以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.前提となる技術>
まず、本発明の好適な実施の形態について説明する前に、本発明の前提となる技術について説明する。そして、前提となる技術の問題点を解消するための、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
上述したように、鉛蓄電池に加え、リチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池のような、頻繁な充放電に対する耐久性が高い蓄電池を車両に搭載し、これらの頻繁な充放電に対する耐久性が高い蓄電池と鉛蓄電池とを並列に接続することで、回生エネルギによるこれら複数の蓄電池の充電の効率向上と、鉛蓄電池の頻繁な充放電による早期劣化の抑制を目的とした技術が提案されている。
一般に、電池の端子電圧は、充電または放電の際に流れる充放電電流をIとすると、
V=(Vo+ΔV)+I・Ri・・・(1)
で表される。なお充放電電流Iは、充電時の充電電流を正、放電時の放電電流を負としている。またVoは電池のSOC(State Of Charge;充電率)に応じて決まる開放電圧(OCV;Open Circuit Voltage)、Riは内部抵抗、ΔVは分極電圧である。
上記数式(1)における右辺の(Vo+ΔV)の部分は、見かけ上の電池の起電圧に当たり、充電により分極が発生して分極電圧ΔVが大きくなると、見かけ上の起電圧が上昇し、充電電流が減少する。鉛蓄電池は、大きな分極電圧ΔVが発生するため、充電を始めると早期に充電電流が低下しやすい特性を持っている。従って鉛蓄電池は、回生エネルギによる充電(回生充電)の際に、回生充電の電気量を確保しにくい傾向がある。
その一方で、車両の駐車中やアイドル停止中においては、自然放電により鉛蓄電池の充電率が低下する。また、車両の駐車中やアイドル停止中に車両の電気負荷(エアーコンディショナ、オーディオ装置、ナビゲーション装置等の車体に設けられる電気を使用する負荷全般を指す)が駆動されると、鉛蓄電池の充電率が低下する。このため、エンジン始動後に、自然放電や車両の電気負荷による電力消費分を回復する為に、鉛蓄電池への補充電が行われる。鉛蓄電池への補充電を行う場合は、分極電圧による充電電流の低下を補うため、SOC=100%の時のOCVより十分高い端子電圧を鉛蓄電池へ印加する。この場合、鉛蓄電池への印加電圧の一部が分極電圧ΔVに打ち消される形になる為に、鉛蓄電池には、実質的に見かけ上の印加電圧より小さい電圧しか掛かっていない状態と等しい。従って、鉛蓄電池は充電を長時間行っても、いわゆる過充電という、満充電を超えて電荷を蓄えようとする状態になりにくい特性がある。
一方、リチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池は、分極電圧ΔVの影響が鉛蓄電池よりも小さく、SOCが上昇して開放電圧Voが大きくなるまで充電電流の低下が比較的少ないという特性を持っている。このような特性を有するために、リチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池は、回生充電での電気量を大きくし易い傾向がある。しかし、リチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池は、鉛蓄電池とは逆に、高い電圧を長時間印加すると、過充電の状態に至り易いという特性を持っており、過充電になると、充電容量の低下等の性能劣化が生じてしまう
このような鉛蓄電池とは特性の異なる電池を、鉛蓄電池と並列に接続する事で、回生充電中の充電電流の時間的な低下が抑えられて、回生効果を高められる一方で、始動後の補充電時は、分極電圧ΔVが小さいリチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池は、開放電圧Voが上昇するまで大きな充電電流が持続するため、鉛蓄電池が適正な状態まで充電されるまで補充電を継続すると、リチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池には必要以上に充電され、過充電の状態に至ってしまう。
図1は、一般的な鉛蓄電池とニッケル水素充電池をそれぞれ10個直列に接続した場合の、SOCに対するOCVの特性の例をグラフで示す説明図である。図1の実線が、鉛蓄電池のSOCに対するOCVの特性の例であり、破線がニッケル水素充電池のSOCに対するOCVの特性の例である。以下の説明では、鉛蓄電池でも積極的に回生充電を行うため、通常制御時の端子電圧をこの鉛蓄電池のSOCが95%相当の電圧である12.9Vになるように発電機(オルタネータ)の調製電圧を制御するものとする。
鉛蓄電池のSOCが95%相当の電圧である12.9Vになるように発電機の調製電圧を制御する場合、ニッケル水素充電池はOCVが12.9Vとなる18%のSOCでバランスする事になる。この状態で、車両の減速時に得られる回生エネルギによる回生充電を行なうと、鉛蓄電池はSOCが95%以上、ニッケル水素充電池はSOCが18%以上に充電される。回生充電が終了して通常制御に戻すと、端子電圧が12.9Vになるまで鉛蓄電池及びニッケル水素充電池から放電されるので、発電機の発電電流は減少し、燃費向上効果が得られる。
駐車中の放電電流によるSOCの低下を補う為に、この鉛蓄電池とニッケル水素充電池とを組合せた電池の補充電を行う場合、通常は鉛蓄電池のSOCが100%のOCVより高い電圧(例えば14.2V)に発電機の調製電圧を制御する。これは、鉛蓄電池のSOCが100%のOCVより高い電圧を印加することで、鉛蓄電池に大きな分極電圧が発生し、充電時間を短縮するためである。
しかし、この14.2Vという電圧は、ニッケル水素充電池にとってはSOCが100%のOCV以上の電圧である。従って、14.2Vの電圧をニッケル水素充電池に印加し続けると、ニッケル水素充電池は過充電に至る。また、ニッケル水素充電池が過充電に至る前に鉛蓄電池の補充電が完了したとしても、その間に本来バランスするSOCである18%を大きく越えたSOCまで、ニッケル水素充電池の充電が進んでしまう。なお、この必要以上にニッケル水素充電池に充電された分は、鉛蓄電池の補充電が終了し、発電機の制御電圧を12.9Vに低下させるとニッケル水素充電池から放電される。
このように、電池としての特性の違いから、駐車中やアイドル停止中の放電を回復するめに、鉛蓄電池の特性に合わせた電圧及び時間で補充電を行うと、リチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池には必要以上の充電がなされてしまう。一方、リチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池の特性に合わせた電圧及び時間で補充電を行うと、鉛蓄電池側は必要な充電率を確保することができない。
従って、鉛蓄電池にリチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池を並列に接続する場合は、鉛蓄電池のバッテリ上がりを防止するために鉛蓄電池の特性に合わせた補充電を行わざるを得ず、リチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池には回生充電のために過放電を起こさない範囲で充電率を低く維持していないといけないにも関わらず、必要以上の充電が行われ、その後の放電が為される事になる。
