JP6217324B2 - 低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法 - Google Patents

低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属溶湯を鋳造金型のキャビティ内に低圧で充填して所望の鋳造品を得る低圧鋳造方法に使用される、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法に関する。
低圧鋳造方法に使用される低圧鋳造用溶湯保持炉としては、特許文献1のように、溶湯待機槽と注湯槽とが、補給口を介して互いに連通されるとともに、この補給口を溶湯遮断弁により遮断・開放させて、所定量の金属溶湯を、溶湯待機槽から注湯槽へ供給させた後、補給口の遮断状態下で注湯槽の湯面を加圧させることにより、出湯路を介して鋳造金型のキャビティ内に注湯槽内の金属溶湯を圧送(充填)させる構成が知られている。
具体的には、鋳込み工程の完了後、注湯槽の湯面高さが基準高さ未満の状態を、レベルセンサ等の湯面高さ検知手段により検知するに伴い、注湯槽への加圧を解除させた状態で、補給口の溶湯遮断弁を開放させ、一回の鋳込み(充填)に必要な量の金属溶湯を、溶湯待機槽から注湯槽に供給させる。この溶湯待機槽から注湯槽への金属溶湯の供給は、溶湯待機槽の湯面高さが、注湯槽の湯面の基準高さより高いことにより生じるヘッド(水頭)差によるものである。金属溶湯の供給により注湯槽の湯面が上昇し、湯面高さ検知手段により湯面の基準高さへの到達(一回分の鋳込み量に相当)が検知されると、補給口の溶湯遮断弁を遮断させる。そして、注湯槽の金属溶湯の湯面上方の空間に、不活性な気体(乾燥空気等)を注入させることにより、注湯槽の金属溶湯の湯面を加圧させ、注湯槽と鋳造金型のキャビティとを連通させた出湯路(出湯管)を介して、注湯槽内の金属溶湯を鋳造金型のキャビティ内に圧送(充填)させる構成である。
特開2001−321914号公報
特許文献1のような低圧鋳造用溶湯保持炉の構成においては、鋳込み工程の完了後、一回の鋳込みに必要な量の金属溶湯を、溶湯待機槽から注湯槽に正確に供給させること、すなわち、注湯槽の湯面高さを、鋳込み工程毎にバラつきなく、正確に、基準高さになるように、溶湯待機槽から注湯槽への金属溶湯の供給量を制御することが重要である。ここで、注湯槽の湯面高さの基準高さとは、注湯槽の金属溶湯を、注湯槽と鋳造金型のキャビティとを連通させた出湯路(出湯管)を介して、鋳造金型のキャビティ内に圧送させるために、注湯槽の金属溶湯の湯面の加圧を開始させる湯面高さである。
加圧開始時の注湯槽の湯面高さが基準高さを下回れば、加圧される湯面上方の空間容積が増加するため、キャビティへの金属溶湯の充填圧力が設定より低下し、金属溶湯の出湯路内の移動距離(高さ)が増加するため、キャビティが金属溶湯で満たされる充填完了タイミングが設定よりも遅延する。また、基準高さを上回れば、充填圧力が設定より高くなり、充填完了タイミングが設定よりも早くなる。鋳造金型のキャビティ内に、金属溶湯を低圧且つ低速で充填させる低圧鋳造方法において、このような、キャビティ内への充填圧力や充填完了タイミングのバラつきは、充填時における金属溶湯の、凝固過程中の粘性変化に起因する流動特性のバラつき等を生じさせ、キャビティ内への充填不良や、充填不良による鋳造品の外観・内部不良の要因となる。更に、このような、キャビティ内への充填圧力や充填完了タイミングのバラつきに対応する低圧鋳造装置側の制御変更や、鋳造サイクルのバラつきのため鋳造条件が不安定となり、鋳造品の品質を安定させることが難しい。
ここで、特許文献1のように、注湯槽の湯面の基準高さへの到達を湯面高さ検知手段で検知して、溶湯遮断弁の遮断が行われる構成を鑑みた場合、溶湯遮断弁の駆動手段への検知信号伝達時間や、溶湯遮断弁の遮断動作開始から完了までに要する作動時間等により、注湯槽の湯面の基準高さへの到達検知後も、金属溶湯の溶湯待機槽から注湯槽への供給は所定時間継続される。その結果、注湯槽の湯面の高さは、基準高さ(制御目標湯面高さ)に、検知後に注湯槽に供給される、意図しない金属溶湯によるオーバーシュート高さを加えた高さにならざるを得ない。
