本発明に基づいた実施の形態における湿式画像形成装置について、以下、図を参照しながら説明する。以下に説明する各実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
近年、湿式電子写真における現像部において、現像ローラー(現像剤担持体)のクリーニング部で、クリーニングブレードで回収した現像剤の一部がブレード当接部上流付近に堆積して、現像剤の排出が困難になってしまう課題(以下、「トナー堆積」と呼ぶ。)がある。
図17に示すように、現像クリーニング部材18に突入する現像剤12の層は、現像剤担持体9の表面上に層状態で偏在し、かつ、トナー粒子12tの持つ電荷によって、トナー粒子12tが静電的に現像剤担持体9に拘束されている。そのため、現像剤12の現像クリーニング部材18によるクリーニングの際には、現像クリーニング部材18のエッジ18e近傍に、トナー粒子12tが集まることになる。トナー粒子12tが集まった現像剤12は、トナー粒子12tの濃度が非常に高いため(高濃度なため)、現像剤12の粘度が高くなる。
一方で、現像クリーニング部材18のエッジ18e近傍以外を通過してきた現像剤12は、キャリア液12wが多くなっているため粘度が逆に低い。この現像剤12は、高粘度の現像剤12の上を流れて速やかに排出されるため(図中の矢印Y)、結果的に現像クリーニング部材18のエッジ18eの近傍にトナー粒子12tの濃度が非常に高い現像剤12が動けないまま積み上がってしまう。これが、「トナー堆積」現象である。
トナー堆積が発生すると、現像剤担持体9で搬送されたトナー粒子12tの多くが現像クリーニング部材18のエッジ18eに堆積してしまう。現像クリーニング部材18で回収された現像剤12はコストの観点から、再度現像剤槽(図示省略)に戻して繰り返し現像に使用することが望ましい。
しかし、トナー堆積が起こると、現像剤12を再利用するための搬送が困難となり、メンテナンス時に廃棄することになる現像剤12が増加する。さらに、堆積したトナー粒子12tが過剰に積み上がると、メンテナンス性の悪化、画像ノイズの原因等、画像品質の低下の要因となる。
このトナー堆積は、現像後の現像剤12に対して除電部材により除電を行ない、現像剤担持体9とトナー粒子12tとの間の静電的拘束力を弱めると、一定の改善が得られる。静電的拘束力を弱めると言うことは、帯電時に付与された電荷をキャンセルするということを意味する。
ここで、除電部材の出力が弱すぎると、帯電時の静電的拘束力が残存し、トナー堆積の原因となる。さらに、除電部材の出力が過多となると、除電電荷(帯電時に付与される電荷と逆極性)による静電的拘束力が大きくなり、トナー堆積を悪化させる要因となる。よって、除電部材の出力には、適値が存在することとなるため、トナー粒子量および帯電量によって適切に制御されることが必要となる。
しかしながら、現像後の現像残現像剤に含まれるトナー粒子の量およびトナー粒子の荷電量は、現像パターンに応じて場所によって変動する。一般的には、除電部材としては、DCコロトロンチャージャーが用いられる場合が多いが、DCコロトロンチャージャーは、現像残現像剤に含まれるトナー粒子の量およびトナー粒子の荷電量が変わっても一定の荷電量を現像残現像剤(トナー層)に付与するため、場所によって適正な除電量から外れる場所ができてしまう。
その結果、部分的に除電過多および除電不足が生じ、静電的拘束力を弱めることができず、結果として長期駆動においてトナー堆積を解消することができない場合があった。
以下に述べる各実施の形態における湿式画像形成装置は、上記の課題を鑑みなされたものであり、画像パターンに応じた現像残現像剤の除電を行なうことで、トナー堆積を抑制することのできる、湿式画像形成装置を提供し、これにより、画像品質のさらなる向上を可能とする。
[実施の形態1]
(湿式画像形成装置100の構成と動作の例)
図1を参照して、本実施の形態における湿式画像形成装置100の構成について説明する。作像部は、感光体ドラムを用いた像担持体1、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4、中間転写体5、二次転写部材6、像担持体クリーニング装置7、および、中間転写体クリーニング装置8を備える。
