JP6253584B2 - 温度応答性クロマトグラフィーによる抗体の精製方法 - Google Patents

温度応答性クロマトグラフィーによる抗体の精製方法 Download PDF

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Description

本発明は、温度変化に伴い抗体との結合性に変化を示す温度応答性クロマトグラフィーを利用した、抗体の精製方法に関する。
免疫グロブリン(抗体)は、免疫反応を司る生理活性物質である。近年、医薬品、診断薬或いは対応する抗原タンパク質の分離精製材料等の用途において、抗体の利用価値が高まっている。抗体は免疫した動物の血液あるいは抗体産生能を保有する細胞の細胞培養液又は動物の腹水培養液から取得される。但し、それらの抗体を含有する血液や培養液は、抗体以外のタンパク質、又は細胞培養に用いた原料液に由来する複雑な夾雑成分を包含し、それらの不純物成分から抗体を分離精製するには、煩雑で長時間を要する操作が通常必要である。
液体クロマトグラフィーは、抗体の分離精製に重要である。抗体を分離するためのクロマトグラフィー手法として、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び逆相クロマトグラフィー等があり、これらの手法を組み合わせることで抗体が分離精製される。
アフィニティークロマトグラフィーにおいては、下記(A)〜(C)の工程を経て、純度及び濃度の高い抗体が精製される。
(A)抗体と不純物とが混じった試料をカラムに負荷する工程(負荷工程)
(B)負荷したカラムから精製対象とする抗体以外の不純物を取り除く工程(洗浄工程)
(C)精製対象とする抗体をカラムから溶出し、回収する工程(溶出工程)
近年、抗体を精製するためのアフィニティークロマトグラフィーのリガンドとして、プロテインAが注目を集めている。プロテインAは、スタフィロコッカス属黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に由来する。プロテインAは、中性条件下で、抗体のFc領域に対して特異的に高い親和性を有する。そのため、天然のプロテインAを用いて抗体を精製する際には、まず、天然のプロテインAをリガンドとして有する固定相に抗体を含む溶液を中性条件下で接触させて、担体上の天然のプロテインAに抗体を特異的に吸着させる。そして、中性の緩衝液で担体に吸着しなかった成分を洗浄し、除去した後、pH3.0付近の酸性の溶液を用いて、担体上の天然のプロテインAから抗体を遊離させる(例えば、特許文献1、2参照。)。特許文献1では、実施例において、25mMクエン酸ナトリウム(pH2.8)からなる酸性の溶液を用いて、プロテインA担体から抗体を溶出させている。また、特許文献2でも、実施例において、25mMクエン酸塩(pH2.8)、又は0.1M酢酸(pH2.9)からなる酸性の溶液を用いて、プロテインA担体から抗体を溶出させている。このような強い酸性条件では、精製対象である抗体の、変性や失活を引き起こすリスクを有する。
天然のプロテインAは、上述したように緩衝液の水素イオン指数の変化に応じて抗体との親和性を変化させるため、精製対象となる抗体を酸性条件にさらす必要がある。そのため、精製対象となる抗体の活性を損なう場合がある。これに対し、緩衝液の水素イオン指数を変化させることなく、温度変化に伴う立体構造の変化等によって、抗体との親和性が変化する変異プロテインA(温度応答性プロテインA)を用いた、抗体の精製方法が提案された(例えば、特許文献3、4参照。)。温度応答性プロテインAをアフィニティークロマトグラフィーのリガンドとして用いることにより、緩衝液を酸性にする必要がなくなるため、抗体の活性を保つことが可能となる。しかしながら、温度応答性プロテインA担体を用いた抗体の精製において、宿主細胞由来タンパク質(HCP)及びデオキシリボ核酸(DNA)等の不純物の除去性を高め、プロテインAの脱離を抑制する手段については研究が進んでいなかった。
特開2009−196998号公報 特表2007−526897公報 国際公開第2008/143199号 国際公開第2011/017514号
温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製方法において、宿主細胞由来タンパク質(HCP)及びデオキシリボ核酸(DNA)等のアフィニティーカラム内に残留しうる不純物の除去が求められている。また、担体から脱離した温度応答性プロテインAが抗体の溶出液に混入することを抑制することも求められている。
また、温度応答性プロテインAを用いる抗体の精製方法では、抗体の溶出の際に40℃程度まで温度を上昇させる必要があるが、高温に設定することよって、抗体の活性がある程度低下することは、これまで避けられなかった。抗体の活性の低下を避けるためには、抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度範囲を低温側にシフトさせることが有効であるが、それを実現する手段についてはこれまで検討されてこなかった。
そこで、本発明は、担体に結合された温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製方法であって、不純物を効果的に除去し、かつ担体からの温度応答性プロテインAの脱離が少ない抗体の精製方法を提供することを課題とする。また、抗体の活性を特に高く維持できる温度応答性プロテインAによる抗体の精製方法を提供することを課題とする。
従来において、固定相が天然のプロテインAを有する場合は、洗浄工程と、溶出工程とで、異なる緩衝液を用いなければならなかった。これに対し、固定相が温度応答性プロテインAを有する場合は、洗浄工程と、溶出工程とで、同じ緩衝液を用いることができることがメリットとして考えられていた。そのため、固定相が温度応答性プロテインAを有する場合に、洗浄工程と、溶出工程とで、塩濃度及び水素イオン指数の少なくとも一つが異なる緩衝液を用いることは検討されてこなかった。
また、温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製において、溶出工程に用いる緩衝液の塩濃度及び水素イオン指数が、溶出温度に与える影響は検討されてこなかった。
しかし、本発明者らは鋭意研究の末、担体に結合された温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製方法において、洗浄工程において高塩濃度の緩衝液を用い、溶出工程において低塩濃度の緩衝液を用いることによって、不純物が効果的に除去され、かつ担体からの温度応答性プロテインAの脱離も抑制されることを見出した。また、本発明者らは、洗浄工程において高い水素イオン指数の緩衝液を用い、溶出工程において低い水素イオン指数の緩衝液を用いることによっても、不純物が効果的に除去され、かつ担体からの温度応答性プロテインAの脱離も抑制されることを見出した。
さらに、本発明者らは、溶出工程において低い水素イオン指数の緩衝液を用いることによって、抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度範囲が低温側にシフトする現象を見出した。このことから温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製の溶出工程において、低い水素イオン指数の緩衝液を用いることで、抗体を従来よりも低温で溶出させることが可能であることを見出した。
上述した本発明者らが初めて見出した知見の少なくとも一つに基づく本発明の態様によれば、温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製方法であって、温度応答性プロテインAを有する固定相に抗体を結合させる結合工程と、抗体と温度応答性プロテインAが結合する温度の緩衝液であって、第1の塩濃度の緩衝液を用いて、固定相を洗浄する洗浄工程と、抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度の緩衝液であって、第1の塩濃度より低い第2の塩濃度の緩衝液を用いて、固定相に捕捉された抗体を溶出する溶出工程と、を含む、洗浄工程と溶出工程で異なる緩衝液を用いる、抗体の精製方法が提供される。
また、温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製方法であって、温度応答性プロテインAを有する固定相に抗体を結合させる結合工程と、抗体と温度応答性プロテインAが結合する温度の緩衝液であって、第1の水素イオン指数の緩衝液を用いて、固定相を洗浄する洗浄工程と、抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度の緩衝液であって、第1の水素イオン指数より低い第2の水素イオン指数の緩衝液を用いて、固定相に捕捉された抗体を溶出する溶出工程と、を含む、洗浄工程と溶出工程で異なる緩衝液を用いる、抗体の精製方法が提供される。
本発明によれば、担体に結合された温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製方法であって、不純物を効果的に除去し、かつ担体からの温度応答性プロテインAの脱離が少ない抗体の精製方法が提供される。また、本発明によれば、抗体の活性を特に高く維持できる温度応答性プロテインAによる抗体の精製方法を提供可能である。
以下、本発明の実施の形態(以下において、「本実施形態」という。)を詳細に説明する。なお以下の示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想が下記のものに特定されることはない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲内において種々の変更を加えることができる。
