JP6251545B2 - 加圧焼結装置及び加圧焼結方法 - Google Patents

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Description

本発明は、焼結対象物を加圧した状態で焼結する加圧焼結装置及び加圧焼結方法に関する。
近年、ハイブリッドカーやハードディスクドライブ等に使用される永久磁石モータでは、小型軽量化、高出力化、高効率化が要求されている。そこで、上記永久磁石モータの小型軽量化、高出力化、高効率化を実現するに当たって、モータに埋設される永久磁石について、薄膜化と更なる磁気特性の向上が求められている。
ここで、永久磁石の製造方法としては、例えば粉末焼結法が用いられる。ここで、粉末焼結法は、先ず原材料を粗粉砕し、ジェットミル(乾式粉砕)や湿式ビーズミル(湿式粉砕)により微粉砕した磁石粉末を製造する。その後、その磁石粉末を型に入れて、外部から磁場を印加しながら所望の形状にプレス成形する。そして、所望形状に成形された固形状の磁石粉末を所定温度(例えばNd−Fe−B系磁石では800℃〜1150℃)で焼結することにより製造する(例えば、特開平2−266503号公報)。
ここで、磁石粉末の焼結方法としては一般的な真空焼結以外に、磁石粒子の粒成長の防止等の理由から、磁石粉末の成形体を加圧した状態で焼結する加圧焼結が用いられる(例えば、特開2003−264115号公報)。加圧焼結としては、例えば、ホットプレス焼結、熱間静水圧加圧(HIP)焼結、超高圧合成焼結、ガス加圧焼結、放電プラズマ(SPS)焼結等がある。
また、上記加圧焼結は上述した磁石粉末の焼結以外にも、様々な対象物を対象として行われている。例えば、セラミックス材料、ナノフェーズ材料、生体材料、金型材料、工具材料等がある。
特開平2−266503号公報(第5頁) 特開2003−264115号公報(第4頁)
また、上記加圧焼結を用いて焼結を行う場合には、生産性を向上させる為に複数の焼結対象物(例えば磁石粉末の成形体)を同時に焼結することが望まれている。しかしながら、焼結前の焼結対象物に含まれる原料の量や焼結対象物の形状を、複数の焼結対象物間で完全に同一とすることは困難である。従って、複数の焼結型に設置された各焼結対象物に対して同時に加圧することとすると、焼結型への焼結対象物の充填量によって加圧値にバラツキが生じることとなっていた。例えば図11に示すように、充填量の少ない焼結対象物と充填量の多い焼結対象物を同時に加圧する構成とすると、充填量の多い焼結対象物に対する加圧値が充填量の少ない焼結対象物に対する加圧値よりも高くなる。その結果、充填量の少ない焼結対象物に対する加圧値が必要値より不足する一方で、充填量の多い焼結対象物に対する加圧値が必要以上に高くなり、焼結時に欠損等が生じる虞もある。
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、加圧焼結を用いて焼結を行う場合において、複数の焼結対象物を同時に焼結した場合であっても、各焼結対象物間で加圧値を均一とすることが可能となり、製造効率を上昇させる一方で製品の品質が低下することを防止した加圧焼結装置及び加圧焼結方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る加圧焼結装置は、複数の焼結型を備えた加圧焼結装置であって、前記複数の焼結型は、中空部分を備えるとともに異なる2方向から夫々パンチが挿入されるモールドと、異なる2方向から前記モールド内に挿入されて該モールドの内壁面に沿って移動可能に支持された一対のパンチとからなり、前記複数の焼結型毎に配置された前記一対のパンチに対して同時に荷重を加えることによって、前記複数の焼結型において前記一対のパンチを同時に動させる駆動機構を有し、前記一対のパンチと前記駆動機構との間に、夫々緩衝材を介在させることを特徴とする。
また、請求項に係る加圧焼結装置は、請求項に記載の加圧焼結装置であって、ホットプレス焼結により焼結することを特徴とする。
また、請求項に係る加圧焼結装置は、請求項に記載の加圧焼結装置であって、通電焼結により焼結することを特徴とする。
更に、請求項に係る加圧焼結方法は、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の加圧焼結装置によって、前記焼結型内に設置された焼結対象物を加圧した状態で焼結することを特徴とする。
前記構成を有する請求項1に記載の加圧焼結装置によれば、複数の焼結対象物を同時に焼結した場合であっても、各焼結対象物間で加圧値を均一とすることが可能となる。その結果、製造効率を上昇させる一方で製品の品質が低下することを防止することができる。即ち、充填量の少ない焼結対象物に対する加圧値が必要値より不足することを防止する一方で、充填量の多い焼結対象物に対する加圧値が必要以上に高くなることを防止し、焼結時に欠損等が生じることが無い。
また、請求項に記載の加圧焼結装置によれば、特にホットプレス焼結により焼結する場合において、複数の焼結対象物を同時に焼結した場合であっても、各焼結対象物間で加圧値を均一とすることが可能となる。
また、請求項に記載の加圧焼結装置によれば、特に放電プラズマ焼結等の通電焼結により焼結する場合において、複数の焼結対象物を同時に焼結した場合であっても、各焼結対象物間で加圧値を均一とすることが可能となる。
更に、請求項に記載の加圧焼結方法によれば、複数の焼結対象物を同時に焼結した場合であっても、各焼結対象物間で加圧値を均一とすることが可能となる。その結果、製造効率を上昇させる一方で製品の品質が低下することを防止することができる。即ち、充填量の少ない焼結対象物に対する加圧値が必要値より不足することを防止する一方で、充填量の多い焼結対象物に対する加圧値が必要以上に高くなることを防止し、焼結時に欠損等が生じることが無い。
