JP6253112B2 - 表面被覆窒化硼素焼結体工具 - Google Patents

表面被覆窒化硼素焼結体工具 Download PDF

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Description

本発明は、表面被覆窒化硼素焼結体工具に関する。
立方晶窒化硼素焼結体(以下「cBN(cubic Boron Nitride)焼結体」とも記す)を
基材として、その表面に被膜を施した切削工具は、たとえば焼入鋼等の難削材の加工に用いられている。たとえば、国際公開第2010/150335号(特許文献1)および国際公開第2012/005275号(特許文献2)には、cBN焼結体の表面にセラミックスの多層からなる被覆層を形成した工具が開示されている。
国際公開第2010/150335号 国際公開第2012/005275号
近年、切削工具には高い加工精度が求められている。たとえば、焼入鋼の切削加工において、研削加工と同等の加工精度が求められる場合もある。具体的には仕上げ面粗さが十点平均粗さ(Rzjis)で3.2Zである精密部品の加工も切削によって行なわれている。そして、このような用途に使用される切削工具は、所定の仕上げ面粗さを維持できなくなった時点で寿命に達したと判定される。
従来、たとえば特許文献1および特許文献2に開示されるように基材の表面に被膜を形成することにより、切削工具の耐摩耗性等の改善が図られている。しかしながら、これらの技術は被削材の仕上げ面粗さを向上させるものではない。そしてこれまでに、cBN焼結体を用いた切削工具において被削材の仕上げ面粗さを向上させることができる被膜は開発されていない。
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは優れた加工精度を有する表面被覆窒化硼素焼結体工具を提供することにある。
本発明の実施形態に係る表面被覆窒化硼素焼結体工具は、立方晶窒化硼素焼結体と、その上に形成された被膜とを備え、被膜はA層とC層とを含み、A層はTi1-xaMaxa1-yaya(ただし、MaはCr、NbおよびWの1種以上であり、xaは0≦xa≦0.7であり、yaは0≦ya≦1である)から構成され、C層はAl1-(xc+yc)CrxcMcyc
N(ただし、McはTi、VおよびSiの1種以上であり、xcは0.2≦xc≦0.8であり、ycは0≦yc≦0.6であり、かつxc+ycは0.2≦xc+yc≦0.8である)から構成され、A層は被膜の最表面または被膜の最表面とC層との間に形成され、被膜の最表面とC層の上面との距離は0.1μm以上1.0μm以下である。
本発明の実施形態に係る表面被覆窒化硼素焼結体工具は優れた加工精度を有する。
本発明の一実施形態に係る表面被覆窒化硼素焼結体工具の構成の一例を示す模式的な断面図である。 本発明の一実施形態に係る表面被覆窒化硼素焼結体工具の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。
[本願発明の実施形態の説明]
まず、本願発明の実施形態(以下「本実施形態」とも記す)の概要を以下の(1)〜(11)に列記して説明する。
本発明者が、高精度加工中に寿命と判定された工具の損傷形態を精細に調査したところ、このような工具の刃先では従来知られているクレータ摩耗や逃げ面摩耗に加えて、摩耗部の一方端である前境界部において境界摩耗が発達していることが明らかとなった。この境界摩耗は、クレータ摩耗や逃げ面摩耗のように広範囲に亘って窪んだ形状に発達する摩耗とは形態が異なり、局所的に長く鋭利に発達していた。そして、この境界摩耗の形状が被削材に転写され、仕上げ面粗さを悪化させているとの知見が得られた。
本発明者は上記知見に基づき、被削材の仕上げ面粗さを改善する方法を鋭意研究した結果、特定の組成のセラミックス層が境界摩耗の発達を抑制できることを見出し、さらに研究を重ねることによって本発明を完成させるに至った。すなわち、本実施形態の表面被覆窒化硼素焼結体工具は以下の構成を備える。
(1)本実施形態の表面被覆窒化硼素焼結体工具は、立方晶窒化硼素焼結体と、その上に形成された被膜とを備え、該被膜はA層とC層とを含む。ここでA層は、Ti1-xaMaxa1-yaya(ただし、MaはCr(クロム)、Nb(ニオブ)およびW(タングステン)の1種以上であり、xaは0≦xa≦0.7であり、yaは0≦ya≦1である)から構成され、Al1-(xc+yc)CrxcMcycN(ただし、McはTi(チタン)、V(バナジ
ウム)およびSi(シリコン)の1種以上であり、xcは0.2≦xc≦0.8であり、ycは0≦yc≦0.6であり、かつxc+ycは0.2≦xc+yc≦0.8である)から構成される。そしてA層は被膜の最表面または被膜の最表面とC層との間に形成され、被膜の最表面とC層の上面との距離は0.1μm以上1.0μm以下である。
本発明者の研究によれば、上記Al1-(xc+yc)CrxcMcycNから構成されるC層は、
境界摩耗の発達を抑制する作用を有する。そして本実施形態では被膜の最表面からC層の上面までの距離が0.1μm以上1.0μm以下である。これにより切削初期における境界摩耗の最大長さを特定値以下に規制することができる。前述のように境界摩耗の形状は被削材の仕上げ面粗さに直接影響を及ぼすものである。したがって境界摩耗の最大長さを特定値以下に規制することは、すなわち被削材の仕上げ面粗さの大きさを特定値以下に規制できることを意味している。
さらに本実施形態の被膜はC層の上に、上記Ti1-xaMaxa1-yayaから構成されるA層を含む。A層は境界摩耗の抑制効果は小さいが、クレータ摩耗および逃げ面摩耗の発達を緩和し滑らかに摩耗する層である。C層の上にA層を配置することにより、クレータ摩耗および逃げ面摩耗の発達によるうねりの発生を抑え、仕上げ面粗さを向上させることができる。さらにA層とC層とが相乗的に作用し、最表面からC層までの間における耐摩耗性を向上させることもできる。
以上のようにして、本実施形態の表面被覆窒化硼素焼結体工具は優れた加工精度および耐摩耗性を有することができる。
(2)被膜の最表面とC層の上面との距離は0.3μm以上0.7μm以下であること
が好ましい。これにより仕上げ面粗さが更に向上する。
(3)C層は、0.1μm以上1.0μm以下の厚さを有することが好ましい。C層がこのような厚さを有することにより、境界摩耗の発達を抑制する作用が高まる傾向にある。
(4)被膜は複数のA層と複数のC層とを含み、C層の上にA層を有する積層単位を2つ以上含むことが好ましい。
上記のように本実施形態の表面被覆窒化硼素焼結体工具は、A層とC層とが特定の秩序で積層されることにより、クレータ摩耗および逃げ面摩耗の発達と境界摩耗の発達とを抑えることができ、以って加工精度を向上させるものである。したがって、被膜がこのような積層単位を繰り返し含むことにより、長期に亘って良好な加工精度を持続することができる。すなわち仕上がり面粗さを基準とする工具寿命(以下「面粗度寿命」と記す)を向上させることができる。
(5)被膜は、A層とC層との間にB層をさらに含み、B層は、Al(アルミニウム)、CrおよびTiからなる群より選ばれる1種以上の元素と、N(窒素)とから構成される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
上記のようにB層を構成する化合物は、A層およびC層に含まれる元素から構成される。そのためB層はA層およびC層のいずれとも親和性が高く、双方に強く密着することができる。したがってB層をA層とC層との間に形成することにより、A層とC層との密着性が向上し、これらの間での剥離の発生を防止することができる。
(6)B層は、TiNから構成されるB1層と、AlCrNから構成されるB2層とが交互にそれぞれ1層以上積層されてなる多層構造を含むことが好ましい。これによりA層とC層との密着性を向上させることができる。
