JP6244831B2 - Ni−Si合金微粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、CaSi2と遷移金属の塩化物とを反応させ、遷移金属シリサイドとSiの複合微粒子を合成する方法が開示されている。
非特許文献1には、NiとCoの複合酸化物とSiH4とを反応させ、二元金属ニッケル−コバルトシリサイド(Ni1-xCoxSi2)を合成する方法が開示されている。
非特許文献3には、石英管内にNiホイルを置き、石英管内にシラン(10%シラン、残部He)を流しながら320〜420℃で加熱し、Ni表面においてシランを分解させ、ニッケルシリサイドナノワイヤーを合成する方法が開示されている。
非特許文献5には、メカニカルアロイング法を用いて、Ni−Siアモルファス粉末を合成する方法が開示されている。
さらに、特許文献2及び非特許文献6には、Fe粉末、Si粉末及び金属NaをBN坩堝に入れ、773〜1073Kで1.5〜24h加熱し、β−FeSi2を合成する方法が開示されている
非特許文献1には、x=0であるニッケル−コバルトシリサイド(すなわち、NiSi2)の単相粒子は報告されているが、Ni2SiやNiSiの単相粒子の合成例は記載されていない。
非特許文献4、5に記載の方法はで、結晶性の低いアモルファス粒子を合成することはできるが、結晶性の高いニッケルシリサイド粒子を合成することはできない。また、非特許文献4には、NiSi単相と記載されているが、元素分析の結果は示されていない。
しかしながら、結晶性が高く、微細な一次粒子径を有し、粒状で、かつ、単相のNixSi微粒子(0.5<x≦3.0)を合成した例は、従来にはない。
組成式:NixSi(0.5<x≦3)で表されるニッケルシリサイド相の単相からなり、
一次粒子の粒径が1.5μm以下であり、
前記一次粒子のアスペクト比が2.0以下である
ことを要旨とする。
Ni、Si及びNaを含み、0.5<Ni/Si比(モル比)≦3.0、かつ、1.5<Na/Si比(モル比)≦15.0である原料を調製する原料調製工程と、
前記原料を不活性雰囲気下で加熱し、本発明に係るNi−Si合金微粒子を生成させる反応工程と、
前記反応工程で得られた反応物からNaを除去する除去工程と
を備えていることを要旨とする。
これに対し、0.5<Ni/Si比≦3.0となるように、Ni、Si及びNaを含む原料を調製し、これを不活性雰囲気下で加熱すると、結晶性が高く、かつ、微細な粒状のNi−Si合金微粒子を合成することができる。
[1. Ni−Si合金微粒子]
本発明に係るNi−Si合金微粒子は、
組成式:NixSi(0.5<x≦3)で表されるニッケルシリサイド相の単相からなり、
一次粒子の粒径が1.5μm以下であり、
前記一次粒子のアスペクト比が2.0以下である。
本発明に係るNi−Si合金微粒子は、組成式:NixSi(0.5<x≦3)で表される。
上記組成式で表されるニッケルシリサイド相としては、具体的には、Ni3Si、Ni3Si2、Ni5Si2、Ni2Si、NiSiなどがある。
これらの中でも、ニッケルシリサイド相は、Ni2Si又はNiSiが好ましい。これは、電気伝導度が高く、かつ、耐酸化性も優れているためである。
「単相」とは、上述したニッケルシリサイド相のいずれか1つを含み、着目しているニッケルシリサイド相(主相)以外のニッケルシリサイド相(副相)や、ニッケルシリサイド相以外の相(異相)を実質的に含まないことをいう。
より具体的には、「単相」とは、(1)式で定義される結晶相のモル比(副相及び異相のモル比)が5%未満であることをいう。
結晶相のモル比=ΣIi×100/(I0+ΣIi) ・・・(1)
但し、
ΣIiは、個々の副相又は異相の最強線ピークの強度(Ii)の総和、
I0は、主相の最強線ピークの強度。
結晶相のモル比=I0×100/(I0+ΣIi) ・・・(2)
