JP6252933B2 - 構造体ならびにこれを用いた細菌の捕集および検出方法 - Google Patents
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Description
こうした病原性細菌による食中毒事故は、発展途上国ばかりでなく先進国でも大きな社会問題となっている。これは、どこででも簡便に細菌を検出できる要素技術が、開発されていないためである。
一方、蛍光染色を用いる観察技術として、技術分野は異なるが、非特許文献1に記載のものがある。非特許文献1には、ガン細胞に結合する抗体を結合させた二種類の蛍光シリカナノ粒子(Fluorescent silica nanoparticles:FSiNPs)を用いてガン細胞を免疫二重染色する技術が記載されている。
ナノ粒子と、
前記ナノ粒子上に固定化されている、複数の細菌表面認識部位と、
を含み、前記細菌表面認識部位が、前記細菌と相互作用する官能基と、前記細菌との相互作用により光応答性を示す官能基と、を含み、前記細菌表面認識部位を介して細菌を連結捕集する、構造体が提供される。
また、本発明によれば、
ナノ粒子と、
前記ナノ粒子上に固定化されている、複数の細菌表面認識部位と、
を含み、前記細菌表面認識部位が、ジピコリルアミン/金属錯体、イミノ二酢酸/金属錯体、フェニルボロン酸基およびグアニジノ基からなる群から選択される一種以上を含み、前記細菌表面認識部位を介して細菌を連結捕集する、構造体が提供される。
また、本発明によれば、前記本発明における構造体を前記細菌に接触させて、前記細菌を前記構造体とともに凝集させるステップと、
細菌を構造体とともに凝集させる前記ステップにおける凝集物の形成の有無を検知するステップと、
を含む、細菌の検出方法が提供される。
たとえば、本発明によれば、細菌を連結捕集する細菌捕集材料、あるいは、細菌を連結捕集し検出する細菌検出材料としての、前記本発明における構造体の使用が提供される。
また、本発明によれば、細菌を連結捕集する細菌捕集材料、あるいは、細菌を連結捕集し検出する細菌検出材料の製造のための、前記本発明における構造体の使用が提供される。
図2において、細菌102に構造体100を添加すると、構造体100に含まれる複数の細菌表面認識部位103がそれぞれ細菌102の表面に結合して細菌102を連結捕集し、複数の構造体100と複数の細菌102とを含む凝集体104が形成される。
一方、細菌102をより一層迅速に連結捕集する観点から、構造体100の粒子径は、たとえば300nm以下、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下である。
構造体100において、ナノ粒子101は細菌を捕集するための基材として機能する。ナノ粒子101は、ナノメートルオーダーのサイズを有する粒状の材料により構成される。ナノ粒子101は、一種の材料から構成されていても二種以上の材料から構成されていてもよい。
また、ナノ粒子101は、一様な断面構造を有していてもよいし、コア−シェル構造等の複数の異なる構造領域を有していてもよい。また、ナノ粒子101は中空粒子および中実粒子のいずれであってもよく、またゲル粒子等の網目構造を有する粒子であってもよい。
ポリスチレン等の有機材料から構成される粒子;
ポリアミドアミンデンドリマー等のデンドリマー;
金コロイド、銀コロイド等の金属コロイド;ならびに
コロイド状の量子ドット等の半導体結晶から構成される粒子が挙げられる。
さらに具体的には、ナノ粒子101が、シリカナノ粒子、デンドリマー、金コロイドおよび量子ドットからなる群から選択される一種以上を含む構成が挙げられる。
一方、細菌102をより一層迅速に連結捕集する観点から、ナノ粒子101の粒子径は、たとえば300nm以下、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下である。
なお、ナノ粒子101および構造体100の粒子径は、たとえば数平均であり、複数のナノ粒子101の顕微鏡観察により得られる画像から各粒子の粒子径を測定することにより算出できる。
また、ナノ粒子101の粒子径または構造体100の粒子径は、捕集対象である細菌102の形状、大きさ、性質等に応じて決めることもできる。
