図1は、電子機器の一例としての複合機の概略構成を示す断面図である。電子機器として、複写機、プリンタ、ファクシミリの機能を備えるMFP(Multi Function Peripheral)といった複合機を例示しているが、複数の熱源となりうるユニットを備える機器であれば、その他いかなる機器であってもよい。例えば、PC、サーバ、テレビ、ブルーレイディスクレコーダ、プロジェクタ、複写機、プリンタ、ファクシミリ等であってもよく、これらの機器を2以上組み合わせたものであってもよい。
複合機は、自動原稿送り装置(ADF)10と、画像読み取り装置20と、プリンタユニット30と、キャパシタユニット40とを含んで構成される。複合機は、図示しない操作パネルや入力キー等を備え、操作パネルに表示されたアプリケーション切替キーあるいは入力キーにより、各機能を切り替え、選択することができるようになっている。このため、複合機は、ユーザが複写機能を選択すれば、複写モードとなり、プリンタ機能を選択すれば、プリンタモードとなり、ファクシミリ機能を選択すれば、ファクシミリモードとなる。
ADF10は、図示しない原稿を供給するための原稿給紙トレイ、原稿給紙トレイから原稿をピックアップするピックアップローラ、原稿を1枚ずつ分離し、供給する分離ローラ、原稿が排出される排出トレイを含んで構成される。これは一例であるので、その他の構成であってもよく、また、追加の部品を含んでいてもよい。
画像読み取り装置20は、上部を原稿が移動される透明なコンタクトガラス、コンタクトガラスを通して原稿に光を照射する光源、原稿からの光を受光し、電気信号に変換する光電変換素子を含んで構成される。その他、複数の反射ミラーや集光レンズ、電気信号をデジタルデータに変換するA/Dコンバータ等を含むことができる。ここでは、反射した光を電気信号に変換する反射型の装置を例示したが、原稿を透過した光を電気信号に変換する透過型の装置を用いてもよい。
プリンタユニット30は、ここでは電子写真方式のプリンタとされ、書き込みユニット31、感光体ドラム32、現像ユニット33、搬送ベルト34、定着ユニット35を含んで構成されている。書き込みユニット31は、図示しない画像処理手段からの画像情報に基づき、書き込み光を感光体ドラム32の表面に照射して、その表面に肉眼では見えない静電潜像を形成する。現像ユニット33は、感光体ドラム32の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させ、肉眼で見える顕像(トナー像)を形成する。
感光体ドラム32の表面に形成されたトナー像は、搬送ベルト34上に載せられ、搬送される紙に転写される。定着ユニット35は、トナー像が転写された紙に熱と圧力とを加え、そのトナー像を紙に定着させる。トナー像が定着された紙は、排紙トレイへ搬送され、排紙される。プリンタユニット30は、搬送ベルト34上に供給する紙が収納された給紙トレイ、その紙を1枚ずつ給紙する給紙ローラ等をさらに備えることができる。
キャパシタユニット40は、蓄電手段としてのコンデンサ(蓄電器)を備え、図示しない熱電変換手段により発電され、得られた電力を蓄え、スリープ状態等の時に蓄えた電力を各ユニットへ供給する。コンデンサは、電圧が加えられることにより、電力としての電荷を蓄える。ここでは、コンデンサを一例として挙げたが、化学反応を利用して電気を蓄える蓄電池を用いることも可能である。
ここで、複合機のモードを複写モードに設定した場合の動作について説明する。原稿の束がADF10の原稿給紙トレイにセットされ、コピーボタンが押下されると、セットされた原稿の束が、ピックアップローラによりピックアップされ、分離ローラにより分離されて1枚ずつ順に画像読み取り装置20のコンタクトガラス上へ給送される。画像読み取り装置20は、コンタクトガラス上へ送られてきた原稿に光を照射し、反射した光を、光電変換素子により電気信号に変換し、それをA/Dコンバータによりデジタルデータに変換し、画像データとして出力する。
