JP6220527B2 - セラミックス複合材料の製造方法およびセラミックス複合材料 - Google Patents

セラミックス複合材料の製造方法およびセラミックス複合材料 Download PDF

Info

Publication number
JP6220527B2
JP6220527B2 JP2013036225A JP2013036225A JP6220527B2 JP 6220527 B2 JP6220527 B2 JP 6220527B2 JP 2013036225 A JP2013036225 A JP 2013036225A JP 2013036225 A JP2013036225 A JP 2013036225A JP 6220527 B2 JP6220527 B2 JP 6220527B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ceramic
composite material
carbon nanotube
ceramic composite
powder
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2013036225A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014162692A (ja
Inventor
西村 直之
直之 西村
義貴 綱嶋
義貴 綱嶋
知行 福世
知行 福世
直人 齋藤
直人 齋藤
雄企 薄井
雄企 薄井
遠藤 守信
守信 遠藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shinshu University NUC
Teijin Nakashima Medical Co Ltd
Original Assignee
Shinshu University NUC
Teijin Nakashima Medical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shinshu University NUC, Teijin Nakashima Medical Co Ltd filed Critical Shinshu University NUC
Priority to JP2013036225A priority Critical patent/JP6220527B2/ja
Publication of JP2014162692A publication Critical patent/JP2014162692A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6220527B2 publication Critical patent/JP6220527B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)
  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)