(7)B1層およびB2層の厚さは、それぞれ0.5nm以上30nm未満であることが好ましい。B層を薄いB1層と薄いB2層とからなる超多層構造とすることにより、A層とC層との密着性を向上させることができる。
(8)B層は、AlTiCrNから構成される化合物を含むことが好ましい。AlTiCrNは、A層およびC層を構成する化合物のほぼ中間の組成を有する化合物である。したがって、A層とC層との密着性を高めるB層を構成する化合物として特に好適である。
(9)A層は、上記yaがA層の厚さ方向において傾斜状またはステップ状に変化する領域を含むことが好ましい。これにより被膜に耐欠損性等を付与することができる。
(10)立方晶窒化硼素焼結体と接する層は、C層であることが好ましい。Al1-(xc+yc)CrxcMcycNから構成されるC層は、基材を構成するcBN焼結体との親和性が高
い。したがって、cBN焼結体と接する層をC層とすることにより、基材と被膜との密着性を向上させることができる。
(11)被膜は、0.5μm以上10μm以下の厚さを有することが好ましい。これにより工具寿命を向上させることができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本実施形態に係る表面被覆窒化硼素焼結体工具についてより詳細に説明するが、
本実施形態はこれらに限定されるものではない。
[第1の実施形態]
<表面被覆窒化硼素焼結体工具>
図1は第1の実施形態に係る表面被覆窒化硼素焼結体工具(以下「被覆cBN工具」と記す)の構成の一例を示す模式的な断面図である。図1に示すように被覆cBN工具101は、cBN焼結体から構成される基材1とその上に形成された被膜100とを備えている。被膜100はA層10とC層30とを含んでいる。被膜100は最表面S1を有し、C層30は上面S2を有する。
A層10はTi1-xaMaxa1-yaya(ただし、MaはCr、NbおよびWの1種以上であり、xaは0≦xa≦0.7であり、yaは0≦ya≦1である)から構成され、クレータ摩耗および逃げ面摩耗の発達を緩和し滑らかに摩耗する作用(すなわち耐クレータ摩耗性および耐逃げ面摩耗性)を有する。
またC層30はAl1-(xc+yc)CrxcMcycN(ただし、McはTi、VおよびSiの
1種以上であり、xcは0.2≦xc≦0.8であり、ycは0≦yc≦0.6であり、かつxc+ycは0.2≦xc+yc≦0.8である)から構成され、境界摩耗の進展を抑制する作用(すなわち耐境界摩耗性)を有する。
A層10は被膜100の最表面S1に形成されている。ただし本実施形態においてA層10はC層30の上面S2よりも最表面S1側に形成されていればよく、A層10は最表面S1に形成されていなくてもよい。たとえば、A層10の上に他の層(TiN等から構成される色付け層等)が形成されていてもよい。すなわち本実施形態におけるA層10は、被膜の最表面S1または最表面S1とC層30の上面S2との間に形成されるものである。
被膜100の最表面S1とC層30の上面S2との間の距離dは0.1μm以上1.0μm以下である。これにより切削初期における境界摩耗の最大長さが一定値以下に規制される。さらにC層30の上にA層10を有することにより、クレータ摩耗および逃げ面摩耗の進行によるうねりの発生を抑え、被削材の仕上がり面粗さを良好に保つことができる。なお距離dは0.3μm以上0.7μm以下であることがより好ましい。
ここで最表面S1とC層30の上面S2との距離dは次のようにして測定するものとする。すなわち被覆cBN工具を切断し、該断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)または透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)で観察することにより測定するものとする。断面観察用サンプルは、たとえば、集束イオンビーム装置(FIB:Focused Ion Beam system)、クロスセクションポリッシ
ャ装置(CP:Cross section Polisher)等を用いて作製することができる。なお当該測定方法は被膜自体の厚さまたは被膜を構成する各層の厚さの測定にも適用されるものとする。
また被膜を構成する各層の組成は、SEMまたはTEM付帯のエネルギー分散型X線分析装置(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)により測定するものとする。
以下、被覆cBN工具101を構成する各部について説明する。
<被膜>
被膜100は、A層10とC層30とを含んでいる。被膜100はA層10とC層30とを含む限り、他の層を含んでいてもよい。たとえば、図1に示すようにA層10とC層30との間に後述するB層20(密着層)等を含んでいてもよいし、C層30と基材1と
の間に後述するD層40を含んでいてもよい。
被膜100は、0.5μm以上10μm以下の厚さを有することが好ましい。被膜の厚さが0.5μm以上であることにより、被膜の厚さが薄いことに起因する工具寿命の低下を防止することができる。また被膜の厚さが10μm以下であることにより、切削初期における耐チッピング性を高めることができる。なお被膜の厚さはより好ましくは1.0μm以上5.0μm以下である。
<A層>
A層10は、Ti1-xaMaxa1-yaya(ただし、MaはCr、NbおよびWの1種以上であり、xaは0≦xa≦0.7であり、yaは0≦ya≦1である)から構成される。これによりA層は耐クレータ摩耗性および耐逃げ面摩耗性を有し、クレータ摩耗および逃げ面摩耗の進行によるうねりの発生を抑え、被削材の仕上がり面粗さを良好に保つことができる。
ここでxaは、好ましくは0≦xa≦0.5であり、より好ましくは0≦xa≦0.3であり、さらに好ましくは0≦xa≦0.2である。xaが該範囲を占めることにより耐摩耗性が向上する傾向にあるからである。また同様に耐摩耗性の観点からyaは、好ましくは0.1≦ya≦0.9であり、より好ましくは0.2≦ya≦0.8であり、さらに好ましくは0.3≦ya≦0.7である。
A層10の厚さは、好ましくは0.1μm以上0.7μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上0.6μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以上0.5μm以下である。A層10の厚さが該範囲を占めることにより、耐逃げ面摩耗性が向上する傾向にあるからである。
(傾斜状またはステップ状に変化する領域)
A層10(Ti1-xaMaxa1-yaya)は、yaの値がA層の厚さ方向(たとえば図1等の縦方向)において傾斜状またはステップ状に変化する領域を含むことが好ましい。たとえば、A層10の基材1側においてyaが大きい場合、耐欠損性および耐剥離性が向上する傾向にある。またたとえば、A層の上面側においてyaの値が小さい場合は、摩耗時におけるA層10の剥離、割れ、チッピング等を防止することができる。
ここで「yaの値がA層の厚さ方向において傾斜状に変化する」とは、yaの値がA層10の下面からA層10の上面に向かって連続して減少または増加することを示す。このような構成は、たとえばアークイオンプレーティング(Arc Ion Plating、以下「AIP
」と記す)法によってA層を成膜する際に、N(窒素)の原料ガスとC(炭素)の原料ガスとの流量比を連続して変化させることにより得られる。
また「yaの値がA層の厚さ方向においてステップ状に変化する」とは、yaの値がA層10の下面からA層10の上面に向かって不連続に減少または増加することを示す。このような構成は、たとえばyaの値が互いに異なる2以上の層を積層することにより得られる。
<C層>
