、nは、回折格子層4の有効屈折率、mは、回折格子層4中のモードの次数、θc は、スペーサ層に対する回折格子層4における光の臨界角である。
エバネッセント波の分散特性73と表面フォノンポラリトンの分散特性71との交点72は、共鳴角周波数ωr と共鳴波数kxrを表している。また、共鳴波数kxrと回折格子層4の周期pとの関係は、(3)式を満たす。

エバネッセント波の分散特性73と表面フォノンポラリトンの分散特性71との交点72の共鳴波数kxrから(3)式を満たすように、回折格子層4の周期pを決定することで、エバネッセント波と表面フォノンポラリトンとの共鳴条件を実現できる。
本実施例の電磁波−表面ポラリトン変換素子10の回折格子層4の表面4aに垂直にp偏光の入射光7を入射させた場合の電磁解解析によるシミュレーションによると、表面4aでの反射率は0.04以下、吸収率は0.96以上となる。すわなち、入射光の96%のエネルギーはエバネッセント波と表面フォノンポラリトンの励起に消費されたことを意味する。また、入射光7の波長と入射角を変化させて、電磁波−表面ポラリトン変換素子10による吸収率の特性をシミュレーョンにより求めた。
本変換素子10を熱輻射素子とする場合には、基板2を加熱すると基板2の表面に表面フォノンポラリトンが励起され、回折格子層4とスペーサ層3との界面14にエバネッセント波を励起させる。この時に、エバネッセント波と表面フォノンポラリトンとが共鳴する時に、その共鳴角周期数ωr の電磁波が回折格子層4の表面4aから放射される。したがって、電磁波が本変換素子10に入射する場合と、本変換素子10から電磁波が放射される場合の原理は、同一で、原理に双方性がある。
また、キルヒホッフの定理により、吸収率は、基板2を加熱した場合に、回折格子層4の表面4aから放射されるp偏光の放射光8の輻射率に等しい。よって、図2では、輻射率で特性が表現されている。図2は、波長をパラメータとした輻射率の放射角依存特性を示す。図3は放射角が0°付近における放射角方向の拡大図である。曲線21、22、23は、それぞれ、放射光の波長が12.00μm、12.12μm、12.24μmの場合の輻射率の放射角依存特性を示している。波長12.12μmでは、放射角0°において急峻に、輻射率が大きくなっている。放射角0°での輻射率は0.96である。放射角0°において、他の波長の輻射率は0.06程度であり、波長12.12μmの輻射率が他の波長に比べて極めて大きい。輻射率の半値幅は0.4°であり、輻射率は極めて鋭敏な放射角依存性を有していることが分かる。他の波長では、輻射率は0.2以下であり、輻射率の放射角依存性は見られない。
また、図4は、放射角をパラメータとした輻射率の波長依存特性を示す。曲線41、42、43は、それぞれ、放射角0°、15°、30°の方向における輻射率の波長依存特性を示している。放射角0°においては、輻射率の半値幅は0.04μmと狭く、輻射率は、極めて急峻な波長選択性を有していることが分かる。他の放射角では、輻射率は0.1以下であり、輻射率の波長選択性は見られない。
次に、波長λが12.12μm、入射角が0°において、スペーサ層3の厚さtを変化させて、反射率(吸収率)を求めた。図5に、吸収率を輻射率として、厚さtに対する依存特性を図5に示す。ピーク51は、厚さtが36.15μmでの輻射率である。一方、谷54は、厚さtが37.3μmでの輻射率である。また、谷55は、厚さtが43.4μmでの輻射率である。谷54と谷55の間隔は約6.1μmであり、λ/2に相当する。
すなわち、解析モデルは、回折格子層4の表面4a から光が入射した場合に基板2の表面12に表面フォノンポラリトンを励起させるモデルである。スペーサ層3と回折格子層4との界面14と、基板2とスペーサ層3との界面12の間で、透過光17は多重反射する。このとき、界面12と界面14とにおいて、スペーサ層3のある厚さtで電界が最大となる。これにより、多重反射した透過光により増幅されたエバネッセント波と、界面14での表面フォノンポラリトンが共鳴する。
