発明の詳細な説明
本発明は、気道上皮・上皮下内壁組織・鼻涙管上皮・涙点・眼球結膜・眼瞼結膜・耳管・中耳・副鼻腔などの障害細胞に対して抗炎症性を有する皮膜剤を塗布することで異種抗原の感染とアレルゲンの定着を同時に阻害しつつ、障害細胞の融解で起こるネクローシスを防ぎ、アポトーシスに導くことにより急性炎症発現を抑制する、呼吸器系及び耳鼻咽喉用に最適な生体抗炎症皮膜剤(以下、本剤と呼ぶ)に関する。
呼吸器系の粘膜上皮(気道粘膜・鼻腔粘膜)及び粘膜下の毛細血管、及び粘膜下層を含む内壁構組織に障害を与える外的要因は、主に異物吸引性擦過傷(摩擦性粘膜外傷)や熱傷、化学的因子等であり、それにより炎症反応が生じる結果、各種症状(鼻咽頭違和感、鼻咽頭痛、鼻閉感、鼻汁、鼻漏、咳、喘息発作)が発現する。そして炎症反応が繰り返し惹起することで自然軽快し難い炎症の増大と慢性化、及び異種抗原の感染と定着、更には細胞増殖性変が誘発される結果、炎症性疾患やアレルギー性疾患、癌等が引き起こされると考えられる。本発明は、障害組織・細胞の炎症拡大を抑制することで、免疫反応を最小限に留め自然治癒力を促すことで、異種抗原に対する予防性の高い生体抗炎症皮膜剤を提供することが可能となる。[従来技術と発明が解決しようとする課題]
従来の概念では、耳鼻咽喉領域及び気管から肺胞に及ぶ呼吸器系、及び鼻涙管を介して一部眼科領域に関連する炎症性疾患は、アレルギー性、細菌性、ウイルス性という具合に全く別の疾患として位置づけられており、治療方法も個別に考えられてきた。このため、疾患それぞれの諸症状を軽快することを目的とした研究開発と新薬開発、即ち抗アルギー薬、抗生物質、抗ウイルス薬、粘膜防御薬、去痰薬等として発展してきた経緯がある。
<従来技術とその問題点ついて以下の1から6にまとめた>
1.消毒薬・殺菌剤・抗菌剤:気道の感染予防としては、抗菌剤や消毒薬によるうがい用外用剤が一般的であるが、一部の菌種に対する一時的な抗菌性や消毒・殺菌効果があっても、消毒・殺菌・抗菌は概念自体に限界があり、全ての菌種の持続的壊滅、全滅はあり得ない。呼吸により、連続的に吸引される異物や刺激物質、また飲食により次々に加えられる外的刺激により、気道上皮を含む内壁障害部位がダメージを受け続ける結果、炎症反応が引き起され、炎症反応が一旦発現すると炎症の進行と拡大が抑制できないため、細菌やウイルス等による重大な全身性、感染性炎症疾患に発展してしまう。
消毒薬や抗菌薬の抗菌性は極めて限定的であり、一部の細菌に抗菌スペクトルがあっても、より幅広い菌種では効果がなく、ウイルスやマイコプラズマ、リケッチャ、真菌では効果が無いなど、抗菌薬の抗菌力は極めて曖昧である。また、安易な殺菌・消毒は、例えば、グラム陰性菌では菌体細胞壁の破壊により、リポ多糖のエンドドキシン(内毒素)を遊離させる結果となり、健常な細胞膜が障害を受ける要因ともなる。また既に炎症反応が生じている上皮を含む内壁の細胞に対しては確実に障害性を有し、逆に炎症反応を増大させる結果に繋がり、消毒薬や抗菌薬の予防的使用は、正常異常を問わず、上皮を含む内壁細胞に対して、いかなる条件があろうとも、常時使用は好ましくない。
咽頭炎、上気道炎、気管・気管支炎・肺炎や鼻炎・中耳炎・副鼻腔炎等の感染性炎症性疾患の発症前の状態は、細菌やウイルスの潜伏期間という表現が用いられているが、潜伏期間とは、細菌やウイルスの感染と増殖に適した気道上皮細胞が感染巣となり障害範囲の拡大が持続する時期でもあり、細胞、組織が急速に融解壊死、即ちネクローシスを生じた状態に相当する。具体的には障害組織の細胞膜破壊と障害を受けた細胞内小器官の破壊に伴い、脂質やタンパク質分解酵素の過剰分泌により組織融解が生じアラキドン酸カスケードの進行と無数の組織因子(第III因子)の遊離作用により、持続性炎症反応が生じ障害組織の破壊が進行状態にあり、一過性の抗菌・消毒・殺菌だけでは感染性炎症疾患の予防になり難い。
炎症反応は免疫応答の一つであるが、菌対白血球が一対一という条件で対峙することはあり得ない。従って毛細血管が拡張され浸出が生じると同時に血小板の遊走や血液凝固系の酵素トロンビンが作用し、フィブリンが産生されて障害細胞膜表面に防御シールドが張られ、血管内や細胞内への細菌やウイルスの侵入が阻止される。他方、障害細胞ではタンパク質、脂質等の分解酵素の作用でネクローシスが促される、障害細胞をいち早く健常細胞から遊離脱落させて除去しようとする、これらの炎症反応は、障害細胞が存在しているあいだ中持続するので免疫系はもとより、生体においても、明らかに負担が大きい。
仮に、障害細胞膜が防御シールドとなるフィブリンに覆われたとしても、該防御網は軟弱であり、例えば、膝の擦過創部に形成されたフィブリン網は、衣類で擦れるだけで容易に欠損し、再び、出血や周囲の腫脹を伴う炎症反応が繰り返えされ、外因的要因に極めて脆弱であり、保護膜とする従来の概念には、少なからず対立する概念を含む。1日2万回以上に及ぶ呼吸作用により鼻腔(鼻甲介)・咽頭・喉頭・喉頭蓋・声門・気管が受ける外的刺激は、タバコの炭素粒子、砂塵、PM2.5と呼称される浮遊粉塵、さらに喫煙による熱刺激等の要因が重なり、鼻粘膜・上咽頭後壁から声門・気管を経て肺胞に至る気道の管腔臓器内壁は、繰り返えし起こる外傷性刺激に対し、粘液作用だけでは防御できないので、持続性障害を受け易い事は、ランニング等の激しい運動の跡に鼻閉感や上咽頭,鼻腔内のヒリヒリした鈍い痛みや痒みが生ずる結果からも容易に推測できる。
従って外傷や熱変性、化学的障害等が要因となり炎応が惹起されて障害細胞の融解脱落がはじまり、炎症反応が急速に亢進すると考えられる。炎症反応が一度惹起すると、持続性外傷や熱傷、化学的ダメージが繰り返し加わることから炎症反応は拡大し内腔側に向かって腫脹し、上皮や粘膜下の細胞や組織崩壊は細菌や微生物、ウイルスの格好の食糧(基質)をもたらす感染門戸となる為、感染の準備状態(以下の模式実験例を参照)と考えられる。一度感染が起こればたちまち多数の細菌や微生物、ウイルスを増殖させる温床となる。
<本剤の使用による真菌感染システムの模式的実験例1>
真菌感染を受けた果実から、ヒト気道障害組織を感染果実に見立てて模式化、真菌と本剤の相互作用を実験例で説明する。みかんやスダチ等の冷凍障害、イチゴの保存障害等、表皮の傷や打撲による組織崩壊をきっかけとしてネクローシスが起こり、たちまち真核・多細胞生物である青カビ(Penicillium)や灰色カビ(Botrytis)等の真菌(糸状菌)の感染、増殖を受ける。ネクローシスにより分解酵素作用が生じ、障害上皮のみならず周囲の健康な上皮の細胞膜を侵食し分解が進み、防御能が著しく減少し、豊富な栄養源を流出させるため真菌感染(炎症反応)を拡大させる。果実は人の免疫システムとは異なるが、木の根から養分を得ている際には外皮の強度を保持することで感染を防いでいるが、カルシウムの減少やホウ酸欠乏の際にはトマトの尻腐れ病やブドウのアン入り果のように先端部等が壊死を生じるケースや、柿の炭疽病のように斑状の真菌感染を果実の外皮の障害部位に発生させる場合がある。果実では炎症反応は生じないが、ネクローシスにより細胞壁リン脂質やタンパク質が融解遊離することで感染を受けるプロセスは共通しており、本質的には、ヒトや動物、植物も多細胞・真核生物であるから、これらの現象を考える上で共通の認識として立脚できるはずである。真菌や細菌の感染を受けた果実の感染部位の動向を観察する為に、気道雰囲気に見立てた実験装置(写真1)に試料を静置し、本剤を超音波加湿器よりエアロゾルとして、雰囲気に一定量を放出して、障害部位に感染した真菌の動向と、ヒトの気道上皮障害組織へ及ぼす真菌や細菌の動向を模式的に重ね合わせて考察することにした。
