JP6223294B2 - 赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法およびその方法を用いた赤外線応力測定システム - Google Patents
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また、系が断熱である(a=0)と仮定でき、かつ温度変化が微小である場合、式(1)は次式で表される。
ここで放射率εは必ず0≦ε≦1を満たす。また、黒体ではない物体では輻射強度が指向性を有することや、内部から放射された赤外線が物体を透過して赤外線カメラで検出されることも知られている。しかし、検討ではコーティングによって放射率を十分に高めれば、それらについては無視できるものとした。すなわち、測定対象物のコーティング膜から放射される赤外線は指向性を有しておらず、かつその表面から放射される赤外線のみが赤外線カメラで検出されると仮定した。
(実施の形態1)
図6は、本発明の実施の形態1における赤外線応力測定システムを示す。
本発明の基材とコーティング膜から構成され、単軸引張り応力が付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法において、コーティング膜厚が1水準であっても補正が可能であることを説明する。実製品では、コーティング膜厚を種々変化させて熱弾性応力測定を行うことは困難である場合が多い。そこで、次式のように目的関数をおいて、コーティング膜厚毎に実験値に対して最小二乗法によるカーブフィッティングを行い、コーティング膜厚が1種類であった場合のカーブフィッティングを行った。カーブフィッティングを行う実験データである温度振幅および位相の周波数特性は実施の形態1で用いた図7(a)と図7(b)のデータを使用した。
本発明の基材とコーティング膜から構成され、単軸引張り応力が付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法において、基材としてSUS304を用いた場合にABSと同様な補正が可能かを検討した。温度分布測定は、実施の形態1の図6に示した装置を使用した。また、コーティング材として放射率が高い黒色つや消し塗料(アサヒペン,耐熱塗料)を用いて膜厚を3水準変化させて塗布を行った。これらの試験片を試験機に設置し、荷重振幅3.0kN,応力比R=0として荷重を負荷した。なお加振周波数は1,3,5,10,15,20,25,30Hzと変数の数以上で温度振幅の減衰形状がわかる8種類とした。また、すべての実験において、赤外線カメラのフレームレートは249Hzとし、コーティング膜厚を3種類(薄いほうからNo.1〜No.3)変化させて測定した。実験より求めた温度振幅の周波数特性を図10(a)に、温度位相特性を図10(b)に示す。図10(a)から温度振幅は加振周波数が高くなるにしたがって減衰している。更に、コーティング膜厚が増加するとその減衰はより顕著になる。また、図10(b)の温度位相の周波数特性から、熱伝導の影響により、加振周波数によって位相はπから変化している。コーティング膜厚を3種類c5i(i=1,2,3),加振周波数を8種類ωj *(i=1,2,・・・8)と変化させて測定した結果に対して次式の目的関数にて最小二乗法を用いたカーブフィッティングを行った。
本発明の基材とコーティング膜から構成され、単軸引張り応力が付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法において、コーティング膜厚が1水準であっても補正が可能であることを説明する。実製品では、コーティング膜厚を種々変化させて熱弾性応力測定を行うことは困難である場合が多い。そこで、次式のように目的関数をおいて、コーティング厚さ膜厚毎に実験値に対して最小二乗法によるカーブフィッティングを行い、コーティング膜厚が1種類であった場合のカーブフィッティングを行った。カーブフィッティングを行う実験データである温度振幅の周波数特性と温度位相特性は実施の形態3で用いた図10(a)と図10(b)を使用した。
図13は、本発明の実施の形態3における基材とコーティング膜から構成され、曲げモーメントが付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法に必要な熱弾性効果測定で求められる温度振幅の周波数特性を取得する実験システムを示す。
本発明の実施の形態3における基材とコーティング膜から構成され、曲げモーメントが付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法において、実施の形態5で検討したABSと同様にステンレス材SUS304においても補正可能であることを検討した。温度振幅の分布測定は、実施の形態5で示したように、赤外線カメラ(Cedip社,Silver480M)を用い、加振機には、エミック社製513−Aの電磁式加振機を用いた。測定対象物は、基材として幅10mm、厚み3mm、長さ300〜400mmのステンレス材SUS304を用い、曲げモーメントを一様に付加するために中央102mm間をボルトで固定し、治具を介して加振機に接続した。また、試験片の裏側にはひずみゲージを添付し、赤外線カメラで取得した温度振幅を応力へ変換した値を同じ周波数で測定したひずみゲージから取得したひずみから算出した応力で規格化することによって周波数特性を求めた。
本発明の実施の形態3における基材とコーティング膜から構成され、曲げモーメントが付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法において、実施の形態5および実施の形態6で検討したABS、SUS304と同様にアルミ材A6063においても補正可能であることを検討した。温度振幅の分布測定は、実施の形態5で示したように、赤外線カメラ(Cedip社,Silver480M)を用い、加振機には、エミック社製513−Aの電磁式加振機を用いた。測定対象物は、基材として幅10mm、厚み5mm、長さ300〜400mmのアルミ材A6063を用い、曲げモーメントを一様に付加するために中央102mm間をボルトで固定し、治具を介して加振機に接続した。また、試験片の裏側にはひずみゲージを添付し、赤外線カメラで取得した温度振幅を応力へ変換した値を同じ周波数で測定したひずみゲージから取得したひずみから算出した応力で規格化することによって周波数特性を求めた。
本発明の基材とコーティング膜から構成され、一軸応力が付加される測定対象物のコーティングによる熱伝導の影響を補正する機能を備えた赤外線応力測定システムについて、補正プロセスが有効に機能するかを検討した。温度分布測定は、実施の形態1の図6に示した装置を使用した。試験対象には、基材としてABSのJIS規格に則ったダンベル型2号試験片を用いた。また、コーティング材として放射率が高い黒色つや消し塗料(アサヒペン,耐熱塗料)を用いて膜厚を3水準変化させて塗布を行った。これらの試験片を試験機に設置し、荷重振幅0.1kN,応力比R=0として荷重を負荷した。なお加振周波数は変数が7個よりも多い8個とし、減衰特性を表現できるように1,3,5,10,15,20,25,30Hzと変えて、すべての実験において、赤外線カメラのフレームレートは249Hzとした。また、コーティング膜厚さは1種類で測定した。実験より求めた温度振幅の周波数特性を図20(a)に、温度位相特性を図20(b)に示す。図20(a)から温度振幅は加振周波数が高くなるにしたがって減衰している状態が判断できたので、次の補正工程で補正を行う。次の補正工程では、コーティング膜厚さを1種類C5,加振周波数を8種類ωj *(i=1,2,・・・8)と変化させて測定した結果に対して式(66)の目的関数にて最小二乗法を用いたカーブフィッティングを行った。
