JP6231453B2 - 通信制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、通信ネットワークを構成する通信制御装置およびネットワーク中継装置に関する。
分散されて構成される制御システムにおいては、実現するアプリケーションに応じて、接続端末間の時刻を同期することが求められる場合がある。ネットワークで接続された分散制御システムの場合は、ネットワークを介した時刻同期パケットの送受信によって、時刻を同期することができる。
例えば、音声や映像等の信号を遠隔地へ伝送する場合、アナログ信号をデジタル化することが一般的である。その場合、共通の周波数を用いて、信号の符号処理と遠隔地での復号処理を実行する方式がある。このような方式では、送信側で使用する周波数と受信側で使用する周波数が同じで安定している必要がある。そのために、周波数同期、時刻同期が必要である。
また、無線通信の基地局においては、ルータ等の基地局間、基地局と携帯機器間で周波数が安定していれば、スムーズにハンドオーバーを実行することができる。そのために、基地局間の同期が求められる。
この他にも、時刻同期の応用としては、計測、測定の分野や、産業用製造装置、電力系統の保護制御装置、IED(Intelligent electronic device)等の分野が挙げられる。
ネットワークを用いた時刻同期方式として、NTP(Network Time Protocol)、SNTP(Simple Network Time Protocol)、IEEE1588が挙げられる。
図14にIEEE1588の時刻同期プロトコルの実行手順を説明する。また、図15にIEEE1588におけるメッセージのやりとりを示す。
IEEE1588は、マスタ−スレーブ構成をとる。はじめにマスタは、スレーブにSyncメッセージを送信する(S060)。このとき、マスタはSyncメッセージの送信時刻t1を記憶する(S061)。スレーブは、Syncメッセージを受信すると、その受信時刻t2を記録する(S062)。
マスタは次のいずれかの手段でt1をスレーブに通知する(S063)。ひとつは、Syncメッセージにt1の情報をのせるという手段である。他は、Syncメッセージに続くFollow_Upメッセージにt1の情報をのせるという手段である。
続いて、スレーブは、マスタにDelay_Reqメッセージを送信する(S064)。このとき、スレーブはDelay_Reqメッセージの送信時刻t3を記録する(S065)。マスタは、Delay_Reqメッセージを受信すると、その受信時刻t4を記録する(S066)。そして、マスタはDelay_Respメッセージにt4の情報をのせ、t4をスレーブに通知する(S067)。
Delay_Respメッセージを受信したスレーブは、t1,t2,t3,t4から、マスタ、スレーブ間の通信遅延および時刻の差分を計算する(S068)。
通信遅延の計算においては、マスタ、スレーブ間の通信遅延が往復路で等しいことを前提とする。したがって、片道の通信遅延tdは、式(1)で表わされる。
td=((t4−t3)+(t2−t1))/2 (1)
また、マスタとスレーブの時刻の差分tdiffは式(2)で表わされる。
tdiff={(t4−t3)−(t2−t1)}/2 (2)
このtdiffに応じて、マスタとスレーブは時刻を同期する。
このように、通信機器間の時刻同期においては、同期パケットの往復の遅延が等しいという前提、あるいは往復の遅延に時間差がある場合でも、その時間差が既知であるという前提に基づいている。
しかしながら、ネットワークスイッチ等の中継装置を用いてネットワークを構成して、複数の接続端末間でネットワークを共有する場合、ネットワークスイッチ等の中継装置内で時刻同期パケットがキューイングされ、往復の遅延差にゆらぎが生じる。このため、同期精度が低下する。
これに対し、非特許文献1に記載の技術では、end-to-end TC(Transparent Clock)、peer-to-peer TC(Transparent Clock)という仕組みを用いて、ネットワークデバイス内でのパケットの転送遅延が計測される。計測された転送遅延をパケット内のデータに反映することで、往復の通信遅延の差が算出される。
また、特許文献1に記載の技術では、複数の遅延推定用パケットを所定の送信間隔で送信し、それらを受信した間隔と、所定の送信間隔とを比較することで、ネットワークデバイス中のキューイング遅延が推定される。
しかしながら、非特許文献1に記載の技術におけるend-to-end TC、peer-to-peer TCは、高精度のタイムスタンプを取得して同期パケットの情報を更新する専用の機能が必要であるという問題がある。
また、特許文献1に記載の技術では、時刻同期プロトコルを実行するマスタとスレーブの両方で対応する必要がある。したがって、標準規格に準拠した接続端末や中継装置でネットワークを構成することが困難となるという問題がある。
そこで、本発明は、特段の専用機能を要することなく、標準的な装置で通信ネットワークを構成しながらも、高精度の時刻同期を可能ならしめる通信制御装置およびネットワーク中継装置を提供する。
上記課題を解決するために、本発明による通信制御装置は、ネットワーク内の複数の通信装置に対して、所定の時刻同期処理を実行する時刻同期処理部を備えるものであって、複数の通信装置からの応答パケットの受信間隔を測定する受信間隔測定部と、ネットワークの構成情報を記憶するネットワーク構成情報記憶部と、ネットワーク構成情報記憶部の記憶する構成情報を用いて受信間隔閾値を設定する受信間隔閾値決定部と、受信間隔測定部の測定結果と受信間隔閾値決定部が設定した受信間隔閾値とを比較することにより、複数の通信装置のいずれかからの応答パケットの衝突発生の有無を判定するキューイング発生判定部と、を備え、時刻同期処理部は、キューイング発生判定部の検知結果に基づいて、所定の時刻同期処理を継続するか否かを判定する。
本発明によれば、標準的な装置で通信ネットワークを構成しながらも、高精度の時刻同期が可能になる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の一実施例である通信制御装置を用いて構成するシステム構成例である。 図1における通信制御装置のハードウェア構成である。 通信制御装置の機能構成図である。 パケットが衝突した場合におけるネットワーク中継装置の動作を示す。 通信装置の機能構成図を示す。 通信制御装置における同期処理動作を示すフローチャートである。 ネットワーク中継装置と受信間隔閾値の対応関係を示すテーブルデータである。 ネットワーク中継装置の段数と応答時間の関係を示す。 IEEE1588規格のドメインを用いた通信装置の機能構成例を示す。 通信遅延に基づくグループ構成例を示す。 他の通信フローが通信制御装置宛ではない例を示す。 本発明の第2の実施例における通信装置123の機能構成を示す。 通信装置の処理動作を示す。 IEEE1588の時刻同期プロトコルの実行手順である。 IEEE1588におけるメッセージのやりとりを示す。 時刻同期制御装置を用いたシステム例を示す。 本発明の第3の実施例のシステム構成を示す。 本発明の第4の実施例のシステム構成を示す。 時刻同期パケットに格納された通信遅延を示す。 他のフローが存在する場合のシステム構成を示す。 本発明の第4の実施例の他のシステム構成を示す。 リングネットワークによるシステム構成を示す。 本発明の第5の実施例である電流差動保護リレーシステムのシステム構成を示す。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
(システム構成)
図1は、本発明の一実施例である通信制御装置120を用いて構成するシステム構成例である。通信制御装置120は、ネットワーク122を介して、他のネットワーク中継装置121(a〜e)、または通信装置123(a〜f)と接続され、これらと通信する。
ネットワーク中継装置121は、例えば、ネットワークスイッチ、ルータ、ゲートウェイ、Software Defined Networkにおけるパケット・経路制御を書き換え可能なスイッチ等であり、ネットワーク内における通信制御装置および通信装置が送信するパッケットの伝送を中継する。
ネットワーク122(通信制御装置120、ネットワーク中継装置121、通信装置123間の接続)は、例えば、IEEE802.3、各種産業用ネットワーク、IEC 61784、IEC 61158等である。なお、全ての通信制御装置120、ネットワーク中継装置121、通信装置123間の接続が同一の通信方式でなくともよい。
(ハードウェア構成)
図2は、図1における通信制御装置120のハードウェア構成である。
CPU101は、不揮発性記憶媒体109からプログラムをメモリ108に転送して実行する。実行処理プログラムは、例えば、オペレーティングシステム(以下、OSと称す)やOS上で動作するアプリケーションプログラムである。
LAN102は、ネットワーク122との通信機能を実装した送受信機IC(Integrated Circuit:集積回路装置)である。LAN102は、CPU101上で動作するプログラムから通信要求を受け取り、ネットワーク122に対して通信する。LAN102の実装形態は、例えば、IEEE802.3規格のMAC(Media Access Control)チップ、PHY(物理層)チップ、MACとPHYの複合チップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ゲートアレイ等である。なお、LAN102は、CPU101や、コンピュータ内部の情報経路を制御するチップセットに含まれていてもよい。
メモリ108は、CPU101が動作するための一時的な記憶領域であり、不揮発性記憶媒体109から転送したOS、アプリケーションプログラム等が格納される。