本発明に係る永久磁石を示した全体図である。 本発明に係る永久磁石の製造工程を示した説明図である。 本発明に係る永久磁石の製造工程の内、特にグリーンシートの成形工程を示した説明図である。 本発明に係る永久磁石の製造工程の内、特にグリーンシートの加熱工程及び磁場配向工程を示した説明図である。 グリーンシートの面内垂直方向に磁場を配向する例について示した図である。 本発明に係る永久磁石の製造工程の内、特に仮焼工程の昇温態様について説明した図である。 焼結装置が備える複数の焼結型を示した図である。 焼結装置の備える複数の焼結型の加圧構造を示した模式図である。 焼結装置の変形例について説明した図である。 焼結装置の変形例について説明した図である。 従来技術の問題点について説明した図である。
以下、本発明に係る加圧焼結装置及び加圧焼結方法について具体化した一実施形態について以下に図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施例では、特に本発明に係る加圧焼結装置及び加圧焼結方法を永久磁石の製造に用いた場合を例に挙げて説明することとする。
[永久磁石の構成]
先ず、本発明に係る加圧焼結装置及び加圧焼結方法によって焼結されることにより製造される永久磁石1の構成について説明する。図1は本発明に係る永久磁石1を示した全体図である。尚、図1に示す永久磁石1は扇型形状を備えるが、永久磁石1の形状は打ち抜き形状によって変化する。
本発明に係る永久磁石1はNd−Fe−B系の異方性磁石である。尚、各成分の含有量はNd:27〜40wt%、B:0.8〜2wt%、Fe(電解鉄):60〜70wt%とする。また、磁気特性向上の為、Dy、Tb、Co、Cu、Al、Si、Ga、Nb、V、Pr、Mo、Zr、Ta、Ti、W、Ag、Bi、Zn、Mg等の他元素を少量含んでも良い。図1は本実施形態に係る永久磁石1を示した全体図である。
ここで、永久磁石1は例えば0.05mm〜10mm(例えば1mm)の厚さを備えた薄膜状の永久磁石である。そして、後述のように圧粉成形により成形された成形体や磁石粉末とバインダーとが混合された混合物(スラリーやコンパウンド)を成形した成形体(以下、グリーン体という)を加圧焼結することによって作製される。
ここで、成形体を焼結する加圧焼結としては、例えば、ホットプレス焼結、熱間静水圧加圧(HIP)焼結、超高圧合成焼結、ガス加圧焼結、放電プラズマ(SPS)焼結等がある。また、加圧焼結を行う際には、圧粉成形により成形された成形体やグリーン体を焼結装置の焼結型内に配置して行う。そして、本発明では、生産性を向上させる為に、後述のように焼結装置が備える複数個(例えば9個)の焼結型に対して複数(例えば9個)の成形体をそれぞれ配置し、同時に焼結する。尚、加圧焼結の詳細については後述する。
また、本発明では特にグリーン体により永久磁石1を製造する場合において、磁石粉末に混合されるバインダーは、樹脂や長鎖炭化水素や脂肪酸エステルやそれらの混合物等が用いられる。
更に、バインダーに樹脂を用いる場合には、構造中に酸素原子を含まず、且つ解重合性のあるポリマーを用いるのが好ましい。また、後述のようにグリーン体を所望形状(例えば蒲鉾型形状)に成形する際に生じたグリーン体の残余物を再利用する為に、熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には以下の一般式(1)に示されるモノマーから選ばれる1種又は2種以上の重合体又は共重合体からなるポリマーが該当する。
Figure 0006251545
(但し、R1及びR2は、水素原子、低級アルキル基、フェニル基又はビニル基を表す)
上記条件に該当するポリマーとしては、例えばイソブチレンの重合体であるポリイソブチレン(PIB)、イソプレンの重合体であるポリイソプレン(イソプレンゴム、IR)、1,3−ブタジエンの重合体であるポリブタジエン(ブタジエンゴム、BR)、スチレンの重合体であるポリスチレン、スチレンとイソプレンの共重合体であるスチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、イソブチレンとイソプレンの共重合体であるブチルゴム(IIR)、スチレンとブタジエンの共重合体であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、2−メチル−1−ペンテンの重合体である2−メチル−1−ペンテン重合樹脂、2−メチル−1−ブテンの重合体である2−メチル−1−ブテン重合樹脂、α−メチルスチレンの重合体であるα−メチルスチレン重合樹脂等がある。尚、α−メチルスチレン重合樹脂は柔軟性を与えるために低分子量のポリイソブチレンを添加することが望ましい。また、バインダーに用いる樹脂としては、酸素原子を含むモノマーの重合体又は共重合体(例えば、ポリブチルメタクリレートやポリメチルメタクリレート等)を少量含む構成としても良い。更に、上記一般式(1)に該当しないモノマーが一部共重合していても良い。その場合であっても、本願発明の目的を達成することが可能である。
尚、バインダーに用いる樹脂としては、磁場配向を適切に行う為に250℃以下で軟化する熱可塑性樹脂、より具体的にはガラス転移点又は融点が250℃以下の熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。
一方、バインダーに長鎖炭化水素を用いる場合には、室温で固体、室温以上で液体である長鎖飽和炭化水素(長鎖アルカン)を用いるのが好ましい。具体的には炭素数が18以上である長鎖飽和炭化水素を用いるのが好ましい。そして、後述のように磁石粉末とバインダーとの混合物を成形したグリーン体を磁場配向する際には、グリーン体を長鎖炭化水素の融点以上で加熱して軟化した状態で磁場配向を行う。