像担持体1は、表面に感光体層(不図示)が形成された円筒形状であって、図中における矢印A方向に回転駆動する。像担持体1の外周には、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4、中間転写体5、像担持体クリーニング装置7、および、イレーサーランプ10が、上記像担持体1の回転方向(図中の矢印A方向)に沿って順次配置されている。
帯電装置2は、像担持体1の表面を所定電位に帯電させる。露光装置3は、像担持体1の表面に光を照射し照射領域内の帯電レベルを低下させて静電潜像を形成する。湿式現像装置4は、像担持体1に形成された潜像を現像する。すなわち、像担持体1の現像領域へ現像剤12を搬送する。現像剤12は、トナー粒子12tとキャリア液12wとを含む。現像剤12に含まれるトナー粒子12tを像担持体1の表面の静電潜像に供給して、像担持体1上にトナー像を形成する。
(現像プロセス)
上記湿式画像形成装置100を用いた現像プロセスにおいては、湿式現像装置4の現像剤担持体9に電源(不図示)から現像バイアス電圧が印加される。像担持体1上の潜像の電位とのバランスで生じた電界に従って、現像剤12中のトナー粒子12tが像担持体1の潜像部分に静電吸着され、像担持体1上の潜像が現像される。
上記湿式画像形成装置100において、中間転写部は、中間転写体5、二次転写部材6、中間転写体クリーニング装置8を備える。中間転写体5は、像担持体1と対向するように配置されており、像担持体1と接触しながら図中の矢印B方向に回転する。中間転写体5と像担持体1とのニップ部で、像担持体1から中間転写体5へのトナー像の一次転写が行なわれる。
一次転写プロセスにおいては、中間転写体5に、電源(不図示)から転写バイアス電圧が印加される。これにより、一次転写位置における中間転写体5と像担持体1との間に電界が形成され、像担持体1上のトナー像が、中間転写体5に静電吸着され、中間転写体5上に転写される。
トナー像が中間転写体5に転写されると、像担持体クリーニング装置7が像担持体1上の残存現像剤を除去し、次の画像形成が行なわれる。必要に応じて、像担持体クリーニング装置7と帯電装置2との間にはイレーサーランプ10が設置される。
中間転写体5と二次転写部材6とは、記録材としての記録媒体11を挟んで対向するように配置されており、記録媒体11を介して接触回転する。中間転写体5と二次転写部材6とのニップ部で、中間転写体5から記録媒体11へのトナー像の二次転写が行なわれる。記録媒体11は、二次転写のタイミングに合わせて二次転写位置へ図中の矢印C方向に搬送される。
二次転写プロセスにおいては、二次転写部材6に、電源(不図示)から転写バイアス電圧が印加される。これにより、中間転写体5と二次転写部材6との間に電界が形成され、中間転写体5と二次転写部材6との間を通過させた記録媒体11上へ中間転写体5上のトナー像が静電吸着され、記録媒体11上に転写される。
トナー像が記録媒体11上に転写されると、中間転写体クリーニング装置8が中間転写体5上の残存現像剤を除去し、次の一次転写が行なわれる。その後、記録媒体11は、図示しない定着装置へと搬送され、そこで記録媒体11のトナーを加熱溶融してトナー像を記録用紙に定着させる。
図1では像担持体1と湿式現像装置4とを1組もつ単色の湿式画像形成装置を示しているが、湿式現像装置4および像担持体1を4組用意しそれぞれに、シアン(Cyan:水色)、マゼンタ(Magenta:赤紫色)、イエロー(Yellow:黄色)、ブラック(黒色)の各色の画像形成をさせ、中間転写体5上で重ね合わせる構成にしたカラーの画像形成装置に対しても本実施の形態の適用は可能である。
または、湿式現像装置4、像担持体1、および中間転写体5を4組用意し、それぞれにシアン(Cyan:水色)、マゼンタ(Magenta:赤紫色)、イエロー(Yellow:黄色)、ブラック(黒色)の各色の画像形成をさせ、記録媒体11上で重ね合わせる構成にしたカラーの画像形成装置に対しても本実施の形態の適用は可能である。