[実施例1]による本剤処方液を、青カビ(Penicillium)に感染した夏みかん(写真2)を、エアロゾル雰囲気中に静置させた<実験例1>から、青カビ表面の色調や表層部の経時的変化、動向を観察した。栄養菌糸を有するカビの分生子は何らかの代謝障害、例えば、好気代謝を阻害されると、一時的に水分代謝が亢進されて、ブロッコリー状(コロニー形成)に群生する分生子頭の上に染み出して微細な水泡を形成するが、本剤の撥水被膜作用を受けて、より大きい水玉(表面張力による)へと変化し、変成した胞子嚢穂から分生胞子が少しずつ剥離脱落する様子が観察される。破壊された栄養分生子は、水分や脂肪酸、タンパク質、糖タンパク、糖質等が混じり合った一種の乳化物を形成すると考えられ、カビの好気代謝の強弱により放出される水分は、ブロッコリー状(コロニー形成)に群生する分生子頭の上に染み出して微細な水玉を形成するが、本剤の撥水被膜作用を受けて、より大きい水玉へと変化し、分生子胞子嚢穂から分生胞子が少しずつ剥離脱落(写真3)する様子が観察され、同時に感染を受けていない夏ミカン表皮上には、水玉の生成がないことが判る。
これらの現象は定かではないが、夏ミカン表皮の被感染部位と比較しても、本剤が、真菌の細胞・組織に何らかの障害を与えた事は、本剤以外の<比較対象実験例[0013]>からも推測できる。真菌の細胞壁成分は、細菌類の細胞壁と異なり、エルゴステロール、グルカンを主体とし、成分が異なるので、細胞壁崩壊に伴う発生臭、その変性の様子は官能試験では判定できない。しかし、脱落した胞子は、30日間・26℃、寒天培養しても再発芽することはない。
結果は(写真4)に示した。
<本剤以外を用いた、表面の水玉の大きさ、色調等の比較対象実験例2>
a)食塩濃度0.9%の生理食塩水をエアロゾルとして雰囲気に放出、暴露前後の青カビの様子(写真5)。
b)柿渋ポリフェノール(タンニン酸濃度5%水溶液)をエアロゾルとして雰囲気に放出、暴露前後の青カビの変化。(写真6)
c)1%ゼラチン水溶液をエアロゾルとして雰囲気に放出し暴露後の青カビの様子は極薄い表面の表皮で、本剤の実験例と同様、茶褐色の色調変化が起こったが水玉の形成はb)に類似し、青カビ表層部の剥離脱落は写真通り(写真4)。しかし、青カビに対して、ポリフェノール同様、ゼラチンが何らかの障害を与えたことがわかる。ゼラチンは本剤と良く馴染み、被膜効果に優れている点でも本発明に利用できる。
<実験条件>a)、b)、c)各エアロゾル吐出量0.1g/min、3時間連続放出、平均室温21℃。
<観察結果>本剤以外のエアロゾルでは、呼吸代謝障害により発生する水玉の大きさは小さく、且つ胞子の脱落は観られなかった。柿渋ポリフェノール、生理食塩水では、色調もコロニーの変化にも異常が認められず、水玉も小さいのでエアロゾルが及ぼす呼吸代謝への影響は少ないと考えられる。尚、比較例として本剤で生じる水玉(写真3)は大きく、水疱状と言い換えることができる。
<細菌の増殖変化の観察:本剤及び本剤と柿ポリフェノールの添加実験例3>
口腔や鼻腔から採取した培養細菌:黄色ブドウ球菌(通気性嫌気性菌)、肺炎桿菌、カンジダ菌、グラム陰性桿菌、グラム陰性双球菌、グラム陽性菌の寒天培地(写真11、12)を実験装置雰囲気(模式的気道)に静置させ、本剤のエアロゾルに3時間暴露後(写真13、14)の結果は、a)コロニーの色調が変わり硬化変成し、揮発性脂肪酸の酪酸、プロピオン酸等の短鎖脂肪酸、揮発性ステロイド類の生成により強烈な悪臭となって雰囲気に放出され、続いて排気口(模式的口腔)から外気に放出され凄まじい悪臭を周囲に放った。<培養条件>成人女性の鼻腔粘膜、及び口腔粘膜に常在する細菌類を滅菌綿棒(メインテップ)により採取し、標準寒天培地(アズワンサニスペックスタンプ培地2−3301−01)を用いて培養した。培地組成は、ペプトン・酵母エキス・ブドウ糖・寒天、pH7.0、条件25℃ 3週間、判定は外注検査機関に委託。なお酪酸、プロピオン酸の同定は北川式検知管による。
c)上記の培養菌体を、再度、本剤と柿渋ポリフェノール1.2%水溶液を個別に超音波装置で3時間、雰囲気にエアロゾルを放出した暴露写真(写真15、16)よる再度の細菌培養試験結果(72時間経過後)は以下の通りである。カンジダ1+から±、黄色ブドウ球菌が3+から1+に、肺炎桿菌が4+から1+に減少、顕微鏡検査ではグラム陽性菌が3+から−に、グラム陰性桿菌が3+から1+に、及びグラム陰性双球菌1+から−に、各々減少した。
<実験条件>主剤成分:塩化アルミニウム7%、CD1.2%、柿渋ポリフェノール(タンニン酸濃度5%水溶液)1.5%、各エアロゾル吐出量は、本剤が0.1g/min、柿渋ポリフェノール(タンニン酸濃度5%)0.5g/min、3時間連続吐出。試験ケース(写真9):内寸280×280×280(mm)排気口φ10×10個、外気吸入口φ40×1個、φ10×3個。平均室温19℃、なお実験に際し、エチルアルコール(除菌剤)等の成分は外乱となるので添加無し。
d)追加実験:c)の実験後、寒天培地コロニーに、塩化アルミニウム7%・β−CD5%の水溶液を点眼瓶で、0.03ml滴下後に、柿ポリフェノール液(タンニン酸濃度5%)を0.03ml 滴下、24時間経過後(写真17、18)、コロニーは硬化し増殖変化は確認されなかった。
<結果の考察>
真菌をはじめ細菌の呼吸代謝、細胞呼吸・電子伝達系に対する阻害作用、及び細菌コロニーのバリア構造破壊、変性作用、そして顕著な増殖抑制作用が確認され、しかも主剤による再度の暴露試験においても細菌の増殖変化、呼吸代謝(菌体と基質との接触面で起こる、一種の消化作用による強い蒸発現象)、すなわち、代謝活性を示す水分の垂直蒸発(イチゴの写真8、9)の天蓋の結露現象が観察されない事、さらに揮発性脂肪酸、揮発性ステロイドによる悪臭の再放出が大幅に減少し、臭いの官能試験からも殆んど感じられなかった。本剤が、細胞融解で起こる細胞内液に対する凝集、凝固作用を示す模式的実験例、[0039]〜[0041]の試験結果からも、好気呼吸代謝を伴わない対ウイルス、酸素耐性嫌気性菌による嫌気性菌に対しても模式的とは言え、蓋然性の高い根拠を示唆していると考察される。
一方、気道内感染を誘導する、ヒト呼吸器系の粘膜上皮、及び内壁構組織に障害を与える外的要因は、主に異物吸引性擦過傷や熱傷、化学的因子等が考えられ、それにより炎症反応が生じると前記したが、一例として足の趾間対面部の皮膚が摩擦により崩壊又は融解し続ける部位には、白癬菌やカンジダ真菌に感染し白癬症やカンジダ症と診断され、抗真菌薬の塗布が処置されるが、強い痛みと腫れを訴え再診する患者がいる。これは角質融解部位を清潔にする目的で擦って洗浄した処置が表皮細胞や真皮層への持続性障害となり、組織崩壊と融解が進む条件を与えたことに起因する。真菌は殺菌されても真皮に及ぶ炎症により組織破壊と融解に伴い一般細菌の感染が併発され、強い疼痛と全身の発熱を生じる炎症反応(蜂巣炎)を惹起するが、強い痛みの要因は、抗真菌薬自体も疼痛を増加させる刺激因子化したことによる。
2.抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬:抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬の効果はより限定的であり、重大な感染性炎症性疾患においては発症時のみの短期的使用が原則である。しかしこれまで新薬が発売されるたびに感染の有無が曖昧な状態での内服処方や点滴投与が行われているのが実状であり、この結果が耐性菌の増加に繋がったと考えられる。細菌、ウイルス、真菌においても、その特性上、菌体等の一部の機能に対する薬剤阻害作用に対しては変異原性または耐性能力をもっている。彼らにとっては子孫を残すための必須の能力であり、これらの薬剤の効力には必ず限界があり、既にその局面を迎えている。従って、感染する部位があっても、血中に蔓延させる程の拡大を阻止することができれば、共生しながら免疫系との闘いを緩衝、バランスさせることで、疾患の亢進を抑制する可能性が高い。