画像データは、図示しない制御部へ送られ、シェーディング補正やガンマ補正等の各種補正が行われ、書き込みユニット31へ画像情報として与えられる。ここで、シェーディング補正は、光学系等の特性による輝度ムラを、一様の明るさになるようにする補正である。ガンマ補正は、入力される画像の色情報を出力側のプリンタで忠実に再現できるように、その色情報を調整し、誤差をなくしていく補正である。
書き込みユニット31は、与えられた画像情報に基づき、感光体ドラム32の表面に光を照射し、その表面に静電潜像を形成する。この潜像を形成するにあたって、感光体ドラム32は、図示しない帯電ユニットにより予め均一に帯電される。書き込みユニット31は、レーザビームやLED(Light Emitting Diode)を使用して露光し、印刷する画像のパターンを静電潜像として感光体ドラム32の表面に形成する。
感光体ドラム32は、現像ユニット33によりトナーが付着され、その表面には、トナー像が形成される。トナーとしては、黒色のみのトナーを用い、モノクロ画像を形成することもできるし、複数の色のトナーを用い、カラー画像を形成することもできる。感光体ドラム32は、一定方向に、一定速度で回転するため、表面に形成されたトナー像は、一定速度で搬送される紙に押し付けられて転写される。感光体ドラム32上に残ったトナーは、図示しないクリーニングユニットにより、その残ったトナーが除去される。なお、紙は、図示しないレジストローラにより、書き込みユニット31の書き込みや感光体ドラム32の回転等のタイミングに合わせて、転写位置に搬送される。
トナー像が転写された紙は、搬送ベルト34により定着ユニット35へ搬送される。定着ユニット35は、まず、熱を加えてトナーを溶かし、圧力を加えて紙にしっかり定着させる。このようにしてトナー像を定着させた紙は、排紙トレイへ排紙される。
複合機は、上記の複数の機能を実現し、各ユニットの制御を行うため、制御部を備える。その制御部の構成を、図2を参照して簡単に説明する。制御部は、コントローラ50とされ、CPU51と、RAM52と、ROM53と、HDD54と、NVRAM55とを含んで構成される。CPU51は、複合機全体の制御を行い、RAM52は、CPU51の作業空間として使用される。ROM53は、ブートプログラムやファームウェア等を記憶する。HDD54は、OSや各機能を実現するためのアプリケーション等の各種プログラムやそれらプログラムが利用するデータ等を記憶する。NVRAM55は、各種の設定情報等を記憶する。
コントローラ50には、操作パネル56、図1に示した画像読み取り装置20やプリンタユニット30、モデム57、ネットワークI/F58、メディアドライブ59等が接続される。操作パネル56は、タッチパネルとされ、ユーザからの入力を受け付ける入力装置、入力された情報や複合機の動作状況等を表示する表示装置として機能する。モデム57は、電話回線に接続し、ファックス送受信を実現する。ネットワークI/F58は、インターネット等のネットワークに接続し、ネットワークを介した通信を実現する。メディアドライブ59は、CD−ROM、DVD、SDカード等に記録されたプログラムやデータを読み取り、それらへ書き込みを行うユニットである。
複合機の電源が投入されると、CPU51は、ROM53に格納されているブートプログラムを実行して複合機を起動させ、HDD54からOSを読み出し起動させ、OS上でアプリケーションを実行し、各機能を実現する。その際、CPU51は、シェーディング補正やガンマ補正等の画像処理も実行し、書き込みユニット31へ画像処理後の画像情報を入力する。
複合機は、上記アプリケーションの実行により、複写モードやプリンタモード等の各モードの各機能を実現する。複合機は、そのほかのモードとして、一定時間操作やアクセスがなければ、機器を停止するスリープモードを備える。このモードは、近年の省エネルギー化に伴い、導入されたモードである。スリープモードは、次に操作やアクセスがあった場合に機器を起動するための起動用電力のみがあればよく、それ以外の電力供給が不要であるため、消費電力を低減することができる。この起動用電力を確保するため、図1に示すようなキャパシタユニット40を備え、起動時にそのキャパシタユニット40から電源を供給することができるようになっている。
