特許文献1に示されているNR型の客観画質評価は、圧縮ビットストリームと、復号過程で生成される中間デコード情報と、のみから主観画質を推定する。
しかし、特許文献1に示されているNR型の客観画質評価は、例えばMPEG-2やH.264/AVCのような、固定的な処理ブロックサイズしか許容されていない符号化技術で圧縮符号化された映像を前提としている。このため、例えばH.265/HEVCのような、予測ブロックや変換ブロックに様々なブロックサイズが許容される符号化技術により圧縮符号化された映像に対しては、適用できなかった。
そこで、本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、複数の処理ブロックサイズが許容される符号化技術で圧縮符号化された映像の主観画質を、ビットストリーム解析に基づく画質評価方式により推定することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
(1) 本発明は、参照画像を用いることなく映像の主観画質を推定する客観画質評価装置であって、符号化ブロックの量子化パラメータ(例えば、図1の量子化パラメータ情報SIG2に相当)を圧縮ビットストリーム(例えば、図1のビットストリームSIG1に相当)から求める第1のパラメータ解析手段(例えば、図1のパラメータ解析部10に相当)と、前記第1のパラメータ解析手段により求められた符号化ブロックごとの量子化パラメータの平均値を、符号化ブロックのブロックサイズごとに求める量子化パラメータ平均値算出手段(例えば、図1の量子化パラメータ平均値算出部20に相当)と、を備えることを特徴とする客観画質評価装置を提案している。
この発明によれば、符号化ブロックの量子化パラメータを圧縮ビットストリームから求め、求めた符号化ブロックごとの量子化パラメータの平均値を、符号化ブロックのブロックサイズごとに求めることとした。
このため、圧縮ビットストリームのみから、符号化ブロックのブロックサイズごとに量子化パラメータの平均値を求めることができる。したがって、求めた符号化ブロックのブロックサイズごとの量子化パラメータの平均値を、画質劣化特徴量として用いて客観画質評価を行うことで、複数の処理ブロックサイズが許容される符号化技術で圧縮符号化された映像の主観画質を、ビットストリーム解析に基づく画質評価方式により推定することができる。
(2) 本発明は、参照画像を用いることなく映像の主観画質を推定する客観画質評価装置であって、直交変換ブロックの直交変換係数(例えば、図1の変換係数SIG3に相当)を圧縮ビットストリーム(例えば、図1のビットストリームSIG1に相当)から求める第2のパラメータ解析手段(例えば、図1のパラメータ解析部10に相当)と、処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量(例えば、図1の空間的劣化特徴量SIG7に相当)を求める空間的劣化特徴量算出手段(例えば、図1の空間的劣化特徴量算出部30に相当)と、を備え、前記空間的劣化特徴量算出手段は、前記第2のパラメータ解析手段より求められた直交変換ブロックごとの直交変換係数を用いて、処理対象の直交変換ブロックと、当該処理対象の直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間で予測残差に基づくブロック歪特徴量を算出し、前記隣接する直交変換ブロックごとに算出したブロック歪特徴量について、当該隣接する直交変換ブロックのブロックサイズに応じて重み付け和を算出して、前記処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量とすることを特徴とする客観画質評価装置を提案している。
この発明によれば、直交変換ブロックの直交変換係数を圧縮ビットストリームから求めることとした。また、求めた直交変換ブロックごとの直交変換係数を用いて、処理対象の直交変換ブロックと、処理対象の直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間で予測残差に基づくブロック歪特徴量を算出することとした。また、隣接する直交変換ブロックごとに算出したブロック歪特徴量について、隣接する直交変換ブロックのブロックサイズに応じて重み付け和を算出して、処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量とすることとした。
このため、圧縮ビットストリームのみから、処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量を、直交変換ブロックのブロックサイズを考慮して求めることができる。したがって、求めた処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量を、画質劣化特徴量として用いて客観画質評価を行うことで、複数の処理ブロックサイズが許容される符号化技術で圧縮符号化された映像の主観画質を、ビットストリーム解析に基づく画質評価方式により推定することができる。
(3) 本発明は、(2)の客観画質評価装置について、前記空間的劣化特徴量算出手段は、前記隣接する直交変換ブロックごとに算出するブロック歪特徴量として、前記処理対象の直交変換ブロックと、当該処理対象の直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間で予測残差の直流成分の差分二乗平均値を算出することを特徴とする客観画質評価装置を提案している。
この発明によれば、(2)の客観画質評価装置において、隣接する直交変換ブロックごとに算出するブロック歪特徴量として、処理対象の直交変換ブロックと、処理対象の直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間で予測残差の直流成分の差分二乗平均値を算出することとした。
このため、処理対象の直交変換ブロックと、この直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックと、の間で算出した予測残差の直流成分の差分二乗平均値を用いて、客観画質評価を行うことができる。
(4) 本発明は、(2)または(3)の客観画質評価装置について、前記空間的劣化特徴量算出手段は、前記隣接する直交変換ブロックごとに算出したブロック歪特徴量の重み付け和を算出する際の重み付け係数を、前記処理対象の直交変換ブロックの各辺のうち当該隣接する直交変換ブロックに接するものの長さに応じて決定することを特徴とする客観画質評価装置を提案している。
この発明によれば、(2)または(3)の客観画質評価装置において、隣接する直交変換ブロックごとに算出したブロック歪特徴量の重み付け和を算出する際の重み付け係数を、処理対象の直交変換ブロックの各辺のうち隣接する直交変換ブロックに接するものの長さに応じて決定することとした。
このため、直交変換ブロックのブロックサイズを考慮して、隣接する直交変換ブロックごとのブロック歪特徴量から処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量を求めることができる。
