以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる自動分析装置を説明する。
図1は、本実施形態に係る自動分析装置の分析機構の構造を示す図である。図1に示すように、自動分析装置の筐体には、反応ディスク11、サンプルディスク13、第1試薬庫15、第2試薬庫17、サンプルアーム19―1、サンプルプローブ21―1、第1試薬アーム19―2、第1試薬プローブ21―2、第2試薬アーム19―3、第2試薬プローブ21―3、撹拌機構23、測光機構25、及び洗浄機構27等の分析機構が搭載されている。
反応ディスク11は、環状に配列された複数の反応管31を保持する。反応ディスク11は、既定の時間間隔で回動と停止とを交互に繰り返す。反応管31は、例えば、ガラスにより形成されている。サンプルディスク13は、反応ディスク11の近傍に配置されている。サンプルディスク13は、検体が収容された検体容器33を保持する。サンプルディスク13は、分注対象の検体が収容された検体容器33が検体吸入位置に配置されるように回動する。検体容器33には検体識別情報が記されたラベルが貼り付けられている。検体識別情報としては、例えば、患者番号や測定項目を含む。第1試薬庫15は、検体の測定項目に選択的に反応する第1試薬が収容された複数の第1試薬ボトル35を保持する。第1試薬庫15は、分注対象の第1試薬が収容された第1試薬ボトル35が第1試薬吸入位置に配置されるように回動する。第2試薬庫17は、反応ディスク11の近傍に配置される。第2試薬庫17は、第1試薬に対応する第2試薬が収容された複数の第2試薬ボトル37を保持する。第2試薬庫17は、分注対象の第2試薬が収容された第2試薬ボトル37が第2試薬吸入位置に配置されるように回動する。
反応ディスク11とサンプルディスク13との間にはサンプルアーム19―1が配置される。サンプルアーム19―1の先端には、サンプルプローブ21―1が取り付けられている。サンプルアーム19―1は、サンプルプローブ21―1を上下動可能に支持している。また、サンプルアーム19―1は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能にサンプルプローブ21―1を支持している。サンプルプローブ21―1の回動軌跡は、サンプルディスク13上の検体吸入位置や反応ディスク11上の検体吐出位置を通過する。サンプルプローブ21―1は、サンプルディスク13上の検体吸入位置に配置されている検体容器33から検体を吸入し、反応ディスク11上の検体吐出位置に配置されている反応管31に検体を吐出する。
反応ディスク11の外周近傍には第1試薬アーム19―2が配置される。第1試薬アーム19―2の先端には第1試薬プローブ21―2が取り付けられている。第1試薬アーム19―2は、第1試薬プローブ21―2を上下動可能に支持する。また、第1試薬アーム19―2は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能に第1試薬プローブ21―2を支持している。第1試薬プローブ21―2の回動軌跡は、第1試薬庫15上の第1試薬吸入位置と反応ディスク11上の第1試薬吐出位置とを通る。第1試薬プローブ21―2は、第1試薬庫15上の第1試薬吸入位置に配置されている第1試薬ボトル35から第1試薬を吸入し、反応ディスク11上の第1試薬吐出位置に配置されている反応管31に第1試薬を吐出する。
反応ディスク11の外周近傍には第2試薬アーム19―3が配置される。第2試薬アーム19―3の先端には第2試薬プローブ21―3が取り付けられている。第2試薬アーム19―3は、第2試薬プローブ21―3を上下動可能に支持する。また、第2試薬アーム19―3は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能に第2試薬プローブ21―3を支持している。第2試薬プローブ21―3の回動軌跡は、第2試薬庫17上の第2試薬吸入位置と反応ディスク11上の第2試薬吐出位置とを通る。第2試薬プローブ21―3は、第2試薬庫17上の第2試薬吸入位置に配置されている第2試薬ボトル37から第2試薬を吸入し、反応ディスク11上の第2試薬吐出位置に配置されている反応管31に第2試薬を吐出する。
反応ディスク11の外周近傍には撹拌機構23が配置される。撹拌機構23は撹拌子23sを装備している。撹拌機構23は、撹拌子23sを上下動可能に支持する。撹拌機構23は撹拌子23sにより、反応ディスク11上の撹拌位置に配置された反応管31内の検体と第1試薬との混合液、または、検体と第1試薬と第2試薬との混合液を攪拌する。以下、これら混合液を反応液と呼ぶことにする。
