以下、本発明の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、頭部を対象としたMRSのデータ収集時におけるプレサチュレーションパルスの印加領域の自動設定に関する。まず、装置構成から説明する。
図1は、第1の実施形態における磁気共鳴診断装置20の全体構成を示すブロック図である。なお、磁気共鳴診断装置20のハードウェア的な構成は、後述の各実施形態を通して共通である。
図1に示すように、磁気共鳴診断装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石22と、静磁場用磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24と、傾斜磁場コイル26と、RFコイル28と、制御系30と、被検体Qが乗せられる寝台32とを備える。
ここでは一例として、装置座標系の互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、静磁場用磁石22およびシムコイル24は、それらの軸方向が鉛直方向に直交するように配置されているものとし、静磁場用磁石22およびシムコイル24の軸方向をZ軸方向とする。また、鉛直方向をY軸方向とし、寝台32は、その天板の載置用の面の法線方向がY軸方向となるように配置されているものとする。
制御系30は、静磁場電源40と、シムコイル電源42と、傾斜磁場電源44と、RF送信器46と、RF受信器48と、シーケンスコントローラ56と、コンピュータ58とを備える。
傾斜磁場電源44は、X軸傾斜磁場電源44xと、Y軸傾斜磁場電源44yと、Z軸傾斜磁場電源44zとで構成されている。また、コンピュータ58は、演算装置60と、入力装置62と、表示装置64と、記憶装置66とで構成されている。
静磁場用磁石22は、静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給された電流により撮像空間に静磁場を形成させる。
上記撮像空間とは、例えば、被検体Qが置かれて、静磁場が印加されるガントリ内の空間の意味である。ガントリとは、静磁場磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28を含むように、例えば円筒状に形成された構造体である。被検体Qが乗せられた寝台32がガントリ内に移動できるように、ガントリ及び寝台32は構成される。なお、図1では煩雑となるので、ガントリ内の静磁場磁石22等の構成要素を図示し、ガントリ自体は図示していない。
撮像領域は、例えば、「1画像」又は「1セットの画像」の生成に用いるMR信号の収集範囲であって、撮像空間の一部として設定される領域の意味である。ここでの「1画像」及び「1セットの画像」は、2次元画像の場合もあれば3次元画像の場合もある。
シムコイル24は、シムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により、この静磁場を均一化する。静磁場用磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場用磁石22を永久磁石で構成してもよい。
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26xと、Y軸傾斜磁場コイル26yと、Z軸傾斜磁場コイル26zとを有し、静磁場用磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zに接続される。
X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zからX軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zにそれぞれ供給される電流により、X軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzが撮像領域にそれぞれ形成される。
即ち、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを合成して、論理軸としてのスライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、および、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groの各方向を任意に設定できる。スライス方向、位相エンコード方向、および、読み出し方向の各傾斜磁場は、静磁場に重畳される。
RF送信器46は、シーケンスコントローラ56から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのラーモア周波数のRFパルス(RF電流パルス)を生成し、これを送信用のRFコイル28に送信する。RFコイル28には、ガントリに内蔵されたRFパルスの送受信用の全身用コイル(WBC:whole body coil)や、寝台32または被検体Qの近傍に設けられるRFパルスの受信用の局所コイルなどがある。
送信用のRFコイル28は、RF送信器46からRFパルスを受けて被検体Qに送信する。受信用のRFコイル28は、被検体Qの内部の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号(高周波信号)を受信し、このMR信号は、RF受信器48により検出される。
RF受信器48は、検出したMR信号に前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データ(raw data)を生成する。RF受信器48は、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ56に入力する。
演算装置60は、磁気共鳴診断装置20全体のシステム制御を行うものであり、これについては後述の図2を用いて説明する。
シーケンスコントローラ56は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させるために必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源44に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
シーケンスコントローラ56は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることにより、X軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy、Z軸傾斜磁場GzおよびRFパルスを発生させる。また、シーケンスコントローラ56は、RF受信器48から入力されるMR信号の生データ(raw data)を受けて、これを演算装置60に入力する。
図2は、図1のコンピュータ58の詳細、特に演算装置60の詳細を示す機能ブロック図である。図2に示すように、演算装置60は、MPU(Micro Processor Unit)80と、条件記憶部82と、条件設定部84と、表示制御部88と、画像再構成部90と、画像処理部92と、システムバス94とを備える。
MPU80は、データ収集条件の設定や、位置決め画像の撮像動作、MRSのデータ収集動作およびその後の信号処理において、システムバス94を介して磁気共鳴診断装置20全体のシステム制御を行う。また、MPU80は、データ収集により得られたMR信号にフーリエ変換等の処理を施して、磁気共鳴スペクトラムデータを生成する。
入力装置62は、MRSのデータ収集条件や位置決め画像の撮像条件を設定する機能を操作者に提供する。また、入力装置62は、MRSのデータ収集条件の決定後、操作者により入力された位置決め画像の撮像開始または撮像中断などの制御指示をMPU80に入力する。
条件記憶部82は、MRSのデータ収集条件や位置決め画像の撮像条件などの条件を記憶するものである。
条件設定部84は、システムバス94を介して過去のMRSにおけるデータ収集条件を条件記憶部82から取得し、入力装置62を介して操作者によるデータ収集条件の入力設定を受け付ける。また、条件設定部84は、操作者の入力により変更されたデータ収集条件を条件記憶部82に記憶させる。
また、条件設定部84は、システムバス94を介して過去の画像処理条件を条件記憶部82から取得し、入力装置62を介して操作者による画像処理条件の設定を受け付ける。さらに、条件設定部84は、操作者の入力により設定された画像処理条件を条件記憶部82に記憶させる。
画像再構成部90は、シーケンスコントローラ56から入力されるMR信号の生データに公知の2次元フーリエ変換等の処理を施して、被検体Qの各スライスのMR画像の画像データを生成する。画像再構成部90は、生成した画像データを画像処理部92に入力する。
画像処理部92は、条件記憶部82に記憶された画像処理条件に従って、入力された画像データに画像処理を施し、画像処理後の画像データを記憶装置66に記憶させる。
ここで、第1の実施形態の特徴としては、少なくとも以下の2点が挙げられる。
第1に、条件設定部84は、例えば位置決め画像の撮像により得られた画像データ等に基づいて、臓器や背骨などの被検体Qの体内の「特定の組織領域」を抽出する「組織領域抽出処理」を行う。
第2に、条件設定部84は、組織領域抽出処理により得られる頭表や眼球、顎の組織領域や、水領域、脂肪領域などの「特定の組織領域」の境界線情報と、データ収集条件とに基づいて、空間選択的なプレサチュレーションパルスの印加領域を自動的に算出する。
このプレサチュレーションパルスの印加領域の算出は、操作者が例えば位置決め画像上でMRSの対象となるデータ収集領域の条件を入力により更新する都度、条件設定部84により行われる。条件設定部84は、その算出結果を条件記憶部82に入力し、保存させる。組織領域抽出処理およびプレサチュレーションパルスの印加領域の算出方法については、後述の図3以下で説明する。
記憶装置66は、画像再構成部90により生成された後に画像処理部92により画像処理が施された画像データと、そのMR画像を撮像するのに用いたデータ収集条件および患者情報とを関連づけて記憶する。また、記憶装置66は、MPU80の指令に従って、画像処理部92や表示制御部88に画像データを送信する。
表示制御部88は、条件記憶部82に保存されているデータ収集条件および画像処理条件を表示装置64に表示させると共に、記憶装置66に保存されている画像データをMR画像として表示装置64に表示させる。また、条件記憶部82に記憶されているデータ収集条件または画像処理条件に変更があった場合、表示制御部88は、最新のデータ収集条件および画像処理条件を表示装置64に表示させる。
図3は、頭部を対象としたMRS用の位置決め画像の模式図の一例であり、おおよそアキシャル断面の断面模式図である。
条件設定部84は、このような位置決め面像の画像データに対して、前述の組織領域抽出処理を行う。具体的には、条件設定部84は、この画像データに例えばメディアンフィルタや収縮処理によるノイズ除去処理を施し、ノイズ除去後の画像データに閾値処理を施すことで、空気の部分と被検体部分(この例では頭部)とを抽出したマスク画像を取得する。