3.ステロイド系・非ステロイド系抗炎症薬:どちらも急性炎症反応を抑制する効果が優れており治療に欠かせないが、仮に血管系の重大な循環障害により創傷治癒が働かないような合併症を有する患者ではない健康な患者であっても障害を受けた上皮を含む内壁組織のネクローシス化の進行を抑制出来ないので細菌・ウイルス等の感染や、アレルゲンの障害細胞膜への定着による抗原性の発現を抑制できない。それ故、一度感染が拡大するともはや炎症を抑制しきれない。また感染性炎症発現時は、ステロイド系抗炎症薬では炎症反応を増幅悪化させてしまう弊害がある。またアレルギー反応への効果は不完全であり、障害組織や障害細胞の崩壊または融解により急速にネクローシス化が進行し、防御機能が無い状況下でこれらの薬剤を常用すれば逆に免疫力、即ち感染防御機能が低下し二次的な細菌やウイルス等の感染症を急速に進める危険性がある。例えば、非ステロイド系消炎薬は胃腸の粘膜障害作用の発現性が高く、中でも潰瘍形成は極めて深刻であり、炎症に伴う諸症状に対して安易な使用は危険性が大きい。
4.抗アレルギー薬:ヒスタミン・セロトニン・ロイコトリエン等の薬剤は、アレルギー性炎症症状を抑制する効果に優れているが、アレルゲンの細胞膜への定着を抑制できない。この為、効果に個人差が大きく、アレルゲンによるアレルギー性炎症の拡大を緩和するが、既に存在する炎症反応に対しては抑制できない。従って、花粉飛散の少ない1〜2月に吸気中の異物による摩擦外傷による急性鼻炎を伴った患者は「今年の花粉症は酷い」と訴える。この為、臨床では花粉症が発症する数か月前から内服を開始し、減感作療法等を行うことによりアレルギー性炎症が増幅しない手法を用いているが、鼻炎の炎症自体に効果が無いため改善を感じ難い。この為ステロイド系・非ステロイド系抗炎症薬との併用が行われているが、血中に薬物が常に循環することとなり、肝臓や腎臓への障害、眠気・口渇、全身の薬疹や蕁麻疹、前立腺肥大症状の悪化や緑内障の悪化等、逆に副作用やアレルギー反応を惹起するケースがあり、長期服用を避けたい薬物である。
5.粘膜防御剤:粘膜防御という概念の下で開発された薬剤類はあるが、例えばアンブロキソール塩酸塩(ムコソルバン等)は、去痰剤であり、粘液分泌を促進して膿痰等の粘性を下げ排出を容易にする作用であり、L−カルボシステイン(ムコダイン・ムコサール等)も去痰剤であり、粘液即ち多糖質のムチンの粘性を抑制し痰を出しやすくしており、気道上皮の線毛細胞の運動に負担を少なくすることで「痰の排泄」「鼻水の排泄」「中耳炎による貯留液の排泄」を促すと説明されている。中には荒れた副鼻腔粘膜や気管支粘膜の線毛細胞を修復して、粘膜の抵抗力を高めるとの記載もあるが、細胞を修復する根拠は見当たらず、絆創膏の効果により近似する。また粘液中の糖タンパク質中のフコース・シアル酸、即ち糖鎖を抑制することにより結果的に粘性を抑制し粘液を適正化することで去痰剤として使用されている。これらの薬剤は副作用が少ないが、消炎作用が無いため、単剤では鼻咽頭症状を顕著に緩和できない。
6.アレルゲン:細菌類全般をひとまとめに定義付ける異種抗原の概念として、アレルゲンの構造を調べると、例えばアレルギー性鼻炎や喘息のトリガーとなるアレルゲンはダニ類、アレルギーの原因となるアレルゲンにはダニや花粉の他にカビ(真菌)、犬や猫などのペットのフケ、ゴキブリやユスリカなどの昆虫類と言った多くの種類のアレルゲンが存在するが、これらのアレルゲン(抗原)はタンパク質として分離同定されている。また、鼻咽頭炎を悪化させ重篤な呼吸器感染症(肺炎等)、胃腸炎を引き起こすウイルスの粒子壁やプリオン、リケッチャ、クラミジアの細胞壁を成す物質はタンパク質であり、外膜を持たない真性細菌のグラム陽性菌はペプチドグリカンと称する糖ペプチドから成る細胞壁を有する。グラム陰性菌では細胞壁の周囲に外膜があり、らせん状繊維構造を成す鞭毛はフラジェリンタンパク質が重合したものである。さらに小さい線毛はピリンタンパク質が主な構成成分であると考えられている。
これらの異種抗原は、抗原の宿主となる細菌類や花粉等の構造の一部であり、生体時の状態とは異なることから、障害細胞の障害を進める刺激が与えられると白血球や組織球、マクロファージ、肥満細胞等の炎症細胞、リンパ球等の免疫細胞による闘いが生じて、死滅と分解、消化作用が進むことになり、結果として毒素源性の発現が予想される。これは細菌内毒素(エンドトキシン)についても同じと考えられ、炎症により浸出した白血球等により多数の細菌が一度に死滅、又は断片化された破片が多量、且つ高濃度である場合には、ニューキノロン系等の広域抗生物質の投与後であってもエンドトキシンショックが発現し、血漿交換を必要とする重篤な状態を引き起す。従って、異種抗原を成すタンパク質の特異性(触媒作用)を阻害できればアレルゲンの発症は緩和されると考えられる。
外鼻孔から鼻腔→咽頭→声門→気管→主気管支→細気管支→呼吸細気管支→終末細気管支→肺胞嚢→肺胞に至る気道粘膜は、一日28.000回以上に及ぶ呼吸により、PM2.5やタバコの煙(炭素粒子)等により、熱障害を始めとする微細な粉塵や異物の通過を原因とする外傷等、すなわち皮膚で言えば衣類の摩擦に匹敵するような摩擦性外傷を受けていると考えられる。粉塵や異物が通過し衝突し易い部位は、鼻甲介、鼻腔底後面、上咽頭後壁粘膜、声門付近、気管・気管支等の分岐部粘膜が該当すると考えられる。気管・気管支には線毛があり落下した異物を咳と共に排出する仕組みがあり、乾燥で線毛組織が欠損し粘膜が障害を受けているとされる電顕写真やシェーマを目にするが、主要因は乾燥ではなく粉麈や異物の通過による摩擦性外傷が損傷を与えていると仮定する方が、これまでの呼吸試験の結果からも合理性を見出すことができる。
上記に挙げた粉塵や異物が通過し、衝突することで生じた摩擦性粘膜外傷により、気道粘膜・鼻腔粘膜・粘膜下の毛細血管外膜の細胞膜のリン脂質二重膜が破損すると、組織因子(tissue factor:第III因子)が遊離し、リン脂質との複合体を形成し組織トロンボプラスチンが放出されることにより、粘膜下の毛細血管は拡張し炎症反応が惹起される。組織因子は、カルシウムイオン(第IV因子)と、血小板膜などのリン脂質とで、複合体[活性化第VII因子‐カルシウムイオン‐組織因子‐血小板膜リン脂質]を形成し、結果として第X因子が活性化され、凝固カスケードの進行によりフィブリン網が形成され、障害粘膜が皮膜される。
しかし、これらの炎症反応が一度惹起すると、障害粘膜や粘膜固有層並びに粘膜筋板・粘膜下層は血漿タンパク質を含む炎症性浸出液により少なからず浮腫を生じ内腔側に腫脹し隆起する。この為、仮に腫脹した障害粘膜がフィブリンで皮膜されていても、炎症性浸出により周囲の健常粘膜も腫脹し吸気中の粉塵や異物による打撃及び摩擦性外傷の直撃を繰り返し受けるので皮膜部位のみならずその辺縁の正常粘膜までも摩擦外傷を受けることになり、一度生じた炎症反応は簡単には消炎されず、呼吸するだけで自動的、且つ持続的に炎症反応が拡大することは、これまでの数々の臨床知見から容易に想像がつく。
また、例えば上咽頭痛等で感じることができる炎症症状フォーカスとなる炎症領域が一旦出現すると自然経過は稀であり、内科や耳鼻科を受診し投薬を受け抗生物質の錠剤や粘膜防御剤の処方を受けるが、改善効果が実感されず、結果的には免疫の抑制と抗炎症作用のあるステロイド系抗炎症薬、またはステロイド系抗炎症薬含有抗ヒスタミン薬等が処方されてはじめて症状が軽快すると考えられる。
これは抗生物質や粘膜防御剤に抗炎症作用がないためであり、粉塵や異物が同部を刺激した瞬間に、鼻の疼痛や、鼻甲介の腫脹による鼻閉感、声門や喉頭蓋の刺激による声のかすれ、咳反射等、気管・気管支粘膜の浮腫性炎症部位やその近傍の粘膜の刺激により炎症症状が誘発されて起こると考えられるからである。咳反射については異物や鼻水を追い出す目的という説もあるが、異物は排出されれば、吸い込む作用が、ほぼ同時に起るので、炎症部位への異物の刺激、或いは異物による直接的な粘膜組織の外傷により誘発されて起こると考えた方が吸入試験結果からも矛盾しない。従って咳反射も炎症症状の一つであると仮定するに至った。
作用機序
本発明の作用原理から、異種抗原を個別に考えるのではなく包括的に一纏めに異種抗原とした。即ち、細菌・ウイルス・リケッチャ・マイコプラズマ・プリオン・真菌・ダニ・ゴキブリ・犬・猫・ユスリカ・花粉等のタンパク質、及び糖タンパク質、リポ多糖、ペプチド、及びペプチドグリカン等の総称とした。
