JP6262004B2 - 導光板 - Google Patents
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Description
他方、ポリスチレン系樹脂では、低い吸水率(約0.05%)を有するので、成形品の反り又は寸法変化という問題は無い。吸水性という観点では優れるポリスチレン系樹脂であるが、表面硬度は、アクリル系樹脂と比較してやや劣る。そのため、導光板として用いる際に積層する光学シート(例えば、拡散シート)と、運搬時などに擦れた時、表面に微細な傷がつくという問題が考えられる。
導光板表面の傷付きを改善する手段として、以下の特許文献1には、表面硬度を向上する以外に導光板の表面に不揮発性の潤滑剤を塗布する方法が提案されているが、必要量を均一に塗布する必要がある。過剰量を塗布すれば、光学シートの貼り付きによる画面内の輝度の不均一が生じ、また、均一な塗布ができなければ、同様に画面内の輝度の不均一の原因となる。
[1]スチレン系樹脂100質量部に対して、平均分子量200〜4000のポリエチレングリコールを0.1〜0.3質量部含有することを特徴とするスチレン系樹脂組成物からなる導光板。
<ポリスチレン系樹脂組成物>
前記したように、本発明の実施形態では、ポリスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂、及び平均分子量200〜4000のポリエチレングリコール、並びに所望により、高級脂肪酸及び/又は高級和脂肪族アルコールなど各種の添加剤を、特定割合で含む。
ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系単量体を主成分として(具体的には50質量%超で)含む樹脂である。ポリスチレン系樹脂を形成するために使用されるスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。また、ポリスチレン系樹脂としては、スチレンと共重合可能なコモノマーを、使用してもよい。スチレンと共重合可能なコモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;α−メチルスチレン、o−,m−,p−メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン等のスチレン以外の芳香族ビニル単量体類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジ脂肪酸無水物類;N−フェニルマレイミド等の不飽和ジ脂肪酸イミド類等が挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の態様においては、スチレン系単量体の貯蔵時に、4−t−ブチルカテコールを重合禁止剤として用いることが好ましい。
スチレン系単量体を含む重合原料のための重合装置としては、完全混合型、プラグフロー型、循環装置を備えたプラグフロー型等の装置のいずれも好適に用いることができる。これらの中でも、組成分布の均一性から完全混合型重合装置が好ましい。
本発明においては、導光板を構成するスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂100質量部に対して、平均分子量200〜4000のポリエチレングリコールを0.1〜0.5質量部含有することを特徴とする。
本発明の実施形態で用いるポリエチレングリコールの平均分子量は、200〜4000、好ましくは200〜2000、より好ましくは300〜1000である。平均分子量が200未満では、成形時など加熱するとガスを発生し、ロールや金型などを汚染するという問題がある。また、平均分子量が4000を超えるとスチレン系樹脂との相溶性の低下のため、光線透過率が低下するという問題がある。
ポリエチレングリコールの含有量としては、スチレン系樹脂100質量部に対して、0.1〜0.5質量部であり、好ましくは0.1〜0.3質量部である。ポリエチレングリコールの含有量が0.1質量部未満だと、傷付き性を改善しない虞があり、0.5質量部を超えると、ポリスチレングリコールの吸水性により成型品の寸法安定性が損なわれる虞れがある。
本発明の実施形態では、ポリスチレン系樹脂の製造時の、ポリスチレン系樹脂の回収工程の前後の任意の段階、又は、ポリスチレン系樹脂組成物を用いた押出加工、成形加工等を行う段階において、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリエチレングリコールに加え、各種の添加剤を系中に添加してもよい。好ましい態様において、ポリスチレン系樹脂組成物は、高級脂肪酸、高級脂肪族アルコール、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、マスキング剤、難燃剤、染料又は顔料、蛍光増白剤、並びに選択波長吸収剤から成る群から選択される少なくとも1つの添加剤を含むことができる。より好ましい態様において、ポリスチレン系樹脂組成物は、ポリエチレングリコールに加え、高級脂肪酸、高級脂肪族アルコール、リン系酸化防止剤、及びフェノール系酸化防止剤から成る群から選択される少なくとも1つの添加剤を含むことができる。好適な添加剤のより具体的な例を以下に説明する。
高級脂肪酸としては炭素数が12〜20の脂肪酸が挙げられ、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等である。
高級脂肪酸の含有量としては、スチレン系樹脂100質量部に対して0.1〜1.0質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部、より好ましくは、0.1〜0.3質量部である。高級脂肪酸の含有量が0.1質量部以上であれば、傷付き性が改善でき、また、1.0質量部以下であれば耐熱性や強度などの低下を抑えることができる。
高級脂肪族アルコールとしては、炭素数が6〜20の一価のアルコールが挙げられ、具体的にはオクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等である。