Description

本発明は、セラミックス複合材料の製造方法およびセラミックス複合材料に関するものである。
セラミックは様々な分野に利用されている材料であり、電子部品、切削工具、建築材料、生体材料に利用されている。しかし、セラミックスは優れた耐摩耗性、耐熱衝撃性、耐酸化性等の機械的特性をもつが、金属と比較すると破壊靭性値は低く、破壊靭性値の向上のために様々な改良が成されている。
セラミックスを高靭性化させる従来技術として、アルミナ仮焼結体にCa、Sr、またはBaの金属塩の溶液を含浸させた後に焼結して金属塩を熱分解させることで、アルミナの結晶粒を非等方形状に成長させた高強度・高靱性アルミナ質焼結体が特許文献1に開示されている。他に、カーボンナノチューブの機械的強度特性を利用して、カーボンナノチューブと、アルミナの原料となる水酸化アルミニウムと、シリカの原料となるシリカゲルとを混合して作製したアルミナ−シリカ系セラミックスが特許文献2に開示されている。また酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、酸化ゲルマニウム、1A族アルカリ金属酸化物、MgO以外の2A族アルカリ土類金属酸化物群のうち少なくとも1種以上を総量で20〜400ppm含有させた高靭性透光性アルミナ焼結体が特許文献3に開示されている。
特開2001−322865号公報 国際公開第07/029588号パンフレット 特開2009−107887号公報
特許文献1に開示されている焼結体は、金属塩の溶液を用いて作製されるセラミックスである。また、特許文献2に開示されている複合材料は、カーボンナノチューブとセラミックス粉体の間にはファンデルワールス力以上の強力な化学結合がない。また特許文献3に開示されている焼結体は、母材であるアルミナにppm単位で添加物を入れて作製されるセラミックスである。これらのセラミックスは、高靭性化させたセラミックスであるが、強度および破壊靭性値が製品としての要求に応えられる値ではないという課題があった。
そこで本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、セラミックス粉体とカーボンナノチューブを結合させる結合剤を用いて、高い破壊靭性値で、かつ高い強度をもつセラミックス複合材料の製造方法およびセラミックス複合材料を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のセラミックス複合材料の製造方法は次の構成を備える。すなわち本発明は、セラミックス複合材料の製造方法において、水系媒体に、セラミックスを構成する金属原子が陽イオンで存在するpH領域にpHを調整する酸と、セラミックス粉体と、カーボンナノチューブと、該カーボンナノチューブの重量に対して2〜5重量%のフェニル基とカルボキシル基を含む共重合体と、前記カーボンナノチューブの重量に対して2〜5重量%のカキタンニンと呼ばれる成分を含み分子構造内にベンゼン環、OH基をもつ柿渋とを混合することによって、水系媒体中にカーボンナノチューブ‐セラミックス結合物を生成させた混合液を得る工程と、前記混合液を乾燥して、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体を製造する工程と、前記カーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体を成形して焼成する焼成工程とを含むことを特徴とする。この構成によれば、セラミックス粉体とカーボンナノチューブが共に分散した状態で混合液を製造するので、カーボンナノチューブが凝集せずに高靭性化、高強度化したセラミックス複合材料を製造することができる。また、柿渋の添加によってフェニル基とカルボキシル基を含む共重合体の添加量を少なくすることができ、得られるセラミックス複合材料の強度を十分に向上できる。
また、上記目的を達成するため、本発明のセラミックス複合材料の製造方法は次の構成を備える。すなわち本発明は、セラミックス複合材料の製造方法において、水系媒体に、セラミックスを構成する金属原子が陽イオンで存在するpH領域にpHを調整する酸と、セラミックス粉体とを混合して、セラミックス粉体を分散させたスラリーを製造する工程と、水系媒体にカーボンナノチューブと、該カーボンナノチューブの重量に対して2〜5重量%のフェニル基とカルボキシル基を含む共重合体と、前記カーボンナノチューブの重量に対して2〜5重量%のカキタンニンと呼ばれる成分を含み分子構造内にベンゼン環、OH基をもつ柿渋とを添加して、前記カーボンナノチューブを分散させたカーボンナノチューブ分散液を製造する工程と、前記スラリーと前記カーボンナノチューブ分散液とを混合して、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および前記柿渋を介して前記セラミックスと前記カーボンナノチューブが結合した、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合物を生成させた混合液を得る工程と、前記混合液を乾燥して、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体を製造する工程と、前記カーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体を成形して焼成する焼成工程とを含むことを特徴とする。この構成によれば、スラリーとカーボンナノチューブ分散液を別個に製造し、それらを混合しても、カーボンナノチューブが分散し、セラミックスとカーボンナノチューブが結合した高靭性化、高強度化したセラミックス複合材料を製造することができる。また、柿渋の添加によってフェニル基とカルボキシル基を含む共重合体の添加量を少なくすることができ、得られるセラミックス複合材料の強度を十分に向上できる。
また、本発明において、前記セラミックスがアルミナであることが好ましい。これによれば、高靭性化、高強度化したアルミナを主成分とするセラミックス複合材料を製造することができる。
また、本発明において、前記セラミックスを構成する金属原子が陽イオンで存在するための水系媒体のpHを、3.0〜4.0の範囲とすることが好ましい。これによれば、水系媒体に分散したセラミックス粉体の表面にセラミックスを構成する金属元素の金属原子の陽イオンを存在させることができる。
また、本発明において、前記フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体が、スチレン‐マレイン酸共重合体であることが好ましい。これによれば、水系媒体にカーボンナノチューブ分散させることができ、セラミックスと強固に結合させることができる。
また、本発明において、前記セラミックスを構成する金属原子が陽イオンで存在するpH領域にpHを調整する酸は、焼成後に酸の成分が残留しない酸であることが好ましい。これによれば、焼成工程後に得られるセラミックス複合材料中に、酸を構成する元素が残らず、セラミックス複合材料の強度が低下しない。
また、本発明において、前記カーボンナノチューブの添加量は、セラミックス粉体の重量に対して0.5〜5重量%であることが好ましい。これによれば、強度が高く、破壊靭性値が高いセラミックス複合材料を得ることができる。
また、前記セラミックス粉体に、平均粒子径が0.05〜5μmの範囲となるセラミックス粉体を用いることが好ましい。これによれば、強度の高いセラミックス複合材料を作製することができる。
また、本発明において、前記カーボンナノチューブは、多層構造のカーボンナノチューブであり、比表面積10〜50m/g、平均アスペクト比が50〜500の範囲であるカーボンナノチューブを用いることが好ましい。これによれば、得られるセラミックス複合材料の靭性、強度等の機械的特性を十分に向上させることができる。
また、本発明において、前記焼成工程における焼成温度を1300〜1500℃、焼成雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。これによれば、粒成長しすぎて強度の低下を招くことなく、かつ十分な機械的特性をもったセラミックス複合材料を得ることができる。
上記目的を達成するため、本発明のセラミックス複合材料は次の構成を備える。すなわち本発明は、セラミックス複合材料であって、セラミックスとカーボンナノチューブの間が、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体およびカキタンニンと呼ばれる成分を含み分子構造内にベンゼン環、OH基をもつ柿渋の焼成物であり、前記カーボンナノチューブの重量に対して4〜10重量%の非晶質炭素を含む非晶質材料を介して結合されていることを特徴とする。この構成によれば、非晶質材料を介してセラミックスとカーボンナノチューブとを結び付けた高い破壊靭性値と強度を有するセラミックス複合材料となる。また、得られるセラミックス複合材料の強度を十分に向上できる。
また、本発明において、前記セラミックスがアルミナであることが好ましい。これによれば、非晶質材料を介してアルミナとカーボンナノチューブとを結び付けて破壊靭性値および強度を向上させたアルミナを主成分とするセラミックス複合材料となる。
また、本発明において、前記カーボンナノチューブの量は、セラミックス粉体の重量に対して0.5〜5重量%であることが好ましい。これによれば、カーボンナノチューブを添加した効果によりセラミックス複合材料の靭性、強度を上げることができる。
また、本発明において、前記カーボンナノチューブは、多層構造のカーボンナノチューブであり、比表面積10〜50m/g、平均アスペクト比が50〜500の範囲となるカーボンナノチューブであることが好ましい。これによれば、カーボンナノチューブの分散性がよく、セラミックス複合材料の靭性、強度等の機械的特性を十分に向上させることができる。
また、本発明において、前記セラミックス複合材料中のセラミックスの平均粒子径が0.5〜5μmの範囲となることが好ましい。これによれば、焼結しやすく、セラミックス粒子の異常粒成長を抑制してセラミックス複合材料の破壊靱性、曲げ強度を向上させることができる。
また、本発明において、破壊靭性値が7MPa・m1/2以上、3点曲げ強度が500MPa以上であることが好ましい。これによれば、生体材料にも応用可能なセラミックス複合材料となる。
本発明に係るセラミックス複合材料の製造方法およびセラミックス複合材料によれば、セラミックス粉体とカーボンナノチューブを結合させる結合剤を用いることで、高い破壊靭性値、かつ高い強度を有することができる。
