JP6240106B2 - 訪問理美容と介護の連携システム及び端末 - Google Patents

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Description

本発明は、訪問理美容と介護の連携技術に関する。
従来、衛生上及び施術上の観点から、理美容施術は特定の理美容室で行われるのが通常である。他方、少子高齢化社会の進展に伴い、特定の理美容室に来店することが身体的に困難な人々も増えているのが実情である。そこで、在宅や病院、福祉施設等での訪問理美容の需要が急増している。
特許文献1には、医療、介護、美容、理容等のサービスを提供するサービス提供者から当該サービスの提供を受けるサービス利用者に対し、サービス及びそれに関連する情報を適切に提供しつつ、サービス利用者とサービス提供者との間のコミュニケーションを良好にするシステムが記載されている。サービス提供者端末装置から取得したあらかじめ定められている期間に関する情報、サービス提供者端末装置から指定されたコンテンツからなる情報及び、サービス利用者情報データベースに格納されているサービス利用者が使用するサービス利用者端末装置を特定する電子メールアドレスに関する情報を用い、あらかじめ定められている期間ごとに、コンテンツからなる情報を、電子メールアドレスにあてて送信する情報配信管理手段を備えることが記載されている。
特開2013−4020号公報
超高齢化社会における訪問理美容は極めて重要であるが、衛生面の基準はあるものの、施術に関する基準は明確に確立されておらず、特に理美容のサービスを受けるサービス利用者に何らかの障害がある場合に、その障害の程度や内容に応じて適切に訪問理美容を行うことが求められる。
他方で、高齢者等に対しては介護保険の認定調査票を介して要支援や要介護の認定が行われているものの、時間の経過とともに変化し得る高齢者等の状態を的確に把握することは困難である。
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、従来以上に訪問理美容と介護の連携を図り、適切な理美容を行うとともに、訪問理美容で得られたサービス利用者の情報を介護に効率的に活用することができるシステム及び端末を提供することにある。
本発明の端末は、介護保険の認定調査票データにおける認定区分と、理美容を施術するときの作業容態との対応関係を記憶する記憶手段と、前記対応関係を用いて、訪問理美容を行うべきサービス利用者の認定区分に対応する作業容態を決定し、前記認定調査票データ及び前記作業容態に基づき問診票データを作成し、前記訪問理美容の施術後に前記サービス利用者に関する認知機能、精神・行動障害、コミュニケーション状態の少なくともいずれかについての情報を用いて報告書データを作成する制御手段と、決定された作業容態と、前記問診票データと、前記報告書データを順次表示する表示手段を備えることを特徴とする。
本発明の1つの実施形態では、前記制御手段は、前記認定調査票データ及び前記作業容態に基づき前記作業容態における注意事項データを決定し、前記表示手段は、前記注意事項データを表示することを特徴とする。
本発明の他の実施形態では、前記制御手段は、前記報告書データと前記認定調査票データとを照合することを特徴とする。
本発明のさらに他の実施形態では、前記作業容態は、椅子、車椅子、ベッドの作業容態を含むことを特徴とする。
また、本発明の訪問理美容と介護の連携システムは、上記の端末と、所定の全国介護理美容福祉協会に設置されたコンピュータとを有し、前記コンピュータは、訪問理美容を行うべきサービス利用者を特定する個人情報と、前記サービス利用者の介護保険の認定調査票データとを前記端末に供給し、前記端末は、前記認定調査票データにおける認定区分と、理美容を施術するときの作業容態との対応関係を記憶する記憶手段と、前記対応関係を用いて、前記サービス利用者の認定区分に対応する作業容態を決定する制御手段と、決定された作業容態を表示する表示手段と、前記訪問理美容の施術後に前記サービス利用者に関する認知機能、精神・行動障害、コミュニケーション状態の少なくともいずれかについての情報を入力する入力手段を有し、前記制御手段は、前記入力手段から入力された前記情報を用いて報告書データを作成して前記コンピュータに供給することを特徴とする。