不揮発性記憶媒体109は、情報の記憶媒体であり、OS、アプリケーションプログラム、デバイスドライバ等の保存や、CPU101を動作させるためのプログラムの保存、並びにプログラムの実行結果の保存に利用される。不揮発性記憶媒体109は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)、フラッシュメモリである。また、不揮発性記憶媒体109として、取り外しが容易な外部記憶媒体、すなわち、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、DVD、ブルーレイ(登録商標)、USBメモリ、コンパクトフラッシュ(登録商標)等が適用されても良い。
バス110は、CPU101、LAN102、メモリ108、不揮発性記憶媒体109を相互に接続する。バス110は、例えば、PCIバス、ISAバス、PCI Expressバス、システムバス、メモリバス等である。
(機能構成)
図3は、図1,2における通信制御装置120の機能構成図である。
時刻同期処理部130は、時刻同期手順を実行する機能部である。実行する時刻同期プロトコルは、IEEE 1588やNTP、SNTPなどである。時刻同期処理部130は、CPU101上のソフトウェアで構成してもよいし、FPGAやCPLDに実装されるLAN102を用いてハードウェア論理として構成してもよい。あるいは、CPU101上のソフトウェアと、LAN102の両方で構成してもよい。この場合は、パケットの送信タイミングおよび受信タイミングの計測機能、あるいはパケットフォーマットの生成が、LAN102によって処理される。
通信部131は、通信プロトコルにおける所定のパケットの送受信機能であり、通信プロトコルにおける所定のパケットの送信機能である送信部132と、通信プロトコルにおける所定のパケットの受信機能である受信部133を備える。これら通信部131、送信部132、受信部133は、図2におけるLAN102により構成される。
受信間隔測定部134は、受信部133で受信する所定のパケットの受信間隔を測定する。受信間隔は、受信部133がパケットを受信するタイミングを計時して、その差分を計測したり、IEEE1588規格にしたがって、受信部133で記録される時刻同期用パケットを受信したタイミングの差分を計算したりすることによって、測定される。受信間隔測定部134は、CPU101上で動作するソフトウェアとして構成してもよいし、LAN102で構成してもよい。また、CPU101上で動作するソフトウェアとLAN102の組み合わせで構成してもよい。例えば、受信タイミングはLAN102で計時し、CPU101上で動作するソフトウェアによって受信タイミングの差分を求めて、受信間隔を算出する。この場合、受信間隔を算出するための情報が、LAN102からCPU101に開示される。この時、ICのレジスタを用いてもよいし、メモリ108の所定領域にLAN102が書き込んでもよい。
キューイング発生判定部135は、ネットワーク中継装置121内のパケットバッファで時刻同期用パケットがキューイングしたか否かを判定する。受信間隔測定部134で計測されるパケットの受信間隔と、後述する受信間隔閾値決定部136によって設定される受信間隔閾値を用いて、ネットワーク中継装置121内のパケットバッファでの時刻同期用パケットのキューイングが判定される。キューイング発生判定部135は、例えば、CPU101上で動作するソフトウェア、LAN102を構成するIC上で動作するソフトウェア、ハードウェアのいずれか、または複数によって構成される。
以下、図4に示すような「ネットワーク中継装置121内のパケットバッファでパケットがキューイングして待ち時間が発生している状態」を、「衝突」と記す。
受信間隔閾値決定部136は、後述するネットワーク構成情報記憶部151で保持されるネットワーク構成情報に基づいて、ネットワーク中継装置121におけるパケットの衝突の有無を判定するための基準値となる受信間隔閾値を設定する。受信間隔閾値決定部136は、CPU101上のソフトウェアとして構成してもよいし、LAN102 を構成するIC上のソフトウェア、ハードウェアとして構成してもよい。受信間隔閾値は、レジスタ、ディップスイッチ等の基板上の入力手段、ソフトウェアAPI(Application Programming Interface)、GUI(Graphical User Interface)等の設定手段により、設定可能な構成としてもよい。
判定結果履歴記憶部137は、キューイング発生判定部135の判定結果を逐次記録し、履歴情報として記憶すると共に、何らかの外部通知手段(図示されないディスプレイ表示、電子メール、アラーム音等)によって判定結果や履歴情報を表示あるいは報知する。判定結果履歴記憶部137が記憶する履歴情報は、衝突が起きたこと、衝突を起こした同期パケットの送信元である通信装置123の識別子、衝突が発生した時間等である。さらに、これらの情報から算出可能な衝突の合計発生回数、衝突発生の平均間隔等が、履歴情報として記憶される。また、履歴情報として記憶されている、衝突した同期パケットに関わる通信装置123(スレーブ)の情報に基づいて、受信間隔閾値決定部136は、ネットワーク構成情報記憶部151から関連する情報を抽出することができる。判定結果履歴記憶部137は、CPU101上のソフトウェア、メモリ108不揮発性記憶媒体109、LAN102を構成するIC上のソフトウェア、ハードウェアのいずれか、または複数で構成される。
グループ構成部150は、ネットワーク構成の情報を元に通信装置123をグルーピングし、送信回数や各通信装置123との時刻同期手順の成否状況等に応じて通信装置123のグループを時刻同期処理部130に提示する。例えば、時刻同期手順の成否状況として、時刻同期の成功回数や、失敗回数、または最後に時刻同期が成立してからの経過時間に基づいて、通信装置123のグループが提示される。グループ構成部150は、CPU101上のソフトウェアとして構成してもよいし、LAN102を構成するIC上のソフトウェア、ハードウェアとして構成してもよい。
ネットワーク構成情報記憶部151は、グループ構成部150が通信装置123をグルーピングするために利用するネットワーク情報を記憶する。ここで、ネットワーク構成情報は、例えば、ネットワークを構成する通信装置123に関わる情報(装置数、装置を構成する部品の性能、ネットワークアドレス、機器の識別子等、ネットワークにおける接続位置)、通信制御装置120までの経路上に位置するネットワーク中継装置121に関わる情報、ネットワークトポロジ、各装置までの通信遅延の計測値等である。ネットワーク構成情報記憶部151は、CPU101上のソフトウェア、メモリ108、不揮発性記憶媒体109、LAN102を構成するIC上のソフトウェア、ハードウェアのいずれか、または複数で構成される。例えば、ネットワーク構成情報記憶部151が保持する情報を、CPU101上のソフトウェアで抽出、取得、算出、決定し、メモリ108、不揮発性記憶媒体109上に記憶する。
ネットワーク構成情報推定部152は、通信制御装置120が接続されるネットワークの構成を推定し、推定した結果をネットワーク構成情報記憶部151に記録する。
(受信間隔閾値の設定手段)
次に、受信間隔閾値決定部136における受信間隔閾値の設定手段について説明する。
<ネットワーク中継装置一段>
はじめに、ネットワーク中継装置121の段数が一段の場合について説明する。
パケットが衝突したか否かはキューイング発生判定部135によって、受信間隔測定部134で計測されるパケットの受信間隔と、受信間隔閾値決定部136によって設定される受信間隔閾値を比較することで判定される。ここで、受信間隔閾値は、パケットの通信処理時間、フレーム間ギャップ、ネットワーク中継装置121の通信処理時間のうちの一つ、または複数の値から、次のように算出される。
まず、パケットの通信処理時間Tpは、式(3)で求まる。
Tp=Sp×8/Th (3)
ここで、Spはパケットサイズ(単位:byte)、Thは通信スループットである。例えば、Sp=64(byte)のパケットをTh=100(Mbps)のIEEE802.3規格によるネットワーク上で送信した場合の通信処理時間Tpは、64(byte)×8(bit/byte)/100(Mbps)=5.12μsとなる。
次に、フレーム間ギャップ(IFG:Inter frame Gap)は、IEEE802.3規格において、フレームを通信経路上に送信後、後続のフレームを送信するまでの間隔であると規定される。そして、フレーム間ギャップは、96bit時間(96bitを転送するのに要する時間)と規定されており、式(4)でフレーム間ギャップIFGを求めることができる。
IFG=96/Th (4)
例えば、Th=100MbpsのIEEE802.3規格によるネットワークでは、IFGは、96(bit)/100(Mbps)=0.96μsである。
ネットワーク中継装置121の通信処理時間は、個々のネットワーク中継装置121の処理内容に依存する。ネットワーク中継装置121の処理内容は、例えば、宛先ポート情報の抽出処理や、ネットワーク中継装置121内でのパケットの転送処理である。
なお、ネットワーク中継装置121の通信処理時間は、ネットワーク中継装置121のデータシートやマニュアルに記載されている値を用いても良いし、ネットワーク中継装置121の転送遅延を実測することにより実験的に求めても良い。
ネットワーク中継装置121の転送遅延を実測する場合、ある通信端末に2台の通信ポートを設けて、テストパケットを、一方の通信ポートから送信した後に、ネットワーク中継装置121を経由して、他方の通信ポートで受信する。この時の通信遅延(例えば、パケットの先頭を受信したタイミングから、パケットの先頭を送信したタイミングを引いた値)から、式(3)によるパケットの通信処理時間を引いた値が、ネットワーク中継装置121の通信処理時間となる。
ネットワーク中継装置121の通信処理時間は、処理対象パケットのパケットサイズや、対象パケットの前後における他のパケットの存在、あるいは管理される通信経路の情報量によって変化する可能性があるため、さまざまな条件に応じて、推定されることが好ましい。例えば、式(5)によって、ネットワーク中継装置121の推定通信処理時間Tsを求めることができる。
Ts=A+kSp+B+mC (5)