また、一般的に、金属溶湯が、溶湯待機槽の底部から注湯槽へと供給される低圧鋳造用溶湯保持炉の構造上、このオーバーシュート高さは、溶湯待機槽の湯面高さと注湯槽の湯面の基準高さとのヘッド(水頭)差による影響を受ける。そのため、このオーバーシュート高さは、供給元である溶湯待機槽の湯面高さにより変化し、一定ではない。これは、特許文献1のように、溶湯待機槽から注湯槽への金属溶湯の供給が、溶湯待機槽の湯面高さと注湯槽の湯面の基準高さとのヘッド(水頭)差により行われる溶湯保持炉において顕著であるが、注湯槽の減圧や、溶湯待機槽の加圧、あるいはこれらの組み合わせによって、溶湯待機槽及び注湯槽の金属溶湯に圧力差を生じさせ、この圧力差により金属溶湯の供給が行われる溶湯保持炉であっても同様である。例えば、特許文献1の低圧鋳造用溶湯保持炉であれば、溶湯待機槽の湯面高さが最高湯面高さであればオーバーシュート高さは最高となり、最低湯面高さであれば最低となる。
更に、一般的に、低圧鋳造用溶湯保持炉自体に、固体の金属材料を溶融状態にする溶解炉としての機能を有するものは少なく、連続で低圧鋳造方法を実施する場合、外部からの溶湯待機槽への金属溶湯の補充が必要となる。このような、溶湯待機槽への金属溶湯の補充回数は、溶湯待機槽の金属溶湯の性状や温度の安定化のために最小限に抑えることが好ましい。そのため、低圧鋳造用溶湯保持炉においては、低圧鋳造方法の実施前に、溶湯待機槽の湯面高さが、仕様上の最高湯面高さの近傍になるまで金属溶湯を補充させた後、最低湯面高さの近傍まで低下するまで補充が行われない場合もあり、溶湯待機槽の湯面高さは、最高湯面高さの近傍から最低湯面高さの近傍まで変化する可能性がある。
このように、溶湯待機槽の湯面高さが変動する状況から、特許文献1の低圧鋳造用溶湯保持炉だけでなく、溶湯待機槽から注湯槽への金属溶湯の供給が、溶湯待機槽及び注湯槽の金属溶湯の圧力差により行われる構成の低圧鋳造用溶湯保持炉においては、注湯槽の湯面高さが、溶湯待機槽の湯面高さの変動の影響を受け、注湯槽の湯面高さを、鋳込み工程毎に正確に、基準高さ(制御目標湯面高さ)に制御することは困難であるという問題がある。また、同様の理由により、注湯槽の湯面の検知高さを、オーバーシュート高さを予め考慮した、本来の基準高さより低い高さに設定することも困難である。
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、具体的には、注湯槽の湯面高さを湯面高さ検知手段で検知して、溶湯遮断弁を遮断させる構成であっても、溶湯待機槽の湯面高さに依らず、注湯槽の湯面高さを所定範囲内に制御可能な、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法を提供することを目的としている。
本発明の上記目的は、遮断・開放可能な溶湯遮断弁を備える補給口を介して連通する溶湯待機槽と注湯槽とを有し、前記溶湯遮断弁を開放させて、前記溶湯待機槽から前記注湯槽へ金属溶湯を供給させ、前記注湯槽における湯面高さ検知手段による制御目標湯面高さHの検知により、前記溶湯遮断弁を遮断させた後、前記注湯槽の湯面を加圧させることにより、前記注湯槽の所定量の金属溶湯を、前記注湯槽と鋳造金型のキャビティとを連通させた出湯路を介して、前記鋳造金型のキャビティ内に圧送させる低圧鋳造用溶湯保持炉において、
前記溶湯待機槽の湯面高さhに依らず、前記溶湯遮断弁の遮断後の前記注湯槽の湯面高さが、前記制御目標湯面高さHに、一定のオーバーシュート高さShを加えた湯面高さH’になるように、予め求めた、前記注湯槽のオーバーシュート特性に基づき、前記注湯槽における前記湯面高さ検知手段による前記制御目標湯面高さHの検知後も前記溶湯遮断弁の開放を延長させる、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法によって達成される。