キャパシタユニット40は、機器の起動時に、外部電源から電源供給を行い、電気エネルギーを蓄えることができる。この複合機では、画像読み取り装置20や定着ユニット35等の起動により熱を発生するユニットが存在するので、それらユニットからの熱を電力に変換する熱電変換手段としての熱電変換素子を備えている。この熱電変換素子により変換された電力をキャパシタユニット40に蓄電すれば、外部電源から供給する電源を少なく、あるいはなくすことができ、消費電力をさらに低減することができる。
このような熱電変換素子やキャパシタユニット40を備えた複合機の電源系統の構成について、図3を参照して詳細に説明する。熱電変換素子を用いた発電では、電力に変換する対象の熱が必要である。複合機では、図3に示すように、その起動により熱を発生する画像読み取り装置20としてのスキャナ60と、プリンタユニット30が備える定着ユニット61とを備えている。そして、スキャナ60と定着ユニット61の各々に隣接して熱電変換素子62、63が取り付けられている。
複合機は、コンセント差込プラグを有する電源ケーブルにより、外部電源64と接続され、外部電源がスキャナ60および定着ユニット61へ供給される。また、複合機は、交流である外部電源64を、直流に変換し、複合機内の各ユニットに供給する電源ユニット(PSU)65を備えている。複合機は、キャパシタユニット40としての蓄電器66と、蓄電器66から電力を取り出す放電器67と、放電器67により取り出された電力とPSU65からの電力とのいずれを使用するかを切り替える切替回路68とを備えている。切替回路68には、負荷69として、電力を消費する様々なユニットが接続されている。このため、複合機は、停電時等の外部電源64が使用できない場合でも、蓄電器66から電力を供給して、各ユニットを動作させることができる。
複合機は、スキャナ60、定着ユニット61、放電器67、切替回路68、負荷69、後述する符号70、71で示されるSW1、SW2、充電制御手段72に各種の指示を与える制御部73を備えている。制御部73は、スキャナ60や定着ユニット61、放電器67、負荷69に対して、動作の開始や終了等を指示し、切替回路68に対して、いずれの電力に切り替えるかを指示する。
ここで、図4を参照して、熱電変換素子62、63の特性について説明する。図4は、その特性として、熱電変換素子62、63から出力される電圧と電流との関係を示した図である。図4の縦軸は、電流(A)であり、横軸は、電圧(V)である。図4中、一点鎖線で示される曲線は、熱電変換素子62、63が回収する熱の温度が100℃の場合、実線で示される曲線は、その温度が150℃の場合、破線で示される曲線は、その温度が200℃の場合を示している。電圧が0Vからそれぞれ所定の値になるまで電流の値は一定であるが、電圧がそれぞれ所定の値を超えると、急激に低下する。この低下し始める点が、最適動作点あるいは最適動作電圧点である。
この図4から、熱電変換素子62、63は、最適動作電圧点を境として、電流を大きくすると電圧が下がり、電流を小さくすると電圧が大きくなるという特徴を有することが分かる。
次に、電圧と電力との関係を、図5に示す。図6の縦軸は、電力(W)であり、横軸は、電圧(V)である。図5は、図4と同様、一点鎖線で示される曲線は、熱電変換素子62、63が回収する熱の温度が100℃の場合、実線で示される曲線は、その温度が150℃の場合、破線で示される曲線は、その温度が200℃の場合である。これらの曲線は、電圧の増加に伴い、電力も増加するが、ある点を境に、電力は低下していく。この曲線の最大点が、最適動作電圧点である。
最適動作電圧点は、温度によって異なっており、最大となる電力を取り出すためには、温度に応じた最適動作電圧点で動作させる必要がある。この最適動作電圧点で動作させることを可能にする装置として、MPPT回路74が用いられる。