本発明の実施形態に係るフェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および柿渋を介してセラミックス粉体とカーボンナノチューブが結合した、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合物の一例を示す説明図である。 本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体の一例を示す電子顕微鏡写真である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[概要]
図1は、本発明の実施形態に係るフェニル基とカルボキシル基を含む共重合体(以下単に共重合体ということがある)および柿渋を介してセラミックス粉体とカーボンナノチューブが結合した、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合物の一例を示す説明図であり、セラミックス粉体としてアルミナ粉体を用いた時の結合物である。本実施形態では水系媒体を用い、水系媒体中にカーボンナノチューブ‐セラミックス結合物を生成させる。フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および柿渋は界面活性剤として、または後述の結合剤としても作用し、水系媒体中においてカーボンナノチューブを分散させ、かつセラミックス粉体とカーボンナノチューブの間にあって両者を結合させる。
水系媒体中において、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体の分子構造内にあるカルボキシル基は、水素イオン(H)が解離した状態(COO)で存在する。このCOOが母材のセラミックス原料粉体、例えばアルミナ粉体を用いた場合、アルミナ粉体表面のアルミニウムイオンと反応し、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体とアルミナが結合する。また、共重合体のフェニル基のベンゼン環とカーボンナノチューブ表面の炭素六員環との間がπ‐πスタッキングにより結合し、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体がカーボンナノチューブ表面に吸着する。これにより、水系媒体中においてカーボンナノチューブ‐セラミックス結合物(カーボンナノチューブ‐アルミナ結合物)が生成される。
同様に柿渋中において例えばカキタンニンと呼ばれる成分は、分子構造内にベンゼン環、OH基をもつ。このOH基が母材のセラミックス原料粉体、例えばアルミナ粉体を用いた場合、アルミナ粉体表面のアルミニウムイオンと配位結合反応し、フェニル基とOH基を含む共重合体とアルミナが結合する。柿渋中のベンゼン環とカーボンナノチューブ表面の炭素六員環との間がπ‐πスタッキングにより結合し、ベンゼン環とOH基を含む分子がカーボンナノチューブ表面に吸着する。これにより、先のフェニル基とカルボキシル基を含む共重合体と同様に水系媒体中においてカーボンナノチューブ‐セラミックス結合物(カーボンナノチューブ‐アルミナ結合物)が生成される。
例えばカキタンニンと呼ばれる成分を含み分子構造内にベンゼン環、OH基をもつ柿渋を添加は、直鎖のフェニル基とカルボキシル基を含む共重合体のみが添加される場合を補完する役目を果たす。フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および柿渋が添加されることで、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体のみを添加した場合と比べ、共重合体および柿渋の合計が少ない添加量で水系混合分散媒体中を構成して、カーボンナノチューブを分散させきる。
これら水系媒体中に生成させたカーボンナノチューブ‐セラミックス結合物を含む混合液を乾燥して、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体を得る。そして、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体を成形して焼成することにより、セラミックス複合材料を得るのである。
フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体の配列としては、同じ種類のモノマーが長く連続して重合した部分をもつ配列であることが好ましく、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。フェニル基をもつモノマー、ポリマーとしては、スチレン、ジアリルフタレート、ポリカーボネートがあり、ポリスチレンが好ましい。また、カルボキシル基をもつモノマーとしては、マレイン酸、アクリル酸、マロン酸、フマル酸があり、マレイン酸が好ましい。また、本実施形態では、セラミックス原料の種類は特に限定されるものではないが、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、カルシアから選ばれる少なくとも1種類の原料を含むものでもよく、これらを組み合わせてできる化合物を含んでいてもよい。特にアルミナを原料として用いれば、生体材料に適用することが可能である。
柿渋においては一般に使用されている天然由来の原料で構わない。これらは皮のなめし、メッキなどに使用されているものである。
[混合液の作製]
カーボンナノチューブを水系媒体に分散させるには、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および例えばカキタンニンと呼ばれる成分を含み分子構造内にベンゼン環、OH基をもつ柿渋からなる界面活性剤を用いる。これにより、水系媒体にカーボンナノチューブを分散させたカーボンナノチューブ分散液を製造することができる。また、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体を単独で加えた場合と比較して、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合物が早く沈殿し、均一に沈殿する。
フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および例えばカキタンニンと呼ばれる成分を含み分子構造内にベンゼン環、OH基をもつ柿渋は界面活性剤として、または後述の結合剤としても作用し、水系媒体にカーボンナノチューブを分散させることができる。すなわち、フェニル基のベンゼン環とカーボンナノチューブ表面の炭素六員環との間のπ‐πスタッキングにより、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体、ベンゼン環、OH基をもつ柿渋がカーボンナノチューブ表面に吸着して結合する。このとき共重合体および柿渋の分子構造内にカルボキシル基、OH基が存在するため、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体が吸着したカーボンナノチューブは、その親水性が向上する。更に表面の立体障害により、カーボンナノチューブ同士が凝集することを防止し、水系媒体の中でも安定して高い分散性を維持することが可能となる。
次に、水系媒体にセラミックス原料粉体を分散させるには、セラミックス粉体の表層が陽イオンで覆われた、または表層の一部が陽イオンになった状態に水系媒体のpHを調整して行う。例えばアルミナ粉体の場合、水系媒体のpHを、アルミナを構成する金属原子であるアルミニウムが陽イオンで存在する領域に調整することで行う。アルミニウムが陽イオンで存在するpHは、電位−pH図より5以下と推測できる。このため、水系媒体のpH調整は酸性水溶液を用いて行う。酸性水溶液を加えることで、アルミナ粒子が正に帯電して、粒子同士が斥力によって反発して分散した状態になる。これにより、水系媒体中にアルミナ粉体を良好に分散させ、分散状態を長時間保つことができる。セラミックス粉体の表層が陽イオンになった状態とは、表面のみがイオン化していて、内部は未反応のセラミックス粉体のままということである。このように、本実施形態は両性酸化物、塩基性酸化物に適用でき、酸性水溶液を用いて、セラミックス粉体の表層が陽イオンになった状態にさせたスラリーを製造できる。
水系媒体のpHによって、セラミックス粉体の表層の陽イオン存在量が変わるため、pHは制御されることが好ましい。例えば、アルミナ粉体を用いた場合、アルミナを構成する金属原子であるアルミニウムが陽イオンで存在する水系媒体は、pHを3.0〜4.0の範囲に調整されることが好ましい。pHが3.0より小さい値になると、アルミニウムイオンとして存在する量が増え、すなわち、アルミナの溶解量が増えてアルミナとして存在する量が減り、焼成体の強度が低下する。4〜4.5の間ではアルミナの表面水酸基による緩衝能(pHを等酸点と呼ばれる最も安定なpHまでシフトする現象。アルミナでは種類により大幅に異なるが、本発明で使用するα―アルミナではpH=8〜9である)によりpHが4.5付近まで短時間でシフトし、界面活性剤と十分な反応を得ることが難しい。また、pHが4.5より大きい値では、アルミニウム陽イオンの数が存在せず、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および柿渋を介したアルミナとカーボンナノチューブとの結合が保持できない。更にアルミナ中でのカーボンナノチューブの分散がよくない。これらのことから、十分な機械的特性、特に良好な破壊靱性値と強度を得ることができない。このように、セラミックス粉体表層の陽イオンとその内部にあるイオン化していないセラミックスとの存在比を制御して、目標値とする破壊靭性値が7MPa・m1/2以上、強度を500MPa以上となるセラミックス複合材料を得ることができる。更に、目標値に達したセラミックス複合材料は、生体材料に適用でき、特に人工関節の部材として利用することができる。