中間転写体5を省いて像担持体1から記録媒体11へ直接転写させる直接転写方式に対しても本実施の形態の適用は可能である。その他、従来から用いられる電子写真の各プロセス技術は、湿式画像形成装置の目的に応じて任意の構成と組み合わせることができる。
(現像剤12の構成)
本実施の形態に用いる現像剤12について説明する。現像剤12は、液体現像剤であって、溶媒であるキャリア液12w中に着色されたトナー粒子12tを分散している。キャリア液12wとしては、絶縁性の溶媒が用いられる。トナー粒子12tの体積平均粒子径は、0.1μm以上、5μm以下の範囲が適当である。
トナー粒子12tの平均粒子径が0.1μmを下回ると現像性が大きく低下する。一方、トナー粒子12tの平均粒子径が5μmを超えると、ドット画像およびベタ画像(全面印刷画像)を含めた画像の品質が著しく低下する。望ましくは1μm以上、2μm以下の範囲が良い。粒径1μm以下はクリーニング性が劣り、粒径2μm以上はベタ部の均一性が悪くなる。
現像剤12に対するトナー粒子12tの割合は、10質量%〜50質量%程度が適当である。10質量%未満の場合、トナー粒子12tの沈降が生じ易く、長期保管時の経時的な安定性に問題がある。さらに、必要な画像濃度を得るため、多量の現像剤12を供給する必要があり、記録媒体上に付着するキャリア液12wが増加し、定着時に乾燥させる必要があり、蒸気が発生し環境上の問題が生じる。50質量%を超える場合には、現像剤12の粘度が高くなりすぎ、製造上および取り扱いが困難になる。
(現像プロセスの詳細)
次に、図2を参照して、現像プロセスについて詳細に説明する。図2は、湿式現像装置4の拡大図である。現像剤12が現像剤槽13中に蓄えられている。汲み上げ部材14は一部が現像剤12中に浸漬され、図中の矢印D方向に回転する。その回転により現像剤12は汲みあげられ、汲み上げ部材14に当接して設けられた規制ブレード15により一定の膜厚に調整される。
現像剤12が一定の膜厚に調整された後、汲み上げ部材14は供給部材16に当接し、現像剤12を供給部材16に受け渡す。供給部材16は、現像剤担持体9の回転方向とは逆方向の図中のE方向に回転しており、その方向に受け渡された現像剤12を搬送する。現像剤12は、その後供給部材16と現像剤担持体9との対向部にて現像剤担持体9上に受け渡される。
汲み上げ部材14はウレタンまたはNBR製のゴムローラー、表面に凹部を設けたアニロックスローラーを用いることができる。供給部材16は、ウレタンまたはNBR製のゴムローラーを用いることができる。供給部材16を設けず、汲み上げ部材14が供給部材16を兼ねてもよい。本実施の形態に示した湿式現像装置4において、各ローラー間の相対的な回転方向の関係が異なる形態でもよい。
現像剤担持体9上の現像剤12は、DCコロトロンチャージャーなどのトナー荷電装置17によって現像剤12中のトナー粒子12tの荷電が行なわれる。トナー荷電装置17には図示しない高圧電源が接続されており、トナー荷電装置17の出力を変更することで、トナー粒子に与える荷電量を変更できるようになっている。具体的には、印加する電圧または電流によってトナー粒子に与える荷電量を変更する。図2ではトナー荷電装置17は、DCコロトロンチャージャーを図示しているが、トナー荷電装置17は、DCコロトロンチャージャー以外に、スコロトロンチャージャー、放電ローラーなどを選択することもできる。
トナー粒子12tが帯電された現像剤12は、像担持体1と現像剤担持体9との対向部である現像ニップに移動する。そこで、現像剤担持体9上に形成されたトナー薄層は像担持体1に当接し、像担持体1上の静電潜像を現像する。
現像に当たっては、現像剤担持体9に電源(不図示)から現像バイアス電圧が印加され、像担持体1上の潜像の電位とのバランスで生じた電界に従って現像剤12中のトナー粒子12tが像担持体1の潜像部分に静電吸着され、像担持体1上の潜像が現像される。
現像に使用されず現像剤担持体9上に残存した残存現像剤12は、除電部材19にて主にトナー粒子12tの荷電が除電されたのち、現像クリーニング部材18により現像剤担持体9上から除去される。除電部材19には図示しない高圧電源が接続されており、出力の制御が可能となっている。除電部材19の出力を変更することで、トナー粒子に与える荷電量を変更できるようになっている。具体的には、印加する電圧または電流によってトナー粒子に与える荷電量を変更する。これらトナー粒子12t(現像剤12)のクリーニングに至るまでの詳細については、後述する。
