特許文献1には、注水孔及び吸引孔等を備えた歯ブラシが、注水ポンプユニットに着脱自在に装着され、患者の口腔内にブラシ部を挿入して歯の清掃作業を行う際、注水孔から歯ブラシ部に向け注水がなされると共に、歯ブラシ部の吸引口から吸引孔を経て口腔内の汚物等が逐次排出されるように構成されている。しかし、本特許文献1に採用される歯ブラシは、注水孔、注水口、吸引孔及び吸引口等を備えた専用品であって、市販の汎用品を用いることができず、高価になることは否めない。また、この歯ブラシ(装置)を含んで可搬式に構成される口腔内清掃装置は、マイクロモータハンドピースやスケーラハンドピースを備えるものではないので、歯牙の切削やスケーリングを行うことができず、歯ブラシを用いた歯の清掃に限られる。
また、特許文献2に開示された歯科衛生士用ポータブルユニットにおいては、口腔ケアブラシ(歯ブラシ)が、吸引口と注水口とを有している。この吸引口は吸引管(バキュームシリンジ)用バキュームホースに接続可能とされ、注水口はスケーラチップ(スケーラハンドピース)用スケーラホースから分岐するチューブに接続可能とされている。そして、本特許文献2において、口腔ケアブラシを用いて歯の清掃等を行う場合は、口腔ケアブラシの吸引口を前記吸引管に、注水口を前記チューブにそれぞれ接続し、注水口から口腔内に注水し、吸引口から口腔内の汚物等を逐次吸引排出させるように構成されている。この場合も、専用の口腔ケアブラシしか用いることができず、市販の汎用の歯ブラシは用いることができないため高価となることは否めない。
さらに、特許文献3に記載された滴水歯ブラシ口腔介助補助用具は、市販の歯ブラシに滴水細管をその先端開口部をブラシの植毛部束の中央部に位置するように副わせて、在宅で要介護者の口腔清掃支援を行えるよう構成されている。本特許文献3においては、給水吸引式電動歯ブラシの場合のような振動や電動音や吸水音による要介護者の緊張をなくすため吸引をなしにし、口腔清掃時に必要な最小限の滴水量で清掃を実施し、口腔内に溜まった汚水は綿花等で吸収することを意図している。このように、本特許文献3に開示された技術思想は、在宅で要介護者の歯の清掃を行うという域に留まるものであって、在宅で歯垢や歯石の除去、或いは歯牙の切削等の診療に加えて歯の清掃をも行い得るようにするという考えはない。また、バキューム手段による吸引を意図していないので、滴水量を最小限にする必要があり、そのため、充分な歯の清掃を行えないことが生じることも予想される。
本発明は、このような実情に鑑みなされたもので、在宅診療において、歯垢や歯石の除去、或いは歯牙の切削等の診療に加えて、市販の歯ブラシによる歯の清掃をも円滑に行うことができる往診用歯科診療装置を提供することを目的とする。
本発明に係る往診用歯科診療装置は、少なくとも、バキュームシリンジ及び注水機能を備えたハンドピースを含む歯科用インスツルメントと、前記ハンドピースの作用媒体の供給部材を収容して前記ハンドピースに着脱自在に接続される媒体ホースと、前記インスツルメントの駆動制御部と、前記インスツルメントの駆動用フートコントーラとを、持ち運び可能なケースに収納した往診用歯科診療装置において、前記ハンドピースの媒体ホースは、前記作用媒体の供給部材としての水管路を含み、前記ハンドピースが取り外された当該ハンドピースの媒体ホースに着脱自在に接続可能な注水管路部材を備え、前記注水管路部材が当該媒体ホースに接続されたときには、当該媒体ホース内の前記水管路と注水管路部材の管路とが水の流通が可能な状態で連通し、前記注水管路部材の先端部には、市販の歯ブラシが保持部を介して一体に保持され、この保持状態では、前記フートコントローラの操作による制御に基づき、前記注水管路部材の先端注水口から前記歯ブラシのブラシ部に向けて注水がなされるように構成され、前記注水管路部材は、前記ハンドピースの媒体ホースに着脱自在に接続するための第1のワンタッチジョイントを備えた基部側管路部と、該基部側管路部に第2のワンタッチジョイントを介して着脱自在に接続される先側管路部とからなり、前記第1及び第2のワンタッチジョイントの少なくとも一方に逆止弁機能部が設けられ、前記先側管路部の先端部に前記歯ブラシが保持可能とされ、且つ、当該先側管路部の先端開口部が前記先端注水口とされていることを特徴とする。
本発明の往診用歯科診療装置において、前記ハンドピースが、当該ハンドピースの媒体ホースに接続されたときに前記水管路に連通する注水管路を備えたスケーラハンドピースまたはマイクロモータハンドピースのいずれか一方であっても良い。