実施例1の電磁波−表面ポラリトン変換素子10は、スペーサ層3の厚さを適切に設定することで、エバネッセント波と表面フォノンポラリトンとの共鳴状態を生起させることができる。実施例1の構造における吸収率は、透過率より計算できる。透過した成分は、誘電率の虚部が有限であるSiCから成る基板2に全て吸収されるとみなせるためである。各回折次数成分に対する透過率を成分とする透過率ベクトルTは、(4)式により表すことができる。
ただし、Tdd SiC は、SiCの基板2の表面12における+z軸の向き(下向き)に進行する電磁波の透過係数行列、Eは単位行列、Rdu G は回折格子層4とスペーサ層3との界面14における−z軸の向き(上向き)に進行する電磁波に対する反射係数行列、Rud SiC は、基板2の表面12における+z軸の向き(下向き)に進行する電磁波に対する反射係数行列、Tdd G は、回折格子層4とスペーサ層3との界面14における+z軸の向き(下向き)に進行する電磁波の透過係数行列、Iは入射光ベクトル、Γは、スペーサ層3を厚さtだけ進行する時の電磁波の位相変化と振幅減衰を表す対角行列である。Γは、(5)式で表される行列である。
ただし、γm は、第m次数の回折成分の電磁波のz軸方向(上下方向)の波数ベクトル、δmlは、クロネッカのデルタである。スペーサ層3の厚さtが変化すると、Γの値が変化し、吸収率が変化する。(4)式の全吸収率を図5に示す。図5の点51で示されるように、実施例1におけるスペーサ層3の厚さt=36.15μmにおいて、強い吸収が発生していることが分かる。
図5における吸収率の包絡線53は、スペーサ層3において伝搬光が存在しないと仮定することによって得られる特性である。具体的には、(6)式を用いて1次のエバネッセント波の透過率T(1)が計算できる。
ここで、TdEdE SiC は、SiCから成る基板2の表面12での1次のエバネッセント波の透過効率、γe は1次のエバネッセント波のz軸方向(上下方向)の波数ベクトル、TdEdP G は、回折格子層4とスペーサ層3との界面14における+z軸の向き(下向き)の伝搬光の1 次のエバネッセント波への透過効率、RdEuE G は、回折格子層3とスペーサ層3との界面14における−z軸の向き(上向き)の1次のエバネッセント波に対する反射効率、RuEdE SiC は、基板2の表面12における+z軸の向き(下向き)のエバネッセント波に対する反射効率である。(6)式のエバネッセント波の透過率T(1)(すなわち、輻射率)を表すと、図5の曲線53となる。曲線53に対して、実際の輻射率は、図5のように輻射率が極小をとる谷54、55、…が周期的に現れる。この現象は、回折格子層4とスペーサ層3との界面14における−z軸の向き(上向き)に進行する電磁波に対する反射係数行列Rdu G の非対角成分(次数結合)の存在により、スペーサ層3のある厚さtにおいて、エバネッセント波が打ち消しあうためであると考えられる。その周期は、伝搬波の波長の半分に相当する値である。
本実施例の電磁波−表面ポラリトン変換素子10は、回折格子層4の表面4aに垂直に入射する所定波長の光を、基板2の表面12に励起される表面フォノンポラリトンの大きさを検出することで、光の強度を測定する装置に用いることができる。表面フォノンポラリトンは基板2を加熱するので、基板2の温度を検出することで、垂直入射する特定波長の光だけを選別して、入射光の強度を測定することができる。また、表面フォノンポラリトンの大きさを直接する検出する方法により、入射光の強度を測定しても良い。また、本実施例の電磁波−表面ポラリトン変換素子10は、基板2を加熱して、回折格子層4の表面4aから垂直な方向にのみ特定波長だけの光を放射する光源や、熱源に用いることができる。また、本実施例では、基板2を炭化ケイ素として表面に表面フォノンポラリトンを励起させる素子について説明したが、基板2の全体、又は、基板2の表面をAg、Au、Alなどの金属として、表面プラズモンポラリトンを励起させる素子としても良い。