一般に、MR画像における空気や骨の領域は、水を殆ど含まないゆえに水素原子が少ないから、低信号領域として(MR画像としては黒く)写るため、隣接する他の組織の領域とは識別できる。従って、頭表面の境界線抽出では、画像データに閾値処理を施し、画像周辺の低信号部分(黒い領域)と連結している部分を空気領域とみなし、微分フィルタを用いたエッジ抽出処理をすることで、頭皮の境界線情報を取得できる。
なお、図3の断面では表れないが、目や顎などの領域の境界線抽出は、例えば、頭蓋骨の形状、大きさ等を含む標準的な人体の骨格モデルに基づいて撮像画像とのテンプレートマッチングを行う、といった従来技術の画像処理によって可能である。
以上のような画像処理によって、頭部の輪郭(外縁)の骨領域と、その外側および内側の脂肪領域とを、前記「特定の組織領域」の一例として抽出できる。図3において、環状の黒く塗り潰した領域は、上記画像処理によって抽出した頭部の骨領域100(頭蓋骨)である。骨領域100の内側に隣接する環状の白い領域は、同様にして抽出した脂肪領域102であり、骨領域100の外側に隣接する環状の白い領域も、脂肪領域104である。
ここで、脂肪領域102、104ではMR信号の強度が強くなるため、MRSのデータ収集において避けることが望ましい。即ち、脂肪領域104のさらに外側の環状の一点鎖線は、後述の「避けるべき領域」の外側境界線110であり、脂肪領域102のさらに内側の環状の破線は、「避けるべき領域」の内側境界線112である。条件設定部84は、このようにして、「避けるべき領域」の内側境界線112と、外側境界線110とを算出(抽出)する。
図4は、「避けるべき領域」の外側境界線110および内側境界線112を上記位置決め画像上に重畳表示し、さらにMRSのデータ収集領域の第1の例を設定した状態を示す模式図である。
第1の例では、図4に示すように、MRSのデータ収集領域118aは、外側境界線110、内側境界線112のどちらにも重ならず、頭部のほぼ中央に設定される。
なお、データ収集領域は、シングルボクセルであっても、マルチボクセルであってもよい。
本実施形態では、一定の間隔であるマージンMだけデータ収集領域118aの外縁を拡張した領域から、当該データ収集領域118aを刳り抜いた領域を「当たり判定領域120a」と定義する。当たり判定領域120aは、設定されているデータ収集領域118aからMR信号を収集する場合に、周囲のアーチファクトの要因となる領域の影響を受けるか否かの判定基準領域である。
ここでは一例として、説明の簡単化のため、周囲のアーチファクトの要因となる領域として、上記の外側境界線110と内側境界線112との間の領域のみを考え、当該領域を以下、「避けるべき領域」と略記する。
そうすると、図4に示す第1の例では、当たり判定領域120aは、「避けるべき領域」とは重ならないため、条件設定部84は、プレサチュレーションパルスを印加する必要はないと判定する。
即ち、上記のマージンMの値について機能的に言及すれば、「避けるべき領域」の外縁と、「避けるべき領域」の強いMR信号の影響の及ぶ範囲の外縁との平均的間隔をマージンとすればよい。このようにマージンMを設定すれば、当たり判定領域120aが「避けるべき領域」に重なった場合に、以下の各例のようにプレサチュレーションパルスを用いることで、「避けるべき領域」がデータ収集領域に及ぼす影響を低減できる。
図5は、外側境界線110および内側境界線112を上記位置決め画像上に重畳表示し、さらにMRSのデータ収集領域の第2の例を設定した状態を示す模式図である。
図6は、第2の例において自動算出されるプレサチュレーションパルスの印加領域を上記位置決め画像上に重畳表示した模式図である。
第2の例では、データ収集領域118bは「避けるべき領域」に重ならないものの、当たり判定領域120bは「避けるべき領域」に1箇所だけ重なる。このため、条件設定部84は、プレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。この場合、条件設定部84は、当たり判定領域120bと、「避けるべき領域」との重なった領域である重複領域S1(後述の図6参照)が完全に含まれるように、プレサチュレーションパルスの印加領域を算出する。
そこで条件設定部84は、当たり判定領域120bの外縁と、内側境界線112との2カ所の交点をそれぞれ交点P1、P2とする。
次に、条件設定部84は、交点P1、P2を通る直線L1を算出する。直線L1の長さについては、後述する。図5は、この状態を示す。
次に、条件設定部84は、位置決め画像上において、直線L1を1辺とする長方形の領域R1が以下の2条件を満たすように、領域R1を算出する。
第1に、当該長方形における直線L1に対向する1辺が、外側境界線110よりも外側(被検体内部とは反対側)になるようにする。
第2に、直線L1の長さ(図5参照)を、位置決め画像上に映っている「避けるべき領域」の最大幅MAX(図6参照)よりも長くなるようにする(例えば前記最大幅MAXの1.2倍程度にする)。
即ち、直線L1に沿う方向に、且つ、その幅W1(図6参照)が外側境界線110を超えるように、プレサチュレーションパルスが印加される領域R1が自動算出される。これにより、重複領域S1の周辺の「避けるべき領域」にもプレサチュレーションパルスを印加し、アーチファクトの要因となる領域の影響を確実に低減する。
なお、条件設定部84は、3次元的には例えば直方体状の領域となるように、即ち、領域R1がプレサチュレーションパルスの印加領域全体の横断面の1つとなるように、当該印加領域を自動算出する。この点は、後述の他の例についても同様である。
図7は、外側境界線110および内側境界線112を上記位置決め画像上に重畳表示し、さらにMRSのデータ収集領域の第3の例を設定した状態を示す模式図である。
図8は、第3の例において自動算出されるプレサチュレーションパルスの印加領域を上記位置決め画像上に重畳表示した模式図である。
第3の例では、データ収集領域118cは「避けるべき領域」に重ならないものの、当たり判定領域120cは、「避けるべき領域」に2箇所で重なる。このため、条件設定部84は、プレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。この場合、条件設定部84は、当たり判定領域120cと、「避けるべき領域」との重複領域S2、S3(図8参照)が完全に含まれるように、第2の例と同様にプレサチュレーションパルスの印加領域を算出する。
具体的には、条件設定部84は、当たり判定領域120cの外縁と、内側境界線112との4カ所の交点を図7の上側から順にそれぞれ交点P3、P4、P5、P6とする。
次に、条件設定部84は、交点P3、P4を通る直線L2と、交点P5、P6を通る直線L3を算出する。直線L2、L3の長さについては、第2の例と同様に、例えば「避けるべき領域」の最大幅MAXよりも長くする(例えば最大幅MAXの1.2倍程度にする)。この点は、後述の他の例の直線L4〜L6、L11〜L18などについても同様である。図7は、この状態を示す。
次に、条件設定部84は、位置決め画像上において、直線L2を1辺とする長方形の領域R2を、前述同様に以下の条件を満たすように算出する。即ち、当該長方形における直線L2に対向する1辺を、外側境界線110よりも外側(被検体内部とは反対側)にする(図8参照)。
条件設定部84は、位置決め画像上において、直線L3を1辺とする長方形の領域R3も同様にして算出する。これにより、当たり判定領域120cと、「避けるべき領域」との重複領域S2、S3がプレサチュレーションパルスの印加領域に完全に含まれる。
そして、条件設定部84は、3次元的には例えば直方体状の領域となるように、領域R2が印加領域全体の横断面の1つとなるように、第1のプレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。
また、条件設定部84は、同様に領域R3が印加領域全体の横断面の1つとなるように、第2のプレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。
これら第1、第2のプレサチュレーションパルスは、例えば、別々のタイミングで印加される。即ち、領域R2、R3の重なった領域ではプレサチュレーションパルスが2回印加される。しかし、同一領域にプレサチュレーションパルスが2回以上印加されても、印加領域の原子核スピンを磁気的に飽和させるという効果面では、問題ない。この点は、後述の他の例についても同様である。
図9は、外側境界線110および内側境界線112を上記位置決め画像上に重畳表示し、さらにMRSのデータ収集領域の第4の例を設定した状態を示す模式図である。
図10は、第4の例におけるプレサチュレーションパルスの印加領域の計算過程で算出される複数の直線を、上記位置決め画像上に重畳表示した模式図である。
図11は、第4の例において自動算出されるプレサチュレーションパルスの印加領域を上記位置決め画像上に重畳表示した模式図である。
第4の例は、データ収集領域118dが「避けるべき領域」に重なる場合のプレサチュレーションパルスの印加領域の算出方法を示す。ここで、データ収集領域118dと「避けるべき領域」との重複領域をS4、当たり判定領域120dと「避けるべき領域」との重複領域をS5とする(図9参照)。この場合、条件設定部84は、重複領域S4、S5が完全に含まれるように、上記同様にプレサチュレーションパルスの印加領域を算出する。
具体的には、条件設定部84は、当たり判定領域120dの外縁と、内側境界線112との4カ所の交点を図9の上側から順にそれぞれ交点P7、P8、P9、P10とする。交点P8、P9は、データ収集領域118dの外縁と、内側境界線112との交点でもある。
次に、条件設定部84は、交点P7、P8を通る直線L4と、交点P8、P9を通る直線L5と、交点P9、P10を通る直線L6とを前述同様の長さで算出する。図10は、この状態を示す。
なお、直線L4〜L6の長さは、重複領域S4、S5の周辺の「避けるべき領域」にもプレサチュレーションパルスを印加することで、アーチファクトの影響を確実に抑える効果が十分得られればよく、互いに同じではなくてもよい。
次に、条件設定部84は、位置決め画像上において、直線L4を1辺とする長方形の領域R4を、当該長方形における直線L4に対向する1辺が外側境界線110よりも外側になるように算出する。この算出方法は前述同様である。
同様にして、条件設定部84は、位置決め画像上において、直線L5を1辺とする長方形の領域R5と、直線L6を1辺とする長方形の領域R6も算出する。図11は、この状態を示す。
そして、条件設定部84は、3次元的には例えば直方体状の領域となるように、領域R4、R5、R6がそれぞれ印加領域全体の横断面の1つとなるように、3つのプレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。これにより、データ収集領域118dまたは当たり判定領域120dと、「避けるべき領域」との重複領域S4、S5がプレサチュレーションパルスの印加領域に完全に含まれる。