また、本発明の往診用歯科診療装置において、少なくとも前記ハンドピースの媒体ホースに前記注水管路部材を接続したときに、その先端注水口からの注水量を調整し得る水量調整部を備えているものとしても良い。
また、本発明の往診用歯科診療装置において、前記保持部が、弾性部材からなり、前記歯ブラシの柄部と注水管路部材とを弾性的に緊縛して一体化するよう構成されているもの、或いは、熱収縮する材料からなり、熱収縮により前記歯ブラシの柄部と注水管路部材とを一体化するよう構成されているものであっても良い。
また、本発明の往診用歯科診療装置において、前記ハンドピースが光照射機能部を備え、且つ、当該ハンドピースの媒体ホースが作用媒体の供給部材としての光照射機能部用の電源線を含み、前記ハンドピースが取り外された当該ハンドピースの媒体ホースに着脱自在に接続可能な照射光発生用条体をさらに備えていても良い。
この場合、前記照射光発生用条体が、前記注水管路部材と一体とされていても良い。
本発明に係る往診用歯科診療装置によれば、歯科用インスツルメントと、インスツルメントの駆動制御部と、フートコントーラとが、持ち運び可能なケースに収納されているから、術者は、当該往診用歯科診療装置を患者宅に持ち込むことによって、在宅患者の歯科診療を実施することができる。また、前記ハンドピースが取り外された当該ハンドピースの媒体ホースに注水管路部材を接続し、この注水管路部材に市販の歯ブラシを一体に保持させることができる。そして、術者は歯ブラシを把持し、前記フートコントローラを操作して、前記注水管路部材の先端注水口から前記歯ブラシのブラシ部に向けて注水させながら、歯ブラシによる歯の清掃診療を実施することができる。口腔内に溜まった汚水は、バキュームシリンジを操作して逐次排出させることができる。しかも、注水管路部材は、前記のように構成されることにより、その基部側管路部が媒体ホースに対して第1のワンタッチジョイントを介して簡易に媒体ホースに接続される。また、先側管路部が第2のワンタッチジョイントを介して基部側管路部に簡易に接続される。そして、前記先側管路部の先端部に前記歯ブラシが保持可能とされるから、前記のように注水しながら、歯ブラシによる歯の清掃が可能とされる。このように、基部側管路部が媒体ホースに対して着脱自在とし、或いは、先側管路部が基部側管路部に対して着脱自在としておけば、歯ブラシを保持した状態の注水管路部材或いは先側管路部を各患者専用として患者宅毎に保管しておくことができる。また、前記第1及び第2のワンタッチジョイントの少なくとも一方に逆止弁機能部が設けられているから、逆止弁機能部が設けられるワンタッチジョイントから先側部分を各患者専用としておけば、逆止弁機能部から媒体ホース側への水の逆流が防止される。従って、少なくとも逆止弁機能部が設けられるワンタッチジョイントから先側部分を取り換えて、複数の患者毎に歯の清掃を行う場合にも、雑菌等の他人への感染の懸念も生じることがない。
本発明の往診用歯科診療装置において、前記ハンドピースが、当該ハンドピースの媒体ホースに接続されたときに前記水管路に連通する注水管路を備えたスケーラハンドピースまたはマイクロモータハンドピースのいずれか一方である場合、歯ブラシによる清掃では除去できないような歯垢・歯石の除去等も実施することができる。後者のマイクロモータハンドピースの場合、歯石及び齲蝕の切削除去等も行うことができる。従って、単なる家庭的な歯の清掃に加えて歯科診療的なケアも実施することができる。
本発明の往診用歯科診療装置において、少なくとも前記ハンドピースの媒体ホースに前記注水管路部材を接続したときに、その先端注水口からの注水量を調整し得る水量調整部を備えている場合、歯ブラシによる歯の清掃作業時においても、歯の汚れ状態や患者の状態等に応じて、注水量を適宜調整することができる。特に、在宅診療を要する患者の場合、注水によってむせることがないように注水量を調整し得ることは極めて有益である。
本発明の往診用歯科診療装置において、前記保持部が、弾性部材からなり、前記歯ブラシの柄部と注水管路部材とを弾性的に緊縛して一体化するよう構成されている場合、歯ブラシと注水管路部材とを極めて簡易に一体化することができる。また、前記保持部が、熱収縮する材料からなり、熱収縮により前記歯ブラシの柄部と注水管路部材とを一体化するよう構成されている場合、歯ブラシと注水管路部材とを簡易且つ安定的に一体化させることができる。
