JP6230123B2 - 超伝導量子ビットの初期化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、量子ビットの初期化方法に関するものであり、特に超伝導量子ビットの初期化方法に関するものである。
量子情報処理を実現するにあたって量子ビットの初期化は不可欠な技術である。初期化とは、混合状態となってしまった量子ビットの状態を、純粋状態に戻す操作のことを指す。通常は、準備することが容易な基底状態へ戻すことが多い。
従来、量子ビットの初期化は、混合状態となった量子ビットの環境温度を低下させ、該量子ビットを基底状態に収束させることで行っていた。
以下、従来の量子ビットの初期化方法の原理をより具体的に説明する。量子ビットが、デコヒーレンスなどの理由により、混合状態になったとする。このときの量子状態ρは、次式のように表すことができる。
ρ=|α|2|1><1|+|β|2|0><0| ・・・(1)
ここで、|1>は励起状態を、|0>は基底状態をそれぞれ表している。|α|2は状態|0>が観測される確率、|β|2は状態|1>が観測される確率である。環境の熱エネルギーが、量子ビットの持つエネルギー(励起状態と基底状態とのエネルギー差)よりも十分に小さくなる程度まで、環境の温度を低下させる。すると、混合状態にある量子ビットでも、量子ビットの持つエネルギーが環境へ自然に放出されていく。最終的には、量子ビットは純粋な基底状態|0><0|へと集束していく。基底状態へ収束するには、量子ビットのエネルギー緩和時間(すなわち、量子ビットの寿命)程度の時間を要する。そのため、環境温度を低下させた後、さらに量子ビットのエネルギー緩和時間T1よりも十分に長い時間待つことで、量子ビットの初期化を行うことができる。
このような従来の量子ビットの初期化方法では、複雑なパルス操作などを必要とせずに初期化を行えることが特徴である。一方で、量子ビットを初期化するために、自身のエネルギー緩和時間に応じた長い時間を必要とする、という課題があった。
例えば、量子ビットを用いた量子計算に適用する場合、量子ビットを初期化するのみでなく、量子ビットに演算を行わせるためのゲート操作も必要となる。ゲート操作実行中に量子ビットにエネルギー緩和が起こると、ゲートの精度を下げてしまう(すなわち、量子計算にエラーが発生する)ことが知られており、このような精度の低下を回避するためには、エネルギー緩和時間T1がゲートの操作時間よりも十分に長い量子ビットを用いる必要がある。しかしながら、エネルギー緩和時間T1が長い量子ビットを用いた場合、初期化に要する時間も増大してしまい、量子計算の高速化を妨げる、という課題が発生する。
このような課題を解決するために、初期化を行いたい量子ビットと補助量子系との結合を用いた、量子ビットの初期化方法が提案されている(非特許文献1参照)。補助量子系とは、それ自身が量子ビット、あるいは複数の量子ビットが存在する量子ビット群であるが、当該補助量子系のエネルギー緩和時間T1’が、初期化を行いたい量子ビットのエネルギー緩和時間T1よりも十分に短い系(T1’<<T1)であることが望ましい。
以下、補助量子系を用いた従来の量子ビットの初期化方法について説明する。初期化を行いたい量子ビットと補助量子系とは、互いにエネルギーを可換な状態で結合させておく。このような状態において、(A)初期化を行いたい量子ビットにエネルギー制御パルスを印加して、当該量子ビットのエネルギーを補助量子系のエネルギーに近い状態となるよう制御する。その結果、量子ビットと補助量子系とは共鳴(エネルギーを相互に交換する状態)するようになる。
(B)共鳴状態では、量子ビットのエネルギーが補助量子系に移動する。補助量子系に移動したエネルギーは、補助量子系におけるエネルギー緩和により、環境に放出される。補助量子系のエネルギー緩和時間T1’は短いため、補助量子系に移動したエネルギーは直ちに環境に放出される。(C)量子ビットのエネルギーが補助量子系に移動した後、エネルギー制御パルスの印加を停止し、量子ビットと補助量子系とを離調する。以上のような(A)〜(C)のステップにより、量子ビットの初期化が完了する。なお、量子ビットにゲート操作を行う際には、量子ビットと補助量子系とを離調した状態で行う。これにより、量子ビットは補助量子系における短いエネルギー緩和時間の影響を受けない。
量子ビットから補助量子系へのエネルギーの移動に要する時間は、量子ビットと補助量子系との間の結合定数をgとすると、10/g〜100/g程度の時間となる。このエネルギーの移動に要する時間は、量子ビットのエネルギー緩和時間T1よりも十分に短く、例えば、量子ビットとして超伝導量子ビット(エネルギー緩和時間T1=1マイクロ秒)を用い、補助量子系としてマイクロ波キャビティを用いた場合、典型的には100ナノ秒程度である(非特許文献1)。このように、補助量子系を用いた量子ビットの初期化方法では、量子ビットのエネルギー緩和時間よりも短い時間で量子ビットを初期化できるようになる。