実施例2の電磁波−表面ポラリトン変換素子20は、図7に示すように、回折格子層4に対して、入射角60°で入射光7が入射する場合、又は、放射角60°で放射光8が放射されるように設計された変換素子である。実施例1の素子10と、構造は同一であり、同一機能を有する部分には同一符号が付されている。本実施例では、第1領域5の幅WR は2.64μm、第2領域6の幅WS は3.97μmであり周期pは6.61μmである。また、回折格子層4の厚さhは0.91μmであり、スペーサ層3の厚さtは44.8μmである。入射光7又は放射光8の波長は12.39μmであり、偏光はp偏光である。本実施例の電磁波−表面ポラリトン変換素子20の原理は、実施例1の変換素子10の原理と同一である。
入射光7の波長と入射角を変化させて、電磁波−表面ポラリトン変換素子20による吸収率の特性をシミュレーョンにより求めた。なお、吸収率は、基板2を加熱した場合に、回折格子層4から放射されるp偏光の放射光8の輻射率に等しい。よって、図8では、輻射率で特性が表現されている。図8は、波長をパラメータとした輻射率の放射角依存特性を示す。図9は放射角が60°付近における角度方向の拡大図である。曲線111、112、113は、それぞれ、放射光の波長が12.3μm、12.4μm、12.5μmの場合の輻射率の放射角依存特性を示している。波長12.4μmでは、放射角61°において急峻に、輻射率が大きくなっている。放射角61°での輻射率は0.95である。放射角61°において、他の波長の輻射率は0.9程度であり、波長12.4μmの輻射率が他の波長に比べて極めて大きい。輻射率の半値幅は0.26°であり、輻射率は極めて鋭敏な放射角依存性を有していることが分かる。他の波長では、輻射率は0.2以下であり、輻射率の放射角依存性は見られない。
また、図10は、放射角をパラメータとした輻射率の波長依存特性を示す。曲線131、132、133は、それぞれ、放射角30°、45°、61°の方向における輻射率の波長依存特性を示している。放射角61°においては、輻射率の半値幅は0.026μmと狭く、輻射率は、極めて急峻な波長選択性を有していることが分かる。他の放射角度では、輻射率は0.08以下であり、輻射率の波長選択性は見られない。
このように、本実施例2の電磁波−表面ポラリトン変換素子20は、垂直以外の例えば、60°の放射角、入射角に対して感度を有する電磁波−表面ポラリトン変換素子とすることができる。本実施例2の電磁波−表面ポラリトン変換素子20も、実施例1の変換素子10と同様に、特定波長、特定入射角での光を選択的に受光する受光素子や、特定波長の光を特定放射角に選択的に放射する光源、熱源、冷却、加熱装置に応用することができる。また、実施例1と同様に、基板2を炭化ケイ素として表面に表面フォノンポラリトンを励起させる素子について説明したが、基板2の全体、又は、基板2の表面をAg、Au、Alなどの金属として、表面プラズモンポラリトンを励起させる素子としても良い。
本実施例3の電磁波−表面ポラリトン変換素子は、図1に示された実施例1の変換素子と構造と原理は同一であり、寸法と基板2の材料が異なる。本実施例では、図1において、基板2はタングステンである。本実施例では、第1領域5の幅WR は0.40μm、第2領域6の幅WS は1.136μmであり周期pは1.536μmである。また、回折格子層4の厚さhは1.0μmであり、スペーサ層3は厚さtは4.6μmである。この構造によると、入射光7又は放射光8の波長は、1.55μmの赤外光とすることができる。これにより、本電磁波−表面ポラリトン変換素子を発光素子、又は、受光素子とすることができる。
本実施例の電磁波−表面ポラリトン変換素子40は、図11に示すように構成されている。本実施例は変換素子40をガス分光器に応用した例である。前述の実施例1の電磁波−表面ポラリトン変換素子10が1列に配列されている。各電磁波−表面ポラリトン変換素子10a,10b,…,10nは、放射する電磁波の波長λ1 ,λ2 ,…,λn と、それぞれ異なるように、回折格子層4a,4b,…,4nの周期p、厚さh、第1領域の幅W1 ,スペーサ層3a,3b,…,3nの厚さtが設計されている。そして、各素子10a,10b,…,10nの回折格子層4a,4b,…,4nの表面に対向して、変換素子40の両側の壁面に設けられた一対の窓214a、214bと連通するガスの流通路215を介して、受光素子アレイ216が配設されている。各受光素子216a,216b,…,216nは、各回折格子層4a,4b,…4nから放射されるそれぞれの波長λ1 ,λ2 ,…,λn の放射光を検出する素子である。
