JP6260446B2 - 熱サイクルシステム - Google Patents

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Description

本発明は、トリフルオロエチレンを含む作動媒体を使用した熱サイクルシステムに係り、特に、システム内部が高温または高圧下となった場合のトリフルオロエチレンの自己分解反応を抑えた熱サイクルシステムに関する。
従来、冷凍機用冷媒、空調機器用冷媒、発電システム(廃熱回収発電等)用作動媒体、潜熱輸送装置(ヒートパイプ等)用作動媒体、二次冷却媒体等の熱サイクル用の作動媒体としては、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン(CFC)、クロロジフルオロメタン等のヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が用いられてきた。しかし、CFCおよびHCFCは、成層圏のオゾン層への影響が指摘され、現在、規制の対象となっている。
このような経緯から、熱サイクル用作動媒体としては、CFCやHCFCに代えて、オゾン層への影響が少ない、ジフルオロメタン(HFC−32)、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン(HFC−125)等のヒドロフルオロカーボン(HFC)が用いられるようになった。例えば、R410A(HFC−32とHFC−125の質量比1:1の擬似共沸混合冷媒)等は従来から広く使用されてきた冷媒である。しかし、HFCは、地球温暖化の原因となる可能性が指摘されている。
R410Aは、冷凍能力の高さからいわゆるパッケージエアコンやルームエアコンと言われる通常の空調機器等に広く用いられてきた。しかし、地球温暖化係数(GWP)が2088と高く、そのため低GWP作動媒体の開発が求められている。
そこで最近では、炭素−炭素二重結合を有しその結合が大気中のOHラジカルによって分解されやすいことから、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が少ない作動媒体である、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、すなわち炭素−炭素二重結合を有するHFCに期待が集まっている。本明細書においては、特に断りのない限り飽和のHFCをHFCといい、HFOとは区別して用いる。また、HFCを飽和のヒドロフルオロカーボンのように明記する場合もある。さらに、HFCやHFOのハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。
このHFOを用いた作動媒体として、例えば、特許文献1には上記特性を有するとともに、優れたサイクル性能が得られるトリフルオロエチレン(HFO−1123)を用いた作動媒体に係る技術が開示されている。特許文献1においては、さらに、該作動媒体の不燃性、サイクル性能等を高める目的で、HFO−1123に、各種HFCを組み合わせて作動媒体とする試みもされている。
また、このHFO−1123は、単独で用いた場合に高温または高圧下で着火源があると、自己分解することが知られている。そこで、非特許文献1には、HFO−1123を、他の成分、例えばフッ化ビニリデン等と混合し、HFO−1123の含有量を抑えた混合物とすることで自己分解反応を抑える試みが報告されている。
国際公開第2012/157764号
Combusion, Explosion, and Shock Waves, Vol. 42, No 2, pp. 140-143, 2006
上記のように、HFO−1123の作動媒体としての使用が検討されているが、このHFO−1123は、単独または高濃度で存在する場合には、高温または高圧下で着火源があると、自己分解することが知られている。したがって、熱サイクルシステムにおいて、異常運転等によりHFO−1123が高温または高圧下に晒されると自己分解反応が生じることもある。
そこで、本発明は、地球温暖化への影響が少なく、かつ、サイクル性能(能力)が良好なトリフルオロエチレンを作動媒体として用いた熱サイクルシステムであって、異常運転のようなトラブルが生じた場合においても、HFO−1123の自己分解反応を回避できる熱サイクルシステムの提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、熱サイクルシステムが所定の異常運転状態となっていることを検知した際に、システム内部のHFO−1123濃度を効果的に低減させ、HFO−1123の自己分解反応を回避できる構成を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]に記載の構成を有する熱サイクルシステムを提供する。
[1]トリフルオロエチレンを含む熱サイクル用作動媒体を、圧縮機から、凝縮器、膨張弁および蒸発器を経由して前記圧縮機に循環させる循環経路を有する熱サイクルシステムであって、前記循環経路において、温度85℃以上または圧力がゲージ圧で6.0MPa以上になったときに、前記循環経路内にトリフルオロエチレン濃度を低減させる希釈ガスを投入する希釈ガス投入手段を有することを特徴とする熱サイクルシステム。
[2]前記希釈ガス投入手段が、前記圧縮機の循環経路内に前記希釈ガスを投入する[1]に記載の熱サイクルシステム。
[3]前記熱サイクル用作動媒体が、前記トリフルオロエチレンを50質量%超含む[1]または[2]に記載の熱サイクルシステム。
[4]前記熱サイクル用作動媒体が、前記トリフルオロエチレンを60質量%超含む[3]に記載の熱サイクルシステム。
[5]前記希釈ガスの投入により、前記熱サイクル用作動媒体中の前記トリフルオロエチレン濃度を50質量%以下にする[3]または[4]に記載の熱サイクルシステム。
[6]前記希釈ガスの投入により、前記熱サイクル用作動媒体中の前記トリフルオロエチレン濃度を40質量%以下にする[5]に記載の熱サイクルシステム。
[7]前記熱サイクル用作動媒体が、トリフルオロエチレンとジフルオロメタンの混合媒体である[1]〜[6]のいずれかに記載の熱サイクルシステム。
[8]前記希釈ガスが、窒素または二酸化炭素の少なくとも一方を含むガスである[1]〜[7]のいずれかに記載の熱サイクルシステム。
[9]冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置または二次冷却機である[1]〜[8]のいずれかに記載の熱サイクルシステム。
[10]ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置、内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍・冷蔵庫、製氷機または自動販売機である[1]〜[8]のいずれかに記載の熱サイクルシステム。
本発明の熱サイクルシステムによれば、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用的な熱サイクル性能を有する作動媒体を使用しつつ、仮にシステム内部が異常な高温または高圧条件になった場合でも、HFO−1123の自己分解反応を回避できる熱サイクルシステムを提供できる。
本発明の熱サイクルシステムの一例である冷凍サイクルシステムの概略構成図である。 図1の冷凍サイクルシステムにおける作動媒体の状態変化を圧力−エンタルピ線図上に記載したサイクル図である。 希釈ガス投入手段を設けた圧縮機の概略構成を示した図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
<熱サイクル用作動媒体>
まず、本発明の熱サイクルシステムに使用される熱サイクル用作動媒体(以下、単に作動媒体と称することもある。)について説明する。ここで使用する作動媒体は、HFO−1123を含む熱サイクル用作動媒体である。また、ここで使用する作動媒体は、作動媒体全量中におけるHFO−1123の含有量が50質量%を超え100質量%以下である熱サイクル用の作動媒体であることが好ましい。
