JP6241973B1 - 発光デバイスおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高効率で長寿命の発光デバイスを安価かつ大量に提供する【解決手段】いずれかが実質的に透明である2つの電極と、前記2つの電極の間に配置された垂直型のLEDダイと、前記LEDダイの全体を覆うように配置された導電性高分子層を含む発光デバイスであって、前記導電性高分子の導電率が10−5S/cm 〜 550 S/cmの範囲であり、前記LEDダイの側面に配置された前記導電性高分子層の厚みが最小となる部分の断面の面積が前記LEDダイの面積の10分の1以下であることを特徴とする発光デバイス。【選択図】図4
Description
本発明は、発光デバイスとその製造方法に関するものである。
発光ダイオード(以降、LEDと呼ぶ)は省電力で長寿命などの長所を有する発光デバイスであり、照明やディスプレイのバックライトとして広く用いられている。LEDは、サファイアなど小型の結晶性基板の上に発光性の薄膜を結晶成長させて製造されている。基板上に面状に作製されたLEDデバイスは、一辺が100マイクロメートルオーダーの小片(以降、LEDダイと呼ぶ)に分割される。LEDダイは、1個あるいは数個ずつ、外部電源に接続できる端子に固定され(以降、実装と呼ぶ)、電圧を印加することで発光する実用的な発光デバイスとなる。
特許文献1には、多数個のLEDダイを2つの透明基板で挟んだ発光デバイスの構造と製造方法が開示されている。導電性表面を有する底部基板を提供し、ホットメルト接着剤シートを提供し、上部電極と底部電極を有するLEDダイをホットメルト接着剤シートに埋め込み、透明導電層を有する上部透明基板を提供し、ホットメルト接着剤シートは、導電性表面と透明導電層との間に挿入され、上部基板を底部基板に結合するために、加熱圧力ローラシステムを通し、ホットメルト・シートが柔らかくなるにつれ、LEDダイは分断され、それにより、上部電極は、上部基板の透明導電層と電気接触し、底部電極は、底部基板の導電性表面と電気接触し、それにより各LEDダイのp側およびn側は、上部導電層および底部導電性表面と自動的に接続される。また、上部透明導電層と底部導電性表面はホットメルト接着剤により絶縁されている。これにより、ワイヤ結合、はんだ付け、リードワイヤ、あるいは他の電気接続要素またはステップが必要でなくなり、高歩留りで低コストな方法であること、また、高密度実装にも有効であることが開示されている。
特許文献2には、特許文献1の構造の課題として、次の内容を開示している。ホットメルト材料はある確率においてLEDダイ表面を湿潤させることが十分に考えらえる。この場合、ホットメルト材料が絶縁材料であるために、LEDダイへの電気的接続が得られなくなり、発光デバイスとして機能しなくなる。この問題は、多数の発光デバイスを製造する場合の歩留りの低減と、多数個のLEDダイを配置し全数を光らせたい場合に大きな問題となる。さらに、長期にわたって発光デバイスを使用する際、LEDダイの表面が導電性材料で湿潤されておらず、電極とLEDダイが直接接触している構造であるために、電極とLEDダイの接触は不安定であり、機械的衝撃や曲げなどの応力によって容易に剥離して電気的に絶縁されるため、使用寿命が短い課題もある。
特許文献2には、特許文献1の課題の解決に対して、いずれかが実質的に透明である陽極と陰極と、前記陽極と陰極の間に配置されたp側とn側を有するLEDダイと、前記陽極と陰極の間に配置され、前記LEDダイに接する有機半導体材料を含む有機層からなる発光デバイスであって、前記LEDダイはn側が陰極側、p側が陽極側になるように配置され、前記有機層はLEDダイが存在する断面においてはn側と陰極の間あるいはp側と陽極の間の少なくともいずれか一方を充填するように配置され、LEDダイが存在しない断面においては陰極と陽極の間を充填するように配置され、LEDダイが存在する部分と存在しない部分にわたって連続的に配置され、LEDダイが存在しない断面における前記有機層の膜厚がLEDダイが存在する断面における前記有機層の膜厚より厚いことを特徴とする発光デバイスの構造を開示している。これによって、歩留りが高く製造ができ、加えて長期にわたり安定的に発光する発光デバイスを得ることができる、と開示されている。
Chemical Review、2007年、107巻 953〜1010ページ
特許文献1および2に記載の発光デバイスは、高効率、長寿命、製造歩留まりを高めるために更なる改善の余地がある。
本発明が解決しようとする課題は、高効率で長寿命の発光デバイスを高い製造歩留まりで提供することである。
本発明の発光デバイスは、いずれかが実質的に透明である2つの電極と、前記2つの電極の間に配置された垂直型のLEDダイと、前記LEDダイの全体を覆うように配置された導電性高分子層を含む発光デバイスであって、前記導電性高分子の導電率が10 −5 S/cm 〜 550 S/cmの範囲であり、前記LEDダイの側面に配置された前記導電性高分子層の厚みが最小となる部分の断面の面積が前記LEDダイの面積の10分の1以下であることを特徴とする発光デバイスである。
本発明において、LEDダイと電極の間に導電性高分子層が存在することによって電気的な接触を確実に得ることができる。また、LEDダイ全体を覆うように導電性高分子層を配置しているため、LEDダイの側面に蓄積された電荷を導電性高分子に渡して逃がすことができるためLEDダイの使用寿命を延ばすことができる。加えて、LEDダイ全体を覆うように導電性高分子層を配置しているため、LEDの位置を固定することができ、発光デバイスに振動や曲げなどの力学的な応力が加わった際には、導電性高分子がもつ柔軟性によってその応力を緩和あるいは吸収できるために、位置ずれやLEDダイの剥離などに起因する電気抵抗の大きな変化が起こらないので応力が加わった状態でも安定な発光を得ることができる。
