以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
SRモータは、構造の観点から、ラジアルギャップ型のSRモータとアキシャルギャップ型のSRモータとに大別され、本実施形態は、いずれの型のSRモータでもよいが、ここでは、一例として、ラジアルギャップ型のSRモータについて説明する。
図1は、実施形態におけるSRモータの構成を示す一部切り欠き断面斜視図である。図2は、前記SRモータにおけるステータの構成を示す一部切り欠き断面斜視図である。図1および図2では、SRモータおよびステータは、その内部構造が分かるように、その一部が切り欠かれた状態で図示されている。
実施形態におけるラジアルギャップ型のSRモータMは、例えば、図1において、非回転部分であるステータ(固定子)STと、ステータSTと相対回転可能な、回転部分であるロータ(回転子)RTと、ロータRTを回転方向に囲み、ステータSTに収納される励磁コイル10、10とを備える。これらステータSTとロータRTとは、径方向に所定の間隔を空けて配置されている。
ロータRTは、ロータ本体121と、複数のロータ側磁極部124とを備え、さらに、図1に示す例では、出力軸122と、軸受け部材123とを備える。
出力軸122は、ロータRTの回転力(回転トルク)を外部に取り出すためにロータ本体121に取り付けられた回転軸(出力軸、シャフト)である。出力軸122は、例えば、円柱状の棒状のロッド部材であり、ロータ本体121の軸芯と出力軸の軸芯とが一致するように、ロータ本体121に固定されている。
軸受け部材123は、出力軸122を残してステータSTおよびロータRTを囲う図略のケーシングに取り付けられ、前記ケーシングに対し、出力軸122を回転可能に支持する部材であり、例えば、ベアリング等である。
ロータ本体121は、ロータ側磁極部124とステータSTに設けられる後述のステータ側磁極部112との磁気的な相互作用によって、出力軸122と共に軸心C周りに回転する円板状あるいは円柱状の部材であり、磁性材料によって形成されている。
各ロータ側磁極部124は、ステータSTに設けられる後述の励磁コイル2が励磁した状態でロータ本体121が回転した場合に各ステータ側磁極部112との間の磁気抵抗の増減が繰り返される形状を有し、磁性材料によって形成されている。より具体的には、各ロータ側磁極部124は、軸心C方向に沿って延びかつ径方向外側に突出する突条形状を有し、これら複数のロータ側磁極部124は、ロータ本体121の外周面に周方向(回転方向)に所定の間隔を空けて並設するようにそれぞれ設けられている。これらロータ側磁極部124は、図1に示す例では、周方向に等間隔で6個である。各ロータ側磁極部124は、その先端に、軸心C方向視においてステータ側磁極部112の磁極面113と対応する(平行な)円弧状であって、径方向外側に突出する磁極面(ロータ側磁極面)125を有する。すなわち、ロータ側磁極面125は、径方向視において、径方向外側に凸の突曲面である。また、各ロータ側磁極部124の各磁極面125は、軸心C方向視において、出力軸122と同心となる共通(同一)の円周上に位置している。
ステータSTは、ステータ本体111と、複数のステータ側磁極部112と、2相に応じた2個の第1系および第2系励磁コイル2(2−1、2−2)とを備える。なお、本実施形態では、2相としたが、1相でも良く、また3相以上であっても良い。また、ステータSTは、1相のコアを複数並べる形態であって良く、例えば、中段のコアを2つに割って、断面コ字型コア(U字型コア)を軸方向に複数並べる形態であって良い。
ステータ本体111は、環状の各励磁コイル2−1、2−2を保持する例えば筒状の部材であり、磁性材料によって形成されている。この筒状のステータ本体111は、ロータRTをその回転方向に囲むと共に、その内側(軸心C側)に各励磁コイル2−1、2−2を収納(収容)する。また、ステータ本体111には、各励磁コイル2−1、2−2における後述の第1および第2コイル接続部20ac、20bcを内部から外部へ引き出すための第1および第2接続用孔がその周面に貫通形成されている。なお、前記第1および第2接続用孔は、一体に形成されても良く、個別に形成されてもよい。そして、ステータ本体111には、各励磁コイル2−1、2−2における第1および第2口出し部20ab、20bbを内部から外部へ引き出すための第1および第2口出し孔がその上下面それぞれに貫通形成されている。