電池の放電及び充電は化学的な反応によって起こる現象であるが、この化学的な反応により活物質は膨張または収縮する。活物質の膨張、収縮により、活物質のみならず集電体やセパレータに応力が加わり、この応力の繰り返しにより電池は劣化していく。また、放電後充電を行っても、活物質は完全には初期と同じ状態に戻る事はなく、充放電の繰り返しにより不活性な反応生成物の残留や活物質表面積の減少が発生し、これも電池の劣化の要因となる。
エンジンの出力で発電機を回転させて、その発電電力で補充電を行うという車両の一般的な構成では、燃料を使用して補充電を行っているために、補充電自体には燃費改善効果はない。従って、補充電時に発生するリチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池の余剰な充電及びその後の放電は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池の劣化を招くという弊害のみが発生してしまう。
上述した、複数の特性の異なる電池を並列に組み合わせた場合に発生する問題は、定常的なSOCに対するOCVの関係に起因するものではなく、動的に変化する分極電圧等に起因するものである、この問題は、動的に変化する分極電圧に起因するため、定常的な特性で組み合わせる電池を選定したり、電池特性を作りこんだりする、上記特許文献1で開示された発明で解決することは出来ない。
そこで以下では、鉛蓄電池に加えて、リチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池といった別の蓄電池を車両に搭載する際に、回生エネルギによるこれらの蓄電池への充電の効率向上を図ると共に、鉛蓄電池とは別の蓄電池への過充電を防止することを可能にした、本発明の好適な実施の形態について説明する。
<2.本発明の実施の形態>
[2−1.第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置の機能構成例について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置100の機能構成例を示す説明図である。以下、図2を用いて本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置100の機能構成例について説明する。
図2に示した車両用電源装置100が搭載される車両は、エンジンを走行の駆動源とした車両である。図2に示したように、車両用電源装置100は、制御装置110と、電気負荷120と、メインリレー130と、スタータ(ST)140と、オルタネータ(ALT)150と、鉛蓄電池161と、ニッケル水素充電池162と、第1の電流センサ171と、第2の電流センサ172と、を含んで構成される。
制御装置110は、車両用電源装置100の動作を制御する装置である。本実施形態では、制御装置110は、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の充電率と、車両用電源装置100が搭載される車両の走行状態に応じて、メインリレー130のオン・オフの切り替えと、オルタネータ150の調整電圧と、を制御する。
図2に示したように、電気負荷120、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162は、オルタネータ150に対して並列に接続されている。本実施形態では、鉛蓄電池161の容量の方がニッケル水素充電池162の容量よりも大きい二次電池であるものとする。
電気負荷120は、車両において電力を消費する各種負荷の集まりであり、例えばヘッドライト、テールライト、ブレーキライト、空調装置の送風ファン、デフロスタ用のヒータ、オーディオ装置、ナビゲーション装置等である。電気負荷120は、オルタネータ150、鉛蓄電池161、ニッケル水素充電池162から供給される電力を消費する。
メインリレー130は、入力部131への給電の有無によって、例えば電磁石等により、スイッチの接点をオン・オフさせることで電流を通したり遮断したりする部品である。メインリレー130の入力部131への電流の供給または遮断を制御装置110から制御することで、メインリレー130のオン・オフが切り替えられる。
メインリレー130は、駐車中、すなわちイグニッションスイッチがオフになっている場合は、制御装置110によってオフ状態となっている。メインリレー130がオフ状態になると、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とが電気的に切り離される。
スタータ140は、車両の始動時に駆動するモータである。上述したように、駐車中はメインリレー130がオフ状態となっているので、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とが電気的に切り離された状態となっている。従って、イグニッションスイッチがSTARTまで回された際にスタータ140が使用する電力は、鉛蓄電池161から供給される。
オルタネータ150は、エンジンの動力を駆動力に利用して稼働する発電機であり、クランク軸の回転エネルギにより発電する。オルタネータ150が発電した電力は電気負荷120へ供給されるとともに、鉛蓄電池161へ供給される。またメインリレー130がオン状態の時は、オルタネータ150が発電した電力はニッケル水素充電池162へも供給される。
また本実施形態では、車両の減速時にエンジンへの燃料カットが生じると、オルタネータ150は車輪の回転を駆動力に利用して発電する。そして、オルタネータ150による鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162への回生充電が行われる。オルタネータ150による回生充電が行われる際には、制御装置110が、オルタネータ150の調整電圧を、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162への回生充電のための電圧に制御する。
鉛蓄電池161は、電気負荷120へ供給する電力を蓄える周知の蓄電池である。鉛蓄電池161は、正極(陽極板)に二酸化鉛、負極(陰極板)に海綿状の鉛、電解液に希硫酸を用いた二次電池である。またニッケル水素充電池162は、正極に水酸化ニッケル、負極に水素吸蔵合金、電解液に濃水酸化カリウム水溶液を用いた二次電池である。鉛蓄電池161は、本発明の第1の蓄電池の一例であり、ニッケル水素充電池162は、本発明の第2の蓄電池の一例である。
第1の電流センサ171は、鉛蓄電池161の充放電電流を計測するセンサである。また第2の電流センサ172は、ニッケル水素充電池162の充放電電流を計測するセンサである。第1の電流センサ171及び第2の電流センサ172が計測した、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の充放電電流の値は、それぞれ制御装置110に定期的に送られる。また、第1の電流センサ171及び第2の電流センサ172からは、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162の電圧値も、それぞれ制御装置110に定期的に送られる。
以上、図2を用いて本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置100の機能構成例について説明した。次に、車両用電源装置100に含まれる制御装置110の機能構成例について説明する。
図3は、制御装置110の機能構成例を示す説明図である。以下、図3を用いて制御装置110の機能構成例について説明する。