すなわち、注湯槽において、制御目標湯面高さH(基準高さ)に、一定のオーバーシュート高さShを加えた湯面高さH’を、実質的な目標制御湯面高さとして、溶湯待機槽の湯面高さhに依らず、そのオーバーシュート高さShになるように、予め求めた注湯槽のオーバーシュート特性に基づき、制御目標湯面高さHの検知後も溶湯遮断弁の開放を延長させることにより、溶湯待機槽の湯面高さに依らず、オーバーシュート高さを一定に制御させることができるので、注湯槽の湯面高さを、湯面高さH’を含む所定範囲に制御可能である。
また、本発明に係る、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法においては、前記一定のオーバーシュート高さShを、前記溶湯待機槽の最高湯面高さhmaxに対応する、前記注湯槽の最高オーバーシュート高さShmaxとしても良い。
このように、注湯槽における一定のオーバーシュート高さShを、最高オーバーシュート高さShmaxとすることにより、溶湯待機槽の湯面高さが、仕様上の最高湯面高さから最低湯面高さの間のいずれの高さであっても、注湯槽におけるオーバーシュート高さを一定に制御させることができる。また、オーバーシュート高さの制御高さ(制御量)が最大となるため、制御精度も向上させることができる。その結果、注湯槽の湯面高さを、湯面高さH’を含む極めて狭い所定範囲内に制御可能である。
一方、本発明に係る、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法においては、前記一定のオーバーシュート高さShを、前記溶湯待機槽の最高湯面高さhmaxから最低湯面高さhminまでの間の、任意の湯面高さh1に対応する、前記注湯槽のオーバーシュート高さSh1とし、前記溶湯待機槽の湯面高さhが、前記湯面高さh1より低下した後、前記溶湯遮断弁の開放を延長させても良い。
このように、一定のオーバーシュート高さShが最高オーバーシュート高さShmaxでなくても、注湯槽のオーバーシュート高さの制御を、溶湯待機槽の湯面高さのある範囲に限定して行わせることにより、注湯槽におけるオーバーシュート高さの変動を確実に減少させることができる。例えば、一定のオーバーシュート高さShを、溶湯待機槽の最高湯面高さhmaxから最低湯面高さhminまでの間の略中間の湯面高さに対応するオーバーシュート高さとした場合でも、注湯槽におけるオーバーシュート高さの変動を、何も制御を行わない場合に対して略半分に減少させることができる。
本発明に係る、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法は、遮断・開放可能な溶湯遮断弁を備える補給口を介して連通する溶湯待機槽と注湯槽とを有し、前記溶湯遮断弁を開放させて、前記溶湯待機槽から前記注湯槽へ金属溶湯を供給させ、前記注湯槽における湯面高さ検知手段による制御目標湯面高さHの検知により、前記溶湯遮断弁を遮断させた後、前記注湯槽の湯面を加圧させることにより、前記注湯槽の所定量の金属溶湯を、前記注湯槽と鋳造金型のキャビティとを連通させた出湯路を介して、前記鋳造金型のキャビティ内に圧送させる低圧鋳造用溶湯保持炉において、
前記溶湯待機槽の湯面高さhに依らず、前記溶湯遮断弁の遮断後の前記注湯槽の湯面高さが、前記制御目標湯面高さHに、一定のオーバーシュート高さShを加えた湯面高さH’になるように、予め求めた、前記注湯槽のオーバーシュート特性に基づき、前記注湯槽における前記湯面高さ検知手段による前記制御目標湯面高さHの検知後も前記溶湯遮断弁の開放を延長させるため、注湯槽の湯面高さを湯面高さ検知手段で検知して、溶湯遮断弁を遮断させる構成であっても、溶湯待機槽の湯面高さに依らず、注湯槽の湯面高さを所定範囲内に制御可能である。