図6は、このMPPT回路74の動作について説明する図である。簡単に、MPPT回路74を設けない場合について説明しておく。熱電変換素子62が蓄電器66と直接接続される場合、熱電変換素子62から出力される電力は、直接蓄電器66へ供給される。蓄電器66には、公称電圧があり、熱電変換素子62から蓄電器66へ直接充電すると、その公称電圧まで熱電変換素子62の動作点電圧が下がるので、熱電変換素子62で発電することができる電力が少なくなり、発電効率が低くなる。
次に、MPPT回路74を設ける場合について説明する。MPPT回路74は、図6に示すように、MTTP制御を伴う電圧コンバータ(DDC)75として実装される。ここで、DDCの出力電圧を、設定を変更して意図的に大きくすると、蓄電器66との電圧差が大きくなるため、蓄電器66へ充電する充電電流が増加する。熱電変換素子62は、上述したように、出力電流を大きくすると出力電圧が下がり、出力電流を小さくすると出力電圧が大きくなるという特徴がある。このため、充電電流が増加すると、熱電変換素子62からDDCへ出力される出力電流も増加するため、熱電変換素子62の出力電圧は下がる。
反対に、DDCの出力電圧を意図的に下げると、蓄電器66との電圧差が小さくなるため、蓄電器66への充電電流が減少する。この減少により、熱電変換素子62からDDCへ出力される出力電流も減少するため、熱電変換素子62の出力電圧は大きくなる。
そこで、MPPT制御を行い、電力を最大化させる最適動作電圧点を探し出し、その最適動作点に追従するように制御を行うことで、その取り出せる電力を大きくすることができる。MTTP制御では、最適動作電圧点を探し出し、その最適動作電圧点で熱電変換素子62を動作させるように、DDCの出力電流(充電電流)を算出し、DDCに対してその充電電流になるように指示する。DDCは、その指示を受け、最適動作電圧点で動作する熱電変換素子62から出力された電力の電圧を、その充電電流になるように電流に変換する。
なお、この最適動作電圧点が予め分かっていれば、MPPT回路74を使用しなくても、充電電力を制御すれば、効率の良い充電を行うことが可能である。すなわち、上記の充電電流を求めることができるので、その充電電流になるように、熱電変換素子62、63から出力された電力の電圧を電流に変換すればよい。複写機、プリンタ、MFP等の電子機器においては、その最適動作電圧点を予め予測することが可能である。これは、各ユニットの起動により発生する熱が、安定時にはほぼ一定であり、その温度も予測できるからである。
このため、これらの機器では、機器内のユニットが連続動作し、安定して発電している場合、MPPT回路74を介さないで充電を行うことができる経路を設けることができる。これにより、複数の熱電変換素子62、63を用い、複数箇所で発電を行っている場合でも、複数箇所から出力された電力を同時に充電することができる。また、MPPT回路74を1つのみとすることができるので、安価で提供することが可能となる。
以上のことから、複合機は、図3に示すMPPT回路74、充電電力を制御する充電制御手段72、MPPT回路74を介さない経路に設けられる符号71で示されるSW2をさらに備えることができる。また、MPPT回路74による接続先を切り替えるために、符号70で示されるSW2も備えることができる。以下、SW1、SW2として説明する。
SW1は、切替手段として機能し、第3制御手段として機能する制御部73からの指示により、指示された熱電変換素子62または熱電変換素子63との接続に切り替える。例えば、これまで熱電変換素子63と接続していて、熱電変換素子62に切り替える指示を受けると、SW1は、熱電変換素子63との接続から、熱電変換素子62との接続に切り替える。SW1には、第1制御手段としてのMPPT回路74が接続され、MPPT回路74には、第2制御手段としての充電制御手段72が接続される。
MPPT回路74は、SW1により接続された、例えば熱電変換素子62が出力可能な最大の電力量を決定し、その決定した電力量を充電量として充電制御手段72に対して指示する。充電量を指示することもできるが、蓄電器66の公称電圧と、決定した電力量とから、蓄電器66に充電する際の充電電流を算出し、その算出した充電電流で充電するように充電制御手段72に対して指示することができる。この充電電流は、図6に示した実装の場合、DDCの出力電流である。