(5) 本発明は、参照画像を用いることなく映像の主観画質を推定する客観画質評価装置であって、直交変換ブロックの直交変換係数(例えば、図1の変換係数SIG3に相当)を圧縮ビットストリーム(例えば、図1のビットストリームSIG1に相当)から求める第3のパラメータ解析手段(例えば、図1のパラメータ解析部10に相当)と、処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量(例えば、図1の時間的劣化特徴量SIG8に相当)を求める時間的劣化特徴量算出手段(例えば、図1の時間的劣化特徴量算出部40に相当)と、を備え、前記時間的劣化特徴量算出手段は、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれている直交変換ブロックのそれぞれのフリッキング特徴量を、前記第3のパラメータ解析手段により求められた当該直交変換ブロックの直交変換係数に基づいて算出し、前記直交変換ブロックごとに算出したフリッキング特徴量について、当該直交変換ブロックのうち前記処理対象の動き補償予測ブロックに属している領域のサイズに応じて重み付け和を算出して、当該処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量とすることを特徴とする客観画質評価装置を提案している。
この発明によれば、直交変換ブロックの直交変換係数を圧縮ビットストリームから求めることとした。また、求めた直交変換ブロックの直交変換係数に基づいて、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれている直交変換ブロックのそれぞれのフリッキング特徴量を算出することとした。また、直交変換ブロックごとに算出したフリッキング特徴量について、直交変換ブロックのうち処理対象の動き補償予測ブロックに属している領域のサイズに応じて重み付け和を算出して、処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量とすることとした。
このため、圧縮ビットストリームのみから、処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量を、動き補償予測ブロックおよび直交変換ブロックの大きさを考慮して求めることができる。したがって、求めた処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量を、画質劣化特徴量として用いて客観画質評価を行うことで、複数の処理ブロックサイズが許容される符号化技術で圧縮符号化された映像の主観画質を、ビットストリーム解析に基づく画質評価方式により推定することができる。
(6) 本発明は、(1)の量子化パラメータ平均値算出手段により求められた量子化パラメータの平均値と、(2)から(4)のいずれかの空間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量と、(5)の時間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量と、に基づいて、客観画質を示す客観評価値を求める画質劣化特徴量統合手段(例えば、図1の画質劣化特徴量統合部50に相当)を備えることを特徴とする客観画質評価装置を提案している。
この発明によれば、(1)の量子化パラメータ平均値算出手段により求められた量子化パラメータの平均値と、(2)から(4)のいずれかの空間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量と、(5)の時間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量と、に基づいて、客観画質を示す客観評価値を求めることとした。
このため、量子化パラメータの平均値と、処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量と、処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量と、を画質劣化特徴量として用いて客観画質評価を行って、客観評価値を求めることができる。
(7) 本発明は、(6)の客観画質評価装置について、前記画質劣化特徴量統合手段は、(1)の量子化パラメータ平均値算出手段により求められた量子化パラメータの平均値と、(2)から(4)のいずれかの空間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量と、(5)の時間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量と、の重み付け和により、前記客観評価値を求めることを特徴とする客観画質評価装置を提案している。
この発明によれば、(6)の客観画質評価装置において、(1)の量子化パラメータ平均値算出手段により求められた量子化パラメータの平均値と、(2)から(4)のいずれかの空間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量と、(5)の時間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量と、の重み付け和により、客観評価値を求めることとした。
このため、重み付け和を算出する際の重み付け係数を、主観評価値と客観評価値との相関が最大になるように設定することで、客観評価値の精度を向上させて、主観画質の推定精度を向上させることができる。
(8) 本発明は、(6)の客観画質評価装置について、前記画質劣化特徴量統合手段は、(1)の量子化パラメータ平均値算出手段により求められた量子化パラメータの平均値と、(2)から(4)のいずれかの空間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量と、(5)の時間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量と、のそれぞれを予め定められた第1の値でべき乗したものの重み付け和を、予め定められた第2の値でべき乗して、前記客観評価値を求めることを特徴とする客観画質評価装置を提案している。
この発明によれば、(1)の量子化パラメータ平均値算出手段により求められた量子化パラメータの平均値と、(2)から(4)のいずれかの空間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量と、(5)の時間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量と、のそれぞれを予め定められた第1の値でべき乗したものの重み付け和を、予め定められた第2の値でべき乗して、客観評価値を求めることとした。
このため、重み付け和を算出する際の重み付け係数を、主観評価値と客観評価値との相関が最大になるように設定することで、客観評価値の精度を向上させて、主観画質の推定精度を向上させることができる。
(9) 本発明は、(6)の客観画質評価装置について、前記画質劣化特徴量統合手段は、(1)の量子化パラメータ平均値算出手段により求められた量子化パラメータの平均値と、(2)から(4)のいずれかの空間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量と、(5)の時間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量と、のそれぞれを処理ブロックサイズに応じて重み付けした和を算出して、前記客観評価値を求めることを特徴とする客観画質評価装置を提案している。