また、バインダーに脂肪酸エステルを用いる場合においても同様に、室温で固体、室温以上で液体であるステアリン酸メチルやドコサン酸メチル等を用いるのが好ましい。そして、後述のように磁石粉末とバインダーとの混合物を成形したグリーン体を磁場配向する際には、グリーン体を脂肪酸エステルの融点以上で加熱して軟化した状態で磁場配向を行う。
グリーン体を作製する際に磁石粉末に混合されるバインダーとして上記条件を満たすバインダーを用いることによって、磁石内に含有する炭素量及び酸素量を低減させることが可能となる。具体的には、焼結後に磁石に残存する炭素量を2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下とする。また、焼結後に磁石に残存する酸素量を5000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下とする。
また、バインダーの添加量は、スラリーや加熱溶融したコンパウンドを成形する際に成形体の厚み精度を向上させる為に、磁石粒子間の空隙を適切に充填する量とする。例えば、磁石粉末とバインダーの合計量に対するバインダーの比率が、1wt%〜40wt%、より好ましくは2wt%〜30wt%、更に好ましくは3wt%〜20wt%とする。
[永久磁石の製造方法]
次に、本発明に係る加圧焼結装置及び加圧焼結方法を用いた永久磁石1の製造方法について図2を用いて説明する。図2は本実施形態に係る永久磁石1の製造工程を示した説明図である。
先ず、所定分率のNd−Fe−B(例えばNd:32.7wt%、Fe(電解鉄):65.96wt%、B:1.34wt%)からなる、インゴットを製造する。その後、インゴットをスタンプミルやクラッシャー等によって200μm程度の大きさに粗粉砕する。若しくは、インゴットを溶解し、ストリップキャスト法でフレークを作製し、水素解砕法で粗粉化する。それによって、粗粉砕磁石粉末10を得る。
次いで、粗粉砕磁石粉末10をビーズミル11による湿式法又はジェットミルを用いた乾式法等によって微粉砕する。例えば、ビーズミル11による湿式法を用いた微粉砕では有機溶媒中で粗粉砕磁石粉末10を所定範囲の粒径(例えば0.1μm〜5.0μm)に微粉砕するとともに有機溶媒中に磁石粉末を分散させる。その後、湿式粉砕後の有機溶媒に含まれる磁石粉末を真空乾燥などで乾燥させ、乾燥した磁石粉末を取り出す。また、粉砕に用いる溶媒は有機溶媒であるが、溶媒の種類に特に制限はなく、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールなどのアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、ペンタン、ヘキサンなどの低級炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなど芳香族類、ケトン類、それらの混合物等が使用できる。尚、好ましくは、溶媒中に酸素原子を含まない炭化水素系溶媒が用いられる。
一方、ジェットミルによる乾式法を用いた微粉砕では、粗粉砕した磁石粉末を、(a)酸素含有量が実質的に0%の窒素ガス、Arガス、Heガスなど不活性ガスからなる雰囲気中、又は(b)酸素含有量が0.0001〜0.5%の窒素ガス、Arガス、Heガスなど不活性ガスからなる雰囲気中で、ジェットミルにより微粉砕し、所定範囲の粒径(例えば0.7μm〜5.0μm)の平均粒径を有する微粉末とする。尚、酸素濃度が実質的に0%とは、酸素濃度が完全に0%である場合に限定されず、微粉の表面にごく僅かに酸化被膜を形成する程度の量の酸素を含有しても良いことを意味する。
次に、ビーズミル11等で微粉砕された磁石粉末を所望形状に成型する。尚、磁石粉末の成形には、例えば磁石粉末を金型に充填して所望の形状へと成形する圧粉成形や、磁石粉末とバインダーとを混合した混合体を所定形状(例えば、シート形状、ブロック形状、最終製品形状等)のグリーン体に成形する方法がある。尚、グリーン体の成形には射出成型を用いても良い。そして、グリーン体を最終製品形状以外に成形した場合には、成形されたグリーン体に対して、更に打ち抜き加工、切削加工、変形加工等を行うことによって最終的な製品形状(例えば図1に示す扇型形状)とする。また、圧粉成形には、乾燥した微粉末をキャビティに充填する乾式法と、磁石粉末を含むスラリーを乾燥させずにキャビティに充填する湿式法がある。一方、グリーン体を特にシート形状(以下、グリーンシートという)に成形する場合には、例えば磁石粉末とバインダーとが混合したコンパウンドを加熱した後にシート形状に成形するホットメルト塗工や、磁石粉末とバインダーと有機溶媒とを含むスラリーを基材上に塗工することによりシート状に成形するスラリー塗工等による成形が有る。
以下では、グリーン体として特にシート形状のグリーンシートを、ホットメルト塗工を用いて成形する場合の例について説明する。
先ず、ビーズミル11等で微粉砕された磁石粉末にバインダーを混合することにより、磁石粉末とバインダーからなる粉末状の混合物(コンパウンド)12を作製する。ここで、バインダーとしては、上述したように樹脂や長鎖炭化水素や脂肪酸エステルやそれらの混合物等が用いられる。例えば、樹脂を用いる場合には構造中に酸素原子を含まず、且つ解重合性のあるポリマーからなる熱可塑性樹脂を用い、一方、長鎖炭化水素を用いる場合には、室温で固体、室温以上で液体である長鎖飽和炭化水素(長鎖アルカン)を用いるのが好ましい。また、脂肪酸エステルを用いる場合には、ステアリン酸メチルやドコサン酸メチル等を用いるのが好ましい。また、バインダーの添加量は、上述したように添加後のコンパウンド12における磁石粉末とバインダーの合計量に対するバインダーの比率が、1wt%〜40wt%、より好ましくは2wt%〜30wt%、更に好ましくは3wt%〜20wt%となる量とする。