本実施形態に係る抗体の精製方法は、温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製方法であって、温度応答性プロテインAを有する固定相に抗体を結合させる結合工程と、抗体と温度応答性プロテインAが結合する温度の緩衝液であって、第1の塩濃度の緩衝液を用いて、固定相を洗浄する洗浄工程と、抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度の緩衝液であって、第1の塩濃度より低い第2の塩濃度の緩衝液を用いて、固定相に捕捉された抗体を溶出する溶出工程と、を含む、洗浄工程と溶出工程で異なる緩衝液を用いる、抗体の精製方法である。
また、本実施形態に係る抗体の精製方法は、温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製方法であって、温度応答性プロテインAを有する固定相に抗体を結合させる結合工程と、抗体と温度応答性プロテインAが結合する温度の緩衝液であって、第1の水素イオン指数の緩衝液を用いて、固定相を洗浄する洗浄工程と、抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度の緩衝液であって、第1の水素イオン指数より低い第2の水素イオン指数の緩衝液を用いて、固定相に捕捉された抗体を溶出する溶出工程と、を含む、洗浄工程と溶出工程で異なる緩衝液を用いる、抗体の精製方法である。
温度応答性プロテインAを有する固定相は、温度応答性プロテインAと、温度応答性プロテインAが結合された担体と、を備える。温度応答性プロテインAは、低温領域で抗体と結合し、高温領域で抗体を遊離させる性質を有する。担体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば平膜状、中空糸膜状等の膜状、又はビーズ状のものがある。中空糸状の担体は、モジュール成型が容易であり、モジュール容器あたりに充填できる膜面積が大きいため、好適に用いることができる。また、ビーズ状のものは一般的に、体積あたりの表面積が膜状のものと比較して大きく、大量の抗体を吸着できるため、好適に用いることができる。
担体の材料は、特に限定されるものではないが、担体が膜状である場合、多孔性膜を形成しうる高分子材料が好適に用いることができる。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びポリカーボネート等の非結晶性樹脂などが使用できる。担体がビーズ状である場合、担体の材料としては、ガラス、シリカ、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、架橋アガロース、架橋デキストラン、架橋ポリビニルアルコール、及び架橋セルロースなどが使用できる。架橋ポリビニルアルコール、及び架橋セルロースは親水性が高く、不純物成分の吸着を抑制できるため好適に用いることができる。
本実施形態で使用する担体は、例えば複数の細孔を有する。細孔径は、特に限定されるものではないが、例えば5〜1000nmであり、好ましくは10〜700nmであり、さらに好ましくは20〜500nmである。細孔径が5nm以下であると、分離できる抗体の分子量が低くなる傾向にある。また細孔径が1000nm以上であると基材の表面積が少なくなり、抗体の結合容量が小さくなる傾向にある。
担体には、任意のカップリング基を導入してよい。温度応答性プロテインAは一級アミノ基を有しているため、一級アミノ基とカップリングできるNHS活性化されたカルボキシル基、カルボキシル基、臭化シアン活性基、エポキシ基、及びホルミル基等が好ましい。特に、NHSで活性化されたカルボキシル基は、カップリング反応時に他の薬品が不要であり、反応が迅速で強固な結合を形成するため好適に用いられる。
本実施形態では、担体へのカップリング基の導入方法はいかなる方法でもよいが、担体と、カップリング基と、の間にスペーサーを導入するのが一般的である。カップリング基の導入方法は、さまざまな文献によって開示されている。
本実施形態では、カップリング基を末端、及び/又は側鎖に有するグラフト高分子鎖を担体に導入してもよい。カップリング基を有するグラフト高分子鎖を担体に導入することで、カップリング基の密度を任意に高める等、制御することが可能となる。カップリング基を有する高分子鎖を担体にグラフトするか、あるいはカップリング基に変換しうる前駆体官能基を有する高分子鎖を担体にグラフトし、その後にグラフトした前駆体官能基をカップリング基に変換してもよい。
グラフト高分子鎖の導入方法はいかなる方法でもよい。あらかじめ高分子鎖を調製し、担体にカップリングしてもよい。また、「リビングラジカル重合法」や「放射線グラフト重合法」の手法により、担体上で直接グラフト鎖を重合してもよい。「放射線グラフト法」は、担体にあらかじめ反応開始剤を導入する必要がなく、適応可能な担体が多種であるため、好適に用いることができる。
「放射線グラフト重合法」でグラフト鎖を導入する場合、担体にラジカルを生成させるためにはいかなる手段も採用し得るが、担体全体に均一なラジカルを生成させるためには、電離性放射線の照射が好ましい。電離性放射線の種類としては、γ線、電子線、β線、及び中性子線等が利用できるが、工業規模での実施には電子線又はγ線が好ましい。電離性放射線はコバルト60、ストロンチウム90、及びセシウム137などの放射性同位体から、あるいはX線撮影装置、電子線加速器及び紫外線照射装置等から得られる。
電離性放射線の照射線量は、例えば1kGy以上1000kGy以下が好ましく、より好ましくは2kGy以上500kGy以下、さらに好ましくは5kGy以上200kGy以下である。照射線量が1kGy未満では、ラジカルが均一に生成しにくくなる傾向にある。また、照射線量が1000kGyを超えると、担体の物理的強度の低下を引き起こす傾向にある。
電離性放射線の照射によるグラフト重合法には、一般に担体にラジカルを生成した後、次いでそれを反応性化合物と接触させる前照射法と、担体を反応性化合物と接触させた状態で担体にラジカルを生成させる同時照射法と、に大別される。本実施形態においては、いかなる方法も適用し得るが、オリゴマーの生成が少ない前照射法が好ましい。
本実施形態においてグラフト重合時に使用する溶媒は、反応性化合物を均一溶解できるものであれば特に限定されない。このような溶媒として、例えば、エタノールやイソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトンや2−ブタノン等のケトン類;水、又はそれらの混合物等が挙げられる。
本実施形態において、グラフト重合に使用されるカップリング基を有するモノマーとしては、カルボキシル基をカップリング基とする場合、アクリル酸、及びメタクリル酸等のモノマーが挙げられる。一級アミノ基をカップリング基とする場合、アリルアミン等が挙げられる。そして、エポキシ基をカップリング基とする場合、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
本実施形態において、カップリング基に変換しうる前駆体官能基を有するモノマーを担体にグラフトし、その後にグラフトした前駆体官能基をカップリング基に変換してもよい。エポキシ基を有するグリシジルメタクリレート(GMA)は、さまざまなエポキシ基の開環反応を利用してさまざまな官能基に変換することが可能であるため、工業的にも好適に用いることが可能である。
カルボキシル基をカップリング基とする場合には、まずGMAをグラフト重合後、GMAのエポキシ基を加水分解してジオールとし、ジオール由来の水酸基に環状酸無水物を開環ハーフエステル化反応させることにより、環状酸無水物に由来するカルボキシル基を形成(開環ハーフエステル化反応)することが可能である。製造コストの点で、環状酸無水物は無水コハク酸又は無水グルタル酸であることが望ましいが、これらに限定されない。
開環ハーフエステル化反応に用いられる触媒としては本反応を促進するものであれば特に限定されないが、具体的にはトリエチルアミン、イソブチルエチルアミン、ピリジン、及び4−ジメチルアミノピリジンなどが挙げられ、トリエチルアミン又は4−ジメチルアミノピリジンが好ましく、反応速度や収率の点で4−ジメチルアミノピリジンが最も好ましい。
開環ハーフエステル化反応は、上記触媒を添加したトルエン等の不活性有機溶媒中で行われることが好ましい。
本実施形態においてNHS活性反応とは、上記開環ハーフエステル化反応により形成されたカルボキシル基を活性エステルに変換する工程である。カルボキシル基と比較して活性エステルは反応性が高いことから、温度応答性プロテインAを担体上に迅速に固定することが望まれる場合には活性エステル化工程を行うことが好ましい。
活性エステルは、親水性化合物と、固定対象物質と、を共有結合によって結びつける役目を果たす。ここで、活性エステルとはR−C(=O)−Xという化学構造を意味する。Xは、ハロゲンやN−ヒドロキシスクシンイミド基又はその誘導体、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール基又はその誘導体、ペンタフルオロフェニル基、並びにパラニトロフェニル基などの脱離性基であるが、これらに限定されない。活性エステルとしては、反応性、安全性及び製造コストの点で、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルが望ましい。カルボキシル基のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルへの変換は、カルボキシル基にN−ヒドロキシスクシンイミドと、カルボジイミドと、を同時に反応させることによって達成される。ここで、カルボジイミドとは−N=C=N−の化学構造を有する有機化合物を意味し、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。N−ヒドロキシスクシンイミド及びカルボジイミドの濃度は1〜100mmol/L、反応温度は0℃以上100℃未満、反応時間は2分〜16時間の範囲で設定されるのが望ましい。反応溶媒としては、N,N'−ジメチルホルムアミド(DMF)やトルエンなどを使用することができる。
本実施形態において、温度に依存して抗体との結合性が変化するよう変異されたプロテインAは、特許文献(WO2008/143199号パンフレット)を参考に調製することができる。