C層30は、Al1-(xc+yc)CrxcMcycN(ただし、McはTi、VおよびSiの1
種以上であり、xcは0.2≦xc≦0.8であり、ycは0≦yc≦0.6であり、かつxc+ycは0.2≦xc+yc≦0.8である)から構成される。これによりC層は耐境界摩耗性を有する。
ここでycは、好ましくは0≦yc≦0.4であり、より好ましくは0≦yc≦0.3であり、さらに好ましくは0≦yc≦0.2である。本発明者の研究によれば、C層においてTi、VおよびSiの含有量が少ない程、耐境界摩耗性に優れる結果が得られている。したがって最も好ましくはyc=0である。そして、xc+ycは好ましくは0.2≦xc+yc≦0.6であり、より好ましくは0.2≦xc+yc≦0.4である。
C層は、0.1μm以上1.0μm以下の厚さを有することが好ましい。これにより、さらに確実に境界摩耗の発達を阻止することができる。なおC層の厚さは、より好ましくは0.1μm以上0.7μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。
<B層>
図1に示す被膜100はA層10とC層30との間に密着層としてB層20を有している。これによりA層10とC層30との間での剥離が防止される。B層20は、Al、CrおよびTiからなる群より選ばれる1種以上の元素と、Nとから構成される1種以上の化合物を含むことが好ましい。このような化合物はA層10およびC層30のいずれとも親和性が高く、双方に強く密着することができる。B層20の厚さは、好ましくは0.005μm以上0.7μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上0.6μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以上0.4μm以下である。
B層20の具体的な構成としては、たとえばTiNから構成されるB1層(図示せず)と、AlCrNから構成されるB2層(図示せず)とが交互にそれぞれ1層以上積層されてなる多層構造とすることができる。これによりB層20が全体としてA層10およびC層20のどちらとも親和性の高い層となることができる。またこれによりB層20も耐クレータ摩耗および耐逃げ面摩耗性の向上に寄与することができる。
上記のような構成においてB1層およびB2層の厚さは、それぞれ0.5nm以上30nm未満とすることができる。このように厚さの薄いB1層およびB2層が交互に積層されることにより、A層10とC層30を更に強固に密着させることができる。なおB層20が多層構造を有する場合、積層数(B1層とB2層の総数)は、たとえば4層以上50層以下であり、好ましくは8層以上40層以下であり、より好ましくは10層以上20層以下である。また密着性を更に高めるとの観点から、A層10と接する層がB1層(TiN層)、C層と接する層がB2層(AlCrN層)となるように、B1層とB2層とを交互に積層することが好ましい。
またB層20は単層構造であってもよい。この場合、B層20はAlTiCrNから構成される化合物を含むことが好ましい。AlTiCrNは、A層10およびC層30を構成する化合物のほぼ中間の組成を有する化合物であるため、単層であっても十分な密着性を示すことができる。
<D層>
図1に示すように被膜100は、C層30と基材1との間にD層40を含んでいてもよい。D層40は、たとえばMdLdzd(Mdは周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素、AlならびにSiの1種以上であり、LdはB(硼素)、C、NおよびO(酸素)の1種以上であり、zdは0≦zd≦1.0である)から構成することができる。このようなD層40を形成することにより被膜100と基材1との密着性を向上させるとともに、被膜100が薄いことに起因する工具寿命の低下を防止することができる。D層40の厚さは、たとえば0.5μm以上3.0μm以下であり、好ましくは1.0μm以上2.0μm以下である。
<cBN焼結体>
本実施形態のcBN焼結体は、被覆cBN工具101の切れ刃部分のうち当該工具の基材1を構成するものである。cBN焼結体は被覆cBN工具101の切れ刃部分に設けられていればよい。すなわち被覆cBN工具の基材はcBN焼結体からなる切れ刃部分と、cBN焼結体とは異なる材料(たとえば超硬合金)からなる基材本体とを含んでいてもよい。この場合、cBN焼結体からなる切れ刃部分はろう材等を介して基材本体に接着されていることが好ましい。ろう材は接合強度や融点を考慮し適宜選択すればよい。cBN焼結体は被覆cBN工具101の基材全体を構成していてもよい。
cBN焼結体は、cBN粒子を30体積%以上80体積%以下の範囲で含有し、さらに残部として結合相を含有することが好ましい。
ここで結合相は、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素の窒化物、炭化物、硼化物、酸化物ならびにこれらの固溶体からなる群の中から選択された少なくとも1種の化合物とアルミニウム化合物と不可避不純物とを含むことが好ましい。結合相は焼結体組織中においてcBN粒子同士を互いに結合している。焼結体組織中にcBN粒子が30体積%以上含有されることにより、cBN焼結体の耐摩耗性の低下を防止することができる。またcBN粒子が80体積%以下含有されることにより、焼結体組織中において強度と靭性に優れるcBN粒子が骨格構造の役割を担うことができ、cBN焼結体の耐欠損性を確保することができる。
なお本明細書において、cBN粒子の体積含有率は次に示す方法によって測定するものとする。すなわちcBN焼結体を鏡面研磨し任意の領域のcBN焼結体組織の反射電子像をSEMを用いて2000倍の倍率で観察する。このときcBN粒子は黒色領域となり、結合相は灰色領域または白色領域となって観察される。そして観察視野画像においてcBN粒子領域と結合相領域とを画像処理により2値化して、cBN粒子領域の占有面積を計測する。そして、該占有面積を次の式に代入することによりcBN粒子の体積含有率を算出することができる。
(cBN粒子の体積含有率)=(cBN粒子の占有面積)÷(視野画像におけるcBN焼結体組織の面積)×100。
cBN粒子の体積含有率は、より好ましくは50体積%以上75体積%以下である。cBN粒子の体積含有率が50体積%以上であることにより、被覆cBN工具において耐摩耗性と耐欠損性とのバランスが優れる傾向にある。またcBN粒子の体積含有率が75体積%以下であることにより、結合相が適度に分布することとなるため、結合相によるcBN粒子同士の接合強度が高まる傾向にある。なおcBN粒子の体積含有率は、特に好ましくは50体積%以上60体積%以下である。
[第2の実施形態]
以下、本実施形態のうち第2の実施形態について説明する。図2は第2の実施形態に係る被覆cBN工具の構成の一例を示す模式的な断面図である。図2に示すように第2の実施形態に係る被覆cBN工具201は、cBN焼結体からなる基材1とその上に形成された被膜200とを備えている、そして被膜200は、複数のA層(第1のA層11、第2のA層12、第3のA層13および第4のA層14)と複数のC層(第1のC層31、第2のC層32、第3のC層33および第4のC層34)とを含んでいる。そして被膜200はC層の上にA層を有する積層単位を4つ含んでいる。
なお被膜200の厚さは、第1の実施形態と同様に、好ましくは0.5μm以上10μm以下であり、より好ましくは1.0μm以上5.0μm以下である。また図2に示す構
成はあくまでも一例であり、本実施形態において被膜が有する積層単位の数は1つ(第1の実施形態)であってもよいし、2〜3つであってもよく、あるいは5つ以上であってもよい。