また、上記コンパウンド12には、後に行われる磁場配向工程での配向度を向上させる為に配向潤滑剤を添加しても良い。配向潤滑剤としては炭化水素系の配向潤滑剤が用いられ、特に極性を有する(具体的には酸解離定数pKaが41未満の)配向潤滑剤を用いる。また、配向潤滑剤の添加量は磁石粉末の粒子径に依存し、磁石粉末の粒子径が小さい程、添加量を多くする必要がある。具体的な添加量としては、磁石粉末に対して0.1部〜10部、より好ましくは1部〜8部とする。そして、磁石粉末に添加された配向潤滑剤は、磁石粒子の表面に付着し、後述の磁場配向処理において、磁石粒子の回動を補助する役目を有する。その結果、磁場を印加した際に配向が容易に行われ、磁石粒子の磁化容易軸方向を同一方向に揃えること(即ち、配向度を高くすること)が可能となる。特に、グリーンシート成形を用いる場合には、粒子表面にバインダーが存在するため、配向時の摩擦力が上がり、粒子の配向性が低下する為、配向潤滑剤を添加する効果がより大きくなる。
尚、バインダーの添加は、窒素ガス、Arガス、Heガスなど不活性ガスからなる雰囲気で行う。尚、磁石粉末とバインダーの混合は、例えば磁石粉末とバインダーをそれぞれ攪拌機に投入し、攪拌機で攪拌することにより行う。また、混練性を促進する為に加熱攪拌を行っても良い。また、磁石粉末とバインダーの混合は、窒素ガス、Arガス、Heガスなど不活性ガスからなる雰囲気で行うことが望ましい。また、特に磁石粉末を湿式法で粉砕した場合においては、粉砕に用いた有機溶媒から磁石粉末を取り出すことなくバインダーを有機溶媒中に添加して混練し、その後に有機溶媒を揮発させ、後述のコンパウンド12を得る構成としても良い。
続いて、コンパウンド12をシート状に成形することによりグリーンシートを作成する。特に、ホットメルト塗工では、コンパウンド12を加熱することによりコンパウンド12を溶融し、流体状にしてからセパレータ等の支持基材13上に塗工する。その後、放熱して凝固させることにより、支持基材13上に長尺シート状のグリーンシート14を形成する。尚、コンパウンド12を加熱溶融する際の温度は、用いるバインダーの種類や量によって異なるが50〜300℃とする。但し、用いるバインダーの融点よりも高い温度とする必要がある。尚、スラリー塗工を用いる場合には、多量の有機溶媒中に磁石粉末とバインダーを分散させ、スラリーをセパレータ等の支持基材13上に塗工する。その後、乾燥して有機溶媒を揮発させることにより、支持基材13上に長尺シート状のグリーンシート14を形成する。
ここで、溶融したコンパウンド12の塗工方式は、スロットダイ方式やカレンダーロール方式等の層厚制御性に優れる方式を用いることが好ましい。特に、高い厚み精度を実現する為には、特に層厚制御性に優れた(即ち、基材の表面に高精度の厚さの層を塗工できる方式)であるダイ方式やコンマ塗工方式を用いることが望ましい。例えば、スロットダイ方式では、加熱して流体状にしたコンパウンド12をギアポンプにより押し出してダイに挿入することにより塗工を行う。また、カレンダーロール方式では、加熱した2本ロールのギャップにコンパウンド12を一定量仕込み、ロールを回転させつつ支持基材13上にロールの熱で溶融したコンパウンド12を塗工する。また、支持基材13としては、例えばシリコーン処理ポリエステルフィルムを用いる。更に、消泡剤を用いたり、加熱真空脱泡を行うこと等によって展開層中に気泡が残らないよう充分に脱泡処理することが好ましい。また、支持基材13上に塗工するのではなく、押出成型によって溶融したコンパウンド12をシート状に成型するとともに支持基材13上に押し出すことによって、支持基材13上にグリーンシート14を成形する構成としても良い。
以下に、図3を用いて特にスロットダイ方式によるグリーンシート14の形成工程についてより詳細に説明する。図3はスロットダイ方式によるグリーンシート14の形成工程を示した模式図である。
図3に示すようにスロットダイ方式に用いられるダイ15は、ブロック16、17を互いに重ね合わせることにより形成されており、ブロック16、17との間の間隙によってスリット18やキャビティ(液溜まり)19を形成する。キャビティ19はブロック17に設けられた供給口20に連通される。そして、供給口20はギアポンプ(図示せず)等によって構成される塗布液の供給系へと接続されており、キャビティ19には供給口20を介して、計量された流体状のコンパウンド12が定量ポンプ等により供給される。更に、キャビティ19に供給された流体状のコンパウンド12はスリット18へ送液されて単位時間一定量で幅方向に均一な圧力でスリット18の吐出口21から予め設定された塗布幅により吐出される。一方で、支持基材13はコーティングロール22の回転に伴って予め設定された速度で連続搬送される。その結果、吐出した流体状のコンパウンド12が支持基材13に対して所定厚さで塗布され、その後、放熱して凝固することにより支持基材13上に長尺シート状のグリーンシート14が成形される。
また、スロットダイ方式によるグリーンシート14の形成工程では、塗工後のグリーンシート14のシート厚みを実測し、実測値に基づいてダイ15と支持基材13間のギャップDをフィードバック制御することが望ましい。また、ダイ15に供給する流体状のコンパウンド12の量の変動は極力低下させ(例えば±0.1%以下の変動に抑える)、更に塗工速度の変動についても極力低下させる(例えば±0.1%以下の変動に抑える)ことが望ましい。それによって、グリーンシート14の厚み精度を更に向上させることが可能である。尚、形成されるグリーンシート14の厚み精度は、設計値(例えば1mm)に対して±10%以内、より好ましくは±3%以内、更に好ましくは±1%以内とする。尚、他方のカレンダーロール方式では、カレンダー条件を同様に実測値に基づいて制御することで、支持基材13へのコンパウンド12の転写膜厚を制御することが可能である。