本実施形態において、NHS活性化されたカルボキシル基と、温度応答性プロテインAと、のカップリング反応は、例えば以下のように行われる。まず、クエン酸緩衝液(pH3.0〜6.2)、酢酸緩衝液(pH3.6〜5.6)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH5.8〜8.5)、又は炭酸緩衝液(pH9.2〜10.6)などのアミノ基成分を含まない緩衝液を用いて、0.1〜100mg/mLの温度応答性プロテインA溶液を準備する。この水溶液を活性エステル表面と接触させると、温度応答性プロテインAに含まれるアミノ基等の官能基が活性エステルと反応し、アミド結合が形成される。その結果、温度応答性プロテインAは共有結合によって担体に固定される。ここで、接触時間は2分〜16時間の範囲で設定するとよい。温度応答性プロテインAを担体に固定した後は、適当な洗浄液で担体を洗浄することが望ましい。このとき、洗浄液として、0.5mol/L程度の塩(NaCl)及び0.1%程度の非イオン性界面活性剤を含む緩衝液を用いると、担体に共有結合せずに物理吸着しているだけの温度応答性プロテインAを取り除くことができ、好ましい。
温度応答性プロテインAを担体表面に固定した後(好ましくは更に温度応答性プロテインA固定化担体を洗浄した後)は、未反応のカルボキシル基又は活性エステルを、アミノ基を有する低分子化合物と結合させることにより、当該カルボキシル基又は活性エステルを反応性のより低い官能基に変換させることが好ましい。これによって、不純物等の精製対象外の分子が不本意に固定相に結合するのを防ぐことができる。特に温度応答性プロテインA固定用担体の末端の官能基が活性エステルである場合、この操作がされることが好ましい。
ここでは、活性エステル基にアミノ基を有する低分子化合物を反応させる操作を特に「ブロッキング」と記述することがある。ただし、カルボキシル基又は活性エステルを低分子化合物と反応させた後の担体表面は、親水性であることが望ましい。なぜなら、親水性の表面は一般に生体関連物質の非特異的吸着を抑制する効果をもつからである。このためにはアミノ基を含有する低分子化合物として、アミノ基以外に親水性基を更に有する低分子化合物を使用することが好ましい。このような低分子化合物の非限定的な例としては、エタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、及びジグリコールアミン(IUPAC名:2−(2−アミノエトキシ)エタノール)が挙げられる。これらの低分子化合物はPBSなどの緩衝液に10〜1,000mmol/Lとなるように溶解し、溶解液を温度応答性プロテインAを固定化した担体と接触させる。例えば、反応温度は4〜37℃、反応時間は2分〜16時間の範囲で設定するとよい。
温度応答性プロテインAがビーズ状の担体に固定された場合は、市販の空カラム又はガラス管から作製した空カラムに、固定相である温度応答性プロテインA固定化担体を詰めて用いてもよい。市販のジャケット付き空カラム(商品名 XKカラム、GEヘルスケア・ジャパン)は、カラム自体の温度をジャケット循環水の温度を制御することで任意に制御することができるので、好適に使用することができる。担体が膜状の場合は、それぞれの形状に従い、市販の膜ホルダーに固定するか、任意のモジュール形状に加工して使用してもよい。
温度応答性プロテインA固定化担体は、pH4〜8の範囲の中性溶液を保存液とし、2〜10℃程度の低温で保存する。保存液としては、抗菌性を考慮して、20%エタノールが好ましい。
以上説明した温度応答性プロテインAを有する固定相を用いて抗体を含有する混合物から抗体を精製する場合、抗体を含有する混合物には、抗体を産生するハイブリドーマ、NSO等のミエローマ細胞、抗体をコードする遺伝子で形質転換され抗体を発現産生し得る動物細胞、及び酵母等の培養液の上清が含まれる。好ましくは、本実施形態の方法による精製を行なうときは、これらの培養上清は清澄化しておく。清澄化は例えば、0.2μmのメンブランフィルターによる濾過等により行なえばよい。
本実施形態で精製する抗体には、限定はされないが、例えばヒト抗体、マウス、ウシ、ヤギ、及びヒツジ等の有蹄動物等の非ヒト動物抗体、ヒトと非ヒト動物のキメラ抗体、並びに非ヒト動物抗体をヒト化したヒト化抗体等が含まれ、好ましくはヒト抗体である。さらに好ましくはヒトモノクローナル抗体である。また、抗体のクラス、サブクラスは限定されず、いずれのクラス、サブクラスの抗体も本実施形態において精製し得るが、好ましくはIgG、その中でもIgG1、IgG2及びIgG4である。また、重鎖定常領域のアミノ酸配列において、天然に存在する重鎖定常領域のアミノ酸の少なくとも一つのアミノ酸が欠失した抗体、天然に存在する重鎖定常領域のアミノ酸の少なくとも一つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換した抗体、あるいは天然に存在する重鎖定常領域に少なくとも一つのアミノ酸が付加した抗体であってもよい。さらに、抗体が他の化合物と共有あるいは配位結合していてもよい。
温度応答性プロテインAは、低温で抗体を結合し、抗体と結合する時の温度よりも高い温度で抗体を遊離させる特性がある。あらかじめ温度応答性プロテインAの抗体との結合特性が変わる温度を確認しておき、その温度を挟むようにして温度変化させることにより抗体を固定相に吸脱着させることが好ましい。抗体と温度応答性プロテインAが結合する温度範囲は、抗体を有する一定量の固定相に結合可能な抗体の最大結合量に対して、抗体の結合量が50%以上となる温度範囲である。また、抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度範囲は、抗体を有する一定量の固定相に結合可能な抗体の最大結合量に対して、抗体の結合量が50%未満となる温度範囲である。
抗体と温度応答性プロテインAが結合する温度範囲、及び抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度範囲は、例えば以下の手順に従って決定される。
1.5℃未満、10℃、以後、抗体が変性する温度の直下までの10℃間隔で設定されたそれぞれの温度条件下において、温度応答性プロテインAを有する固定相に抗体を結合させる。
2.抗体が変性する温度の直下まで昇温して固定相から抗体を溶出し、抗体を定量する。
3.抗体を固定相に吸着させた時の温度に対して抗体の溶出量をプロットする。次に、抗体の結合量(溶出量)の最大値の50%と、プロットと、の間を結んだ線の交点における温度(以下、「50%結合温度」と呼ぶ。)を境とし、50%以上の抗体の結合量を与える温度範囲を、抗体と温度応答性プロテインAが結合する温度範囲とする。また、50%未満の抗体の結合量を与える温度範囲を、抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度範囲とする。
抗体と温度応答性プロテインAが結合する温度範囲は、例えば0℃以上20℃未満、好ましくは1℃以上15℃未満、より好ましくは2℃以上13℃未満の温度範囲である。抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度範囲は、例えば25℃以上50℃未満、好ましくは30℃以上45℃未満の温度領域である。あるいは、当該抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度範囲は、不純物除去性を高め、プロテインAの脱離を抑制するという観点から、好ましくは15℃以上30℃以下、より好ましくは20℃以上25℃以下の温度領域である。ここで、15℃以上30℃以下の温度領域を用いる場合、25℃以上50℃未満の温度領域を用いる場合と比較して抗体の回収率が低下すると考えられるが、本実施形態によれば、抗体の溶出工程に用いる緩衝液の水素イオン指数を低下させることで、不純物除去性を高め、プロテインAの脱離を抑えつつ、抗体の回収率を維持することが可能である。
ここで、上述したように、本実施形態に係る温度応答性プロテインAを用いる抗体の精製方法において、溶出工程に用いる緩衝液の水素イオン指数を、洗浄工程に用いる緩衝液の水素イオン指数より低く設定している。本発明者らは、当該条件の下、抗体と温度応答性プロテインAが結合する温度範囲として、例えば0℃以上20℃未満の温度の緩衝液を、抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度範囲として、例えば15℃以上50℃未満の温度の緩衝液を(特に15℃以上30℃以下の温度の緩衝液であっても回収率を低下させることなく)用いることができることを見出した。抗体と温度応答性プロテインAが結合する温度範囲と、抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度範囲と、が、一部重複しているが、これは上述したように、洗浄工程と溶出工程における水素イオン指数の違いがあれば許容されるものである。なお、溶出工程における緩衝液の温度は、洗浄工程における緩衝液の温度より高くてもよい。
なお、モノクローナル抗体の製造に使用されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の培養温度は通常37℃であり、抗体を温度応答性プロテインAから溶出させる温度を37℃未満に設定すれば、抗体の活性の低下を避けることができる。この時、抗体が温度応答性プロテインAから遊離するのに適した温度範囲は、10℃以上37℃未満、好ましくは15℃以上30℃未満の温度領域である。
温度応答性プロテインAを有する固定相から溶出された抗体を含む緩衝液を、カチオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製してもよい。カチオン交換クロマトグラフィーにおいては、好ましくは、高温で抗体を吸着し、低温で抗体を遊離させる温度応答性カチオン交換樹脂を含む固定相が用いられる。