図3に示したように、制御装置110は、センサ信号取得部111と、SOC算出部112と、運転状態判断部113と、電圧制御部114と、リレー制御部115と、を含んで構成される。
センサ信号取得部111は、第1の電流センサ171と、第2の電流センサ172とから定期的に送られる信号を取得する。第1の電流センサ171と、第2の電流センサ172とから送られる信号には、それぞれ、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162の充放電電流の値及び電圧値の値が含まれる。
SOC算出部112は、センサ信号取得部111が、第1の電流センサ171と、第2の電流センサ172とから取得した信号に基づき、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162のSOCを算出する。具体的には、SOC算出部112は、センサ信号取得部111が第1の電流センサ171と第2の電流センサ172とから取得した信号で得られる、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162の充放電電流の値をそれぞれ積算することで、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162それぞれのSOCを算出する。
運転状態判断部113は、車両用電源装置100が搭載されている車両の運転状態を判断する。運転状態判断部113は、車両の運転状態として、例えばイグニッションスイッチ(図示せず)の状態や、エンジンの駆動状態、減速時の燃料カットの発生の有無について判断する。なお、後述する第2の実施形態では、運転状態判断部113は、これらの車両の運転状態に加え、アイドルストップを行なう所定の自動停止条件の発生の有無や、アイドルストップ後の所定の再始動条件の発生の有無についても判断する。
電圧制御部114は、運転状態判断部113が判断した車両の運転状態と、SOC算出部112が算出した鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162のSOCとに基づき、オルタネータ150の調整電圧を制御する。
リレー制御部115は、車両の運転状態と、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162のSOCとに基づき、メインリレー130のオン・オフの状態を切り替える制御を行なう。具体的には、リレー制御部113は、メインリレー130の入力部131への電流の供給または遮断を制御することで、メインリレー130のオン・オフの状態を切り替える制御を行なう。
制御装置110は、図3に示したような構成を有することで、車両の運転状態と、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の充電率とから、オルタネータ150の調整電圧の制御及びメインリレー130のオン・オフの状態を切り替える制御を行なうことが出来る。制御装置110によるオルタネータ150の調整電圧の制御及びメインリレー130のオン・オフの状態を切り替える制御の具体例については後に詳述する。
以上、図3を用いて制御装置110の機能構成例について説明した。続いて、本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置100の動作について説明する。
図4及び図5は、本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置100の第1の動作例を示すフローチャートである。以下、図4及び図5を用いて、本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置100の動作について説明する。
本実施形態では、駐車中、すなわちイグニッションスイッチがオフの状態であると運転状態判断部113が判断すると、リレー制御部115は、メインリレー130の入力部131への電流を遮断することで、メインリレー130をオフ状態にする(ステップS101)。メインリレー130がオフ状態になると、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とが電気的に切り離された状態になる。またメインリレー130がオフ状態になると、電気負荷120への電力は鉛蓄電池161のみから供給される。
また制御装置110は、駐車中の鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の放電量をSOC算出部112で算出する(ステップS102)。駐車中の鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の放電量は、第1の電流センサ171と、第2の電流センサ172とから定期的に送られる信号に含まれる放電電流の値から算出することができる。
車両用電源装置100は、イグニッションスイッチがSTARTまで回され、エンジンが始動するまで待機する(ステップS103)。イグニッションスイッチがSTARTまで回されると、鉛蓄電池161に蓄えられている電力によってスタータ140が駆動され、エンジンが始動する。そして、エンジンが始動することによってオルタネータ150が発電を始める。
駐車中は、鉛蓄電池161の電力が自然放電される。また駐車中は、電気負荷120へ電力を供給するために鉛蓄電池161に蓄えられている電力が消費される場合がある。従って、オルタネータ150が発電を始めると、電圧制御部114は、鉛蓄電池161の放電分や消費分を補うために、鉛蓄電池161へ十分な充電ができる電圧(例えば14.2V)となるように、オルタネータ150の調整電圧を制御して、鉛蓄電池161の補充電を開始する(ステップS104)。
制御装置110は、第1の電流センサ171が検出した鉛蓄電池161の充放電電流と、第2の電流センサ172が検出したニッケル水素充電池162の充放電電流とをセンサ信号取得部111で定期的に取得している。そして制御装置110は、センサ信号取得部111が第1の電流センサ171から取得した信号で得られる、鉛蓄電池161の充電電流の値を積算することで、鉛蓄電池161の充電率をSOC算出部112で算出する(ステップS105)。
鉛蓄電池161のSOCが所定の値、例えば95%まで達したとSOC算出部112が算出すると(ステップS106、Yes)、電圧制御部114は、鉛蓄電池161の補充電を終了し、そのSOCを維持する電圧(例えば12.9V)となるようにオルタネータ150の調整電圧を所定の通常の電圧値(例えば、13.5V)に制御する(図5のステップS107)。またリレー制御部115は、メインリレー130をオン状態にする制御を行なう(ステップS108)。メインリレー130がオン状態になることで、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とが並列に接続される状態になる。
一方、鉛蓄電池161のSOCが所定の値に達していないとSOC算出部112が算出すると(ステップS106、No)、制御装置110の動作は上記ステップS105の処理まで戻る。