本発明の実施例1に使用する、低圧鋳造用溶湯保持炉の概略断面図である。 図1の低圧鋳造用溶湯保持炉における、溶湯遮断弁の開放前の溶湯待機槽の湯面高さhと、溶湯遮断弁の遮断後の注湯槽の制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さShとの関係R1を示すグラフである。 図1の低圧鋳造用溶湯保持炉における、溶湯遮断弁の開放前の溶湯待機槽の所定湯面高さにおける、制御目標湯面高さH到達後の、溶湯遮断弁の開放の延長時間Δtと、溶湯遮断弁の遮断後の注湯槽の制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さShの増加高さΔShとの関係R2を示すグラフである。 本発明に係る、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法を示すフローチャートである。
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1乃至図4を参照しながら本発明の実施例1を説明する。最初に、図1を参照しながら、本発明の実施例1に使用する、低圧鋳造用溶湯保持炉の基本構成について説明する。
本発明の実施例1に使用する低圧鋳造用溶湯保持炉1は、図1に示すように、遮断・開放可能な溶湯遮断弁31を備える補給口30を介して連通する溶湯待機槽11と注湯槽21を有する。溶湯待機槽11は、炉外から補充される、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属溶湯を溶融状態で待機させておく槽であり、上方に金属溶湯補充用の開閉蓋12が配置されている。開閉蓋12は、図示しない開閉機構により開閉可能で、外部からの金属溶湯の補充やメンテナンスの際に開かれ、通常は、炉内の保温やコンタミの混入防止のため閉じられている。図1中のhmaxが仕様上の最高湯面高さ、hminが同じく仕様上の最低湯面高さを示す。
補給口30は、溶湯待機槽11の底部に配置されており、遮断・開放機構32により昇降可能な溶湯遮断弁31の弁体31aを、補給口30から上方へ移動させることにより、溶湯待機槽11と注湯槽21とを連通させる。尚、図を簡単にするため、金属溶湯を所定温度に維持させるための加熱手段等は図示を省略した。また、溶湯待機槽11を単槽としているが、注湯槽21へ供給させる金属溶湯の品質を向上させるために、溶湯待機槽11を、フィルターを備える仕切り壁等により2槽に分け、一方の槽を、補充された金属溶湯のコンタミ等の不純物を沈殿させ清浄化させる槽とし、他方の槽を、補給口30が配置され、フィルターを介して更に清浄化された金属溶湯を、より少ない容積で温度管理する槽とする構成もある。
注湯槽21には、同槽の湯面高さが制御目標湯面高さHに到達したことを検知する湯面高さ検知手段22が同槽上部から同槽内へ突出させるように配置されている。図1中では図示を簡略化しているが、湯面高さ検知手段22の構成は、長さの異なる2本の電極から成り、一方の電極の先端のみが金属溶湯中に浸漬された状態で、他方の電極の先端が浸漬していない状態の湯面高さから、湯面高さが上昇し、両方の電極の先端が金属溶湯中に浸漬し、金属溶湯を介して2本の電極が通電状態となることにより、通電状態となる湯面高さを検知する構成が一般的である。
このような湯面高さ検知手段22の検知精度は、レーザー光線や赤外線等を使用して、非接触で液面高さを検知する検知手段に対して劣らざるを得ない。しかしながら、金属溶湯が高温(アルミニウム合金で700℃前後)であり、設置個所が非常に高温雰囲気であることや、検知面である湯面の波立ちを完全に防止することが困難なことから、このような高精度な検知手段は、設置が困難か、可能であっても、湯面の波立ちによる誤検知の可能性があり採用出来ない場合が多い。従って、電極式の湯面高さ検知手段では、検知精度を向上させるために、長さの異なる電極を3本以上配置させる構成とし、隣り合う電極の通電状態や通電時間等を条件として組み合わせる検知を行わせる場合もある。