ニッケルシリサイド相の単相からなる微粒子は、合成時におけるNi/Si比(モル比)を制御することにより合成することができる。
本発明に係るNi−Si合金微粒子は、一次粒子径が1.5μm以下である。後述するように、Na融液共存下でNiとSiとを反応させると、このような微細な一次粒子径を持つNi−Si合金微粒子が得られる。
「一次粒子」とは、外観上、ひとつの単結晶に見える領域をいう。
「一次粒子径」とは、一次粒子の最大サイズ方向の長さ(長径:d1)をいう。
得られた微粒子は、このような一次粒子の凝集体(二次粒子)からなる。二次粒子の大きさは、製造条件にもよるが、通常、1.5μm〜20μm程度である。
本発明に係るNi−Si合金微粒子は、一次粒子のアスペクト比が2.0以下である。後述するように、Na融液共存下でNiとSiとを反応させると、一次粒子の形状がナノワイヤー状ではなく、粒状のNi−Si合金微粒子が得られる。
「アスペクト比」とは、一次粒子の最大サイズ方向に対して垂直方向の長さ(短径:d2)に対する、一次粒子の最大サイズ方向の長さ(長径:d1)の比(=d1/d2)をいう。
後述する方法を用いると、結晶性の高いNi−Si合金微粒子が得られる。結晶性の程度は、XRDパターンにおける最強ピークの半値幅(半値全幅)により評価することができる。
製造条件を最適化すると、最強ピークの半値幅(半値全幅)が1.0°以下、0.5°以下、あるいは、0.2°以下であるNi−Si合金微粒子が得られる。
本発明に係るNi−Si合金微粒子は、Na融液共存下で反応させた後、Naを除去することにより得られる。そのため、製造条件を最適化すると、高い比表面積を有するNi−Si合金微粒子が得られる。
本発明に係るNi−Si合金微粒子の製造方法は、
Ni、Si及びNaを含み、0.5<Ni/Si比(モル比)≦3.0、かつ、1.5<Na/Si比(モル比)≦15.0である原料を調製する原料調製工程と、
前記原料を不活性雰囲気下で加熱し、本発明に係るNi−Si合金微粒子を生成させる反応工程と、
前記反応工程で得られた反応物からNaを除去する除去工程と
を備えている。
まず、Ni、Si及びNaを含み、0.5<Ni/Si比(モル比)≦3.0、かつ、1.5<Na/Si比(モル比)≦15.0である原料を調製する(原料調製工程)。
原料には、基本的には、純Ni、純Si、及び、純Naを用いる。また、原料として、Ni、Si及びNaのいずれか2以上を含む合金(金属間化合物を含む)を用いることもできる。
Na及びSiを含む原料としては、例えば、Na−Si系化合物がある。
「Na−Si系化合物」とは、NaとSiから構成される化合物をいう。Na−Si系化合物としては、NaSi、Naクラスレート(Na8Si46、NaxSi136(1.5<x<24))などがある。
Ni/Si比は、目的とする主相が得られるように最適な値を選択する。後述する方法を用いると、仕込み組成にほぼ対応する組成を有するNi−Si合金微粒子が得られる。
但し、後述する方法を用いて、Ni0.5Si(NiSi2)を合成することはできない。従って、Ni/Si比は、0.5超とする必要がある。
一方、Ni−Si系においてNi量が最大のニッケルシリサイド相は、Ni3Siである。従って、Ni/Si比は、3.0以下とする必要がある。
本発明に係る方法を用いてNi−Si合金微粒子を合成するためには、反応系内に所定量のNaが存在している必要がある。
Siに対してNaが少なすぎると、反応中に微粒子を生成させるのに必要な量のNa融液が生成しない。その結果、反応物中にSiが残留する場合がある。従って、Na/Si比は、1.5超である必要がある。Na/Si比は、さらに好ましくは、2.0以上、さらに好ましくは、3.0以上である。
次に、前記原料を不活性雰囲気下で加熱し、本発明に係るNi−Si合金微粒子を生成させる(反応工程)。