励磁コイル2は、電力の供給を受けることによって磁場を生成する巻線である。励磁コイル2は、本実施形態では、2相で構成されており、より具体的には、出力軸122の軸心C方向に並ぶようにステータ本体111に2個配設されている。各励磁コイル2−1、2−2は、環形状を有し、その芯部をロータRTが挿通するように、そして、各励磁コイル2−1、2−2の軸とロータRTの軸とが一致するように、配置される。この各励磁コイル2−1、2−2は、当該SRモータMを駆動させるために電流が供給されて励磁した場合に、スイッチトリラクタンス方式よってステータSTとロータRTとの間の磁気抵抗に基づく回転力をロータRTに生じさせる。励磁コイル2−1は、第1相の第1系励磁コイルの一例であり、励磁コイル2−2は、第2相の第2系励磁コイルの一例である。これら各励磁コイル2−1、2−2のより詳細な構成は、後述する。
各ステータ側磁極部112は、励磁コイル2(2−1、2−2)が励磁した状態でロータ本体121が回転した場合に、ロータ側磁極部124との間の磁気抵抗の増減が繰り返される形状を有し、磁性材料によって形成されている。各ステータ側磁極部112は、円筒状のステータ本体111の内側周面から軸心C側(径方向内側)に突出する突片形状を有し、これら複数のステータ側磁極部112は、ステータ本体111の内側周面に周方向(回転方向)に所定の間隔を空けてそれぞれ設けられている。これらステータ側磁極部112は、図1および図2に示す例では、周方向に等間隔で6個である。各ステータ側磁極部112は、その先端に、軸心C方向視においてロータRTに沿った円弧状であって径方向外側に凹む形状を有する磁極面(ステータ側磁極面)113を有する。すなわち、ステータ側磁極面113は、径方向視において、径方向外側に凹む凹曲面である。また、各ステータ側磁極部112の各磁極面113は、軸心C方向視において、出力軸122と同心となる共通(同一)の円周上に位置している。
そして、ステータ側磁極部112は、2個(2相)の励磁コイル2−1、2−2に対応して軸心C方向に2段設けられている。より具体的には、図1および図2に示す例では、ステータ側磁極部112は、円筒状のステータ本体111における内側周面に周方向に沿って6個、円筒状のステータ本体111における軸心C方向の両端に2段(2個)の合計12個(=6個×2段)である。なお、本実施形態では、図1および図2における右側の端部に設けられた各ステータ側磁極部112を第1段目のステータ側磁極部112a、左側の端部に設けられた各ステータ側磁極部112を第2段目のステータ側磁極部112bとも称する。このように各段に設けられたステータ側磁極部112a、112bの数は、相互に等しい。また、各段におけるステータ側磁極部112a、112bの数は、ロータRTのロータ側磁極部24の数とそれぞれ等しく、本実施形態では6個である。
また、ステータ本体111には、その内側周面から軸心C側にステータ側磁極部112と略同じ長さで突出するリング板形状を有する突条部114が設けられている。すなわち、ステータ本体111の内側周面からステータ側磁極部112の磁極面113までの長さと、ステータ本体111の内側周面から突条部114の先端面までの長さとは、略同一である。なお、磁気抵抗を低減する観点から、ステータ側磁極部112の磁極面113とロータ側磁極部124の磁極面125との距離は、小さいほど好ましく、突条部114の前記先端面とロータ側磁極部124の磁極面125との距離は、小さいほど好ましい。
第1系励磁コイルの励磁コイル2−1は、第1段目のステータ側磁極部112aと突条部114とによって挟まれる位置に配設され、第2系励磁コイルの励磁コイル2−2は、第2段目のステータ側磁極部112bと突条部114とによって挟まれる位置に配設されている。