(トナー粒子12tのクリーニング機構、およびその制御方法について)
本実施の形態のトナー粒子12t(現像剤12)のクリーニング方法について説明する。以降の説明では、除電部材19にDCコロトロンチャージャーを用いた場合を例にとって説明する。
図3から図9を参照して、現像領域でのトナー粒子12tの挙動を説明する。図3は、現像時の像担持体1と現像剤担持体9との現像部(ニップ部)の状態を示す模式図、図4は、像担持体1と現像剤担持体9とが分離した直後の現像部の状態を示す模式図、図5は、荷電量が一様でない残存現像剤に対して、一様に電荷を付与した場合を示す模式図、図6は、除電後に、荷電量が適正な領域と適正でない領域とが存在する場合を示す模式図、図7は、ドットパターンの場合の像担持体1と現像剤担持体9とが分離した直後の現像部の状態を示す模式図、図8は、荷電量が一様でない残存現像剤に対して、電荷を変化させて付与した場合を示す模式図、図9は、除電後に荷電量が適正な領域となる場合を示す模式図である。
図3において、像担持体1の表面には、トナー粒子12tと同極性の潜像が形成されており、画像部の電位は低く、非画像部の電位は高い。現像剤担持体9には、画像部の電位と非画像部の電位の間の電位が印加されている。現像領域では、その電位差により、画像部のトナー粒子12tは像担持体1表面側に、非画像部のトナー粒子12tは現像剤担持体9表面側に移動する。
図4は、現像部を通過してきた直後の状態を模式的に示した図である。殆どのトナー粒子12tは、ここではトナー粒子12tの正規帯電方向(ここではプラス荷電)に帯電している。荷電したトナー粒子12tは、その電荷による鏡像力によって、現像剤担持体9に引き付けられている状態となっている。さらに、現像部においてバイアスにより、更に現像剤担持体9側に押し付けられている状態である。
現像部で像担持体1上の潜像領域(画像部)においては、現像剤担持体9上のトナー粒子12tが現像されるため、現像剤担持体9上の残存現像剤12中のトナー粒子12tの量は少なくなる。ここで、像担持体1上の潜像領域(画像部)に対応する現像剤担持体9上の領域を「画像部対応領域D1」と称する。よって、画像部対応領域D1の残存現像剤12中のトナー粒子12tの量は少なくなる。
一方、像担持体1上の潜像の無い領域(非画像部)においては、現像剤担持体9上のトナー粒子12tは現像されないため、現像剤担持体9上の残存現像剤中のトナー粒子12tの量は多くなる。ここで、像担持体1上の潜像の無い領域(非画像部)に対応する現像剤担持体9上の領域を「非画像部対応領域D2」と称する。よって、非画像部対応領域D2の残存現像剤12中のトナー粒子12tの量は、画像部対応領域D1に比べて多くなる。
このように、現像剤担持体9上の残存現像剤12中のトナー粒子12tの量は、画像パターン(画像信号情報)に応じて変動する。その結果、現像剤担持体9上の残存現像剤12中のトナー粒子12tの荷電減衰は一様ではなく、画像パターンに応じて荷電量は異なることになる(一様でなくなる)。
図5は、荷電量が一様でない残存現像剤12に対して、除電部材19を用いて一様に電荷を付与した場合を図示している。図6に示すように、一様に電荷を付与のでは、場所によって、たとえば、画像部対応領域D1では、適正な除電量から外れる(荷電量が過多になる)ことがある。
像担持体1上の潜像の中央部では平坦な電位であるのに対し、潜像の端部では電位に傾斜があるなどして、現像部で現像剤12が晒される電界履歴も一様ではない。この現象が顕著となるのが、細線および/またはドットを現像した場合である。
たとえば、図7に示すように、像担持体1上の潜像の画像パターン(画像信号情報)がドットパターン場合には、現像剤担持体9上の残存現像剤12中のトナー粒子12tの荷電の変動は2値的ではなく、潜像のある領域と潜像の無い領域の中間の値となる。よって、電荷付与量の適性値も、両者の中間の値となる。