一方、前記したように、水系媒体中で、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体の分子構造内にあるカルボキシル基は、水素イオン(H)が解離した状態(COO)で存在する。この水系媒体にセラミックス原料粉体を分散させ、表層に陽イオンが存在する状態にさせると、このCOOが表層の陽イオンと反応して結合する。これにより、共重合体から難溶性塩が形成される。この結合は、共有結合とイオン結合を含んだ、ファンデルワールス力以上の強力な化学結合となる。これらのことから、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体は、カーボンナノチューブとセラミックス粉体の両方に結合し、カーボンナノチューブとセラミックス粉体との間に介在して互いを結合させる結合剤としても作用する。
同様に水系媒体中で、例えばカキタンニンと呼ばれる成分を含み分子構造内にベンゼン環、OH基を含む柿渋の分子構造内にあるOH基は、セラミックス原料粉体の表層に陽イオンと反応して配位結合する。セラミックス原料粉体の表層に陽イオンが存在する状態にさせると、OH基のOの不対電子がドナーとなり、陽イオンと反応する。これにより柿渋から配位結合化合物が生成される。この結合はファンデルワールス力以上の強力な化学結合となる。これらのことから、例えばカキタンニンと呼ばれる成分を含み分子構造内にベンゼン環、OH基を含む柿渋は、カーボンナノチューブとセラミックス粉体の両方に結合し、カーボンナノチューブとセラミックス粉体との間に介在して互いを結合させる結合剤としても作用する。
カーボンナノチューブ‐セラミックス結合物を生成させた混合液の調整において、水系媒体への各材料の添加順は特に限定されるものではない。水系媒体に、pH調整用の酸水溶液と、セラミックス原料粉体と、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および分子構造内にベンゼン環、OH基を含む柿渋と、カーボンナノチューブとを同時に添加するようにしてもよく、他にも、水系媒体にセラミックス原料粉体を分散させたスラリーと、水系媒体にカーボンナノチューブを分散させた分散液とをそれぞれ別個に調製して混合しても得ることができる。この混合液は、強い撹拌等による強制的な分散を行わなくとも、水系媒体中でカーボンナノチューブの高い分散性が維持されていて、かつカーボンナノチューブが自発的に分散した状態でセラミックス原料粉体表面に吸着されている状態である。
このように、混合液はセラミックス原料粉体とカーボンナノチューブが共に分散した状態で製造されるので、得られるセラミックス複合材料はカーボンナノチューブが凝集していないものとなる。
[混合液の乾燥]
図2は、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体の一例を示す電子顕微鏡写真であり、セラミックス粉体としてアルミナ粉体を用いた時の結合物である。カーボンナノチューブ‐セラミックス結合物を含有する混合液を乾燥させて、セラミックス粉体とカーボンナノチューブが結合したカーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体が製造される。図2に示すように得られたカーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体は、カーボンナノチューブ表面にアルミナ粒子が吸着し、多くのアルミナ粒子がカーボンナノチューブ表面に存在している。
カーボンナノチューブとセラミックスの間はファンデルワールス力以上の強力な化学結合があるため、カーボンナノチューブ表面からセラミックスが取れにくい状態となっている。混合液の乾燥方法は特に限定されないが、好ましくは噴霧乾燥させることであり、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体を微粒子化できる。また、小さくなり過ぎず、取り扱いやすい径の粒子を形成できる。
[結合粉体の成形]
得られた結合粉体の成形には、従来技術を使うことができる。例として、テープキャスト法、押出成形法、泥しょう鋳込法、一軸加圧成形法、静水圧成形法、RIP成形法等が挙げられ、これらを併用してもよい。
[成形体の焼成]
圧縮成形後の結合粉体は、焼成炉を用いて焼成される。このとき、真空中、あるいは非酸化雰囲気中である不活性ガス雰囲気で焼成することによって、セラミックス複合材料が得られるが、不活性ガス雰囲気であることが好ましく、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素等が挙げられ、より好ましくはアルゴン雰囲気である。
また、焼成方法は雰囲気を制御できれば特に限定されないが、常圧焼結法、加圧焼結法、熱プラズマ焼結法、放電プラズマ焼結法等を用いてもよく、これらを併用してもよい。しかし、プラズマ焼結方法は形状に制約があるため、本実施形態では、常圧焼結法と加圧焼結法を併用して、アルゴン雰囲気で焼成したものを、更に熱間静水圧加圧焼結によって、焼結させている。焼成温度は用いるセラミックス原料によって異なるものの、焼成温度範囲は1300〜1500℃が適していて、アルミナの場合でも1300〜1500℃である。1300℃より低い温度ではセラミックス(アルミナ)粒子が焼結せず、1500℃より高い温度ではセラミックス(アルミナ)粒子が粒成長しすぎて、複合材料の強度が500MPaより低い値となる。焼成時間は特に限定されないが、1時間から8時間、より好ましくは2〜3時間で強度および靭性の高い複合材料を得ることができる。熱間静水圧加圧焼結の加圧条件は、1350〜1400℃、0.5時間から3時間、10〜200MPaの範囲であれば、強度および靭性の高いセラミックス複合材料を得ることができる。
本実施形態により得られるセラミックス複合材料は、セラミックスとカーボンナノチューブとを備え、カーボンナノチューブが良好に分散した材料である。また、セラミックスとカーボンナノチューブの間が結合されているためカーボンナノチューブのセラミックスからの引き抜きが起きにくい複合材料である。
得られたセラミックス複合材料は、セラミックスとカーボンナノチューブの間が非晶質炭素を含む非晶質材料を介して結合されている。この非晶質炭素を含む非晶質材料は、セラミックス粉体表面およびカーボンナノチューブ表面に結合したフェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および分子構造内にベンゼン環、OH基を含む柿渋の焼成物である。また、セラミックス複合材料は、結合剤のフェニル基およびタンニンなどのベンゼン環がカーボンナノチューブの炭素六員環とπ‐πスタッキングし、結合剤のカルボキシル基がセラミックス粉体と結合した状態で結合粉体が焼成されることでできたものである。このように、セラミックスとカーボンナノチューブの界面に非晶質材料を析出させ、非晶質材料を介して結合させることで、カーボンナノチューブが引き抜かれにくくなる。これによって、靭性および強度が向上する。セラミックス表面とカーボンナノチューブ表面の化学結合は、共有結合とイオン結合を含んだファンデルワールス力以上の強固な化学結合である。
非晶質炭素を含む非晶質材料は、セラミックスを構成する金属原子ならびに炭素原子ならびに酸素原子とのとの化学結合を有している。ここで、化学結合に関わる炭素原子は、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および分子構造内にベンゼン環、OH基を含む柿渋から由来するものである。また、セラミックス原料がアルミナの場合C−O−Alで表される構造を含む化学結合を有する。セラミックスとカーボンナノチューブの界面にある非晶質材料は、セラミックス組成が連続的にカーボンナノチューブ組成に変化する傾斜材料となる。これらのことから、本実施形態のセラミックス複合材料は、ファンデルワールス力分子間力以上の強い結合力を有する構造体となるため、破壊されにくくなる。
得られたセラミックス複合材料は、セラミックスの平均粒子径が0.5〜5μmの範囲となる。また、異常粒成長した粒子がなく、十分な強度と靭性をもつセラミックス複合材料である。なお、セラミックス複合材料の平均粒子径は、セラミックス複合材料の粒子自体を電子顕微鏡で観察して求めた。また、セラミックス複合材料中のカーボンナノチューブの量はセラミックス粉体の重量に対して0.5〜5.0重量%となる。
フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および分子構造内にベンゼン環、OH基を含む柿渋の添加量の合計は、カーボンナノチューブの重量に対して2〜10質量%であることが好ましい。合計の添加量が2重量%より少ないとカーボンナノチューブが分散しにくく、10重量%より多いと焼成工程後の複合材料中に残留する炭素分が多くなり、強度が500MPaに達しない。
カーボンナノチューブの種類は特に限定されなく、触媒気相成長法、アーク放電法などで作製される群から選ばれる少なくとも1種用いれば良い。また、単層、多層構造のカーボンナノチューブでも複合材料を得ることができるが、多層構造のカーボンナノチューブを用いることが好ましい。多層構造のカーボンナノチューブは単層構造のカーボンナノチューブと比べて分散性がよく、多層構造のカーボンナノチューブを用いれば、コストを押さえることができる。
また、用いるカーボンナノチューブのBET比表面積は10〜50m/gであることが好ましい。比表面積が10m/gより小さい値であると、すなわちカーボンナノチューブが太すぎると、強度低下を招く。また、50m/gより大きいとカーボンナノチューブを分散させにくい。また、平均アスペクト比は、50〜500の範囲であることが好ましい。平均アスペクト比が50より小さい値であると靭性値が向上せず、500より大きい値であるとカーボンナノチューブが分散しにくい。
また、セラミックス原料粉体の平均粒子径は、焼結のし易さ、カーボンナノチューブとの混合のし易さ、得られる複合材料の機械特性を考慮して、平均粒子径は0.05〜5μmの範囲のものを用いることが好ましい。この範囲内であればセラミックス粉体の粒度分布がいずれのものでもよい。また、粒子の形状は特に限定されない。球体以外に繊維状、不定形、樹木状や種々形態のものも適宜利用することができる。平均粒子径が0.05μmより小さいと取り扱い難く、5μmより大きいと複合材料の強度が落ちる。
なお、セラミックス原料粉体の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
pHの調整を行う酸性水溶液として、焼成後に酸の成分が残留しない酸を用いることが好ましい。焼成後に酸の成分が残留しないとは、焼成工程中に揮発してなくなることである。このことから、酸の構成元素は水素、炭素、窒素、酸素であることが好ましい。具体例として、硝酸、酢酸、シュウ酸が挙げられ、セラミックス複合材料の強度が低下しない。これとは反対に塩酸、リン酸、硫酸などはセラミックス複合材料の強度の低下を招く。またこのとき、pHを調整することができれば、酸の濃度は特に限定されない。