図1に示すように、筐体内部の反応ディスク近傍には測光機構25が設けられている。具体的には、測光機構25は、光源部と光検出部とを有している。光源部は、反応ディスク11内の測光位置に向けて光を照射する。光源部には複数の発光ダイオード(LED:light emission diode)が用いられている。光検出部は、光源部から照射され反応管31及び反応液を透過した光を検出する。光検出部は、検出された光の強度に応じた出力値を有する出力信号を生成する。出力信号は吸光度や測定項目の計測値等の計算に用いられる。光源部の詳細については後述する。
反応ディスク11の外周には洗浄機構27が設けられている。洗浄機構27は、洗浄ノズルと乾燥ノズルとを搭載している。洗浄機構27は、反応ディスク11の洗浄位置にある反応管31を洗浄ノズルで洗浄し、乾燥ノズルで乾燥する。
本実施形態に係る自動分析装置は、光源にLEDを採用したうえで、低コスト化を実現するための工夫を測光系に施している。以下、本実施形態に係る測光系について詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る測光系に係る機能ブロックを示す図である。図2に示すように、本実施形態に係る自動分析装置は、システム制御部51を中枢として、ラベル読取部53、波長テーブル記憶部55、発光波長決定部57、分析機構制御部59、機構駆動部61、光源切替部63、信号処理部65、データ処理部67、表示69部、入力部71、及び主記憶部73を有している。
ラベル読取部53は、検体容器に貼り付けられたラベルが示す検体識別情報を読み取る。具体的には、ラベルには、一次元コードや二次元コード等のコードに符号化された検体識別情報が印刷されている。ラベル読取部53は、コードを読み取る読取器により検体容器33に貼り付けられたラベルのコードを光学的に読み取り、読み取ったコードを検体識別情報に復号する。読取器は、例えば、サンプルディスク13内の検体吸入位置の近傍に設けられる。検体識別情報は、検体吸入位置に配置された検体容器33に収容された検体の測定項目を含む。
波長テーブル記憶部55は、複数の測定項目の各々に発光波長の識別子(以下、波長識別子)を関連付けたLUT(look up table)等を記憶する。以下、測定項目と波長識別子とを関連付けたLUTを波長テーブルと呼ぶことにする。なお上記の関連付けはLUTに規定されるのみに限定されず、データベースに規定されても良い。
図3は、波長テーブルの一例を示す図である。図3に示すように、波長テーブルは、複数の測定項目の各々に波長識別子を関連付けている。各測定項目には当該測定項目に必要な光の波長が定められている。発光波長は、後述のLEDランプにより発生される光の波長を示す。例えば、測定項目Aには発光波長λAの波長識別子が関連付けられ、測定項目Bには発光波長λBの波長識別子が関連付けられ、測定項目Cには発光波長λCの波長識別子が関連付けられている。なお発光波長として単一の波長が規定されていても良いし、波長帯域が規定されても良い。波長テーブルは、発光波長決定部57により利用される。
発光波長決定部57は、測定対象の測定項目について波長テーブルを利用して発光波長を決定する。より詳細には、発光波長決定部57は、ラベル読取部53により読み取られた測定項目に波長テーブルを適用し、当該測定項目に関連付けられた波長識別子を特定し、特定された波長識別子に対応する発光波長を決定する。なお発光波長の決定対象は、ラベル読取部53により読み取られた測定項目のみに限定されない。例えば、発光波長決定部57は、オペレータにより入力部71を介して入力された測定項目について発光波長を決定しても良い。
分析機構制御部59は、自動分析装置に搭載される複数の分析機構を同期的に制御する。本実施形態の測光系に係る分析機構としては反応ディスク11と測光機構25とが挙げられる。反応ディスク11は、複数の反応管31を回転中心軸回りに保持している。反応ディスク11はモータ等の機構駆動部61を有している。機構駆動部61は、分析機構制御部59からの駆動信号に従って反応ディスク11を回転する。反応ディスク11が回転することにより、複数の反応管31が測光系内の所定位置(測光位置)を順番に通過する。測光機構25は、光源部251と光検出部253とを有する。光源部251は、発光波長が異なる複数のLEDランプを有する。光源切替部63は、分析機構制御部59からの制御に従うタイミングで、光源部251に含まれる複数のLEDランプの発光と消光とを個別に切り替える。光検出部253は、光源部251から発生され、測光位置を通過した測光対象の反応管を通過する光を検出し、検出された光の強度に応じた出力信号を発生する。光検出部253は、一次元又は二次元の光検出器である。発生された出力信号は、信号処理部65に供給される。信号処理部65は、光検出部253から検出信号を読み出し、光検出部253からの出力信号にA/D変換を施して出力信号をデジタルデータに変換する。以下、デジタルデータを測光データと呼ぶことにする。測光データは、データ解析部67に供給される。データ解析部67は、信号処理部65からの測光データに基づいて吸光度を計算し、吸光度に基づいて測定項目に関する項目値を計算する。