温度応答性カチオン交換樹脂を含む固定相としては、N−イソプロピルアクリルアミド等を含む共重合体を担体表面に固定した温度応答性カチオン交換体が使用可能である。共重合体は、少なくともカチオン交換基を有する。例えば、本実施形態に係る温度応答性カチオン交換体は、カチオン交換基を有するモノマー及び/又はカチオン交換基導入前駆体モノマー、及びN−イソプロピルアクリルアミドモノマーからなるモノマー混合物を表面グラフト重合法によって担体表面に重合して形成される。
本実施形態に係る温度応答性カチオン交換体で使用する担体の形状は、特に限定されるものではなく、例えばビーズ状、平板状、管状のものがある。ビーズ状の場合、さまざまな粒径のビーズが入手可能であり特に限定されるものではないが、粒径は例えば1〜300μmであり、好ましくは10〜200μmであり、さらに好ましくは20〜150μmである。粒径が1μm以下であると、カラム内でビーズの圧密化が起きやすいために、高流速での処理が困難になる傾向にある。また粒径が300μm以上ではビーズ間の隙間が大きくなり、抗体を吸着させる際に、溶液の漏れが発生する傾向にある。
担体は、例えば複数の細孔を有する。細孔径は、特に限定されるものではないが、例えば5〜1000nmであり、好ましくは10〜700nmであり、さらに好ましくは20〜500nmである。細孔径が5nm以下であると、分離できる抗体の分子量が低くなる傾向にある。また細孔径が1000nm以上であると担体の表面積が少なくなり、抗体の結合容量が小さくなる傾向にある。
担体の材料は、特に限定されるものではないが、ビーズ状である場合、ガラス、シリカ、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、架橋アガロース、架橋デキストラン、架橋ポリビニルアルコール、及び架橋セルロースなどが使用できる。
本実施形態では、上記担体にカチオン交換基を有する温度応答性ポリマーが固定化される。その固定化方法としては、担体表面に原子移動ラジカル重合開始剤を固定化し、その開始剤から触媒の存在下で温度応答性ポリマーを成長反応させる「原子移動ラジカル法」や、担体に放射線を照射してラジカルを生成し、生成したラジカルを起点として温度応答性ポリマーを成長反応させる「放射線グラフト重合法」等があるが、特に限定されるものではない。他に、固定化方法として、表面リビングラジカル重合法である「原子移動ラジカル重合法」がある。「原子移動ラジカル重合法」は、担体表面にポリマーを高密度に固定することができるため、好適に用いることができる。
温度応答性ポリマーが「原子移動ラジカル重合法」で固定される場合、その際に使用する開始剤は特に限定されるものではないが、本実施形態のように担体に水酸基を有している場合、例えば、1−トリクロロシリル−2−(m,p−クロロメチルフェニル)エタン、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、(3−(2−ブロモイソブチリル)プロピル)ジメチルエトキシシラン、及び2−ブロモイソ酪酸ブロミドなどが挙げられる。本実施形態では、この開始剤よりポリマー鎖を成長させる。その際の触媒としては特に限定されるものでないが、ハロゲン化銅(CuIX)としてCuICl、CuIBr等を挙げることができる。また、そのハロゲン化銅に対するリガンド錯体も特に限定されるものではないが、トリス(2−(ジメチルアミノ)エチル)アミン(Me6TREN)、N,N,N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン(HMTETA)、1,4,8,11−テトラメチル 1,4,8,11−アザシクロテトラデカン(Me4Cyclam)、及びビピリジン等が挙げられる。
温度応答性ポリマーが「放射線グラフト重合法」で固定される場合、担体にラジカルを生成させるためにはいかなる手段も採用し得るが、担体全体に均一なラジカルを生成させるためには、電離性放射線の照射が好ましい。電離性放射線の種類としては、γ線、電子線、β線、及び中性子線等が利用できるが、工業規模での実施には電子線又はγ線が好ましい。電離性放射線はコバルト60、ストロンチウム90、及びセシウム137などの放射性同位体から、又はX線撮影装置、電子線加速器及び紫外線照射装置等により得られる。
電離性放射線の照射線量は、例えば1kGy以上1000kGy以下であり、好ましくは2kGy以上500kGy以下であり、より好ましくは5kGy以上200kGy以下である。照射線量が1kGy未満では、ラジカルが均一に生成しにくくなる傾向にある。また、照射線量が1000kGyを超えると、担体の物理的強度の低下を引き起こす傾向にある。
電離性放射線の照射によるグラフト重合法には、一般に担体にラジカルを生成した後、次いでそれを反応性化合物と接触させる前照射法と、膜を反応性化合物と接触させた状態で担体にラジカルを生成させる同時照射法と、に大別される。本実施形態においては、いかなる方法も適用し得るが、オリゴマーの生成が少ない前照射法が好ましい。
本実施形態において重合時に使用する溶媒は、反応性化合物を均一溶解できるものであれば特に限定されない。このような溶媒として、例えば、エタノールやイソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトンや2−ブタノン等のケトン類、水、又はそれらの混合物等が挙げられる。
本実施形態において、担体表面に被覆されるポリマーは、N−イソプロピルアクリルアミド等の温度応答性モノマーを有する。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)は32度に下限臨界温度を有することが知られている。このポリマーを表面に導入した担体は、臨界温度で親水性/疎水性の表面物性を大きく変化させる。そのため、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)をグラフトもしくはコーティングした担体をクロマトグラフィーの固定相として使用した場合、試料に対する保持力が温度によって得られるようになる。その結果、溶出液の組成を変化させずに保持挙動を温度によって制御することができるようになる。
下限臨界温度を32℃以上にするためには、イソプロピルアクリルアミドよりも親水性のモノマーであるアクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド、及びビニルピロリドンなどの親水性のコモノマーをN−イソプロピルアクリルアミドと共重合させることによって調製することが可能である。また、下限臨界温度を32℃以下にしたいときは、疎水性モノマーであるスチレン、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレートなどとの疎水性のコモノマーとの共重合によって調製することができる。
担体表面に被覆されるポリマーにスルホン酸基等の強カチオン交換基を与える第1の方法として、担体表面に被覆される温度応答性ポリマー鎖を合成する際、強カチオン交換基を有するモノマーを含めて共重合する方法が挙げられる。スルホン酸基を有するモノマーとしては、スルホン酸を有するポリマーの構成単位である(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸等が挙げられる。
担体表面に被覆されるポリマーに強カチオン交換基を与える第2の方法として、「強カチオン交換基導入前駆体」を有するモノマーを含めて共重合した後、前駆体をスルホン酸基に変換する方法が挙げられる。なお、「強カチオン交換基導入前駆体」とは、「強カチオン交換基の前駆体」を含みうる。また、「強カチオン交換基の前駆体」とは、例えば強カチオン交換基に保護基がついたものである。スルホン酸基の前駆体を有するモノマーとして、フェニルビニルスルホネート等が挙げられるが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
担体表面に被覆されるポリマーに強カチオン交換基を与える第3の方法として、強カチオン交換基を付与し得る官能基を有するモノマーを含めて共重合した後、強カチオン交換基を付与し得る官能基をスルホン酸基に変換する方法が挙げられる。強カチオン交換基を付与し得る官能基を有するモノマーとしては、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。強カチオン交換基を有するモノマーを表面リビングラジカル重合法により重合する場合、十分な重合速度が得られない場合が多いが、グリシジルメタクリレート等の強カチオン交換基導入前駆体モノマーを用いることで、十分な重合速度を得ることが可能となる。
本実施形態においては、N−イソプロピルアクリルアミドに対する、強カチオン交換基を有するモノマー及び/又は強カチオン交換基導入前駆体モノマーの比率が、0.01〜5mol%であるモノマー組成物を、表面グラフト重合法によって重合する。上記比率は、好ましくは0.1〜4mol%、より好ましくは0.2〜3mol%、さらに好ましくは0.3〜2mol%、最も好ましくは0.5〜1.5mol%である。上記比率が5mol%を超えると、共重合体中のN−イソプロピルアクリルアミドに対する強カチオン交換基の量が過剰量となってしまう。そのため、温度応答性カチオン交換体への抗体の吸着量が増大するものの、吸着した抗体を温度変化によって溶出することが困難になる傾向にある。一方、上記比率が0.01mol%未満では、強カチオン交換基導入量が少ないため、抗体の吸着量が少なくなる傾向にある。
本実施形態において、担体表面に被覆されているポリマーは温度を変えることで水和、脱水和を起こすものであり、その温度域は0℃以上80℃未満、好ましくは5℃以上50℃未満、さらに好ましくは10℃以上45℃未満である。80℃を越えると移動相が水であるので蒸発等が生じ、作業性が悪くなる傾向にある。また、0℃より低いと移動相が凍結する傾向にある。
本実施形態によって得られる温度応答性カチオン交換体を充填したカラムは、通常の液体クロマトグラフィー装置に取り付けて、液体クロマトグラフィーシステムとして利用される。その際、温度応答性カチオン交換体を充填したカラムへの温度の負荷方法は特に限定されないが、例えば温度応答性カチオン交換体を充填したカラムに所定の温度にしたアルミブロック、水浴、空気層、あるいはジャケットなどを装着すること等が挙げられる。