また、注湯槽21には、注湯槽21の金属溶湯を鋳造金型のキャビティ内へと圧送させる出湯管23(ストーク/出湯路)が配置されている。出湯管23の下端は完全に金属溶湯中に浸漬されており、その上端は図示しない鋳造金型のキャビティ内に連通されている。補給口30の溶湯遮断弁31を遮断させた状態で、図示しない加圧手段で、注湯槽21の金属溶湯の湯面上方の空間に不活性な気体(乾燥空気等)を注入させ、加圧させると、注湯槽21の金属溶湯の湯面が、これら気体の圧力を受け下方へ下がるため、注湯槽21内の金属溶湯が、出湯管23を介して、図示しない鋳造金型のキャビティ内に圧送(充填)される。必要に応じて、鋳造金型のキャビティ内を減圧する場合もある。
尚、図を簡単にするため、金属溶湯を所定温度に維持させるための加熱手段等は図示を省略した。また、注湯槽21を単槽としているが、注湯槽21の湯面高さの検知精度を向上させるため、注湯槽21の湯面高さ検知手段22と出湯管23との間を、金属溶湯中にその下端が浸漬し、その下端より下方の金属溶湯中では連通する仕切り壁等により2槽に分け、湯面高さ検知手段22近傍の湯面の面積を小さくすることにより、溶湯待機槽11から注湯槽21への金属溶湯の供給時の、湯面高さ検知手段22近傍の湯面の波立ちを抑制させる構成もある。
次に、これまで説明した、低圧鋳造用溶湯保持炉1の基本構成に基づき、本発明の実施例1に係る、注湯槽21の湯面高さ制御方法を説明する。低圧鋳造用溶湯保持炉1のように、注湯槽21の湯面の制御目標湯面高さH(基準高さ)への到達を湯面高さ検知手段22で検知して、溶湯遮断弁31の遮断が行われる構成においては、溶湯遮断弁31の遮断後の注湯槽21の湯面高さを、制御目標湯面高さH(基準高さ)になるように制御しようとしても、仕様上の最高湯面高さhmaxの近傍から、最低湯面高さhminの近傍まで変化する、溶湯遮断弁31の開放前の溶湯待機槽11の湯面高さhに比例するオーバーシュート高さShが加算され、注湯槽21の湯面高さがH+Shになってしまうことは先に説明したとおりである。
本発明の実施例1に係る、注湯槽21の湯面高さ制御方法においては、実際に低圧鋳造方法を行う前に、予め、使用する低圧鋳造用溶湯保持炉1の注湯槽21の2つのオーバーシュート特性を求める。まず1つは、溶湯遮断弁31の開放前の溶湯待機槽11の湯面高さhと、溶湯遮断弁31の遮断後の注湯槽21の制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さShとの関係R1であり、もう1つは、溶湯遮断弁31の開放前の溶湯待機槽11の所定湯面高さhにおける、制御目標湯面高さH到達後の、溶湯遮断弁31の開放の延長時間Δ(デルタ)tと、溶湯遮断弁31の遮断後の注湯槽21の制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さShの増加高さΔShとの関係R2である。
まず、関係R1を図2に示す。横軸が、溶湯遮断弁31の開放前の溶湯待機槽11の湯面高さhであり、左端の0(ゼロ)が、仕様上の最低湯面高さhminを示し、右側のhmaxが、仕様上の最高湯面高さを示す。一方、縦軸は、溶湯待機槽11の湯面高さhに対応する、溶湯遮断弁31の遮断後の注湯槽21の制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さShである。横軸の、溶湯待機槽11の最低湯面高さhminに対応する、注湯槽21の制御目標湯面高さHからの最低オーバーシュート高さShminと、同じく横軸の最高湯面高さhmaxに対応する最高オーバーシュート高さShmaxを示している。
この関係R1を求める具体的な方法の一例を説明する。まず、溶湯待機槽11に、その湯面高さhを常時モニタリング可能なレベルセンサ等を設置して、溶湯待機槽11の仕様上の最高湯面高さhmax近傍まで金属溶湯を補充する。同レベルセンサ等により、その湯面高さhを計測させた後、溶湯遮断弁31を開放させ、注湯槽21における湯面高さ検知手段22による目標湯面高さHの検知により溶湯遮断弁31を遮断させる。その後、注湯槽21の湯面高さを測定し、制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さShを求める。