本発明によれば、訪問理美容と介護の連携を図り、適切な理美容を行うとともに、訪問理美容で得られたサービス利用者の情報を介護に効率的に活用することができる。
実施形態のシステム概念図である。 実施形態の処理の流れを示す説明図である。 介護保険の認定調査票の説明図である。 認定区分と作業容態との対応関係を規定するテーブル図である。 実施形態のシステム構成図である。 実施形態の端末画面表示説明図である。 実施形態の端末画面表示説明図である。 実施形態の端末画面表示説明図である。
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における訪問理美容と介護の連携システムの概念図である。本連携システムは、理美容福祉師10と、全国介護理美容福祉協会12と、地域包括支援センター14と、民生委員16と、病院18と、介護事業所20と、福祉施設22とが連携して、介護情報と理美容情報を送受信し共有するシステムである。
地域包括支援センター14は、特定の地域において高齢者を包括的に支援する施設であり、当該地域の予め定められた民生委員16、病院18、介護事業所20、及び福祉施設22と提携し、見守りが必要な高齢者等の情報を収集し管理する。地域包括支援センター14は、見守りが必要な高齢者等に対し、認定調査票を用いて個々の高齢者等をその障害の程度に応じて区分する。具体的には後述するように、個々の高齢者等を、要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5、非該当の8段階に区分する。
全国介護理美容福祉協会12は、非営利法人(NPO)であり、パソコン等のコンピュータシステムで高齢者等の個人情報を管理する。全国介護理美容福祉協会12は、地域包括支援センター14と提携し、地域支援センターで管理している個々の高齢者等の認定調査票の情報を取得し、コンピュータシステムで管理する。
理美容福祉師10は、端末、例えばタブレット端末を用いつつ、高齢者等の自宅等を訪問し、訪問理美容を行う。このとき、タブレット端末を用いて安全・安心の訪問理美容を実施する。具体的には、タブレット端末には、地域包括支援センター14から提供を受けた認定調査票における認定区分に即した理美容の施術基準情報が記憶されており、この認定区分に即した理美容の施術基準情報に従って訪問理美容を実施する。
また、理美容福祉師10は、認定区分に即した施術基準情報に従って訪問理美容を実施する際に、高齢者等の状態を同時に観察し、高齢者等の健康状態を把握する。そして、体調等に変化が見られる場合には、タブレット端末に当該体調の変化を入力して記憶する。タブレット端末に入力され記憶された当該情報は、全国介護理美容福祉協会12のコンピュータシステムに提供され、解析された上で地域包括支援センター14に提供される。
訪問理美容の施術は、通常、サービス利用者である高齢者等とのコミュニケーションを行って高齢者等の希望するヘアースタイル、ヘアーカラー、メイク等を施術することになり、意思の疎通が行われる。このコミュニケーションを介して、高齢者等との意思伝達、氏名、生年月日、年齢等の確認を行い、認知機能及び精神・行動障害に関する情報を取得することができる。理美容の施術は、たとえ散髪だけでも40分程度要するものであり、この時間を有効に活用して、高齢者等の認知機能及び精神・行動障害に関する情報を抽出するといえる。
さらに、サービス利用者である高齢者等の希望する理美容施術を実施することで、高齢者等の顔の表情が変化し得る。従って、理美容福祉師10は、施術中の高齢者等の喜怒哀楽を観察することにより、より的確な認知機能及び精神・行動障害に関する情報を取得することができる。
図2は、本実施形態における訪問理美容と介護の連携システムにおける処理の流れを示す。
まず、地域包括支援センター14では、民生委員16や病院18、介護事業所20,福祉施設22との連携の下、高齢者等の認定調査票データを取得してコンピュータシステムで管理する(S101)。
次に、全国介護理美容福祉協会12は、地域包括支援センター14との連携の下、地域包括支援センター14から高齢者等の認定調査票データの提供を受け、コンピュータシステムで管理する(S102)。なお、認定調査票データは重要な個人情報であるから、介護理美容福祉協会12は、地域包括支援センター14等と個人情報に関する契約を締結することが望ましい。
