本発明は、ウイルス安全性のある血小板抽出物などのウイルス安全性のある生物学的液体混合物を調製するための方法に関する。血小板は、組織再生及び治癒過程の主要段階に関与する因子の完全なアレイを含む。現在、創傷治癒を促進するために、(患者由来の)全自己活性化血小板が用いられている。しかしながら、全自己血小板の使用には、複数の欠点、とりわけ標準化が欠如していること、患者自身の血小板に治癒に必要な因子が不足している場合があること、血小板因子の混合物を調製するために特殊な装置が必要であること、手順は時間がかかり、かつ患者自身が行う追加の工程を必要とすること、及び医学的に訓練された人材を必要とすること、が存在する。これらの問題は、例えば、複数のドナーから調製された血小板抽出物を用いることによって解決され得る。
しかしながら、ヒト血液由来の製品は、ウイルスなどの感染病原体を伝播させる危険性を伴い得る。ウイルス伝播の危険性の効果的な低減は、少なくとも2つの直交するウイルス不活性化工程を含むことによって達成され得る。更に、血小板抽出物の製造において追加の工程を含むことは、その中に含まれる因子の回収及び活性を損ない得る。
これらのウイルス不活性化の方法のうちの1つは、「溶媒/界面活性剤(S/D)ウイルス不活性化処理」である。
この不活性化は、S/Dによる処理及びS/Dの除去を含む。特定の成長因子の回収率は、HICによるS/D除去の後に解決されることが、本発明により見出された。
特定の血小板因子、例えば、PDGF−AB、PDGF−BB、及びbFGFは、S/D除去よりも前に、かつ/又はS/D除去中に、S/Dで処理された物質を、非毒性の両親媒性分子であるポリビニルピロリドン(PVP)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)に接触させることによって増加し得ることが、本発明により見出された。
本発明によるS/Dで処理された物質をPVP及びHPMCに接触させることは、PDGF−AB及び他の血小板因子、例えばPDGF−BB並びにbFGFの回収率の増加又は富化をもたらすことが見出された。
S/D除去中にS/Dで処理された物質をヘパリン及び低分子量ヘパリン(両者ともに、特定の成長因子に結合することが知られている)に接触させることは、因子の回収率を増加させたが、一方、S/Dで処理された物質を(両親媒性特性を有する)完全に異なる化合物であるPVPに接触させることが、S/D除去中の成長因子の回収率に及ぼす同様な有益な効果を有したという点において、これらの発見は驚くべきことである。
また、特定の試験条件下でのPVP K30、K25、K17及びK12の添加が、S/D除去を損なうことがなかったために、この発見は驚くべきことである。
血小板由来の因子の混合物を含む原料からS/Dを除去するために本発明による方法を使用することは、因子の高い回収率、高い生物活性及びS/Dの効率的な除去をもたらすことが見出された。
S/D除去の際にPVP K12、K17、K30又はPVP K25を使用することは、血小板成長因子/栄養因子の回収率を増加させることが見出された。K30を使用しての回収率は、K25を使用しての回収率よりも高いことが見出された。PVP K25を使用して得られた物質、したがってPVP K25を含む物質は、PVP K30を含む、PVP K30を使用して得られた物質よりも高い増殖活性を有した。
この結果は、S/Dを効率的に除去するHICの能力を維持しながら、血小板因子混合物に接触させるPVP K25の濃度を0.5%又は0.17mM以下に低減させて(したがって、S/D除去後に得られる抽出物中で、PVPを0.5%又は0.17mM以下に減少させて)、それでもなお因子の回収率の増加を得ることが可能であることも示している。
この結果は、抽出物中の異なる量の、例えば0.1%(0.03mM)及び0.5%(0.17mM)のPVP K25存在は、その活性に影響を及ぼさないことを示している。
この結果は、特定の濃度におけるヘパリン及び硫酸デキストランとは異なり、最終抽出物中のPVPの存在は、トロンビン活性を阻害しなかったことを示している。PVPのこの特性は、特に血小板抽出物(「血小板抽出物」は、生物学的液体混合組成物の1種である)のための送達剤としてフィブリンシーラントを使用する場合、重要である。
この結果は、大規模プロセスにおけるPVP K25の存在下の成長因子の回収率及び活性が、小規模におけるものに匹敵することを示している。
これらの結果は、使用されるPVPの種類及びその濃度(例えば、混合物中のPVPのw/w又は容量モル濃度)がS/D除去を損なわないという条件では、増加した生物学的効力を有する最終抽出物を得るために、PVPがS/D除去の際に有利に使用され得ることを示唆している。
一実施形態では、S/D除去工程中に、生物学的原料をエタノール及びNaClと組み合わせたPVPに接触させた後に、血小板抽出物が得られる。この抽出物は、白血球低減洗浄アフェレーシス血小板(Washed Aphaeresis Platelets Leukocyte−Reduced)(WAP−LR)出発物質(starting material)中、及びS/D除去前の物質中の比率と同様の、PDGF−AB/TGF−β1;PDGF−AB/VEGF;TGF−β1/bFGF;及びVEGF/bFGF比率を含む。
これらの発見は、本発明による生物学的液体混合組成物を調製するための道を開いた。
本発明の方法は、S/Dの除去後のサイトカイン、成長因子、ケモカイン、及び/又は栄養因子の回収率を増加させて、血小板抽出物を調製することを可能にする。
ウイルス安全性のある生物学的液体混合組成物を生物学的原料から調製するための方法が開示され、この方法は、原料を提供する工程と、両親媒性ポリマーを提供する工程と、原料を、ウイルス不活性化が可能な溶媒/界面活性剤(S/D)、及び該両親媒性ポリマーで処理する工程と、処理された原料を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に接触させることによって、S/Dを除去する工程と、非結合分画を含む物質をHICから回収する工程と、を含み、ここで、該方法は、少なくとももう1つの直交するウイルス不活性化処理を含み、これによって、ウイルス安全性のある生物学的液体混合組成物を得る。
一態様では、本発明は、ウイルス安全性のある生物学的液体混合物を調製するための方法を提供し、この方法は、
原料を提供する工程と、溶媒/界面活性剤(S/D)ウイルス不活性化処理を行う工程と、
S/Dで処理された物質を非毒性の両親媒性ポリマーに接触させる工程と、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により、かつ/又は油抽出により、S/Dを除去する工程と、この物質を、少なくとももう1つの直交するウイルス不活性化処理に供する工程と、を含む。
原料の例としては、血液などの体液;血液分画、クレオプレシピテート、細胞培養物、親油性のタンパク質性作用物質;細胞、細胞粒子及び/又は細胞小器官;細胞溶解物;血小板溶解物;血液バフィーコート;動物組織抽出物、例えば、ウシ肺、ウシ腸若しくは動物骨抽出物ゼラチン、ウシ血清アルブミン、並びにラノリンなどの動物由来の水混和性脂肪が挙げられるが、これらに限定されない。この原料は、複数のドナーに由来していてもよい。
一態様では、溶媒−界面活性剤(S/D)を含む生物学的原料から、S/Dを除去するための方法が開示され、この方法は、原料を提供する工程と、両親媒性ポリマーを提供する工程と、原料をS/D、及び両親媒性ポリマーで処理する工程と、処理された原料を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に接触させることによって、S/Dを生物学的原料から除去する工程と、非結合分画を含む物質をHICから回収する工程と、を含む。
一実施形態では、前記S/Dを除去する方法により、油抽出の更なる工程が省略される。
本発明の方法は、油抽出分割(partition)の工程なしで、S/Dを除去するために使用され得ることが見出された。
一実施形態では、本発明は、ウイルス安全性のある血小板抽出物を調製するための方法に関し、この方法は、1以上のドナーから血小板富化分画を提供する工程と、溶媒/界面活性剤(S/D)ウイルス不活性化処理を行う工程と、S/Dで処理された物質を非毒性の両親媒性ポリマーに接触させる工程と、S/Dを除去する工程と、この物質を、少なくとももう1つの直交するウイルス不活性化処理に供する工程と、を含む。
用語「血小板抽出物」は、血小板由来因子を含む生物学的混合物を指す。典型的には、抽出物は細胞を含まない。
一実施形態では、本発明の方法は、血小板溶解物を調製する工程を含む。用語「溶解物」は、細胞膜を破壊することによって細胞が破壊されときに得られる溶液を指す。血小板の溶解及び血小板に捕獲された因子(例えば、様々な血小板成長因子及び/又は栄養因子)の放出は、血小板富化分画を凍結及び解凍することによって、S/D処理によって、超音波処理によって[Slezakら、(1987)J.Exp.Med.V166 p489〜505]、フレンチプレスによって[Salganicoffら、(1975)、Biochem. Biophys.Acta v385 p394〜411]、かつ/又は当該技術分野において既知の任意の他の方法によって行われ得る。
本発明の一実施形態では、血小板の溶解は、血小板富化分画を凍結・解凍した後、S/D処理を行うことによって実施される。典型的には、血小板の溶解は、無細胞血小板溶解物を生じさせる。
用語「ウイルス安全性のある生物学的液体混合物」は、少なくとも2つの直交するウイルス不活性化処理に供された混合物及び/又は組成物を指す。
用語「ウイルス安全性のある血小板抽出物」は、少なくとも2つの直交するウイルス不活性化処理に供された抽出物を指す。
用語「ウイルス不活性化処理」及び「ウイルスを不活性化する」は、ウイルスが溶液中に維持されるが、例えば、それらの脂質被膜を溶解することによって生育不能にされること、及び/又は、例えば、サイズ排除技術によって、ウイルスが溶液から物理的に除去される状況を指す。
用語「直交するウイルス不活性化処理」は、ウイルスを不活性化するために、少なくとも2つの異なり、かつ独立した処理を実施することを含む。以下の非限定的な処理の例のうちの2つ以上の組み合わせを使用することができる。すなわち、熱不活性化処理、溶媒/界面活性剤(S/D)処理、ナノ濾過処理、低pH処理、紫外線照射処理、及びチオシアン酸ナトリウム処理。
「溶媒/界面活性剤(S/D)ウイルス不活性化処理」は、典型的には、脂質エンベロープを破壊することによって、エンベロープウイルス又は脂質被覆ウイルスを不活性化するプロセスを指す。この処理は、界面活性剤(Triton X−45、Triton X−100、又はポリソルベート80など)及び溶媒[リン酸トリ(n−ブチル)(TnBP)、リン酸ジアルキル又はリン酸トリアルキルなど]の添加によって実施され得る。脂質被覆ウイルスを非活性化するために用いられる溶媒−界面活性剤の組み合わせは、例えば、TnBPとTriton X−100の組み合わせ、ポリソルベート80とコール酸ナトリウムの組み合わせ、及び他の組み合わせなど、当該技術分野において周知である任意の溶媒−界面活性剤の組み合わせであり得る。
使用する溶媒/界面活性剤の濃度は、例えば、米国特許第5094960A号及び同第4789545A号で実施されるような、当該技術分野において一般的に用いられる濃度であり得る。本発明の一実施形態では、0.1%超のTnBPと0.1%超のTriton X−100の組み合わせが用いられる。本発明の別の実施形態では、1%のTriton X−100と0.3%のTnBPの組み合わせが用いられる。典型的には、溶媒−界面活性剤がウイルスを不活性化する条件は、5〜8のpH値で10〜100mg/mLの溶媒/界面活性剤、及び2〜37℃の温度にて30分〜24時間からなる。しかしながら、溶媒/界面活性剤の他の組み合わせ、及び他の好適な条件が、当業者には明らかであろう。この不活性化は、S/Dによる処理及びS/Dの除去を含む。
「熱不活性化」は、典型的には、熱が脂質エンベロープ及び非エンベロープウイルスの両方を破壊するプロセスを指す。「熱不活性化」は、用語「低温殺菌」と置き換え可能である。熱不活化は、59.5〜60.5℃の範囲の温度にて9〜10.5時間にわたって行われ得る。例えば、不活性化は、60℃にて10時間にわたって行われ得る。スクロース及びグリシンなどの安定化剤が、熱不活性化工程中に物質に添加され得る。
「ナノ濾過」は、典型的には、Planova(商標)20N、35N、及び75N;Viresolve/70(商標)、Viresolve/180(商標)などのナノメートルスケールのフィルターを使用することによって、脂質エンベロープウイルス及び非エンベロープウイルスを試料から除外するプロセスを指す。フィルターは、70nm未満、好ましくは15〜50nmの孔径を有し得る。しかしながら、サンプルからウイルスを低減又は排除するのに十分な孔径を有する任意の膜を、ナノ濾過で採用することができる。ナノ濾過によって除去されるウイルスは、エンベロープを有するもの[例えばHIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバールウイルス(EBV)、単純ヘルペスウイルス]、及びエンベロープのないもの(例えば、A型肝炎ウイルス、パルボウイルスB19、ポリオウイルス)であり得る。
低pH処理は、典型的には、エンベロープウイルスに対して有効である。本発明の一実施形態では、血小板溶解物は、低pH、典型的にはpH 4にさらされ、6時間〜21日間続く。「低pH処理」は用語「酸性pH不活性化」と置き換え可能である。
本発明の一実施形態では、抽出物調製物の第1のウイルス不活性化工程は、エンベロープウイルスを排除するための血小板の溶媒−界面活性剤(S/D)処理を含む。S/D処理はまた、血小板の溶解、及びそれらの含有物の溶液中への放出を促進する。最適なエンベロープウイルス不活性化では、凝集物除去(例えば、濾過による)を含むサブ工程が、S/D処理工程中に行われ得る。
用語「複数のドナーからの血小板富化分画」は、少なくとも2つの個体から得られる血小板富化物質を指す。個体は、ヒト又は他の哺乳類であり得る。いくつかの実施形態では、血小板は、5〜12のドナーから採取される。
用語「血小板富化分画」は、血小板の濃度が血液中で通常認められる血小板の濃度より高い血漿組成物を指す。特定の実施形態では、血小板濃度は、血小板の通常のベースライン濃度、例えば、血小板約200,000個/μLよりも高い。例えば、血小板濃度は、血液中の通常の濃度の少なくとも1.1、1.2.1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100倍若しくはそれ以上であってもよい。特定の実施形態では、血小板富化分画は、血小板が、約200,000個/μL、300,000個/μL、400,000個/μL、500,000個/μL、600,000個/μL、700,000個/μL、800,000個/μL、900,000個/μL、1,000,000個/μL、1,100,000個/μL、1,200,000個/μL、1,300,000個/μL、1,400,000個/μL、1,500,000個/μL、1,600,000個/μL、1,700,000個/μL、1,800,000個/μL、1,900,000個/μL、又は2,000,000個/μLを超える血小板濃度を有する。
血小板富化物質を得ることができる分画としては、血液分画、血漿分画、アフェレーシスから得た洗浄及び白血球低減を行った血小板、及びアフェレーシスから得た血小板が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、複数のドナーからプールした洗浄及び/又は白血球低減血小板が、血小板抽出物の調製のための出発物質として使用される。
抽出物を調製するための出発物質として洗浄血小板を使用することで、血漿不純物が減少した(IgG及びフィブリノーゲンレベルが低減した)非凝血性血小板抽出物を得ることができる。
典型的には、用語「血小板出発物質」は、本発明の方法で使用するために複数のドナーから得た、血小板富化分画を指す。血小板富化分画は、例えば、全血単位から、血液分画から、及び/又は血漿分画から分離され得る。血小板富化分画は、アフェレーシス献血から得ることができる。出発物質は、洗浄及び/又は白血球低減され得る。本発明の一実施形態では、血小板富化分画は、洗浄及び白血球低減を行い、アフェレーシス献血から得られる。一実施形態において、アフェレーシス白血球低減収集単位中の血小板の最小数は、「Circular of Information for the Use of Human Blood and Blood Components」に明記されている通り、約3.0×1011以上である。