充電制御手段72は、MPPT回路74からの指示と、制御部73からの指示とを受け取り、指示された充電量の電力を蓄電器66に充電する制御を行う。実際には、それらの指示に基づいた充電量で、かつ蓄電器66に充電するのに適した電圧に変換して蓄電器66に充電する。蓄電器66は、電力を電荷として蓄える。
スキャナ60のみが起動している場合は、このような制御により熱電変換素子62から出力された電力のみを蓄電器66に充電することができる。しかしながら、スキャナ60と定着ユニット61の両方が起動している場合は、この制御ではスキャナ60から発生した熱を変換した電力のみしか充電されない。これでは、定着ユニット61から発生した熱を変換した電力が無駄になる。SW1に指示し、発生する熱の熱量が多い定着ユニット61に隣接した熱電変換素子63へ切り替えることができるが、この場合も、熱電変換素子62により変換された電力が無駄になってしまう。
そこで、予め指定された熱電変換素子62以外の熱電変換素子63と充電制御手段72とを接続可能なSW2を設け、SW2によりそれらを接続する。これにより、熱電変換素子63で変換された電力を、充電制御手段72へ出力し、蓄電器66に充電することができるようにしている。SW2は、制御部73からの指示を受けて、スイッチを接続し、また、接続を解除することができる。なお、SW2としては、スイッチ素子を用いることができるが、これに限られるものではなく、電流を一方向にのみ流すダイオードを用いてもよい。ダイオードを用いると、スイッチ素子のようにON/OFF制御が不要となり、装置の複雑化を防止することができる。
熱電変換素子62、63のいずれにMPPT回路74を介さない経路を設けるかは、いずれであってもよいが、温度が最も高い状態、すなわち安定した状態での最適動作電圧が最も高いユニットに経路を設けることが望ましい。したがって、定着ユニット61に隣接して取り付けられる熱電変換素子63と充電制御手段72とを接続する経路を設けることが望ましい。これにより、MPPT回路74自体を昇降圧に対応する必要がなくなり、昇圧のみで対応でき、回路の複雑化を防止することができる。
ここで、熱電変換素子63の発電電力、すなわち熱電変換素子63により取り出せる電力は、接続している回路のインピーダンスにより変化する。このため、温度が安定した状態で最も効率が良くなる電圧および電流を予め設定する。例えば、その最も効率が良くなる電圧と同じ電圧を、MPPT回路74の出力電圧として設定する。図3では、0〜3Vを設定することができるようになっており、最適な電圧の値として、3Vを設定することができる。
制御部73がSW1、SW2に対して行う指示は、図7に示すテーブルを参照して行うことができる。図7では、SW1およびSW2と、熱電変換素子63から出力された電力の電力量を充電量として加算するかどうかの指示としての「電流指示」とが示されている。これらは、機器の動作状態と対応付けられていて、その動作状態として、「待機」、「通紙のみ」、「スキャンのみ」、「通紙中スキャン」、「スキャン中通紙」の5つが設定されている。
「待機」は、スキャナ60、定着ユニット61が起動しておらず、待機状態であることを示している。「通紙のみ」は、定着ユニット61のみの起動を示している。「スキャンのみ」は、スキャナ60のみの起動を示している。「通紙中スキャン」および「スキャン中通紙」は、スキャナ60と定着ユニット61の両方の起動を示している。「待機」を除く動作状態は、起動してから所定の温度に達するまでの「温度上昇時」と、所定の温度に達し、その温度で安定したときの「温度飽和時」の2つの状態がある。
「温度上昇時」は、温度が常に変化する状態であるため、そのユニットに隣接して取り付けられる熱電変換素子62、63は、出力される電力が変化する。これに対し、「温度飽和時」は、温度がほぼ一定であるため、熱電変換素子62、63は、ほぼ一定の電力が出力される。
