以下、本発明の典型的な実施形態の1つである第一実施形態について、図面を参照して説明する。
<概略構成>
まず、図1を参照して、第一実施形態の眼科手術システム500の概略構成について説明する。以下では、白内障の手術を行うための眼科手術システム500を例示して説明を行う。しかし、眼科手術システム500は、白内障手術以外の処置(例えば、角膜にフラップを形成する処置、角膜の屈折矯正処置、老視矯正処置等)を実行できてもよい。
図1に示すように、第一実施形態の眼科手術システム500は、眼科用レーザ手術装置100と、眼科用挿入手術装置200と、設定装置300とを備える。眼科用レーザ手術装置100は、患者眼の組織(例えば、水晶体等)をパルスレーザ光によって処置(破砕、切断等)することができる。眼科用挿入手術装置200には、先端にチップを備えたハンドピース210(図3参照)が接続される。ハンドピース210は、先端側から患者眼に挿入される。眼科用挿入手術装置200は、チップの超音波振動による水晶体内の物質(例えば、水晶体核および皮質)の破砕、および、破砕された物質の吸引の少なくともいずれかを、ハンドピース210を介して実行することができる。ハンドピース210の種類は、実行する処置に応じて適宜選択すればよい。設定装置300は、眼科用レーザ手術装置100におけるパルスレーザ光の照射条件、および、眼科用挿入手術装置200の動作条件の少なくとも一方を設定することができる。
なお、眼科用レーザ手術装置100、眼科用挿入手術装置200、および設定装置300の各々は独立した装置であってもよいし、3つの装置の2つ以上が一体化されていてもよい。複数の装置によって眼科手術システム500が構成されている場合、各装置は、ケーブル、無線通信、USBメモリ等によって、他の装置との間で情報の入力・出力等を実行できてもよい。一例として、第一実施形態では、眼科用レーザ手術装置100、眼科用挿入手術装置200、および設定装置300の各々が独立して構成されている。眼科用レーザ手術装置100と設定装置300は、ケーブル401によって電気的に接続されている。眼科用挿入手術装置200と設定装置300は、ケーブル402によって電気的に接続されている。
また、第一実施形態では、設定装置300が、眼科用レーザ手術装置100および眼科用挿入手術装置200とは別に設けられている。しかし、設定装置300は、眼科用レーザ手術装置100および眼科用挿入手術装置200の少なくともいずれかに組み込まれていてもよい。この場合、眼科用レーザ手術装置100および眼科用挿入手術装置200の少なくともいずれかが設定装置300として機能する。
<設定装置>
図1を参照して、設定装置300について説明する。第一実施形態の設定装置300は制御部370を備える。制御部370は、CPU、ROM、RAM等を備える。CPUは、設定装置300の各種制御を司る。ROMには、設定装置300の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部370は、眼科用レーザ手術装置100の制御手段、および、眼科用挿入手術装置200の制御手段の少なくともいずれかを兼ねてもよい。
制御部370には、本実施形態では、入力手段301、フットスイッチ310、フットペダル320、モニタ330、およびメモリ371が接続される。入力手段301は、操作者(例えば術者)が各種情報を設定装置300に入力するために、操作者によって操作される。入力手段301には、例えば、マウス、キーボード、モニタ330上のタッチパネル、スイッチ等の少なくともいずれかを使用することができる。フットスイッチ310は、眼科用レーザ手術装置100に対する指示を入力するために操作される。フットペダル320は、眼科用挿入手術装置200に対する動作パラメータ(例えば、吸引力のパラメータ、チップの超音波振動に関するパラメータ等)を入力するために操作される。
モニタ330には、本実施形態では、眼科用レーザ手術装置100におけるパルスレーザ光の照射条件、および、眼科用挿入手術装置200の動作条件等が表示される。また、カメラ131(図2参照)によって撮影された患者眼の画像等がモニタ330に表示されてもよい。メモリ371は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。第一実施形態では、設定装置300が照射条件および動作条件の少なくともいずれかを設定するための眼科手術プログラムは、例えばメモリ371に記憶させることができる。