分析機構制御部59は、機構駆動部61と光源切替部63とを同期的に制御し、測光対象の反応管31の測光位置への搬送タイミングに同期して複数のLEDランプの点灯と消光とを個別に切り替える。具体的には、分析機構制御部59は、機構駆動部61を制御し、複数の反応管31が測光位置を順番に通過するように反応ディスク11を間欠的に回転させる。分析機構制御部59は、反応ディスク11の回転中、光源切替部63を制御し、測光対象の反応管31が測光位置を通過する際、複数のLEDランプのうちの、測光対象の反応管31に含まれる検体の測定項目のための発光波長に対応するLEDランプに限定して点灯させる。
表示部69は、種々の情報を表示デバイスに表示する。例えば、表示部69は、波長テーブルの設定画面を表示したり、吸光度や項目値等を表示したりする。表示デバイスとしては、例えば、CRT(cathode ray tube)ディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示デバイスを有する。
入力部71は、オペレータからの入力機器を介した各種指令や情報入力を受け付ける。入力機器としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチボタン等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。
主記憶部73は、種々の情報を記憶する記憶装置である。例えば、主記憶部73は、種々の設定パラメータや自動分析装置の動作プログラム等を記憶している。
システム制御部51は、本実施形態に係る自動分析装置の中枢として機能する。システム制御部51は、主記憶部73から動作プログラムを読み出し、読み出した動作プログラムに従って各部を制御する。
次に、本実施形態に係わる自動分析装置の詳細について説明する。
図4は、本実施形態に係る測光機構25の詳細な模式的に示す図である。図4に示すように、測光機構25は、光源部251を有する。光源部251は、発光波長が異なる複数のLEDランプを有する。反応ディスク11は、分析機構制御部59からの駆動信号の供給を受けて、複数の反応管31を、測光系内の所定位置(測光位置)PPに順番に通過させる。光源部251と測光位置PPとの間の光路には、スリット255とレンズ257とが設けられている。スリット255は、光源部251からの光の光量を制限する。レンズ257は、スリット255からの光を集光する。レンズ257により集光された光は、反応管31や反応官31内の反応液を透過する。
測光位置PPの反応管31や反応液を透過した光は、レンズ259、スリット261、及び回折格子263を介して光検出器253に受光される。レンズ259は、反応管31や反応管31内の反応液を透過した光を集光する。スリット261は、レンズ259により集光された光の光量を制限する。回折格子263は、スリット261からの光を分光する光学機器である。回折格子263は、例えば、鏡面に等間隔に形成された複数の溝(格子線)が形成された凹面鏡により構成される。回折格子263に照射された光は、回折格子263に形成された格子線により空間的に分散される。光検出部253は、回折格子263により分光された光を受光し、受光された光の強度に応じた出力信号を発生する。光検出部220は、例えば、回折格子263からの光の光路に交わって一次元状又は二次元状に配列される複数の受光素子を有している。各受光素子は、その空間的配置位置に応じた波長帯域に属する光線を受光し、受光された光線の強度に応じたアナログの電気信号を発生する。例えば、受光素子は、フォトダイオードにより実現される。
次に、本実施形態に係る光源部251の具体的な構造について説明する。自動分析装置の測光系に用いられる光源としては、全ての測定項目の測定に必要な種類(例えば、16種類)の波長の光を発光可能であること、十分な照度を有すること、点光源又は線光源であることが要求される。本実施形態に係る光源部251は、放物線柱面鏡型と回転放物面鏡型およびこれらの組み合わせ型とを有する。放物線柱面鏡型の光源部は線光源を成し、回転放物面鏡型の光源部は点光源を成す。