SW1は、「通紙のみ」の「温度上昇時」に定着ユニット61との接続を表す「定着側接続」とされる以外、スキャナ60との接続を表す「スキャナ側接続」とされている。SW2は、SW1が「スキャナ側接続」とされ、かつ定着ユニット61が起動し、所定の温度に達し、その温度で安定した「温度飽和時」に「ON」とされ、それ以外は「OFF」とされている。
「電流指示」は、SW2が「ON」である場合に「指示2」とされ、「OFF」である場合は「指示1」とされている。ここで、「指示1」は、MPPT回路74で決定した充電量もしくは充電電流そのもので充電を行う指示である。これに対し、「指示2」は、MPPT回路74で決定した充電量もしくは充電電流に、定着ユニット61の温度が安定した状態で発電電力を効率良く充電できる予め設定した充電量もしくは充電電流を加算する指示である。なお、充電電圧は一定であるため、充電量であっても、充電電流であってもよいものである。以下、加算する場合、充電電流を加算するものとして説明する。
図3および図8に示すフローチャートを参照し、複合機が備える電力制御装置により実行される処理について詳細に説明する。電力制御装置は、図3に示すSW1、SW2、MPPT回路74、充電制御手段72、制御部73を含んで構成される。なお、制御部73は、複合機全体の制御も行い、各モードに応じてシーケンシャルに負荷69を動作させる。
電力制御は、熱電変換素子62の動作開始により、ステップ800から開始する。熱電変換素子62の動作は、その熱電変換素子62が隣接するユニット、すなわちスキャナ60の起動により開始される。熱電変換素子62は、例えば、スキャナ60の最も高温になる部分、露光ランプに隣接して取り付けられている。ステップ805では、制御部73が、機器の動作状態、ここではスキャナ60の動作状態から図7に示したテーブルを参照して、SW1に対して指示を送る。この例では、熱電変換素子62を選択し、それに接続する指示とされているが、熱電変換素子63を選択するようになっていてもよい。この場合、熱電変換素子63の動作開始によりこの処理が開始することになる。
ステップ810では、SW1は、その指示に基づき、熱電変換素子63に接続されている場合、熱電変換素子62へその接続を切り替える。既に熱電変換素子62に接続されている場合は、SW1は特に動作しない。ステップ815では、MPPT回路74が、最適動作電圧点を探し出し、その最適動作電圧点における電流を充電電流として決定する。熱電変換素子62が出力可能な最大電力(公称最大出力電力)が50Wで、蓄電器66の公称電圧が5Vであれば、その最大電力をその公称電圧で除して、充電電流を10Aと算出することができる。MPPT回路74は、算出した充電電流で充電するように、充電制御手段72に対して指示する。
ステップ820では、充電制御手段72が、その指示を受けて、熱電変換素子62からSW1およびMPPT回路74を介して出力された電力を、算出した充電電流になるように変換、すなわち電圧を電流に変換し、その算出した充電電流で蓄電器66に充電する。ステップ825では、SW1に接続されていない他の熱電変換素子63が動作を開始したかを判断する。この動作の開始は、熱電変換素子63が隣接するユニット、すなわち定着ユニット61の起動により開始される。動作が開始されていない場合は、ステップ845へ進む。
ステップ825で動作を開始したと判断した場合、ステップ830へ進み、制御部73が、機器の動作状態から図7に示したテーブルを参照して、SW2に対して指示を送る。ステップ835では、その指示に基づき、熱電変換素子63と充電制御手段72とを接続する。ステップ840では、制御部73が、図7に示すテーブルを参照し、熱電変換素子63からの充電電流を加算する旨を指示する。他の熱電変換素子63で発電した電力を無駄にしないためである。ステップ845では、加算する充電電流が存在しないので、制御部73は、図7に示すテーブルを参照し、熱電変換素子63からの充電電流を加算しない旨を指示する。
