以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態の歩行者用エアバッグ(以下「エアバッグ」と省略する)28は、図1に示すように、車両Vのフードパネル8の後端8c側に配置される歩行者用エアバッグ装置Mに使用されている。なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両の前後、上下、及び、左右の方向と一致させて、説明する。
実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ5(図1参照)には、歩行者との衝突を検知可能な図示しないセンサが、配設されており、センサからの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサからの信号に基づいて車両Vの歩行者との衝突を検知した際に、歩行者用エアバッグ装置Mのインフレーター21を作動させるように構成されている。また、実施形態の車両Vには、フードパネル8の後端8c近傍の左縁8d,右縁8e側に、フードパネル8の後端8c側を上昇させるアクチュエータ11が、配設されている。このアクチュエータ11は、図1に示すように、フードパネル8の後端8c側をボディ1側に連結させるヒンジ部10の下方に配置されるもので、作動時に、ヒンジ部10の一部を塑性変形させつつ、図2の二点鎖線に示すように、フードパネル8の後端8cを上方に押し上げる構成とされている。このアクチュエータ11は、作動回路による車両Vの歩行者との衝突検知時に、インフレーター21の作動と略同時に作動されて、フードパネル8の後端8cを押し上げ、フードパネル8の後端8cとカウル6との間にエアバッグ突出用の隙間OSを形成することとなる(図9参照)。
フードパネル8は、図1に示すように、車両Vにおけるエンジンルームの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両端側における後端8c近傍に配置されるヒンジ部10,10(図1参照)により、車両Vのボディ1側に対して前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル8は、実施形態の場合、鋼板や、アルミニウム(アルミニウム合金)製の板材等からなり、図2,3に示すように、上面側のアウタパネル8aと、下面側に位置してアウタパネル8aより強度を向上させたインナパネル8bと、から構成されている。フードパネル8は、後述するフロントウィンドシールド3に合わせて、図1に示すように、後端8cを、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲させて構成されている。フードパネル8の後方には、図2,3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル6aと、カウルパネル6aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ6bと、からなるカウル6が、配設されている。カウルルーバ6bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3aに連ならせるように、配設されている。このカウル6も、フードパネル8の後端8cの湾曲形状に合わせて、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲して構成されている。フロントウィンドシールド3の左右の外方には、図1に示すように、フロントピラー4L,4Rが、配設されている。実施形態では、フロントウィンドシールド3は、下縁側にかけて、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲して、構成されている。なお、フードパネル8は、アクチュエータ11の作動時に、後端8cを押し上げられることとなるが、この後端8cの上昇移動時には、フードパネル8の前端側は、図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、ボディ1側から外れることはない。
歩行者用エアバッグ装置Mは、図1〜3に示すように、エアバッグ28と、エアバッグ28に膨張用ガスを供給するインフレーター21と、エアバッグ28とインフレーター21とを収納するケース15と、折り畳まれたエアバッグ28を覆うエアバッグカバー19と、を備える構成である。