ここで第1のA層11、第2のA層12、第3のA層13および第4のA層14の構成は、第1の実施形態で説明したA層10の構成と同様とすることができる。ただし、第1〜第4のA層はそれぞれ厚さや組成が異なっていてもよい。たとえば、第3のA層13(最表面S1側から2番目のA層)は第4のA層14(最も最表面S1に近いA層)よりも厚く形成されていてもよい。境界摩耗の進展は、一旦は第4の積層単位54における第4のC層34によって阻止されるため、第3の積層単位53における境界摩耗の進行速度が第4の積層単位54におけるものとは異なる場合もあるからである。
また第1のC層31、第2のC層32、第3のC層33および第4のC層34の構成も、第1の実施形態で説明したC層30の構成と同様とすることができ、各C層の厚さや組成はそれぞれ異なっていてもよい。
第2の実施形態では、第4のA層14が被膜の最表面S1を構成している。すなわち、第4のA層14は被膜200の最表面S1に形成されている。そして被膜200の最表面S1と第4のC層34の上面S2との距離dは0.1μm以上1.0μm以下である。これにより第1の実施形態と同様に被削材の仕上がり面粗さを向上させることができる。
なお、第2の実施形態のように被膜が複数のC層を含む場合、被膜の最表面S1とC層の上面S2との距離dは、複数のC層のうち最も最表面S1に近いC層の上面S2と最表面S1との距離を示すものとする。また第1の実施形態と同様に第4のA層14の上に他の層が形成されていても構わない。
さらに被膜200は、C層の上にA層を有する積層単位を4つ(第1の積層単位51、第2の積層単位52、第3の積層単位53および第4の積層単位54)含んでいる。これにより長期に亘って良好な仕上がり面粗さを維持し、優れた面粗度寿命を有することができる。すなわち第4の積層単位54が摩耗によって消失しても、第3の積層単位53〜第1の積層単位51が同様の作用を有するため、再び境界摩耗の発達と逃げ面摩耗の発達とを抑えることができる。
被膜200において各A層と各C層との間には、それぞれB層(第1のB層21、第2のB層22、第3のB層23および第4のB層24)が形成されている。これにより各積層単位内での密着性が高まり面粗度寿命が向上する。
なお各積層単位の間には任意の層が含まれ得るが、たとえば第1の積層単位51と第2の積層単位52とが近接して形成されている場合、第1のA層11と第2のC層32との間にもB層(密着層)を設けることが好ましい。これにより積層単位同士の密着性が高まるため面粗度寿命を更に向上させることができる。
図2に示すように、基材1と接する層はC層(図2では第1のC層31)であることが好ましい。前述の組成を有するC層はcBN焼結体との密着性に優れるため、基材1と接する層をC層とすることにより被膜200全体の脱落や剥離を防止することができる。
<表面被覆窒化硼素焼結体工具の製造方法>
上記に説明した本実施形態の被覆cBN工具は、以下のようにして製造することができる。
<基材の作製>
本実施形態の基材は、基材本体とcBN焼結体からなる基材とを接合することにより製造することができる。基材本体の材料としては、たとえば超硬合金を用いることができる。このような基材本体は、たとえば従来公知の焼結法および成形法により製造することができる。またcBN焼結体からなる基材は、たとえばcBN粒子と結合相の原料粉末とからなる混合物を高温高圧下で焼結させることにより製造することができる。そして基材本体の適切な部位に、cBN焼結体からなる基材を従来公知のろう材で接合し、所定の形状に研削加工することにより基材を製造することができる。なお基材全体をcBN焼結体から構成することも当然可能である。
<被膜の形成>
上記のようにして得られた基材に被膜を形成することにより被覆cBN工具を製造することができる。ここで被膜は、AIP法(真空アーク放電を利用して固体材料を蒸発させるイオンプレーティング法)またはスパッタリング法により形成されることが好ましい。AIP法では、被膜を構成することになる金属種を含む金属蒸発源とCH4、N2またはO2等の反応ガスとを用いて被膜を形成することができる。なお被膜を形成する条件として
は、従来公知の条件を採用することができる。またスパッタリング法では、被膜を構成することになる金属種を含む金属蒸発源と、CH4、N2またはO2等の反応ガスと、Ar、
Kr、Xe等のスパッタガスとを用いて被膜を形成することができる。なおこの場合も被膜を形成する条件としては従来公知の条件を採用することができる。
以下、実施例を用いて本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお以下の説明において、たとえば第1のA層11および第2のA層12等を総称して単にA層と記すことがある。
<実施例1>
(cBN焼結体の製造)
以下のようにして表1に示す組成を有するcBN焼結体A〜Hを製造した。表1中「X線検出化合物」の欄に示す化合物は、cBN焼結体の断面または表面をX線回折(XRD:X‐ray diffraction)装置によって定性分析した際に検出された化合物である。
Figure 0006253112
(cBN焼結体Aの製造)
まず、原子比でTi:N=1:0.6となるように平均粒径1μmのTiN粉末と平均粒径が3μmのTi粉末とを混合することにより混合物を得た。該混合物を真空中120
0℃で30分間熱処理してから粉砕した。これによりTiN0.6からなる金属間化合物粉
末を得た。
次に、質量比でTiN0.6:Al=90:10となるように、TiN0.6からなる金属間化合物粉末と平均粒径が4μmのAl粉末とを混合することにより混合物を得た。該混合物を真空中1000℃で30分間熱処理した。熱処理により得られた化合物を、直径が6mmの超硬合金製ボールメディアを用いて、ボールミル粉砕法により均一に粉砕した。これにより結合相の原料粉末を得た。
続いて、cBN焼結体におけるcBN粒子の含有率が30体積%となるように平均粒径が1.5μmのcBN粒子と結合相の原料粉末とを配合し、直径が3mmの窒化硼素製ボールメディアを用いて、ボールミル混合法により均一に混合して粉末状の混合物を得た。そして該混合物を超硬合金製支持基板に積層してからMo製カプセルに充填した。次いで、超高圧装置を用いて圧力5.5GPa、温度1300℃で30分間焼結した。これによりcBN焼結体Aを得た。
(cBN焼結体B〜Fの製造)
表1に示すようにcBN粒子の体積含有率および平均粒径を変更する以外は、cBN焼結体Aと同様にしてcBN焼結体B〜Fを得た。
(cBN焼結体Gの製造)
まず、原子比でTi:C=1:0.6となるように平均粒径1μmのTiC粉末と平均粒径が3μmのTi粉末とを混合することにより混合物を得た。該混合物を真空中1200℃で30分間熱処理してから粉砕した。これによりTiC0.6からなる金属間化合物粉
末を得た。
次に、質量比でTiC0.6:Al=95:5となるように、TiC0.6からなる金属間化合物粉末と平均粒径が4μmのAl粉末とを混合することにより混合物を得た。該混合物を真空中1000℃で30分間熱処理した。熱処理により得られた化合物を、直径が6mmの超硬合金製ボールメディアを用いて、ボールミル粉砕法により均一に粉砕した。これにより結合相の原料粉末を得た。そして該結合相の原料粉末を用いて、表1に示すようにcBN粒子の体積含有率および平均粒径を変更する以外は、cBN焼結体Aと同様にしてcBN焼結体Gを得た。
(cBN焼結体Hの製造)
まず、原子比でTi:C:N=1:0.3:0.5となるように平均粒径1μmのTiCN粉末と平均粒径が3μmのTi粉末とを混合することにより混合物を得た。該混合物を真空中1200℃で30分間熱処理してから粉砕した。これによりTiC0.30.5からなる金属間化合物粉末を得た。
