以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
SRモータは、構造の観点から、ラジアルギャップ型のSRモータとアキシャルギャップ型のSRモータとに大別され、本実施形態は、いずれの型のSRモータでもよいが、ここでは、一例として、ラジアルギャップ型のSRモータについて説明する。
図1は、実施形態におけるSRモータの構成を示す一部切り欠き断面斜視図である。図2は、前記SRモータにおけるステータの構成を示す一部切り欠き断面斜視図である。図1および図2では、SRモータおよびステータは、その内部構造が分かるように、その一部が切り欠かれた状態で図示されている。
実施形態におけるラジアルギャップ型のSRモータMは、例えば、図1において、非回転部分であるステータ(固定子)STと、ステータSTと相対回転可能な、回転部分であるロータ(回転子)RTと、ロータRTを回転方向に囲み、ステータSTに収納される励磁コイル10、10とを備える。これらステータSTとロータRTとは、径方向に所定の間隔を空けて配置されている。
ロータRTは、ロータ本体121と、複数のロータ側磁極部124とを備え、さらに、図1に示す例では、出力軸122と、軸受け部材123とを備える。
出力軸122は、ロータRTの回転力(回転トルク)を外部に取り出すためにロータ本体121に取り付けられた回転軸(出力軸、シャフト)である。出力軸122は、例えば、円柱状の棒状のロッド部材であり、ロータ本体121の軸芯と出力軸の軸芯とが一致するように、ロータ本体121に固定されている。
軸受け部材123は、出力軸122を残してステータSTおよびロータRTを囲う図略のケーシングに取り付けられ、前記ケーシングに対し、出力軸122を回転可能に支持する部材であり、例えば、ベアリング等である。
ロータ本体121は、ロータ側磁極部124とステータSTに設けられる後述のステータ側磁極部112との磁気的な相互作用によって、出力軸122と共に軸心C周りに回転する円板状あるいは円柱状の部材であり、磁性材料によって形成されている。
各ロータ側磁極部124は、ステータSTに設けられる後述の励磁コイル2が励磁した状態でロータ本体121が回転した場合に各ステータ側磁極部112との間の磁気抵抗の増減が繰り返される形状を有し、磁性材料によって形成されている。より具体的には、各ロータ側磁極部124は、軸心C方向に沿って延びかつ径方向外側に突出する突条形状を有し、これら複数のロータ側磁極部124は、ロータ本体121の外周面に周方向(回転方向)に所定の間隔を空けて並設するようにそれぞれ設けられている。これらロータ側磁極部124は、図1に示す例では、周方向に等間隔で6個である。各ロータ側磁極部124は、その先端に、軸心C方向視においてステータ側磁極部112の磁極面113と対応する(平行な)円弧状であって、径方向外側に突出する磁極面(ロータ側磁極面)125を有する。すなわち、ロータ側磁極面125は、径方向視において、径方向外側に凸の突曲面である。また、各ロータ側磁極部124の各磁極面125は、軸心C方向視において、出力軸122と同心となる共通(同一)の円周上に位置している。
ステータSTは、ステータ本体111と、複数のステータ側磁極部112と、2相に応じた2個の第1系および第2系励磁コイル2(2−1、2−2)とを備える。なお、本実施形態では、2相としたが、1相でも良く、また3相以上であっても良い。また、ステータSTは、1相のコアを複数並べる形態であって良く、例えば、中段のコアを2つに割って、断面コ字型コア(U字型コア)を軸方向に複数並べる形態であって良い。
ステータ本体111は、環状の各励磁コイル2−1、2−2を保持する例えば筒状の部材であり、磁性材料によって形成されている。この筒状のステータ本体111は、ロータRTをその回転方向に囲むと共に、その内側(軸心C側)に各励磁コイル2−1、2−2を収納(収容)する。また、ステータ本体111には、各励磁コイル2−1、2−2における後述の口出し部21d、22d;21e、22eを内部から外部へ引き出すための口出し孔がその周面に貫通形成されている。
