本明細書に記載される内蔵式の核酸分析パウチは、抗原および核酸配列などの様々な生物学的物質の存在に関して、例えば単一の閉システム内で、サンプルを検定するのに使用され得る。一実施形態では、パウチは複数の病原体に関して検定するのに使用される。例えば、任意に使い捨てのパウチ内で、核酸の調製、多量の一次多重PCR、一次増幅生成物の希釈、および二次PCRを含む様々なステップが行われ、リアルタイム検出および/または融解曲線分析などの増幅後分析で完結してもよい。しかし、病原体検出は1つの例示的な用途であり、パウチは、他の核酸分析に、またはペプチド、毒素、および小分子を含むがそれらに限定されない他の物質の検出に使用されてもよいことが理解される。さらに、様々なステップが本発明のパウチ内で行われてもよく、特定の用途に対してステップの1つまたは複数が省略されてもよく、パウチの構成が適宜変更されてもよいことが理解される。
PCRは本明細書の実施例で使用される増幅方法であるが、プライマーを使用する任意の増幅方法が適切なことがあることが理解される。かかる適切な手順としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ストランド置換増幅(SDA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、カスケードローリングサークル増幅(CRCA)、ループ介在(loop-mediated)等温DNA増幅(LAMP)、等温キメラプライマー核酸増幅(ICAN)、標的ベースのヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、転写介在増幅(TMA)などが挙げられる。したがって、PCRという用語が使用されるとき、他の代替の増幅方法を含むものと理解すべきである。プロトコルの適宜の調節を要することがあることが理解される。
図1は、実例となる内蔵式の核酸分析パウチ10を示す。パウチ10は、細胞溶解域20、核酸調製域40、第一段階増幅域60、および第二段階増幅域80を有する。核酸を含有するサンプルは、サンプル注入ポート12を介してパウチ10に導入される。パウチ10は、様々なサイズの様々なチャネルおよびブリスタを備え、サンプルがシステムを通って流れるように配列される。サンプルは、様々な域を通り抜け、適宜処理される。
サンプル処理は、パウチ10内に位置する様々なブリスタで生じる。サンプルを処理域内および処理域間で移動させる、様々なチャネルが設けられる一方で、流体および試薬をサンプルに送達する、またはかかる流体および試薬をサンプルから除去する、他のチャネルが設けられる。パウチ10内の液体は、例えば、後述するように、空気圧などの圧力によってブリスタ間を移動させられるが、パウチ内で材料を移動させる他の方法が想到される。
他の容器が使用されてもよいが、例えば、パウチ10は、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ならびに押出し、プラズマ蒸着、および積層などの当該分野で知られている任意のプロセスによって作ることができる上記材料の混合物など、可撓性プラスチックフィルムまたは他の可撓性材料の二層から形成される。アルミニウム積層体を有する金属箔またはプラスチックも使用されてもよい。互いに封止してブリスタおよびチャネルを形成することができる、他のバリア材料が当該分野において知られている。プラスチックフィルムが使用される場合、例えばヒートシールによって、層を互いに結合させてもよい。例えば、材料は低い核酸結合能力を有する。
蛍光モニタリングを用いる実施形態の場合、動作波長における吸光度および自己蛍光が十分に低いプラスチックフィルムが好ましい。かかる材料は、異なるプラスチック、異なる可塑剤、および合成比、ならびにフィルムの異なる厚さを試みることによって特定することができる。アルミニウムまたは他の箔の積層体を有するプラスチックの場合、蛍光検出デバイスによって読み取るべきパウチの部分を、箔を有さないままにすることができる。例えば、パウチ10の第二段階増幅域80のブリスタ82で蛍光がモニタリングされる場合、ブリスタ82における一層または両方の層が箔を有さないままにされる。PCRの例では、フィルム積層体は、厚さ約0.0048インチ(0.1219mm)のポリエステル(マイラー(Mylar)、デュポン社(Dupont)、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington DE))と、厚さ0.001〜0.003インチ(0.025〜0.076mm)のポリプロピレンフィルムとから成る。例えば、パウチ10は、入射光の約80%〜90%を透過させることができる透明材料で作られる。
実施形態では、材料は、空気圧などの圧力をブリスタおよびチャネルに印加することによって、ブリスタ間を移動させられる。したがって、空気圧を用いる実施形態では、パウチ材料は、例えば、空気圧が所望の効果を有し得るのに十分に可撓性である。「可撓性」という用語は、本明細書では、パウチの材料の物理的特性を説明するのに使用される。「可撓性」という用語は、本明細書では、割れ、破断、ひび割れなどを伴うことなく、本明細書で使用される空気圧のレベルによって容易に変形可能であるものとして定義される。例えば、サラン(商標)ラップおよびジップロック(登録商標)バッグなどの薄いプラスチックシート、ならびにアルミ箔などの薄い金属箔が可撓性である。しかし、空気圧を用いる実施形態であっても、ブリスタおよびチャネルの特定の領域のみが可撓性であれば良い。さらに、ブリスタおよびチャネルが容易に変形可能である限り、ブリスタおよびチャネルの片面のみが可撓性であれば良い。パウチ10の他の領域は、剛性材料で作られてもよく、または合成材料で補強されてもよい。
例えば、プラスチックフィルムがパウチ10に使用される。アルミニウムなどの金属、または他の適切な材料のシートが、圧延されるかまたは別の方法で切断されて、隆起した表面のパターンを有するダイが作成されてもよい。例えば195℃の動作温度に調整された、空気圧プレス(例えば、A−5302−PDS、ジェーンズビル・ツール社(Janesville Tool Inc.)、ウィスコンシン州ミルトン(Milton WI))に嵌合させると、空気圧プレスは印刷機のように働いて、ダイがフィルムに接触する場所でのみ、プラスチックフィルムの封止表面を融解させる。PCRプライマー(例えば、フィルム上に点在させ乾燥させる)、抗原結合基質(antigen binding substrates)、磁性ビーズ、およびケイ酸ジルコニウムビーズなどの様々な構成成分が、パウチ10が形成される際に様々なブリスタ内部に封止されてもよい。サンプル処理用の試薬を、封止に先立って、集合的にまたは別々にフィルム上に点在させることができる。一実施形態では、ヌクレオチド三リン酸(NTP)を、ポリメラーゼおよびプライマーとは別個にフィルム上に点在させて、反応が水性サンプルによって水和されるまでポリメラーゼの活性を本質的に排除する。水性サンプルを水和に先立って加熱している場合、これによって、真のホットスタートPCRのための条件が作成され、高価なホットスタートのための化学成分の必要性が低減または排除される。この個別のスポッティングについては、図5bを参照してさらに後述するが、かかるスポッティングは、本明細書で考察される実施形態のいずれとともに使用されてもよいことが理解される。
パウチ10内の材料を移動させるのに空気圧が使用されるとき、一実施形態では、「ブラダー」が用いられてもよい。一部分が図2aに示されるブラダーアセンブリ710は、パウチを作るプロセスに類似したプロセスで製造されてもよいが、ブラダーアセンブリ710の個々のブラダーは、ブラダーアセンブリ710内の個々のブラダーを圧縮ガス源によって加圧することを可能にする、空気圧管継手(例えば、管継手724a)を含む。ブラダーアセンブリは圧縮ガスに晒され、複数回使用されることがあるので、ブラダーアセンブリは、パウチよりも強靭なまたは厚い材料から作られてもよい。あるいは、ブラダーは、ガスケット、シール、弁、およびピストンを用いて互いに締結される一連のプレートから形成されてもよい。他の構成も本発明の範囲内である。
パウチ10が機器に入れられると、空気圧ブラダーアセンブリ710は、パウチ10の1つの面に押し付けられるので、特定のブラダーを膨張させた場合、圧力によって液体がパウチ10の対応するブリスタから押し出される。パウチ10のブリスタの多くに対応する空気圧ブラダーに加えて、ブラダーアセンブリは、ブラダーまたは空気圧駆動式のピストンなど、パウチ10の様々なチャネルに対応する追加の空気圧アクチュエータを有してもよい。活性化されると、これらの追加の空気圧アクチュエータはピンチ弁を形成して、対応するチャネルをインチオフし、閉止する。パウチ10の特定のブリスタ内に液体を拘束するため、ピンチ弁空気圧アクチュエータを、ブリスタとの間に通じるチャネルの上で膨張させ、それによってアクチュエータがピンチ弁として機能してチャネルを狭窄して閉鎖する。例えば、異なるブリスタ内にある2つの液体容量を混合するため、接続チャネルを封止しているピンチ弁空気圧アクチュエータが減圧され、ブリスタの上にある空気圧ブラダーが代わりに加圧されて、液体がブリスタを接続するチャネルを通って往復して中の液体が混合される。ピンチ弁空気圧アクチュエータは、様々な形状およびサイズであってもよく、一度に2つ以上のチャネルをピンチオフするように構成されてもよい。かかる実例となるピンチ弁は、ピンチ弁16として図1に示されており、すべての注入ポートを閉止するのに使用されてもよい。空気圧アクチュエータが本明細書において考察されるが、リニアステップモータ、モータ駆動式カム、空気圧によって駆動される剛性のパドル、液圧または電磁力、ローラ、ロッカーアーム、および場合によってはコックトスプリング(cocked springs)などの様々な電気機械式アクチュエータを含む、パウチに圧力を供給する他の方法が想到されることが理解される。それに加えて、チャネルの軸線に垂直に圧力を印加することに加えて、可逆的または不可逆的にチャネルを閉止する様々な方法がある。これらは、チャネルを横切ってバッグを捩じること、ヒートシール、アクチュエータの回転、ならびにバタフライ弁およびボール弁など、チャネル内に封止される様々な物理的な弁を含む。それに加えて、小型のペルチェ素子または他の温度調整装置が、チャネルに隣接して配置され、流体を凍結してシールを効率的に形成するのに十分な温度に設定されてもよい。また、図1の設計は、ブリスタおよびチャネルそれぞれの上に位置付けられたアクチュエータ要素を特徴とする自動機器に適応されているが、アクチュエータが定置のままであることができ、また、サンプルの破壊、核酸の捕捉、第一および第二段階のPCR、ならびにイムノアッセイおよびイムノPCRなどのパウチの他の適用例を含む、いくつかの処理ステーションに少数のアクチュエータを使用できるように、パウチを一次元または二次元で移行させることができることも想到される。チャネルおよびブリスタに作用するローラは、パウチがステーション間で平行移動させられる構成において特に有用であることが証明できる。したがって、空気圧アクチュエータが現在開示される実施形態で使用されるが、「空気圧アクチュエータ」という用語が本明細書で使用されるとき、パウチおよび機器の構成に応じて、圧力を供給する他のアクチュエータおよび他の方法が使用されてもよいことが理解される。
図1を参照すると、核酸抽出および多重PCR用に構成された、実例となるサンプルパウチ10が提供される。サンプルは、付属部品90のサンプル注入ポート12を介してパウチ10に入る。注入ポート12は、脆弱なシール、一方向弁、または他の入口ポートであってもよい。パウチ10内部からの真空が、サンプルをパウチ10に引き込むのに使用されてもよく、注射器または他の圧力がサンプルをパウチ10に流し込むのに使用されてもよく、または注入ポート12を介してサンプルをパウチ10に導入する他の手段が使用されてもよい。サンプルは、チャネル14を介して、サンプル中の細胞が溶解される細胞溶解域20の三葉ブリスタ22へと移動する。一旦サンプルが三葉ブリスタ22に入ると、ピンチ弁16が閉止される。既に閉止されていることがあるピンチ弁36に加えて、ピンチ弁16を閉止することによって、サンプルが三葉ブリスタ22内に封止される。細胞溶解はすべてのサンプルで必須ではなくてもよいことが理解される。かかるサンプルの場合、細胞溶解域が省略されてもよく、またはサンプルを次の域に直接移動させてもよい。しかし、多くのサンプルでは、細胞溶解が必要である。一実施形態では、ビーズミリングを使用して細胞を溶解する。
ケイ酸ジルコニウム(ZS)ビーズ34などの溶解粒子の存在下でサンプルを振とうまたはボルテックス形成することによる、ビーズミリングは、溶解物を形成するのに有効な方法である。本明細書で使用するとき、「溶解する」、「溶解」、および「溶解物」などの用語は細胞を破壊することに限定されず、かかる用語は、ウィルスなどの非細胞粒子の破壊を含むことが理解される。図2は、収束流がビーズの高速衝撃を生じさせて溶解物を作成する、細胞溶解域20の一実施形態を示す。例えば、三葉ブリスタ22の2つの下側の葉24、26はチャネル30を介して接続され、上側の葉28は、チャネル30の反対側31で下側の葉24、26に接続される。図2aは、パウチ10の細胞溶解域20と接触していることになる、ブラダーアセンブリ710の対応する部分を示す。パウチ10が機器に入れられると、パウチ10上の各葉24、26、28に隣接するのは、ブラダーアセンブリ710における対応する空気圧ブラダー724、726、728である。「隣接する」という用語は、パウチのブリスタまたはチャネルとそれに対応する空気圧アクチュエータとの間の関係について言及するとき、パウチを機器に入れたときのブリスタまたはチャネルと対応する空気圧アクチュエータとの間の関係を指すものと理解される。一実施形態では、隣接する下側の葉24、26の2つの下側の空気圧ブラダー724、726の空気圧管継手724a、726aが互いに配管される。空気圧管継手724a、726a、および上側の葉28に隣接した上側の空気圧ブラダー728の空気圧管継手728aは、二重作用空気圧シリンダを駆動するように構成された電気作動弁の反対側に配管される。このように構成されると、圧力は、上側の空気圧ブラダー728と2つの下側の空気圧ブラダー724、726との間で交互になる。バルブが前後に切り替えられると、パウチ10内の液体が、下側の葉24、26と上側の葉28との間で駆動されて、チャネル30の狭いネクサス32を通る。2つの下側の葉24、26は同時に加圧されるので、流れは収束し、上側の葉28に噴き込む。葉の幾何学形状に応じて、ネクサス32におけるビーズ34の衝突速度は少なくとも約12m/秒であって、高衝撃の衝突がもたらされ、その結果、溶解が生じる。実例となる三葉のシステムによって、良好な細胞破壊および構造上の堅牢性が可能になる一方で、サイズおよび空気圧のガス消費が最小限に抑えられる。ZSビーズが溶解粒子として使用されるが、この選択は単なる例示であり、他の材料および他の形状の粒子が使用されてもよいことが理解される。また、細胞溶解域20の他の構成も本発明の範囲内にあることが理解される。
三葉ブリスタが採用溶解に使用されているが、他の多葉の構成が本発明の範囲内にあることが理解される。例えば、四葉ブリスタ、例えばクローバーの葉のパターンのものを使用することができ、その場合、向かい合ったブリスタが同時に加圧されて、溶解粒子が互いに向かって押しやられ、次に他の2つの葉へと角度を変え、次にそれらの葉がともに加圧されてもよい。かかる四葉ブリスタは、両方向の高速衝撃を有するという利点を有することになる。さらに、一葉ブリスタが使用されてもよく、その場合、溶解粒子が一葉ブリスタのある部分から他の部分へと迅速に移動させられることが想到される。例えば、空気圧アクチュエータは、一葉ブリスタの領域を閉止して、残りの領域に多葉ブリスタを一時的に形成するのに使用されてもよい。デバイスの葉に作用する、モータ、空気圧、液圧、または電磁駆動式のパドルなど、他の作動方法が使用されてもよい。例えば、上側および下側の葉の間に再循環手段が設けられ、アクチュエータが蠕動ポンプ作用を提供する場合、ローラまたは回転パドルを使用して、図2のネクサス32において流体をともに駆動することができる。他の構成も本発明の範囲内にある。
また、多葉ブリスタを一時的に形成することなく、一葉溶解ブリスタ内で溶解を生じさせるのに十分に迅速に、サンプルおよび溶解粒子を移動させることが可能な場合もある。図2bに示されるような、かかる1つの代替実施形態では、電気モータ19に取り付けられた回転ブレードまたはパドル21を用いてパウチに衝撃を与えることによって、ボルテックス形成が達成されてもよい。ブレード21は、溶解ブリスタにおいてパウチに衝撃を与えてもよく、または溶解ブリスタ付近で、例えば溶解ブリスタに隣接した縁部17で、パウチに衝撃を与えてもよい。かかる一実施形態では、溶解ブリスタは1つまたは複数のブリスタを備えてもよい。図12は、1つのかかる溶解ブリスタ522を備える一実施形態を示す。図13は、第2の支持部材804の第1の面811に搭載されてもよい、図8に示される機器800のブレード21を備える、ビーズ撹拌モータ19を示す。しかし、モータ19は、機器800の第1の支持部材802上または他の構造上に搭載されてもよいことが理解される。
図2aはまた、空気圧管継手716aを備えた空気圧ブラダー716と、空気圧管継手736aを備えた空気圧ブラダー736とを示す。パウチ10がブラダーアセンブリ710と接触して配置されると、ブラダー716がチャネル12とぴったり合って、ピンチ弁16が完成する。同様に、ブラダー736がチャネル38とぴったり合って、ピンチ弁36が完成する。空気圧ブラダー716および736の動作によって、ピンチ弁16および36を開閉することが可能になる。ブラダーアセンブリ710のうち、細胞溶解域に隣接した部分のみが示されているが、ブラダーアセンブリ710は、パウチ10の残りの域全体にわたる流体の移動を制御するため、空気圧ブリスタの類似の構成を備えるはずであることが理解される。
他の従来技術の機器は、封止された可撓性容器内におけるPCRについて教示している。例えば、引用することにより本明細書の一部をなすものとする、米国特許第6,645,758号および第6,780,617号、ならびに同時係属中の米国特許出願第10/478,453号を参照のこと。しかし、特に試験すべきサンプルがバイオハザードを含有し得る場合、封止されたPCR容器内に細胞溶解を含めることによって、使用の容易さおよび安全性を改善することができる。本明細書に例証される実施形態では、細胞溶解からの、ならびに他のすべてのステップからの廃棄物は、封止されたパウチ内に残る。しかし、パウチの内容物をさらなる試験のために除去できることが理解される。