これらの現像残現像剤のトナー粒子量の状態は、現像出力条件によっても異なる。具体的には、諧調制御、または、その他の課題を避けるため、現像部における帯電量を高めた場合、像担持体1上の潜像領域(画像部)の全面にトナー粒子12tが現像される(黒ベタ)場合においても、現像剤担持体9上の画像部対応領域D1に、一定の割合の残存トナー粒子が発生する場合がある。さらに、諧調性制御により、ドット部の残存トナー粒子の量も変動しうる。
このように、画像パターン(画像信号情報)および現像出力条件により、除電部材19による適正な電荷付与量は異なるため、一様に電荷を付与したのでは場所によって適正な除電量から外れる領域ができてしまう(図6参照)。
このような課題に対し、本実施の形態では、画像パターン(画像信号情報)によって、除電部材の出力を制御することを行なう。具体的には、ホストコンピュータによりユーザが入力した画像情報を、CPUによって読み取り、単位面積当たりの最適な除電部材の出力を算出し、除電部材の出力制御手段によって通紙方向の領域毎に逐次最適な出力を除電部材に印加するように制御するものである。
除電部材19の出力調整であるが、たとえば、DCコロトロンチャージャーを用いた場合、現像剤担持体9への流れ込み電流を制御することによって、トナー粒子12tへの電荷付与量を制御することができる。
たとえば、図8に示すように、現像剤担持体9上の残存現像剤中のトナー粒子12tの量が少ない領域である画像部対応領域D1への電荷付与量と、現像剤担持体9上の残存現像剤中のトナー粒子12tの量が多い領域である非画像部対応領域D2への電荷付与量とを異ならせる。
具体的には、トナー粒子12tの量が多い非画像部対応領域D2には電荷付与量を多くし、トナー粒子12tの量が少ない画像部対応領域D1には電荷付与量を少なくして、最適な除電出力を印加する。その結果、図9に示すように、いずれの領域においても、トナー粒子12tに対して適正な除電を行なうことを可能とする。
図10を参照して、上記制御について機能ブロック図を用いて説明する。ホストコンピュータ22に入力された画像信号から、通紙方向の各領域における画像パターンを読み取り、最適な除電部材19の出力を算出して除電部材19を制御する制御信号に変換するCPU(Central Processing Unit)21が設置されている。
このCPU21は、単位面積当たりの最適な除電出力を算出する機能、および、現像部各種部材の動作制御機能を持つ。このCPU21から、作像時搬送系のドライバー(供給部材ドライバー23、現像剤担持体ドライバー24)、除電部材用高圧電源32、および帯電部材用高圧電源33の出力を制御する制御手段に信号が送られる。
ここで、信号が送られるタイミングは、画像パターンに対応する残存現像剤が除電部材19の放電領域に来た時と同期している。そして、制御手段により、残存現像剤のパターンに応じた除電出力に除電部材19の出力が調整される。
この出力調整は、画像出力が終了するまで単位長さ毎に逐次行なわれる。除電部材19の出力調整であるが、具体的には、DCコロトロンチャージャーを用いた場合、現像剤担持体9への流れ込み電流を制御することによって、トナー粒子12tへの電荷付与量を制御することができる。
ここで、除電部材19の出力調整について詳細に説明する。ここでは、トナー粒子12tの特性、現像部の出力設定、または、諧調性の設定により、像担持体1上の潜像領域(画像部)には、全面に現像剤12が現像され(黒ベタ現像)、現像剤担持体9上の画像部対応領域D1には、トナー粒子12tがほぼ残留しない状態について考える。
現像剤担持体9上において、画像部対応領域D1には、ほぼトナー粒子12tが残存していないので、ここではハーフトーンの面積率に準じて、全面ハーフトーンにおける最適除電出力と、非画像部対応領域D2に対応する領域における最適除電出力との間で調整すれば良い。具体的には、単位面積中の画像部対応領域D1(ハーフトーン領域)と非画像部対応領域D2(白ベタ)との面積比によって、比例的に除電出力を制御することにより、トナー堆積に対して最適な除電出力を制御することができる。