高級脂肪族アルコールの含有量としては、スチレン系樹脂100質量部に対して0.1〜1.0質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部、より好ましくは、0.1〜0.3質量部である。高級脂肪族アルコールの含有量が0.1質量部以上であれば、傷付き性が改善でき、1.0質量部以下であれば耐熱性や強度などの低下を抑えることができる。
リン系酸化防止剤は、分子中にリン原子を有する化合物を含む酸化防止剤である。リン系酸化防止剤は、高温下で劣化の原因となるヒドロペルオキシドを還元することで安定化するため、比較的短い波長(例えば、波長420〜500nm)の光の透過率の向上に寄与し、特に薄黄色着色の低減に寄与する。リン系酸化防止剤としては、例えば、アルキルホスファイト類、アルキルアリールホスファイト類、アリールホスファイト類が挙げられ、工業的には、(株)ADEKA製の、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112等が入手可能である。これらの中でも、下記構造式(I):
フェノール系酸化防止剤は、分子中にヒンダードフェノール構造を含む酸化防止剤である。フェノール系酸化防止剤は、自動酸化において発生するペルオキシラジカルを捕捉し、準安定なヒドロペルオキシドとすることで、連鎖的な劣化の進行を抑制する。さらにヒドロペルオキシドは、リン系酸化防止剤により還元されて安定化される。このことに起因して、高温曝露時の光線透過率の保持率の向上に寄与し、特に高温環境での使用時の薄黄色着色の低減に寄与する。フェノール系酸化防止剤として、工業的には、BASFジャパン(株)製の、イルガノックス1010、イルガノックス1076等が入手可能である。これらの中でも、下記構造式(II):
また、同一分子内にフォスファイト構造も併せ持つフェノール系酸化防止剤として、住友化学(株)製スミライザーGP(6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン)も好適に用いることができる。
尚、本開示における、ポリスチレン系樹脂組成物中のリン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の含有量は、ガスクロマトグラフィーを用いて測定する。
導光板に適したポリスチレン系樹脂組成物は、光源から発生する紫外線による着色を防止する目的で、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含むことができる。紫外線吸収剤としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2−(1−アリールアルキデン)マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。また、光安定剤としては、例えば、ヒンダートアミン系光安定剤等が挙げられる。ヒンダートアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパケート、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等が挙げられる。紫外線吸収剤及び光安定剤は、それぞれ単独若しくは複数での使用が可能であり、その添加量は、紫外線吸収剤と光安定剤の総和として、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、0.02質量部〜2.0質量部であることが好ましく、0.1質量部〜1.5質量部であることがより好ましい。
滑剤の例としては、流動パラフィン等の脂肪族炭化水素系滑剤等が挙げられる。滑剤の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部である。
帯電防止剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤や芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の高分子界面活性剤等が挙げられる。帯電防止剤の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5〜25質量部である。
更に、導光板に適したスチレン系樹脂組成物には、必要に応じて、蛍光増白剤、ブルーイング剤等のマスキング剤を任意に使用することが可能である。
本発明の実施形態では、導光板は、上述のポリスチレン系樹脂組成物を成形して得られるものである。成形の方法としては既知の方法を用いることができ、シート成形押出機で成形することによりシート状成形体を得る方法、又は圧縮成形、射出成形等により、所望の形状の成形体を得る方法等が挙げられる。
尚、各実施例、比較例で用いた評価、及び試験方法は次の通りであった。
組成物(ペレット、成型品など)1gをメチルエチルケトン20mlに十分溶解した後、メタノールを5ml滴下し、約20分間攪拌した。遠心分離によって分離した上澄み液をガスクロマトグラフィー(GC)にて測定した。濃度の決定には、ステアリン酸、ステアリルアルコール、それぞれの酸化防止剤について、予め作成した検量線を用いた。
<GC測定条件>
GC装置 :島津製作所GC−2010
カラム :DB−1(0.25mmi.d.×30m)液相厚0.10mm
カラム温度:240℃(1min保持)→(10℃/min昇温)→320℃(5min保持)合計14min
注入口温度:320℃
注入法 :スプリット法(スプリット比1:5)
試料量 :1μL
図1を参照して、押出シートの作製手順を説明する。
実施例、比較例に記載のスチレン系樹脂組成物を用いて、押出機1(スクリュー径50mmΦ、L/D=32、単軸)にギアポンプ2を連結し、Tダイ3、艶付けロール4(直径300mm)を用いる常法によりシート成形を行った。シート押出時の樹脂温度は260℃に設定し、艶付けロール温度は、85〜95℃に温度調節した。シート押出速度、Tダイ吐出口と艶付けロールの間隔、及び回転速度を調整し、シート幅240mm、厚み2mmの押出シート(導光原板)を得た。尚、本シートを切出し、端面研磨加工、印刷などの処理を施すことで、導光板が得られる。