図5は、回転放物面鏡型の光源部251Aの模式的な外観を示す図である。図6は、光源部251Aの回転軸RA含む回転中心断面図である。図5及び図6に示すように、放物線柱面鏡型の光源部251Aは、略円形状の支持面体81Aを有している。支持面体81は、遮光性を有する構造物である。支持面体81には円形状の開口Ap1が形成されている。開口Ap1は、支持面体81の略中央に形成される。支持面体81Aの片面には、複数の発光波長に対応する複数のLEDランプ83が取り付けられている。支持面体81Aには回転放物面鏡85が取り付けられている。各LEDランプ83から出射される指向性を有する光束の中心軸である光軸Rlが支持面体81の開口Ap1に点状の焦点Pfを形成するように支持面体81Aと放物線柱面鏡85Aとが位置決めされる。これにより回転放物面鏡型の光源部251Aは点光源として機能する。
図7は、LEDランプ83の構造を模式的に示す図である。図7に示すように、LEDランプ83は、LED831、蛍光体833、及び集光測光系835を有している。LED831は、蛍光体833を励起することのできるエネルギーを有する波長の光を発生する。蛍光体833は、LED831から発生された励起光により励起され、当該蛍光体833の物質に応じた発光波長を有する蛍光を発生する。LEDランプ83には、測光用の16種類の発光波長のうちの特定の発光波長を有する蛍光を発生可能な1つの蛍光体833が設けられる。集光測光系835は、蛍光体833から発生された蛍光を集光する。集光測光系835により集光された蛍光は外部に指向性を持って放出される。
図8は、回転放物面鏡型の光源部251Aの支持面体81Aにおける複数のLEDランプ83の配置例を示す図である。図8に示すように、支持面体81Aの支持面には、開口Ap1を除き、複数の発光波長にそれぞれ対応する複数のLEDランプ83が設けられる。図8に示す1から16の番号は、16種類の波長のうちの何れか1種類の波長を示している。図8に示すように、複数のLEDランプ83は、開口Ap1から略同一の距離に16種の発光波長のLEDランプ83が配列されるように配置される。また、支持面体81Aには、同一の発光波長のLEDランプ83が空間的に局在しないよう、16種の発光波長のLEDランプ83が分散して配列されると良い。
ここで、異なる発光波長のLEDランプ83が空間的に局在しないように配列されることの効果について説明する。例えば、図6において、支持面体81Aの開口Ap1に対して左半分に波長AのLEDランプランプが局在して配置され、他の波長BのLEDランプが右半分に配置された場合を考える。この場合、波長Aの出射方向は軸RAに対して右側、波長Bの出射方向は軸RAに対して左側に局在することになる。このような配置の場合、図4に示す光学系において、例えば、光学系257の波長Aの光が上側の光路(光路A)を通り、波長Bの光が下側の光路(光路B)を通ることに相当する。両者とも反応管31内で焦点を結ぶ、すなわち、同一の一点を通過するように光学系が設計されているが、焦点から少し離れた反応管31内では、光路Aと光路Bとがわずかに離れた部分を通過する。反応管31内にある反応液が反応管内で一様であるように撹拌がなされるので、このような場合は、波長Aの光路Aと波長Bの光路Bとは反応液の異なる部分を通過しても問題ない。しかし撹拌が十分でない場合、波長Aと波長Bに対する反応液の吸光特性の差異は、波長の違いによるものに加えて、反応液の非一様性に起因するものが含まれてしまう。このような不都合を避けるため、波長Aの光と波長Bの光とは略同一の光路を通ることが望ましい。このため、同一の発光波長のLEDランプ83は空間的に局在しないように配列されると良い。
次に、放物線柱面鏡型の光源部251Bの構造について説明する。図9は、放物線柱面鏡型の光源部251Bの模式的な外観を示す図である。図10は、図9に示す光源部251Bの長軸RBに交差する横断面図である。図9及び図10に示すように、光源部251Bは、長方形状を有する支持面体81Bを有している。支持面体81Bには長方形状の開口(スリット)Ap2が形成されている。開口Ap2は、支持面体81Bの短軸RC方向の略中央に形成される。支持面体81Bの片面には、複数の発光波長に対応する複数のLEDランプ83が取り付けられている。支持面体81Bには放物線柱面鏡85Bが取り付けられている。各LEDランプ83からの光軸Rlが開口Ap2に線状の焦点Pfを形成さするように支持面体81Bと放物線柱面鏡85Bとが位置決めされる。これにより放物線柱面鏡型の光源部251Bは線光源として機能する。
図11は、放物線柱面鏡型の光源部251Bの支持面体81Bにおける複数のLEDランプ83の配置例を示す図である。図11に示すように、支持面体81Bの支持面には、開口Ap2を除き、複数の発光波長にそれぞれ対応する複数のLEDランプ83が設けられる。図11に示すように、複数のLEDランプ81は、開口Ap2から略同一の距離に16種の発光波長のLEDランプ83が配列されるように配置される。また、支持面体81Bには、同一の発光波長のLEDランプ83が空間的に局在しないよう、16種の発光波長のLEDランプ83が分散して配列されると良い。