この変換素子40によると、各受光素子216a,216b,…,216nの出力により、ガスの吸収率−波長特性を測定することができる。この検出された吸収率スペクトルからガス成分を測定することができる。なお、各受光素子216a,216b,…,216nは、実施例1の電磁波−表面ポラリトン変換素子10を用いても良い。
本実施例の電磁波−表面ポラリトン変換素子50は、輻射量を電気的に制御できる熱輻射器である。図12に示されているように、基板221の中央部に、実施例1の電磁波−表面ポラリトン変換素子10が形成されている。基板221と変換素子10の基板2とは共通である。また、変換素子10の回折格子層4は、可動板223の中央部に形成されている。回折格子層4と基板221との間がスペーサ層3である。可動板223は、リング状のダイヤフラム224a、224bにより、基板221に上下動可能に支持されている。変換素子10の両側において、基板221と可動板223のそれぞれの対向面には、一対の電極225が設けられている。
この一対の電極225に電圧を印加して、静電力を発生させることで、可動板223を基板221に対して微小変位させることができる。すなわち、スペーサ層3の厚さtを印加電圧の大きさにより制御できる。スペーサ層3の厚さを制御することで、図5に示す特性により輻射率を電気的に変化させることができる。すなわち、熱輻射量を制御することができる。たとえば、図5の特性から明らかなように、スペーサ層3の厚さtを、36.15μmから、37.3μmだけ変化させるだけで、輻射率を96%から3%まで変調することができる。
したがって、基板221の温度を変化させることなく、熱輻射量を高速で変化させることができる。これにより、基板221を物体に設けて、放射光の強度が最大となるようにスペーサ層3の厚さをフィードバック制御すれば、一対の電極225に印加される電圧の大きさにより、物体の変位を検出することができる。なお、スペーサ層3の厚さtを制御するために、一対の電極223間にかかる静電力を用いたが、圧電素子、磁気コイル、空気圧など、電気、磁気、流体圧などを用いて、スペーサ層3の厚さtを制御しても良い。また、輻射率は急峻な放射角依存性を有しているので、基板2の表面の法線に対して、回折格子層4の表面の法線方向を制御することで、輻射率を制御するようにしても良い。
また、スペーサ層3の厚さtを機械的に変化させる代わりに、スペーサ層3を液晶や圧電材料で構成して、印加電圧を制御することで、スペーサ層3の誘電率を変化させても良い。スペーサ層3内に存在する電磁波のz軸方向の波数を電圧により変化させることができるので、輻射率の高速かつ高感度の変化を実現することができる。
実施例1、2の電磁波−表面ポラリトン変換素子10、20は、光検出器として用いることができる。特定波長及び特定の方向から入射した光のみを基板2の温度で測定する光検出器とすることができる。
本実施例の電磁波−表面ポラリトン変換素子70は、図13に示されているように、実施例5の変換素子50と実施例6の変換素子50a,50bを用いた距離測定器である。電気的に輻射率を制御できる実施例5の電磁波−表面ポラリトン変換素子50が送信器として用いられる。電磁波−表面ポラリトン変換素子50の基板221はヒータ233により加熱されている。そして、所定周期の矩形波の電圧が、電磁波−表面ポラリトン変換素子50の一対の電極225(図12)に印加される。これにより、放射光237は矩形波で変調された光となる。この光は測定物体236で反射されて、一対の電磁波−表面ポラリトン変換素子50a、50bに入力する。この変換素子50a、50bの構造は、実施例5の電磁波−表面ポラリトン変換素子50と同一である(実施例6の変換素子)。この変換素子50a、50bの基板221の裏面には、サーモパイル234a、234bが、それぞれ、貼付されている。