励磁コイル2は、電力の供給を受けることによって磁場を生成する巻線である。励磁コイル2は、本実施形態では、2相で構成されており、より具体的には、出力軸122の軸心C方向に並ぶようにステータ本体111に2個配設されている。各励磁コイル2−1、2−2は、環形状を有し、その芯部をロータRTが挿通するように、そして、各励磁コイル2−1、2−2の軸とロータRTの軸とが一致するように、配置される。この各励磁コイル2−1、2−2は、当該SRモータMを駆動させるために電流が供給されて励磁した場合に、スイッチトリラクタンス方式よってステータSTとロータRTとの間の磁気抵抗に基づく回転力をロータRTに生じさせる。励磁コイル2−1は、第1相の第1系励磁コイルの一例であり、励磁コイル2−2は、第2相の第2系励磁コイルの一例である。これら各励磁コイル2−1、2−2のより詳細な構成は、後述する。
各ステータ側磁極部112は、励磁コイル2(2−1、2−2)が励磁した状態でロータ本体121が回転した場合に、ロータ側磁極部124との間の磁気抵抗の増減が繰り返される形状を有し、磁性材料によって形成されている。各ステータ側磁極部112は、円筒状のステータ本体111の内側周面から軸心C側(径方向内側)に突出する突片形状を有し、これら複数のステータ側磁極部112は、ステータ本体111の内側周面に周方向(回転方向)に所定の間隔を空けてそれぞれ設けられている。これらステータ側磁極部112は、図1および図2に示す例では、周方向に等間隔で6個である。各ステータ側磁極部112は、その先端に、軸心C方向視においてロータRTに沿った円弧状であって径方向外側に凹む形状を有する磁極面(ステータ側磁極面)113を有する。すなわち、ステータ側磁極面113は、径方向視において、径方向外側に凹む凹曲面である。また、各ステータ側磁極部112の各磁極面113は、軸心C方向視において、出力軸122と同心となる共通(同一)の円周上に位置している。
そして、ステータ側磁極部112は、2個(2相)の励磁コイル2−1、2−2に対応して軸心C方向に2段設けられている。より具体的には、図1および図2に示す例では、ステータ側磁極部112は、円筒状のステータ本体111における内側周面に周方向に沿って6個、円筒状のステータ本体111における軸心C方向の両端に2段(2個)の合計12個(=6個×2段)である。なお、本実施形態では、図1および図2における右側の端部に設けられた各ステータ側磁極部112を第1段目のステータ側磁極部112a、左側の端部に設けられた各ステータ側磁極部112を第2段目のステータ側磁極部112bとも称する。このように各段に設けられたステータ側磁極部112a、112bの数は、相互に等しい。また、各段におけるステータ側磁極部112a、112bの数は、ロータRTのロータ側磁極部24の数とそれぞれ等しく、本実施形態では6個である。
また、ステータ本体111には、その内側周面から軸心C側にステータ側磁極部112と略同じ長さで突出するリング板形状を有する突条部114が設けられている。すなわち、ステータ本体111の内側周面からステータ側磁極部112の磁極面113までの長さと、ステータ本体111の内側周面から突条部114の先端面までの長さとは、略同一である。なお、磁気抵抗を低減する観点から、ステータ側磁極部112の磁極面113とロータ側磁極部124の磁極面125との距離は、小さいほど好ましく、突条部114の前記先端面とロータ側磁極部124の磁極面125との距離は、小さいほど好ましい。
第1系励磁コイルの励磁コイル2−1は、第1段目のステータ側磁極部112aと突条部114とによって挟まれる位置に配設され、第2系励磁コイルの励磁コイル2−2は、第2段目のステータ側磁極部112bと突条部114とによって挟まれる位置に配設されている。
