JP6237393B2 - 粘着剤および粘着シート - Google Patents

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Description

本発明は、粘着剤に関する。
近年のエレクトロニクスの飛躍的な進歩により、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、リアプロジェクションディスプレイ(RPJ)、ELディスプレイ、発光ダイオ−ドディスプレイなどの様々なフラットパネルディスプレイ(FPD)が、表示装置として広く使用されている。このような表示装置には、通常、外部光源からの反射を防ぐための反射防止フィルムや、表示装置表面の傷付き防止の為の保護フィルム(プロテクトフィルム)など、用途に応じて様々なフィルムが使用されている。例えば、LCDに使用する液晶セル用部材には、偏光フィルムや位相差フィルムが使用されている。
また、FPDは、表示装置としての利用に加えて、タッチパネルのような入力装置としても利用されている。タッチパネルには、一般的に保護フィルム、反射防止フィルムおよび透明電極フィルムなどが使用されている。これらのフィルムは、粘着剤(感圧式接着剤ともいう)を使用して貼り合わされるのが一般的である。
タッチパネルの作動原理としては、静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線方式等、種々の方式があるが、それらの中でも静電容量方式のタッチパネルは、実用性に優れるため広く用いられている。当該方式は、指先でのディスプレイ表面へのタッチした際の、そのポイントにおける、指先と導電膜との間の静電容量の変化を感知して作動するものである。
また、スマートフォンやタブレット型端末の電子機器は、その厚みを増やさずに高機能化を進めているため、搭載する部材を小型化・薄型化しているが、粘着剤層の厚みの薄型化も例外ではない。しかし、粘着剤層の厚みを薄くすると静電容量方式のタッチパネルは、指先でタッチしたポイントの静電容量の変化が、そのポイントの周囲に影響を与えてしまうためディスプレイにタッチした際、誤作動が生じ易い問題があった。そして、前記誤作動は、粘着剤層の誘電率の高さに比例して増加する傾向があった。なお、誘電率は静電容量を決定する、物質に固有の定数であって、静電容量は誘電率と比例関係にあり、物質の誘電率が高いほど、静電容量の値は変化しやすい。一方、誘電率が低いほど、静電容量の値は変化しにくい。そこで、粘着剤層の厚みに静電容量の値が依存し難い、誘電率が低い粘着剤層を形成できる粘着剤が求められていた。またタッチパネルの透明導電膜を腐食させない機能も必要である。
タッチパネルディスプレイは、主に表面ガラス板とタッチパネルと液晶モジュールで構成されているが、液晶モジュール内部の偏光子を保護する保護フィルムに使用するトリアセチルセルロース(以下、TACという)を光学的な歪みを防止し、複屈折率を低減するためにシクロオレフィンポリマー(以下、COPという)への置き換えが進んでいる。しかし、COPは、TACと比較して粘着シートとの密着が低く、良好な粘着力が得られていなかった。またタッチパネルの透明導電膜(例えば、ITO膜)に対する粘着力も当然必要である。
そこで特許文献1には、環状構造含有モノマーを25重量%〜99.5重量%、およびエステル末端に炭素数3〜18の分岐したアルキル基を有する分岐構造含有(メタ)アクリル系モノマーを0.5重量%〜70重量%を含むモノマー成分を重合することにより得られた(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤が開示されている。
国際公開第2013/002184号
しかし、従来の粘着剤は、COP等の低極性部材に対する密着が低いという問題があった。
本発明は、誘電率が低く、COPなどの極性が低い部材に対する粘着力が良好な粘着剤層を形成できる粘着剤および粘着シートの提供を目的とする。
本発明の粘着剤は、2−エチルヘキシルアクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレート以外の炭素数4〜9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と、炭素数4〜10の脂肪族環状置換基を有するモノマー(b)とを含むモノマー混合物を重合してなる重合体(A)を含有し、
周波数100kHzにおける誘電率が3.5以下である粘着剤層を形成可能である。
上記の本発明によれば、誘電率を下げるために脂肪族環状置換基を有するモノマー(b)を使用すると、Tgが高く粘着力が抑制される傾向であったところ、Tgが低い2−エチルヘキシルアクリレートおよび炭素数4〜9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を併用することで低極性部材に対する濡れが向上し、低い誘電率と良好な粘着力を両立した。
本発明は、誘電率が低く、COPなどの極性が低い部材に対する粘着力が良好な粘着剤層を形成できる粘着剤および粘着シートを提供できる。
誘電率測定用サンプルの模式的断面図。
本発明を説明する前に、以下の用語を説明する。まず、粘着シート、粘着テープおよび粘着フィルムは同義語である。次に(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルを含む。またモノマーとは、エチレン性不飽和単量体を意味する。また、被着体は、粘着シートを貼り付ける相手方をいう。
本発明の粘着剤は、2−エチルヘキシルアクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレート以外の炭素数4〜9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と、炭素数4〜10の脂肪族環状置換基を有するモノマー(b)とを含むモノマー混合物を重合してなる重合体(A)を含有し、
周波数100kHzにおける誘電率が3.5以下である粘着剤層を形成可能である。
本発明の粘着剤は、基材または剥離性シート上に塗工することで粘着剤層を形成し、粘着シートとして使用することが好ましい。