ここで、Aはパケット転送時にかかる固定の遅延であり、kはパケットサイズSpに対する比例定数である。Bは、ネットワーク中継装置121のパケット用バッファ中において、対象パケットの前に他のパケットが存在する場合に非ゼロ値をとる遅延である。Cは、通信経路の情報量、mは通信経路の情報量Cに対する比例定数である。
パケットがネットワーク中継装置121で衝突した場合におけるネットワーク中継装置121の動作を図4に示す。バッファ142は、ネットワーク中継装置121中のパケット用バッファである。バッファ142は、First−in First−out(FIFO)型のデータ構造を有する。図4においては、パケット140の送信処理中であり、パケット141がパケット140に続いて、バッファ142内にキューイングされている。この時、パケット141は、バッファ142内で先行するパケット140によって送信が遅延され、パケット141はパケット140とバッファ142内で衝突している。
図4における出力側には通信制御装置120が接続され、バッファ142から出力されるパケット140およびパケット141は、通信制御装置120によって順次受信される。そして、前述したように、通信制御装置120は、パケット140とパケット141の受信間隔を計測し、計測結果と受信間隔閾値の比較に基づいて、パケット141とパケット140の衝突の有無を判定する。図4においては、パケット141とパケット140が衝突しているので、通信制御装置120がパケット141を受信するまで、パケット140に対して実際に要する通信処理時間だけ遅延する。このとき、通信制御装置120は、計測された受信間隔と以下に述べる受信間隔閾値Trの比較結果から、ネットワーク中継装置121内でパケットのキューイングが発生していると判定する。
受信間隔を前後のパケットの先頭間とする場合、受信間隔閾値Trは、式(6)で求められる。
Tr=Tp+IFG+Ts (6)
ここで、パケットの通信処理時間Tp、フレーム間ギャップIFGおよびネットワーク中継装置121の推定処理時間Tsは、それぞれ式(3)、式(4)および式(5)で求めることができる。
なお、Tsの値を求めることが難しい場合は、Tsを省略して、式(7)により暫定的にTrを設定し、マージン調整により、通信制御装置120の動作を最適化しても良い。
Tr=Tp+IFG (7)
また、受信間隔を、前後のパケット間のギャップ、すなわち前パケットの後端と後パケットの先頭の間とする場合、受信間隔閾値Trは次式(8)で求められる。さらに、Tsの値を求めることが難しい場合は、式(7)と同様にTsを省略して、式(9)により暫定的にTrを設定しても良い。
Tr=IFG+Ts (8)
Tr=IFG (9)
なお、パケットの先頭、後端の位置によって、ネットワーク122のプロトコルで定めるプリアンブル、トレイラの通信時間を考慮する必要がある。例えば、IEEE802.3では、ヘッダに先行して7オクテットのプリアンブルと1オクテットのSFD(Start Frame Delimiter)がネットワーク上を流れる。また、パケットの末尾には4オクテットのFCS(Frame Check Sequence)が付加される。例えば、(9)式ではIFGのみとしているため、FCSの末端をパケットの後端、プリアンブルの先頭をパケットの先頭としている。パケットの先頭、後端の位置によって、これらのデータの処理時間を受信間隔閾値Trの計算式に含めてもよいし、別途、マージンに含めてもよい。
<ネットワーク中継装置複数段>
次に、ネットワーク中継装置121の段数が複数段の場合について説明する。
ネットワーク中継装置121の複数段の場合、受信間隔閾値Trは、1段当たりの受信間隔閾値Tr1を用いて、式(10)によって求めることができる。
Tr=Tr1×N (10)
ここで、Tr1は前述の式(6)〜(9)によって求めることができる。Nは、ネットワーク中継装置121の段数である(Nは2以上の自然数)。
また、ネットワーク中継装置121ごとの増分が所定値であるとする場合、受信間隔閾値Trは、式(11)あるいは式(12)によって求めることができる。なお、式(11)は、ネットワーク中継装置121の違いに関わらず、増分が一定である場合に適用できる。また、式(12)は、各ネットワーク中継装置121で増分が異なる場合に、適用できる。
Tr=Tr1+N×α (11)
Tr=Tr1+Σαi (12)
ここで、α、αi(iは1〜Nの自然数)は、各ネットワーク中継装置121における増分である。「Σ」は、通常通り、α1〜αNの総和を示す。また、増分α、αiは、ネットワーク中継装置121のデータシート、マニュアルに記載されている値を用いてもよいし、実験的に求めてもよい。実験的に求める場合は、通信装置を3台用意し、その内1台を時刻同期マスタ、2台を時刻同期スレーブとして、マスタと2台のスレーブ間におけるネットワーク中継装置の段数を変えて、スレーブ2台からの応答パケットの受信間隔を計測する。
式(11)は、ネットワーク中継装置121の段数Nの一次式であるが、多次元の式や上記のような計測結果を用いる近似式としてもよい。あるいは、所定の算術式ではなく、図7に示すように、複数段のネットワーク中継装置121と受信間隔閾値との対応関係をテーブルデータによって管理してもよい。図7(a)は、ネットワーク中継装置121の段数によって受信間隔閾値が変わる場合のテーブルデータを示し、図7(b)は通信装置123によって受信間隔閾値が変わる場合のテーブルデータを示している。なお、後者は、通信装置123によって、例えば、マスタ・スレーブの位置関係によって、通信制御装置120との間の経路のネットワーク中継装置121が異なる場合に好適である。
なお、式(6)〜(12)並びに図7に示した受信間隔閾値は、衝突した同期パケットの送信元通信装置123(スレーブ)が、同じネットワーク中継装置121に接続している場合の閾値である。もし、衝突した同期パケットの送信元通信装置123のネットワーク中の位置が異なる場合は、各通信装置123の位置関係を反映して、受信間隔閾値が設定される。例えば、衝突したと判定された二つのパケットの送信元が、図1における通信装置123eおよび通信装置123fとする。通信装置123と通信制御装置120との間の通信経路におけるネットワーク中継装置121の段数は、通信装置123eについては3段、通信装置123fについては4段である。この場合、段数の小さい通信経路における通信装置123eが接続されるネットワーク中継装置121dの受信間隔閾値が用いられる。これは、通信装置123eおよび通信装置123fを送信元とする二つのパケットの衝突が、ネットワーク中継装置121dにおいて発生するためである。
このように、衝突する二つの同期パケットの送信元通信装置123のネットワーク中の位置が異なる場合、衝突は、ネットワーク中継装置の段数が少ない送信元通信装置が接続されるネットワーク中継装置において発生する。このため、受信間隔閾値Trは、ネットワーク中継装置の段数が少ない送信元通信装置が接続されるネットワーク中継装置の受信間隔閾値をTrminとして、式(13)によって設定できる。
Tr=Trmin (13)
また、図1の通信装置123cと通信装置123eのように、ネットワーク中の位置は異なるが、ネットワーク中継装置121の段数が同じである場合、衝突は、通信装置123cと通信装置123eに共通の通信経路において、両通信装置に最も近い、すなわち通信制御装置120から2段目のネットワーク中継装置120bにおいて発生する。このため、受信間隔閾値は、ネットワーク中継装置121bの受信間隔閾値が用いられる。
このように、衝突する二つの同期パケットの送信元通信装置123のネットワーク中の位置は異なるがネットワーク中継装置の段数が同数である場合、受信間隔閾値Trは、両通信装置に共通の通信経路において、両通信装置に最も近い、すなわち通信制御装置120から数えた段数が最大のネットワーク中継装置の受信間隔閾値をTrcommonとして、式(14)により設定することができる。
Tr=Trcommon (14)
(キューイング発生の判定手段)
図3に示したキューイング発生判定部135におけるキューイング発生の判定手段について説明する。
本実施例において、パケットがネットワーク中継装置121内で衝突していなければ、図3の受信間隔測定部134で計測される実際のパケット受信間隔Tは、上述した受信間隔閾値Trよりも長くなる。そこで、キューイング発生判定部135は、Tが式(15)の関係を満たす場合に、ネットワーク中継装置121内でパケットの衝突が発生していないと判定し、Tが式(15)の関係を満たさない場合に、ネットワーク中継装置121内で衝突が発生していると判定する。
T>Tr+α (15)
なお、式(15)におけるαはマージンであり、個々のネットワーク毎に適宜設定される。
(通信装置の機能構成)
図5は、通信装置123の機能構成図を示す。
通信装置123は、通信制御装置120と同様に、時刻同期処理部130と、送信部132および受信部133を有する通信部131と、を備える。時刻同期処理部130は、通信部131を介して通信制御装置120との間で通信されるパケットのデータに基づいて、時刻同期プロトコルを実行する。なお、IEEE1588のようにマスタ・スレーブ構成をとる場合、通信制御装置120がマスタとなり、通信装置123がスレーブとなる。
(通信制御装置における同期処理動作)
図6は、時刻同期プロトコルとしてIEEE1588プロトコル(図14,15および「背景技術」の欄の記載参照)を実行する場合における、本実施例の通信制御装置120における同期処理動作を示すフローチャートである。
まず、通信制御装置120をマスタとする(S001)。IEEE1588では、Best Master Clock(以下、BMCと略記する)アルゴリズムによって、通信制御装置120と各通信装置123との間で情報(Announceメッセージ)をやりとりし、その情報の内容によって、マスタとなるかスレーブとなるかを決定する。本実施例では、通信制御装置120がマスタとなるようにあらかじめ通信制御装置120および各通信装置123のパラメータを設定しておく。例えば、通信制御装置120がマスタとなるように情報の優先度を上げておく。なお、BMCにおけるパラメータを特別設定せずに、通信装置123の構成を通信制御装置120と同様(図3参照)にしてもよい。この場合、BMCアルゴリズムを実行した結果、マスタとなった装置を便宜上、通信制御装置120とし、スレーブとなった装置を通信装置123とする。