障害上皮細胞や障害組織にウイルスや細菌による感染、花粉等の異種抗原が定着しても、障害細胞の融解壊死(ネクローシス化)により発現する正常組織や上皮から障害組織や細胞を切り離す分解酵素作用が、アポトーシス化させることにより回避され、障害組織・細胞の融解が阻止され細胞膜(細胞骨格)、核を始めとする細胞内小器官、細胞質中のミネラル等が温存され、隣接する正常の細胞膜が分解酵素作用で二次的障害を受けるのを抑制することにより、感染拡大を阻止し、炎症反応と免疫応答を最小限に抑制する為の抗炎症性被膜を形成する。
吸入された粉塵や異物により外傷を受け、僅かな粘膜の構造の破損と微量な出血を伴う粘膜損傷により、破損した細胞膜や毛細血管の外膜のリン脂質二重膜の破損性断面から蛋白分解酵素作用で遊離した膜たんぱく質の組織因子が、リン脂質と複合体を形成して成す組織トロンボプラスチン(第III因子)となって遊離する結果、粘膜下の血管拡張が生じて凝固系カスケードが進行する。同時に浸出による炎症反応が惹起され、粘膜や粘膜下に炎症性浮腫を生じるため、破損細胞膜断面と流出した細胞質と炎症性浸出液で乳化状態にあるリン脂質等の複合脂質、揮発性の脂肪酸や揮発性ステロイド等の誘導脂質は塩化アルミニウムの解乳作用(ポリフェノールでは解乳しない)を受けてシクロデキストリン(以下CDと呼ぶ)に包接され、或いはゲストホール近傍に吸着されて凝固する作用により、タンパク質阻害機能も発現し、障害細胞からのリン脂質やタンパク質の破損細胞膜断面からの遊離と細胞質や細胞内小器官の細胞外漏出を抑制し、組織因子とリン脂質等の複合体形成が遮断される。
タンパク質が凝固作用を受けて、破損細胞断面の皮膜下に定着し遊離しないので凝固系カスケードの進行が阻害される。血管拡張刺激が抑制されることで浸出が止まり、気道粘膜及び粘膜下の炎症性浮腫を抑制する抗炎症皮膜が形成され、患部の炎症性浮腫が抑制される。炎症反応が抑制される結果、フィブリンの産生が減少し破損細胞膜のリン脂質と膜タンパク質の遊離、及び細胞内小器官と細胞質中の水分とミネラルの細胞外流出がブロックされるので、障害細胞はネクローシス化に陥ることなく緩やかなアポトーシス化に向かい、自然剥離又はマクロファージ等の頓食細胞により、次第に消化されて消失すると考えられる。これらの現象は完全なアポトーシスとは異なるが、免疫細胞による攻撃、破壊を受け難くし、障害細胞に顕著な延命効果を与えることは理論上からも当然考えられる。
抗炎症皮膜の形成により障害細胞をアポトーシスに導くことにより、脂質二重膜がネクローシス化せず、細胞膜リン脂質に結合しているアラキドン酸が遊離せずアラキドン酸カスケードの進行が阻害されてPGE2(プロスタグランジンE2)の産生が抑制される結果、固有な自覚的知覚を感じる鼻腔・咽頭・喉頭の疼痛が減少する。
抗炎症皮膜がアラキドン酸の遊離を抑制する為、当然PAF(血小板活性化因子)が阻害されるので気管支収縮が抑制され、同時にPGI2(プロスタサイクリン)の産生も抑制されるのでPGE2、PGI2、PAF等の相互作用による攣縮も抑制作用を受けて気管・気管支粘膜や粘膜下の炎症変化に伴う気管支狭窄の発現がブロックされる結果、喘息発作を抑制する作用が発現する。さらにアラキドン酸カスケードの進行も阻害されるので、LT(ロイコトリエン)の遊離も抑制され、抗アレルギー作用を有すると考えられる。
作用機序を示す模式的実験例
主剤となる、塩化アルミニウム化合物とCDと水とにより形成される皮膜、及びタンニン酸等のポリフェノールを加えることで形成される複合皮膜は機能的には抗炎症作用のある生体皮膜であり、本質的に絆創膏とは異なる働きを有する。その作用は、細胞質中や障害組織細胞の融解に伴う侵出液は、主に水、血液成分、無機塩類、タンパク質、脂質、糖脂質、ブドウ糖等であり、侵出液中の脂質は、他の成分と相互に混じり合った緩い乳化状態にあり、塩化アルミニウム化合物の解乳作用を受けなければ脂質はCDに包接されない。タンパク質不活性化の発現は、基質をはじめ、ミネラル等の補酵素類のブロック作用と、タンパク質自体の変成作用もあり、本剤の撥水皮膜作用で起こる脂質の分離により、脂質が包接作用を受けた結果、脂質以外の成分はCDの周辺に凝集し、ともにゲル化、ないしは凝固作用を受けて固定化され、さらに二重の撥水皮膜構造全体がバリアとなり不活性化が促されると考えられる。
生物化合物、及びその抽出物であるポリフェノール、ゼラチン等を加える意義は、皮膜の強化、障害組織の柔軟性保持と復元作用にあり、これらの作用は細胞のネクローシス化を阻害する上で主剤に対し有利に作用する。皮膚では摩擦を生じ易い部位に、本願主剤で消炎後、アポトーシスした表皮層と表皮細胞間基質(間質)の皮脂欠乏と水分の蒸発により乾燥化が進み、皮膚の張力、伸展により皸裂を生じピリピリとした疼痛を出現させることが少なくない。ポリフェノールを主剤に添加したもの、或いは主剤の塗布後にポリフェノールを重ね塗りすることで皮脂欠乏・乾燥・皸裂が生じなくなり、患者の治療満足度が大幅に向上したことから、消炎後のアポトーシスした粘膜や粘膜下の組織に、引張、捻れ、振動、打撲等のストレス緩衝作用、患部境界部位の引き剥がし強度の低下作用、組織の復元性、破損細胞間の接着性の確保がより可能となる。以下に、模式モデルの参考実験例を示す。
例えば手指のピーラーによる骨皮質を削ぐ切創に対し、伝達麻酔をした上で電気メスにより凝固止血した症例では、被覆したガーゼと創面の癒着が生じ難くなる。主剤だけではガーゼが硬化し柔軟性を失う欠点を生じるが、主剤に柿渋、五倍子、紅茶濃縮液等のポリフェノールを組み合わせて処置した群は、ガーゼに柔軟性が保持され、よりフィブリンの産生を抑制する効果も確認された。特にガーゼ剥離時の疼痛の出現頻度に関しては、ガーゼによる同一の安静状態下での比較結果は、ポリフェノール化合物を加えた群は明らかに優れていた。
本剤の患部への塗布方法として、うがいをはじめ、口腔ないしは鼻腔からスプレー及び点滴(点鼻投与)、外鼻腔、外耳孔から綿棒による塗布(スワブ法)、及び眼から点眼瓶にて点滴し眼球眼瞼の結膜、涙腺、類点、鼻涙管と鼻腔の炎症を沈静化する作用がある。間他、副鼻腔・耳管へ投与法としては副鼻腔洗浄用カテーテルによる使用や、副鼻腔では鼻腔からの直接穿刺による投与により、吹く鼻腔の炎症を沈静化作用がある。気道呼吸器系においては超音波加湿装置やネブライザー、粉末散布器、スプレー等でエアロゾル化し、呼吸により、楽に吸引できる。エアロゾルの散布方法として間欠的、乃至は連続的に、又は複数の超音波加湿器を使用して主剤とポリフェノールを同時に、又は個別に、或いは交互に同一雰囲気中に放出させて吸引する方法も可能であり、疾患に応じて適切、且つ効果的な塗布方法を考慮して選択するのが好ましい。
1)牛乳を細胞内液に見立て、本剤との相互作用を模式的に示す実験例を以下に示す。
<7日経過後のゲル体の性状と触指テスト>
a)牛乳3gと主剤3g. b)牛乳3gと主剤3gとポリフェノール1g.対照として、c)牛乳3gとポリフェノール1gだけを滴下して生じる、各ゲル体の経時変化、乾燥減量の観察、及び触指による物性変化の比較結果を以下に示す。
a)粘性の強いゲル形成、及び弾力性と復元性が有る.b)弾力性と復元性があるゲル形成はa)より優る.c)固く硬化した乾燥ゲル(最初に脂質の分離があり、脂質は経日的に蒸発減少し固化する)の形成。
<実験条件>平均室温19度の雰囲気に暴露。実験に使用した牛乳100g当たりの成分組成は、タンパク質3.4g、脂質3.9g、水分87gである。実験に使用した本剤は、水分100gに対して、塩化アルミニウム6水和物15g、β−CD7g;ポリフェノールとして柿渋5g(タンニン酸濃度5%)を使用した。
2)ヒト精液を障害細胞や破損細胞から遊離逸出する脂質・タンパク質や細胞内の小器官と細胞内液に見立て、本剤との相互作用を観察した。