車両が走行している場合は、電気負荷120へは、オルタネータ150、鉛蓄電池161、及びニッケル水素充電池162から電力が供給される。一方、車両が減速し、エンジンへの燃料カットが発生すると、電圧制御部114は、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の回生充電のための電圧(例えば15V)にオルタネータ150の調整電圧を制御する。この時点ではメインリレー130がオン状態であるので、オルタネータ150の発電により、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162に回生充電が行われる。
一般に、鉛蓄電池への回生充電を積極的に行うには、鉛蓄電池に発生する分極電圧を見越して、鉛蓄電池のSOCが100%の時のOCVより高い電圧を印加する。しかし、この電圧は、ニッケル水素充電池のSOCが100%のOCVより高いため、回生充電の時間が長くなると、ニッケル水素充電池が過充電となってしまう可能性がある。
しかし、回生充電時にニッケル水素充電池162が過充電とならないよう、オルタネータ150の調整電圧を制御すると、SOCが100%に達しておらず、まだ充電可能な鉛蓄電池161への回生充電が抑制されてしまい、燃費効果が薄まることになる。
そこで本動作例では、制御装置110は、ニッケル水素充電池162のSOCが所定のSOCに達すると、メインリレー130をオフ状態にして、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に切り離す制御を実行する。ニッケル水素充電池162のSOCが所定のSOCに達すると、メインリレー130をオフ状態にして鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に切り離すことで、本実施形態に係る車両用電源装置100は、ニッケル水素充電池162への回生充電を停止した後も鉛蓄電池161への回生充電を継続して、燃費効果を高めることが出来る。
制御装置110は、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162のそれぞれの充電率をSOC算出部112で積算する(ステップS109)。ニッケル水素充電池162のSOCが所定のSOC(例えば80%)に達したことをSOC算出部112が算出すると(ステップS110、Yes)、リレー制御部115は、メインリレー130をオフ状態にして、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に切り離す(ステップS111)。一方、ニッケル水素充電池162のSOCが所定のSOC(例えば80%)に達していなければ(ステップS110、No)、リレー制御部115は、メインリレー130をオン状態のままとする(ステップS112)。
制御装置110は、上記ステップS111、112で、ニッケル水素充電池162のSOCに応じてメインリレー130の状態を設定することで、充電時の電池の選択が可能になる。制御装置110は、ニッケル水素充電池162のSOCが所定のSOCに達したことを条件に、メインリレー130をオフ状態にすることで、オルタネータ150の調整電圧を下げずに鉛蓄電池161のみへの回生充電を継続させることができる。このように制御装置110がメインリレー130の状態を制御することで、車両用電源装置100は、鉛蓄電池161への回生効果を低減させる事無く、定常的には回生充電時の電圧が、SOCが100%のOCVを超えてしまうような特性を持つニッケル水素充電池162を組合せる事ができる。
そして、上記ステップS111、112で、ニッケル水素充電池162のSOCに応じてメインリレー130の状態を設定した後、制御装置110は、エンジンへの燃料カット中かどうかを、例えば運転状態判断部113で判断する(ステップS113)。エンジンへの燃料カット中であれば(ステップS113、Yes)、電圧制御部114は、オルタネータ150の調整電圧を鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の回生充電のための電圧(例えば15V)に制御する(ステップS114)。一方、エンジンへの燃料カットが終了すると(ステップS113、No)、電圧制御部114は、上記のSOCを維持する電圧(例えば12.9V)となるように、オルタネータ150の調整電圧を所定の通常の電圧値(例えば、13.5V)まで下げる(ステップS115)。
このステップS114の時点では、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162のSOCは回生充電により大きくなっているため、OCVが高く、電気負荷120の消費電流の一部または全部が、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162より供給される。電気負荷120の消費電流の一部または全部が、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162より供給されることで、オルタネータ150の発電量が減少し、その減少分によってオルタネータ150の駆動トルクが低減されて、車両用電源装置100を搭載する車両は、燃費改善効果が得られる。
その後、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162から放電が進むことで、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162のSOCが小さくなり、OCVが低下する。鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162のOCVが低下することで鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の電源電圧が低下していく。オルタネータ150の調整電圧まで鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の電源電圧が低下すると、オルタネータ150が発電を始めるので、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162からの放電が止まり、OCVが12.9VとなるSOCに、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162のSOCがバランスする。
イグニッションスイッチがオフになりエンジンが停止すると(ステップS116、Yes)、リレー制御部115は、メインリレー130をオフ状態にして(ステップS117)、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に切り離す。一方、イグニッションスイッチがオフになっていなければ(ステップS116、No)、制御装置110は、上記ステップS109の、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162のそれぞれの充電率の積算処理へ戻り、以降の処理を継続する。
鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とが電気的に切り離されると、電気負荷120につながっている電池は鉛蓄電池161のみである。従って、メインリレー130をオフ状態にして、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に切り離すことで、制御装置110は、エンジン停止中でも電気負荷120が使用する電力によってニッケル水素充電池162が放電することを防止でき、ニッケル水素充電池162のOCVを所定の値(例えば12.9V)の状態で放置することができる。