本発明で使用される熱サイクル用作動媒体は、上記のようにHFO−1123単独の作動媒体またはHFO−1123とその他の作動媒体とを含有する混合媒体である。ここで、HFO−1123の地球温暖化係数(100年)は、IPCC第4次評価報告書に準じて測定された値として、0.3である。本明細書においてGWPは、特に断りのない限りIPCC第4次評価報告書の100年の値である。
このように、本発明の作動媒体としては、GWPの極めて低いHFO−1123を50質量%超含有することで、得られる作動媒体のGWPの値も低く抑えたものとできる。その他の成分のGWPが、例えば、後述の飽和HFCのように、HFO−1123よりも高い場合には、その含有割合が低いほどGWPが低い組成となる。
この熱サイクル用作動媒体に用いられるHFO−1123は、作動媒体中においてその含有割合が高い場合に、高温または高圧下で着火源が存在すると、急激な温度、圧力上昇を伴う連鎖的な自己分解反応をおこすおそれがある。なお、作動媒体としてHFO−1123の含有量を低くすることで自己分解反応を抑えることができるが、その含有量が低くなりすぎると、混合する他の作動媒体にもよるが、GWPが上昇し、冷凍能力および成績係数が低下する場合が多い。
ここで、熱サイクル用作動媒体は、本発明の熱サイクルシステムに適用するにあたっては、作動媒体中のHFO−1123の含有割合が50質量%超とすることが好ましく、60質量%超とすることがより好ましく、70質量%超とすることがさらに好ましい。このような含有量とすることで、GWPが十分に低く、良好な冷凍能力を確保できる。
[任意成分]
本発明に使用される熱サイクル用作動媒体は、本発明の効果を損なわない範囲でHFO−1123以外に、通常作動媒体として用いられる化合物を任意に含有してもよい。
任意成分としては、HFC、HFO−1123以外のHFO(炭素−炭素二重結合を有するHFC)が好ましい。
(HFC)
任意成分のHFCとしては、例えば、HFO−1123と組み合わせて熱サイクルに用いた際に、温度勾配を下げる作用、能力を向上させる作用または効率をより高める作用を有するHFCが用いられる。本発明に使用される熱サイクル用作動媒体がこのようなHFCを含むと、より良好なサイクル性能が得られる。
なお、HFCは、HFO−1123に比べてGWPが高いことが知られている。したがって、上記作動媒体としてのサイクル性能の向上に加えて、GWPを許容の範囲にとどめる観点から任意成分として用いるHFCを選択する。
オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が小さいHFCとして具体的には炭素数1〜5のHFCが好ましい。HFCは、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、環状であってもよい。
HFCとしては、ジフルオロメタン(HFC−32)、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、ペンタフルオロブタン、ヘプタフルオロシクロペンタン等が挙げられる。
なかでも、HFCとしては、オゾン層への影響が少なく、かつ冷凍サイクル特性が優れる点から、HFC−32、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、およびHFC−125が好ましく、HFC−32、HFC−134a、およびHFC−125がより好ましい。
HFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記好ましいHFCのGWPは、HFC−32については675であり、HFC−134aについては1430であり、HFC−125については3500である。得られる作動媒体のGWPを低く抑える観点から、任意成分のHFCとしては、HFC−32が最も好ましい。
(HFO−1123以外のHFO)
任意成分のHFOとしては、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)、トランス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132(E))、シス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132(Z))、2−フルオロプロペン(HFO−1261yf)、1,1,2−トリフルオロプロペン(HFO−1243yc)、トランス−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(E))、シス−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(Z))、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(E))、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(Z))、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)等が挙げられる。
なかでも、任意成分のHFOとしては、高い臨界温度を有し、安全性、成績係数が優れる点から、HFO−1234yf、HFO−1234ze(E)、HFO−1234ze(Z)が好ましい。
これらのHFO−1123以外のHFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に使用される熱サイクル用作動媒体が、任意成分のHFCおよび/または、HFO−1123以外のHFOを含む場合、該作動媒体100質量%中のHFCおよび、HFO−1123以外のHFOの合計の含有量は、50質量%以下であり、0〜40質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましい。作動媒体におけるHFCおよびHFO−1123以外のHFOの合計の含有量は、用いるHFCおよびHFO−1123以外のHFOの種類に応じて、上記範囲内で適宜調整される。このとき、HFO−1123と組み合わせて熱サイクルに用いた際に、温度勾配を下げる、能力を向上させるまたは効率をより高める観点、さらには地球温暖化係数を勘案して、調整する。
(その他の任意成分)
本発明に使用される熱サイクル用作動媒体は、上記任意成分以外に、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロオレフィン(CFO)、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)等をその他の任意成分として含有してもよい。その他の任意成分としては、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が小さい成分が好ましい。
炭化水素としては、プロパン、プロピレン、シクロプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン等が挙げられる。
炭化水素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に使用される熱サイクル用作動媒体が炭化水素を含有する場合、その含有量は作動媒体の100質量%に対して10質量%以下であり、1〜10質量%が好ましく、1〜7質量%がより好ましく、2〜5質量%がさらに好ましい。炭化水素が下限値以上であれば、作動媒体への鉱物系冷凍機油の溶解性がより良好になる。
CFOとしては、クロロフルオロプロペン、クロロフルオロエチレン等が挙げられる。本発明において熱サイクル用作動媒体のサイクル性能を大きく低下させることなく作動媒体の燃焼性を抑えやすい点から、CFOとしては、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214ya)、1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214yb)、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン(CFO−1112)が好ましい。
CFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に使用される熱サイクル用作動媒体がCFOを含有する場合、その含有量は該作動媒体の100質量%に対して50質量%以下であり、0〜40質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましい。CFOの含有量が下限値を超える値であれば、作動媒体の燃焼性を抑制しやすい。CFOの含有量が上限値以下であれば、良好なサイクル性能が得られやすい。
HCFOとしては、ヒドロクロロフルオロプロペン、ヒドロクロロフルオロエチレン等が挙げられる。本発明に使用される熱サイクル用作動媒体のサイクル性能を大きく低下させることなく作動媒体の燃焼性を抑えやすい点から、HCFOとしては、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFO−1224yd)、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン(HCFO−1122)が好ましい。
HCFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の熱サイクル用作動媒体がHCFOを含む場合、該作動媒体100質量%中のHCFOの含有量は、50質量%以下であり、0〜40質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましい。HCFOの含有量が下限値を超える値であれば、作動媒体の燃焼性を抑制しやすい。HCFOの含有量が上限値以下であれば、良好なサイクル性能が得られやすい。
本発明に使用される熱サイクル用作動媒体が上記のような任意成分およびその他の任意成分を含有する場合、その合計含有量は、作動媒体100質量%に対して50質量%以下が好ましい。
以上説明した本発明に使用される熱サイクル用作動媒体は、地球温暖化への影響が少ないHFOであって、作動媒体としての能力に優れるHFO−1123を含有するものであり、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用的なサイクル性能を有するものである。
(熱サイクルシステム用組成物)
上記の熱サイクル用作動媒体は、通常、冷凍機油と混合して本発明の熱サイクルシステムに使用される熱サイクルシステム用組成物とする。この熱サイクルシステム用組成物は、上記熱サイクルシステムの循環経路内に封入して使用される。この熱サイクルシステム用組成物は、これら以外にさらに、安定剤、漏れ検出物質等の公知の添加剤を含有してもよい。
(冷凍機油)
冷凍機油としては、従来からハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステム用組成物に用いられる公知の冷凍機油が特に制限なく採用できる。冷凍機油として具体的には、含酸素系冷凍機油(エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油等)、フッ素系冷凍機油、鉱物系冷凍機油、炭化水素系冷凍機油等が挙げられる。
エステル系冷凍機油としては、二塩基酸エステル油、ポリオールエステル油、コンプレックスエステル油、ポリオール炭酸エステル油等が挙げられる。
二塩基酸エステル油としては、炭素数5〜10の二塩基酸(グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)と、直鎖または分枝アルキル基を有する炭素数1〜15の一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール等)とのエステルが好ましい。この二塩基酸エステル油としては、具体的には、グルタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジトリデシル、セバシン酸ジ(3−エチルヘキシル)等が挙げられる。
ポリオールエステル油としては、ジオール(エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ネオペンチルグリコール、1,7−ヘプタンジオール、1,12−ドデカンジオール等)または水酸基を3〜20個有するポリオール(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物等)と、炭素数6〜20の脂肪酸(ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸等の直鎖または分枝の脂肪酸、もしくはα炭素原子が4級であるいわゆるネオ酸等)とのエステルが好ましい。
なお、これらのポリオールエステル油は、遊離の水酸基を有していてもよい。
ポリオールエステル油としては、ヒンダードアルコール(ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスルトール等)のエステル(トリメチロールプロパントリペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート等)が好ましい。
コンプレックスエステル油とは、脂肪酸および二塩基酸と、一価アルコールおよびポリオールとのエステルである。脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール、ポリオールとしては、上述と同様のものを用いることができる。
ポリオール炭酸エステル油とは、炭酸とポリオールとのエステルである。
ポリオールとしては、上述と同様のジオールや上述と同様のポリオールが挙げられる。また、ポリオール炭酸エステル油としては、環状アルキレンカーボネートの開環重合体であってもよい。
エーテル系冷凍機油としては、ポリビニルエーテル油やポリオキシアルキレン油が挙げられる。
ポリビニルエーテル油としては、アルキルビニルエーテルなどのビニルエーテルモノマーを重合して得られたものや、ビニルエーテルモノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとを共重合して得られた共重合体がある。
ビニルエーテルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとしては、エチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α−メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等が挙げられる。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリビニルエーテル共重合体は、ブロックまたはランダム共重合体のいずれであってもよい。ポリビニルエーテル油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリオキシアルキレン油としては、ポリオキシアルキレンモノオール、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリオキシアルキレンモノオールやポリオキシアルキレンポリオールのアルキルエーテル化物、ポリオキシアルキレンモノオールやポリオキシアルキレンポリオールのエステル化物等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンモノオールやポリオキシアルキレンポリオールは、水酸化アルカリなどの触媒の存在下、水や水酸基含有化合物などの開始剤に炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を開環付加重合させる方法等により得られたものが挙げられる。また、ポリアルキレン鎖中のオキシアルキレン単位は、1分子中において同一であってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位が含まれていてもよい。1分子中に少なくともオキシプロピレン単位が含まれることが好ましい。
反応に用いる開始剤としては、水、メタノールやブタノール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール等の多価アルコールが挙げられる。