一旦細胞が溶解されると、ピンチ弁36が開放され、図3で最も良く分かるように、溶解物がチャネル38を通って核酸調製域40へと移動させられ、その後、ピンチ弁36が閉止されて、サンプルが核酸調製域40内に封止される。図3に示される実施形態では、核酸の精製は、ビーズミリングされた材料を用い、シリカベースの磁性ビーズ56に対する親和結合を使用して、ビーズをエタノールで洗浄し、水または他の流体で核酸を溶出して、細胞溶解物から核酸を精製する。核酸抽出に必要な個々の構成成分は、例えば、チャネル45、47、49によって接続されて試薬混合を可能にしている、ブリスタ44、46、48内に存在する。溶解物はチャネル38からブリスタ44に入る。ブリスタ44は、磁性ビーズ56および適切な結合緩衝液、例えば1−2−3(商標)サンプル調製キット(アイダホ・テクノロジー(Idaho Technology)、ユタ州ソルトレークシティ(Salt Lake City, UT))などの高塩濃度緩衝液を備えてもよく、あるいは、これらの構成成分のどちらかまたは両方が、ブリスタ44に接続された1つもしくは複数のチャネルを通して続いて提供されてもよい。核酸はビーズ56上で捕捉され、次にピンチ弁53が開放され、溶解物およびビーズ56は、ブリスタ44および58に交互に緩やかに圧力を掛けることによって混合され、次に、例えばブラダーアセンブリ710上の対応する空気圧ブラダーによって供給される空気圧によって、ブリスタ58へと移動させられてもよい。磁性ビーズ56は、ブリスタ58に隣接して機器内に配置される格納式の磁石50によってブリスタ58内で捕捉され、廃棄物は、廃棄物リザーバへと移動させられてもよく、またはブリスタ58に圧力を印加することによってブリスタ44に戻されてもよい。次に、ピンチ弁53が閉止される。磁性ビーズ56は、ピンチ弁55を解放すると、エタノール、イソプロパノール、またはブリスタ46から供給される他の有機もしくは無機洗浄溶液で洗浄される。任意に、磁石50が撤回されて、ブリスタ46および58に交互に圧力を供給することによって、ビーズの洗浄が可能になってもよい。ビーズ56は、磁石50によってブリスタ58内で再度捕捉され、溶解物の非核酸部分がビーズ56から洗い流され、ブリスタ46に戻されるとともにピンチ弁55によって固定されてもよく、または別のチャネルを介して廃棄物リザーバへと押し流されてもよい。一旦磁性ビーズが洗浄されると、ピンチ弁57が開放されて、水(例えば、緩衝水)または別の核酸溶離液がブリスタ48から放出される。再度磁石50が撤回されて、例えばブリスタ48および58に交互に圧力を供給することによって、水およびビーズ56の最大限の混合が可能になってもよい。ビード56を回収するため、磁石50が再度配備される。ピンチ弁59が開放され、溶出した核酸がチャネル52を介して第一段階増幅域60へと移動させられる。次に、ピンチ弁59が閉止され、それにより、サンプルが第一段階増幅域60で固定される。
図3に示すとともに上述したような、核酸調製域40の構成は単なる例示であり、他の様々な構成も本開示の範囲内で可能であることが理解される。
本明細書で使用されるエタノール、水、および他の流体は、様々な方法でブリスタに供給されてもよい。流体はブリスタに格納されてもよく、その首部は、様々なピンチ弁によって、またはサンプル調製シーケンスの適切な時点で開放されてもよい脆弱部分によって、ピンチオフされてもよい。あるいは、流体は、図5に示されるパウチ110のようなパウチ内のリザーバに、または図6のパウチ210に関して考察されるような付属部品に格納され、必要に応じてチャネルを介して移動させられてもよい。さらに別の実施形態では、流体は、特にエタノール注入ポート41、88およびプランジャ67、68、69に関して図1に示されるように、外部源から導入されてもよい。例えば、プランジャ67、68、69は、例えばより剛性の材料の付属部品90に挿入されてもよく、引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許出願第10/512,255号のように、プランジャを活性化させた際に流体の測定された体積を提供してもよい。あるいは、プランジャはより柔軟な材料であってもよく、付属部品はより剛性の材料であってもよい。測定された体積は、プランジャそれぞれに対して同じであってもまたは異なってもよい。最後に、さらに別の実施形態では、パウチは、1つまたは複数のブリスタに格納された流体の測定された体積を備えてもよく、その際、流体はブリスタ内に収容され、例えばブリスタ内の小さな封止されたパウチの形で提供されて、ブリスタ内にブリスタを有効に形成する。適切な時点で、封止されたパウチを次に、例えば空気圧によって破裂させ、それによって流体をパウチのブリスタ内に放出させてもよい。機器はまた、機器が稼働中に汚染されるのを防ぐため、流体の通過が一方向弁によって厳密に調整されるという条件で、機器と付属部品またはパウチ材料との間の直接の液体接触を通じて、試薬のいくつかまたはすべてを提供するように構成されてもよい。さらに、多くの場合、汚染DNAがパウチから漏れるのを妨げるため、パウチまたはその付属部品を動作後に封止するのが望ましい。シリンジポンプなど、要求に応じて試薬を供給する様々な手段、ならびに、有刺管継手またはOリングシールなど、付属部品またはパウチと一時的に流体接触させる様々な手段が知られている。特定の用途の必要性によって決定付けられるように、流体を適切なブリスタに導入するこれらの方法のいずれかが、本明細書で考察されるパウチの実施形態のいずれかとともに使用されてもよいことが理解される。
上述したように、入れ子PCRは二段階で行われる標的増幅を伴う。第一段階では、標的は、例えばゲノムまたは逆転写テンプレートから増幅される。第一段階増幅は、所望であれば、プラトー相に先立って終了してもよい。二次反応では、第一段階単位複製配列が希釈されてもよく、二次増幅は同じプライマーを使用するか、または例えば、第一段階生成物のプライマーに対して内部で交雑する入れ子プライマーを使用する。入れ子PCRの利点としては、次のものが挙げられる。a)初期反応生成物が、二次反応における高い忠実度を保証する均質かつ特異的なテンプレートを形成し、比較的低効率の場合であっても、第一段階反応によって堅牢な第二段階反応を支持する適切なテンプレートが生成される。b)異なる入れ子プライマーが使用され、元の増幅テンプレート(例えば、ゲノムDNAもしくは逆転写生成物)が、二次増幅におけるその有意性が排除される程度まで希釈されてもよいので、第一段階反応による非特異的な生成物は第二段階反応と有意に干渉しない。また、c)入れ子PCRによって高次の反応多重化が可能になる。第一段階反応は、いくつかの固有の増幅生成物のプライマーを含むことができる。次に、これらの生成物は第二段階反応で同定される。しかし、第一段階多重化および第二段階一重化(singleplex)は単なる例示であり、他の構成も可能であることが理解される。例えば、第一段階は、単一のプライマー対を使用して、様々な異なる関連の単位複製配列を増幅してもよく、第二段階は、例えば融解曲線分析を使用して、単位複製配列間の差を標的にするのに使用されてもよい。
図1を再び参照すると、核酸サンプルは、チャネル52を介して第一段階増幅域60に入り、ブリスタ61に送達される。ポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)、dNTP、およびプライマー、例えば多重増幅のための複数のプライマー対を含む、PCR混合物は、ブリスタ61内に提供されてもよく、上述したような様々な手段を介してブリスタ61に導入されてもよい。あるいは、パウチ10を組み立てる際に、乾燥試薬がブリスタ61の位置上にスポッティングされてもよく、図1に示されるように、例えばプランジャ68を介して、水または緩衝液がブリスタ61に導入されてもよい。図4で最も良く分かるように、サンプルはここで、ピンチ弁59および72によってブリスタ61内で固定され、例えば、機器内に配置されるとともにブリスタ61に接触して構成される熱ブロックまたはペルチェ素子によって、2つ以上の温度の間で熱サイクリングされる。しかし、当該分野において知られているような、ブリスタ61内に収容されたサンプルを加熱および冷却する他の手段が、本発明の範囲内にあることが理解される。熱サイクリングのための代替の加熱/冷却デバイスの非限定例としては、ブリスタ61に隣接した空気圧ブリスタ内の空気を2つ以上の温度間で循環させる、ブラダー内に空気循環式のブリスタを有するもの、あるいは、引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許出願第10/478,453号のように、例えば複数の空気圧プレスを使用して、またはパウチ10を軸線上で平行移動させるか、もしくはパウチ10に回転レイアウトを提供し、パウチ10を旋回させて、固定温度の加熱域間で内容物を移動させることによって、サンプルをブリスタ61内の温度域へと移動させるものが挙げられる。
病原体からの核酸は、相当量の宿主核酸と同時に単離される場合が多い。これらの宿主由来の核酸は、プライマーと相互作用し、結果として望ましくない生成物が増幅される場合が多く、その生成物は次に、プライマー、dNTP、およびポリメラーゼ活性を除去して、望ましい生成物の資源を枯渇させる可能性がある。病原体からの核酸は、一般に、存在量が低く、望ましくない生成物は潜在的な問題である。域60の第一段階反応におけるサイクル数は、特異的な生成物を最大限にし、非特異的な生成物を最小限に抑えるように最適化されてもよい。最適なサイクル数は、約10〜約30サイクル、例えば約15〜20サイクルとなることが予期されるが、サイクル数は、特定の標的、宿主、およびプライマー配列に応じて変動してもよいことが理解される。
第一段階多重増幅に続いて、例えば不完全なPCRマスターミックス中で、第一段階増幅生成物が希釈され、その後、流体は二次反応部位に移送される。
図4は、3ステップでサンプルを希釈する、実例となる一実施形態を示す。第1のステップで、ピンチ弁72が開放され、サンプルは、ブリスタ61内のサンプルをブリスタ62からの等量の水または緩衝液と混合することによって二倍希釈され、それが、上述したように、ブリスタ62ならびにブリスタ64および66に供給される。ブリスタ61、62の間で容積を交互に圧搾することによって、完全な混合がもたらされる。上述したように、混合は、ブラダー710内に設けられるとともにブリスタ61、62に隣接して配置された空気圧ブラダーによって提供されてもよい。空気圧ブラダーは、交互に加圧されて、液体を往復させてもよい。混合中、ピンチ弁74は、液体が隣接したブリスタへと流入するのを防ぐ。混合の終了時、ある量の希釈サンプルは領域70に捕捉され、ピンチ弁72は閉止されて、希釈サンプルを領域70内に封止する。ピンチ弁74が開放され、サンプルは、ブリスタ63、64のどちらかもしくは両方に供給された水または緩衝液によってさらに希釈される。上述したように、ブリスタ63、64の間で体積を交互に圧搾することによって、混合がもたらされる。続いて、ピンチ弁74が閉止されて、サンプルのさらに希釈された体積を領域71内に封止する。最終の希釈は、例えば、上述のような混合を用いて、ブリスタ65、66のどちらかもしくは両方に供給された緩衝液または水を使用することによって行われる。例えば、この最終の希釈は、流体としての不完全なPCRマスターミックス(例えば、プライマー以外のPCR試薬をすべて含有する)を使用して行われる。第二段階増幅に先立って、ブリスタ66の内容物を任意に加熱することで、高価な抗体または酵素を必要とすることなく、ホットスタート増幅の利益を提供することができる。しかし、水または他の緩衝液が最終の希釈に使用され、追加のPCR構成成分が第二段階増幅域80に供給されてもよいことが理解される。実施形態は3つの希釈段階を使用するが、適切なレベルの希釈を提供するため、任意の数の希釈段階が使用されてもよいことが理解される。希釈量は、領域70および71に捕捉されるサンプルの量を調節することによって制御することができ、その際、領域70および71に捕捉されるサンプルの量が少ないほど、希釈量は多くなるか、あるいは、ピンチ弁72および74ならびに/またはピンチ弁74および76を繰返し開閉することによって、領域70および/または領域71に捕捉される追加のアリコートが、希釈量を減少させるのに使用されてもよいことが理解される。約10−2〜約10−5希釈が多くの用途に適しているはずであることが予期される。
二次PCR反応の成功は、多重第一段階反応によって発生するテンプレートに応じて決まる。一般的には、PCRは高純度のDNAを使用して行われる。フェノール抽出または市販のDNA抽出キットなどの方法により、高純度のDNAが供給される。パウチ10を通して試料を処理するには、より低純度の調製を相殺するような適応を要することがある。PCRは、潜在的な障害物である、生物学的サンプルの構成成分によって阻害されることがある。例えば、ホットスタートPCR、より高濃度のtaqポリメラーゼ酵素、MgCl2濃度の調節、プライマー濃度の調節、および補助薬(DMSO、TMSO、またはグリセロールなど)の添加は、任意に、低い核酸純度を相殺するのに使用されてもよい。純度の問題は、むしろ第一段階増幅における問題であり得るが、類似の調節が第二段階増幅で同様に提供されてもよいことが理解される。
希釈および第二段階サンプル調製は、実施形態では、少量の増幅されたサンプルをパウチの第一段階PCR部分のブリスタおよびチャネル内で保定することによって達成されるが、これらのプロセスはまた、他の方法で行われてもよいことが理解される。かかる実例となる1つの例では、予め増幅されたサンプルを、固定量のサンプルを第一段階から第二段階PCR試薬へと移動させることができる、平行移動もしくは回転部材などの部材の小さなキャビティに捕捉することができる。予め増幅されたサンプルの1マイクロリットルの部分を、100マイクロリットルの新鮮なPCR試薬と混合することで、濃度が100分の1に低減されることになる。この希釈は単なる例示であり、他の体積および希釈レベルが可能であることが理解される。この方策は、第一段階増幅生成物を剛性の付属部品に流し込み、そこで図1のプランジャ68または69の一方と接触させることによって達成することができる。かかる実施形態では、プランジャは、ごく少量のサンプルを、隣接した希釈緩衝液または第二段階PCR緩衝液と接触させるように構成されることになる。同様に、段階間のシールを維持したまま、かつ増幅されたサンプルを剛性の付属部品90内に含有したまま、滑動要素を使用して、少量の第一段階増幅生成物を第二段階反応問合物と接触させることができる。
第一段階PCRおよび希釈に続いて、チャネル78は、二次入れ子PCRのため、複数の低容積ブリスタ82にサンプルを移送する。1つの実施形態では、第二段階ブリスタに供給される乾燥プライマーは、入ってくる水性材料によって再懸濁されて、反応混合物が完成する。任意に、二本鎖核酸の検出に使用されるLCGreen(登録商標)Plus(アイダホ・テクノロジー(Idaho Technology)、ユタ州ソルトレークシティ(Salt Lake City, UT))などの蛍光色素が、各ブリスタに供給されてもよく、あるいは、連続希釈の終了時に不完全PCRマスターミックスに添加されてもよいが、LCGreen(登録商標)Plusは単なる例示であり、当該分野で知られているような他の色素が利用可能であることが理解される。別の任意の実施形態では、特異的な単位複製配列それぞれのために構成された乾燥蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブが、個々の乾燥プライマーとともに、個々の第二段階ブリスタそれぞれに供給されてもよい。さらに、パウチ10は、すべての反応および操作を中に含め、汚染を低減するように設計されるが、状況によっては、さらなる分析を行うため、増幅生成物を各ブリスタ82から除去するのが望ましいことがある。当該分野で知られているような、第二段階単位複製配列を検出する他の手段は、本発明の範囲内にある。一旦サンプルがブリスタ82に移送されると、ピンチ弁84および86が活性化されて、ブリスタ82を閉鎖する。各ブリスタ82は、この時点で、特定の標的の増幅に必要なすべての試薬を含有している。例えば、各ブリスタは固有のプライマー対を含有してもよく、複数のブリスタ82が同じプライマーを含有して、多数の複製増幅を提供してもよい。
本明細書で開示される実施形態は、第二段階増幅にブリスタを使用し、その際、ブリスタは、残りの可撓性部分と同じまたは類似のプラスチックフィルムで形成されることに留意されたい。しかし、多くの実施形態では、第二段階ブリスタの内容物は決して第二段階ブリスタから除去されることはなく、したがって、第二段階反応を可撓性のブリスタ内で行う必要はない。第二段階反応は、ブリスタに流体接続された、複数の剛性、半剛性、または可撓性のチャンバ内で行われてもよいことが理解される。チャンバは、本例の場合のように、チャンバを接続する可撓性のチャネルに圧力を掛けることによって封止することができ、または、例えばヒートシールもしくは一方向弁の使用によって、他の方法で封止されてもよい。本明細書で考察される様々な実施形態は、廃棄物の回収のみのために提供されるブリスタを含む。廃棄物は決して除去されることがないので、廃棄物を、剛性、半剛性、または可撓性のチャンバに回収することができる。
第一段階増幅で使用したものと同じプライマーを用いて第二段階増幅を行うことは、本発明の範囲内にある(米国特許第6,605,451号を参照)。しかし、第一段階および第二段階のプライマー結合部位間に重複がないか、または重複が最小限であるように、第二段階反応において、第一段階生成物の内部にあるプライマーを有することが有利な場合が多い。第一段階生成物を希釈することによって、第二段階反応に対する元のテンプレートDNAおよび第一段階試薬の寄与の大部分が排除される。さらに、例えば、第一段階で使用されるものよりも高いTmの第二段階プライマーが、入れ子増幅を増強するのに使用されてもよい。プライマーは、有意なヘアピン、ヘテロ/ホモダイマー、および望ましくない交雑を回避するように設計されてもよい。入れ子形式により、第二段階プライマーは、単一ステップでゲノムDNAから標的を増幅するのに使用されるプライマーよりも、有害な相互作用に対してはるかに寛容である。任意に、第二段階増幅に対してホットスタートが使用される。