また、この変換素子50aの一対の電極225(図12)には、変換素子50に印加されている矩形波電圧と同相の電圧が印加され、変換素子50bの一対の電極225には、変換素子50に印加されている矩形波電圧と逆相の電圧が印加されている。変換素子50aは、印加電圧がHレベルの時に光を高感度で検出することができる。したがって、印加電圧のHレベルの期間と受信光がHレベルの期間とが重なった期間(AND出力)において、基板の2の表面に表面フォノンポラリトンが励起されることになる。すなわち、表面フォノンポラリトンの励起期間は、本距離測定器から物体236までの往復距離に要する光の走行時間に比例して減少するデューティ比により決定されるHレベル期間となる。したがって、変換素子50aにおける上記デューティ比は、往復距離に比例して減少することになる。また、変換素子50bも同様であるが、変換素子50bへの印加電圧は、変換素子50に印加されている矩形波電圧に対して、1/2周期だけ遅れているので、変換素子50bにおける上記上記デューティ比は、往復距離に比例して増加する。このことから、変換素子50aのサーモパイル234aと、変換素子50bのサーモパイル234bにより電圧を測定することで、駆動信号の1周期の遅延時間に相当する往復距離の範囲において、物体236に対する距離を測定することができる。
本実施例の電磁波−表面ポラリトン変換素子80は、図14に示されているように、回折格子層4の周期構造を第1方向のx軸方向と第2方向のy軸方向との2次元配列とした変換素子である。基板2の材料はSiC、回折格子層4の材料はSiであり、実施例1と同一である。回折格子層4は第2領域である正方形状の穴6が、正方格子に配列された周期構造である。穴6以外のSiから成る領域が第1領域5である。x軸方向の断面図は、図1と同一である。図14において、第1方向のx軸、第2方向のy軸について、同一の周期pは11.9μm、第2領域である正方形の穴6の1辺は5.6μm、回折格子層4(Si層)の厚さhは、0.54μm、スペーサ層3の厚さは5.57μmである。この構造の場合には、波長12.12μmの垂直入射の光に対して、エバネッセント波とそのエバネセント波に共鳴した表面フォノンポラリトンを励起させることができる。
また、図15に示されているように、回折格子層4は第2領域である円形の穴6が、六方格子に配列された周期構造とすることができる。基板2の材料はSiC、回折格子層4の材料はSiであり、実施例1と同一である。穴6以外の領域が第1領域5(Si)であり、図15の第1方向であるx軸方向の断面は図1と同一である。図15において、60°間隔の動径方向の周期pは11.9μm、第2領域の穴6の直径は7.0μm、回折格子層4(Si層)の厚さは0.62μm、スペーサ層3の厚さは5.50μmである。穴6以外の領域が第1領域5(Si)である。図15のこの構造の場合には、波長12.12μmの垂直入射光に対して、エバネッセント波とそのエバネセント波に共鳴した表面フォノンポラリトンを励起させることができる。このように、実施例8の変換素子90は、偏光と入射角に対してよりきめ細かい制御が可能となる。
実施例9は、図16に示すように、上記実施例1〜8における回折格子層4の周期構造の配列をx軸の正と負の方向で、非対称となるが構造とした電磁波−表面ポラリトン変換素子90である。回折格子層5は、x軸方向に沿って、第1領域5a、第2領域6a、第3領域5b、第4領域6bの配列を1周期として、繰り返して配列された周期構造から成る。第1領域5aのx軸方向の幅WR1は、第3領域5bのx軸方向の幅WR2よりも狭く、第2領域6aのx軸方向の幅WS1は、第4領域6bのx軸方向の幅WS2よりも広い。この構造は、x軸の正の方向と負の方向とで、4つの領域の幅の大小関係の並び方が対称ではない。x軸の正の方向には、第1領域から第4領域にかけて、狭い幅、広い幅、広い幅、狭い幅の順となり、x軸の負の方向には、狭い幅、狭い幅、広い幅、広い幅の順になっている。
第1領域5aと第3領域5bとは、シリコン(Si)から成り、第2領域6aと第4領域6bとスペーサ層3は空気から成る。第1領域5aの幅WR1は2.8μm、第3領域5bの幅WR2は6.8μm、第2領域6aの幅WS1は5μm、第4領域6bの幅WS2は0.91μmであり、周期pは、15.51μmである。また、回折格子層4の厚さhは3.5μm、スペーサ層3の厚さtは6.3μmである。基板2は、炭化ケイ素(SiC)である。他の構成は実施例1と同一である。