しかしながら、この量子ビットの初期化方法では、量子ビットと補助量子系との間の結合定数gの逆数の、数倍から十数倍の時間をかけなければ精度の良い初期化が行えない。そのため、さらなる高速化が望まれていた。
M.D.Reed et al.,"Fast reset and suppressing spontaneous emission of a superconducting qubit",APPLIED PHYSICS LETTERS,96,203110,2010
従来の補助量子系を用いた量子ビットの初期化方法では、補助量子系を用いない場合に比べて量子ビットを高速に初期化することができるが、それでも、量子ビットと補助量子系との間の結合定数をgとすると、初期化に10/g〜100/g程度の時間を要する。量子ビットを用いた量子計算をさらに高速化させるためには、量子ビットの初期化をさらに短時間で行うことが課題となっていた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、量子ビットの初期化、特に超伝導量子ビットの初期化を従来よりも短時間で行うことができる超伝導量子ビットの初期化方法を提供することを目的とする。
本発明は、超伝導量子ビットを保持可能な超伝導量子回路と補助量子系とが、これら超伝導量子回路と補助量子系の互いのエネルギーが可換な状態で近接して配置された結合系を用いた超伝導量子ビットの初期化方法であって、前記超伝導量子ビットのエネルギーを制御して、前記超伝導量子ビットと前記補助量子系とを共鳴させ、前記超伝導量子ビットと前記補助量子系との間で真空ラビ振動を誘起する第1のステップと、前記共鳴の開始時点から前記真空ラビ振動の周期の半値の時間が経過したときに、前記超伝導量子ビットと前記補助量子系とを離調する第2のステップとを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の超伝導量子ビットの初期化方法の1構成例において、前記第1のステップは、前記超伝導量子回路と磁気的に結合した制御回路にエネルギー制御パルス電流を流すことにより、前記制御回路に磁場を発生させて前記超伝導量子ビットのエネルギーを制御するステップを含み、前記第2のステップは、前記制御回路に前記エネルギー制御パルス電流を流し始めた時点から前記真空ラビ振動の周期の半値の時間が経過したときに、前記エネルギー制御パルス電流を停止して前記超伝導量子ビットと前記補助量子系とを離調するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の超伝導量子ビットの初期化方法の1構成例において、前記補助量子系は、固体中の欠陥またはドーパントに局在する電子スピンの集団である。
また、本発明の超伝導量子ビットの初期化方法の1構成例において、前記超伝導量子ビットと前記補助量子系との結合定数は、前記補助量子系の減衰率よりも大きいことを特徴とする。
また、本発明の超伝導量子ビットの初期化方法の1構成例は、前記補助量子系としてダイヤモンドのNV中心を用いる場合に、前記超伝導量子ビットを流れる永久電流を300nA以上、前記超伝導量子ビットから前記NV中心までの距離を1μm以下、前記NV中心の密度を5×1017/cm3とすることを特徴とするものである。
本発明によれば、超伝導量子ビットを保持可能な超伝導量子回路と補助量子系とが、これら超伝導量子回路と補助量子系の互いのエネルギーが可換な状態で近接して配置された結合系において、超伝導量子ビットのエネルギーを制御して、超伝導量子ビットと補助量子系とを共鳴させ、超伝導量子ビットと補助量子系との間で真空ラビ振動を誘起し、共鳴の開始時点から真空ラビ振動の周期の半値の時間が経過したときに、超伝導量子ビットと補助量子系とを離調することにより、π/2g程度の時間(gは超伝導量子ビットと補助量子系との結合定数)で超伝導量子ビットを基底状態に遷移させることができるので、超伝導量子ビットの初期化時間を、従来の補助量子系を用いた初期化方法に比べて短縮することができる。
本発明における量子ビットと補助量子系との結合系を説明するための模式図である。 本発明の超伝導量子ビットの初期化方法を説明するフローチャートである。 超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心との間で発生した真空ラビ振動を測定した結果を示す図である。 図3の結果を得るための測定処理の推移を説明する図である。 本発明の実施の形態の効果を説明する図である。