この発明によれば、(6)の客観画質評価装置において、(1)の量子化パラメータ平均値算出手段により求められた量子化パラメータの平均値と、(2)から(4)のいずれかの空間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量と、(5)の時間的劣化特徴量算出手段により求められた処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量と、のそれぞれを処理ブロックサイズに応じて重み付けした和を算出して、客観評価値を求めることとした。
このため、重み付け和を算出する際の重み付け係数を、処理ブロックサイズを考慮して決定することができるので、客観評価値の精度を向上させて、主観画質の推定精度を向上させることができる。
(10) 本発明は、第1のパラメータ解析手段(例えば、図1のパラメータ解析部10に相当)および量子化パラメータ平均値算出手段(例えば、図1の量子化パラメータ平均値算出部20に相当)を備え、参照画像を用いることなく映像の主観画質を推定する客観画質評価装置における客観画質評価方法であって、前記第1のパラメータ解析手段が、符号化ブロックの量子化パラメータ(例えば、図1の量子化パラメータ情報SIG2に相当)を圧縮ビットストリーム(例えば、図1のビットストリームSIG1に相当)から求める第1のステップと、前記量子化パラメータ平均値算出手段が、前記第1のステップで求められた符号化ブロックごとの量子化パラメータの平均値を、符号化ブロックのブロックサイズごとに求める第2のステップと、を備えることを特徴とする客観画質評価方法を提案している。
この発明によれば、符号化ブロックの量子化パラメータを圧縮ビットストリームから求め、求めた符号化ブロックごとの量子化パラメータの平均値を、符号化ブロックのブロックサイズごとに求めることとした。このため、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
(11) 本発明は、第2のパラメータ解析手段(例えば、図1のパラメータ解析部10に相当)および空間的劣化特徴量算出手段(例えば、図1の空間的劣化特徴量算出部30に相当)を備え、参照画像を用いることなく映像の主観画質を推定する客観画質評価装置における客観画質評価方法であって、前記第2のパラメータ解析手段が、直交変換ブロックの直交変換係数(例えば、図1の変換係数SIG3に相当)を圧縮ビットストリーム(例えば、図1のビットストリームSIG1に相当)から求める第1のステップと、前記空間的劣化特徴量算出手段が、処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量(例えば、図1の空間的劣化特徴量SIG7に相当)を求める第2のステップと、を備え、前記第2のステップでは、前記空間的劣化特徴量算出手段が、前記第1のステップで求められた直交変換ブロックごとの直交変換係数を用いて、処理対象の直交変換ブロックと、当該処理対象の直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間で予測残差に基づくブロック歪特徴量を算出し、前記隣接する直交変換ブロックごとに算出したブロック歪特徴量について、当該隣接する直交変換ブロックのブロックサイズに応じて重み付け和を算出して、前記処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量とすることを特徴とする客観画質評価方法を提案している。
この発明によれば、直交変換ブロックの直交変換係数を圧縮ビットストリームから求めることとした。また、求めた直交変換ブロックごとの直交変換係数を用いて、処理対象の直交変換ブロックと、処理対象の直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間で予測残差に基づくブロック歪特徴量を算出することとした。また、隣接する直交変換ブロックごとに算出したブロック歪特徴量について、隣接する直交変換ブロックのブロックサイズに応じて重み付け和を算出して、処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量とすることとした。このため、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
(12) 本発明は、第3のパラメータ解析手段(例えば、図1のパラメータ解析部10に相当)および時間的劣化特徴量算出手段(例えば、図1の時間的劣化特徴量算出部40に相当)を備え、参照画像を用いることなく映像の主観画質を推定する客観画質評価装置における客観画質評価方法であって、前記第3のパラメータ解析手段が、直交変換ブロックの直交変換係数(例えば、図1の変換係数SIG3に相当)を圧縮ビットストリーム(例えば、図1のビットストリームSIG1に相当)から求める第1のステップと、前記時間的劣化特徴量算出手段が、処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量(例えば、図1の時間的劣化特徴量SIG8に相当)を求める第2のステップと、を備え、前記第2のステップでは、前記時間的劣化特徴量算出手段が、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれている直交変換ブロックのそれぞれのフリッキング特徴量を、前記第1のステップで求められた当該直交変換ブロックの直交変換係数に基づいて算出し、前記直交変換ブロックごとに算出したフリッキング特徴量について、当該直交変換ブロックのうち前記処理対象の動き補償予測ブロックに属している領域のサイズに応じて重み付け和を算出して、当該処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量とすることを特徴とする客観画質評価方法を提案している。
この発明によれば、直交変換ブロックの直交変換係数を圧縮ビットストリームから求めることとした。また、求めた直交変換ブロックの直交変換係数に基づいて、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれている直交変換ブロックのそれぞれのフリッキング特徴量を算出することとした。また、直交変換ブロックごとに算出したフリッキング特徴量について、直交変換ブロックのうち処理対象の動き補償予測ブロックに属している領域のサイズに応じて重み付け和を算出して、処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量とすることとした。このため、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
(13) 本発明は、第1のパラメータ解析手段(例えば、図1のパラメータ解析部10に相当)および量子化パラメータ平均値算出手段(例えば、図1の量子化パラメータ平均値算出部20に相当)を備え、参照画像を用いることなく映像の主観画質を推定する客観画質評価装置における客観画質評価方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記第1のパラメータ解析手段が、符号化ブロックの量子化パラメータ(例えば、図1の量子化パラメータ情報SIG2に相当)を圧縮ビットストリーム(例えば、図1のビットストリームSIG1に相当)から求める第1のステップと、前記量子化パラメータ平均値算出手段が、前記第1のステップで求められた符号化ブロックごとの量子化パラメータの平均値を、符号化ブロックのブロックサイズごとに求める第2のステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