そして、図2に示すように、各段のステータ側磁極部112a、112bの位置は、回転方向(周方向)でずれている。より具体的には、ステータ側磁極部112の中央位置(周方向の中央位置)と軸心とを結ぶ線を基準線Yaとし、第1段目の各ステータ側磁極部112aの基準線をYa1とし、第2段目の各ステータ側磁極部112bの基準線をYa2とした場合に、第1段目の各ステータ側磁極部112aは、その基準線Ya1が第2段目の各ステータ側磁極部112bにおける周方向で互いに隣接する2個のステータ側磁極部112bの各基準線Ya2、Ya2の中央に位置するように、配置されている。言い換えれば、第2段目の各ステータ側磁極部112bは、その基準線Ya2が、第1段目の各ステータ側磁極部112aにおける周方向で互いに隣接する2個のステータ側磁極部112aの各基準線Ya1、Ya1の中央に位置するように、配置されている。図1および図2に示す例では、各段の各ステータ側磁極部112a、112bは、6個であるので、周方向に60度の間隔で配設されている。このため、第1段目の各ステータ側磁極部112aは、その基準線Ya1が第2段目の各ステータ側磁極部112bの各基準線Ya2に対し反時計回りに(または時計回りに)30度(=60度/2)ずれる位置に、配置されている。言い換えれば、第2段目の各ステータ側磁極部112bは、その基準線Ya2が第1段目の各ステータ側磁極部112aの各基準線Ya1に対し時計回りに(または反時計回りに)30度ずれる位置に、配置されている。
そして、このようなステータ本体111、突条部114およびステータ側磁極部112ならびにロータ本体121およびロータ側磁極部124は、それぞれ磁性材料によって形成され、等方的な所定の磁気特性(透磁率)を有している。これらステータ本体111およびステータ側磁極部112ならびにロータ本体121およびロータ側磁極部124は、それぞれ、絶縁膜被覆金属粉末を加圧して固めた圧粉体から成る。前記圧粉体に用いられる金属粉末は、軟磁性粉末であって、強磁性の金属粉末である。前記金属粉末は、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(例えばFe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)、或いは、アモルファス粉末が挙げられる。これら軟磁性体粉末は、公知の手段、例えば、アトマイズ法等によって微粒子化する方法や、酸化鉄等を微粉砕した後にこれを還元する方法等によって製造することができる。さらに、上記軟磁性粉末の表面を覆う絶縁膜被覆として、酸化物等の無機材料による皮膜、シリコーン樹脂等の有機材料による皮膜、および、無機材料と有機材料との2層等の複合された皮膜等のうちのいずれかの皮膜が形成されている。これらステータ本体111、突条部114およびステータ側磁極部112は、例えば、本実施形態では、一体で形成されており、また、これらロータ本体121およびロータ側磁極部124は、例えば、本実施形態では、一体で形成されている。このような軟磁性体粉末によって形成されたステータ本体111、突条部114およびステータ側磁極部112ならびにロータ本体121およびロータ側磁極部124は、それぞれ、例えば、圧粉形成等の公知の常套手段によって形成される。
なお、ステータ本体111およびステータ側磁極部112ならびにロータ本体121およびロータ側磁極部124は、それぞれ、その粉末の粒度や粒度分布、および、成形体密度等により磁気特性を制御でき、例えば、成形体の密度を高くすることで透磁率を高く、粉末の粒度を小さくすることで渦電流損を抑制することが可能である。このため、ステータSTやロータRTに求められる電磁気特性を実現するために、圧粉体に用いる粉末の粒度や成形体の密度等が調節される。成形体の密度は、純鉄粉の場合、約3.0g/cc〜約5.0g/ccの範囲では非磁性粉末材料の添加量で調節でき、約5.0g/cc〜約7.7g/ccの範囲では成形時の加圧力で調節できる。