本発明において、導電性高分子層の電気抵抗はLEDダイの電気抵抗よりもはるかに大きいうえに、LEDダイの側面に配置された導電性高分子層の厚みの最小となる部分の断面の面積がLEDダイの面積の10分の1以下であるため、導電性高分子層に流れる漏れ電流は、LEDダイに流れる電流よりも極めて低く抑えることができる。したがって、発光デバイスの消費電力にはほとんど影響がなく、前段落に記載した良好な効果を得ることができるのである。
本発明の別の形態としては、前記発光デバイスにおいて、前記導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸を含む材料であることを特徴とする発光デバイスである。
本発明に用いる導電性高分子としては、これに限定されるものではないが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸を含む材料を好適に用いることができる。この材料は、導電性高分子の中でも高い導電性を示すことが知られており、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の含有比率を変化させることで導電性を変化させることができるため、本発明の発光デバイスにおいて、LEDダイに流れる電流と導電性高分子層に流れる電流の比率を自由に変化させることができる。また、水やエタノールなどの毒性が低い有機溶媒に安定に溶解あるいは分散でき、その溶液あるいは分散液を所望の位置に塗布して乾燥することで容易に導電性高分子の膜を得ることができる。
本発明の別の形態としては、本発明の発光デバイスにおいて、前記2つの電極の間に有機半導体を含む有機層が配置されており、LEDダイが存在しない断面においては陰極と陽極の間を充填するように配置され、LEDダイが存在する部分と存在しない部分にわたって連続的に配置され、LEDダイが存在しない断面における前記有機層の膜厚がLEDダイが存在する断面における前記有機層の膜厚より厚いことを特徴とする発光デバイスである。
本発明における有機半導体とは、電気導電性を示す有機化合物全般を指し、1つの化合物から構成されていてもよいし、複数の化合物から構成されていてもよい。有機半導体の化学構造の例としては、非特許文献1に開示されているようなベンゼン環などの芳香族の部位を含む有機化合物を挙げることができる。主に正孔を運ぶ性質をもつ有機半導体をp型有機半導体、主に電子を運ぶ性質をもつ有機半導体をn型有機半導体と呼ぶことがある。
本発明により、電極とLEDダイの間にある有機半導体を含む有機層が電子あるいは正孔の注入と輸送を担うため、陽極からLEDダイのp側、あるいは、陰極からLEDダイのn側に電荷を効率的に輸送できるので、LEDのn側とp側に発光に必要な電圧を小さな電圧ロスで印加することができる。有機半導体を含む有機層は電極とLEDダイの間を電気的に絶縁しないため、歩留りが高く製造ができ、加えて長期にわたり安定的に発光する発光デバイスを得ることができる。
本発明の発光デバイスにおいて、LEDダイがない部分において2つの電極間の有機半導体を含む有機層に流れる漏れ電流が懸念されるが、実質的に問題とならない。なぜならば、本発明の発光デバイスにおいては、LEDダイが存在しない断面における有機層の膜厚がLEDダイが存在する断面における有機層の膜厚より厚いためである。有機半導体において電子あるいは正孔を注入し輸送する場合の電流は、一般に空間電荷制限電流というメカニズムによるが、その電流密度は膜厚の3乗に反比例するため、膜厚の差を設けておくことで、LEDダイがある部分とない部分とで大きな電流コントラストを得ることができ、LEDダイがない部分の漏れ電流量は無視できる程度になる。例えば、LEDダイが存在しない断面における有機層の膜厚がLEDダイが存在する断面における有機層の膜厚より10倍厚い場合、3乗反比例によりLEDダイが存在しない断面における電流密度はLEDダイが存在する断面の電流密度の1000分の1となる。なお、空間電荷制限電流に完全に従わない場合においても、有機半導体を流れる電流は膜厚依存性が大きいため、同様の電流コントラストを得ることができる。
発明者は本発明の発光デバイスの製造方法についても発明した。本発明の製造方法は、電極を有する基板を準備する工程と、前記電極を有する基板の上にLEDダイを配置する工程と、前記導電性高分子を含む溶液あるいは融液をLEDダイの上から塗布する工程と、前記導電性高分子を含む溶液あるいは融液を固化させる工程をこの順に含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法である。
本発明の製造方法において、LEDダイを配置した後に導電性高分子を含む溶液あるいは融液を塗布することで、導電性高分子を含む溶液あるいは融液が毛細管現象によって基板側の電極とLEDダイの間に入り込むため、導電性高分子層がLEDダイの全体を覆うように配置することができる。
別の本発明の製造方法は、電極を有する基板を準備する工程と、前記電極を有する基板の上に前記導電性高分子を含む溶液あるいは融液を塗布する工程と、塗布した導電性高分子を含む溶液あるいは融液の位置に前記LEDダイを配置して埋め込む工程と、前記導電性高分子を含む溶液あるいは融液を固化させる工程をこの順に含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法である。