例えば、出発原料として、純Ni、純Si、及び、純Naを用いる場合、加熱温度は、300℃以上が好ましい。加熱温度は、さらに好ましくは、500℃以上である。
一方、加熱温度が高すぎると、Ni−Si合金微粒子が粗大化する。従って、加熱温度は、650℃以下が好ましい。
次に、前記反応工程で得られた反応物からNaを除去する(除去工程)。
Naを除去する方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。Naを除去する方法としては、例えば、
(1)Naを溶解可能な溶媒を用いて、反応物を洗浄する方法、
(2)反応物を減圧下で加熱し、Naを蒸発除去する方法、
などがある。
Naを溶解可能な溶媒としては、例えば、2−プロパノール、エタノールなどのアルコール類、液化アンモニア、水などがある。
なお、NaSiを原料にした場合には、未反応のNaSiが残存する場合がある。NaSiは、ある種の溶媒(例えば、2−プロパノール、エタノールなどのアルコール類)に溶解する。そのため、NaSiを溶解可能な溶媒を用いて洗浄することにより、未反応のNaSiを除去することが可能である。
Ni/Si比=0.5となるように、Ni、Si及びNaを含む原料を調製し、これを不活性雰囲気下で加熱しても、結晶性が高く、かつ、微細な粒状のNi0.5Si(NiSi2)微粒子を合成することはできない。
これに対し、0.5<Ni/Si比≦3.0となるように、Ni、Si及びNaを含む原料を調製し、これを不活性雰囲気下で加熱すると、結晶性が高く、かつ、微細な粒状のNi−Si合金微粒子を合成することができる。
すなわち、Niやニッケルシリサイド(Ni−Si合金)は、Naへの溶解度が低い。そのため、Na融液が存在する環境下でNiとSiとを加熱すると、まず、Na融液にSiが溶け込む。次いで、このSiがNiに作用してニッケルシリサイドが生成する。すなわち、Naは、ニッケルシリサイドを粒成長させることなく、ニッケルシリサイドの生成反応を促進させる作用がある。その結果、ニッケルシリサイドが、自形が発達した微粒子の形で生成すると考えられる。
さらに、Na融液が存在する環境下で合成が行われるため、酸化物(多くの場合、絶縁体)の生成も抑制される。
[1. 試料の作製]
Ar雰囲気中で所定量のNi粉末、Si粉末、NaSi粉末、及び、NaをBNるつぼに入れ、このBNるつぼをさらにSUS管内に封入した。次いで、SUS管を600℃で5時間加熱した。冷却後、SUS管から反応物を取り出した。さらに、反応物を大気中においてアルコール洗浄し、得られた生成物を回収した。表1及び表2に、各試料の合成条件を示す。
[2.1. XRD測定]
得られた粉末について、XRDパターンを測定した。各相の最強線ピーク強度、並びに、上述した(1)式及び(2)を用いて、主相及び主相以外の結晶相のモル比を算出した。
得られた粉末について、SEM観察を行った。外見上、1つの粒子に見える領域を一次粒子と見なした。一つの二次粒子の中に含まれる10個以上の一次粒子について、最大サイズ方向の長さ(長径:d1)を計測した。d1の平均値を、一次粒子径と定義した。計測方法の一例を、図3の下図に示す。
同様に、SEM像の中からランダムに選んだ10個以上の二次粒子について、最大サイズ方向の長さを計測し、その平均値を二次粒子径と定義した。
得られた粉末について、TEM観察を行った。
[3.1. Ni2Si相の生成を狙った合成]
[3.1.1. 実施例1−1、1−2]
実施例1−1及び1−2の合成条件(原料:Ni粉末、Si粉末、及びNa)では、NiとSiの仕込み比どおり、ほぼ単相のNi2Siが生成することがわかった(表3、図1参照)。Ni2Siの含有量(主相のモル比)は、いずれも95%以上であった。
また、一次粒子径は1.4μm以下、一次粒子のアスペクト比は1.4以下、二次粒子径は10μm以下であった(表3、図2、及び図3参照)