また、検出感度をさらに向上させる観点からは、蛍光物質を用いることがさらに好ましく、このときナノ粒子101をたとえば蛍光シリカナノ粒子(FSiNP)とする。
発光物質または発色物質を粒子に内包させると、構造体100が捕集した細菌102をたとえば目視等の視覚により容易に検知することができるため、細菌102の捕集の有無や、捕集した細菌102の存在位置を、より一層簡便で感度良く検知することができる。
[Ru(bpy)3]Cl2(トリス(ビピリジン)ルテニウム(II)錯体)等のビピリジン系金属錯体化合物およびその塩、水和物;
フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate:FITC)等のフルオレセイン;
ピレン;
アントラセン;
ナフタレン;
ローダミン;
4−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(4-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazole:NBD);
クマリン;
Cy色素等のシアニン系化合物;
ポルフィリン;ならびにこれらの誘導体を用いることができる。
また、凝集体104の検出感度を向上させる観点からは、ナノ粒子101に対する発光物質の割合を重量比でたとえば100%以下、好ましくは80%以下とする。なお、ナノ粒子101が発光物質により構成されていてもよく、このような材料として、量子ドットなどの半導体結晶が挙げられる。
細菌表面認識部位103は、細菌102の表面を認識する部位を含む。具体的には、細菌表面認識部位103は、細菌表面の所定の部位、官能基等と物理的または化学的に相互作用する部位であり、細菌表面の特定の部位と特異的に相互作用することが好ましい。
細菌表面認識部位103の具体例として、ジピコリルアミン(dipicolylamine:dpa)/金属錯体、イミノ二酢酸/金属錯体、フェニルボロン酸基およびグアニジノ基からなる群から選択される一種以上を含む構成が挙げられる。
このうち、たとえばdpa/金属錯体を用いることにより、構造体100が細菌表面のリン酸基を認識する構成とすることができる。dpa/金属錯体として、dpa/Cu錯体、dpa/Zn錯体等が挙げられる。
光応答性の官能基として、細菌表面に結合して発色、蛍光応答を示す官能基が挙げられる。
細菌表面認識部位103に導入する蛍光物質として、7−ヒドロキシクマリン−3−カルボン酸(7-hydroxycoumarin-3-carboxylic acid:HCC)およびその誘導体;8-(2,2' −ジピコリルアミノメチル) −7−ヒドロキシクマリン−3−カルボン酸((2,2'-dipicolylaminomethyl)-7-hydroxycoumarin-3-carboxylic acid)等が挙げられる。
また、ナノ粒子中の発光または発色物質として前述した例示物質を用いることもできる。このとき、細菌表面認識部位103に導入する蛍光物質として、ナノ粒子中の発光または発色物質と異なる発光または発色波長を有するものを用いることが好ましい。
細菌表面認識部位103において、細菌102との結合部位と光応答性を示す官能基との組み合わせの具体例として、dpa/金属錯体とHCC由来の官能基との組み合わせ、フェニルボロン酸とHCC由来の官能基との組み合わせが挙げられる。
また、スペーサーとして親水性材料を用いることにより、ナノ粒子101の表面が親水性のスペーサー分子で覆われるため、ナノ粒子101の水分散性を高めたり、構造体100が捕集対象である細菌以外の材料に非特異的に吸着することを抑制したりすることができる。
また、スペーサーとして、アルキル鎖やエチレングリコール鎖等の鎖状分子;
アゾベンゼン等を用いてもよい。
次に、構造体100の製造方法を説明する。
本実施形態において、構造体100の製造方法は、たとえば、
ナノ粒子101を準備するステップと、
ナノ粒子101の表面に細菌表面認識部位103を導入するステップと、
を含む。
たとえば、ナノ粒子101として金属または金属酸化物の粒子を用いる場合、化学気相析出法、物理気相析出法等の気相法、金属アルコキシド法、共沈法、逆ミセル法、噴霧法等の溶液法などを用いることができる。