この発明によれば、コンピュータを用いてプログラムを実行することで、符号化ブロックの量子化パラメータを圧縮ビットストリームから求め、求めた符号化ブロックごとの量子化パラメータの平均値を、符号化ブロックのブロックサイズごとに求めることとした。このため、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
(14) 本発明は、第2のパラメータ解析手段(例えば、図1のパラメータ解析部10に相当)および空間的劣化特徴量算出手段(例えば、図1の空間的劣化特徴量算出部30に相当)を備え、参照画像を用いることなく映像の主観画質を推定する客観画質評価装置における客観画質評価方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記第2のパラメータ解析手段が、直交変換ブロックの直交変換係数(例えば、図1の変換係数SIG3に相当)を圧縮ビットストリーム(例えば、図1のビットストリームSIG1に相当)から求める第1のステップと、前記空間的劣化特徴量算出手段が、処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量(例えば、図1の空間的劣化特徴量SIG7に相当)を求める第2のステップと、をコンピュータに実行させ、前記第2のステップでは、前記空間的劣化特徴量算出手段が、前記第1のステップで求められた直交変換ブロックごとの直交変換係数を用いて、処理対象の直交変換ブロックと、当該処理対象の直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間で予測残差に基づくブロック歪特徴量を算出し、前記隣接する直交変換ブロックごとに算出したブロック歪特徴量について、当該隣接する直交変換ブロックのブロックサイズに応じて重み付け和を算出して、前記処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量とするためのプログラムを提案している。
この発明によれば、コンピュータを用いてプログラムを実行することで、直交変換ブロックの直交変換係数を圧縮ビットストリームから求めることとした。また、求めた直交変換ブロックごとの直交変換係数を用いて、処理対象の直交変換ブロックと、処理対象の直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間で予測残差に基づくブロック歪特徴量を算出することとした。また、隣接する直交変換ブロックごとに算出したブロック歪特徴量について、隣接する直交変換ブロックのブロックサイズに応じて重み付け和を算出して、処理対象の直交変換ブロックのブロック歪特徴量とすることとした。このため、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
(15) 本発明は、第3のパラメータ解析手段(例えば、図1のパラメータ解析部10に相当)および時間的劣化特徴量算出手段(例えば、図1の時間的劣化特徴量算出部40に相当)を備え、参照画像を用いることなく映像の主観画質を推定する客観画質評価装置における客観画質評価方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記第3のパラメータ解析手段が、直交変換ブロックの直交変換係数(例えば、図1の変換係数SIG3に相当)を圧縮ビットストリーム(例えば、図1のビットストリームSIG1に相当)から求める第1のステップと、前記時間的劣化特徴量算出手段が、処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量(例えば、図1の時間的劣化特徴量SIG8に相当)を求める第2のステップと、をコンピュータに実行させ、前記第2のステップでは、前記時間的劣化特徴量算出手段が、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれている直交変換ブロックのそれぞれのフリッキング特徴量を、前記第1のステップで求められた当該直交変換ブロックの直交変換係数に基づいて算出し、前記直交変換ブロックごとに算出したフリッキング特徴量について、当該直交変換ブロックのうち前記処理対象の動き補償予測ブロックに属している領域のサイズに応じて重み付け和を算出して、当該処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量とするためのプログラムを提案している。
この発明によれば、コンピュータを用いてプログラムを実行することで、直交変換ブロックの直交変換係数を圧縮ビットストリームから求めることとした。また、求めた直交変換ブロックの直交変換係数に基づいて、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれている直交変換ブロックのそれぞれのフリッキング特徴量を算出することとした。また、直交変換ブロックごとに算出したフリッキング特徴量について、直交変換ブロックのうち処理対象の動き補償予測ブロックに属している領域のサイズに応じて重み付け和を算出して、処理対象の動き補償予測ブロックのフリッキング特徴量とすることとした。このため、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
本発明によれば、複数の処理ブロックサイズが許容される符号化技術で圧縮符号化された映像の主観画質を、ビットストリーム解析に基づく画質評価方式により推定することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る客観画質評価装置1のブロック図である。客観画質評価装置1は、ビットストリーム解析に基づく画質評価方式により映像の主観画質を推定する。この客観画質評価装置1は、パラメータ解析部10、量子化パラメータ平均値算出部20、空間的劣化特徴量算出部30、時間的劣化特徴量算出部40、および画質劣化特徴量統合部50を備える。
[パラメータ解析部10の動作]
パラメータ解析部10は、複数の処理ブロックサイズが許容される符号化技術(本実施形態では、H.265/HEVC)で圧縮符号化されたビットストリームSIG1を入力とする。このパラメータ解析部10は、ビットストリームSIG1から符号化パラメータを求めて出力する。符号化パラメータには、量子化パラメータ情報SIG2と、変換係数SIG3と、参照フレーム情報SIG4と、動き補償予測ブロックの形状情報SIG5と、が含まれる。
量子化パラメータ情報SIG2は、符号化ブロック(CU:Coding Unit)のブロックサイズごとの量子化パラメータを含んでいる。
変換係数SIG3は、直交変換ブロックのブロックサイズごとの直交変換係数を含んでいる。
参照フレーム情報SIG4は、動き補償予測ブロックの参照フレームを示す参照フレーム番号を含んでおり、動き補償予測ブロックが動きベクトルを有している場合に出力される。なお、動き補償予測ブロックに双予測が適用されている場合には、2つの参照フレーム番号が、参照番号の小さい順に出力される。
動き補償予測ブロックの形状情報SIG5は、動き補償予測ブロックの形状を示す情報を含んでいる。