以上説明した温度応答性プロテインAを有する固定相を用いて抗体を精製する場合、温度応答性カチオン交換樹脂を含む固定相に目的とする抗体を一度吸着させ、その後、温度を変えて固定相表面の特性を変化させることで吸着した抗体を遊離させるキャッチアンドリリース法が例えば用いられる。その際に固定相に吸着させる抗体量は固定相に吸着しうる量を超えていてもよく、超えていなくてもよい。いずれにせよ抗体を固定相に一度吸着させ、その後、温度を変えて固定相表面の特性を変化させることで、吸着した抗体を遊離させる精製法である。
温度応答性カチオン交換樹脂に抗体が吸着する温度範囲は、例えば25℃以上50℃未満、好ましくは30℃以上45℃未満の高い温度範囲である。温度応答性カチオン交換樹脂から抗体が遊離する温度範囲は、例えば0℃以上20℃未満、好ましくは1℃以上15℃未満、より好ましくは2℃以上13℃未満の低い温度範囲である。
その他の分離方法は特に限定されるものではないが、あらかじめ固定相の親水性/疎水性の表面物性が変わる温度を確認しておき、その温度を挟むようにして温度変化させながら不純物の分離を行う方法が挙げられる。この場合、温度変化だけで固定相の親水性/疎水性の表面物性が大きく変わるので、溶質によってはシグナルの出てくる時間(保持時間)に大きな差が生じることが期待される。本実施形態の場合、この固定相の親水性/疎水性の表面物性が大きく変わる温度を挟むようにして分離することが最も効果的な実施形態の一つである。
以下、本実施形態に係る抗体の精製方法を、工程毎に説明する。
1)固定相の温度応答性プロテインAに抗体を結合させる結合工程
本実施形態の精製方法において、上記抗体を含有する混合物溶液は、温度応答性プロテインAに吸着される温度まで冷却された後に、温度応答性プロテインAを有する固定相を備えるアフィニティークロマトグラフィーカラムに供給される。その場合、予め、温度応答性プロテインAと抗体が結合する温度を確認しておき、抗体を含有する混合物溶液の温度をその温度に調整する。
抗体を含有する混合物溶液は、プロテアーゼ等の不純物を含有している場合があり、低温で保存されている場合がある。抗体を含有する混合物の保存温度が、温度応答性プロテインAと抗体が結合する温度の範囲内の場合は、そのまま抗体を温度応答性プロテインAに吸着させてもよい。また、温度応答性プロテインAカラムの直上流に熱交換器を配置して、抗体を含有する混合物溶液を温度応答性プロテインAカラムにロードしながら、連続的に抗体を含有する混合物溶液の温度を調節することも可能である。
あるいは、クロマトグラフィーカラムを所定の温度に調節した恒温水槽に浸漬することによって、抗体を含有する混合物溶液の温度を調節することも可能である。クロマトグラフィーカラムの直上流に熱交換器を配置することに加えて、クロマトグラフィーカラムを、所定の温度に調節した恒温水槽に浸漬し、抗体を含有する混合物溶液の温度を調節してもよい。
2)温度応答性プロテインAを有する固定相を洗浄する洗浄工程
抗体と温度応答性プロテインAが結合する低い温度の緩衝液であって、第1の塩濃度及び第1のpHの緩衝液を用いて、固定相を洗浄する。緩衝液としては、リン酸緩衝液及びトリス塩酸緩衝液等が使用可能である。抗体と温度応答性プロテインAが結合する低い温度とは、例えば0℃以上20℃未満、好ましくは0℃以上15℃以下、より好ましくは1℃以上15℃未満、さらに好ましくは2℃以上13℃未満である。第1の塩濃度とは、例えば150乃至1000mmol/Lであり、好ましくは250乃至800mmol/Lであり、より好ましくは350乃至600mmol/Lである。また、第1のpHとは、例えば7.5乃至9.0であり、好ましくは7.6乃至9.0、さらに好ましくは7.6乃至8.8であり、より好ましくは7.7乃至8.6、さらに好ましくは8.0乃至8.6である。当該洗浄工程における緩衝液の塩濃度及びpHをこれらの範囲に設定することによって、宿主細胞由来タンパク質(HCP)及びデオキシリボ核酸(DNA)等のカラム内に残留していた夾雑物が好適に除去され、後に回収する抗体の純度を高めることが可能となる。なお、緩衝液の塩濃度及びpHの両方をこれらの範囲に設定することが好ましいが、塩濃度のみ、あるいはpHのみをこれらの範囲に設定してもよい。
3)温度応答性プロテインAを有する固定相に捕捉された抗体を溶出する溶出工程
抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度の緩衝液であって、第2の塩濃度及び(又は)第2のpHの緩衝液をカラムに通して、固定相に捕捉された抗体を溶出する。抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度とは、例えば25℃以上50℃未満、好ましくは30℃以上45℃未満である。ただし、緩衝液の温度を可能な限り低く設定することによって、不純物除去性を高め、担体から温度応答性プロテインAが脱離することを抑制することが可能となる。このような効果を最大限高めるためには、抗体が温度応答性プロテインAから遊離する温度範囲を、好ましくは15℃以上30℃以下、より好ましくは20℃以上25℃以下に設定する。また、第2の塩濃度とは、第1の塩濃度より低く、例えば0乃至1000mmol/Lであり、好ましくは0乃至300mmol/Lであり、より好ましくは0乃至100mmol/L、最も好ましくは0mmol/Lである。第2のpHとは、第1のpHより低く、例えば5.0乃至8.0であり、好ましくは5.0乃至7.0であり、より好ましくは5.0乃至6.5である。当該溶出工程における緩衝液の塩濃度及びpHをこれらの範囲に設定することによって、担体から温度応答性プロテインAが脱離することを抑制することが可能となる。そのため、抗体の溶出液に、温度応答性プロテインAが混入することを抑制することが可能となる。なお、緩衝液の塩濃度及びpHの両方をこれらの範囲に設定することが好ましいが、塩濃度のみ、あるいはpHのみをこれらの範囲に設定してもよい。
なお、前記のように、抗体を温度応答性プロテインAから溶出させる温度を37℃未満にすれば抗体の活性の低下を避けることができる。本発明者らは、抗体を温度応答性プロテインAから遊離させる温度範囲を10℃以上37℃未満、好ましくは10℃以上30℃以下、より好ましくは15℃以上30℃以下、さらに好ましくは20℃以上25℃以下に設定するとき、第2のpH条件を低めに設定することで回収率を高められることを見出した。この第2のpH条件は、例えば、pH3.0乃至8.0であり、好ましくはpH3.5乃至7.0であり、より好ましくはpH3.9乃至6.5、さらに好ましくは4.0以上6.0以下である。
4)カチオン交換樹脂を含む固定相に抗体を吸着させる吸着工程
温度応答性プロテインAを有する固定相から溶出された抗体を含む緩衝液は、温度、塩濃度、及びpHを同じに保ったまま、カチオン交換樹脂を含む固定相を備えるカチオン交換クロマトグラフィーカラムに供給される。これにより、カチオン交換樹脂を含む固定相に、抗体が吸着される。なお、上述したように、温度応答性プロテインAを有する固定相に捕捉された抗体を溶出する際の緩衝液の塩濃度を、温度応答性プロテインAを有する固定相に抗体を結合させる際の緩衝液の塩濃度よりも低くすると、温度応答性プロテインAを有する固定相から溶出された抗体を含む緩衝液を脱塩すること無しに、カチオン交換樹脂を含む固定相を備えるカチオン交換クロマトグラフィーカラムにそのまま供給することが可能となる。
温度応答性プロテインAを有する固定相から溶出された抗体を含む緩衝液は、タンク等で一時的に貯蔵することも可能であるが、カチオン交換樹脂を含む固定相に抗体が結合する温度範囲から逸脱しない程度に保温することが好ましい。
5)カチオン交換樹脂を含む固定相に捕捉された抗体を溶出する溶出工程
抗体がカチオン交換樹脂から遊離する低い温度の緩衝液をカラムに通して、固定相に捕捉された抗体を溶出する。抗体がカチオン交換樹脂から遊離する低い温度とは、例えば0℃以上20℃未満、好ましくは1℃以上15℃未満、より好ましくは2℃以上13℃未満である。例えば、カチオン交換樹脂を含む固定相から抗体を溶出する際、温度応答性カチオン交換カラムの直上流に熱交換器を配置して、連続的に所定の温度の緩衝液を通液してもよい。また、温度応答性カチオン交換カラムを、所定の温度に調節した恒温水槽に浸漬することによって抗体を溶出することも可能である。温度応答性カチオン交換カラムの直上流に配した熱交換器を用いるだけでなく、さらに、温度応答性カチオン交換カラムを、所定の温度に調節した恒温水槽に浸漬することによって、抗体を溶出することも可能である。
なお、1)固定相の温度応答性プロテインAに抗体を結合させる結合工程の前に、低塩濃度及び高水素イオン指数の緩衝液を温度応答性プロテインAを有する固定相に接触させる平衡化工程があってもよい。平衡化工程における緩衝液の塩濃度は、例えば0乃至1000mmol/Lであり、好ましくは0乃至250mmol/Lであり、より好ましくは0乃至100mmol/Lである。平衡化工程における緩衝液のpHは、例えば5.0乃至9.0であり、好ましくは6.0乃至9.0であり、より好ましくは7.0乃至9.0である。当該平衡化工程における緩衝液の塩濃度及びpHをこれらの範囲に設定することによって、その後の結合工程における温度応答性プロテインAを有する固定相の抗体の結合容量を大きくすることが可能となる。
ただし、温度応答性プロテインAを有する固定相を備えるアフィニティーカラムが繰り返し使用される場合は、5)カチオン交換樹脂を含む固定相に捕捉された抗体を溶出する溶出工程における緩衝液と同じ塩濃度及びpHの緩衝液を、平衡化工程において、温度応答性プロテインAを有する固定相に接触させてもよい。
[実施例]
以下に、本実施形態を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本実施形態を何ら限定するものではない。
(温度応答性プロテインA担体の調製)
架橋ポリビニルアルコールビーズにカルボキシル基を導入した後、カルボキシル基をNHS活性化した。さらに、NHS活性化された架橋ポリビニルアルコールビーズと、温度応答性プロテインAと、を接触させることで、温度応答性プロテインAを架橋ポリビニルアルコールビーズに固定化した。詳細は以下のとおりである。