用語「洗浄血小板」は、洗浄工程に供された血小板を指す。洗浄手順の間、血小板の損失も起こり得る。洗浄は、少量のデキストロースと共に、又は少量のデキストロースなしで、0.9%の塩化ナトリウムを、用いて行われ得る。洗浄手順は、「Circular of Information for the Use of Human Blood and Blood Components」に詳述されている通りに行われ得る。本発明の一実施形態では、洗浄は次のように行われる。血小板物質単位を緩やかな条件下で遠心分離する。次に、上澄みを廃棄し、血小板ペレットを、緩やかな条件下において生理食塩水で(洗浄の合間に遠心分離しながら)少なくとも2回洗浄する。洗浄され、再懸濁された血小板は、本発明の方法で使用するまで凍結させることができる。
用語「白血球低減」は、全血中の白血球含有量未満の白血球含有量を指す(全血中の含有量は、血液単位当たり約1〜10×109白血球である)。任意の白血球の低減方法(例えば、濾過による)を用いて、白血球低減単位(leukocyte-reduced unit)を得ることができる。白血球の低減は、アフェレーシス中に実施され得る。典型的には、約5×106個未満の白血球を含有する血小板の白血球低減単位を、血小板抽出物の調製のための出発物質として使用する。
用語「アフェレーシス」は、典型的には、一部(例えば、血小板)が分離されて保持され、残りはドナーに返血される、単一ドナーからの採血を指す。単一ドナーから得られるアフェレーシス血小板の一単位は、約3.0×1011個又はそれ以上の血小板を含有し得る。本発明の一実施形態では、単一ドナーから得られるアフェレーシス血小板の一単位は、最大6.0×1011個までの血小板を含有する。多くの場合、1回の献血中に6×1011個を超える血小板が存在するときには、献血単位は2つの別個のバッグに分けられる。
用語「両親媒性(amphiphilic)ポリマー」又は「両親媒性(amphipathic)ポリマー」は、親水性(水に対して親和性を有する、極性)特性及び親油性(脂質に対して親和性を有する)特性の両方を有するポリマーである。親油性基は、典型的には、式CH3(CH2)nの長鎖(n>4)などの大きな炭化水素部分である。一実施形態では、親水性基は、以下の分類のうちの1つに入る。
1.荷電基:
アニオン性.Rによって表される分子の親油性部分を有する例は、
カルボキシレート:RCO2−;
スルフェート:RSO4−;
スルホネート:RSO3−;
ホスフェート:リン脂質中の荷電官能基
カチオン性.例:
アミン:RNH3+
2.極性、非荷電基.例は、ジアシルグリセロール(DAG)などの大きなR基を有するアルコール、及び長いアルキル鎖を有するオリゴエチレングリコールである。
多くの場合、両親媒性種は、いくつかの親油性部分、いくつかの親水性部分、又はこの両方を有する。タンパク質及び一部のブロックコポリマーはこのような例である。
両親媒性化合物は、親油性(典型的には炭化水素)構造と親水性極性官能基(イオン性又は非荷電のいずれかの)を有する。
親油性及び親水性部分の両方を有する結果として、いくつかの両親媒性化合物は、水中で溶解することができ、かつ、非極性有機溶媒中である程度まで溶解することができる。
水性溶媒及び有機溶媒からなる非混和性の二相系中に配置される場合、両親媒性化合物は、2つの相に分割されるであろう。疎水性部分及び親水性部分の範囲は、分割の範囲を決定する。
非毒性両親媒性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化ポリエチレン(PEO)、ポリ(2−アクリルアミドヘキサデシルスルホン酸(PAMC16S)、リポポリ(2−メチル−2−オキサゾリン類(LipoPOxs)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリ−L−リジン(PLL)のような遺伝子治療に使用されるトリス(ヒドロキシメチル)−アクリルアミドメタン(THAM)カチオン性ポリマーから誘導された両親媒性ポリマー、及びポリエチレンイミン(PEI)系ポリマーである。
典型的には、用語「非毒性」は、使用される投与量及び濃度で患者に対して非毒性であり、即時的又は長期的のいずれかでも、健康に悪影響を引き起こすことがない生成物、物質、又は化学化合物を指す。非毒性又は生理学的に安全な化合物は、500mg/kg以上、より適切には950mg/kg以上、及び最適には2000mg/kg以上のLD50(ラット)を有する化合物として理解される。
本発明の一実施形態では、両親媒性ポリマーは、炭化水素系界面活性剤である。
用語「炭化水素系界面活性剤」は、液体の表面張力、2つの液体間の界面張力、又は液体と固体との間の界面張力を低下させる炭化水素化合物である。炭化水素界面活性剤は、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、及び分散剤として作用し得る。
用語「接触させる」は、本明細書では広義に使用され、例えば、S/Dで処理された物質又は原料中で、両親媒両親媒性ポリマーを、存在する対象因子(例えば、成長因子、サイトカイン、ケモカイン及び/又は栄養因子)と十分に近接する状態にもっていき、該両親媒性ポリマーと該因子との間で結合相互作用が生じるようにする、任意のタイプの組み合わせ作用を指す。接触させるは、両親媒性ポリマーをS/Dで処理された物質に混合する、混和する並びに/若しくは添加すること、及び/又は両親媒性ポリマーをHICカラムを洗浄するために使用される緩衝液に、並びに/若しくはS/Dを抽出するために使用される油中に添加することを含むが、これらに限定されない。
ポリマーは、約200〜50000ダルトン以下の平均分子量を有することができる。本発明の一実施形態では、両親媒性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。PVPは、12〜30Kの範囲内であるか、又は約12、13、14、15、16、117、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30Kであり得る。
本発明の一実施形態では、両親媒性ポリマーは、3500〜40000ダルトンの範囲の平均分子量を有するポリビニルピロリドンである。例えば、使用されるPVPは、3500ダルトンの平均分子量及び/又は10.2〜13.8の範囲のK値、8000ダルトンの平均分子量及び/又は16.0〜18.0の範囲のK値、30000ダルトンの平均分子量及び/又は22.5〜27.0の範囲のK値、又は40000ダルトンの平均分子量及び/又は27.0〜32.4の範囲のK値を有することができる。異なる両親媒性ポリマー及び/又は異なる平均分子量を有する同一のポリマーの組み合わせは、S/Dで処理された物質に接触させるよう使用され得る。一実施形態では、S/D除去の前に(例えば、材料をカラムに導入する前に)、30000ダルトンの平均分子量を有するPVPがS/Dで処理された物質に添加され、次いで30000ダルトンの分子量を有するPVPが、カラムを洗浄するために使用される緩衝液に添加される。
(0.3mM)1%以上のPVP K25の濃度は、SDR後の物質中のS/D物質、すなわち、Triton X−100の許容可能な限界以上の存在をもたらすことを見出した。
本発明の一実施形態では、両親媒性ポリマーを、S/Dで処理された物質に、0.01%(w/w)〜1%(w/w)未満の濃度範囲以内で、0.1%(w/w)〜1%(w/w)未満の濃度範囲以内で、又は0.01%(w/w)〜0.5%(w/w)未満の濃度範囲以内で接触させる。
次の工程では、S/D除去工程が行われる。用語「溶媒−界面活性剤除去(S/D除去)」は、S/D処理で使用した溶媒−界面活性剤の大部分の除去を指す。溶媒−界面活性剤の除去は、疎水性相互作用クロマトグラフィー、例えばC−18シリカ充填剤並びにSDR(溶媒−界面活性剤除去)HyperD;油抽出;これらの組み合わせ若しくは当該技術分野において既知の任意の他の方法を使用することを含む。
本発明の一実施形態では、油抽出が溶媒−界面活性剤を除去するために使用される。
液液抽出は、「溶媒抽出」及び「分割(partitioning)」、又は「除去分割」としても知られ、2つの異なる不混和性の液体中のそれらの相対的溶解度に基づいて化合物を分離するための方法である。これは、1つの液相から別の液相への物質の抽出である。2つの不混和性液体は、油及び水性液体であり得る。しばしば、このような場合、油及び水性分割を使用する物質の除去は、「油抽出」と呼ばれる。溶媒/界面活性剤を含む水性溶液へ油を添加し、混合して、水と油との間で分割させることにより、溶媒/界面活性剤の大部分が油相中に残ることになる。
本発明の別の実施形態では、SDR HyperD(空隙体積が三次元架橋疎水性アクリルポリマーで満たされている、シリカビーズからつくられたクロマトグラフィー充填剤)を使用して、溶媒−界面活性剤を除去する。SDR HyperDは、有利には、疎水性相互作用の混合モード吸着を伴い、分子排除効果に関連する[Guerrier Lら、「Specific sorbent to remove solvent−detergent mixtures from virus−inactivated biological fluids」.J Chromatogr B Biomed Appl.1995 Feb 3;664(1):119〜125]。
用語「疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)」は、例えば、疎水性ポリマー樹脂が充填されたカラムを指す。一般的に、混合物を、充填された樹脂を含むカラムを通して特定の流速で移動させて、S/D物質が除去される。HICは、バッチ式で行うことができる。
疎水性樹脂は、当該技術分野において周知である。非限定的な例は、例えば、C−18シリカ充填剤及びSDR(溶媒−界面活性剤除去)HyperDである。
疎水性相互作用クロマトグラフィーは、すなわち、S/Dで処理され、かつポリマーに接触させた物質をHICに導入する工程と、低濃度の有機溶媒(例えば、5〜15%の濃度範囲のエタノール)及び/又は塩(例えば、0.2〜1.2Mの濃度のNaCl)を任意選択で含む、水性溶液で洗浄する工程と、洗浄物質を回収する工程と、を含む、方法によって行うことができる。
塩の非限定的な例は、KCl、MgCl2、CaCl2等である。
有機溶媒の非限定的な例は、イソプロパノール、グリセロール、エチレングリコール等である。
用語「HICに導入する(loading to HIC)」は、物質をカラムに適用することを指す。しかしながら、所望される場合、同一の樹脂を「バッチ式」で使用してS/D材料を除去することができる。本明細書で使用される「バッチ式」は、樹脂及び混合物が、例えば撹拌タンク、バッチリアクター又は容器内で一緒にインキュベートされ、吸着が連続的な様式で行われる技術を一般的に指す。本発明の一実施形態では、容器、例えば管内で混合物を樹脂に接触させ、インキュベーション時間後に、容器が遠心分離され、血小板由来因子を含む上澄みが回収される(S/D材料は、沈殿物中に存在する)。バッチ方式は、容器又はバッチリアクター内で行うことができる。
用語「S/Dで処理され、かつポリマーに接触させた物質」は、上述のようにウイルス不活性化のためにS/Dに供され、両親媒性ポリマーに接触させた物質を意味する。
HICカラムに導入された材料は、結合緩衝液中で溶解され得る。カラムは、例えば、カラムを結合緩衝液で洗浄することにより、物質を導入する前に平衡化され得る。
用語「平衡化」は、カラムが、特定のpH値、特定の両親媒性ポリマー濃度及びイオン強度といった特定の緩衝液条件に達するようにすること、及び/又はカラムが該特定の緩衝液条件に達するように調整することを指す。本発明の一実施形態において、カラムの調整は、カラムにS/Dで処理され、かつポリマーに接触させた物質を導入する前に、所定のpH値及びイオン強度を有する平衡化緩衝液でカラムを洗浄することによって行われる。本発明の一実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMの酢酸ナトリウム及び10mMのグリシン(pH 6.8〜7.4)、並びに0.2%(総体積に対するw/w)のヒト血清アルブミン(HSA)及び0.1%の両親媒性ポリマーを含む。
本発明の一実施形態では、生物学的液体混合物から溶媒−界面活性剤(S/D)を除去するための方法は、S/D処理された混合物を、非毒性の両親媒性ポリマーに接触させる工程と、該混合物を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)及び/又は油抽出に供することによって、S/Dを混合物から除去する工程と、HICからのフロースルー分画及び/又は油抽出からの液体分画を含む物質を回収する工程と、を含む。
他の実施形態では、HICは、有機溶媒及び/又は塩を含む溶液で洗浄する工程を含む。
本発明の他の実施形態では、回収された材料は、HICの洗浄分画と組み合わされたフロースルー分画を含む。
用語「結合緩衝液」は、S/Dで処理され、かつポリマーに接触させた物質のクロマトグラフィーカラムへの導入の際に使用される緩衝液を指す。多くの場合、材料を導入する前及び/又は導入する間にカラムを調整するために用いられる平衡化緩衝液は、結合緩衝液と呼ばれる。本発明の一実施形態では、結合緩衝液は、20mMの酢酸ナトリウム及び10mMのグリシン(pH 6.8〜7.4)、並びに0.2%(総体積に対するw/w)のヒト血清アルブミン(HSA)及び0.1%の両親媒性ポリマーを含む。
HICはまた、HICを平衡化緩衝液及び/又は結合緩衝液で洗浄する工程と、非結合物質を回収する工程と、を含むことができる。
フロースルー又は非結合物質は、典型的には、平衡で使用したのと同じ緩衝液、及び/又は混合物をカラムに導入するのに使用した緩衝液(「結合緩衝液」)で導入されたカラムを洗浄した後に回収される分画を指す。
用語「洗浄」は、S/D除去工程中に、カラムへの導入及び/又はカラムの平衡化のために使用した溶液又は条件(condition)と同じ若しくは異なる溶液又は条件で、及び/又は前の工程で使用した溶液と同じ若しくは異なる溶液でカラムを洗浄することを指す。洗浄条件は、因子が洗浄され/非結合となるのに対し、S/Dがカラム/樹脂に実質的に結合したままであるような条件である。
洗浄条件は、塩濃度の増加及び/又は溶液中の有機溶媒を含むことを伴ってもよい。
血小板抽出物は、成長因子、栄養因子、ケモカイン及び/又はサイトカインの混合物を含んでもよい。
用語「成長因子」は、典型的には、細胞の成長、増殖、及び/又は分化を促進する作用剤を指す。成長因子の例としては、トランスホーミング成長因子(TGF)、例えば、TGF−b1、線維芽細胞成長因子(FGF)、例えば、bFGF、血管内皮成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、例えば、PDGF−AB、及び同類のものが挙げられるが、これらに限定されない。
用語「栄養因子」は、典型的には、細胞の分化及び/又は生存を刺激する作用剤を指す。栄養因子の例としては、接着分子、骨形成タンパク質、サイトカイン、Eph受容体チロシンキナーゼ、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子(FGF)、GDNF、ヘパリン結合成長因子、インスリン様成長因子、ニューロトロフィン、セマフォリン、トランスホーミング成長因子(TGF)β、チロシンキナーゼ受容体リガンド、及び同類のものが挙げられるが、これらに限定されない。
用語「サイトカイン」は、典型的には、細胞から分泌され、細胞間通信で広範囲に使用されるシグナル伝達分子の類別である細胞由来シグナル伝達タンパク質分子を指す。免疫細胞はサイトカインを放出する。
血小板因子は、成長活性、サイトカイン、ケモカイン活性及び/又は栄養活性を有し得る。
別の態様では、本発明は、本発明の方法により得られる複数のドナーから誘導された、活性でかつウイルス安全性のある(少なくとも二重にウイルス不活性化された)血小板抽出物、及びその使用に関する。ウイルス安全性のある血小板抽出物は、生理活性血小板細胞成長因子、ケモカイン、サイトカイン及び/又は栄養因子の混合物を含む。
別の態様では、本発明は、溶媒−界面活性剤(S/D)などの両親媒性毒性分子を、両親媒性毒性分子を含む生物学的液体混合物から除去するための方法に関する。この方法は、両親媒性毒性分子を含む生物学的液体混合物を提供する工程と、この混合物を、PVPなどの非毒性両親媒性ポリマーに接触させる工程と、両親媒性毒性分子を混合物から除去する工程と、を含む。
典型的には、両親媒性毒性分子として、Triton X−45、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80)、Brij(ポリエチレングリコールラウリルエーテル、例えば、Brij 30、Brij 35、Brij 58)、IGEPAL(オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、例えば、IGEPAL CA−630)等が挙げられるが、これらに限定されない。