本発明において重合体(A)は、2−エチルヘキシルアクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレート以外の炭素数4〜9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)(以下、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)という)と、炭素数4〜10の脂肪族環状置換基を有するモノマー(b)(以下、モノマー(b)という)とを含むモノマー混合物を重合して得る。
2−エチルヘキシルアクリレートと(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の使用により誘電率の上昇を抑制しながらTgを下げることで低極性部材(低極性被着体)に対する濡れが向上し、粘着力が向上することに加え、分岐したアルキル基による立体障害効果により、ポリマー鎖の分子運動が抑制され、粘着剤層が電気的に分極しにくくなることで誘電率を下げる効果が得られると推測している。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)は、具体的にはイソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、3−ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−1−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、s−オクチル(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、s−ノニル(メタ)アクリレート、t−ノニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でもイソオクチルアクリレート等が好ましい。
モノマー(b)は、粘着剤層の誘電率を下げる効果がある。その理由は、立体障害が大きい脂肪族環状置換基によるもの推測している。誘電率を下げる効果は、2−エチルヘキシルアクリレートおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と比較してモノマー(b)が大きい。
炭素数4〜10の脂肪族環状置換基を有するモノマー(b)において「炭素数4〜10の脂肪族環状置換基を有する」とは、脂肪族環状置換基の環を形成する原子として、炭素原子が4〜10個存在することをいう。すなわち、環に結合している基に含まれる炭素原子は、上記計数からは除外される。
具体的には、例えば、「シクロヘキシル基」も、「3−メチルシクロヘキシル基」も、本発明においては共に「炭素数6の脂肪族環状置換基」と定義される。
なお、環を形成する原子として、炭素原子と共に炭素原子以外の原子(いわゆるヘテロ原子)が存在してもよいが、それらについても、もちろんのこと、上記計数からは除外される。
モノマー(b)は、例えばシクロヘキシル環を有する単量体であるシクロヘキシル(メタ)アクリレートや、その誘導体であるt−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート;
イソボルニル骨格を有するイソボルニル(メタ)アクリレート;
ヘテロ環を有する単量体として、フタルイミド骨格を有するN−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドやN−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3―メチルヘキサヒドロフタルイミド、モルフォリン環を有する(メタ)アクリロイルモルフォリン、テトラヒドロフルフリル環を有するテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリンおよびN−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドが好ましい。
重合体(A)の合成には、2−エチルヘキシルアクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)およびモノマー(b)以外に他のモノマーを使用できる。
前記他のモノマーは、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素数4〜9の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびビニルモノマーが好ましい。
炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(等が挙げられる。
炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
炭素数4〜9の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル等が挙げられる。
ビニルモノマーは、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド基含有モノマー;
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;
アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有モノマー;
(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有モノマー;
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等のリン酸基含有モノマー;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有単量体およびその無水物;
(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有エチレン性不飽和単量体;
2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有エチレン性不飽和単量体;
メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそれらのアルキレンオキサイド付加物;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアリールオキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそれらのアルキレンオキサイド付加物;
ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリレート;
スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系ビニル単量体;
酢酸ビニル、酢酸プロピル等のビニルエステル系単量体;
ビニルエーテル化合物、α−オレフィン等が挙げられる。
他のビニルモノマーは、本発明の課題を解決できる範囲内であれば単独はらは2種類以上を適宜使用できる。
重合体(A)の合成に使用するモノマー混合物100重量%のうち、2−エチルヘキシルアクリレートは、40〜70重量部使用することが好ましく、50〜60重量部がより好ましい。
重合体(A)の合成に使用するモノマー混合物100重量%のうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)は10〜40重量部使用することが好ましく、20〜30重量部がより好ましい。10〜40重量部の範囲にあれば、低い誘電率および低極性被着体の対する粘着力が向上する。
重合体(A)の合成に使用するモノマー混合物100重量%のうち、モノマー(b)は5〜30重量%使用することが好ましく、10〜20重量%がより好ましい。5〜30重量%の範囲にあれば、低い誘電率が得られる。
重合体(A)は、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、活性エネルギー線重合等の公知の手法により得ることができる。これらの中で重量平均分子量および粘着性能の調整が容易な溶液重合が好ましい。なお、重合体(A)の合成の際、有機溶剤および水等の溶媒を適宜選択して使用できる
重合体(A)の合成には、通常、重合開始剤を使用する。重合開始剤は、公知の過酸化物および公知のアゾ化合物を適宜選択できる。
重合体(A)の重量平均分子量は、60万〜150万であることが好ましく、80万〜120万がより好ましい。重量平均分子量が60万以上であれば、低い誘電率が得易くなる。また、重量平均分子量が150万以下であれば、塗工の際に粘着剤の粘度調整が容易になる。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により得られるポリスチレン換算の値である。
本発明の粘着剤は、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤を含むことで粘着剤層に凝集力が得易くなる。硬化剤は、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、金属キレート硬化剤、アジリジン硬化剤、カルボジイミド硬化剤等が好ましい。
前記イソシアネート硬化剤は、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、および脂環族ジイソシアネート等、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体およびアダクト体等で2官能以上のイソシアナト基を有する化合物が挙げられる。
前記エポキシ硬化剤は、例えばグリシジルエーテル基または脂環式エポキシ基を有する化合物等が挙げられる。
前記金属キレート硬化剤は、例えば日本曹達株式会社製各種チタンキレート、マツモトファインケミカル株式会社製各種ジルコニウムキレート、川研ファインケミカル株式会社製各種アルミニウムキレート等が挙げられる。
前記アジリジン硬化剤は、例えば株式会社日本触媒製ケミタイトPZ−33やDZ−22E等が挙げられる。
前記カルボジイミド硬化剤は、例えば日清紡ケミカル株式会社製カルボジライトV−05やV−07等が挙げられる。
本発明において硬化剤は、イソシアネート硬化剤が好ましい。硬化剤は、2種類以上併用することもできる。
硬化剤は、重合体(A)100重量部に対して0.01〜5重量部使用することが好ましく、0.1〜2重量部がより好ましい。0.01〜5重量部の範囲にあれば、適度な凝集力および粘着力が得やすくなる。
本発明の粘着剤は、シランカップリング剤を含むこともできる。シランカップリング剤を含むことで耐湿熱性をより向上できる。
前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基に加えて、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、アミノアルキル基、メルカプト基、アルキル基、およびフェニル基等のいずれかの置換基を有する。前記置換基はエポキシ基が好ましい。例えば信越化学工業株式会社製KBM303やKBM402などが挙げられる。
前記シランカップリング剤は、重合体(A)100重量部に対して0.001〜1重量部を配合することが好ましく、0.005〜0.8重量部がより好ましい。シランカップリング剤を0.001〜1重量部配合することで耐湿熱性をより向上できる。
本発明の粘着剤は、必要に応じて他の樹脂、シランカップリング剤、粘着付与剤、充填剤、着色剤、軟化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤、耐候安定剤、硬化促進剤、硬化遅延剤等の添加剤を配合しても良い。
前記他の樹脂は、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、およびポリウレタン樹脂等が挙げられる。前記充填剤は、例えばタルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。
本発明の粘着シートは、基材と、本発明の粘着剤から形成した粘着剤層を備えている。前記粘着シートは、例えば、基材に粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成することで得られる。また、剥離性シートに粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、基材を貼り合わせることで得られる。前記粘着剤層は基材の少なくとも一方の面に設けられていれば良い。なお、粘着剤層に異物が付着するのを防止するため、通常、粘着剤層の基材と接していない面に剥離性シートを貼り合せる。
また、本発明の粘着シートの別の態様として、剥離性シートに粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、さらに剥離性シートを貼り合わせた粘着シート(キャスト粘着シートという)も好ましい。