これら湯面高さh及びオーバーシュート高さShを求めた後、注湯槽21を加圧させ、注湯槽21内の金属溶湯を、出湯管23を介して、図示しない鋳造金型のキャビティ内に圧送(充填)させて実際に鋳造を行う。これを、溶湯待機槽11の湯面高さhが、仕様上の最低湯面高さhmin近傍になるまで繰り返せば、溶湯待機槽11の湯面高さhが、仕様上の最高湯面高さhmaxから最低湯面高さhminまで変化する間の、溶湯遮断弁31の開放前の溶湯待機槽11の湯面高さhと、これに対応する、溶湯遮断弁31の遮断後の注湯槽21の制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さShとの関係R1を求めることができる。
実際に求められる湯面高さh及びオーバーシュート高さSh(図2中の黒点)には、計測誤差等に起因する多少のバラつきを含むが、これら項目間には線形関係が成立することを前提に、このバラつきが略均等になるように、図2に示すような線形(一次関数)のグラフを作成すれば良い。この関係R1を示すグラフより、同弁開放前の溶湯待機槽11の湯面高さh1及びh2に対応する、同弁遮断後の注湯槽21の制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さが、それぞれSh1及びSh2になると想定することができる。
出願人が所有する、溶湯待機槽の容積が約40,000cmの低圧鋳造用溶湯保持炉において、上記関係R1の検証を行った。基本的な構成は、特許文献1の低圧鋳造用溶湯保持炉と同じものである。鋳込み工程1回分に要する金属溶湯(アルミニウム合金)の容積が約4,500cmで、約8回の連続鋳造が可能な条件下において連続低圧鋳造を行った結果、鋳造開始から鋳造終了までの注湯室の湯面高さの低下は約40mmであった。これは、図2の縦軸において、Shmax−Shmin=40mmであることを示している。そして、この、注湯室の湯面高さの40mmの低下は、最後の低圧鋳造が、最初の低圧鋳造に対して、金属溶湯の充填圧力において約1kPa減少すると共に、注湯室の加圧開始から鋳造金型のキャビティへの金属溶湯の充填完了までの充填時間が約20%増加することを意味するものである。鋳造金型のキャビティ内に、金属溶湯を低圧且つ低速で充填させる低圧鋳造方法において、これら変動が、鋳造品の品質に及ぼす影響は非常に大きいと言わざるを得ない。
また、この約40mmには、溶湯待機槽の湯面高さが最低湯面高さであっても生じるオーバーシュート高さShminは含まれていないため、最初の低圧鋳造時の注湯槽の湯面高さの、制御目標湯面高さHからの最高オーバーシュート高さShmaxは、Shmax=40mm+Shminとなることは言うまでもない。
次に、関係R2を図3に示す。横軸が、制御目標湯面高さH到達後(湯面高さ検知手段22による制御目標湯面高さH検知後)の、溶湯遮断弁31の開放の延長時間Δtであり、縦軸は、Δtに対応する、注湯槽21の制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さShの増加高さΔShである。湯面高さh及びオーバーシュート高さSh間の関係R1とは異なり、この関係R2は、延長時間Δtが短い前半部は、延長時間Δtの増加に略比例して、オーバーシュート高さShの増加高さΔShが増加するという、線形(一次関数)に近似可能な変化を示すものの、延長時間Δtの増加に伴って、その後半部はオーバーシュート高さShの増加高さΔShの増加率が漸次減少していく曲線に近似される。
これは、溶湯遮断弁31が開放されている延長時間Δtの間も溶湯待機槽11の湯面高さが低下し、注湯槽22へと金属溶湯を供給するエネルギー源である両槽金属溶湯のヘッド差(位置エネルギー)が減少するため、注湯槽22において金属溶湯をオーバーシュートさせる金属溶湯の運動エネルギーが減少するためである。同様の理由により、溶湯待機槽11の湯面高さhが異なれば、前半の線形に近似可能な直線部分の傾きや長さ、また、後半の曲線部分も異なる。具体的には、湯面高さhが低い程、注湯槽21へと流動する金属溶湯の運動エネルギーが小さいため、前半の直線部分は傾きが小さく長くなり、後半の曲線の変化(ΔShの増加率の減少率)も少ない傾向を示す。逆に、湯面高さhが高い程、注湯槽21へと流動する金属溶湯の運動エネルギーが大きいため、前半の直線部分は傾きが大きく短くなり、後半の曲線の変化も多い傾向を示す。そのため、この関係R2は、溶湯待機槽11の湯面高さ毎に異なるため、溶湯待機槽11の所定の湯面高さh毎に求める必要がある。