本発明の往診用歯科診療装置において、前記ハンドピースが光照射機能部を備え、且つ、当該ハンドピースの媒体ホースが光照射機能部用の電源線を含み、前記ハンドピースが取り外された当該ハンドピースの媒体ホースに着脱自在に接続可能な照射光発生用条体をさらに備えている場合、歯ブラシによる歯の清掃作業時に、口腔内を光照射することができ、的確な歯の清掃作業を実施することができる。この場合、前記照射光発生用条体が、前記注水管路部材と一体とされているものとすれば、歯ブラシの柄部を片手で把持することにより、歯の清掃と口腔内照射とを実施することができ、ハンドリング性に優れる。
以下、本発明の往診用歯科診療装置の実施の形態について図面に基づき説明する。図1〜図6に示す往診用歯科診療装置1は、直方体形状の箱形筐体2と、該筐体2の開口部2aに開閉自在に設けられる蓋体3とを備えている。この筐体2と蓋体3とにより持ち運び可能なケース23が構成される。該往診用歯科診療装置1は、使用時には、前記筐体2の開口部2aが横向きになるよう構成され、さらに、本実施形態の往診用歯科診療装置1は、持ち運びの際にも開口部2a及び蓋体3が横向きとなるよう、取っ手2bが、該筐体2の上側面部に設けられている。前記蓋体3は、前記筐体2の使用時の設置状態での上辺部2cにおける前記開口部2aの縁部と、該蓋体3の使用時の設置状態(開けた状態)での下辺部3aとを結合するヒンジ部材4によって、前記開口部2aを開閉するように構成される。該ヒンジ部材4は、通常の平蝶番と同様の外形状をなし、蓋体3に所定以上の力が付加されない限り、蓋体3を任意の開位置に保持する機能を奏するトルクヒンジ機構部等の保持手段(図示省略)を備えた部材からなる。具体的には、筐体2及び蓋体3に跨るように止着される合成樹脂製の2枚の羽根部を、金属製のヒンジ軸を圧入して結合するように構成され、圧入部の樹脂と金属との摩擦抵抗によって前記機能を奏するものである。
本実施形態の往診用歯科診療装置1は、歯科補助者(歯科衛生士)用としてユニット化された口腔ケア用ユニットであることを示している。具体的には、本往診用歯科診療装置1には、歯科用インスルメントとしてバキュームシリンジ5及びハンドピース6が装備される。このハンドピースとしてはスケーラハンドピース、又は、マイクロモータハンドピースが採用されるが、図例ではスケーラハンドピース6が用いられる例が示されている。以下では、バキュームシリンジ5及びスケーラ(マイクロモータ)ハンドピースをまとめて歯科用インスツルメント5,6と言うこともある。前記筐体2は、中間仕切2dで仕切られ、該中間仕切2dより奥側(反開口部2a側)の空所が制御室(駆動制御部)7とされている。該中間仕切2dの一部に該制御室7に通じる凹所2eが設けられ、この凹所2eにバキュームタンク10が開口部2a側に取出自在に設置されている。該バキュームタンク10は前記制御室7に設置される第2バキュームタンク10a(図6参照)を介して制御室7内に設置される吸引ポンプ8に配管接続される。また、制御室7内には、給水ポンプ9が設置され、該給水ポンプ9は、中間仕切2dより開口部2a側の筐体2内に設置される給水タンク11と配管接続される。
さらに、制御室7内には、前記吸引ポンプ8,給水ポンプ9の後記する配管系や制御系等が内装されている。バキュームシリンジ5は、バキュームタンク10に接続され、口腔内に溜まった汚物を含む診療(清掃)水を吸引し得るようになされている。バキュームシリンジ5は、吸引管路51(図6参照)を内装する媒体ホース50の先端に着脱自在に接続されている。また、前記スケーラハンドピース6には、前記給水タンク11から、前記給水ポンプ9によって水を給送し、スケーラハンドピース6の先端部より歯牙の切削部位に注水し得るように構成されている。スケーラハンドピース6は、後記する作用媒体の供給部材としての駆動用電源線及び水管路62を束ねて内装する媒体ホース60の先端に着脱自在に接続されている。これら、媒体ホース50,60は、前記制御室7から、前記中間仕切2dを貫き、前記開口部2a側に導出されている。
スケーラハンドピース6は、前記媒体ホース60の先端部に対して着脱自在に接続されるグリップ部6aと、該グリップ部6aの先端部に着脱自在に装着されるスケーラチップ6bとよりなる。グリップ部6aには、電気駆動する不図示の超音波発振器、注水管路6c、さらには不図示の光照射用導光路等が内蔵されている。媒体ホース60の先端部には、ジョイント部61が設けられ、このジョイント部61に対して、前記グリップ部6aが着脱自在に接続される。ジョイント部61にグリップ部6aが接続された時には、前記注水管路6cが媒体ホース60に内装される作用媒体の供給部材としての水管路62に連通する。また、後記するように、超音波発振器用の電気的接合や、光照射用の光学的接合もなされる。そして、スケーラハンドピース6が取り外された媒体ホース60には、前記ジョイント部61を介して注水管路部材30が着脱自在に接続可能とされる。