ポリオキシアルキレン油としては、ポリオキシアルキレンモノオールやポリオキシアルキレンポリオールの、アルキルエーテル化物やエステル化物が好ましい。また、ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリオキシアルキレングリコールが好ましい。特に、ポリグリコール油と呼ばれる、ポリオキシアルキレングリコールの末端水酸基がメチル基等のアルキル基でキャップされた、ポリオキシアルキレングリコールのアルキルエーテル化物が好ましい。
フッ素系冷凍機油としては、合成油(後述する鉱物油、ポリα−オレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等)の水素原子をフッ素原子に置換した化合物、ペルフルオロポリエーテル油、フッ素化シリコーン油等が挙げられる。
鉱物系冷凍機油としては、原油を常圧蒸留または減圧蒸留して得られた冷凍機油留分を、精製処理(溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、白土処理等)を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱物油、ナフテン系鉱物油等が挙げられる。
炭化水素系冷凍機油としては、ポリα−オレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等が挙げられる。
冷凍機油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
冷凍機油としては、作動媒体との相溶性の点から、ポリオールエステル油、ポリビニルエーテル油およびポリグリコール油から選ばれる1種以上が好ましい。
冷凍機油の添加量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、作動媒体100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、20〜50質量部がより好ましい。
(安定剤)
安定剤は、熱および酸化に対する作動媒体の安定性を向上させる成分である。安定剤としては、従来からハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステムに用いられる公知の安定剤、例えば、耐酸化性向上剤、耐熱性向上剤、金属不活性剤等が特に制限なく採用できる。
耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤としては、N,N’−ジフェニルフェニレンジアミン、p−オクチルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、N−(p−ドデシル)フェニル−2−ナフチルアミン、ジ−1−ナフチルアミン、ジ−2−ナフチルアミン、N−アルキルフェノチアジン、6−(t−ブチル)フェノール、2,6−ジ−(t−ブチル)フェノール、4−メチル−2,6−ジ−(t−ブチル)フェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
金属不活性剤としては、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2,5−ジメチルカプトチアジアゾール、サリシリジン−プロピレンジアミン、ピラゾール、ベンゾトリアゾール、トルトリアゾール、2−メチルベンズアミダゾール、3,5−ジメチルピラゾール、メチレンビス−ベンゾトリアゾール、有機酸またはそれらのエステル、第1級、第2級または第3級の脂肪族アミン、有機酸または無機酸のアミン塩、複素環式窒素含有化合物、アルキル酸ホスフェートのアミン塩またはそれらの誘導体等が挙げられる。
安定剤の添加量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、作動媒体100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
(漏れ検出物質)
漏れ検出物質としては、紫外線蛍光染料、臭気ガスや臭いマスキング剤等が挙げられる。
紫外線蛍光染料としては、米国特許第4249412号明細書、特表平10−502737号公報、特表2007−511645号公報、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等、従来、ハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステムに用いられる公知の紫外線蛍光染料が挙げられる。
臭いマスキング剤としては、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等、従来からハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステムに用いられる公知の香料が挙げられる。
漏れ検出物質を用いる場合には、作動媒体への漏れ検出物質の溶解性を向上させる可溶化剤を用いてもよい。
可溶化剤としては、特表2007−511645号公報、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等が挙げられる。
漏れ検出物質の添加量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、作動媒体100質量部に対して、2質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
<熱サイクルシステム>
次に、上記の熱サイクル用作動媒体を適用する本発明の熱サイクルシステムについて説明する。この熱サイクルシステムは、HFO−1123を熱サイクル用作動媒体として用いたシステムである。この熱サイクル用作動媒体を熱サイクルシステムに適用するにあたっては、通常、作動媒体を含有する熱サイクルシステム用組成物として適用する。
また、本発明の熱サイクルシステムは、基本的な熱サイクルは従来公知の熱サイクルシステムと同一の構成のものが挙げられ、凝縮器で得られる温熱を利用するヒートポンプシステムであってもよく、蒸発器で得られる冷熱を利用する冷凍サイクルシステムであってもよい。
この熱サイクルシステムとして、具体的には、冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置および二次冷却機等が挙げられる。なかでも、本発明の熱サイクルシステムは、より高温の作動環境でも安定して熱サイクル性能を発揮できるため、屋外等に設置されることが多い空調機器に用いられることが好ましい。また、本発明の熱サイクルシステムは、冷凍・冷蔵機器に用いられることも好ましい。
空調機器として、具体的には、ルームエアコン、パッケージエアコン(店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン等)、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置等が挙げられる。
冷凍・冷蔵機器として、具体的には、ショーケース(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース等)、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等が挙げられる。
発電システムとしては、ランキンサイクルシステムによる発電システムが好ましい。
発電システムとして、具体的には、蒸発器において地熱エネルギー、太陽熱、50〜200℃程度の中〜高温度域廃熱等により作動媒体を加熱し、高温高圧状態の蒸気となった作動媒体を膨張機にて断熱膨張させ、該断熱膨張によって発生する仕事によって発電機を駆動させ、発電を行うシステムが例示される。
また、本発明の熱サイクルシステムは、熱輸送装置であってもよい。熱輸送装置としては、潜熱輸送装置が好ましい。
潜熱輸送装置としては、装置内に封入された作動媒体の蒸発、沸騰、凝縮等の現象を利用して潜熱輸送を行うヒートパイプおよび二相密閉型熱サイフォン装置が挙げられる。ヒートパイプは、半導体素子や電子機器の発熱部の冷却装置等、比較的小型の冷却装置に適用される。二相密閉型熱サイフォンは、ウィッグを必要とせず構造が簡単であることから、ガス−ガス型熱交換器、道路の融雪促進および凍結防止等に広く利用される。