次に、上述の励磁コイル2(2−1、2−2)についてさらに説明する。これら励磁コイル2−1、2−2それぞれは、互いに同一の構成であるため、添え字を省略し、纏めて説明する。また、上述のSRモータMの励磁コイル2として利用可能なコイルは、種々の態様を採り得るが、まず、第1態様の励磁コイル2Aについて説明する。
図3は、前記SRモータに用いられる第1態様の励磁コイルの構成を示す断面図である。図4は、前記第1態様の励磁コイルの模式図である。図5は、各種金属材料のスキンデプス(表皮厚み)を周波数の関数として表したグラフである。図6は、前記第1態様の励磁コイルに用いられる第1導体と第2導体とを巻枠に巻回する前の説明図である。図7は、前記第1態様の励磁コイルの製造方法における第1導体と第2導体とを巻枠に巻回し始めた状態の説明図である。図8は、前記第1導体と前記第2導体とを巻枠に巻回している途中の状態の説明図である。図9は、前記第1導体と前記第2導体とを巻枠に巻回成形し終えた状態の斜視図である。
励磁コイル2Aは、例えば、図3に示すように、第1コイル部2aと、第1コイル部2aの軸方向の一方側(図3の上側)に積層された第2コイル部2bとを備える。
これら第1コイル部2aと第2コイル部2bとは、2つの、所定の幅で一方向に長尺な帯状(テープ状、リボン状)の第1導体21および第2導体22によって形成されている。
第1導体21と第2導体22とは、この実施形態では、互いに同一構成を採っており、絶縁材で絶縁被覆された所定の厚さを有するアルミニウムからなる。第1導体21および第2導体22それぞれの厚さ(この例ではアルミニウムの厚さ)は、励磁コイル2Aに給電される駆動周波数(使用周波数)に対するスキンデプス(表皮厚み)以下の厚さであり、これによってその渦電流損がより低減できる。一般に、コイルに流れる電流は、スキンデプスまでの範囲でしか流れず、導体断面全体に一様に電流が流れない。したがって、第1および第2導体21、22の厚みをスキンデプス以下に設定することで渦電流損が減少できる。スキンデプスδは、一般に、δ=(ρ/πfμ)1/2である(ただし、f;駆動周波数、μ;導体部材の透磁率、ρ;導体部材の電気伝導率)。なお、図5には、各種金属材料のスキンデプスδが周波数の関数としてグラフで示されている。
第1導体21と第2導体22とは、図4に示すように、それぞれ、前記帯状の長手方向の一方部分を第1コイル形成部21a、22aとし、その長手方向の他方部分を第2コイル形成部21b、22bとし、それらの第1コイル形成部21a、22aと第2コイル形成部21b、22bとの間の部分を連結部21c、22cとしている。
第1コイル形成部21a、22aは、パンケーキ状に巻回されて第1コイル部2aを形成する。第2コイル形成部21b、22bは、パンケーキ状に巻回されて第2コイル部2bを形成する。この第2コイル形成部21b、22bの幅および長さは、第1コイル形成部21a、22aと略同じである。
連結部21c、22cは、第1コイル形成部21a、22aと第2コイル形成部21b、22bとを連結している。この実施形態では、連結部21c、22cは、第1コイル形成部21a、22aおよび第2コイル形成部21b、22bの長手方向(X−X方向)に対して所定の角度αをなすように幅方向(Y−Y方向)に屈曲されて第1コイル形成部21a、22aから第2コイル形成部21b、22bに延設されている。連結部21c、22cの幅は、第1コイル形成部21a、22aと同じ幅である。
したがって、第1コイル形成部21a、22aと第2コイル形成部21b、22bとは、互いに幅方向(Y−Y方向)に所定の距離L2を隔てている。前記距離L2は、第1コイル形成部21a、22aおよび第2コイル形成部21b、22bの幅L1よりも大きい。
そして、これら第1導体21と第2導体22とは、次のようにパンケーキ状に巻回成形されて第1コイル部2aと第2コイル部2bとを形成している。
より具体的には、図6に示すように、まず、予め、第1導体21および第2導体22それぞれの第1コイル形成部21a、22aおよび第2コイル形成部21b、22bは、仮巻き取りボビン51に巻き取られている。なお、第1コイル形成部21a、22aと第2コイル形成部21b、22bとの仮巻き取りボビン51への巻き方向は、互いに反対である。