用語「生物学的液体混合物」は、組換え成分及び/又は組換え血小板由来因子(例えば、ケモカイン、成長因子、サイトカイン、栄養因子又はこれらの組み合わせ)を含む生物学的原料及び/又は液体から得られる任意のタイプの液体物質を指す。「生物学的原料」としては、典型的には、限定されるものではないが、全血漿又は血液分画、例えば、低温析出後の血漿、クリオプレシピテート、血漿又は血清;精液;痰;糞便;汗;唾液;鼻粘液;脳脊髄液;多血小板血漿放出物PRP−R(PRP−放出物)などの血小板由来の分画;及び尿から得られる調製物、並びに細胞が調製物中に分泌する生体物質を含有する又はもとは細胞内部に存在し、細胞の溶解又は細胞の活性化などの様々な操作に起因して液体調製物に放出された物質を含有する細胞培養液から得られる液体が挙げられる。
用語「クリオプレシピテート」は、全血より調製した凍結血漿から得られる血液成分を指す。クリオプレシピテートは、凍結血漿を低温、通常は0〜4℃の温度で解凍すると、フィブリノーゲン及び第XIII因子を含む沈殿による上清が形成されることで得ることができる。この沈殿物は例えば遠心分離によって回収することができる。BAC溶液は、例えば、米国特許第6,121,232号及び国際公開第9833533号に記載されるように、第VIII因子、フィブロネクチン、フォンヴィレブランド因子(vWF)、ビトロネクチン等を更に含む。
一実施形態では、本発明によるS/Dを除去するための方法は、生物学的液体調製物のウイルス不活性化のためのプロセス後に使用することができる。血液及び血漿調製物などの生体由来の液体調製物は、複数の生物学的に有用な化合物を精製することができる原料物質として用いられる。かかる化合物の例としては、免疫グロブリン、第VIII因子、アルブミン、α−1−アンチトリプシン(a 1 anti trypsine)、第IX因子、第XI因子、PPSB、フィブリノーゲン、及びトロンビン(プロトロンビン)が挙げられる。更に、ホルモン、成長因子、酵素、リガンド及び抗体などの様々な生物学的生成物は、細胞培養液から得られる生物学的調製物から単離される。
更に、別の態様では、本発明は、0.07〜6mMの濃度範囲のPVP及びケモカイン、成長因子、サイトカイン、栄養因子又はこれらの混合物を含む血小板由来タンパク質組成物を含む医薬組成物に関する。
0.9mM(最終生成物で6mM)の濃度のPVPを使用してS/Dの除去を実行することは、170ppmの最終濃度まで、Tritonの98%の除去をもたらすことが本明細書で示されている。カラム処理後に物質中に残留する微量のTriton X−100は、最終生成物中でTritonの痕跡が検出されなくなるまで後続処理加工において除去された。これらの結果を踏まえると、0.9mMよりも高い濃度でPVPを使用することは、下流では除去され得ない濃度におけるカラムから溶出をもたらし得る。
用語「医薬組成物」は、被験体に投与されるとき、局所及び/又は全身作用によって、生理学的及び/又は生物学的効果(例えば、細胞増殖、細胞運動性、細胞間相互作用、及び/又は細胞の形体的変化の誘導)を誘導する物質の任意の化合物若しくは組成物又は構成成分の組み合わせを指す。
S/D除去中にPVP K12及びPVP K25を使用することによって、WAP出発物質中の比率に匹敵する因子の比率を有する組成物を得ることが可能である。
約0.3〜0.4の範囲のPDGF−AB/TGF−β1、約41〜約102の範囲のPDGF−AB/VEGF、約1500〜約1700の範囲のTGF−β1/bFGF、及び/又は約6.0〜12.5の範囲のVEGF/bFGFを有する組成物が開示される。
本明細書で使用する用語「被験体」は、ヒトを含む哺乳類起源の動物を含む。一実施形態では、被験体はヒトである。
本発明により調製されたウイルス安全性のある血小板抽出物は、任意の治療目的に使用され得る。
本発明の抽出物は、任意の治療的使用に、例えば、被験体の損傷組織の治癒を促進するために好適である。血小板抽出物は、標的領域への注射用に又は静脈内投与用に使用され得、包帯、発泡体、パッド、及びマトリックス上に適用される/投与されることができ、並びに/又は局所適用のためにフィブリンシーラントと組み合わされて使用され得る。抽出物は、包帯、パッド、発泡体、及びマトリックスなどの様々な送達剤から、所望の場所の中/上に放出され得る。この剤は、天然及び/又は合成材料で作製され得る。かかる物質の例としては、ポリマー、ヒドロゲル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、ゼラチン、アルギネート、コラーゲンマトリックス、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)[PHEMA]、寒天、酸化再生セルロース(ORC)、自己組織化ペプチド[SAP]、ポリ(グリコール)酸、ポリ(乳)酸、フィブリン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
PVPを含む、本発明により得られた血小板抽出物と組み合わせてのフィブリンシーラントの投与は、インビボでの治癒に著しく良好な効果を有した。すなわち、これは、組織学的検査を使用して示されるように、フィブリンシーラント単独群又はシャム群(同じ皮弁作製処置を受けたが、皮弁閉鎖の前にいかなる処置も適用されなかった動物)と比較して、皮弁付着を促進し、治癒プロセスを加速した。
用語「任意の治療目的」は、化粧用途のため、及び/又は被験体における任意の疾病、疾患、又は病状のための、任意の治癒的又は予防的治療を指す。例示的な治療目的としては、移植片統合の改善;内部又は外部創傷の早期治癒(すなわち、非処置の創傷又は他の既知の創傷治療に比べて創傷を迅速に治癒させること);血管形成、有糸分裂誘発、細胞増殖、好中球及びマクロファージ、コラーゲン合成、遊走、創面収縮、細胞外マトリックス合成、上皮形成、及び走化性を刺激することが必要な任意の外傷又は病状の治療;組織生成、再生、又は再組織化、上皮形成、新血管形成、又は血管形成が必要な外傷又は病状の治療;瘢痕形成を少なくすること;術後合併症及び死亡率を低減すること;例えば外科的皮弁破損部、切断部又は潰瘍などの治癒などための、軟組織の治癒(例えば皮膚創傷の治癒)、が挙げられるが、これらに限定されない。開示された組成物は、局所的経路又は非経口経路によって投与され得る。
血小板抽出物は、整形外科(例えば、骨修復、関節軟骨修復、膝関節形成術、腰椎固定術、及び椎間板変性において);口腔外科;歯科及び顎顔面外科(例えば、チタンインプラントの圧密、上顎洞底挙上術、及び骨再形成);筋肉、腱及び靱帯修復のため;顔面成形手術及び再建外科;慢性的な皮膚創傷の治癒、皮膚火傷治癒、眼科学;顔面神経再生、末梢神経修復、中枢神経系(CNS)修復(脊椎及び/又は脳外科手術)、視神経修復、神経圧迫症候群修復、脳神経修復、坐骨神経修復;心臓手術、胃腸手術及び肥満手術などであるが、これらに限定されない、様々な手術分野で使用される。抽出物は、患者の身体部位の表面上に投与され得る。用語「表面」は、裸眼視力で見ることができる外部表面、及び生物の内部構造の一部である内部身体部位の表面を指す。外部表面としては、顔の皮膚、喉、頭皮、胸、背中、耳、首、手、肘、臀部、膝、及び他の皮膚部位が挙げられるが、これらに限定されない。内部身体部位の例としては、外部環境に露出される体腔又は解剖学的開口部、及び鼻孔、唇、耳、子宮、膣、及び卵巣などの生殖器部、肺、肛門、脾臓、肝臓、心筋、並びに胃腸管などの内部器官が挙げられるが、これらに限定されない。表面は、出血性又は非出血性部位であってよい。あるいは、抽出物は、例えば、皮内、腹腔内、皮下、髄腔内、胸骨内、頭蓋内、脳内、筋肉内、及び/又は静脈内に注射によって投与され得る。抽出物はまた、点滴によって投与され得る。
本発明はまた、本発明による抽出物の治療的有効量を、必要とする被験体に投与することを含む、炎症治療、組織治癒、臓器再構築、及び/又は組織再生の方法を提供する。
本発明による抽出物は、種々の細胞型、例えば幹細胞の成長、増殖、分化及び/又は維持を促進するために使用され得る。この目的のために、抽出物は、インビボ及び/又はインビトロの用途において、単独で又はフィブリンシーラントと組み合わせて使用され得る。一実施形態では、抽出物は、生体適合性のインプラントと共に、例えばインビボのティシューエンジニアリングのために、並びにインビトロの細胞培養のために使用され得る。
用語「治療的有効量」は、疾病、疾患、又は病状を予防する又は治療する(ある症状又は全ての症状を緩和する)のに必要な用量を指す。有効量は、組成物の投与に応答した、疾病の経過中の任意の変化に基づいて判断され得る。有効用量は、被験体の年齢及び体重、疾患及びその重症度(例えば、早期か末期か)、並びに当業者によって認識され得る他の要因に応じて変えることができる。
抽出物は、薬学的に許容可能な賦形剤を含むことも可能である。本明細書で使用する用語「賦形剤」は、抽出物に添加される不活性物質を指す。典型的には、賦形剤は、医薬組成物の最終製剤中で使用される材料である。賦形剤は、例えば、貯蔵中に活性物質が化学安定性及び/又は生物活性を維持するのを確実にするよう、製造プロセスを支援するために、かつ/又は審美的理由で(例えば、色)添加され得る。添加される賦形剤は、一般に、安全かつ非毒性である。
本発明による血小板抽出物は、外科用封止剤と組み合わされて使用され得る。生物学的封止剤(例えば、フィブリノーゲン及びトロンビン成分で調製されるフィブリンシーラントなど)、アクリル酸、シアノアクリル酸、及びポリエチレングリコール(PEG)ポリマーなどの合成封止剤、並びに、例えばゼラチン−ホルムアルデヒド−レゾルシノール(GFR)接着剤などの生物学的材料及び合成材料の混合物から作られた半合成封止剤などであるが、これらに限定されない、異なる種類の外科用封止剤を、血小板抽出物と組み合わせて使用することができる。本発明の一実施形態では、血小板抽出物は、フィブリンシーラント成分と組み合わせて使用される。本発明の別の実施形態では、血小板抽出物は合成封止剤と共に使用される。
所望される場合、本発明の方法によって得られる血小板抽出物は、例えば、凍結乾燥、超臨界流体技術、スプレー凍結乾燥、スプレーコーティング、従来の噴流床による乾燥などのスプレーコーティングの改変型、霧化がない溶媒蒸発に基づく他の乾燥法(例えば、真空乾燥、Xerovac1、泡沫乾燥、膜乾燥)若しくはスプレー乾燥によって乾燥させることができる。乾燥の前に、抽出物は抗凍結剤と配合され得る。
用語「抗凍結剤」は、凍結中に活性成分(例えば、成長因子、ケモカイン、サイトカイン及び/又は栄養因子)の化学安定性及び/又は生物活性を維持するために溶液に添加される物質を指す。抗凍結剤の非限定的な例としては、例えば、単糖類としてグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース、及びリボシドサッカライド(ribosedisaccharides);二糖類としてスクロース、ラクトース、マルトース、及びトレハロース;並びに二糖類、オリゴ糖(Disaccharides oligosaccharides)などの炭水化物を挙げることができるが、これらに限定されない。他の群はポリオール(糖アルコール:マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、及びイソマルト)である。炭水化物とは別に、ポリエチレングリコール(PEG)などの他のポリマーを抗凍結剤として使用することが可能であり、ポリエチレンオキシド(PEO)若しくはポリオキシエチレン(POE)、又はアミノ酸並びにポリアミンなども可能である。
用語「凍結乾燥」は、典型的には、物質を凍結した後、例えば昇華によって、生体反応又は化学反応の助けとならないレベルまで水分濃度を低減させるプロセスを指す。得られた凍結乾燥生物的物質は、比較的長期間にわたって貯蔵することが可能である。貯蔵後、凍結乾燥物質は、粉末として使用することができるか、又は様々な量の水溶液の添加によって復元することができる。復元の間に添加される量は、凍結乾燥前の溶液の体積と同様か、それより少ないか(出発物質の体積と比較すると抽出物の濃縮物が得られる)、又はそれより多い(出発物質の体積と比較すると抽出物の希釈物が得られる)場合がある。
所望により、血小板抽出物は、長期貯蔵の目的で又は粉末として使用するために、例えば、凍結された状態で又は固体として保存され得る。
例えば、本発明の方法によって得た血小板抽出物は、長期貯蔵を目的として、例えば−18℃又はそれより低い温度で冷凍保存されることができ、又は(例えば、凍結乾燥された)固体として保存され得る。血小板抽出物はまた、例えば2℃〜8℃の温度で冷蔵され得る。
凍結乾燥された抽出物は、固体として使用されてもよく、又は使用に先立って薬学的に許容可能な担体中で復元されてもよい。用語「薬学的に許容可能な担体」は、ヒトへの投与又は動物への投与に適した任意の希釈剤及び/又はビヒクルを指す。担体は、生理食塩水、塩化ナトリウム溶液、乳酸加リンガー(LR)、通常生理食塩水中の5%デキストロース、及び注射用水などであるが、これらに限定されない、当該技術分野において周知の担体のいずれかから選択することができる。
フィブリンシーラントと共に投与する場合、抽出物は、封止成分(トロンビン又はフィブリノーゲン)のうちの1つにおいて復元することができるか、又は別の希釈剤又はビヒクルの中で別々に復元されることができる。
有利には、凍結乾燥サイクル及びその製剤は、例えば緊急な使用を必要とする止血及び治癒を容易にするため、例えばフィブリンシーラント内での抽出物の非常に迅速な復元を可能とすることができ、この場合には、復元は数秒以内に有利に行われる。本発明の一実施形態では、迅速な復元を可能にするため、アルブミンが製剤中に用いられる。
本発明の方法により得られる抽出物は、濃縮され得る。濃縮は、任意の工程で、例えば、S/D除去工程の直後に又は後工程で行うことができる。濃縮は、材料の透析濾過によって、かつ/又は凍結乾燥された抽出物を、凍結乾燥前のその体積よりも小さい体積に復元することによって、達成され得る。
本発明はキットを提供する。キットは、本発明による抽出物を含む容器を含み得る。抽出物は、固形物形態で、例えば凍結乾燥されて、溶液として、又は凍結した形態であり得る。抽出物が固形で提供される場合には、キットは、固形抽出物を復元するための薬学的に許容可能な担体を有する容器を更に含み得る。キットは、抽出物を患者に注射するための1つ以上の注射器及び/又は注射針を更に含み得る。キットは、使用説明書を更に含み得る。説明書は、抽出物を患者に投与するための方法を説明していてもよい。本発明はまた、フィブリンシーラント、合成封止剤、及び/又は別の可能な送達剤の成分を収容する容器と、本発明の抽出物を収容する容器と、使用説明書と、を含むキットに関する。任意に、本発明の抽出物は、フィブリンシーラントの一成分の容器の中に入れられてもよい。また、本発明は、凍結乾燥された抽出物を収容する容器と、復元溶液又は担体を収容する容器と、使用説明書とを含むキットに関する。
フィブリンシーラント成分は、血液組成物から調製され得る。血液組成物は、全血液、又は血液の一部、すなわち、血漿などの全血液の生成物であり得る。
本発明の一実施形態において、フィブリノーゲン成分は、トラネキサム酸及びアルギニン若しくはリジン、又は混合物、若しくはアルギニン及びリジン、又はそれらの薬学的に許容可能な塩を更に含み得る血漿由来のタンパク質の溶液である生物活性成分(BAC)からなる。BACは、クリオプレシピテート、特に濃縮クリオプレシピテート由来であってよい。
BAC組成物は、塩酸アルギニンなどの安定化剤を含み得る。一般的に、BAC中のフィブリノーゲンの量は、約40〜約60mg/mLの範囲である。BACの溶液中のトラネキサム酸の量は、約80〜約110mg/mLでありうる。塩酸アルギニンの量は、約15〜約25mg/mLでありうる。
必要に応じて、溶液は生理学的適合性を有するpH値に緩衝化される。緩衝液は、グリシン、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及びビヒクルとしての注射用水から構成されうる。グリシンは組成物中に約6〜約10mg/mLの量で存在してよく、クエン酸ナトリウムは約1〜約5mg/mLの範囲でよく、塩化ナトリウムは約5〜約9mg/mLの範囲でよく、塩化カルシウムは約0.1〜0.2mg/mLの濃度でよい。必要に応じて、BAC成分は、3〜60mg/mLのフィブリノーゲンを含むよう希釈され得る。希釈は、例えば、グリシン、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び注射用水を含む溶液を使用して行うことができる。
一実施形態では、使用されるトロンビン成分は、100〜1200IU/mLの範囲であり得る。
所望の場所に液体フィブリンシーラント製剤を適用する際、フィブリノーゲン含有成分とトロンビン含有成分とは任意の所望の範囲の比で適用することができる。例えば、フィブリノーゲン成分の濃度が3〜60mg/mLであり、トロンビン成分の濃度が約10〜1200IU/mLである場合、これらの2つの成分はそれぞれ、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1等の比で混合することができる。本発明の一実施形態では、液体フィブリンシーラントの成分は、3:1の比で適用される。