ステップ850では、制御部73から加算する旨の指示を受けたか否かを判断する。ステップ850で加算する旨の指示を受けたと判定した場合、ステップ855へ進む。ステップ855では、充電制御手段72は、MPPT回路74により決定された充電電流と、熱電変換素子63により出力される電力から得られる電流を加算し、その加算して得られた充電電流で蓄電器66に充電する。
一方、加算しない旨の指示を受け、加算する旨の指示を受けていないと判断した場合、ステップ860へ進む。ステップ860では、そのMPPT回路74から出力される電力のみを変換し、MPPT回路74で算出された充電電流で蓄電器66に充電する。そして、スキャナ60と定着ユニット61との両方が停止し、熱電変換素子62、63の動作が停止したところで、ステップ865へ進み、この処理を終了する。
2つのSW1、SW2が、実際にどのようなタイミングで切り替えられ、また、接続および接続解除されるかについて、図9を参照して詳細に説明する。図9(a)は、スキャナ60と定着ユニット61とに隣接して取り付けられた熱電変換素子62、63により発電された発電電力と時間との関係を示した図である。図9(a)の縦軸は、発電電力を示し、横軸は、時間を示す。この図9では、複合機が、原稿を読み取り、印刷出力を行う動作を行っている。
スキャナ60が起動し、原稿の読み取り動作が開始されると、スキャナ60で最も多くの熱を発生する露光ランプの温度が上昇する。このとき、その露光ランプに取り付けられた熱電変換素子62が発電を開始する(タイミング1)。タイミング1は、図9中、数字「1」で示された時間である。これは、数字が異なるだけで、その意味は、以下のタイミング2等もタイミング1と同様である。SW1は、スキャナ60側に接続されているので、露光ランプの温度が上昇し、発生する熱の増加に伴い、熱電変換素子62の発電量も増加していく。露光ランプの温度が一定の飽和状態になると、熱電変換素子62の発熱量の増加もなくなり(タイミング2)、スキャナ60が連続動作している間、一定の発電量で発電を継続する(タイミング2からタイミング5まで)。
スキャナ60が連続動作している間にプリント指示があった場合、定着ユニット61が起動する。このとき、例えば、定着ユニット61が備える加熱装置に取り付けられた熱電変換素子63が発電を開始する(タイミング3)。定着ユニット61の温度上昇に伴い、熱電変換素子63の発電量が増加していく。定着ユニット61の温度が飽和状態になると、熱電変換素子63の発熱量の増加もなくなり(タイミング4)、定着ユニット61が連続動作している間、一定の発電量で発電を継続する(タイミング4からタイミング7まで)。
スキャナ60の動作が終了すると(タイミング5)、スキャナ60の温度は徐々に低下し、起動前の温度に戻り、それに伴い、熱電変換素子62の発電量も低下し、最終的に0となる(タイミング6)。その後、定着ユニット61の動作が終了すると(タイミング7)、定着ユニット61の温度が徐々に低下し、起動前の温度に戻り、それに伴い、熱電変換素子63の発電量も低下し、最終的に0となる(タイミング8)。
図9(b)は、充電電力と時間との関係を示した図である。SW1は、熱電変換素子62を選択し、熱電変換素子62との接続とされる。タイミング1において熱電変換素子62において発電が開始され、SW1により蓄電器66に接続されているため、充電が開始される。タイミング1からタイミング2までの間は、発電量が増加するので、それに伴い、充電量も増加する。タイミング2からタイミング3までの間は、スキャナ60の露光ランプの温度がほぼ一定で、ほぼ一定の発電量であるため、それに対応して、充電量もほぼ一定となっている。
タイミング3からタイミング4は、定着ユニット61が起動され、熱電変換素子63も発電を開始するが、SW2が接続されていない(OFF状態)ため、タイミング2からタイミング3までの間と同じ充電量とされている。タイミング4でSW2がON状態とされるため、熱電変換素子62の発電量に熱電変換素子63の発電量を加算した電力が充電される。