また、ナノ粒子101がシリカ粒子である場合、疎水性溶媒、界面活性剤およびアルキル水溶液により形成される逆ミセル内で、テトラエトキシシラン等の金属アルコキシドを加水分解、重合する逆ミセル法(非特許文献1);および
シリコンアルコキシド、アルコールおよびアンモニア水を室温付近の温度で混合してアルコキシドの加水分解縮合反応によりシリカ微粒子を得るストーバー法等が挙げられる。ナノ粒子101の粒径のばらつきを抑制しつつ分散安定性を向上させる観点からは、逆ミセル法が好ましい。
たとえば、ナノ粒子101をシリカナノ粒子とする場合、たとえば前述した逆ミセル法において、疎水性溶媒中にあらかじめ蛍光物質等を添加しておくことにより、得られるシリカ粒子内に蛍光物質を含ませることができる。
粒子表面に導入する官能基は、細菌表面認識部位103またはスペーサーに含まれる官能基との結合に用いることができる。たとえば、細菌表面認識部位103またはスペーサーに含まれる、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、水酸基等を利用するとき、これらの基との反応に用いられる官能基を有するカップリング剤で粒子を処理する。
さらに具体的には、細菌表面認識部位103またはスペーサーに含まれるカルボキシル基と結合させようとする場合、粒子を3−アミノプロピルエトキシシラン(APS)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤の溶液に浸漬し、表面処理する。
また、ナノ粒子101が金コロイド粒子であるとき、たとえば、チオール基および細菌表面認識部位103との結合に用いられる官能基を有するカップリング剤で粒子の表面を処理すると、金−チオール結合により、ナノ粒子101の表面に細菌表面認識部位103との結合に用いられる官能基を導入することができる。
固定化方法は、固定化反応に用いられる官能基の種類により選択される。たとえば、ナノ粒子101または細菌表面認識部位103の一方に含まれるアミノ基と他方に含まれるカルボキシル基とを用いる場合、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルフォリニウムクロライドn−ハイドレート(DMT−MM)等のトリアジン系の縮合剤;ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)等のカルボジイミド系の縮合剤、などが用いられる。
なお、固定化の際には必要に応じて、N−ヒドロキシスクシンイミド、p−ニトロフェノール、ペンタフルオロフェノール等の活性エステル類を併用してもよい。
また、ナノ粒子101と細菌表面認識部位103との間にスペーサーを設ける場合には、ナノ粒子101または細菌表面認識部位103の一方とスペーサーの片末端とを結合させた後、ナノ粒子101または細菌表面認識部位103の他方とスペーサーの他末端とを結合させる。
図3は、得られる構造体100の具体例を示す図である。図3に示した構造体100は、ナノ粒子101がFSiNPであって、細菌表面認識部位103が蛍光性のHCCと細菌表面のリン酸基との相互作用に用いられるdpaとを有する例(dpa−HCC/FSiNP複合材料)である。
また、図4は、dpa−HCC/FSiNP複合材料において細菌を認識させる方法を説明する図である。図3に示したdpa−HCC/FSiNP複合材料中のdpa部分は、図4に示すように、所定の金属イオン(2価:図4中の「M2+」)の錯体とすることにより、細菌表面のリン酸基を認識する官能基となる。
また、dpa−HCC/FSiNP複合材料のように、ナノ粒子101または細菌表面認識部位103の少なくとも一方に蛍光物質または蛍光を発する官能基を設けると、たとえば蛍光強度を測定し、相対値を算出することにより、細菌102の定量的な測定をおこなうことも可能となる。
次に、得られた構造体100を用いて細菌を捕集または検出する方法を説明する。
図2を参照して前述したように、本実施形態における細菌102の捕集方法は、たとえば、構造体100を細菌102に接触させて、細菌102を構造体100とともに凝集させるステップ(ステップ10)を含む。
また、細菌102の種類に制限はなく、たとえば
大腸菌等の腸菌、緑膿菌等、その他のグラム陰性菌;および
黄色ブドウ球菌等のブドウ球菌、その他のグラム陽性菌が挙げられる。