別の実施形態では、BAC組成物中のプラスミノーゲン及びプラスミンの濃度を、例えば、米国特許第7,125,569号及び国際公開第02095019号に記載の方法を用いて、15μg/mL以下、例えば5μg/mL以下のプラスミノーゲンにまで低下させる。この場合、トラネキサム酸、アプロチニン又は任意の他の繊維素溶解阻害剤をBACに添加する必要はない。
フィブリンシーラントは、Ca2+、第VIII因子、第XIII因子、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フォンヴィレブランド因子(vWF)などのクロットの形成を促す成分を含むことも可能であり、これらの成分は、別々の成分として提供されるか又はフィブリンシーラント成分と配合され得る。
血液組成物由来のフィブリンシーラント成分は、典型的には、感染性粒子から精製される。精製手順は、ナノ濾過、溶媒/洗浄剤処理によって、及び/又は当技術分野で既知の任意の他の方法によって、実施され得る。
用語「感染性粒子」は、微生物又はプリオンのような微細粒子を指し、これらは生物有機体の細胞に感染するか又は伝搬し得る。感染性粒子はウイルス粒子であってもよい。
本発明に従って調製される血小板抽出物は、種々の細胞型、例えば、線維芽細胞及び幹細胞、例えば、内皮幹細胞、例えば、HUVECと共に使用され得る。細胞型は、意図する治療的使用に従って決定され得る。例えば、椎間板の再生では、脊索由来の細胞を含む細胞組成物を使用することができる。血管形成の誘発では、内皮幹細胞を使用することができる。
以下の例は例示であり、限定するものではない。
材料及び方法
白血球低減洗浄アフェレーシス血小板(WAP)調製物
血小板物質単位(白血球低減アフェレーシス血小板単位)を収集し、「Circular of Information for the Use of Human Blood and Blood Components」(2009年12月)に従って処理し、FDA及びUS Department of Healthの適用法令及び規則に適合させた。各単位は、およそ200mLの量を有した。各単位は、検査され、FDAの規制、要件、及びガイドラインに基づいて輸血可能な血液成分の提供にふさわしいと判断された単一ドナーから採取された。FDAによって承認されたキット及び方法(B型肝炎ウイルス表面抗原;B型肝炎ウイルスコア抗原に対する抗体;C型肝炎ウイルス抗体;ヒトT細胞白血球ウイルス1型及び2型抗体;ヒト免疫不全ウイルス1型及び2型抗体;核酸増幅検査(nucleic acid technology testing)(NAT)によるHIV−1;NATによるHCV RNA;NATによるウエストナイルウイルスRNA;及び梅毒血清検査)を用いることによって、赤血球抗体に対し非反応性であり、かつこれらウイルスに対して陰性であることが判明した単位のみが含まれた。白血球低減アフェレーシス収集単位中の血小板の最小数は、情報の回状に定められた通り、3.0×1011以上(単一全血単位中の血小板の数は、5.5×1010以上)であった。
全単位は、洗浄工程まで、輸血の推奨条件下で維持された(FDAによって承認された血液採取、処理、及び貯蔵システムの使用法を参照のこと)。
洗浄手順
各単位は、無菌条件下で次の通りに洗浄された。
1.各単位は、室温にて4658×gで6分にわたって遠心分離された(破砕回転翼(rotor break)は使用しなかった)。こうした緩やかな条件下で、細胞の破損は回避された。
2.上澄みを廃棄し、無菌連結された(無菌状態を維持するために、閉鎖システムにおいて容器間で液体を移送する方法)200mLの生理食塩水中で血小板ペレットを復元した。
3.工程1で指定されたのと同じ条件で第2の遠心分離を行った。
4.生理食塩水を廃棄し、ペレット化血小板を無菌連結された生理食塩水200mLの中に再懸濁した。
5.洗浄され、再懸濁された血小板を−20〜−30℃で凍結した。凍結工程は、先の工程から4時間以内に行われた。
白血球低減血小板アフェレーシス単位の慎重に実施された上記収集及び洗浄手順は、血液収集センターで行われた(Rock River Valley Blood Center,Rockford,IL/FDA License #249)。最終WAPバッグは、調製日から2か月以内に実験用に供給された。これらの単位は、ドライアイスの上で凍結された状態で受領した。
更なる処理の前に、個々の凍結単位(バッグ)を解凍し、次いで一緒にプールし、又は凍結及び解凍しながら一緒にプールした。解凍処理は、RK1頭上撹拌機(Heidolph Instruments,Germany)に接続されたステンレス鋼のプロペラを使用して30RPMで撹拌しながら、25℃で行った。
成長因子の回収率
試料中のいくつかの成長因子の濃度を、特定の市販のELISAキット(R&D Systems,MN USAによるQuantikine:ヒトTGF−β1カタログ番号DB100B、ヒトFGF塩基性カタログ番号HSFB00D、ヒトVEGFカタログ番号DVE00、ヒトPDGF−ABカタログ番号DHD008、ヒトPDGF−BBカタログ番号DBB00、及びヒトEGFカタログ番号DEG00)を使用して検出かつ測定した。以下の全ての実験において、成長因子の含量を、試料をクロマトグラフィー樹脂に導入する前に(SDR前の物質)、及び樹脂から試料を回収した後に(溶媒及び界面活性剤除去後;SDR後の物質)溶解物中で測定し、S/D除去後の成長因子の回収の百分率を計算した。
細胞の計数
3T3−Swiss Albino線維芽細胞(ATCC,カタログ番号CCL92)を、接着性単層として増殖させた。2〜3日毎に、顕微鏡を用いて、フラスコを集密について調べた。
計数手順は、以下のように行った。
−培養基を吸引した。
−細胞層を10mLのPBSで簡単に濯ぎ、全ての微量の血清を除去した。
−5mLのトリプシン−EDTA(それぞれ0.05%及び0.02%)溶液を、175cm2のフラスコごとに添加し、細胞層がプレート表面から外れるまで(通常3〜5分以内)倒立顕微鏡下で細胞を観察した。
−10mLの完全成長培地[4mMのグルタミン(Biological Industries、Israel;カタログ番号03−020−1B)、10%のウシ胎児血清(FCS;HyClone,USA;カタログ番号SH30070.03)、ペニシリン(100U/mL)/ストレプトマイシン(0.1mg/mL)/アンフォテリシン(0.25μg/mL)溶液(P/S/A;Biological Industries,Israel;カタログ番号03−033−1B)を補充した、4.5g/lのグルコースを含有するDMEM:Biological Industries,Israel;カタログ番号01−055−1A]を添加し、浮遊細胞凝集塊/集塊群を、均質の細胞懸濁液が得られるまで、緩やかに上下に数回ピペット操作することによって分散させた。
−細胞懸濁液を50mLの管に移し、スインギングバケットローター内で、室温にて1000×gで4分間遠心分離した。
−上澄み(培地を含有する)を捨て、ペレット(細胞を含有する)を、3〜10mLの新鮮な上記の完全成長培地中に再懸濁させた。
−10μlの細胞懸濁液を、細胞計数用に血球計算器中に仕込んだ。
増殖アッセイ
1日目:
細胞を計数し(上記に詳述したように)、完全成長培地(GM)で細胞25,000個/mLの濃度まで希釈し、細胞溶液からの100μlを播種し、96ウェルプレートの列B〜Gに付着させた(2500細胞毎ウェルの最終細胞濃度)。列A及びHは空のまま残した。プレートを、5%のCO2を含む水ジャケット付きインキュベータ内で37℃にて24時間インキュベートした。
2日目:
成長培地を吸引し、プレートに付着した細胞を、飢餓培地[4mMのグルタミン、1%のMEM−EAGLE非必須アミノ酸(Biological Industries,Israel;カタログ番号01−340−1B、1%のヒト血清アルブミン(Plasbumin 25、Talecris Biotherapeutics,Germany)及びP/S/A(上記で列挙した濃度のもの)を補充した、4.5g/lのグルコースを含有するDMEM:](SM)で2回洗浄し、(各洗浄毎に約100μl/ウェル)、新鮮な100μl/ウェルのSMを全てのウェル(列A〜H)に添加した。プレートを、5%のCO2を含む水ジャケット付きインキュベータ内で37℃にて24時間インキュベートした。
3日目:
10μlの非希釈の又は系列希釈された被験物質/抽出物(所定の処理に従って調製)を、ウェルに添加し(3部ずつ)、5%のCO2を含む水ジャケット付きインキュベータ内で37℃にて、更に48時間インキュベートした。希釈試料を、飢餓培地による1:2又は1:3の6倍又は9倍の系列希釈を行うことによって調製した。
4日目:
10μlの細胞増殖測定用試薬WST−1(Roche Diagnostics,Mannheim,Germany;カタログ番号11−644−807;この試薬は、96ウェルプレートフォーマットを使用して、細胞集団中の細胞増殖、成長、生存率及び化学感受性の非放射性の分光測光定量用に使用されるよう設計されている)を各ウェルに添加した。5%のCO2を含む水ジャケット付きインキュベータ内で37℃にて4時間の追加のインキュベーション後、培地のみを含有するブランクウェル(列A+H)で機器のブランキングを行った後に、この96ウェルプレートを、ELISA読み取り器で450nm及び650nmで読み取った。
結果の評価
各ウェル毎に別個に、650nmでELISA読み取り器から得られた結果を、450nmで得られた結果から減じた。この値を、Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc.)によって更に解析した。バックグラウンド読み取りを低減するために、未処置のウェル(試験物質で処置されていない細胞を含有する)について得られた結果を、同じ96ウェルプレート上のウェルの全ての値から減じた。この得られた結果を使用して、物質の濃度の対数に対して、S字状用量反応曲線をプロットした。加えて、R2適合値、半有効濃度(EC50)、及び95%信頼区間のEC50値を、GraphPad Prismソフトウェアによって計算した。
トロンビン活性
トロンビン活性を、STart4血液凝固装置(Diagnostica Stago,Asnieres sur Seine,France)を使用した凝固時間測定によって評価した。このアッセイは、欧州薬局方アッセイ手順、1997、0903、p.858の改変型である。簡単に言うと、トロンビン標準を、0.1%のフィブリノーゲン含量のフィブリノーゲン溶液(Enzyme Research Laboratories,IN,USA)と混合することによって検量線を作成した。次いで異なる被験抽出物試料中のトロンビン濃度を、それらの凝固時間によって、検量線から計算する(濃度は検量線から内挿される)。測定の前に、被験抽出物試料を、トロンビン16IU/mL(Omrix,Israel)と1:1(w/w)で混合し、トロンビン8IU/mLの最終濃度に達した。検量線については、同じトロンビン16IU/mLの溶液を、1:1(w/w)で、トロンビン希釈緩衝液(0.4%のクエン酸三ナトリウム二水和物、0.9%の塩化ナトリウム及び1%のBSA、pH=7.5)と混合することによって、トロンビン8IU/mLの標準試料を調製した。処理に対して陽性の対照試料は、同じトロンビン16IU/mLの溶液を、S/Dで処理されず、かつヘパリン、LMWH又はPVPを含有しない血小板抽出物試料(実施例1のように調製)と1:1(w/w)で混合することによって作製した。トロンビン活性を、カラム処理の前後に各溶解物中で測定した。結果は、対照試料(100%のトロンビン活性とみなす)に対して示される。
以下の実験で使用したPVP
下の表30には、異なるPVPの濃度w/w及びそれらの対応するmMでの濃度が示されている。
PVPはそのK値、又はFikentscherの粘度係数(これは、平均分子量、重合度、及び固有粘度の関数である)によって特性が決定される。可溶性Kollidon等級の平均分子量は、欧州及び米国で有効な薬局方におけるK値の点から表わされる。
PVPポリマーは、モノマーが一緒に結合する重合反応によって製造される。重合反応の終結を調節することによって、異なる分子量のPVPが製造される。このことが、それぞれがMWの独自の範囲を有する、異なる種類のPVPを起こさせるもとである。PVPのMWを決定するために、いくつかの方法がある。
K値及び粘度は、置き換え可能でないことに留意されたい。K値は、水中の粘度から計算される。
以下の全ての実験において、列挙されたPVPの百分率は、w/w又はmMである。また、酢酸塩/グリシン/HSAの百分率は、w/wとして計算される。
以下の全ての血小板溶解調製物において、プールしたWAPの浸透圧モル濃度は、約260〜280mOsであった[The Advanced(商標)Micro Osmometer Model 3300(Advanced Instruments Inc,Norwood,MA,USA)を使用することによって測定した]。プロセスを通じて浸透圧モル濃度レベルを可能な限り一定に保つために、緩衝液の浸透圧モル濃度を監視し、必要であれば、NaCl(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)を使用して、該緩衝液の浸透圧モル濃度をWAP出発物質の浸透圧モル濃度に合わせて調整した。
実施例1:S/Dで処理され、ヘパリンと混合され、かつS/D除去に供された、プールした白血球低減洗浄アフェレーシス血小板(WAP)から調製した血小板抽出物
以下の実施例において、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によるS/D除去中の未分画ヘパリン[ヘパリンナトリウム−Fresenius 5000i.u./1mL(注用)Bodene(PTY)Limited,South Africa]を含有することの、TGF−β1、PDGF−AB、PDGF−BB、bFGF、VEGF、及びEGFの回収率に及ぼす効果を検討した。ヘパリンはいくつかの成長因子に結合することが知られているという理由から、ヘパリンを試験した。ヘパリンは、広範囲の分子量を有し、未分画ヘパリンとは、特定のより狭い範囲の分子サイズの単離又は選別がなかったことを意味する。
S/D除去を、SDR HyperD溶媒−界面活性剤除去クロマトグラフィー樹脂(Pall Corp)を使用して行った。SDR HyperDは、空隙体積が三次元架橋疎水性アクリルポリマーで満たされている、シリカビーズからつくられたクロマトグラフィー充填剤である。SDR HyperDは、疎水性相互作用の混合モード吸着を伴い、分子排除効果に関連する[Guerrier Lら、「Specific sorbent to remove solvent−detergent mixtures from virus−inactivated biological fluids」.J Chromatogr B Biomed Appl.1995 Feb 3;664(1):119〜125]。
2mLの樹脂を直径1cmのBio−Radカラムに充填した(小規模実験)。S/Dで処理された血小板溶解物試料を、5〜12個のバッグ(各バッグは、1人のドナーから得られる)から得られた965〜2328gのプールした白血球低減洗浄アフェレーシス血小板(WAP)を使用して調製した。20mMの酢酸ナトリウム、10mMのグリシン及び0.2%のヒト血清アルブミン(HSA)W/W(最終体積溶液から)をプールしたWAPに添加した。次の工程で、1%のTriton X−100及び0.3%のTnBPをこの溶液に加え、溶液をインキュベートし、血小板溶解及び抗ウイルス処理のために室温(22±2℃)にて2時間にわたり(チューブ回転装置で)混合した。次いで保存溶解物をバイアルに小分けし(14mLずつ)、凍結し、使用するまで−80℃で保存した。使用前に、小分けした溶解物を37℃の水浴中で解凍し、5μmのシリンジフィルターを通して濾過し、いかなる粒子状物質も除去し、ローラーミキサー上で少なくとも5分間混合した。
S/Dで処理された溶解物を導入する前に、樹脂を充填したカラムを、10mLの純水で洗浄し、溶解物の緩衝液に従いヘパリンを含む又は含まない10mLの酢酸塩−グリシン−HSA緩衝液(pH 6.8〜7.4)(「AGA」と簡略された;濃度は上記の通りである;以下の実験では、全てのAGAは6.8〜7.4のpHで使用した)(ヘパリンを含む又は含まないAGA)で平衡化した。次の工程では、10mLのS/Dで処理された溶解物を、試料2及び4(5IUのヘパリン/mL(50μlのヘパリンを50mLの血小板溶解物に添加した)でインキュベートされたもの)以外をカラムに導入し、その後溶解物をカラムに導入した。流速を、最大0.4mL/分に保持した。カラムに導入する前に、ヘパリンを含む又は含まない全ての試料を、チューブ回転装置で室温(22±2℃)にて20分間混合した。残りのS/Dで処理された溶解物質(カラムに導入されていないもの)を、1.5mLのバイアルに移し、成長因子濃度測定の分析用に−80℃で保持し、これを導入対照/SDR前の物質とみなした。