なお、符号化パラメータの求める際には、ビットストリームSIG1から直接抽出できる場合と、復号の課程で中間情報として取得できる場合と、がある。本実施形態では、ビットストリームSIG1の種類を限定しないため、符号化パラメータを求める際には、ビットストリームSIG1の圧縮符号化方式に応じた方法を適用するものとする。
[量子化パラメータ平均値算出部20の動作]
量子化パラメータ平均値算出部20は、量子化パラメータ情報SIG2を入力とする。この量子化パラメータ平均値算出部20は、量子化パラメータに基づく画質劣化特徴量として、シーケンス内での量子化パラメータの平均値を求め、量子化パラメータの平均値SIG6として出力する。なお、本実施形態では、CUのブロックサイズが可変であるため、CUのブロックサイズごとに、量子化パラメータ情報SIG2から量子化パラメータを取得し、シーケンス内平均を求めるものとする。
[空間的劣化特徴量算出部30の動作]
空間的劣化特徴量算出部30は、変換係数SIG3を入力とする。この空間的劣化特徴量算出部30は、見た目に与える品質劣化の視覚的重要度が処理ブロックサイズに応じて異なることを考慮して、直交変換ブロックのブロックサイズごとに変換係数SIG3を用いて空間的劣化特徴量を算出し、それぞれに対して重み付けを行い、空間的劣化特徴量SIG7として出力する。
空間的劣化特徴量とは、ブロック歪特徴量、すなわち復号画像上のブロック歪の視覚的な認識程度を示す指標のことである。ブロック歪は、MPEG-2やH.264/AVCやH.265/HEVCなどのブロック単位で処理を行う圧縮符号化において発生する画質劣化の要因の1つであり、ブロック歪による画質劣化と、主観画質の劣化と、の間には高い相関があると考えられる。このブロック歪は、画素ブロックの境界で信号値が大きく変化することによって発生し、ブロック間の直流成分が大きく変化している場合に視覚的に目立つようになる。
そこで、本実施形態では、空間的劣化特徴量算出部30は、処理対象の直交変換ブロックと、これに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間の予測残差信号の直流成分の差分二乗平均値により、空間的劣化特徴量を定義する。
具体的には、まず、空間的劣化特徴量算出部30は、変換係数SIG3を用いて、処理対象の直交変換ブロックと、これに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間で予測残差信号のDC差分二乗平均値を求めて、空間的劣化特徴量とする。ただし、処理対象の直交変換ブロックと、隣接する直交変換ブロックと、でブロックサイズが異なる場合には、隣接する直交変換ブロックのそれぞれとの間のDC差分二乗について、処理対象の直交変換ブロックの各辺のうち隣接する直交変換ブロックに接しているものの長さに応じて重み付けを行う。この辺の長さに応じた重み付けについて、図2を用いて詳述する。
図2は、処理対象の直交変換ブロックと、これに隣接する直交変換ブロックと、の関係の一例を示す図である。図2では、処理対象の直交変換ブロックを直交変換ブロックBL[0]と表し、直交変換ブロックBL[0]に隣接する直交変換ブロックを、直交変換ブロックBL[S]と表している(ただし、Sは、1≦S≦8を満たす任意の整数であるものとする)。また、直交変換ブロックBL[0]のブロックサイズは、16×16であるものとする。
直交変換ブロックBL[0]と直交変換ブロックBL[S]との間の予測残差信号の直流成分を、DC[S]と表すこととすると、直交変換ブロックBL[0]における空間的劣化特徴量SI(0)dep2は、以下の数式(1)で求めることができる。数式(1)において、dDC[0,S]は、以下の数式(2)で定まるものとする。
なお、数式(1)のk5には、直交変換ブロックBL[0]が有する辺のうち、この直交変換ブロックBL[0]と隣接する直交変換ブロックに接するものの数が代入される。具体的には、直交変換ブロックBL[0]は、右辺、下辺、左辺、および上辺の4つの辺を有しており、これら4つの辺の全てが他の直交変換ブロックに接している。このため、数式(1)のk5には、「4」が代入される。
また、数式(1)のk1からk4のそれぞれには、直交変換ブロックBL[0]の右辺、下辺、左辺、および上辺のそれぞれのうち隣接する直交変換ブロックに接しているものの長さに応じた数が代入される。
具体的には、直交変換ブロックBL[0]の下方には、直交変換ブロックBL[5]があり、直交変換ブロックBL[0]の下辺の全体が直交変換ブロックBL[5]に接している。このため、数式(1)のk2には、「1」が代入される。
また、直交変換ブロックBL[0]の左方には、直交変換ブロックBL[6]があり、直交変換ブロックBL[0]の左辺の全体が直交変換ブロックBL[6]に接している。このため、数式(1)のk3にも、「1」が代入される。
一方、直交変換ブロックBL[0]の上方には、直交変換ブロックBL[7]、BL[8]があり、直交変換ブロックBL[0]の上辺の全体のうち1/2ずつが、直交変換ブロックBL[7]、BL[8]にそれぞれ接している。このため、数式(1)のk4には、「2」が代入される。
また、直交変換ブロックBL[0]の右方には、直交変換ブロックBL[1]からBL[4]があり、直交変換ブロック[0]の右辺の全体のうち1/4ずつが、直交変換ブロックBL[1]からBL[4]にそれぞれ接している。このため、数式(1)のk1には、「4」が代入される。
なお、本実施形態において「2つの直交変換ブロックが隣接する」とは、2つの直交変換ブロックのうち一方と他方とが隣り合っており、一方の直交変換ブロックに含まれる画素のうち2つ以上と、他方の直交変換ブロックに含まれる画素のうち2つ以上と、が接している場合のことを示すものとする。例えば図2において、直交変換ブロックBL[0]と直交変換ブロックBL[100]とは隣り合っているが、互いに接している画素の数は、直交変換ブロックBL[0]も直交変換ブロックBL[100]も、ともに「1」である。このため、直交変換ブロックBL[0]と直交変換ブロックBL[100]とは、本実施形態では、「隣接」していないとして考える。
次に、空間的劣化特徴量算出部30は、各直交変換ブロックにおける空間的劣化特徴量SI(B)depn(ただし、Bは、任意の整数であり、nは、1≦n≦4を満たす任意の整数であるものとする)を上述の数式(1)により求めた後に、これら空間的劣化特徴量SI(B)depnの平均値SIdepnを以下の数式(3)によりdepthごとに求め、空間的劣化特徴量SIG7とする。
なお、数式(3)において、N(B)depnは、シーケンス内の直交変換ブロックの各ブロックサイズの総数を示す。
[時間的劣化特徴量算出部40の動作]
時間的劣化特徴量算出部40は、変換係数SIG3と、参照フレーム情報SIG4と、動き補償予測ブロックの形状情報SIG5と、を入力とする。この時間的劣化特徴量算出部40は、変換係数SIG3と、参照フレーム情報SIG4と、動き補償予測ブロックの形状情報SIG5と、を用いて各動き補償予測ブロックにおける時間的劣化特徴量を算出し、時間的劣化特徴量SIG8として出力する。また、複数の動き補償予測ブロックによる予測残差信号が1つの直交変換ブロックに含まれている場合には、この1つの直交変換ブロックが処理対象の動き補償予測ブロックに跨がっている割合に応じて、算出した時間的劣化特徴量を分配する。なお、参照フレームを利用できない動き補償予測ブロックについては、時間的劣化特徴量の算出を行わないものとする。