当該分野において知られているように、例えばdsDNA結合色素として、または蛍光プローブの一部として、第二段階増幅に蛍光色素が含まれる場合、提供される光学を使用して、サンプルの1つまたは複数の増幅がモニタリングされてもよい。任意に、増幅曲線の形状の分析が、各サンプルの陽性または陰性を判定するために提供されてもよい。サンプルを判定するための実例となる方法は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許第6,730,501号で考察されている。あるいは、交差閾値(crossing threshold)を用いる方法が使用されてもよい。コンピュータが、外部または機器内に提供されてもよく、方法を行い、第二段階増幅の存在または不在に基づいてサンプルの陽性または陰性を判定するように構成されてもよく、増幅曲線の特性パラメータ(交差閾値など)を標準曲線または実行の中の他の増幅曲線に対して比較することによって、出発テンプレート濃度に関する定量的情報を提供してもよい。しかし、当該分野において知られているような他の方法が、各サンプルを判定するのに使用されてもよいことが理解される。他の分析が蛍光情報に対して行われてもよい。1つのかかる非限定例は、融解曲線分析を使用して、単位複製配列の適正な融解特性(例えば、Tm、融解プロファイル形状)を示すことである。提供される光学は、すべてのブリスタ82の画像を一度に捕捉するように構成されてもよく、または、個々のブリスタそれぞれに対して個々の光学が提供されてもよい。他の構成も本発明の範囲内にある。
図5は、代替のパウチ110を示す。この実施形態では、様々な試薬は付属部品190を介してパウチ110に装填される。図5aは、複数のプランジャ168の1つを含む付属部品190の断面を示す。図5aは、図5の実施形態に示されるような、入口チャネル115aを通る断面を示し、12個の入口チャネル(入口チャネル115a〜115l)が存在しており、そのそれぞれが付属部品190で使用されるそれ自体のプランジャ168を有してもよいが、この特定の構成では、入口チャネル115c、115f、および115iは使用されないことが理解される。12個の入口チャネルを有する構成は単なる例示であり、任意の数の入口チャネルおよび関連するプランジャが使用されてもよいことが理解される。実施形態では、付属部品190の任意の真空ポート142は、付属部品190の第1の表面194を通って形成されて、チャンバ192と連通する。任意の真空ポート142は、真空または真空チャンバ(図示なし)と連通してパウチ110内から空気を引き出して、チャンバ192ならびにパウチ110の様々なブリスタおよびチャンバ内に真空を作り出すために提供されてもよい。次に、プランジャ168は、真空ポート142を密閉するのに十分に奥までチャンバ192に挿入される。チャンバ192は、例えば、所定量の真空下で提供されて、使用の際に所望量の液体をチャンバ192に引き込む。チャンバ192の調製に関する追加の情報は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許出願第10/512,255号に見出すことができる。
実例となる付属部品190は、付属部品190の第2の表面195に形成される注入ポート141をさらに含む。例えば、注入ポート141は、図5aに示されるように、真空ポート142よりもパウチ110のプラスチックフィルム部分により近接して位置付けられるので、注入ポート141を介してチャンバ192へとアクセスするのが可能なままの状態で、プランジャ168が、真空ポート142を密閉するのに十分に奥まで挿入される。図示されるように、プラスチックフィルム部分117の第2の表面119は、注入ポート141を介したチャンバ192と周囲雰囲気との間の連通を防ぐ、貫通可能なシール139を提供する。しかし、第2の表面119は、任意に、注入ポート141まで延在しなくてもよく、他の様々なシールが用いられてもよいことが理解される。さらに、シールの別の位置が、例えば付属部品190の第1の表面194が望ましい場合、注入ポート141は、付属部品190のその位置へのチャネルを含んでもよい。引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許出願第10/512,255号は、シールが注入ポートから離れて位置し、シールがチャネルを介してチャンバに接続される、様々な構成を示している。また、米国特許出願第10/512,255号は、チャネルが単一のシールを複数のチャンバに接続する、様々な構成を開示している。シールの位置の変化、ならびに複数のチャンバに対する単一の注入ポートの接続は、本発明の範囲内にある。任意に、シール139は脆弱であってもよく、カニューレ(図示なし)を挿入すると破壊されて、カニューレ内の流体サンプルをチャンバ192に引き込むか、または流し込むことが可能になってもよい。
パウチアセンブリ110の実例となるプランジャ168は、円筒形状であり、チャンバ192にプレス嵌めされるように約5mmの直径を有する。プランジャ168は、第1の端部部分173および反対側の第2の端部部分175を含む。図5aに示されるように、プランジャ168のノッチ169が第2の端部部分175に形成される。使用の際、第2の端部部分175はチャンバ192に一部挿入され、ノッチ169は注入ポート141と位置合わせされて、プランジャ168が他の場合では注入ポート141を遮断することになる奥までプランジャ168が十分に挿入されても、流体サンプルをチャンバ192に引き込むか、または注入することが可能になってもよい。
例えば、流体は、注入ポート141に挿入して中のシール139を穿孔することができるカニューレ状の先端を有する、シリンジを備えた容器(図示なし)に入れられる。排気したパウチアセンブリ110を使用する際、シール139が穿孔されると、周囲気圧に対するチャンバ192内の陰圧によって流体が容器から抜き出される。次に、流体はポート141を通過してチャンバ192を充填する。この時点では、流体は通常、パウチ110のプラスチックフィルム部分117に流入しない。最後に、プランジャ168がチャンバ192に挿入され、それによってプランジャ168の第2の端部部分175がチャンバ192の底部191に近付いて、測定された量の試薬またはサンプルがプラスチックフィルム部分117に押し込まれる。図示されるように、プランジャ168は、完全に挿入したとき、第2の端部部分175がチャンバ192の底部191と完全には触れないように構成されている。残りの空間は、泡を捕捉し、それによってプラスチックフィルム部分117に入る泡の数を低減するのに有用である。しかし、いくつかの実施形態では、プランジャ168を完全に挿入したとき、第2の端部部分175が底部191に触れるのが望ましいことがある。図5に示される実施形態では、入口チャネル115a、115b、115d、115e、115g、115h、115j、115k、および115lはすべて、反応域またはリザーバブリスタにつながる。入口チャネル115aと関連付けられたプランジャを完全に挿入すると、サンプルが三葉ブリスタ122に流し込まれ、入口チャネル115bと関連付けられたプランジャを完全に挿入すると、試薬がリザーバブリスタ101に流し込まれ、入口チャネル115dと関連付けられたプランジャを完全に挿入すると、試薬がリザーバブリスタ102に流し込まれ、入口チャネル115eと関連付けられたプランジャを完全に挿入すると、試薬がリザーバブリスタ103に流し込まれ、入口チャネル115gと関連付けられたプランジャを完全に挿入すると、試薬がリザーバブリスタ104に流し込まれ、入口チャネル115hと関連付けられたプランジャを完全に挿入すると、試薬がリザーバブリスタ105に流し込まれ、入口チャネル115jと関連付けられたプランジャを完全に挿入すると、試薬がリザーバブリスタ106に流し込まれ、入口チャネル115kと関連付けられたプランジャを完全に挿入すると、試薬がリザーバブリスタ107に流し込まれ、入口チャネル115lと関連付けられたプランジャを完全に挿入すると、試薬がリザーバブリスタ108に流し込まれる。
図5aに示される実施形態で例証されるような、ノッチ169を含むプランジャ設計が使用される場合、プランジャ168を下に下げるのに先立って回転させ、それによってノッチ169をオフセットし、注入ポート141をチャンバ192との連通から閉鎖して、内容物を中に封止してもよい。これは、流体が注入ポート141を通って周囲雰囲気へと逆流するあらゆる可能性を最小限に抑えるように作用し、そのことは、プランジャの完全な挿入を遅らせることが望ましいときに特に有用である。ノッチ169が示され、プランジャ168に関して上述されているが、例えば、プランジャ168をチャンバ192の底部に向かって押し下げること、ヒートシール、一方向弁、または自己封止性ポートなどの他の手段によって、流体サンプルをチャンバ192内に分配した直後に注入ポート141を閉鎖することは、本開示の範囲内である。ヒートシールが封止方法として使用される場合、パウチを機器に挿入した際にすべてのチャンバがヒートシールされるように、シールバーを機器に含めることができる。
実例となる方法では、ユーザは、入口チャネル115aと関連付けられた注入ポート141にサンプルを注入し、他の様々な注入ポートに水を注入する。水は、既に凍結乾燥させてある試薬を再水和し、入口チャネル115b、115d、115e、115g、115h、115j、115k、および115lそれぞれと関連付けられたチャンバ192に入れる。水は、図6で以下に示されるように、1つの単一シールを通して注入され、次にチャネルを介してチャンバそれぞれへと分配されてもよく、または、水を各チャンバに独立して注入することができる。あるいは、水を注入して乾燥試薬を再水和するのではなく、溶解試薬、核酸抽出試薬、およびPCR試薬などの湿潤試薬が、付属部品190の適切なチャンバ192に注入されてもよい。
入口チャネル115aと関連付けられたプランジャ168を活性化すると、サンプルは、チャネル114を介して三葉ブリスタ122に直接流し込まれる。ユーザはまた、残りのプランジャ168を押しやって、内容物を付属部品190のチャンバ192それぞれから押し出し、リザーバブリスタ101〜108に押し込む。この時点で、パウチ110は処理のために機器に装填される。図8に示される機器800は図6のパウチ210用に構成されているが、機器800のブラダーの構成を修正することで、機器800が、パウチ110および510とともに、または他の構成のパウチとともに使用するのに適するようになることが理解される。
1つの実例となる例では、プランジャ168を押し下げると、リザーバブリスタ101は、イソプロパノール中のDNA結合磁性ビーズを収容するようになり、リザーバブリスタ102は、第1の洗浄溶液を収容するようになり、リザーバブリスタ103は、第2の洗浄溶液を収容するようになり、リザーバブリスタ104は、核酸溶出緩衝液を収容するようになり、リザーバブリスタ105は、多重化第一段階プライマーを含む第一段階PCR試薬を収容するようになり、リザーバブリスタ106は、プライマーを含まない第二段階PCR試薬を収容するようになり、リザーバブリスタ107は、プライマーを含まずテンプレートを含まない陰性対照PCR試薬を収容するようになり、リザーバブリスタ108は、テンプレートを含む陽性対照PCR試薬を収容するようになる。しかし、これらの試薬は単なる例示であり、所望の反応および最適化条件に応じて、他の試薬が使用されてもよいことが理解される。
一旦パウチ110が機器800に入れられ、サンプルが三葉ブリスタ122へと移動すると、ZSまたはセラミックビーズなどの溶解粒子を用いてサンプルを撹拌することによって、サンプルを破壊してもよい。溶解粒子は、三葉ブリスタ122内に供給されてもよく、またはサンプルとともに三葉ブリスタ122に注入されてもよい。図5の三葉ブリスタ122は、図1の三葉ブリスタ22とほぼ同じ方法で動作し、2つの下側の葉124、126がともに加圧され、上側の葉128と2つの下側の葉124、126との間で交互に圧力が掛けられる。しかし、図示されるように、下側の葉124、126は下側の葉24、26よりもはるかに丸く、チャネル130へとビーズが円滑に流れるのが可能になるとともに、ネクサス32に三角形のフローセパレータがなくても高速衝突が可能になっている。三葉ブリスタ22と同様に、図5の三葉ブリスタ122によって、サンプル中の微生物、細胞、およびウィルス粒子の有効な溶解または破壊が可能になっている。幅約3〜4mm、例えば約3.5mmのチャネル130が、溶解中にビーズを比較的含まず、高速衝突を提供するのに有効であることが分かっている。
溶解後、リザーバブリスタ101の上に位置付けられたブラダーを加圧することによって、チャネル138を介して上側の葉128に核酸結合磁性ビーズが注入される。磁性ビーズは、例えば溶解中の方がより緩やかに、三葉ブリスタ122の内容物と混合され、溶液が例えば約1分間培養されて、核酸がビーズに結合することが可能になる。
次に、溶液はチャネル143を介して「図8」のブリスタ144に給送され、そこで、例えば空気圧駆動式である、機器に収納された格納式の磁石によってビーズが捕捉される。ビーズ捕捉プロセスは、ビーズミリング装置122のすべての葉124、126、および128を加圧することによって始まる。これにより、122の液体内容物の大部分がチャネル143を通ってブリスタ144に入る。磁石がブリスタ144の下側部分144bと接触させられ、サンプルが数秒間培養されて、磁石が溶液からビーズを捕捉することが可能になり、次に、ブリスタ122に隣接したブラダーが減圧され、ブリスタ部分144aおよび144bに隣接したブラダーが加圧され、液体がブリスタ122に押し戻される。すべてのビーズが単一の通過で捕捉されるわけではないので、ブリスタ144内のビーズをほぼすべて捕捉するため、このプロセスが最大10回繰り返されてもよい。次に、液体がブリスタ144から押し出されて、磁性ビーズおよび捕捉された核酸のみが後に残され、2回の連続洗浄で(それぞれ、チャネル145および147を介してリザーバブリスタ102および103から)洗浄試薬がブリスタ144に導入される。各洗浄において、洗浄試薬を収容したリザーバブリスタの上に位置付けられたブラダーが加圧されて、内容物がブリスタ144に流し込まれる。磁石が抜き出され、ブリスタ144の各葉144aおよび144bを覆っている2つのブラダーそれぞれを交互に加圧することによって、磁性ビーズを収容したペレットが破壊される。上側の葉144aが圧縮されると、液体内容物が下側の葉114bに流し込まれ、下側の葉144bが圧縮されると、内容物が上側の葉144aに流し込まれる。上側の葉144aと下側の葉144bとの間でブリスタ144内の溶液を撹拌することによって、磁性ビーズの不純物が有効に洗い流される。ビーズのペレットが破壊されないままで残る不適切な撹拌と、核酸がビーズの表面から洗い流され、洗浄試薬とともに失われる可能性がある過剰な撹拌との間でバランスが維持される。各洗浄サイクル後、磁性ビーズはブリスタ144内の磁石を介して捕捉され、洗浄試薬は、例えば、今度は廃棄物レセプタクルとして役立つ、三葉ブリスタ122に流し込まれる。しかし、使用済みのリザーバブリスタも廃棄物レセプタクルとして役立ってもよく、または他のブリスタが廃棄物レセプタクルとして特異的に提供されてもよいことが理解される。
次に、リザーバブリスタ104からの核酸溶出緩衝液が、チャネル149を介してブリスタ144に注入され、サンプルは再度撹拌され、磁石を用いることによって磁性ビーズが再捕捉される。ブリスタ144内の流体混合物は、ここでは、元のサンプルからの核酸を含有する。ブリスタ144に対する圧力によって、核酸サンプルがチャネル152を介して第一段階PCRブリスタ161に移動し、そこでサンプルが、チャネル162を介してリザーバブリスタ105から供給される、複数のプライマーセットを含有する第一段階PCRマスターミックスと混合される。望ましい場合、サンプルおよび/または第一段階PCRマスターミックスは、混合に先立って加熱されて、ホットスタートという利点を提供してもよい。任意に、RNA標的の逆転写のための構成成分が、第一段階PCRに先立って供給されてもよい。あるいは、RT酵素、例えば熱安定性RT酵素が、第一段階PCRマスターミックス中に供給されて、RNA標的の同時逆転写が可能になってもよい。RT酵素は、本明細書に開示される実施形態のいずれかにおける第一段階PCR混合物中に存在してもよいことが理解される。以下で分かるように、図5のパウチ110は最大10のプライマーセット用に構成されているが、構成が変更されてもよく、任意の数のプライマーセットが使用されてもよいことが理解される。ブリスタ161の上に位置付けられたブラダーは低圧で加圧されて、ブリスタ161の内容物を、ブリスタ161の他方の面上にある、ペルチェ素子などの加熱/冷却素子と密接に接触させる。ブリスタ161に対する圧力は、加熱/冷却素子との良好な接触を保証するのに十分であるべきであるが、流体がブリスタ161から押し出されないように十分に緩やかなものであるべきである。加熱/冷却素子は、例えば約60℃〜約95℃の間で、温度循環させられる。例えば、温度サイクリングは約15〜20サイクル行われ、その結果、存在する1つまたは複数の核酸標的が増幅される。また、例えば、温度サイクリングはプラトー相に先立って終わり、ログ相で、またはさらにはログ相に先立って終わってもよい。一例では、最小限のレベルの検出に達することなく、所望の単位複製配列でサンプルを濃縮するのが単に望ましいことがある。引用することにより本明細書の一部をなすものとする、米国特許第6,605,451号を参照のこと。
次に、増幅されたサンプルは、任意に、少量の増幅されたサンプルのみ(例えば、約1〜5%)をブリスタ161に残して、サンプルの大部分をチャネル152を介してブリスタ144に戻すことによって希釈され、第二段階PCRマスターミックスが、チャネル163を介してリザーバブリスタ106から供給される。サンプルは、例えば、チャネル163を介してブリスタ106および161の間で前後に移動させることによって完全に混合される。望ましい場合、反応混合物は、第二段階増幅に先立って、伸長温度よりも高温に、例えば少なくとも60℃に加熱されてもよい。次に、サンプルは、チャネル165を通して、第二段階増幅域180の中央にある低容積ブリスタ182のアレイに流し込まれる。10個の実例となる低容積ブリスタ182はそれぞれ、第一段階増幅におけるプライマー対の1つと本質的に同じであるか、あるいは短縮された単位複製配列を増幅するため、第一段階プライマー対内で「入れ子」にされた、異なるプライマー対を収容してもよい。プライマーは、ここでサンプルによって水和されて、増幅混合物が完成する。陽性および陰性対照サンプルも、リザーバブリスタ107および108それぞれの内容物を加圧し、標的DNAを含まないPCRマスターミックスを、チャネル166を介してリザーバブリスタ107から、または対照DNAを含むPCRマスターミックスを、リザーバブリスタ108からチャネル167を介して流すことによって導入される。図示されるように、それぞれ5つの陽性対照ブリスタ183および陰性対照ブリスタ181があり、10の異なる第二段階増幅反応に対して必要な対照を提供するため、二倍に多重化されてもよい。この構成は単なる例示であり、任意の数の第二段階ブリスタが提供されてもよいことが理解される。