そして、第1導体21の連結部21cが、円筒状の巻枠52に背後からあてがわれるようにして固定され、一方、第2導体22の連結部22cが、巻枠52に前方側からあてがわれるようにして固定される。すなわち、第1導体21の連結部21cと第2導体22の連結部22cとは、巻枠52を介してクロス状で互いに対向して巻枠52に固定される。
そして、図7および図8に示すように、絶縁被覆された第1導体21の第1コイル形成部21aにおける厚さ方向の一方面25aに、絶縁被覆された第2導体22の第1コイル形成部22aを径方向外側に重ね合わせるように配置した状態で、第1導体21の第1コイル形成部21aおよび第2導体22の第1コイル形成部22aそれぞれが、仮巻き取りボビン51から巻解かれながら巻枠52に、図の時計方向にパンケーキ状に巻き付けられて行く。これにより、2つの帯状の第1および第2導体21、22における長手方向の一方部分21a、22aを、絶縁層を挟んで第1導体21(21a)の厚さ方向の一方面側に第2導体22(22a)が配置された状態でパンケーキ状に巻回成形することにより形成された、パンケーキ状の第1コイル部2aが形成される。
同様に、第2導体22の第2コイル形成部22bを第1導体21の第2コイル形成部21bの厚さ方向の他方面25b側に配置した状態で、第2導体22の第2コイル形成部22bおよび第1導体21の第2コイル形成部21aそれぞれが、仮巻き取りボビン51から巻解かれながら巻枠52に、図の反時計方向にパンケーキ状に巻き付けられて行く。これにより、第1および第2導体21、22における長手方向の残余部分21b、22bを、絶縁層を挟んで第1導体21(21b)の厚さ方向の他方面側に第2導体22(22b)が配置された状態でパンケーキ状に巻回成形することにより形成された、パンケーキ状の第2コイル部2bが形成される。
この結果、図9に示すように第1コイル部2aの軸方向の一方側(図8の上側)に、パンケーキ状の第2コイル部2bが形成され、ダブルパンケーキ巻の第1態様の励磁コイル2Aが得られる。
そして、第1コイル部2aを形成した第1コイル形成部21a、22aのエンド端は、径方向外側に折り曲げ成形されて第1コイル部用口出し部21d、22dを形成し、同様に、第2コイル部2bを形成した第2コイル形成部21b、22bのエンド端は、径方向外側に折り曲げ成形されて第2コイル部用口出し部21e、22eを形成する。
これらの口出し部21d、22d;21e、22eは、エンド端を径方向外側に1回だけ、折り曲げるだけでよく、容易に製作できる。なお、折り曲げは、全量巻き終えた後に折り曲げてもよいが、例えば、上述の仮巻取り置きボビン51に、予め口出し部成形用スリットが設けられ、その口出し部成形用スリットに、第1コイル形成部21a、22aや第2コイル形成部21b、22bのエンド端が、挿入されて先に折り曲げ成形されてもよい。このようにすれば、口出し部の長さや折り曲げ量の精度が安定するので、より好ましい。
このようにダブルパンケーキ巻に形成された第1態様の励磁コイル2Aは、ステータ本体111の周面に形成された口出し孔から第1および第2コイル部用口出し部21d、22d;21e、22eが引き出されるようにして、ステータSTに収納される。すなわち、上述したように、第1系励磁コイルの励磁コイル2−1は、第1段目のステータ側磁極部112aと突条部114とによって挟まれる位置に配設され、第2系励磁コイルの励磁コイル2−2は、第2段目のステータ側磁極部112bと突条部114とによって挟まれる位置に配設される。
次に、図3に戻って、磁性部材3について説明する。磁性部材3は、磁束線の軸方向に対して非平行となる歪を抑制するための部材であり、この実施形態の磁性部材3は、ステータSTやロータRTと同じ素材からなる円板状の磁性部材から構成されている。より具体的には、磁性部材3は、絶縁膜被覆金属粉末であって強磁性の金属粉末を加圧して固めた圧粉体からなる。