<眼科用レーザ手術装置>
図2を参照して、眼科用レーザ手術装置100について説明する。一例として、本実施形態の眼科用レーザ手術装置100は、レーザ光源110、照射ユニット120、観察ユニット130、および眼球固定ユニット140を備える。
レーザ光源110は、集光位置(スポット)においてブレイクダウンを発生させるためのパルスレーザ光を出射する。レーザ光源110には、例えば、フェムト秒からピコ秒オーダーのパルス幅のパルスレーザ光を出射するデバイスを使用することができる。パルスレーザ光の集光位置ではプラズマが発生し、光破壊(photodisruption)による組織の破砕、切断等が行われる。
照射ユニット120は、レーザ光源110によって出射されたパルスレーザ光を、患者眼における三次元上のターゲット位置に集光させる。一例として、本実施形態の照射ユニット120は、走査部121、焦点移動部122、ビームスプリッタ123、および対物レンズ124を備える。走査部121は、パルスレーザ光の集光位置を、光軸に交差する二次元方向(XY方向)に走査(偏向)する。走査部121には、例えば、ガルバノミラー、レゾナントミラー、回転プリズム、ポリゴンミラー、音響光学素子(AOM)等を用いることができる。焦点移動部122は、パルスレーザ光の集光位置を光軸方向(Z方向)に移動させる。例えば、焦点移動部122は、光学素子(図示せず)を光軸方向に移動させることで、集光位置をZ方向に移動させることができる。ビームスプリッタ123は、パルスレーザ光の光軸と、観察ユニット130における観察光軸とを合致させる。本実施形態のビームスプリッタ123は、パルスレーザ光を反射し、且つ観察用の光を透過させることで、両者を同軸とする。対物レンズ124は、パルスレーザ光をターゲット位置に結像させる。なお、照射ユニット120の詳細な構成を変更できることは言うまでもない。例えば、走査部121と焦点移動部122の位置を入れ替えてもよい。
観察ユニット130は、患者眼を術者等に観察させるために用いられる。一例として、本実施形態の観察ユニット130は、カメラ131、ビームスプリッタ132、照明光源133、およびレンズ系134を備える。カメラ131は患者眼を撮影する。ビームスプリッタ132は、照明光源133によって出射された照明光を反射し、且つ、患者眼によって反射された照明光の反射光を透過する。照明光源133には、可視光源、赤外光源等の種々の光源を用いることができる。レンズ系134は、照明光および反射光を導光する。
眼球固定ユニット140は、眼科用レーザ手術装置100に対する患者眼の位置を固定する。一例として、本実施形態の眼球固定ユニット140は、吸着リング141およびアプリケータ125を備える。吸着リング141は環状の部材であり、患者眼(例えば、強膜または角膜)に接触する。吸着リング141は、ポンプ(図示せず)の吸引力によって患者眼に固定される。アプリケータ125は、透光性を有するコンタクトレンズであり、患者眼の圧平に用いられる。なお、眼球固定ユニット140の構成も適宜変更できる。例えば、アプリケータ125は、吸着リング141の内側に液体を充填するものであってもよい。また、眼球固定ユニット140を用いずに患者眼の処置を行うことも可能である。
<眼科用挿入手術装置>
図3を参照して、眼科用挿入手術装置200について説明する。一例として、本実施形態の眼科用挿入手術装置200は、ハンドピース210と、吸引ポンプ220と、廃液袋230と、灌流ボトル240とを備える。ハンドピース210は、チップ211、スリーブ212、および超音波振動子215を備える。チップ211は、ハンドピース210の先端に設けられており、振動によって水晶体核等を破壊する。本実施形態のチップ211は、中空の筒状部材であり、超音波振動子215に接続されている。スリーブ212は、チップ211の外周を覆う。超音波振動子215は、チップ211に超音波振動を与える。吸引ポンプ220は、ハンドピース210に接続された吸引チューブ221に吸引圧を発生させる。本実施形態の吸引ポンプ220はペリスタリックポンプ(蠕動ポンプ)である。しかし、真空を発生させることで吸引を行うベンチュリー方式を眼科用挿入手術装置200に採用してもよい。ハンドピース210の先端から吸引された物質は、吸引チューブ221を通って廃液袋230に集められる。灌流ボトル240は、ハンドピース210に接続された灌流チューブ241に還流液を供給する。眼科用挿入手術装置200は、灌流ボトル240から患者眼に供給される還流液の供給圧を変化させる構成を備えてもよい。例えば、灌流ボトル240の高さを変化させることで、供給圧を変化させることができる。