図12は、外側境界線110および内側境界線112を上記位置決め画像上に重畳表示し、さらにMRSのデータ収集領域の第5の例を設定した状態を示す模式図である。
図13は、第5の例におけるプレサチュレーションパルスの印加領域の計算過程で算出される複数の直線を、上記位置決め画像上に重畳表示した模式図である。
図14は、第5の例において自動算出されるプレサチュレーションパルスの印加領域を上記位置決め画像上に重畳表示した模式図である。
第5の例は、データ収集領域118eが複数の箇所で「避けるべき領域」に重なる場合のプレサチュレーションパルスの印加領域の算出方法を示す。この場合、プレサチュレーションパルスの印加領域および印加回数が増加するだけであり、手順は前述同様である。
具体的には、データ収集領域118eと内側境界線112との交点を円周状に順にP11、P12、P13、P14、P15、P16、P17、P18とする(図12参照)。当たり判定領域120eと内側境界線112との交点は、ここでは考慮しない。
次に、条件設定部84は、交点P11、P12を通る直線をL11、交点P12、P13を通る直線をL12、交点P13、P14を通る直線をL13、交点P14、P15を通る直線をL14、交点P15、P16を通る直線をL15、交点P16、P17を通る直線をL16、交点P17、P18を通る直線をL17、交点P18、P11を通る直線をL18とする(図13参照)。これら8つの直線L11〜L18の長さについては前述同様である。
次に、条件設定部84は、位置決め画像上において、直線L11を1辺とする長方形の領域R11を、当該長方形における直線L11に対向する1辺が外側境界線110よりも外側になるように算出する。この算出方法は前述同様である。
条件設定部84は、直線L12を1辺とする長方形の領域R12、直線L13を1辺とする長方形の領域R13、直線L14を1辺とする長方形の領域R14、直線L15を1辺とする長方形の領域R15、直線L16を1辺とする長方形の領域R16、直線L17を1辺とする長方形の領域R17、直線L18を1辺とする長方形の領域R18を上記同様にして算出する。
そして、条件設定部84は、3次元的には例えば直方体状の領域となるように、領域R11〜R18がそれぞれ印加領域全体の横断面の1つとなるように、8つのプレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。これにより、データ収集領域118eまたは当たり判定領域120eと、「避けるべき領域」との重複領域がプレサチュレーションパルスの印加領域に完全に含まれる。
以上の5例のように、条件設定部84は、位置決め画像の画像データと、データ収集領域の位置と、「避けるべき領域」の位置とに基づいて、プレサチュレーションパルスを印加すべきか否かを自動判定する。印加すべきと判定した場合、条件設定部84は、データ収集領域の位置と、「避けるべき領域」の位置とに応じた数のプレサチュレーションパルスの各印加領域を自動算出する。
以上の5例のように自動算出されるプレサチュレーションパルス印加領域は、MRSのデータ収集条件として条件記憶部82に保存され、表示装置64に表示される。操作者は、必要に応じて、表示されるプレサチュレーションパルスの印加領域の設定を変更できる。
図15は、第1の実施形態における磁気共鳴診断装置20の動作の流れを示すフローチャートである。以下、前述した各図を適宜参照しながら、図15に示すステップ番号に従って、磁気共鳴診断装置20の動作を説明する。
[ステップS1]磁気共鳴診断装置20は、入力装置62を介して操作者により入力されるMRSのデータ収集条件に関する情報に基づいて初期設定を行う。また、入力装置62を介して撮像部位が指定される。撮像部位とは、例えば、胸部、腰部などの被検体Qのどの部分を撮像領域として画像化するか、の意味である。ここでは一例として、頭部のMRS検査が指定されるものとする。
条件設定部84は、データ収集条件として頭部MRSを条件記憶部82に保存する。条件設定部84は、過去に設定された頭部MRSのデータ収集条件を条件記憶部82から取得すると共に、操作者により入力される条件を入力装置62から取得する。
条件設定部84は、頭部MRS検査が指定されていることから、位置決め画像の撮像条件として、患者座標系におけるアキシャル断面から若干傾いた断面の撮像条件を設定する。
なお、ここでは一例として、上記の患者座標系のX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。即ち、被検体Qの左右方向をX軸方向とし、腹側を前、背中側を後ろとした被検体Qの前後方向をY軸方向とする。また、およそ背骨延在方向に頭を上、足を下とした被検体Qの上下方向をZ軸方向とする。
また、患者座標系のX−Y平面をアキシャル面、患者座標系のX−Z平面をコロナル面、患者座標系のY−Z平面をサジタル面とする。被検体Qがその頭から足に向けての体軸方向を装置座標系のZ軸方向に沿って寝台32上に寝た姿勢での撮像では、患者座標系のアキシャル面は、装置座標系のX−Y平面に合致する。
また、条件設定部84は、組織領域の抽出に適した画像を撮像するため、脂肪強調画像および水強調画像の撮像条件を設定する。条件設定部84は、条件記憶部82から、同一の撮像条件を取得し、表示制御部88を介して表示装置64に当該撮像条件を表示する。操作者は、入力装置62を介して、表示された撮像条件を変更できる。この後、ステップS2に進む。
なお、この例では脂肪領域のMR信号を抑制するので、複数の位置決め画像の少なくとも一部は、例えばDixon法などのシーケンスにより、上記のように脂肪強調画像として撮像するとよい。抑制すべき脂肪領域が弱く描出された画像に基づいて脂肪領域を抽出するよりも、脂肪強調画像に基づいて脂肪領域を抽出した方が、抽出の精度が上がる。そのように正確に抽出された脂肪領域を「避けるべき領域」に含めて、プレサチュレーションパルスの印加領域を算出することで、アーチファクト抑制が効果的になる。この点は、後述の第2〜第5の実施形態についても同様である。
[ステップS2]MRSのデータ収集領域の位置決めに用いるための複数の位置決め画像が撮像される。具体的には、静磁場電源40により励磁された静磁場用磁石22によって撮像空間に静磁場が形成され、シムコイル電源42からシムコイル24に電流が供給されて、静磁場が均一化される。MPU80は、撮像開始指示が入力されると、パルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ56に入力する。
シーケンスコントローラ56は、このパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることで、撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、RFコイル28からRF信号を発生させる。
このため、被検体Q内の核磁気共鳴により生じたMR信号がRFコイル28により受信されて、RF受信器48により検出される。RF受信器48は、検出したMR信号に所定の信号処理を施した後、これをA/D変換することで、デジタル化したMR信号である生データを生成する。RF受信器48は、生データをシーケンスコントローラ56に入力する。シーケンスコントローラ56は、生データを画像再構成部90に入力し、画像再構成部90は、内部のメモリにおいて生データをk空間データとして配置および記録する。
画像再構成部90は、k空間データに2次元フーリエ変換等を施すことで画像データを再構成し、画像処理部96は、再構成された画像データに所定の画像処理を施すことで2次元の表示用画像データを生成する。画像処理部96は、この表示用画像データを記憶装置66に保存させる。この後、ステップS3に進む。
[ステップS3]条件設定部84は、位置決め面像の画像データに前述の組織領域抽出処理を施すことで、頭表面、および、「避けるべき領域」(の内側境界線および外側境界線)を抽出する。この抽出方法については、図3などを用いて前述した通りである。条件設定部84は、頭表面、および、「避けるべき領域」の境界線情報を記憶する。この後、ステップS4に進む。
[ステップS4]MPU80は、ステップS2で撮像された位置決め画像から、位置決めに適切なものを選択する。ここでの位置決めに適切なものとは、例えば、病変部位が画像において最大面積で映っている位置決め画像である。例えば、予め記憶装置66に保存されている正常な被検体の頭部のアキシャル断面像とパターンマッチングを行う等によって、正常な被検体との差分が大きいものを病変部位が映っている位置決め画像とすればよい。
MPU80は、表示制御部88を制御して、選択した位置決め画像を表示装置64上に表示させる。このとき、例えば図4の断面模式図のように、選択した位置決め画像上には、「避けるべき領域」の内側境界線112および外側境界線110がそれぞれ異なる有彩色で識別的に重畳表示される。
操作者は、入力装置62を介して、内側境界線112と外側境界線110との間の領域である「避けるべき領域」の表示色や透明度を変更できる。また、操作者は、入力装置62を介して、「避けるべき領域」の表示または非表示を切り替えることもできる。さらに、操作者は、入力装置62を介して、データ収集領域の位置決めに用いる画像を選択し直すこともできる。
この後、操作者は、選択および表示された位置決め画像上で、データ収集領域を設定する。なお、データ収集領域については、シングルボクセルであっても、マルチボクセルであってもよい。この後、ステップS5に進む。
[ステップS5]条件設定部84は、選択された位置決め画像の画像データ、および、その画像上で設定されたデータ収集領域(図4〜図14における118a〜118e)に基づいて、前述の当たり判定領域(図4〜図14における120a〜120e)を設定する。条件設定部84は、ステップS3で抽出した「避けるべき領域」に当たり判定領域が重なるか否かを判定し、判定結果をMPU80に伝達する。
「避けるべき領域」に当たり判定領域が重なる場合、MPU80はステップS7に磁気共鳴診断装置20の処理を移行させ、そうでない場合、MPU80はステップS6に磁気共鳴診断装置20の処理を移行させる。
[ステップS6]ステップS6に到達する場合、当たり判定領域が「避けるべき領域」に重ならないため、データ収集領域は「避けるべき領域」からのアーチファクトの影響を受けないと推定される。従って、MPU80は、MRS用パルスシーケンスとして、プレサチュレーションパルスを印加しないものをシーケンスコントローラ56に入力する。
パルスシーケンスの起動に基づいて、傾斜磁場電源44から傾斜磁場コイル26にパルス電流が送信される。これにより、スライス選択方向傾斜磁場Gssや、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeが撮像領域に印加される。この間、適宜なタイミングで印加されるRF送信器46からのRF電流パルスによりRFコイル28からRFパルスが発生し、傾斜磁場コイル26の印加磁場により選択されたデータ収集領域の原子核スピンを磁気的に励起させる。