図16において、−x軸の向きに入射角θ=+21.5°で、波長11.32μmのp偏光を回折格子層4の表面4aに入射させて、基板2の表面12に励起される表面フォノンポラリトンと結合させた。このときの熱輻射率の角度依存性を図17に示す。入射角θが+21.5°で高い急峻な輻射率特性、すなわち、角度選択性を示している。また、x軸の正の方向に入射させた場合(入射角θが負の場合)には、輻射率は低く角度選択性はなかった。特に、入射角θが+21.5°で高い急峻な輻射率を示すのに対して、反対の入射角θが−21.5°の場合には、輻射率は低くブロードな特性を示している。このように、実施例9では、入射角θについて非対称な特性を有しているため、一方の方位からの光の入射、又は、光の放射を行う素子に用いることができる。
本発明は、光源、熱源、検出器、特定方向に対する選択的加熱又は冷却器、特定方向からの特定波長の電磁波のみを検出する検出器に応用することができる。
2…基板
3…スペーサ層
4…回折格子層
5,5a…第1領域
6,6a…第2領域
5b…第3領域
6b…第4領域
14…界面
12…表面

Claims (17)

  1. 電磁波と表面ポラリトンとの変換を可能とした電磁波−表面ポラリトン変換素子において、
    表面に表面ポラリトンを生成する基台と、
    前記電磁波を入射又は放射し、厚さ方向に垂直な少なくとも一つの第1方向に沿って、屈折率が周期的に変化する回折格子層と、
    前記基台と前記回折格子層との間に介在するスペーサ層とを有し、
    前記回折格子層と前記スペーサ層との界面にエバネッセント波が生成され、そのエバネッセント波と、前記基台の前記表面に生成された前記表面ポラリトンとを、前記スペーサ層内に存在する電磁波を介して共鳴させ、
    前記スペーサ層の厚さは、前記回折格子層と前記スペーサ層との第1界面と、前記基台と前記スペーサ層との第2界面との間で、前記回折格子層を透過した透過光が多重反射して、前記エバネッセント波が増幅される厚さに決定されている
    ことを特徴とする電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  2. 電磁波と表面ポラリトンとの変換を可能とした電磁波−表面ポラリトン変換素子において、
    表面に表面ポラリトンを生成する基台と、
    前記電磁波を入射又は放射し、厚さ方向に垂直な少なくとも一つの第1方向に沿って、屈折率が周期的に変化する回折格子層と、
    前記基台と前記回折格子層との間に介在するスペーサ層とを有し、
    前記回折格子層と前記スペーサ層との界面にエバネッセント波が生成され、そのエバネッセント波と、前記基台の前記表面に生成された前記表面ポラリトンとを、前記スペーサ層内に存在する電磁波を介して共鳴させ、
    前記基台に接続された熱源を有し、前記回折格子層から赤外領域の特定波長の前記電磁波を特定の放射角で放射させることを特徴とする電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  3. 電磁波と表面ポラリトンとの変換を可能とした電磁波−表面ポラリトン変換素子において、
    表面に表面ポラリトンを生成する基台と、
    前記電磁波を入射又は放射し、厚さ方向に垂直な少なくとも一つの第1方向に沿って、屈折率が周期的に変化する回折格子層と、
    前記基台と前記回折格子層との間に介在するスペーサ層とを有し、
    前記回折格子層と前記スペーサ層との界面にエバネッセント波が生成され、そのエバネッセント波と、前記基台の前記表面に生成された前記表面ポラリトンとを、前記スペーサ層内に存在する電磁波を介して共鳴させ、