溶解物の導入後に、カラムに、それぞれ10mLの異なる緩衝液(下表1に示すような)を導入した。各緩衝液は、異なる成分を異なる濃度で含有した。この緩衝液のいくつかでは、ヘパリンをNaCl/エタノールと混合した。流速を0.8mL/分以下に保持した。導入後、及び緩衝液で洗浄後にカラムから得られた全ての分画を採集して混合し、回収された物質を、1mLのアリコートに分割し、成長因子の回収率の測定に進むまで−80℃以下で凍結させ続けた。この物質は、SDR除去後の物質とみなされた。
異なる成長因子の回収率(SDR前の物質に対する%)を表2に示す。
表2に提示した結果は、物質をSDRカラムに導入する前の、S/Dで処理された血小板溶解物のヘパリンとのインキュベ−ション(処理2及び4対1及び3)が、約53%〜約93までの又は97%までのbFGFの回収率における劇的な増加をもたらしたことを示している。PDGF−BBの回収率も増加したが、より少ない程度であった。
SDRカラムに導入する前のヘパリンとのインキュベーション及びヘパリンによる追加の洗浄工程の組み合わせを含んだ処理2及び4は、得られたPDGF−AB及びPDGF−BBを含む血小板抽出物の顕著な濃縮をもたらし、ヘパリン含有緩衝液の使用に先立って、ヘパリンを含有しない緩衝液でカラムを洗浄した処理2とは対照的に、導入の直後にヘパリンを含有する緩衝液で洗浄することによる処理4で更に増加している(それぞれ、61%及び92%)。
したがって、この結果は、S/Dの除去、例えばHICによる除去の前に、S/Dで処理された血小板溶解物をヘパリンに接触させることが、特定の成長因子、例えば、bFGF及びPDGF−BBの回収率を有利に増加させ得ることを示している。
実施例2:S/D除去前に溶解物をヘパリンと混合することにより調製された血小板抽出物の線維芽細胞増殖に及ぼす効果
以下の実施例において、S/D除去前に溶解物をヘパリンに接触させることによって調製された血小板抽出物の3T3−Swiss Albino線維芽細胞増殖に及ぼす生物学的効果を検討した。表1に記載された異なる4つの工程に従って調製された4つの抽出物を調べた。結果を図1に示す。
細胞増殖結果(図1)は、SDRカラムへの導入の前にヘパリンとのインキュベーションを含む処理2及び4から得られた試料が、ヘパリンとインキュベートされなかった処理1及び3によって得られる試料よりも、増殖誘導において著しく有効であったことを示している。処理2及び4によって得られる試料は、それぞれ0.99及び0.89のEC50を有したが、一方処理1及び3によって得られる試料は、それぞれ2.93及び2.4のEC50を有した。
これらの結果は、より高いGF回収率をもたらした、S/D除去前のヘパリンとのインキュベーションが、線維芽細胞増殖アッセイによって反映されるように、生物学的効果をも改善したことを立証している。
実施例3:S/D除去工程前のS/Dで処理された溶解物の低分子量ヘパリンとの混合の効果
低分子量ヘパリン(LMWH)は、15kDaの未分画ヘパリンに比べて約4.5kDaの平均分子量を有するヘパリンである。臨床現場においては、LMWHは、未分画ヘパリンを超えるいくつかの薬理学的利点及び実際的な利点を有する。LMWHは、細胞及びタンパク質に対する非特異的結合がより少なく、より長い血漿半減期を有し、したがって、皮下投与され得ることが示されている(Hirsh及びRaschkeら、Heparin and low−molecular−weight heparin:the Seventh ACCP Conference on Antithrombotic and Thrombolytic Therapy.Chest.2004;126:188S〜203S)。
以下の実験においては、HICによるS/D除去工程中に使用された様々な条件が、PDGF−AB、PDGF−BB、bFGF、VEGF、及びEGFの回収率に及ぼす効果を検討した(表3中の異なる条件を参照)。この実験では、エノキサパリンナトリウム(Clexane,Sanofi Aventis)を、低分子量ヘパリンとして使用した。
表3中に詳述された条件下で上記の実験で詳述された通りに、溶解物を調製し、次いでSDRカラムに導入した。導入の前に、導入された溶解物の緩衝液を使用して、平衡化を行った。導入後、及び緩衝液による洗浄後にカラムから得られた全ての分画を回収し、混合して、総成長因子回収率を計算した。処理2は、上記のヘパリンについて行ったものと同様な方法での5IU/mLのエノキサパリンとのインキュベーションを含んだ。結果を表4に示す。
表4に提示された結果は、S/D除去工程前の、エノキサパリンでのS/D処理された血小板溶解物のインキュベーション(処理2対1)、及び追加のエノキサパリン含有洗浄工程が、PDGF−AB、PDGF−BB及びbFGFの回収率を増加させたことを示している。
しかしながら、5IU/mLの未分画ヘパリンとの接触後(表1中の処理4;上記実施例1)のPDGF−BB及びbFGFについての回収率(それぞれ、92%及び97%)は、5IU/mLのエノキサパリンとの接触後(それぞれ75%及び62%)よりも高かった。
エノキサパリンの濃度の増加(30IU/mL;データを示さず)を伴う追加の実験は、成長因子の回収率においていかなる顕著な変化ももたらさなかった。
実施例4:S/D除去前に溶解物を低分子量ヘパリンと混合することによって調製された血小板抽出物の線維芽細胞増殖に及ぼす効果
以下の実施例において、実施例3に記載された通りに調製された血小板抽出物の細胞増殖に及ぼす効果を検討した。細胞計数及び増殖アッセイを、3T3−Swiss Albino線維芽細胞を使用して、「材料及び方法」項で記載した通りに行った。結果を図2に示す。
この結果(図2)は、線維芽細胞増殖が、LMWHとインキュベートしなかった試料(試料1/処理1、EC50 0.11)と比べて、LMWHとインキュベートした試料(試料2/処理2、EC50 0.05)でより高かったことを示している。
これらの結果は、S/D除去の前の低分子量ヘパリンとのインキュベーションが、いくつかの成長因子の回収率を増加させ(実施例3)、生物学的効果をも改善することを立証している。
実施例5:S/D除去前の血小板溶解物とPVPとの混合が成長因子回収率に及ぼす効果
前の実施例においては、S/D除去前に、溶解物を、特定の成長因子に結合することが知られている未分画ヘパリン及びLMWHに接触させた。
以下の実施例では、両親媒性特性を有する、完全に異なる化合物であるPVPが、HICカラムによるS/D除去後の成長因子回収率に及ぼすその効果について探索された。
本実施例では、HICによるS/D除去工程の前又は除去工程中に、PVPが添加される、又はPVPが添加されない(対照)、異なるS/D除去条件を試験した。上記に列挙した市販のELISAキットを使用して、以下の成長因子、すなわち、TGF−β1、PDGF−AB、PDGF−BB、bFGF、VEGF、及びEGFの回収率を検討した。2種類のPVP、すなわち、K25(22.5〜27.0のK値及び30000Daの平均分子量を有するKollidon(登録商標)25、カタログ番号02286 Sigma Life Sciences,Germany);及びK30(27.0〜32.4のK値及び40000Daの平均分子量を有するポビドンK−30、カタログ番号P1454 Spectrum chemical mfg corp.USA)について試験を行った。
実施例1に詳述した通りに、また、表5に詳述したS/D除去条件を使用することによって、溶解物を調製してSDRカラムに導入した。導入の前に、導入された溶解物の緩衝液を使用して、平衡化を行った。導入後、及び緩衝液1並びに緩衝液2による洗浄後にカラムから得られた全ての分画を回収し、混合して、成長因子回収率を計算した。成長因子の回収率の結果(上記に説明したよう計算したもの)を表6に示す。PVPを含む、全ての導入される試料も、上述した方法でPVPと共にインキュベートした。
この結果は、SDRカラムによるS/D除去前及びS/D除去中のS/Dで処理された血小板溶解物のPVPとの接触が、SDRカラムからの成長因子の回収率に大きく影響を与えたことを示している。
また、この結果は、S/D除去工程中に、エタノール及びNaClと組み合わせたPVPが、PVP単独よりも成長因子の回収率の増加においてより有効であったことを示している(処理7対9、及び3対5を比較)。
この結果はまた、より低い分子量のPVPを使用することが、成長因子の回収率を更に増加させることを示している(処理3を7と比較)。
S/Dで処理された溶解物をS/D除去工程に供する場合、成長因子の回収率の増加は、S/D除去工程の前にかつ/又はS/D除去工程中に、S/Dで処理された溶解物をPVPに接触させることによって達成することができると結論付けることができる。
実施例6:S/D除去前に、かつS/D除去中に使用されるPVPポリマーの分子量の線維芽細胞増殖に及ぼす効果
以下の実施例において、S/D除去前に、かつS/D除去中にS/Dで処理された溶解物に接触させるPVPの分子量の、細胞増殖に及ぼす効果を検討した。
表5中の処理3及び7について記載されたS/D除去手順(実施例5)に従って調製した血小板溶解物試料を使用した。
細胞計数及び細胞増殖アッセイを、3T3−Swiss Albino線維芽細胞を使用して、「材料及び方法」項で記載した通りに行った。
結果を図3に示す。
この結果は、PVP K25を含む試料3が、PVP K30を含む試料7(EC50=1.95)よりも高い増殖速度を有した(EC50=0.34)ことを示している。実施例5に示したように、処理7から得られた成長因子の回収率は、処理3から得られた成長因子の回収率よりも高かったが、処理3で回収された成長因子の活性は、処理7で回収された成長因子の活性よりも一層有効である。
これらの結果は、生物学的効果の増加を得るためには、より低い分子量のPVP(例えば、PVP K25)が有利に使用され得ることを示唆している。
実施例7:S/D除去前及びS/D除去中の異なる濃度のPVPの、成長因子の回収率に及ぼす効果
以下の実施例は、S/D除去工程中にPVP、エタノール及び/又はNaClを使用することが、SDRカラムからの成長因子の回収率を増加させること示す前の結果を実証することを目的とする。S/D除去工程中の異なる条件の効果を検討し、SDR後の物質中のいくつかの成長因子の回収率を、上記の通りに測定した(TGF−β1、PDGF−AB、PDGF−BB、bFGF、VEGF、及びEGF)。
PVP K25(上記と同様)をこれらの実験で使用した。下表7に詳述されるS/D除去条件を使用して、実施例1で上述したように、溶解物を調製してSDRカラムに導入した。導入前に、平衡化を、AGA(上記の濃度)+0.1%(0.03mM)のPVP K25で行った。全ての試料は、AGA緩衝液中にて0.1%(0.03mM)のPVP K25の最終濃度(上記の濃度)を含有した。全ての導入される試料を、導入前に上述の通りにPVPとインキュベートした。導入後、及び緩衝液による洗浄後にカラムから得られた全ての分画を回収し、混合して、成長因子回収率を計算した。成長因子回収率の結果(SDR前の物質に対する%)は、表8に提示されており、総成長因子回収率が最高のものから最低のものへと列挙されている。
1つの目的は、最終生成物中のPVPを低減しようとするものであった。前の実施例で記載したいくつかの実験においては、試料を1%の比較的高いPVP最終濃度でインキュベートした(実施例5)。場合によっては、試料体積(6カラム体積)でカラムに導入後に、カラムを0.1%の比較的低いPVPで洗浄した。しかしながら、体積で最も大きい分画は、導入された試料(6カラム体積)であるために、生成物中のPVPを低減するための最適の方法は、例えば、導入される試料を1%(0.3mM)のPVP K25に代えて、0.1%(0.03mM)のPVP K25の最終濃度でインキュベートすることにより、導入される試料中のPVP濃度を低減することである。
この結果は、前述の結果を立証し、S/D除去工程中に、溶解物をPVP単独に接触させる場合よりも、溶解物をエタノール及びNaClと組み合わせたPVPに接触させる場合に、SDRカラムからの最も高い成長因子の回収率が得られたことを示している。
この結果はまた、生成物中のPVP濃度を0.5%(0.17mM)以下まで低減させることが可能であることを示している。
実施例8:血小板抽出物中の異なる濃度のPVPの線維芽細胞増殖に及ぼす効果
実施例7で調製された試料の細胞増殖に及ぼす増殖効果を、3T3−Swiss Albino線維芽細胞を使用して、「材料及び方法」の項に記載された通りに検討した。
この実験では、同様の量の成長因子の回収率を示す、試料17及び19の細胞増殖活性を検討した。これらの2つの試料間の主な相違点は、試料17は、0.1%(0.03mM)のPVPを含む第2の洗浄緩衝液により調製されており、これに対して試料19は、0.5%(0.17mM)のPVPを含む第2の洗浄緩衝液で調製されていたことであった(表7参照)。この相違点は、異なるPVP濃度を有する2つの抽出生成物をもたらした。
この結果は、低いPVP濃度を含む試料17の細胞増殖活性(0.1%のPVPで調製;EC50=2.3)が、より高いPVP濃度を含む試料19のものと(0.5%のPVPで調製;EC50=2.87)同様であったことを示している。
この結果(図4)は、生成物中のより高い量のPVPが、増殖レベルに影響を及ぼさなかったことを示している。
実施例9:PVPのトロンビン活性に及ぼす効果
以下の実施例は、S/D除去中にPVP又はヘパリンを使用して調製された血小板抽出物が、トロンビン活性に影響を及ぼすかどうかを検討することを目的とした。
トロンビンは、血液凝固の重要な酵素であり、血液凝固カスケードの最初の工程として活性化される。トロンビンは、可溶性フィブリノーゲンを不溶性のフィブリンのストランドに変換するセリンプロテアーゼとして作用し、同様に多くの他の血液凝固関連反応を触媒する。
ヘパリン及びLMWHの血液凝固に及ぼす効果は既知であって、主として抗血液凝固用に医薬品で使用される[Machovich Rら、「Effect of Heparin on Thrombin Inactivation by Antithrombin−III」.Biochem.J.1978;173:869〜875]。
トロンビン活性を、上述の通りに、凝固時間測定によって評価した。表9に示す結果は、対照試料(100%のトロンビン活性とみなされる)に対するものである。
* 対照試料に対するトロンビン活性(%)
** 実施例1の処理2及び4に従って調製
*** 実施例3の処理2に従って調製
**** 実施例7の処理17に従って調製
この結果は、未分画ヘパリン又はLMWHを含む血小板抽出物試料では、インビトロでトロンビン活性に及ぼす阻害効果があったが、一方、PVPを含む血小板抽出物試料では阻害効果が検出されなかったことを示している。
実施例10:大規模プロセスにおいて調製された、S/Dで処理され、PVP K25でインキュベートされ、PVP K25によりSDRカラムから洗浄された、プールした白血球低減洗浄アフェレーシス血小板(WAP)から調製された血小板抽出物
この実験においては、S/D除去前のPVPの添加の成長因子の回収率に及ぼす効果を、大規模において評価した(上記実験では、小規模プロセスが行われた)。この実験では、PVP K25を使用した。
溶解物を以下の通りに調製した。すなわち、血小板溶解物を、12個のバッグから得られた2328gのプールした白血球低減洗浄アフェレーシス血小板(WAP)を使用して調製した。255mLの酢酸塩グリシン緩衝液(最終濃度は20mMの酢酸ナトリウム、10mMのグリシン、pH 6.8〜7.4、となるように)及び0.2% W/W(溶液の最終体積に対する)のヒト血清アルブミン(HSA,Talecris USA)を、プールしたWAPに加えた。次の工程において、1%のTriton X−100及び0.3%のTnBP(w/w)を、30RPMで混合しながらプールした試料にゆっくりと加えることによって、S/D処理を行った。粒子状物質が存在する可能性によりウイルス不活性化が準最適となるのを回避するため、S/D処理を2つのパートに分割した。第1のパートでは、試料を30分間連続して撹拌し、23〜27℃にて5016×gで10分間遠心分離し、0.45μmのフィルター(Sartopore 2、Sartorius Stedim Biotech S.A.,Aubagne,France)を通して濾過した。第2のパートでは、濾過した物質を、25℃に調整した水浴中に浸したステンレス鋼のポットに注ぎ、透明溶液中でウイルス不活性化プロセスを続けるために、30RPMで更に2時間混合した。PVP K25を、S/Dで処理された溶解物に添加し、0.1%(w/w)(0.03mM)の最終濃度にして、30RPMで撹拌しながら25℃で20分間インキュベートした。粒子状物質を除去するため、5μmのSartopore PP2フィルターを使用して試料を濾過した。