なお、鉛蓄電池161への補充電中にエンジンへの燃料カットが発生した場合、リレー制御部115は、燃料カット中のみメインリレー130をオン状態にしてもよい。リレー制御部115が、燃料カット中にメインリレー130をオン状態にする事で、ニッケル水素充電池162には回生充電がなされる。車両用電源装置100が燃料カット中にニッケル水素充電池162にも回生充電を行なうことで、燃料カットが発生する度にニッケル水素充電池162のSOCが大きくなる。
従って、鉛蓄電池161の補充電が終了した後のニッケル水素充電池162のSOCは、上述の第1の動作例でのニッケル水素充電池162のSOCより大きくなり、従ってOCVも高くなる。この場合、鉛蓄電池161の補充電の終了によってメインリレー130がオン状態になると、オルタネータ150の調整電圧や鉛蓄電池161の電圧より電圧が高くなっているニッケル水素充電池162から電気負荷120への放電によって、オルタネータ150の駆動負荷を低減させることができる。
続いて、本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置100の第2の動作例について説明する。図6は、本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置100の第2の動作例を示すフローチャートである。図6に示したのは、鉛蓄電池161への補充電中にエンジンへの燃料カットが発生した場合にメインリレー130をオン状態にする際の動作例である。
図4及び図5に示した動作例と同様に、駐車中、すなわちイグニッションスイッチがオフの状態では、リレー制御部115は、メインリレー130の入力部131への電流を遮断することで、メインリレー130をオフ状態にする(ステップS121)。また制御装置110は、駐車中の鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の放電量をSOC算出部112で算出する(ステップS122)。そして車両用電源装置100は、イグニッションスイッチがSTARTまで回され、エンジンが始動するまで待機する(ステップS123)。
ニッケル水素充電池162のSOCが所定のSOC(過放電による劣化を防止できるSOC、例えば15%)に達していることをSOC算出部112が算出すると(ステップS124、Yes)、リレー制御部115は、メインリレー130をオフ状態にして、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に切り離す(ステップS126)。一方、ニッケル水素充電池162のSOCが所定のSOCに達していなければ(ステップS124、No)、リレー制御部115は、メインリレー130をオン状態とする(ステップS125)。
本動作例では、上記ステップS125のように、始動後の鉛蓄電池161への補充電中に、ニッケル水素充電池162のSOCが所定の値となるまでは、リレー制御部113は、メインリレー130をオン状態にして、鉛蓄電池161と共にニッケル水素充電池162への補充電が行われるようする。この場合、ニッケル水素充電池162のSOCが所定の値となれば、リレー制御部113は、上記ステップS126のようにメインリレー130をオフ状態にすることで、鉛蓄電池161の補充電のみが継続されるようにすることができる。
制御装置110は、エンジンへの燃料カット中かどうかを、例えば運転状態判断部113で判断する(ステップS127)。エンジンへの燃料カット中であれば(ステップS127、Yes)、電圧制御部114は、オルタネータ150の調整電圧を鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の回生充電のための電圧(例えば15V)に制御する(ステップS129)。一方、エンジンへの燃料カットが終了すると(ステップS127、No)、電圧制御部114は、上記のSOCを維持する電圧(例えば12.9V)となるようにオルタネータ150の調整電圧を所定の通常の電圧値(例えば、13.5V)まで下げる(ステップS128)。
続いて制御装置110は、センサ信号取得部111が第1の電流センサ171及び第2の電流センサ172から取得した信号で得られる、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の充電電流の値を積算することで、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の充電率をSOC算出部112で算出する(ステップS130)。
鉛蓄電池161のSOCが所定の値、例えば95%まで達したとSOC算出部112が算出すると(ステップS131、Yes)、電圧制御部114は、鉛蓄電池161の補充電を終了し、そのSOCを維持する電圧(例えば12.9V)となるようにオルタネータ150の調整電圧を所定の値(例えば、13.5V)に制御する。そして制御装置110は、図5のステップS107以降の処理を実行する。
一方、鉛蓄電池161のSOCが所定の値に達していないとSOC算出部112が算出すると(ステップS131、No)、制御装置110の動作は上記ステップS124の処理まで戻る。
鉛蓄電池161への補充電中であっても、燃料カット中にメインリレー130をオン状態にすることで、回生充電によりニッケル水素充電池162のSOCが大きくなって行く。そして鉛蓄電池161への補充電が終了した時のニッケル水素充電池162のSOCは、ニッケル水素充電池162へ回生充電を行わない場合に比べて大きくなっている。
従って、エンジンへの燃料カットが発生する度にニッケル水素充電池162へ回生充電を行なうと、回生充電を行わない場合に比べてニッケル水素充電池162のOCVが高くなる。よって、鉛蓄電池161への補充電が終了して、リレー制御部113がメインリレー130をオン状態にすると、オルタネータ150の調整電圧や鉛蓄電池161の電圧よりOCVが高くなっているニッケル水素充電池162から放電が行われる。従って、オルタネータ150の駆動負荷を低減する事が出来る。
このようにメインリレー130のオン、オフがなされるような構成することで、例えば前の運転サイクルでのニッケル水素電池の電力消費が大きく、ニッケル水素充電池162のSOCが設定より低くなった場合でも、車両用電源装置100は、次の運転サイクルで、回生制御の開始前にニッケル水素充電池162の充電率を所望の状態に回復させる事ができ、制御の安定性を向上することができる。なお、ニッケル水素充電池162のSOCが設定より低くなった場合とは、例えば、前回の運転サイクルにおいて、車体に搭載された複数の装置(例えば、ヘッドライト、エアーコンディショナ、ワイパー等)を同時に使用して、一時的にオルタネータ150の発電能力を超えて電気負荷120が電力を消費したためにニッケル水素充電池162のSOCが下がってしまった場合等である。
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置100は、車両の運転状態や、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の充電率に応じて、メインリレー130をオンまたはオフさせることで、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に接続したり、切り離したりすることができる。車両用電源装置100は、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に接続したり切り離したりすることで、特性が異なる複数の電池を組み合わせた場合に、オルタネータ150が生成するエネルギによる鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162への充電を効率よく実施することができる。