時間的劣化特徴量とは、フリッキング特徴量、すなわち復号画像上のフリッカ妨害の視覚的な認識程度を示す指標のことである。フリッカ妨害は、動き補償予測符号化のイントラフレーム挿入の周期ごとに大きな品質変動がある場合などに検知される劣化であり、連続するフレーム間での輝度変化が急激に発生することによって知覚される。このフリッカ妨害による画質劣化と、主観画質の劣化と、の間にも高い相関があると考えられる。
そこで、本実施形態では、時間的劣化特徴量算出部40は、処理ブロック内の時間的な輝度値の変化を捉えるために、各動き補償予測ブロックにおける輝度のフレーム間差分を時間的劣化特徴量として定義する。
図3は、時間的劣化特徴量算出部40が時間的劣化特徴量SIG8を出力するために行う処理のフローチャートである。
ステップS1において、時間的劣化特徴量算出部40は、参照フレーム情報SIG4から、処理対象の動き補償予測ブロックにおける参照フレーム番号を抽出できるか否かを判別する。そして、抽出できると判別した場合には、ステップS2に処理を移し、抽出できないと判別した場合には、処理対象の動き補償予測ブロックは参照フレームを利用できない動き補償予測ブロックであるとして、図3に示した処理を終了する。
ステップS2において、時間的劣化特徴量算出部40は、動き補償予測ブロックの形状情報SIG5に基づいて、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれる直交変換ブロックのそれぞれの直交変換係数を変換係数SIG3から求め、ステップS3に処理を移す。
ステップS3において、時間的劣化特徴量算出部40は、ステップS2で求めた直交変換係数を用いて、以下の数式(4)により処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれる直交変換ブロックBのそれぞれの予測残差信号電力P(B)を算出し、ステップS4に処理を移す。
なお、数式(4)において、XB(i,j)は、直交変換ブロックBにおける直交変換係数を示し、Smaxは、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれる直交変換ブロックの数を示し、Nsizeは、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれる直交変換ブロックのサイズを示す。
ステップS4において、時間的劣化特徴量算出部40は、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれる直交変換ブロックBの予測残差信号電力P(B)の重み付け和を、処理対象の動き補償予測ブロックの予測残差信号電力PUP(B)として算出し、ステップS5に処理を移す。
重み付けは、直交変換ブロックの全体のうち、処理対象の動き補償予測ブロックに属する領域の面積(画素数)に応じて行う。具体的には、直交変換ブロックの全体が処理対象の動き補償予測ブロックに属している場合には、この直交変換ブロックの予測残差信号電力の重み付け係数を「1」に設定する。一方、直交変換ブロックの全体ではなく一部が処理対象の動き補償予測ブロックに属している場合には、この直交変換ブロックの予測残差信号電力の重み付け係数を、この直交変換ブロックの全体のうち処理対象の動き補償予測ブロックに属している面積の割合に設定する。この重み付け係数の具体例について、図4、5を用いて以下に説明する。
図4は、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれている直交変換ブロックが1つ以上あり、これら1つ以上の直交変換ブロックのそれぞれの全体が処理対象の動き補償予測ブロックに属している例を示す図である。
図4では、動き補償予測ブロックPU0に、直交変換ブロックB0の全体が属している。このため、直交変換ブロックB0の予測残差信号電力P(B)0の重み付け係数は、「1」になり、動き補償予測ブロックPU0の予測残差信号電力PUP(B)0は、直交変換ブロックB0の予測残差信号電力P(B)0となる。
また、図4では、動き補償予測ブロックPU1に、直交変換ブロックB1の全体と、直交変換ブロックB3の全体と、が属している。このため、直交変換ブロックB1の予測残差信号電力P(B)1の重み付け係数と、直交変換ブロックB3の予測残差信号電力P(B)3の重み付け係数とは、「1」になり、動き補償予測ブロックPU1の予測残差信号電力PUP(B)1は、直交変換ブロックB1の予測残差信号電力P(B)1と、直交変換ブロックB3の予測残差信号電力P(B)3と、の和になる。
すなわち、図4に示したように、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれている直交変換ブロックが1つ以上あり、これら1つ以上の直交変換ブロックのそれぞれの全体が処理対象の動き補償予測ブロックに属している場合には、処理対象の動き補償予測ブロックの予測残差信号電力PUP(B)は、処理対象の動き補償予測ブロックに全体が属する直交変換ブロックBのそれぞれの予測残差信号電力P(B)を用いて、以下の数式(5)により求めることができる。なお、数式(5)において、mは、処理対象の動き補償予測ブロックに全体が属する直交変換ブロックBの数を示す。
一方、図5は、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれている直交変換ブロックが1つ以上あり、これら1つ以上の直交変換ブロックのうち少なくとも1つは、全体ではなく一部のみがこの動き補償予測ブロックに属している例を示す図である。
図5では、動き補償予測ブロックPU0に、直交変換ブロックB0の一部と、直交変換ブロックB2の一部と、が属している。ここで、直交変換ブロックB0の全体のうち、動き補償予測ブロックPU0に属している領域と、動き補償予測ブロックPU0に属していない領域(動き補償予測ブロックPU1に属している領域)と、の面積比をp:qと表すものとする。また、直交変換ブロックB2の全体のうち、動き補償予測ブロックPU0に属している領域と、動き補償予測ブロックPU0に属していない領域(動き補償予測ブロックPU1に属している領域)と、の面積比をr:sと表すものとする。
すると、動き補償予測ブロックPU0の予測残差信号電力PUP(B)0を求める場合、直交変換ブロックB0の予測残差信号電力P(B)0の重み付け係数は、「p/(p+q)」になり、直交変換ブロックB2の予測残差信号電力P(B)2の重み付け係数は、「r/(r+s)」になる。このため、動き補償予測ブロックPU0の予測残差信号電力PUP(B)0は、以下の数式(6)により求めることができる。
また、図5では、動き補償予測ブロックPU1に、直交変換ブロックB0の一部と、直交変換ブロックB1の全体と、直交変換ブロックB2の一部と、直交変換ブロックB3の全体と、が属している。このため、動き補償予測ブロックPU1の予測残差信号電力PUP(B)1を求める場合、直交変換ブロックB0の予測残差信号電力P(B)0の重み付け係数は、「q/(p+q)」になり、直交変換ブロックB2の予測残差信号電力P(B)2の重み付け係数は、「s/(r+s)」になり、直交変換ブロックB1の予測残差信号電力P(B)1の重み付け係数と、直交変換ブロックB3の予測残差信号電力P(B)3の重み付け係数とは、「1」になる。したがって、動き補償予測ブロックPU1の予測残差信号電力PUP(B)1は、以下の数式(7)により求めることができる。
図3に戻って、ステップS5において、時間的劣化特徴量算出部40は、時間的劣化特徴量算出処理を行って、図3に示した処理を移す。