この励起に伴って発生するMR信号が、再びRFコイル28により受信される。受信されたMR信号は、RF受信器48を介してシーケンスコントローラ56に送信される。シーケンスコントローラ56は、送信されたMR信号をMPU80に入力する。この後、ステップS11に進む。
[ステップS7]条件設定部84は、選択された位置決め画像の画像データ、その画像上で設定されたデータ収集領域、ステップS3で抽出した「避けるべき領域」に基づいて、プレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。この算出方法については、図5〜図14を用いて前述した通りである。
条件設定部84は、算出したプレサチュレーションパルスの印加領域を表示制御部88に入力し、表示制御部88は、位置決め画像上にプレサチュレーションパルスの印加領域を重畳表示する。なお、位置決め画像上には、データ収集領域と、避けるべき領域の内側境界線および外側境界線も例えば別々の有彩色によって識別表示される。この後、ステップS8に進む。
[ステップS8]操作者は、位置決め画像上にデータ収集領域と共に重畳表示されるプレサチュレーションパルスの印加領域を見て、データ収集領域の位置や向きや大きさを変更できる。
操作者が入力装置62を介してデータ収集領域を変更した場合、ステップS5に戻り、データ収集領域が変更されない場合、ステップS9に進む。
即ち、操作者がデータ収集領域の位置や向きや大きさを変更する都度、新たなデータ収集領域に基づいて、プレサチュレーションパルスを印加すべきか否かを判定し(ステップS5)、新たにプレサチュレーションパルスの印加領域を算出する(ステップS7)。
[ステップS9]操作者は、位置決め画像上にデータ収集領域と共に重畳表示されるプレサチュレーションパルスの印加領域を見つつ、プレサチュレーションパルスの印加領域の位置や向きや範囲を変更できる。操作者が入力装置62を介してプレサチュレーションパルスの印加領域を変更した場合、MPU80は、変更後の領域をプレサチュレーションパルスの印加領域として最終的に決定する。
操作者がプレサチュレーションパルスの印加領域を変更しない場合、MPU80は、条件設定部84が自動算出した領域をプレサチュレーションパルスの印加領域として最終的に決定し、条件記憶部82に記憶させる。この後、ステップS10に進む。
[ステップS10]MPU80は、MRS用パルスシーケンスとして、ステップS9で決定したプレサチュレーションパルスを印加するものをシーケンスコントローラ56に入力する。
そして、プレサチュレーションパルスの印加後、ステップS6と同様にデータ収集領域の原子核スピンが磁気的に励起され、この励起に伴って発生するMR信号がMPU80に入力される。この後、ステップS11に進む。
[ステップS11]MPU80は、ステップS6またはステップS10で入力されたMR信号にフーリエ変換等の処理を施すことで、データ収集領域における代謝物質毎の濃度分布を示す磁気共鳴スペクトラムデータを生成する。
以上が第1の実施形態の磁気共鳴診断装置20の動作説明である。
このように第1の実施形態では、MRSにおけるアーチファクトを低減するためのプレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。従って、プレサチュレーションパルスの設定条件に掛ける手間を軽減できる。この結果、MRS検査のスループットを向上できる。
さらに、第1の実施形態では、位置決め画像を用いて操作者がデータ収集領域を設定する際に、位置決め画像上に「避けるべき領域」を識別的に重畳表示する(ステップS4参照)。従って、操作者は、「避けるべき領域」から離してデータ収集領域を設定することで、「避けるべき領域」の強いMR信号の影響を意図的に回避できる。
なお、自動算出されたプレサチュレーションパルスの印加領域を操作者が変更可能とする余地を与えずに、条件設定部84が自動算出した印加領域にプレサチュレーションパルスを印加するように自動決定してもよい(後述の各実施形態についても同様である)。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、プレサチュレーションパルスの印加数の最適化を図るものである。まず、以下の2点のみを考慮すると、プレサチュレーションパルスの印加数は、少ない方が望ましい。
第1に、プレサチュレーションパルスの印加数が多いと、SAR(Specific Absorption Ratio:比吸収率)が高くなるため、後続のシーケンスの条件次第では、撮像を続行できないことが生じ得る。なお、SARとは、生体組織1kgあたりに吸収されるRFパルスのエネルギーをいう。
第2に、空間選択的なプレサチュレーションパルスを多く印加した場合、水抑制のためのプレサチュレーションパルスの効果が下がるおそれがある。これは、水からのMR信号の抑制のための周波数選択的なプレサチュレーションパルスを印加後、空間選択的なプレサチュレーションパルスを印加することが多いからである。
しかし、例えば前述の図14のようにデータ収集領域と「避けるべき領域」との重なる部分が多いためにプレサチュレーションパルスを8回印加する場合、プレサチュレーションパルスの数を大幅に減らせば、アーチファクトの影響を十分に低減できないおそれがある。
ここで、「避けるべき領域」の存在を考慮しない場合、磁気共鳴スペクトラムデータをデータ収集領域からより正確に取得するためには、データ収集領域にはプレサチュレーションパルスを印加しない方が好ましい。従って、データ収集領域内であると共に「避けるべき領域」の範囲外であるが、プレサチュレーションパルスが印加される領域(以下、「犠牲領域」という)の面積は、小さい方が望ましい。
以上の点を鑑みて、第2の実施形態では、SAR優先モード、アーチファクト抑制優先モード、操作者選択モードの3つを設定可能にして、データ収集条件に応じたプレサチュレーションパルスの印加数の最適化を図る。
図16は、データ収集領域と、「避けるべき領域」とが重なった場合に、上記各モードのプレサチュレーションパルスの印加領域の算出方法を示す模式図である。
図16(A)はSAR優先モードに対応し、図16(C)はアーチファクト抑制優先モードに対応し、図16(B)は両者の中間的な例を示す。
図16(A)、(B)、(C)において、データ収集領域118f、当たり判定領域120f、「避けるべき領域」の外側境界線110および内側境界線112は共通である。各図において、当たり判定領域120fと内側境界線112との交点を図の上から順にP21、P22、P23、P24とする。P22、P23は、データ収集領域118fと内側境界線112との交点でもある。
SAR優先モードでは、SARが大きくならないように、プレサチュレーションパルスの数の少なさを優先する。図16(A)のSAR優先モードの例では、プレサチュレーションパルスの印加領域は1つのみが自動算出される。
具体的には、交点P21〜P24の内、図の最も上側の交点P21と、最も下側の交点P24とを通る直線L21を算出する。この直線L21が長方形の1辺となるように、第1の実施形態と同様に長方形状のプレサチュレーションパルスの印加領域を算出する(3次元的には例えば直方体状の印加領域になる)。
図16(A)において犠牲領域S21(図中の斜線領域)は、「避けるべき領域」の範囲外であるが、プレサチュレーションパルスが印加されるデータ収集領域118f内の領域である。
アーチファクト抑制優先モードでは、アーチファクトの抑制を最優先する。図16(C)のアーチファクト抑制優先モードの例では、プレサチュレーションパルスの印加領域は3つが自動算出される。
具体的には、交点P21、P22を通る直線L24を算出し、直線L24が外縁となるように、前述同様に第1のプレサチュレーションパルスの印加領域を算出する。
また、交点P22、P23を通る直線L25を算出し、直線L25が外縁となるように、前述同様に第2のプレサチュレーションパルスの印加領域を算出する。
また、交点P23、P24を通る直線L26を算出し、直線L26が外縁となるように、前述同様に第3のプレサチュレーションパルスの印加領域を算出する。
図16(C)における犠牲領域S23(図中の斜線領域)は、「避けるべき領域」の範囲外であるが、プレサチュレーションパルスが印加されるデータ収集領域118f内の領域である。
図16(B)は、上記SAR優先モードと、アーチファクト抑制優先モードとの中間的な算出方法であり、2つのプレサチュレーションパルスが印加される。
この例では、交点P21、P23を通る直線L22を算出し、直線L22が外縁となるように、前述同様に第1のプレサチュレーションパルスの印加領域を算出する。
また、交点P22、P24を通る直線L23を算出し、直線L23が外縁となるように、前述同様に第2のプレサチュレーションパルスの印加領域を算出する。
この場合、図16(B)における犠牲領域S22(図中の斜線領域)は、「避けるべき領域」の範囲外であるが、プレサチュレーションパルスが印加されるデータ収集領域118f内の領域である。
このように犠牲領域は、小さい順に犠牲領域S23、S22、S21となる。即ち、アーチファクト抑制優先モードでは、データ収集領域へのプレサチュレーションパルスの印加領域の面積が最小になり、磁気共鳴スペクトラムデータを正確に取得できる一方、プレサチュレーションパルスの印加本数が多くなり、SARが増加しうる。SAR優先モードでは、その反対になる。
操作者選択モードでは、アーチファクト抑制優先モードでのプレサチュレーションパルスの印加数と、SAR優先モードでのプレサチュレーションパルスの印加数とが表示され、操作者は、プレサチュレーションパルスの印加数を入力装置62から入力できる。
上記の例では、例えば、操作者が、プレサチュレーションパルスの印加数を2に選択した場合、図16(B)に示すような表示状態となる。
即ち、データ収集領域と、「避けるべき領域」と、プレサチュレーションパルスの印加領域の外縁となる直線L22、L23と、犠牲領域S22とが位置決め画像上に重畳表示される。
以上の図16の例では、データ収集領域が「避けるべき領域」に1ヶ所で重なる場合について示した。図12〜図14に示す第5の例のようにデータ収集領域118eが複数の箇所で「避けるべき領域」に重なる場合についても、上記同様の手法で、SAR優先モード、アーチファクト抑制優先モードによるプレサチュレーションパルスの印加領域の算出が可能である。データ収集領域が「避けるべき領域」に重ならないものの、当たり判定領域が「避けるべき領域」に複数箇所で重なることで犠牲領域が生じる場合についても、同様である。
図17は、第2の実施形態における磁気共鳴診断装置20の動作の流れを示すフローチャートである。以下、図17に示すステップ番号に従って、磁気共鳴診断装置20の動作を説明する。
[ステップS21〜S23]第1の実施形態のステップS1〜S3と同様であるので、重複する説明を省略する。この後、ステップS24に進む。
[ステップS24]MPU80は、ステップS22で撮像された位置決め画像から、第1の実施形態のステップS4と同様に位置決めに適切なものを選択後、選択した位置決め画像を表示装置64上に表示させる。