次に、ステップS020において、時刻同期処理部130は、グループ構成部150に送信対象となるグループを問い合わせ、グループ構成部150は、送信対象となるグループの識別子を時刻同期処理部130に通知する。
なお、グループ構成部150が時刻同期処理部130に通知する情報は、グループの識別子に限らず、一台または複数台の通信装置123の識別子でもよい。例えば、ある1グループ外の通信装置123が少数(例えば、一台)である場合は、これら少数の通信装置123でグループを構成して識別子を定義することなく、個々の通信装置123の識別子を通知情報としてもよい。
グループ構成部150が管理するグループの識別子並びにグループ構成方法については後述する。
次に、ステップS002において、時刻同期処理部130は、先行するステップS020でグループ構成部150から通知されたグループの識別子を用いて、IEEE1588のプロトコルにしたがい、送信時刻(図15のt1)の情報を含むSyncメッセージをマルチキャストで通信装置123に送信する。なお、IEEE1588の仕様では、Syncメッセージの送信後にFollow_Upメッセージを送信するtwo stepモードが定義されている。図6の動作においては、Syncメッセージのみを送信するone stepモードが適用されるが、two stepモードも同様に適用できる。
次に、通信制御装置120は、通信装置123からのDelay_Reqメッセージの受信を待機する(S003)。Delay_Reqメッセージを受信すると、受信間隔測定部134は、直前に受信したパケットとの受信間隔を測定する(S004)。なお、最初に受信したパケットについては、直前に受信したパケットとの受信間隔は計測できないが、受信間隔を0とし、キューイング発生判定部135において、衝突は発生していないと判定すれば良い。
次に、キューイング発生判定部135はパケットの衝突が発生したか否かを判定する(S005)。具体的な判定手段は、上述した通り、計測された受信間隔と受信間隔閾値との比較である。パケットの衝突が発生したと判定されると(S005のY)、衝突が発生したパケットの通信相手である通信装置の情報が保持される(S006)。通信相手の情報は、IPアドレスでもよいし、IEEE1588上の識別可能な識別子(ドメイン)でもよい。また、パケットの衝突が発生していないと判定されると(S005のN)、時刻同期処理部130は、受信時刻(図15のt4)の情報を含むDelay_Respメッセージを送信し、時刻同期プロトコルの実行を継続する(S007)。
ステップS006あるいはS007の処理動作実行後、時刻同期処理部130は、全ての通信相手からパケットが受信したか否かを判定する(S008)。受信されてはいないと判定された場合(S008のN)、ステップS003に戻って、パケットの受信を待機する。また、全てのパケットが受信したと判定された場合(S008のY)、衝突が発生した通信相手があるか否か、すなわちステップS006で保持した通信相手があるか否かを判定する(S009)。なお、途中でパケットロスが発生することを考慮し、所定時間経過した場合に、ステップS010へ進むようにしても良い。
ステップS009おいて、パケットが衝突した通信相手があると判定された場合(S009のY)、ネットワーク中継装置121内でキューイングによる遅延が発生したことになる。この場合は、時刻同期プロトコルを再実行する。この時、最初に送信したSyncメッセージと同様にマルチキャストでSyncメッセージを送信すると、再び全ての通信装置123がDelay_Reqメッセージを返信することになり、再度ネットワーク中継装置121内においてパケットが衝突する可能性がある。そこで、パケットが衝突したと判定した通信相手とのみ、あるいは少なくともパケットが衝突したと判定した通信相手を含むグループに宛先を制限して通信をすることが好ましい。例えば、特定の通信相手とのみ通信するユニキャスト通信や、別のマルチキャストアドレスを定義したマルチキャスト通信を適用したり、VLAN機能に対応したネットワーク中継装置121を用いてVLANによるグルーピングを適用したりする。これらにより、通信相手の宛先を変更して(S010)、それから、ステップS002に戻って、再度Syncメッセージを送信して時刻同期プロトコルを再実行する。
ステップS009において、パケットが衝突した通信相手がないと判定された場合(S009のN)、パケットが衝突した通信相手の記録をクリアし(S011)、その後、終了条件を満足したか否かが判定される(S012)。終了条件を満足していれば(S012のY)、通信制御装置120は、図6の処理動作を終了する。また、終了条件を満足していなければ(S012のN)、通信制御装置120は、所定時間待機し(S013)、その後、ステップS002に戻って、再度時刻同期プロトコル実行する(S002)。ここで、終了条件としては、例えば、ユーザやシステム管理者が明示的に終了することを設定することや、システム稼働後の経過時間や、時刻同期プロトコルの実行回数を用いた条件を設定することが挙げられる。
なお、図6の同期処理動作においては、パケットが衝突したと判定した通信相手に対して、時刻同期プロトコルを再実行したが、再実行しなくてもよい。この場合、通信制御装置120は、通信装置123との時刻同期が失敗したとして、所定の処理を実行する。そのような所定の処理としては、例えば、所定の宛先に、時刻同期の失敗および通信装置123の識別子を通知することや、所定の提示手段(通信制御装置120に接続されたモニタによる表示、通信制御装置120に備えられたLED等による提示、アラーム音の出力等)によって外部へ提示することが挙げられる。
また、図6の同期処理動作において、Syncメッセージを送信してから、最初のDelay_Reqメッセージを受信するまでの時間を計測し、その時間が所定値を超えた場合に最初のDelay_Reqメッセージに衝突が発生したと判定し、当該Delay_Reqメッセージの送信相手と再度、時刻同期プロトコルを実行してもよい。このような所定値として、他の通信フローを発生させずに、実験的にDelay_Reqメッセージを受信するまでの時間を計測した時の計測値を利用してもよい。
また、図6のステップS013における待機時間について、ステップS002の開始タイミングが所定の周期となるように待機時間を設定してもよいし、毎回、待機時間を変更してもよい。例えば、ステップS010からステップS002へ遷移した回数すなわち衝突回数が多ければ、はじめに同期した通信装置123は、同期されないで動作する時間が長くなるため、ステップS013における待機時間を短めに設定し、なるべく早く時刻同期処理動作が実行されるようにすることが好ましい。また、ステップS010からステップS002へ遷移した回数が少なければ、各通信装置123は比較的精度高く同期されていると推定できるので、ステップS013における待機時間を長めに設定してもよい。
(グループの識別)
図3におけるグループ構成部150が管理するグループの識別子について説明する。
グループの識別子は、例えば、IEEE1588で定義されるドメイン,IEEE 802.1QにおけるVLAN(Virtual LAN),IP(Internet Protocol)やIEEE802.3などの通信プロトコルで定義されるマルチキャストアドレスを用いて表現される。なお、その他、ネットワーク上での通信プロトコルに基づいて複数の通信端末間と通信可能な任意の手段を用いても良い。
<IEEE1588のドメインによる識別>
IEEE1588規格のドメインを用いた通信装置123の機能構成例を図9に示す。IEEE1588では、ドメインを用いてプロトコル上の操作やタイムスケールを独立して定義可能である。本実施例の場合は、通信装置123内でドメイン毎に同期時刻を管理することとなる。そのため、複数の同期時刻160から同期時刻選択部161が一つの同期時刻を選択する。
同期時刻選択部161が同期時刻160を選択する基準は、同期時刻160の識別子に基づいて選択してもよいし、同期時刻プロトコルの実行状況や、該当するドメインのIEEE1588のマスタの属性(時刻精度等)に基づいて選択してもよい。例えば、同期時刻プロトコルの実行頻度の多いドメイン、あるいはマスタの時刻精度が最も高いドメインの同期時刻160が選択される。
一つの通信装置123内にドメインを多重化して通信制御装置120と通信する手段としては、ネットワーク中継装置121の経路制御情報で構成(ドメインごとに経路を切り替える等)してもよいし、通信装置123内でIEEE1588パケット上のドメイン番号を識別してもよい。
<VLANによる識別>
複数の通信装置123のうちの一つまたは複数と、通信制御装置120によって構成するVLANを、定義するグループの数だけ設定する。
通信制御装置120の時刻同期処理部130は、図6のステップS002において、同図のステップS020でグループ構成部150から通知されるVLANの識別子(VID)をVLAN用のタグに設定して、Syncメッセージを送信する。
この場合、VLAN機能に対応したネットワーク中継装置121を用いる。さらに、通信制御装置120が図6の動作を実行する前に、予め、各ネットワーク中継装置121にVLANによって識別されるグループが設定される。
<マルチキャストアドレスによる識別>
グループ毎にマルチキャストアドレスを定義し、マルチキャストアドレスを実現するための設定を、IGMP(Internet Group Management Protocol)等を用いて、ネットワーク中継装置121や通信装置123並びに通信制御装置120に対して実施する。
(グループ構成手段)
次に、グループ構成部150におけるグループ構成手段について説明する。なお、グループは、なるべくネットワーク中のネットワーク中継装置121内におけるパケットの衝突確率が低くなるように構成されることが好ましい。
<遅延情報によるグループ構成>