図6は、時間的劣化特徴量算出部40が行う時間的劣化特徴量算出処理のフローチャートである。
ステップS11において、時間的劣化特徴量算出部40は、処理対象の動き補償予測ブロックの参照フレームを、参照フレーム情報SIG4に基づいて求め、ステップS12に処理を移す。なお、以降では、動き補償予測ブロックに双予測が適用されていない場合(参照フレーム数が「1」の場合)に求められた参照フレームは、フレーム番号fref0のフレームの1つであり、動き補償予測ブロックに双予測が適用されている場合(参照フレーム数が「2」の場合)に求められた参照フレームは、フレーム番号fref0のフレームと、フレーム番号fref1のフレーム(ただし、fref0>fref1とする)と、の2つであるものとする。
ステップS12において、時間的劣化特徴量算出部40は、動き補償予測ブロックが保持するフレームの中からフレーム間距離が最大になる2つのフレームを求め、これら2つのフレームのフレーム番号をfstart、fstop(ただし、fstart<fstopとする)とし、ステップS13に処理を移す。
ここで、処理対象フレームのフレーム番号をfcurとする。すると、動き補償予測ブロックに双予測が適用されていない場合(参照フレーム数が「1」の場合)には、フレーム間距離とは、フレーム番号fcurのフレームとフレーム番号fref0のフレームとの距離の1種類のことである。一方、動き補償予測ブロックに双予測が適用されている場合(参照フレーム数が「2」の場合)には、フレーム間距離とは、フレーム番号fcurのフレームとフレーム番号fref0のフレームとの距離と、フレーム番号fcurのフレームとフレーム番号fref1のフレームとの距離と、フレーム番号fref0のフレームとフレーム番号fref1のフレームとの距離と、の3種類のことである。
図7は、参照フレーム数と、フレーム番号fref0、fref1、fcurの大小関係と、フレーム間距離が最大になるフレーム番号fstart、fstopと、の関係を示す図である。図7に示すように、参照フレーム数と、フレーム番号fref0、fref1、fcurの大小関係と、を求めれば、フレーム間距離が最大になるフレーム番号fstart、fstopを一意に求めることができる。そこで、時間的劣化特徴量算出部40は、参照フレーム情報SIG4から参照フレーム数を求めるとともに、フレーム番号fref0、fref1、fcurの大小関係を求め、これら求めた結果に基づいてフレーム間距離が最大になるフレーム番号fstart、fstopを求める。
図6に戻って、ステップS13において、時間的劣化特徴量算出部40は、フレーム番号を特定する変数indexに、ステップS13で求めたフレーム番号fstartを設定して、ステップS14に処理を移す。
ステップS14において、時間的劣化特徴量算出部40は、図8に示すように、まず、ステップS4で算出した処理対象の動き補償予測ブロックの予測残差信号電力PUP(B)を、ステップS12で求めたフレーム番号fstartのフレームとフレーム番号fstopのフレームとのフレーム間距離で平均する。次に、平均した結果を、フレーム番号がindexのフレームの配列Pdist(index)に加算して、ステップS15に処理を移す。なお、配列Pdist()の全要素は、シーケンスの先頭フレームに対して図3に示した処理を開始する際に、ゼロに初期化されるものとする。
ステップS15において、時間的劣化特徴量算出部40は、変数indexがフレーム番号fstopに等しいか否かを判別する。そして、等しいと判別した場合には、ステップS17に処理を移し、等しくないと判別した場合には、ステップS16に処理を移す。
ステップS16において、時間的劣化特徴量算出部40は、変数indexをインクリメントして、ステップS14に処理を戻す。
ステップS17において、時間的劣化特徴量算出部40は、数式(8)により配列Pdist()の全要素の平均を算出して時間的劣化特徴量TIとし、図6に示した処理を終了する。この時間的劣化特徴量TIが、時間的劣化特徴量SIG8として時間的劣化特徴量算出部40から出力される。
[画質劣化特徴量統合部50の動作]
画質劣化特徴量統合部50は、量子化パラメータの平均値SIG6と、空間的劣化特徴量SIG7と、時間的劣化特徴量SIG8と、を入力とする。この画質劣化特徴量統合部50は、量子化パラメータの平均値SIG6と、空間的劣化特徴量SIG7と、時間的劣化特徴量SIG8と、の各画質劣化特徴量を統合して客観評価値Qobjを求め、統合品質情報SIG9として出力する。客観評価値Qobjは、以下の数式(9)により求めることができる。
ここで、主観評価値と客観評価値Qobjとの関係を表す最適な近似式は、評価対象の画像フォーマットや符号化方式や符号化ビットレートなどの条件によって異なる。このため、数式(9)において、f()は、予め定められた関数を示し、このf()には、上述の条件に応じて主観評価値と客観評価値Qobjとの相関が最大になる関数が適用される。
f()として適用できる関数の例として、第1の関数、第2の関数、および第3の関数を以下に説明する。
第1の関数は、wt(ただし、tは、0≦t≦8を満たす任意の整数)を重み付け係数として、以下の数式(10)のように重み付き和を求める関数である。数式(10)において、w0からw8は、主観評価値と客観評価値Qobjとの相関が最大になるように設定される。
第2の関数は、wtとγ1とγ2とを重み付け係数として、以下の数式(11)のように重み付き和を求める関数である。数式(11)において、w0からw4とγ1とγ2とは、主観評価値と客観評価値Qobjとの相関が最大になるように設定される。
第3の関数は、wx、wy、wzを重み付け係数として、以下の数式(12)のように重み付き和を求める関数である。wx、wy、wzは、主観評価値と客観評価値Qobjとの相関が最大になるように設定される。
なお、数式(12)において、SIxは、数式(13)により求めることができ、aQzは、数式(14)により求めることができる。数式(13)、(14)において、waからwhのそれぞれは、見た目に与える品質劣化の視覚的重要度が処理ブロックサイズに応じて異なることを考慮して、ブロックの面積比や辺の長さの比といった、ブロックサイズに応じて定められる重み付け係数である。
なお、上述の主観評価値と客観評価値Qobjとの相関は、複数の評価映像を用いて得られた客観評価値Qobjの系列および主観評価値の系列を、回帰分析することによって求めることができる。この回帰分析について、図9を用いて以下に説明する。
図9において、縦軸は、主観評価値を示し、横軸は、客観評価値Qobjを示す。複数の評価映像のそれぞれについて、評価映像を用いることで得られた客観評価値Qobjと主観評価値とを図9に示すようにプロットすると、これら客観評価値Qobjと主観評価値との関係は、回帰曲線で近似することができる。回帰曲線には、一次関数だけでなく、高次多項式やロジスティック関数などの非線形関数も適用できる。客観画質評価の目的は、主観画質の推定であり、回帰曲線による近似の精度が高くなるに従って、すなわち図9のグラフ上の各プロット点と回帰曲線との距離が近くなるに従って、主観画質の推定精度が高くなる。
以上の客観画質評価装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