次に、質量比でTiC0.30.5:Al=95:5となるように、TiC0.30.5からなる金属間化合物粉末と平均粒径が4μmのAl粉末とを混合することにより混合物を得た。該混合物を真空中1000℃で30分間熱処理した。熱処理により得られた化合物を、直径が6mmの超硬合金製ボールメディアを用いて、ボールミル粉砕法により均一に粉砕した。これにより結合相の原料粉末を得た。そして該結合相の原料粉末を用い、表1に示すようにcBN粒子の体積含有率および平均粒径を変更する以外は、cBN焼結体Aと同様にしてcBN焼結体Hを得た。
(試料No.1の製造)
以下のようにして試料No.1に係る被覆cBN工具を製造した。
(基材の作製)
形状がISO規格のDNGA150408であり、超硬合金材料(K10相当)からなる基材本体を準備した。該基材本体の刃先(コーナ部分)に上記のcBN焼結体A(形状:頂角が55°であり当該頂角を挟む両辺がそれぞれ2mmである二等辺三角形を底面とし、厚さが2mmの三角柱状のもの)を接合した。なお接合にはTi−Zr−Cuからなるろう材を用いた。次いで該接合体の外周面、上面および下面を研削し、刃先にネガランド形状(ネガランド幅が150μmであり、ネガランド角が25°)を形成した。このようにして切れ刃部分がcBN焼結体Aからなる基材を得た。
(被膜の形成)
(成膜装置)
まずここで、以降の工程において被膜の形成に用いる成膜装置について説明する。当該成膜装置には真空ポンプが接続されており、装置内部に真空引き可能な真空チャンバーを有している。真空チャンバー内には、回転テーブルが設置されており、該回転テーブルは治具を介して基材がセットできるように構成されている。真空チャンバー内にセットされた基材は、真空チャンバー内に設置されているヒーターにより加熱することができる。また真空チャンバーにはエッチングおよび成膜用のガスを導入するためのガス配管が、流量制御用のマスフローコントローラ(MFC:Mass Flow Controller)を介して接続されている。さらに真空チャンバー内には、エッチング用のArイオンを発生させるためのタングステンフィラメント、必要な電源が接続された成膜用のアーク蒸発源もしくはスパッタ源が配置されている。そしてアーク蒸発源もしくはスパッタ源には、成膜に必要な蒸発源原料(ターゲット)がセットされている。
(基材のエッチング)
上記のようにして得られた基材を、成膜装置の真空チャンバー内にセットし、チャンバー内の真空引きを行なった。その後、回転テーブルを3rpmで回転させながら基材を500℃に加熱した。次いで、真空チャンバー内にArガスを導入し、タングステンフィラメントを放電させてArイオンを発生させ、基材にバイアス電圧を印加し、Arイオンにより基材のエッチングを行なった。なお、このときのエッチング条件は次のとおりである
Arガスの圧力 :1Pa
基板バイアス電圧:−500V。
(A層の形成)
次に上記の成膜装置内でA層を基材上に形成した。具体的には次に示す条件で厚さ1.7μmのA層を形成した。このとき導入ガス(N2およびCH4)の流量は、A層においてC:N=2:8となるように調整した
ターゲット :Ti
導入ガス :N2、CH4
成膜圧力 :2Pa
アーク放電電流 :180A
基板バイアス電圧:−350V
テーブル回転数 :3rpm。
(B層の形成)
A層に続いて、上記の成膜装置内でA層の上にB層を形成した。具体的には、以下に示す条件で、TiNからなるB1層(図示せず)とAlCrNからなるB2層(図示せず)とをそれぞれ交互に5層ずつ繰り返して形成することにより、合計層数が10層であり、合計厚さ0.1μmのB層を形成した。B層の形成においては、B1層の厚さを10nm、B2層の厚さを10nmとなるように蒸着時間を調整した。なお試料No.1において
、B層の最上層(C層側)はB2層であり、最下層(A層側)はB1層である。以下これと同様の構成を有するB層を「B0層」とも記す。またB層がB1層(TiN層)とB2
層(AlCrN層)とからなる多層構造を有する場合は、A層側をB1層、C層側をB2層として積層されるものとする。
(B1層の形成)
B1層は次に示す条件で形成した
ターゲット :Ti
導入ガス :N2
成膜圧力 :3Pa
アーク放電電流 :150A
基板バイアス電圧:−40V。
(B2層の形成)
B2層は次に示す条件で形成した
ターゲット :Al(50原子%)、Cr(50原子%)
導入ガス :N2
成膜圧力 :3Pa
アーク放電電流 :150A
基板バイアス電圧:−50V。
(C層の形成)
次にB層上にC層を形成した。具体的には次に示す条件で厚さ0.2μmとなるように蒸着時間を調整してC層を形成した
ターゲット :Al(70原子%)、Cr(30原子%)
導入ガス :N2
成膜圧力 :4Pa
アーク放電電流 :150A
基板バイアス電圧:−35V
テーブル回転数 :3rpm。
以上のようにして試料No.1に係る被覆cBN工具を得た。なお試料No.1の被膜の最表面はC層により構成されている。
(試料No.2の製造)
試料No.1と同様にして基材上にA層、B層、C層をこの順で積層した。
(B層の形成)
続いてC層上に、上記と同様にして厚さ0.1μmのB層を形成した。
(A層の形成)
さらにB層上に、厚さを0.1μmとすることを除いては上記と同様してA層を形成した。以上のようにして、試料No.2に係る被覆cBN工具を得た。試料No.2の構成を表2および表3に記す。試料No.2において被膜の最表面S1にはA層が形成されており、最表面S1とC層の上面S2との距離dは0.2μmである。
Figure 0006253112
Figure 0006253112
(試料No.3〜No.6の製造)
蒸着時間を調整して最表面S1に形成されたA層の厚さを表3に示すように変更する以外は、試料No.2と同様にして試料No.3〜No.6に係る被覆cBN工具を得た。表2および表3中「No.」に「*」が付された試料が実施例に相当する(以下の実施例の説明についても同様とする。)。
<評価>
以上のようにして得られた試料No.1〜No.6に係る被覆cBN工具の切削性能と仕上げ面粗さを焼入鋼の連続切削により評価した。
(逃げ面摩耗量VBおよび仕上げ面粗さRzの測定)
各試料の工具を用いて、次に示す切削条件に従って切削距離3kmの切削加工を行なった。そして光学顕微鏡を使用して工具の逃げ面摩耗量VBを測定した。また、「JIS B 0601」に準拠して、加工後の被削材の「十点平均粗さ(Rzjis)」を測定した。結果を表3に示す。表3中、逃げ面摩耗量VBが小さいほど耐摩耗性に優れる。またRzが小さいほど加工精度に優れることを示している。
(切削条件)
被削材 :焼入鋼SCM415H(HRC60)、φ35mm×10mm
切削速度:150m/min
送り量 :f=0.1mm/rev
切込み :ap=0.1mm
切削油 :エマルジョン((株)日本フルードシステム製造の商品名「システムカット96」)を20倍に希釈したもの(wet状態)。
(結果と考察)
試料No.1は、Rzは小さいもののVBが大きい結果となった。この理由は、試料No.1はC層の上にA層を有しておらず、距離dが0.1μm未満であったためであると考えられる。また試料No.6は、VBは小さく良好であったがRzが大きい結果となった。これは距離dが1.0μmを超過したため境界摩耗の発達が大きくなったためであると考えられる。
これに対して試料No.2〜No.5では距離dが0.1μm以上1.0μm以下であり、摩耗量と仕上げ面粗さとが両立されていた。
すなわち立方晶窒化硼素焼結体とその上に形成された被膜とを備え、被膜はA層とC層とを含み、A層はTi1-xaMaxa1-yaya(ただし、MaはCr、NbおよびWの1種以上であり、xaは0≦xa≦0.7であり、yaは0≦ya≦1である)から構成され、C層はAl1-(xc+yc)CrxcMcycN(ただし、McはTi、VおよびSiの1種以上
であり、xcは0.2≦xc≦0.8であり、ycは0≦yc≦0.6であり、かつxc+ycは0.2≦xc+yc≦0.8である)から構成され、A層は被膜の最表面または被膜の最表面とC層との間に形成され、被膜の最表面とC層の上面との距離は0.1μm以上1.0μm以下である、実施例に係る試料は、かかる条件を満たさない比較例の試料に比し優れた耐摩耗性と加工精度を有することが確認された。