また、構造体100を細菌102に接触させるステップにおいて、構造体100の濃度は、凝集体104を効率よく形成する観点から、たとえばFSiNpを基準にすると5μg/mL以上とする。また、細菌102とより安定的に相互作用させる観点からは、構造体100の濃度をたとえばFSiNpを基準にすると100μg/mL以下とする。
構造体100を細菌102に接触させて、細菌102を構造体100とともに凝集させるステップ(ステップ10)、ならびに
ステップ10における凝集物の形成の有無を検知するステップ(ステップ12)、を含む。
本実施形態において、構造体100は、細菌表面の官能基を多点で認識して細菌102を連結捕集するように構成されているため、構造体100は、細菌102を認識して捕集することができる新規の人工の分子として用いられる。
そして、本実施形態における細菌102を連結捕集する技術を用いれば、細菌102を大きな固まり(凝集体104)として簡便、迅速に捕集することができる。たとえば、細菌102を10分以内、好ましくは5分以内で凝集させて、捕集することができる。また、細菌102を含む試料に構造体100を添加して凝集体104を形成することにより、細菌102を試料から簡便に分離することも可能となる。
また、構造体100を用いることにより、細菌同士を連結させて捕集できるため、除菌技術として利用することも可能となる。これにより、院内感染予防や食品や飲料水の安全衛生管理などに構造体100を用いることも可能となる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. ナノ粒子と、
前記ナノ粒子上に固定化されている、複数の細菌表面認識部位と、
を含み、前記細菌表面認識部位を介して細菌を連結捕集する、構造体。
2. 前記ナノ粒子の粒子径が10nm以上200nm以下である、1.に記載の構造体。
3. 前記ナノ粒子が水に分散可能である、1.または2.に記載の構造体。
4. 前記細菌表面認識部位が、前記細菌と相互作用する官能基と、前記細菌との相互作用により光応答性を示す官能基と、を含む、1.乃至3.いずれか一項に記載の構造体。
5. 前記細菌表面認識部位が、ジピコリルアミン/金属錯体、イミノ二酢酸/金属錯体、フェニルボロン酸基およびグアニジノ基からなる群から選択される一種以上を含む、1.乃至4.いずれか一項に記載の構造体。
6. 前記ナノ粒子が、シリカナノ粒子、デンドリマー、金コロイドおよび量子ドットからなる群から選択される一種以上を含む、1.乃至5.いずれか一項に記載の構造体。
7. 前記ナノ粒子が、発光物質および発色物質からなる群から選択される一種以上を内包する前記シリカナノ粒子である、6.に記載の構造体。
8. 前記細菌表面認識部位が、スペーサーを介して前記ナノ粒子に固定化された、1.乃至7.いずれか一項に記載の構造体。
9. 1.乃至8.いずれか一項に記載の構造体を前記細菌に接触させて、前記細菌を前記構造体とともに凝集させるステップを含む、細菌の捕集方法。
10. 1.乃至8.いずれか一項に記載の構造体を前記細菌に接触させて、前記細菌を前記構造体とともに凝集させるステップと、
細菌を構造体とともに凝集させる前記ステップにおける凝集物の形成の有無を検知するステップと、
を含む、細菌の検出方法。
本例では、図3に示したdpa−HCC/FSiNP複合体を作製した。FSiNP中に含まれる蛍光物質をRu(bpy)3とした。
以下のスキームに従い、[RuII(bpy)3]Cl2・6H2O(以下、「[Ru(bpy)3]Cl2・6H2O」ともいう。)を合成した。
蛍光色素として[Ru(bpy)3]2+を包接した蛍光シリカナノ粒子を逆ミセル法(図6)により合成した。
シクロヘキサン22.5cm3、Triton X−100 5.4cm3、1−ヘキサノール5.4cm3の混合溶液に、0.02M[Ru(bpy)3]水溶液1.50cm3を少しずつ加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散させた後、スターラーおよびスターラーチップを用いて室温で撹拌した(図7)。1時間後、テトラエトキシシラン(TEOS)0.60cm3、30%アンモニア水1.80cm3を加え、室温で24時間撹拌を続けた。その後、反応液にアセトン1.0cm3を加えて反応を終了させたところ、赤色透明であった反応液が懸濁した。懸濁液を遠心分離(10000rpm、10min)し、アセトン(2回)、エタノール(2回)、超純水(2回)でデカンテーションし粒子を洗った(図8)。