通信制御装置120とネットワーク中継装置121間の通信遅延を基準にグループを構成することができる。事前のシステム構築の準備段階において、通信制御装置120と各通信装置123間において、1対1でIEEE1588等の時刻同期プロトコルを実行すれば、図14および図15に示す手段で通信遅延を求めることができる。
<ネットワーク構成によるグループ構成)
ネットワークの構成に基づいてグループを構成してもよい。例えば、通信制御装置120と通信装置123間にあるネットワーク中継装置121の数や、ネットワーク中継装置121間の通信性能(例えば、IEEE802.3の通信スループットとしての10Mbps,100Mbps,1Gbps等や、有線通信か無線通信かという通信媒体の種類、通信規格の種類等)に基づいてグループを構成することができる。
<評価値によるグループ構成>
上記のように、遅延情報やネットワークの構成に基づき、各通信装置123に対して求められる所定の指標、例えば通信遅延を用いて、グループを構成することができる。この場合、所定のグループ数となるように、かつ、同じ指標を有する通信装置123が別々のグループに分かれるようにする。
図10は、通信遅延に基づくグループ構成例を示す。各通信装置123a〜fと通信制御装置120との通信遅延は、それぞれ1ms,2ms,2ms,3ms,3ms,3msである。グループ数が3である場合、例えば、(123a,123c,123d)、(123b,123e)、(123f)とグループ分けされる。
また、グループ数が2である場合、例えば、(123a,123c,123d)、(123b,123e,123f)とグループ分けされる。ただし、この場合は、前述のグループ数3の例に比べ、通信装置123dと通信装置123eの返信パケットが衝突する確率が高まり、一方について再同期手順を実行する状況になる可能性が大きい。
<前回の同期処理の結果に基づいたグループ構成>
また、前回の同期処理結果に基づいてグループを構成してもよい。例えば、前回の時刻同期処理において、同期パケットが衝突したと判定された通信装置123から、時系列順に1つ飛ばしで通信装置を選択することによりグループが構成できる。あるいは、前回の時刻同期手順の結果、時刻同期ができなかった残りの通信装置123の数が所定数以下の場合、残りの通信装置123から1つを選択してもよい。システムの要求性能に問題がなければ、各通信装置123ごとに同期処理を実行した方が容易だからである。
このような前回の時刻同期処理の結果に基づいたグループ構成手段と、図10におけるグループ構成手段とを組み合わせてもよい。一例として、図10におけるグループ構成手段により構成されるグループ候補から、前回の同期処理結果に基づいて構成されるグループにおける通信装置123群を全て含んだグループが時刻同期処理部130に提示されてもよい。例えば、前回時刻同期ができなかった通信装置が通信装置123bおよび123fであり、通信装置123eとすでに時刻同期が成立している場合に、(123b,123e,123f)というグループが提示される。
(グループ構成の実行タイミング)
グループ構成の実行タイミングは、時刻同期通信やシステムアプリケーションに関する実稼働時前の準備段階に設定してもよいし、システム稼働中に入手可能な情報に応じて動的に設定してもよい。
(ネットワーク構成情報の推定)
図3におけるネットワーク構成情報推定部152によるネットワーク構成の推定について述べる。
ネットワーク構成情報推定部152は、同期パケット、あるいはその他の通信プロトコルのパケットをネットワーク122へ送信し、その応答を見ることでネットワーク122の構成を推定する。例えば、同期パケットをブロードキャストし、応答パケット上の送信元識別子、応答パケットの数を観測することで、同期プロトコル対応の通信装置123の数を推定することができる。
本実施例の推定手段においては、式(16)が用いられる。
M=R/β (16)
ここで、Mは推定段数、Rは応答時間、βは1段あたりの転送遅延である。βはオフラインで実験的に求めてもよいし、複数の通信装置123との応答時間から統計的に計算して求めてもよい。例えば、ある通信装置123との応答時間は、ネットワークの通信負荷が低い場合、特定の値近傍に集中するので、ネットワーク中継装置121の段数が1段異なれば、2つの集中した値の差分は、ネットワーク中継装置121の1段分の転送遅延と見積もることができる。あるいは、図8に示すような段数とその応答時間の関係を、実験的に求め、その関係から段数を推定してもよい。あるいは、段数を計測可能な通信プロトコルを用いてもよい。例えば、IP(Internet Protocol)は、TTL(Time To Live)という、中継装置を経由するごとに1減じるパラメータによれば、受信側(通信装置123)で取得したTTLの値を通信制御装置120に返信すれば、ネットワーク中継装置121の段数を求めることができる。
また、複数回同期パケットを通信制御装置120から通信装置123に送信し、その応答を通信制御装置120で受け取る順番が入れ替わることがある場合、その2つの応答パケットの送信元通信装置123は、同じネットワーク中継装置121、あるいは共有する経路を有すると推定される。
上述したようなネットワーク構成の推定は定期的に実行されてもよいし、システム起動時または試験時だけ、あるいは所定事象発生時に実行されてもよい。推定が定期的に実行さける場合、同期パケットの通信と独立して実行してもよいし、順番に実行してもよい。また、所定事象発生時に推定を実行する場合の事象として、通信装置123の数が変化したことや、ネットワーク122中の通信経路や通信接続が変化したことが挙げられる。後者については、LLDP(Link Layer Discovery Protocol)、RSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)により検知できる。
(通信制御装置の機能構成の変形例)
ここで、図3に示した通信制御装置120の機能構成において、同期パケットの送信相手のグループを構成しなくても良い場合は、グループ構成部150を備えていなくても良い。この場合、図6に示したステップS020は実行されずに、ステップS001からステップS002へ遷移する。また、衝突判定結果の履歴を記憶しなくても良い場合は、判定結果履歴記憶部137を備えていなくても良い。同様に、ネットワーク122の構成を推定しなくても良い場合は、ネットワーク構成情報推定部152を備えていなくても良い。この場合、ネットワーク122の構成に関する情報は、所定の入力手段(例えば、キーボード操作)によって、ネットワーク構成情報記憶部151に設定される。なお、実施例において、ネットワーク構成情報記憶部151の情報を設定するために、ネットワーク構成情報推定部152と所定の入力手段を併用しても良い。
(その他の変形例)
<他の通信フローが存在する場合1>
時刻同期処理以外の通信フローが存在する場合、各パケットの受信間隔が変化する可能性がある。この場合は、その他の通信フローに関する情報をネットワーク構成情報記憶部151で保持することにより、キューイング発生判定部135は、ネットワーク中継装置121内のパケットの衝突を判定することができる。
<他の通信フローがある場合2>
また、他の通信フローが通信装置123間で発生し、通信制御装置120から通信装置123へ送信された時刻同期パケット(Syncメッセージ)と衝突する場合を図11に示す。図11では、通信装置123cから通信装置123bへ通信フロー171が存在し、通信制御装置120から通信装置123bへ時刻同期プロトコルの通信フロー170が存在する。このとき、時刻同期プロトコルの通信フロー170のSyncメッセージが、ネットワーク中継装置121aおよび121b内で、通信フロー171のパケットと衝突する可能性があり、時刻同期プロトコルの通信フロー170における往路と復路での通信遅延が異なる可能性が有る。このような場合は、通信装置123cにおいて、Syncメッセージを受信後に、通信フロー171のパケットを通信装置123bへ送信する方式が用いられる。このようにすれば、ネットワーク中継装置121内でのパケットの衝突を回避することができる。
(統計手法組み合わせ)
また、同期プロトコル処理の過程で得られる通信遅延の履歴に対して、統計処理を実施し、処理内容を決定する手段について説明する。
通信制御装置120と通信装置123間の通信遅延を図14の処理で複数回計算し、その平均値や分布、最小値、最大値等を求める。それらの計算結果から、所定の閾値を設定する。例えば、最小値、最大値、あるいは正規分布等の数学的モデルを仮定した場合の所望の区間の上限値および下限値を閾値とする。また、これらの閾値は、ネットワーク中継装置121の段数を考慮して算出してもよい。
通信遅延が閾値の範囲内の場合(有効とみなせない)の対応処理としては、例えば、SyncやDelay_Reqなどの同期パケットを送信しないこと、無効な同期パケットを送信すること、Syncを受信した場合にSyncパケットの時刻情報を用いて同期しないこと等が挙げられる。なお、通信遅延の計算は、精度を高めるため、ネットワーク122を無負荷の状態として試験計測して求めてもよい。
(ドメイン分け)
また、時刻同期する範囲の分割について説明する。
図11において、通信制御装置120,通信装置123aおよび123cを1つの時刻同期範囲(ドメインaとする)とし、通信装置123cおよび123bを他の時刻同期範囲(ドメインbとする)とする。通信装置123cは、ドメインaでは同期スレーブ(通信制御装置120が同期マスタ)、ドメインbでは同期マスタとなる。このように構成すれば、通信制御装置120から通信装置123bへは同期パケットを送信しなくても良いので、ネットワーク中継装置121aにおける同期パケットの衝突が発生しない。
なお、ドメインaおよびドメインbは、IEEE1588のドメインを用いて構成してもよいし、ネットワーク中継装置121のVLAN機能を用いて構成してもよい。
(ネットワーク中継装置への応用)