ケース15は、実施形態の場合、板金製として、図2,3に示すように、車両後方側を開口させて構成される略四角筒形状の周壁部16と、周壁部16の前端側を塞ぐ底壁部17と、を備えた略箱形状とされて、後端側の突出用開口15aから、膨張するエアバッグ28を突出させる構成である。実施形態の場合、ケース15は、フードパネル8の後端8c側において、ブラケット(図符号省略)を使用してフードパネル8の下面側に直接連結されている。このケース15は、フードパネル8の後端8c側において、左右のフロントピラー4L,4Rの間となる左右の中央側となる位置に、左右方向に略沿った長尺状として配置されるもので、実施形態の場合、ケース15は、図1に示すように、フードパネル8の後端8cの湾曲形状に合わせて、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲して構成されている。
エアバッグカバー19は、合成樹脂製として、図2,3に示すように、ケース15の突出用開口15aを覆うように配設されるもので、エアバッグ28の展開膨張時に、エアバッグ28に押されて開き可能とされる扉部19aを、備える構成とされている。
インフレーター21は、図1,2に示すように、軸方向を左右方向に略沿って配置されて外形形状を略円柱状としたシリンダタイプとして、左右方向の一端側(実施形態の場合、右側)に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を配設させて構成されるもので、図示しないリード線を介して、図示しない作動回路と電気的に接続されている。このインフレーター21は、図2に示すように、外周側を覆うように配置されるリテーナ22を、ケース15の底壁部17にボルト23止めすることにより、底壁部17に取り付けられている。また、インフレーター21は、図示しないガス吐出口を有した右端側を、クランプ24を使用して、エアバッグ28の後述するガス流入口部36に、連結されている(図4の二点鎖線参照)。
エアバッグ28は、図4〜6に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張する袋状のバッグ本体29と、バッグ本体29内に配置される厚さ規制部としてのテザー38と、バッグ本体29をケース15に取り付ける連結片部52と、を備える構成とされている。
バッグ本体29は、実施形態の場合、図1の二点鎖線及び図4に示すように、膨張完了時の形状を、正面から見て、左右に幅広の略U字形状とされるもので、膨張完了時に少なくともフードパネル8の後方に配置されるカウル6の上方を覆うカウルカバー部33と、カウルカバー部33における車幅方向の外方側の端部(左右両端側)から後方に延びてフロントピラー4L,4Rの前面側を覆うように配置されるピラーカバー部34L,34Rと、カウルカバー部33の前縁33aから突出するように形成されてインフレーター21と接続されるガス流入口部36と、を備えている。実施形態の場合、バッグ本体29は、図4〜7に示すように、外形形状を略同一として、膨張完了時に上面側に位置する上側壁部30と、下面側に位置する下側壁部31と、の外周縁相互を、ガス流入口部36の先端36a側を除いた全周にわたって、縫合糸を用いて縫合させることにより、袋状とされている。
カウルカバー部33は、膨張完了時に、カウル6の上方を、車幅方向の略全域にわたって覆い可能に構成されるもので、具体的には、膨張完了時に、図1の二点鎖線及び図9に示すように、カウル6からフロントウィンドシールド3の下部3a側にかけての領域の上面側を、覆うように構成されている。このカウルカバー部33は、膨張完了形状を、フードパネル8の後端8cの湾曲形状に合わせて、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲した棒状として、構成されている。詳細には、実施形態の場合、カウルカバー部33は、膨張完了時に、後述するカウルカバー部側テザー39よりも前側となる前端側の領域を、フードパネル8の後端8cの下方に位置させ、カウルカバー部側テザー39より後側となる後側の領域を、フードパネル8の後端8cより後方に突出させて、この後側の領域によって、カウル6からフロントウィンドシールド3の下部3a側にかけての領域の上面側を、覆うように、構成されている。
各ピラーカバー部34(34L,34R)は、実施形態の場合、平らに展開した状態の幅寸法(左右方向側の幅寸法)を、平らに展開した状態のカウルカバー部33の幅寸法(前後方向側の幅寸法)より僅かに小さく設定されて、膨張完了形状を、フロントピラー4L,4Rの前面側を略全域にわたって覆い可能な略円柱状として、構成されている(図1の二点鎖線参照)。また、詳細には、各ピラーカバー部34は、平らに展開した状態で、後端(先端)34a側の部位の外周縁を、略半円形状に湾曲させて構成されている(図4参照)。