例えば、第二段階増幅に使用されるPCRマスターミックスはプライマーが欠落しているが、それ以外は完全である。しかし、「不完全」PCRマスターミックスも同様に他のPCR構成成分が欠落していてもよい。一例では、第二段階PCRマスターミックスは水または緩衝液のみであり、それが次に、任意に希釈された第一段階PCR増幅生成物と混合される。この混合物は、残りの構成成分がすべて既に供給されている、小容積のPCR反応ブリスタへと移動させられる。望ましい場合、残りの構成成分がすべて互いに混合され、単一の混合物として小容積のPCR反応ブリスタ内へとスポッティングされてもよい。あるいは、図5bに示されるように、構成成分はそれぞれ、小容積のPCR反応ブリスタ182の別個の領域上にスポッティングされてもよい。図5bに示されるように、4つの領域が存在し、例えば、dNTPが領域182aに、プライマーが182bに、ポリメラーゼが182cに、マグネシウム化合物が182dにスポッティングされる。構成成分を別個にスポッティングし、構成成分を再水和するのに先立ってサンプル混合物を加熱することによって、非特異的な反応を最小限に抑えることができる。構成成分の任意の組み合わせをこのようにしてスポッティングすることができ、構成成分をブリスタの1つまたは複数の領域にスポッティングするこの方法は、本発明の任意の実施形態とともに使用されてもよいことが理解される。
小容積のPCR反応ブリスタ181、182、および183につながるチャネル165、166、および167は封止され、空気圧ブラダーは、熱サイクリングのため、ペルチェ素子などの加熱/冷却素子にアレイを緩やかに押し付ける。サイクリングパラメータは、第二段階熱サイクリングに対して独立して設定されてもよい。例えば、青色光(450〜490nm)などの励起源の焦点をアレイ上に合わせ、結果として得られる蛍光発光を、例えば510nmを上回る蛍光発光を画像化することによって、反応がモニタリングされる。
上述の例では、ピンチ弁について考察されていない。しかし、サンプルをブリスタの1つに収容することが望ましいとき、特定のブリスタとの間に通じるチャネルの上に位置付けられた空気圧アクチュエータが加圧されて、ピンチ弁が作成され、チャネルが閉鎖されることが理解される。反対に、サンプルをブリスタの1つから移動させることが望ましいとき、適切な空気圧アクチュエータが減圧されて、チャネルを通してサンプルを流すことが可能になる。
図5で上述したパウチは、試薬リザーバブリスタ101〜108を含み、ユーザは、例えばパウチ110を機器に挿入するのに先立って、試薬を付属部品190からパウチ110のプラスチックフィルム部分117内の試薬リザーバブリスタ101〜108に注入している。様々なブリスタの内容物を異なる温度で維持する能力を有することを含め、図5の試薬リザーバブリスタを使用することには利点があるが、いくつかの不利な点もある。オペレータは、試薬を付属部品190からリザーバブリスタ101〜108へと移動させることに関与しており、また、これは機械の外部で、したがって活性化されたピンチ弁を有さずに行われる場合が多いので、時には試薬がリザーバブリスタから作動中のブリスタへと漏れる恐れがある。調製および装填の間、リザーバブリスタ内の試薬は露出する。それらが圧迫され、圧搾され、またはさらには軽くぶつけられた場合、試薬が利用可能なチャネルを通して漏れることがある。試薬の損失が相当量である場合、反応が完全に失敗することがある。さらに、動作中、リザーバブリスタ101〜108から押し出される試薬の量がある程度ばらつくことがあり、一貫しない結果につながる。付属部品190に対する試薬の導入、および付属部品190から試薬リザーバブリスタ101〜108への試薬の移動を自動化することによって、これらの問題の多くが解決され、これは本発明の範囲内にある。
図6のパウチ210は、これらの課題の多くに対して、例えば空気圧ピストンを介して、機器自体がプランジャ268を移動させ、試薬が必要なときに試薬を様々な作動中のブリスタに流し込む、直接注入の方策を使用することによって、異なる形で対処する。試薬を図5のリザーバブリスタ101〜108に格納するのではなく、図6の実施形態では、試薬は、付属部品290の様々なチャンバ292に導入され、必要になるまでそこで維持される。適切な時点でピストン268を空気圧で動作させることによって、測定された量の試薬が適切な反応ブリスタに導入される。上述の課題の多くに対処することに加えて、パウチ210はまた、はるかに小型の形状を有して、より小型の機器設計を可能にしており、パウチ210は、より短いチャネルを有して、流体の流れをより良好にするとともに、チャネル内での試薬の損失を最小限に抑えている。
図6の1つの実施形態では、試験すべきサンプル(100μl)および溶解緩衝液(200μl)を含む300μlの混合物が、注入ポート241aに注入される。水もシール239bを介して付属部品290に導入されて、チャネル293(陰影で示される)を介してチャンバ292b〜292lにそれぞれ乾燥形態ですでに供給されている、最大11の異なる試薬を水和する。これらの試薬は、例えば、凍結乾燥されたPCR試薬、DNA抽出試薬、洗浄溶液、イムノアッセイ試薬、または他の化学的実体を含んでもよい。図6の例の場合、試薬は、核酸抽出、第一段階多重PCR、多重反応の希釈、および第二段階PCR試薬の調製、ならびに対照反応のためのものである。図6に示される実施形態では、注入する必要があるのは、ポート241a内のサンプルおよびポート241b内の水のみである。
図6に示されるように、シール293bを介して注入される水は、チャネル293を介して様々なチャンバに分配される。この実施形態では、サンプルおよび水のみをパウチ210に注入すればよい。しかし、水を各チャンバ292に独立して注入できることが理解される。さらに、乾燥試薬を様々なチャンバ292に供給し、水を注入する際に水和するのではなく、特定の湿潤試薬を所望に応じて各チャンバに注入できることが理解される。それに加えて、チャンバ292の1つまたは複数には水のみを供給することができ、必要な試薬が適切な反応ブリスタ内で乾燥させて供給されてもよいことが理解される。特定の反応の必要性によって決定付けられるような、上述のものの様々な組み合わせが、本発明の範囲内にある。
図6で分かるように、付属部品290の底面297上に任意の突起213が設けられる。図示されるように、突起213はそれら個々の入口チャネル215内に位置する。しかし、他の構成も可能である。突起213は、入口チャネル215を開放し、プランジャ268が押し下げられたときに入口チャネル215をピンチオフするような形で、底面297が別の平坦面を係合するのを防ぐのを支援し、それによってプランジャ268を活性化する際の逆流を防ぐ助けとなる。かかる突起は、本発明による様々なパウチのいずれに使用されてもよい。
水がパウチに注入されて、付属部品の複数のチャンバ内にある複数の乾燥試薬を水和する実施形態では、注入ポートと多数のチャンバとの間でチャネルを閉止する手段が望ましい。チャネルが閉止されない場合、各プランジャの活性化によって、その個々のチャンバの内容物の一部がチャネルに戻ることがあり、場合によっては隣のチャンバが汚染され、チャンバに収容されそこから送達される体積が変更される。上述したようなノッチ付きのプランジャ268を回転させること、チャネルを横切ってプラスチックフィルムをヒートシールし、それによってチャネルを恒久的に閉止すること、およびピンチ弁としてチャネルに圧力を印加することを含む、このチャネルを閉止するいくつかの方法が使用されてきた。付属部品に組み込まれた弁、例えば一方向弁など、他の閉鎖も使用されてもよい。
流体がチャンバ292に装填され、パウチ210が機器に装填された後、プランジャ268aが、例えば空気圧ピストンの活性化によって押し下げられて、サンプルの余りがチャネル214を介して三葉ブリスタ220に流し込まれる。図1および5に示される実施形態と同様に、三葉ブリスタ220の葉224、226、および228は、図7〜9に示される、ブラダーアセンブリ810の作用ブラダー824、826、および828を介して連続して圧縮されて、液体が葉の間の狭いネクサス232を通され、高速衝突が駆動され、サンプルが剪断し、例えば開きにくい胞子(hard-to-open spores)、細菌、および真菌からの核酸を含む、核酸が遊離する。細胞溶解は、適当な時間長の間、例えば0.5〜10分間継続する。
一旦細胞が適切に溶解されると、プランジャ268bが活性化され、チャンバ292bに格納された核酸結合磁性ビーズが、チャネル236を介して三葉ブリスタ220の上側の葉228に注入される。サンプルは磁性ビーズと混合され、混合物を適当な時間長の間、例えば約10秒〜10分間培養することができる。
サンプルおよびビーズの混合物は、ブラダー826の作用によってチャネル238を通ってブリスタ244に、次にブラダー844の作用によってチャネル243を通ってブリスタ246に流し込まれ、そこで、図8に示される、ブリスタ245に隣接して機器800内に配置された格納式の磁石850が、溶液からの磁性ビーズを捕捉して、ブリスタ246の内表面に接してペレットを形成する。次に、ブリスタ246の上に位置付けられた空気圧ブラダー846が、液体をブリスタ246から押し出し、ブリスタ244を通して、この場合は廃棄物レセプタクルとして使用されるブリスタ222に戻す。しかし、図5に関して上述したように、他の廃棄物レセプタクルが本発明の範囲内にある。プランジャ268c、268d、および268eの1つが活性化されて、洗浄溶液を、チャネル245を介してブリスタ244に、次にチャネル243を介してブリスタ246に供給してもよい。任意に、磁石850は撤回され、磁性ビーズは、ブラダー844および846を交互に加圧することにより、チャネル243を介してブリスタ244および246からビーズを前後に移動させることによって洗浄される。一旦磁性ビーズが洗浄されると、磁性ビーズは、磁石850の活性化によってブリスタ246内で再捕捉され、次に洗浄溶液がブリスタ222へと移動させられる。このプロセスは、溶解緩衝液およびサンプルのデブリを核酸結合磁性ビーズから洗い流すため、必要に応じて繰り返されてもよい。例えば、チャンバ292c、292d、および292e内の洗浄試薬を1回ずつ使用して、3回の洗浄が行われる。しかし、より多数またはより少数の洗浄が本発明の範囲内にあることが理解される。より多数の洗浄が望ましい場合、より多数のチャンバ292が提供されてもよい。あるいは、各チャンバ292がより多量の流体を保持してもよく、プランジャの活性化によって、活性化毎に体積の一部のみがチャンバから押し出されてもよい。
洗浄後、チャンバ292fに格納された溶出緩衝液は、チャネル247を介してブリスタ248へと移動させられ、磁石は撤回される。溶液はチャネル252を介してブリスタ246および248の間で循環されて、ブリスタ246内の磁性ビーズのペレットが破壊され、捕捉された核酸をビーズから解離し溶液に加えることが可能になる。磁石850は再度活性化されて、ブリスタ246内で磁性ビーズが捕捉され、溶出された核酸溶液がブリスタ248に流し込まれる。
プランジャ268hは押し下げられ、チャンバ292hからの第一段階PCRマスターミックスはブリスタ248内の核酸サンプルと混合される。任意に、混合物は、ブラダー848および864を交互に活性化して、チャネル253を介して248および264の間で混合物を移動させることによって混合される。いくつかの混合サイクル後、溶液は、第一段階多重PCRが行われるブリスタ264に収容される。望ましい場合、混合に先立って、例えば第一段階PCRマスターミックスをブリスタ264内へと移動させることによって、またはブリスタ248に隣接してヒーターを提供することによって、第一段階PCRマスターミックスを予熱する間、サンプルがブリスタ246内で保定されてもよい。上述したように、この予熱はホットスタートPCRの利益をもたらしてもよい。図8に示される機器800は、サンプルを加熱し冷却する、ペルチェベースの熱サイクラー886および888を特徴とする。しかし、上述したように、他のヒーター/クーラーデバイスが使用されてもよいことが理解される。任意に、ブリスタ248および264の間での混合は、両方のブリスタ248および264を加熱し冷却するように位置付けられた熱サイクラー886を用いて、温度サイクリングの間継続してもよい。かかる混合によって、いくつかの実施形態において第一段階PCR反応が改善することが見出されている。また、熱サイクリングは、2つ以上の異なるブリスタの温度を変化させ、エネルギー消費を最小限に抑えられるようにし、熱サイクリング速度を最大にすることによって達成することができる。例えば、温度は、ブリスタ248で95℃、ブリスタ264で65℃に維持することができ、これらのブリスタ間でサンプルを移動させることによって、熱がサンプルを有効に出入りして、迅速かつ正確な熱サイクリングが可能になる。温度サイクリングは、例えば15〜20サイクル行われるが、上述したように、用途に応じて、他のレベルの増幅が望ましいことがある。以下で分かるように、第二段階増幅域280は18の第二段階反応で増幅を検出するように構成されている。したがって、18の異なるプライマー対が、ブリスタ264内におけるPCR反応に含まれてもよい。
代替のホットスタート方法では、パウチ210は、ブリスタの1つ、例えばブリスタ264内に提供されるプライマーを有して製造される。一実施形態では、プライマーは、別個に凍結乾燥され、次に製造中に、脆いペレットとしてブリスタ264に導入される。第一段階PCRに先立って、例えば、サンプルはブリスタ246から溶出され、ブリスタ264まで押し進められてプライマーペレットを再水和する。ブリスタ248および264に隣接して位置付けられるペルチェ886は、48℃まで加熱され、PCRマスターミックスはブリスタ248まで押し進められる。2つのブリスタが48℃に達するまでの、例えば10秒間の保持の後、ブリスタ248および264の間の混合が始まる。したがって、構成成分が別個に48℃に達するまで、酵素およびdNTPはブリスタ248内に残り、サンプルおよびプライマーの大部分はブリスタ264内に残る。しかし、48℃という選択は、第一段階増幅と、50℃以下で活性であるAMVを使用したRTとを同時に行う場合に使用したことが理解される。RTが不要の場合、またはより熱安定性の高いRT酵素が使用される場合、特定の第一段階増幅プロトコルにおけるプライマー融解温度または他の因子に応じて、2つのブリスタ248および264の一方または両方が58℃以上に加熱されてもよい。このホットスタート方法が、本発明の任意の実施形態とともに使用されてもよいことが理解される。
代替実施形態では、第一段階PCR反応の複雑さを低減するため、ブリスタ248は2つ以上のブリスタに分割されてもよい。多重反応の非特異的な生成物の数は、混合物中のプライマーの数の二乗(または場合によってはより高倍率)に増加し、一方で、検定の感度の損失は入力サンプルの量の線形関数であると考えられる。したがって、例えば、第一段階PCRを、この実施形態の単一の反応量のそれぞれ半分である2つの反応に分割することで、感度が2分の1に低減されるが、非特異的な反応の量および複雑さは4分の1程度になる。ブリスタ248が2つ以上のブリスタに分割される場合、ブリスタ264は、ブリスタ248の数に等しい数のブリスタに分割されてもよい。個々のブリスタ248はそれぞれ、個々のチャネル253を介して、その個々のブリスタ264に接続されることになる。各ブリスタ264は、すべてのプライマーの部分集合を含むペレットを備えることになる。ブリスタ246からのサンプルは各ブリスタ248にわたって分割され、各ブリスタ248は他のすべてから封止され、熱サイクリングは、上述したように、ブリスタ248および264の各対を用いて進行することになる。熱サイクリング後、サンプルは、ブリスタ266内へと再結合されるか、または第二段階ブリスタの別個の組へと個々に送られることになる。
所望のサイクル数にわたって第一段階PCRが進行した後、サンプルは、少量のみを残してサンプルの大部分をブリスタ248内に戻し、チャンバ292iからの第二段階PCRマスターミックスを添加することによって、図5の実施形態に関して上述したように希釈されてもよい。あるいは、292iからの希釈緩衝液は、チャネル249を介してブリスタ266へと移動させられ、次に、流体をブリスタ264および266の間で前後に移動させることによって、ブリスタ264内の増幅サンプルと混合されてもよい。混合後、ブリスタ264に残っている希釈されたサンプルの一部分は、ここでは廃棄物レセプタクルである三葉ブリスタ222へと押し流される。望ましい場合、希釈は、チャンバ292jおよび292kからの希釈緩衝液を使用して、複数回繰り返されてもよく、次に、チャンバ292gからの第二段階PCRマスターミックスが、希釈された増幅サンプルの一部またはすべてに添加される。希釈ステップの数を変更することによって、または希釈緩衝液もしくは第二段階PCRマスターミックスとの混合に先立って廃棄されるサンプルの割合を変更することによって、希釈のレベルが調節されてもよいことが理解される。望ましい場合、サンプルおよび第二段階PCRマスターミックスのこの混合物は、第二段階増幅のために第二段階ブリスタ282へと移動させるのに先立って、ブリスタ264内で予熱されてもよい。上述したように、かかる予熱は、第二段階PCR混合物中のホットスタート構成成分(抗体、化学薬品、その他)の必要性を取り除いてもよい。
実例となる第二段階PCRマスターミックスは不完全であってプライマー対が欠落しており、18個の第二段階ブリスタ282にはそれぞれ、特異的なPCRプライマー対が予備装填される。望ましい場合、第二段階PCRマスターミックスは他の反応構成成分が欠落していてもよく、それにより、これらの構成成分は、同様に第二段階ブリスタ282に予備装填されてもよい。上記例に関して上述したように、各プライマー対は、第一段階PCRプライマー対と同一であってもよく、または第一段階プライマー対内で入れ子であってもよい。サンプルをブリスタ264から第二段階ブリスタへと移動させることで、PCR反応混合物が完成する。チャンバ292lからの対照サンプルも、チャネル267を介して対照ブリスタ283へと移動させられる。対照サンプルは、所望に応じて陽性または陰性の対照であってもよい。例えば、各パウチは、プロセスにおける各ステップの動作を検証し、陽性の結果は以前に増幅された核酸による自己汚染の結果ではないことを実証する、対照反応を含むことになる。しかし、これは多くのプロトコルにおいて、特に高度に多重化された反応の場合に実用的でない。適切な対照を提供する1つの実例となる方法は、パン酵母などの種をサンプルに加えることを伴う。核酸は、他の核酸とともに、酵母から抽出される。第一および第二段階PCR反応は、酵母ゲノムからのDNAおよび/またはRNA標的を増幅する。例えば、スプライシングしたmRNA前駆体由来のmRNA配列を使用して、イントロンをつなぐようにプライマー配列を配置することによって、RNA特異的な標的配列を生成することができる。参照標準に対する酵母コピー数を定量的に分析することによって、システムの各構成要素が作動していることの実質的な検証が可能になる。多くの第二段階検定それぞれに対する陰性対照反応が、より大きな問題である。対照反応を並行して、または別個の実行において行うことが望ましいことがある。