また、ネットワーク中継装置121については、パケット衝突時に、衝突したパケットの送信間隔を一定にするように構成することができる。すなわち、第一のパケットを転送する際に、第二のパケットを同じ転送先に対して転送中の場合に、第一のパケットおよび第二のパケットのいずれかが同期パケットである場合に、第二のパケットを転送後に所定の送出間隔をおいて第一のパケットを転送するようにする。このようにすれば、通信制御装置120におけるパケットの受信間隔は、一定にしたネットワーク中継装置121の送信間隔と等しくなるため、受信間隔閾値決定部136は、式(17)により、容易に受信間隔閾値を設定することができ、通信制御装置120の処理負荷が低減できる。
Tr=Ts (17)
ここで、Tsはネットワーク中継装置121におけるパケット衝突時の送出間隔である。
送出間隔Tsは、所定の入力手段によって設定してもよいし、外部から所定の確認手段によって取得してもよい。なお、これら入力手段および確認手段として、ネットワーク通信を用いてもよい。また、送出間隔Tsは、ネットワーク122で規定されるIFGに対する差分として設定してもよい。
送出間隔Tsとするパケットは、衝突したパケットの一方、あるいは両方を同期パケットに限定してもよい。 パケット衝突時の送出間隔をTsとするため、転送パケット間の最小間隔はTsとなる。
また、衝突時の送出間隔をTsとして一定にする機能の制御(有効化・無効化)を外部からの所定の手段で設定してもよい。この設定手段は、ネットワーク通信やSoftware Defined Networkなどを含む。
なお、衝突していない状態で送出間隔がTsとならないように、パケットの転送時に、先行するパケットがネットワーク中継装置121のバッファ中にない場合は、必ず、先行パケットとの送出間隔がTsより大きくなるように送信してもよい。
また、ネットワーク122は、IEEE1588規格で規定されるTransparent Clockを用いて構成してもよい。
さらに、図22に示すように、リングネットワークの一部に本実施例を適用しても良い。リングネットワークは、例えば、HSR(High Availability Seamless Redundancy)を含むIEC62439やIEEE802.17のRPR(Resilient Packet Ring)である。
(実施例1の効果)
上述した実施例1によれば、通信制御装置120は、時刻同期プロトコルの応答メッセージの受信間隔によって、ネットワーク中継装置内でのパケットの衝突の有無を判定することができる。パケットの衝突が発生した場合は、時刻同期手順を再実行し、パケットの衝突が発生しなかった場合は、そのまま時刻同期プロトコルを継続する。これにより、ネットワーク中継装置121を用いたネットワーク構成においても時刻同期プロトコルの実行が可能となる。従って、ネットワークを共有した複数の通信装置間で時刻を同期でさせたシステムを構築することができる。また、ネットワーク中継装置を介してネットワークを中継、延長することで、大規模な時刻同期システムを構築することができる。
さらに、本実施例によれば、全ての通信機器において、特殊な通信装置や特殊な中継装置を用いることなく、IEEE1588などの規格に準拠した標準的な装置を用いて時刻同期システムを構成することができる。
また、本実施例によれば、ネットワーク構成情報を踏まえて、衝突判定の閾値を決定するため、ネットワーク構成に応じて高精度に同期することができる。
以下説明するように、本実施例における通信装置123は、実施例1における通信装置とは異なる機能を備える。なお、以下の図中において、前述した図中における符号と同じ符号を付した構成要素は、特に断りのない限り、実施例1について説明した構成要素と同様の構成要素である。
図12は、本発明の第2の実施例における通信装置123の機能構成を示す。
時刻同期実行制御部180は、時刻同期処理部130のパケットの送信タイミングを制御する。送信タイミングの制御は、通信制御装置120から通知される情報に基づいてもよいし、時刻同期処理部130の動作に基づいてもよい。
通信装置123の処理動作を図13に示す。
まず、Syncメッセージを受信するまで待機する(S030)。Syncメッセージを受信すれば、受信時刻t2を計測して保持する(S031)。次に、時刻同期実行制御部180がDelay_Reqメッセージの送信タイミングを制御する(S032)。具体的には、送信を所定時間待機させる。所定時間経過後に、Delay_Reqメッセージを送信する(S033)。次に、送信時刻t3を計測して保持する(S034)。次に、同期パケットの受信を待機する(S035)。同期パケットを受信し、受信したパケットがSyncメッセージか否かを判定する(S036)。Syncメッセージであれば(S036のY)、通信制御装置120によって時刻同期処理が再実行されたと推定し、ステップS031に戻る。受信した同期パケットがSyncメッセージでなければ(S036のN)、同期処理を実行する(S037)。同期処理は図14,15に示すとおりであり、SyncメッセージまたはFollow_Upメッセージ中の時刻(マスタの送信時刻)と、Delay_Respメッセージ中の時刻(マスタにおけるDelay_Reqメッセージの受信時刻)と、上記t2およびt3をもとに通信制御装置120に同期される。
(Delay_Reqメッセージの送信タイミング制御)
本実施例では、上述したように、時間同期実行制御部180によって、通信装置123がSyncメッセージを受信してからDelay_Reqメッセージを送信するまでの時間が制御されるので、他の通信装置123の同期パケットの衝突確率を低減することができる。
Delay_Reqメッセージを送信するまでの待機時間は、通信制御装置120が通知する情報に基づいて決定してもよいし、通信装置123自身で決定してもよい。通信制御装置120はDelay_Reqパケットの受信間隔をもって時刻同期実行制御部180の待機時間を制御する。通信制御装置120は、通信制御装置120における受信間隔からパケットが衝突したと判定すれば、パケットが衝突した通信装置123の待機時間を所定時間だけ長くしたり、短くしたりする。
あるいはIEEE1588では、マスタによって、スレーブのDelay_Reqメッセージの送信周期を、Syncの送信周期を基準に制御することができる。具体的には、Syncメッセージを送信する所定周期に1度、Delay_Reqメッセージを送信させる。この仕様を用いて、通信制御装置120において、パケットが衝突したと判定すると、パケットが衝突した通信装置123のDelay_Reqメッセージの送信頻度を上げたり下げたりする。
また、通信装置123は、Delay_Req送信後にSyncメッセージを受信すれば、通信制御装置120が、パケットが衝突したと判断し、時刻同期手順を再実行したと推定できる。したがって、通信装置123は、Delay_Reqメッセージ送信後にSyncメッセージを受信した際に、時刻同期実行制御部180によって待機時間を所定時間だけ長くしたり短くしたりする。あるいは、明示的に通信制御装置120から、パケットの衝突を検知したことを通信装置123へ通知してもよい。
なお、ネットワーク中の全ての通信装置123が時刻同期実行制御部180を備えていても良いし、一部の通信装置が備えるだけでも良い。いずれの場合も、同様に、パケット衝突確率を低減できる。ここで、時刻同期実行制御部180を備えた通信装置123の識別子をネットワーク構成情報記憶部151で保持することが好ましい。これにより、通信制御装置120は、ネットワーク構成情報記憶部151に保持された通信装置123の識別子から、該当する通信装置123の時刻同期実行制御部180に対して、待機時間の指令を送信することができる。
(Delay_Reqメッセージ内へのグループ選択情報埋め込み)
また、本実施例2においては、通信装置123から送信するDelay_Reqメッセージ内に、通信制御装置120が時刻同期を再実行する際に送信するSyncメッセージに必要な情報が埋め込まれる。そのような情報としては、Syncメッセージの宛先に係わる通信装置123の識別子や、図6のステップS020で決定される送信対象のグループ情報などがある。例えば、Delay_Reqメッセージ中に、当該通信装置123が属するIEEE1588仕様のドメイン情報を搭載させ、通信制御装置120が当該通信装置123からのパケットが衝突したと判断した際に、Delay_Reqメッセージに示されたドメイン情報を利用して、再度、Syncメッセージを送信する。これにより、通信制御装置120は、グループ構成部150に送信対象のグループを問い合わせることなく、短時間でSyncメッセージを送信することができる。この場合、通信制御装置120は予め通信装置123にドメイン情報等のグループ構成情報を通知しておくことが好ましい。
(自装置以外の他の通信装置のDelay_Reqメッセージ返信タイミング制御)
また、本実施例2においては、通信装置123が、自身のDelay_Reqメッセージの返信タイミングを制御すると共に、他の通信装置123のDelay_Reqメッセージ返信タイミングを制御する。なお、通信装置123に限らず、専用の装置やネットワーク中継装置121が、通信装置123の返信タイミングを制御しても良い。
時刻同期制御装置190を用いたシステム例を図16に示す。なお、説明の便宜上、自装置以外の通信装置の時刻同期用パケットの返信タイミングを制御する通信装置を時刻同期制御装置190と記す。
時刻同期制御装置190は、ネットワーク上のパケットを監視し、時刻同期パケットが衝突して、時刻同期処理を実行している通信装置123を検知すれば、所定の時間、その通信装置123の返信を遅らせたり早めたりする。あるいは、通信制御装置120から時刻同期制御装置190に対して、明示的に時刻同期用パケットが衝突したことが通知されてもよい。
パケットの監視は、受信部133をプロミスキャスモードに設定するなどして、ネットワーク上のパケットを受信することで実行する。時刻同期制御装置190は、Delay_Reqメッセージを確認後に、同じ通信装置123宛のSyncメッセージを確認すると、通信制御装置120が、パケットが衝突したと判断して、時刻同期処理を再実行したと推定し、時刻同期パケットの衝突が発生したと判定する。