ガス流入口部36は、実施形態の場合、図1に示すように、カウルカバー部33の前縁33a側から前方に突出するように形成されるもので、先端36a側を、インフレーター21を接続可能に開口させて構成されている。詳細には、ガス流入口部36は、元部側をカウルカバー部33の前縁33a側における左右の略中央となる位置に連結させ、先端36aを左方に向けるように、前後方向に対して傾斜した略筒状として、構成されている。
厚さ規制部としてのテザー38は、実施形態の場合、カウルカバー部33の領域内に配置されるカウルカバー部側テザー39(カウルカバー部側規制部)と、ピラーカバー部34の領域内に配置されるピラーカバー部側テザー42(ピラーカバー部側規制部)と、を備えている。
カウルカバー部側テザー39は、図4に示すように、カウルカバー部33の領域内において、前後の略中央となる位置であって、実施形態の場合、両端側を、ピラーカバー部34における左右方向の内側となる内縁34c近傍に位置させるように、左右方向に略沿って連続的に、配置されている。このカウルカバー部側テザー39は、帯状として、上縁39a側と下縁39b側とを、それぞれ、バッグ本体29における上側壁部30と下側壁部31とに、縫合糸を用いて縫着させることにより、膨張完了時のカウルカバー部33の上側壁部30と下側壁部31との離隔距離を規制する構成である(図4,5参照)。詳細には、カウルカバー部側テザー39は、カウルカバー部33の湾曲形状に略沿って湾曲して、配置されている。実施形態の場合、カウルカバー部側テザー39には、膨張用ガスGを挿通可能な貫通孔39cが、多数配設されている(図4,7参照)。また、実施形態の場合、カウルカバー部側テザー39は、図5,7に示すように、2枚の帯状のテザー用基布40,40を上下で並設させることにより、構成されている。そして、実施形態の場合、カウルカバー部側テザー39の上縁39a側と下縁39b側とを、上側壁部30及び下側壁部31に縫着させる縫合部位45U,45Dは、図4に示すように、カウルカバー部側テザー39の全域にわたって連続的に形成されるもので、バッグ本体29を平らに展開した状態で、左右両端側の端末45a,45bを、ピラーカバー部34L,34Rの内縁34cよりも僅かに左右の外方に位置させるように、構成されている。これらの縫合部位45U,45Dも、カウルカバー部33の湾曲形状に略沿って、湾曲して、形成されている。
ピラーカバー部側テザー42は、図4に示すように、各ピラーカバー部34の領域内において、左右の中央となる位置に、ピラーカバー部34の長手方向(前後方向)に略沿って連続的に、配置されている。ピラーカバー部側テザー42は、実施形態の場合、ピラーカバー部34の後端(先端)34a側と、カウルカバー部33側となる前端(元部)34b側とを除いた領域に配置されるもので、帯状として、上縁42a側と下縁42b側とを、それぞれ、バッグ本体29における上側壁部30と下側壁部31とに、縫合糸を用いて縫着させることにより、膨張完了時のピラーカバー部34の上側壁部30と下側壁部31との離隔距離を規制する構成である(図4,6参照)。実施形態の場合、ピラーカバー部側テザー42は、図6,7に示すように、2枚の帯状のテザー用基布43,43を上下で並設させることにより、構成されている。実施形態の場合、ピラーカバー部側テザー42の上縁42a側と下縁42b側とを上側壁部30及び下側壁部31に縫着させる縫合部位46U,46Dは、後端側の端末46aを、バッグ本体29を平らに展開した状態で、ピラーカバー部34の後端側における略半円形状の領域の中心付近に位置させるように、構成されている。また、縫合部位46U,46Dの前端側の端末46bは、バッグ本体29を平らに展開した状態で、カウルカバー部33の後縁33bの近傍となる位置に、配置されている。
バッグ本体29をケース15に取り付ける連結片部52は、カウルカバー部33の前縁33aから前方に延びるように形成されるもので、実施形態の場合、ガス流入口部36の左右両側となる2箇所に、配置されている(図4参照)。この連結片部52は、図3に示すように、ケース15の底壁部17にボルト53止めされるもので、ボルト53を挿通可能な挿通孔52aを、備えている。具体的には、各連結片部52は、ピラーカバー部34よりも左右の内方となる位置であって、ケース15内への収納時に、底壁部17の左右両端近傍に配置されるように、構成されている。