本発明の製造方法において、導電性高分子を含む溶液あるいは融液を塗布したのちに、塗布した位置にLEDダイを配置することによって、LEDダイを導電性高分子の溶液あるいは融液に完全に埋め込み、導電性高分子層がLEDダイの全体を覆うように配置することができる。導電性高分子を含む溶液あるいは融液にLEDダイを完全に埋め込み、LEDダイの側面に配置された導電性高分子層の厚みの最小となる部分の断面の面積をLEDダイの面積の10分の1以下とするためには、導電性高分子を含む溶液あるいは融液の粘度を低く抑えた方がよい。
別の本発明の製造方法は、LEDダイを導電性高分子層で被覆する工程と、電極を有する基板を準備する工程と、前記電極を有する基板の上に前記導電性高分子層で被覆したLEDダイを配置する工程とをこの順に含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法である。
本発明の製造方法において、LEDダイをあらかじめ導電性高分子層で被覆しておくことによって、本発明の発光デバイスの構造を確実に得ることができる。導電性高分子層で被覆されたLEDダイを配置するとき、あるいは配置後に熱によって導電性高分子層を多少でも溶融状態にすることで、導電性高分子層と電極との電気的な接触をより確実なものにすることができる。
本発明により、高効率で長寿命の発光デバイスを高い製造歩留まりで提供することができるようになる。
本発明を実施するための形態について詳細に記載する。本発明の発光デバイスは、いずれかが実質的に透明である2つの電極と、前記2つの電極の間に配置された垂直型のLEDダイと、前記LEDダイの全体を覆うように配置された導電性高分子層を含む発光デバイスであって、前記導電性高分子の導電率が10 −5 S/cm 〜 550 S/cmの範囲であり、前記LEDダイの側面に配置された前記導電高分子層の厚みが最小となる部分の断面の面積が前記LEDダイの面積の10分の1以下であることを特徴とする発光デバイスである。
実質的に透明な陽極あるいは陰極の材質としては、インジウムスズ酸化物(以下、ITOと呼ぶことがある)などの金属酸化物電極、あるいはアルミニウム、銀などからなる100nm以下の膜厚の薄膜金属電極、あるいはカーボンナノチューブやグラフェンなどの炭素材料、あるいは銀や銅などのナノワイヤー材料などが挙げられる。電極の製造方法としては、真空蒸着法、スパッタ法やCVD法などの乾式法、前駆体のインクを塗布したのちベークする湿式法を用いることができる。透明な電極のLED発光に対する透過率は高い方が消費電力を低く抑えることができるので100%に近いほど好ましいが、10%以上であればよい。電極の抵抗値は低い方が電圧ロスを低減できるので好ましいが1000オーム/□以下のシート抵抗であればよい。一般に透明電極の導電性は高くないため、補助配線として導電性が高い金属からなる比較的厚い配線を形成しておくと、実質的な抵抗値を大きく低減でき、消費電力の低減に寄与する。
陽極あるいは陰極の片方に不透明性の電極を用いてもよい。この場合、一般的な金属膜などを基板の上に形成してもよいし、金属板や金属フィルムをそのまま電極兼基板として用いることができる。
陽極と陰極の両方に実質的に透明な電極を用いた場合、光透過性がある発光デバイスを得ることができる。これにより面状の発光デバイスを通して観測者がいる側と逆側を見ることができるシースルー性を得ることができ、実用上の価値が高い。
本発明に用いるLEDダイとしては、一般に市販されている垂直型LEDダイを好適に用いることができる。本明細書中において、垂直とはLEDの発光層に電流が流れる方向を指し、水平とはLEDの発光層に電流が流れる方向と直行する面のことを指す。垂直型のLEDダイとは、発光層に電流が流れる方向でお互いに逆側になるようにLEDのp側とn側が配置された構造のLEDダイのことを指す。本発明において、同じ面側にp側とn側、あるいは陽極と陰極を取り出した水平型LEDダイを用いることはできない。なぜならば、本発明の効果を得るためには、LEDダイのn側が陰極側、p側が陽極側になるように配置し、LEDダイの平面の垂直方向に電流を流す構造とする必要があるからである。
本発明の導電性高分子層とは、導電性高分子を含む膜状のものを意味する。導電性高分子層は、LEDダイの全体を覆うように配置され、LEDダイの側面に配置された前記導電高分子層の厚みが最小となる部分の面積が前記LEDダイの面積の10分の1以下であることが必要である。側面とは、LEDダイの垂直方向に平行する端面を意味する。図1は、本発明の発光デバイスの断面の模式図であり、LEDダイの断面の距離に対して、LEDダイの側面に配置された導電性高分子層の厚みが最小となる部分の断面の距離が10分の1以下である。LEDダイと電極の間に導電性高分子層が存在することによって電気的な接触を確実に得ることができる。また、LEDダイ全体を覆うように導電性高分子層を配置しているため、LEDダイの側面に蓄積された電荷を導電性高分子に渡して逃がすことができ、LEDダイの使用寿命を延ばすことができる。加えて、LEDダイ全体を覆うように導電性高分子層を配置しているため、LEDの位置を固定することができ、発光デバイスに振動や曲げなどの力学的な応力が加わった際には、導電性高分子がもつ柔軟性によってその応力を緩和あるいは吸収できる。これにより、位置ずれやLEDダイの剥離あるいは電気抵抗の大きな変化が起こらないために、応力が加わった状態でも安定な発光を得ることができる。
