JP6251114B2 - 電線コード - Google Patents

電線コード Download PDF

Info

Publication number
JP6251114B2
JP6251114B2 JP2014084661A JP2014084661A JP6251114B2 JP 6251114 B2 JP6251114 B2 JP 6251114B2 JP 2014084661 A JP2014084661 A JP 2014084661A JP 2014084661 A JP2014084661 A JP 2014084661A JP 6251114 B2 JP6251114 B2 JP 6251114B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electric wire
wire cord
lubricant
metal
coated
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014084661A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015204266A (ja
Inventor
脩平 岡村
脩平 岡村
章 寺岡
章 寺岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Teijin Ltd filed Critical Teijin Ltd
Priority to JP2014084661A priority Critical patent/JP6251114B2/ja
Publication of JP2015204266A publication Critical patent/JP2015204266A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6251114B2 publication Critical patent/JP6251114B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Insulated Conductors (AREA)
  • Ropes Or Cables (AREA)

Description

本発明は屈曲性に優れた電線コードに関し、さらに詳しくは有機繊糸条を用いた電線コードに関する。
従来の電線は、芯線として銅線を用いたものが主流であり、もっとも一般的な絶縁電線は、複数の銅細線を束ねて芯線とし、さらに熱可塑性樹脂系の絶縁体で被覆した構造のものである。しかし、頻繁に屈曲や捩じりが加わる用途に用いた場合、銅線の金属疲労による限界のために断線する、あるいは、取付け作業時に引張られることにより断線しやすいという問題点があった。
特に自動車の場合には、燃費を向上させるべく車内電線の軽量化に対する要請が強く、しかも、限られた空間に配線することができる柔軟性を兼ね備えた電線が求められている。
例えば、半田付け作業性、屈曲性に優れた電線を得るために、熱溶融性のポリベンザゾール繊維からなる芯部の外側に銅線を捲回して導体を形成する技術(特許文献1参照)、あるいは、導体を軽量化するために、アラミド繊維束の周りに銅細線を配置して撚線とした電線導体(特許文献2参照)、この撚線をさらに円形圧縮加工して熱処理したコード(特許文献3参照)等が知られている。しかし、これらの導体やコードは、繊維に銅線を巻き付けているため、同抵抗の銅線単体に比べて外径が太くなり、柔軟性に劣るといった問題点や、激しい屈曲や摩耗時には、やはり外周の銅線が切れて断線するといった問題が残っていた。
そこで特許文献4では、高強度有機合成繊維の周囲に金属めっき処理を施し、金属めっき層を形成した高強度有機合成繊維の周囲に金属めっき処理を施し、金属めっき層を形成した高強度有機合成繊維のフィラメント束を撚り合わせた導体が記載されている。
しかしながら、硬い金属で被覆された単糸を複数撚り合わせた糸条からなるこのような導体は、屈曲を繰り返すことで、めっきの脱落やクラックが生じ、電気抵抗値が上昇するといった問題があった。
特開2008−293831号公報 特表2005−510010号公報 特開平4−138616号公報 特開2011−76852号公報
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、柔軟性、高引張強力及び高い耐屈曲疲労性を有し、さらに高導電性と表面の絶縁特性を兼ね備えた電線コードを提供することを課題とする。
本発明の電線コードは、金属被覆された有機繊維糸条の外部を絶縁性の樹脂が被覆した電線コードであって、金属被覆された有機繊維糸条の撚り数が180回/m以上であり、金属被覆の外側に分解温度が150℃以上の潤滑剤が付着し、絶縁性の樹脂の融点または軟化点が潤滑剤の分解温度以下であり、絶縁性の樹脂の平均皮膜厚みが150μm以下であることを特徴とする。
さらには、潤滑剤が非シリコン系潤滑剤であることや、絶縁性の樹脂が熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、絶縁性樹脂の最大皮膜厚みと最小皮膜厚みの差が50μm以下であることが好ましい。