次に、放物線柱面鏡と回転放物面鏡とを組み合わせた型の光源部251Cの構造について説明する。図12Aは、光源部251Cの模式的な外観を示す図である。また、図12Bは、光源部251Cを側方からみた断面図であり、LEDから出射される光軸上の光の光路を示している。光源部251Cは、放物線柱面鏡の両端に回転放物面鏡を、回転軸を含む平面で1/2に分割したものを接続した形状を有する。図13は、図12Aの支持面体81Cにおける複数のLEDランプ83の配置例を示す図である。図12A、図12B、及び図13に示すように、光源部251Cは、長方形とその両端部に半円形の形状を有する支持面体81Cを有している。支持面体81Cには長方形状の開口(スリット)Ap3が形成されている。開口Ap3は、支持面体81Cの短軸RC方向の略中央に形成される。また開口Ap3は、支持面体81Cの長軸方向に関しては、放物線柱面鏡の位置に相当する支持面体81C部分に形成される。支持面体81Cの片面には、複数の発光波長に対応する複数のLEDランプ83が取り付けられている。支持面体81Cには放物線柱面とその両端に回転放物面を組み合わせた鏡85Cが取り付けられている。各LEDランプ83からの光軸Rlが開口Ap3に線状の焦点Pfを形成させるように支持面体81Cと放物線柱面鏡85Cとが位置決めされる。これにより光源部251Cは、線光源として機能する。これにより、開口Ap3から放射される光の照度を高めることが可能となる。
次に、分析機構制御部59による制御のもとに行われる光源部251の点灯制御について説明する。概略的には、分析機構制御部59は、まず、発光波長決定部57により決定された発光波長を利用して、測定対象の測定項目の各々についてLEDランプ83の点灯タイミングを規定するタイムテーブル(以下、点灯タイムテーブルと呼ぶ)を作成する。点灯タイムテーブルは、複数のLEDランプ83の各々について発光時刻及び消灯時刻が時系列に記録されたテーブルである。そして分析機構制御部59は、作成された点灯タイムテーブルに従って光源切替部63を制御して、複数の反応管31の各々が測光位置を通過する際、各反応管31に収容された検体の測定項目のための発光波長に対応するLEDランプ83に限定して発光させる。
まずは、波長テーブル記憶部55に記憶されている波長テーブルの詳細について説明する。図14は、波長テーブル記憶部55に記憶されている波長テーブルの詳細を示す図である。図14に示すように、各測定項目には波長識別子が関連づけられている。通常、測定項目の測定には、測定に直接的に寄与する波長(以下、測定波長と呼ぶ)を有する光の他に、測定系の不安定性を除去するために用いられる波長(以下、参照波長と呼ぶ)を有する光が用いられる。測定波長を有する光線は、検査液に含まれる試薬の影響を受け減衰する。参照波長を有する光線は、試薬の影響を受けずに検体を透過する。また、測定波長と参照波長との各々は自由スペクトル領域(free spectral range)と重畳領域との各々に区分されている。自由スペクトル領域は短波長帯域であり、重畳領域は長波長帯域である。例えば、測定項目の測定波長は、λ11、λ12、λ21、及びλ22である。このうちの自由スペクトル領域に属する波長は、λ11とλ12とであり、重畳領域に属する波長はλ21とλ22とである。参照項目の測定波長は、λ13、λ14、λ23、及びλ24である。このうちの自由スペクトル領域に属する波長は、λ13とλ14とであり、重畳領域に属する波長はλ23とλ24とである。なおλ1mは自由スペクトル領域に属する発光波長であることを示し、λ2mは重畳領域に属する発光波長であることを示す。すなわち、λnmのnは回折光の次数を表す。
ここで、自由スペクトル領域と重畳領域とについて説明する。図15は、回折格子による回折光の自由スペクトル領域と重畳領域と説明するための図である。広波長帯域の光が回折格子に入射した場合、隣り合う次数の回折光の進行方向が一部重畳する波長が存在する。重畳しない波長帯域は回折格子の自由スペクトル領域と呼ばれている。重畳する波長帯域を重畳領域と呼ぶことにする。m次回折光で波長λ1からλ2までの光を使用する場合、以下の(1)式に示す条件式を満足すれば、スペクトルの重畳を防止することができる。なお測光には一次回折光が用いられる。
λ1−λ2=λ/m λ1<λ2 ・・・(1)
例えば、ゼロ次回折光に350nmから長波長帯域側の波長が含まれる場合、一次回折光と二次回折光とにおいては、350nmから700nmまでの波長帯域はスペクトルが重畳することなく分光することができる。この350nmから700nmまでの波長帯域が自由スペクトル領域である。ゼロ次回折光に350nmから800nmまでの波長帯域が含まれる場合、700nmから800nmまでの波長帯域では、350nmから400nmまでの波長帯域の二次回折光が重畳する。すなわち、自由スペクトル領域よりも長波長帯域が重畳領域であり、この波長領域においては、次数以外のスペクトルを除去する必要がある。上記の例でいえば、350nmから400nmまでの波長帯域の二次回折光を除去する必要がある。