この磁性部材3は、第1コイル部2aと第2コイル部2bとの間に配設されている。磁性部材3は、好ましくは、その厚さtが、磁性部材3の外周面(外周端)とステータSTの内周面との間隙sと同じか、または、小さくなるように形成されている(s≧t)。
このようなSRモータMでは、励磁コイル2(2−1、2−2、上述では各励磁コイル2−1、2−2は第1態様の励磁コイル2A)のインダクタンスは、ロータRTが回転している場合に、ステータSTのステータ側磁極部112とロータRTのロータ側磁極部124とにおける重なりの程度によって変化する。この励磁コイル2のインダクタンスがロータRTの回転に伴って増加している間に、励磁コイル2に電流を供給すると、ロータRTには、磁気抵抗を低減するべく前記重なりの程度を増加させるように回転方向にトルクが働き、SRモータMは、加速する。ステータSTのステータ側磁極部112とロータRTのロータ側磁極部124とが完全に重なると、ステータSTおよびロータRTにおける磁気回路の磁気抵抗(リラクタンス)は、最小となり、磁気吸引力は、径方向だけとなって回転方向にトルクは、生じない。そして、この励磁コイル2のインダクタンスがロータRTの回転に伴って減少している間に、励磁コイル2に電流を供給すると、ロータRTには、磁気抵抗を低減するべく前記重なりの程度の減少を妨げるように回転方向と逆方向にトルクが働き、SRモータMは、減速する。このため、各段において、ロータRTのロータ側磁極部124がステータSTのステータ側磁極部112に完全に重なった際に、各励磁コイル2−1、2−2の各電流供給を停止し、ロータRTのロータ側磁極部124がステータSTにおける回転方向で次のステータ側磁極部112に近づいた際に、各励磁コイル2−1、2−2の各電流供給を再開することで、ロータRTは、連続的に回転することができる。
このようなSRモータMは、第1導体21と第2導体22とを2枚重ねにすることで、例えば1つの導体を同じ径の1つのシングルパンケーキ巻に成形した励磁コイルに比べて巻数が半減するが、第1コイル部2aと第2コイル部2bとを形成した、いわゆるダブルパンケーキ巻に形成することで2段の直列となって倍化して、励磁コイル2全体の巻数は、不変となる。一方、導体断面積も、上記の1つのシングルパンケーキ巻の励磁コイルに比べてダブルパンケーキ巻に形成することによって半減するが、並列2枚重ねによって倍化して不変となる。したがって、同じ寸法形状という制約条件では、上記励磁コイル2は、第1および第2導体21、22の2枚重ねのダブルパンケーキ巻とすることで、励磁コイル2全体の巻数および導体断面積を不変にしつつ、第1および第2導体21、22における両端部分21d、21e;22d、22eをダブルパンケーキ巻の最外周に位置させることができ、シングルパンケーキ巻に較べて口出しが簡単となる。このため、シングルパンケーキ巻では、帯状導体の端部分を直角に折り返して複数回折り畳むという、自動化し難い生産性の悪い前記工程が不要となり、上記励磁コイル2は、生産性を改善できる。しかも、上記励磁コイル2では、第1および第2導体21、22の両端部がステータSRの外周側面に集められることによって、第1および第2導体21、22とステータSRの内壁面の接合面とを単純化でき、より薄く密着性の良い熱接触が可能となり、放熱性が著しく改善される。
図10は、前記SRモータに用いられる励磁コイルの等価回路を示す図である。図11は、比較例の励磁コイルの等価回路を示す図である。そして、例えば第1導体21の厚さ方向の一方面側に第2導体22が配置されて第1コイル部および第2コイル部が巻回成形されると、図11に示すように第1導体21と第2導体22とによって形成される有限面積のエリア(図11に斜線で示す部分)を貫通する交流漏れ磁束線q2が誘導起電力p3を発生してしまうおそれがある。
