JP6223294B2 - 赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法およびその方法を用いた赤外線応力測定システム - Google Patents

赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法およびその方法を用いた赤外線応力測定システム Download PDF

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本発明は、引張あるいは圧縮応力を測定対象物に繰返し加え、この測定対象物を赤外線カメラによって撮像して前記測定対象物の温度振幅を測定し、この測定結果から前記測定対象物の応力値を求める赤外線応力測定システムに関するものである。
従来、赤外線応力測定の補正方法としては、例えば、非特許文献1〜非特許文献3に記載されているようなものが報告されている。
非特許文献1には、コーティング膜が塗布された測定対象物の応力補正方法が記載されている。前記コーティング膜の膜厚が前記測定対象物の基材に比べて薄いため、基材の温度とコーティング膜の温度はそれぞれ一様と仮定し、その条件の下で熱伝導方程式を解くことで加振周波数によって減衰する応力値の補正を行っている。ただし、熱弾性効果による発熱は基材のみで発生し、コーティング膜の熱弾性効果による発熱は無いと仮定している。加振周波数増加により、測定対象物の測定応力が減衰する要因は、基材からコーティング膜への移動熱量が周波数の増加に伴い減少することに起因すると述べられている。しかしながら、補正のための理論解の導出過程で、膜厚が0と極限をとる場合と、膜厚が有限値とする場合があり、膜厚の近似的扱いに制限があるため条件によって成り立たない。
非特許文献2では、非特許文献1と同様に、コーティング膜の熱弾性効果による発熱は無いと仮定されている。更に、熱の伝導をサーマルウエブと捉え、コーティング膜内で前記測定対象物の基材とコーティング膜の界面、コーティング膜と空気との界面で繰り返される反射によって減衰する熱を足し合わせることで、加振周波数の増加による応力値が減衰する状態を表わすことができると述べている。しかしながら、低熱伝導基材の場合、熱伝導の影響を無視できず基材で生じた熱がコーティング膜へ伝わるが、それによって基材の熱が減ることはないためこの近似はコーティング膜への移動熱量が多い場合、基材とコーティング膜の物性値が近い場合、Rs(反射係数)=−1付近以外は、コーティング膜表面の温度が減衰せず成り立たない。
非特許文献3は、非特許文献2の改良したもので、非特許文献2の理論解にRs(反射係数)=−1を代入することによって補正できることを述べている。しかしながら、低熱伝導基材の場合、基材とコーティング膜の物性値が近い場合は成り立たない。
M.H.Belgen,infrd-red radi/metric stress instrumentation application range study.,NASA Report CR-1067(1967) J.Mckelvie,Consideration of the surface temperature response to cyclic thermoelastic heat generation,SPIE Vol.731 stress Analysis by Thermoelastic Techniques (1987)44-53. A.K.Mackenzie,Effects Of Surface Coatings On Infra-Red Measurements of Thermoelastic Responses,SPIE Vol.1084 Stress and Vibration.Recent Developments in Indudtrial Measurement and Analysys (1989)59-71.
赤外線サーモグラフィを用いた熱弾性効果に基づいて測定される赤外線応力測定法の応力値の補正方法については、多くの報告がなされている。しかしながら、前提条件としてコーティング膜の熱弾性効果による発熱現象や基材の厚み、熱伝導状態などが考慮されていないため、低熱伝導基材や基材とコーティング膜の物性値が近い条件下では、実績で生じる加振周波数にともなうコーティング膜表面の温度減衰を理論計算で忠実に表現することが不可能であった。その結果、測定して得られた応力値の減衰を完全に補正することができなかった。
本発明は、上記課題を解決することが可能な赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法およびその方法を用いた赤外線応力測定システムを提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するため、本発明の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法は、基材とコーティング膜から構成される測定対象物を加振し、前記測定対象物を赤外線カメラで撮影して前記測定対象物の温度振幅を測定し、この測定結果から前記測定対象物の応力値を求める赤外線応力測定システムにおいて、基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果に基づく1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解を、異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性に対して最小二乗法によりカーブフィッティングさせることによって前記コーティング膜表面の理論解の変数を同定し、コーティングによる熱伝導の影響を補正する、ことを特徴とする。
また、本発明の赤外線応力測定システムは、測定対象物を加振し、前記測定対象物を赤外線カメラで撮影し、熱弾性効果を用いて前記測定対象物に作用する応力値を計算する赤外線応力測定システムであって、測定対象物を撮影する赤外線カメラと、前記赤外線カメラの温度振幅画像を処理して前記測定対象物の応力値を求める情報処理装置とを有し、前記情報処理装置は、基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果に基づく1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解を、異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性に対して最小二乗法によりカーブフィッティングさせることによって前記コーティング膜の表面の理論解の変数を同定し、前記コーティング膜による熱伝導の影響を補正して前記測定対象物に作用する応力値を計算する、ことを特徴とする。
本発明によると、基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果に基づく1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解を、異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性に対して最小二乗法によりカーブフィッティングさせることによって前記コーティング膜表面の理論解の変数を同定し、コーティングによる熱伝導の影響を補正するので、正しい応力値を求めることができる。特に、基材の熱伝導率が低い材料もしくは、基材とコーティング膜の物性値が近い材料の測定対象物の応力値を求めるのに効果が大きい。
また、1次元の熱伝導方程式の温度振幅の理論解を構成する変数は、基材とコーティング膜の物性値および厚さの比で表すことができるため、基材もしくはコーティング膜のどちらかの変数を構成する物性値さえわかれば、もう一方の物性値を求めることもできる。