水系媒体中にカーボンナノチューブ‐セラミックス結合物を生成させた混合液を得る方法において、混合方法は特に限定されなく、ミキサー、ボールミル、ポットミル、超音波ホモジナイザー等を用いることができる。特にセラミックス原料粉体を分散させたスラリーを製造する上で、セラミックス原料粉体の分散効果を高めるために、超音波ホモジナイザーを用いることができる。混合時間は特に限定されないが、10〜30分程度でよい。
用いる水系媒体の量は、セラミックス原料粉体およびカーボンナノチューブが水系媒体に分散できれば特に限定されない。カーボンナノチューブの添加量は、セラミックス原料粉体の重量に対して0.5〜5重量%であることが好ましい。添加量が0.5重量%より少ないとカーボンナノチューブの効果が得られず、複合材料の靭性、強度を上げることができなく、5重量%より多いと、相対的にセラミックス原料の量が減少して焼結密度が上がらないために強度の低下を招く。また、水系媒体の例として水が挙げられ、不純物を除去した水を用いればよい。
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
セラミックス原料粉体として、アルミナ粉体を用いた。アルミナ粉体は、高純度アルミナ(大明化学工業社製、TM−DAR、BET比表面積14.5m2/g、平均粒子径0.2μm、)を用いた。フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体は、スチレン‐マレイン酸共重合体溶液(センカ株式会社製、GD55R、スチレン‐マレイン酸共重合体含有量25重量%、分子量2000〜4000)を用いた。柿渋は一般的に市販されている抽出液である。カーボンナノチューブは、多層構造のカーボンナノチューブ(保土谷化学社製、MWNT−7)を用い、BET比表面積28m/gであり、平均アスペクト比が100〜200である。媒体のpH調整用の酸は一般の試薬を用い、1規定の硝酸(ナカライテスク社製)を用いた。
得られた複合材料の曲げ強度は、JIS R 1601規格に基づいて評価を行った。試験方法としては3点曲げ試験を行った。支点間距離18mmとし、支点の中央一箇所に荷重を加えて破断するまでの荷重と変位を計測し、最大荷重を曲げ強度として測定した。
得られた複合材料の破壊靭性値はIF法により評価した。幅W=4mm*厚さ3mm*長さ40mmの試験片を作製し、中央部分に幅0.15mmの溝をダイヤモンドカッターで作製し、3点曲げ試験を行った。試験において下部支点間距離Sは16.00mm(S/W=4.0)とした。その他は曲げ強度と同様とし、最大荷重から破壊靭性値を算出した。
セラミックス複合材料の構造体に関する評価はHRTEM−EELS(高分解能電子エネルギー損失分光電子顕微鏡)を用いて行った。界面の構造における非晶質炭素は、HRTEMのうち、電子線回折によりアルミナおよびカーボンナノチューブの散乱パターン像ならびに非晶質炭素に起因するアモルファスハローパターンから評価した。また、炭素のK殻励起スペクトルを観察し、スペクトルの微細構造(Energy−Loss Near Edge Structure, ELNES)から非晶質炭素およびCOに起因する構造であるかを評価した。また、元素マッピングより、カーボンナノチューブとアルミナ界面内における元素分布、構造を評価した。
セラミックス複合材料中の炭素量はTG−DTA(セイコーインスツルメンツ TG/DTA6300)を用いて評価した。HIP処理後に得られたセラミックス複合材料を粉砕して、試料を大気中、1000℃まで加熱し、発熱と加熱減量を計測することで非晶質炭素量、カーボンナノチューブ量を比較した。カーボンナノチューブの大気中での燃焼温度は600℃付近であることに対して、非晶質炭素は550℃以下であるとして、加熱減量を調べた。
[実施例1]
水100mLにアルミナ粉体100gを入れて混合した。このスラリーに硝酸を添加してスラリーのpHを3.5に調整した。スラリーの混合には通常のミキサーを用い、更にアルミナ粉体の分散効果を高めるために、超音波ホモジナイザー(Branson社製、MODEL450D)を用い、アルミナ粉体を分散させたスラリーを作製した。
スチレン‐マレイン酸共重合体溶液0.5g(固形分重量0.1g)、柿渋溶液5mL(固形分重量 0.1g) を水500mLに溶解し、得られた水溶液にカーボンナノチューブ5gを入れ、ポットミルで24時間混合し、カーボンナノチューブ分散液を作製した。スチレン‐マレイン酸共重合体の添加量および柿渋の添加量は、それぞれ2wt%に相当する。
アルミナ粉体を分散させたスラリーおよびカーボンナノチューブ分散液を、アルミナ粉体の重量に対してカーボンナノチューブ(CNT)が1.0wt%となるように秤量した。それぞれをポットミルに入れて更に24時間混合し、カーボンナノチューブ‐アルミナ結合物を生成させた混合液を作製した。
得られた混合液を、スプレードライヤーを用いて水分を蒸発させ、0.05〜0.1mmの顆粒とし、カーボンナノチューブ‐アルミナ結合粉体を作製した。
得られた結合粉体を100MPaで一軸加圧成形し、ゴム袋に詰め、静水圧プレス機を用いて150MPaの圧力で成形し、成形体を得た。成形体をアルゴン雰囲気焼成炉により焼成した。用いた成形型はφ50mm、焼成温度は1350℃、圧力は全圧50MPa、焼成時間は120分である。この後、150MPa、1400℃、120分で熱間静水圧(HIP)処理を行い、アルミナを主成分とするセラミックス複合材料を得た。
[実施例2]
実施例1に記載のアルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法において、アルミナ粉体を分散させたスラリーおよびカーボンナノチューブ分散液を、アルミナ粉体の重量に対してCNTが3.0wt%となるように秤量してポットミルに入れて混合した以外の工程はすべて同じである。
[実施例3]
実施例1に記載のアルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法において、アルミナ粉体を分散させたスラリーおよびカーボンナノチューブ分散液を、アルミナ粉体の重量に対してCNTが5.0wt%となるように秤量してポットミルに入れて混合した以外の工程はすべて同じである。
[実施例4]
実施例1に記載のアルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法において、スチレン‐マレイン酸共重合体溶液1.25g(固形分重量0.25g)、柿渋溶液12.5mL(固形分重量0.25g)を水500mLに溶解し、得られた水溶液にカーボンナノチューブ5gを添加してカーボンナノチューブ分散液を作製した以外の工程はすべて同じである。
[実施例5]
実施例2に記載のアルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法において、スチレン‐マレイン酸共重合体溶液1.25g(固形分重量0.25g)、柿渋溶液12.5mL(固形分重量0.25g)を水500mLに溶解し、得られた水溶液にカーボンナノチューブ5gを添加してカーボンナノチューブ分散液を作製した以外の工程はすべて同じである。
[実施例6]
実施例3に記載のアルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法において、スチレン‐マレイン酸共重合体溶液1.25g(固形分重量0.25g)、柿渋溶液12.5mL(固形分重量0.25g)を水500mLに溶解し、得られた水溶液にカーボンナノチューブ5gを添加してカーボンナノチューブ分散液を作製した以外の工程はすべて同じである。
[実施例7]
実施例1に記載のアルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法において、水100mLにアルミナ粉体100gを入れて混合した。このスラリーに硝酸を添加してスラリーのpHを4.0に調整した以外の工程はすべて同じである。
[実施例8]
実施例4に記載のアルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法において、水100mLにアルミナ粉体100gを入れて混合した。このスラリーに硝酸を添加してスラリーのpHを4.0に調整した以外の工程はすべて同じである。
[比較例1](柿渋添加量による比較1)
実施例1に記載のアルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法において、スチレン‐マレイン酸共重合体溶液0.5g(固形分重量0.1g)、柿渋溶液2.5mL(固形分重量0.05g)を水500mLに溶解し、得られた水溶液にカーボンナノチューブ5gを添加してカーボンナノチューブ分散液を作製した以外の工程はすべて同じである。
[比較例2](柿渋添加量による比較2)
実施例1に記載のアルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法において、スチレン‐マレイン酸共重合体溶液1.25g(固形分重量0.25g)、柿渋溶液15mL(固形分重量 0.3g)を水500mLに溶解し、得られた水溶液にカーボンナノチューブ5gを添加してカーボンナノチューブ分散液を作製した以外の工程はすべて同じである。
[比較例3](柿渋添加量による比較3)
比較例1に記載のアルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法において、水100mLにアルミナ粉体100gを入れて混合した。このスラリーに硝酸を添加してスラリーのpHを4.0に調整した以外の工程はすべて同じである。
[比較例4](柿渋添加量による比較4)
比較例2に記載のアルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法において、水100mLにアルミナ粉体100gを入れて混合した。このスラリーに硝酸を添加してスラリーのpHを4.0に調整した以外の工程はすべて同じである。
上記実施例1〜8および比較例1〜4で得られた非晶質炭素量、試験片の曲げ強度、破壊靭性値を測定した結果を表1に示す。非晶質炭素量は、セラミックス複合材料のカーボンナノチューブの重量に対する割合で示す。