またもう一つの本発明の電線コードの製造方法は、金属被覆された有機繊維糸条の表面に、分解温度が150℃以上の潤滑剤を付着させ、180回/m以上の撚りを行い、その後絶縁性の樹脂であって、潤滑剤の分解温度以下の融点または軟化点を有する樹脂により、平均皮膜厚みが150μm以下となるように被覆することを特徴とする。
本発明は、柔軟性、高引張強力及び高い耐屈曲疲労性を有し、さらに高導電性と表面の絶縁特性を兼ね備えた電線コードが提供される。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の電線コードは、金属被覆された有機繊維糸条の外部を絶縁性の樹脂が被覆した電線コードである。
ここで有機繊維糸条を被覆する金属としては導電性を有せば特に限定は無いが、電気抵抗、価格等の面からは銅が一般的には最も好ましい。しかし各種用途により、その他のニッケル、銀、金の単独あるいはこれらの合金等も、好ましく用いられる。
有機繊維に上記の銅等の金属を被覆する方法としては、無電解めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法等があるが、特に量産性の面から無電解めっき法が好ましい。またその被覆量は、求められる導電性に応じて適宜に設定できる。しかし、無電解めっきで厚い被覆を形成するには時間を有するため、無電解めっきを実施し、有機繊維糸条に導電性を付与した後に、電気めっきすることが効果的な手段である。
本発明では上記のような金属にて有機繊維糸条が被覆されるわけであるが、本発明で好適に用いられる有機繊維糸条としては高強力繊維である、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維、例えば帝人株式会社製、商品名「テクノーラ」等)、全芳香族ポリエステル繊維(例えば株式会社クラレ製、商品名「ベクトラン」)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維(例えば東洋紡績株式会社製、商品名「ザイロン」)などを好ましく挙げることができる。
特に、上記の有機繊維糸条のなかでも、芳香族ポリアミド繊維(以下、「アラミド繊維」という)が最も好ましい。アラミド繊維は、耐熱性および耐切創性に優れており、熱による電線の変形や、鋭利な刃物による電線の切断等の懸念を回避することが可能となる。このようなアラミド繊維には、メタ系アラミド繊維とパラ系アラミド繊維がある。耐熱性に特に優れたメタ系アラミド繊維としては、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商品名「コーネックス」)などのメタ系アラミド繊維が挙げられる。一方、耐切創性に特に優れたパラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商品名「トワロン」)またはコポリパラフェニレン−3、4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維(例えば、帝人株式会社製、「テクノーラ」)が例示される。
上記アラミド繊維の中でも、本発明の有機繊維糸条としては、引張強度が高いパラ系アラミド繊維であることが好ましく、さらにはより高強度で耐疲労性に優れる、コポリパラフェニレン−3、4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維であることが好ましい。
またこの時、有機繊維糸条を構成する繊維の強度は、10cN/dtex以上であることが好ましい。さらには15〜35cN/dtexの範囲であることが好ましい。
本発明で用いられる有機繊維糸条の総繊度は、求められる強力と細さによっても適宜に決定することができるが、20〜1,700dtexの範囲が好ましく用いられる。さらには20〜500dtexの範囲であることが好ましい。またフィラメントの本数としては5〜1000本の範囲であることが、単糸の繊度としては0.5〜100dtexの範囲であることが好ましい。このような範囲の糸条を用いることにより、高強力性と疲労性のバランスのとれた電線とすることが可能となる。
さらに本発明の電線コードを構成する金属被覆された有機繊維糸条は、撚り数が180回/m以上であることが必要である。さらには180〜800回/mの範囲であることが好ましい。また撚り係数で表現すると、好ましい撚り係数は1.2以上であり、さらに好ましくは撚り係数1.5〜5.0の範囲である。
本発明ではこのように強い撚りを施した糸条を用いることにより、糸条を構成する単繊維の配向が繊維軸方向からずれ、最終的に得られる電線コードの屈曲疲労性が向上する。なお通常の金属被覆された糸条では、たとえ同じように強い撚りを施したとしても、その繊維間の高い摩擦係数から、屈曲疲労等の場合に、導電性や引張強力が低下する傾向にあった。本発明では適切な潤滑剤を付与することにより、そのような問題を克服したのである。もっとも撚り数や撚り係数が高すぎると、工程途中での撚り戻りによる取扱い性の低下や強度低下が起こりやすい傾向にあり、また生産コストの面からも好ましくない。
なお、ここで撚り係数(TM)とは、下記式で表されるものである。
TM=T×√D/1055
[但し、TM;撚り係数、T;撚り数(回/m)、D;有機繊維糸条原糸の総繊度(tex)を示す。]
本発明の電線コードを構成する繊維糸条は、このように強い撚りを有するために、単糸間が密着し、単糸間への絶縁樹脂の含浸を大きく抑制することができる。そのため最終的に得られる電線コードの柔軟性、屈曲疲労性が大きく改善されるのである。さらには、強い撚りを施した糸条の表面はより真円に近くなるため、絶縁樹脂皮膜の厚みバラツキも低減され、品質の優れた欠点の少ない電線コードとなる。
また本発明の電線コードは、有機繊維糸条の金属被覆の外側に分解温度が150℃以上の潤滑剤が付着しており、そのような有機繊維糸条の外部を絶縁性の樹脂が被覆した電線コードである。
分解温度が150℃以上の潤滑剤としては、その中でも非シリコン系の潤滑剤であることが好ましい。さらには非フッ素系の潤滑剤であることが好ましい。シリコン系やフッ素系潤滑剤や油剤を用いた場合には、その分解温度が高すぎて得られた電線コードのハンダ性が阻害されたり、その後の加工プロセスにて極微量のコンタミネーションの原因となる懸念があるからである。その観点からも潤滑剤の分解温度としては150〜350℃の範囲であることが好ましい。
より具体的には、本発明で用いられる高分解温度の潤滑剤としては、脂肪族エステル系潤滑剤や、鉱物油系潤滑剤、または脂肪族エステル系及び鉱物系潤滑剤の両方を含む潤滑剤であることが好ましい。なお、金属被覆した銅の錆を防ぐ目的で、防錆剤として脂肪酸塩から成る界面活性剤を、上記の高分解温度の潤滑剤と若干なら併用しても構わない。もちろん、その他の通常の防錆剤と組み合わせて使用することも可能である。
より具体的には脂肪族エステル系の潤滑剤としては、例えばラウリルオレート、イソオクチルステアレート、ブチルステアレート、イソトリデシルステアレート等の脂肪族モノカルボン酸と脂肪族1価アルコールとのエステル化合物、ネオペンチルグリコールジラウレート、1,6−ヘキサンジオールジオレート、トリメチロールプロパントリヘラルゴネート等の脂肪族モノカルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステル化合物、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジオレイルアジペート、ジイソステアリルチオジプロピオネート、ジイソステアリルセバケート等の脂肪族ポリカルボン酸と脂肪族1価アルコール等とのエステル化合物等を例示することができる。
鉱物油系潤滑剤としては、各種の流動パラフィンやワセリン、セレシン、固形パラフィン等が挙げられ、必要に応じてそれらを水に乳化させて塗布することができる。
また本発明の電線コードは、有機繊維糸条の金属被覆の外側に分解温度が150℃以上の潤滑剤が付着しており、そのような有機繊維糸条の外部を絶縁性の樹脂が被覆した電線コードである。さらには本発明では、絶縁性の樹脂の融点または軟化点は潤滑剤の分解温度以下であり、絶縁性の樹脂の平均皮膜厚みは150μm以下である電線コードである。
この金属被覆有機繊維糸条の周りを被覆する絶縁樹脂としては、導体が銅等の金属からなる一般的な電線の絶縁体に使用されている樹脂であればいずれを用いることも可能である。例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴム、エラストマー等を挙げることができる。その中でも、柔軟性、屈曲疲労性の点からは熱可塑性樹脂が好ましい。特に好ましく用いられる熱可塑性樹脂としてはポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、又はポリエステル系の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
また、本発明で用いられる絶縁樹脂の厚みは、求められる絶縁破壊電圧などの絶縁特性と、最終的な電線コードの細さとの兼ね合いから決定することができるが、通常150μm以下であることが必要である。さらに絶縁樹脂の平均厚さとしては、10μm〜150μmの範囲であることが好ましい。また、絶縁樹脂の最大皮膜厚みと最小皮膜厚みの差は50μm以下であることが好ましい。このように皮膜が薄く均一に付着することにより、柔軟性、絶縁性とともに、耐屈曲疲労性を高いレベルで達成することができる。
また、金属被覆繊維糸条の外側に存在する潤滑剤と、絶縁樹脂の関係としては、絶縁樹脂の融点または軟化点が、潤滑剤の分解温度以下という関係であることが必要である。このような関係であることにより、本発明では絶縁樹脂にて有機繊維糸条を被覆加工した際にも、潤滑剤は分解、揮発せずに金属被覆繊維の表面に残留する。すると、潤滑剤は防錆効果だけでなく、繊維糸条の摩擦係数を有効に低下させ、電線コードの引張強力や屈曲疲労性をより向上させることに寄与するのである。
ところでこのような本発明の電線コードは、好ましくは金属被覆された有機繊維糸条の表面に、分解温度が150℃以上の潤滑剤を付着させ、180回/m以上の撚りを行い、その後絶縁性の樹脂であって、潤滑剤の分解温度以下の融点または軟化点を有する樹脂により、平均皮膜厚みが150μm以下となるように被覆する電線コードの製造方法により得ることができる。
この製造方法では、強撚処理を行う前に、先に述べた分解温度が150℃以上の潤滑剤をその金属被覆した有機繊維糸条に付着させている。通常の、硬い金属で被覆された単糸を複数撚り合わせた糸条の電線コードは、単糸と単糸との間の摩擦が高く、撚糸加工時や使用時に屈曲が繰り返されるために、金属被覆めっきの脱落やクラックが生じやすいという問題があった。そのようなものでは電気抵抗値が上昇し、電線コードとしては使いづらいものであった。本発明では単糸間に上記の潤滑剤が付着しており、単糸間の摩擦が低減され、製造工程および使用時において、安定した性能を発揮するのである。
さらにこのような潤滑剤の存在により、金属被覆めっき表面の摩擦を下げ、撚り合わせた糸条の引き揃えが均一化し、引張強力を向上させる。また、撚り合わせた糸条の表面に高分解温度の潤滑剤が存在するため、その糸条の内部に絶縁樹脂が含浸してしまうことを有効に阻止しうるのである。逆に低分解温度の潤滑剤を使用すると、絶縁樹脂の含浸時に単糸間が集束されてしまい、柔軟性、屈曲疲労性が損なわれるのである。
また本発明では潤滑剤の存在により単糸間が適度にすべり、糸条表面の凹凸を減少させることが可能となった。そしてこの糸条の表面形態における凹凸の減少は、絶縁樹脂の膜厚の均一化にも寄与し、結果的に電線コード上の膜厚の薄い欠点部分が無くなり、高い絶縁破壊電圧を維持することが可能となるのである。ちなみに従来方法では、絶縁性を高めるためには通常は膜厚を上げるのであるが、結果的に得られる電線コードの柔軟性、屈曲疲労性を低下させる傾向にあった。
さらにこの製造方法では、撚りを行った金属被覆有機繊維糸条の表面を、絶縁性の樹脂にて最終的には被覆している。この絶縁樹脂を被覆する方法としては、樹脂を溶融させて一般的な押出成形機にて被覆する方法や、溶剤に溶解してコーティングする方法などが挙げられる。本発明では先に述べたように、金属被覆された繊維糸条は、分解温度が150℃以上の潤滑剤を付着させた後に180回/m以上の撚りを行っているため、樹脂被覆工程における繊維糸条の引き揃え性を高いレベルで維持し、絶縁樹脂の単糸繊維間への含浸を防止して得られる電線コードのる柔軟性や屈曲疲労性を高いレベルで達成できるようになった。さらには本発明で用いる撚糸後の糸条には、表面凹凸が少なく、最終的に得られる電線コードは、絶縁樹脂皮膜厚みのバラツキが少ない、安定した性能を有する電線コードとなる。
得られた電線コードの強力としては、10cN/dtex以上であることが好ましく、さらには15〜35cN/dtexの範囲であることが好ましい。なお、ここでの電線コードの強度は得られた電線コードの強力を、金属被覆を行う前の繊維の繊度で除した値である。ここで電線コード表面の金属皮膜は、有機繊維と比較して比重が高く繊度には大きく影響するものの、強度向上自体にはあまり寄与しないので、この定義を採用している。
そしてこのような本発明の電線コードは、柔軟性、高引張強力及び高い耐屈曲疲労性を有し、さらに高導電性と表面の絶縁特性を兼ね備えた優れた電線コードとなる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた評価方法は下記の通りである。
(1)潤滑剤の分解温度
分解温度は、繊維を空気中にて10℃/minで昇温しながら、繊維の質量を温度の関数として測定する熱重量分析を用いて測定し、熱分解により質量が減少開始する温度とした。
(2)絶縁被覆樹脂の融点
融点は、樹脂を空気中にて10℃/minで昇温しながら、DSC法にて樹脂からの発熱および吸熱を測定し、融点に相当するピークが得られた温度とした。
(3)絶縁被覆樹脂の平均被覆厚み及び最大・最小被覆厚み差
被覆厚みは、絶縁被覆後のサンプルの断面を電子顕微鏡にて撮影した後、30°間隔で0°〜360°の12点の厚みを測長し、その平均値とした。
最大・最小被覆厚み差は、上記12点の中での最大厚みと最小厚みの差とした。
(4)電線コードの絶縁破壊電圧
JIS C 3216−5に準拠して測定した。
(5)電線コードの引張強力
電線コードをJIS−L1013に準拠して測定した。破断時の荷重[cN]を金属被覆前の繊維の繊度で割返し、引張強力[cN/dtex]とした。
(6)電線コードのガーレー硬さ
JIS L 1096記載の方法で、電線コードに対して実施し、測定した。
(7)電気抵抗値
抵抗値測定器(日置株式会社製 ミリオームハイテスタ3540−02A)にて、電線コード1m間の電気抵抗値を測定した。
(8)屈曲疲労後の電気抵抗値
JIS P 8115記載の方法で、電線コードを1000回屈曲後、上記(7)の方法にて電線コード1m間の電気抵抗値を測定した。
(実施例1)
繊度440dtex、単繊維本数267本のコポリパラフェニレン−3、4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド長繊維糸条(帝人テクノプロダクツ株式会社製、「テクノーラ」)に、以下の方法で金属被覆を施した。
[金属被覆処理(銅めっき処理)]
金属被覆処理(銅めっき処理)は以下のようにして行った。
界面活性剤(「Cataposit 1501PREDIP」、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製(以下、この処理における剤は同じ会社の製品であるため記載を省略する))0.05%水溶液に、約40℃で約1分間浸せき後、触媒となるPdを含む処理液(「OMNISHIELD ACTIVATOR 1572」0.2%+濃塩酸0.8%溶液)に、室温で1分間浸せきし、Pdを吸着した後、水洗を行い過剰のPdを除去した。その後、銅を含む処理液(「OMNISHIELD ELECTROLESS COPPER 1598M」4.8%、「OMNISHIELD ELECTROLESS COPPER 1598A」1.0%、「OMNISHIELD ELECTROLESS COPPER 1598R」0.2%、「CUPOSIT Y」1.4%、「CUPOSIT Z」2.2%、「OMNISHIELD 1120SR COPPER REPLENISHER」0.16%溶液)に浸漬し、無電解銅めっきを実施した。さらにその後、硫酸銅(CuSO・5HO)20%、硫酸5.0%溶液中で、電気抵抗値が約1.0Ω/mになるまで電気銅めっきを実施した。
その後、潤滑剤として脂肪酸エステルであるジイソステアリルアジペート(分解温度;221℃)を金属被覆前繊維の重量対比1.0wt.%塗布した。その後320回/mの撚り(撚り係数;2)を施した後、引抜成型機にてポリエステル系熱可塑性エラストマー(融点;160℃、「ハイトレル3046」、東レ株式会社製)を平均被覆厚みが約100μmになるよう被覆し、電線コードを得た。
得られた電線コードの物性を表1に示す。この方法で得られた電線コードは優れた引張強度、柔軟性、導体の耐屈曲疲労性、絶縁被覆の絶縁特性を示した。
Figure 0006251114
(実施例2)
潤滑剤が塗布された金属被覆繊維糸条に480回/mの撚り(撚り係数;3)を施した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードは、強撚により若干の引張強度低下が見られたが、より優れた導体の耐屈曲疲労性を示し、柔軟性、絶縁被覆の絶縁特性も優れたものであった。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
(実施例3)
被覆絶縁樹脂としてポリエステル系熱可塑性エラストマーの代わりに、ポリ塩化ビニル樹脂(融点;170℃)を使用した以外は実施例1と同様にして、電線コードを得た。若干、柔軟性、導体の耐屈曲疲労性が劣っていたものの、十分に実用性に耐える優れた性能を示した。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
(実施例4)
潤滑剤として、脂肪酸エステルの代わりに精製された鉱物油(分解開始温度;約180℃)を金属被覆繊維糸条に塗布した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードは優れた性能を示した。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
(比較例1)
金属被覆繊維糸条に潤滑剤を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードは、金属被覆された単糸間の高い摩擦により、低い引張強度保持率と低い耐屈曲疲労性であった。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
(比較例2)
潤滑剤が塗布された金属被覆繊維糸条に160回/mの撚りを施した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードは、潤滑剤が塗布されているにも関わらず、撚りが不十分なことから、低い耐屈曲疲労性であった。また、繊維糸条の集束性が悪いことにより、絶縁被覆樹脂の厚みバラツキが大きく、結果、絶縁特性も低いものとなった。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
(比較例3)
分解開始温度が約130℃の鉱物油を金属被覆繊維糸条に塗布した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードの耐屈曲疲労性は低いものであった。これは、潤滑油の分解温度が低いため、絶縁樹脂の被覆工程で潤滑剤が分解し、金属被覆された単糸間の摩擦を低減する効果が失われたためと考えられる。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
(比較例4)
絶縁被覆樹脂として融点が227℃のポリエステル系熱可塑性エラストマー(「ハイトレル2751」、東レ株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードの耐屈曲疲労性は低いものであった。これは、絶縁被覆樹脂の融点が高いため、絶縁樹脂の被覆工程で潤滑剤が分解し、金属被覆された単糸間の摩擦を低減する効果が失われたためと考えられる。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
(比較例5)
絶縁樹脂を平均被覆厚みが約200μmになるよう被覆した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードは、厚い被覆により優れた絶縁特性を示したが、その厚みにより電線コードは太くなり、結果、柔軟性、導体の耐屈曲疲労性が著しく低下した。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。

Claims (5)

  1. 金属被覆された有機繊維糸条の外部を絶縁性の樹脂が被覆した電線コードであって、金属被覆された有機繊維糸条の撚り数が180回/m以上であり、金属被覆の外側に分解温度が150℃以上の潤滑剤が付着し、絶縁性の樹脂の融点または軟化点が潤滑剤の分解温度以下であり、絶縁性の樹脂の平均皮膜厚みが150μm以下であることを特徴とする電線コード。
  2. 潤滑剤が非シリコン系潤滑剤である請求項1記載の電線コード。
  3. 絶縁性の樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1または2に記載の電線コード。
  4. 絶縁性樹脂の最大皮膜厚みと最小皮膜厚みの差が50μm以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の電線コード。
  5. 金属被覆された有機繊維糸条の表面に、分解温度が150℃以上の潤滑剤を付着させ、180回/m以上の撚りを行い、その後絶縁性の樹脂であって、潤滑剤の分解温度以下の融点または軟化点を有する樹脂により、平均皮膜厚みが150μm以下となるように被覆することを特徴とする電線コードの製造方法。
JP2014084661A 2014-04-16 2014-04-16 電線コード Active JP6251114B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014084661A JP6251114B2 (ja) 2014-04-16 2014-04-16 電線コード

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014084661A JP6251114B2 (ja) 2014-04-16 2014-04-16 電線コード

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015204266A JP2015204266A (ja) 2015-11-16
JP6251114B2 true JP6251114B2 (ja) 2017-12-20

Family

ID=54597595

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014084661A Active JP6251114B2 (ja) 2014-04-16 2014-04-16 電線コード

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6251114B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018190516A (ja) * 2017-04-28 2018-11-29 住友電気工業株式会社 電線
CN111279437A (zh) * 2017-10-26 2020-06-12 古河电气工业株式会社 碳纳米管包覆电线

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5926934B2 (ja) * 2011-11-24 2016-05-25 矢崎総業株式会社 電線の製造方法、及び電線

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015204266A (ja) 2015-11-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10207659B2 (en) Flex-resistant shielded composite cable and wire harness
JP4878452B2 (ja) 複合被覆銅線及び複合被覆エナメル銅線
JP2012216526A (ja) 金属被覆炭素繊維電線
JP6220113B2 (ja) シールドスリーブの製造方法
JP6251114B2 (ja) 電線コード
JP6502104B2 (ja) 伸縮性電線
EP2329069B1 (en) Yarn for car seat heating with suitable lubricant
JP5993279B2 (ja) 電線コードおよびそれを用いたケーブル
KR101747708B1 (ko) 가공송전선 및 이의 제조방법
JP2008235259A (ja) 低熱膨張線状体の製作方法
KR20180062532A (ko) 가공송전선용 중심인장선 및 이를 포함하는 가공송전선
CN103680693B (zh) 抗拉圣诞灯饰电线及其制造方法
JP2015187956A (ja) ケーブル
WO2015129081A1 (ja) 撚り線導体および絶縁電線
JP2014150022A (ja) 絶縁電線
JP5318485B2 (ja) 錦糸線
JP2015203173A (ja) 導体及びそれからなる高伸度電線コード
JP2014086390A (ja) 絶縁電線
JP5926934B2 (ja) 電線の製造方法、及び電線
JP7166970B2 (ja) ワイヤーハーネス用撚り線
JP5993278B2 (ja) 電線コード
JP5608993B2 (ja) 自動車用電線導体および自動車用電線
WO2016158377A1 (ja) 絶縁電線
JP7295817B2 (ja) ワイヤーハーネス用導体撚線
CN211529675U (zh) 一种抗电晕的漆包线

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170117

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20171025

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171031

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20171124

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6251114

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150