尚、グリーンシート14の設定厚みは、0.05mm〜20mmの範囲で設定することが望ましい。厚みを0.05mmより薄くすると、多層積層しなければならないので生産性が低下することとなる。
次に、上述したホットメルト塗工によって支持基材13上に形成されたグリーンシート14の磁場配向を行う。具体的には、先ず支持基材13とともに連続搬送されるグリーンシート14を加熱することによりグリーンシート14を軟化させる。尚、グリーンシート14を加熱する際の温度及び時間は、用いるバインダーの種類や量によって異なるが、例えば100〜250℃で0.1〜60分とする。但し、グリーンシート14を軟化させる為に、用いるバインダーのガラス転移点又は融点以上の温度とする必要がある。また、グリーンシート14を加熱する加熱方式としては、例えばホットプレートによる加熱方式や熱媒体(シリコーンオイル)を熱源に用いた加熱方式が有る。次に、加熱により軟化したグリーンシート14の面内方向且つ長さ方向に対して磁場を印加することにより磁場配向を行う。印加する磁場の強さは5000[Oe]〜150000[Oe]、好ましくは、10000[Oe]〜120000[Oe]とする。その結果、グリーンシート14に含まれる磁石結晶のC軸(磁化容易軸)が一方向に配向される。尚、磁場を印加する方向としてはグリーンシート14の面内方向且つ幅方向に対して磁場を印加することとしても良い。また、複数枚のグリーンシート14に対して同時に磁場を配向させる構成としても良い。
更に、グリーンシート14に磁場を印加する際には、加熱工程と同時に磁場を印加する工程を行う構成としても良いし、加熱工程を行った後であってグリーンシートが凝固する前に磁場を印加する工程を行うこととしても良い。また、ホットメルト塗工により塗工されたグリーンシート14が凝固する前に磁場配向する構成としても良い。その場合には、加熱工程は不要となる。
次に、図4を用いてグリーンシート14の加熱工程及び磁場配向工程についてより詳細に説明する。図4はグリーンシート14の加熱工程及び磁場配向工程を示した模式図である。尚、図4に示す例では、加熱工程と同時に磁場配向工程を行う例について説明する。
図4に示すように、上述したスロットダイ方式により塗工されたグリーンシート14に対する加熱及び磁場配向は、ロールによって連続搬送された状態の長尺シート状のグリーンシート14に対して行う。即ち、加熱及び磁場配向を行う為の装置を塗工装置(ダイ等)の下流側に配置し、上述した塗工工程と連続した工程により行う。
具体的には、ダイ15やコーティングロール22の下流側において、搬送される支持基材13及びグリーンシート14がソレノイド25内を通過するようにソレノイド25を配置する。更に、ホットプレート26をソレノイド25内においてグリーンシート14に対して上下一対に配置する。そして、上下一対に配置されたホットプレート26によりグリーンシート14を加熱するとともに、ソレノイド25に電流を流すことによって、長尺シート状のグリーンシート14の面内方向(即ち、グリーンシート14のシート面に平行な方向)で且つ長さ方向に磁場を生じさせる。それによって、連続搬送されるグリーンシート14を加熱により軟化させるとともに、軟化したグリーンシート14の面内方向且つ長さ方向(図4の矢印27方向)に対して磁場を印加し、グリーンシート14に対して適切に均一な磁場を配向させることが可能となる。特に、磁場を印加する方向を面内方向とすることによって、グリーンシート14の表面が逆立つことを防止できる。
また、磁場配向した後に行うグリーンシート14の放熱及び凝固は、搬送状態で行うことが好ましい。それによって、製造工程をより効率化することが可能となる。
尚、磁場配向をグリーンシート14の面内方向且つ幅方向に対して行う場合には、ソレノイド25の代わりに搬送されるグリーンシート14の左右に一対の磁場コイルを配置するように構成する。そして、各磁場コイルに電流を流すことによって、長尺シート状のグリーンシート14の面内方向で且つ幅方向に磁場を生じさせることが可能となる。
また、磁場配向をグリーンシート14の面に対して垂直方向とすることも可能である。磁場配向をグリーンシート14の面に対して垂直方向に行う場合には、例えばポールピース等を用いた磁場印加装置により行う。具体的には、図5に示すようにポールピース等を用いた磁場印加装置30は、中心軸が同一になるように平行配置された2つのリング状のコイル部31、32と、コイル部31、32のリング孔にそれぞれ配置された2つの略円柱状のポールピース33、34とを有し、搬送されるグリーンシート14に対して所定間隔離間されて配置される。そして、コイル部31、32に電流を流すことにより、グリーンシート14の面に対して垂直方向に磁場を生成し、グリーンシート14の磁場配向を行う。尚、磁場配向方向をグリーンシート14の面に対して垂直方向とする場合には、図5に示すようにグリーンシート14に対して支持基材13が積層された反対側の面にもフィルム35を積層することが好ましい。それによって、グリーンシート14の表面の逆立ちを防止することが可能となる。
また、上述したホットプレート26による加熱方式の代わりに熱媒体(シリコーンオイル)を熱源とした加熱方式を用いても良い。
ここで、ホットメルト成形を用いずに一般的なスロットダイ方式やドクターブレード方式等によりスラリー等の流動性の高い液状物によってグリーンシート14を成形した場合には、磁場の勾配が生じているところにグリーンシート14が搬入されると、磁場が強い方にグリーンシート14に含まれる磁石粉末が引き寄せられることとなり、グリーンシート14を形成するスラリーの液寄り、即ち、グリーンシート14の厚みの偏りが生じる虞がある。それに対して、本発明のようにコンパウンド12をホットメルト成形によりグリーンシート14に成形する場合には、室温付近での粘度は数万〜数十万Pa・sに達し、磁場勾配通過時の磁性粉末の寄りが生じることが無い。更に、均一磁場中に搬送され、加熱されることでバインダーの粘度低下が生じ、均一磁場中の回転トルクのみで、一様なC軸配向が可能となる。