次に、理美容福祉師10は、全国介護理美容福祉協会12からタブレット端末の貸与を受けるとともに(S103)、認定調査票データの提供を受ける。タブレット端末は、この認定調査票データに基づき、個々の高齢者等毎に、認定区分に即した施術基準を作成する(S104)。具体的には、後述するように、要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5、非該当の8段階の認定区分に応じて、1〜11の施術の作業容態を決定し、作業中の注意事項を決定する。タブレット端末は、決定したこれらの作業容態及び注意事項をメモリに記憶する。
次に、理美容福祉師10は、高齢者等を訪問し、タブレット端末に記憶された作業容態及び注意事項に従って理美容を施術する。また、施術の際に、タブレット端末に表示された問診票に順次入力しつつ施術を行う(S105)。問診票の項目は、例えば以下の通りである。
(1)メニュー
カット、シャンプー、パーマネント、ヘアダイ、メイク、ネイル
(2)希望するヘアースタイル
髪の毛の長さ
(3)希望するパーマネントの強さ
大きなウエーブ、細かいウエーブ
(4)希望するヘアーカラー
黒、栗毛、茶褐色
(5)希望するメイク
デイメイク、パーティメイク
(6)希望するネイルカラー
カラー、形
なお、これらは例示であり、これ以外にも、
(7)着物の着付け
通常の着物着付け、車椅子着付け
(8)その他の理美容施術も含む
ヘッドスパ、病院内無菌室での理美容施術、エンゼルメイク(死化粧)
の項目を付加してもよい。
ここで、タブレット端末に記憶された作業容態及び注意事項は重要な個人情報であり、その取扱には慎重さが要求される。従って、タブレット端末にGPSモジュールを搭載し、訪問すべき高齢者等の所在位置と、GPSモジュールで検出された位置とを照合し、両者が一致する場合のみ、作業容態及び注意事項へのアクセスを許可することが望ましい。
理美容の施術が完了すると、施術中の高齢者等とのコミュニケーションから得られた、高齢者等の認知機能及び精神・行動障害に関する情報をタブレット端末に入力し記憶させる。タブレット端末は、これらの入力情報に基づいて所定のフォーマットで訪問理美容実施の報告書データを自動作成し、メモリに記憶する(S106)。この報告書データは、介護理美容福祉協会のコンピュータシステムに提供される。
全国介護理美容福祉協会12は、タブレット端末から提供された認知機能及び精神・行動障害に関する情報に基づいてコンピュータシステムで管理されている認定調査票データを適宜更新するとともに、地域包括支援センター14にも提供する。
このように、本実施形態の連携システムは、認定調査票データを有する地域包括支援センター14から認定調査票データの提供を受けるとともに、訪問理美容の施術に得られた高齢者等に関する新たな知見、特に認知機能及び精神・行動障害に関する情報を地域包括支援センター14にフィードバックするシステムである。このフィードバックループにより、認定調査票データ順次更新され、その精度が向上する。
図3は、介護保険で用いられる認定調査票30の説明図である。認定調査票には、項目として、
1.身体機能・起居動作に関する項目
2.生活機能に関する項目
3.認知機能に関する項目
4.精神・行動障害に関する項目
5.社会生活への適応に関する項目
6.過去14日間に受けた医療に関する項目
7.日常生活自立度に関する項目
があり、各項目を総合的に勘案して、要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5、非該当の8段階のいずれかに認定する。タブレット端末は、このような認定区分に基づいて、個々の高齢者等毎に、理美容の作業容態及び作業中の注意事項を決定する。
図4は、タブレット端末で作業容態及び注意事項を決定する際の、認定区分と作業容態との対応関係を規定するテーブル40の説明図である。
作業容態として、
1.背もたれのない椅子
2.背もたれのある椅子
3.背もたれ+肘掛けのある椅子
4.一般的車椅子
5.リクライニング式車椅子
6.ヘッドギア付き車椅子
7.スプリング式ベッド(1)
8.スプリング式ベッド(2)
9.スプリング式ベッド(3)
10.エアーマット式ベッド(2)
11.エアーマット式ベッド(3)
の11種類を規定し、8段階の認定区分のそれぞれに対応して作業容態が決定される。1〜11の作業容態は、1が健康な状態であり、11が最も障害の重い状態である。図4において、○は適した作業容態、△は不十分な作業容態、×は危険で作業中に事故が生じるおそれのある作業容態であり、−は想定外であることを示す。