実施形態では、バッグ本体29、テザー38(カウルカバー部側テザー39,ピラーカバー部側テザー42)、及び、連結片部52は、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布にガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布から、形成されている。
また、実施形態のバッグ本体29では、図4に示すように、上側壁部30と下側壁部31との外周縁相互を縫合糸を用いて縫着させて形成される縫合部位48が、一部の領域に、シール部49を連続的に配設させて構成されている。実施形態のバッグ本体29では、シール部49は、縫合部位48において、カウルカバー部33の前縁33a側からガス流入口部36の周縁にかけての部位に、形成されている。詳細には、シール部49は、バッグ本体29において、カウルカバー部33の領域内に形成されるカウルカバー部側テザー39よりも前側の部位の外周縁を構成する領域に、形成されている。すなわち、シール部49は、カウルカバー部33において、カウルカバー部側テザー39より前側の領域に形成される前側シール部49aを、備える構成とされている。シール部49を構成するシール剤は、実施形態の場合、コーティング剤と同一の材料とされている。そして、シール部49は、縫合部位48を構成する縫合糸Tより幅広の線状として、縫合部位48上に連続的に形成されている(図4,5参照)。
次に、実施形態のエアバッグ28の製造について説明をする。まず、バッグ本体を構成する上側壁部30と下側壁部31とを、外周縁相互を一致させつつ、内表面側を対向させるように重ねた状態で、上側壁部30と下側壁部31とに、カウルカバー部側テザー39とピラーカバー部側テザー42,42とを、縫合糸を用いて縫着させる(図8のA参照)。次に、この上側壁部30と下側壁部31とを、外周縁相互を一致させるように平らに展開した状態から、上側壁部30若しくは下側壁部31の一方(実施形態の場合、上側壁部30)のカウルカバー部側テザー39よりも前側の領域となる前側部位30aを、カウルカバー部側テザー39を上側壁部30に縫着させている縫合部位45Uの両端末45a,45bを通る線L1で折り返すようにして、上側壁部30を、下側壁部31に対して開き、開いた部分を平らに展開する。その後、開いた状態の上側壁部30の前側部位30aと、上側壁部30を開くことにより露出される下側壁部31の前側部位31aと、において、縫合部位を形成する形成予定部位55上に、シール剤を連続的に塗布することにより、前側シール部49aを形成して、シール部49を、形成する(図8のB参照)。
その後、開いた状態の上側壁部30の前側部位30aを、下側壁部31の前側部位31aに重ね、上側壁部30と下側壁部31との外周縁相互を縫合糸Tを用いて縫着させて、縫合部位48を形成し、バッグ本体29を形成する。次いで、連結片部52を、バッグ本体29に、縫合糸を用いて縫着させれば、エアバッグ28を製造することができる。
その後、エアバッグ28をケース15内に収納可能に折り畳み、折り畳んだエアバッグ28の周囲を、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材により、くるんでおく。このとき、ガス流入口部36の先端36aと連結片部52とは、ラッピング材から露出させておく。そして、リテーナ22に保持させた状態のインフレーター21を、クランプ24を用いてガス流入口部36の先端36aと接続させ、また、連結片部52の挿通孔52aにボルト53を挿通させておく。その後、各ボルト23,53をケース15の底壁部17から突出させるようにして、インフレーター21とエアバッグ28とをケース15内に収納させ、底壁部17から突出している各ボルト23,53に、ナット(図符号省略)を締結させれば、エアバッグ28とインフレーター21とをケース15に収納保持させることができる。
その後、エアバッグカバー19を取り付けた状態のケース15を、ブラケット(図符号省略)を用いてフードパネル8に取り付け、インフレーター21を図示しない作動回路に電気的に接続させれば、歩行者用エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