また、ホットメルト成形を用いずに一般的なスロットダイ方式やドクターブレード方式等により有機溶媒を含むスラリー等の流動性の高い液状物によってグリーンシート14を成形した場合には、厚さ1mmを越えるシートを作成しようとすると乾燥時においてスラリー等に含まれる有機溶媒が気化することによる発泡が課題となる。更に、発泡を抑制する為に乾燥時間を長時間化すれば、磁石粉末の沈降が生じ、それに伴って重力方向に対する磁石粉末の密度分布の偏りが生じ、焼成後の反りの原因となる。従って、スラリーからの成形では、厚みの上限値が実質上規制される為、1mm以下の厚みでグリーンシートを成形し、その後に積層する必要がある。しかし、その場合にはバインダー同士の絡まり合いが乏しくなり、その後の脱バインダー工程(仮焼処理)で層間剥離を生じ、それがC軸(磁化容易軸)配向性の低下、即ち残留磁束密度(Br)の低下原因となる。それに対して、本発明のようにコンパウンド12をホットメルト成形によりグリーンシート14に成形する場合には、有機溶媒を含まないので、厚さ1mmを越えるシートを作成した場合でも上述したような発泡の懸念が解消する。そして、バインダーが十分に絡まり合った状態にあるので、脱バインダー工程での層間剥離が生じる虞が無い。
また、複数枚のグリーンシート14に対して同時に磁場を印加させる場合には、例えばグリーンシート14を複数枚(例えば6枚)積層した状態で連続搬送し、積層したグリーンシート14がソレノイド25内を通過するように構成する。それによって生産性を向上させることが可能となる。
その後、磁場配向を行ったグリーンシート14に対して切削加工や打ち抜き加工を行い、成形体40を成形する。尚、成形体40の形状は最終的な製品形状によって異なるが、例えば、図1に示すような扇型形状の他、台形形状、直方体形状等とする。尚、グリーンシート14の面内方向に磁場配向させた場合には、グリーンシート14の面内方向が磁化容易軸の方向に対応するので、最終的な製品で要求される磁化容易軸の方向を考慮して切削する必要がある。尚、磁場配向の工程と成形体40の成形工程の順序は逆でも良い。即ち、グリーンシート14に対して切削加工や打ち抜き加工を行って成形体40を成形した後に、成形体40に対して磁場配向を行うように構成しても良い。
また、グリーンシート14を切削する工程や打ち抜く工程によって生じたグリーンシート14の残余部分については、バインダーの融点以上に加熱することによって溶融されたコンパウンド12として再利用することが可能である。その結果、再利用された残余部分は、グリーンシート14の一部として再生されることとなる。従って、複雑な形状に切削加工した場合であっても、歩留まりを低下させることが無い。
続いて、成形された成形体40を大気圧、又は大気圧より高い圧力や低い圧力(例えば、1.0Paや1.0MPa)に加圧した非酸化性雰囲気(特に本発明では水素雰囲気又は水素と不活性ガスの混合ガス雰囲気)においてバインダー分解温度で数時間〜数十時間(例えば5時間)保持することにより仮焼処理を行う。水素雰囲気下で行う場合には、例えば仮焼中の水素の供給量は5L/minとする。仮焼処理を行うことによって、バインダー等の有機化合物を解重合反応等によりモノマーに分解し飛散させて除去することが可能となる。即ち、成形体40中の炭素量を低減させる所謂脱カーボンが行われることとなる。また、仮焼処理は、成形体40中の炭素量が2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下とする条件で行うこととする。それによって、その後の焼結処理で永久磁石1全体を緻密に焼結させることが可能となり、残留磁束密度や保磁力を低下させることが無い。また、上述した仮焼処理を行う際の加圧条件を大気圧より高い圧力で行う場合には、15MPa以下とすることが望ましい。尚、加圧条件は大気圧より高い圧力、より具体的には0.2MPa以上とすれば特に炭素量軽減の効果が期待できる。
尚、バインダー分解温度は、バインダー分解生成物および分解残渣の分析結果に基づき決定する。具体的にはバインダーの分解生成物を補集し、モノマー以外の分解生成物が生成せず、かつ残渣の分析においても残留するバインダー成分の副反応による生成物が検出されない温度範囲が選ばれる。バインダーの種類により異なるが200℃〜900℃、より好ましくは400℃〜600℃(例えば450℃)とする。
また、上記仮焼処理は、一般的な磁石の焼結を行う場合と比較して、昇温速度を小さくするのが好ましい。具体的には、昇温速度を2℃/min以下(例えば1.5℃/min)とする。従って、仮焼処理を行う場合には、図6に示すように2℃/min以下の所定の昇温速度で昇温し、予め設定された設定温度(バインダー分解温度)に到達した後に、該設定温度で数時間〜数十時間保持することにより仮焼処理を行う。上記のように仮焼処理において昇温速度を小さくすることによって、成形体40中の炭素が急激に除去されず、段階的に除去されるので、焼結後の永久磁石の密度を上昇させる(即ち、永久磁石中の空隙を減少させる)ことが可能となる。そして、昇温速度を2℃/min以下とすれば、焼結後の永久磁石の密度を95%以上とすることができ、高い磁石特性が期待できる。