前記粘着剤層の厚みは、普通10〜175μm程度である。
前記塗工は、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等の公知の塗工装置を使用できる。塗工の際、加熱等により溶媒を乾燥除去することができる。
前記基材は、例えば紙、セロハン、プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、木材等が好ましい。基材は板状でもフィルム状でも良い。また基材は、単独または、複数の基材を積層した構成も好ましい。
前記プラスチックは、例えば、ポリビニルアルコールやトリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリアリレート系樹脂(PAR:ビスフェノールAとフタル酸の共重合樹脂)、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂(エポキシ基含有樹脂とポリアミン又は無水カルボン酸を反応させた樹脂)などが挙げられる。
前記基材は、プラスチックフィルムに光学機能を付与した、例えば反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板等の光学部材であっても良い。
本発明の粘着シートは、光学部材を使用することで液晶ディスプレイ(特にタッチパネル用途)を構成する部材として使用できる。
本発明の粘着シートの粘着剤層の周波数100kHzにおける誘電率は、3.5以下であること。前記誘電率は低いほど好ましいが、現在の技術水準での下限値は2.5程度である。本発明の粘着剤は、前記のように低い誘電率の粘着剤層を形成できる。このため本発明の粘着シートを使用したタッチパネルは、粘着剤層の厚みが薄くとも誤作動が生じ難い。
本発明の粘着シートは、光学ディスプレイの用途に好ましく使用できるが、特に用途が制限されるものではなく、一般ラベル、ならびに窓ガラスおよび車両用ガラスなど光透過性がある被着体に使用することが好ましい。
以下に実施例によって、本発明をより具体的に説明する。なお例中、特に断りのない限り「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表すものとする。
また、「Mn」は数平均分子量を、「Mw」は重量平均分子量をそれぞれ表す。
(重量平均分子量の測定条件)
・装置:島津製作所製、LC−GPCシステム「Prominence」
・カラム:東ソー(株)製GMHXL4本、東ソー(株)製HXL-H1本を直列に連結
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・カラム温度:40℃
・流量:1.0ml/min
製造例(A1)〔重合体(A)の製造〕:
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置に窒素雰囲気下、2−エチルヘキシルアクリレート25部、イソノニルアクリレート15部、シクロヘキシルアクリレート10部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.25部、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルを適量、さらに溶剤として酢酸エチルを仕込んだ。溶液温度が80℃になるまで加熱した。
次いで、滴下管に2−エチルヘキシルアクリレート25部、イソノニルアクリレート15部、シクロヘキシルアクリレート10部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.25部、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルを適量、さらに溶剤として酢酸エチルを仕込んだ。
前記反応装置を溶液温度が80℃になるまで加熱し、反応装置内で反応が開始したことを確認後、前記滴下管から溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を約80℃に保持し5時間反応を継続した後、冷却を開始した。次いで酢酸エチルで希釈し、不揮発分を40%に調整した。これにより重量平均分子量は90万の重合体(A1)溶液を得た。
製造例(A2)〜(A13)〔重合体(A)の製造〕:
モノマーの種類および配合量(部)を表1に記載した通りに変更した以外は、製造例(A1)と同様に行うことで、重合体(A2)〜(A13)溶液を得た
Figure 0006237393
表1の略号は、以下の通りである。
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
i−NA:イソノニルアクリレート
i−OA:イソオクチルアクリレート
i−BA:イソブチルアクリレート
n−BA:n−ブチルアクリレート
i−DA:イソデシルアクリレート
CHA:シクロヘキシルアクリレート
ACMO:アクリロイルモルフォリン
IBOA:イソボルニルアクリレート
PIEA:N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド
<実施例1>
重合体(A1)の溶液250部(不揮発分:100部相当)に対して、イソシアネート硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(以下、HDIもヌレート体という)0.7部、およびシランカップリング剤であるKBM−303(信越化学製)0.5部を配合して粘着剤を得た。
得られた粘着剤を、コンマコーターを使用して、剥離ライナー(厚さ38μm)上に塗工し、100℃で2分間乾燥させ、厚み25μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層に別の剥離ライナーを貼り合せ、室温にて7日間エージングさせ、キャスト粘着シートを得た。
<実施例2〜11、比較例1および2>
実施例1の配合を表2および表3に示す配合に変更した以外は実施例1と同様に行うことでそれぞれキャスト粘着シートを得た。
得られたキャスト粘着シートを使用して、下記の物性評価を行った。結果を表2および表3に示す。
<接着性>