超音波振動子215が超音波振動することで、患者眼に挿入されたチップ211に振動伝達され、チップ211が超音波振動する。これにより、チップ211に接触した水晶体等の組織が破砕(乳化)される。破砕された組織は、チップ211から吸引されて、廃液袋230に至る。吸引によって減少した患者眼内の液(房水)は、スリーブ212等を介して灌流ボトル240から供給される。
なお、本実施形態の眼科用挿入手術装置200は、フットペダル320(図1参照)の踏み込み量に応じて動作を制御する。一例として、眼科用挿入手術装置200は、還流液の供給のみを行う第一段階、還流液の供給と吸引とを並行して行う第二段階、および、還流液の供給と吸引と超音波振動とを並行して行う第三段階を、フットペダル320の踏み込み量に応じて段階的に切り換える。また、本実施形態の眼科用挿入手術装置200は、踏み込み量の増減量に応じて、振動の出力(本実施形態では超音波パワーおよび超音波パルスのデューティー比)と吸引の出力を、段階的または比例的に増減させる。より詳細には、眼科用挿入手術装置200は、第二段階および第三段階において、フットペダル320の踏み込み量が増加する毎に、吸引量を比例的に増加させる。また、第三段階において、フットペダル320の踏み込み量が増加する毎に、超音波パワーおよびデューティー比を比例的に増加させる。
<照射条件・動作条件>
図4を参照して、本実施形態における照射条件および動作条件について説明する。照射条件とは、眼科用レーザ手術装置100が水晶体内の物質(例えば、水晶体核および皮質)を破砕する際のパルスレーザ光の照射条件である。動作条件とは、眼科用挿入手術装置200が水晶体内の物質の破砕および吸引の少なくともいずれかを実行する際の動作条件(以下、「振動・吸引動作条件」という場合もある)である。
照射条件としては、パルスレーザ光の照射パターン(水晶体の組織の切断パターン)、レーザパルスのエネルギー、レーザスポットのサイズ、パルス幅、繰返し周波数、レーザの波長等が挙げられる。本実施形態では、照射パターンが設定される場合を例示して説明を行う。図4に示すように、本実施形態では3つの照射パターンが設けられている。図4(a)に示す低密度照射パターンでは、水晶体内の組織が、水晶体LEの略中心から経線に沿って4等分に分割される。図4(b)に示す中密度照射パターンでは、水晶体内の組織が経線に沿って8等分に分割され、さらに奥行方向に4等分に分割される。図4(c)に示す高密度照射パターンでは、水晶体LEが、微小片(例えば、チップ211の径と同程度の径を有する片)に分割(破砕)される。低密度照射パターンでは、パルスレーザ光の照射時間は他の照射パターンに比べて短いが、眼科用挿入手術装置200が組織を処置するために要する出力は、他の照射パターンが実行される場合に比べて高くなる。一方で、高密度照射パターンでは、パルスレーザ光の照射時間は他の照射パターンに比べて長いが、眼科用挿入手術装置200が組織を処置するために要する出力は、他の照射パターンが実行される場合に比べて低くなる。
なお、照射パターンを適宜変更できることは言うまでもない。例えば、照射パターンの数は3つに限られない。また、眼科用レーザ手術装置100は、複数のターゲット位置の密度を照射パターンに応じて変化させる場合、段階的でなくリニアに密度を変化させてもよい。つまり、例えば「振動の出力が低い程、ターゲット位置の密度を高くする」という表現は、振動の出力に応じて密度をリニアに変化させる場合も、密度を段階的に変化させる場合も共に含む表現と捉えるべきである。また、複数のターゲット位置の密度は、本実施形態では、単位体積あたりのターゲット位置の数、または、複数のターゲット位置によって形成される切断ライン同士の平均距離等によって規定することもできる。
振動・吸引動作条件としては、振動の出力、吸引の出力(例えば吸引量、吸引圧)、灌流の出力(例えば灌流液の供給圧)等が挙げられる。振動の出力には、超音波パワー(チップ211の振幅)、および、超音波発振のデューティサイクル(単位時間当たりの超音波発振と休止の比)等がある。一例として、本実施形態では、振動の出力および吸引の出力が互いに異なる複数の振動・吸引動作条件が設けられている。詳細には、振動および吸引の両方の出力の最大値が大きい順に、「最高」「高」「中」「低」の4つの振動・吸引動作条件が設けられている。