そして、図2に示すように、各段のステータ側磁極部112a、112bの位置は、回転方向(周方向)でずれている。より具体的には、ステータ側磁極部112の中央位置(周方向の中央位置)と軸心とを結ぶ線を基準線Yaとし、第1段目の各ステータ側磁極部112aの基準線をYa1とし、第2段目の各ステータ側磁極部112bの基準線をYa2とした場合に、第1段目の各ステータ側磁極部112aは、その基準線Ya1が第2段目の各ステータ側磁極部112bにおける周方向で互いに隣接する2個のステータ側磁極部112bの各基準線Ya2、Ya2の中央に位置するように、配置されている。言い換えれば、第2段目の各ステータ側磁極部112bは、その基準線Ya2が、第1段目の各ステータ側磁極部112aにおける周方向で互いに隣接する2個のステータ側磁極部112aの各基準線Ya1、Ya1の中央に位置するように、配置されている。図1および図2に示す例では、各段の各ステータ側磁極部112a、112bは、6個であるので、周方向に60度の間隔で配設されている。このため、第1段目の各ステータ側磁極部112aは、その基準線Ya1が第2段目の各ステータ側磁極部112bの各基準線Ya2に対し反時計回りに(または時計回りに)30度(=60度/2)ずれる位置に、配置されている。言い換えれば、第2段目の各ステータ側磁極部112bは、その基準線Ya2が第1段目の各ステータ側磁極部112aの各基準線Ya1に対し時計回りに(または反時計回りに)30度ずれる位置に、配置されている。
そして、このようなステータ本体111、突条部114およびステータ側磁極部112ならびにロータ本体121およびロータ側磁極部124は、それぞれ磁性材料によって形成され、等方的な所定の磁気特性(透磁率)を有している。これらステータ本体111およびステータ側磁極部112ならびにロータ本体121およびロータ側磁極部124は、それぞれ、絶縁膜被覆金属粉末を加圧して固めた圧粉体から成る。前記圧粉体に用いられる金属粉末は、軟磁性粉末であって、強磁性の金属粉末である。前記金属粉末は、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(例えばFe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)、或いは、アモルファス粉末が挙げられる。これら軟磁性体粉末は、公知の手段、例えば、アトマイズ法等によって微粒子化する方法や、酸化鉄等を微粉砕した後にこれを還元する方法等によって製造することができる。さらに、上記軟磁性粉末の表面を覆う絶縁膜被覆として、酸化物等の無機材料による皮膜、シリコーン樹脂等の有機材料による皮膜、および、無機材料と有機材料との2層等の複合された皮膜等のうちのいずれかの皮膜が形成されている。これらステータ本体111、突条部114およびステータ側磁極部112は、例えば、本実施形態では、一体で形成されており、また、これらロータ本体121およびロータ側磁極部124は、例えば、本実施形態では、一体で形成されている。このような軟磁性体粉末によって形成されたステータ本体111、突条部114およびステータ側磁極部112ならびにロータ本体121およびロータ側磁極部124は、それぞれ、例えば、圧粉形成等の公知の常套手段によって形成される。
なお、ステータ本体111およびステータ側磁極部112ならびにロータ本体121およびロータ側磁極部124は、それぞれ、その粉末の粒度や粒度分布、および、成形体密度等により磁気特性を制御でき、例えば、成形体の密度を高くすることで透磁率を高く、粉末の粒度を小さくすることで渦電流損を抑制することが可能である。このため、ステータSTやロータRTに求められる電磁気特性を実現するために、圧粉体に用いる粉末の粒度や成形体の密度等が調節される。成形体の密度は、純鉄粉の場合、約3.0g/cc〜約5.0g/ccの範囲では非磁性粉末材料の添加量で調節でき、約5.0g/cc〜約7.7g/ccの範囲では成形時の加圧力で調節できる。
次に、上述の励磁コイル2(2−1、2−2)についてさらに説明する。これら励磁コイル2−1、2−2それぞれは、互いに同一の構成であるため、添え字を省略し、纏めて説明する。
図3は、前記SRモータに用いられる励磁コイルの構成を示す断面図である。図4は、前記励磁コイルの模式図である。図5は、各種金属材料のスキンデプス(表皮厚み)を周波数の関数として表したグラフである。
励磁コイル2は、例えば、図3に示すように、第1コイル部2aと、第1コイル部2aの軸方向の他方側(図3に示す例では紙面下側)に積層された第2コイル部2bとを備える。
第1コイル部2aは、コイル本体部20aaと、第1コイル接続部20acと、第1口出し部20abとを備える。この第1コイル部2aは、所定の幅で一方向に長尺な帯状(テープ状、リボン状)の第1導体21aおよび第2導体22aとによって形成されている。