ブラダーアセンブリ810のブラダー882を活性化することによって、サンプルがそれらの個々の第二段階ブリスタ282、283に封止され、ブラダー880を活性化することによって、第二段階ブリスタ282、283に対して緩やかな圧力が掛かって、第二段階ブリスタ282、283がヒーター/クーラーデバイスと接触する。第二段階増幅域280の上に位置付けられたウィンドウ847によって、PCR中、および反応生成物のDNA融解曲線分析中の、アレイの蛍光モニタリングが可能になる。
図6のパウチ210は、未封止の範囲255および未封止の範囲256など、いくつかの未封止の範囲を有することに留意されたい。これらの未封止の範囲は、この実施形態における反応のいずれにも関与しないブリスタを形成する。むしろ、これらの未封止の範囲は、作動中のブリスタとチャネルとの間の空間に提供される。いくつかの製造プロセスでは、すべての未使用の空間に封止されるパウチと比べて、255および256などの未封止の範囲が提供されたとき、恐らくはフィルム材料における問題となるしわを低減することによって、漏れがより少なくなる場合があることが見出されている。かかる未封止の範囲は、任意に、あらゆるパウチの実施形態で提供されてもよい。
図8は、パウチ210とともに使用することができる、実例となる装置800を示す。機器800は、ケーシングの壁を形成することができる、またはケーシング内に搭載することができる、支持部材802を含む。機器800はまた、パウチ210の挿入および抜出しを可能にする、支持部材802に対して任意に移動可能である第2の支持部材804を含む。可動の支持部材804は、トラック上に搭載されてもよく、または様々な方法のいずれかで支持部材802に対して移動させてもよい。例えば、一旦パウチ210が機器800に挿入されると、蓋805がパウチ210の上に適合する。別の実施形態では、両方の支持部材802および804が固定され、パウチ210が他の機械的手段によって、または空気圧によって適所で保持されてもよい。
例えば、ブラダーアセンブリ810および空気圧弁アセンブリ808は可動部材802上に搭載され、ヒーター886および888は支持部材802上に搭載される。しかし、この配置は単なる例示であり、他の配置が可能であることが理解される。ブラダーアセンブリ810および空気圧弁アセンブリ808が可動の支持部材804上に搭載されると、これらの空気圧アクチュエータを、空気圧アクチュエータがパウチ210と接触するように、パウチ210に向かって移動させてもよい。パウチ210が機器800に挿入され、可動の支持部材804が支持部材802に向かって移動させられると、パウチ210の様々なブリスタは、ブラダーアセンブリ810の様々な空気圧ブラダーおよび空気圧弁アセンブリ808の様々な空気圧ピストンに隣接した位置にあるので、空気圧アクチュエータを活性化することによって、液体がパウチ210のブリスタの1つもしくは複数から押し出されてもよく、またはパウチ210の1つもしくは複数のチャネルとともにピンチ弁が形成されてもよい。パウチ210のブリスタおよびチャネルと、ブラダーアセンブリ810および空気圧弁アセンブリ808の空気圧アクチュエータとの間の関係については、図9および10に関して以下でより詳細に考察する。
各空気圧アクチュエータは1つまたは複数の空気圧管継手を有する。例えば、ブラダーアセンブリ810のブラダー824は空気圧管継手824aを有し、空気圧ピストン843はそれに関連する空気圧管継手843aを有する。実施形態では、ブラダーアセンブリ810の空気圧管継手はそれぞれ、可動の支持部材804の通路816を通って延在し、そこでホース878が弁899を介して各空気圧管継手を圧縮空気源895に接続する。実施形態では、通路816は圧縮空気源895へのアクセスを提供するだけでなく、通路はまた、ブラダーがパウチ210のブリスタと適正に並ぶように、ブラダーアセンブリ810の様々な構成要素を位置合わせする助けとなる。
同様に、空気圧弁アセンブリ808も可動の支持部材804上に搭載されるが、他の構成も可能であることが理解される。実施形態では、空気圧弁アセンブリ808のピン858は、可動の支持部材804上の搭載開口部859に嵌め込まれ、空気圧ピストン843、852、853、および862は、可動の支持部材804の通路816を通って延在してパウチ210に接触する。例証されるように、ブラダーアセンブリは可動の支持部材804の第1の面811に搭載され、空気圧弁アセンブリ808は可動の支持部材804の第2の面812に搭載される。しかし、空気圧ピストン843、852、853、および862が通路816を通って延在するため、空気圧弁アセンブリ808の空気圧ピストンおよびブラダーアセンブリ810の空気圧ブラダーは、ともに作動して、パウチ210に必要な空気圧アクチュエータを提供する。
上述したように、ブラダーアセンブリ810および空気圧弁アセンブリ808の空気圧アクチュエータはそれぞれ、関連する空気圧管継手を有する。いくつかのホース878のみが図8に示されているが、各空気圧管継手は、ホース878を介して圧縮ガス源895に接続されることが理解される。圧縮ガス源895はコンプレッサであってもよく、あるいは、圧縮ガス源895は、二酸化炭素シリンダなどの圧縮ガスシリンダであってもよい。圧縮ガスシリンダは、可搬性が望ましい場合に特に有用である。他の圧縮ガス源は本発明の範囲内である。
機器810の他のいくつかの構成要素も圧縮ガス源895に接続される。支持部材802の第1の面813に搭載される磁石850は、例えば、ホース878を介した圧縮ガス源895からのガスを使用して配備され撤回されるが、磁石850を移動させる他の方法が当該分野において知られている。磁石850は、支持部材802の陥凹部851に収まる。陥凹部851は支持部材802を通る通路であることができるので、磁石850はパウチ210のブリスタ246に接触できることが理解される。しかし、磁石850が配備されるとき、磁石850がブリスタ246に十分な磁場を提供するのに十分に近く、磁石850が撤回されるとき、磁石850がブリスタ246内に存在するいずれの磁性ビーズにも有意に影響しない限り、支持部材802の材料に応じて、陥凹部851が必ずしも支持部材802全体を通って延在しなくてもよいことが理解される。磁石850の撤回を参照すると、電磁石が使用されてもよく、電磁石を通る電気の流れを制御することによって電磁石が活性化され不活性化されてもよいことが理解される。したがって、本明細書では磁石の抜出しまたは撤回について考察するが、これらの用語は磁場を抜き出す他の方法を組み込むのに十分に広範であることが理解される。空気圧接続は、空気圧ホースまたは空気圧マニホルドであってもよく、したがって必要なホースまたは弁の数が低減されることが理解される。
支持体802上に搭載される、空気圧ピストンアレイ869の様々な空気圧ピストン868も、ホース878を介して圧縮ガス源895に接続される。空気圧ピストン868を圧縮ガス源895に接続する2つのホース878のみが示されているが、空気圧ピストン868はそれぞれ圧縮ガス源895に接続されることが理解される。12個の空気圧ピストン868が示される。パウチ210が機器800に挿入されると、12個の空気圧ピストン868は、パウチ210のそれら個々の12個のプランジャ268を活性化させるように位置付けられる。蓋805がパウチ210の上で閉止されると、蓋805の上のリップ806が付属部品290を支持するので、空気圧ピストン868が活性化されると、蓋805が付属部品290を適所で保持する。付属部品290の他の支持体は、本発明の範囲内にあることが理解される。
一対の加熱/冷却デバイス、例えばペルチェヒーターが、支持体802の第2の面814に搭載される。第一段階ヒーター886は、第一段階PCRのために、ブリスタ264の内容物を加熱および冷却するように位置付けられる。第二段階ヒーター888は、第二段階PCRのために、パウチ210の第二段階ブリスタ282および283の内容物を加熱および冷却するように位置付けられる。しかし、これらのヒーターを他の加熱目的にも使用することができ、特定の用途に対して適切に、他のヒーターが含まれてもよいことが理解される。
望ましい場合、サンプルが実際に特定のブリスタに流れ込んだかに関してフィードバックを提供する、フィードバック機構(図示なし)が機器800に含まれてもよい。実例となるフィードバック機構は、特に蛍光または着色色素が含まれる場合、温度もしくは圧力センサまたは光学検出器を含む。かかるフィードバック機構は、例えば、支持部材802または804のどちらかに搭載されてもよい。例えば、圧力センサは、ブリスタ264の位置に隣接して支持体802に搭載されてもよい。サンプルが仮にブリスタ264へと移動させられると、圧力センサが押し下げられた場合、サンプル処理を継続することが可能になる。しかし、圧力センサが押し下げられない場合、サンプル処理が停止されてもよく、またはエラーメッセージが画面892に表示されてもよい。ブリスタすべての任意の組み合わせがフィードバックを有して、パウチを通るサンプルの適正な移動に関するフィードバックを提供してもよい。
蛍光検出が望ましい場合、光学アレイ890が提供されてもよい。図8に示されるように、光学アレイ890は、光源898、例えばフィルタ付きLED光源、フィルタ処理済みの白色光、またはレーザー照明と、カメラ896とを含む。可動の支持体804を通るウィンドウ847は、パウチ210の第二段階増幅域280へのアクセスを光学アレイ890に提供する。カメラ896は、例えば、パウチ210の第二段階ブリスタ282、823にそれぞれ対応する複数の光検出器を有する。あるいは、カメラ896は、第二段階ブリスタ282、283をすべて含む画像を撮ってもよく、画像は、第二段階ブリスタ282、283それぞれに対応する別個のフィールドに分割されてもよい。構成に応じて、光学アレイ890は定置であってもよく、または、光学アレイ890は、1つもしくは複数のモータに取り付けられた移動装置上に配置され、個々の第二段階ブリスタ282、283それぞれからの信号を得るように移動させられてもよい。他の配置が可能であることが理解される。
図示されるように、コンピュータ894は、圧縮空気源895の弁899を制御し、したがって、機器800の空気圧すべてを制御する。コンピュータ894はまた、ヒーター886および888ならびに光学アレイ890を制御する。これらの構成要素はそれぞれ、例えばケーブル891を介して、電気的に接続されるが、他の物理的または無線接続が本発明の範囲内にある。コンピュータ894は、機器890内に収納されてもよく、または機器890の外部にあってもよいことが理解される。さらに、コンピュータ894は、構成要素のいくつかまたはすべてを制御する内蔵回路基板を含んでもよく、また、光学アレイからデータを受信し表示する、デスクトップもしくはラップトップPCなどの外部コンピュータを含んでもよい。温度、サイクル数などの情報および変数を入力するキーを含む、インターフェース893、例えばキーボードインターフェースが提供されてもよい。例えば、ディスプレイ892も提供される。ディスプレイ892は、例えば、LED、LCD、または他のかかるディスプレイであってもよい。
図9は、機器800の動作中におけるブラダーアセンブリ810とパウチ210との間の関係を示す。ブラダーアセンブリは、サブアセンブリ815、817、818、819、および822を備える。ブラダーサブアセンブリ815のブラダー809は大型であるため、ブラダーサブアセンブリ815は、例えば、2つの空気圧管継手815aおよび815bを有する。ブラダー809は、チャンバ292を(図6に示されるように)パウチ210のプラスチックフィルム部分217から閉鎖するのに使用される。プランジャ268の1つが押し下げられると、空気圧管継手815aおよび815bの一方または両方によってブラダー809を収縮させることができる。チャンバ292の1つからの流体が通過した後、ブラダー809が再加圧されて、チャネル214、236、245、247、および249が密閉される。実例となるブラダーサブアセンブリ815は1つのみのブラダー809を有するが、例えば、チャネル214、236、245、247、および249がそれぞれ、それ自体の関連するブラダーまたは空気圧ピストンを有する、他の構成も可能であることが理解される。ブラダーサブアセンブリ822は、例えば、3つのブラダー824、826、および828を備える。上述したように、ブラダー824、824、および828は、細胞溶解のために三葉ブリスタ222を駆動する。例証されるように、ブラダー824、826、および828はそれらの対応するブリスタ224、226、228よりもわずかに大きい。ブラダーの表面は、膨張すると、ある程度ドーム状になることができ、わずかに大きすぎるサイズのブラダーを使用することによって、対応するブリスタの表面全体に良好に接触することが可能になり、ブリスタのより均一な圧力およびより良好な排気が可能になることが見出されている。しかし、状況によっては、個々のブリスタの完全な排気は望ましいことも望ましくないこともあり、排気されるブリスタの容積を制御するため、より大型またはより小型のブラダーが使用されてもよい。ブラダーサブアセンブリ817は4つのブラダーを有する。ブラダー836は、チャネル236のピンチ弁として機能し、ブラダー844、848、および866はそれぞれ、ブリスタ244、248、および266に圧力を供給するように構成されている。ブラダーサブアセンブリ818は、ブリスタ246および264にそれぞれ圧力を供給するように構成されている、2つのブラダー846および864を有する。最後に、ブラダーサブアセンブリ819は第二段階増幅域280を制御する。ブラダー865はチャネル265および267のピンチ弁として作用し、ブラダー882は、第二段階ブリスタ282および283に緩やかに圧力を供給して、第二段階ブリスタをヒーター888と密接に接触させる。ブラダーアセンブリ810は5つのサブアセンブリを備えるが、この構成は単なる例示であり、任意の数のサブアセンブリを使用することができ、ブラダーアセンブリ810を単一の統合アセンブリとして提供できることが理解される。
図10は、同様に、機器800の動作中における空気圧弁アセンブリ808とパウチ210との間の関係を示す。空気圧弁アセンブリ808は、ブラダーではなく、4つの空気圧ピストン842、852、853および、862を有する。これらの空気圧ピストン842、852、853、および862は、圧縮空気によってそれぞれ駆動され、チャネル242、252、253、および262に対して指示された圧力を供給する。ピストンの直径はかなり狭いため、ブラダーサブアセンブリ817とブラダーサブアセンブリ818との間に適合して、チャネル242、252、253、および262に対してピンチ弁を提供して、チャネル242、252、253、および262をかなり短くするのを可能にすることができる。しかし、望ましい場合、空気圧ピストン842、852、853、および862を、ブラダーアセンブリ810に含まれてもよいブラダーに置き換えて、空気圧弁アセンブリ808の必要性を取り除くことができる。ブラダーおよび空気圧ピストンの任意の組み合わせが本発明の範囲内にあることが理解される。また、当該分野において知られているような、パウチ210のチャネルおよびブリスタに圧力を供給する他の方法が、本発明の範囲内にあることが理解される。
図12は、図6のパウチ210と類似したパウチ510を示す。入口チャネル515a〜515lを有する付属部品590は、入口チャネル215a〜215lを有する付属部品290と類似している。個々のチャネル538、543、552、553、562、および565を有するブリスタ544、546、548、564、および566は、パウチ210の個々のチャネル238、243、252、253、262、および265を有するブリスタ244、246、248、264、および266に類似している。パウチ210のチャネル245、247、および249は、パウチ510上のチャネル545a〜c、547a〜b、および548a〜cとして多少再構成されており、510の個々のチャネルは、パウチ210上のそれらに対応するチャネルより多少短い。しかし、チャネル構成は単なる例示であり、様々なチャネル構成が本発明の範囲内にあることが理解される。
図12のパウチ510と図6のパウチ210との間には2つの主な違いがある。第一に、三葉ブリスタ222が溶解ブリスタ522と置き換えられている。溶解ブリスタ522は、図2bに示されるような、電気モータ19に取り付けられた回転ブレードまたはパドル21を使用して、衝撃によってボルテックス形成するように構成されている。この溶解方法は、空気圧ピストンの交互の圧力に依存しないので、一葉ブリスタのみが示される。溶解ブリスタ522は単一の葉のみを有するので、両方のチャネル514および536は溶解ブリスタ522の単一の葉につながる。溶解ブリスタ522が、本明細書に開示されるパウチの実施形態のいずれに使用されてもよいことが理解される。さらに、溶解アセンブリ810は、例えば、ブラダーサブアセンブリ822のブラダー824、826および828を、ブリスタ522用に構成された単一のブラダーと置き換えるように修正されてもよいことが理解される。反対に、上述の他の様々な実施形態に記載したような三葉ブリスタが、パウチ510に使用されてもよい。溶解ブリスタ522は、例えば、接着剤または積層を使用して溶解ブリスタ522の外表面に取り付けられる、任意の補強パッチ523を備えてもよい。補強パッチ523は、パドル21が繰返し接触することによるパウチ510の裂けを最小限に抑える助けとなる。図13は、第2の支持部材804上に搭載された電気モータ、例えばマブチRC−280SA−2865直流モータ(千葉、日本)を示す。実例となる一実施形態では、モータは、5,000〜25,000rpmで、さらに例えば10,000〜20,000rpmで、さらにまた例えば約15,000〜18,000rpmで回転する。マブチモータの場合、7.2Vで溶解に十分なrpmが提供されることが見出されている。しかし、ブレード21がパウチ510に衝撃を与えれば、実際の速度は多少低速であってもよいことが理解される。使用されるモータおよびパドルに応じて、他の電圧および速度が溶解に使用されてもよい。任意に、少量の制御された空気が、溶解ブリスタ522に隣接したブラダーに供給されてもよい。いくつかの実施形態では、隣接したブラダーに1つもしくは複数の少量の空気を部分的に充填することは、溶解プロセス中に溶解ブリスタを位置付け支持する助けとなることが見出されている。あるいは、他の構造、例えば、溶解ブリスタ522の周りの剛性もしくは柔軟なガスケットまたは他の保定構造を使用して、溶解中にパウチ510を拘束することができる。