また、仮焼処理によって仮焼された成形体40を続いて真空雰囲気で保持することにより脱水素処理を行っても良い。脱水素処理では、仮焼処理によって生成された成形体40中のNdH(活性度大)を、NdH(活性度大)→NdH(活性度小)へと段階的に変化させることによって、仮焼処理により活性化された成形体40の活性度を低下させる。それによって、仮焼処理によって仮焼された成形体40をその後に大気中へと移動させた場合であっても、Ndが酸素と結び付くことを防止し、残留磁束密度や保磁力を低下させることが無い。また、磁石結晶の構造をNdH等からNdFe14B構造へと戻す効果も期待できる。
続いて、仮焼処理によって仮焼された成形体40を焼結する焼結処理を行う。尚、成形体40の焼結方法としては、特に成形体40を加圧した状態で焼結する加圧焼結を用いる。ここで、加圧焼結としては、例えば、ホットプレス焼結、熱間静水圧加圧(HIP)焼結、超高圧合成焼結、ガス加圧焼結、放電プラズマ(SPS)焼結等がある。但し、焼結時の磁石粒子の粒成長を抑制するとともに焼結後の磁石に生じる反りを抑える為に、一軸方向に加圧する一軸加圧焼結を用いることが好ましい。また、加圧焼結を行う場合には、生産効率を向上させる為に複数個(例えば9個)の成形体40に対して同時に加圧焼結するように構成することが望ましい。具体的には、焼結型を複数備えた焼結装置に対して、各焼結型内にそれぞれ成形体40を設置して同時に加圧焼結を行うように構成する。尚、焼結する場合の加圧値は1MPa以下とし、数Pa以下の真空雰囲気で940℃まで10℃/分で上昇させ、その後5分保持することが好ましい。その後冷却し、再び300℃〜1000℃で2時間熱処理を行う。そして、焼結の結果、永久磁石1が製造される。
以下に、図7及び図8を用いて加圧焼結として特にホットプレス焼結を用いた成形体40の加圧焼結工程についてより詳細に説明する。図7は焼結装置45が備える複数の焼結型46を示した図である。また、図8は焼結装置45の備える複数の焼結型46の加圧構造を示した模式図である。
図7に示すように焼結装置45は複数(図7では9個)の焼結型46を備えており、各焼結型46は真空チャンパー(図示せず)内に設置される。また、真空チャンパー内には焼結型46以外にヒータ等の加熱装置(図示せず)を備える。ここで、図7及び図8に示すように各焼結型46は、円筒形状の中空部分が形成されたグラファイト製のモールド47と、モールド47に形成された円筒形状の中空部分の上下に配置される同じくグラファイト製の上部パンチ48と下部パンチ49とから構成される。そして、モールド47と上部パンチ48と下部パンチ49とにより形成される円筒形状の空間部にそれぞれ成形体40が設置される。また、上部パンチ48及び下部パンチ49は、モールド47の内壁面に沿って上下動可能に支持されている。
更に、焼結装置45は、複数の焼結型46を構成する各上部パンチ48に対して同時に荷重を加えることによって、各上部パンチ48を同時に上下動させる駆動機構として上部シリンダ50を有する。同じく、複数の焼結型46を構成する各下部パンチ49に対して同時に荷重を加えることによって、各下部パンチ49を同時に上下動させる駆動機構として下部シリンダ51を有する。また、上部シリンダ50と上部パンチ48の間には緩衝材としてフッ素ゴム52が配置されている。
そして、上記焼結装置45によって加圧焼結を行う際には、先ず焼結型46の内部に対して成形体40を設置する。尚、上述した仮焼処理についても成形体40を焼結型46に設置した状態で行っても良い。そして、真空チャンパー内にあるヒータ等の加熱装置を作動させ、真空チャンパー内の昇温を開始する。それと同時に、上部パンチ48及び下部パンチ49に対して上部シリンダ50及び下部シリンダ51を用いて夫々上下方向から荷重を付加する。その結果、焼結型46内に設置された成形体40は、加圧されつつ焼結が行われる。尚、加圧焼結を行う場合には、加圧値を例えば0.01MPa〜100MPaとし、数Pa以下の真空雰囲気で940℃まで10℃/分で上昇させ、その後5分保持することが好ましい。その後冷却し、再び300℃〜1000℃で2時間熱処理を行う。そして、焼結の結果、永久磁石1が製造される。
ここで、本発明に係る焼結装置45では、上部シリンダ50と上部パンチ48との間にフッ素ゴム52を介在させることによって、複数の成形体40を同時に焼結した場合であっても、各成形体40間で加圧値を均一とすることが可能となる。例えば図8に示すように、厚みの薄い(即ち充填量の少ない)成形体40と厚みが厚い(即ち充填量の多い)成形体40を同時に加圧する構成とした場合であっても、フッ素ゴム52によって成形体40への加圧値が均一となるように調整することが可能となる。その結果、厚みの薄い(即ち充填量の少ない)成形体40に対する加圧値が必要値より不足することを防止する一方で、厚みが厚い(即ち充填量の多い)成形体40に対する加圧値が必要以上に高くなることを防止し、焼結時に欠損等が生じることが無い。
尚、上述した例では上部シリンダ50と上部パンチ48との間のみにフッ素ゴム52を介在させる構成としているが、図9に示すように下部シリンダ51と下部パンチ49の間にもフッ素ゴム53を介在させる構成としても良い。その結果、加圧値を均一にする効果がより大きくなる。
また、上述した例では焼結対象物である成形体40に対して上下方向から荷重を付加する構成としているが、一方向のみから荷重を付加する構成としても良い。例えば、図10に示すように下部パンチ49は固定とし、上部パンチ48のみを上部シリンダ50の駆動に基づいて上下動させる構成としても良い。