他の通信装置123の返信タイミングを制御する手段としては、例えば、IEEE802.3におけるPAUSEフレームを用いて、所定の時間、他の通信装置123の送信を停止することや、専用のプロトコルを用いることがある。専用のプロトコルを用いる場合は、通信相手と、返信タイミングを制御するための時間情報(待機時間、あるいは返信する時刻等)が少なくとも用いられる。あるいは、専用プロトコルのパケットを受信した時点で返信するようにしてもよい。この場合、通信装置123は、専用プロトコルパケットを受信するまでは返信処理を実行しないようにすることが好ましい。
時刻同期制御装置190は、ネットワーク中の全ての通信装置123を制御しても良いし、一部の通信装置123を制御しても良い。
なお、複数の通信装置123の返信タイミングを制御する場合は、通信装置123の属性や、それまでの同期処理結果に基づいて制御することができる。例えば、通信装置123のそれぞれに優先度を設定し、優先度に応じて、通信装置123の待機時間を設定する。あるいは、それまでの時刻同期処理でパケットの衝突頻度に応じて待機時間を調整したり、通信装置123の備えるクロックの精度に応じて待機時間を調整したりしても良い。前者の場合、衝突していない通信装置123ほど待機時間を短く設定し、後者の場合、クロック精度の高い通信装置123ほど、待機時間を短く設定する。なお、制御に用いるこれらの情報は、時刻同期制御装置190内のネットワーク構成情報記憶部151で管理および保持される。
(実施例2の効果)
本実施例によれば、ネットワーク中継装置121を用いたシステムで精度の高い時刻同期をすることができる。さらに、通信装置123側でパケットの送信タイミングを制御することにより、パケットが衝突する確率が低減されると共に、同期処理における通信制御装置120の計算や制御にかかわる負荷を低減することができる。
本発明の第3の実施例としては、IEEE 1588規格で定義されるTransparent Clock(以下、TCとする)であるネットワーク中継装置(後述する図17中の符号220)と、非Transparent Clockであるネットワーク中継装置121を混載して構成されるネットワークについて説明する。なお、以下の図中において、前述した図中における符号と同じ符号を付した構成要素は、特に断りのない限り、実施例1および実施例2について説明した構成要素と同様の構成要素である。
ここで、TCは、各パケットにネットワーク中継装置121中の処理遅延情報を格納する。このようなパケットを受け取った通信装置123は、この情報を用いて、往復の遅延の差を求めることができる。
図17は、本実施例のシステム構成を示す。
通信装置123a、通信装置123b、通信装置123cからのDelay_Reqメッセージの送信に着目する場合、TC220ではフロー221bとフロー221cにおけるパケットが衝突する可能性があり、ネットワーク中継装置121ではフロー221a、フロー221b、フロー221cにおけるパケットが衝突する可能性がある。
ただし、TC220内のパケットの衝突は、TCの機能により、衝突によって生じたゆらぎが補正される。一方で、ネットワーク中継装置121は、非TCであるため、このような機能は備えていない。
本実施例では、通信制御装置120が、フロー221a、フロー221bおよびフロー221cのパケットの受信間隔を測定し、前述の式(15)によってパケットが衝突したか否かを判定する。
このとき、通信制御装置120は、フロー221aの同期パケットのあとに、他のフロー221bおよび221cのパケットのいずれか、または両方を受信し、フロー221aとの受信間隔によって、パケットが衝突したと判定した場合、衝突したフローについて時刻同期処理を再実行する。同様に、通信制御装置120は、フロー221bおよび221cのパケットのいずれか、または両方の後に、フロー221aのパケットを受信し、フロー221aのパケットが衝突したと判定した場合、時刻同期処理を再実行する。これは、ネットワーク中継装置121内で、フロー221aのパケットと、フロー221bおよびフロー221cのいずれかのパケットとが、衝突したと推定されるためである。
一方、フロー221bおよび221cのパケットのどちらか一方が、他方と衝突した場合は、上記したようなTC220の機能により、通信制御装置120は同期処理を再実行する必要がない。TC220の機能によってTC220内での通信遅延を取得できるため、パケットが衝突したとしても、TC220内の通信遅延をもとに補正が可能である。フロー221bおよび221cにおける時刻同期パケットには、TC220内の通信遅延情報が格納される。図19に示すように、往路(Syncメッセージ)のパケットに格納された通信遅延をTtcg、復路(Delay_Reqメッセージ)のパケットに格納された通信遅延をTtcrとすれば、図14および図15に示した同期処理におけるt1、t2、t3およびt4を用いて、片道の通信遅延td並びに時刻の差分tdiffは、それぞれ式(18)並びに式(19)で表わされる。
td=((t4−(Ttcr+Ttcg)−t1)−(t3−t2))/2 (18)
tdiff=((t4−Ttcr+t1)―(t3+t2−Ttcg))/2(19)
ここで、通信遅延tdは、TC220の通信遅延を除いた値となる。Syncメッセージの送信がマルチキャストで衝突がないとすれば、Ttcr−TtcgがTC220内での衝突によって生じた遅延、すなわちTC220の通信遅延とすることができる。
なお、通信制御装置120は、ネットワーク構成情報記憶部151に保持されるTC220、ネットワーク中継装置121および通信装置123の接続順等のネットワーク構成情報を利用する。
(TCによる他のフローの影響除去)
また、他のフローが存在する場合のシステム構成を図20に示す。
図20のシステム構成では、時刻同期パケットのフロー170aおよび170bがある一方で、時刻同期フローに関係のないフロー171が通信装置123cから通信装置123dに沿って存在する。フロー171のパケットは、TC220aおよび220b内で、時刻同期フロー170aおよび120bのパケットと衝突する可能性がある。通信制御装置120は、フロー171が時刻同期フロー170に与える影響を検出できないため、通常は時刻同期が困難となる。ただし、図20のシステム構成で示すように、他のフローが流入する部分にTC220aおよび220bを導入することで、TC220aおよび220b内での遅延情報が時刻同期パケットに格納される。そのため、通信制御装置120は、TC220内での衝突を考慮せずに、ネットワーク中継装置121内での衝突を実施例1ついて説明した手段によって判定すれば良い。したがって、通信制御装置120は、時刻同期フロー170aおよび170bの同期パケットの受信間隔を測定し、衝突していないと判定した場合は、時刻同期プロトコルを継続し、通信装置123aおよび123bを式(18)および(19)によって、通信制御装置120と同期すればよい。
(実施例3の効果)
本実施例によれば、TCを用いることにより、時刻同期処理の再実行によるオーバーヘッドが低減される。また、部分的なTCの導入を可能にすることにより、専用装置であるTCの導入を限定することができる。
第4の実施例として、複数の通信制御装置を備えるネットワークについて説明する。本実施例は、複数の通信制御装置の中でIEEE1588のマスタを変更して、受信間隔閾値を小さくしようとするものである。なお、以下の図中において、前述した図中における符号と同じ符号を付した構成要素は、特に断りのない限り、実施例1〜3について説明した構成要素と同様の構成要素である。
本実施例のシステム構成を図18に示す。図18のシステムでは、時刻同期プロトコルを実行することができる通信制御装置120a〜120eを、いずれも図3の機能構成を有する。これら通信制御装置120a〜120e間で、IEEE1588におけるマスタの役割を移動させる。なお、本実施例では、全ての接続装置が通信制御装置であるが、これに限らず、複数の通信制御装置があれば良い。
図3に示した受信間隔閾値決定部136では、ネットワーク中継装置121の段数が大きい程、受信間隔閾値が大きくなる可能性がある(式(11)および(12)参照)。そこで、受信間隔閾値を小さくするため、接続装置までのネットワーク中継装置121の段数の最大値が、他の通信制御装置120を選択した場合よりも小さくなるようにマスタを選択する。したがって、図18のシステムにおいては、通信制御装置120cをマスタとすれば、最大の段数を2とすることができる。なお、通信制御装置120aをマスタとすると、最大の段数は3となり、通信制御装置120cをマスタとする場合よりも大きな段数となる。
同様に、図21のシステム構成では、式(14)に示すように、受信間隔閾値は共通経路の際の段数に依存するため、共通経路の段数を小さくするようにマスタを選択する。したがって、図21の通信制御装置120cをマスタとすれば、共通経路の段数を2とすることができる。なお、通信制御装置120aあるいは120bをマスタとすると、最大の段数は3となり、通信制御装置120cをマスタとする場合よりも大きな段数となる。
これらのマスタ選択手段においては、ある通信制御装置の受信間隔閾値決定部が決定し得る受信間隔閾値の最大値が、他の通信制御装置の受信間隔閾値決定部が設定し得る受信間隔閾値の最大値よりも小さい場合に、当該通信制御装置がマスタとして選択される。
なお、マスタの選択においては、上記のように、受信間隔閾値のような所定の評価指標で比較された通信制御装置の中で、最高(最良)の評価指標を有する通信制御装置を選択するほか、所定レベルより高い評価指標を有する通信制御装置を選択してもよい。
上記マスタの選択手段を実行する際に、選択される通信制御装置120を識別する専用のプロトコルを用いても良いし、IEEE1588のBest Master Clock(以下、BMCとする)アルゴリズムにおいて、マスタを決めるために判定される指標値を各通信制御装置120間で意図的に調整しても良い。BMCでは、ユーザが定義可能なパラメータがあり、これを利用することができる。例えば、このユーザ定義可能なパラメータを、専用のプロトコルに従って、通信制御装置120間で交換する。