更に、加振周波数を変化させて得られる熱弾性効果に基づく温度振幅成分および位相成分の周波数特性を構成するデータ点数は減衰曲線の形状を表現できる測定点数を用いることで正確な補正を可能にする。
更に、放射率を均一に向上させるために必要なコーティング膜による熱伝導の影響を補正する機能を備えることによって、コーティング膜による減衰を補正でき、基材の熱伝導特性に関係なく正確な赤外線応力測定を可能にする。
なお、本発明のコーティング膜による減衰を補正方法は、補正のために理論解を解く過程で未知の変数を物性値および厚さの比で表すことから、基材の物性値、厚みがわかれば、コーティング膜の物性値、厚みを計算から求めることも可能である。
本発明の厚さ方向の熱伝導のみを考慮した1次元の単軸引張りの理論解析モデルを示す図 測定対象物における(a)応力振幅と(b)ひずみ振幅の分布を示す図 (a)測定対象物に作用した1次元の曲げモーメントと(b)そのときの厚さ方向の熱伝導のみを考慮した理論解析モデル図 測定対象物における(a)応力振幅および(b)ひずみ振幅の分布を示す図 本発明の実施の形態1における赤外線応力測定システムの測定および補正プロセスを示すフローチャート 本発明の実施の形態1における温度振幅の周波数特性を取得する実験システムを示す図 本発明の実施の形態1における(a)実験より求めた温度振幅の周波数特性を示す図と(b)実験より求めた温度位相の周波数特性を示す図 本発明の実施の形態1における(a)温度振幅の周波数特性を理論解と実験値について示した図と(b)温度位相の周波数特性を理論解と実験値について示した図 本発明の実施の形態2における(a)温度振幅の周波数特性を理論解と実験値について示した図と(b)温度位相の周波数特性を理論解と実験値について示した図 本発明の実施の形態3における(a)実験より求めた温度振幅の周波数特性を示す図と(b)実験より求めた温度位相の周波数特性を示す図 本発明の実施の形態3における(a)温度振幅の周波数特性を理論解と実験値について示した図と(b)温度位相の周波数特性を理論解と実験値について示した図 本発明の実施の形態4における(a)温度振幅の周波数特性を理論解と実験値について示した図と(b)温度位相の周波数特性を理論解と実験値について示した図 本発明の実施の形態5における温度振幅の周波数特性を取得する実験システムを示す図 本発明の実施の形態5における(a)実験より求めた温度振幅の周波数特性を示す図と(b)実験より求めた温度位相の周波数特性を示す図 本発明の実施の形態5における(a)温度振幅の周波数特性を理論解と実験値について示した図と(b)温度位相の周波数特性を理論解と実験値について示した図 本発明の実施の形態6における(a)実験より求めた温度振幅の周波数特性を示す図と(b)実験より求めた温度位相の周波数特性を示す図 本発明の実施の形態6における(a)温度振幅の周波数特性を理論解と実験値について示した図と(b)温度位相の周波数特性を理論解と実験値について示した図 本発明の実施の形態7における(a)実験より求めた温度振幅の周波数特性を示す図と(b)実験より求めた温度位相の周波数特性を示す図 本発明の実施の形態7における(a)温度振幅の周波数特性を理論解と実験値について示した図と(b)温度位相の周波数特性を理論解と実験値について示した図 本発明の実施の形態8における(a)実験より求めた温度振幅の周波数特性を示す図と(b)実験より求めた温度位相の周波数特性を示す図 本発明の実施の形態8における(a)温度振幅の周波数特性を理論解と実験値について示した図と(b)温度位相の周波数特性を理論解と実験値について示した図 本発明の実施の形態9における(a)実験より求めた温度振幅の周波数特性を示す図と(b)実験より求めた温度位相の周波数特性を示す図 本発明の実施の形態9における(a)温度振幅の周波数特性を理論解と実験値について示した図と(b)温度位相の周波数特性を理論解と実験値について示した図 本発明の実施の形態10における赤外線応力測定の補正方法を適応した橋梁を示す切り欠き斜視図 本発明の実施の形態10における(a)実験より求めた温度振幅の周波数特性を示す図と(b)実験より求めた温度位相の周波数特性を示す図 本発明の実施の形態10における(a)温度振幅の周波数特性を理論解と実験値について示した図と(b)温度位相の周波数特性を理論解と実験値について示した図
本発明の赤外線応力測定システムは、基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果を考慮した1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解を、異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性に対して最小二乗法によりカーブフィッティングさせることによって前記コーティング膜表面の理論解の変数を同定し、コーティング膜による熱伝導の影響を補正することを特徴とする。
1次元の熱伝導方程式の温度振幅の理論解を構成する変数は、基材とコーティング膜の物性値および厚さの比で表され、変数を構成する物性値はヤング率、ポアソン比、密度、定圧比熱、熱膨張係数、熱伝導率、厚さである。またその変数の数は1次元の熱伝導方程式を用いていることから、7個以上必要であることを特徴とする。
以下に補正に用いられる理論解析について、詳細を説明する。熱弾性応力測定に用いられる熱弾性効果は式(1)で表される。
ここで、Tは温度,sは主応力和,tは時刻,Kは熱弾性定数,Tは基準温度,aは熱拡散率を示す。また、∇2 はラプラシアンである。式(1)の右辺第一項は、材料内部における熱伝導を表す項であり、右辺第二項は材料内部の応力によって生じる発熱を表す項である。
ここで、aは式(2)で表される熱拡散率,Kは式(3)で表される熱弾性定数である。
ここで熱伝導率をk,線膨張係数をα,密度をρ,定圧比熱をCpと表す。
また、系が断熱である(a=0)と仮定でき、かつ温度変化が微小である場合、式(1)は次式で表される。
微小時間について積分したときの主応力和Δsを式で表すと、次式が得られる。
理論解析には厚さ方向の熱伝導のみを考慮した図1のような1次元の単軸引張りのモデルを用いた。基材とコーティング膜厚方向にz軸,荷重の負荷方向にy軸,これら2軸と直交するようにx軸をとり、熱伝導はz軸方向にのみ生じるものと仮定する。
ここで、厚さをL,熱伝導率をk,線膨張係数をα,密度をρ,定圧比熱をC,縦弾性係数をE,Poisson比をv,熱拡散率をa,熱弾性定数をKと定義する。これらの物理量において添字cはコーティング膜を表し、添字mは基材を表す。熱拡散率a,熱弾性定数Kは次式で表される。
また、コーティング膜表面の放射率をε,基材に作用する主応力和の振幅をσ,平均温度をT0とする。さらに簡略化のため、次式で表される定数c〜cを定義する。
〜cは基材とコーティング膜の材料物性の比を表しており、cは厚さの比を表している。cはコーティングによる影響がない場合に、赤外線カメラで測定される温度振幅であり、cに含まれるkTσは断熱状態で熱弾性効果によって基材に生じる温度変動の振幅を表す。
熱弾性応力測定では、断熱と仮定できる場合、式(5)で表される熱弾性効果に基づいて応力が算出される。しかし非断熱である場合、熱伝導方程式には拡散項が加わるため、基礎式は式(1)となる。今、基材の応力は一様であるため、z軸方向の1次元熱伝導のみを考えると、式(1)から次式が得られる。
ここで、Kは基材の熱弾性定数、Kはコーティング膜の熱弾性定数、Tは絶対温度,sは主応力和,tは時刻を表す。式(14)の第一式は基材内での熱伝導方程式を表し、第二式はコーティング膜内での熱伝導方程式を表す。式(14)では、コーティング膜内の熱伝導および熱弾性効果と、コーティングによって生じる基材内の熱伝導を考慮している。
次に、式(14)を時刻tについてフーリエ変換を行う。
式(14)の両辺を時刻tについてフーリエ変換し、式(15)を用いれば次式が得られる。