以上説明したように、本実施形態に係る焼結装置45及び焼結装置45による永久磁石1の製造方法では、磁石原料を磁石粉末に粉砕し、粉砕された磁石粉末を成形し、成形された磁石粉末の成形体40を仮焼した後に、焼結装置45を用いて加圧焼結することにより永久磁石1を製造する。また、焼結装置45は、複数の焼結型46を備え、複数の焼結型46を構成する各上部パンチ48及び下部パンチ49に対して同時に荷重を加えることによって、各上部パンチ48及び下部パンチ49を同時に上下動させる上部シリンダ50及び下部シリンダ51を有する。そして、少なくとも上部パンチ48と上部シリンダ50との間にフッ素ゴム52を介在させるように構成する。その結果、複数の焼結対象物を同時に焼結した場合であっても、各焼結対象物間で加圧値を均一とすることが可能となる。その結果、製造効率を上昇させる一方で製品の品質が低下することを防止することができる。即ち、充填量の少ない焼結対象物に対する加圧値が必要値より不足することを防止する一方で、充填量の多い焼結対象物に対する加圧値が必要以上に高くなることを防止し、焼結時に欠損等が生じることが無い。
また、パンチ及びパンチに対して荷重を付加するシリンダは、モールド47に対して上下一対に設けられ、少なくとも一方のパンチとシリンダとの間にフッ素ゴム52を介在させるので、上下方向から夫々パンチで加圧する焼結装置45であっても、シリンダとパンチとの間にフッ素ゴム52を介在させることによって、複数の焼結対象物を同時に焼結した場合であっても、各焼結対象物間で加圧値を均一とすることが可能となる。
また、シリンダとパンチとの間には緩衝材として特にフッ素ゴム52を介在させるので、フッ素ゴム52の弾性によって、シリンダから焼結対象物へと加わる荷重の差を焼結対象物間で減少させることが可能となる。
また、特にホットプレス焼結や放電プラズマ焼結等の通電焼結により焼結する場合において、複数の焼結対象物を同時に焼結した場合であっても、各焼結対象物間で加圧値を均一とすることが可能となる。
尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、磁石粉末の粉砕条件、混練条件、仮焼条件、焼結条件などは上記実施例に記載した条件に限られるものではない。例えば、上記実施例ではビーズミルによる湿式粉砕により磁石原料を粉砕しているが、ジェットミルを用いた乾式粉砕により粉砕することとしても良い。また、上記実施例では、スロットダイ方式によりグリーンシートを形成しているが、他の方式(例えばカレンダーロール方式、コンマ塗工方式、押出成型、射出成型、金型成型、ドクターブレード方式等)を用いてグリーンシートを形成しても良い。但し、流体状のコンパウンドを基材上に高精度に成形することが可能な方式を用いることが望ましい。また、仮焼を行う際の雰囲気は非酸化性雰囲気であれば水素雰囲気以外(例えば窒素雰囲気、He雰囲気等、Ar雰囲気等)で行っても良い。また、仮焼処理を省略しても良い。その場合には、焼結処理の過程で脱炭素が行われることとなる。
また、上記実施例では、バインダーとして樹脂や長鎖炭化水素や脂肪酸エステルを用いることとしているが、他の材料を用いても良い。
また、永久磁石はグリーンシート成形以外の成形(例えば圧粉成形や、磁石粉末とバインダーとの混合体をシート形状以外の形状に成形等)により成形した成形体を焼結することにより製造しても良い。その場合であっても、製造効率の上昇及び製品の品質低下防止の効果が期待できる。
また、上記実施例では、上部パンチ48と上部シリンダ50との間に介在させる緩衝材としてフッ素ゴムを用いているが、フッ素ゴム以外の緩衝材を用いても良い。例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコンゴム、高分子ゲル、ウレタン、板バネ、コイルバネ、空気バネ、液体バネ等を用いることが可能である。
また、上記実施例では、加圧焼結として特にホットプレス焼結を用いた例について説明したが、ホットプレス焼結以外であってもパンチを用いて加圧を行う加圧焼結に対して適用可能である。例えば、放電プラズマ(SPS)焼結においても適用可能である。尚、SPS焼結では急速昇温・冷却が可能となり、また、低い温度域で焼結することが可能となる。その結果、焼結工程での昇温・保持時間を短縮でき、磁石粒子の粒成長を抑制した緻密な焼結体の作製が可能となる。
また、上記実施例では、特に本発明に係る加圧焼結装置及び加圧焼結方法を永久磁石の焼結に用いた場合を例に挙げて説明したが、永久磁石の焼結以外に用いることも可能である。例えば、セラミックス材料、ナノフェーズ材料、生体材料、金型材料、工具材料等の焼結に用いることができ、その場合においても製造効率の上昇及び製品の品質低下防止の効果が期待できる。
1 永久磁石
11 ビーズミル
12 コンパウンド
13 支持基材
14 グリーンシート
15 ダイ
25 ソレノイド
26 ホットプレート
40 成形体
45 焼結装置
46 焼結型
47 モールド
48 上部パンチ
49 下部パンチ
50 上部シリンダ
51 下部シリンダ
52、53 フッ素ゴム

Claims (4)

  1. 複数の焼結型を備えた加圧焼結装置であって、
    前記複数の焼結型は、中空部分を備えるとともに異なる2方向から夫々パンチが挿入されるモールドと、異なる2方向から前記モールド内に挿入されて該モールドの内壁面に沿って移動可能に支持された一対のパンチとからなり、
    前記複数の焼結型毎に配置された前記一対のパンチに対して同時に荷重を加えることによって、前記複数の焼結型において前記一対のパンチを同時に動させる駆動機構を有し、
    前記一対のパンチと前記駆動機構との間に、夫々緩衝材を介在させることを特徴とする加圧焼結装置。
  2. ホットプレス焼結により焼結することを特徴とする請求項に記載の加圧焼結装置。
  3. 通電焼結により焼結することを特徴とする請求項に記載の加圧焼結装置。
  4. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載の加圧焼結装置によって、前記焼結型内に設置された焼結対象物を加圧した状態で焼結する加圧焼結方法。
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