一方、上記励磁コイル2は、ダブルパンケーキ巻としつつ、軸方向に積層された上下で第1および第2導体21、22の厚み方向の配置を逆転させている。このため、図10に示すように第1コイル部2aの第1導体21と第2導体22とに生じる誘導起電力p1と、第2コイル部2bの第1導体21と第2導体22とに生じる誘導起電力p2が相殺されて渦電流が効果的に抑制され、渦損を抑えることができる。
さらに、上述したように、上記励磁コイル2は、第1および第2導体21、22それぞれがスキンデプス以下の厚さであるので、第1および第2導体21、22それぞれで生じる渦電流をさらに効果的に抑制できる。
また、上記励磁コイル2は、一方の口出し部21d、22dから他方の口出し部21e、22eまでの間に、電気的な接続部分を有しないので、いわゆる超伝導材料で第1および第2導体21、22を形成する場合に、好適な構造である。
以上より、上述のように構成された励磁コイル2を用いたSRモータMは、帯状の導体21、22を2枚重ねてパンケーキ巻きしても、渦電流の発生を抑制しつつ、生産性を改善できる。
なお、上述では、SRモータMは、第1態様の励磁コイル2Aを備えて構成されたが、次の第2および第3態様の励磁コイル2B、2Cのいずれかを備えて構成されても良い。
図12は、実施形態のSRモータにおける第2態様の励磁コイルの断面図である。上記第1態様の励磁コイル2Aでは、磁性部材3が備えられたが、例えば、図12に示すように、磁性部材3が備えられていなくてもよい(第2態様の励磁コイル2B)。この場合、例えば、励磁コイル2Bを構成する第1導体121および第2導体122が銅製で形成されると、銅の比抵抗(1.68μΩcm)は、アルミニウムの比抵抗(2.65μΩcm)よりも小さいので、同一の直流抵抗の場合、第1導体121および第2導体122の幅L2は、上記アルミニウムで形成されるものの幅L1(図3に図示)よりも狭くできる。したがって、磁性部材3を有しない場合でも、外径側の磁束線の歪を抑えることができる点で好ましい。
ただし、第1導体121および第2導体122がアルミニウム製に代えて銅製であって同一の直流抵抗の場合、この第2態様の励磁コイル2Bは、アルミニウム製のものに比べて重量が大きくなってしまい、車載用途など軽量化の要求に応え難くなる。そのため、上述のように、第1態様の励磁コイル2Aは、アルミニウム製の幅広い第1導体21および第2導体22で形成し、磁性部材3を有する構成とすることで、磁束線の歪を抑え得る軽量化したものとなり、好ましい。
図13は、実施形態のSRモータにおける第3態様の励磁コイルの断面図である。上記第1態様の励磁コイル2Aでは、磁性部材3は、圧粉体で構成されたが、この形態に限らず、適宜に変更できる。例えば、図13に示すように磁性部材303は、駆動周波数に対応したスキンデプス以下の厚みの帯状の軟磁性体303aを、第2絶縁層を挟んでパンケーキ状に巻回成形した巻鉄心から構成されてもよい(第3態様の励磁コイル2C)。巻鉄心に用いられる軟磁性体303aは、強磁性の金属であり、例えば、純鉄、鉄基合金、およびアモルファスが挙げられる。このような第3態様の励磁コイル2Cは、等方磁性の圧粉体に比べ、励磁コイルの幅方向に異方性かつ透磁率が数十〜百倍大きいため、外径側の磁束線の歪を抑える効果が大きく、薄く(軽量に)できる。また、第3態様の励磁コイル2Cは、第2絶縁層を挟んで比抵抗が大きいため、円盤内の渦電流損を最小にできる。
図14は、他の実施形態におけるSRモータの上面図である。上記SRモータMでは、ステータSTは、回転方向に一体に形成されたが、この形態に限らず、適宜に変更できる。例えば、図14に示すように、ステータSTは、周方向に分割された複数(図14に示す例では2つに分割)の分割固定子から構成されたものでもよい。このように構成することによって、ステータSTへの励磁コイル2(2A〜2C)の組み立てがやり易く、しかも、励磁コイル2の発熱を外部へ直接放熱できる。また、組立後や稼動時の励磁コイル2の異常を目視で確認することも可能になる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。