図14の測定項目Aの測定波長として示したλ11、λ12、λ21、及びλ22は、λ11及びλ12が自由スペクトル領域の波長であり、λ21及びλ22がλ11及びλ12の二次回折光に重なる、すなわち重畳領域の波長である例を示している。図14の測定項目B及び測定項目Cについても同様であり、測定項目A、測定項目B、及び測定項目Cの参照波長についても同様な例を示している。
従来においては、光検出器の前面に色フィルタを配置することにより、短波長光の二次回折光の長波長光の一次回折光への重畳領域に属する光を除去していた。上記の例の場合、350nmから400nmまでの波長帯域に属する二次回折光を除去していた。しかしながら、色フィルタを配置することにより、測定対象である700nmから800nmまでの波長帯域に属する光も減衰してしまい、S/N比が劣化してしまう。本実施形態は後述の点灯制御により色フィルタを用いることなく、二次回折光の一次回折光への重畳を防止することが可能となる。
図16は、図14の測定項目Aと測定項目Bとについての点灯タイムテーブルの一例を示す図である。なお、図16の反応管Aが測定項目Aに対応し、反応管Bが測定項目Bに対応するものとする。また、反応管Aの次に反応管Bが測光位置を通過するものとする。グループGr1は自由スペクトル領域に属する波長のグループであり、グループGr2は重畳領域に属する波長のグループである。分析機構制御部59は、点灯タイミングの決定ルールに従って各発光波長のLEDランプの点灯時刻タイミング及び消灯タイミングを反応管毎に決定する。具体的には、決定ルールとしては、以下の4つが挙げられる。
条件1.反応管31が測光位置を通過している期間に限定して光を照射する。換言すれば、反応管31が測光位置を通過している期間に限定してLEDランプ83を点灯する。反応管31の測光位置の通過期間に限定してLEDランプ83を点灯することにより、LEDランプ83の点灯に係る消費電力を低減させることが可能となる。
条件2.自由スペクトル領域に属する発光波長のLEDランプ83と重畳領域に属する発光波長のLEDランプ83とは異なる時刻に点灯される。例えば、図17に示すように、自由スペクトル領域に属する波長λ11のLEDランプ83と重畳領域に属する波長λ21のLEDランプ83とが同時に点灯した場合、波長λ11の二次回折光が波長λ21の一次回折光に混入してしまう。この場合、波長λ21の一次回折光の検出結果が波長λ11の二次回折光に起因するノイズを含んでしまう。上記の通り、色フィルタを用いることにより、一次回折光と二次回折光との重畳を防止することが可能であるが、色フィルタの配置によりS/N比が劣化してしまう。そのため、上記2の条件を課している。この条件を満足する場合、図18に示すように、自由スペクトル領域に属する波長λ11の二次回折光と重畳領域に属する波長λ21の一次回折光とは異なる時刻に光検出器253に到達する。従って色フィルタを用いることなく、自由スペクトル領域に属する二次回折光と重畳領域に属する一次回折光との重畳を避けることができる。従って、図16に示すように、波長λ11に対応するLEDランプと波長λ21に対応するLEDランプとは異なる時刻に点灯される。
条件3.測定波長のLEDランプと当該測定波長に対応する参照波長のLEDランプとは同時刻に点灯される。例えば、波長λ11は測定波長であり、波長λ13は参照波長である。従って、図16に示すように、波長λ11に対応するLEDランプと波長λ13に対応するLEDランプとは同時刻に点灯される。
条件4.波長数的に隣り合う二つの発光波長のLEDランプは、異なる時刻に点灯される。換言すれば、同時刻に点灯される複数のLEDランプは、波長数的に離間する複数の発光波長の光を発生する。例えば、波長λ15と波長λ16とは波長数的に隣り合い、波長λ15と波長λ17とは波長数的に離間している。例えば、図19に示すように、波長数的に隣り合う波長λ15の一次回折光と波長λ16の一次回折光とは空間的に隣接する光路を通り光検出器に到達する。従って、波長数的に隣り合う波長λ15のLEDランプと波長λ16のLEDランプとが同時刻に点灯した場合、当該2つの波長の一次回折光が光検出器において空間的に隣接しそれぞれの波長の光が空間的に広がりを持つために、2つの波長が光検出器上で重畳して入射しまうことがある。このような波長数的に隣り合う二つの波長の光線の光検出器における隣接による問題を防止するには、回折格子と光検出器との間の距離を長くすること、回折格子の波長分解能を向上させること、または空間分解能の高い検出素子を使用することが必要である。しかしながら、回折格子と光検出器との間の距離を長くすると測光系の規模が大きくなってしまる。