得られた粒子を以下のスキームに沿ってシランカップリング剤処理し、粒子表面にアミノ基を導入した。
以下のスキームに沿って、dpa−HCCを合成した。
1H NMR測定結果およびこれによる同定結果を図9および表3に示す。また、元素分析による同定結果を表4に示す。
以下のスキームに沿って、粒子表面のアミノ基を介してdpa−HCCを粒子に固定化した。
本例では、実験例1で得られた粒子を用いて細菌(黄色ブドウ球菌:Staphylococcus aureus(S.a.))の捕集および検出をおこなった。
LB寒天培地用試薬の調製は以下の手順でおこなった。すなわち、Bacto-triptone(BD社製)10g、Bacto-yeast-extract(BD社製)5g、NaCl 10gをポリタンクに入れ、全量を1Lとし、室温でよく撹拌した。この溶液をAgar(和光純薬工業社製、細菌培地用)7.5gの入った三角フラスコに500mL加え、同じものをもう1つ調製した。
また、以下の手順でLBプレートを作製した。すなわち、溶液をオートクレーブに1hrかけ、液体滅菌を行った。その後、70〜60℃まで放冷させた。この時、寒天が底に沈殿している場合もあるので軽くゆすった。溶液が冷めないうちにシャーレに入れ、固まらせた。
細菌の培養は以下のようにした。白金耳をアルコール消毒し、炎であぶって殺菌した。冷凍してある黄色ブドウ球菌の表面をつついて一部をとり、プレートの寒天培地を傷つけないように線描した。線描した部分をさらに引き伸ばすように数回おこない、適当な間隔でコロニーが形成できるようにした。これを24hrインキュベートした。
その後、50cm3のファルコンチューブに10cm3のLB培地を加えた。これに、培養した細菌の1つのコロニーを爪楊枝でつつき、溶液にとかした。これを24hrインキュベートした。なお、この操作においても、アルコールおよびガスバーナーでの殺菌をおこなった。
培養した溶液(原液)を1/10倍に希釈に、600nmで吸光度測定を行った。換算係数から算出されたS.a.の菌数は3.65×109個であった。
実験例1で得られた構造体の分散液およびその各種金属錯体(以下、これらを「プローブ」ともいう。)とS.a.との応答を見るため、6種類の液体試料を調製した。液体試料の全量は100μL(プローブ50μL+S.a.50μL)であり、そのうち10μを観察に使用した。
(試料1:図10のA群に使用) dpa−HCC/FSiNP、Buffer、DAPI
(試料2:図10のB群に使用) Zn−dpa−HCC/FSiNP、Buffer、DAPI
(試料3:図11のC群に使用) Cu−dpa−HCC/FSiNP、Buffer
(試料4:図11のD群に使用) Cu−dpa−HCC/FSiNP、Buffer、DAPI
Buffer:LB培地から取り出した菌を遠心分離器により沈殿させ、溶液をBuffer(5mM HEPES(pH=7.3)/0.1M NaCl)で洗浄したもの。洗浄は3回行った。
DAPI:4',6-Diamidino-2-phenylindole dihydrochloride、励起波長360nm、蛍光波長460nm。
dpa−HCC/FSiNP:dpa−HCC/FSiNP複合体1mg、5mM HEPES(pH=7.3)、0.1M NaCl
Zn−dpa−HCC/FSiNP:dpa−HCC/FSiNP複合体1mg、5mM HEPES(pH=7.3)、5mM Zn(NO3)2、0.1M NaCl
Cu−dpa−HCC/FSiNP:dpa−HCC/FSiNP複合体1mg、5mM HEPES(pH=7.3)、5mM Cu(NO3)2、0.1M NaCl
結果を図10および図11に示す。図10および図11中のスケールバーは50μmを示す。
図10のA群およびB群、ならびに、後述する図11のC群およびD群において、4つの像は、左から順に、微分干渉顕微鏡(Differential interference contrast:DIC)像、FSiNPによる蛍光染色像、(DAPIによる核染色時の)蛍光観察像、および、これらの像のマージ(重ね合わせ)である。