<実施例2:A層の構成の検討>
(試料No.7の製造)
以下のようにして試料No.7に係る被覆cBN工具を製造した。
(基材の作製)
cBN焼結体Aの代わりにcBN焼結体Cを用いる以外は実施例1と同様にして基材1を得た。
(被膜の形成)
以下のように図1を参照して、基材1上に被膜100を形成した。
(D層の形成)
実施例1と同様にして基材1のエッチングを行なった後、基材1上にD層40を形成した。具体的には次に示す条件で厚さ2.0μmとなるように蒸着時間を調整してD層40を形成した
ターゲット :Ti(30原子%)、Al(70原子%)
導入ガス :N2
成膜圧力 :4Pa
アーク放電電流 :150A
基板バイアス電圧:−35V
テーブル回転数 :3rpm。
(C層の形成)
次にD層40上にC層30を形成した。具体的には次に示す条件で厚さ0.2μmとなるように蒸着時間を調整してC層30を形成した
ターゲット :Al(70原子%)、Cr(30原子%)
導入ガス :N2
成膜圧力 :4Pa
アーク放電電流 :150A
基板バイアス電圧:−35V
テーブル回転数 :3rpm。
(B層の形成)
C層30を形成した後、実施例1におけるB層と同様にして、B1層とB2層とからなる多層構造を有し、厚さが0.1μmであるB層20を形成した。
(A層の形成)
B層20に続いてその上にA層10を形成した。具体的には次に示す条件で厚さ0.5μmのA層10を形成した。このとき導入ガス(N2およびCH4)の流量は、A層10においてC:N=1:1となるように調整した
ターゲット :Ti
導入ガス :N2、CH4
成膜圧力 :2Pa
アーク放電電流 :180A
基板バイアス電圧:−350V
テーブル回転数 :3rpm。
以上のようにして、cBN焼結体上にA層10およびC層30を含む被膜100を備える被覆cBN工具(試料No.7)を得た。なお試料No.7において被膜100の最表面S1にはA層10が形成されており、最表面S1とC層30の上面S2との距離dは0.6μmである。試料No.7の構成を表4に示す。
Figure 0006253112
(試料No.8〜No.10およびNo.17の製造)
表4に示す組成のA層10が形成されるようにターゲット材料ならびに導入ガスの組成および流量を変更する以外は、試料No.7と同様にして試料No.8〜No.10およびNo.17に係る被覆cBN工具を得た。
(試料No.11の製造)
試料No.11では、上記と同様にして基材1上にD層40、C層30およびB層20を形成した後、式Ti1-xaMaxa1-yayaにおけるyaが被膜の厚さ方向において傾斜状またはステップ状に変化する領域を含むA層10を形成した。表4中、当該A層10の組成を便宜上「TiCN*01」と記している。当該A層は具体的には次のようにして形成
した。
(A層の形成:TiCN*01
まず、導入ガスとしてN2のみを使用し(すなわちya=1.0に固定し)、TiN層
を0.05μm形成した。次に、導入ガス中のCH4の流量を徐々に増加させながら、y
a(N組成)が傾斜状に減少する(1−ya(C組成)は傾斜状に増加する)TiCN層を0.2μm形成した。当該TiCN層の組成は最終的にTiC0.50.5であった(すなわちya=0.5)。その後、N2とCH4の流量比を固定してTiC0.50.5層を0.05μm形成した。このようにして、B層20の上に、Ti1-xaMaxa1-yayaにおけるyaがA層10の厚さ方向に傾斜状に変化するA層10(TiCN*01)を形成した。こ
れにより試料No.11に係る被覆cBN工具を得た。当該A層の構成を表5に示す。表5中、「Ti1-xaMaxa1-yayaにおけるyaの値」の欄において、たとえば「1→0.5」はyaの値が1から0.5へと連続して減少することを示している。
Figure 0006253112
(試料No.12〜16の製造)
表5に示す「TiCN*02」〜「Ti0.9Nb0.1CN*06」の組成および構成を有するA層10を形成する以外は、試料No.11と同様にして試料No.12〜No.16に係る被覆cBN工具を得た。
<評価>
以上のようにして得られた試料No.7〜17係る被覆cBN工具の切削性能と仕上げ面粗さを実施例1と同様にして焼入鋼の連続切削により評価した。結果を表4に示す。なお表4に示すように試料No.7〜17ではA層10の構成がそれぞれ異なっている。
(結果と考察)
試料No.7とNo.8を比較するとyaの値が0.9、0.5と変化するにつれて耐摩耗性および加工精度が向上していることが分かる。したがって、yaは0≦ya≦0.9が好ましく、0≦ya≦0.5がより好ましいといえる。
試料No.9、10、No.16およびNo.17の結果から、A層(Ti1-xaMaxa1-yaya)におけるMcは、Cr、NbおよびWとすることができることが分かる。さらに試料No.11〜No.16の結果から、A層はyaがA層の厚さ方向において傾斜状またはステップ状に変化する領域を含むことが好ましいといえる。
<実施例3:C層の組成の検討>
(試料No.18〜22の製造)
cBN焼結体Aの代わりにcBN焼結体Dを用いる以外は実施例1と同様にして基材1を得、表6に示す組成および構成のD層40、C層30、B層20およびA層10をこの順に積層して被膜100を形成する以外は、実施例2と同様にして試料No.18〜22に係る被覆cBN工具を得た。
Figure 0006253112
<評価>
以上のようにして得られた試料No.18〜No.22係る被覆cBN工具の切削性能と仕上げ面粗さを実施例1と同様にして焼入鋼の連続切削により評価した。結果を表6に示す。表6に示すように、試料No.18〜No.22ではC層30の組成がそれぞれ異なっている。
(結果と考察)
No.18〜No.22を比較するとC層30の組成を除いてはいずれも同様の構成を有するにも関わらず、試料No.19のみが加工精度において劣る結果となった。この理由は、試料No.19におけるC層はCrを含んでいないため(すなわちxcが0.2未満)、C層が境界摩耗の発達を十分に阻止できなかったからであると考えられる。
<実施例4:C層の厚さの検討>
(試料No.23の製造)
(基材の形成)
cBN焼結体Aの代わりにcBN焼結体Eを用いる以外は実施例1と同様にして基材1を得た。
(被膜の形成)
以下のように図2を参照して、基材1上にC層の上にA層を有する積層単位を2つ含む被膜200を形成した。
基材1上に第1のC層31として厚さ0.05μmのAl0.8Cr0.2N層を形成した。続いてこの上に第1のB層21として、厚さ0.1μmのAl0.5Ti0.3Cr0.2N層を
形成した。さらにこの上に第1のA層11として、厚さ0.3μmであり、式Ti1-xaMaxa1-yayaにおけるyaが被膜の厚さ方向において傾斜状またはステップ状に変化する領域を含むTiCN*01層を形成した。これにより第1の積層単位51を形成した。
次に第1の積層単位51上に、前述の厚さ0.1μmのAl0.5Ti0.3Cr0.2N層を
形成した後、この上に第1の積層単位51と同様の構成を有する第2の積層単位52を形成した。すなわちC層の上にA層を有する積層単位を2つ含む被膜を形成した。以上のようにして試料No.23に係る被覆cBN工具を得た。試料No.23の構成を表7に示す。なお表7中、第1の積層単位と第2の積層単位の間のB層(Al0.5Ti0.3Cr0.2
N層)の記載は省略している。以下同様に各積層単位の間に形成されたB層については表中の記載を省略する。また表7中、「積層単位数」とはC層の上にA層を有する積層単位の数を示す(以下同様とする。)。
Figure 0006253112
(試料No.24〜27の製造)