非晶質炭素量はスチレン‐マレイン酸共重合体および柿渋の添加量が増えるに連れて増加した。また、非晶質炭素量が2〜10wt%の範囲では3点曲げ強度が500MPa以上となり、かつ破壊靭性値が7MPa・m1/2以上となった。しかし、非晶質炭素が
含まれない場合では強度が低くなり、非晶質炭素量が30wt%でも強度が低くなった。また、カーボンナノチューブの添加量が7.0wt%では、セラミックス複合材料中のカーボンナノチューブ含有量が多いため、3点曲げ強度が低く、破壊靭性値は高くて破壊しなかったために計測できなかった。
TG−DTAにより、セラミックス複合材料中に含まれる非晶質炭素量を求めるのと同時にカーボンナノチューブ量を求めた。その結果、セラミックス複合材料中のカーボンナノチューブ含有量は、カーボンナノチューブ添加量と変わらない値であり、焼成しても重量減少しなかった。
上記結果より、カーボンナノチューブとアルミナの混合粉体を作製する上で、カーボンナノチューブの添加量を0.5〜5wt%とし、スチレン‐マレイン酸共重合体の添加量を変え、非晶質炭素量を2〜10wt%とすることで、得られたセラミックス複合材料の曲げ強度が500MPa以上となり、破壊靭性値が7.0MPa・m1/2となった。
アルミナ粉体とカーボンナノチューブとの界面の構造は、アモルファスハローパターンが見られたことから、非晶質であることが確認された。また、界面から離れた箇所のアルミナ側およびカーボンナノチューブ側の散乱パターン像より、結晶質であることが確認された。更に炭素のK殻励起スペクトルを観察して、スペクトルの微細構造から界面の構造が非晶質炭素およびC−Oに起因する構造であることを確認した。また元素マッピングよりその界面内においてカーボンおよびアルミニウムの混在している膜構造であることを確認した。