例えば、ある高齢者の認定区分が非該当であれば、その高齢者に適した作業容態は背もたれのない椅子であり、別の高齢者の認定区分が要介護2であれば、その高齢者に適した作業容態は背もたれ+肘掛けのある椅子か一般的な車椅子であり、さらに別の高齢者の認定区分が要介護4であれば、その高齢者に適した作業容態は一般的な椅子〜スプリング式ベッド(3)のいずれかである。
ここで、背もたれのない椅子は、起き上がり、立ち上がり、歩行がいずれも何かにつかまらなくても可能である場合の作業容態であり、背もたれのある椅子は、起き上がり、立ち上がり、歩行の少なくともいずれか1つにおいて何かにつかまって可能である場合の作業容態であり、背もたれ+肘掛けのある椅子は、起き上がり、立ち上がり、歩行のいずれか2つ以上において何かに捕まって可能である場合の作業容態である。
また、スプリング式ベッド(1)〜(3)、及びエアーマット式(2)、(3)についても、障害の程度に応じた作業容態であり、ベッド上で起き上がることができるのであればスプリング式ベッド(1)を適した作業容態とし、ベッド上で起き上がることができないのであればスプリング式ベッド(2)あるいはエアーマット式ベッド(2)を適した作業容態とし、生命維持装置を装着しているのであればスプリング式ベッド(3)あるいはエアーマット式ベッド(3)を適した作業容態とする。
作業容態として椅子や車椅子があるので、理美容福祉師10は、高齢者等のベッドからの歩行や立位、及び座位保持も観察することが可能である。
また、ある高齢者の認定区分が要介護1であって、これに適した作業容態が背もたれのある椅子であるため、背もたれのある椅子で理美容を施術しようとしたところ、その高齢者が座位保持することができず車椅子で施術を実施した場合には、その高齢者の認定区分は要介護1から要介護2に進行したことを観察できる。
また、リクライニング式車椅子については、頭部のバックシートを外すことができるので、
I 40分間外すことができる
II 少しの間(10分以内)だけ外すことができる
III バックシートを外すことができない
の3段階に区分し、観察の結果IIIの場合には、その高齢者の認定区分が要介護4に進行しているとみなし、リクライニング式椅子に代えてスプリング式ベッド(1)で施術を行うこともできる。同様に、ヘッドギア付き車椅子の場合でも、
I 40分間外すことができる
II 少しの間(10分以内)だけ外すことができる
III ヘッドギアを外すことができない
の3段階に区分し、観察の結果IIIの場合には、その高齢者の認定区分が要介護4に進行しているとみなし、スプリング式ベッド(1)で施術を行うこともできる。
次に、本実施形態において用いられるタブレット端末、及びコンピュータシステムについて説明する。
図5は、理美容福祉師10が操作するタブレット端末50の構成ブロック図である。タブレット端末50は、CPU52、プログラムメモリ54、メモリ56、通信インタフェースI/F58、タッチパネル60及びGPSモジュール62を備える。
CPU52は、プログラムメモリ54に記憶されたプログラムをロードして実行することで所定の機能を実現する。
メモリ56はフラッシュメモリ等の半導体メモリであり、各種データを記憶する。各種データには、訪問理美容のサービス利用者である高齢者等の個人情報、認定調査票データ、作業容態及び注意事項のデータ、問診票データ、報告書データが含まれる。
通信I/F58は、携帯電話回線やWi−Fi、Bluetooth(登録商標)等であり、外部機器とデータの送受を行う。高齢者の個人情報、認定調査票データ、報告書データ等は、この通信I/F58を介して外部機器、具体的には介護理美容福祉協会12のコンピュータ70と送受信する。コンピュータ70からタブレット端末50に供給されるデータには、サービス利用者である高齢者等の個人情報及び認定調査票データが含まれ、タブレット端末50からコンピュータ70に供給されるデータには、後述する問診票データ及び報告書データが含まれる。
タッチパネル60は、液晶や有機ELパネル等で構成され、各種情報を表示する。各種情報には、作業容態及び注意事項、問診票、報告書が含まれる。
GPSモジュール62は、GPS信号を検出することでタブレット端末50の現在位置を検出する。