1)カルボキシル基の導入
無水コハク酸3.0g及び4−ジメチルアミノピリジン3.6gをトルエン450mLに溶解させた反応液を用意した。次に、特開昭59−17354号公報の実施例1に記載の方法で調製した架橋ポリビニルアルコールビーズ(平均粒子径100μm)8.5gを反応液と50℃で接触させ、2時間攪拌した。これにより、架橋ポリビニルアルコールビーズにカルボキシル基を導入した。その後、架橋ポリビニルアルコールビーズを脱水イソプロピルアルコールで洗浄した。
2)NHS活性化
カルボキシル基を導入したビーズ3mLを、NHS活性化反応液(NHS0.09g、脱水イソプロピルアルコール60mL、ジイソプロピルカルボジイミド0.12mL)に投入し、40℃で30分間反応し、ビーズ表面のカルボキシル基をNHS活性化した。反応後、氷冷した脱水イソプロピルアルコールでビーズを洗浄し、さらに、氷冷した1mM 塩酸で洗浄した。
3)温度応答性プロテインAのカップリング
温度応答性プロテインAは、特許文献(WO2008/143199号パンフレット)の実施例11を参考にして調製した。温度応答性プロテインA150mgを3mLのカップリング緩衝液(0.2mol/L リン酸緩衝液、0.5mol/L NaCl、pH8.3)に溶解した温度応答性プロテインA溶液を用意した。そして、上記、NHS活性化されたビーズを、温度応答性プロテインA溶液に投入し、25℃で、振とうしながら、4時間反応させた。所定時間経過後、ビーズをカップリング緩衝液で洗浄し、担体上のNHS活性基とカップリング反応しなかった温度応答性プロテインAを洗浄し、回収した。
4)ブロッキング
温度応答性プロテインAをカップリングしたビーズを、ブロッキング反応液(0.5mol/L エタノールアミン、0.5mol/LNaCl、pH8.0)10mLに浸漬し、室温で30分間放置することで、残留NHSをエタノールアミンでブロッキングした。反応後、このビーズを純水で洗浄し、その後20%エタノールでカラムに封入した状態で、4℃で保存した。
(温度応答性プロテインA担体による抗体の精製)
温度応答性プロテインA担体を、空カラム(GEヘルスケア・ジャパン(株)、Tricorn 5/20 column)に充填した。充填方法は、提供者の取扱説明書を参考に、実施した。そして、カラムをクロマトグラフィーシステム(GEヘルスケア・ジャパン(株)、AKTA FPLC)に装着した。
また、不純物を含む培養上澄みとしては、37℃で培養した、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の培養液を清澄化し、ポリクロナール抗体((株)ベネシス社、献血ヴェノグロブリンIH)を1mg/mL相当量を加えたものを用いた。CHO細胞培養液は、無血清培地(Irvine Scientific社 IS CHO−CD培地)にて培養したCHO細胞の培養液(細胞密度約8.9×106/mL、生細胞率66%)を用い、ろ過膜(旭化成メディカル社製、商品名 BioOptimal(登録商標) MF−SL)を用いてろ過し、培養上澄みを取得した。ろ過は、提供者の取扱い説明書を参考に実施した。
次に、下記の条件で、カラムに抗体を含む培養上澄みを注入し、担体に抗体を吸着させた。さらに、下記の条件で、カラムを洗浄し、その後、カラムから抗体を溶出させた。ここで、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHを低くした。
1−1)吸着ステップ
・ 抗体濃度:1mg/mL
・ 平衡化緩衝液:20mMリン酸緩衝液(pH7.5)
・ 平衡化:10ビーズ体積(吸着緩衝液使用)
・ 抗体負荷量:11mL
・ 流速:0.4mL/min
・ ビーズ体積:0.55mL
・ 吸着温度:2℃
1−2)洗浄ステップ
・ 洗浄緩衝液:20mMリン酸緩衝液(pH7.5)
・ 流速:0.4mL/min
・ 洗浄温度:2℃
1−3)溶出ステップ
・ 溶出緩衝液:20mMリン酸緩衝液(pH7.0)
・ 流速:0.4mL/min
・ 透過液量:20mL
・ 溶出温度:40℃
(抗体の濃度測定)
溶出液中に含まれる抗体濃度を、280nmの紫外線吸収(UV吸収)を測定することで、下記(1)式を用いて算出した。
抗体濃度(mg/mL)=吸光度/1.38・・・(1)
(宿主タンパク(HCP)の濃度測定)
溶出液中に含まれるHCP濃度を、市販のHCP測定キット(CYGNUS社、CHO Host Cell Proteins 3rd Generation ELISA Kit、カタログ番号:F550)を用いて測定した。測定は、提供者の取扱い説明書を参考に実施した。精製前の、抗体量1mg当たりに含まれるHCP量をC1、精製後の、抗体1mg当たりに含まれるHCP量をC2とすると、精製によるHCP除去性は、対数除去係数(LRV)で表すことができる。ここで、対数除去係数は下記(2)式を用いて算出した。
対数除去係数(LRV)=Log10(C1/C2)]・・・(2)
(DNAの濃度測定)
溶出液中に含まれるDNA濃度を、市販のDNAアッセイキット(invitrogen社、Qubit(登録商標) dsDNA HS Assay Kit)及び、測定装置(invitrogen社、Qubit(登録商標)Fluorometer)を用いて測定した。測定は、提供者の取扱い説明書を参考に実施した。精製前の、抗体量1mg当たりに含まれるDNA量をC3、精製後の、抗体1mg当たりに含まれるDNA量をC4とすると、精製によるDNA除去性は、対数除去係数(LRV)で表すことができる。ここで、対数除去係数は下記(3)式を用いて算出した。
対数除去係数(LRV)=Log10(C3/C4)]・・・(3)
(プロテインA含量の測定方法)
溶出液中に含まれるプロテインA含量を、市販のプロテインAアッセイキット(CYGNUS社、Protein A ELISA Kit、カタログ番号:F400)を用いて測定した。測定は、アッセイキットに付属の取扱い説明書(Immunoenzymetric Assay for the Measurement of Protein A Catalog #F400)を参考に実施したが、説明書4ページ記載のプロトコールにおける1〜4の工程を、冷室(10℃)内で実施し、それ以外の工程を、室温で行った。
上記精製実験の結果を、表1にまとめた。その結果、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液(pH8.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。実施例2においても、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液(pH9.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。実施例3においても、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH7.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例4においては、洗浄緩衝液のpHと、溶出緩衝液のpHと、は同じであるが、洗浄緩衝液の塩濃度より、溶出緩衝液の塩濃度が低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+300mM NaCl(pH7.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例5においては、洗浄緩衝液のpHと、溶出緩衝液のpHと、は同じであるが、洗浄緩衝液の塩濃度より、溶出緩衝液の塩濃度が低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+450mM NaCl(pH7.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例6においては、洗浄緩衝液のpHと、溶出緩衝液のpHと、は同じであるが、洗浄緩衝液の塩濃度より、溶出緩衝液の塩濃度が低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH8.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例7においては、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低かった。また、洗浄緩衝液の塩濃度より、溶出緩衝液の塩濃度が低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH9.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例8においては、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低かった。また、洗浄緩衝液の塩濃度より、溶出緩衝液の塩濃度が低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH7.0)を用い、溶出緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH6.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例9においては、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低かったが、洗浄緩衝液の塩濃度と、溶出緩衝液の塩濃度と、は同じであった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH7.0)を用い、溶出緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH5.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例10においては、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低かったが、洗浄緩衝液の塩濃度と、溶出緩衝液の塩濃度と、は同じであった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH7.0)を用い、溶出緩衝液として、20mMリン酸緩衝液(pH8.