参考のため、従来のMPPT回路74のみを使用した場合(従来回路)を破線にて示している。この従来回路は、熱電変換素子62より熱電変換素子63の方が、発電量が多い。このため、SW1にて熱電変換素子63に切り替えて充電を行う。したがって、破線で示すように、タイミング2からタイミング4までの充電量より、タイミング4以降の充電量が増加している。
図3に示した構成では、熱電変換素子62からの電力に加えて、SW2により熱電変換素子63からの電力も充電することができるので、図9(b)の実線に示すように、従来回路より多い充電量を得ることができる。
タイミング5からタイミング6までの間は、スキャナ60の動作が終了したので、熱電変換素子62の発電量が低下し、加算できる充電量が減少している。このとき、各SWの切り替えは不要で、切り替えなくても所望の充電量を得ることができる。タイミング6からタイミング7までの間は、熱電変換素子62における発電がなくなり、熱電変換素子63のみからの電力で充電している。
タイミング7からタイミング8までの間は、定着ユニット61の動作が終了したので、熱電変換素子63の発電量が低下し、充電できる電力が減少している。タイミング7のとき、SW1を熱電変換素子63との接続に切り替え、SW2をOFF状態にし、また、充電電力指示を切り替えることにより、その間においてもMPPT回路74を使用し、効率良く充電することができる。
各SWの切り替えは、機器の動作状態に応じて、図7に示すテーブルを参照して行うこともできるが、機器内の各ユニットの温度が飽和するまでに時間を要するため、この時間も考慮して切り替えることもできる。これにより、温度が飽和するまでの過渡期における充電効率を向上させることができる。
図9では、最初にスキャナ60が動作し、次に定着ユニット61が動作する例を示したが、最初に定着ユニット61が動作する場合も同様の制御を行うことができる。したがって、いずれの場合も、効率良く充電を行うことができる。
これまで、熱を発生するユニットが、スキャナ60と定着ユニット61の2つのみの場合の例を説明してきた。しかしながら、これに限られるものではなく、3つ以上の場合も同様の制御により、効率良く充電を行うことができる。
3つのユニットを備える例を、図10に示す。3つのユニットは、高温部80〜82とされている。高温部80〜82の各々には、各々に隣接して熱電変換素子83〜85が取り付けられている。符号86で示されるSW1は、熱電変換素子83〜85のいずれか1つへの接続に切り替える構成とされる。
予め指定された熱電変換素子83以外の熱電変換素子84、85と充電制御手段87とを接続もしくは接続解除する、符号88で示されるSW2、符号89で示されるSW3が設けられている。その他の構成は、図3に示した構成と同様である。このため、熱を発生するユニットが増加すれば、SW1の接続対象が増加し、熱電変換素子と充電制御手段87とを直接接続するためのSWが増加していくのみである。
熱電変換素子と充電制御手段87とを直接接続するSWは、発電量が大きい順に選択された熱電変換素子と充電制御手段87とを接続可能にするために、その間に設けることが好ましい。したがって、この場合、MPPT回路90に接続されるSW1とのみ接続可能な熱電変換素子83は、発電量が最も小さい熱電変換素子となる。これにより、上述したように、MPPT回路90自体を昇降圧に対応する必要がなくなり、昇圧のみで対応でき、回路の複雑化を防止することができる。
これまで本発明を、電力制御装置、電力制御装置を備える複合機、電力制御方法として上述した実施の形態をもって説明してきた。しかしながら、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、他の実施の形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができるものである。また、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。したがって、熱を発生する複数のユニットを備える電子機器であれば、複合機以外にも当然に適用することができるものである。