前記注水管路部材30は、前記ジョイント部61を介して前記媒体ホース60に着脱自在に接続する為の第1のワンタッチジョイント31を備えた基部側管路部32と、該基部側管路部32に第2のワンタッチジョイント33を介して着脱自在に接続される先側管路部34とからなる。この先側管路部34の先端部には、保持部35によって市販の歯ブラシ40が一体に保持されている。先側管路部34の先端は先端注水口34aとされ、この先端注水口34aは、保持部35によって保持された状態の歯ブラシ40におけるブラシ部40aの近傍に臨み、該先端注水口34aからブラシ部40aに向けて注水がなされるように構成されている。前記第2のワンタッチジョイント33には、逆止弁機能部33aが設けられている。図例の保持部35は、幅広の輪ゴム状のものからなり、歯ブラシ40の柄部40bと注水管路部材30とを弾性的に緊縛して一体化するようにしている。歯ブラシ40と注水管路部材30とを極めて簡易に一体化することができる。また、保持部35としては、熱収縮する材料からなり、熱収縮により前記歯ブラシ40の柄部40bと注水管路部材30とを一体化するよう構成されているものであっても良い。注水管路部材30における注水の機構については後記する。
前記中間仕切2dの開口部2a側には、前記給水タンク11が、前記給水ポンプ9に配管接続された状態で、かつ、水の補給が可能なように設置されている。また、前記中間仕切2dの開口部2a側の面には、前記歯科用インスツルメント5,6を収納時に保持させるためのホルダー12,13が設けられており、歯科用インスツルメント5,6は、収納時には、前記ホース50,60を束ねた状態で該ホルダー12,13に保持される。さらに、前記中間仕切2dの開口部2a側の面には、磁性体からなる第1の被吸着板14が固着されており、該第1の被吸着板14には、2個のホルダー部15a,15bを有するマグネットを備えたインスツルメントハンガー15が着脱自在に吸着支持されている。即ち、非使用時(収納時)には、該インスツルメントハンガー15のマグネットを前記第1の被吸着板14に吸着させることにより、該インスツルメントハンガー15が第1の被吸着板14に吸着支持される。前記中間仕切2dの開口部2a側には、前記スケーラハンドピース6の超音波発振器の出力調整(オン・オフを含む)や注水のオン・オフ等の操作を、歯科補助者の足踏み操作によって実施し得るフートコントローラ16が収納されている。このフートコントローラ16は、使用時には、図5に示すように、リード線16aと共に開口部2aの前方側の床面に延出される。また、本往診用歯科診療装置1の電源コード17が、前記媒体ホース50,60及びフートコントローラ用のリード線16aと一緒に束ねられている。電源コード17は、使用時には、前記中間仕切2dに設けられる受電コネクタ17aに接続され、先端のプラグ17bが室内の商用電源(不図示)に差し込み接続される。筐体2の前記中間仕切2dの前面(開口部2a側面)には、スケーラハンドピース6に供給する水の注水量の調整用摘みスイッチ(水量調整部)21と、前記超音波発振器の出力調整用の摘みスイッチ22とが設けられている。
前記蓋体3の内面には、開いたときの該蓋体3の上辺部3bの近傍に、磁性体からなる第2の被吸着板18が固着されている。使用時(診療時)には、前記インスツルメントハンガー15を、前記第1の吸着板14から取外し、前記第2の吸着板18にマグネットによって吸着支持させる。この第2の被吸着板18に吸着支持されたハンガー15のホルダー部15a,15bには、図5(a)に示すように前記バキュームシリンジ5及びスケーラハンドピース6が保持されている。図例では、第2の被吸着板18が縦長の長方形状とされており、これにより、ハンガー15の吸着保持位置の高さが可変とされ、患者の仰臥高さ等に応じて、歯科補助者の使い勝手の良い位置にハンガー15を調整することができる。また、前記蓋体3の内面には、トレーテーブル19及び該トレーテーブル19を支持するための支台部材20が取外し可能に取付けられている。この取外し可能な取付け手段としては、図示を省略するが、ゴム帯やポケット部等が採用される。このトレーテーブル19は、図5(a)(b)に示すように、蓋体3を開けたときの前記蓋体3の上辺部3bに、前記支台部材20を介して着脱自在に取付けられる。このトレーテーブル19の取付構造としては、クリップ状の部材によって、前記上辺部3bに挟み付けるように構成されるもの等が望ましく採用されるが、その詳細についての説明は割愛する。