次にx軸,y軸,z軸方向における基材内の垂直ひずみの振幅をそれぞれεmx,εmy,εmzとし、コーティング膜内のひずみ振幅をそれぞれεcx,εcy,εczとする。基材内の応力について、σが作用するのみであるため単軸応力状態であるといえる。しかし、ひずみはPoisson効果によりx軸方向,z軸方向の成分が生じるため多軸状態となる。それゆえ一般化Hookeの法則よりεmx,εmy,εmzは次式で表される。
図2で示すように、基材とコーティング膜でひずみが等しいため、式(18)と式(19)よりεcxとεcyは次式で表される。
コーティング膜の膜厚は幅や長さの寸法に比べ非常に小さいため、コーティング膜内ではxy平面の平面応力状態であると仮定することができる。したがって、コーティング膜内のz軸方向の垂直応力σczを零と考えることができ、一般化Hookeの法則より次式の関係が得られる。
式(21),式(22),式(23)よりεczは次式で表される。
一般化Hookeの法則より、x軸,y軸方向におけるコーティング膜の垂直応力の振幅σcx,σcyは次式で表される。
式(21)〜式(25)より、コーティング膜内の主応力和振幅σは次式で表される。
式(27)よりフーリエ変換された熱伝導方程式(16)は次式で表される。
式(29)〜式(31)によって式(28)は次式で表される。
式(32)の一般解を求めれば、それは次式で表される。
ここでC,C,C,Cは境界条件によって定まる定数である。境界条件として、基材−コーティング膜の界面で温度および熱流束が連続であることと、基材とコーティング膜はともに外表面で断熱である、すなわち熱流束が零であることを与える。これらは次式で表される。
式(35)〜式(39)を与えれば、式(33)と式(34)の定数C,C,C,Cが決定される。したがって、式(33)と式(34)によって測定対象物に一様な単軸の正弦波応力が作用する場合について、コーティング膜内の熱伝導および熱弾性効果と、コーティングによって生じる基材内の熱伝導を考慮した厚さ方向温度分布の理論解が導出された。そして、コーティング膜表面における温度の理論解は、式(34)にz=L+Lを代入することで得られる。
ここで、熱放射に基づく温度測定の特徴について考える。赤外線カメラでは測定対象物から放射される赤外線を受光し、その強度から測定対象物の温度を算出している。その算出の際には、十分黒体と考えられる物体における実験的な温度と放射強度の関係が用いられる。しかし、コーティングを施した場合でも実際の測定対象物は黒体と異なるため、実対象物における放射赤外線の強度から算出された温度は実際の温度より低くなる。そのため、測定対象物の真の温度Ttrueと赤外線カメラで測定される測定対象物の温度Tinfraredの関係は、コーティング膜表面の赤外線放射率εによって次式で表される。
infrared=εTtrue (40)
ここで放射率εは必ず0≦ε≦1を満たす。また、黒体ではない物体では輻射強度が指向性を有することや、内部から放射された赤外線が物体を透過して赤外線カメラで検出されることも知られている。しかし、検討ではコーティングによって放射率を十分に高めれば、それらについては無視できるものとした。すなわち、測定対象物のコーティング膜から放射される赤外線は指向性を有しておらず、かつその表面から放射される赤外線のみが赤外線カメラで検出されると仮定した。
したがって、式(34)にz=L+Lを代入し、
ここで赤外線カメラによって測定される温度の理論解を構成する変数は、c,c,c,c,c,c,ωの7つである。一般に、コーティング膜の物性値や厚さを正確に測定することは困難であるため、c,c,c,c,c,cは未知量である。ωは温度変動の周波数と基材の熱拡散率および厚さから成る変数である。変動する温度の周波数は変動する温度振幅の周波数、すなわち熱弾性応力測定における外部からの加振周波数と一致する。加えて、基材の熱拡散率および厚さを測定することは比較的容易であるので、ωは既知の値である。同定された変数のうち、cはコーティングによる影響がない場合に、赤外線カメラで測定される温度振幅であるので、cの同定によりコーティングによる熱伝導の影響を補正することが可能となる。
次に、一様な正弦波状の曲げモーメントが作用する場合について厚さ方向における1次元熱伝導の理論解析を行い、コーティング膜表面温度の理論解を導出、の補正方法について説明する。基材の片面にコーティングが施されている場合、図3のように基材内の中立面とz軸の交点が原点となるよう座標軸を設定する。その場合、測定対象物には図3のx軸方向のみの単軸曲げモーメントが加わり、その大きさは正弦波状に変動する。したがって、基材におけるy軸方向の垂直応力振幅はz軸方向に関して直線的な分布となる。また、基材の変形に応じてコーティング膜も変形すると考えて、基材とコーティング膜の界面でひずみは常に等しく、かつz軸方向に一様であると仮定する。よって基材とコーティング膜における応力振幅およびひずみ振幅の分布は図4で表される。
軸方向の1次元熱伝導のみを考慮すると、基礎式は次式で表される。
式(42)の両辺を時刻tについてフーリエ変換すれば次式が得られる。
基材内ではx軸方向の単軸曲げモーメントが作用するため、y軸方向の垂直応力σm,yyの大きさはz軸方向に直線的に分布する。またx軸方向の垂直応力σm,xxとz軸方向の垂直応力σm,zzは零である。したがって、基材とコーティング膜の界面(z=L/2)におけるσm,yyの振幅をσとおくと、基材における主応力和の振幅は次式で表される。
次に、コーティング膜内のひずみの仮定は一軸応力の場合と同様であるため、コーティング膜内の応力も同様に考えることができる。式(26)よりコーティング膜における主応力和は次式で表される。
式(43),式(44),式(45)より、次式が得られる。
式(47)の一般解は次式で表される。
ここでC,C,C,Cは境界条件によって定まる定数である。境界条件として、基材とコーティング膜の界面で温度と熱流束が連続であることと、基材とコーティング膜はともに外表面で断熱であること、すなわち外表面で熱流束が零であることを与える。これらは次式で表される。
式(49)〜式(53)を用いることで、式(48)の定数C,C,C,Cを決定することができる。したがって式(53)によって、一様な正弦波状の曲げモーメントが作用する場合について、コーティング膜内の熱伝導および熱弾性効果と、コーティングによって生じる基材内の熱伝導を考慮した厚さ方向温度分布の理論解が導出された。
コーティング膜表面(z=(L/2)+L)における温度の理論解は、式(48)の第2式にz=(Lm/2)+LCを代入することで得られ、それは次式で表される。
式(54)のG〜Gは式(55)〜式(57)で表される関数である。さらに、熱放射に関する検討を元に放射率を考慮すると、赤外線カメラで測定されるコーティング膜表面温度の理論解は次式で表される。
ここで赤外線カメラによって測定される温度の理論解を構成する変数は、c,c,c,c,c,c,ωの7つである。一般に、コーティング膜の物性値や厚さを正確に測定することは困難であるため、c,c,c,c,c,cは未知量である。ωは温度変動の周波数と基材の熱拡散率および厚さから成る変数である。変動する温度の周波数は変動する温度振幅の周波数、すなわち熱弾性応力測定における外部からの加振周波数と一致する。加えて、基材の熱拡散率および厚さを測定することは比較的容易であるので、ωは既知の値である。また、cとcは、cとして用いられるため、実質の変数はc,c,c,c,cの5個となる。同定された変数のうち、cはコーティングによる影響がない場合に、赤外線カメラで測定される温度振幅であるので、cの同定によりコーティングによる熱伝導の影響を補正することが可能となる。