図10より、S.a.にdpa−HCC/FSiNP complexを加えても凝集は見られなかった(A群)。一方、Zn−dpa−HCC/FSiNP complexを添加すると(B群)、凝集が見られた。これは認識部位をM−dpaと金属錯体にすることで、細菌表面のリン酸部位をとらえることができたことを意味する。
また、本発明者の検討により、dpa−HCCを粒子に固定化しない状態での評価において、Cu錯体はZn錯体よりもリン酸誘導体の選択性が高いことが明らかになった。本例において、シリカ粒子に修飾してマクロ構造にしても、同様の傾向が認められる結果となった。
また、図10および図11に示したスケールバーは50μmであり、細菌の凝集体はかなり大きいことがわかった。
本例では、実験例2で用いたCu−dpa−HCC/FSiNPとS.a.との相互作用の経時変化を観察した。
実験例2に準じて、S.a.培地に試料3のCu−dpa−HCC/FSiNPを添加し、0〜10min連続撮影をすることにより、複合体の形成の様子を観察した。
その結果、Cu−dpa−HCC/FSiNPの添加前ではS.aはブラウン運動していた。添加後、ある粒経まで凝集するが、凝集により動きが鈍くなり成長しなくなった。変化が見られなくなったため、懸濁すると再び大きな凝集体を形成した。
この結果より、凝集メカニズムとして、Cu−dpa−HCC/FSiNP添加後、細菌はある小規模の集団を形成し、外部刺激によりさらに大きく成長する。この凝集は3次元のネットワークを形成しており、大きく成長しない限り沈殿しないこともわかった。なお、凝集体は大きいものは肉眼でも観察できた。
本例では、実験例2で用いた試料1(dpa−HCC/FSiNP)および試料3(Cu−dpa−HCC/FSiNP complex)において、各試料濃度を固定するとともにS.a.の濃度を変化させて、凝集体の形成の有無を確認した。
S.a.の濃度(細菌数)は、以下の4種とした。
原液:4.6×109個(波長600nmで吸光度0.6)
1/10:4.6×108個
1/100:4.6×107個
1/1000:4.6×106個
一方、試料3(Cu−dpa−HCC/FSiNP complex)については、すべての細菌濃度において凝集体の形成が認められた。
101 ナノ粒子
102 細菌
103 細菌表面認識部位
104 凝集体
Claims (9)
- ナノ粒子と、
前記ナノ粒子上に固定化されている、複数の細菌表面認識部位と、
を含み、
前記細菌表面認識部位が、前記細菌と相互作用する官能基と、前記細菌との相互作用により光応答性を示す官能基と、を含み、
前記細菌表面認識部位を介して細菌を連結捕集する、構造体。 - ナノ粒子と、
前記ナノ粒子上に固定化されている、複数の細菌表面認識部位と、
を含み、
前記細菌表面認識部位が、ジピコリルアミン/金属錯体、イミノ二酢酸/金属錯体、フェニルボロン酸基およびグアニジノ基からなる群から選択される一種以上を含み、
前記細菌表面認識部位を介して細菌を連結捕集する、構造体。 - 前記ナノ粒子の粒子径が10nm以上200nm以下である、請求項1または2に記載の構造体。
- 前記ナノ粒子が水に分散可能である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の構造体。
- 前記ナノ粒子が、シリカナノ粒子、デンドリマー、金コロイドおよび量子ドットからなる群から選択される一種以上を含む、請求項1乃至4いずれか一項に記載の構造体。
- 前記ナノ粒子が、発光物質および発色物質からなる群から選択される一種以上を内包する前記シリカナノ粒子である、請求項5に記載の構造体。
- 前記細菌表面認識部位が、スペーサーを介して前記ナノ粒子に固定化された、請求項1乃至6いずれか一項に記載の構造体。
- 請求項1乃至7いずれか一項に記載の構造体を前記細菌に接触させて、前記細菌を前記構造体とともに凝集させるステップを含む、細菌の捕集方法。
- 請求項1乃至7いずれか一項に記載の構造体を前記細菌に接触させて、前記細菌を前記構造体とともに凝集させるステップと、
細菌を構造体とともに凝集させる前記ステップにおける凝集物の形成の有無を検知するステップと、
を含む、細菌の検出方法。
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