前記構成の往診用歯科診療装置1の配管構成等について図6を参照して説明する。吸引系統は、バキュームキュムシリンジ5の媒体ホース50が接続される吸引配管80と、この吸引配管80の途中に配管接続されるバキュームタンク10と、このバキュームタンク10の下流側(吸引側)に配管接続される第2バキュームタンク10aとを含む。バキュームタンク10は、入口側及び出口側ジョイント80a,80bを介して吸引配管80に着脱自在に接続されており、このジョイント80a,80bとバキュームタンク10との間の吸引配管80にはそれぞれ開閉弁80c,80dが配設されている。この開閉弁80c,80dは同時開閉操作が可能で、バキュームタンク10の取外は、開閉弁80c,80dを閉止した上でジョイント80a,80bを互いに分離することによってなされる。これによって、バキュームタンク10に溜まった診療水(清掃水)の廃棄や、バキュームタンク10の洗浄等を実施することができる。第2バキュームタンク10aは、バキュームタンク10内の清掃水が不意に満杯になった際にそのオーバーフロー水を収容するために設けられるものであり、その底部には排水キャップ10bが設けられている。この排水キャップ10bを開とすることにより、第2バキュームタンク10aに溜まった診療水(清掃水)を装置外に排出させることができる。また、吸引ポンプ8と第2バキュームタンク10aとの間の吸引配管80には、前記フートコントローラ16やバキュームシリンジ5のグリップ部に設けられるオン・オフスイッチ(不図示)によって開閉するシャットオフバルブ80eが設けられている。
給水系統は、給水タンク11に配管接続されるメインの給水配管90と、マニホールド91を介して給水配管90と給水ポンプ9とを配管接続する循環式給水配管92と、マニホールド91を介して循環式給水配管92に配管接続されるスケーラハンドピース6の媒体ホース60に内装された水管路62(図7〜図9も参照)とを含む。該水管路62の途中には、流量調整バルブ21aが配設され、該流量調整バルブ21aは、前記注水量の調整用摘みスイッチ21によって手操作される。循環式給水配管92の途中にはリリーフバル92aが、メインの給水配管90の途中には逆止弁90aがそれぞれ配設されている。このような給水系統において、給水ポンプ9が作動すると、給水タンク11に貯留された水がマニホールド91を経て前記水管路62に給送される。この時、前記調整用摘みスイッチ21の手操作によって、水管路62を給送される水の注水量が調整される。
前記のような構成の往診用歯科診療装置1を用いた歯科診療の準備作業の要領について説明する。歯科補助者は、往診用歯科診療装置1を、前記取っ手2bにより携行して患者宅を訪問し、仰臥する患者頭部の近傍の床面上に図1に示すような状態で設置する。そして、蓋体3を、前記ヒンジ部材4のヒンジ軸を支点として上方に回転させて、筺体2の開口部2aを開とする。蓋体3を、図3に示すように、筐体2の上辺部2c上に略垂直に起立させ、前記トルクヒンジ機構部によってこの起立状態に維持する。この起立状態では蓋体3の内面が前方に(開口部2aが向く方向に)向くことになる。この状態で、前記インスツルメントハンガー15を第1の被吸着板14から取外し、蓋体3の内面の第2の被吸着板18に吸着支持させる。また、束ねられた前記歯科用インスツルメントの媒体ホース50,60を解き、前記歯科用インスツルメント5,6をホルダー12,13から外す。この歯科用インスツルメント5,6を、第2の被吸着板18に吸着支持させた前記インスツルメントハンガー15のホルダー部15a,15bに、それぞれ保持させる。さらに、フートコントローラ16を取出し、電源コード17を、受電コネクタ17aに接続すると共に、プラグ17bを室内の商用電源コンセントに差し込み接続する。また、前記トレーテーブル19及び支台部材20を蓋体3の内面から取外し、支台部材20を蓋体3の上辺部3bに取付け、この支台部材20上にトレーテーブル19を乗せ置き支持させる。トレーテーブル19は磁性体(例えば、SUS403)材料からなるものとし、支台部材20の上面にマグネットを設けておけば、トレーテーブル19が吸着によって簡易且つ安定的に支持されると共に、その向きや位置も任意に設定することができる。最後に、給水タンク11に持参の診療水(生理食塩水等)を補充することにより、歯科診療の準備作業が完了する。図5(a)はこのような歯科診療の準備が整った状態を示している。