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例11においては、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが高かったが、洗浄緩衝液の塩濃度より、溶出緩衝液の塩濃度が低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH7.0)を用い、溶出緩衝液として、20mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例12においては、洗浄緩衝液のpHと、溶出緩衝液のpHと、は同じであったが、洗浄緩衝液の塩濃度より、溶出緩衝液の塩濃度が低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH7.0)を用い、溶出緩衝液として、20mMリン酸緩衝液(pH6.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例13においては、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低かった。また、洗浄緩衝液の塩濃度より、溶出緩衝液の塩濃度が低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH7.0)を用い、溶出緩衝液として、20mMリン酸緩衝液(pH5.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例14においては、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。
原子移動ラジカル重合法によって、スルホン酸基を有する温度応答性カチオン交換樹脂を合成した。そして、実施例13で精製された抗体を、温度応答性カチオン交換樹脂で精製した。
1)開始剤の固定
架橋ポリビニルアルコールビーズ1g(粒径100μm)を純水で湿潤させ、300mLのガラス製三角フラスコに入れた。三角フラスコに、テトラヒドラフラン(安定剤不含、関東化学(株)社製)200mL、2−ブロモイソ酪酸ブロミド(東京化成工業(株)製)1.23mL、及びトリエチルアミン(和光純薬工業(株)社製)1.40mLを加え、室温で16時間震とうさせた。反応後、ろ過してから200mLエタノールで3回洗浄し、脱水イソプロパノール中で保存した。これにより、架橋ポリビニルアルコールビーズ表面に原子移動ラジカル重合(ATRP)開始剤である2−ブロモイソ酪酸ブロミドが導入された。
2)表面グラフト重合
スルホン酸基の前駆体モノマーであるグリシジルメタクリレート(GMA、東京化成工業(株)製)を、N−イソプロピルアクリルアミドに対して1mol%の割合で含有するモノマー組成物を調整した。具体的には、N−イソプロピルアクリルアミド(IPAAm、和光純薬工業(株)製)18.40g、GMA0.231g、ブチルメタクリレート(BMA、東京化成工業(株)製)1.217g、塩化銅I(CuCl、和光純薬工業(株)製) 0.085g、及び塩化銅II(CuCl2、和光純薬工業(株)製)0.012gを90容量%イソプロパノール(IPA)水溶液42.8mLに溶解させ、30分間、窒素バブリングした。その後、窒素雰囲気下で溶液にトリス(2−ジメチルアミノエチル)アミン(Me6TREN)(Alfa Aesar社製)0.221gを加えて、5分間攪拌しCuCl/CuCl2/Me6TRENの触媒を形成させた。この反応溶液を窒素雰囲気下で開始剤導入架橋ポリビニルアルコールビーズに反応させ、室温で16時間のATRPをおこなった。反応後、エタノール、50mmol/L―EDTA水溶液、純水の順に洗浄し、モノマー、ポリマー、及び銅触媒を洗浄した。
3)スルホン酸基の導入
原子移動ラジカル重合法によりグラフト鎖を導入したビーズを、亜硫酸ナトリウムと、IPAと、の混合水溶液(亜硫酸ナトリウム/IPA/純水=10/15/75wt%)200gに投入し、80℃で24時間反応を行い、グラフト鎖中のエポキシ基をスルホン酸基に変換した。反応後、このビーズを純水で洗浄した。その後、このビーズを0.5mol/L硫酸中に投入し、80℃で2時間反応を行うことで、グラフト鎖中に残存していたエポキシ基をジオール基に変換した。反応後、このビーズを純水で洗浄し、実施例1に係る温度応答性吸着剤とした。
4)共重合比率の測定
スルホン酸基の前駆体モノマーであるグリシジルメタクリレート(GMA、東京化成工業(株)製)を、N−イソプロピルアクリルアミドに対して1mol%の割合で含有するモノマー組成物を用い、基材を用いずに共重合体を重合した。具体的には、上記2)記載の反応溶液を窒素雰囲気下で2−ブロモイソ酪酸エチルに反応させ、室温で16時間のATRPをおこなった。反応後、反応溶液を透析膜(Spectra/por Dialysis Membrane,MWCO1000,Spectrum Laboratories社製)に入れ、エタノール、50mmol/L―EDTA水溶液、純水の順に浸漬することにより、モノマー、及び銅触媒を除去した。次に反応溶液を凍結乾燥することで得られた共重合体を、亜硫酸ナトリウムと、IPAと、の混合水溶液(亜硫酸ナトリウム/IPA/純水=10/15/75wt%)200gに投入し、80℃で24時間反応を行い、グラフト鎖中のエポキシ基をスルホン酸基に変換した。反応後、反応溶液を透析膜に入れ、純水に浸漬することにより、亜硫酸ナトリウムとIPAを除去し、さらに反応溶液を凍結乾燥することで共重合体を得た。
上記共重合体30mgを重水670mgに溶解し、核磁気共鳴装置(Bruker Avenve−600)を用いて1H−NMRを測定した。その後、N−イソプロピルアクリルアミド単位由来シグナル積分値と、スルホン酸基由来シグナル積分値と、から、N−イソプロピルアクリルアミドに対する、強カチオン交換基を有するモノマー単位の共重合比率(組成)を計算した。その結果、N−イソプロピルアクリルアミドに対する、強カチオン交換基を有するモノマー単位の共重合比率(組成)は0.72mol%であった。
5)抗体タンパク質の吸着・溶出量測定
ビーズを空カラム(Tricorn5/20column、GEヘルスケア・ジャパン(株)製)に充填し、クロマトグラフィーシステム(AKTA FPLC、GEヘルスケア・ジャパン(株)製)を用いて、温度変化による抗体タンパク質(献血ヴェノグロブリン−IH、株式会社ベネシス製)の吸着・溶出試験を行った。ビーズを充填したカラムの温度変化操作は、クロマトグラフィーシステムのポンプを一時停止し、カラムを恒温水槽中に浸漬し、その後10分間以上温置した後にクロマトグラフィーシステムのポンプを再度起動することにより行った。抗体タンパク質の吸着、及び溶出は、以下の条件で行った。
(吸着ステップ)
・抗体タンパク質濃度:2.5mg/mL
・吸着バッファー:20mMリン酸緩衝液(pH6.0)
・抗体タンパク質溶液ロード量:20mL
・流速:0.4mL/min
・カラム体積:0.54mL
・吸着温度:40℃
(洗浄ステップ)
・洗浄バッファー:20mMリン酸緩衝液(pH6.0)
・流速:0.4mL/min
・洗浄温度:40℃
(温度溶出ステップ)
・溶出バッファー:20mMリン酸緩衝液(pH6.0)
・流速:0.4mL/min
・流量:20mL
・溶出温度:2℃
(塩溶出ステップ)
・溶出バッファー:20mMリン酸緩衝液+1M NaCl(pH6.0)
・流速:0.4mL/min
・流量:20mL
・溶出温度:2℃
温度溶出後、温度で溶出しきれない抗体タンパク質を、20mMリン酸緩衝液+1M NaCl(pH6.0)で溶出させた。各ステップの分画のUV吸収(280nm)を測定し、抗体タンパク質濃度を算出することにより、抗体タンパク質の温度溶出量を算出した。
(結果)
抗体タンパク質の温度溶出量は30.7mg/mLであり、抗体タンパク質を温度変化によって溶出できることが示された。温度溶出後のビーズに残った抗体タンパク質を塩バッファーで溶出したところ塩溶出量は1.4mg/mLと少なかった。以上の結果から、温度応答性プロテインAによる精製の後、緩衝液を交換する必要なく、温度応答性カチオン交換樹脂で、抗体タンパク質を工業的に精製できることが示された。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+300mM NaCl(pH8.0)を用い、溶出緩衝液として、50mMクエン酸緩衝液+300mM NaCl(pH3.0)を用い、溶出温度25℃で実施した以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例16においては、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。さらに、抗体の溶出温度は25℃であり、高温による失活のリスクを避ける温度領域で溶出が行われた。さらに、抗体の回収率を下記(4)式を用いて算出したところ、回収率は100%と十分に高かった。
(抗体の濃度測定)
溶出液中に含まれる抗体濃度を、280nmの紫外線吸収(UV吸収)を測定することで、下記(4)式を用いて算出した。
回収率(%)=(溶出ステップ画分中の抗体濃度(mg/mL)×(溶出ステップ画分 の量(mL))×100/((吸着ステップ供給液の抗体濃度(mg/mL)×吸着ステップの量(mL))−(吸着ステップ画分の抗体濃度(mg/mL))×吸着ステップ画分の量(mL))−(洗浄ステップ画分中の抗体濃度(mg/mL))×洗浄ステップ画分の量(mL)))・・・(4)
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+300mM NaCl(pH8.0)を用い、溶出緩衝液として、50mMクエン酸緩衝液+300mM NaCl(pH4.0)を用い、溶出温度25℃で実施した以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例17においては、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。さらに、抗体の溶出温度は25℃であり、高温による失活のリスクを避ける温度領域で溶出が行われた。抗体の回収率は99%であった。