0.1mlの精液を顕微鏡用プレパラートに滴下して、各凝固作用を観察する、a)本剤、b)本剤と柿ポリフェノール(タンニン酸濃度5%)、c)本剤と五倍子(タンニン酸濃度5%)、d)柿ポリフェノールのみ、e)五倍子のみ。
<実験結果>a)精子(細胞成分)、精漿等の成分は乳白色にゲル化する、b)精子、精漿等の成分は茶褐色に凝固、c)精子、精漿等の成分は乳白色に凝固、d)精子は凝固するが、精漿等の成分は分離して凝固しない、e)精子は凝固するが、精漿等の成分は分離して凝固しない。
3)尚、前立腺液で2)と同一の試験をした結果も類似の状態を示した、凝固物はタンパク質である。(参考)精液はpH7.3であった。
4)その他、グリシン、L−グルタミン酸、アラニン等の低分子アミノ酸;ブドウ糖、蔗糖、果糖等の単糖類、二糖類等の低分子糖類と、本剤及び、本剤とポリフェノールとの組合せにおいて凝固作用は認められないが、水分の蒸発、乾燥に伴い、凝集、吸着作用が認められた。2)、3)、4)、の実験に用いた本剤成分は、1)と同一である。
課題を解決する手段
上記課題は、塩化アルミニウム化合物・シクロデキストリン(以下CDと呼ぶ)と水とにより組成される主剤、及び水を除いた主剤微粉末を炎症部位又は炎症発現の起こり得る部位に対して塗布する手段とにより解決される。更に必要に応じて、主剤にポリフェノール、ゼラチン等の皮膜補助剤を適宜組成配合することにより解決される。
本発明の主剤であるアルミニウム化合物として好ましいものは、塩化アルミニウム6水和物、無水塩化アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、明礬、焼き明礬、塩基性塩化アルミニウム、塩基性塩化マグネシウム、高塩基性塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物が利用できる。通常、使用濃度は、0.5〜25重量%水溶液が好ましく、粉末剤においては、ベースとなる賦形剤粉末100g当たり、1〜25重量%で使用するのが好ましい。
本発明に使用できるCDは、α、β、γ型を単独乃至は混合した物も使用できるが、効果の面で大きな有意差がないので、ヒドロキシアルキル化したβ−CDは広く流通しているので安価で入手し易く、ハンドリングにも利点がある。
使用範囲は、水100gに対して1〜20重量%を溶解して使用するのが好ましい。
主剤を構成する水として、精製水、生理的食塩水等の調整水の他、体液水分(鼻汁、唾液、涙腺分泌液、気管及び気管支分泌液、血液、炎症性浸出液)で代替可能である。主剤に粉末剤を使用する場合は、体液水分を用いて、主剤の水が構成される。
皮膜作用とペプチドやタンパク質の不活化作用をもち、且つ本剤の抗炎症作用を促すポリフェノールは、実用的には柿渋タンニン酸、五倍子、没食子酸、紅茶、やウーロン茶等の発酵茶、及び緑茶の抽出濃縮液、コーヒー抽出濃縮液、リグニン等、更に、それらの混合物が適宜選択されるが、その他、アントシアニン、リコピン、ルチン、カロチン、イソフラボン等が利用できる。ポリフェノールではないがゼラチンも類似の作用効果をもつ。価格、及び色素に利用される物質は患部の色素沈着等の弊害を招く場合がある。ポリフェノールを加える利点は、主剤の皮膜の厚みと強靱性が増し、組織の柔軟性と復元作用が保持され、炎症の拡大抑制作用を補う複合皮膜が形成されること。細胞膜破損により融解脱落を促す細胞質(細胞内液)中のプロテアーゼ、リパーゼ、チトクロムPなどの分解酵素、及びタンパク質や基質の凝固作用を助長する働きがあり、さらに細胞骨格を柔軟に保ち続けることを可能とする。主剤である塩化アルミニウムとCDと水分(体液中の水分を含む)の組み合わせと、主剤にポリフェノールを組み合わせた群との比較において、後者が、よりフィブリンの産生を抑制する効果は臨床的にも確認されている。
本剤の患部への塗布手段、方法として、うがいをはじめ、口腔ないしは鼻腔からスプレーによる吸引及び点滴法、又は点眼瓶にて眼から点滴し涙管の炎症と鼻腔の炎症の沈静化を図る。スワブ法による塗布、副鼻腔洗浄用カテーテルによる投与、上顎洞穿刺による直接投与を行うことで、気道上皮、鼻涙上皮、涙嚢上皮、涙点、眼球結膜、眼瞼結膜、耳管、中耳、副鼻腔を含む内壁の障害組織に対して生体抗炎症皮膜を塗布形成する。気道呼吸器系においては超音波加湿装置やネブライザー、粉末散布器等でエアロゾル化させて呼吸により吸引して使用することができる。エアロゾルの散布方法として間欠的、乃至は連続的に、又は複数の超音波加湿器を使用して主剤とポリフェノールを同時に、又は個別に、或いは交互に同一雰囲気中に放出させて吸引する方法も可能であり、疾患の程度に応じて適切、且つ効果的な塗布方法を考慮しながら吸引し塗布することができる。必要に応じて、本発明の生体抗炎症皮膜剤と従来の治療薬を適宜、併用させて塗布することで治療効果の増進と治療期間の短縮につながり、薬剤使用量を大幅に減らす効果がある。併用薬剤として抗生物質等の抗菌薬、血管収縮剤、抗アレルギー薬、ステロイド等の抗炎症薬等の既存の薬剤が適宜選択される。
:持続性抗アレルギー薬内服頻度と鼻咽頭症状改善度(爽快感)の比較グラフを示す。
その他、保湿剤として、グリセリン等のアルコール類、プロピレングリコール等のグリコール類;糖アルコール類のソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール等;その他、糖類のキシロース、トレハロース、マンノース等が適宜選択される。主剤の防黴剤としてエチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類。主剤とポリフェノールの分離防止用キレート剤として、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、ピクリン酸等の有機酸、アルコール類、EDTA等を組み合わせて組成、配合することもできる。皮膜強化補助剤として、ゼラチン、アラビヤゴム、カゼイン等があるが、ゼラチン、アラビアガムは主剤に馴染み、特に障害部位に弾力性を賦与し被覆作用に優れているが、タンパク質や糖タンパク凝固作用のあるポリフェノールとの併用は分離等の問題を生じるので調整が必要となる。その他の被膜補助剤として、HPC、EC、CMC、MC、HEC、HPMC等のセルロース類が;セルロース以外ではトレハロースが選択される。清涼剤として、L−メントール、ペパーミント、リモネン等の清涼感の有る精油を予めCDに包接させたて極微量添加することもできる。
精製水100gに対し塩化アルミニウム6水和物7g、β−CD5gを混合撹拌して製造し呼吸器用生体抗炎症被膜剤を得た。
<吸引し易さテスト>該被膜剤を温水バスで30度に加温し、小型の超音波ディフューザに導入してエアロゾルを発生させ、吐出量:0.2g/min、連続的に5分間、深く吸引した結果、初回は咽せたが、次第に慣れて咽せることなく吸引することができた。
<実施例1の症例1>花粉症により止めどなく出るサラサラした鼻水の症状に対して、主剤のエアロゾルを3分程度、朝晩吐出量0.1g/min吸引を繰り返えすことで、より鼻水の出方が亢進する場合があるが、この原因は、風邪などの合併症により、患部の炎症の程度に左右されて誘発されて起こるが、吸引後、概ね7〜12時間経過後は、劇的に症状が改善され爽快感が感じられ、数日経過してもリバウンドは感じられなかった。
精製水500gに対し、塩化アルミニウム6水和物45.5g、α−CD 8g、五倍子10g、グリセリン20g、プロピレングリコール20g、70%エタノール10mlを加えて撹拌混合して淡黄色の生体抗炎症皮膜剤が得られた。
<吸引し易さテスト>該被膜剤を温水バスで30度に加温し、小型の超音波ディフューザに導入してエアロゾルを発生させ、吐出量:0.2g/min、連続的に3分間、大きく深呼吸した結果、初回は咽せたが、次第に慣れて咽せることなく吸引することができた。
精製水500gに対し、塩化アルミニウム6水和物45g、β−CD8g、柿渋液(タンニン酸濃度5%)20g、キサンタンガム1.5g、グリセリン20g、プロピレングリコール20g、水酸化ナトリウムの10%水溶液150g、無水エタノール10gを加えて混合撹拌し生体抗炎症被膜剤を得た。