Claims (16)

  1. セラミックス複合材料の製造方法において、
    水系媒体に、セラミックスを構成する金属原子が陽イオンで存在するpH領域にpHを調整する酸と、セラミックス粉体と、カーボンナノチューブと、該カーボンナノチューブの重量に対して2〜5重量%のフェニル基とカルボキシル基を含む共重合体と、前記カーボンナノチューブの重量に対して2〜5重量%のカキタンニンと呼ばれる成分を含み分子構造内にベンゼン環、OH基をもつ柿渋とを混合することによって、水系媒体中にカーボンナノチューブ‐セラミックス結合物を生成させた混合液を得る工程と、
    前記混合液を乾燥して、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体を製造する工程と、
    前記カーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体を成形して焼成する焼成工程とを含むことを特徴とするセラミックス複合材料の製造方法。
  2. セラミックス複合材料の製造方法において、
    水系媒体に、セラミックスを構成する金属原子が陽イオンで存在するpH領域にpHを調整する酸と、セラミックス粉体とを混合して、セラミックス粉体を分散させたスラリーを製造する工程と、
    水系媒体にカーボンナノチューブと、該カーボンナノチューブの重量に対して2〜5重量%のフェニル基とカルボキシル基を含む共重合体と、前記カーボンナノチューブの重量に対して2〜5重量%のカキタンニンと呼ばれる成分を含み分子構造内にベンゼン環、OH基をもつ柿渋とを添加して、前記カーボンナノチューブを分散させたカーボンナノチューブ分散液を製造する工程と、
    前記スラリーと前記カーボンナノチューブ分散液とを混合して、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体および前記柿渋を介して前記セラミックスと前記カーボンナノチューブが結合した、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合物を生成させた混合液を得る工程と、
    前記混合液を乾燥して、カーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体を製造する工程と、
    前記カーボンナノチューブ‐セラミックス結合粉体を成形して焼成する焼成工程とを含むことを特徴とするセラミックス複合材料の製造方法。
  3. 前記セラミックスがアルミナであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックス複合材料の製造方法。
  4. 前記セラミックスを構成する金属原子が陽イオンで存在するための水系媒体のpHを、3.0〜4.0の範囲とすることを特徴とする請求項3に記載のセラミックス複合材料の製造方法。
  5. 前記フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体が、スチレン‐マレイン酸共重合体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のセラミックス複合材料の製造方法。
  6. 前記セラミックスを構成する金属原子が陽イオンで存在するpH領域にpHを調整する酸は、焼成後に酸の成分が残留しない酸であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のセラミックス複合材料の製造方法。
  7. 前記カーボンナノチューブの添加量は、セラミックス粉体の重量に対して0.5〜5重量%であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のセラミックス複合材料の製造方法。
  8. 前記セラミックス粉体に、平均粒子径が0.05〜5μmの範囲となるセラミックス粉体を用いることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のセラミックス複合材料の製造方法。
  9. 前記カーボンナノチューブは、多層構造のカーボンナノチューブであり、比表面積10〜50m2/g、平均アスペクト比が50〜500の範囲であるカーボンナノチューブを用いることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のセラミックス複合材料の製造方法。
  10. 前記焼成工程における焼成温度を1300〜1500℃、焼成雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることを特徴とする請求項1から請求項いずれか一項に記載のセラミックス複合材料の製造方法。
  11. セラミックス複合材料であって、セラミックスとカーボンナノチューブの間が、フェニル基とカルボキシル基を含む共重合体およびカキタンニンと呼ばれる成分を含み分子構造内にベンゼン環、OH基をもつ柿渋の焼成物であり、前記カーボンナノチューブの重量に対して4〜10重量%の非晶質炭素を含む非晶質材料を介して結合されていることを特徴とするセラミックス複合材料。
  12. 前記セラミックスがアルミナであることを特徴とする請求項11に記載のセラミックス複合材料。
  13. 前記カーボンナノチューブの量は、セラミックス粉体の重量に対して0.5〜5重量%であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のセラミックス複合材料。
  14. 前記カーボンナノチューブは、多層構造のカーボンナノチューブであり、比表面積10〜50m2/g、平均アスペクト比が50〜500の範囲となるカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか一項に記載のセラミックス複合材料。
  15. 前記セラミックス複合材料中のセラミックスの平均粒子径が0.5〜5μmの範囲となることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか一項に記載のセラミックス複合材料。
  16. 破壊靭性値が7MPa・m1/2以上、3点曲げ強度が500MPa以上であることを特徴とする請求項11から請求項15のいずれか一項に記載のセラミックス複合材料。
JP2013036225A 2013-02-26 2013-02-26 セラミックス複合材料の製造方法およびセラミックス複合材料 Expired - Fee Related JP6220527B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013036225A JP6220527B2 (ja) 2013-02-26 2013-02-26 セラミックス複合材料の製造方法およびセラミックス複合材料