    前記基台の温度を検出する温度検出器を有し、前記回折格子層に対して特定の入射角度で入射する赤外領域の特定波長の前記電磁波を、前記温度検出器により検出することを特徴とする電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  4. 前記スペーサ層の厚さは、前記スペーサ層内に存在する電磁波の多重反射により前記エバネッセント波が増幅されるように決定されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  5. 前記エバネッセント波の波数と前記表面ポラリトンの波数とを一致させたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  6. 前記回折格子層の周期は、前記電磁波の所望の入射角又は放射角と周波数に対して、前記エバネッセント波の波数と前記表面ポラリトンの波数とが一致するように決定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  7. 前記回折格子層は、前記第1方向と異なる方向にも、屈折率が周期的に変化する2次元周期構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  8. 前記回折格子層は、屈折率の大きい第1領域と、第1領域より屈折率が小さい第2領域とから成る周期構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  9. 前記回折格子の1周期は、前記周期構造の配列の向きに沿って、前記第1領域、前記第2領域、第3領域及び第4領域が配列された構造であり、
    前記第3領域の幅は前記第1領域の幅よりも広く、前記第4領域の幅は前記第2領域の幅よりも狭く、前記第2領域及び前記第4領域の屈折率は、前記第1領域及び前記第3領域の屈折率よりも小さい
    ことを特徴とする請求項8に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  10. 前記回折格子層の前記第1領域は、シリコン又は酸化チタンから成り、前記第2領域は真空、空気又はその他の誘電体から成ることを特徴とする請求項8に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  11. 前記回折格子層の前記第1領域及び前記第3領域は、シリコン又は酸化チタンから成り、前記第2領域及び前記第4領域は、真空、空気又はその他の誘電体から成ることを特徴とする請求項9に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  12. 前記スペーサ層は、真空、空気、二酸化ケイ素、その他の誘電体のうち少なくとも1種から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  13. 前記基台は極性誘電体であり、前記表面ポラリトンは、表面フォノンポラリトンであることを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  14. 前記基台は、炭化ケイ素、二酸化ケイ素のうち少なくとも1種で構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  15. 前記基台は金属又は不純物の添加されたシリコンであり、前記表面ポラリトンは、表面プラズモンポラリトンであることを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  16. 前記スペーサ層の厚さを変化できる可変手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項15の何れか1項に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
  17. 前記スペーサ層は、誘電率を可変できる部材から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項16の何れか1項に記載の電磁波−表面ポラリトン変換素子。
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