本実施例は塩化アルミニウムの酸性度による患部刺激性を[実施例1]よりもさらに低刺激性が求められる場合、水酸化ナトリウムで中和し、キサンタンガムを含む凝集沈殿物(反応生成物、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウムを含む)を生成させて濾過することでpHを約3.9に調整した溶液に柿渋ポリフェノールを添加し撹拌混合して製造した。
<実施例3の本剤と対象剤との比較による気道・呼吸器系症状への症例1>
3名の被験者(うち男性2名、女性1名)により、市販の超音波加湿器をネブライザーとして代用し、1日2回(朝・寝る前)、1回3分吸引後、多数の人の行き交う混雑したショッピングモールで1時間滞在した結果と、平均6kmの登山または市街地を含むトレイルランニングを行った結果、診察室に外部塵埃を持ち込む患者60名を診察した結果を格比較した。
A群:ポリフェノール化合物だけを吸引した場合。
1.紅茶抽出液(50g乾燥茶葉を200gの熱水で3分間抽出濾過した溶液)
2.緑茶抽出液(50gの乾燥茶葉を200g熱水で3分間抽出濾過した溶液)
3.コーヒー抽出液(50gブラジルモカを200g熱水で3分間抽出濾過した溶液)
4.柿渋溶液(タンニン酸濃度3%)、
5.五倍子溶液(タンニン酸濃度3%)
B群:1)7%塩化アルミニウム、5%β−CDの溶液のみを吸引した場合。
2)7%塩化アルミニウム、5%α−CDの溶液のみを吸引した場合。
3)7%塩化アルミニウム、5%γ−CDの溶液のみを吸引した場合。
C群:7%塩化アルミニウム、5%β−CD、ポリフェノール化合物として以下の1〜4を添加した。
1.紅茶抽出液(紅茶50gを200gの熱水で5分間抽出濾過した溶液)
2.緑茶抽出液(緑茶50gを200gの熱水で5分間抽出濾過した溶液)
3.柿渋2%溶液
4.五倍子2%溶液
D群:0.9%生理的食塩水のみを吸引した場合。
それぞれ鼻・咽頭痛、鼻腔内の痒み(ムズムズ感、くしゃみが出そうな感覚)、鼻閉感(鼻詰まり)、咽頭違和感、咳、呼吸のしやすさについて官能試験結果を示した。
<官能試験結果>
A群:症状改善なし。
B群:独特の化学的な臭気がややあり吸入時の咽る感覚が強いが一時的であり、全ての症状を顕著に改善し、特に起床時の鼻閉感の顕著な改善、及びランニング・ウオォーキング時の息切れの軽快、筋力の持続力の増加、日曜日の混雑したショッピングモール滞在時と診察時の患者対面時の急な咳き込みが生じない効果が確認された。
C群:B群よりも幾分吸入時の刺激性が無く香りもよく違和感なく吸入ができ、全ての症状を顕著に改善し、特に起床時の鼻閉感の顕著な改善、及びランニング・ウオォーキング時の息切れの軽快、筋力の持続力の増加、日曜日の混雑したショッピングモール滞在時と診察時の患者対面時の急な咳き込みが生じない効果が確認された。緑茶抽出濃縮液の使用例ではやや効果が希薄であった。B群と比べて効果は同等であった。
D群:症状改善なし。尚、B群、C群において用いられたCDはα・β(ヒドロキシルβ−CDを含む)・γでの優位差は殆んど認められなかった。塩化アルミ化合物では、塩化アルミニウム及び無水塩化アルミニウム)>ヒドロキシクロリド>明礬(カリ明礬)>その他の塩化アルミニウム化合物。以上で有効性が確かめられた。C群に於いてのみ気道呼吸器系症状の改善作用について分かり易い効果が確かめられた。また、ハードな運動時の酸素必要量の増大時の呼吸苦または息切れの軽快作用及び筋力持続力の増加は、呼吸細気管支・終末細気管支・肺胞嚢・肺胞を含む呼吸器系管腔臓器の障害上皮細胞や内壁構造に対する塩化アルミニウム6水和物・CD・ポリフェノール化合物(紅茶抽出液、緑茶抽出液、2%柿渋液、2%五倍子液)の抗炎症性複合皮膜形成に伴い、細胞・組織の障害により損なわれていた機能が補足され、肺胞周囲毛細血管への酸素導入率が促進した可能性が考えられた。
運動後や風の強い日等で鼻・上咽頭痛とこれに伴う上咽頭痛や鼻汁・くしゃみ・鼻閉感の症状が強く出現する場合には、本剤の吸引と薬剤との併用、ベタメタゾン・d−クロルフェニラミンマレイン酸配合錠を就寝前に1錠、月に2〜3回、内服することにより、1ヵ月を通してより満足できる効果が得られた。
これまで、鼻炎症状が強い場合は、該薬剤の効果は感じられず、長期間の連日服用は、患者の心理的、経済的負担にもなっていた。本剤の吸引と薬剤を併用することで医療費の負担削減に極めて有効である。
<実施例3による症例3>平成元年9月頃、左鼻涙管膿瘍が出現し某大学病院の眼科を受診し涙管ブジーによる排膿と生理的食塩水による洗浄を受け一時軽快。レボフロキサシン点眼液0.5%の処方を受け1日3回点眼を3年間継続してきたが1ヶ月に一度、決まって膿瘍形成する為、1ヶ月に二度、大学病院を通院し毎回涙管ブジーによる排膿と生理的食塩水による洗浄を受けてきた。平成4年頃膿瘍形成がやや軽快した為、プラノプロフェン点眼液0.1%に処方薬に変更されたが、月に一度ないし二度の頻度で涙管炎症性閉塞が生じ、左下眼瞼内側の腫脹と閉塞感と目ヤニが出現し、左下眼瞼内側を押すと貯留した膿汁が流出するサイクルを繰り返していた。それ故、鼻涙管ステントの手術を同大学病院眼科医の勧めを契機に、平成22年9月、発明者が診察。本剤の細菌増殖抑制作用を説明した上で、抗生物質を使用しない治療法を開始した。生理食塩水10mlに本剤3ml加えた水溶液を点眼瓶で1日3回点眼、治療開始翌日より腫脹と閉塞感が80%以上減少し目ヤニが消失した。6ヶ月経過後も症状の再発は無く、涙管ブジーは不要となり、7年が経過するも状態は安定し、現在も、時々点眼は続けている。
[実施例3]による、持続性抗アレルギー薬内服頻度と鼻咽頭症状改善度(爽快感)の比較検討結果を添付グラフで示した。
<実験>スギ花粉症を有する被験者10人について、1月下旬から2月初旬に発症することの多い花粉症症状に対する治療法として数週間前からの毎日抗アレルギー薬を投与する治療法を基準とし、平成28年1月1日から平成28年3月31日までの3ヶ月間において、ステロイド系消炎薬配合旧世代抗ヒスタミン薬を投与した場合と、市販されている抗ヒスタミン薬配合点鼻薬を使用した場合、本願出願の各実施例を用いた場合、本願実施例と市販されている抗ヒスタミン薬配合点鼻薬を併用した場合で、通常毎日内服し続けてアレルギー症状を緩和する抗アレルギー薬の内服日数をどこまで削減できるかを調査し、棒グラフで示した。尚、コントロール群は生理的食塩水の吸入とした。抗アレルギー薬は、エピナスチン塩酸塩錠20mgを、用法通りに1日1回(朝)内服とした。抗アレルギー薬はレボセチリジン塩酸錠が新薬であるが、多くの抗アレルギー薬と比べて、症状改善の優位差は実感として感じられない為、複数の薬剤では実施せず、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩等の旧世代の即効性短時間型の抗アレルギー薬に対し、持続性抗アレルギー薬としてひとまとめにした。
また、花粉症による常時の鼻閉感・鼻汁・鼻咽頭違和感・くしゃみ・痒み、時に急性鼻咽頭炎が合併悪化し、鼻腔深部や上咽頭に痛みを伴う場合を含む諸症状が、生理的食塩水の吸入による症状の改善効果(コントロール:図1の▲8▼)を100とした際に、各被験者の主観で何%鼻腔咽頭が無感覚(爽快感)に近づいたかを10人の被験者から回答を得て、その平均値を客観的数値として花粉症症状改善度として結果を折れ線グラフ(図1)で表した。
●ベタメタゾンクd−クロルフェニラミンマレイン酸塩錠使用群(図1の▲1▼)