[発明の原理]
本発明は、初期化を行いたい量子ビットと補助量子系とのエネルギーの交換に真空ラビ振動を用いることを特徴としている。
図1は、本発明における量子ビットと補助量子系との結合系(以下、単に結合系と言う)を説明するための模式図である。結合系は、初期化を行いたい量子ビットである超伝導量子ビットを保持可能な超伝導量子回路1と、補助量子系2とが、両者のエネルギーが可換な程度に近接して配置されたものである。
図1では、ループ形状の超伝導線からなる超伝導量子回路1の開口面(図1の紙面に平行な面)と、補助量子系2のなす面とが平行になるように近接配置されている。また、超伝導量子回路1のループの少なくとも一部が、補助量子系2の上部または下部を通過するように配置されている。また、結合系には、超伝導量子回路1に磁気的に結合して、超伝導量子ビットのエネルギーを制御するための例えばループ形状の超伝導線からなる制御回路3が設けられている。
制御回路3にエネルギー制御パルス電流を流すことにより、制御回路3に磁場が発生し、この磁場が磁気的に結合された超伝導量子回路1に作用し、超伝導量子ビットのエネルギーが制御される。エネルギー制御パルス電流は、通常は直流電流である。すなわち、図1において、エネルギー制御パルス電流は、常に制御回路3を同方向に流れる電流である。なお、制御回路3は、超伝導量子ビットを励起したり、あるいはゲート操作を行う用途に用いてもよい。
次に、超伝導量子ビットについて説明する。超伝導材料でループ状に形成された超伝導ループにジョセフソン接合を形成することで、高い非線形性を持った超伝導量子回路1を形成することができる(参考文献1「J.E.Mooij,T.P.Orlando,L.Levitov,Lin Tian,Caspar H.van der Wal,and Seth Lloyd,“Josephson Persistent-Current Qubit”,Science,Vol.285,pp.1036-1039,1999」)。
図1の超伝導量子回路1の例では、3個のジョセフソン接合4を形成した例を記載しているが、これに限定されるものではない。制御回路3に、適切に調整された周波数(典型的にはマイクロ波帯)の電流を印加することで、超伝導量子回路1を基底状態と第一励起状態の状態のみに制御することができ、実効的に量子ビット(超伝導量子ビット)を生成することができる。超伝導量子ビットは、エネルギーの制御性に優れており、特に量子ビットの共鳴周波数をナノ秒のオーダーで数GHz変化させることができる。
次に、超伝導量子ビットに結合させる補助量子系2について説明する。補助量子系2は、超伝導量子ビットと磁気的(inductive)に、もしくは容量的(capacitive)に結合しうる量子ビットあるいは量子ビット群である(上記参考文献1、参考文献2「D.Marcos,M.Wubs,J.M Taylor,R.Aguad,M.D.Lukin,A.S.Sorensen,“Coupling Nitrogen-Vacancy Centers in Diamond to Superconducting Flux Qubits”,Physical Review Letters,105,210501,2010」、および参考文献3「X.Zhu et al.,“Coherent coupling of a superconducting flux qubit to an electron spin ensemble in diamond”,Nature,Vol.478,pp.221-224,2011」)。
超伝導量子ビットと補助量子系2との結合定数をg、補助量子系2の減衰率をΓとすると、g>Γを満たす状態で、超伝導量子ビットと補助量子系2とを共鳴させると、二つの系の間に真空ラビ振動が起こる。真空ラビ振動は、超伝導量子ビットと補助量子系2との間でエネルギーの行き来が起こっていると解釈することができる。超伝導量子ビットと共鳴可能な補助量子系2としては、例えばダイヤモンドのNV中心に現れるスピンアンサンブルや、マイクロ波キャビティなどを用いることができ、すでに様々な量子補助系との間で真空ラビ振動が起こることが実験的に観測されている(参考文献3)。なお、ダイヤモンドのNV中心とは、ダイヤモンド格子中の炭素の置換位置に入った窒素(N)と、この窒素に隣接する炭素原子が抜けてできた空孔(V)とからなる複合不純物欠陥である。
図1に示す超伝導量子ビットと補助量子系2との結合について説明する。ここで、補助量子系2として、ダイヤモンドのNV中心におけるスピンアンサンブルを用いるものとする。制御回路3を介して超伝導量子回路1が励起されると、超伝導量子回路1を流れる永久電流により、超伝導量子回路1を構成する超伝導ループ近傍に磁場(超伝導磁場5)が発生する。この超伝導磁場5がダイヤモンドのNV中心のスピンアンサンブルに作用し、超伝導量子ビットとスピンアンサンブルとが結合する。