前記従来の課題を解決するため、赤外線応力測定の補正方法および赤外線応力測定システムは、前記異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度振幅成分の周波数特性を構成する測定データ数は、少なくとも前記変数の個数以上であり、減衰特性を表現可能な測定データ点数、すなわち温度振幅成分の周波数特性のみを用いた補正の場合には、少なくとも5個以上のデータが必要であり、温度振幅成分と位相成分の周波数特性両方を用いた場合には、温度振幅成分と位相成分のデータが各3個以上必要であることを特徴とする。
前記従来の課題を解決するため、赤外線応力測定の補正方法および赤外線応力測定システムは、1次の熱伝導方程式をベースとして解を求めるため、適応範囲は主に厚さ方向および面内方向でおおよそ均一な応力場であることを特徴とする。
前記従来の課題を解決するため、赤外線応力測定システムは、基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果を考慮した1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解を、異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性に対して最小二乗法によりカーブフィッティングさせることによって前記コーティング膜表面の理論解の変数を同定し、コーティングによる熱伝導の影響を補正する機能を備えたことを特徴とする。
図5は、前記赤外線応力測定システムの測定および補正プロセスを示すフローチャートで、異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果による温度振幅成分および位相成分の周波数特性を取得する応力測定の工程で取得した結果を用いて最小二乗法によるフィッティングから変数を同定し、補正した温度振幅もしくは主応力和を求める工程からなることを特徴とする。
具体的には、この測定プロセスは、異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果による温度振幅成分および位相成分の周波数特性を取得する赤外線応力測定工程5aと、減衰状態を判断する減衰状態判断工程5bと、補正工程5cを有している。赤外線応力測定工程5aは、測定対象物に加える加振の加振周波数のセットと加振スタートを指示するステップS1と、測定対象物の温度画像を撮影している赤外線カメラから画像を取り込むステップS2と、ステップS2で取り込んだ画像信号を信号処理するステップS3と、ステップS3の結果に基づいて周波数特性をプロットするステップS4と、ステップS4におけるプロットの数nが規定数Nになったかを判定してステップS1〜S4のステップの繰り返しを制御するステップS5を有している。ステップS5においてプロット数が規定数Nになったことを検出すると、減衰状態判断工程5bがステップS6で減衰状態を判断する。補正工程5cは、減衰状態判断工程5bの結果に基づいてステップS7でフィッティングによる変数の同定を実行し、ステップS8では、温度変化量cを抽出する。さらに、ステップS9では、残渣rが既定値よりも小さくなったことを検出するまでステップS1〜S8を繰り返すように制御している。
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図6は、本発明の実施の形態1における赤外線応力測定システムを示す。
測定対象物としての試験片1bは、基材とこの基材の表面に形成されたコーティング膜から構成されている。試験片1bを加振機1aにセットする。コントロールデバイスCDでコントロールされた加振機1aは、引張あるいは圧縮応力を試験片1bに繰返し加える。この試験片1bを、赤外線カメラ1cによって撮像する。赤外線カメラ1cによって取得した温度画像は、情報処理装置としてのパーソナルコンピュータPCで処理して応力値を計算する。FGは加振波形を出力するファンクションジェネレータである。ファンクションジェネレータFGの出力信号は、分岐して赤外線カメラ1cとコントロールデバイスCDに供給されている。このようにファンクションジェネレータFGからの信号が入力されているコントロールデバイスCDによって加振機1aの加振周波数を制御することで、赤外線カメラ1cの撮影画像と試験片1bに加えられる加振周波数を同期させている。
温度分布測定の赤外線カメラ1cには、赤外線カメラ(Cedip社,Silver480M)を用い、加振機1aには、油圧サーボ疲労試験機(島津製作所,サーボパルサ,最大試験能力:10kN)を使用した。試験片1bには、基材としてABSのJIS規格に則ったダンベル型2号試験片を用いた。また、コーティング材として放射率が高い黒色つや消し塗料(アサヒペン,耐熱塗料)を用いて膜厚を3水準変化させて塗布を行った。この試験片に荷重振幅0.1kN,応力比R=0として荷重を負荷した。なお加振周波数は1,3,5,10,15,20,25,30Hzと変数の数以上で温度振幅の減衰形状がわかる8種類とした。また、すべての実験において,赤外線カメラのフレームレートは249Hzとした。また、コーティング膜厚を3種類(薄いほうからNo.1〜No.3)変化させて測定した。実験より求めた温度振幅の周波数特性を図7(a)に、位相特性を図7(b)に示す。図7(a)から温度振幅は加振周波数が高くなるにしたがって減衰している。更に、コーティング膜厚が増加するとその減衰はより顕著になる。また、図7(b)の位相の周波数特性から、熱伝導の影響により、加振周波数によって位相はπから変化している。コーティング膜厚を3種類c5i(i=1,2,3),加振周波数を8種類ω (i=1,2,・・・8)と変化させて測定した結果に対して次式の目的関数にて最小二乗法を用いたカーブフィッティングを行った。
この式でLは理論解と実験値の残差の二乗について、すべての周波数、コーティング膜厚に関する和をとったものである。これによって得られた理論解と実験値について、温度振幅と位相をそれぞれ図8(a),図8(b)に示す。図8(a),図8(b)で黒塗りのマークが実験で測定したデータで白塗りのマークがフィッティングによって求めた値である。温度振幅と位相の周波数特性に対して、非常によくフィッティングできていることがわかる。また、カーブフィッティングにより得られた変数c,c,c,cと残渣二乗和rを表1に示す。
表1の残差二乗和rの結果について、温度振幅の周波数特性だけを使用した場合は4.47×10-5以下であり、温度振幅の周波数特性だけでも残差二乗和rは非常に小さく理論値と実験値は十分に一致したと言える。さらに温度振幅と位相の周波数特性の両方を使用した場合は、残差二乗和rの値が7.23×10-6以下と一桁小さくなり、温度振幅の周波数特性だけの場合と比べてフィッティング精度は高くなる。この結果から得られたcによって式(41)を用いてコーティングによる熱伝導の補正を行うことができることは明らかである。
(実施の形態2)
本発明の基材とコーティング膜から構成され、単軸引張り応力が付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法において、コーティング膜厚が1水準であっても補正が可能であることを説明する。実製品では、コーティング膜厚を種々変化させて熱弾性応力測定を行うことは困難である場合が多い。そこで、次式のように目的関数をおいて、コーティング膜厚毎に実験値に対して最小二乗法によるカーブフィッティングを行い、コーティング膜厚が1種類であった場合のカーブフィッティングを行った。カーブフィッティングを行う実験データである温度振幅および位相の周波数特性は実施の形態1で用いた図7(a)と図7(b)のデータを使用した。
この式でLは理論解と実験値の残差の二乗について、コーティング膜厚毎に得られる周波数について和をとったものである。これによって得られた理論解と実験値について、温度振幅と位相をそれぞれ図9(a),図9(b)に示す。図9(a),図9(b)で黒塗りのマークが実験で測定したデータで白塗りのマークがフィッティングによって求めた値である。温度振幅と位相の周波数特性に対して、非常によくフィッティングできていることがわかる。また、カーブフィッティングにより得られた変数c,c,c,cと残渣二乗和rを表2に示す。( )内の数値は温度振幅および位相の周波数特性の両方を用いて求めた値である。