以下、本発明の実施形態の熱サイクルシステムの一例として、図1に示した冷凍サイクルシステム10を参照して説明する。ここで、冷凍サイクルシステムとは、蒸発器で得られる冷熱を利用するシステムである。
図1に示す冷凍サイクルシステム10は、作動媒体蒸気Aを圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする圧縮機11と、圧縮機11から排出された作動媒体蒸気Bを冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする凝縮器12と、凝縮器12から排出された作動媒体Cを膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする膨張弁13と、膨張弁13から排出された作動媒体Dを加熱して高温低圧の作動媒体蒸気Aとする蒸発器14と、蒸発器14に負荷流体Eを供給するポンプ15と、凝縮器12に流体Fを供給するポンプ16と、を具備して概略構成されるシステムである。すなわち、この冷凍サイクルシステム10は、公知の熱サイクルシステムと同様に、熱サイクル用作動媒体を、圧縮機11から、凝縮器12、膨張弁13および蒸発器14を経由して圧縮機11に循環させて運転されるものである。さらに、この冷凍サイクルシステム10は、循環経路内に希釈ガスを投入する希釈ガス投入手段17が設けられている点に特徴を有する。
まず、冷凍サイクルの流れを説明する。冷凍サイクルシステム10においては、以下の(i)〜(iv)のサイクルが繰り返される。
(i)蒸発器14から排出された作動媒体蒸気Aを圧縮機11にて圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする(以下、「AB過程」という。)。
(ii)圧縮機11から排出された作動媒体蒸気Bを凝縮器12にて流体Fによって冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする。この際、流体Fは加熱されて流体F’となり、凝縮器12から排出される(以下、「BC過程」という。)。
(iii)凝縮器12から排出された作動媒体Cを膨張弁13にて膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする(以下、「CD過程」という。)。
(iv)膨張弁13から排出された作動媒体Dを蒸発器14にて負荷流体Eによって加熱して高温低圧の作動媒体蒸気Aとする。この際、負荷流体Eは冷却されて負荷流体E’となり、蒸発器14から排出される(以下、「DA過程」という。)。
冷凍サイクルシステム10は、断熱・等エントロピ変化、等エンタルピ変化および等圧変化からなるサイクルシステムである。作動媒体の状態変化を、図2に示される圧力−エンタルピ線(曲線)図上に記載すると、A、B、C、Dを頂点とする台形として表すことができる。
AB過程は、圧縮機11で断熱圧縮を行い、高温低圧の作動媒体蒸気Aを高温高圧の作動媒体蒸気Bとする過程であり、図2においてAB線で示される。
BC過程は、凝縮器12で等圧冷却を行い、高温高圧の作動媒体蒸気Bを低温高圧の作動媒体Cとする過程であり、図2においてBC線で示される。この際の圧力が凝縮圧である。圧力−エンタルピ線とBC線の交点のうち高エンタルピ側の交点Tが凝縮温度であり、低エンタルピ側の交点Tが凝縮沸点温度である。ここで、HFO−1123と他の作動媒体との混合媒体で非共沸混合媒体の場合、その温度勾配はTとTの差として示される。
CD過程は、膨張弁13で等エンタルピ膨張を行い、低温高圧の作動媒体Cを低温低圧の作動媒体Dとする過程であり、図2においてCD線で示される。なお、低温高圧の作動媒体Cにおける温度をTで示せば、T−Tが(i)〜(iv)のサイクルにおける作動媒体の過冷却度(以下、必要に応じて「SC」で示す。)となる。
DA過程は、蒸発器14で等圧加熱を行い、低温低圧の作動媒体Dを高温低圧の作動媒体蒸気Aに戻す過程であり、図2においてDA線で示される。この際の圧力が蒸発圧である。圧力−エンタルピ線とDA線の交点のうち高エンタルピ側の交点Tは蒸発温度である。作動媒体蒸気Aの温度をTで示せば、T−Tが(i)〜(iv)のサイクルにおける作動媒体の過熱度(以下、必要に応じて「SH」で示す。)となる。なお、Tは作動媒体Dの温度を示す。
そして、本発明の熱サイクルシステムは、熱サイクルシステムの異常運転時に、作動媒体の循環経路内に希釈ガスを投入できる希釈ガス投入手段17が設けられている。この希釈ガス投入手段17は、熱サイクルシステム内が85℃以上の高温またはゲージ圧で6.0MPa以上の高圧条件となった場合に、作動媒体の循環経路内にHFO−1123の濃度を低減させるように希釈ガスを添加できるものであればよい。このようにHFO−1123の濃度を低減させることで、装置内部が、高温または高圧となった場合であっても、HFO−1123の自己分解反応の進行を効果的に抑えることができる。
なお、希釈ガスの投入は、図1では圧縮機11に設けて示しているが、循環経路内であればどこで行ってもよい。また、上記の異常運転時の問題は、主にHFO−1123が気体のときの話であるため、蒸気となっている作動媒体中のHFO−1123の濃度を効果的に低減させる態様が好ましい。したがって、希釈ガスは、投入後に気体となるものであればよく、投入前の保管されている状態においては気体であっても液体であってもよい。
投入される希釈ガスとしては、熱サイクル用作動媒体や熱サイクル用組成物として含まれるその他の成分と反応しない不活性なガスであればよい。この希釈ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素やアルゴン等の希ガス等が挙げられ、窒素および二酸化炭素の少なくとも一方を有する希釈ガスが好ましい。この希釈ガスは、上記したように、希釈ガスを単独で使用しても、混合して使用するものでもよい。
上記したように、HFO−1123濃度を低減させる対象が気体であるため、希釈ガスの投入は、循環経路内の作動媒体が気体で存在する部分で行うことが好ましく、特に、高温または高圧になりやすい圧縮機11における循環経路に投入することが好ましい。
以下、希釈ガス投入手段について、図3を参照しながら説明する。ここでは、希釈ガス投入手段を、スクロール式圧縮機に設けた例について説明する。図3に示したスクロール式圧縮機110は、密閉容器111内に、ステーター112とローター113とからなる駆動手段と、電源と接続して駆動手段に電源を供給する電源供給端子112aと、駆動手段の回転により熱サイクル用作動媒体を圧縮するスクロール圧縮機構114と、圧縮器と接続され、該スクロール圧縮機構114内に熱サイクル用作動媒体を導く吸入管115と、凝縮器と接続され、密閉容器111内の圧縮された熱サイクル用作動媒体を凝縮器側へ送り出す吐出管116と、密閉容器111と接続され、異常運転時において希釈ガスを密閉容器111内に投入する希釈ガス投入手段117と、を有して構成されている。
このスクロール式圧縮機110は、基本的に公知の圧縮機と同様の構成を有するものであり、希釈ガス投入手段117を有している点が本発明における特徴的な部分である。したがって、以下、希釈ガス投入手段117について説明する。なお、ここではスクロール式圧縮機を例に説明したが、公知の圧縮機であれば特に限定されずに適用できる。例えば、ピストンクランク式圧縮機、ピストン斜板式圧縮機、回転ピストン式圧縮機、ロータリーベーン式圧縮機、シングルローター式圧縮機、ツインローター式圧縮機、遠心式圧縮機等が挙げられる。
図3に示しているように、希釈ガス投入手段117は、希釈ガスを保管する保管容器117aと、保管容器117aと密閉容器111とを接続する希釈ガス投入管117bと、希釈ガス投入管117bの流路に設けられ、異常時に作動する異常時開放弁117cと、を有している。