(第1の実施形態のまとめ)
以上説明したように本発明の第1の実施形態によれば、車両の状態や、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162との充電率に応じて、メインリレー130のオン・オフ状態を切り替えて、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に接続または切断する、車両用電源装置100が提供される。
本実施形態に係る車両用電源装置100は、エンジン始動後の鉛蓄電池161への補充電時に、ニッケル水素充電池162の充電率に応じてメインリレー130のオン・オフ状態を切り替える。ニッケル水素充電池162のSOCが所定値に達していれば、車両用電源装置100は、メインリレー130をオフ状態にして、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に切り離した状態にする。鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とが電気的に切り離されていると、オルタネータ150が発電した電力は、鉛蓄電池161にのみ供給される。
本実施形態に係る車両用電源装置100は、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に切り離した状態にして、オルタネータ150が発電した電力が鉛蓄電池161にのみ供給されるようにすることで、鉛蓄電池161への補充電時にニッケル水素充電池162への過充電を防止できる。ニッケル水素充電池162の充電率に応じてメインリレー130のオン・オフ状態を切り替えることで、本実施形態に係る車両用電源装置100は、鉛蓄電池161への補充電時に、ニッケル水素充電池162への過充電を防止し、ニッケル水素充電池162の性能の劣化を抑えることができる。
また本実施形態に係る車両用電源装置100は、車両の走行時にエンジンへの燃料カットが発生すると、オルタネータ150の調整電圧を上げて、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162へ、回生エネルギによる回生充電を行なう。そしてニッケル水素充電池162のSOCが所定の値まで達すると、車両用電源装置100は、メインリレー130をオフ状態にして、オルタネータ150が発電した電力が鉛蓄電池161にのみ供給されるようにする。
このように、本実施形態に係る車両用電源装置100は、回生エネルギによる回生充電時に、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162との充電率に応じて、メインリレー130のオン・オフ状態を切り替えることで、回生充電の際にニッケル水素充電池162への過充電が起こるのを防止すると共に、回生エネルギによる回生充電を効率よく行なうことができる。
従って、本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置100は、鉛蓄電池161への補充電時や、燃料カットの発生に伴う回生充電の際に、メインリレー130のオン・オフ状態を切り替えて、ニッケル水素充電池162への過充電が起こるのを防止することで、車両の燃費向上に加え、ニッケル水素充電池162の性能の劣化を抑えることができるという効果を奏する。また本発明の第1の実施形態に係る車両用電源装置100は、ニッケル水素充電池162の充電率に関わらず、鉛蓄電池161への補充電は確実に行なわれるので、車両の駆動に影響を与えずに、ニッケル水素充電池162の性能の劣化を抑えることができるという効果も奏する。
[2−2.第2の実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態に係る車両用電源装置の機能構成例について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る車両用電源装置100’の構成例を示す説明図である。以下、図7を用いて本発明の第2の実施形態に係る車両用電源装置100’の構成例について説明する。
図7に示した車両用電源装置100’が搭載される車両は、エンジンを走行の駆動源とした車両である。また図7に示した車両用電源装置100’が搭載される車両は、アイドルストップ機能を有する車両である。アイドルストップ機能とは、所定の自動停止条件を満たした場合にエンジンを自動で停止させ、所定の再始動条件を満たした場合にエンジンを自動で再始動させる機能である。所定の自動停止条件には、例えば信号待ちや渋滞などで運転者がブレーキを踏んで車両を停止した場合がある。また所定の再始動条件には、例えば運転者がブレーキから足を離した場合がある。
図7に示したように、第2の実施形態に係る車両用電源装置100’は、イグニッションスイッチ101と、制御装置110と、電気負荷121,122と、メインリレー130と、スタータ140と、オルタネータ150と、鉛蓄電池161と、ニッケル水素充電池162と、第1の電流センサ171と、第2の電流センサ172と、配電制御部180と、を含んで構成される。
第1の実施形態に係る車両用電源装置100と同じ符号を付したものについては説明を省略し、ここでは電気負荷121,122及び配電制御部180について説明する。
イグニッションスイッチ101は、車両を動作させるためのスイッチであり、図7では、OFF、Acc(アクセサリ)、Ign(イグニッション)、St(スタート)の4つのポジションを有する。イグニッションスイッチ101のポジションによって、後述する配電制御部180の各リレー181、182の開閉状態が変化する。
第1の実施形態では電気負荷は1つにまとめられていたが、第2の実施形態では、電源電圧の保護が不要な電気負荷の一群である電気負荷121と、電圧低下に対する保護が必要な電気負荷122に分類している。電源電圧の保護が不要な電気負荷の例としては、ヘッドライト、テールライト、ブレーキライト、空調装置の送風ファン、デフロスタ用のヒータなどが含まれ、電圧低下に対する保護が必要な電気負荷の例としては、オーディオ装置、ナビゲーション装置などが含まれ得る。
配電制御部180は、ニッケル水素充電池162から供給される電力を、常時電源、アクセサリ電源、イグニション電源などの電源種別に分けて供給するためのものである。配電制御部180は、イグニッションスイッチ101の位置に応じてニッケル水素充電池162が蓄えている電力を電気負荷122の各電源に供給する為のリレー181、182、回り込み防止のためのダイオードD1〜D6を有して構成されている。
イグニッションスイッチ101のポジションがOFF及びStの場合は、リレー181、182はいずれも開いた状態にされる。イグニッションスイッチ101のポジションがOFFの場合は、電気負荷122へはニッケル水素充電池162に蓄えられた電力が供給されるが、オーディオ装置、ナビゲーション装置等のアクセサリへの電力供給は行われない。イグニッションスイッチ101のポジションがAccの場合は、リレー181が閉じた状態にされ、電気負荷122へニッケル水素充電池162に蓄えられた電力が供給される。イグニッションスイッチ101のポジションがIgnの場合は、リレー182が閉じた状態にされ、電気負荷122へニッケル水素充電池162に蓄えられた電力が供給される。イグニッションスイッチ101のポジションがStになると、図示しない配線によって、スタータ140へ電力が供給され、スタータ140が駆動される。