このような構成において、CPU52で実行される主な機能は、以下の通りである。
(1)コンピュータ70から認定調査票データを取得してメモリ56に記憶する
(2)認定調査票データに基づいて作業容態及び作業中の注意事項を決定してメモリ56に記憶する
(3)高齢者等の個人情報に含まれる高齢者等の所在位置と、GPSモジュール62で検出された現在位置を照合する
(4)両位置が一致する場合に、メモリ56に記憶された作業容態及び作業中の注意事項をメモリ56から読み出してタッチパネル60に表示する
(5)訪問理美容の施術に際し、問診票データをタッチパネル60に表示して各項目のデータを入力する
(6)訪問理美容の施術が終了した後に、報告書データを作成してメモリ56に記憶し、コンピュータ70に供給する
これらの機能のうち、(2)、(5)、及び(6)についてより詳しく説明する。
<機能(2)について>
プログラムメモリ54には、処理プログラムが記憶されているが、この処理プログラムには図4に示す8段階の認定区分と1〜11の作業容態との関係を規定するテーブルが含まれている。CPU52は、プログラムメモリ54に記憶された認定調査票データを読み出し、図4に示されるテーブルを用いて、訪問理美容を施術すべき高齢者等の認定区分に適した作業容態及び注意事項を決定する。
すなわち、訪問理美容を施術すべき高齢者等の認定区分が非該当であれば、作業容態として背もたれのない椅子を決定する。また、注意事項は特段なしと決定する。
訪問理美容を施術すべき高齢者等の認定区分が要支援1であれば、作業容態として背もたれのある椅子を決定する。また、注意事項として、認定調査票データに含まれる身体機構・起居動作に関する項目等から抽出する。図4のテーブルにあるように、要支援1では背もたれのない椅子は不十分であるので、その旨を注意事項の一つとして抽出する。また、カットの場合、絨毯や畳の上では落ちた髪の毛の処理が大変であるためできるだけ床の上でカットを行う等を注意事項の一つとして抽出する。さらに、作業面の明るさを確保すべきことを注意事項の一つとして抽出する。すなわち、注意事項には、高齢者等の認定区分や個々の障害に応じた注意事項と、一般的な注意事項が含まれる。
訪問理美容を施術すべき高齢者等の認定区分が要介護2であれば、作業容態として一般的な車椅子を決定する。また、注意事項として、認定調査票データに含まれる身体機構・起居動作に関する項目や生活機能に関する項目等から抽出する。図4のテーブルにあるように、要介護2では背もたれのない椅子は危険であり、背もたれのある椅子でも不十分であるので、その旨を注意事項の一つとして抽出する。また、カット作業中はフットレストから脚を下ろし、床に脚をつけることを注意事項として抽出する。フットレストに脚をおいてカットしていて、高齢者等が突然立ち上がると車椅子が転倒する場合もあり得るからである。また、車椅子にブレーキをかけてカットすることを注意事項として抽出する。
訪問理美容を施術すべき高齢者等の認定区分が要介護4であれば、作業容態として車椅子〜スプリング式ベッドを決定する。また、注意事項として、いわゆる寝たきり高齢者の場合には、ベッドの中央で寝ていることが多く、ベッドの中央でカットすると理美容師の重心がベッド上に位置するようになり、理美容師がバランスを崩すと寝たきり高齢者とぶつかって事故につながるため、寝たきり高齢者をベッドの端に体位変換し、理美容師の重心をベッド外におくことを抽出する。
本実施形態では、認定区分に応じて作業容態が自動的に決定されるので、たとえサービス利用者である高齢者等が同一であっても、その認定区分が時間の経過とともに変化すれば、これに応じて作業容態も変化することになる。例えば、高齢者等がALS(筋萎縮性側索硬化症)の場合、一般的に進行性のため時間の経過とともに認定区分が変化し得る。この場合、CPU52で決定される作業容態も変化し、最初は作業容態として車椅子での散髪を決定し、一年後には作業容態としてリクライニング車椅子での散髪に変化し、さらに一年後には作業容態としてベッド上での散髪に変化し、さらに一年度後には作業容態がエアーベッド上での散髪に変化する等である。
なお、訪問理美容を施術すべき高齢者等の認定区分が要介護4あるいは要介護5であって、いわゆる寝たきり高齢者の場合には、特に注意事項が重要となる。CPU52は、認定調査票の各項目のデータを参照し、例えば以下のように注意事項を抽出する。
気管切開をしており、生命維持装置を着装している場合:
首にタオルをかけてシャンプーケープを着装することができないこと、タオル・シャンプーケープの代わりをする介護で使用されている尿取りパットを使用し、エアー枕の上に尿取りパットを着装して洗髪を行うことを注意事項として抽出する。
脳梗塞で身体の麻痺がある場合:
脳梗塞で左麻痺がある場合には右手を動かすことができるためベッドの右側で洗髪を行うこと、右麻痺がある場合には左手を動かすことができるためベッドの左側で洗髪を行うことを注意事項として抽出する。脳梗塞は頭が揺れると症状が悪化する場合もあるため、頭を揺らさずシャンプーできる片手シャンプーを行うべきことを注意事項として抽出する。
<機能(5)について>
プログラムメモリ54には、処理プログラムが記憶されているが、この処理プログラムには問診票データが含まれている。CPU52は、問診票データに基づいてタッチパネル60に問診票を表示する。問診票は、メニュー、希望ヘアースタイル、希望パーマネントの強さ、希望ヘアーカラー、希望メイク、希望ネイルカラー等の各項目があり、それぞれの項目において複数の選択肢が予め用意されている。理美容福祉師10は、タッチパネル60に表示される問診票に従って高齢者等あるいはその家族に問診し、各項目の複数の選択肢のうち選択されたものを入力していく。
なお、問診票に、機能(2)で決定された作業容態を含めるのも好適である。この場合、決定された作業容態で施術してよいか否かを本人に直接問診で確かめることができ、施術の安全・安心を高めることができる。
また、問診票に、利用者の健康状態を含めるのも好適である。この場合、本人あるいは家族に健康状態を確かめることで、施術の安全・安心を高めることができる。
<機能(6)について>
プログラムメモリ54には、処理プログラムが記憶されているが、この処理プログラムには報告書データが含まれている。CPU52は、報告書データに基づいてタッチパネル60に報告書を表示する。理美容福祉師は、訪問理美容の施術終了後に、この報告書データの各項目にデータを入力することで報告書を作成する。
報告書データには、訪問理美容を施術した高齢者等の健康状態及び精神状態、並びにコミュニケーション状態が含まれる。健康状態の項目は、例えば以下の通りである。
・皮膚の正常/注意
・爪の正常/注意
・麻痺の有無
・拘縮の有無
精神状態の項目は、例えば以下の通りである。
・現状認識の可否
・記憶状態の有無
・物忘れの有無
・認知の程度
・俳諧の有無
・暴力の有無
・妄想の有無
・幻覚の有無
コミュニケーション状態の項目は、例えば以下の通りである。
・意思の伝達
(単純な要求はできる/時間はかかるができる/引き出せばできる/ほとんどできない/できない)
・話の理解
(大部分はできる/分かりやすくいえばできる/簡単なことはできる/ほとんどできない/できない)
・視力
(大きな字は見える/物を識別することはできる/明暗はわかる/ほとんど見えない/見えない)
・聴力
(静かな場所なら聞こえる/大きな声は聞こえる/耳元なら聞こえる/ほとんど聞こえない/聞こえない)
・その他の特記事項
(施術に伴う喜怒哀楽の状態)
既述したように、理美容の施術は、散髪でも40分程度を要するため、この時間を利用してこれらのコミュニケーション状態を観察することは極めて有効である。
理美容福祉師10がこれらの項目に入力して作成された報告書データは、メモリ56に記憶される。その後、タブレット端末50からコンピュータ70に報告書データが供給される。
本実施形態において特に着目すべきは、CPU52で実行される作業容態及び注意事項、問診票データ、及び報告書データが、認定調査票データにリンクしている点である。従って、作業容態及び注意事項は、認定調査票データに即した適切なものとなって安全・安心な訪問理美容を実現することを可能とし、かつ、報告書データを用いて認定調査票データを更新することも可能となる。
具体的には、例えば認定調査票データでは意思の伝達が「ときどき伝達できる」となっていたところ、訪問理美容の施術に伴うコミュニケーションにより「ほとんど伝達できない」との報告書データが作成された場合には、当該高齢者等の認知機能が悪化している可能性があることがわかる。
また、認定調査票データでは聴力が「かなり大きな声なら何とか聞き取れる」となっていたところ、訪問理美容の施術に伴うコミュニケーションにより「ほとんど聞こえない」との報告書データが作成された場合には、当該高齢者等の聴力が悪化している可能性があることがわかる。