さらに、実施例1−2の試料では、Ni2Si相に対応する明瞭なTEM−電子線回折図形が得られた(図4参照)。試料中の一次粒子は、結晶性の高い粒子と考えられる。
比較例1(原料:Ni粉末、及びSi粉末)では、Ni2Siの生成反応が全く進まなかった(表4、図13参照)。
比較例4(原料:Ni粉末、Si粉末、及びNa)においても、Ni2Siの生成反応がほとんど進まなかった(表4、図14参照)。
[3.2.1. 実施例2−1〜2−5]
実施例2−1〜実施例2−2の合成条件(原料:Ni粉末、Si粉末、及びNa、Na量:2≦Na/Si(モル比))、並びに、実施例2−3〜実施例2−5の条件(原料:Ni粉末、NaSi粉末、及びNa、Na量:2≦Na/Si(モル比))のいずれにおいても、NiとSiの仕込み比どおり、ほぼ単相のNiSiが生成することがわかった(表3、図5〜図12参照)。
また、これらの実施例についても、一次粒子径は1.0μm以下、一次粒子のアスペクト比は1.4以下であり、二次粒子径は12μm以下であった(表3参照)。
比較例2(原料:Ni粉末、及びSi粉末)では、NiSiの生成反応が全く進まなかった(表4、図13参照)。これは、上述と同様に、系内にNaが存在しないためと考えられる。
[3.3.1. 比較例3]
比較例3(原料:Ni粉末、及びSi粉末)では、NiSi2の生成反応が全く進まなかった(表4、図13参照)。これは、上述と同様に、系内にNaが存在しないためと考えられる。
比較例5(原料:Ni粉末、NaSi粉末、及びNa、Na量:Na/Si(モル比)=4)においては、仕込みのNi/Si比(モル比)を1/2としたにも関わらず、NiSi2ではなく、NiSiが生成した(図14参照)。
これに対して、Fe、Si、Naを用いた反応系では、β−FeSi2(Fe/Si=1/2)の合成例が報告されている(特許文献2、非特許文献6参照)。つまり、同様の反応系であっても、生成可能な結晶相は一義的には定まらず、金属種や仕込み組成によって変わることが示唆された。
非特許文献4には、NiとSiとをメカニカルミリングすることにより、NiSi単相微粒子が得られたと報告されている。非特許文献4に報告がある材料については、NiSi相の101面に帰属するXRDピークの半値全幅は、2θ=1.38°であった。
これに対し、実施例2−1で得られた試料のXRDピークの半値全幅は、2θ=0.185°であった。これは、非特許文献4ではメカニカルミリングしているために、本発明と比較して、一次粒子がより細かい結晶子の集合体からなっていること、つまり、本発明と比較して結晶性が低いと考えられた。
Claims (3)
- 組成式:NixSi(0.5<x≦3)で表されるニッケルシリサイド相の単相からなり、
一次粒子の粒径が1.5μm以下であり、
前記一次粒子のアスペクト比が2.0以下であり、
前記ニッケルシリサイド相は、Ni 2 Si又はNiSiである
Ni−Si合金微粒子。 - 組成式:Ni x Si(0.5<x≦3)で表されるニッケルシリサイド相の単相からなり、
一次粒子の粒径が1.5μm以下であり、
前記一次粒子のアスペクト比が2.0以下であり、
前記ニッケルシリサイド相の最強ピークの半値幅(半値全幅)は、1.0°以下であるNi−Si合金微粒子。 - Ni、Si及びNaを含み、0.5<Ni/Si比(モル比)≦3.0、かつ、1.5<Na/Si比(モル比)≦15.0である原料を調製する原料調製工程と、
前記原料を不活性雰囲気下で加熱し、組成式:Ni x Si(0.5<x≦3)で表されるニッケルシリサイド相の単相からなり、一次粒子の粒径が1.5μm以下であり、前記一次粒子のアスペクト比が2.0以下であるNi−Si合金微粒子を生成させる反応工程と、
前記反応工程で得られた反応物からNaを除去する除去工程と
を備えたNi−Si合金微粒子の製造方法。
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