次に、300mLのSDR HyperD溶媒−界面活性剤除去クロマトグラフィー樹脂(Pall Corp)が充填されたXK50液体クロマトグラフィーカラムを、蠕動ポンプ及びUA−6 UW/WIS検出器+Type 11記録計(ISCO,NE,USA)と共に使用して、S/D除去を行った。カラムを、900mLの酢酸塩−グリシン緩衝液(20mMの酢酸Na、10mMのグリシン、0.1%(0.03mM)のPVP及び0.2%のHSAを含む、pH 6.8〜7.4)で平衡化した。1800mLのS/D処理及びPVP処理された血小板溶解物(1620mLの血小板物質を含有)を、カラムに導入し、続いて、0.5%(0.17mM)のPVP及び0.2%のHSAを含有する600mLの酢酸塩グリシン緩衝液(上記と同一濃度)でカラムを洗浄した。これに続いて、12.5%のエタノール、1MのNaCl、0.1%(0.03mM)のPVP及び0.2%のHSAを含有する1,200mLの酢酸塩−グリシン緩衝液で洗浄した。次に、カラムを300mLの精製水で洗浄した。導入後及び緩衝液での洗浄後のカラムから、全ての分画を含む抽出物を混合して、回収した。抽出物中の成長因子の回収率を測定し、計算した。
総体積3600mLをカラムから回収した。回収した物質を、3及び1.2μmのSartopure PP2フィルター、並びに0.45μmのSartopore 2フィルター(Sartorius Stedim Biotech S.A.,Aubagne,France)を連続的に使用して濾過した。
PDGR−AB、PDGF−BB、VEGF、TGF−β1、bFGF及びEGFの回収率を上述のように計算した。
表10に提示した結果は、大規模で行われる場合、エタノール及びNaClと組み合わせて低濃度のPVPを使用するときに、SDRカラムからの比較的高い成長因子回収率が維持されることを示している。SDR後の抽出物中のPVPの濃度は、0.17%(0.057mM)であった。
実施例11:S/D除去前に、かつS/D除去中に溶解物を低濃度のPVP K25に接触させることによって大規模プロセスで調製された血小板抽出物の線維芽細胞の細胞増殖に及ぼす効果
前の実施例においてPVP K25で調製された試料の細胞増殖に及ぼす効果を、3T3−Swiss Albino線維芽細胞を使用して、上述の通りに実施した。試料(図5で処理1の印を付けた)の活性を、実施例1に記載されたヘパリンとの接触によって調製された溶解物(図5で処理2の印をつけた)の活性と比較した。
増殖結果を図5に示す。
この結果は、大規模プロセスで調製された血小板抽出物試料が、ヘパリンで調製された血小板抽出物試料の増殖効果(EC50=0.047)よりも高い、明白な増殖効果(EC50=0.024)を有したことを示している。
これらの結果は、開示されたような大規模SDRカラムから回収された血小板抽出物が、高い成長因子回収率を有し、したがって大規模プロセスで行われる場合に生物活性を有することを裏付けている。
実施例12:S/D材料除去前及び/又はS/D材料除去中にPVPを使用することの、SDR後の物質中のS/D物質の残留レベルに及ぼす効果
前の実験のセットにおいて、S/D除去工程の前に、かつ/又はS/D除去工程中に、血小板溶解物をPVP、エタノール及び/又はNaClに接触させると同時に、成長因子の回収率の増加が得られることを示した。
溶解物からの有効なS/D除去を確実にするために、PVPがSDR樹脂のS/D結合能力を低減しないことを実証することは重要である。
以下の実験のセットにおいて、実施例10に記載されたものと同一の条件下でS/D(Triton X−100及びTnBP)除去の有効性を評価した。
留意すべきは、血液由来製品中のTriton X−100及びTnBPの双方の許容可能な限度は5ppm未満であることである。Triton X−100及びTnBPの濃度を、S/D除去工程の前に(SDR前の物質)及びS/D除去工程後(SDR後の物質)に測定した。Triton X−100は、紫外線検出器を使用する逆相HPLCによって決定し、TnBPは、水素炎イオン化検出器を使用する毛細管ガスクロマトグラフィーによって決定した。
結果を以下の表11に示す。
上記実験おいて、インキュベーション/平衡化/洗浄を、最大0.5%(0.17mM)の濃度のPVP K25の存在下で行った。
この結果は、前の実験において成長因子回収に有効であることが認められた最大0.5%の濃度のPVP K25の存在下でS/D物質の除去を行うことが、カラムのS/D除去性能に影響を及ぼさなかったことを示している。
インキュベーション/平衡化/洗浄を1%(0.3mM)の濃度のPVP K25及びK30の存在下で行った追加の実験(図5に示すような小規模プロセスで行った)は、SDR後にTriton X−100の存在をもたらした。結果を以下の表12に示す。
有利なことに、1%(0.3mM)未満の濃度のPVP K25の存在下でS/D除去を行うことが、S/D除去工程中の成長因子回収率の増加をもたらし、これと同時に溶解物からの有効なS/D除去を確実にすることが結論付けられた。
実施例13:S/Dで処理され、PVP K25に接触させ、かつS/D除去に供された、WAPから調製された血小板抽出物中のいくつかの成長因子間の比率
以下の実施例は、開示されたように調製された血小板抽出物中のいくつかの成長因子間の比率を示し、また、得られた比率が、出発物質中のものに匹敵するかどうか、及び試料をクロマトグラフィー樹脂に導入する前の溶解物(SDR前の物質)中のものに匹敵するかどうかを検討している。SDR前の物質(又は抽出物)及びSDR後の物質を、実施例10に記載した通りに調製した。
TGF−β1、VEGF、bFGF、及びPDGF−ABのレベルを、上述の特定の市販ELISAキットを使用して、3つ全ての試験物質(WAP出発物質、SDR前の物質、及びSDR後の物質)において測定し、PDGF−AB/TGF−β1、PDGF−AB/VEGF、TGF−β1/bFGF、及びVEGF/bFGFの間の比率を計算した。成長因子のレベル及び比率を、それぞれ下の表13及び14に示す。
この結果は、S/D除去工程中にエタノール及びNaClと組み合わせたPVP K25に接触させた血小板溶解物が、出発物質中の比率及びS/D除去前の物質中の比率と同様なPDGF−AB/TGF−β1、PDGF−AB/VEGF、TGF−β1/bFGF、及びVEGF/bFGF比率を有する抽出物をもたらすことを示している。
開示されたようにS/D除去を行うことが、S/D除去前の物質と同様である因子の比率を含む血小板抽出物をもたらすことを結論付けることができる。
実施例14:S/D除去工程前及び/又はS/D除去工程中に溶解物をヘパリン、硫酸デキストラン又はPVP K25に接触させることにより調製される血小板抽出物中の成長因子の回収率
以下の実施例は、S/D除去工程中に溶解物をヘパリン、硫酸デキストラン又はPVPに接触させることにより調製された異なる血小板抽出物中の成長因子の回収率を比較する。回収率を上述した通りに計算した。ヘパリンを含む血小板抽出物を、10〜13個のバッグから得られた、1900〜2500gのプールした白血球低減洗浄アフェレーシス血小板(WAP)を使用して調製した。209〜385mLの酢酸塩グリシン緩衝液を、最終濃度が20mMの酢酸ナトリウム、10mMのグリシン、pH 6.8〜7.4、となるように添加し、0.2% w/w(最終濃度)のヒト血清アルブミン(HSA,Talecris USA)を、プールしたWAPに加えた。1%のTriton X−100及び0.3%のTnBP(w/w)を、50RPMで混合しながらプールした試料にゆっくりと加えることによって、S/D処理を行った。最初に、試料を30分間連続して撹拌した後、20及び3μmのSartopure PP2フィルター、並びに0.45μmのSartopore 2(Sartorius Stedim Biotech S.A.,Aubagne,France)を通して連続的に濾過した。次に、濾過した物質を、25℃に調整された水浴に浸漬したビーカーに戻し、ウイルス不活性化プロセスを継続させるために、50RPMにて更に2時間混合した。
295mLのSDR HyperD溶媒−界面活性剤除去クロマトグラフィー樹脂(Pall Corp)が充填されたXK50液体クロマトグラフィーカラムを、蠕動ポンプ及びUA−6 UW/WIS検出器+Type 11記録計(ISCO,NE,USA)と共に使用して、S/D除去を行った。導入した試料のそれぞれの緩衝液で、平衡化を行った。1800mLのS/D処理された血小板溶解物(1620mLの血小板物質を含有)を、カラムに導入し、続いて、0.2%のHSAを含有する600mLの酢酸塩グリシン緩衝液(上記と同一濃度)で洗浄した。12.5%のエタノール、0.5MのNaCl、5IU/mLのヘパリン(ヘパリンナトリウム−Fresenium 5000IU/mL、Bodene(PTY)Ltd,South Africa)、及び0.2%のHSAを含有する600mLの酢酸塩グリシン緩衝液(上記と同一の濃度)を使用して行われた。これに続いて、10%のエタノール、1MのNaCl及び0.2%のHSAを含有する600mLの酢酸塩グリシン緩衝液(上記と同一の濃度)で第2の洗浄工程を行った。最後にカラムを300mLの精製水で洗浄した。洗浄工程中に得られたフロースルー及び全ての分画を回収し、プールした(約3.6リットル)。回収した材料を、3及び1.2μmのSartopure PP2フィルター、並びに0.45μmのSartopore 2(Sartorius Stedim Biotech S.A.,Aubagne,France)を連続的に使用して濾過した。
硫酸デキストランを含む血小板抽出物を、10個のバッグから得られた、1800〜2050gのプールした白血球低減洗浄アフェレーシス血小板(WAP)を使用して調製した。197〜224mLの酢酸塩グリシン緩衝液を、最終濃度が20mMの酢酸ナトリウム、10mMのグリシン、pH 6.8〜7.4、となるように添加し、0.2%w/w(最終体積の溶液に対して)のヒト血清アルブミン(HSA,Talecris USA)を、プールしたWAPに加えた。1%のTriton X−100及び0.3%のTnBP(w/w)を、50RPMで混合しながらプールした試料にゆっくりと加えることによって、S/D処理を行った。粒子状物質が存在する可能性によりウイルス不活性化が準最適となるのを回避するため、S/D処理を2つのパートに分割した。最初に、試料を30分間連続して撹拌した後、20及び3μmのSartopure PP2フィルター及び0.45μmのSartopore 2(Sartorius Stedim Biotech S.A.,Aubagne,France)を通して濾過した。次に、濾過した物質を、25℃に調整された水浴に浸漬したビーカーに戻し、ウイルス不活性化プロセスを継続させるために、50RPMにて更に2時間混合した。
硫酸デキストラン(Sigma−Aldrich,Canada;カタログ番号D4911)を最終濃度1%(w/w)になるように試料に添加し、50RPMにて20分間攪拌しながら25℃でインキュベートした。粒子状物質を除去するため、5μmのSartopore PP2フィルターを使用して試料を濾過した。
次に、295mLのSDR HyperD溶媒−界面活性剤除去クロマトグラフィー樹脂(Pall Corp)が充填されたXK50液体クロマトグラフィーカラムを、蠕動ポンプ及びUA−6 UW/WIS検出器+Type 11記録計(ISCO,NE,USA)と共に使用して、S/D除去を行った。1%の硫酸デキストラン及び0.2%のHSAを含有する900mLの酢酸塩グリシン緩衝液でカラムを平衡化させた。1800mLのS/D処理及び硫酸デキストラン処理された血小板溶解物(1620mLの血小板物質を含有)を、カラムに導入し、続いて、12.5%のエタノール、0.5MのNaCl、0.1%の硫酸デキストラン、及び0.2%のHSAを含有する600mLの酢酸塩グリシン緩衝液(上記と同一濃度)で洗浄した。これに続いて、1%の硫酸デキストラン及び0.2%のHSAを含有する600mLの酢酸塩−グリシン緩衝液(上記と同一の濃度)で洗浄した。次に、カラムを300mLの精製水で洗浄した。総体積3000mLをカラムから回収した。回収した材料を、3及び1.2μmのSartopure PP2フィルター、並びに0.45μmのSartopore 2(Sartorius Stedim Biotech S.A.,Aubagne,France)を使用して濾過した。
PVPを含む血小板抽出物を、実施例10に記載された通りに調製した。
比較の成長因子の回収率を以下の表15に示す。
* 4つの独立した抽出調製物間の平均値
** 6つの独立した抽出調製物間の平均値
*** SDR前の物質に対する%
この結果は、S/D除去工程中にPVP K25に接触させることによる抽出物の調製が、溶解物を硫酸デキストラン又はヘパリンに接触させるものと比較して、同様な成長因子の回収率をもたらし、いくつかの成長因子に関しては(例えば、PDGF−AB及びPDGF−BB)更に優れた成長因子の回収率をもたらしたことを示している。
好都合なことに、PVPを含む血小板抽出物は、特定の濃度のヘパリン(上記実施例に示す)及び硫酸デキストラン(データ示さず)に比べて、インビトロのトロンビン活性に対して阻害効果を有さない。
実施例15:開示されたように調製された血小板抽出物のインビボモデルにおける皮膚治癒に及ぼす効果
血流低下に起因する組織虚血は、外科的皮弁破損部に対する主要な寄与因子である。
この実験では、改良型McFarlaneラット移植皮弁モデル(McFarlaneら、Plast Reconst Surg(1965)35:177)を使用して、開示されたように調製した血小板抽出物の皮弁治癒を促進する上での能力を評価した。
350〜450gの体重の16匹のオスのスプラーグ−ドーレイラット(処置群当たりn=4)を、本試験で使用した。
外科的処置:
背側の体毛を手術の1日前に除去し、皮膚を露出させた。手術当日に、動物に1用量のブプレノルフィンSQ注射(0.05mg/Kg)の形態の術前鎮痛剤及び術前抗生剤(エンフロキサシン;10mg/Kg)を投与した。イソフルラン吸入(約1〜4%)によって、麻酔剤を投与した。グルコン酸クロロヘキシジン及び70%のイソプロピルアルコールを使用して手術部位を前処置した。約10×3cmのサイズの3つの辺を有する長方形の背側全層皮弁を作製した。この皮弁の縁部を、皮弁が尾側縁部に沿って付着したままで3つの側面上で切開した(頭方向から尾方向に)。皮弁を鈍的剥離によって持ち上げ、皮弁の露出した下にある背表面を、1)PVPを含む抽出物、ii)ヘパリンを含む抽出物、又はiii)注射用水(WFI;対照Iとして)を含む1.5mLのフィブリンシーラント(3mg/mLの最終濃度のヒトフィブリノーゲン、及び250IU/mLの最終濃度のヒトトロンビンを含むBAC2成分から調製したもの)で徐々に滴下被覆した。抽出物の調製並びに投与された材料の調製及び抽出物の適用手順は以下を参照されたい。封止剤が適用されたら、皮弁をその解剖学的位置に戻した。
皮弁を取り囲む皮膚の縁部に近接させ、封止剤が反応してゲル様コンシステンシーを形成するのに必要な初期時間の際に、緩やかな圧力を加えることによってデッドスペースを作らないようにしながら、皮弁をその正確な解剖学的位置に再配置した。次いで、4−0の非吸収性単繊維縫合材料を使用して、皮弁切開部分を一定の単純連続縫合パターンで縫合し、その正確な解剖学的位置に戻した。
対照群(「対照II」と呼ぶ)は、同じ皮弁作製処置を受けたが、皮弁閉鎖の前に下にある背面にいかなる処置も施されなかった。
抽出物調製:
2種の血小板抽出調製物を検討した。すなわち、一方はPVPを含み(実施例10のPVPの通りに調製)、及び他方はヘパリンを含んだ(実施例14の通りに調製)。次いで両抽出物を、安定化、低温殺菌及び以下のような酢酸塩−グリシン緩衝液に対する透析濾過による安定化剤の除去の工程にかけた。
試料1グラム当たり1グラムのスクロースを、スクロースが完全に溶解するまで、混合しながら(約22℃で)抽出物質にゆっくりと加えた。次に、溶液を37±1℃まで温め、抽出物質1g当たり0.11gのグリシンを、混合しながら、かつ0.5NのNaOHを用いてpHを6.8〜7.4に調整しながら、溶液にゆっくりと加えた。pH調整は、グリシンが完全に溶解するまで行われた。その後、抽出物質1g当たり0.8gのスクロースを、完全に溶解するまで37℃で混合しながら徐々に加えた。スクロース及びグリシンは、低温殺菌工程中の安定化剤としての役割を果たすように溶液に添加された。次に、連続的に混合しながら(50RPM)60℃にて10時間にわたって熱処理することによって、溶液を低温殺菌した。(安定化剤の添加によって形成された)得られた粘性溶液を清潔な容器に移すため、最大総重量14,000〜14,300g(約12,000mL)まで酢酸塩グリシン緩衝液(20mMの酢酸ナトリウム、及び10mMのグリシン、pH 6.8〜7.4)で希釈した。2 Omega 10kDaカセット(Pall Corp,Port Washington,NY,USA)を備えるCentramate Systemを用いて、酢酸塩−グリシン緩衝液(20mMの酢酸ナトリウム、10mMのグリシン、pH 6.8〜7.4)に対して透析濾過を行うことによって、溶液から安定化剤を除去した。透析濾過工程は次の通りに行われた。初めに、試料を1800mLの体積まで濃縮し、溶液体積を1,800±200mLに維持しながら緩衝液を徐々に加えることによって、総体積10,800mLの酢酸塩グリシン緩衝液(20mMの酢酸ナトリウム、10mMのグリシン、pH 6.8〜7.4)に対して透析を行った。次に、透析した溶液を410〜445mLになるまで濃縮した。