図12のパウチ510と図6のパウチ210との間の第2の主な違いは、第二段階増幅域280のブリスタ281、282、および283が、第二段階増幅域580内の高密度アレイ581と置き換えられていることである。高密度アレイ581は、複数の第二段階ウェル582、例えば50以上のウェル、さらに例えば120以上のウェルを備える。より多数の、例えば約200、約400、またはさらには約500以上の第二段階ウェル582を含む実施形態は、本発明の範囲内にある。他の構成も同様に本発明の範囲内にある。追加の第二段階ウェル582は、ウェル582をより小さく作ることによって、高密度アレイ581をより大きくすることによって、またはそれらの組み合わせによって追加されてもよい。第二段階PCRの場合、ウェルはそれぞれ一対のプライマーを収容してもよい。1つまたは複数のウェルが陽性または陰性対照に使用されてもよいことが理解される。
ブリスタ566内の希釈された第一段階増幅生成物がウェルに充填されるにつれて、ウェル間の相互汚染が主要な問題となり得る。相互汚染は、パウチ210では、図9に示されるように、チャネル265の別個のブランチを通して各第二段階ブリスタを充填し、次にブラダー882で封止することによって制御していた。流体がブリスタ584のいくつかまたはすべてを充填してもよい、高密度アレイ581を用いると、ウェル間の相互汚染も制御しなければならない。一実施形態では、第二段階PCRプライマーは、各ウェルの内表面に対して共有結合的または非共有結合的に結合され、それによってPCRチップと非常に類似して機能してもよい。しかし、多くの実施形態では、PCRプライマーをウェルに係留することなく、ウェル間の相互汚染を制御することが望ましい。ウェル間の相互汚染の制御は、ブリスタ566からの流体が高密度アレイ581の第1の表面581aを横切って流れることによってウェル582へと移動させられる一実施形態において、困難な場合がある。
第二段階増幅域580の装填を成功させるための、いくつかの望ましい特徴がある。第一に、ブリスタ566から入ってくる流体が、ウェル582のほぼすべてをほぼ同じレベルまで充填することが望ましい。充填されていないウェルは偽陰性信号を生成することになる。第二に、ウェル582を充填するプロセスによって、ウェル内のプライマーの漏れを引き起こさないことが望ましい。1つのウェルからのプライマーの損失によって、そのウェルにおけるPCR反応の効率が制限される場合があり、隣のウェルを汚染する場合がある。第三に、ウェル582が充填され、PCRが開始された後、ウェルは互いから完全に封止されることが望ましい。単位複製配列が1つのウェルから漏れ出し、別のウェルに入ることによって、第1のウェルの信号が低下し、第2のウェルの信号が上昇し、場合によっては第1のウェルの偽陰性および第2のウェルの偽陽性に結び付く可能性がある。さらに、特定の種類の対照の場合、1つのウェルで生成された単位複製配列が、それをさらに増幅させ得る別のウェルに入らないことが重要である。
この問題に対する解決策は、バリア層を使用することを含む。一例では、バリア層は、ウェルを迅速に装填し、バルク流体から迅速に封止することを可能にするために提供される、物理的バリアである。別の例では、組み合わされた科学的および物理的バリアが使用され、物理的バリアはウェルを封止するのに使用され、次に化学的バリアが、例えば加熱、徐放、または酵素消化によって、オリゴヌクレオチドプライマーをウェル溶液内へと条件付きで放出する。ウェル深さ、または各ウェルまでのチャネル長さも、ウェルからの試薬の放出を制御するのに使用されてもよい。高密度アレイ581を装填する他の手段が可能である。
図12〜15は、物理的バリアを使用する第二段階580の実例となる一実施形態を示す。パウチ510の第1の層518と第2の層519との間に、高密度アレイ581がウェル582とともに挟まれる。図14で最も良く分かるように、穿孔586を有する穿孔層585は、高密度アレイ581の一面に提供されて物理的バリアとして作用し、第2の層587は、高密度アレイ581の反対側の面に提供されてウェル582の底部を形成する。例えば、穿孔層585および第2の層587は、例えばヒートシールによって、高密度アレイ581に封止されているプラスチックフィルムであるが、他の封止方法が用いられてもよいことが理解される。また、高密度アレイ581に使用される材料、ならびに穿孔層585および第2の層587に使用される材料は、互いに対して、封止方法に対して、かつ使用される化学作用に対して適合性であるべきであることが理解される。PCRに使用されるとき、高密度アレイ581に使用することができ、かつヒートシールすることができる適合性のプラスチックの例は、PE、PP、Monprene(登録商標)、および他のブロックコポリマーエラストマーである。蛍光色素が検出化学作用で使用される場合、高密度アレイ581は、1つのウェル582からその隣のウェルへの信号漏れを最小限に抑えるため、黒色または他の比較的蛍光不透過性の材料から形成され、層585および587の少なくとも1つに関しては、比較的蛍光透過性の材料から形成されるのが望ましいことがある。穿孔層585および第2の層587の場合、Mylar(登録商標)またはPETなどの強いエンジニアリングプラスチックと、PE、PP、およびDupont Surlyn(登録商標)などのヒートシール可能なプラスチック層との積層体が使用されてもよい。接着剤ベースのシステムの場合、PETまたはポリカーボネートなどの剛性のエンジニアリングプラスチックを使用して、高密度アレイ581が形成されてもよく、次に、PCR適合性プラスチックのフィルムが、穿孔層585および第2の層587として使用される。実例となる一実施形態では、高密度アレイ581は黒色のPEで形成され、合成ポリエチレン/PET積層体(またはXerox(登録商標)PN 104702ホットラミネート加工パウチ材料)が、穿孔層585および第2の層587に使用され、それが高密度アレイ581にヒートシールされ、剛性ポリプロピレン/PETが、パウチ510の第1および第2の層518、519に使用される。
穿孔586はウェル582と並ぶことが理解される。また、穿孔586は、何らかの力なしでは、流体が穿孔586を通って容易に流れないように十分に小さいことが理解される。実例となる穿孔は、0.001〜0.1mm、例えば0.005〜0.02mm、さらに例えば約0.01mmであってもよい。実施形態では、第二段階増幅域580は真空下で提供されるので、流体がブリスタ566から受け入れられると、真空によって流体が穿孔586を通して各ウェル582に引き込まれる。一旦ウェル582が充填されると、流体をウェル582に流し込む、またはウェル582から押し出す力はもう存在しない。次に、第二段階増幅域580に隣接したブラダー(図示されないが、ブラダー880/882と位置が類似している)が活性化されて、第1の層518を高密度アレイ581に押し付け、流体をウェル582内に封止してもよい。パウチ510の第1の層518がウェル582を封止するのに使用されるが、穿孔層585と第1の層510との間に任意の封止層が提供されてもよいことが理解される。
1つの実例となる例では、第二段階増幅域580は以下のように調製されてもよい。高密度アレイ581は、最初に、ウェルのアレイ582をプラスチックシート(例えば、厚さ0.1〜1mm)に穴開け、成型、または別の形で形成することによって調製されてもよい。ウェルは、望ましい任意の規則的または不規則なアレイを形成してもよく、例えば0.05μl〜20μl、さらに例えば0.1μl〜4μlの容積を有してもよい。次に、層585または587の1つが、例えば熱または接着剤によって、高密度アレイ581の第1の表面581aに積層される。図15に示されるように、穿孔層585は第1の表面の581aに適用される。次に、試薬589、例えばPCRプライマー対など、固有のアレイの化学作用の要素が、ピペッティングによって手作業で、あるいは自動的に(例えば、ピンスポッター、ドットマトリックススポッター、少量自動ピペット、またはマイクロ流体マイクロ接触スポッター(micro-fluidic micro-contact spotters)など、x/y位置決定可能なスポッターを使用して)ウェルにスポッティングされる。試薬589が各ウェル582内で乾燥された後、層585または587の第2のものがアレイ581の第2の表面581bに適用される。層585は、小径の針のアレイを使用して穿孔されて、穿孔586が形成される。穿孔586は、層585がアレイ581に固着される前または後のどちらかで形成されてもよい。穿孔前もしくは穿孔後の層585に対して、または層587に対して、スポッティングを行うことができることが理解される。予め穿孔された穴を有するアレイのスポッティングは、実質的に漏れを示さず、穿孔に使用される針が、スポッティングされた試薬に触れることによって汚染されないという利点が提供される。あるいは、漏れの可能性を最小限に抑え、スポッティングされた試薬をアレイの最も遠い位置に位置付けるため、試薬589を第2の層587上にスポッティングし、アレイ581を層585で封止し、次に層585を穿孔するのが望ましいことがある。実例となる例では、試薬は、GeSiM A060−324ナノプロッター2.1/E(Grosserkmannsdorf、ドイツ)を使用して、第2の層587上にスポッティングされる。かかるスポッターを使用して、複数のアレイが同時にスポッティングされてもよい。
一旦スポッティングされ穿孔されると、アレイ581は、パウチ510の層518および519の内部に配置され、例えば、ヒートシール、接着剤の使用、超音波溶接、機械的閉鎖、またはアレイ581をブリスタ584内のパウチ510の内部に封入する他の手段によって、適所で封止される。ブリスタ584は、チャネル565を介してブリスタ566に流体接続され、液体は、チャネル565からブリスタ584内へ、かつ穿孔586の上を流れることができることが理解される。1つの実例となる例では、ブリスタ584が形成されると、空気の経路を逃がすことができるように注意が払われる。これは、第二段階増幅域580に隣接した第1の層518の内表面を「ワッフル加工(waffling)」して、フィルム材料にわずかに隆起したテクスチャのパターンを刻印することによって達成することができる。これによって、空気および液体が穿孔層585の表面に沿って通ることが可能になり、より良好には、液体がウェル582に達し、それを充填することが可能になる。次に、パウチ510は真空チャンバの内部に配置され、排気される。例えば、圧力が約0.3ミリバールに達すると、真空チャンバ内部の空気圧シリンダが作動して、プランジャを付属部品590に押し込んでチャネル567を封止し、それによって、シールされたパウチ内部のアレイおよび真空チャンバからの経路が遮断される。複数の他のプランジャも、付属部品590に押し込まれて、様々な入口チャネル515が封止される。パウチは、真空チャンバから除去され、真空バッグ内で長期保存するためにパッケージ化されてもよい。
パウチ510は、パウチ210に類似した形で使用されてもよい。アレイ581は真空でパッケージ化されるので、液体がブリスタ566から第二段階増幅域580へと移動させられると、液体サンプルは穿孔586を通してウェル582に引き込まれる。過剰な液体は、空気圧ブラダーをアレイの上で膨張させることによって排除され、熱サイクリングは、例えばアレイの1つの面に押し付けられたペルチェ素子を加熱および冷却することによって、上述したように達成される。
上述したように、穿孔層585は、様々な適切な物理的または化学的バリアと置き換えられてもよい。化学的バリアを使用する、実例となる一実施形態では、穿孔層585は省略され、試薬589は、比較的ゆっくり溶解する緩衝液中でウェル582内にスポッティングされる。例えば、PEG、フィコール、もしくはポリソルベート20などのポリマー、またはスクロース、トレハロース、もしくはマンニトールなどの糖を適切な濃度で含有する試薬589は、第二段階PCR反応と適合性があり、単に水またはTris/EDTA中にスポッティングされたプライマーよりもゆっくりと溶解してもよい。上述したように、これらの緩衝液の1つにスポッティングされたプライマーは、ウェル582内で空気乾燥されてもよい(かかる一実施形態では、第2の層587はスポッティングのために高密度アレイ581に固着されることが理解される)。これらの同じポリマーが、酵素試薬(例えば、PCRで使用される酵素および緩衝液)の凍結乾燥に使用されて、安定化酵素を含有するオープンマトリックスが形成されてもよい。したがって、これらの緩衝液中にスポッティングされたプライマーを、ウェル582内の適所で凍結乾燥して、空気乾燥によるよりもゆっくりであるが、場合によってはより完全な再水和をもたらすことができる。パウチ510が使用されるとき、ブリスタ566からの流体は、真空または圧力によってウェル内へと駆動され、プライマーミックスを溶解し始める。適切にゆっくり溶解する緩衝液を選択することによって、第二段階増幅域580に隣接したブラダーを作動させると、各ウェル582の内容物が、あらゆる実質的な相互汚染に先立って中に封止される。
別の実施形態は、第二段階増幅域580が所定温度を上回って加熱されるまで溶解しないマトリックスを使用する。かかるマトリックスの1つの例は、GenePure LowMelt Agarose(ISCバイオエクスプレス(ISC Bioexpress))などの低融点アガロースである。一例では、このアガロースの1.5%溶液は、65℃で融解し、24〜28℃でゲル化する。スポッティングに先立って、試薬589は、例えば、50℃まで温められ、すでに融解しているこのアガロースと混合され、次に少量(例えば、100〜500nl)でウェル582内にスポッティングされてもよい。スポッティングの間、混合物を液体のまま保つため、これは、アガロースの融解温度を上回って加熱されたキャビネット内で行わなければならないことがある。あるいは、融解せずにアガロースの希釈溶液をピペッティングすることが可能であってもよい。アガロース/試薬の混合物がスポッティングされた後、高密度アレイ581が乾燥される。これは単純な空気乾燥であることができ、または、試薬を凍結乾燥できるように、プライマーとアガロースの混合物は、上述した糖およびポリマーを含有することができる。パウチ510がPCRに使用されるとき、ブリスタ566からの流体が高密度アレイ581内へと移動させられるにつれて、例えば55℃まで、第二段階増幅域580が加熱されてもよい。この温度では、アガロースは融解しないので、プライマーは溶液中へと放出されない。一旦高密度アレイ581が充填されると、対応するブラダーが膨張してウェルが封止される。第1のPCRサイクルの第1の変性ステップにおいて、温度が65℃を上回って上昇すると、プライマーを含有するアガロースが融解して、プライマーをマスターミックス内へと放出する。例えば、熱サイクリングは決して60℃(またはアガロースの他の融解温度)を下回らないので、アガロースは熱サイクリング中にゲル化しない。さらに、図8の実例となる機器800では、繰り返される温度サイクリングは、パウチの1つの面に配置されるヒーター888によって駆動される。ウェル582内のPCR溶液全体にわたる温度勾配が存在する場合が多く、それによって対流性の流体流によるプライマーの混合が容易になるはずであることが予期される。ワックスも同様の実施形態で使用されてもよい。
さらなる実施形態では、プライマーはウェル581に条件付きで結合されてもよく、ウェル581が充填された後、続いてプライマーが溶液中に放出される。プライマーがプラスチック基材にどのように取り付けられるかに応じて、プライマーは、熱(例えば、PCR反応の第1のサイクル中)、光(例えば、ウィンドウ847を通して照射する)、化学薬品(例えば、ジチオスレイトールを熱と併せることにより、プライマーをウェルにリンクさせるのに使用されてもよいジスルフィド結合が低減される)、あるいは酵素(例えば、組織プラスミノゲンアクチベータ(Tissue Plasminogen Activator)などの部位特異的なプロテアーゼを使用して、プライマーを基質に付着させる適切なペプチドリンカーを切断することができる)を使用して、切断されてもよい。
さらに別の実施形態では、増幅に続いて、あらゆる汚染の潜在的リスクをさらに最小限に抑えるため、DNaseが第二段階増幅域580に注入されてもよい。
第二段階増幅域580は、PCRとともに使用するために本明細書において記載されていることが理解される。しかし、パウチ510および第二段階増幅域580に対する他の用途は本発明の範囲内である。さらに、第二段階増幅域580は、核酸抽出および第一段階PCR増幅域とともに、またはそれらを伴わずに使用されてもよいことが理解される。最後に、第二段階増幅域580は、本明細書に開示されるパウチの実施形態のいずれかとともに使用されてもよいことが理解される。
入れ子多重PCR
機器800に類似した、ただしパウチ110用に構成された機器上で、一連の反応を図5のパウチ110内で実行した。二段階核酸増幅の細胞溶解および有効性を示すため、ログ相の出芽酵母および分裂酵母の生きた培養物各50μLを、健康なドナーからの鼻咽頭吸引物サンプル100μLと混合してサンプルを形成し、次に溶解緩衝液200μL(6MのグアニジンHCl、15%のトリトンX 100、3Mの酢酸ナトリウムと混合した。次に、溶解緩衝液中のサンプル400μLのうち300μLを、パウチ110のチャンバ192aに注入した。
ZSビーズ0.25gを三葉ブリス122内に封止して、パウチ110を製造した。後述するような第二段階プライマーも、パウチ110の製造中にブリスタ181および182内にスポッティングした。パウチ110は以下のようにして装填した。
115a 上述したようなサンプルおよび溶解緩衝液
115b 溶解緩衝液中の磁性ビーズ
115d〜e 洗浄緩衝液(クエン酸ナトリウム10mM)
115g 溶出緩衝液(Tris10mM、EDTA0.1mM)
115h 第一段階PCR緩衝液
dNTP0.2mM
各プライマー0.3μM
Sc1:RNAおよび出芽酵母のMEX67pに結合するYRA1核タンパク質の一部分を増幅するように構成されたプライマー。プライマーは、cDNA(M−MLVによって逆転写されたmRNA)の増幅によって180bpの単位複製配列を生じるようにして、イントロンの全体を増幅するように構成されている。
Sc2:出芽酵母のMRK1グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK−3)同族体のcDNAの121bp領域を増幅するように構成されたプライマー。
Sc3:出芽酵母のRUB1ユビキチン様タンパク質のcDNAの213bp領域を増幅するように構成されたプライマー。
Sp1:分裂酵母のsuc1−サイクリン依存性タンパク質キナーゼ調節サブユニットのcDNAの200bp領域を増幅するように構成されたプライマー。