表7に示すように第1の積層単位51および第2の積層単位52においてC層の厚さを変更する以外は、試料No.23と同様して試料No.24〜27に係る被覆cBN工具を得た。
<評価>
以上のようにして得られた試料No.23〜27に係る被覆cBN工具の切削性能と仕上げ面粗さを実施例1と同様にして焼入鋼の連続切削により評価した。結果を表7に示す。
(結果と考察)
試料No.23は、C層の厚さ以外は同様の被膜構成を有する試料No.24〜No.26と比較して加工精度にやや劣る結果となった。この理由はC層の厚さがやや薄いため、境界摩耗の発達がその他に比して大きくなったと考えられる。また試料No.27はその他と比較して摩耗量がやや多い結果となった。この理由はC層の厚さがやや厚いため、逃げ面摩耗の進行が早まったためと考えられる。したがってこれらの結果から、C層は0.1μm以上1.0μm以下の厚さを有することが好ましく、0.11μm以上0.9μm以下の厚さを有することがより好ましいといえる。
<実施例5:B層の構成の検討>
(試料No.29〜33の製造)
cBN焼結体Aの代わりにcBN焼結体Hを用いる以外は実施例1と同様にして基材1を得、表8に示す組成および構成のD層40、C層30、B層20およびA層10をこの順に積層して被膜100を形成する以外は、実施例2と同様にして試料No.29〜No.33に係る被覆cBN工具を得た。表8に示すように、試料No.29〜No.33ではB層20において、B層の厚さ、B1層およびB2層の厚さならびに層数がそれぞれ異なっている。
Figure 0006253112
(試料No.28の製造)
B層20を形成せず、C層30上に直接A層10を形成する以外は、試料No.29〜No.33と同様にして、試料No.28に係る被覆cBN工具を得た。
<評価>
以上のようにして得られた試料No.28〜33に係る被覆cBN工具の切削性能と仕上げ面粗さを実施例1と同様にして焼入鋼の連続切削により評価した。結果を表8に示す。
試料No.28ではA層10とC層30との密着性が低く、A層10とC層30との間で剥離が発生した。また試料No.29では剥離は発生しなかったが、逃げ面摩耗量が大きい結果となった。B層20の厚さが薄いためA層10とC層30との密着性の悪さに起因して摩耗の進行が早まったからであると考えられる。また試料No.33も逃げ面摩耗量が大きい結果となった。この理由はB層20の厚さが厚いためであると考えられる。
これらの結果から、被膜はA層とC層との間にB層を含むことが好ましく、B層は、TiNから構成されるB1層と、AlCrNから構成されるB2層とが交互にそれぞれ1層以上積層されてなる多層構造を含み、B1層およびB2層の厚さはそれぞれ0.5nm以上30nm未満であることが好ましいといえる。
<実施例6:積層単位の検討(1)>
(試料No.34の製造)
cBN焼結体Aの代わりにcBN焼結体Hを用いる以外は実施例1と同様にして基材1を得、基材1上に、表9に示す組成および構成の第1のC層31、第1のB層21および第1のA層11をこの順に積層して被膜200を形成することにより、試料No.34に係る被覆cBN工具を得た。試料No.34においてC層の上にA層を有する積層単位は1つである。
Figure 0006253112
(試料No.35の製造)
試料No.34と同様にして第1のA層11を形成した後、第1のA層11上に、密着層としてB0層(厚さ0.1μm)を形成し、さらにその上に表10に示す第2の積層単
位52を形成することにより、試料No.35に係る被覆cBN工具を得た。試料No.35においてC層の上にA層を有する積層単位は1つである。
Figure 0006253112
(試料No.36の製造)
表9〜表11に示すように、基材1上に第1の積層単位51、第2の積層単位52および第3の積層単位53をこの順に形成することにより、試料No.36に係る被覆cBN工具を得た。なお各積層単位の間にはB0層(厚さ0.1μm)を形成し、A層とC層と
を密着させた。
Figure 0006253112
<評価>
以上のようにして得られた試料No.34〜36に係る被覆cBN工具の切削性能と仕上げ面粗さを実施例1と同様にして焼入鋼の連続切削により評価した。結果を表11に示
す。
さらに実施例6では次のようにして各試料の面粗度寿命を評価した。
(面粗度寿命の測定)
寿命判定基準をRz=3.2μmとして、高精度加工における面粗度寿命を測定した。すなわち上記の切削条件で切削距離500mの加工を1セットとして繰り返し加工を行ない、1セットの加工が終了する度に表面粗さ計を使用して被削材の面粗さRzjisを測定し、Rzjisが3.2μmを超えた時点で試験終了とした。そして500m×セット回数から総切削距離(km)を算出した。さらに、Rzjisを縦軸、切削距離を横軸とする散布図を作成し、該散布図上において終了点と終了直前の点との2点を結ぶ直線上で、Rzが3.2μmに達する切削距離を面粗度寿命とした。その結果を表11に示す。
(結果と考察)
表9〜表11に示すように、試料No.34〜No.36において被膜の最表面から最も被膜の最表面側に位置するC層までの構成は同一である。そのため3km切削した時点での耐摩耗性および加工精度はほぼ同等であった。
面粗度寿命の評価では各試料の有する積層単位の数に対応して面粗度寿命が長くなる傾向が確認された。特にNo.35とNo.36を比較するとNo.36は被膜の厚さが薄いにも関わらず、No.35よりも面粗度寿命が長い結果となった。したがって面粗度寿命の観点から、被膜は複数のA層と複数のC層とを含み、C層の上にA層を有する積層単位を2つ以上含むことが好ましく、該積層単位を3つ以上含むことがより好ましいといえる。
<実施例7:積層単位の検討(2)>
(試料No.37〜No.40の製造)
cBN焼結体Aの代わりにcBN焼結体Cを用いる以外は実施例1と同様にして基材1を得、基材1上に表12〜表15に示す各積層単位をこの順で積層することにより、試料No.37〜No.40に係る被覆cBN工具を得た。なお各積層単位の間には密着層としてB0層(厚さ0.1μm)を形成した。なおまた、表15では試料No.37の積層
単位数を1つとしている。これは、試料No.37は第1の積層単位においてC層を有していないため(表12)、C層の上にA層を有する積層単位としては1つであることを示している。
Figure 0006253112
Figure 0006253112
Figure 0006253112
Figure 0006253112
<評価>
以上のようにして得られた試料No.37〜No.40に係る被覆cBN工具の切削性能、仕上げ面粗さおよび面粗度寿命を実施例6と同様にして焼入鋼の連続切削により評価した。結果を表15に示す。
(結果と考察)
表12〜表15に示すように、試料No.37〜No.40はいずれも被膜の最表面から最も最表面側のC層までの構成は同じである。そのため3km切削した時点での耐摩耗性および加工精度はほぼ同等であった。また実施例6と同様に積層単位が多くなる程、面粗度寿命が長くなる傾向が確認された。
またNo.37〜No.40の結果から、同一の積層単位を繰り返すのではなく、各積層単位のそれぞれでA層の厚さや組成を変化させた場合であっても、各積層単位に含まれるA層がTi1-xaMaxa1-yaya(ただし、MaはCr、NbおよびWの1種以上であり、xaは0≦xa≦0.7であり、yaは0≦ya≦1である)から構成され、C層がAl1-(xc+yc)CrxcMcycN(ただし、McはTi、VおよびSiの1種以上であり、
xcは0.2≦xc≦0.8であり、ycは0≦yc≦0.6であり、かつxc+ycは0.2≦xc+yc≦0.8である)から構成される限り、優れた加工精度と面粗度寿命が実現できることが確認できた。
<実施例8:cBN焼結体の検討>
(試料No.41〜No.46の製造)