本発明の発光デバイスの構造において、LEDダイに流れる電流と並行する導電性高分子層に流れる漏れ電流が懸念されるが、導電性高分子の電気抵抗はLEDダイの電気抵抗よりもはるかに大きいうえに、LEDダイの側面に配置された導電性高分子層の厚みの最小となる部分の断面の面積がLEDダイの面積の10分の1以下であるため、導電性高分子層に流れる漏れ電流は、LEDダイに流れる電流よりも極めて低く抑えることができる。図2は、LED電流と漏れ電流の流れる位置と、それらの量を矢印の太さで模式的に示したものである。以上のことから、発光デバイスの消費電力にはほとんど影響がなく、本発明の効果を得ることができる。
本発明において、導電性高分子層はLEDダイの全体を実質的に覆っていればその役割を果たすことができ、一部のピンホールや欠落部分があったとしても、目的とする効果を得るために十分な被覆が得られていればよい。
なお、図1および図2において、2つの電極間のLEDダイも導電性高分子層も配置されていない部分については、空間であってもよいし、絶縁層で充填されていてもよいし、後述のように有機半導体を含む有機層で充填されていてもよい。
なお、導電性高分子層の厚みの最小となる断面に着目する理由は、導電性高分子層を流れる電流のボトルネックの部分であり、流れる電流を規定するためである。
LEDダイに流れる電流値と導電性高分子層に流れる電流値の比較を行った結果を図3に示す。LEDダイの電流特性としてエピスター社の赤色LEDであるES−CAHR509の電流−電圧特性の測定結果が黒丸で示してある。このLEDの断面の面積は52900平方マイクロメートルであるが、その10分の1の5290平方マイクロメートルの面積をもつ電導度1.0 S/cmの導電性高分子層の電流−電圧特性の計算値を図3の中に黒三角にて合わせて示してある。2つの電流−電圧特性の比較から明らかなように、LEDの発光動作電圧である1.6V以上において、同じ電圧で比べた場合にLEDに流れる電流値は、導電性高分子層に流れる電流値よりも100倍以上大きくなっており、LED電流に対して導電性高分子層を流れる漏れ電流は極めて少ないことが分かる。したがって、導電性高分子層に流れる電流によって低下するデバイスの発光効率は実質的に無視できる。なお、導電性高分子層の電導度を下げるかあるいはその断面積を減らすことで、LED電流に対する導電性高分子層を流れる電流の比をより小さくすることは可能である。
特許文献2には、銀ペーストを用いてLEDダイを電極と接触させて電気的な接触を得る方法が開示されている。銀ペーストは固化後に金属と同等の導電性を示すため、LEDダイと並列の電流パスができるてしまうと、LEDダイよりも優先的に電流を流してしまい、LEDダイに有効な電圧が印加されなくなるためにLEDダイを発光させることができなくなる。これを防ぐためには、銀ペーストの上からLEDダイを配置する際にLEDダイに押されて横にはみ出す銀ペーストがLED発光部の側面や対向電極に接触しないようにする必要がある。多数個のLEDダイを配置する場合には、一部のLEDダイにおいて銀ペーストがLED発光部の側面や対向電極に接触して発光しなくなることがあり得るので歩留まりの低下につながる。銀ペーストの代わりに金属はんだなどの金属性の材料を用いた場合も同様の問題がある。これらに対して、本発明の導電性高分子層でLEDダイを被覆する構造は、歩留まりの観点で優れている。
本発明の前記導電性高分子層とは導電性高分子を含む層状の構成要素であり、導電性高分子を含んでいればよく、その他の構成要素が含まれていても構わない。
本発明に用いる導電性高分子としては、特に限定されるものではないが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンおよびこれらの誘導体を好適に用いることができる。さらに好適には、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸を含む材料を用いることができる。
本発明に用いる導電性高分子としては、特に限定されるものではないが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンおよびこれらの誘導体を好適に用いることができる。さらに好適には、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸を含む材料を用いることができる。
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸を含む材料は、導電性高分子の中でも高い導電性を示すことが知られており、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の含有比率を変化させることで導電性を変化させることができるため、本発明の発光デバイスにおいて、LEDダイに流れる電流と導電性高分子に流れる電流の比率を自由に変化させることができる。エイチ・シー・スタルク株式会社のPEDOT:PSSのカタログには、10−5 S/cm 〜 550 S/cmの範囲で導電率を変化させたPEDOT:PSSの製品群が記載されており、その導電性の調整範囲が広いことが分かる。また、水やエタノールなどの毒性が低い極性溶媒に安定に溶解あるいは分散でき、その溶液あるいは分散液を所望の位置に塗布して乾燥することで容易に導電性高分子層を得ることができるため、製造する上でも使い勝手が良い。
本発明の別の形態としては、前記発光デバイスにおいて、前記2つの電極の間に有機半導体を含む有機層が配置されており、LEDダイが存在しない断面においては陰極と陽極の間を充填するように配置され、LEDダイが存在する部分と存在しない部分にわたって連続的に配置され、LEDダイが存在しない断面における前記有機層の膜厚がLEDダイが存在する断面における前記有機層の膜厚より厚いことを特徴とする発光デバイスである。