本発明の実施の形態8における基材とコーティング膜から構成され、曲げモーメントが付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法に必要な熱弾性効果測定で求められる温度振幅および位相の周波数特性を取得する実験システムについて補正プロセスが有効に機能するかを検討した。温度分布測定は、赤外線カメラ(Cedip社,Silver480M)を用い、加振機には、エミック社製513−Aの電磁式加振機を用いた。測定対象物は、基材として幅15mm、厚み15mm、長さ300〜400mmのABSを用い、曲げモーメントを一様に付加するために中央102mm間をボルトで固定し、治具を介して加振機に接続した。また、試験片の裏側にはひずみゲージを添付し、赤外線カメラで取得した温度振幅を応力へ変換した値を同じ周波数で測定したひずみゲージから取得したひずみから算出した応力で規格化することによって周波数特性を求めた。
本発明の実施の形態10における赤外線応力測定の補正方法を備えたシステムを実際の道路、鉄道などの高架を構成する橋梁に適応した場合について説明する。
1b 試験片
1bb 測定対象物
1c 赤外線カメラ
1f ひずみゲージ
CD コントロールデバイス
PC パーソナルコンピュータ
FG ファンクションジェネレータ
x yzの2軸と直行する方向
y 荷重の負荷方向
z コーティング膜厚方向
5a 赤外線応力測定工程
5b 減衰状態判断工程
5c 補正工程
Claims (10)
- 基材とコーティング膜から構成される測定対象物を加振し、前記測定対象物を赤外線カメラで撮影して前記測定対象物の温度振幅を測定し、この測定結果から前記測定対象物の応力値を求める赤外線応力測定システムにおいて、
基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果に基づく1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解を、異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性に対して最小二乗法によりカーブフィッティングさせることによって前記コーティング膜表面の理論解の変数を同定し、コーティングによる熱伝導の影響を補正する、
赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。 - 前記基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果に基づく1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解と異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性は、単軸応力が作用している測定対象物であることを特徴とする、
請求項1記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。 - 前記基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果を考慮した1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解と異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性は、曲げモーメントが作用している測定対象物であることを特徴とする、
請求項1記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。 - 熱弾性効果を用いた赤外線応力測定法であって、前記1次元の熱伝導方程式の温度振幅の理論解を構成する変数は、前記基材と前記コーティング膜の物性値の比、前記基材と前記コーティング膜の厚さの比、前記基材に生じる温度振幅、および温度振幅の周波数と前記基材の熱拡散率および厚さで表されることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。 - 熱弾性効果を用いた赤外線応力測定法であって、前記1次元の熱伝導方程式の温度振幅の理論解を構成する変数は5個以上であることを特徴とする、
請求項4に記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。 - 熱弾性効果を用いた赤外線応力測定法であって、前記物性値はヤング率、ポアソン比、密度、定圧比熱、熱膨張係数、熱伝導率であることを特徴とする、
請求項4または請求項5に記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。 - 熱弾性効果を用いた赤外線応力測定法であって前記異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性を構成するデータは、少なくとも前記変数の個数以上かつ減衰曲線の形状を表現できる測定点数であることを特徴とする、
請求項1〜6のいずれかに記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。 - 熱弾性効果を用いた赤外線応力測定法であって、前記熱弾性効果を用いた赤外線応力測定は主に厚さ方向および面内方向の応力場であることを特徴とする、
請求項1〜7のいずれかに記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。 - 測定対象物を加振し、前記測定対象物を赤外線カメラで撮影し、熱弾性効果を用いて前記測定対象物に作用する応力値を計算する赤外線応力測定システムであって、
測定対象物を撮影する赤外線カメラと、
前記赤外線カメラの温度振幅画像を処理して前記測定対象物の応力値を求める情報処理装置とを有し、
前記情報処理装置は、
基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果に基づく1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解を、異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性に対して最小二乗法によりカーブフィッティングさせることによって前記コーティング膜の表面の理論解の変数を同定し、前記コーティング膜による熱伝導の影響を補正して前記測定対象物に作用する応力値を計算する、
赤外線応力測定システム。 - 引張あるいは圧縮応力を測定対象物に繰返し加える加振機を設けた
請求項9記載の赤外線応力測定システム。
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