JP6251114B2 - 電線コード - Google Patents
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Description
例えば、半田付け作業性、屈曲性に優れた電線を得るために、熱溶融性のポリベンザゾール繊維からなる芯部の外側に銅線を捲回して導体を形成する技術(特許文献1参照)、あるいは、導体を軽量化するために、アラミド繊維束の周りに銅細線を配置して撚線とした電線導体(特許文献2参照)、この撚線をさらに円形圧縮加工して熱処理したコード(特許文献3参照)等が知られている。しかし、これらの導体やコードは、繊維に銅線を巻き付けているため、同抵抗の銅線単体に比べて外径が太くなり、柔軟性に劣るといった問題点や、激しい屈曲や摩耗時には、やはり外周の銅線が切れて断線するといった問題が残っていた。
しかしながら、硬い金属で被覆された単糸を複数撚り合わせた糸条からなるこのような導体は、屈曲を繰り返すことで、めっきの脱落やクラックが生じ、電気抵抗値が上昇するといった問題があった。
さらには、潤滑剤が非シリコン系潤滑剤であることや、絶縁性の樹脂が熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、絶縁性樹脂の最大皮膜厚みと最小皮膜厚みの差が50μm以下であることが好ましい。
またもう一つの本発明の電線コードの製造方法は、金属被覆された有機繊維糸条の表面に、分解温度が150℃以上の潤滑剤を付着させ、180回/m以上の撚りを行い、その後絶縁性の樹脂であって、潤滑剤の分解温度以下の融点または軟化点を有する樹脂により、平均皮膜厚みが150μm以下となるように被覆することを特徴とする。
本発明の電線コードは、金属被覆された有機繊維糸条の外部を絶縁性の樹脂が被覆した電線コードである。
ここで有機繊維糸条を被覆する金属としては導電性を有せば特に限定は無いが、電気抵抗、価格等の面からは銅が一般的には最も好ましい。しかし各種用途により、その他のニッケル、銀、金の単独あるいはこれらの合金等も、好ましく用いられる。
またこの時、有機繊維糸条を構成する繊維の強度は、10cN/dtex以上であることが好ましい。さらには15〜35cN/dtexの範囲であることが好ましい。
なお、ここで撚り係数(TM)とは、下記式で表されるものである。
TM=T×√D/1055
[但し、TM;撚り係数、T;撚り数(回/m)、D;有機繊維糸条原糸の総繊度(tex)を示す。]
また本発明の電線コードは、有機繊維糸条の金属被覆の外側に分解温度が150℃以上の潤滑剤が付着しており、そのような有機繊維糸条の外部を絶縁性の樹脂が被覆した電線コードである。
鉱物油系潤滑剤としては、各種の流動パラフィンやワセリン、セレシン、固形パラフィン等が挙げられ、必要に応じてそれらを水に乳化させて塗布することができる。
この金属被覆有機繊維糸条の周りを被覆する絶縁樹脂としては、導体が銅等の金属からなる一般的な電線の絶縁体に使用されている樹脂であればいずれを用いることも可能である。例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴム、エラストマー等を挙げることができる。その中でも、柔軟性、屈曲疲労性の点からは熱可塑性樹脂が好ましい。特に好ましく用いられる熱可塑性樹脂としてはポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、又はポリエステル系の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
そしてこのような本発明の電線コードは、柔軟性、高引張強力及び高い耐屈曲疲労性を有し、さらに高導電性と表面の絶縁特性を兼ね備えた優れた電線コードとなる。
分解温度は、繊維を空気中にて10℃/minで昇温しながら、繊維の質量を温度の関数として測定する熱重量分析を用いて測定し、熱分解により質量が減少開始する温度とした。
融点は、樹脂を空気中にて10℃/minで昇温しながら、DSC法にて樹脂からの発熱および吸熱を測定し、融点に相当するピークが得られた温度とした。
被覆厚みは、絶縁被覆後のサンプルの断面を電子顕微鏡にて撮影した後、30°間隔で0°〜360°の12点の厚みを測長し、その平均値とした。
最大・最小被覆厚み差は、上記12点の中での最大厚みと最小厚みの差とした。
JIS C 3216−5に準拠して測定した。
電線コードをJIS−L1013に準拠して測定した。破断時の荷重[cN]を金属被覆前の繊維の繊度で割返し、引張強力[cN/dtex]とした。
JIS L 1096記載の方法で、電線コードに対して実施し、測定した。
抵抗値測定器(日置株式会社製 ミリオームハイテスタ3540−02A)にて、電線コード1m間の電気抵抗値を測定した。
JIS P 8115記載の方法で、電線コードを1000回屈曲後、上記(7)の方法にて電線コード1m間の電気抵抗値を測定した。
繊度440dtex、単繊維本数267本のコポリパラフェニレン−3、4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド長繊維糸条(帝人テクノプロダクツ株式会社製、「テクノーラ」)に、以下の方法で金属被覆を施した。
金属被覆処理(銅めっき処理)は以下のようにして行った。
界面活性剤(「Cataposit 1501PREDIP」、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製(以下、この処理における剤は同じ会社の製品であるため記載を省略する))0.05%水溶液に、約40℃で約1分間浸せき後、触媒となるPdを含む処理液(「OMNISHIELD ACTIVATOR 1572」0.2%+濃塩酸0.8%溶液)に、室温で1分間浸せきし、Pdを吸着した後、水洗を行い過剰のPdを除去した。その後、銅を含む処理液(「OMNISHIELD ELECTROLESS COPPER 1598M」4.8%、「OMNISHIELD ELECTROLESS COPPER 1598A」1.0%、「OMNISHIELD ELECTROLESS COPPER 1598R」0.2%、「CUPOSIT Y」1.4%、「CUPOSIT Z」2.2%、「OMNISHIELD 1120SR COPPER REPLENISHER」0.16%溶液)に浸漬し、無電解銅めっきを実施した。さらにその後、硫酸銅(CuSO4・5H2O)20%、硫酸5.0%溶液中で、電気抵抗値が約1.0Ω/mになるまで電気銅めっきを実施した。
得られた電線コードの物性を表1に示す。この方法で得られた電線コードは優れた引張強度、柔軟性、導体の耐屈曲疲労性、絶縁被覆の絶縁特性を示した。
潤滑剤が塗布された金属被覆繊維糸条に480回/mの撚り(撚り係数;3)を施した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードは、強撚により若干の引張強度低下が見られたが、より優れた導体の耐屈曲疲労性を示し、柔軟性、絶縁被覆の絶縁特性も優れたものであった。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
被覆絶縁樹脂としてポリエステル系熱可塑性エラストマーの代わりに、ポリ塩化ビニル樹脂(融点;170℃)を使用した以外は実施例1と同様にして、電線コードを得た。若干、柔軟性、導体の耐屈曲疲労性が劣っていたものの、十分に実用性に耐える優れた性能を示した。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
潤滑剤として、脂肪酸エステルの代わりに精製された鉱物油(分解開始温度;約180℃)を金属被覆繊維糸条に塗布した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードは優れた性能を示した。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
金属被覆繊維糸条に潤滑剤を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードは、金属被覆された単糸間の高い摩擦により、低い引張強度保持率と低い耐屈曲疲労性であった。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
潤滑剤が塗布された金属被覆繊維糸条に160回/mの撚りを施した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードは、潤滑剤が塗布されているにも関わらず、撚りが不十分なことから、低い耐屈曲疲労性であった。また、繊維糸条の集束性が悪いことにより、絶縁被覆樹脂の厚みバラツキが大きく、結果、絶縁特性も低いものとなった。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
分解開始温度が約130℃の鉱物油を金属被覆繊維糸条に塗布した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードの耐屈曲疲労性は低いものであった。これは、潤滑油の分解温度が低いため、絶縁樹脂の被覆工程で潤滑剤が分解し、金属被覆された単糸間の摩擦を低減する効果が失われたためと考えられる。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
絶縁被覆樹脂として融点が227℃のポリエステル系熱可塑性エラストマー(「ハイトレル2751」、東レ株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードの耐屈曲疲労性は低いものであった。これは、絶縁被覆樹脂の融点が高いため、絶縁樹脂の被覆工程で潤滑剤が分解し、金属被覆された単糸間の摩擦を低減する効果が失われたためと考えられる。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
絶縁樹脂を平均被覆厚みが約200μmになるよう被覆した以外は、実施例1と同様にして電線コードを得た。得られた電線コードは、厚い被覆により優れた絶縁特性を示したが、その厚みにより電線コードは太くなり、結果、柔軟性、導体の耐屈曲疲労性が著しく低下した。処理条件及び得られた物性を表1に併せて記した。
Claims (5)
- 金属被覆された有機繊維糸条の外部を絶縁性の樹脂が被覆した電線コードであって、金属被覆された有機繊維糸条の撚り数が180回/m以上であり、金属被覆の外側に分解温度が150℃以上の潤滑剤が付着し、絶縁性の樹脂の融点または軟化点が潤滑剤の分解温度以下であり、絶縁性の樹脂の平均皮膜厚みが150μm以下であることを特徴とする電線コード。
- 潤滑剤が非シリコン系潤滑剤である請求項1記載の電線コード。
- 絶縁性の樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1または2に記載の電線コード。
- 絶縁性樹脂の最大皮膜厚みと最小皮膜厚みの差が50μm以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の電線コード。
- 金属被覆された有機繊維糸条の表面に、分解温度が150℃以上の潤滑剤を付着させ、180回/m以上の撚りを行い、その後絶縁性の樹脂であって、潤滑剤の分解温度以下の融点または軟化点を有する樹脂により、平均皮膜厚みが150μm以下となるように被覆することを特徴とする電線コードの製造方法。
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