安定化のため、マンニトールを最終濃度2% w/wになるまで溶液に添加した。凝集物質を除去するため、溶液を1.2μmのSartopure PP2フィルター及び0.45μmのSartopore 2フィルターに通して濾過した。滅菌濾過は、0.2μmのSartopore 2フィルターを使用し、無菌条件下で行われた。
次に、得られた溶液を高圧滅菌したガラス製バイアルの中に分注し(4mL)、凍結乾燥し、窒素雰囲気下及び60kPa(0.6Bar)の不完全真空下で高圧滅菌したゴム栓で密封した。
BAC2(フィブリノーゲン含有成分)+抽出物の調製:
凍結乾燥した抽出物のバイアルキャップを無菌的に開け、1mLの無菌注射用水(WFI)を、凍結乾燥した抽出物のバイアルに(気泡をつくらないために、上下にピペット操作することなく又は渦撹拌することなく)ゆっくりと加えた。キャップを無菌的にバイアルの元の場所に配置し、抽出粉末が完全に復元されるまで、バイアルを約5分間室温で、チューブ回転装置/ロッカに配置した。
次に、2mLのBAC2(EVICEL(登録商標)フィブリンシーラント;Omrix Biopharmaceuticals Ltd.のフィブリノーゲン成分;EVICEL(登録商標)のように60mgのフィブリノーゲン/mLを含む)を、(6mgのフィブリノーゲン/mLにするために)120mMの塩化ナトリウム、10mMのクエン酸三ナトリウム、120mMのグリシン、95mMのアルギニン塩酸塩、1mMの塩化カルシウムを含有する、18mLのBAC2希釈緩衝液、pH 7.0〜7.2、と無菌的に混合した。バイアルを、少なくとも5分間、緩やかに撹拌した。
次いで、2mLの希釈したBAC2(6mgのフィブリノーゲン/mL)を、針を取り付けていない注射器に引き込み、上述した1mLの再水和した抽出物−ヘパリン、抽出物−PVP又はWFIと混合した。このバイアルを、使用するまで室温でチューブ回転装置/ロッカに約5分間配置した。
被験物質の調製及び適用:
EVICEL(登録商標)適用装置の黄色の三重管腔のカテーテルチップをその基部で切断し、16G単一管腔Venflon(商標)静脈内カテーテル(針なし)又は他の適切なサイズのカテーテルで置き換えた。バイアルコネクタ及び注射器をこの装置から取り外した。3mLの注射器のうちの1本を1mLの注射器で置き換え、1mLのトロンビン成分(EVICELフィブリンシーラント;Omrix Biopharmaceuticals Ltd.)をバイアルから直接無菌的に1mLの注射器に引き上げた。BAC2+ヘパリンを含む血小板抽出物、BAC2+PVPを含む血小板抽出物、又はBAC2+WFI(上記のように調製したもの)の3mLを無菌的に3mLの注射器に引き上げた。
2本の注射器(一方は1mLのトロンビンを含み、他方は3mLのBAC2及び抽出物又はWFI溶液を含む)を、青色の筒式注射器ホルダー(新しいEVICEL(登録商標)適用キットから)に配置し、トロンビン及び試験用溶液の両方が同時に投与され得るように、提供されたプラスチック製の青色エンドコネクタを両プランジャの両端の上に配置した。上述のように、1)PVPを含む抽出物、ii)ヘパリンを含む抽出物又はiii)注射用水(WFI;対照Iとして)を含む1.5mLの総体積のフィブリンシーラントを、3(抽出物を含む又は含まないフィブリン含有成分):1(トロンビン成分)[1.125mL:0.375mL]の体積比で投与した。
ラットに投与された物質1mL当たりの成長因子の濃度(上記のELISAキットを使用して測定した)を表16に示す(1.5mLの体積を投与した)。
評価:手術後14日目に動物に麻酔をかけ、その後、CO2への曝露によって殺処分した。皮弁の健康な(非壊死性及び軟組織)領域の下にある組織への付着を、以下のランク付け(不良から最適まで)、すなわち、1−皮弁の付着なし、2−部分的付着、及び3−正常に近い又は正常な皮弁の付着、に従って評価した。
種々の処置群についてのスコアリング/等級を表17に示す。
この結果は、PVPを含む血小板抽出物と組み合わせてフィブリンシーラントを投与することが、ヘパリンを含む血小板抽出物と共にフィブリンシーラントを投与することと同様な、皮弁付着を促進する上での明白な効果を有し、両者共に、FS単独又は対照IIよりも優れていたことを示している。
一旦巨視的な評価が完了したら、皮弁を、横縁部に隣接する約0.5cmの正常な皮膚を含めて採集した。腹部及び胸部臓器を胸部正中線切開を通して除去した。採集した組織を、10%の中性緩衝ホルマリン中に配置した。適切な固定後に、組織切片を、正常組織及び皮弁が各組織切片内に含まれるような様式で、皮弁の右側面に対して垂直に、尾側端部から約2cmごとに採取し、これらは、図6のように領域A〜Eで示す。これらの組織切片を処理し(浸潤し、パラフィン中に埋設し)、次いでミクロトームを使用してパラフィンブロックの切片を作製した(5マイクロメートル)。これらの切片をSuper Frost+TMスライド上に載せ、組織学的及び免疫組織学的検査によって評価した。
ヘマトキシリン&エオシン染色:パラフィン埋包皮膚/創傷切片のスライドを、60℃で30分間インキュベートし、キシレン(100%)で5分間、スライドを2回洗浄することによって脱パラフィン化し、その後DDW(100〜70%)中の減少する濃度のエタノール中で、各濃度において5分間再水和した。このスライドをヘマトキシレン(すぐ使用可能な溶液)で8分間染色し、水で濯ぎ、1%のHCl/70%のエタノール中に数秒浸し、次いでエオシン(DDW中0.5%)で6分間染色した。次に、切片を、70%のエタノールで、2回の素早い浸漬によって洗浄した。その後、スライドを、95%のエタノールで5分間、1回、無水エタノールで5分間、2回、更にキシレン(100%)で3分間、2回洗浄することで脱水し、次いでEntellan封入剤(MERCK Darmstadt Germany)で封入した。
免疫組織化学染色:パラフィン埋包皮膚切開切片のスライドを、上記の通りに調製した。このスライドを、ブロッキング溶液(10%の正常血清)で1時間インキュベートし、続いて以下の一次抗体、すなわち、ケラチン6、ケラチン1、ケラチン14を標的とする抗体(Covance)、PCNA(Santa Cruz)、のうちの1つと、4℃で一晩インキュベートした。翌日に、スライドをPBS中0.05%のTweenで洗浄し、対応する二次ビオチン結合抗体(Vector Labs)で1時間インキュベートした。ABC Eliteキット(Vector Labs)を使用して、製造業者の使用説明書に従って、検出を行った。次いで、スライドを水で濯ぎ、Mayerのヘマトキシリンで30秒間対比染色し、次に70%のエタノールへの2回の素早い浸漬により洗浄した。その後、スライドを、95%のエタノールで5分間、1回、無水エタノールで5分間、2回、更にキシレン(100%)で10分間、2回洗浄することで脱水し、次いでEntellan封入剤(MERCK Darmstadt Germany)で封入した。
分析評価基準
表皮過形成:表皮の厚さによって測定される過形成応答を、H&E染色によって決定し、ここでは、試料の表皮の厚さが、6つ超の有核層を包含するよう少なくとも1つの視野で観察される場合、1と採点した。6つ以下の層が全セクション上で観察された試料は、0と採点した。
皮膚過増殖:過増殖性顆粒組織を、増殖する核のPCNA染色を利用して評価し、ここでは、視野(40倍)当たり10個超の核が皮膚切開領域で計数される場合、スコア1を割り当てた。スコア0は、10個以下の核が計数される場合に割り当てた。
基底層上ケラチン6:基底層上ケラチン6は、創傷が、褐色の染色によって表れるK6染色の広範な分布を示した場合に、1と採点した。
基底層上の増殖:非治癒創傷は、PCNA染色によって観察される、創傷の隙間における基底層の上のいくつかの層内に増殖する細胞を示す。基底層上の増殖が、試料の少なくとも1つの領域において観察された場合、1と採点する。治癒が進んだ際には、増殖は基底層のみで観察され、この場合は0と採点する。
まとめると、全てのマーカーについて、0のスコアは、スコア1よりもより進んだ治癒段階を表す。
図7は、本試験からの4つの試験されたマーカーについての代表的な染色を示している。表皮過形成、皮膚過増殖、基底層上のケラチン6染色及び基底層上の増殖(左側パネル)を1と採点した。代表的な視野が、H&E染色(表皮過形成)、PCNA染色(皮膚並びに表皮増殖)及びケラチン6染色について提示されている。表皮過形成パネル中の黄色の矢印は、表皮の厚さを示している。K6パネル中の黄色の矢印は、褐色の染色で提示されたK6ケラチン分布を示した。赤い矢印は、増殖細胞のPCNA陽性の核を示している。
表18に示すように、FS+PEX−PVPで処理された皮弁は、4つの異なる治癒マーカーについて、シャム処置又はFSで処置された皮弁より進んだ治癒を示し、すなわち、より多くの動物を0と採点した(スコア0及び1の定義については、「方法」を参照)。FS+PEX−PVPで処置された創傷は、表皮過形成の低減、皮膚線維芽細胞並びに皮膚ケラチノサイト増殖の低減及びケラチン6染色の減少を含む、活性創傷のいくつかの特性において著しい低減を示した。過形成の低減は、正常な皮膚への表皮特性の薄化を意味する。皮膚線維芽細胞及び基底層上のケラチノサイト増殖(PCNA染色によって示される)の低減は、成熟マトリックス及び真皮並びに表皮の再構築を特徴付け、基底表皮における単細胞層に限定されたケラチン6染色の減少は、皮膚特性の正常化を特徴付けている。これと対比して、対照(FS)処置されたラットの皮弁は、初期の未成熟治癒段階を示した。
実施例16:S/Dで処理され、PVP K12でインキュベートされ、PVP K12の存在にてSDRカラムに供され、安定化剤で処理され、限外濾過/透析濾過(UF/DF)システムで濃縮されかつ凍結乾燥された、プールした白血球低減洗浄アフェレーシス血小板(WAP)からの血小板溶解調製物の大規模プロセス
この実験においては、S/D除去中のPVP K12の添加の成長因子の回収率に及ぼす効果を、大規模プロセスで評価した(実施例10参照)。より低い分子量の(LMW)−PVP、例えばPVP K12は、蓄積されることなく迅速な腎臓除去を先ず可能にするために、より高い分子量のPVP(PVP 25)よりも非経口薬剤の処方に適している。また、欧州の一部の国、例えば、ドイツ及びオーストリアでは、このような18までのK値を有する低分子量PVP型のみが注射用に承認されている。
血小板溶解物試料を、10個のバッグから得られた1958gのプールした白血球低減洗浄アフェレーシス血小板(WAP)を使用して調製した。214mLの酢酸塩グリシン、最終濃度は20mMの酢酸ナトリウム、10mMのグリシン、pH 6.8〜7.4(AGA緩衝液)、及びヒト血清アルブミン(HSA;Talecris USA、0.2%v/vの最終濃度)を、プールしたWAPに加えた。次の工程において、Triton X−100及びTnBPを、それぞれ1%及び0.3%(v/v)の最終濃度で、30RPMで混合しながら、ゆっくりと加えることによって、S/D処理を行った。粒子状物質が存在する可能性によりウイルス不活性化が準最適となる可能性を回避するため、S/D処理を2つの工程に分割した。第1の工程では、試料を30分間連続して撹拌し、23〜27℃にて5016×gで10分間遠心分離し、0.45μmのフィルター(Sartopore 2、Sartorius Stedim Biotech S.A.,Aubagne,France)を通して濾過した。次いで、濾過した物質を、25℃に調整した水浴中に浸したステンレス鋼のポットに注ぎ、透明溶液中でウイルス不活性化プロセスを続けるために、30RPMで更に2時間混合した。PVP K12(12のK値及び3500Daの平均分子量を有するポリビニルピロリドンK12、カタログ番号276142500 Acros organics,Germany)を、S/D処理された溶解物に、0.3%(w/w)、すなわち、0.857mMの最終濃度になるように加え、30RPMで撹拌しながら25℃で20分間インキュベートした。粒子状物質を除去するため、5μmのSartopore PP2フィルターを使用して試料を濾過した。
次に、300mLのSDR HyperD溶媒−界面活性剤除去クロマトグラフィー樹脂(Pall Corp)が充填されたXK50液体クロマトグラフィーカラムを、蠕動ポンプ及びUA−6 UV/VIS検出器+Type 11記録計(ISCO,NE,USA)と共に使用して、S/D除去を行った。カラムを、0.3%(0.857mM)のPVP K12を含有する900mLのAGA緩衝液(上記の通りの)で平衡化した。1800mLのS/D処理及びPVP処理された血小板溶解物(1620mLの血小板物質を含有)を、カラムに導入し、続いて、0.3%(0.857mM)のPVP K12を含有する600mLのAGA緩衝液(上記の通りのもの)でカラムを洗浄した。これに続いて、12.5%のエタノール、1MのNaCl及び0.3%(0.857mM)のPVP K12を含有する600mLのAGA緩衝液で洗浄した。成長因子回収率の計算用に、フロースルー及び洗浄分画を採集し、混合した。
総体積3000mLをカラムから回収した。回収した物質を、3及び1.2μmのSartopure PP2フィルター、並びに0.45μmのSartopore 2フィルター(Sartorius Stedim Biotech S.A.,Aubagne,France)を使用して連続的に濾過した。
PDGF−AB、PDGF−BB、VEGF、TGF−β1、EGF及びbFGFの回収率を上記のように計算し、以下の表19に示す。
* SD前の工程に対する比較
** 詳細な条件については、実施例10を参照
表19に提示した結果は、PVP K25の存在下のSDRカラムからの成長因子の高い回収率が、低分子量PVP、例えばPVP K12を使用する場合に維持されることを示している。
次に、濾過した物質を、25℃に調整した水浴中に浸したステンレス鋼ポットに注ぎ、30RPMで混合した。ウイルス熱不活性化のための調製においては、安定化処置を3つの工程で行った。先ず初めに、100%のスクロース(w/w)を、この物質に少しずつ加えた。スクロースが完全に溶解したら、溶液を37℃に温め、10%のグリシン(w/w)を、pH 6.9〜7.1でゆっくりと加えた。安定化剤添加の最後の工程では、80%のスクロース(w/w)を加え、完全に溶解するまで更に混合した。次いで、熱ウイルス不活性化工程を、20RPMで撹拌しながら、59.5〜60.5℃で10時間行った。
ウイルス不活性化工程の終わりに、40%の酢酸塩−グリシン緩衝液(w/w)を、37℃にて30RPMで混合しながら溶液に加えた。次いで溶液を、3μmのSatopure PP2フィルター(Sartorius Stedim Biotecn S.A.,Aubagne,France)を使用して濾過した。次に、濃縮及び安定化剤除去処理を、4 Omega(商標)Centramate(商標)10kDaカセット(Pall corp)を備えるCentramate(商標)UF Holderシステムを使用して、3工程で行った。先ず初めに、この物質を、1800mLの最終体積まで濃縮した。第2の工程では、安定化緩衝液を新鮮な緩衝液で置き換えるために、10800mLの酢酸塩−グリシン緩衝液を、溶液の体積を1600〜2000mLに維持しながら徐々に加えた。第3に、透析工程の終わりに、試料を560mLの最終体積まで濃縮した。
マンニトール(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)を、この物質に加え、2%(w/w)の最終濃度にした。次に、この物質を、1.2μmのSartopure 300フィルター、0.45μmのSartopore 2フィルター並びに0.2μmのSartopore 2 300フィルター(Sartorius Stedim Biotech S.A.,Aubagne,France)を連続的に使用して濾過した。次に、80個のガラス製バイアルを、4mLのこの溶液で充填し、Epsilon2−8D凍結乾燥機(Martin Christ GmbH)を使用して凍結乾燥した。
Triton X−100及びTnBPの濃度を、S/D除去工程の前に(SDR前の物質)並びにS/D除去工程後に(SDR後の物質)及び生産工程の終わりに(最終)測定した。Triton X−100は、紫外線検出器を使用する逆相HPLCによって決定し、TnBPは、水素炎イオン化検出器を使用する毛細管ガスクロマトグラフィーによって決定した。
結果を以下の表20に示す。
この結果は、成長因子の回収に有効であることが見出された、0.3%(0.857mM)の濃度のPVP K12の存在下でS/D除去を行うことが、SDR後の中間物質におけるTnBPの有効な除去及びTriton X−100のほぼ完全な除去をもたらしたこと(出発物質の残留は2%未満)を示している。カラム後の物質中に残留した微量のTriton X−100を、後続処理において除去した。
実施例17:S/D除去カラムへの導入中に、血小板溶解物を、異なる濃度において異なる分子量を有するPVPに接触させることの成長因子回収率に及ぼす効果