そして、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ5に配置される図示しないセンサからの信号に基づいて、車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、アクチュエータ11がフードパネル8の後端8cを押し上げるように作動されて、フードパネル8の後端8cとカウル6との間に、エアバッグ突出用の隙間OSが形成されることとなる(図9参照)。略同時に、インフレーター21が作動されて、内部に膨張用ガスを流入させてエアバッグ28が膨張することとなり、膨張するエアバッグ28が、エアバッグカバー19の扉部19aを押し開き、扉部19aを開いて形成されるケース15の突出用開口15aから後斜め上方に向かって突出しつつ、カウル6の上面とフロントピラー4L,4Rの前面と、を覆うように、膨張を完了させることとなる(図1の二点鎖線参照)。
そして、第1実施形態のエアバッグ28では、上側壁部30と下側壁部31との外周縁相互を縫着させる縫合部位48の一部の領域に、ガス漏れ防止用のシール部49が、形成される構成であり、このシール部49は、図8のA,Bに示すように、縫合部位48形成前の状態で、厚さ規制部としてのテザー38(カウルカバー部側テザー39,ピラーカバー部側テザー42)の部位で連結されて相互に重ねられた上側壁部30と下側壁部31の一方を、テザー38付近の領域まで開き、縫合部位48を形成する形成予定部位55上に、シール剤を連続的に塗布すれば、形成することができる。具体的には、第1実施形態のエアバッグ28では、上側壁部30におけるカウルカバー部側テザー39より前側の領域である前側部位30aを、カウルカバー部側テザー39を縫着させている縫合部位45Uの端末45a,45bの部位で折り返して開き、上側壁部30の前側部位30aと、下側壁部31におけるカウルカバー部側テザー39より前側の領域である前側部位31aと、の領域に配置される形成予定部位55上に、シール剤を連続的に塗布して、シール部49を形成している。すなわち、第1実施形態のエアバッグ28では、カウルカバー部側テザー39の部位まで上側壁部30を折り返して開かれた領域である上側壁部30の前側部位30aと下側壁部31の前側部位31aとのみに、シール剤を塗布すればよいことから、エアバッグ28の製造時に、シール剤塗布エリアを判別しやすく、作業性が良好である。また、第1実施形態のエアバッグ28では、任意の領域に、シール部49を形成することができることから、膨張完了時において、任意の部位の内圧を高く保持するように設定することができ、逆に、シール部49を設けないエリアでは、内圧を低く設定できることから、膨張完了時のエアバッグ28の内圧調整が容易である。
そして、シール剤の塗布エリア(シール部49の形成領域)は、第1実施形態のエアバッグ28に限られるものではなく、後述するエアバッグ28A,28B,28C,28Dに示すごとく、任意に設定することができる。
したがって、実施形態のエアバッグ28,28A,28B,28C,28Dでは、シール部を設けたり、シール部を設けないエリアを、所定の位置に簡便に設定することができて、膨張完了時の内圧調整が容易である。
また、第1実施形態のエアバッグ28では、シール部49は、カウルカバー部33において、カウルカバー部側テザー39より前側の領域に形成される前側シール部49aを、備える構成とされている。そのため、第1実施形態のエアバッグ28では、カウルカバー部33の前縁33a側の部位に、車幅方向の全域にわたってシール部49が形成され、この前縁33a側の部位からの膨張用ガスの漏れが抑制されることとなる。特に、第1実施形態のエアバッグ28では、インフレーター21と接続されるガス流入口部36が、カウルカバー部33の前縁33a側から前方に突出して形成されており、このガス流入口部36の周縁にも、シール部49が施されている。そのため、エアバッグ28の膨張初期に、インフレーター21から吐出される膨張用ガスの上流側の部位であるカウルカバー部33の前側の領域からの膨張用ガスの漏れを極力抑制できて、カウルカバー部33を左右に迅速に展開させ、その後、ピラーカバー部34L,34Rを迅速に膨張させることができて、エアバッグ28を迅速に膨張させることができる。また、この第1実施形態のエアバッグ28では、縫合部位48において、カウルカバー部33の後縁33b側の部位には、シール部が形成されていないことから、膨張完了時に、カウルカバー部33が歩行者を受け止めた際に、この後縁33b側の領域から膨張用ガスが抜けることにより、適度な内圧としたカウルカバー部33によって、歩行者を円滑に受け止めることができる。