保管容器117aは、希釈ガスを安定して保管でき、所定の圧力に耐性を有する耐圧容器とする。すなわち、保管容器内に高圧で希釈ガスを保管する場合のほか、保管時の保管容器内の圧力は低くても、希釈ガスを投入したとき、スクロール式圧縮機110内の圧力が高圧であった場合は、投入後の保管容器内の圧力も高まるためである。このとき、保管容器117aはゲージ圧で10MPa以上の圧力に耐性を有することが好ましく、12MPa以上の圧力に耐性を有することがより好ましい。このような保管容器117aを形成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、スチール、アルミニウム、黄銅、ニッケル合金等が挙げられる。
さらに、希釈ガスを冷却して保管する場合には、保管容器内部を冷却可能な容器とする。例えば、希釈ガスとして二酸化炭素を使用する場合に、保管容器内に液体二酸化炭素として保管する場合が考えられる。このとき、保管は低温であるが、投入時には温度が急激に上昇するため、この温度の上昇により液体二酸化炭素は気化しながら圧縮蒸気の作動媒体と混合され、HFO−1123を効果的に希釈できる。このように保管時に液体にしておくと、希釈ガス量を確保しながら、保管時の容器の容積を小さくできる。すなわち、保管状態では液体で容積が小さいながら、投入時には気化してその容積が極めて大きくなるため、HFO−1123の濃度を低減する効果を十分に発揮できる。液体二酸化炭素を保管する場合は、具体的には、容器内温度を40℃以下、容器内圧力を10MPa(ゲージ圧)以上として冷却して保管しておくことができる。
希釈ガス投入管117bは、上記した保管容器117aと密閉容器111を接続するものであり、異常運転時には、希釈ガスを密閉容器111内へ投入する(または、密閉容器111内の圧縮された圧縮蒸気の作動媒体を保管容器117a内へ導く)ことで、循環経路内の気体状態の作動媒体と希釈ガスとを混合させ、HFO−1123濃度を低減させるものである。この希釈ガス投入管117bは、保管容器117aと同様の材質で形成することが好ましい。
異常時開放弁117cは、異常運転時に開放される弁である。この異常時開放弁117cが開放されることで、上記保管容器117aと密閉容器111が通気的に接続され、希釈ガスが循環経路内に投入される。この異常時開放弁117cは、通常運転時には閉鎖されており、希釈ガスを保管容器117a内に保持させているが、循環経路内において温度が85℃以上または圧力がゲージ圧で6.0MPa以上となるような異常運転時には開放され、希釈ガスを密閉容器111内に投入するものである。この異常時開放弁117cは、上記条件において開放できるものであれば特に限定されるものではなく、公知の異常時開放弁117cを使用できる。
この異常時開放弁117aとしては、例えば、循環経路内の圧力を検知するセンサーと組み合わせ、所定の圧力以上となったときに開放する圧力制御自動弁、循環経路内の温度を検知するセンサーと組み合わせ、所定の温度以上となったときに開放する温度制御自動弁、所定の温度以上となったときに弁素材が溶解して開放する溶栓、所定の圧力以上となったときに弁素材が破裂して開放する破裂板、等が挙げられる。これら以外にも、所定の温度または圧力となったときに、開放可能とする公知の弁であれば適用できる。
この異常時開放弁117aが開放されることで、希釈ガスと作動媒体とが混合されHFO−1123濃度が低下する。この混合は、通常、保管容器117aと密閉容器111との内部の圧力が異なるため、その圧力差により自然に行われる。したがって、保管容器117aより密閉容器111の圧力が高い場合でも、保管容器117aより密閉容器111の圧力が低い場合でも、どちらでもよい。効率よく混合し、希釈するためには、これらの圧力差が0.5MPa以上あることが好ましい。
なお、圧力異常により密閉容器内が高圧になる場合や、所定の圧力以上となったときに開放する破裂板を使用する場合、等を考慮すると、保管容器117a内は、密閉容器111の圧力に比べて低くなるように設定しておくことが好ましい。
そして、このように希釈ガスを投入することで、上記した作動媒体中のHFO−1123濃度を低減させる。このとき、HFO−1123濃度を、60質量%以下とすることが好ましく、50質量%以下とすることがより好ましく、40質量%以下とすることが更に好ましい。異常運転状態の条件にもよるが、HFO−1123濃度を60質量%以下とすれば、概ねHFO−1123の自己分解反応を抑えることができ、50質量%以下とすれば、ほぼ確実にHFO−1123の自己分解反応を抑えることができ、40重量%以下とすれば、確実にHFO−1123の自己分解反応を抑えることができる。
上記の作動媒体の説明中に記載したように、作動媒体中におけるHFO−1123の濃度は高い方が好ましく、異常運転時には低い方が好ましい。したがって、最も好ましい態様としては、使用する作動媒体中のHFO−1123濃度が70質量%超で、異常運転時には40質量%以下となるように動作させるものが挙げられる。ただし、求める冷凍能力等と異常運転時の自己分解反応抑制のバランスから、使用する作動媒体中のHFO−1123濃度が60質量%超で、異常運転時には60質量%以下、使用する作動媒体中のHFO−1123濃度が60質量%超で、異常運転時には50質量%以下、使用する作動媒体中のHFO−1123濃度が60質量%超で、異常運転時には40質量%以下、使用する作動媒体中のHFO−1123濃度が50質量%超で、異常運転時には50質量%以下、使用する作動媒体中のHFO−1123濃度が50質量%超で、異常運転時には40質量%以下、となるように条件は適宜設定できる。
また、希釈ガスはこのような条件となるように、保管容器111に収容する量を決定すればよい。例えば、使用する作動媒体の量がW kg、その作動媒体中におけるHFO−1123濃度がX質量%である場合には、W×(X/100÷0.5−1)kgより大きな量の希釈ガスを使用することでHFO−1123濃度を50質量%以下とできる。また、使用する作動媒体中のHFO−1123と同質量の希釈ガスを使用すれば、HFO−1123を単独で作動媒体としていた場合でもHFO−1123濃度を確実に50質量%以下とすることができる。
さらに、希釈ガス投入手段17を作動させる温度条件または圧力条件を設定するにあたっては、作動媒体中に含まれるHFO−1123量を考慮することにより設定することが好ましい。例えば、作動媒体中に含まれるHFO−1123が50質量%超60質量%以下である場合は、高温条件は130℃以上、高圧条件は8.0MPa以上とすることが好ましく、作動媒体中に含まれるHFO−1123が60質量%超65質量%以下である場合は、高温条件は130℃以上、高圧条件は6.0MPa以上とすることが好ましく、作動媒体中に含まれるHFO−1123が65質量%超70質量%以下である場合は、高温条件は85℃以上、高圧条件は6.0MPa以上とすることが好ましい。
熱サイクル用作動媒体としてHFO−1123とHFC−32との混合媒体において、濃度と圧力条件および濃度と温度条件を変動させたときの自己分解性について調べたところ、以下の通りの結果を確認できた。
Figure 0006260446
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上記表1、表2、表3および表4の結果は、次のように確認した。まず、常法に従い、HFO−1123およびHFC−32を、それぞれ表1、表2、表3および表4に示す割合で混合して熱サイクル用の作動媒体を得た。このとき、作動媒体全量におけるHFO−1123およびHFC−32の合計量の割合は100質量%である。
次に、得られた作動媒体に対して表1、表2に示す試験圧力、表3、表4に示す試験温度となるようにそれぞれ条件を設定して試験を行い、自己分解性を評価した。自己分解性の評価は、高圧ガス保安法における個別通達においてハロゲンを含むガスを混合したガスにおける燃焼範囲を測定する設備として推奨されているA法に準拠した設備を用いて行った。
すなわち、圧力による影響を評価する際には、外部からのヒーター加熱によって反応器内部の温度を表1では85℃、表2では130℃に制御した内容積650cmの耐圧容器内に、各作動媒体を、表1または表2に示す圧力まで封入した。また、温度による影響を評価する際には、内容積650cmの耐圧容器内に、各作動媒体を、表3ではゲージ圧で圧力6MPa、表4ではゲージ圧で圧力8MPaとなるまで封入し、その後外部からのヒーター加熱によって反応器内部を表3または表4に示す温度まで加熱した。