アイドルストップ機能を有する車両は、アイドルストップ状態の後に、所定の再始動条件を満たしてクランキングが開始されると、クランキング電流の発生により一時的に電圧の低下が生じる場合がある。この電圧低下は、オーディオ装置やナビゲーション装置に、動作の停止やリセットなどの悪影響を与える。そこで本実施形態では、図7のように車両用電源装置100’を構成して、アイドルストップ状態の後に、所定の再始動条件を満たしたことでクランキングが開始されても、電気負荷122に対して電圧低下の影響を与えず、電気負荷122を安定して動作させるようにする。
以上、図7を用いて本発明の第2の実施形態に係る車両用電源装置100’の機能構成例について説明した。続いて、本発明の第2の実施形態に係る車両用電源装置100’の動作について説明する。
図8〜図10は、本発明の第2の実施形態に係る車両用電源装置100’の動作例を示すフローチャートである。図8〜図10に示したのは、図4のステップS106より後の処理である。以下、図8〜図10を用いて本発明の第2の実施形態に係る車両用電源装置100’の動作について説明する。
アイドルストップ機能を有する車両では、鉛蓄電池161の劣化を抑制するために、駐車中の鉛蓄電池161の放電分を補充電により回復するまではアイドルストップを禁止しており、その時の動作は上述の第1の実施形態と同じである。鉛蓄電池161の放電分を回復し補充電を終了すると、制御装置110は、メインリレー130をオン状態にして、その後はメインリレー130のオン・オフの制御が上述の第1の実施形態と同じように実施される。アイドルストップが行われると、以下で説明する第2の実施形態による処理が行われる。
所定の自動停止条件が成立すると、車両はアイドルストップを実施する。そして所定の再始動条件が成立すると、車両は自動的にスタータ140を駆動し、クランキングを開始する。この再始動の際、本実施形態では次のような動作が行われる。
制御装置110は、車両がアイドルストップ中であれば(ステップS141、Yes)、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162のそれぞれの放電量をSOC算出部112で積算する(ステップS142)。制御装置110は、所定の再始動条件が成立し、始動要求があるまで上記ステップS141及びステップS142の処理を繰り返す(ステップS143、No)。
所定の再始動条件が成立し、始動要求が有ると(ステップS143、Yes)、リレー制御部115は、クランキングを開始する前に、メインリレー130をオフ状態にして、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に切り離す(ステップS144)。鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とが電気的に切り離されると、電気負荷121には鉛蓄電池161のみから電力が供給され、電気負荷122には、配電制御部180を通してニッケル水素充電池162のみから電力が供給される。
メインリレー130が確実にオフ状態になった後にスタータ140が駆動される。スタータ140の駆動により、クランキングが開始され、エンジンが始動する(ステップS145)。メインリレー130がオフ状態となっているために、スタータ140は鉛蓄電池161の電力によって駆動され、クランキング開始時に生じる、クランキング電流による電圧低下はニッケル水素充電池162では発生しない。従って、電源電圧の保護が必要な電気負荷122の電源電圧は、ニッケル水素充電池162によって供給され、クランキングが開始しても安定した状態に保たれる。
すなわち、本実施形態に係る車両用電源装置100’は、アイドルストップ状態の後に、所定の再始動条件を満たしたことでクランキングが開始されても、メインリレー130がオフ状態となり、電気負荷122へはニッケル水素充電池162から安定した電源が供給されることで、電気負荷122に対して動作の停止やリセットなどの影響を与えずに済む。エンジンが始動すると、電圧制御部114は、鉛蓄電池161への補充電を行なう電圧にオルタネータ150の調整電圧を所定の値に制御する(ステップS146)。
なお制御装置110は、車両がアイドルストップ中でなければ(ステップS141、No)、ステップS142〜S146の処理をスキップする。
続いて制御装置110は、ニッケル水素充電池162のSOCが所定のSOC(例えば80%)に達したことをSOC算出部112が算出すると(ステップS147、Yes)、メインリレー130をオフ状態にして、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に切り離す制御をリレー制御部115で実行する(ステップS148)。一方、ニッケル水素充電池162のSOCが所定のSOC(例えば80%)に達していなければ(ステップS147、No)、制御装置110は、メインリレー130をオン状態とする制御をリレー制御部115で実行する(ステップS149)。
第2の実施形態のように、本発明の一実施形態をアイドルストップ車へ適用する場合は、ニッケル水素充電池162のSOCが所定値より低い場合には、鉛蓄電池161の補充電中であっても、ニッケル水素充電池162が所定のSOCまで回復するまでメインリレー130をオン状態にして、ニッケル水素充電池162へも補充電する事が望ましい。ニッケル水素充電池162は、アイドルストップ中や、クランキング時の鉛蓄電池161の電圧低下に対処するべく、電気負荷122の電源電圧を保持するために放電している。
そこで第2の実施形態に係る車両用電源装置100’は、図9のステップS149で示したようにメインリレー130をオン状態にして、ニッケル水素充電池162へも補充電する。ニッケル水素充電池162へ補充電することで、頻繁なアイドルストップが繰り返された場合のような、オルタネータ150の回生エネルギによる回生充電によってもニッケル水素充電池162のSOCの回復の機会が十分得られない可能性がある運転状態の時に、ニッケル水素充電池162のSOCが想定以上に低下してしまう事を防止することができる。
続いて制御装置110は、エンジンへの燃料カット中かどうかを、例えば運転状態判断部113で判断する(ステップS150)。エンジンへの燃料カット中であれば(ステップS150、Yes)、電圧制御部114は、オルタネータ150の調整電圧を鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の回生充電のための電圧(例えば15V)に制御する(ステップS151)。一方、エンジンへの燃料カットが終了すると(ステップS150、No)、電圧制御部114は、上記のSOCを維持する電圧(例えば12.9V)となるようにオルタネータ150の調整電圧を所定の値(例えば、13.5V)まで下げる(ステップS152)。