また、マスタを選択するために用いる評価指標としては、上述した受信間隔閾値のほか、他の通信制御装置120との間のネットワーク中継装置121の数、通信遅延、通信帯域、クロックの精度などを用いることができる。例えば、上記したように、各通信制御装置120において、残りの通信制御装置120とのネットワーク中継装置121の段数の分散を求め、分散が最も小さい通信制御装置120を選択する(受信間隔閾値の種類を減らし、システム全体の同期精度ばらつきを低減することが期待される)。
また、STP(Spanning Tree Protocol)、RSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)や通信経路の障害等によって、トポロジが変化した場合に、上述したようなマスタ選択手段によってマスタを変更しても良い。
(実施例4の効果)
本実施例におけるマスタ選択手段によれば、受信間隔閾値を低減して、ネットワーク中継装置121を用いたシステムでの時刻同期をすることができる。
図23は、本発明の第5の実施例である保護リレーシステムのシステム構成を示す。
本システムにおいては、送電線200における複数個所で、図23においては端子A,BおよびCにおいて、送電線200に流れる電流が、それぞれ電流検出器301a,301bおよび301cによって検出される。通信装置123a,123bおよび123cは、それぞれ電流検出器301a,301bおよび301cの出力信号に基づいて、送電線の観測点における電流(i1,i2,i3)を計測し、計測された電流の情報を含むパケット信号を、ネットワーク中継装置121を介して、通信制御装置120に送信する。通信制御装置120は、受信した信号に基づいて、電流の総和(i1+i2+i3)を演算する。
ここで、送電線に地絡などの故障が無い正常状態ならば、キルヒホッフの電流則よりi1+i2+i3=0となる。そこで、通信制御装置120は、i1+i2+i3の演算結果に基づいて送電線の異常の有無を判断する。i1+i2+i3≠0の場合に、通信制御装置120は、送電線に異常が発生したと判断し、遮断器CBa,CBbおよびCBcを作動させて開放するための指令信号を発信する(通信装置123と遮断器の接続は図示無)。遮断器CBa,CBbおよびCBcは、指令信号に応じて、送電線に流れる電流を遮断して、送電線を保護する。
i1+i2+i3が0であるか否かにより送電線の異常の有無を判断するためには、i1,i2およびi3は同時刻に計測されることが必要である。このため、本実施例においては、図23における通信制御装置120を上記実施例1〜3における通信制御装置とする。そして、図23において、通信制御装置120をマスタとし、各通信装置123をスレーブとして、実施例1〜3と同様に時刻同期処理を行う。これにより、各通信装置123の時刻が互いに高精度で同期し、同時刻にi1,i2およびi3が計測される。
さらに、本実施例によれば、送電線が長距離となり、ネットワーク中継装置121の段数が増加し、パケットのキューイング(衝突)が発生しやすくなっても、各通信装置123の時刻を高精度で同期することができるので、送電線の異常を高精度で検出し、異常時に確実に送電線を保護することができる。また、標準的なネットワーク中継装置を用いても高精度な同期が可能なため、長距離の送電線に対応して多数のネットワーク中継装置を用いる場合に、システムのコストを低減できる。
送電線における電流検出箇所は、3個所に限らず、複数個所でも良い。また、通信装置123a〜cのいずれかを、上記実施例1〜3における通信制御装置として、時刻同期処理を実行させると共に、電流の計測並びに遮断器への指令信号作成を行わせても良い。また、本実施例5におけるネットワーク中継装置121として、「実施例1」として上述した、パケット衝突時に、衝突したパケットの送信間隔を一定にするネットワーク中継装置を適用しても良い。
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
101 … CPU、102… LAN、108 … メモリ、
109 … 不揮発性記憶媒体、110 … バス、120… 通信制御装置、
121,121a〜e … ネットワーク中継装置、122 … ネットワーク、
123,123a〜f … 通信装置、130 … 時刻同期処理部、131… 通信部、
132 … 送信部、133 … 受信部、134 … 受信間隔測定部、
135 … キューイング発生判定部、136 … 受信間隔閾値決定部、
137 … 判定結果履歴記憶部、140,141 … パケット、142 … バッファ、
150 … グループ構成部、151 … ネットワーク構成情報記憶部、
152 … ネットワーク構成情報推定部、160 …同期時刻、
161 … 同期時刻選択部、170a〜b,171,221a〜c … 通信フロー、
180 … 時刻同期実行制御部、190 … 時刻同期制御装置、
200 … 送電線、220 … Transparent Clock、301a〜c … 電流検出器、
CBa〜c … 遮断器

Claims (14)

  1. ネットワーク内の複数の通信装置に対して、所定の時刻同期処理を実行する時刻同期処理部を備える通信制御装置において、
    前記複数の通信装置からの応答パケットの受信間隔を測定する受信間隔測定部と、
    前記ネットワークの構成情報を記憶するネットワーク構成情報記憶部と、
    前記ネットワーク構成情報記憶部の記憶する前記構成情報を用いて受信間隔閾値を設定する受信間隔閾値決定部と、
    前記受信間隔測定部の測定結果と前記受信間隔閾値決定部が設定した前記受信間隔閾値とを比較することにより、前記複数の通信装置のいずれかからの応答パケットの衝突発生の有無を判定するキューイング発生判定部と、
    を備え、
    前記時刻同期処理部は、前記キューイング発生判定部の判定結果に基づいて、前記所定の時刻同期処理を継続するか否かを判定することを特徴とする通信制御装置。
  2. 請求項1記載の通信制御装置において、
    前記キューイング発生判定部は、前記受信間隔測定部が測定した受信間隔が前記受信間隔閾値より大である場合に、前記応答パケットの衝突が発生していないと判定することを特徴とする通信制御装置。
  3. 請求項1記載の通信制御装置において、
    前記キューイング発生判定部が前記応答パケットの衝突が発生していないと判定した場合に、前記時刻同期処理部は、前記所定の時刻同期処理を継続し、前記応答パケットの受信時刻情報を送信することを特徴とする通信制御装置。
  4. 請求項1記載の通信制御装置において、
    前記キューイング発生判定部が前記応答パケットの衝突が発生していると判定した場合に、前記時刻同期処理部は、前記所定の時刻同期処理を継続せずに再実行し、送信時刻情報を送信することを特徴とする通信制御装置。
  5. 請求項4記載の通信制御装置において、
    前記時刻同期処理部は、少なくとも、前記応答パケットの衝突が発生したと判定された通信装置を含む送信宛先に対して、前記送信時刻情報を送信することを特徴とする通信制御装置。
  6. 請求項1記載の通信制御装置において、
    前記受信間隔閾値決定部は、前記複数の通信装置と前記通信制御装置との間の経路におけるネットワーク中継装置の段数に基づいて、前記受信間隔閾値を設定することを特徴とする通信制御装置。
  7. 請求項1記載の通信制御装置において、
    前記時刻同期処理部は、前記応答パケットが所定時間内に受信されない場合に、送信時刻情報を送信することを特徴とする通信制御装置。
  8. 請求項1記載の通信制御装置において、
    前記キューイング発生判定部が判定した衝突回数に応じて、送信時刻情報を送信するまでの時間を変更することを特徴とする通信制御装置。
  9. 請求項1記載の通信制御装置は、
    前記複数の通信装置を所定の送信対象グループにわけるグループ構成部を有し、
    前記時刻同期処理部は、前記グループ構成部が提示するグループに対して、時刻情報を送信することを特徴とする通信制御装置。
  10. 請求項1記載の通信制御装置において、
    前記ネットワークへ所定のパケットを送信し、その応答から前記ネットワークの構成情報を推定し、前記ネットワーク構成情報記憶部へ推定した情報を記憶させるネットワーク構成情報推定部を備えることを特徴とする通信制御装置。
  11. 請求項1記載の通信制御装置において、
    前記ネットワーク上に複数の時刻同期範囲を構成して時刻同期することを特長とする通信制御装置。
  12. 請求項1記載の通信制御装置は、
    前記受信間隔閾値決定部が決定し得る前記受信間隔閾値の最大値が所定の値以下の場合か、あるいは他の通信制御装置の決定し得る前記受信間隔閾値の最大値より小さい場合に同期マスタになることを特徴とする通信制御装置。
  13. 請求項1記載の通信制御装置は、
    前記複数の通信装置と前記通信制御装置との間の経路におけるネットワーク中継装置の段数と、前記複数の通信装置と前記ネットワーク内の他の通信制御装置との間の経路におけるネットワーク中継装置の段数との比較に基づいて、同期マスタに設定されることを特徴とする通信制御装置。
  14. 送電線の異常時に送電線を保護する保護リレーシステムにおいて、
    前記送電線の複数個所において電流を検出する複数の電流検出器と、
    前記複数の電流検出器の出力信号に応じて前記送電線に流れる電流を計測し、計測した複数の電流の情報をネットワーク内へ送信する複数の通信装置と、
    前記ネットワーク内において、前記複数の電流の情報の伝送を中継する複数のネットワーク中継装置と、
    前記複数のネットワーク中継装置を介して前記複数の電流の情報を受信し、受信した前記複数の電流の情報に基づいて送電線の異常の有無を判定し、異常と判定した場合に、前記送電線に流れる電流を遮断するための遮断器を開放する指令信号を発信する通信制御装置と、
    を備え、
    前記通信制御装置が、請求項1に記載の通信制御装置であることを特徴とする保護リレーシステム。
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