次に、超伝導量子ビットと補助量子系2との結合を用いた、超伝導量子ビットの初期化方法について説明する。まず、事前に超伝導量子ビットと補助量子系2との間で起こる真空ラビ振動の周期Tをあらかじめ実験で調べておく。超伝導量子ビットと他の系との間で真空ラビ振動が起こると、超伝導量子ビットのエネルギーは周期的に増減を繰り返しながら、最終的にはエネルギー0(基底状態のエネルギー)に到達する。そこで、事前に実験で真空ラビ振動を観測することで、真空ラビ振動の周期Tを見積もることができる。
図2は本発明の超伝導量子ビットの初期化方法を説明するフローチャートである。なお、超伝導量子ビットは既に混合状態ないしは励起状態にあるものとする。このような状態は、上記のとおり制御回路3に、例えばマイクロ波帯の周波数の電流を印加することで、制御回路3に磁場を発生させ、この磁場を超伝導量子回路1に作用させて、超伝導量子ビットのエネルギーを制御することにより実現することができる。
超伝導量子ビットを初期化するには、まず、制御回路3に適切なエネルギー制御パルス電流を流し、超伝導量子ビットと補助量子系2とを共鳴させ、超伝導量子ビットと補助量子系2との間で真空ラビ振動を誘起する(図2ステップS1)。
次に、制御回路3にエネルギー制御パルス電流を流し始めた時点から、真空ラビ振動の周期の半値T/2の時間が経過すると(図2ステップS2においてYES)、超伝導量子ビットのエネルギーは完全に補助量子系2に移る。このタイミングでエネルギー制御パルス電流を停止し、超伝導量子ビットと補助量子系2とを離調する(図2ステップS3)。
このように、本発明では、超伝導量子ビットと補助量子系2とを共鳴させて真空ラビ振動を発生させ、真空ラビ振動の周期の半値T/2の時間が経過した時点で超伝導量子ビットと補助量子系2とを離調することにより、超伝導量子ビットのエネルギーが極めて短時間に補助量子系2に移行するため、超伝導量子ビットの高速な初期化が実現できる。
初期化に要する時間(すなわち真空ラビ振動の周期の半値T/2)は、超伝導量子ビットと補助量子系2との結合定数をgとすると、π/(2g)の時間となるため、従来の補助量子系を用いた量子ビットの初期化方法に比べて、少なくとも1桁以上の高速化(初期化時間の短縮)を実現できる。
[実施の形態]
以下では、本発明の実施の形態として、超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心との結合系による、超伝導量子ビットの初期化方法について説明する。超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心との結合系の構成は、図1と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
超伝導量子ビットを構成する超伝導量子回路1の直上数百nmの位置に、濃度が1cm3あたり1016から1018個程度のNV-中心を含有したダイヤモンド単結晶試料(補助量子系2)を固定する。この試料は、極めて高純度なダイヤモンド単結晶にイオンを注入するか、もしくは電子線を照射することで作製する。このとき、超伝導量子ビットとしてはギャップ可変なものを用いる。超伝導量子ビットの量子状態は、超伝導量子回路1の外部から照射する共鳴マイクロ波(図1では不図示)によって任意の回転を行うことができる。この量子状態の制御は、上記のとおり制御回路3を用いて行ってもよい。
超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心との結合の強度は、超伝導量子回路1を流れる超伝導電流が大きいほど、強度も大きくなる(すなわち、結合定数gも大きくなる)。超伝導量子回路1に形成するジョセフソン接合4の臨界電流値を予め適切に設計しておくことによって、超伝導量子回路1に流れる永久電流を1μA程度まで流すことができ、これにより超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心との強結合が可能になる(参考文献3)。また、ダイヤモンドのNV中心のエネルギー緩和時間T1’は数十ナノ秒程度であり、超伝導量子ビットの数マイクロ秒のエネルギー緩和時間T1と比べて、きわめて短い。