図11に、除電部材19の出力調整の制御フローを示す。ステップ21で、CPU21は、画像信号を読み込む。ステップ22で、CPUは、読み込んだ画像信号に基づき、単位面積当たりの非画像部対応領域D2(白ベタ)/画像部対応領域D1(ハーフトーン領域:ドット)の比率を計算する。
ステップ23で、CPUは、計算した非画像部対応領域D2(白ベタ)/画像部対応領域D1(ハーフトーン領域:ドット)の比率に基づき、除電部材19の出力を決定する。ステップ24で、除電部材19による出力を開始し、ステップ25で、単位面積を通過したか否かの判別を行なう。通過していない場合には、ステップ24に戻る。通過した場合には、ステップ26で、画像形成が終了したかどうかの判別を行なう。画像形成が終了していない場合には、ステップ22に戻る。画像形成が終了している場合には、除電部材19の出力調整の制御を終了する。
除電部材19の出力調整における単位面積であるが、これは、除電部材19の放電領域によって規定されることが好ましい。なぜならば、放電領域よりも短い間隔で出力変更が行なわれると、適正な除電出力から外れてしまう場所が出てきてしまう可能性があるためである。本実施の形態のようにDCコロトロンチャージャーを用いた場合には、チャージャーの幅によって規定されることが望ましい。具体的には、除電部材19を制御する間隔は、除電部材19の電荷放出幅以上であるとよい。
[実施の形態2]
本実施の形態では、使用する画像形成プロセスおよび湿式画像形成装置は、上記実施の形態1と同様である。本実施の形態では、トナー粒子の特性、現像部の出力設定、諧調性の設定により、現像剤担持体9の画像部対応領域D1(黒ベタ領域に対応する領域)においても、図12に示すように、一定量のトナー粒子が残留する場合について考える。図12は、実施の形態2における現像剤担持体の画像部対応領域および非画像部対応領域の残存現像剤の状態を示す模式図である。
画像信号をCPUが読み取るまでは上記実施の形態1と同様である。ここで、除電部材19の出力調整であるが、この場合、現像剤担持体9の画像部対応領域D1の単位面積における割合も考慮する必要がある。本実施の形態では、単位面積当たりの印字面積率によって、非画像部対応領域D2の最適除電出力を最大とし、画像部対応領域D1の最適除電出力を最少とし、印字面積率に応じて反比例的に制御する。
図13に、本実施の形態における除電部材19の出力調整の制御フローを示す。フローの概略は実施の形態1と同様であるが、単位面積当たりの除電出力算出方法が異なる。ステップ31で、CPU21は、画像信号を読み込む。ステップ32で、CPUは、読み込んだ画像信号に基づき、単位面積当たりの印字面積率を計算する。
ステップ33で、CPUは、計算した印字面積率の比率に基づき、除電部材19の出力を決定する。ステップ34で、除電部材19による出力を開始し、ステップ35で、単位面積を通過したか否かの判別を行なう。通過していない場合には、ステップ34に戻る。通過した場合には、ステップ36で、画像形成が終了したかどうかの判別を行なう。画像形成が終了していない場合には、ステップ32に戻る。画像形成が終了している場合には、除電部材19の出力調整の制御を終了する。
除電部材19の出力調整における単位面積であるが、これは、実施の形態1の場合と同様に、除電部材19の放電領域によって規定されることが好ましい。なぜならば、放電領域よりも短い間隔で出力変更が行なわれると、適正な除電出力から外れてしまう場所が出てきてしまう可能性があるためである。本実施の形態のようにDCコロトロンチャージャーを用いた場合には、チャージャーの幅によって規定されることが望ましい。具体的には、除電部材19を制御する間隔は、除電部材19の電荷放出幅以上であるとよい。
上記各実施の形態においては、除電部材19にDCコロトロンチャージャーを用いた場合について説明したが、除電部材19の形態はDCコロトロンチャージャーに限定されるものではない。たとえば、ACコロトロンチャージャー、スコロトロンチャージャーでもよい。どちらの形態においても、上記に記載したような画像信号に応じた制御を行なうことにより、トナー堆積に対して効果を得ることができる。