次に、第2実施形態のエアバッグ28Aについて説明をする。図10に示す第2実施形態のエアバッグ28Aでは、シール部49Aは、前側シール部49aと、各ピラーカバー部34L,34Rにおいてピラーカバー部側テザー42よりも車幅方向の外方側となる領域に形成される外側シール部49b,49bと、を備えている。各外側シール部49bは、実施形態の場合、前側シール部49aから連なるように形成されている。なお、この第2実施形態のエアバッグ28Aでは、シール部49A以外は、前述の第1実施形態のエアバッグ28と同一の構成であり、同一の部材には同一の図符号を付して、詳細な説明を省略する。
この第2実施形態のエアバッグ28Aのシール部49Aは、以下のようにして形成することができる。まず、第1実施形態のエアバッグ28と同様にして、前側シール部49aを形成し、前側シール部49a形成後に、開いた状態の上側壁部30の前側部位30aを、下側壁部31の前側部位31aに重ねる(図11のA参照)。次いで、上側壁部30において、各ピラーカバー部側テザー42よりも車幅方向(左右方向)の外方側の領域となる外側部位30b,30bを、各ピラーカバー部側テザー42を上側壁部30に縫着させている縫合部位46Uの部位を通る線L2で折り返すようにして(図11のA参照)、上側壁部30を、下側壁部31に対して開き、開いた部分を平らに展開する。その後、図11のBに示すように、開いた状態の上側壁部30の外側部位30bと、上側壁部30を開くことにより露出される下側壁部31の外側部位31bと、において、縫合部位を形成する形成予定部位55上に、前側シール部49aから連なるように、シール剤を連続的に塗布することにより、外側シール部49bを形成すれば、図10に示すようなシール部49Aを、形成することができる。
この第2実施形態のエアバッグ28Aでは、カウルカバー部33の前縁33a側の部位に加えて、ピラーカバー部34L,34Rにおける車幅方向の外縁34d側の部位にも、シール部49Aが形成されることから、カウルカバー部33の前縁33a側の部位からピラーカバー部34L,34Rの外縁34d側にかけての部位からの膨張用ガスの漏れが抑制されることとなる。そのため、カウルカバー部33の前縁33a側の部位からの膨張用ガスの漏れを抑制して、ピラーカバー部34L,34Rを迅速に膨張できることに加えて、膨張完了時に、ピラーカバー部34L,34Rにおける外縁34d側の領域の内圧を高く保持させることができる。また、この第2実施形態のエアバッグ28Aにおいても、縫合部位48において、カウルカバー部33の後縁33b側の部位には、シール部が形成されていないことから、膨張完了時に、カウルカバー部33が歩行者を受け止めた際に、この後縁33b側の領域から膨張用ガスが抜けることにより、適度な内圧としたカウルカバー部33によって、歩行者を円滑に受け止めることができる。
次に、第3実施形態のエアバッグ28Bについて説明をする。図12に示す第3実施形態のエアバッグ28Bでは、シール部49Bは、前側シール部49aと、外側シール部49b,49bと、各ピラーカバー部34L,34Rにおいてピラーカバー部側テザー42よりも車幅方向の内方側となる領域に形成される内側シール部49c,49cと、を備えている。各内側シール部49cは、実施形態の場合、外側シール部49bから連なるように形成されている。なお、この第3実施形態のエアバッグ28Bにおいても、シール部49B以外は、前述の第1実施形態のエアバッグ28と同一の構成であり、同一の部材には同一の図符号を付して、詳細な説明を省略する。
この第3実施形態のエアバッグ28Bのシール部49Bは、以下のようにして形成することができる。まず、第2実施形態のエアバッグ28Aと同様にして、前側シール部49aと外側シール部49b,49bとを形成し、外側シール部49b形成後に、開いた状態の上側壁部30の外側部位30bを、下側壁部31の外側部位31bに重ねる(図13のA参照)。次いで、上側壁部30において、各ピラーカバー部側テザー42よりも車幅方向(左右方向)の内方側の領域となる内側部位30c,30cを、各ピラーカバー部側テザー42を上側壁部30に縫着させている縫合部位46Uの後側の端末46aと、ピラーカバー部34の内縁34cとカウルカバー部33の後縁33bとの境界部位付近と、を通る線L3上で、折り返すようにして(図13のA参照)、上側壁部30を、下側壁部31に対して開き、開いた部分を平らに展開する。その後、図13のBに示すように、開いた状態の上側壁部30の内側部位30cと、上側壁部30を開くことにより露出される下側壁部31の内側部位31cと、において、縫合部位を形成する形成予定部位55上に、外側シール部49bから連なるように、シール剤を連続的に塗布することにより、内側シール部49cを形成すれば、図12に示すようなシール部49Bを、形成することができる。