歯科補助者は、患者が仰臥するベッドの頭部付近の椅子等に着座し、前記インスツルメントハンガー15に保持されたスケーラハンドピース6を取出し、スケーラチップ6bを電気的に振動駆動させて歯牙の歯石や歯垢の除去診療を行う。この場合のスケーラチップの駆動は、フートコントローラ16を足踏み操作して、或いは、スケーラハンドピース6のグリップ部6aに設けられるスイッチ(不図示)を手操作してなされる。そして、前記注水量の調整用摘みスイッチ21及び前記超音波発振器の出力調整用の摘みスイッチ22を操作して適宜調整した上で、前記フートコントローラ16等を操作して、注水しながらスケーラハンドピース6を作動させて歯石等の除去を行う。この時、必要によって、診療対象歯への光照射がなされる。また、スケーラハンドピース6による歯科診療の間、歯科補助者は、他方の手でバキュームシリンジ5を把持操作して、口腔内に溜まった切削屑等の汚物を含む診療水を逐次吸引してバキュームタンク10内に排出する。バキュームシリンジ5の作動も、フートコントローラ16を足踏み操作して、或いは、バキュームシリンジ5のグリップ部に設けられるスイッチ(不図示)を手操作してなされる。
尚、前記インスツルメントハンガー15にマイクロスイッチや光センサ(不図示)を設けておき、歯科用インスツルメント5,6がインスツルメントハンガー15から取出されたことをこれらマイクロスイッチや光センサが検出したとき、歯科用インスツルメント5,6のオン・オフ操作が可能となるよう構成しても良い。
前記診療の間、インスツルメントハンガー15に対して、歯科用インスツルメント5,6の取出し、或いは、収納の動作が繰返される。而して、インスツルメントハンガー15は、筺体2上に起立状態とされた蓋体3の内面に設けられているから、歯科補助者の手の届き易い位置に位置付けられ、歯科用インスツルメント5,6の取出/収納動作の繰返しの際にも、歯科補助者はかがむこともなく、通常の歯科医院におけると同様の姿勢で診療を行うことができる。また、トレーテーブル19も、蓋体3の上辺部3bに取付けられているから、歯科補助者の手近な位置に位置付けることができ、スケーラチップ等の仮置き等もし易く、診療作業の円滑化が図られる。また、蓋体3は、筺体2上に起立した状態とされるから、診療時における本往診用歯科診療装置1に要するスペースが、平置きの場合に比べて小さく、在宅診療のようにスペースに限りがある場合でも、支障なく設置することができる。注水機能を備えたハンドピースとして、前記スケーラハンドピース6に代えマイクロモータハンドピース(不図示)が装備される場合、前記と同様に使用することにより、スケーラハンドピース6では除去できないような歯石等を、マイクロモータハンドピースによって切削除去することができる。
本実施形態においては、前記スケーラハンドピース6による歯垢や歯石の除去診療に代え、歯の清掃診療も実施することができる。即ち、図5(b)に示すように、スケーラハンドピース6を媒体ホース60のジョイント部61から取外し、前記第1のワンタッチジョイント31を介して注水管路部材30をジョイント部61に接続する。取外されたスケーラハンドピース6は、グリップ6aとスケーラチップ6bとを分離した状態で前記トレーテーブル19上に置かれる。この注水管路部材30の接続状態では、媒体ホース60に内装される後記する水管路62に注水管路部材30の管路300が水密的に連通する(図7参照)。従って、媒体ホース60の水管路62から供給される水を、注水管路部材30の管路300を経て先端注水口34aに向け給送が可能とされる。歯科補助者は、給水ポンプ9を作動させた上で、注水管路部材30の先端部に保持された市販の歯ブラシ40を片方の手で把持し、注水量を前記調整用摘みスイッチ21の手操作によって調整して、患者の歯面を歯ブラシ40によってブラッシング清掃する。このブラッシング清掃の間、先端注水口34aから歯ブラシ40のブラシ部40aに向け注水されるので、ブラッシングにより除去された汚物は口腔内に逐次洗い流される。並行して、歯科補助者は、他方の手でバキュームシリンジ5を把持し、吸引ポンプ8を作動させた上で、バキュームシリンジ5の先端部を患者の口腔内に挿入して汚物を含む清掃水を随時吸引して、バキュームタンク10に貯留させる。調整用摘みスイッチ21によって注水量の調整がなされるから、歯科補助者は、患者の状態をみて、むせることがないよう歯面清掃を行うことができ、患者は安心して清掃を受けることができる。