なお、振動・吸引動作条件の内容も適宜変更できる。例えば、眼科用挿入手術装置200は、振動の出力を変更する場合、超音波パワーおよびデューティサイクルの一方のみを変更してもよい。振動の出力のみ、または吸引の出力のみを変更してもよい。出力の最大値以外のパラメータ(例えば、出力の平均値、出力の最低値等)を、複数の振動・吸引動作条件に応じて変化させてもよい。
図5を参照して、本実施形態における照射条件と動作条件の関係について説明する。本実施形態では、患者眼の水晶体を処置するためのモードとして、「レーザ不使用モード」と「レーザ使用モード」が設けられている。「レーザ不使用モード」では、眼科用レーザ手術装置100によるパルスレーザ光が水晶体の処置に使用されない。「レーザ使用モード」では、水晶体の処置の少なくとも一部にパルスレーザ光が使用される。
さらに、本実施形態では、「レーザ使用モード」として、「CCCモード」と「CCC+破砕モード」が設けられている。「CCCモード」では、水晶体における水晶体嚢の切開処置(Continuous Circular Capsulorhexis:CCC)はパルスレーザ光によって実行されるが、水晶体内の組織のパルスレーザ光による破砕は実行されない。「CCC+破砕モード」では、CCC、および水晶体内の組織の破砕にパルスレーザ光が使用される。なお、モードの種類等は適宜変更できる。例えば、CCCをパルスレーザ光で実行せずに、水晶体内の組織の破砕にパルスレーザ光を用いるモードが設けられていてもよい。
本実施形態では、操作者によって「レーザ不使用モード」または「CCCモード」が設定された場合、振動および吸引の出力の最大値が「最高」となる振動・吸引動作条件が初期値として設定される。この場合、水晶体の処置にパルスレーザ光は使用されないので、照射条件は設定されない。ただし、設定装置300は、操作者の操作指示等に応じてその後に照射条件を設定してもよい。
また、操作者によって「CCC+破砕モード」が設定された場合、設定装置300は、照射条件と振動・吸引動作条件とが対応するように、2つの条件の初期値を設定する。一例として、本実施形態では、低密度照射パターンと、出力の最大値が「高」の振動・吸引動作条件とが対応付けられている。中密度照射パターンと、出力の最大値が「中」の振動・吸引動作条件とが対応付けられている。高密度照射パターンと、出力が「低」の振動・吸引動作条件とが対応付けられている。つまり、本実施形態では、照射条件によって定められるパルスレーザ光のターゲット位置の密度が低くなる程、振動・吸引動作条件によって定められる超音波振動の出力および吸引の出力が高くなるように、2つの条件が対応付けられている。前述したように、ターゲット位置の密度が低くなる程、破砕される組織の荒さが増加するので、眼科用挿入手術装置200が組織を処置するための出力を高くすることが望ましい。よって、設定装置300は、図5に例示した対応に従うことで、適切な条件を容易に設定することができる。
<眼科手術システムによる手術の流れ>
眼科手術システム500による手術の流れについて概略的に説明する。まず、照射条件および振動・吸引動作条件が設定される(詳細は後述する)。次いで、レーザ使用モードが設定されている場合、眼球固定ユニット140によって患者眼が固定された状態で、患者眼に対するパルスレーザ光の照射が実行される。その結果、CCC、および水晶体組織の破砕の少なくともいずれかが実行される。ここで、眼科用レーザ手術装置100は、設定された照射パターンに応じてパルスレーザ光の照射を制御する。次いで、眼科用挿入手術装置200による手術が実行される。術者は、ハンドピース210を持ち、チップ211を患者眼の内部に挿入して、フットペダル320の踏み込み量を調整する。その結果、水晶体組織の破砕、および破砕された組織の吸引が行われる。ここで、眼科用挿入手術装置200は、設定された振動・吸引動作条件に基づいて、振動の出力および吸引の出力を制御する。
<設定処理>
図6から図8を参照して、第一実施形態の設定装置300が実行する設定処理について説明する。第一実施形態では、照射条件および振動・吸引動作条件は設定装置300によって設定される。設定装置300のCPUは、条件設定の開始指示を、入力手段301等を介して入力すると、メモリ371に記憶された眼科手術プログラムに従って、図6に示す設定処理を実行する。
まず、本実施形態では、操作者は、モニタ330を見ながら入力手段301(例えばタッチパネル)を操作することで、「レーザ使用モード」および「レーザ不使用モード」のいずれかを選択する。なお、設定装置300のCPUは、眼科用レーザ手術装置100が眼科手術システム500に組み込まれていない(例えば、眼科用レーザ手術装置100と設定装置300とが接続されていない)場合に、自動的に「レーザ不使用モード」を設定してもよい。「レーザ不使用モード」が選択されると(S1:NO)、照射条件は設定されず、レーザを使用しない旨の設定が行われる(S2)。振動・吸引の出力が「最高」となる振動・吸引動作条件が設定されて(S4)、処理はS9へ移行する。
操作者は、「レーザ使用モード」を選択すると、さらに、「CCCモード」および「CCC+破砕モード」のいずれかを選択する。「レーザ使用モード」が選択され(S1:YES)、且つ「CCCモード」が選択されると(S3:YES)、設定装置300のCPUは、CCCのみをパルスレーザ光で実行する照射条件(図5には図示せず)を設定する。さらに、CPUは、振動・吸引の出力が「最高」となる振動・吸引動作条件を設定する(S4)。処理はS9へ移行する。
本実施形態では、操作者は、「CCC+破砕モード」を選択すると、照射条件および振動・吸引動作条件のいずれかをさらに選択する。「CCC+破砕モード」が選択され(S3:NO)、且つ複数の照射条件のいずれかが選択されると(S6:YES)、設定装置300のCPUは動作条件設定処理を実行する(S7)。
図7に示すように、動作条件設定処理では、照射条件として低密度照射パターンが選択されたか否かが判断される(S11)。低密度照射パターンが選択されると(S11:YES)、選択された低密度照射パターンが照射条件として設定されると共に、出力の最大値が「高」となる振動・吸引動作条件が設定される(S12)。低密度照射パターンでなく(S11:NO)、中密度照射パターンが選択されると(S13:YES)、選択された中密度照射パターンが照射条件として設定されると共に、出力の最大値が「中」となる振動・吸引動作条件が設定される(S14)。高密度照射パターンが選択されると(S13:NO)、選択された高密度照射パターンが照射条件として設定されると共に、出力の最大値が「低」となる振動・吸引動作条件が設定される(S15)。処理は設定処理(図6参照)に戻る。
図6の説明に戻る。「CCC+破砕モード」が選択され(S3:NO)、且つ複数の振動・吸引動作条件のいずれかが選択されると(S6:NO)、設定装置300のCPUは照射条件設定処理を実行する(S8)。
図8に示すように、照射条件設定処理では、出力の最大値が「高」となる振動・吸引動作条件が選択されたか否かが判断される(S21)。「高」の振動・吸引動作条件が選択されると(S21:YES)、選択された振動・吸引動作条件が設定されると共に、低密度照射パターンが照射条件として設定される(S22)。「高」の振動・吸引動作条件でなく(S21:NO)、「中」の振動・吸引動作条件が選択されると(S23:YES)、選択された振動・吸引動作条件が設定されると共に、中密度照射パターンが照射条件として設定される(S24)。「低」の振動・吸引動作条件が選択されると(S23:NO)、選択された振動・吸引動作条件が設定されると共に、高密度照射パターンが照射条件として設定される(S25)。処理は設定処理に戻る。なお、CPUは、眼科用挿入手術装置200が眼科手術システム500に組み込まれていない場合、「レーザ使用モード」を自動的に選択してもよい。この場合、CPUは、さらに「CCC+破砕モード」「高密度照射パターン」を自動的に選択してもよい。
図6の説明に戻る。S1〜S8で照射条件および振動・吸引動作条件の初期値が設定されると、設定された初期値の変更指示を受け付ける処理が行われる(S9)。例えば、操作者は、設定された初期値を変更したい場合、入力手段301を操作して所望の条件を入力する。CPUは、S9の処理において、入力された条件を新たな条件として設定する。設定処理は終了する。
以上説明したように、第一実施形態の眼科手術システム500における設定装置300は、照射条件と振動・吸引動作条件とが対応するように、照射条件および振動・吸引動作条件の少なくとも一方の初期値を設定する。従って、操作者は、眼科用レーザ手術装置100における照射条件と、眼科用挿入手術装置200における振動・吸引動作条件とを個別に設定する必要が無い。よって、作業者の負担が軽減され易い。
第一実施形態の設定装置300は、照射条件によって定められるパルスレーザ光のターゲット位置の密度が低くなる程、振動・吸引動作条件によって定められる振動の出力および吸引の出力の少なくともいずれかが高くなるように、照射条件および振動・吸引動作条件の少なくとも一方の初期値を設定する。従って、設定装置300は、適切な条件を容易に設定することができる。
パルスレーザ光によるCCCを実行しつつ、水晶体嚢の内側に位置する物質のパルスレーザ光による破砕処置を実行しない照射条件(本実施形態では「CCCモード」)が選択される場合がある。この場合、第一実施形態の設定装置300は、水晶体内の物質の破砕処置を実行する照射条件(本実施形態では「CCC+破砕モード」)が選択される場合に比べて、超音波振動の出力の初期値を高い値に設定する。従って、設定装置300は、操作者の負担が増加することを抑制しつつ、照射条件に応じた適切な振動・吸引動作条件の初期値を設定することができる。
図9を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、構成および処理の一部が第一実施形態と異なるのみである。従って、第二実施形態の説明では、第一実施形態と同一の構成については第一実施形態と同一の番号を付して説明を省略または簡略化する。
第二実施形態では、第一実施形態とは異なり、設定装置300(図1参照)は用いられない。第二実施形態の眼科用レーザ手術装置100は、眼科用挿入手術装置200で設定された振動・吸引動作条件の初期値を取得し、取得した振動・吸引動作条件に基づいて、照射条件の初期値を自動的に設定する。
眼科用レーザ手術装置100のCPUは、条件設定の開始指示を入力すると、メモリに記憶された眼科手術プログラムに従って、図9に示す設定処理を実行する。まず、眼科用挿入手術装置200で設定された振動・吸引動作条件が取得される(S31)。振動・吸引動作条件は、無線通信、有線通信、および着脱可能な記憶装置等によって取得されればよい。次いで、取得された条件によって示される振動の出力および吸引の出力が「最高」であるか否かが判断される(S32)。「最高」であれば(S32:YES)、水晶体内部(水晶体嚢の内側)の破砕にパルスレーザ光を使用しない旨が設定されて(S33)、処理はS39へ移行する。
振動および吸引の出力が「最高」でなく(S32:NO)、「高」であれば(S34:YES)、照射条件として低密度照射パターンが設定されて(S35)、処理はS39へ移行する。振動および吸引の出力が「高」でなく(S34:NO)、「中」であれば(S36:YES)、照射条件として中密度照射パターンが設定されて(S37)、処理はS39へ移行する。振動および吸引の出力が「中」でもなく「低」であれば(S36:NO)、照射条件として高密度照射パターンが設定されて(S38)、処理はS39へ移行する。次いで、S32〜S38で設定された照射条件の初期値の変更指示を受け付ける処理が行われて(S39)、設定処理は終了する。
以上説明したように、第二実施形態の眼科用レーザ手術装置100は、取得した振動・吸引動作条件に基づいて照射条件を設定する。従って、操作者は、眼科用レーザ手術装置100における照射条件と、眼科用挿入手術装置200における振動・吸引動作条件とを個別に設定する必要が無い。よって、作業者の負担が軽減され易い。
第二実施形態の眼科用レーザ手術装置100は、振動・吸引動作条件によって示される吸引の出力が低い程、ターゲット位置の密度が高い照射パターンを照射条件の初期値として設定する。また、第二実施形態の眼科用レーザ手術装置100は、振動・吸引動作条件によって示される振動の出力が低い程、ターゲット位置の密度が高い照射パターンを照射条件の初期値として設定する。従って、眼科用レーザ手術装置100は、適切な照射条件を容易に設定することができる。
図10を参照して、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態では、構成および処理の一部が、第一実施形態および第二実施形態と異なるである。従って、以下の説明では、第一実施形態および第二実施形態と異なる部分について重点的に説明する。
第三実施形態でも、第二実施形態と同様に設定装置300(図1参照)は用いられない。第三実施形態の眼科用挿入手術装置200は、眼科用レーザ手術装置100で設定された照射条件の初期値を取得し、取得した照射条件に基づいて、振動・吸引動作条件の初期値を自動的に設定する。
眼科用挿入手術装置200のCPUは、条件設定の開始指示を入力すると、メモリに記憶された眼科手術プログラムに従って、図10に示す設定処理を実行する。まず、眼科用レーザ手術装置100で設定された照射条件が、通信等によって取得される(S41)。取得された照射条件が、水晶体内部の組織の破砕にパルスレーザ光を使用しない照射条件(例えば、第一実施形態における「レーザ不使用モード」または「CCCモード」)であるか否かが判断される(S42)。破砕にパルスレーザ光を使用しない照射条件であれば(S42:YES)、振動および吸引の少なくともいずれかの出力が「最高」となる振動・吸引動作条件が設定されて(S43)、処理はS49へ移行する。
組織の破砕にパルスレーザ光を使用する照射条件であれば(S42:NO)、取得された照射条件(照射パターン)が低密度照射パターンであるか否かが判断される(S44)。低密度照射パターンであれば(S44:YES)、振動および吸引の少なくともいずれかの出力が「高」となる振動・吸引動作条件が設定されて(S45)、処理はS49へ移行する。照射パターンが低密度照射パターンでなく(S44:NO)、中密度照射パターンであれば(S46:YES)、出力が「中」となる振動・吸引動作条件が設定されて(S47)、処理はS49へ移行する。取得された照射パターンが高密度照射パターンであれば(S46:NO)、出力が「低」となる振動・吸引動作条件が設定されて(S48)、処理はS49へ移行する。次いで、S42〜S48で設定された動作条件の初期値の変更指示を受け付ける処理が行われて(S49)、設定処理は終了する。
以上説明したように、第三実施形態の眼科用挿入手術装置200は、取得した照射条件に基づいて振動・吸引照射条件を設定する。従って、操作者は、眼科用レーザ手術装置100における照射条件と、眼科用挿入手術装置200における振動・吸引動作条件とを個別に設定する必要が無い。よって、作業者の負担が軽減され易い。
第三実施形態の眼科用挿入手術装置200は、照射条件によって示されるターゲット位置の密度が低い程、振動の出力および吸引の出力の少なくともいずれかの初期値を高い値に設定する。従って、眼科用挿入手術装置200は、適切な振動・吸引動作条件を容易に設定することができる。
第三実施形態の眼科用挿入手術装置200は、CCCを実行しつつ水晶体内部の破砕処置を実行しない照射条件が取得された場合には、水晶体内部の破砕処置を実行する照射条件が取得された場合に比べて、振動の出力および吸引の出力の少なくともいずれかの初期値を高い値に設定する。従って、眼科用挿入手術装置200は、処置の内容に適した条件を容易に設定することができる。
本発明は上記実施形態に限定されることは無く、様々な変形が可能であることは勿論である。まず、上記実施形態では、照射条件および振動・吸引動作条件の一方に基づいて他方の条件が設定される。しかし、一方の条件に加えて他の情報が考慮されてもよい。
図11を参照して、白内障グレードを考慮して条件を設定する変形例について説明する。白内障グレードとは、白内障の患者眼における水晶体の混濁の程度である。一般的に、白内障のグレードが高い(つまり、混濁の程度が酷い)程、水晶体は硬くなりやすい。図11に示すように、本変形例でも上記実施形態と同様に、照射条件と振動・吸引動作条件とが対応するように、照射条件(ターゲット位置の密度レベル)および振動・吸引動作条件(振動・吸引出力レベル)の少なくとも一方の初期値が設定される。詳細には、ターゲット位置の密度が低くなる程、振動の出力および吸引の出力の少なくともいずれかが高くなるように、照射条件および振動・吸引動作条件の少なくとも一方の初期値が設定される。これに加え、本変形例では、白内障グレードが高くなる程、ターゲット位置の密度レベルが高くなるように、照射条件が設定される。また、白内障グレードが高くなる程、振動・吸引出力レベルが高くなるように、振動・吸引動作条件が設定される。
一例として、図11に示す変形例では、ターゲット位置の密度レベルが低い順に、レベル1からレベル4の4つの照射条件(照射パターン)が設けられている。また、振動・吸引の出力レベルが低い順に、レベル1からレベル5の5つの振動・吸引動作条件が設けられている。白内障グレードが高い場合に「レーザ不使用モード」または「CCCモード」が選択されると、振動・吸引出力レベルはレベル5に設定される。一方で、白内障グレードが低い場合に「レーザ不使用モード」または「CCCモード」が選択されると、振動・吸引出力レベルはレベル4に設定される。
また、白内障グレードが高く、且つ「レーザ使用モード」が選択される場合には、密度レベル「2」と振動・吸引出力レベル「4」が対応し、密度レベル「3」と振動・吸引出力レベル「3」が対応し、密度レベル「4」と振動・吸引出力レベル「2」が対応する。白内障グレードが低く、且つ「レーザ使用モード」が選択される場合には、密度レベル「1」と振動・吸引出力レベル「3」が対応し、密度レベル「2」と振動・吸引出力レベル「2」が対応し、密度レベル「3」と振動・吸引出力レベル「1」が対応する。
図11に示す変形例では、条件を設定するCPU(例えば、設定装置300のCPU)は、患者眼の白内障グレードを取得し、取得した白内障グレードに応じて、照射条件および振動・吸引動作条件の少なくともいずれかを設定すればよい。白内障グレードは、種々の方法で決定できる。例えば、眼底に照射された照明光の反射光によって撮影される徹照像を解析することで、白内障グレードが決定されてもよい。設定装置300等は、他のデバイスによって決定された白内障グレードを、ネットワーク等を介して取得してもよいし、白内障グレードを決定するための構成を自ら備えていてもよい。
以上説明したように、図11に示す変形例では、水晶体の混濁の程度が酷い程、ターゲット位置の密度レベルが高くなるように、照射条件が設定される。また、水晶体の混濁の程度が酷い程、振動の出力および吸引の出力の少なくともいずれかが高くなるように、振動・吸引動作条件が設定される。詳細には、照射条件と振動・吸引動作条件とが白内障グレードに応じて対応付けられて組になっており、対応付けられた複数の条件の組のいずれかが初期値として設定される。従って、患者眼の状態に適した条件が容易に設定される。
なお、図11に示す変形例をさらに変更することも可能である。例えば、図11に示す変形例では、ターゲット位置の密度レベルの初期値と、振動・吸引出力レベルの初期値とが、共に白内障グレードに応じて変化する。しかし、ターゲット位置および吸引・出力レベルのいずれかが白内障グレードに応じて変化してもよい。また、一部のモードが選択された場合のみ(例えば、「レーザ不使用モード」が選択された場合のみ)、ターゲット位置および吸引・出力レベルの少なくともいずれかが白内障グレードに応じて変化してもよい。上記変形例では白内障グレードが「高」と「低」の2段階に分かれているが、白内障グレードが3段階以上に分かれていてもよいことは言うまでもない。また、白内障グレード以外の情報が考慮されてもよい。例えば、以前に設定された条件等が併せて考慮されてもよい。水晶体内の組織の硬さを示す情報が考慮されて条件が設定されてもよい。
上記第一実施形態では、図6に示す設定処理を実行するための眼科手術プログラムが、眼科手術システム500内の設定装置300によって実行される。しかし、眼科手術プログラムを実行可能なデバイスは、設定装置300に限られない。例えば、図6に示す設定処理を眼科用レーザ手術装置100が実行してもよい。この場合、眼科用レーザ手術装置100が、照射条件と共に振動・吸引動作条件も決定することができる。従って、この場合には、眼科用レーザ手術装置100が設定装置として機能するので、図1に示す設定装置300を省略することも可能である。なお、眼科用レーザ手術装置100は、決定した振動・吸引動作条件を、ネットワーク等を介して眼科用挿入手術装置200に出力(通知)するとよい。同様に、図6に示す設定処理を眼科用挿入手術装置200が実行してもよい。
上記第一実施形態では、照射条件および振動・吸引動作条件の一方が操作者によって指定されると、指定された一方の条件に基づいて他方の条件がCPUによって設定される。しかし、CPUは、複数の照射条件と複数の振動・吸引動作条件との対応関係(例えば、図5参照)に基づいて、照射条件と振動・吸引動作条件とを同時に設定してもよい。この場合、設定装置300は、照射条件と振動・吸引動作条件との組を操作者に複数提示し、提示した複数の組の中から1つを操作者に選択させることも可能である。
上記実施形態において振動・吸引動作条件が設定される場合、振動の出力の最大値と、吸引の出力の最大値とが共に設定される。しかし、振動の出力と吸引の出力の一方が設定されてもよい。