第1導体21aと第2導体22aとは、この実施形態では、互いにほぼ同じ構成を採っており、両端部を除き絶縁材で絶縁被覆され、所定の厚さを有するアルミニウムからなる。第1導体21aおよび第2導体22aそれぞれの厚さ(この例ではアルミニウムの厚さ)は、励磁コイル2に給電される駆動周波数(使用周波数)に対するスキンデプス(表皮厚み)以下の厚さであり、これによってその渦電流損がより低減できる。一般に、コイルに流れる電流は、スキンデプスまでの範囲でしか流れず、導体断面全体に一様に電流が流れない。したがって、第1および第2導体21a、22aの厚みをスキンデプス以下に設定することで渦電流損が減少できる。スキンデプスδは、一般に、δ=(ρ/πfμ)1/2である(ただし、f;駆動周波数、μ;導体部材の透磁率、ρ;導体部材の電気伝導率)。なお、図5には、各種金属材料のスキンデプスδが周波数の関数としてグラフで示されている。
第1コイル部2aのコイル本体部20aaは、第1導体21aと第2導体22aとが互いに厚さ方向に重ね合わされた状態で、径方向内側から径方向外側に順次、図4の反時計方向(一方向)に巻回成形されることによりパンケーキ状に形成されている。この状態で、第1導体21aの一方端部21aaが最も径方向外側に配置されるとともに、第2導体22aの一方端部22aaが第1導体21aの一方端部21aaの径方向内側に、第1導体21aの一方端部21aaに隣接して配置されている。
第1コイル部2aの第1コイル接続部20acは、コイル本体部20aaの径方向外側部に形成されており、第1および第2導体21a、22aの各一方端部21aa、22aaの各一部である。
第1コイル部2aの第1口出し部20abは、コイル本体部20aaの径方向内側部に形成されており、第1および第2導体21a、22aの各他方端部21abの各一部である。
一方、第2コイル部2bは、第1コイル部2aと同様に、コイル本体部20baと、第2コイル接続部20bcと、第2口出し部20bbとを備えており、この第2コイル部2bも、上述の第1コイル部2aと同様に、所定の幅で一方向に長尺な帯状(テープ状、リボン状)の第1導体21bおよび第2導体22bとによって形成されている。
第1導体21bと第2導体22bとは、この実施形態では、互いにほぼ同じ構成を採っており、両端部を除き絶縁材で絶縁被覆され、所定の厚さを有するアルミニウムからなる。第1導体21bおよび第2導体22bそれぞれの厚さ(この例ではアルミニウムの厚さ)は、励磁コイル2に給電される駆動周波数(使用周波数)に対するスキンデプス(表皮厚み)以下の厚さであり、これによってその渦電流損がより低減できる。
そして、第2コイル部2bのコイル本体部20baは、第1導体21bと第2導体22bとが互いに厚さ方向に重ね合わされた状態で、径方向内側から径方向外側に順次、第1コイル部2aと同じ巻方向に、すなわち、図4の反時計方向(一方向)に巻回成形されることによりパンケーキ状に形成されている。この第2コイル部2bにおけるコイル本体部20baの幅および長さは、第1コイル部2aにおけるコイル本体部20aaと略同じである。
ただし、この第2コイル部2bのコイル本体部20baは、第1コイル部2aと異なり、図4に示すように第2導体22bの一方端部22baが最も径方向外側に配置されるとともに、第1導体21bの一方端部21baが第2導体22bの一方端部22baの径方向内側に、第2導体22bの一方端部22baと隣接して配置されている。
第2コイル部2bの第2コイル接続部20bcは、コイル本体部20baの径方向外側部に形成されており、第1および第2導体21b、22bの各一方端部21ba、22baの各一部である。
第2コイル部2bの第2口出し部20bbは、コイル本体部20baの径方向内側部に形成されており、第1および第2導体21b、22bの各他方端部21bbの各一部である。
そして、このように成形された第1および第2コイル部2a、2bを備える励磁コイル2は、第1および第2口出し部20ab、20bbがステータST内を引き回されて前記第1および第2口出し孔から軸方向の外側に出されるとともに、第1および第2コイル接続部20ac、20bcが前記第1および第2接続用孔から周方向の外側に引き出されるようにして、図1および図2に示すように、ステータSTに収容される。すなわち、上述したように、第1系励磁コイルの励磁コイル2−1は、第1段目のステータ側磁極部112aと突条部114とによって挟まれる位置に配設され、第2系励磁コイルの励磁コイル2−2は、第2段目のステータ側磁極部112bと突条部114とによって挟まれる位置に配設される。