図2を参照して、成形品表面の傷付き抑制効果の評価手順を説明する。
押出成形により作製したポリスチレンシートから、PS試験片7(長さ120mm、幅60mm、厚さ2mm)を切り出し、そのPS試験片7を枠5の中に固定し、長さのみがPS試験片よりも2mm短い液晶TV用拡散シート6(長さ118mm、幅60mm、厚さ3mm)を載せて、長さ方向に振とう回数200往復/分、振とう距離20mmで振とうした後、拡散シート6を取り除き、PS試験片7の表面の状態を目視にて確認し、以下の評価基準に基づき評価した:
◎:傷付きなし
○:微細な傷が数本ある
△:微細な傷が十数本ある
×:微細な傷が数十本ある
吸水による成形品の寸法変化を、片面のみから吸水せしめることにより、成形品の反りにより評価する。
押出成形により作製したポリスチレンシートから、PS試験片(長さ300mm、幅20mm、厚さ2mm)を切り出し、その片面に、アルミ箔を貼り付けた状態で、温度60℃、湿度95%RHで24時間暴露したときの試験片の反り量(単位:mm)を測定した。
スチレン85質量%とエチルベンゼン15質量%の混合液100質量部に対し、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.05質量部を添加した重合液を5.4リットルの完全混合型反応器に0.70リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を101℃に調整した。得られた溶液を引き続き、攪拌器を備え3ゾーンで温度コントロール可能な3.0リットルの層流型反応器に連続的に仕込んだ。層流型反応器の温度を113℃/121℃/128℃に調整した。以上により重合体溶液を得た。
得られた重合体溶液を2段ベント付き脱揮押出機に連続的に供給し、押出機温度225℃、1段ベント及び2段ベントの真空度15torrで、未反応単量体及び溶媒を回収した後、添加剤フィード口からリン系酸化防止剤(亜リン酸トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル、商品名:アデカスタブ2112)、フェノール系酸化防止剤(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、商品名:イルガノックス1076)、ポリエチレングリコール300(商品名、平均分子量300、和光純薬工業(株)製)を重合体100質量部に対して、それぞれ0.05、0.05、0.15質量部の濃度になるように添加して、スチレン系樹脂組成物を得た。単量体の重合率は、質量収量から68%と算出された。
ポリエチレングリコール300の代わりに、ポリエチレングリコール400(商品名、平均分子量400、和光純薬工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
ポリエチレングリコール300の代わりに、ポリエチレングリコール1000(商品名、平均分子量1000、和光純薬工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
ポリエチレングリコール300の代わりに、ポリエチレングリコール2000(商品名、平均分子量2000、和光純薬工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
ポリエチレングリコール300を0.3質量部用いた以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
ポリエチレングリコール300を0.5質量部用いた以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
ポリエチレングリコール300と合わせて、ステアリン酸(商品名NAA−175、日油(株)製)0.30質量部を用いた以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
ポリエチレングリコール300と合わせて、ステアリルアルコール(商品名NAA−45、日油(株)製)0.30質量部を用いた以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
ポリエチレングリコール300用いなかった以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
ポリエチレングリコール300を0.05質量部用いた以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
ポリエチレングリコール300を1.00質量部用いた以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
ポリエチレングリコール300の代わりに、ステアリン酸(商品名NAA−175、日油(株)製)0.30質量部を用いた以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
ポリエチレングリコール300の代わりに、ステアリルアルコール(商品名NAA−45、日油(株)製)0.30質量部を用いた以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を得た。
2 ギアポンプ
3 Tダイ
4 艶付けロール
5 枠
6 液晶TV用拡散シート
7 PS試験片
Claims (3)
- スチレン系樹脂100質量部に対して、平均分子量200〜4000のポリエチレングリコールを0.1〜0.3質量部含有することを特徴とするスチレン系樹脂組成物からなる導光板。
- 前記スチレン系樹脂中に高級脂肪酸及び/又は高級脂肪族アルコールを0.1〜1.0質量部さらに含有する、請求項1に記載の導光板。
- 前記スチレン系樹脂中にリン系酸化防止剤0.02〜0.2質量部、及びフェノール系酸化防止剤0.02〜0.2質量部をさらに含有する、請求項1又は2に記載の導光板。
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