なお、操作者は、入力装置62を介して、データ収集領域の位置決めに用いる画像を選択し直すこともできる。この後、操作者は、選択および表示された位置決め画像上で、データ収集領域を設定する。
また、操作者は、プレサチュレーションパルスの印加領域の算出方法の入力情報として、操作者選択モード、アーチファクト抑制優先モード、SAR優先モードのいずれかを入力装置62を介して選択する。何も入力がない場合、例えばアーチファクト抑制優先モードが自動選択される。この後、ステップS25に進む。
[ステップS25、S26]第1の実施形態のステップS5、S6と同様であるので、重複する説明を省略する。なお、ステップS25において「避けるべき領域」に当たり判定領域が重ならない場合、ステップS26に進み、両者が重なる場合、ステップS27に進む。
[ステップS27]MPU80は、プレサチュレーションパルスの印加領域の算出方法として、操作者選択モードに設定されているか否かを判定する。操作者選択モードに設定されている場合、ステップS28に進み、そうでない場合、ステップS29に進む。
[ステップS28]条件設定部84は、アーチファクト抑制優先モードまたはSAR優先モードでプレサチュレーションパルスの印加領域をそれぞれ算出する場合について、プレサチュレーションパルスの印加数を算出する。条件設定部84は、表示制御部88を制御して、算出した2つの印加数をそれぞれ表示装置64上に表示させる。
操作者は、入力装置62を介して、プレサチュレーションパルスの印加数を選択する。何も入力がない場合、条件設定部84は、アーチファクト抑制優先モードでの印加数と、SAR優先モードでの印加数との中間値(小数になれば例えば四捨五入して自然数にする)をプレサチュレーションパルスの印加数として選択する。この後、ステップS29に進む。
[ステップS29]条件設定部84は、設定された算出モードに従って、プレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。
即ち、アーチファクト抑制優先モードに設定されている場合、条件設定部84は、第1の実施形態と同様にして、犠牲領域の面積が最小となるようにプレサチュレーションパルスの印加領域を算出する(図16(C)参照)。
SAR優先モードに設定されている場合、条件設定部84は、プレサチュレーションパルスの印加本数が最小となるように、その印加領域を算出する(図16(A)参照)。
操作者選択モードに設定されている場合、条件設定部84は、ステップS28で設定されたプレサチュレーションパルスの本数となるように、その印加領域を算出する。
条件設定部84は、自動算出したプレサチュレーションパルスの印加領域を表示制御部88に入力し、表示制御部88は、位置決め画像上にプレサチュレーションパルスの印加領域を重畳表示する。なお、位置決め画像上には、データ収集領域と、避けるべき領域の内側境界線および外側境界線も例えば別々の有彩色によって識別表示される。この後、ステップS30に進む。
[ステップS30]操作者は、位置決め画像上にデータ収集領域と共に重畳表示されるプレサチュレーションパルスの印加領域を見て、プレサチュレーションパルスの算出方法のモードを変更できる。これにより、操作者は、プレサチュレーションパルスの印加領域、印加本数を変更できる。
プレサチュレーションパルスの算出方法のモードが変更された場合、ステップS27に戻り、そうでない場合、ステップS31に進む。
[ステップS31〜S33]第1の実施形態のステップS9〜S11と同様であるので、重複する説明を省略する。
以上が第2の実施形態の磁気共鳴診断装置20の動作説明である。
このように第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、第2の実施形態では、プレサチュレーションパルスの印加領域の算出方法に関し、3つのモードのいずれかを選択できる。これにより、SARの小ささ、アーチファクトの抑制などの優先事項に応じて、プレサチュレーションパルスの印加数および犠牲領域の面積を最適化しうる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、操作者が参照していないこともありうる複数断面を、プレサチュレーションパルス印加領域の自動算出において反映させる。
図18は、アキシャル断面から若干傾けた2つの互いに平行な頭部の断面Aと断面Bとで、「避けるべき領域」と当たり判定領域との重なり方の違いの例を示すサジタル断面模式図である。
図19は、図18の断面Aの断面模式図である。
図20は、図18の断面Bの断面模式図である。
図21は、図18の断面A、断面Bを斜視的に捉えた模式図である。
図18、図20、図21に示すように、断面Bでは、当たり判定領域120gは、「避けるべき領域」の内側境界線112bには重ならない。一方、図18、図19、図21に示すように、断面Aでは、当たり判定領域120gは、「避けるべき領域」の内側境界線112bに重なる。
従って、アーチファクト抑制のため、プレサチュレーションパルスの印加が望まれる。即ち、操作者がデータ収集領域118gの位置決めの際に断面Bのみを参照し、当たり判定領域が「避けるべき領域」に重ならないからプレサチュレーションパルスを印加しなくてもよいという不正確な判断の防止が望まれる。
以下、図18〜図21の例で第3の実施形態のプレサチュレーションパルスの印加領域の算出方法を具体的に説明する。図19に示すように、条件設定部84は、断面Aにおいて、当たり判定領域120gと内側境界線112bとの2つの交点をそれぞれP31、P32とする。なお、この例では、データ収集領域118gは「避けるべき領域」に重ならないものとする。
次に、条件設定部84は、プレサチュレーションパルスの印加領域の外縁として、交点P31、P32を通る直線L31を第1の実施形態と同様に算出する。
次に、条件設定部84は、サジタル断面において、内側境界線112bにおける交点P31−P32間の部分に対して、外側境界線110b側から外接する接線の平均的な傾きを算出する。ここでは一例として、交点P31、P32を含む4点において接線をそれぞれ算出し、これら4つの接線の傾きを平均する。
具体的には、条件設定部84は、図19に示すように、直線L31における交点P31、P32間の部分を3等分した点をそれぞれ基準点W1、基準点W2とする。
図22は、図19の交点P31を通るサジタル断面Sag1において、内側境界線112bと断面Aとの交点に外接する接線TAN1を示す断面模式図である。図22の場合、内側境界線112bと断面Aとの交点は、交点P31になる。
図23は、図19の基準点W1を通るサジタル断面Sag2において、内側境界線112bと断面Aとの交点P33に外接する接線TAN2を示す断面模式図である。
図24は、図19の基準点W2を通るサジタル断面Sag3において、内側境界線112bと断面Aとの交点P34に外接する接線TAN3を示す断面模式図である。
図25は、図19の交点P32を通るサジタル断面Sag4において、内側境界線上112bと断面Aとの交点に外接する接線TAN4を示す断面模式図である。図25の場合、内側境界線112bと断面Aとの交点は、交点P32になる。
条件設定部84は、図22〜図25に示す4つの接線TAN1〜TAN4の位置および傾きをそれぞれ算出する。次に、条件設定部84は、接線TAN1〜TAN4の平均の傾きを持つと共に交点P31を通るサジタル断面Sag1において、交点P31に重なる直線TANaveを算出する。
なお、ここでは一例として、直線TANaveを交点P31に重なる位置にしたが、サジタル断面に平行であって同じ傾きであれば、交点P31−P32間の他のサジタル断面上で内側境界線112bに重なる位置にしてもよい。
図26は、内側境界線と断面Aとの交点P31を通るサジタル断面Sag1における、プレサチュレーションパルスの印加領域を示すサジタル断面模式図である。
図26に示すように、3本の点線の直線と、1本の実線の直線TANaveで示す長方形の領域が、直方体状のプレサチュレーションパルスの印加領域R31(の一横断面)として算出される。プレサチュレーションパルスの印加領域R31は、例えば、その6つの外縁面の内の互いに対向する2つの面がサジタル断面に平行となるように、直方体状に算出される。
図27は、アキシャル断面から若干傾けた断面A(図18参照)における、プレサチュレーションパルスの印加領域R31(の一横断面)を示す断面模式図である。図27において印加領域R31は、3本の点線の直線と、1本の実線の直線31で示す領域である。即ち、この断面では、プレサチュレーションパルスの印加領域R31は、交点P31、P32を通る直線L31を1辺とする長方形状となる。
このように接線に基づいて印加領域の外縁を算出することで、プレサチュレーションパルスの印加領域R31内に「避けるべき領域」をなるべく多く含ませることができる。
図28は、第3の実施形態における磁気共鳴診断装置20の動作の流れを示すフローチャートである。以下、図28に示すステップ番号に従って、磁気共鳴診断装置20の動作を説明する。
[ステップS41]第1の実施形態のステップS1と同様に、初期設定および撮像部位の指定が行われる。ここでも一例として、頭部のMRS検査が指定されるものとする。この後、ステップS42に進む。
[ステップS42]MPU80は、例えば互いに平行かつ所定間隔で並んだ複数(例えば20枚)のスライスの画像データから構成されるボリュームデータが得られるように、位置決め画像の撮像条件を設定する。ここでは一例として、ボリュームデータの各スライスは、前述の断面A、Bのように(図18参照)、アキシャル面から若干傾いた断面であるものとする。
そして、第1の実施形態のステップS2と同様に位置決め画像が撮像され、その表示用画像データが記憶装置66に保存される。この後、ステップS43に進む。
[ステップS43]条件設定部84は、前述と同様にして、各位置決め面像の画像データから頭表面および「避けるべき領域」(の内側境界線および外側境界線)を抽出し、頭表面および「避けるべき領域」の境界線情報を記憶する。この後、ステップS44に進む。
[ステップS44]MPU80は、ステップS42で撮像された位置決め画像から、第1の実施形態のステップS4と同様に、位置決めに適切なものを選択する。
MPU80は、表示制御部88を制御して、選択した位置決め画像を表示装置64上に表示させる。このとき、例えば図19や図20の断面模式図のように、選択した位置決め画像上には、「避けるべき領域」の内側境界線112bおよび外側境界線110bがそれぞれ異なる有彩色で識別的に重畳表示される。
操作者は、入力装置62を介して、内側境界線112bと外側境界線110bとの間の領域である「避けるべき領域」の表示色や透明度を変更できる。また、操作者は、入力装置62を介して、「避けるべき領域」の表示または非表示を切り替えることもできる。さらに、操作者は、入力装置62を介して、データ収集領域の位置決めに用いる画像を選択し直すこともできる。