客観画質評価装置1は、パラメータ解析部10により、符号化ブロックの量子化パラメータをビットストリームSIG1から求め、求めた符号化ブロックごとの量子化パラメータの平均値を、符号化ブロックのブロックサイズごとに求める。また、画質劣化特徴量統合部50により、符号化ブロックのブロックサイズごとに求めた量子化パラメータの平均値を、画質劣化特徴量として用いて客観評価値Qobjを求める。このため、ビットストリームSIG1のみから、符号化ブロックのブロックサイズごとに量子化パラメータの平均値を求めることができる。したがって、複数の処理ブロックサイズが許容される符号化技術で圧縮符号化された映像の主観画質を、ビットストリーム解析に基づく画質評価方式により推定することができる。
また、客観画質評価装置1は、パラメータ解析部10により、直交変換ブロックの直交変換係数をビットストリームSIG1から求める。また、空間的劣化特徴量算出部30により、ビットストリームSIG1から求めた直交変換ブロックの直交変換係数を用いて、処理対象の直交変換ブロックと、処理対象の直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間で空間的劣化特徴量を求める。また、空間的劣化特徴量算出部30により、隣接する直交変換ブロックごとに求めた空間的劣化特徴量について、隣接する直交変換ブロックのブロックサイズに応じて重み付け和を算出して、処理対象の直交変換ブロックの空間的劣化特徴量とする。また、画質劣化特徴量統合部50により、処理対象の直交変換ブロックの空間的劣化特徴量を、画質劣化特徴量として用いて客観評価値Qobjを求める。このため、ビットストリームSIG1のみから、処理対象の直交変換ブロックの空間的劣化特徴量を、直交変換ブロックのブロックサイズを考慮して求めることができる。したがって、複数の処理ブロックサイズが許容される符号化技術で圧縮符号化された映像の主観画質を、ビットストリーム解析に基づく画質評価方式により推定することができる。
また、客観画質評価装置1は、空間的劣化特徴量算出部30により、ビットストリームSIG1から求めた直交変換ブロックの直交変換係数を用いて、処理対象の直交変換ブロックと、処理対象の直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックのそれぞれと、の間で予測残差信号のDC差分二乗平均値を求めて、空間的劣化特徴量とする。このため、処理対象の直交変換ブロックと、この直交変換ブロックに隣接する直交変換ブロックと、の間で算出した予測残差信号の直流成分の差分二乗平均値を用いて、客観評価値Qobjを求めることができる。
また、客観画質評価装置1は、空間的劣化特徴量算出部30により、隣接する直交変換ブロックごとに求めた空間的劣化特徴量の重み付け和を算出する際の重み付け係数を、処理対象の直交変換ブロックの各辺のうち隣接する直交変換ブロックに接するものの長さに応じて決定する。このため、直交変換ブロックのブロックサイズを考慮して、隣接する直交変換ブロックごとの空間的劣化特徴量から処理対象の直交変換ブロックの空間的劣化特徴量を求めることができる。
また、客観画質評価装置1は、空間的劣化特徴量算出部30により、隣接する直交変換ブロックごとに求めた空間的劣化特徴量の重み付け和を算出する際の重み付け係数を、見た目に与える品質劣化の視覚的重要度が処理ブロックサイズに応じて異なることを考慮して決定する。このため、見た目に与える品質劣化の視覚的重要度が処理ブロックサイズに応じて異なることを考慮しつつ、客観評価値Qobjを求めることができる。
また、客観画質評価装置1は、パラメータ解析部10により、直交変換ブロックの直交変換係数をビットストリームSIG1から求める。また、時間的劣化特徴量算出部40により、ビットストリームSIG1から求めた直交変換ブロックの直交変換係数に基づいて、処理対象の動き補償予測ブロックに少なくとも一部が含まれている直交変換ブロックのそれぞれの時間的劣化特徴量を算出する。また、時間的劣化特徴量算出部40により、直交変換ブロックごとに算出した時間的劣化特徴量について、直交変換ブロックのうち処理対象の動き補償予測ブロックに属している領域のサイズに応じて重み付け和を算出して、処理対象の動き補償予測ブロックの時間的劣化特徴量とする。また、画質劣化特徴量統合部50により、処理対象の動き補償予測ブロックの時間的劣化特徴量を、画質劣化特徴量として用いて客観評価値Qobjを求める。このため、ビットストリームSIG1のみから、処理対象の動き補償予測ブロックの時間的劣化特徴量を、動き補償予測ブロックおよび直交変換ブロックの大きさを考慮して求めることができる。したがって、複数の処理ブロックサイズが許容される符号化技術で圧縮符号化された映像の主観画質を、ビットストリーム解析に基づく画質評価方式により推定することができる。
また、客観画質評価装置1は、画質劣化特徴量統合部50により、量子化パラメータ平均値算出部20により求められた量子化パラメータの平均値と、空間的劣化特徴量算出部30により求められた処理対象の直交変換ブロックの空間的劣化特徴量と、時間的劣化特徴量算出部40により求められた処理対象の動き補償予測ブロックの時間的劣化特徴量と、の重み付け和により、客観評価値Qobjを求める。また、重み付け和を算出する際の重み付け係数を、数式(10)から(14)を用いて上述したように、主観評価値と客観評価値Qobjとの相関が最大になるように設定する。このため、主観画質の推定精度を向上させることができる。
なお、本発明の客観画質評価装置1の処理を、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを客観画質評価装置1に読み込ませ、実行することによって、本発明を実現できる。
ここで、上述の記録媒体には、例えば、EPROMやフラッシュメモリといった不揮発性のメモリ、ハードディスクといった磁気ディスク、CD−ROMなどを適用できる。また、この記録媒体に記録されたプログラムの読み込みおよび実行は、客観画質評価装置1に設けられたプロセッサによって行われる。
また、上述のプログラムは、このプログラムを記憶装置などに格納した客観画質評価装置1から、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネットなどのネットワーク(通信網)や電話回線などの通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上述のプログラムは、上述の機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述の機能を客観画質評価装置1にすでに記録されているプログラムとの組み合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計なども含まれる。
例えば、上述の実施形態では、ビットストリームSIG1を圧縮符号化する符号化技術として、H.265/HEVCを例に挙げたが、これに限らない。
また、上述の実施形態において、客観画質評価装置1から統合品質情報SIG9として出力される客観評価値Qobjについて、監視部により監視してもよい。具体的には、客観評価値Qobjを記憶したり、客観評価値Qobjに基づいて映像品質が予め定められた品質よりも悪いか否かを判別し、悪いと判別した場合にはその旨を外部に報知したりしてもよい。
また、上述の実施形態において、ブロック形状は、四角形だけでなく、三角形や五角形といった直線の辺により囲まれた形状や、円といった曲線の辺により囲まれた形状や、直線の辺と曲線の辺とにより囲まれた形状など、任意の形状であってよい。