さらに、イオンフローヘッドのような、チャージャー幅内で領域毎に選択的に電荷付与できる機構を用いてもよい。そのような機構を用いた場合、軸方向(給紙方向に対して直交する方向)における画像信号に応じてきめ細かい電荷付与量の調整を行なうことが可能である。
図14に示すように、トナー堆積抑制を補助する手段として、現像クリーニング部材18による現像剤担持体9上のクリーニング前に、トナー分散部材20を設置し、残存現像剤12中のトナー粒子12tの分散を良好にする。このトナー分散部材20の通過後のトナー粒子12tの分散状態は、後の除電部材19での除電時の除電量が適切であるほど良好になる。そのため、上記に示した画像パターンに応じて場所ごとに適切な除電を行なうことと、トナー分散部材20とを組み合わせることで、より効果的にトナー堆積の発生を防止することができる。
分散部材の実施の形態としては、ACバイアスを印加したローラーを除電後の現像剤担持体9に当接する方法が考えられる。バイアスによって交流電界を形成することで、残存現像剤12(トナー層)中に残存する正荷電トナー粒子と負荷電トナー粒子とが、現像剤担持体9とトナー分散部材20のニップ内で現像剤担持体9から離脱し、互い違いの方向に動かされて分散する。
トナー分散部材の別の形態としては、除電後の現像剤担持体9に対向して、トナー粒子に超音波振動を付与できるような振動部材を設ける方法が考えられる。超音波振動部材は残存現像剤12(トナー層)中を介して現像剤担持体9に当接し、画像形成中は振動子が振動し、その作用によって除電後の残存現像剤12(トナー層)は現像剤担持体9から浮き上がり、かつ、かく乱作用を与えられて分散される。
さらに、トナー分散部材の別の形態としては、たとえば、残存現像剤12(トナー層)に直接接触してかく乱作用を与えるブラシローラーを設ける方法が考えられる。ブラシがトナー粒子と接触し、その機械的作用によって除電後の残存現像剤12(トナー層)は現像剤担持体9から浮き上がり、かつ、かく乱作用を与えられて分散される。
(実施例)
以下、上記本実施の形態における湿式画像形成装置の効果を確認するために、後述する各実施例、および各比較例の条件で実験を行なった。実験手順としては、図2に示す湿式現像装置をベースに、後述する機構、および制御を施した湿式画像形成装置(実験装置)を用いて、後述する画像パターンを感光体ドラム(像担持体1)上に形成した。
図15に、記録媒体11への印字パターンを示す。この印字パターンは、黒ベタ印刷(全面黒色印刷)領域B1、ドット面積率20%〜40%を並列に配置したドット領域H1(H11:20%、H12:30%、H13:40%)、白ベタ印刷(全面無印刷)領域W1、および、ドット面積率60%〜80%を並列に配置したドット領域H2(H21:60%、H22:70%、H123:80%)を、それぞれ5cm毎に順に配置されているものを用いた。
トナー荷電装置17の電流量は、0.32mA/m、0.5mA/mを用いた。湿式現像装置において、1時間の連続印字を行ない、現像クリーニング部材18へのトナー堆積状態を目視にて評価した。評価尺度としては、A(トナー堆積が無し)、F(トナー堆積が許容できないレベル)、FF(トナー堆積がひどい)とし、A以上を合格とした。評価結果を、図16に示す。
(比較例1)
比較例1では湿式画像形成装置に用いる湿式現像装置4として、除電部材19を非設置としたものを用いた。評価結果は、FF(トナー堆積がひどい)であり、不合格であった。
比較例1では非常に急速にトナー堆積が発生、成長した。除電部材19を設置していないため、現像クリーニング部材18への突入時に、トナー粒子は現像剤担持体9に強く拘束されていることによるものと考えられる。
(比較例2)
比較例2では湿式画像形成装置に用いる湿式現像装置4として、除電部材19を用い、この除電部材19として、現像剤担持体9に非接触なDCコロトロンチャージャーを設置した。除電電流の電流量は、白ベタ印刷(全面無印刷)領域W1に対応する現像剤担持体9の領域(非画像部対応領域D2)における、残存現像剤の除電後の表面電位がゼロになる電流量(トナー荷電装置17の電流量が0.32mA/mの時は、除電部材19の電流量を0.3mA/m、トナー荷電装置17の電流量が0.5mA/mの時は、除電部材19の電流量を0.45mA/m)に設定した。評価結果は、F(トナー堆積が許容できないレベル)であり、不合格であった。