図3は、超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心との間で発生した真空ラビ振動を測定した結果を示す図である。図3の横軸は超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心とを共鳴させている時間τを表し、縦軸は超伝導量子ビットが励起する確率PSWを表している。超伝導量子ビットの励起確率PSWは、超伝導量子ビットのエネルギーと関係し、励起確率が0であることは、超伝導量子ビットのエネルギーがダイヤモンドのNV中心に渡されたことを意味する。
図3の結果を得るために、図4に示すように事前にマイクロ波πパルスを超伝導量子回路1に印加し、励起状態にある超伝導量子ビットを生成する。その上で、制御回路3に時間τだけエネルギー制御パルス電流を流して超伝導量子ビットのエネルギーを制御し、超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心とを共鳴させる。そして、時間τが経過した後に、図1には図示していない測定系を用いて、超伝導量子ビットの励起確率PSWを測定する。このようにして得られたのが図3の結果である。図3では、制御回路3にエネルギー制御パルス電流を流す時間τを変化させて、超伝導量子ビットの励起確率PSWをプロットしている。
図3によると、超伝導量子ビットの励起確率PSWが周期的に振動しており、真空ラビ振動が発生していることが分かる。つまり、超伝導量子ビットが保有していたエネルギーは、超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心との間を行き来している。図3の測定結果では、真空ラビ振動の周期Tは60ナノ秒程度であった。
したがって、図3の測定に用いた系においては、超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心とを共鳴させた後、30ナノ秒経過後にエネルギー制御パルス電流を停止すれば、超伝導量子ビットの全てのエネルギーをダイヤモンドのNV中心のスピンアンサンブルに移動させることができ、超伝導量子ビットは基底状態へ収束し、初期化されることが分かる。
図5は、本実施の形態の効果を説明する図であり、本実施の形態により超伝導量子ビットが初期化されたことを実験的に証明する図である。図5の横軸は超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心とを共鳴させている時間τを表し、縦軸は超伝導量子ビットのスイッチ確率を表している。この図5は、超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心との結合系における真空ラビ振動の周期がT=45nsecとなる状態で測定したものである。前述のとおり、真空ラビ振動の周期Tは、超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心との結合定数gに依存し、π/gに相当する。したがって、図5の測定に用いた結合系の結合定数gは、図3の測定に用いた結合系の結合定数gよりも大きい。
つまり、図5は、超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心とを共鳴させた後、真空ラビ振動の周期の半値(T/2=22.5nsec)の時間で共鳴を停止させたときの、超伝導量子ビットのスイッチ確率の時間遷移を示している。図5の10は共鳴前の超伝導量子ビットが励起状態にあったときの測定結果を示し、図5の11は共鳴前の超伝導量子ビットが混合状態にあったときの測定結果を示している。なお、スイッチ確率は、超伝導量子回路1で生成する超伝導量子ビットの励起確率に相関するものであり、スイッチ確率を励起確率と読み替えても問題ない。
図5によれば、超伝導量子ビットが励起状態/混合状態のいずれにあったとしても、共鳴開始から真空ラビ振動の周期の半値(T/2=22.5nsec)の時間が経過した後には、超伝導量子ビットはほぼ基底状態に遷移しており、超伝導量子ビットのエネルギーがダイヤモンドのNV中心のスピンアンサンブルに移動し、超伝導量子ビットが初期化されていることが分かる。
なお、混合状態の超伝導量子ビットの初期化については、以下のように理解することができる。超伝導量子ビットの量子状態ρが式(1)に示したような混合状態になったと仮定する。このとき、超伝導量子ビットをダイヤモンドのNV中心と共鳴させて真空ラビ振動を起こして、真空ラビ振動の周期Tの1/2に相当する時間が経過したときに、超伝導量子ビットをダイヤモンドのNV中心から離調する。この操作により、(I)|α|2の確率で真空ラビにより超伝導量子ビットのエネルギーがダイヤモンドのNV中心へ受け渡される、(II)|β|2の確率で超伝導量子ビットは初めから基底状態なので真空ラビは起こらない、のいずれかが起きる。(I)、(II)の場合でも、超伝導量子ビットの状態は純粋な基底状態|0><0|へと変化する。