この後、操作者は、選択および表示された位置決め画像上で、データ収集領域を設定する。ここでは一例として、ステップS2で撮像した位置決め画像の内の2つ以上に跨る程度に、厚みのあるデータ収集領域118gが3次元的に設定されるものとする。この後、ステップS45に進む。
[ステップS45]条件設定部84は、設定されたデータ収集領域118gの外縁をマージンMだけ拡張した領域からデータ収集領域118gを刳り抜いた領域として、当たり判定領域120gを3次元的に算出する。
次に、条件設定部84は、全ての位置決め画像から、当たり判定領域120gが及んでいるものを選択する。
次に、条件設定部84は、当たり判定領域120gが及んでいる位置決め画像のそれぞれに対し、ステップS43で抽出した「避けるべき領域」に当たり判定領域が重なるか否かを判定し、判定結果をMPU80に伝達する。また、当たり判定領域120gが内側境界線112bに重なっている位置決め画像があれば、それがどの画像データであるかを条件設定部84は記憶する。
当たり判定領域120gが「避けるべき領域」に重なる断面(位置決め画像)が1つでもある場合、MPU80はステップS47に処理を移行させ、それ以外の場合、MPU80はステップS46に処理を移行させる。
[ステップS46]第1の実施形態のステップS6と同様に、プレサチュレーションパルスが印加されずにMRSのデータ収集が行われる。この後、ステップS51に進む。
[ステップS47]条件設定部84は、図18〜図27を用いて前述した手順により、プレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。
即ち、条件設定部84は、当たり判定領域120gが「避けるべき領域」に重なる断面Aと、内側境界線112bとのサジタル断面上での交点において、内側境界線112bに対する接線を算出する。条件設定部84は、この接線を平均した直線が外縁となるように、プレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。
なお、当たり判定領域120gが「避けるべき領域」に重なる断面(位置決め画像)が複数ある場合、例えば、各々の断面毎に上記同様にプレサチュレーションパルスの印加領域をそれぞれ自動算出すればよい。この場合、複数のプレサチュレーションパルスが印加されることになる。
条件設定部84は、算出したプレサチュレーションパルスの印加領域を表示制御部88に入力し、表示制御部88は、位置決め画像上にプレサチュレーションパルスの印加領域を重畳表示する。また、条件設定部84は、算出したプレサチュレーションパルスの印加領域を条件記憶部82に入力し、保存させる。
なお、位置決め画像上には、データ収集領域と、「避けるべき領域」の内側境界線および外側境界線も例えば別々の有彩色によって識別表示される。この後、ステップS48に進む。
[ステップS48〜S51]第1の実施形態のステップS8〜S11と同様であるので、重複する説明を省略する。以上が第3の実施形態の磁気共鳴診断装置20の動作説明である。
このように第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに第3の実施形態では、複数の断面に基づいてプレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する。従って、当たり判定領域が「避けるべき領域」に重なる断面があるにも拘らず、両者が重ならない断面でデータ収集領域118gを設定し、プレサチュレーションパルスの印加が不要、と不正確な判断がなされることを防止できる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、他の断面を参照せずとも、1つの位置決め画像上において「避けるべき領域」の合算領域に重ならないようにデータ収集領域を設定するだけで、データ収集領域が「避けるべき領域」に重ならないように設定可能にする。
そこで、第4の実施形態では、データ収集領域の決定前に、複数の互いに平行な断面間で「避けるべき領域」を重ね合わせた合算領域(合成領域)を位置決め画像上に重畳表示する。
図29は、アキシャル断面から若干傾いた断面C、D、Eの位置関係を示す頭部のサジタル断面の模式図である。各断面C、D、Eは、面積が互いに同じの正方形または長方形であって互いに平行であり、外縁(輪郭)が揃うように、1のボリュームデータとして撮像されるものとする。図中の一点鎖線は「避けるべき領域」の外側境界線130であり、図中の破線は「避けるべき領域」の内側境界線132である。また、図中の二点鎖線の直線は、各断面C、D、Eの画像の外縁140を示す。
図中の外側境界線130と内側境界線132で挟まれた「避けるべき領域」は、主に頭蓋骨に隣接する脂肪領域(MR信号強度が強い領域)であるが、「避けるべき領域」の一部として、内側境界線132によって鼻腔の空気の領域も抽出されている。断面Cでは、「避けるべき領域」としての鼻腔の空気の領域が含まれる。
図30〜図32はそれぞれ、図29の断面C、D、Eの撮像画像における「避けるべき領域」の広がりを示す断面模式図である。
断面Cでは、符号の区別のため、図30に示すように「避けるべき領域」の外側境界線を130c、内側境界線を132cとする。同様に、断面Dでは、図31に示すように「避けるべき領域」の外側境界線を130d、内側境界線を132dとする。同様に、断面Eでは、図32に示すように「避けるべき領域」の外側境界線を130e、内側境界線を132eとする。
なお、図30〜図32において、長方形の枠は画像の外縁140を示す。図29〜図32から分かるように、頭頂側ほど(断面Eの方が)、「避けるべき領域」の広がりが小さくなる。
図33は、図30〜図32に示す各断面C、D、Eの「避けるべき領域」の合算領域を示す説明図である。図33(A)は、各断面C、D、Eの画像の外縁を揃えることで、外側境界線130c、130d、130eと、内側境界線132c、132d、132eを1の画像上に重畳表示した状態を示す模式図である。
図33(B)は、図33(A)において、外側境界線130c、130d、130eと、内側境界線132c、132d、132eとの間に入る最大の領域を斜線で示すものである。即ち、図33(B)の斜線領域が「避けるべき領域」の合算領域であり、その内側境界線を132s、その外側境界線を130sとする。
第4の実施形態では、図33(B)に示す「避けるべき領域」の合算領域を位置決め画像上に重畳表示する。操作者は、図33(B)に示すように、この合算領域を見ながら、データ収集領域118hの範囲をドラッグ操作などによって設定できる。
このとき、データ収集領域118hに対する当たり判定領域120hの外縁の枠も例えば違う色の有彩色で識別的に重畳表示することが望ましい。操作者は、当たり判定領域120hが「避けるべき領域」の合算領域に重ならないようにデータ収集領域118hを設定することで、プレサチュレーションパルスが不要な設定を選択しうるからである(後述のステップS65参照)。
図34は、第4の実施形態における磁気共鳴診断装置20の動作の流れを示すフローチャートである。以下、図34に示すステップ番号に従って、磁気共鳴診断装置20の動作を説明する。
[ステップS61〜S63]第3の実施形態のステップS41〜S43とそれぞれ同様であるので、重複する説明を省略する。この後、ステップS64に進む。
[ステップS64]条件設定部84は、位置決め画像用にステップS62で撮像された画像のボリュームデータの各断面の「避けるべき領域」の合算領域を算出する。「避けるべき領域」の合算領域の算出方法は、例えば図33のように画像の外縁の枠を各断面像間で揃えるなど、基準ラインまたは複数の基準点を各断面像間で揃えればよい。
また、MPU80は、ステップS62で撮像された位置決め画像から、第1の実施形態のステップS4と同様に、位置決めに適切なものを選択する。
次に、MPU80は、表示制御部88を制御して、選択した位置決め画像を表示装置64上に表示させる。このとき、図33(B)のように、選択した位置決め画像上には、「避けるべき領域」の合算領域が例えば異なる有彩色等によって識別的に重畳表示される。この後、ステップS65に進む。
[ステップS65]操作者は、表示された位置決め画像上で、データ収集領域118hを設定する。ここでは一例として、データ収集領域118hの位置や範囲を操作者が入力装置62のマウスのカーソル操作等によって設定する際に、データ収集領域118hに対する当たり判定領域120hの枠も識別的に重畳表示される(図33(B)参照)。この後、ステップS66に進む。
[ステップS66〜S72]第3の実施形態のステップS45〜S51(図28参照)とそれぞれ同様であるので、重複する説明を省略する。
以上が第4の実施形態の磁気共鳴診断装置20の動作説明である。
このように第4の実施形態においても、第3の実施形態と同様の効果が得られる。さらに第4の実施形態では、(厚みのある)データ収集領域118hの決定前に、複数の断面間で「避けるべき領域」を重ね合わせた合算領域を位置決め画像上に重畳表示する(図33(B)、ステップS64)。
従って、操作者は、表示された1つの位置決め画像上において「避けるべき領域」の合算領域に重ならないようにデータ収集領域118hを設定するだけで、データ収集領118hが各断面の「避けるべき領域」に重ならないように設定できる。この際、操作者は、他の断面を参照する必要はない。
また、操作者は、選択された1つの位置決め画像上において、当たり判定領域120hが「避けるべき領域」の合算領域に重ならないようにデータ収集領域118hを設定すれば、プレサチュレーションパルスの印加を不要にすることも選択しうる(ステップS65)。
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、プレサチュレーションパルスを印加しなくても済むように、操作者によるデータ収集領域の設定を支援する。即ち、磁気共鳴診断装置20が「入力制限モード」に設定されている場合、当たり判定領域が「避けるべき領域」に重ならないように、操作者によるデータ収集領域の設定入力を制限する。
図35は、第5の実施形態におけるデータ収集領域の設定の支援方法の一例を示す模式図である。図35(A)は、第4の実施形態の図33(B)で説明した「避けるべき領域」の合算領域を、データ収集領域の範囲を設定するための位置決め画像上に重畳表示した状態を示す。
図35(A)に示すように、初期状態では、データ収集領域118iは、その当たり判定領域120iが「避けるべき領域」から十分離れる位置および大きさにして自動表示される。
操作者は、図35(A)の状態において、入力装置62を介したマウスによるドラッグ操作やキーボード入力によって、データ収集領域118iの位置を上下左右に移動できる。同様に、操作者は、データ収集領域118iのサイズを拡大または縮小できる。
そして、条件設定部84は、当たり判定領域120iと、「避けるべき領域」とが重ならないように、例えば両者の間隔が1画素以上となるように、入力装置62を介して操作者の入力を制限する。
図35(B)は、操作者によるデータ収集領域118iの移動操作により、当たり判定領域120iと、「避けるべき領域」の内側境界線132sとの間隔が1画素となった状態を示す。