そして、前記第1および第2接続用孔から出された第1コイル接続部20acと第2コイル接続部20bcとが、リード線等によって電気的に接続されている。すなわち、第1コイル部2aの第1導体21aにおける一方端21aaは、第2コイル部2bの第1導体21bにおける一方端21baにリード線等によって電気的に接続され、第1コイル部2aの第2導体22aにおける一方端22aaは、第2コイル部2bの第2導体22bにおける一方端22baにリード線等によって電気的に接続される。
これにより、第1コイル部2aと、その第1コイル部2aの軸方向の一方側(図4の下側)にパンケーキ状の第2コイル部2bが形成され、軸方向で積層された2つのコイル部2a、2bを有する励磁コイル部2が得られる。このようにSRモータMに用いられる励磁コイル2は、第1導体21(21a、21b)と第2導体22(22a、22b)とを同じ巻き方向で巻回成形した2つのコイルを用いて形成できるので、製作が容易になる。
このようなSRモータMでは、励磁コイル2(2−1、2−2)のインダクタンスは、ロータRTが回転している場合に、ステータSTのステータ側磁極部112とロータRTのロータ側磁極部124とにおける重なりの程度によって変化する。この励磁コイル2のインダクタンスがロータRTの回転に伴って増加している間に、励磁コイル2に電流を供給すると、ロータRTには、磁気抵抗を低減するべく前記重なりの程度を増加させるように回転方向にトルクが働き、SRモータMは、加速する。ステータSTのステータ側磁極部112とロータRTのロータ側磁極部124とが完全に重なると、ステータSTおよびロータRTにおける磁気回路の磁気抵抗(リラクタンス)は、最小となり、磁気吸引力は、径方向だけとなって回転方向にトルクは、生じない。そして、この励磁コイル2のインダクタンスがロータRTの回転に伴って減少している間に、励磁コイル2に電流を供給すると、ロータRTには、磁気抵抗を低減するべく前記重なりの程度の減少を妨げるように回転方向と逆方向にトルクが働き、SRモータMは、減速する。このため、各段において、ロータRTのロータ側磁極部124がステータSTのステータ側磁極部112に完全に重なった際に、各励磁コイル2−1、2−2の各電流供給を停止し、ロータRTのロータ側磁極部124がステータSTにおける回転方向で次のステータ側磁極部112に近づいた際に、各励磁コイル2−1、2−2の各電流供給を再開することで、ロータRTは、連続的に回転することができる。
このようなSRモータMは、第1導体21(21a、21b)と第2導体22(22a、22b)とを2枚重ねにすることで、例えば1つの導体を同じ径の1つのシングルパンケーキ巻に成形した励磁コイルに比べて巻数が半減するが、軸方向に積層された第1および第2コイル部2a、2bが直列となって2倍になり、励磁コイル全体の巻数は、不変となる。一方、導体断面積は、上記の1つのパンケーキ状のコイル部に比べて多くなり、コイル部全体の直流抵抗を小さくできる。
図6は、前記SRモータに用いられる励磁コイルの等価回路を示す図である。図7は、比較例の励磁コイルの等価回路を示す図である。そして、例えば第1導体21の厚さ方向の一方面側に第2導体22が配置されて第1コイル部および第2コイル部が巻回成形されると、図7に示すように第1導体21と第2導体22とによって形成される有限面積のエリア(図7に斜線で示す部分)を貫通する交流漏れ磁束線q3が誘導起電力p3を発生してしまうおそれがある。
一方、上述のSRモータMでは、第1コイル部2aは、第1導体21aの一方端部21aaが最も径方向外側に配置されるとともに、第2導体22aの一方端部22aaが第1導体21aの一方端部21aaの径方向内側に配置され、第2コイル部2bは、第2導体22bの一方端部22baが最も径方向外側に配置されるとともに、第1導体21bの一方端部21baが第2導体22bの一方端部22baの径方向内側に配置されている。換言すれば、第1コイル部2aと第2コイル部2bとで、第1導体21と第2導体22のそれぞれの一方端部の径方向位置が逆になるように配置されている。そして、第1コイル部2aにおける第1導体21の一方端部21aと第2コイル部2bにおける第1導体21の一方端部21aとが電気的に接続されるとともに、第1コイル部2aにおける第2導体22の一方端部22aと第2コイル部2bにおける第2導体21の一方端部21aとが電気的に接続されている。