本発明における有機半導体とは、電気導電性を示す有機化合物全般を指し、1つの化合物から構成されていてもよいし、複数の化合物から構成されていてもよい。化合物の例としては、非特許文献1に開示されているような芳香族の部位を含む有機化合物が挙げられる。主に正孔を運ぶ性質をもつ有機半導体をp型有機半導体、主に電子を運ぶ性質をもつ有機半導体をn型有機半導体と呼ぶことがある。
有機半導体を含む有機層を用いる本発明の発光デバイスの断面の模式図の一例を図4に示す。図1と同じく、LEDダイの断面積に比較して導電性高分子層の断面積は10分の1以下となっている。有機半導体を含む有機層は、LEDダイが存在する部分においては膜厚が薄くなり、LEDダイが存在しない部分においては膜厚が厚い。電極とLEDダイの間にある有機半導体を含む有機層が電子あるいは正孔の注入と輸送を担うため、陽極からLEDダイのp側、あるいは、陰極からLEDダイのn側に電荷を効率的に輸送できるので、LEDのn側とp側に発光に必要な電圧を小さな電圧ロスで印加することができる。有機半導体を含む有機層は電極とLEDの間を電気的に絶縁しないため、歩留りが高く製造ができ、加えて長期にわたり安定的に発光する発光デバイスを得ることができる。
本発明に用いることができるより具体的なp型有機半導体の例としては、これに限定されるものではないが、一般式(1)の化合物が挙げられる。ここで、一般式(1)において、R1〜R5は水素、アルキル基あるいはアルコキシ基を表し互いに同じでも異なっていてもよく、このうち一つ以上は炭素数が2以上のアルキル基あるいはアルコキシ基であり、R1はベンゼン環のオルト、メタ、パラ位のいずれの位置に置換されていてもよい。
一般式(1)で表される有機化合物は、一般式(1)に共通するN,N−ジフルオレニルアニリン構造が非平面構造を作り出し結晶化が阻害されるために、ガラス状態および過冷却液体状態が安定に維持できる。また、炭素数が2以上のアルキル基を有しているので機械的な強度や靭性に優れる柔軟な膜を形成することができ、外部の力や温度変化によって応力がデバイスに負荷された場合においても、本発明の柔軟な有機層が適度に変形できるために応力を緩和して剥離や亀裂などによるデバイスの破壊を防ぐことができる。加えて、フルオレン構造は融点や熱分解温度を高める効果があるため、一般式(1)で表される有機化合物は耐熱性にも優れる。この有機化合物を含む有機層は十分に高い粘度を有しているため、2つの電極を接着して離れないようにすることができ、デバイスを力学的に安定に保つことができる。アモルファス状態であるため、多結晶のような粒界が存在せず、電気的な短絡などの原因にならない。また、N,N−ジフルオレニルアニリン構造は可視光に吸収をもたないため、一般式(1)で表される有機化合物を本発明に用いることによりLEDの光が吸収によりロスされることがない。加えて、N,N−ジフルオレニルアニリン構造は、安定に正孔電荷を保持できる機能と、正孔を分子間でお互いに受け渡しすることで正孔を運ぶ機能を有している。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、およびtert−ブチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピロキシ基、イソプロピロキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、およびtert−ブトキシ基などが挙げられる。アルキル基あるいはアルコキシ基に含まれる炭素数は、その数が多いほどガラス転移温度が下がる傾向にある。また、アルキル基あるいはアルコキシ基に含まれる炭素数が多いほど、アルキル基が分子内回転によって様々な形状を取ることができ、分子間で潤滑油のような役割を担い、そのガラス状態に機械的な柔軟性が発現する。これによって、N,N−ジフルオレニルアニリンの中心骨格のみの場合に比べて、本発明で用いる10マイクロメートル以上の厚膜の状態でも機械的に割れたり、剥離しにくいことが見いだされた。発光デバイスの製造工程あるいは使用中に膜が割れたり破損してしまうと2つの電極を機械的および電気的に接着する機能が失われて発光デバイスが機能しなくなるため、炭素数が多いアルキル基の導入は重要である。なお、炭素数が多くアルキル鎖が長くなりすぎると、結晶性が高まり安定なガラス状態、過冷却液体状態を保持できなくなるため、1個〜20個の範囲であることが好ましい。
一般式(1)のうち、より具体的な化学構造としては、化2〜化4に示すものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の発光デバイスにおいては、LEDダイが存在しない断面の一部または全部にわたって絶縁層が形成されていてもよい。例えば、LEDダイが存在しない面積の90%を被覆するように絶縁層を形成した場合は、漏れ電流の90%を抑えることができるため、絶縁層がない場合の漏れ電流に比較して漏れ電流を10%程度にまで低減できる。
図5は、LEDダイが存在しない部分に絶縁層を配置した本発明の発光デバイスの断面の模式図である。図5のように、絶縁層は片方の電極側にのみ形成されていてもよいし、両方の電極側に形成されていてもよい。
本発明の発光デバイスにおいては、前記陽極あるいは前記陰極と電気的に接続して電気抵抗を低減する配線が形成されており、前記電気抵抗を低減する配線の一部が前記絶縁層によって被覆されていてもよい。
図6は、LEDダイが存在しない部分において、電極2に接するよう配置された配線の電極1側の表面が絶縁層で覆われた本発明の発光デバイスの断面の模式図である。このような構造の発光デバイスにすることによって、電極2の水平方向の電気抵抗値は前記の配線によって大幅に低減することができるうえに、配線の形成による漏れ電流の増加を抑制することができる。
本発明の製造方法として、まず、電極を有する2つの基板を準備する。準備とは、基板をマザーサイズから切り出す工程と、電極のパターニングが必要であればフォトリソグラフィーなどの方法によるパターニングを実施する工程、配線が必要であれば、基板の上から形成してフォトリソグラフィーなどの方法によるパターニングを実施する工程、スペーサーやその他絶縁層が必要であれば絶縁層を製膜しフォトリソグラフィーなどの方法でパターニングする工程、および紫外線照射、オゾン暴露、プラズマ暴露などの手法による表面洗浄の工程などを含む。
2つの基板のいずれかの上に導電性高分子層に被覆されたLEDダイを配置する方法としては、これらに限定されるものではないが、以下に3つの方法を例示する。
ひとつ目の方法は、前記電極を有する基板の上にLEDダイを配置する工程と、前記導電性高分子を含む溶液をLEDダイの上から塗布する工程と、前記導電性高分子を含む溶液を乾燥させる工程をこの順に含む方法である。この製造方法による発光デバイスの工程ごとの断面の変化を模式的に図7に示す。この製造方法において、LEDダイを配置した後に導電性高分子を含む溶液あるいは融液を塗布することで、導電性高分子を含む溶液あるいは融液が毛細管現象によって電極とLEDダイの間に入り込むため、導電性高分子層がLEDダイの全体を覆うように配置することができる。
二つ目の方法は、電極を有する基板を準備する工程と、前記電極を有する基板の上に前記導電性高分子を含む溶液あるいは融液を塗布する工程と、塗布した導電性高分子を含む溶液あるいは融液の位置に前記LEDダイを配置して埋め込む工程と、前記導電性高分子を含む溶液あるいは融液を固化させる工程をこの順に含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法である。この製造方法による発光デバイスの工程ごとの断面の変化を模式的に図8に示す。この製造方法において、導電性高分子を含む溶液あるいは融液を塗布したのちに、塗布した位置にLEDダイを配置することによって、LEDダイを導電性高分子の溶液あるいは融液に完全に埋め込み、導電性高分子層がLEDダイの全体を覆うように配置することができる。LEDダイを導電性高分子を含む溶液あるいは融液も完全に埋め込むためには、導電性高分子を含む溶液あるいは融液の粘度を低く抑えた方がよい。
三つ目の方法は、LEDダイを導電性高分子層で被覆する工程と、電極を有する基板を準備する工程と、前記電極を有する基板の上に前記導電性高分子層で被覆したLEDダイを配置する工程とをこの順に含む方法である。この製造方法による発光デバイスの工程ごとの断面の変化を模式的に図9に示す。この製造方法において、LEDダイをあらかじめ導電性高分子層で被覆しておくことによって、本発明の発光デバイスの構造を確実に得ることができる。導電性高分子層で被覆されたLEDダイを配置するとき、あるいは配置後に熱によって導電性高分子層を多少溶融状態にすることで、導電性高分子層と電極との電気的な接触をより確実なものにすることができる。
所定の位置にLEDダイを配置するためには、配置する基板の外形あるいは基板上のアライメントマークを基準として配置したい位置を認識する工程と、LEDダイを購入時にLEDダイが固定されているシートから離してつまみ上げる工程と、配置したい位置に移動させる工程と、LEDダイを基板に下ろして固定する工程などを含む。 所定の位置にLEDダイを置くための機械設備としては、半導体チップやLEDダイのマウンターを転用することができる。
LEDダイを配置した基板あるいはもう片方の基板の上に有機半導体を含む有機層を配置するためには、有機半導体を含む材料を所定の間隔で全体的に基板上に配置すればよい。これを実施する機械設備としてはディスペンサーなどの設備を用いることができる。より好ましくは有機半導体を含む材料を溶融し、溶融状態で配置するとよい。有機半導体を含む材料あるいはその溶融状態のものを置く基板は、LEDダイを置いた基板側でももう片方の基板側のどちら側でもよい。有機半導体を含む材料を加熱して粘度を下げる工程には、有機半導体を含む材料が配置された基板を加熱する方法を適用することができる。有機半導体を含む材料を2つの基板で挟む工程は、片方あるいは両方の基板を持ち上げて、貼り合わせればよい。空気あるいは気体が入り込むことを防ぐために真空ラミネートとしてもよい。この後、室温に冷やすと有機半導体と電子受容性の有機材料を含む有機層は過冷却液体あるいはガラス状態となり、粘度が高くなり接着性を発現するために2つの基板が位置的に固定され、全体として一つの発光デバイスとして扱うことができるようになる。
なお、導電性高分子を含む溶液、分散液あるいは融液でLEDダイを覆い、その後固化させることでLEDダイを被覆する構造を得る製造工程において、導電性高分子を含む層は、物質移動に伴いその層の形状を変化させていく。図10は、この物質移動を模式的に示したものである。物質移動は、表面張力と重力に依存する。LEDダイの側面の面積はLEDダイの表面や電極の表面の面積よりも小さく多くの液体を保持できないので、結果的に側面には導電性高分子は多く残らず、自動的にLED側面の導電性高分子層の膜厚は薄くなり、本発明の膜厚の条件を満たす発光デバイスが得られやすい特長がある。
本実施例ではトリアリールアミン構造を持つ有機材料として化2の化合物を用いる発光デバイスについて述べる。
化2に示す化合物は、下記の方法により合成した。冷却管を備えた200ml容量の三つ口フラスコに、2−ヨード−9,9−ジメチルフルオレンを4.1g、4−オクチルアニリンを1.0g、炭酸カリウムを2.4g、18−クラウン−6−エーテルを0.2g、銅粉を0.9g、メシチレンを5ml投入した。三つ口フラスコに窒素を導入し、十分置換した。次に反応系を170℃に加熱し、撹拌しながらメシチレンを還流させ、6時間反応させた。反応溶液から、トルエン抽出とろ過により固形分である炭酸カリウム、銅粉、生成したヨウ化カリウムを除去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:ヘキサン=1:9)によって化2に示す化合物2.0g(収率70%)を得た。
化2の化合物は、室温において透明なガラス状の外観を示す。薬さじなどで表面をこすると、材料が粉状に削れることから、過冷却液体ではなく、ガラス状態であることが示唆された。加熱すると柔らかい水あめ状になるが、加熱下で長時間放置しても結晶化は全く観測されず、その過冷却液体状態が安定であることが示唆された。示差走査熱量測定にて化2の化合物のガラス転移温度を測定したところ42℃であった。
本発明の発光デバイスとして、図11に示す寸法を有する、表面に透明電極としてITOを形成したガラス基板2枚を使って、図12に示す上面図と、図13に示す図12の点線部分の断面図の発光デバイスを以下の方法により作製した。LEDダイとしてエピスター社の赤色LEDであるES−CAHR509を用いた。LEDダイのサイズは縦×横が230マイクロメートル×230マイクロメートル、厚みは170マイクロメートルである。基板として、ITOからなる電極100nmを製膜した10mm×20mmのガラス基板を用いた(以下、ITO基板1と呼ぶ)。まず、導電性高分子として ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合物のドライペレットであるOrgacon DRY、200〜450Ω/sqの0.6重量%水溶液を調整した。次に、この水溶液を図12のITO基板1上の灰色四角に示された位置に10マイクロリットル程度、3か所配置した。次に、配置した水溶液が乾く前にLEDダイをn側がITO基板1のITO電極側になるようにピンセットにて前述の3か所に1個ずつ配置し、LEDダイ全体を水溶液が覆うように配置した。次に、80℃に加熱下ホットプレート上で、配置した水溶液の水を蒸発させてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合物の膜を得た。こののち、顕微鏡の観察により、LEDダイの側面にはLEDダイの面積に比べて10分の1以下の膜厚のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の黒色の膜が確認された。また、LEDダイを配置した面の逆側からITO基板1を顕微鏡観察した結果、LEDダイの表面が黒くなっていることから、LEDダイとITO電極の間にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合物の膜の存在も確認された。次に対向基板として、LEDダイを配置した基板と同じく、ITOを100nmを製膜した10mm×20mmのガラス基板を準備した(以下、ITO基板2と呼ぶ)。150℃に加熱したホットプレート上にITO基板1およびITO基板2をそれぞれ別の位置に置いて加熱した。この状態でITO基板2の上に化2の化合物の粉末を少量(10ミリグラム程度)配置した。配置された粉末は加熱されると化2の化合物が融液となって粘度が下がり流動性となり、ITO基板2の上を濡れ広がっていく。この状態でITO基板2を取り上げ、温度が下がらないうちにLEDダイが配置されたITO基板1の上に図12の位置関係で置く。その直後に30g程度の金属の重しを2枚のITO基板が重なった部分に平等に圧力がかかるように置くと、化2の溶融物は2枚のITO基板が重なっている部分の全体に広がる。その後、互いに重なったITO基板をホットプレートから下ろして冷却すると、粘度が高まることで、力を加えても2つの基板が離れず接着された状態となった。
前段落の方法で作製した発光デバイスに対し、ITO基板1がマイナス、ITO基板2がプラスとなるように直流電圧を印加した。1.6V以上の電圧印加によりLEDダイの発光に基づく赤色の発光が得られた。1.5Vの乾電池2個を用いて発光させたときの写真を図14に示す。図14において配置した3個の全てのLEDダイが同程度の発光輝度で発光していることが分かる。また、本実施例の発光デバイスは2枚のITO基板、導電性高分子、および化2の化合物の透明性が高いため、発光デバイスを通して観測者の向こう側が見られるシースルー性を有している。
実施例1の発光デバイスの電流−電圧特性の評価を行った。作成した発光デバイスのITO基板1がマイナス、ITO基板2がプラスとなるように直流電圧を印加し、0.1Vから2.7Vまで0.1Vずつ電圧を上げたときの電流値を測定した。測定装置には、ADVANTEST社のTR6143を用いた。図15に結果を黒丸のプロットで示す。図15には比較のため、LEDダイ単体を直接端子に接続したときの電流−電圧特性も合わせて黒三角のプロットで示してある。なお、LEDダイ単体は1個のLEDダイであるが、実施例1の発光デバイスには3個のLEDダイが存在していることを注記しておく。1.9V以上の発光領域では、実施例1の発光デバイスに流れる電流は、LEDダイ単体よりも小さくなる。これは、実施例1に抵抗値が大きいITO電極を用いたためにITO電極部位における電圧降下が大きいことと、実施例1の発光デバイスにおける化2の化合物からなる有機層内での電圧降下が影響していると考えられる。1.6V以上では電流値に応じた明るい発光が確認できることから、本発明の効果は問題なく得られている。また、1.5V以下のLEDダイが非発光の電圧領域では、オフ電流はLED単体よりも大きくなっているものの大きな差異はなく、側面に存在する導電性高分子層が大きな漏れ電流の原因とはならないことが分かった。なお、実施例1の発光デバイスにおいて、LEDダイ単体の電流−電圧特性に近づけて電力効率を高めるためには、電極自体の変更や抵抗値が低い補助配線を設けることや、有機層内の電荷量を高めるために化2の化合物の含有量を増やすなど、改善の方策は数多くある。