図35(B)の状態では、操作者は、データ収集領域118iを図の上または右に移動できないように、かつ、データ収集領域118iのサイズの拡大操作もできないように、条件設定部84によって入力が制限される。
図36は、第5の実施形態における磁気共鳴診断装置20の動作の流れを示すフローチャートである。以下、図36に示すステップ番号に従って、磁気共鳴診断装置20の動作を説明する。
[ステップS81]第4の実施形態のステップS61およびS62と同様に、初期設定および撮像部位の指定が行われた後、ボリュームデータとなるように複数の位置決め画像が撮像される。なお、上記初期設定の際、操作者は、入力装置62を介して磁気共鳴診断装置20を「入力制限モード」に設定できる。この後、ステップS82に進む。
[ステップS82]第4の実施形態のステップS63およびS64と同様に、条件設定部84は、各位置決め画像の画像データにおいて、「避けるべき領域」を抽出し、その合算領域を算出する。そして、第1の実施形態のステップS4と同様に1つの位置決め画像が選択された後、その位置決め画像上に「避けるべき領域」の合算領域が重畳表示される。この後、ステップS83に進む。
[ステップS83]磁気共鳴診断装置20が「入力制限モード」に設定されている場合、MPU80は、ステップS84に処理を移行させ、そうでない場合、MPU80は、ステップS87に処理を移行させる。
[ステップS84]表示装置64には、「避けるべき領域」の合算領域が重畳表示された位置決め画像が表示されている。条件設定部84は、当たり判定領域120iと、「避けるべき領域」とが重ならないように、例えば両者の間隔が1画素以上となるように、入力装置62を介して操作者の入力を制限する。この手法については、図35を用いて前述した通りである。この状態で、操作者は、データ収集領域118iの範囲を入力設定できる。この後、ステップS85に進む。
[ステップS85]操作者の入力装置62に対する入力によって「入力制限モード」が解除された場合、MPU80は、ステップS87に処理を移行させ、そうでない場合、MPU80は、ステップS86に処理を移行させる。
[ステップS86]磁気共鳴診断装置20は「入力制限モード」に設定されているため、当たり判定領域120iと、「避けるべき領域」とが重ならないように、データ収集領域118iが設定される。条件設定部84は、設定されたデータ収集領域118iの範囲を条件記憶部82に入力し、記憶させる。
この後、磁気共鳴診断装置20は、第1の実施形態のステップS6と同様に、プレサチュレーションパルスを印加せずに、設定されたデータ収集領域118iからMR信号を収集するシーケンスを実行する。この後、ステップS91に進む。
[ステップS87]このステップS87に到達する場合、「入力制限モード」は解除されている。従って、当たり判定領域120iと「避けるべき領域」とを重ねないようにする入力制限無しで、入力装置62を介して条件設定部84に対してデータ収集領域118iの範囲が設定される。条件設定部84は、設定されたデータ収集領域118iの範囲を条件記憶部82に入力し、記憶させる。この後、ステップS88に進む。
[ステップS88]条件設定部84は、設定されたデータ収集領域118iの範囲(位置およびサイズ)に基づいて、当たり判定領域120iの範囲を決定する。
条件設定部84は、第3の実施形態のステップS45と同様に、ボリュームデータのいずれかの断面において当たり判定領域120iが「避けるべき領域」に重なるか否かを判定する。両者が重なる断面がある場合、ステップS89に進み、そうでない場合、ステップS86に進む。
[ステップS89]第3の実施形態のステップS47と同様に、条件設定部84はプレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出し、この印加領域が位置決め画像上に重畳表示される。この後、第1の実施形態のステップS9と同様に、プレサチュレーションパルスの印加領域が最終的に決定され、条件設定部84は、決定された印加領域を条件記憶部82に入力し、記憶させる。この後、ステップS90に進む。
[ステップS90]第1の実施形態のステップS10と同様に、プレサチュレーションパルスを印加しつつ、設定されたデータ収集領域118iからMR信号を収集するシーケンスが実行される。この後、ステップS91に進む。
[ステップS91]第1の実施形態のステップS11と同様に、ステップS86またはS90で収集されたMR信号に基づいて、磁気共鳴スペクトラムデータが生成される。
以上が第5の実施形態の磁気共鳴診断装置20の動作説明である。
このように第5の実施形態では、「入力制限モード」において、複数の断面の「避けるべき領域」の合算領域に当たり判定領域120iが重ならないように、操作者によるデータ収集領域の入力設定を制限する。従って、操作者は、「入力制限モード」を選択すれば、データ収集領域118iは「避けるべき領域」から所定のマージンだけ離れるので、「避けるべき領域」の影響を回避できるため、プレサチュレーションパルスの印加を不要にできる。
この場合、プレサチュレーションパルスの印加領域の設定も不要になり、操作者によるデータ収集条件の設定に要する手間をさらに軽減できる。これにより、磁気共鳴診断装置20を用いた検査のスループットをさらに向上できる。
また、操作者は、必要に応じて「入力制限モード」を解除することで、第4の実施形態と同様に、「避けるべき領域」の合算領域に基づいてプレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出させることもできる。
なお、上記実施形態では、複数の断面の「避けるべき領域」の合算領域に当たり判定領域120iが重ならないように入力を制限する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。例えば、図37に示すように、データ収集領域118iの範囲の設定用に表示されている1つの位置決め画像の「避けるべき領域」に当たり判定領域120iが重ならないように、入力を制限してもよい。
図37(A)は、データ収集領域118iの設定用に選択表示された1つの位置決め画像上に、データ収集領域118iの初期設定範囲を表示した状態を示す模式図である。この後、入力装置62を介した操作によってデータ収集領域118iと、「避けるべき領域」の内側境界線112との間隔が1画素になると、図35(B)と同様に条件設定部84によって入力が制限される。図37(B)は、その状態を示す。
また、上記のように「避けるべき領域」に当たり判定領域120iが重ならないように入力を制限する代わりに、「避けるべき領域」に当たり判定領域120iが重なった場合に例えば警告表示などによって重なった旨を通知する構成としてもよい(以下の図38〜図40参照)。
図38、第5の実施形態の変形例におけるデータ収集領域の設定の支援方法を示す第1の模式的説明図である。
図39は、第5の実施形態の変形例におけるデータ収集領域の設定の支援方法を示す第2の模式的説明図である。
図38(A)は、第4の実施形態の図29に示すサジタル断面模式図と同様である。この変形例では、第4の実施形態と同様にボリュームデータとして複数の位置決め画像が撮像され、各位置決め画像に対して「避けるべき領域」が抽出される。
そして、データ収集領域118jの設定用に例えば図38(A)の断面Cが選択された場合、断面Cの位置決め画像上に、断面Cの「避けるべき領域」の内側境界線132cおよび外側境界線130cが重畳表示される。この状態において、操作者は、データ収集領域118jを設定できる。図38(B)は、この状態を示す。
そして、図38(B)に示すように、当たり判定領域120jが内側境界線132cに重ならない位置に、操作者がデータ収集領域118jを設定したと仮定する。この場合、条件設定部84は、ボリュームデータの他の位置決め画像において、当たり判定領域120jが「避けるべき領域」に重なるか否かを判定する。
重なる場合、条件設定部84は、重なる断面の画像データに警告を含めて、これを表示制御部88に入力し、表示装置64に表示させる。図38(C)は、この状態を示す。この例では、断面Eにおいて当たり判定領域120jが「避けるべき領域」に重なる。
そこで、条件設定部84は、「避けるべき領域」と、当たり判定領域120jと、データ収集領域118jと、警告とを重畳した断面Eの位置決め画像を表示装置64に表示させる。ここでの警告は、例えば、操作者が現在設定しているデータ収集領域の範囲では、「避けるべき領域」に当たり判定領域が重なる旨を文字情報的に知らせるものである。
上記警告後に、条件設定部84は例えば、全ての撮像断面を通して、当たり判定領域120jと「避けるべき領域」との間隔の最小部分が1画素となる条件を満たすように、データ収集領域118jを自動算出する。
条件設定部84は、自動算出の際には例えば、上下左右等のデータ収集領域118jの位置変更によって上記条件を満たす範囲を自動算出する。
位置移動だけでは上記条件を満たさない場合、条件設定部84は、データ収集領域118jのサイズを縮小することで、上記条件を満たす範囲を自動算出する。データ収集領域118jの縮小の際、例えば、縮小前後においてデータ収集領域118jの3次元的形状が相似となるように、或いは、データ収集領域118jが直方体状になるように、予め設定しておくことができる。
条件設定部84は、当たり判定領域120jと「避けるべき領域」との間隔が最小(この例では1画素)となっている断面上に、自動算出したデータ収集領域118jを重畳した画像データを表示制御部88に入力し、これを表示装置64に表示させる。図39(A)はこの状態の一例を示し、ここでは一例として、断面Eにおいて当たり判定領域120jと「避けるべき領域」との間隔の最小部分が1画素とされる。
次に、条件設定部84は、当初、データ収集領域118jの設定用に選択表示されていた断面の位置決め画像(この例では断面C)上に、自動算出したデータ収集領域118jを重畳した画像データを表示制御部88に入力し、これを表示装置64に表示させる。図39(B)は、この状態を示す。
このとき、図39(B)に示すように、操作者が当初設定したデータ収集領域118jに対して、自動算出したデータ収集領域118jは位置的にどう移動したのか、サイズ的には縮小されたか否かの情報を重畳表示してもよい。
図40は、第5の実施形態の変形例における磁気共鳴診断装置20の動作の流れを示すフローチャートである。以下、図40に示すステップ番号に従って、磁気共鳴診断装置20の動作を説明する。
[ステップS101]第4の実施形態のステップS61〜S63(図34参照)と同様に、初期設定および撮像部位の指定が行われた後、ボリュームデータとなるように複数の位置決め画像が撮像される。この後、各位置決め画像の画像データにおいて「避けるべき領域」が抽出される。なお、上記初期設定の際、操作者は、入力装置62を介して磁気共鳴診断装置20を「入力制限モード」に設定できる。この後、ステップS102に進む。
[ステップS102]MPU80は、ステップS101で撮像された複数の位置決め画像から、第1の実施形態のステップS4と同様に、位置決めに適切なものを選択する。次に、MPU80は、表示制御部88を制御して、選択した位置決め画像を表示装置64上に表示させる。