CPU52は、作成されメモリ56に記憶された報告書データの各項目を、メモリ56に記憶されている認定調査票データと照合し、一致していない項目があればその項目を抽出することができる。また、一致していない項目があれば認定調査票データの該当項目をハイライト表示してもよい。CPU52は、問診票データ及び報告書データとともに、報告書データと認定調査票データの照合結果、特にその不一致部分(つまり、認定調査票データの更新が必要と思われる部分)の情報をコンピュータ70に供給する。
勿論、CPU52では報告書データと認定調査票データとの照合を行わず、コンピュータ70で照合を行ってもよい。
図6〜図8は、タブレット端末50のタッチパネル60に表示される画面例である。
図6は、介護理美容福祉協会12のコンピュータ70から取得した、サービス利用者である高齢者等の個人情報及び認定調査票データを取得し、認定調査票データの認定区分に基づいて決定された作業容態及び注意事項の表示例である。高齢者等の個人情報100として、氏名や訪問理美容の実施日、実施場所、高齢者等の認定区分が表示され、図7のテーブルを用いて決定された作業容態102、並びにその作業容態で施術するに際しての注意事項104が表示される。理美容福祉師10は、このようなタブレット端末50の画面を視認することで、高齢者等の認定区分に適した作業容態で施術を実行できる。
既述したように、この画面は、GPSモジュール62で検出された位置と、サービス利用者である高齢者等の所在位置とを照合し、両者が一致した場合のみアクセス可能(表示可能)とすることが望ましい。
図7は、問診票データの表示例である。決定された作業容態102が表示され、高齢者等の希望を聴くための各種項目106が表示される。理美容福祉師10は、作業容態102で施術することを高齢者等あるいはその家族に伝えてその同意を得るとともに、各項目について問診し、その希望を入力していく。例えば、ヘアースタイルについては、「短く」、「若々しい」、「その他」の選択項目があり、高齢者等が短いヘアースタイルを希望した場合には「短く」の項目をタッチすることで入力する。CPU52は、問診票データの各項目が入力された場合に、これらをまとめて訪問理美容カルテとしてメモリ56に記憶する。
図8は、報告書データの表示例である。施術が終了した後、理美容福祉師10がタブレット端末50のタッチパネル60に表示された特定のボタンあるいはアイコンを操作することで表示される。施術を行った高齢者等の健康状態108、精神状態110、コミュニケーション112が表示され、理美容福祉師10はこれらの各項目について該当する項目をタッチして入力する。例えば、高齢者等に麻痺がある場合には「有」の項目をタッチして入力し、意思伝達がほとんどできなければ「ほとんどできない」の項目をタッチして入力する。また、特記事項は、自由に文章を入力できるフィールドであり、例えば施術中に高齢者等が特定の喜怒哀楽を表した場合にはその旨を入力する。CPU52は、報告書データの各項目が入力された場合に、これらをまとめて報告書データとしてメモリ56に記憶する。
なお、図8の表示項目は、認定調査票データの項目とリンクしている点に留意されたい。例えば、コミュニケーション状態の意思伝達、視力、聴力等はいずれも認定調査票データにも同様に存在している。従って、作成された報告書データは、認定調査票データを最新の状態に更新するための基礎データとなり得ることが理解されよう。特に、訪問理美容では、一定の継続時間をもって高齢者等と自然な状態でコミュニケーションをとるため、そのデータは極めて重要といえる。
このように、本実施形態では、認定調査票と連携することで確実な訪問理美容施術を行うことができる。また、訪問理美容を施術することにより、サービス利用者である高齢者等の状態(身体状態、認知状態、精神状態)に関するデータを収集し、これをフィードバックすることで認定調査票を更新することができるので、訪問理美容自体の質的向上のみならず、訪問理美容を介した高齢者等の介護向上に資することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態では、認定調査票データに基づいて図4に示すように8段階の認定区分に対応して1〜11の作業容態を決定しているが、作業容態の数は任意の複数でよい。但し、適切な作業容態とするためには、作業容態の数を少なくとも認定区分の数以上とするのが望ましい。