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013036225A JP6220527B2 (ja) 2013-02-26 2013-02-26 セラミックス複合材料の製造方法およびセラミックス複合材料

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014162692A JP2014162692A (ja) 2014-09-08
JP6220527B2 true JP6220527B2 (ja) 2017-10-25

Family

ID=51613633

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013036225A Expired - Fee Related JP6220527B2 (ja) 2013-02-26 2013-02-26 セラミックス複合材料の製造方法およびセラミックス複合材料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6220527B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TWI654074B (zh) * 2015-02-12 2019-03-21 台灣奈米碳素股份有限公司 Method for producing composite material containing carbon material by using high energy thrust
JP6648423B2 (ja) * 2015-06-19 2020-02-14 日本ゼオン株式会社 不織布およびその製造方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005178151A (ja) * 2003-12-18 2005-07-07 Seiko Epson Corp 焼結体の製造方法および焼結体
JPWO2007029588A1 (ja) * 2005-09-07 2009-03-19 国立大学法人東北大学 高機能複合材料及びその製造方法
JP5088851B2 (ja) * 2006-04-28 2012-12-05 東芝マテリアル株式会社 耐摩耗性部材用窒化珪素焼結体、その製造方法、およびそれを用いた耐摩耗性部材
JP2011153038A (ja) * 2010-01-26 2011-08-11 Kurosaki Harima Corp ナノカーボン被覆耐火原料を使用した耐火物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014162692A (ja) 2014-09-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6858173B2 (en) Nanocrystalline ceramic materials reinforced with single-wall carbon nanotubes
Cho Processing of boron carbide
JP5920819B2 (ja) アルミナを主成分とするセラミックス複合材料の製造方法およびアルミナを主成分とするセラミックス複合材料
JP2005132654A (ja) セラミックス複合材料及びその製造方法
WO2019008711A1 (ja) 焼結体の製造方法
WO2003040060A1 (fr) Pastille frittee a base de carbure de bore et procede de preparation de cette derniere
JP2013500226A (ja) 高靱性セラミック複合材料
JP6220527B2 (ja) セラミックス複合材料の製造方法およびセラミックス複合材料
Kumar et al. Effect of graphene addition on flexural properties of Al 6061 nanocomposites
CN110885254B (zh) 一种多孔Ti3SiC2/SiC复合材料及其制备方法
JP2010500477A (ja) 固溶体粉末を含む混合粉末とそれを用いた焼結体、固溶体粉末を含む混合サ−メット粉末とそれを用いたサ−メット、及びそれらの製造方法
JP2010524839A (ja) 亜酸化ホウ素をベースとする材料
Jiraborvornpongsa et al. Effects of trace amount of nanometric SiC additives with wire or particle shapes on the mechanical and thermal properties of alumina matrix composites
JP5084299B2 (ja) 炭素系固体摺動材料とその製造方法
KR101505251B1 (ko) 철계 혼합분말 제조 방법 및 이로부터 제조된 철계 혼합분말의 소결체
JP2003137656A (ja) 炭化硼素−二硼化チタン焼結体とその製造方法
JP2000277815A (ja) 金属短細線分散熱電材料およびその作製方法
Ruan et al. Effect of aluminum powder on the synthesis of corundum-mullite composites
Kanasan et al. Effect of sintering on hydroxyapatite/sodium alginate properties
JPH01239068A (ja) 硼化チタン系焼結体及びその製造方法
KR102165696B1 (ko) 소결조제, 이의 제조방법 및 이를 이용한 소결체의 제조방법
WO2019131644A1 (ja) アルミナ焼結体の前駆体、アルミナ焼結体の製造方法、砥粒の製造方法及びアルミナ焼結体
WO2011121365A1 (en) Alumina-based ceramic materials and process for the production thereof
JP2001247366A (ja) 炭化硼素焼結体及びその製造方法
JPH02271919A (ja) 炭化チタン微粉末の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160219

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20161111

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161122

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170123

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170530

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170731

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20170731

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20170731

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170912

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20171002

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6220527

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees