JP6263099B2 - 撥水撥油膜状硬化物 - Google Patents
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Description
また、特許文献2によれば、ペンタフルオロスルファニル基を有する重合性化合物が撥水・撥油性を付与できる化合物として開示されている。
フッ素を含まない撥水撥油性の検討も行われており、例えば、特許文献3によれば、オクタデシル基のような長鎖炭化水素を導入する事で撥水・撥油性が付与できることが開示されている。
一方、特許文献4によれば、表面に微細凹凸パターンを形成する事で超撥水性が付与可能であることが開示されている。
特許文献3のような長鎖アルキル基を用いた撥水撥油処理材の形成も可能であるが、フッ素含有材料に比べ特性が劣るだけでなく、熱的安定性が低くなる傾向にある。
一方、特許文献4に開示された無機化合物を利用して表面に凹凸パターンを形成する事で得られる撥水膜は耐熱性に問題がないが、多孔性であるためにその機械特性が不十分である。
〔1〕 フッ素及び炭素数5を超える長鎖アルキル基並びに無機酸化物及び金属を含まない撥水撥油膜状硬化物において、親水性ドメインが撥水性マトリックスの最表面に分散して形成され、前記親水性ドメイン面積が2から50%であり、前記親水性ドメイン形状が異方性を有し、その短軸長さが5から100nmであることを特徴とする撥水撥油膜状硬化物。
〔2〕 前記親水性ドメインは、極性を有し表面自由エネルギーを大きくする効果を有する反応により極性基の結合から形成されており、前記反応により極性基が結合したものとしては、ウレタン結合、ウレア結合およびエーテル結合のいずれか1つ以上であり、
前記撥水性マトリックスは、極性が低く表面自由エネルギーを小さくする効果を有する非極性基および/または反応により非極性基の結合から形成されており、前記非極性基を有する基としては、長鎖が炭素数5以下の脂肪族炭化水素基およびベンゼン環1つの芳香族炭化水素基のいずれか1つ以上の基であり、前記反応により非極性基が結合したものとしては、炭素−ケイ素結合およびシロキサン結合のいずれか1つ以上の結合であることを特徴とする前記〔1〕に記載の撥水撥油膜状硬化物。
親水性ドメインの形状は、後述する相分離による自己組織化により形成され、粒子状(球状、楕円球状及びその変形した形状)、繊維状等の形状をとるが、自己組織化によって繊維状になっている割合が高い。そして、親水性ドメインの長軸は1μm以下、好ましくは500nm以下で、短軸長さが5から100nmである事が好ましい。短軸長さが、5nmに満たない場合は目的とする撥油性を得ることが出来ない。100nmを超える場合、親水性が高くなり目的とする撥水性を発現する事が出来ない。好ましくは短軸長さは、10から50nmである。
親水性ドメインは、極性を有し表面自由エネルギーを大きくする効果を有する組成から形成され、撥水性マトリックスは、極性が低く表面自由エネルギーを小さくする効果を有する組成から形成される。
好ましくは、(メタ)アクリル化合物、アミノ化合物、エポキシ化合物、マレイミド化合物、イソシアネート化合物、チオール化合物、親水性官能基を持ったシルセスキオキサン等をあげることができる。
また、マクロモノマーのような反応性高分子を用いても良い。例えば、AA−6、AS−6、AN−6S、AB−6、AW−6S、AY−707S、AK−5、AK−32(東亞合成株式会社)等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリル化合物は単独、もしくは2種類以上組み合わせて使用しても良い。
チオール基を3個以上有するチオール化合物としては、例えば、トリチオグリセリン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、2,4,6−トリス(メルカプトメチル)メシチレン、トリス(メルカプトメチル)イソシアヌレート、トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート、2,4,5−トリス(メルカプトメチル)−1,3−ジチオランのようなトリチオール;ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、テトラメルカプトブタン、ペンタエリトリチオールのようなテトラチオールなどが挙げられる。
上記のチオール化合物は、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(RSiO3/2)n (1)
式中、nは4又は4以上の整数
(RSiO3/2)n(RSiO2H)m (2)
式中、mは2又は2以上の整数、n+mは4または4以上の整数
一般式(1)および(2)中の置換基Rは、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、芳香族置換基に加えて、少なくともメタクリル基、アクリル基、エポキシ基、ウレタン基およびチオール基のいずれかを1つ以上含む。また、mは21000以下の整数であり、n/m比は0.01以上1.0以下(モル比)であり、(m+n)は4以上である。
前記変性シロキサン化合物は、下記一般式(3)で表される構造を有するものであり、1,3−ビス(4−ヒドロキシブチル)テトラメチルジシロキサン、市販品としては例えばPAM−E、KF−8010、X−22−161A、X−22−5841、KF−9701、KF−857、KF−862、X−22−1660B−3、LS−7400(信越化学工業製)等を挙げることができる。
R1(CH2)y((R2)2SiO)xSiR2(CH2)yR1 (3)
(式中R1は、アミノ基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、チオール基、カルボキシル基、酸無水物変性基、ビニル基およびそれらの置換体いずれかより選ばれ、それぞれ同一でも、異なっていても構わない。式中R2は、アミノ基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、チオール基、カルボキシル基、酸無水物変性基、ビニル基水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシ基またはアリロキシ基、炭素数1〜5の飽和炭化水素基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数6〜20のアラルキル基、炭素数7〜20のアリール基、及びケイ素数1〜10のケイ素原子含有基、およびそれらの置換体いずれかより選ばれ、それぞれ同一でも、異なっていても構わない。式中xは、1から60であり、好ましくは、1から20である。式中yは、1から5であり、好ましくは、1から2である。
また、疎水性官能基を持ったポリシルセスキオキサンとしては、無定形、ラダー型、かご型、又はその部分開裂構造体などが知られているシルセスキオキサンもあげられる。特に上記一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサン及び/又は、一般式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン部分開裂構造体で以下の置換基Rであるいずれかよりなることが好ましい。
一般式(1)および(2)中の置換基Rは、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、含芳香族置換基、含ビニル基であり単独、もしくは二種類以上組み合わせて使用しても良いが、必ず疎水性基である水素原子、炭素数1〜5の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、芳香族置換基、ビニル基を1つ以上含む。mは2以上で1000以下の整数であり、n/m比は0.01以上1.0以下(モル比)であり、(m+n)は4以上である。
ガラス、セラミック、金属などの親水性表面を有する基材の場合、親水性組成物と撥水性組成物との組み合わせは、基材の表面には極性基が表出しておりこれと共有結合や分子間力、化学結合する官能基、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、イソシアネート基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基、チオール基、シラノール基を有する1種類以上の親水性置換基(官能基)を有する化合物と1種類以上の撥水性組成物で構成される。
親水性組成物と撥水性組成物に架橋剤を加えて架橋することにより、3次元網目構造が構築され機械的特性や耐熱性が向上する。さらに、本発明の撥水撥油材料に他の紫外線吸収剤、熱戦吸収材、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などの機能性成分や着色のための顔料、染料を添加して併用することも可能である。
また、耐熱性を更に向上させる効果として、無定形、ラダー型、かご型、又はその部分開裂構造体などが知られているシルセスキオキサンを架橋剤として添加しても良い。特に上記一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサン及び/又は、一般式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン部分開裂構造体のいずれかよりなることが好ましい。
一般式(1)および(2)中の置換基Rは、水素原子、炭素数1〜5の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、含芳香族置換基、含ビニル基、含メタクリル基、含アクリル基、含エポキシ基、含ウレタン基であり単独、もしくは二種類以上組み合わせて使用しても良いが必ず反応基であるビニル基、メタクリル基、アクリル基、エポキシ基、ウレタン基を2つ以上含む。また、mは2以上で1000以下の整数であり、n/m比は0.01以上1.0以下(モル比)であり、(m+n)は4以上である。
架橋剤の組成比としては、全体量の0.1から30重量%であり、5から20重量%が好ましい。
NMR;Varian Unity 400 スペクトルメーター
GPC(ゲル濾過クロマトグラフィー);日本分光株式会社製 高速液体クロマトグラフィーシステム(昭和電工株式会社製 SEC用カラム(KF−804L,2本)を取り付けて測定。)
微小硬度計;島津株式会社製 島津ダイナミック超微小硬度計 DUH−211(測定圧子 稜間角 115°、ダイヤモンド 三角すい圧子を取り付けて測定。)
(籠型ポリシルセスキオキサン側鎖イソブチル/グリシジル基の合成)
玉付還流管、攪拌棒、温度計を備えた、1L容量スリ付三つ口フラスコを窒素置換・窒素気流下とした。これに0.1規定水酸化ナトリウム水溶液20g、テトラヒドロフラン600mLを入れ、機械攪拌で攪拌(200rpm)しつつ、室温でイソブチルトリメトキシシラン40g(240mmoL)および3−グリシジルトリメトキシシラン60g(240mmoL)を加えた。次いで反応系をサーモスタット付オイルバスで60℃に加熱し、3時間反応させた。反応後、室温まで冷却した後に、塩などの不溶物を濾過により除き、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去した後、更に減圧乾燥により留去し70gの生成物、一般式(1)中のRがイソブチル基とグリシジル基である籠型ポリシルセスキオキサンPSQ−Aを得た。
無色の液体。PSQ−A; 収量70g。収率70%。
このPSQ−Aをテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて分子量測定したところ、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)で1,800、分散度(Mw/Mn)は1.1であった。
また、1H−NMR(重クロロホルム、テトラメチルシラン内部基準)0.6〜0.8(4H)、1.0(6H)、1.7(2H)、1.9(1H)、2.6(1H)、2.8(1H)、3.2(1H)、3.5(3H)、3.7(2H)、29Si−NMR(重クロロホルム、テトラメチルシラン内部基準)−69、−65、−58。なお、29Si−NMRの測定結果から、シラノール基(SiOHを含むT2成分の比率は、10moL%であることがわかった。THFおよびトルエンに可溶。
親水性組成物であるジイソシアネート10質量部(B-830:三井化学ポリウレタン製)に対し、撥水性組成物として1.1当量の両末端アミン変性ポリシロキサン(KF−8010:信越化学工業製)と1.1当量の両末端水酸基変性ポリシロキサン(1,3−Bis(4−hydroxybutyl)tetramethyldisiloxane:東京化成工業製)を混合する。また、架橋成分:ノボラック樹脂0.6質量部(7重量%)(YDCN−700−2:東都化成製)、熱開始剤0.006質量部(ノボラック樹脂に対し1重量%)(サンエイドSI−80L:三新化学工業製)を混合し、25重量%になるようTHF溶液に溶解し、室温で12時間撹拌し熱硬化性組成物溶液とした。この溶液をガラス基板上にキャストし、60℃で3分乾燥した後、80℃で1時間加熱更に180℃で9時間加熱硬化し、厚さ5μmの淡黄色で透明な膜状硬化物を得た。
得られた膜状硬化体の接触角を測定し、Zisman法から算出した表面張力は15.8mN/mとなった。また、撥水性として水の接触角は101.2°、撥油性としてn−ヘキサデカンの接触角は36.8°であった。膜状硬化体の表面を走査型プローブ顕微鏡(セイコーインスツルメント、SPA400)の位相モードにより測定し、親水疎水部のイメージング処理を行う事で親水疎水分布の測定を行った。得られた位相モードイメージ像を図1の(a)に示す。また、図1の(b)に親水疎水部の黒白表示像示す。この図から、親水性ドメイン面積比率は31%であり、短軸長さは20から100nmであった。
紫外可視透過スペクトルの測定により、全可視光領域において透明性が維持されていることが確認された。紫外可視透過スペクトルチャートを図2に示した。ガラス成膜品について90%以上の透過率であった。
機械特性評価として、超微小硬度計による硬度及び弾性率測定を行い、マルテンス硬さが195(N/mm)、弾性率が4600(N/mm2)であった。
親水性組成物であるジイソシアネート10質量部(B-830:三井化学ポリウレタン製)に対し、撥水性組成物として、1.1当量の両末端アミン変性ポリシロキサン(KF−8010:信越化学工業製)と、1.1当量の両末端水酸基変性ポリシロキサン(1,3−Bis(4−hydroxybutyl)tetramethyldisiloxane:東京化成工業製)を混合する。また、架橋成分であり耐熱性効果のあるPSQ−A0.6質量部(7重量%)、熱開始剤0.006質量部(PSQに対し1重量%)(サンエイドSI−80L:三新化学工業製)を混合し、25重量%になるようTHF溶液に溶解し、室温で12時間撹拌し熱硬化性組成物溶液とした。この溶液をガラス基板上にキャストし、60℃で3分乾燥した後、80℃で1時間加熱更に180℃で9時間加熱硬化し、厚さ5μmの淡黄色で透明な膜状硬化物を得た。
親水性組成物であるジイソシアネート10質量部(B-830:三井化学ポリウレタン製)に対し、撥水性組成物として、1.1当量の両末端アミン変性ポリシロキサン(KF−8010:信越化学工業製)と、1.1当量の両末端水酸基変性ポリシロキサン(1,3−Bis(4−hydroxybutyl)tetramethyldisiloxane:東京化成工業製)を混合する。また、架橋成分であり耐熱性効果のあるPSQ−A0.6質量部(7重量%)、熱開始剤0.006質量部(PSQに対し1重量%)(サンエイドSI−80L:三新化学工業製)を混合し、25重量%になるようTHF溶液に溶解し、室温で4時間撹拌し熱硬化性組成物溶液とした。この溶液をガラス基板上にキャストし、60℃で3分乾燥した後、80℃で1時間加熱更に180℃で9時間加熱硬化し、厚さ5μmの実施例2と同様の方法で撹拌時間のみを4時間として淡黄色で透明な膜状硬化物を得た。
水の接触角は100°以上が得られ撥水性能が得られた。n−ヘキサデカンの接触角では35°以上が得られ撥油性能が得られた。
繊維製品は、繊維、布等の形態のいずれであってもよい。本発明の撥水撥油膜状硬化物で布やカーペットを処理する場合に、繊維または糸を表面処理剤で処理した後に布やカーペットを形成してもよいし、あるいは形成された布やカーペットを表面処理剤で処理してもよい。
Claims (2)
- フッ素及び炭素数5を超える長鎖アルキル基並びに無機酸化物及び金属を含まない撥水撥油膜状硬化物において、親水性ドメインが撥水性マトリックスの最表面に分散して形成され、前記親水性ドメイン面積が2から50%であり、前記親水性ドメイン形状が異方性を有し、その短軸長さが5から100nmであることを特徴とする撥水撥油膜状硬化物。
- 前記親水性ドメインは、極性を有し表面自由エネルギーを大きくする効果を有する反応により極性基の結合から形成されており、前記反応により極性基が結合したものとしては、ウレタン結合、ウレア結合およびエーテル結合のいずれか1つ以上であり、
前記撥水性マトリックスは、極性が低く表面自由エネルギーを小さくする効果を有する非極性基および/または反応により非極性基の結合から形成されており、前記非極性基を有する基としては、長鎖が炭素数5以下の脂肪族炭化水素基およびベンゼン環1つの芳香族炭化水素基のいずれか1つ以上の基であり、前記反応により非極性基が結合したものとしては、炭素−ケイ素結合およびシロキサン結合のいずれか1つ以上の結合であることを特徴とする請求項1に記載の撥水撥油膜状硬化物。
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