Sp2:分裂酵母のsae14−細胞質因子ファミリーのcDNAの180bp領域を増幅するように構成されたプライマー。
MgCl2を3mM含むPCR緩衝液(BSAは含有しない)
M−MLV50単位
Taq:抗体4.5単位
RNAseOut100単位
115j〜k 第二段階PCR緩衝液
dNTP0.2mM
LC Green(登録商標)Plus(アイダホ・テクノロジー(Idaho Technology))1X
MgCl2を2mM含むPCR緩衝液(BSAを含有する)
Taq4.5単位
115l 第一段階単位複製配列のサンプルを含む第二段階PCR緩衝液。
製造中、第二段階ブリスタ181および182に、入れ子の第二段階プライマーをスポッティングした。一旦第二段階PCR緩衝液によって再水和すると、約0.3μMの最終濃度がもたらされる量で、各ブリスタに1つのプライマー対をスポッティングした。第二段階入れ子プライマーは以下の通りである。
Sc1:Sc1 cDNA第一段階単位複製配列の80bp断片を増幅するように構成されたプライマー。
Sc2:Sc1 cDNA第一段階単位複製配列の121bp断片を増幅するように構成されたプライマー。
Sc3:Sc1 cDNA第一段階単位複製配列の93bp部分を増幅するように構成されたプライマー。
Sp1:Sc1 cDNA第一段階単位複製配列の99bp部分を増幅するように構成されたプライマー。
Sp2:Sc1 cDNA第一段階単位複製配列の96bp部分を増幅するように構成されたプライマー。
標的のうちいずれに対しても、第一段階と第二段階のプライマー対の間に重複はない。第二段階増幅がそれぞれ複製で実行され、各複製が陰性対照を有するように、各プライマー対を1つの陰性対照ブリスタ181および2つの第二段階ブリスタ182内にスポッティングした。
装填後、入口チャネル115aと関連付けられたプランジャを活性化することによってサンプルを三葉ブリスタ122に移動させ、入口チャネル115bと関連付けられたプランジャを活性化することによって磁性ビーズをリザーバ101に移動させ、入口チャネル115d〜eと関連付けられたプランジャを活性化することによって洗浄緩衝液をリザーバ102および103に移動させ、入口チャネル115gと関連付けられたプランジャを活性化することによって溶出緩衝液をリザーバ104に移動させ、入口チャネル115hと関連付けられたプランジャを活性化することによって第一段階PCR緩衝液をリザーバ105に移動させ、入口チャネル115j〜kと関連付けられたプランジャを活性化することによって第二段階PCR緩衝液をリザーバ106および107に移動させ、入口チャネル115lと関連付けられたプランジャを活性化することによって陽性対照(先に調製した第一段階単位複製配列のサンプルを含む第二段階PCR緩衝液)をリザーバ108に移動させた。本実施例では、パウチ110を機器に装填するのに先立って、入口チャネル115aおよび115bと関連付けられたプランジャを押し下げた。実行中、他のすべてのプランジャを機器内で連続して押下げ、流体を必要に応じてリザーバ102〜108に移動させた。
パウチ110が機器に入れられた後、上述したように、ZSビーズの存在下で叩解を10分間行った。細胞溶解が完了した後、リザーバ101を圧縮し、リザーバ101からの核酸結合磁性ビーズを三葉ブリスタ122に流し込み、そこでビーズを緩やかに混合し、5分間培養できるようにした。
次に、サンプルとビーズの混合物をブリスタ144に移動させ、そこで磁石を活性化することによって磁性ビーズを捕捉した。磁石を配備した後、ブリスタ144に隣接したブラダーを加圧して、流体を三葉ブリスタ122に戻した。次に、リザーバ102および103からの洗浄溶液を使用して、上述したように、捕捉されたビーズを洗浄した。洗浄に続いて、磁石を活性化することによってビーズを再度ブリスタ144内に捕捉し、リザーバ104に格納された溶出緩衝液をブリスタ144に移動させ、そこで、2分間の培養後、上述したように、ビーズから溶出された核酸を次にブリスタ161に移動させた。
ブリスタ161内で、核酸サンプルをリザーバ105からの第一段階PCRマスターミックスと混合する。次に、サンプルを40℃で10分間(その間、M−MLVがmRNAをcDNAに変換する)、次に94℃で2分間(M−MLVを不活性化し、抗体をtaqから除去する)保持する。次に、熱サイクリングは、94℃で10秒間および65℃で20秒間の20サイクルである。
第一段増幅に続いて、リザーバ106からの第二段階PCRマスターミックスを使用してサンプルを約100倍に希釈する。次に、サンプルを、上述したように、第二段階プライマーをすでにスポッティングしたブリスタ182に移動させる。第二段階PCR緩衝液をリザーバ181から陰性対照ブリスタ181に移動させ、陽性対照混合物をリザーバ108からブリスタ183に移動させた。サンプルを、94℃で30秒間変性させ、次に94℃で5秒間および69℃で20秒間の45サイクル増幅した。
図11で分かるように、すべての標的単位複製配列および陽性対照は増幅を示し、陰性対照はいずれも増幅を示さなかった。各サンプルは複製で実行した。複製はそれぞれ同様の増幅を示した(データは図示なし)。
出芽酵母および分裂酵母の標的は単なる例示であり、他の標的が本発明の範囲内にあることが理解される。
高密度PCR
上述の実施例は図5のパウチ110を使用する。パウチ110は、5つの陰性対照ブリスタ181と、5つの陽性対照ブリスタ183と、10の低容積サンプルブリスタ182とを有する。図6のパウチ210は、低容積サンプルブリスタ282の数を18に増加させた。しかし、図12に示されるパウチ510の高密度アレイ581は、120以上の第二段階ウェル582を有することができる。第二段階反応の数のこの増加によって、パウチおよびその機器のサイズを増加させる必要なしに、広範な一連の潜在的な診断および人物同定が可能になる。様々な例が本明細書に記載される。
一例では、一般的な呼吸器系ウィルスに対する標準的な市販のイムノ蛍光アッセイで、アデノウィルス、PIV1、PIV2、PIV3、RSV、インフルエンザA型、およびインフルエンザB型という7つのウィルスを検出できることが知られている。より完全なパネルは、例えば、コロナウィルス、ヒト・メタ肺炎ウィルス、BOCAウィルス、ライノウィルス、および非HRVエンテロウィルスという5つの追加のウィルスに対する検定を含むことになる。アデノウィルスまたはHRVなどの可変性が高いウィルスの場合、複数のプライマー(例えば、それぞれ4つの外部プライマーおよび4つの内部プライマー)を使用して、ウィルスの系統のブランチすべてを標的にすることが望ましい。コロナウィルスなどの他のウィルスの場合、季節毎に変化しない4つの明確な系統(229E、NL63、OC43、HKU1)が存在するが、それらは別個のプライマーセットが必要とされるのに十分に分岐されている。実例となる完全な呼吸器系ウィルスパネルはまた、SARSコロナウィルス、場合によっては鳥インフルエンザのHAおよびN亜型、ならびに場合によっては他のものを標的とすることになる。最後に、呼吸器系ウィルスのいくつかは、高い配列変動率を示すので、かかるウィルスそれぞれに対して2つ以上の入れ子PCR検定を作成し、それによって、プライマー下における配列の変動によって偽陰性の結果がもたらされる可能性を最小限に抑えることが有益なはずである。本明細書に記載されるプライマーセットがすべて含まれるとき、かかる呼吸器系ウィルスパネルは、第二段階増幅において80以上の特異的単位複製配列を有することができる。高密度アレイ581は、かかるパネルを単一のパウチ510に簡単に収容することができる。
パウチ510の高密度アレイ581の第2の用途は、感染患者から単離された多剤耐性細菌の同一性および抗生物質耐性を判断することになる。現在の方法は、微生物を培養し、個別の薬物耐性プロファイルを実験的に試験するのに数日を要する。結果を受け取るのにかかる時間の間、医師は、広域抗生物質を投与する場合が多くなり、それが多剤耐性細菌の増加に結び付く。PCRプライマーは、抗生物質耐性の遺伝因子(抗生物質耐性遺伝子自体)を検出するために開発されてきた。しかし、これらの遺伝子のいくつかの変異体が多数であるため、耐性プロファイルを完全に判断するために多数の単位複製配列が必要とされる。Hujerらは、アシネトバクター属の単離体中に存在する耐性遺伝子を同定する、62のPCR検定のパネルについて記載している。やはり、高密度アレイ581は、かかるパネルを単一のパウチに簡単に収容することができる。
高密度アレイの有用性の第3の例は、人物同定、例えば人間の遺体の法鑑定および父系試験の分野である。人物同定の市場の大部分では、縦列型反復配列(STR)を分析するシステムが優勢である。この分析は、一般に、例えばキャビラリー電気液動を使用して、反復をサイズによって分離することを必要としていた。この目的に使用される専門の実験室機器は、一般に可搬型ではなかった。単一ヌクレオチド多型(SNP)を同一性試験に使用することに関する関心が高まっているが、これは、SNPを同定する多くの一連の技術が存在し、そのいくつかは現場使用のために修正可能であるためである。Sanchezらは、2つの個体が偶然一致する可能性を集合的に非常に低くする(少なくとも5.0×10−19の平均一致可能性)、52の十分に特性決定されたSNPの組を公表している。実際、各遺伝子座を正確に分類するのに、各SNPに対して2つの単位複製配列を要することがある(例えば、Zhouらを参照のこと)。したがって、104の第二段階ウェル582を備えた1つのパウチ510が、52のSNP遺伝子座すべてで個体を完全に分類することができる。
異なる診断用途からの検定を1つのパウチに組み合わせることによって得られる、コストおよびワークフローの利点があることが理解される。例えば、完全な呼吸器系ウィルスのパネルを、細菌同定パネルと組み合わせることができる。組み立てるパウチの種類がより少ないため、これらの組み合わせによって製造を単純化することができる。また、診療所に在庫を置いておく必要があるパウチの特定の種類がより少ないので、エンドユーザの作業を単純化することができ、また、特定の臨床サンプルに対して誤ったパウチを使用する可能性が低減される。いくつかの用途に対して、これらの利点は、より多数のプライマー対を有するパウチを製造するコストの増加を相殺することができる。したがって、100以上の第二段階ウェル582を有する1つのパウチ510を使用して、検定の複数のパネルを収容することができる。
プロセス制御
高度に多重化された検定の制御は、特に品質が試験当たりのコストと競合せざるを得ない臨床診断設備の場合に問題となり得る。単一の実行で検定することができる診断標的の数が増加したことによって、パウチ510の高密度アレイ582は、潜在的にこの問題を増大させる。様々なタイプの制御について本明細書で考察する。
実例となるプロセス制御は、サンプルをパウチ注入する前に、無処置の微生物、例えばRNA標的を含有する微生物を患者サンプルに混合することを含む。かかる標的は、無処置のRNAバクテリオファージ(MS2もしくはQβ)、または無処置の植物RNAウィルス(タバコモザイクウィルス)、または無処置の酵母中に存在するmRNAであり得る。RNA標的に特異的な外部プライマーは第一段階PCR中に存在し、内部プライマーを収容したウェル582は高密度アレイ中に存在するはずである。このウェル582内の増幅生成物を検出することによって、プロセスのステップがすべて適正に働いていることが確認される。第二段階増幅後の融解曲線も、適正な特異的生成物が作られたことを確認するのに使用することができる。増幅曲線から決定される交差点(「Cp」)を使用して、試薬の完全性の定量的測定値を得ることができる。例えば、Cpを、異なる時点における同じロットの実行からの他のパウチのものと比較することができる。無処置の微生物が使用されるが、溶解を試験するのに重要でない場合は、精製または単離した核酸が使用されてもよいことが理解される。他の状況では、対照を使用して、分析の後の方のステップのみを試験するのが望ましいことがある。例えば、高密度アレイのウェルに、天然または合成核酸テンプレートを同族(cognate)プライマーとともに加えることを使用して、第二段階PCR反応を試験することができ、核酸テンプレートを、第一段階PCR増幅混合物中の適切なプライマーとともに第一段階PCRに、かつ第二段階増幅域のウェル582に加えることで、第一および第二段階両方のPCR反応が試験される。
上述したようなプロセス制御は、標的単位複製配列に特異的なプライマーの完全性を試験しない。特異的なプライマーの完全性を試験する陽性対照の一例は、核酸、例えば合成RNAの混合物を使用するが、これは、安定性および可変性をより良好に制御できる場合が多く、これらの配列は、混合物が特定のパウチ内に存在するプライマーそれぞれに対して核酸を含有する、環境汚染によって存在することができないためである。診断設備では、患者サンプルを試験するのに使用されるパウチの実行の終了時にこの陽性対照を使用することができる。混合物は、例えば患者サンプルに使用されるものと同じロットから、パウチに注入され、標的単位複製配列がすべて陽性の結果を提供することによって成功が定義される。陰性対照を同じ方法で行うことができ、患者サンプルを試験するのに使用されるパウチの実行の終了時に、水または緩衝液をパウチに注入することができ、標的単位複製配列がすべて陰性の結果を提供することによって成功が定義される。
診断研究室における個々のワークフローおよびプロトコルは、上述した対照パウチが実行される前に、患者サンプルパウチの実行の数を決定するのに使用される。どの程度頻繁に、または稀に対照パウチが実行されるかにかかわらず、これらの対照によってシステム全体の時間およびコストが付加される。このため、対照をパウチに入れるのが有用になる。高密度アレイ581の構造によって、陰性対照に対する以下の新規な方策が可能になる。この例では、核酸、例えば合成単位複製配列は、高密度アレイ581のウェル582aの1つに加えられる。この配列を増幅するプライマーは、このウェル582aに加えられ、アレイを横切って間隔を空けられた他の2つのウェル582bおよび582cに加えられる。例えば、単位複製配列シーケンスおよびプライマーは人工であり、使用されるプライマーが偶然別の標的を増幅することがないように設計される。
清潔で汚染されていないパウチ510が機器800内で実行されると、合成標的を収容したウェル582aが単位複製配列を生成し、したがって陽性と判定されることになる。対応するプライマーを収容した他の2つのウェル582a、582bは、サンプル中のなにも増幅せず、したがって陰性と判定されるはずである。パウチ510は、追加の対照のため、さらに処理されてもよい。例えば、次に、高密度アレイをヒーター888に接して保持するブラダー880/882が減圧され、ウェル582の内容物が混合される。1つの実例となる方法では、ウェル582の内容物は以下のように混合される。ヒーター888を使用して、短時間の間(例えば、85℃で10秒間、次に105℃で20秒間の3サイクル)、高密度アレイの温度を緩衝液の沸点の上下で循環させる。高密度アレイ581のウェル582内で発生した蒸気の泡は、ウェル582の内容物を押し出して、第二段階増幅域ブリスタ580に流し込むはずである。任意に、ブラダーを使用して液体をパウチ510の一端から他端へと移動させることによって、第二段階増幅域580の内容物は、パウチ510の残りの内容物と混合されてもよい。これらのステップの目的は、特異的汚染制御の単位複製配列を、パウチ全体にわたる任意の特異的な標的単位複製配列とともに混合することである。
この形式でパウチを実行した後に、ユーザがパウチを偶発的に開放した場合、特異的標的単位複製配列と汚染の両方が解放されることになる。微量のこれらの核酸が後のパウチの実行を汚染した場合、合成単位複製配列に特異的なプライマーのみを収容したウェル582b、582cが陽性と評価されることになるので、機器が汚染の事象を検出してもよい。機器のソフトウェアはユーザに警告を発し、実行の結果が疑わしいとして注意されることになる。
汚染を制御する別の方法では、実行の終わりに、DNA分解化学薬品または酵素が添加されて、第一および第二段階PCR反応のDNA生成物のほぼすべてが破壊されてもよい。例えば、これは、上述した汚染検出方法に類似した方法で、第二段階アレイの内容物を局所沸点を上回る温度に加熱し、したがって増幅された試料をアレイ851のウェル582から引き出し、加熱された液体を第一段階反応の希釈された内容物と混合し、例えば入口チャネル515kを通して、混合物を冷却しながらまたは冷却せずにDNA分解基質のアリコートを添加し、PCR反応で生成されたDNAがすべて破壊されるまで、DNA分解反応の培養を可能にすることによって行うことができる。これは、当該分野において知られているように、DNAアーゼ、酸、または酸化剤を使用して達成することができる。
本明細書に記載される汚染制御はいずれも、独立してまたは任意の組み合わせで使用されてもよいことが理解される。
パウチ装填
図16は装填ステーション600を示す。図示されるように、図12のパウチ510は、パウチ510の付属部品590のみが見えるようにして、装填ステーション600のスロット610に装填される。図示されるように、装填ステーション600は、サンプルバイアル650を保持するサンプルバイアルレセプタクル602と、水和バイアル670を保持する水和バイアルレセプタクル604とを備える。しかし、レセプタクルおよびバイアルは、ワークフローを支援するためのものであり、単なる例証であることが理解される。他のパウチおよび他のデバイスを備えた他の構成および使用は、本開示の範囲内にある。
サンプルは、ピペッティングまたは別の方法でサンプルバイアル650に装填される。より詳細に後述するように、ワークフローに応じて、サンプルバイアル650は、生物学的サンプルを受け入れるため、緩衝液または他の流体652をすでに含有していてもよく、または、オペレータは、適切な緩衝液中の生物学的サンプルをサンプルバイアル650に添加してもよい。任意に、緩衝液は、適切な量の配分された緩衝液とともに、別個のアンプル内に提供されてもよい。同様に、水和バイアル670は、水、緩衝液、または他の流体672が予備充填されてもよく、オペレータは、水和バイアル670にかかる流体を搭載してもよい。