得られたキャスト粘着シートを幅25mm×長さ100mmの大きさに準備し試験用粘着シートを作製した。前記試験用粘着シートの一方の剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという、製品名:A−4300、東洋紡績社製)に貼り合わせた。次いで試験用粘着シートの他方の剥離性シートを剥がし、23℃−50%RH雰囲気下で粘着剤層をガラス板に貼付け、JIS Z−0237に準じてロールで圧着した。圧着から24時間経過後、万能引張試験機にて粘着力(剥離角180°、剥離速度300mm/分;単位N/25mm幅)を測定した。
別途、被着体をガラス板から、COP、ITO/PETフィルムにそれぞれ代えて前記同様に粘着力を測定した。なおITO/PETフィルムは、酸化インジウムスズ(ITO)を蒸着したPETフィルムであり、ITO蒸着面に試験用粘着シートを貼り付けた。評価は以下の通り粘着力により接着性を評価した。
〇:粘着力が5.0N/25mm以上。(良好)
△:粘着力が1.0N/25mm以上、5.0N/25mm未満。(実用可)
×:粘着力が1.0N/25mm未満。(不良)
<透明性>
キャスト粘着シートを幅25mm×長さ100mmの大きさに準備し試験用粘着シートを作製した。前記試験用粘着シートの一方の剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を厚さ100μmのPETフィルムに貼り合わせた。次いで、試験用粘着シートの他方の剥離性シートを剥がし、23℃−50%RH雰囲気下でガラス板にラミネーターを用いて貼着し、85℃−90%RHの環境下に240時間放置した。その後23℃−50%RHの雰囲気下で24時間冷却した後、Turbidimeter NDH5000W(日本電色工業社製)を使用してHAZE(ヘイズ)を測定した。評価基準は以下の通りである。
○:HAZEが1.0未満(透明性良好)。
△:HAZEが1.0以上、3.0未満(透明性やや良好)。
×:HAZEが3.0以上(透明性不良)。
<誘電率>
誘電率の測定方法を図1を元に説明する。得られたキャスト粘着シートを幅100mm×長さ100mmの大きさに準備し試験用粘着シートを作製した。前記試験用粘着シートの一方の剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層4をガラス板6に形成したアルミニウム蒸着層3Cに貼り合わせた。次いで、試験用粘着シートの他方の剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層4のアルミニウム蒸着層3Cと接していない面にアルミニウム蒸着層3Aおよび3Bを形成することで誘電率測定サンプル1を得た。次いで誘電率測定サンプル1の測定端子接続部5に測定装置7の接続端子2Aを接続し、アルミニウム蒸着層3Aに接続端子2Bを接続した。そして下記の条件で誘電率を測定した。なお評価基準は下記の通りである。
測定装置:英国ソーラトロン社製1260インピーダンス測定器
アンプ:英国ソーラトロン社製1296型誘電率測定インターフェイス
電極構成:21mmΦ、40nmの厚みのアルミ蒸着層
対向電極:21mmΦ、40nmの厚みのアルミ蒸着層
交流電流:100mV
端子:ピンプローブ
周波数:100kHz
測定環境:23℃−50%RH
試料の厚み:25μm
(評価基準)
○:誘電率が3.0以下。(良好)
△:誘電率が3.0より大きく、3.5以下。(実用可)
×:誘電率が3.5より大きい。(不良)
<耐湿熱性>
前記<透明性>の項で作製した測定試料を、85℃−90%RHの環境下に240時間放置した。その後23℃−50%RHの雰囲気下で24時間冷却した後、粘着剤層における気泡の発生の有無、および粘着シートの浮きや剥がれの有無を以下の条件で目視評価した。
○:気泡、浮きおよび剥がれが全く見られない
△:気泡、浮きおよび剥がれがわずかに見られた
×:気泡、浮きおよび剥がれが多数見られた
<耐腐食性>
得られたキャスト粘着シートを幅40mm×長さ100mmの大きさに準備し試験用粘着シートを作製した。前記試験用粘着シートの一方の剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を厚さ100μmのPETフィルムに貼り合わせた。次いで試験用粘着シートの他方の剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を23℃−50%RH雰囲気下で、ITOにより透明導電膜が形成された幅40mm×長さ160mmのPETフィルムの透明導電膜上に、ラミネーターを用いて貼着し積層体を得、ローレスターGP(型番MCP−T600、三菱化学社製)を使用してその抵抗値を測定した。
次いで、前記積層体を85℃−90%RHの環境下に1000時間放置し、その後再度抵抗値を測定した。前記放置前後における抵抗値の変化率を算出することにより透明導電膜の耐腐食性を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:抵抗値の変化率が150%未満。良好。
×:抵抗値の変化率が150%以上。実用不可
Figure 0006237393
Figure 0006237393
1 誘電率測定サンプル
2A 測定端子
2B 測定端子
3A アルミニウム蒸着層
3B アルミニウム蒸着層
3C アルミニウム蒸着層
4 粘着剤層
5 測定端子接合部分
6 ガラス板
7 測定装置

Claims (3)

  1. 2−エチルヘキシルアクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレート以外の炭素数4〜9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と、炭素数4〜10の脂肪族環状置換基を有するモノマー(b)とを含むモノマー混合物を重合してなる重合体(A)を含有し、
    周波数100kHzにおける誘電率が3.5以下である粘着剤層を形成可能な粘着剤。
  2. モノマー(b)が、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれるいずれかである請求項1記載の粘着剤。
  3. 基材と、請求項1または2に記載の粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを備えた粘着シート。
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