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+300mM NaCl(pH8.0)を用い、溶出緩衝液として、50mMクエン酸緩衝液+300mM NaCl(pH5.0)を用い、溶出温度25℃で実施した以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例18においては、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低かった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。さらに、抗体の溶出温度は25℃であり、高温による失活のリスクを避ける温度領域で溶出が行われた。抗体の回収率は100%であった。
[実施例19]
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH7.0)、及び溶出緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+300mM NaCl(pH6.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高かった。
[実施例20]
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+300mM NaCl(pH8.0)を用い、溶出緩衝液として、50mMクエン酸緩衝液(pH4.0)を用い、溶出温度25℃で実施した以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。よって、実施例20においては、洗浄緩衝液のpHより、溶出緩衝液のpHが低く、且つ、洗浄緩衝液の塩濃度より、溶出緩衝液の塩濃度が低く、溶出緩衝液は塩を含まなかった。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高く、且つ、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量も十分に少なかった。さらに、抗体の溶出温度は25℃であり、高温による失活のリスクを避ける温度領域で溶出が行われた。抗体の回収率は99%であった。
[比較例1]
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液(pH6.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。その結果、表1に示すように、洗浄緩衝液のpHより溶出緩衝液のpHが高いため、HCP除去性、DNA除去性が低かった。
[比較例2]
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。その結果、表1に示すように、洗浄緩衝液と溶出緩衝液とで塩濃度とpHが同じであるため、HCP除去性、DNA除去性が低かった。
[比較例3]
洗浄緩衝液、及び溶出緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+100mM NaCl(pH7.4)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高かったが、洗浄緩衝液と溶出緩衝液とで塩濃度とpHが同じであるため、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量が多かった。
[比較例4]
洗浄緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH7.0)、及び溶出緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH8.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高かったが、洗浄緩衝液と溶出緩衝液とで塩濃度が同じであり、洗浄緩衝液のpHより溶出緩衝液のpHが高いため、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量が多かった。
[比較例5]
洗浄緩衝液、及び溶出緩衝液として、20mMリン酸緩衝液+150mM NaCl(pH7.0)を用いた以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。その結果、表1に示すように、HCP除去性、DNA除去性は十分に高かったが、洗浄緩衝液と溶出緩衝液とで塩濃度とpHが同じであるため、溶出画分中に含まれるプロテインA含有量が多かった。
[実施例21]
溶出温度25℃で実施した以外、実施例1と同様の方法で抗体の精製を実施した。抗体の回収率は24%と低かった。

Claims (17)

  1. 温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製方法であって、
    前記温度応答性プロテインAを有する固定相に前記抗体を結合させる結合工程と、
    前記抗体と前記温度応答性プロテインAが結合する温度の緩衝液であって、第1の塩濃度の緩衝液を用いて、前記固定相を洗浄する洗浄工程と、
    前記抗体が前記温度応答性プロテインAから遊離する温度の緩衝液であって、前記第1の塩濃度より低い第2の塩濃度の緩衝液を用いて、前記固定相に捕捉された抗体を溶出する溶出工程と、
    を含む、前記洗浄工程と前記溶出工程で異なる緩衝液を用いる、抗体の精製方法。
  2. 前記洗浄工程に用いる緩衝液の水素イオン指数より、前記溶出工程に用いる緩衝液の水素イオン指数が低い、請求項1に記載の抗体の精製方法。
  3. 温度応答性プロテインAを用いた抗体の精製方法であって、
    前記温度応答性プロテインAを有する固定相に前記抗体を結合させる結合工程と、
    前記抗体と前記温度応答性プロテインAが結合する温度の緩衝液であって、第1の水素イオン指数の緩衝液を用いて、前記固定相を洗浄する洗浄工程と、
    前記抗体が前記温度応答性プロテインAから遊離する温度の緩衝液であって、前記第1の水素イオン指数より低い第2の水素イオン指数の緩衝液を用いて、前記固定相に捕捉された抗体を溶出する溶出工程と、
    を含む、前記洗浄工程と前記溶出工程で異なる緩衝液を用いる、抗体の精製方法。
  4. 前記洗浄工程に用いる緩衝液の塩濃度より、前記溶出工程に用いる緩衝液の塩濃度が低い、請求項3に記載の抗体の精製方法。
  5. 前記洗浄工程に用いる緩衝液の塩濃度が150乃至1000mmol/Lであり、前記溶出工程に用いる緩衝液の塩濃度が0乃至1000mmol/Lである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の抗体の精製方法。
  6. 前記洗浄工程における緩衝液の水素イオン指数が7.5乃至9.0であり、前記溶出工程における緩衝液の水素イオン指数が3.0乃至8.0である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の抗体の精製方法。
  7. 前記洗浄工程における緩衝液の温度が0乃至20℃である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の抗体の精製方法。
  8. 前記溶出工程における緩衝液の温度が15乃至50℃である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の抗体の精製方法。
  9. 前記溶出工程における緩衝液の温度が前記洗浄工程における緩衝液の温度より高いことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の抗体の精製方法。
  10. 前記温度応答性プロテインAを有する固定相から溶出された前記抗体を含む緩衝液を、カチオン交換樹脂を含む固定相と接触させ、前記カチオン交換樹脂を含む固定相に前記抗体を吸着させる吸着工程を更に含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の抗体の精製方法。
  11. 前記吸着工程における緩衝液の塩濃度及び水素イオン指数が、前記溶出工程における緩衝液の塩濃度及び水素イオン指数と同じである、請求項10に記載の抗体の精製方法。
  12. 前記吸着工程における緩衝液の温度が、前記溶出工程における緩衝液の温度と同じである、請求項10又は11に記載の抗体の精製方法。
  13. 前記カチオン交換樹脂が、温度応答性カチオン交換樹脂である、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の抗体の精製方法。
  14. 前記結合工程の前に、前記溶出工程における緩衝液と同じ塩濃度及び水素イオン指数の緩衝液を前記温度応答性プロテインAを有する固定相に接触させる平衡化工程を更に含む、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の抗体の精製方法。
  15. 前記結合工程の前に、塩濃度が0乃至1000mmol/Lであり水素イオン指数が5.0乃至9.0である緩衝液を前記温度応答性プロテインAを有する固定相に接触させる平衡化工程を更に含む、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の抗体の精製方法。
  16. 前記溶出工程に用いる緩衝液の温度が、37℃未満である、請求項3乃至15のいずれか1項に記載の抗体の精製方法。
  17. 前記溶出工程における緩衝液の水素イオン指数が3.5乃至7.0である、請求項3乃至16のいずれか1項に記載の抗体の精製方法。
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