この第3実施形態のエアバッグ28Bでは、カウルカバー部33の前縁33a側の部位に加えて、ピラーカバー部34L,34Rの外周縁の部位の略全域に、シール部49Bが形成されることから、カウルカバー部33の前縁33a側の部位からピラーカバー部34L,34Rの外周縁全体にかけての部位からの膨張用ガスの漏れが抑制されることとなる。そのため、カウルカバー部33の前縁33a側の部位からの膨張用ガスの漏れを抑制して、ピラーカバー部34L,34Rを迅速に膨張できることに加えて、膨張完了時に、ピラーカバー部34L,34R全体の内圧を高く保持させることができる。また、この第3実施形態のエアバッグ28Bにおいても、縫合部位48において、カウルカバー部33の後縁33b側の部位には、シール部が形成されていないことから、膨張完了時に、カウルカバー部33が歩行者を受け止めた際に、この後縁33b側の領域から膨張用ガスが抜けることにより、適度な内圧としたカウルカバー部33によって、歩行者を円滑に受け止めることができる。
次に、第4実施形態のエアバッグ28Cについて説明をする。図14に示す第4実施形態のエアバッグ28Cでは、シール部49Cは、前側シール部を備えず、外側シール部49b,49bと内側シール部49c,49cとを備える構成とされている。この第4実施形態のエアバッグ28Cにおいては、各外側シール部49bは、図14に示すように、カウルカバー部33における車幅方向の両縁側(左縁33c側及び右縁33d側)に延びるように、形成されている。なお、この第4実施形態のエアバッグ28Cにおいても、シール部49C以外は、前述の第1実施形態のエアバッグ28と同一の構成であり、同一の部材には同一の図符号を付して、詳細な説明を省略する。
この第4実施形態のエアバッグ28Cのシール部49Cは、以下のようにして形成することができる。まず、図15のAに示すように、カウルカバー部側テザー39とピラーカバー部側テザー42,42とを縫着させた状態の上側壁部30と下側壁部31とを、外周縁相互を一致させるように平らに展開した状態から、上側壁部30において、各ピラーカバー部側テザーよりも車幅方向(左右方向)の外方側の領域となる外側部位30b,30bを、各ピラーカバー部側テザー42を上側壁部30に縫着させている縫合部位46Uの部位を通る線L2で折り返すようにして、上側壁部30を、下側壁部31に対して開き、開いた部分を平らに展開する。その後、図15のBに示すように、開いた状態の上側壁部30の外側部位30bと、上側壁部30を開くことにより露出される下側壁部31の外側部位31bと、において、縫合部位を形成する形成予定部位55上にシール剤を連続的に塗布することにより、外側シール部49b,49bを形成する。その後、図16のA,Bに示すように、第3実施形態のエアバッグ28Bと同様にして、外側シール部49b,49bに連なるように、内側シール部49c,49cを形成すれば、図14に示すようなシール部49Cを形成することができる。
この第4実施形態のエアバッグ28Cでは、ピラーカバー部34L,34Rの外周縁の部位の略全域に、シール部49Cが形成されることから、ピラーカバー部34L,34Rの外周縁全体からの膨張用ガスの漏れが抑制されることとなり、膨張完了時に、ピラーカバー部34L,34Rの内圧を高く保持させることができる。そして、逆に、縫合部位48において、カウルカバー部33の前縁33a側の領域と、後縁33b側の領域と、に、シール部が形成されていない。換言すれば、このエアバッグ28Cでは、カウルカバー部33は、左縁33c側の部位と右縁33d側の部位を除いた大部分の周縁部位に、シール部を設けられていない。そのため、シール部の設けられていないカウルカバー部33における前縁33a側の領域及び後縁33b側の領域では、適度な膨張用ガスの抜けにより、ピラーカバー部34L,34Rと比較して、内圧を低く設定することができる。
次に、第5実施形態のエアバッグ28Dについて説明をする。図17に示す第5実施形態のエアバッグ28Dでは、テザー38Dは、ピラーカバー部側テザーを備えず、カウルカバー部側テザー39のみを備える構成である。そして、シール部49Dは、カウルカバー部33とピラーカバー部34L,34Rとにおいて、カウルカバー部側テザー39より後側の領域に形成される後側シール部49dを、備える構成とされている。なお、この第5実施形態のエアバッグ28Dにおいても、テザー38D及びシール部49D以外は、前述の第1実施形態のエアバッグ28と同一の構成であり、同一の部材には同一の図符号を付して、詳細な説明を省略する。