以上説明してきたように、本実施の形態では、超伝導量子ビットを保持可能な超伝導量子回路1とダイヤモンドのNV中心(補助量子系2)とが、両者のエネルギーが可換な程度に近接して配置され、超伝導量子回路1に磁気的に結合して超伝導量子ビットのエネルギーを制御することができる制御回路3を備えてなる結合系において、制御回路3にエネルギー制御パルス電流を流して、超伝導量子ビットとダイヤモンドのNV中心との間で真空ラビ振動を誘起し(ステップS1)、真空ラビ振動の周期の半値T/2の時間が経過したときにエネルギー制御パルス電流を停止し、超伝導量子ビットと補助量子系とを離調することで(ステップS2,S3)、π/2g程度の時間で超伝導量子ビットを基底状態に遷移させることができるので、超伝導量子ビットの初期化時間を、従来の補助量子系を用いた初期化方法に比べて少なくとも1桁以上短縮することができる。
なお、スピンアンサンブル(電子スピン集団)を有する補助量子系としてダイヤモンドのNV中心を用いる場合、超伝導量子ビットと補助量子系との結合定数gは、超伝導量子ビットを流れる永久電流の値と、超伝導量子ビットからNV中心までの距離と、NV中心の密度とによって決まる。一方で、補助量子系2の減衰率Γは、主にNV中心の密度によって決まる。そのため、超伝導量子ビットを流れる永久電流を300nA以上、超伝導量子ビットからNV中心までの距離を1μm以下、NV中心の密度を5×1017/cm3程度に設計することで、g>Γの条件を達成することが可能である。
また、本実施の形態では、スピンアンサンブル(電子スピン集団)を有する補助量子系としてダイヤモンドのNV中心を用いているが、これに限るものではなく、補助量子系として、エルビウムドープ結晶、もしくはシリコン中のビスマスなど、固体中の欠陥やドーパントに局在する、超伝導量子ビットと磁気的に結合できるあらゆるスピンアンサンブルを用いることが可能である。また、スピンアンサンブルのみならず、マイクロ波キャビティなどを補助量子系に用いても同様の操作が可能である。
本発明は、量子ビットを初期化する技術に適用することができる。
1…超伝導量子回路、2…補助量子系、3…制御回路、4…ジョセフソン接合、5…超伝導磁場。

Claims (5)

  1. 超伝導量子ビットを保持可能な超伝導量子回路と補助量子系とが、これら超伝導量子回路と補助量子系の互いのエネルギーが可換な状態で近接して配置された結合系を用いた超伝導量子ビットの初期化方法であって、
    前記超伝導量子ビットのエネルギーを制御して、前記超伝導量子ビットと前記補助量子系とを共鳴させ、前記超伝導量子ビットと前記補助量子系との間で真空ラビ振動を誘起する第1のステップと、
    前記共鳴の開始時点から前記真空ラビ振動の周期の半値の時間が経過したときに、前記超伝導量子ビットと前記補助量子系とを離調する第2のステップとを含むことを特徴とする超伝導量子ビットの初期化方法。
  2. 請求項1記載の超伝導量子ビットの初期化方法において、
    前記第1のステップは、前記超伝導量子回路と磁気的に結合した制御回路にエネルギー制御パルス電流を流すことにより、前記制御回路に磁場を発生させて前記超伝導量子ビットのエネルギーを制御するステップを含み、
    前記第2のステップは、前記制御回路に前記エネルギー制御パルス電流を流し始めた時点から前記真空ラビ振動の周期の半値の時間が経過したときに、前記エネルギー制御パルス電流を停止して前記超伝導量子ビットと前記補助量子系とを離調するステップを含むことを特徴とする超伝導量子ビットの初期化方法。
  3. 請求項1または2記載の超伝導量子ビットの初期化方法において、
    前記補助量子系は、固体中の欠陥またはドーパントに局在する電子スピンの集団であることを特徴とする超伝導量子ビットの初期化方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超伝導量子ビットの初期化方法において、
    前記超伝導量子ビットと前記補助量子系との結合定数は、前記補助量子系の減衰率よりも大きいことを特徴とする超伝導量子ビットの初期化方法。
  5. 請求項4記載の超伝導量子ビットの初期化方法において、
    前記補助量子系としてダイヤモンドのNV中心を用いる場合に、前記超伝導量子ビットを流れる永久電流を300nA以上、前記超伝導量子ビットから前記NV中心までの距離を1μm以下、前記NV中心の密度を5×1017/cm3とすることを特徴とする超伝導量子ビットの初期化方法。
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