続いて制御装置110は、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162のそれぞれの充電率をSOC算出部112で積算し(ステップS153)、アイドルストップ中の放電分をまだ充電していないと判断すると(ステップS154、No)、上記ステップS147の処理に戻る。一方、アイドルストップ中の放電分を充電したと判断すると(ステップS154、Yes)、続いて制御装置110は、ニッケル水素充電池162のSOCが所定のSOC(例えば80%)に達したことをSOC算出部112が算出していれば(ステップS155、Yes)、リレー制御部115は、メインリレー130をオフ状態にして、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に切り離す(ステップS156)。一方、ニッケル水素充電池162のSOCが所定のSOC(例えば80%)に達していなければ(ステップS155、No)、リレー制御部115は、メインリレー130をオン状態とする(ステップS157)。
続いて制御装置110は、エンジンへの燃料カット中かどうかを、例えば運転状態判断部113で再度判断する(ステップS158)。エンジンへの燃料カット中であれば(ステップS158、Yes)、電圧制御部114は、オルタネータ150の調整電圧を鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162の回生充電のための電圧(例えば15V)に制御する(ステップS159)。一方、エンジンへの燃料カットが終了すると(ステップS150、No)、電圧制御部114は、上記のSOCを維持する電圧(例えば12.9V)となるようにオルタネータ150の調整電圧を所定の値(例えば、13.5V)まで下げる(ステップS160)。
その後、所定の自動停止条件が成立すると(ステップS161、Yes)、エンジンが停止される(ステップS162)。そして運転者によってイグニッションスイッチがOFFまで回されると(ステップS163、Yes)、リレー制御部115は、メインリレー130をオフ状態とする制御を実行する。所定の自動停止条件が成立した後に運転者によってイグニッションスイッチがOFFまで回されていなければ(ステップS163、No)、制御装置110の動作は上記ステップS141の処理に戻る。
第2の実施形態に係る車両用電源装置100’は、上述の処理を実行することで、アイドルストップ車の場合であっても、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に接続したり切り離したりすることで、特性が異なる複数の電池を組み合わせた場合に、オルタネータ150が生成する回生エネルギによる鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162への充電を効率よく実施することができる。
なおリレー制御部115は、メインリレー130をオフ状態とする制御を実行するタイミングを、図8に示したように再始動条件が成立した後に限定しなくてもよい。例えば、リレー制御部115は、所定の自動停止条件が成立して車両がアイドルストップを開始した時でも、アイドルストップ中の任意の時点でも、メインリレー130をオフ状態とする制御を実行しても良い。
図8に示したように、再始動条件が成立してからメインリレー130をオフ状態とする場合は、アイドルストップ中の電気負荷121、122の消費電力が、容量の大きい鉛蓄電池161と、鉛蓄電池161より容量の少ないニッケル水素充電池162とで分散されるため、ニッケル水素充電池162の放電量が大きくなるという状況の発生を低減することができる。
逆に、アイドルストップを開始した時からメインリレー130をオフ状態にした場合は、電気負荷122の電力消費によって、鉛蓄電池161より容量の少ないニッケル水素充電池162が放電する電力が大きくなるという状況が発生する可能性がある。しかし、再始動条件が成立した後にメインリレー130が確実にオフ状態になる事を待つ必要が無いので、再始動条件が成立した直後にクランキングを開始できて、走行フィーリングに影響を与えないという利点がある。
なおエンジンが始動した後は、第2の実施形態に係る車両用電源装置100’は、第1の実施形態に係る車両用電源装置100と同様に、アイドルストップ中に放電した放電量及びスタータ140を作動させるために必要とした放電量を回復するために、鉛蓄電池161への補充電を行う。この鉛蓄電池161への補充電の制御は、第1の実施形態で示した、駐車状態から始動した後の鉛蓄電池161への補充電と同様の制御を行う事で、アイドルストップの度に不必要な充放電を防止する事ができるとともに、ニッケル水素充電池162の劣化を抑制する事ができる。
(第2の実施形態のまとめ)
以上説明したように本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態での燃料カットの発生の有無や、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162との充電率に加え、車両のアイドルストップの発生の有無に応じて、メインリレー130のオン・オフ状態を切り替えて、鉛蓄電池161とニッケル水素充電池162とを電気的に接続または切断する、車両用電源装置100’が提供される。
本実施形態に係る車両用電源装置100’は、第1の実施形態に係る車両用電源装置100と同様に、鉛蓄電池161への補充電時や、回生充電の際にニッケル水素充電池162への過充電が起こるのを防止することで、車両の燃費向上に加え、ニッケル水素充電池162の性能の劣化を抑えることができるという効果を奏する。
また本実施形態に係る車両用電源装置100’は、第1の実施形態に係る車両用電源装置100と同様に、ニッケル水素充電池162の充電率に関わらず、鉛蓄電池161への補充電は確実に行なわれるので、車両の駆動に影響を与えずに、ニッケル水素充電池162の性能の劣化を抑えることができるという効果を奏する。
また本実施形態に係る車両用電源装置100’は、所定の自動停止条件を満たしてアイドルストップ状態となった後に、所定の再始動条件を満たしたことでクランキングが開始されても、メインリレー130がオフ状態となり、電気負荷122へはニッケル水素充電池162から安定した電源が供給される。クランキングが開始される際に、ニッケル水素充電池162から安定した電源が供給されることで、本実施形態に係る車両用電源装置100’は、アイドルストップ状態からのクランキングの開始時に、電気負荷122に対して動作の停止やリセットなどの影響を与えずに済むという効果を奏する。
従って、アイドルストップ機能を有する車両に設けられる、本発明の第2の実施形態に係る車両用電源装置100’は、第1の実施形態に係る車両用電源装置100の効果に加え、アイドルストップ状態の後に、所定の再始動条件を満たしたことでクランキングが開始されても、電気負荷122に対して電圧低下に伴う悪影響を与えず、電気負荷122を安定して動作させるようにするという効果を奏する。
なお、上記実施形態では、鉛蓄電池の他にニッケル水素充電池を搭載した実施形態を示したが、本発明は係る例に限定されない。回生エネルギによる充電の際に鉛蓄電池よりも早く満充電状態となるような二次電池(例えば、充電時の分極が小さいもの、内部抵抗が小さいもの、容量が小さいもの等)であれば、鉛蓄電池の他に搭載される電池はリチウムイオン電池であってもよく、また容量がより少ない別の鉛蓄電池であってもよい。
また、上記実施形態では、オルタネータ150が鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162へ電力を供給していたが、本発明は係る例に限定されるものではない。例えばオルタネータ150の替わりに、またオルタネータ150に加えて、鉛蓄電池161及びニッケル水素充電池162へ電力を供給するものとしてDC/DCコンバータが設けられていてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。