また、回折格子の波長分解能を向上させるには、回折格子に形成された溝の総本数を増やさなければならず、回折格子の製造コストが増加してしまう。さらに、空間分解能の高い検出素子を使用するとそのコストが増加してしまう。そのため、本実施形態において上記4の条件を課している。この条件を満足する場合、図20に示すように、同時に入射する波長数的に離間する波長λ15のLEDランプと波長λ17のLEDランプとが同時刻に点灯し、波長λ16のLEDランプと波長λ18のLEDランプとが同時刻に点灯する。この場合、例えば、波長λ15の一次回折光と波長λ17の一次回折光とは光検出器253において空間的に離間する領域に入射する。従って回折格子263と光検出器253との間の距離を長くすること、回折格子の波長分解能を向上させること、空間分解能の高い検出素子を使用することの何れかあるいは全ての実施することなしに、光検出器253における隣接による問題を防止することができる。
各LEDランプ83の点灯期間は任意に設定可能である。各LEDランプ83の点灯又は消灯の時刻は、点灯タイムテーブルにおいて、典型的には、各検体の測光期間の開始時刻からの相対的な時刻により規定される。なお、各LEDランプ83の点灯又は消灯の時刻は、絶対的な時刻により規定されても良い。
次に図16を参照しながら、分析機構制御部59による点灯処理を説明する。まず、分析機構制御部59は、間欠的に反応ディスク11を回転するように機構駆動部61を制御する。これにより複数の反応管31は測光位置を順番に通過する。反応管31による測光位置の通過は、例えば、測光位置近傍に設けられた光センサ又は磁気センサ等の任意の反応管センサにより検知可能である。例えば、反応管31が測光位置を通過している期間、反応管センサは、ON信号を出力し、反応管31が測光位置を通過していない期間、反応管センサは、OFF信号を出力する。ON信号又はOFF信号は、分析機構制御部59に供給される。
分析機構制御部59は、反応ディスクによる各反応管31の測光位置への搬送タイミングに同期して、点灯タイムテーブルに従って光源切替部63を制御する。より詳細には、分析機構制御部59は、ON信号が出力されることを契機として、当該測光位置を通過している反応管31に収容された検体の測定項目に必要なLEDランプ83を点灯させるた めの点灯指示を光源切替部63に供給する。光源切替部63は、分析機構制御部59からの点灯指示に従って点灯対象のLEDランプ83を所定の点灯期間だけ点灯し、非点灯対象のLEDランプについては消灯する。例えば、図16に示すように、反応管Aの通過期間前半において分析機構制御部59は、Gr1(波長λ11、波長λ12、波長λ13、波長λ14)のLEDランプを順次点灯する。
まず、分析機構制御部59は、波長λ11のLEDランプの点灯指示と波長λ13のLEDランプの点灯指示とを光源切替部63に供給し、光源切替部63は、波長λ11のLEDランプと波長λ13のLEDランプとを点灯する。他のLEDランプは消灯している。この際、光検出器253は、波長λ11の一次回折光と波長λ13の一次回折光との他に、波長λ11の二次回折光と波長λ13の二次回折光とを検出する。二次回折光は従来は他の重畳領域の波長と重なるため、波長λ11の二次回折光に空間的に対応する受光素子からの検出信号と、波長λ13の二次回折光に空間的に対応する受光素子からの検出信号とは吸光度計算に利用していなかったが、本実施形態では他の重畳領域の波長と重なることがないため、二次回折光も利用することができる。すなわち、波長λ11の一次回折光と二次回折光とに空間的に対応する受光素子からの検出信号を合算して波長λ11に対応する信号とする。波長らむだ13についても同様である。従って信号処理部65は、波長λ11の一次回折光と二次回折光に空間的に対応する受光素子と、波長λ13の一次回折光と二次回折光に空間的に対応する受光素子とに限定して検出信号を読み出し、読み出された検出信号をそれぞれ加算して測光データに変換する。このように、信号処理部65は、測光対象の測定項目に必要な発光波長に空間的に対応する受光素子に限定して検出信号を読み出し、読み出された検出信号を測光データに変換する。
点灯期間の経過後、分析機構制御部59は、波長λ11のLEDランプの点灯指示と波長λ13のLEDランプの消灯指示を光源切替部63に供給し、光源切替部63は、波長λ11のLEDランプと波長λ13のLEDランプとを消灯する。次に分析機構制御部59は、波長λ12のLEDランプの点灯指示と波長λ14のLEDランプの点灯指示とを光源切替部63に供給し、光源切替部63は、波長λ12のLEDランプと波長λ14のLEDランプとを点灯する。他のLEDランプを消灯している。点灯期間の経過後、分析機構制御部59は、波長λ12のLEDランプの点灯指示と波長λ14のLEDランプの消灯指示を光源切替部63に供給し、光源切替部63は、波長λ12のLEDランプと波長λ14のLEDランプとを消灯する。