各試験において所定の条件とした後、耐圧容器内部に設置された白金線(外径0.5mm、長さ25mm)を10V、50Aの電圧、電流で溶断した(ホットワイヤー法)。溶断後に発生する耐圧容器内の温度と圧力変化を測定した。また、試験後のガス組成を分析した。試験後に、耐圧容器内の圧力上昇並びに温度上昇が認められ、試験後のガス分析で仕込んだHFO−1123の100モル%に対して20モル%以上の自己分解反応生成物(CF、HF、コーク)が検出された場合に自己分解反応ありと判断した。
表1、表2、表3および表4より、使用する熱サイクル用作動媒体におけるHFO−1123の濃度に応じて自己分解性が変動することがわかり、これにより希釈ガスを投入する好ましい条件を設定できる。なお、この結果はHFO−1123とHFC−32との混合媒体による一例であり、その他の作動媒体と混合する場合には、その混合媒体に応じた条件を設定すればよい。
〈その他の装置構成〉
また、本実施形態の熱サイクルシステムは、上記構成に加えて、次のような構成を加えて、異常運転時のHFO−1123の自己分解反応の進行を抑えることもできる。
(凝縮温度の低減)
上記のような異常運転時に、凝縮器における凝縮液体の温度をより低下させるように冷却することが好ましい。この冷却は、凝縮器(ラジエータ)自体を、例えば、水冷等により、より低温に冷却するような構成とすればよい。このようにすると、異常運転により圧縮機で高温高圧蒸気となった作動媒体が、凝縮器において凝縮される際、さらに、凝縮液体の温度を低下でき、循環経路中の作動媒体の温度をより低下させることができる。循環経路中の温度を低下させることで、温度、圧力を低下させることができ、熱サイクルシステムに用いるHFO−1123の自己分解反応を抑えることができる。
(分解反応の連鎖抑制)
圧縮機内に圧縮された作動媒体が収容される空間、例えば、図3においては密閉容器111内において、鉛直方向に所定の間隔で仕切り板を設けて、HFO−1123の分解反応の連鎖を抑制する構成が挙げられる。このとき、仕切り板は、密閉容器内をそれぞれ隔離するのではなく、圧縮された作動媒体を流通可能なようにする。このようにすることで、蒸発器側へ移送する圧縮された作動媒体を所定量確保できる。
仕切り板としては、流通経路となる穴が開いていればよく、穴は1つでも複数個でもよい。複数個の穴を設けておく方が、圧縮された作動媒体を均一に流通させることができ好ましい。また、仕切り板は、複数枚を鉛直方向に平行に並ぶように設けることが好ましく、このとき仕切り板同士の間隔を5mm以下とすることが好ましく、4mm以下とすることがより好ましく、3mm以下とすることがさらに好ましい。このような微小な間隔で空間を仕切ることで、HFO−1123が仮に分解反応を生じたとしても、分解反応の連鎖を止め、全体として分解反応を抑制することができる。これは、通常、分解反応の連鎖が鉛直方向において下から上に向かって進むためであり、途中で仕切り板により連鎖を遮断させる構成とすることで、HFO−1123の自己分解反応を抑えるものである。
このような仕切り板としては、金属板に機械的に直径1〜10mm程度の穴を開けたパンチングメタル等が挙げられる。また、このような仕切り板の複数枚を平行に並べる際に、平面視したときにこの穴の位置が重ならないようにすることが好ましい。すなわち、穴の位置が重なっている場合には、分解反応の連鎖が仕切り板同士の間隔よりも長く続くおそれがあるが、重ならないようにすることで、分解反応の連鎖を確実に断ち切ることができる。
(放電現象の抑制)
また、圧縮機には圧縮機構として回転部分を有し、異常運転時には、この回転部分の摩擦により火花等の放電現象が生じるおそれがある。HFO−1123の分解反応はこのような着火源が存在することにより進行する。したがって、放電現象を生じさせないことがHFO−1123の自己分解反応を抑える1つの手段となる。このような放電現象を抑えるために、例えば、放電現象を生じるおそれのある箇所にそれぞれブレーカーを複数個設けて、放電現象を生じさせないようにすることが好ましい。
また、圧縮機の動力として利用する駆動モーターにおいて短絡等により大きな電流が流れ、発熱等を起こすことで導線やモーター巻線の絶縁被覆部が破壊され放電が起こることを抑えるために、駆動モーターの一次側にリアクトルを設置することで事故点でのエネルギーを抑え、放電防止または放電エネルギーを抑制することが好ましい。
(異常高温の防止)
圧縮機の駆動手段、例えば、図3におけるステーター112およびローター113は、通常、電源供給端子112aを介して電源と接続されて、その駆動エネルギーを得ている。この駆動手段と電源供給端子112aを接続する銅等の導線は、通常、絶縁性材料で被覆されている。この導線を被覆する材料は、非常に耐熱性の高いポリイミド樹脂等で被覆されており、一般に、その耐熱温度は250℃以上である。
ところで、上記した異常運転時において、85℃以上のような高温となったときには、上記希釈ガスを投入してHFO−1123の自己分解反応を抑えるようにしているが、さらに異常な動作が継続した場合は、熱サイクルシステム内が200℃以上となるような異常な高温状態となる場合も考えられる。そのような場合においても、HFO−1123の自己分解反応を抑えることが好ましい。
そこで、上記導線を被覆する絶縁性材料を、あえて耐熱性の低い材料で形成することで、異常な高温状態を回避する構成が考えられる。このような構成にすると、異常な高温状態になった場合に、所定の温度で絶縁性材料が溶解し、導線を露出させショートさせることができ、それにより圧縮機等の運転を停止させ、それ以上の高温状態にならないようにして、熱サイクルシステムのHFO−1123の自己分解反応を抑えることができる。
その際に使用する絶縁性材料としては、従来よりも耐熱性の低い材料、例えば、200℃前後の温度で溶解する絶縁性材料が挙げられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(耐熱温度:200℃)、ポリ塩化ビニリデン(耐熱温度:180℃)、ポリアミド(耐熱温度:210℃)等が挙げられる。
また、その他の異常高温を防止する手段として、上記した異常運転時に、設定温度で作動する弁等をさらに設けることで、圧縮機内に封入された作動媒体を圧縮機外に放出し、圧縮機外に作動媒体を放出した際の気化熱により圧縮機内の温度を低下させることも好ましい。設定温度で作動する弁としては、溶栓や温度で作動する電磁弁等が挙げられる。
(異常圧力の防止)
また、上記した異常運転時に、圧縮機内に封入された作動媒体を圧縮機外に放出することで異常圧力を防止することが好ましい。作動媒体を圧縮機外に放出する方法としては、上記と同様に設定圧力で作動する弁等をさらに設ければよく、ここで弁としては、破裂板、安全弁、電磁式圧力コントロール弁等が挙げられる。
(水分濃度)
なお、熱サイクルシステムの稼働に際しては、水分の混入や、酸素等の不凝縮性気体の混入による不具合の発生を避けるために、これらの混入を抑制する手段を設けることが好ましい。
熱サイクルシステム内に水分が混入すると、特に低温で使用される際に問題が生じる場合がある。例えば、キャピラリーチューブ内での氷結、作動媒体や冷凍機油の加水分解、サイクル内で発生した酸成分による材料劣化、コンタミナンツの発生等の問題が発生する。特に、冷凍機油がポリグリコール油、ポリオールエステル油等である場合は、吸湿性が極めて高く、また、加水分解反応を生じやすく、冷凍機油としての特性が低下し、圧縮機の長期信頼性を損なう大きな原因となる。したがって、冷凍機油の加水分解を抑えるためには、熱サイクルシステム内の水分濃度を制御する必要がある。
熱サイクルシステム内の水分濃度を制御する方法としては、乾燥剤(シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、塩化リチウム等)等の水分除去手段を用いる方法が挙げられる。
乾燥剤は、液状の作動媒体と接触させることが、脱水効率の点で好ましい。例えば、凝縮器12の出口、または蒸発器14の入口に乾燥剤を配置して、作動媒体と接触させることが好ましい。
乾燥剤としては、乾燥剤と作動媒体との化学反応性、乾燥剤の吸湿能力の点から、ゼオライト系乾燥剤が好ましい。