また、本実施形態では、コンピュータ70からタブレット端末50へのデータ供給、及びタブレット端末50からコンピュータ70へのデータ供給は、通信I/F58を介して実行しているが、USBメモリやSDメモリ等の可搬性記憶媒体を介してデータ送受を行ってもよい。但し、送受されるデータには個人情報が含まれていることから、セキュリティを十分に確保する必要がある。同様の理由で、タブレット端末50は、特定のメモリ56以外にはデータを書き込むことができず、プリント機能も禁止するのが望ましい。
また、本実施形態では、理美容福祉師10が用いる端末としてタブレット端末50を例示したが、これ以外にもCPU、メモリ、入力装置及び表示装置を備える携帯可能な任意の情報機器を用いることができる。
また、本実施形態において、タブレット端末50にカメラ機能が付加されていれば、カメラを用いて高齢者等の施術前と施術後の写真を撮影してメモリに記憶してもよい。但し、このような撮影も高齢者等の同意を得た上で実行することは言うまでもない。施術前と施術後の写真を報告書データに添付してコンピュータ70に供給することで、ヘアースタイル等を次回施術の参考に資することができるとともに、施術前後の高齢者等の表情からその精神状態を客観的に把握することもできる。
10 理美容福祉師、12 全国介護理美容福祉協会、14 地域包括支援センター、16 民生委員、18 病院、20 介護事業所、22 福祉施設、30 認定調査票、40 対応テーブル、50 タブレット端末、52 CPU、54 プログラムメモリ、56 メモリ、58 通信I/F、60 タッチパネル、62 GPSモジュール、70 コンピュータ(全国介護理美容福祉協会内コンピュータ)。

Claims (5)

  1. 介護保険の認定調査票データにおける認定区分と、理美容を施術するときの作業容態との対応関係を記憶する記憶手段と、
    前記対応関係を用いて、訪問理美容を行うべきサービス利用者の認定区分に対応する作業容態を決定し、前記認定調査票データ及び前記作業容態に基づき問診票データを作成し、前記訪問理美容の施術後に前記サービス利用者に関する認知機能、精神・行動障害、コミュニケーション状態の少なくともいずれかについての情報を用いて報告書データを作成する制御手段と、
    決定された作業容態と、前記問診票データと、前記報告書データを順次表示する表示手段と、
    を備えることを特徴とする端末。
  2. 前記制御手段は、前記認定調査票データ及び前記作業容態に基づき前記作業容態における注意事項データを決定し、
    前記表示手段は、前記注意事項データを表示する
    ことを特徴とする請求項1に記載の端末。
  3. 前記制御手段は、前記報告書データと前記認定調査票データとを照合する
    ことを特徴とする請求項1,2のいずれかに記載の端末。
  4. 前記作業容態は、椅子、車椅子、ベッドの作業容態を含む
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の端末。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載された端末と、
    所定の理美容福祉協会に設置されたコンピュータと、
    を有し、
    前記コンピュータは、訪問理美容を行うべきサービス利用者を特定する個人情報と、前記サービス利用者の介護保険の認定調査票データとを前記端末に供給し、
    前記端末は、
    前記認定調査票データにおける認定区分と、理美容を施術するときの作業容態との対応関係を記憶する記憶手段と、
    前記対応関係を用いて、前記サービス利用者の認定区分に対応する作業容態を決定する制御手段と、
    決定された作業容態を表示する表示手段と、
    前記訪問理美容の施術後に前記サービス利用者に関する認知機能、精神・行動障害、コミュニケーション状態の少なくともいずれかについての情報を入力する入力手段と、
    を有し、
    前記制御手段は、前記入力手段から入力された前記情報を用いて報告書データを作成して前記コンピュータに供給する
    ことを特徴とする訪問理美容と介護の連携システム。

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