次に反応管Aの通過期間後半において分析機構制御部59は、Gr2(重畳領域、波長λ21、波長λ22、波長λ23、波長λ24)のLEDランプについても上記と同様に点灯制御が行われる。ただし、GR2の波長の二次回折光は光検出器の範囲外になるため検出されず、一次回折光のみにより測光データが生成される。
以上により、Gr1(自由スペクトル領域)の波長の二次回折光と、Gr2(重畳領域)の波長の一次回折光との重畳を排除し、吸光度や項目値の精度を向上させることができる。
以上で、分析機構制御部59による制御のもとに行われる光源部251の点灯制御についての説明が終了する。
(変形例)
上記の実施形態においては1つのLEDランプに1つの蛍光体が搭載されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。
図21は、変形例に係るLEDランプの構造を模式的に示す図である。図21に示すように、変形例に係るLEDランプは、1つのLED素子について複数の発光波長にそれぞれ対応する複数の蛍光体を搭載している。例えば、図21に示すように、LEDランプ38−1は、波長λ11の蛍光を発生する蛍光体、λ13の蛍光を発生する蛍光体、λ15の蛍光を発生する蛍光体、及びλ17の蛍光を発生する蛍光体を搭載する。LEDランプ38−2は、波長λ12の蛍光を発生する蛍光体、λ14の蛍光を発生する蛍光体、λ16の蛍光を発生する蛍光体、及びλ18の蛍光を発生する蛍光体を搭載する。LEDランプ38−3は、波長λ21の蛍光を発生する蛍光体、λ23の蛍光を発生する蛍光体、λ25の蛍光を発生する蛍光体、及びλ27の蛍光を発生する蛍光体を搭載する。LEDランプ38−4は、波長λ22の蛍光を発生する蛍光体、λ24の蛍光を発生する蛍光体、λ26の蛍光を発生する蛍光体、及びλ28の蛍光を発生する蛍光体を搭載する。
各LEDランプのLED素子の点灯により発せられた励起光により、当該LEDランプに搭載されている複数の蛍光体が励起され、それぞれ対応する複数の発光波長の蛍光が同時に発生する。すなわち、複数の発光波長の蛍光が同時に光検出器に入射する。従って、波長数的に隣接する複数の蛍光が光検出器に同時に入射することを防止するため、各LEDランプには、波長数的に離間する複数の発光波長にそれぞれ対応する複数の蛍光体が設けられると良い。
変形例においても分析機構制御部59は、上記の実施形態と同様に、測光対象の反応管31が測光位置を通過する際、複数のLEDランプ83のうちの、反応管31内の検体の測定項目のための発光波長に対応するLEDランプ83に限定して発光させる。
変形例に係る光源部251は、発光波長毎に製造されるLEDランプに比して、搭載されるLEDランプの種類を低減することができる。従って、分析機構制御部59によるLEDランプ83の点灯及び消灯の切替制御が容易となる。
(総論)
上記の説明の通り、本実施形態に係る自動分析装置は、反応ディスク11、機構駆動部61、光源部251、光検出部253、及び分析機構制御部59を有する。反応ディスク11は、複数の反応管31を回転可能に保持する。機構駆動部61は、複数の反応管31が測光位置PPを順番に通過するように反応ディスク11を回転する。光源部251は、発光波長が異なる複数のLEDランプ83を有する。光検出部253は、光源部251から発生され、測光位置PPを通過した測光対象の反応管31を透過する光を検出する。分析制御部59は、測光対象の反応管31が測光位置PPを通過する際、複数のLEDランプ83のうちの、測光対象の反応管31内の検体の測定項目のための発光波長に対応するLEDランプ83に限定して点灯させる。
上記の構成により、本実施形態に係る光源部251は、LEDランプランプを搭載しており、反応管31の測光位置の通過期間に限定してLEDランプ83を点灯する。従って、本実施形態に係る自動分析装置は、ハロゲンランプを使用していた従来に比して、装置起動時間の短縮や低消費電力化、光源の交換周期の長期化等の効果が得られる。分析機構制御部59は、測光に必要な発光波長の光を発生するLEDランプのみを点灯させることができる。すなわち、測光に不要な発光波長の光が発生しないので、光の利用効率が従来に比して向上する。そのため、回折格子により白色光を波長の異なる複数の光束に空間的に分離し、分離後の光束を光検出器で検出していた従来に比して、高性能な光学系が不要である。そのため、光源以外の他の光学系に要するコストを低減させることができる。
かくして、本実施形態によれば、測光系の低コスト化が実現する。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。