実例となる付属部品590は、例えば付属部品590の第2の表面595付近に形成される、注入ポート541を含む。図示されるように、注入ポート541は、カニューレ状シリンジなど、付属部品590の第1の表面594を通してカニューレ状移送容器を受け入れるように構成されている、サンプル注入開口部563に配置される。この実例となる構成では、注入ポート541は、偶発的な穴開けから保護され、カニューレ状移送容器がサンプル注入開口部563に入れられるまで開放されない。同様に、実例となる付属部品590は、例えば付属部品590の第2の表面595付近に形成され、サンプル注入開口部563と同様に構成される水和流体注入開口部583内に配置される、第2の注入ポート588を含む。この実施形態において構成されるように、注入ポート541は試験すべきサンプルを受け入れるためのものであり、そのサンプルはチャンバ592aに、または溶解ブリスタ522(図12)内に直接移動させられ、第2の注入ポート588は、水または緩衝液などの水和流体672(図18に示される)を受け入れるように構成され、その水和流体672はチャンバ592b〜592lに移動させられ、続いて入口チャネル515b〜515lを通って移動する。注入ポート541および588ならびに開口部563および583の配置は例証であり、他の構成も本開示の範囲内にあることが理解される。
実例となるサンプルバイアル650は、図17で最も良く示されるように、多くのカニューレ状シリンジに類似した構成で、頂面662、バイアル本体654、およびカニューレ655で構成される。この実施形態では、多くのカニューレ状シリンジに見出されるプランジャの代わりに、サンプルバイアル650は、頂面662に固着されたシール656と、本体654を封止するために頂面662を通って延在するキャップ658とを備える。実施形態では、シール656はオペレータによって剥離することができる剥離可能なシールである。しかし、当該分野において知られているように、シールは、様々な異なる構成のものであることができ、例えばねじキャップまたは脆弱なシールであり得ることが理解される。あるいは、別個のシールは省略されてもよく、サンプルバイアル650は、バイアル本体654を閉止するキャップ658を備え、それによってオペレータが使用に先立ってキャップ658を開放することを要してもよい。それに加えて、サンプルバイアル650に緩衝液または他の流体652が予め装填されて提供される場合、または、無菌性を維持するためなど、バイアル本体654が使用に先立って外部環境から封止されたままであることを要する場合にのみ、任意の種類のシールが必要とされる。代替実施形態では、サンプルバイアルはシール656を有さず空の状態で提供されてもよく、オペレータは、流し込み、ピペッティング、スワブの挿入、固体もしくは半固体材料の採取、または別の方法で流体および/または他の材料を、頂面662の開口部657を通してバイアル本体654内へと移送することになる。
試験すべきサンプルの種類に応じて、サンプルバイアル650は、例えばバイアル本体654の底面686またはその付近に配置される、フィルタ646を備えてもよい。図示されるように、フィルタ646はOリング644によって適所で保持される。しかし、当該分野において知られているように、接着剤によって、溶接によって、適所にプレス嵌めすることによって、または他の手段によって、フィルタ646が適所で保持されてもよいことが理解される。カニューレ655がサンプル注入開口部653に挿入され、サンプルがパウチ510に引き込まれると、サンプル材料は、フィルタ646を通ってカニューレ655に引き入れられるにつれて濾過される。フィルタ材料の選択はサンプルの種類および粒径に応じて決まるが、様々な生物学的サンプルに適したフィルタとしては、Pall 100μm Absolute Ultipleat Polypropylene Melt Blown MediaおよびMillipore 80μm Polyproylene Net Filterが挙げられる。ほとんどのシリンジフィルタは、特定のサイズの微生物を除外し、それによってそれらの微生物を濾過液から除去するように設計される。かかる既に存在するフィルタとは異なり、これらの実例となるフィルタは、便、土壌、粉末などに見出されるより大きな微粒子を除外する一方で、直径約60μm以下の標的微生物(例えば、細菌、ウィルス、原生動物、および真菌微生物)はフィルタを通過させる能力に基づいて選択された。また、実例となるフィルタ材料は不活性であり(即ち、微生物または核酸を結合しない)、目詰まりに比較的耐性がある。これらの実例となるフィルタは、標的微生物(約60μm以下)としての原生動物を含むサンプルに対して選択されたことが理解される。いくつかのパウチ構成はより小さな標的のみを試験することがあるので、細菌および真菌用の1〜10μmの孔径、およびウィルス粒子のみを検出すべきである場合の1μm未満の孔径を有するフィルタなど、より小さい孔径のフィルタが望ましいことがある。当然ながら、より大きい孔径のフィルタを依然として使用して、より小さい標的を濾過することができる。かかるフィルタは、流体系を目詰まりさせることがある、土壌、便、および粉末などの大量の微粒子状物質を有するサンプルの種類に対して、特に有用であってもよい。さらに、孔径は、濾過すべき材料に基づいて選択され、他の孔径が本発明の範囲内にあることが理解される。
図示されるように、底部キャップ664は、六角形のサンプルバイアルレセプタクル602に適合するように構成された六角形部分666を備える。実施形態では、部分666およびサンプルバイアルレセプタクルは六角形であるが、他の形状が使用されてもよく、オペレータが底部キャップ664を除去するのを支援するため、六角形もしくは他の噛合または連動する形状が提供されてもよいことが理解される。あるいは、オペレータは、両手を使用して底部キャップ664を捻ってバイアル本体654から外すなど、他の手段によって底部キャップ664を除去してもよい。底部キャップ654は、バイアル本体654に対してプレス嵌めされるか、ねじ留めされるか、または別の方法で固着されてもよい。
実施形態では、底部キャップ664は弁座648を備え、それによってカニューレ655の下端部659は弁座648内へと延在する。例えば、カニューレ655の下端部659は弁座648にしっかり嵌合するので、弁座648がカニューレ655の開いた下端部659の周りに気密封止を提供する。任意に、底部キャップ664とバイアル本体654との間にベント649が設けられる。
次に図18を参照すると、水和バイアル670はサンプルバイアル650と同様に構成されてもよい。しかし、図18に示されるように、水和バイアル670に水和流体672を予備装填し、水和流体672を水和バイアル670内に予備封止するのが望ましいことがある。実例となるサンプルバイアル670は、図18に示されるように、サンプルバイアル650に類似した構成で、頂面682、バイアル本体674、およびカニューレ675で構成される。しかし、実例となる水和バイアル670のキャップ678の舌680は、頂面682の開口部677に既にプレス嵌めされており、キャップ678が頂面682に封止され、それによって水和バイアル670の開放を防いでもよい。この構成は単なる例示であり、水和流体672を水和バイアル670内に封止する他の方法が本明細書において想起されることが理解される。例えば、バイアル本体674およびカニューレ675は、流体で完全に満たされているか、またはほぼ完全に満たされていてもよいので、水和バイアル670を取り扱うかまたは回転させても、空気がカニューレ675に入ることはできない。あるいは、ある程度の空気684または他のガスがバイアル本体674内に存在してもよく、オペレータは、水和本体を直立位置で維持して、空気がカニューレ675に入るのを防いでもよい。さらに別の代替実施形態では、空気684は圧力下で供給されてもよく、底部キャップ684を除去することによって、水和流体がカニューレ675を通って押し流されるであろう。図示されるように、水和バイアル670はフィルタを備えていないが、所望であればフィルタが設けられてもよい。
底部キャップ684は、カニューレ675から滴下する恐れがある任意の流体を保定するとともに、カニューレ675内の水和流体672の汚染を防ぐために設けられてもよい。過剰な流体をカニューレ675の底部から拭い取るため、ワイパー683が底部キャップ684に設けられてもよい。ワイパー683の円錐形状も、後に続く取扱いおよび廃棄の間、ドリップを底部キャップ684内に保定する助けとなり得る。実施形態では、底部キャップ684は、六角形の水和バイアルレセプタクル604と噛合する六角形部分686を備えるが、サンプルバイアル650に関して上述したように、他の形状が可能である。水和バイアル670の六角形部分686および六角形の水和バイアルレセプタクル604は、サンプルバイアル650の六角形部分666および六角形のサンプルバイアルレセプタクル602とは異なる寸法および/または異なる形状のものであることがあるので、サンプルバイアル650のみがサンプルバイアルレセプタクル602に容易に適合し、水和バイアル670のみが水和バイアルレセプタクル604に容易に適合して、オペレータがサンプルバイアル650および水和バイアル670を混同する可能性が低減され、それによって適切な流体がポート541および588を通して注入される。それに加えて、オペレータが適切な流体をポート541および588に提供する際の視覚的な支援を提供するため、サンプルバイアル650および注入開口部563は、部分的または全体的に、一致する特定の色で、例えば赤色で提供されてもよく、水和バイアル670および注入開口部583は、部分的または全体的に、異なる一致する特定の色で、例えば青色で提供されてもよい。誤った液体を誤った注入開口部に挿入するリスクをさらに最小限に抑えるため、カニューレ655の直径はカニューレ675の直径と異なっていてもよく、サンプル注入開口部563と水和流体注入開口部583の直径も同様に異なっていてもよい。他の構成が本開示の範囲内にある。
例えば、パウチ510を装填するため、オペレータは、装填ステーション600上で、サンプルバイアル650をサンプルバイアルレセプタクル602に、水和バイアル670を水和バイアルレセプタクル604に入れる。パウチ510もスロット610に入れられるであろう。オペレータは、指示に応じて、シール656を除去し、サンプルをバイアル本体654内のサンプル緩衝液に入れる。サンプルは、スワブの挿入、流体サンプルのピペッティング、患者から直接バイアル本体内への血液の滴下、および便などの固体または半固体のサンプルをバイアル本体に入れること、また任意に、当該分野において標準的であるような、ボルテックス形成または他の混合を含む、サンプルの種類に適した任意の方法でサンプル緩衝液に入れられる。サンプルの種類および所望の標的核酸に応じて、サンプル緩衝液は、プロテアーゼ、RNAアーゼ、RNAアーゼ阻害剤など、1つもしくは複数の添加剤または安定剤を含有してもよい。それに加えて、または別の方法として、これらの添加剤はパウチ510に供給されてもよい。好ましくは、ボルテックス形成または混合の前に、オペレータは、キャップ658の舌660を開口部657に入れることによって、サンプルバイアル650を閉止するであろう。舌660を挿入することによって、バイアル本体654内に含まれる空気が加圧される。例えば、舌660は、カニューレ655の容積以上の容積を有する。例えば、底部キャップ664が除去されると、カニューレ655の弁座648の下端部659の間の気密封止が壊れ、ほぼすべての空気がカニューレ655から押し出される。舌660の容積がカニューレ655の容積よりも大きい場合、そのことが、最大量の空気がカニューレ655から変位させられることを担保する助けとなるであろう。カニューレ655に流し込まれる、また潜在的にそこを通る流体の量における任意のオーバーフローを、底部キャップ664に捕捉し、ワイパー663によってカニューレ655の底部から除去することができる。カニューレ655を完全に、または本質的に完全に充填することによって、パウチを装填する際のパウチ510内の泡の量が最小限に抑えられる。1つまたは複数のベント649は、底部キャップ664を水和バイアル650から分離するのを支援してもよい。
底部キャップ664は、六角形のサンプルバイアルレセプタクル602に適合するように構成された六角形部分666を備えるので、オペレータは、底部キャップがレセプタクル602を係合している状態で底部キャップ654を簡単に捻り取り、それによってカニューレ655を露出させることができる。次に、カニューレ655は、サンプル注入開口部563に挿入され、押し込まれて、注入ポート541を開放する。パウチ590内部の真空(または、気圧もしくはパウチ外部の圧力に対するパウチ内部の低い圧力)によって、例えば、バイアル本体からの圧力を用いて、または用いずに、サンプルがフィルタ(存在する場合)を通され、後に続く溶解チャンバ522内への移動のため、サンプルをパウチ510に、例えば付属部品590内のチャンバ592aに引き込むのに使用されてもよい。カニューレ655がほぼ流体652で充填されていることを保証することによって、サンプルバイアル650からパウチ510内へと移動させられる空気または他のガスの量が最小限に抑えられ、それによって泡のサイズおよび量が最小限に抑えられる。さらに、プランジャを備えた従来技術のシリンジが使用され、パウチ590内部の真空が流体を引き込むとき、プランジャはシリンジの下方に引き下ろされ、それによってシリンジ内部の圧力が均衡する。図16〜17の実施形態では、バイアル本体それぞれの頂部にある開口部が封止されているので、パウチ590内部からの真空によって流体がバイアルから引き出されると、バイアルは陰圧も経験し、サンプルを脱ガスし、ある程度の残った気泡をパウチ590から引き出してもよい。次に、カニューレ655が、サンプル注入開口部563から抜き出され、プロトコルにしたがってサンプルバイアル650および底部キャップ664が廃棄される。バイアル本体は陰圧下にあるので、カニューレ655が抜き出されるにつれて、注入ポート541付近に回収されていることがある気泡がパウチ510から引き出されて、パウチ内の気泡がさらに低減される。
同様に、オペレータは、底部キャップ684を水和バイアル670から捻り取り、それによってカニューレ675を露出させる。水和バイアル670の内容物が圧力下で供給される場合、カニューレ675が弁座692から分離されると、少量の水和流体が底部キャップ684内へと漏れ出すことがある。1つまたは複数のベント693は、底部キャップ684を水和バイアル670から分離するのを支援してもよい。次に、カニューレ675は、水和注入開口部583に挿入され、押し込まれて、注入ポート588を開放する。付属部品590内部の真空は、後に続くパウチ510の様々なブリスタ内への移動のため、水和流体をパウチ510に、例えばチャンバ592b〜592lに引き込むのに使用されてもよい。カニューレ675は水和注入開口部583から除去され、パウチ510は充填ステーション600から除去され、機器800に入れられ、実行が開始される。バイアルの除去は単なる例証であることが理解される。機器およびバイアルの構成によって可能な場合、バイアルが注入ポートに恒久的に挿入され、それによってパウチの閉システムの一部になり、サンプルからの汚染を最小限に抑えてもよい。かかる一実施形態では、シールバーは不要なことがある。
上述のサンプルバイアル650の実施形態では、舌660は、カニューレ655の容積以上の容積を有する。パウチが1mlの充填容積を有する例示的な一実施形態では、バイアル本体654に、1.5mlのサンプル流体652と、サンプル流体の上に1mlの空気645とが供給されてもよい。したがって、空気はバイアル本体の容積の40%である。しかし、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、およびその間の量を含む、空気の他の割合が使用されてもよいことが理解される。舌660が開口部657を通して挿入されると、サンプル流体の上の空気は、例えば約50%圧縮されるが、40〜60%、30〜70%、20〜80%、および10〜90%の範囲の圧縮はすべて可能である。空気およびサンプル流体の体積の選択は、サンプルのサイズ、カニューレの直径、流体反応を実行するのに先立ってバイアルを除去するのが望ましいか否か、および他の多数の要因に応じて決まることが理解される。例えば、採取するかまたはかき出したサンプルは、流体系の充填容積にかかわらず、大幅により多量のサンプル流体を必要とすることがある。
実例となるバイアル本体654および674は円筒状である。しかし、これらの実例となるバイアルはプランジャなしで提供されるので、バイアル本体は必ずしも円形の断面を有さなくてもよく、任意の本体形状が本発明の範囲内であることが理解される。
図19〜21は、装填ステーション600およびバイアル650、670の代替実施形態を示し、同様の番号は類似の部品を示している。装填ステーション800は、図19に示されたように、装填ステーション600に類似していてもよく、図12に示されるものに類似した、サンプルバイアルレセプタクル802および水和バイアルレセプタクル804と、パウチ510を受け入れるスロット810とを備える。しかし、少なくとも1つの実施形態によれば、レセプタクルの形状および位置は、装填ステーション600と装填ステーション800との間で大幅に異なる。例えば、少なくとも1つの実施形態では、装填ステーション600のレセプタクル602、604と比べて、レセプタクル802および804はパウチ510により近い。この低減された距離によって、パウチ510に装填する際に滴下が起こる可能性が低くなる。さらに、図20〜21で最も良く分かるように、サンプルバイアル850の底部キャップ864は、サンプルバイアルレセプタクル802の4つの一致するスロット803内に適合する4つの比較的短いフィン867を備え、水和バイアル870の底部キャップ884は、水和バイアルレセプタクル804の2つの一致するスロット805内に適合する2つの比較的長いフィン887を備える。これらのフィンは、バイアル650および670の六角形部分666および686と置き換えられる。底部キャップ864上のフィン867がより多数であることによって、サンプルバイアル850が水和バイアルレセプタクル804に入れられるのを防ぎ、底部キャップ884のより長いフィン887によって、水和バイアル870がサンプルバイアルレセプタクル802に入れられるのを防ぐ。しかし、異なるサイズおよび数のフィンの使用は単なる例示であり、異なる調和システムが本開示の範囲内にあることが理解される。装填ステーション600に関して上述したように、装填ステーション800のレセプタクル802、804は、底部キャップ684、884をそれら個々のバイアル本体854、874から捻り取って、装填プロセスの助けとするのを支援するのに使用されてもよい。
サンプルバイアル650、850および水和バイアル670、870が、パウチ590を装填するための実例となる例で使用されているが、これらの装填バイアルは、本明細書に開示されるパウチのいずれを装填するのにも適していることが理解される。それらはまた、他の流体またはマイクロ流体デバイス、特に真空もしくは吸引を使用して液体を流体デバイスに引き込むように構成された流体デバイスに適している。
好ましい実施形態を参照して本発明を詳細に記載してきたが、以下の請求項に記載され定義されるような本発明の範囲および趣旨内に変形形態および修正形態が存在する。