この第5実施形態のエアバッグ28Dのシール部49Dは、以下のようにして形成することができる。まず、図18のAに示すように、カウルカバー部側テザー39を縫着させた状態の上側壁部30と下側壁部31とを、外周縁相互を一致させるように平らに展開した状態から、上側壁部30においてカウルカバー部側テザー39よりも後側の領域となる後側部位30dを、カウルカバー部側テザー39を上側壁部30に縫着させている縫合部位45Uの両端末45a,45bを通る線L1で折り返すようにして、上側壁部30を、下側壁部31に対して開き、開いた部分を平らに展開する。その後、図18のBに示すように、開いた状態の上側壁部30の後側部位30dと、上側壁部30を開くことにより露出される下側壁部31の後側部位31dと、において、縫合部位を形成する形成予定部位55上に、シール剤を連続的に塗布することにより、後側シール部49dを形成すれば、図17に示すようなシール部49Dを、形成することができる。
この第5実施形態のエアバッグ28Dでは、カウルカバー部33の後縁33bからピラーカバー部34L,34Rの外周縁の部位の略全域に、シール部49Dが形成されることから、膨張完了時に、ピラーカバー部34L,34R全体の内圧を高く保持させることができる。また、第5実施形態のエアバッグ28Dでは、縫合部位48において、カウルカバー部33の前縁33a側の領域に、シール部が形成されていないことから、膨張完了時に、カウルカバー部33が歩行者を受け止めた際に、この前縁33a側の領域から膨張用ガスが抜けることにより、適度な内圧としたカウルカバー部33によって、歩行者を円滑に受け止めることができる。
なお、実施形態のエアバッグ28,28A,28B,28C,28Dでは、膨張完了時に上側壁部30と下側壁部31との離隔距離を規制可能とされる厚さ規制部として、帯状のテザー38,38Dを配設させているが、厚さ規制部は実施形態に限られるものではなく、厚さ規制部を、上側壁部と下側壁部とを、直接、結合させることにより、構成してもよい。また、実施形態のエアバッグ28,28A,28B,28Cでは、テザー38が、カウルカバー部側テザー39と、ピラーカバー部側テザー42,42と、を備える構成であるが、例えば、エアバッグ28のごとく、カウルカバー部33の前縁33a側の領域のみにシール部49を配置させる構成の場合、ピラーカバー部の部位に、テザーを配置させない構成としてもよく、また、エアバッグ28Cのごとく、ピラーカバー部34の領域のみにシール部49Cを配置させる構成の場合、カウルカバー部の部位に、テザーを配置させない構成としてもよい。
また、実施形態のエアバッグ28,28A,28B,28C,28Dでは、カウルカバー部33が、カウル6の上方を、車幅方向の略全域にわたって覆い可能に構成され、カウルカバー部33の両端側に、2つのピラーカバー部34L,34Rが形成されているが、本発明を適用可能なエアバッグは、実施形態に限られるものではない。例えば、エアバッグとして、カウルの上方において、左半分程度若しくは右半分程度の領域を覆うカウルカバー部と、カウルカバー部の車幅方向側の外方側の端部から後方に延びるピラーカバー部と、を備える構成のものを使用してもよい。
さらに、実施形態のエアバッグ28,28A,28B,28C,28Dでは、インフレーター21を接続させるガス流入口部36が、カウルカバー部33の前縁33a側から前方に突出するように形成されており、周縁を、カウルカバー部33の前縁33aから連ならせるように、構成されているが、ガス流入口部の形状は実施形態に限られるものではなく、例えば、バッグ本体と別体の略筒状として、下側壁部において、カウルカバー側テザーの前側の領域から下方に突出させるように、構成してもよく、このような構成とする場合にも、カウルカバー部の前縁側に前側シール部を設ける構成の場合には、膨張初期のガス漏れを抑制して、ピラーカバー部を迅速に膨張させることができる。また、ガス流入口部をバッグ本体と別体の略筒状とする場合、下側壁部において、カウルカバー側テザーの後側の領域から下方に突出させるように、構成してもよい。
さらにまた、実施形態のエアバッグ28,28A,28B,28C,28Dでは、シール剤を、上側壁部30と下側壁部31との両方に塗布することにより、シール部49,49A,49B,49C,49Dを構成しているが、シール部は、上側壁部若しくは下側壁部の一方のみに、シール剤を塗布することにより、形成してもよい。