d−クロルフェニラミンマレイン酸塩は、旧世代の即効性短時間型の抗ヒスタミン薬であるが、脳の血液関門を通過するため、内服後の眠気・ぼんやり感が強い為、用法は1日1錠(夜)とした。結果は、77%でやや抗アレルギー薬の内服数が減少した。これは、ベタメタゾンが0.25mg配合されている為感染性の無いと考えられる鼻咽頭炎症状を効果的に抑制したことに起因する。この為、鼻咽頭症状改善度(爽快感)も35%と満足感が高かった。しかし、短時間作用であり、眠気の副作用が強い為1日2錠(朝・夕)の内服は日常生活に支障があり、ステロイド含有の為二次感染を生じた場合に使用できない等の制約がある。この為、結果として朝持続性抗アレルギー薬を内服し、夜ベタメタゾンd−クロルフェニラミンマレイン酸塩錠を内服すると効果が高いが、従来からの内服薬のみに頼る手法に変わりはなく抗アレルギー薬の内服を減少することは困難である。
●持続性抗アレルギー薬単独内服群(図1の▲2▼)
鼻咽頭症状改善度(爽快感)が70%、即ち3,0%しか改善せず不満や不安を感じる為毎日欠かさず飲まざるを得ないという実情であった。これは、持続性抗アレルギー薬に消炎作用が無い為であると、1)ベタメタゾンd−クロルフェニラミンマレイン酸塩錠の内服群の結果から結論付けられる。つまり、原因がアレルゲンでありヒスタミン等のケミカルメディエイターが症状の増悪に関与していることは事実だが、症状の発言はケミカルメディエイターによるものではなく、炎症反応の増減によるものであり黄砂やハウスダストを含む等異物性外傷等の増悪因子に対し無抵抗な為である。
●市販点鼻薬単独使用群(図1の▲3▼)
市販されている塩酸ナファゾリン・クロルフェニラミンマレイン酸塩・ベンザルコニウム塩化物を配合した点鼻薬を用いた。原理としては、塩酸ナファゾリンによる血管収縮作用により軽度血管収縮作用を示し鼻腔粘膜の腫脹が和らぎ鼻閉感が緩和され、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩による抗ヒスタミン作用とベンザルコニウム塩化物は逆性石鹸であるため抗菌作用がある為、花粉症症状と細菌性二次感染を抑制するが、実感的な効果持続時間は15分程度であり、用法に記載された1日6回、即ち4時間の効果持続は明らかに無かった。この為▲2▼の持続性抗アレルギー薬の内服が基準となることから、内服回数を削減出来なかったが、塩酸ナファゾリンが一過性に消炎様作用を生じる為、持続性抗アレルギー薬内服単独群よりも、鼻咽頭症状改善度(爽快感)が65%(35%改善)と幾分改善を感じたと言える。ただし、圧倒的な改善に繋がらない理由は、花粉症の炎症反応を効果的に抑制できていない為である。
●本願実施例使用群(図1の▲4▼・▲5▼・▲6▼・▲7▼)
▲4▼は実施例1吸入群、▲5▼は実施例2吸入群、▲6▼は実施例3吸入群、▲7▼は実施例1吸入+市販点鼻薬併用群であり、吸入の用法は、1日4回(朝、昼、4時、就寝前)で、1回吸入時間を3分とした。結果、抗アレルギー薬の内服頻度が、▲4▼で5.5%、▲5で6.6%、▲6▼で5.2%、▲7▼で5.0%であり、優位な差なく顕著な内服頻度の減少が得られた。また、鼻咽頭症状改善度(爽快感)においても、内服薬の服用頻度に比例して▲4▼で10%、▲5▼で12%、▲6▼で9%、▲7▼で8%と顕著な爽快感が得られた。また、柿渋液や五倍子液等のポリフェノール化合物を含む場合と含まない場合とにおいて鼻咽頭症状改善度(爽快感)に優位差は認められなかったが、幾分ポリフェノールを含まない▲6▼の方がより効果が高い結果となった。▲7▼では市販点鼻薬を併用しているが、優位差は無いが幾分点鼻をしない場合よりも鼻咽頭症状改善度(爽快感)が高い結果となった。
精製水100gに対して、7%塩化アルミニウム6水和物・5%CD水溶液の吸入は花粉症症状の改善にとって極めて効果的であり持続性も高い。しかし、1日4回の吸入は必ずしも現実的ではない為、(図1)に記載は無いが、3〜4時間間隔で7%塩化アルミニウム6水和物・5%CD水溶液の点鼻(左右鼻孔より各4滴)を実施したところ、この条件であれば吸入は1日1〜2回(朝または朝と就寝前)で十分な効果が得られた。
精製水500gに対して塩化アルミニウム6水和物40g、β−CD15g、五倍子粉末(タンニン酸濃度99%)10g、グリセリン20g、プロピレングリコール20g、無水エタノール10gを溶解させ、水酸化ナトリウム10%水溶液を加えて撹拌混合し、最後にキサンタンガム1gを入れて撹拌し沈殿物を濾過除去して淡い黄色の溶液が得られた。
<実施例4による症例1>
急性上気道炎(急性鼻咽頭炎):40代男性。数日前から徐々に上咽頭及び鼻腔深部に疼痛が増大し、咳も出現した。この為、ポビドンヨードによる1日3回のうがいと、ロキソプロフェンナトリウム錠60mgを1日2回(朝・夕)、デキストルメトルファン臭化水素酸塩水和物30mg(1錠15mgを1回2錠、1日3回)3日間内服したが、鼻咽頭痛と咳が軽減しない為、内服を中止し、実施例1を超音波加湿器により1日3回(朝・昼・夜)3日間行った。1回目投与後、鼻腔深下部と上咽頭に自覚できる刺激感が生じた後、強い咳が停止。1時間後鼻腔深下部と上咽頭の疼痛が顕著に減少し4時間効果が持続後、軽い咳と鼻腔深下部と上咽頭の軽度疼痛が出現したが、3日間の吸入により咳と疼痛は完全に消失した。鼻腔深下部と上咽頭の扁平上皮細胞の障害細胞膜断面や細胞内小器官からのリン脂質やタンパク質の遊離が進行し、障害組織がネクローシス化している為、従来の消毒とNSAIDによる消炎と中枢性鎮咳薬により一過性の消炎と鎮咳効果があっても、薬剤の血中濃度が減少し、吸気中異物が患部を刺激することにより炎症反応が再燃する為、鼻腔深下部と上咽頭の疼痛や咳のぶり返しが生じる。しかし強い炎症反応は抑制されている為、実施例1による抗炎症皮膜剤の使用により、ネクローシス化即ち炎症が持続する過程がブロックされ急性上気道炎とこれに伴う鼻腔深下部と上咽頭の疼痛と咳が治癒した。
精製水500gに対して塩化アルミニウム6水和物40g、β−CD20g、五倍子粉末(タンニン酸濃度99%)20g,グリセリン20g、プロピレングリコール20g、無水エタノール10gを溶解させ水酸化ナトリウム10%水溶液を加えて撹拌し沈殿物を濾過除去して、pH3.7淡い黄色の溶液が得られた。
<実施例5による症例1>
花粉症、アレルギー性鼻炎を伴う60代女性。通年性のアレルギー性鼻炎があり、平成28年2月初旬頃よりスギ花粉症が発症し、鼻汁・鼻閉感・くしゃみ・目の痒みが出現した。この為、例年エピナスチン塩酸塩錠20mg(1日1回)やオロパタジン塩酸塩錠5mg(1日2回朝・夜)、レボセチリジン塩酸塩錠5mg(1日1回夜)等の抗アレルギー薬を毎日内服し、トラニラスト点眼液(1日3回点眼)を毎日行ってきたが、症状改善が得られ難い為、実施例1の処方により、超音波加湿器により1回3分(1日2回)の吸入を行った。吸入初回は鼻粘膜の炎症部位を一過性に刺激し鼻粘膜の血管収縮による鼻閉感と鼻腔粘膜に刺激性疼痛が出現する為、市販されている塩酸ナファゾリン・d−クロルフェニラミンマレイン酸塩・ベンザルコニウム塩化物を主剤とする点鼻薬を左右の鼻孔より1回1噴霧を行った。抗炎症皮膜が形成されると、炎症性浮腫性鼻粘膜から水分が流出し蒸散する為、一過性に鼻汁に類似したサラサラとした水分が漏出し、鼻汁が止まらない様な錯覚を覚えるが10分程で停止し20分後には鼻汁・鼻閉感・くしゃみが消失し鼻が通り爽快感が出現し効果は4時間持続した。その後4時間間隔で吸入を行うことにより症状改善状態が保持され抗アレルギー薬の内服無しで良好な効果を保持できた。花粉症が悪化する場合、微熱や悪寒、反応性リンパ節腫脹と関連する頭痛や首・肩の抹消神経痛が併発することがあるがこれらの症状は皆無であった。
月に2〜3回、運動後や風の強い日等で鼻・上咽頭痛とこれに伴う上咽頭痛や鼻汁・くしゃみ・鼻閉感の症状が強く出現する場合には、ベタメタゾン・d−クロルフェニラミンマレイン酸塩錠を就寝前に1錠のみを内服することにより、1ヵ月を通してより満足できる効果が得られた。尚、抗アレルギー薬単独では炎症反応が抑制されない為、鼻炎症状が強い場合は効果を感じられず、長期間連日服用し続ける為患者の心理的のも経済的にも大きな負担にもなっていた。実施例1を超音波加湿器による吸入は患者の服用期間、全身への負担、及び医療費負担削減に極めて有効である。