この実施例の目的は、異なる濃度において異なる分子量を有するPVPの、S/D除去後の成長因子回収率に及ぼす効果を検討することであった。
この実施例では、HIC S/D除去工程の前及びHIC S/D工程後の、4つの異なる分子量のPVPの添加などの、異なるS/D除去条件について、試験を行った。ELISAにより決定される以下の成長因子、すなわち、PDGF−AB、bFGF、VEGF、及びEGFの回収率を検討した。
この実施例では、PVP K12(12のK値及び3500Daの平均分子量を有するポリビニルピロリドンK12、カタログ番号276142500 Acros organics,Germany)、PVP K17(17の平均K値及び8000Daの平均分子量を有するポリビニルピロリドンK16〜18、カタログ番号22746500 Acros organics,Germany)、PVP K25及びPVP K30を使用した。
上記実施例5に詳述したように、溶解物を調製し、SDRカラムに導入した。全てのS/D除去条件を、表21に詳述する。導入の前に、導入される溶解物の緩衝液を使用して、平衡化を行った。全ての導入した試料はまた、SDRの適用前に、上述した方法で、PVPとインキュベートした。導入後、及び緩衝液による洗浄後にカラムから得られた全ての分画を回収し、混合して、成長因子回収率を計算した。
成長因子の回収率の結果(上記に説明したよう計算したもの)を表22に示す。
この結果は、各PVPの濃度の増加が、成長因子、特にPDGF−AB及びbFGFの回収率の増加と相関することを示している。また、成長因子の回収率の増加は、同一のモル濃度においては分子量が増加したPVPで観察される:例えば、PVP K12、K17、K25又はK30を0.3mMで使用することが、それぞれ17、42、55及び62%のPDGF−ABの回収率をもたらした。
S/D(Triton X−100及びTnBP)除去の有効性を評価するために、Triton X−100及びTnBPの濃度を、S/D除去工程の前に(SDR前の物質)及びS/D除去工程後(SDR後の物質)に測定した。Triton X−100の濃度は、紫外線検出器を使用する逆相HPLCによって決定し、TnBPは、水素炎イオン化検出器を使用する毛細管ガスクロマトグラフィーによって決定した。
この結果は、HICカラムによるS/D除去工程中のS/Dの有効な除去を示している。全てのTnBPは除去されるが、PVPを0.4mM以上の濃度で使用する場合、SDR後の物質中にTriton X−100の幾分の残留物が認められる。上の実施例16、表20では、中間物質中の残留するTriton X−100(ここで提示された濃度よりもわずかに高い)が、提示された生産工程に対して下流で除去されたことが示されている。
実施例18:PVPをS/D除去の異なる工程で使用することの成長因子の回収率に及ぼす効果
S/D除去カラムへのPVP適用の複数の工程のうちのどの工程で、成長因子の回収率に及ぼすPVPの最大効果を有するのかを特定するために、3つのS/D除去工程への異なる濃度のPVPの添加の試験を行った。
この実施例では、S/D除去工程中のGFの回収率を、表24に示すような異なる組み合わせでの、血小板溶解物、平衡緩衝液及び洗浄緩衝液への0.5%(w/w)(0.63mM)のPVP K17の添加によって試験した。
ELISAを使用して、以下の成長因子、すなわち、PDGF−AB、bFGF、VEGF、及びEGFの回収率を検討した。表24に示す、各処理において平衡化緩衝液及び洗浄緩衝液を使用したことを除けば、上記の大規模プロセスにおいて、実施例5に詳述された通りに、溶解物を調製し、SDRカラムに導入した。フロースルー及び洗浄分画を採集し、混合して、成長因子の回収率を計算した。
成長因子の回収率の結果(上記に説明したよう計算したもの)を表25に示す。
+:PVP K17を0.5%(0.63mM)で添加
−:PVP K17の添加無し
* SDR前の物質に対する%
3つの工程において、0.5%のPVP K17を、血小板溶解物に(処理#1)、平衡化緩衝液に(処理#5)又は洗浄緩衝液に(処理#7)の1つの工程にのみ添加した。
血小板溶解物のみへのPVP K17の添加又は平衡化緩衝液のみへのPVP K17の添加は、同様に低い成長因子の回収率をもたらし、一方、洗浄緩衝液のみへのPVP K17の添加は、2つの他の処理に比べて、GFの回収率における最低の改善をもたらした。
3つの追加の処理(処理#2、#3及び#6)は、3つの条件のうちの2つの間での組み合わせを含み、一方処理#4は、全ての3つの条件の組み合わせを含んだ。
この結果は、HICカラムからのGF回収率を増加させる上で最も有効な単一の工程は、平衡化緩衝液へのPVPの添加であることを示している。更に、GFの最も高い回収率は、PVPの溶解物への添加と平衡化緩衝液中のPVPの組み合わせを使用して達成された。
S/D(Triton X−100及びTnBP)除去の有効性を評価するために、Triton X−100及びTnBPの濃度を、S/D除去工程の前に(SDR前の物質)及びS/D除去工程後(SDR後の物質)に測定した。Triton X−100は、紫外線検出器を使用する逆相HPLCによって決定し、TnBPは、水素炎イオン化検出器を使用する毛細管ガスクロマトグラフィーによって決定した。
この結果は、HICカラムによるS/D除去工程中のS/Dの有効な除去を示している。全てのTnBPが、全ての処理物において除去されたが、PVPを平衡化緩衝液中及び血小板溶解物中の両方で使用する場合に、Triton X−100の幾分の残留物がSDR後の物質中で認められた。しかしながら、上記実施例16では、ここで提示された濃度よりも高い濃度の、中間物質中のTriton X−100が、後続処理において除去されたことが示されている。
平衡化緩衝液へのPVPの添加並びに洗浄緩衝液へのPVPの添加は、HICカラムによるTriton X−100除去の有効性を著しく損なうことなく、成長因子の高い回収率をもたらした。
実施例19:S/D除去前の血小板溶解物とHPMCとの混合が成長因子回収率に及ぼす効果
他の両親媒性ポリマーが、HICカラムによるS/D除去工程中に成長因子の回収率を改善するために使用され得るかどうかを試験するために、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を以下の実施例で探究した。
HPMCは、経口医薬品の賦形剤並びに徐放性成分及び食品産業における乳化剤として、現在広く使用されている天然の多官能性炭水化物ポリマーである。
この実施例では、2つの異なる濃度のHPMC(10kDa、カタログ番号423238 Sigma−Aldrich、USA)を、HIC S/D除去工程の前に、かつHIC S/D除去工程中に試験した。添加剤なしのS/D除去工程を、対照として試験した。
上記実施例5に詳述したように、溶解物を調製し、SDRカラムに導入した。HPMC単独(NaCl及びEtOHを含まない)の効果を調べるために、この実施例では、15mLの体積の1緩衝液のみを、洗浄用に使用した。すべての条件を表27に詳述する。導入の前に、導入された溶解物で使用したものと同じ緩衝液を使用して平衡化を行った。フロースルー及び洗浄液を収集し、混合して、成長因子の回収率を計算した。成長因子の回収率の結果(上記に説明したよう計算したもの)を表28に示す。HPMCを含む全ての導入した試料を、上記の方法でHPMCでインキュベートした。
ELISAを使用して、以下の成長因子、すなわち、PDGF−AB、b(塩基性)FGF、VEGF、及びEGFの回収率を調べた。
この結果は、SDRカラムによるS/D除去前に、かつS/D除去後に、S/Dで処理された血小板溶解物をHPMCに接触させることが、SDRカラムからの成長因子の回収率を改善したことを示している。
また、この結果は、S/D除去工程中のHPMCの高い濃度が、成長因子の回収率の増加をもたらしたことを示している。
Triton X−100及びTnBPの濃度を、S/D除去工程の前に(SDR前の物質)及びS/D除去工程後(SDR後の物質)に測定した。Triton X−100は、紫外線検出器を使用する逆相HPLCによって決定し、TnBPは、水素炎イオン化検出器を使用する毛細管ガスクロマトグラフィーによって決定した。
結果を以下の表29に示す。
この結果は、成長因子回収に有効であることが認められた最大0.3%の濃度のHPMCの存在下でS/D物質の除去を行うことが、カラムのS/D除去性能に影響を及ぼさなかったことを示している。
実施例20:S/Dで処理され、PVP K12に接触させ、かつS/D除去に供された、WAPから調製された血小板抽出物中のいくつかの成長因子間の比率
以下の実施例は、開示されたように調製された血小板抽出物中のいくつかの成長因子間の比率を示し、また、得られた比率が、出発物質中のものに匹敵するかどうか、及び試料をクロマトグラフィー樹脂に導入する前の溶解物(SDR前の物質)中のものに匹敵するかどうかを検討している。SDR前の物質(又は抽出物)及びSDR後の物質を、実施例16に記載した通りに調製した。
TGF−β1、VEGF、bFGF、及びPDGF−ABのレベルを、上述の特定の市販ELISAキットを使用して、3つ全ての試験物質(WAP出発物質、SDR前の物質、及びSDR後の物質)において測定し、PDGF−AB/TGF−β1、PDGF−AB/VEGF、TGF−β1/bFGF、及びVEGF/bFGFの間の比率を計算した。成長因子のレベル及び比率を、それぞれ下の表31及び32に示す。
この結果は、S/D除去工程中にエタノール及びNaClと組み合わせたPVP K12に接触させた血小板溶解物が、出発物質中の比率及びS/D除去前の物質中の比率と同様なPDGF−AB/TGF−β1、PDGF−AB/VEGF、TGF−β1/bFGF、及びVEGF/bFGF比率を有する抽出物をもたらすことを示している。
開示されたようにS/D除去を行うことが、S/D除去前の物質と同様である因子の比率を含む血小板抽出物をもたらすことを結論付けることができる。
〔実施の態様〕
(1) ウイルス安全性のある生物学的液体混合組成物(viral-safe biological liquid mixture composition)を生物学的原料から調製するための方法であって、該方法は、
該原料を提供する工程と、
両親媒性ポリマーを提供する工程と、
該原料を、ウイルス不活性化が可能な溶媒/界面活性剤(S/D)、及び該両親媒性ポリマーで処理する工程と、
該処理された原料を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に接触させることによって、該S/Dを除去する工程と、
非結合分画を含む物質をHICから回収する工程と、を含み、
該方法は、少なくとももう1つの直交するウイルス不活性化処理を含み、
これによって、ウイルス安全性のある生物学的液体混合組成物を得る、方法。
(2) 前記S/Dを除去する工程により、油抽出の更なる工程が省略される、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記HIC樹脂が、カラム中に充填される、実施態様1又は2に記載の方法。
(4) 前記原料が、細胞、細胞粒子及び/又は細胞小器官を含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記原料が、血液バフィーコートである、実施態様1〜3のいずれかに記載の方法。
(6) 前記原料が、血小板を含む、実施態様1〜5のいずれかに記載の方法。
(7) 前記原料が、複数のドナーからプールされた血小板富化分画である、実施態様1〜4のいずれかに記載の方法。
(8) 前記両親媒性ポリマーが、炭化水素系界面活性剤である、実施態様1〜7のいずれかに記載の方法。
(9) 前記両親媒性ポリマーが、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様1〜8のいずれかに記載の方法。
(10) 前記原料が、先ず初めに前記S/Dに接触させられ、次に前記両親媒性ポリマーに接触させられる、実施態様1〜9のいずれかに記載の方法。
(11) 前記S/Dで処理された原料中の前記PVPの濃度が、約0.01〜0.9mMの範囲である、実施態様1〜10のいずれかに記載の方法。
(12) 前記S/Dで処理された原料中の前記PVPの濃度が、約0.01〜0.3mMの範囲である、実施態様1〜11のいずれかに記載の方法。
(13) 前記S/Dで処理された原料中の前記PVPの濃度が、約0.025〜0.3mMの範囲である、実施態様1〜12のいずれかに記載の方法。
(14) 前記S/Dで処理された原料中の前記HPMCの濃度が、約0.01〜0.3mMの範囲である、実施態様1〜10のいずれかに記載の方法。
(15) 前記方法が、前記樹脂を有機溶媒及び/又は塩を含む溶液で洗浄する工程と、該洗浄工程後に得られる分画を回収し、前記非結合分画と混合する工程と、を更に含む、実施態様1〜14のいずれかに記載の方法。
(16) 前記有機溶媒が、エタノールである、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記塩が、NaClである、実施態様15又は16に記載の方法。
(18) 前記少なくとももう1つの直交するウイルス不活性化処理が、熱不活化を含む、実施態様1〜17のいずれかに記載の方法。
(19) 前記物質を濃縮する工程を更に含む、実施態様1〜18のいずれかに記載の方法。
(20) 前記物質を乾燥させることによって、ウイルス安全性のある生物学的乾燥混合物とする工程を更に含む、実施態様1〜19のいずれかに記載の方法。
(21) 生物学的原料から生物学的液体混合組成物を調製するための方法であって、該方法は、
該原料を提供する工程と、
PVP及び/又はHPMCを提供する工程と、
該原料を、ウイルス不活性化が可能な溶媒/界面活性剤(S/D)、及び該PVP及び/又はHPMCで処理する工程と、
該処理された原料を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に接触させることによって、該S/Dを除去する工程と、
非結合分画を含む物質をHICから回収する工程と、を含む、方法。
(22) 実施態様1〜21のいずれかに記載の方法により得られる生物学的液体混合組成物。
(23) 約0.07〜6mMの範囲のPVPの濃度を含む、実施態様22に記載の組成物。
(24) 約0.07〜2mMの範囲のPVPの濃度を含む、実施態様22又は23に記載の組成物。
(25) 約0.17〜2mMの範囲のPVPの濃度を含む、実施態様22〜24のいずれかに記載の組成物。
(26) 約0.07〜1.5mMの範囲のHPMCの濃度を含む、実施態様22に記載の組成物。
(27) PDGF−AB、PDGF−BB及び/又はbFGFが富化された血小板抽出物である、実施態様22〜26のいずれかに記載の組成物。
(28) 両親媒性ポリマーと、ケモカイン、成長因子、サイトカイン、栄養因子及びこれらの混合物からなる群から選択される血小板由来タンパク質と、薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬組成物であって、該両親媒性ポリマーが、約0.07〜6mMの範囲の濃度のPVP、又は約0.07〜1.5mMの範囲の濃度のHPMCである、組成物。
(29) 前記血小板由来タンパク質が、PDGF−AB、PDGF−BB、bFGF又はこれらの混合物である、実施態様28に記載の組成物。
(30) 組織治癒、臓器再構築、組織再生、及び/又は炎症の治療における使用のための、実施態様22〜29のいずれかに記載の組成物。
(31) 前記組織が、軟組織である、実施態様30に記載の組成物。
(32) 局所的又は非経口な使用のための、実施態様22〜29のいずれかに記載の組成物。
(33) 実施態様22〜29のいずれかに記載の組成物を含む容器。
(34) 実施態様33に記載の容器を含むキット。
(35) フィブリノーゲン含有成分を含む容器を更に含む、実施態様34に記載のキット。
(36) トロンビン含有成分を含む容器を更に含む、実施態様34又は35に記載のキット。
(37) 必要とする被験体における、組織治癒、臓器再構築、組織再生、及び/又は炎症の治療のための方法であって、有効量の実施態様22〜29のいずれかに記載の組成物を、該被験体に適用する工程を含む、方法。
(38) 溶媒−界面活性剤(S/D)を含む生物学的原料からS/Dを除去するための方法であって、該方法は、
該原料を提供する工程と、
両親媒性ポリマーを提供する工程と、
該原料をS/D、及び該両親媒性ポリマーで処理する工程と、
該処理された原料を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に接触させることによって、該S/Dを該生物学的原料から除去する工程と、
非結合分画を含む物質をHICから回収する工程と、を含む、方法。
(39) 前記S/Dを除去する工程により、油抽出の更なる工程が省略される、実施態様38に記載の方法。
(40) 実施態様38に記載の工程を含むことによって得られる生物学的組成物。