表2の残差二乗和rの結果について、温度振幅の周波数特性だけを使用した場合は4.01×10-5以下であり、温度振幅の周波数特性だけでも残差二乗和rは非常に小さく理論値と実験値は十分に一致したと言える。さらに温度振幅と位相の周波数特性の両方を使用した場合は、残差二乗和rの値が5.21×10-6以下と一桁小さくなり、温度振幅の周波数特性だけの場合と比べてフィッティング精度は高くなる。この結果から得られたcによって式(41)を用いて熱伝導の補正を行うことができることは明らかである。
(実施の形態3)
本発明の基材とコーティング膜から構成され、単軸引張り応力が付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法において、基材としてSUS304を用いた場合にABSと同様な補正が可能かを検討した。温度分布測定は、実施の形態1の図6に示した装置を使用した。また、コーティング材として放射率が高い黒色つや消し塗料(アサヒペン,耐熱塗料)を用いて膜厚を3水準変化させて塗布を行った。これらの試験片を試験機に設置し、荷重振幅3.0kN,応力比R=0として荷重を負荷した。なお加振周波数は1,3,5,10,15,20,25,30Hzと変数の数以上で温度振幅の減衰形状がわかる8種類とした。また、すべての実験において、赤外線カメラのフレームレートは249Hzとし、コーティング膜厚を3種類(薄いほうからNo.1〜No.3)変化させて測定した。実験より求めた温度振幅の周波数特性を図10(a)に、温度位相特性を図10(b)に示す。図10(a)から温度振幅は加振周波数が高くなるにしたがって減衰している。更に、コーティング膜厚が増加するとその減衰はより顕著になる。また、図10(b)の温度位相の周波数特性から、熱伝導の影響により、加振周波数によって位相はπから変化している。コーティング膜厚を3種類c5i(i=1,2,3),加振周波数を8種類ω (i=1,2,・・・8)と変化させて測定した結果に対して次式の目的関数にて最小二乗法を用いたカーブフィッティングを行った。
この式でLは理論解と実験値の残差の二乗について、すべての周波数、コーティング膜厚に関する和をとったものである。これによって得られた理論解と実験値について、温度振幅と位相をそれぞれ図11(a),図11(b)に示す。図11(a),図11(b)で黒塗りのマークが実験で測定したデータで白塗りのマークがフィッティングによって求めた値である。温度振幅と位相の周波数特性に対して、非常によくフィッティングできていることがわかる。また、カーブフィッティングにより得られた変数CC,C,C,Cと残渣二乗和rを表3に示す。
表3の残差二乗和rの結果について、温度振幅の周波数特性だけを使用した場合は3.51×10-5以下であり、温度振幅の周波数特性だけでも残差二乗和rは非常に小さく理論値と実験値は十分に一致したと言える。さらに温度振幅と位相の周波数特性の両方を使用した場合は、残差二乗和rの値が6.71×10-6以下と一桁小さくなり、温度振幅の周波数特性だけの場合と比べてフィッティング精度は高くなる。この結果から得られたCによって式(41)を用いてコーティングによる熱伝導の補正を行うことができることは明らかである。
(実施の形態4)
本発明の基材とコーティング膜から構成され、単軸引張り応力が付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法において、コーティング膜厚が1水準であっても補正が可能であることを説明する。実製品では、コーティング膜厚を種々変化させて熱弾性応力測定を行うことは困難である場合が多い。そこで、次式のように目的関数をおいて、コーティング厚さ膜厚毎に実験値に対して最小二乗法によるカーブフィッティングを行い、コーティング膜厚が1種類であった場合のカーブフィッティングを行った。カーブフィッティングを行う実験データである温度振幅の周波数特性と温度位相特性は実施の形態3で用いた図10(a)と図10(b)を使用した。
この式でLは理論解と実験値の残差の二乗について、すべての周波数、コーティング膜厚に関する和をとったものである。これによって得られた理論解と実験値について、温度振幅と位相をそれぞれ図12(a),図12(b)に示す。図12(a),図12(b)で黒塗りのマークが実験で測定したデータで白塗りのマークがフィッティングによって求めた値である。温度振幅と位相の周波数特性に対して、非常によくフィッティングできていることがわかる。また、カーブフィッティングにより得られた変数CC,C,C,Cと残渣二乗和rを表4に示す。( )内の数値は温度振幅および位相の周波数特性の両方を用いて求めた値である。
表4の残差二乗和rの結果について、温度振幅の周波数特性だけを使用した場合は1.88×10-5以下であり、温度振幅の周波数特性だけでも残差二乗和rは非常に小さく理論値と実験値は十分に一致したと言える。さらに温度振幅と位相の周波数特性の両方を使用した場合は、残差二乗和rの値が5.14×10-6以下と一桁小さくなり、温度振幅の周波数特性だけの場合と比べてフィッティング精度は高くなる。この結果から得られたCによって式(41)を用いてコーティングによる熱伝導の補正を行うことができることは明らかである。
(実施の形態5)
図13は、本発明の実施の形態3における基材とコーティング膜から構成され、曲げモーメントが付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法に必要な熱弾性効果測定で求められる温度振幅の周波数特性を取得する実験システムを示す。
温度分布測定は、赤外線カメラ(Cedip社,Silver480M)1cを用い、加振機1aには、エミック社製513−Aの電磁式加振機を用いた。測定対象物1bbは、基材として幅15mm、厚み15mm、長さ300〜400mmのABSを用い、曲げモーメントを一様に付加するために中央102mm間をボルトで固定し、治具を介して加振機1aに接続した。また、測定対象物1bbの裏側にはひずみゲージ1fを添付し、赤外線カメラ1cで取得した温度振幅を応力へ変換した値を同じ周波数で測定したひずみゲージ1fから取得したひずみから算出した応力で規格化することによって周波数特性を求めた。
コーティング材として放射率が高い黒色つや消し塗料(アサヒペン,耐熱塗料)を用いて膜厚を3水準変化させて塗布を行った。これらの試験片を試験機に設置し、加振周波数を1〜100Hzとし、周波数を変化させて赤外線カメラおよびひずみゲージを用いて測定を行った。なお、その時に取得するデータ数は、未知の変数の数以上で温度振幅および位相の周波数特性の形状がわかる数7以上とした。また、すべての実験において、赤外線カメラ1cのフレームレートは249Hzであった。FGは加振波形を出力するファンクションジェネレータ、PAは加振波形で加振機1aをドライブする第1増幅器、SAはひずみゲージ1fの出力信号を処理する第2増幅器、PCは情報処理装置としてのパーソナルコンピュータで、赤外線カメラ1cの映像信号をひずみゲージ1fの出力信号に基づいて処理する。もしくは、パーソナルコンピュータPCは、赤外線カメラ1cの映像信号をひずみゲージ1fの出力信号とファンクションジェネレータFGからの制御信号に基づいて処理する。
また、コーティング膜厚を3種類(薄いほうからNo.1〜No.3)変化させて測定した。実験より求めた温度振幅の周波数特性を図14(a)に、位相特性を図14(b)に示す。図14(a)から温度振幅は加振周波数が高くなるにしたがって減衰している。更に、コーティング膜厚が増加するとその減衰はより顕著になる。また、図14(b)の位相の周波数特性から、熱伝導の影響により、加振周波数によって位相はπから変化している。コーティング膜厚を3種類E(i=1,2,3),加振周波数を16種類ω (i=1,2,・・・16)と変化させて測定した結果に対して次式の目的関数にて最小二乗法を用いたカーブフィッティングを行った。
この式でLは理論解と実験値の残差の二乗について、すべての周波数,コーティング膜厚に関する和をとったものである。これによって得られた理論解と実験値について、温度振幅と位相をそれぞれ図15(a),図15(b)に示す。図15(a),図15(b)で黒塗りのマークが実験で測定したデータで白塗りのマークがフィッティングによって求めた値である。温度振幅と位相の周波数特性に対して、非常によくフィッティングできていることがわかる。また、カーブフィッティングにより得られた変数CC,C,C,Cと残渣二乗和rを表5に示す。( )内の数値は温度振幅および位相の周波数特性の両方を用いて求めた値である。
表5の残差二乗和rの結果について、温度振幅の周波数特性だけを使用した場合は1.25×10-4以下であり、温度振幅の周波数特性だけでも残差二乗和rは非常に小さく理論値と実験値は十分に一致したと言える。さらに温度振幅と位相の周波数特性の両方を使用した場合は、残差二乗和rの値が5.52×10-5以下と一桁小さくなり、温度振幅の周波数特性だけの場合と比べてフィッティング精度は高くなる。この結果から得られたCによって式(58)を用いてコーティングによる熱伝導の補正を行うことができることは明らかである。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態3における基材とコーティング膜から構成され、曲げモーメントが付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法において、実施の形態5で検討したABSと同様にステンレス材SUS304においても補正可能であることを検討した。温度振幅の分布測定は、実施の形態5で示したように、赤外線カメラ(Cedip社,Silver480M)を用い、加振機には、エミック社製513−Aの電磁式加振機を用いた。測定対象物は、基材として幅10mm、厚み3mm、長さ300〜400mmのステンレス材SUS304を用い、曲げモーメントを一様に付加するために中央102mm間をボルトで固定し、治具を介して加振機に接続した。また、試験片の裏側にはひずみゲージを添付し、赤外線カメラで取得した温度振幅を応力へ変換した値を同じ周波数で測定したひずみゲージから取得したひずみから算出した応力で規格化することによって周波数特性を求めた。
コーティング材として放射率が高い黒色つや消し塗料(アサヒペン,耐熱塗料)を用いて膜厚を3水準変化させて塗布を行った。これらの試験片を試験機に設置し、加振周波数を1〜100Hzとし、周波数を変化させて赤外線カメラおよびひずみゲージを用いて測定を行った。なお、その時取得するデータ数は、未知の変数の数以上で温度振幅および位相の周波数特性の形状がわかる数7以上とした。また、すべての実験において、赤外線カメラのフレームレートは249Hzであった。
また、コーティング膜厚を3種類(薄いほうからNo.1〜No.3)変化させて測定した。実験より求めた温度振幅の周波数特性を図16(a)に、位相特性を図16(b)に示す。図16(a)から温度振幅は加振周波数が高くなるにしたがって減衰している。更に、コーティング膜厚が増加するとその減衰はより顕著になる。また、図16(b)の位相の周波数特性から、熱伝導の影響により、加振周波数によって位相はπから変化している。コーティング膜厚さを3種類E(i=1,2,3),加振周波数を16種類ω (i=1,2,・・・16)と変化させて測定した結果に対して次式の目的関数にて最小二乗法を用いたカーブフィッティングを行った。
この式でLは理論解と実験値の残差の二乗について、すべての周波数,コーティング膜厚さに関する和をとったものである。これによって得られた理論解と実験値について、温度振幅と位相をそれぞれ図17(a),図17(b)に示す。図17(a),図17(b)で黒塗りのマークが実験で測定したデータで白塗りのマークがフィッティングによって求めた値である。温度振幅と位相の周波数特性に対して、非常によくフィッティングできていることがわかる。また、カーブフィッティングにより得られた変数CC,C,C,Cと残渣二乗和rを表6に示す。( )内の数値は温度振幅および位相の周波数特性の両方を用いて求めた値である。
表6の残差二乗和rの結果について、温度振幅の周波数特性だけを使用した場合は1.55×10-4以下であり、温度振幅の周波数特性だけでも残差二乗和rは非常に小さく理論値と実験値は十分に一致したと言える。さらに温度振幅と位相の周波数特性の両方を使用した場合は、残差二乗和rの値が1.91×10-5以下と一桁小さくなり、温度振幅の周波数特性だけの場合と比べてフィッティング精度は高くなる。この結果から得られたCによって式(58)を用いてコーティングによる熱伝導の補正を行うことができることは明らかである。
(実施の形態7)
本発明の実施の形態3における基材とコーティング膜から構成され、曲げモーメントが付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法において、実施の形態5および実施の形態6で検討したABS、SUS304と同様にアルミ材A6063においても補正可能であることを検討した。温度振幅の分布測定は、実施の形態5で示したように、赤外線カメラ(Cedip社,Silver480M)を用い、加振機には、エミック社製513−Aの電磁式加振機を用いた。測定対象物は、基材として幅10mm、厚み5mm、長さ300〜400mmのアルミ材A6063を用い、曲げモーメントを一様に付加するために中央102mm間をボルトで固定し、治具を介して加振機に接続した。また、試験片の裏側にはひずみゲージを添付し、赤外線カメラで取得した温度振幅を応力へ変換した値を同じ周波数で測定したひずみゲージから取得したひずみから算出した応力で規格化することによって周波数特性を求めた。
コーティング材として放射率が高い黒色つや消し塗料(アサヒペン,耐熱塗料)を用いて膜厚を3水準変化させて塗布を行った。これらの試験片を試験機に設置し、加振周波数を1〜100Hzとし、周波数を変化させて赤外線カメラおよびひずみゲージを用いて測定を行った。なお、その時取得するデータ数は、未知の変数の数以上で温度振幅および位相の周波数特性の形状がわかる数7以上とした。また、すべての実験において、赤外線カメラのフレームレートは249Hzであった。
また、コーティング膜厚さを3種類(薄いほうからNo.1〜No.3)変化させて測定した。実験より求めた温度振幅の周波数特性を図18(a)に、位相特性を図18(b)に示す。図18(a)から温度振幅は加振周波数が高くなるにしたがって減衰している。更に、コーティング膜厚が増加するとその減衰はより顕著になる。また、図18(b)の位相の周波数特性から、熱伝導の影響により、加振周波数によって位相はπから変化している。コーティング膜厚さE(i=1,2,3),加振周波数を16種類ω (i=1,2,・・・16)と変化させて測定した結果に対して次式の目的関数にて最小二乗法を用いたカーブフィッティングを行った。
この式でLは理論解と実験値の残差の二乗について,すべての周波数,コーティング厚さに関する和をとったものである。これによって得られた理論解と実験値について、温度振幅と位相をそれぞれ図19(a),図19(b)に示す。図19(a),図19(b)で黒塗りのマークが実験で測定したデータで白塗りのマークがフィッティングによって求めた値である。温度振幅と位相の周波数特性に対して、非常によくフィッティングできていることがわかる。また、カーブフィッティングにより得られた変数CC,C,C,Cと残渣二乗和rを表7に示す。( )内の数値は温度振幅および位相の周波数特性の両方を用いて求めた値である。
表7の残差二乗和rの結果について、温度振幅の周波数特性だけを使用した場合は7.55×10-4以下であり、温度振幅の周波数特性だけでも残差二乗和rは非常に小さく理論値と実験値は十分に一致したと言える。さらに温度振幅と位相の周波数特性の両方を使用した場合は、残差二乗和rの値が1.68×10-5以下と一桁小さくなり、温度振幅の周波数特性だけの場合と比べてフィッティング精度は高くなる。この結果から得られたCによって式(58)を用いてコーティングによる熱伝導の補正を行うことができることは明らかである。
(実施の形態8)
本発明の基材とコーティング膜から構成され、一軸応力が付加される測定対象物のコーティングによる熱伝導の影響を補正する機能を備えた赤外線応力測定システムについて、補正プロセスが有効に機能するかを検討した。温度分布測定は、実施の形態1の図6に示した装置を使用した。試験対象には、基材としてABSのJIS規格に則ったダンベル型2号試験片を用いた。また、コーティング材として放射率が高い黒色つや消し塗料(アサヒペン,耐熱塗料)を用いて膜厚を3水準変化させて塗布を行った。これらの試験片を試験機に設置し、荷重振幅0.1kN,応力比R=0として荷重を負荷した。なお加振周波数は変数が7個よりも多い8個とし、減衰特性を表現できるように1,3,5,10,15,20,25,30Hzと変えて、すべての実験において、赤外線カメラのフレームレートは249Hzとした。また、コーティング膜厚さは1種類で測定した。実験より求めた温度振幅の周波数特性を図20(a)に、温度位相特性を図20(b)に示す。図20(a)から温度振幅は加振周波数が高くなるにしたがって減衰している状態が判断できたので、次の補正工程で補正を行う。次の補正工程では、コーティング膜厚さを1種類C5,加振周波数を8種類ω (i=1,2,・・・8)と変化させて測定した結果に対して式(66)の目的関数にて最小二乗法を用いたカーブフィッティングを行った。
この式でLは理論解と実験値の残差の二乗について、すべての周波数,コーティング膜厚さに関する和をとったものである。これによって得られた理論解と実験値について、温度振幅と位相をそれぞれ図21(a),図21(b)に示す。温度振幅と位相の周波数特性に対して、非常によくフィッティングできていることがわかる。また、カーブフィッティングにより得られた変数CC,C,C,Cと残渣二乗和rを表8に示す。
表8の残差二乗和rの結果について、温度振幅の周波数特性だけを使用した場合は4.47×10-5以下であり、温度振幅の周波数特性だけでも残差二乗和rは非常に小さく理論値と実験値は十分に一致したと言える。さらに温度振幅と位相の周波数特性の両方を使用した場合は、残差二乗和rの値が2.39×10-6以下と一桁小さくなり、温度振幅の周波数特性だけの場合と比べてフィッティング精度は高くなる。この結果から得られたCによって式(41)を用いてコーティングによる熱伝導の補正を行うことができることは明らかであり、この方法を用いたシステムとしても十分補正が可能であることは明らかである。
(実施の形態9)
本発明の実施の形態8における基材とコーティング膜から構成され、曲げモーメントが付加される測定対象物の赤外線応力測定で得られる応力値の補正方法に必要な熱弾性効果測定で求められる温度振幅および位相の周波数特性を取得する実験システムについて補正プロセスが有効に機能するかを検討した。温度分布測定は、赤外線カメラ(Cedip社,Silver480M)を用い、加振機には、エミック社製513−Aの電磁式加振機を用いた。測定対象物は、基材として幅15mm、厚み15mm、長さ300〜400mmのABSを用い、曲げモーメントを一様に付加するために中央102mm間をボルトで固定し、治具を介して加振機に接続した。また、試験片の裏側にはひずみゲージを添付し、赤外線カメラで取得した温度振幅を応力へ変換した値を同じ周波数で測定したひずみゲージから取得したひずみから算出した応力で規格化することによって周波数特性を求めた。
コーティング材として放射率が高い黒色つや消し塗料(アサヒペン,耐熱塗料)を用いて膜厚を1水準変化させて塗布を行った。これらの試験片を試験機に設置し、加振周波数を1〜100Hzとし、周波数を変化させて赤外線カメラおよびひずみゲージを用いて測定を行った。なお、その時取得するデータ数は、未知の変数の数以上で温度振幅および位相の周波数特性の形状がわかる数7以上とした。また、すべての実験において、赤外線カメラのフレームレートは249Hzであった。
実験より求めた温度振幅の周波数特性を図22(a)に、位相特性を図22(b)に示す。図22(a)から温度振幅は加振周波数が高くなるにしたがって減衰している。更に、コーティング膜厚が増加するとその減衰はより顕著になる。また、図22(b)の位相の周波数特性から、熱伝導の影響により、加振周波数によって位相はπから変化している。加振周波数を16種類ω (i=1,2,・・・16)と変化させて測定した結果に対して式(67)の目的関数にて最小二乗法を用いたカーブフィッティングを行った。
この式でLは理論解と実験値の残差の二乗について、すべての周波数,コーティング膜厚さに関する和をとったものである。これによって得られた理論解と実験値について、温度振幅と位相をそれぞれ図23(a),図23(b)に示す。図23(a),図23(b)で黒塗りのマークが実験で測定したデータで白塗りのマークがフィッティングによって求めた値である。温度振幅と位相の周波数特性に対して、非常によくフィッティングできていることがわかる。また、カーブフィッティングにより得られた変数CC,C,C,Cと残渣二乗和rを表9に示す。( )内の数値は温度振幅および位相の周波数特性の両方を用いて求めた値である。
表9の残差二乗和rの結果について、温度振幅の周波数特性だけを使用した場合は1.11×10-4以下であり、温度振幅の周波数特性だけでも残差二乗和rは非常に小さく理論値と実験値は十分に一致したと言える。さらに温度振幅と位相の周波数特性の両方を使用した場合は、残差二乗和rの値が5.21×10-5以下と一桁小さくなり、温度振幅の周波数特性だけの場合と比べてフィッティング精度は高くなる。この結果から得られたCによって式(58)を用いてコーティングによる熱伝導の補正を行うことができることは明らかであり、この方法を用いたシステムとしても十分補正が可能であることは明らかである。
(実施の形態10)
本発明の実施の形態10における赤外線応力測定の補正方法を備えたシステムを実際の道路、鉄道などの高架を構成する橋梁に適応した場合について説明する。
図24に示す橋梁においては、橋梁下面に位置する主桁24は、鉄骨(H鋼)を基材とし、この表面をコーティング膜としての塗膜で塗装して構成され、橋梁上面を通過する車両の荷重を支えるため、曲げモーメントによる応力が発生する。車両通過時に発生する熱弾性効果による温度変化成分および位相の測定は、赤外線カメラ(Cedip社,Silver480M)を用い、重量20トンの車両を用いて、車両通過時に発生する荷重変動を加振機の代わりに用いた。異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性を測定するため、重量20トンの車両の通過速度を時速10km/h〜60km/hまで、5km/hステップで変化させ12回の測定を行った。また、位相成分の周波数特性は、フレーム間に生じる測定対象物である橋梁の位置変化量から求めた。また、すべての実験において、赤外線カメラのフレームレートは249Hzであった。
実験より求めた温度振幅の周波数特性を図25(a)に、位相特性を図25(b)に示す。図25(a)から温度振幅は加振周波数が高くなるにしたがって減衰している。更に、コーティング膜厚が増加するとその減衰はより顕著になる。また、図25(b)の位相の周波数特性から、熱伝導の影響により、加振周波数によって位相はπから変化している。車両通過時に発生する温度変化成分および位相成分の周波数を12種類ω (i=1,2,・・・12)と変化させて測定した結果に対して式(68)の目的関数にて最小二乗法を用いたカーブフィッティングを行った。
この式でL10は理論解と実験値の残差の二乗について、すべての周波数,コーティング膜厚さに関する和をとったものである。これによって得られた理論解と実験値について、温度振幅と位相をそれぞれ図26(a),図26(b)に示す。図26(a),図26(b)で黒塗りのマークが実験で測定したデータで白塗りのマークがフィッティングによって求めた値である。温度振幅と位相の周波数特性に対して、非常によくフィッティングできていることがわかる。また、カーブフィッティングにより得られた変数CC,C,C,Cと残渣二乗和rを表10に示す。( )内の数値は温度振幅および位相の周波数特性の両方を用いて求めた値である。
表10の残差二乗和rの結果について、温度振幅の周波数特性だけを使用した場合は1.33×10-4以下であり、温度振幅の周波数特性だけでも残差二乗和rは非常に小さく理論値と実験値は十分に一致したと言える。さらに温度振幅と位相の周波数特性の両方を使用した場合は、残差二乗和rの値が4.24×10-5以下と一桁小さくなり、温度振幅の周波数特性だけの場合と比べてフィッティング精度は高くなる。この結果から得られたCによって式(58)を用いてコーティングによる熱伝導の補正を行うことができることは明らかであり、この方法を用いたシステムとしても十分補正が可能であることは明らかである。
なお、今回の検討では重量20トンの車両を用いて、車両通過時に発生する荷重変動を加振機の代わりに用いたが、周波数を変えて荷重変動することによって熱弾性効果による温度変化を生じさせることが可能な方法であれば、どのような方法でも同様な結果が得られる。
本発明は、基材とコーティング膜から構成される測定対象物において、コーティングによる熱伝導の影響を補正することにより正しい応力値、応力分布を求めることが可能であり、製品や部品のコーティング膜を剥がすことなく正確な応力の値や分布を得ることができ、応力集中部などの危険部位を正確に判断し、不安全事象を未然に防止する上で有用である。
1a 加振機
1b 試験片
1bb 測定対象物
1c 赤外線カメラ
1f ひずみゲージ
CD コントロールデバイス
PC パーソナルコンピュータ
FG ファンクションジェネレータ
x yzの2軸と直行する方向
y 荷重の負荷方向
z コーティング膜厚方向
5a 赤外線応力測定工程
5b 減衰状態判断工程
5c 補正工程

Claims (10)

  1. 基材とコーティング膜から構成される測定対象物を加振し、前記測定対象物を赤外線カメラで撮影して前記測定対象物の温度振幅を測定し、この測定結果から前記測定対象物の応力値を求める赤外線応力測定システムにおいて、
    基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果に基づく1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解を、異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性に対して最小二乗法によりカーブフィッティングさせることによって前記コーティング膜表面の理論解の変数を同定し、コーティングによる熱伝導の影響を補正する、
    赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。
  2. 前記基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果に基づく1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解と異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性は、単軸応力が作用している測定対象物であることを特徴とする、
    請求項1記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。
  3. 前記基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果を考慮した1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解と異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性は、曲げモーメントが作用している測定対象物であることを特徴とする、
    請求項1記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。
  4. 熱弾性効果を用いた赤外線応力測定法であって、前記1次元の熱伝導方程式の温度振幅の理論解を構成する変数は、前記基材と前記コーティング膜の物性値の比前記基材前記コーティング膜の厚さの比、前記基材に生じる温度振幅、および温度振幅の周波数と前記基材の熱拡散率および厚さで表されることを特徴とする、
    請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。
  5. 熱弾性効果を用いた赤外線応力測定法であって、前記1次元の熱伝導方程式の温度振幅の理論解を構成する変数は5個以上であることを特徴とする、
    請求項4に記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。
  6. 熱弾性効果を用いた赤外線応力測定法であって、前記物性値はヤング率、ポアソン比、密度、定圧比熱、熱膨張係数、熱伝導率であることを特徴とする、
    請求項4または請求項5に記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。
  7. 熱弾性効果を用いた赤外線応力測定法であって前記異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性を構成するデータは、少なくとも前記変数の個数以上かつ減衰曲線の形状を表現できる測定点数であることを特徴とする、
    請求項1〜6のいずれかに記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。
  8. 熱弾性効果を用いた赤外線応力測定法であって、前記熱弾性効果を用いた赤外線応力測定は主に厚さ方向および面内方向の応力場であることを特徴とする、
    請求項1〜7のいずれかに記載の赤外線応力測定システムにおける応力値の補正方法。
  9. 測定対象物を加振し、前記測定対象物を赤外線カメラで撮影し、熱弾性効果を用いて前記測定対象物に作用する応力値を計算する赤外線応力測定システムであって、
    測定対象物を撮影する赤外線カメラと、
    前記赤外線カメラの温度振幅画像を処理して前記測定対象物の応力値を求める情報処理装置とを有し、
    前記情報処理装置は、
    基材とコーティング膜両方の熱伝導および熱弾性効果に基づく1次元の熱伝導方程式から求められるコーティング膜表面の温度振幅の理論解を、異なる振動周波数によって得られる熱弾性効果に基づく温度変化成分および位相成分の周波数特性に対して最小二乗法によりカーブフィッティングさせることによって前記コーティング膜の表面の理論解の変数を同定し、前記コーティング膜による熱伝導の影響を補正して前記測定対象物に作用する応力値を計算する、
    赤外線応力測定システム。
  10. 引張あるいは圧縮応力を測定対象物に繰返し加える加振機を設けた
    請求項9記載の赤外線応力測定システム。
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