このとき、位置決め画像上には、前述同様に「避けるべき領域」の内側境界線および外側境界線がそれぞれ異なる有彩色で識別的に重畳表示される。この後、操作者は、表示された位置決め画像上で、厚みのあるデータ収集領域を設定する。この後、ステップS103に進む。
[ステップS103]第3の実施形態のステップS45(図28参照)と同様にして、条件設定部84は、当たり判定領域120jを3次元的に算出し、各位置決め画像に対し、「避けるべき領域」に当たり判定領域が重なるか否かを判定する。条件設定部84は、判定結果をMPU80に伝達する。
当たり判定領域120jが「避けるべき領域」に重なる断面(位置決め画像)が1つでもある場合、MPU80はステップS104に処理を移行させ、それ以外の場合、MPU80はステップS107に処理を移行させる。
[ステップS104]磁気共鳴診断装置20が「入力制限モード」に設定されている場合、MPU80はステップS105に処理を移行させ、そうでない場合、MPU80はステップS107に処理を移行させる。
[ステップS105]条件設定部84は、図38、図39を用いて前述した手順で、「避けるべき領域」と、当たり判定領域120jとが重なる断面の位置決め画像と共に警告を表示装置64に表示させる(図38(C)参照)。
次に、条件設定部84は、全ての撮像断面を通して、当たり判定領域120jと「避けるべき領域」との間隔の最小部分が例えば1画素となる条件を満たすように、データ収集領域118jを自動算出する。
次に、条件設定部84は、当たり判定領域120jと「避けるべき領域」との間隔が最小となっている断面上に、自動算出したデータ収集領域118jを重畳した画像を表示装置64に表示させる(図39(A)参照)。
次に、条件設定部84は、当初、データ収集領域118jの設定用に選択表示されていた断面の位置決め画像上に、自動算出したデータ収集領域118jを重畳した画像を表示装置64に表示させる(図39(B)参照)。
このとき、操作者が当初設定したデータ収集領域118jに対して、自動算出したデータ収集領域118jは位置的にどう移動したのか、サイズが縮小されたか否かの情報が重畳表示される。この後、ステップS106に進む。
[ステップS106]操作者の入力装置62に対する入力によって「入力制限モード」が解除された場合、MPU80は、ステップS102に処理を戻し、そうでない場合、MPU80は、ステップS107に処理を移行させる。
[ステップS107]入力装置62に対する操作者の入力によって最終的にデータ収集領域118jの範囲が決定された場合、条件設定部84は、設定されたデータ収集領域118iの範囲を条件記憶部82に入力し、記憶させる。この場合、MPU80は、ステップ108に処理を移行させる。
データ収集領域118jの範囲を設定する再入力等により、データ収集領域118jの範囲が決定されない場合、MPU80は、ステップS102に処理を戻す。
[ステップS108]上記ステップS103と同様にして、条件設定部84は、各位置決め画像に対し、「避けるべき領域」に当たり判定領域が重なるか否かを再判定する。
当たり判定領域120jが「避けるべき領域」に重なる断面(位置決め画像)が1つでもある場合、MPU80はステップS109に処理を移行させ、それ以外の場合、MPU80はステップS110に処理を移行させる。
[ステップS109]第3の実施形態のステップS47(図28参照)と同様に、条件設定部84は、プレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出し、この印加領域を位置決め画像上に重畳表示させる。この後、第1の実施形態のステップS9と同様に、プレサチュレーションパルスの印加領域が最終的に決定され、条件設定部84は、決定された印加領域を条件記憶部82に入力し、記憶させる。
この後、第1の実施形態のステップS10と同様に、プレサチュレーションパルスを印加しつつ、ステップS107で最終決定されたデータ収集領域118jからMR信号を収集するシーケンスが実行される。この後、ステップS111に進む。
[ステップS110]第1の実施形態のステップS6と同様に、プレサチュレーションパルスを印加せずに、ステップS107で最終決定されたデータ収集領域118jからMR信号を収集するシーケンスが実行される。この後、ステップS111に進む。
[ステップS111]第1の実施形態のステップS11と同様に、ステップS109またはS110で収集されたMR信号に基づいて、磁気共鳴スペクトラムデータが生成される。
以上が第5の実施形態の変形例に係る動作説明である。
このように第5の実施形態の変形例においても、図35、図36で示した実施形態と同様の効果が得られる。この変形例では、操作者は、「入力制限モード」を選択しておけば、自分が設定したデータ収集領域118jの範囲では「避けるべき領域」の影響を受けてしまう場合でも、その旨を知ることができる。
さらに、「入力制限モード」において、ボリュームデータにおけるどの断面の「避けるべき領域」にも当たり判定領域120jが重ならないように、条件設定部84はデータ収集領域118jの範囲を自動算出する。従って、操作者は、自動算出されたデータ収集領域118jの範囲を選択するだけで、「避けるべき領域」の影響を受けることなく、プレサチュレーションパルスの印加を不要にできる。即ち、操作者によるデータ収集条件の設定に要する手間をさらに軽減でき、検査のスループットをさらに向上できる。
以上詳述した第1〜第5の各実施形態によれば、MRSの実行時に、プレパルスの印加領域やMR信号の収集領域などのデータ収集条件の設定を従来よりも容易にすることで、操作者がデータ収集条件の設定に要する手間を軽減できる。
(実施形態の補足事項)
[1]上記各実施形態では、プレパルスの例としてプレサチュレーションパルスを用いる例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。本発明の実施形態は、実質臓器の信号を抑制するためのMTCパルス(magnetization transfer contrast pulse)などの他のプレパルスであっても適用可能である。
[2]上記各実施形態では、頭部MRS検査においてプレパルスの印加領域を自動算出する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。上述したプレパルスの印加領域を自動算出する手法は、腹部や胸部などの他の部位におけるMRS検査にも適用可能である。
[3]上記各実施形態の説明では、MRSにおいてMR信号を選択的に抽出する領域をデータ収集領域118a〜118jとして説明したが、データ収集領域を関心領域としてもよい。データ収集領域をシングルボクセルとして設定する場合、データ収集領域118aは、例えば関心領域にほぼ合致する。データ収集領域をマルチボクセルとして設定する場合、データ収集領域118aは例えば、関心領域を包含するように関心領域よりも広く設定される。また、関心領域としては、例えば病変部位などが該当する。
[4]上記各実施形態では、被検体の骨に隣接すると共に画像データ内で隣接領域よりもMR信号の強度が強く表れている領域の例として、脂肪領域を「避けるべき領域」とする例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。例えば鼻腔や口の中など、被検体内の空隙によって位置決め画像の画像データ内で隣接領域よりもMR信号の強度が弱く表れている領域を「避けるべき領域」として抽出してもよい。
[5]上記各実施形態では、プレサチュレーションパルスの印加領域の算出において、位置決め画像を用いる例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。プレサチュレーションパルスの印加領域の算出前に行われるその他の磁気共鳴イメージングのシーケンスで得られた画像を印加領域の算出に用いてもよい。
[6]磁気共鳴診断装置20として、静磁場磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイルユニット26、RFコイル28が含まれるガントリの外にRF受信器48が存在する例を述べた(図1参照)。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。RF受信器48がガントリ内に含まれる態様でもよい。
具体的には例えば、RF受信器48に相当する電子回路基盤をガントリ内に配設する。そして、受信用RFコイルによって電磁波からアナログの電気信号に変換されたMR信号を、当該電子回路基盤内のプリアンプによって増幅し、デジタル信号としてガントリ外に出力し、シーケンスコントローラ56に入力してもよい。ガントリ外への出力に際しては、例えば光通信ケーブルを用いて光デジタル信号として送信すれば、外部ノイズの影響が軽減されるので、望ましい。
[7]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
プレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する条件設定部84の機能は、請求項記載の印加領域算出部の一例である。
静磁場用磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28、制御系30の全体(図1参照)が、静磁場、傾斜磁場およびRFパルスの印加を伴ったシーケンスにより被検体QからMR信号を受信する構成と、MR信号に基づいて磁気共鳴スペクトラムデータを生成するMPU80の機能は、請求項記載のデータ生成部の一例である。
「避けるべき領域」およびプレサチュレーションパルスの印加領域を位置決め画像上に重畳表示する表示制御部88および表示装置64の機能は、請求項記載の表示部の一例である。
当たり判定領域の外縁は、請求項記載の判定枠の一例である。
「避けるべき領域」を抽出する条件設定部84の機能は、請求項記載の抽出部の一例である。
表示装置64に表示される位置決め画像を基準として、データ収集領域の範囲を設定する入力を受け付ける入力装置62の機能は、請求項記載の入力部の一例である。
データ収集領域の範囲を決定する入力を受け付ける入力装置62の機能は、請求項記載の入力部の一例である。
第2の実施形態のステップS24において、アーチファクト抑制優先モードを選択する入力、または、SAR優先モードを選択する入力は、請求項記載の「プレパルスの印加数を制限するかまたは無制限にする入力情報」の一例である。
第5の実施形態において、当たり判定領域が「避けるべき領域」に重ならないように、入力装置62を介したデータ収集領域の設定入力を制限する条件設定部84の機能は、請求項記載の入力制限部の一例である。
第5の実施形態の変形例において、当たり判定領域が「避けるべき領域」に重なる場合に警告を表示させる条件設定部84の機能は、請求項記載の入力制限部の一例である。
[8]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。