比較例2では、比較例1に比べ、トナー堆積の成長速度は緩慢であるが、許容できないレベルのトナー堆積が発生していた。これは、画像パターン(画像信号情報)に応じた除電ができていないことによるものと考えられる。
(実施例1)
実施例1では、除電部材19として現像剤担持体9に非接触なDCコロトロンチャージャを設置した。トナー荷電装置17の電流量は、0.32mA/mとした。除電部材19への電流量は、最大値を白ベタ印刷(全面無印刷)領域W1に対応する現像剤担持体9の領域(非画像部対応領域D2)における、残存現像剤(トナー粒子)の除電後の表面電位がゼロになる電流量(0.3mA/m)に設定した。さらに、最小値を、ドット部現像残トナーを鑑み、白ベタ領域W1の半分の電流量(0.15mA/m)に設定した。
除電出力を実施の形態1(図11)に示すフローに従って制御を行なった。また、黒ベタ印刷(全面黒色印刷)領域B1に対応する領域では、電流量の最小値(0.15mA/m)を印加するように設定を行なった。この時、ドット領域H1部分での電流量を測定したところ0.255mA/m、ドット領域H2部分では0.195mA/mであった。
実施例1では、評価結果は、A(トナー堆積が無し)であり、合格であった。上記比較例1,2に対して顕著な改善効果を得ることができた。すなわち、1時間の駆動においても顕著なトナー堆積は発生せず、繰り返し使用に問題ないレベルであった。これは、画像パターン(画像信号情報)に応じた除電ができていることによるものと考えられる。
(実施例2)
実施例2では、除電部材19として現像剤担持体9に非接触なDCコロトロンチャージャーを設置した。除電部材19への電流量は、最大値を白ベタ印刷(全面無印刷)領域W1に対応する現像剤担持体9の領域(非画像部対応領域D2)における、残存現像剤(トナー粒子)の除電後の表面電位がゼロになる電流量(0.45mA/m)に設定した。さらに、最小値を、黒ベタ印刷(全面黒色印刷)領域B1の残存現像剤(トナー粒子)の、除電後の表面電位がゼロになる電流量(0.1mA/m)に設定した。
除電部材19の出力を、実施の形態2の図13に示す制御フローに従って行なった。この時、ドット領域H1部分での電流量を測定したところ0.345mA/m、ドット領域H2部分では0.205mA/mであった。
実施例2においても、実施例2と同様に、評価結果は、A(トナー堆積が無し)であり、合格であった。上記比較例1,2に対して顕著な改善効果を得ることができた。すなわち、1時間の駆動においても顕著なトナー堆積は発生せず、繰り返し使用に問題ないレベルであった。これは、画像パターン(画像信号情報)に応じた除電ができていることによるものと考えられる。
このように、本実施の形態における湿式画像形成装置を用い、画像信号情報に応じた除電部材19の出力制御を行なうことにより、現像剤担持体9に対して残存現像剤の良好なクリーニングを行なうことができた。
その結果、本実施の形態における湿式画像形成装置よれば、現像剤担持体からの残存現像剤のクリーニングの際に生じるトナー堆積の発生を抑制し、無駄な現像剤の発生を抑え、メンテナンス性の向上、画像ノイズの発生抑制を達成することを可能とし、結果として、画像品質のさらなる向上を可能とする湿式画像形成装置を提供することができる。
以上、本実施の形態における湿式画像形成装置においては、除電部材19の出力を、画像信号情報に応じて変更する。このことによって、現像剤担持体9上における除電前の現像剤が、画像パターンによって位置ごとにトナー粒子量、荷電量のバラツキがあっても、全面で適切な除電量が与えられ、現像剤担持体9からのトナー粒子の静電的拘束力除去を安定して行なうことができる。
このことにより、トナー堆積を抑制し、ひいては無駄な現像剤の発生を抑え、メンテナンス性の向上、画像ノイズの発生抑制を達成することができる。その結果、画像品質のさらなる向上を可能とする湿式画像形成装置を提供することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。