比較例1として、導電性高分子を用いなかった以外は、実施例1と同じようにして発光デバイスを作製した。
実施例1と比較例1それぞれの発光デバイスにおけるLEDダイの点灯率の評価を行った。実施例1の発光デバイスを5個、比較例1の発光デバイスを5個作り、約3Vの外部電源からLEDダイのp側が正極、n側が負極となるように電圧を印加し、発光したLEDダイの数を数えた。実施例1の場合は、発光したLEDダイの数は、それぞれ3個、3個、2個、3個、3個であり、LEDダイが点灯した確率は93%であった。比較例1の場合は、1個、2個、1個、1個、2個であり、LEDダイが点灯した確率は47%であった。導電性高分子層を被覆した本発明の構造を適用することによって、LEDダイが発光する確率が大幅に高まることが分かった。点灯しないLEDダイが存在する理由は次のように考察される。導電性高分子層を被覆していない場合、ITO基板1のITO電極とLEDダイのn側は直接接触するか、あるいは両者の間に化2の化合物が入り込んで膜を形成すると考えられる。両者の間に化2の化合物が入り込んで膜を形成した場合は、化2の化合物は電子を運ぶ性質に乏しいため、電気抵抗値が極めて大きくなりLEDダイが発光しなくなる。直接接触している場合にも、その電気的な接触は不安定であるため、LEDが発光する可能性は導電性高分子層を間に挟んだ場合よりも低くなる。
本発明により提供される発光デバイスは、照明やディスプレイなどに好適に用いることができる。
1 電極1
2 電極2
3 LEDダイ
3A LEDダイの水平断面方向の距離
3B LEDダイを流れる電流
4 導電性高分子層
4A 導電性高分子層の最小厚み
4B 導電性高分子層を流れる電流
5 有機半導体を含む有機層
6 絶縁層
7 配線層
10 ITO電極
11 赤色LEDダイ
12 赤色LEDダイのn側
13 赤色LEDダイのp側
14 ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合物の膜
15 化2の化合物からなる層
2 電極2
3 LEDダイ
3A LEDダイの水平断面方向の距離
3B LEDダイを流れる電流
4 導電性高分子層
4A 導電性高分子層の最小厚み
4B 導電性高分子層を流れる電流
5 有機半導体を含む有機層
6 絶縁層
7 配線層
10 ITO電極
11 赤色LEDダイ
12 赤色LEDダイのn側
13 赤色LEDダイのp側
14 ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合物の膜
15 化2の化合物からなる層
Claims (6)
- いずれかが実質的に透明である2つの電極と、前記2つの電極の間に配置された垂直型のLEDダイと、前記LEDダイの全体を覆うように配置された導電性高分子層を含む発光デバイスであって、前記導電性高分子の導電率が10 −5 S/cm 〜 550 S/cmの範囲であり、前記LEDダイの側面に配置された前記導電性高分子層の厚みが最小となる部分の断面の面積が前記LEDダイの面積の10分の1以下であることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項1に記載の発光デバイスにおいて、前記導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸を含む材料であることを特徴とする発光デバイスである。
- 請求項1に記載の発光デバイスにおいて、前記2つの電極の間に有機半導体を含む有機層が配置されており、LEDダイが存在しない断面においては陰極と陽極の間を充填するように配置され、LEDダイが存在する部分と存在しない部分にわたって連続的に配置され、LEDダイが存在しない断面における前記有機層の膜厚がLEDダイが存在する断面における前記有機層の膜厚より厚いことを特徴とする発光デバイス。
- 請求項1に記載の発光デバイスの製造方法であって、電極を有する基板を準備する工程と、前記電極を有する基板の上にLEDダイを配置する工程と、前記導電性高分子を含む溶液あるいは融液をLEDダイの上から塗布する工程と、前記導電性高分子を含む溶液あるいは融液を固化させる工程をこの順に含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法。
- 請求項1に記載の発光デバイスの製造方法であって、電極を有する基板を準備する工程と、前記電極を有する基板の上に前記導電性高分子を含む溶液あるいは融液を塗布する工程と、塗布した導電性高分子を含む溶液あるいは融液の位置に前記LEDダイを配置して埋め込む工程と、前記導電性高分子を含む溶液あるいは融液を固化させる工程をこの順に含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法。
- 請求項1に記載の発光デバイスの製造方法であって、LEDダイを導電性高分子層で被覆する工程と、電極を有する基板を準備する工程と、前記電極を有する基板の上に前記導電性高分子層で被覆したLEDダイを配置する工程とをこの順に含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法。
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