表16〜表18に示すように、cBN焼結体Aの代わりにcBN焼結体B〜G用いる以外は実施例1と同様にして基材1を得、基材1上に表16〜表18に示す各積層単位をこの順で積層した被膜200を形成することにより、試料No.41〜No.46に係る被覆cBN工具を得た。なお各積層単位の間には密着層としてB0層(厚さ0.1μm)を
形成した。
Figure 0006253112
Figure 0006253112
Figure 0006253112
<評価>
以上のようにして得られた試料No.41〜No.46に係る被覆cBN工具の切削性能、仕上げ面粗さおよび面粗度寿命を実施例6と同様にして焼入鋼の連続切削により評価した。結果を表18に示す。
(結果と考察)
表16〜表18に示すように試料No.41〜No.46において被膜200の構成は同一であるため、3km切削した時点での耐摩耗性および加工精度はほぼ同等であった。一方、面粗度寿命については結果に差異が現れた。すなわち、cBN粒子の体積含有率が50体積%以上60体積%以下である焼結体を用いた試料は、その他の試料に比して面粗度寿命が長い結果となった。この結果は基材を構成するcBN焼結体の耐摩耗性および耐欠損性が影響したものと考えることができる。
<実施例9:積層単位におけるB層の検討>
表19〜21に示すように各積層単位においてA層とC層との間にB層を形成せず、かつ各積層単位の間にB0層を形成しないことを除いては上記試料No.36と同様にして
試料No.47に係る被覆cBN工具を得た。
Figure 0006253112
Figure 0006253112
Figure 0006253112
<評価>
以上のようにして得られた試料No.47に係る被覆cBN工具の切削性能、仕上げ面粗さおよび面粗度寿命を実施例6と同様にして焼入鋼の連続切削により評価した。結果を表21に示す。
(結果と考察)
表19〜表21に示すように、試料No.47では面粗度寿命の測定の際に剥離が発生した。この結果から各積層単位においてA層とC層との間にはB層を配置することが好ましいことが分かる。
以上の結果から、cBN焼結体と、その上に形成された被膜とを備え、被膜はA層とC層とを含み、A層はTi1-xaMaxa1-yaya(ただし、MaはCr、NbおよびWの1種以上であり、xaは0≦xa≦0.7であり、yaは0≦ya≦1である)から構成され、C層はAl1-(xc+yc)CrxcMcycN(ただし、McはTi、VおよびSiの1種以
上であり、xcは0.2≦xc≦0.8であり、ycは0≦yc≦0.6であり、かつxc+ycは0.2≦xc+yc≦0.8である)から構成され、A層は被膜の最表面または被膜の最表面とC層との間に形成され、被膜の最表面とC層の上面との距離は0.1μm以上1.0μm以下である、実施例に係る被覆cBN工具は優れた加工精度と耐摩耗性を有することが確認できた。
以上のように本実施形態および実施例について説明を行なったが、上述した各実施形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 基材
10 A層
11 第1のA層
12 第2のA層
13 第3のA層
14 第4のA層
20 B層
21 第1のB層
22 第2のB層
23 第3のB層
24 第4のB層
30 C層
31 第1のC層
32 第2のC層
33 第3のC層
34 第4のC層
40 D層
51 第1の積層単位
52 第2の積層単位
53 第3の積層単位
54 第4の積層単位
100,200 被膜
101,201 被覆cBN工具
S1 最表面
S2 上面
d 距離

Claims (10)

  1. 立方晶窒化硼素焼結体と、その上に形成された被膜とを備え、
    前記被膜はA層とC層とを含み、
    前記A層は、Ti1-xaMaxa1-yaya(ただし、MaはCr、NbおよびWの1種以上であり、xaは0≦xa≦0.7であり、yaは0≦ya≦1である)から構成され、
    前記C層は、Al1-(xc+yc)CrxcMcycN(ただし、McはTi、VおよびSiの1種以上であり、xcは0.2≦xc≦0.8であり、ycは0≦yc≦0.6であり、かつxc+ycは0.2≦xc+yc≦0.8である)から構成され、
    前記C層は、0.11μm以上1.0μm以下の厚さを有し、
    前記A層は、前記被膜の最表面または前記被膜の前記最表面と前記C層との間に形成され、
    前記被膜の前記最表面と前記C層の上面との距離は、0.1μm以上1.0μm以下であり、
    前記被膜は、前記A層と前記C層との間にB層をさらに含み、
    前記B層は、Al、CrおよびTiからなる群より選ばれる1種以上の元素と、Nとから構成される1種以上の化合物を含み、
    前記B層は、TiNから構成されるB1層と、AlCrNから構成されるB2層とが交互にそれぞれ1層以上積層されてなる多層構造を含み、
    前記B1層および前記B2層の厚さは、それぞれ0.5nm以上30nm未満である、表面被覆窒化硼素焼結体工具。
  2. 立方晶窒化硼素焼結体と、その上に形成された被膜とを備え、
    前記被膜はA層とC層とを含み、
    前記A層は、Ti 1-xa Ma xa 1-ya ya (ただし、MaはCr、NbおよびWの1種以上であり、xaは0≦xa≦0.7であり、yaは0≦ya≦1である)から構成され、
    前記C層は、Al 1-(xc+yc) Cr xc Mc yc N(ただし、McはTi、VおよびSiの1種以上であり、xcは0.2≦xc≦0.8であり、ycは0≦yc≦0.6であり、かつxc+ycは0.2≦xc+yc≦0.8である)から構成され、
    前記C層は、0.11μm以上1.0μm以下の厚さを有し、
    前記A層は、前記被膜の最表面または前記被膜の前記最表面と前記C層との間に形成され、
    前記被膜の前記最表面と前記C層の上面との距離は、0.1μm以上1.0μm以下であり、
    前記A層は、前記yaが前記A層の厚さ方向において傾斜状またはステップ状に変化する領域を含む、表面被覆窒化硼素焼結体工具。
  3. 前記被膜の前記最表面と前記C層の前記上面との距離は、0.3μm以上0.7μm以下である、請求項1または請求項2に記載の表面被覆窒化硼素焼結体工具。
  4. 前記被膜は、複数の前記A層と、複数の前記C層とを含み、
    前記C層の上に前記A層を有する積層単位を2つ以上含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表面被覆窒化硼素焼結体工具。
  5. 前記被膜は、前記A層と前記C層との間にB層をさらに含み、
    前記B層は、Al、CrおよびTiからなる群より選ばれる1種以上の元素と、Nとから構成される1種以上の化合物を含む、請求項2に記載の表面被覆窒化硼素焼結体工具。
  6. 前記B層は、TiNから構成されるB1層と、AlCrNから構成されるB2層とが交互にそれぞれ1層以上積層されてなる多層構造を含む、請求項5に記載の表面被覆窒化硼素焼結体工具。
  7. 前記B1層および前記B2層の厚さは、それぞれ0.5nm以上30nm未満である、請求項6に記載の表面被覆窒化硼素焼結体工具。
  8. 前記B層は、AlTiCrNから構成される化合物を含む、請求項5に記載の表面被覆窒化硼素焼結体工具。
  9. 前記立方晶窒化硼素焼結体と接する層は、前記C層である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の表面被覆窒化硼素焼結体工具。
  10. 前記被膜は、0.5μm以上10μm以下の厚さを有する、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の表面被覆窒化硼素焼結体工具。
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