これにより、図6に示すように第1および第2コイル部2aのそれぞれの第1導体21(21a、21b)および第2導体22(22a、22b)への通電に伴って第1コイル部2aにおける第1導体21aと第2導体22aとで形成されるループを軸方向に貫通する磁束線q1と、第2コイル部2bにおける第1導体21bと第2導体22bとで形成されるループを軸方向に貫通する磁束線q2との向きが互いに反対になる。したがって、軸方向で互いに隣接する第1コイル部2aと第2コイル部2bとの各導体21(21a、21b)、22(22a、22b)に生じる誘導起電力が相殺され、これによって、渦電流が効果的に抑制される。
さらに、上述のSRモータMは、第1および第2導体21(21a、21b)、22(22a、22b)それぞれがスキンデプス以下の厚さであるので、第1および第2導体21、22それぞれで生じる渦電流をさらに効果的に抑制できる。
以上より、上述のように構成された励磁コイル2を用いたSRモータMは、帯状の導体21、22を2枚重ねてパンケーキ巻きしても、渦電流の発生を抑制でき、効率の低下を抑制できる。
なお、上述の実施形態では、第1コイル部2aと第2コイル部2bとにおいて、第1導体21a、21bと第2導体22a、22bとは、それぞれの一方端部21aa、22aa;21ba、22baの径方向位置が逆になるように配置されたが、この形態のものに限らず、適宜に変更できる。
図8は、前記SRモータに用いられる励磁コイルの変形例の模式図である。例えば図8に示すように、第1コイル部2aと第2コイル部2bとにおいて、第1および第2導体21a、22a;21b、22bの巻方向を互いに逆にし(図8に示す例では、第1コイル部2aは、径方向内側から外側に反時計方向に巻回され、第2コイル部2bは、径方向内側から外側に時計方向に巻回されている。)、第1および第2コイル部2a、2bにおける各第1導体21a、21bの各一方端部21aa、21baが最も径方向外側に配置されるとともに、第2導体22の一方端部22aaが第1導体21aの一方端部21aaの径方向内側に配置されるようにする。そして、第1コイル部2aにおける第1導体21aの一方端部21aaと第2コイル部2bにおける第1導体21bの一方端部21baとが電気的に接続されるとともに、第1コイル部2aにおける第2導体22aの一方端部22aaと第2コイル部2bにおける第2導体22bの一方端部22baとが電気的に接続されたものとする。
このような構成の励磁コイル2も、第1および第2コイル部2a、2bのそれぞれの第1導体21a、21bおよび第2導体22a、22bへの通電に伴って第1コイル部2aにおける第1導体21aと第2導体22aとで形成されるループを軸方向に貫通する磁束線q1(図6参照)と、第2コイル部2bにおける第1導体21bと第2導体22bとで形成されるループを軸方向に貫通する磁束線q2との向きを互いに反対にできる。これにより、軸方向で互いに隣接する第1コイル部2aと第2コイル部2bの各導体21(21a、21b)、22(22a、22b)に生じる誘導起電力が相殺され、これによって、渦電流が効果的に抑制され、渦損を抑えることができる。
すなわち、図8では、2つのコイル部2a、2bにおける一方のコイル部(例えば第1コイル部2a)は、第1導体21の一方端部が最も径方向外側に配置されるとともに、第2導体22の一方端部が第1導体21の一方端部の径方向内側に配置されるように、第1および第2導体21、22が径方向内側から径方向外側に順次、一方向に巻回成形されることにより形成されており、2つのコイル部2a、2bにおける他方のコイル部(例えば第2コイル部2b)は、第1導体21の一方端部が最も径方向外側に配置されるとともに、第2導体22の一方端部が第1導体21の一方端部の径方向内側に配置されるように、第1および第2導体21、22が径方向内側から径方向外側に順次、前記一方のコイル部とは巻方向が逆となる他方向に巻回成形されることにより形成され、一方のコイル部の第1導体21の一方端部と他方のコイル部の第1導体21の一方端部とが電気的に接続されるとともに、一方のコイル部の第2導体22の一方端部と他方のコイル部の第2導体22の一方端部とが電気的に接続されている。
また、上述の実施形態では、励磁コイル2は、第1コイル部2aと第2コイル部2bとの2つから構成されたが、この形態のものに限らず、軸方向に3つ以上のコイル部を積層させてもよい。好ましくは、軸方向に偶数個のコイル部が積層される。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。