ゼオライト系乾燥剤としては、従来の鉱物系冷凍機油に比べて吸湿量の高い冷凍機油を用いる場合には、吸湿能力に優れる点から、下式(3)で表される化合物を主成分とするゼオライト系乾燥剤が好ましい。
2/nO・Al・xSiO・yHO …(3)
ただし、Mは、Na、K等の1族の元素またはCa等の2族の元素であり、nは、Mの原子価であり、x、yは、結晶構造にて定まる値である。Mを変化させることにより細孔径を調整できる。
乾燥剤の選定においては、細孔径および破壊強度が重要である。
作動媒体の分子径よりも大きい細孔径を有する乾燥剤を用いた場合、作動媒体が乾燥剤中に吸着され、その結果、作動媒体と乾燥剤との化学反応が生じ、不凝縮性気体の生成、乾燥剤の強度の低下、吸着能力の低下等の好ましくない現象を生じることとなる。
したがって、乾燥剤としては、細孔径の小さいゼオライト系乾燥剤を用いることが好ましい。特に、細孔径が3.5オングストローム以下である、ナトリウム・カリウムA型の合成ゼオライトが好ましい。作動媒体の分子径よりも小さい細孔径を有するナトリウム・カリウムA型合成ゼオライトを適用することによって、作動媒体を吸着することなく、熱サイクルシステム内の水分のみを選択的に吸着除去できる。言い換えると、作動媒体の乾燥剤への吸着が起こりにくいことから、熱分解が起こりにくくなり、その結果、熱サイクルシステムを構成する材料の劣化やコンタミナンツの発生を抑制できる。
ゼオライト系乾燥剤の大きさは、小さすぎると熱サイクルシステムの弁や配管細部への詰まりの原因となり、大きすぎると乾燥能力が低下するため、約0.5〜5mmが好ましい。形状としては、粒状または円筒状が好ましい。
ゼオライト系乾燥剤は、粉末状のゼオライトを結合剤(ベントナイト等。)で固めることにより任意の形状とすることができる。ゼオライト系乾燥剤を主体とするかぎり、他の乾燥剤(シリカゲル、活性アルミナ等。)を併用してもよい。
作動媒体に対するゼオライト系乾燥剤の使用割合は、特に限定されない。
熱サイクルシステム内の水分濃度は、熱サイクル用作動媒体に対する質量割合で、10000ppm未満が好ましく、1000ppm未満が更に好ましく、100ppm未満が特に好ましい。
(不凝縮性気体濃度)
さらに、熱サイクルシステム内に不凝縮性気体が混入すると、凝縮器や蒸発器における熱伝達の不良、作動圧力の上昇という悪影響をおよぼすため、極力混入を抑制する必要がある。特に、不凝縮性気体の一つである酸素は、作動媒体や冷凍機油と反応し、分解を促進する。
不凝縮性気体濃度は、熱サイクル作動媒体に対する質量割合で、10000ppm未満が好ましく、1000ppm未満が更に好ましく、100ppm未満が特に好ましい。
(塩素濃度)
熱サイクルシステム内に塩素が存在すると、金属との反応による堆積物の生成、軸受け部の磨耗、熱サイクル用作動媒体や冷凍機油の分解等、好ましくない影響をおよぼす。
熱サイクルシステム内の塩素濃度は、熱サイクル用作動媒体に対する質量割合で100ppm以下が好ましく、50ppm以下が特に好ましい。
(金属濃度)
熱サイクルシステム内にパラジウム、ニッケル、鉄などの金属が存在すると、HFO−1123の分解やオリゴマー化等、好ましくない影響をおよぼす。
熱サイクルシステム内の金属濃度は、熱サイクル用作動媒体に対する質量割合で5ppm以下が好ましく、1ppm以下が特に好ましい。
(酸分濃度)
熱サイクルシステム内に酸分が存在すると、HFO−1123の酸化分解、自己分解反応が促進する等、好ましくない影響をおよぼす。
熱サイクルシステム内の酸分濃度は、熱サイクル用作動媒体に対する質量割合で1ppm以下が好ましく、0.2ppm以下が特に好ましい。
また、熱サイクル組成物から酸分を除去する目的で、NaFなどの脱酸剤による酸分除去を行う手段を熱サイクルシステム内に設けることで、熱サイクル組成物から酸分を除去することが好ましい。
(残渣濃度)
熱サイクルシステム内に金属粉、冷凍機油以外の他の油、高沸分などの残渣が存在すると、気化器部分の詰まりや回転部の抵抗増加等、好ましくない影響をおよぼす。
熱サイクルシステム内の残渣濃度は、熱サイクル用作動媒体に対する質量割合で1000ppm以下が好ましく、100ppm以下が特に好ましい。
残渣は、熱サイクルシステム用作動媒体をフィルター等でろ過することで除去することができる。また、熱サイクルシステム用作動媒体とする前に、熱サイクルシステム用作動媒体の各成分(HFO−1123、HFO−1234yf等)ごとにフィルターでろ過を行って残渣を除去し、その後に混合して熱サイクルシステム用作動媒体としてもよい。
上記した熱サイクルシステムは、トリフルオロエチレンを含む熱サイクル用作動媒体を用いることで、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用的なサイクル性能が得られると共に、異常運転時においてHFO−1123の自己分解反応を抑えることができる。
本発明の熱サイクルシステムは、冷凍・冷蔵機器(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等)、空調機器(ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置等)、発電システム(廃熱回収発電等)、熱輸送装置(ヒートパイプ等)、二次冷却機等として有用である。
10…冷凍サイクルシステム、11…圧縮機、12…凝縮器、13…膨張弁、14…蒸発器、15,16…ポンプ、110…スクロール式圧縮機、111…密閉容器、112…ステーター、113…ローター、114…スクロール圧縮機構、115…吸入管、116…吐出管、117…希釈ガス投入手段、117a…保管容器、117b…希釈ガス投入管、117c…異常時開放弁

Claims (10)

  1. トリフルオロエチレンを含む熱サイクル用作動媒体を、圧縮機から、凝縮器、膨張弁および蒸発器を経由して前記圧縮機に循環させる循環経路を有する熱サイクルシステムであって、
    前記循環経路において、温度85℃以上または圧力がゲージ圧で6.0MPa以上になったときに、前記循環経路内にトリフルオロエチレン濃度を低減させる希釈ガスを投入する希釈ガス投入手段を有することを特徴とする熱サイクルシステム。
  2. 前記希釈ガス投入手段が、前記圧縮機の循環経路内に前記希釈ガスを投入する請求項1に記載の熱サイクルシステム。
  3. 前記熱サイクル用作動媒体が、前記トリフルオロエチレンを50質量%超含む請求項1または2に記載の熱サイクルシステム。
  4. 前記熱サイクル用作動媒体が、前記トリフルオロエチレンを60質量%超含む請求項3に記載の熱サイクルシステム。
  5. 前記希釈ガスの投入により、前記熱サイクル用作動媒体中の前記トリフルオロエチレン濃度を50質量%以下にする請求項3または4に記載の熱サイクルシステム。
  6. 前記希釈ガスの投入により、前記熱サイクル用作動媒体中の前記トリフルオロエチレン濃度を40質量%以下にする請求項5に記載の熱サイクルシステム。
  7. 前記熱サイクル用作動媒体が、トリフルオロエチレンとジフルオロメタンの混合媒体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム。
  8. 前記希釈ガスが、窒素または二酸化炭素の少なくとも一方を含むガスである請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム。
  9. 冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置または二次冷却機である請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム。
  10. ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置、内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍・冷蔵庫、製氷機または自動販売機である請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム。
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