本実施形態の注水管路部材30は、全体若しくは第2のワンタッチジョイント33から先側部分(先側管路部34)を各患者専用とするか、使い捨てとして用いられる。そして、第2のワンタッチジョイント33には逆止弁機能部33aが設けられており、逆止弁機能部33aからの水の逆流が防止されるから、引き続き別の患者の歯磨診療を行う場合でも、雑菌等の他の患者への感染の懸念も生じることがない。
このように本実施形態の往診用診療装置1及び注水管路部材30によれば、要介護者に対して、在宅で、スケーラ(マイクロモータ)ハンドピース6による歯科診療的なケアを実施することができる上に、家庭的な歯の清掃も安全且つ快適に実施することができる。
尚、逆止弁機能部を第2のワンタッチジョイント33に代え第1のワンタッチジョイント31に設けても良い。この場合は、注水管路部材30の全体を各患者専用、或いは使い捨てとして用いることが望ましい。また、第1及び第2のワンタッチジョイント31、33の両方に逆止弁機能部を設けてもよく、これによって前記雑菌等の他の患者への感染がより確実に防止される。
次に、媒体ホース60と注水管路部材30との接続部の構造について図7を参照して説明する。媒体ホース60には、水管路62とスケーラハンドピース6に内蔵される超音波発振器(不図示)及び光源(図例ではLED)63用の電源線64が内装されている。その他、図示はしないが、超音波発振器を冷却するための空気管路も内装される。そして、媒体ホース60の先端部にはジョイント部61が設けられ、このジョイント部61は筒状のケーシング61aを有し、当該ケーシング61aには、これら作用媒体の供給部材の二次側(スケーラハンドピース6や注水管路部材30側)への接合部が内装されている。62aは、水管路用ソケットであり、64aは電線用ソケットである。このようなジョイント部61を介してスケーラハンドピース6を接続した場合は、水管路用ソケット62aを介してスケーラハンドピース6に内蔵される水管路6c(図2及び図6参照)と媒体ホース内の水管路62とが接合される。また、電線用ソケット64aを介してスケーラハンドピース6に内蔵される超音波発振器用電線(不図示)と媒体ホース60内の電源線64が接合される。さらに、スケーラハンドピース6に内蔵される光照射機能部としての導光体(不図示)の基部が前記LED63の出光部に対峙する。この導光体はスケーラハンドピース6の先端部に及んでおり、これによって診療対象歯への光照射が可能とされる。このようなジョイント部61を介した媒体ホース60とスケーラハンドピース6との接続構造は公知であるので、これ以上の説明は省略し、以下、媒体ホース60と注水管路部材30との接続構造について説明する。
注水管路部材30の第1のワンタッチジョイント31と、媒体ホース60における水管路用ソケット62aとは、雌雄の嵌合関係で且つOリング62aaを嵌合部に介して水密的に接合し得るよう構成されている。また、この嵌合関係による接合は双方の弾性変形を伴った噛み合い構造でなされ、手指で簡易に着脱可能とされる。そして、第1のワンタッチジョイント31は有底筒状のキャップ31aに内装されている。第1のワンタッチジョイント31に接続される注水管路部材30(基部側管路部32)は、キャップ31aの底部31aaに遊挿状態で貫装され、これによって、第1のワンタッチジョイント31がキャップ31aに対して抜き差し可能とされている。第1のワンタッチジョイント31をキャップ31aの開口部31abから少し抜き出し、前記水管路用ソケット62aに嵌合により接合した後、キャップ31aを前記媒体ホース60のケーシング61aに嵌装させる。これによって、注水管路部材30と媒体ホース60との接合がなされ、注水管路部材30の管路300と媒体ホース60の水管路62とが、水の流通が可能な状態で水密的に連通する(図7の2点鎖線部参照)。注水管路部材30の先端部には前記のように保持部35によって前記歯ブラシ40が保持され、先端注水口34aが歯ブラシ40のブラシ部40aの近傍に及ぶように位置付けられている。従って、注水管路部材30を給送される水は、先端注水口34aよりブラシ部40aに向け注水がなされ、ブラシ部40aによる歯の清掃時にこの注水を行うことにより、除去された汚物は口腔内に洗い流される。汚物を含む洗浄水は、バキュームシリンジ5により、逐次吸引除去され、患者はさして負担を感じることなく歯の清掃診療を受けることができる。