ベース粉末100gに、塩化アルミニウム6水和物粉末7g、粉末β−CD5g、紅茶抽出濃縮水溶液を20%に濃縮した嘖霧乾燥粉末5g、トレハロース5gをボールミルで30分間粉砕混合いたものを200メッシュパスの微粉末を得た。ベース微粉末は炭酸マグネシウム45g、酸化マグネシウム45g、無水ケイ酸微粉末10gの組成物とした。
<吸引し易さテスト>得られた微粉末を散布器から飛散させたエアロゾルを鼻から吸引したが、何ら咽せる事も無く容易に吸引することができた。
精製水1000gに対して塩化アルミニウム6水和物80g、γ−CD50g、柿渋(タンニン酸濃度5%)20g、炭酸マグネシウム40g、酸化マグネシウム40g,無水ケイ酸5gを撹拌混合させ、ディスク式噴霧乾燥装置で平均粒子径90μmのほぼ球状の微粉末を得た。乾燥条件として、ディスクアトマイザー回転数25,000rpm、乾燥温度135℃、出口温度60℃に設定した。
得られた微粉末を散布器から飛散させたエアロゾルを鼻及び口から吸引したが、何ら咽せる事も無く容易に吸引することができた。
精製水100gに対して、7%塩化アルミニウム6水和物・5%CD水溶液の吸入は花粉症症状の改善にとって極めて効果的であり持続性も高い。しかし、1日4回の吸入は必ずしも現実的ではない為、(図1)に記載は無いが、3〜4時間間隔で7%塩化アルミニウム6水和物・5%CD水溶液の点鼻(左右鼻孔より各4滴)を実施したところ、この条件であれば吸入は1日1〜2回(朝または朝と就寝前)で十分な効果が得られた。
副作用については、7%塩化アルミニウム6水和物・5%CD水溶液の吸入と点鼻のどちらにおいても基本的に副作用は無いが、鼻咽頭には吸入や点鼻の際に人が自覚的には感じていないが吸入異物の吸引による擦過性外傷等により既に炎症反応が存在している為、皮膚で言えば擦り傷に7%塩化アルミニウム6水和物・5%CD水溶液を塗布した場合と同様に一過性の刺激感(ヒリヒリとしみる感覚)があり、既に存在している炎症が強ければ刺激感は大きくなり、吸入または点鼻の初期では一定時間、即ち15分から12時間程度刺激感が持続する場合がある。これは鼻咽頭の炎症反応の抑制に要する時間であり、その後は一過性の炎症反応の増悪が無ければ何度吸入や点鼻をしても刺激感は皆無となる。また、吸入・点鼻後に15分程度の一過性鼻閉感が生じる場合が多いが、待っていれば自然に鼻閉感は消失し顕著な花粉症症状が全般的に改善し爽快感が得られる。この待ち時間が気になる場合には、市販点鼻薬を併用することで市販点鼻薬中の特にナファゾリン塩化物による血管収縮作用の実質的な効果持続時間が奏功し、一過性鼻閉感も消失する為7)のようにより自然な鼻咽頭症状改善度(爽快感)が得られ、幾分爽快感がやや増加したと言える。
発明の効果
一般的にも、医薬業界においても、持続性抗アレルギー薬の副作用は少ないと考えられているが、毎年または通年性に鼻咽頭炎症状を繰り返す患者にとって内服により全身の血流に薬剤が循環することは心理的不安要素が大であり、社会保障費に占める医療費の割合も大きく、国の医療費負担が年々拡大しているのも事実である。それ故、7%塩化アルミニウム6水和物・5%CD水溶液の吸入や点鼻は自宅で簡単に行うことができ、医療機関に足を運ぶことなく花粉症症状や通年性鼻咽頭炎症が確実に抑制され、且つ全身への影響が無いので、これからの耳鼻咽喉科の治療においても、また常備薬としても極めて時代に適した手段・方法であると提唱したい。
炎症性浮腫を生じた粘膜・粘膜下を消炎し、炎症性浮腫により隆起した浮腫辺縁の健常粘膜を平坦化して皮膜することにより、粉塵や異物による物理、化学的刺激により生じる炎症反応の持続と拡大が抑制される結果、鼻の痛み・鼻閉症状・咽頭痛・声かすれ・咳症状が顕著に改善される好効果が得られる。
生体抗炎症性皮膜を形成する意義は、健常な上皮や粘膜上皮にも作用し、また未だ感染やアレルゲン刺激を受けていない障害細胞、障害組織の拡大進行を防ぎ、障害組織、障害細胞への細菌やウイルス等の感染と頓食、細菌やウイルスの不活化、及び花粉定着による細胞障害性刺激に伴う炎症反応と免疫応答の拡大を最小限に留めることであり、障害組織、細胞の融解による組織因子を抑制することができるから、血管拡張指令となる自律神経刺激が低減され、炎症反応は回避抑制される。
それ故、過剰な炎症性浸出に伴う白血球等の炎症細胞が障害組織内外に遊走するのを避けることが可能となり、異種抗原性を持つ細菌、ウイルス、花粉等が着床しても、免疫系との戦争を最小限に抑制することが可能となる。即ち、細菌、ウイルス、花粉等が、白血球・組織球・肥満細胞・マクロファージ等の炎症細胞、リンパ球等の免疫細胞による頓食や攻撃を受けることで起こる異種抗原の急速な産生抑制に繋がり、ある意味、感染を許容させ、餌を与えても活動領域の拡大を抑え、毒性のある細菌、ウイルス、花粉等と共存状態をバランスにさせることで、逆に感染性炎症性疾患やアレルギー性炎症性疾患の発症を食止める手法にメリット有りと仮定するに至った。従って、防腐性以外には、殺菌剤は基本的に不要であり、異種生物の縄張りの拡大と、それに伴う縄張り争いによる毒素産生が少ない分、従来の抗生物質や抗アレルギー薬の効果効率が増し、対薬剤使用量を極限にまで低減できるメリットは大である。
なお、鼻汁については、寒冷刺激、温熱刺激、刺激物や異物の吸引と鼻粘膜との接触による自律神経刺激が生じ分泌が亢進するため、条件により改善効果が判り難いので評価の対象に加えなかった。
産業状の利用可能性
未病治療薬でもある本剤は、アレルギー性鼻炎、エボラ出血熱、日和見感染症によるカリニ肺炎や呼吸器カンジダ症、急性鼻咽喉頭炎、副鼻腔炎(蓄膿症)、耳管炎・中耳炎・急性気管・気管支炎、肺炎、COPD、AOPD、急性・慢性胃腸炎、過敏性腸症候群、裂肛・内痔核の炎症反応を継続的に防ぎ薬剤投与期間の短縮、薬剤数の削減に繋がり、結果的には骨格が弱く崩れやすい肺癌や消化器癌・潰瘍性大腸炎・クローン氏病の発症や増悪の抑制、更には細菌兵器による重篤な感染症状を回避する手段となる可能性も考えられ、現在の治療薬と併用することにより、治療期間の大幅な短縮、治療薬の効果の促進、並びに接触性皮膚炎を始めとして、薬剤の副作用は、健常な角質層のバリア上では発現されず、既に表皮の障害部位が存在し炎症反応が惹起している部位に対してのみ発現することから、薬剤の副作用低減にも最適であり、これまでの数々の臨床結果から、上皮膚では、ステロイド外用剤の使用期間と使用頻度削減効果が確認されている、その結果、血管拡張や表皮の菲薄化、血管拡張を抑制し赤ら顔や知覚過敏を抑制する効果も処方確認されている。
本剤は、破損細胞からの生体細胞膜のリン脂質等の脂質とタンパク質の遊離抑制する作用と、遊離したリン脂質とタンパク質が浸出液や漏出した細胞内液と混じることによる乳化を解乳し、リン脂質(脂質)とタンパク質の複合体の形成を阻止する作用を有することから、酒石酸やEDTA等のキレート剤と併用し血管内で作用させることにより、リン脂質抗体症候群を初めとする難治性の膠原病や、乳化物と考えられる抗原抗体複合体を形成し、血管系の持続性炎症に起因する血管炎、心内膜炎、並びに抹消血管障害を惹起する糖尿病と、その合併症(糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症)、血管内膜の破損部位に血小板等と共にLDL等のコレステロールの沈着で起こる動脈硬化や、解離性大動脈瘤の発症抑制及び軽快作用等、本剤との併用で現在の治療薬の効果を高める可能性がある。
上記に加えて、今後、動物試験を通じて、膣注入式の避妊薬とした新用途も考えられる。
ウイルス感染症、取り分け、公共施設、病室等の雰囲気に本剤を超音波加湿器などの安価な機器を用いて、エアロゾルを連続的に放出することで、インフルエンザ、エボラウイルス感染症等の感染予防、アウトブレイクを阻止できる蓋然性が高い。
<参考文献>皮膚から骨に至る抗炎症作用効果は、出願人による、特許第5824704号、特許第5895244号、特許第5796728号、特願2015−16976、特願2015−196235に記載されている。