図8は、注水管路部材30と媒体ホース60との接続構造の別の例を示している。この例では、媒体ホース60のジョイント部61に内蔵されるLED63に光学的に接合されるグラスファイバー等からなる導光体(照射光発生用条体)100が注水管路部材30に沿って設けられている。図例では、導光体100は注水管路部材30に一体とされているが、両者は不図示の固定手段(例えば、紐やクリップ等)で互いに固定されていても良い。この導光体100の基端は受光端101とされ、当該受光端101を含む導光体100の基端部は差し込みプラグ102に一体に固着されている。導光体100の先端部は注水管路部材30の先端部と共に保持部35によって歯ブラシ40に一体とされ、該導光体100の先端は出光端103として歯ブラシ40のブラシ部40aの近傍に及ぶように構成されている。この例の場合も、導光体100は、注水管路部材30と共に、キャップ31aの底部31aaに遊挿状態で貫装され、これによって、差し込みプラグ102及び第1のワンタッチジョイント31がキャップ31aに対して抜き差し可能とされている。注水管路部材30の第1のワンタッチジョイント31を前記と同要領で媒体ホース60のジョイント部61に接合する際には、ジョイント部61のケーシング61aに形成された光学系接合凹所61abが差し込みプラグ102を受容し、受光端101が前記LED63に対峙するように構成される(図8の2点鎖線部参照)。従って、歯ブラシ40による歯の清掃診療の際、注水管路部材30からの歯面への注水と共に、前記出光端103から歯面への光照射がなし得、視野を明るくして的確な清掃診療を実施することができる。
図9は、注水管路部材30と媒体ホース60との接続構造のさらに別の例を示している。この例では、媒体ホース60のジョイント部61に内蔵されるLED63用の給電端子63aに電気的に接合される受電端子111を有するLED用電線(照射光発生用条体)112が保護チューブ110に内装された状態で注水管路部材30に沿って設けられている。図例では、保護チューブ110は注水管路部材30に一体とされているが、両者は不図示の固定手段(例えば、紐やクリップ等)で互いに固定されていても良い。保護チューブ110の先端部は注水管路部材30の先端部と共に保持部35によって歯ブラシ40に一体とされ、該導光体100の先端は出光端103として歯ブラシ40のブラシ部40aの近傍に及ぶように構成されている。保護チューブ110の基端部は差し込みプラグ113に一体に固着され、この差し込みプラグ113に前記受電端子111が固定されている。また、保護チューブ110の先端にはLED用電線112が電気的に結線されたLED用基板114が固着され、この基板114にLED115が取付けられている。
この例の場合も、保護チューブ110は、注水管路部材30と共に、キャップ31aの底部31aaに遊挿状態で貫装され、これによって、差し込みプラグ113及び第1のワンタッチジョイント31がキャップ31aに対して抜き差し可能とされている。注水管路部材30の第1のワンタッチジョイント31を前記と同要領で媒体ホース60のジョイント部61に接合する際には、媒体ホース60のジョイント部61内のLED63(図8参照)を取り外した上で、差し込みプラグ113が前記ジョイント部61の光学系接合凹所61abに挿入される。この時、受電端子111が前記給電端子63aに電気的に接続される。従って、歯ブラシ40による歯の清掃診療の際、注水管路部材30からの歯面への注水と共に、LED115から歯面の光照射がなし得、視野を明るくして的確な清掃診療を実施することができる。LED115として、ジョイント部61内のLED63を充当させることは可能で、この場合は、LED63をピンセット等で給電端子63aに対して簡易に着脱でき、且つ、前記LED用基板114に対しても簡易に着脱できるような構成とすることが望まれる。
尚、前記各実施形態では、インスツルメントハンガー15をマグネット及び磁性体からなる被吸着板により、蓋体3及び筐体2に着脱自在な構成にしているが、インスツルメントを係止し、保持できる強度を有していれば、フリクションを伴った雌雄の嵌合構造や、面ファスナー等を用いて着脱自在な構成とすることも可能である。また、インスツルメントハンガー15を蓋体3の上辺部3bの内側に回動自在に取付け、使用時にはインスツルメントハンガー15をその回動軸を支点として外側に回動させて使用するようにしても良い。また、往診用歯科診療装置の外観形状も図例のものに限らず、意匠性等を勘案して他の形状とすることももとより可能である。さらに、媒体ホース60と注水管路部材30との接続構造は、図7〜図9に示す例に限定されず、他の接続構造も採用可能である。