具体的には、溶湯待機槽11の最高湯面高さhmax及び最低湯面高さhminと、その間の数か所(例えば、h1及びh2)の湯面高さh及びこれに対応するオーバーシュート高さShをプロットして、先に説明した方法で関係R1を求める。次に、注湯槽21における湯面高さ検知手段22による目標湯面高さHの検知後、溶湯遮断弁31の開放を所定時間Δtだけ延長させるように制御を変更して、先にプロットした同じ湯面高さh(hmax、hmin、h1、h2他)に対応するオーバーシュート高さShをプロットして関係R1を求める。更にもう1、2回、このΔtを所定時間だけ延長させて、同じ湯面高さh((hmax、hmin、h1、h2他)に関する関係R1を求める。このようにして、図3に示すような、各湯面高さh(hmax、hmin、h1、h2他)におけるグラフを作成する。
この関係R2を示すグラフより、例えば、溶湯遮断弁31の開放前の湯面高さがh1であるとき、注湯槽21における湯面高さ検知手段22による目標湯面高さHの検知後、溶湯遮断弁31の開放をΔt1A、Δt1B及びΔt1Cだけ延長させることにより、溶湯遮断弁31の遮断後の注湯槽21の制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さSh1が、それぞれΔSh1A(直線部分)、ΔSh1B(ほぼ直線部分)及びΔSh1C(曲線部分)だけ増加すると想定することができる。
ところで、延長時間Δt及び増加高さΔSh間の関係R2は、溶湯待機槽11の所定の湯面高さh毎に求める必要があることは先に説明したとおりである。そのため、上記のような関係R1を、溶湯遮断弁31の開放を所定時間Δtだけ延長させるように制御を変更して、湯面高さhを細分化してそれぞれの湯面高さh毎にデータ取りを行うことが好ましい。
このようにして求めた関係R1及び関係R2を、低圧鋳造用溶湯保持炉を制御する、図示しない制御装置内の記憶部に記憶させると共に、直接の制御目標となる、一定のオーバーシュート高さShを記憶部に入力・設定して、低圧鋳造前の準備段階が完了する。尚。これまで説明した関係R1及び関係R2を求める方法は一例であって、上記湯面高さh及びオーバーシュート高さSh間の関係や、延長時間Δt及び増加高さΔSh間の関係が求められるのであれば、異なる方法で求めても良い。また、どのような方法であっても、それを複数回行って、関係R1及び関係R2の精度を高めることがより好ましい。
引き続き、実施例1に係る、低圧鋳造用溶湯保持炉1の注湯槽21の湯面高さ制御方法を、図4を参照しながら説明する。制御装置内の制御部からの、溶湯待機槽11から注湯槽21への金属溶湯の供給指令に基づき、測定された溶湯待機槽11の湯面高さhに対応する、注湯槽21における制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さShが、記憶部の関係R1から算出される。
次に、記憶部の、予め設定させた一定のオーバーシュート高さShと、湯面高さhに対応するオーバーシュート高さShとの高低が比較される。Sh≦Shの場合、オーバーシュート高さの制御は行われず、溶湯遮断弁31は、通常の制御下で開放・遮断される。一方、Sh>Shの場合、制御部において、予め設定させた一定のオーバーシュート高さShと、湯面高さhに対応するオーバーシュート高さShとの差異、すなわち、注湯槽21における、制御目標湯面高さHからのオーバーシュート高さShを、予め設定させた一定のオーバーシュート高さShにするために必要な、追加オーバーシュート高さShADD=Sh−Shが算出される。そして、記憶部の関係R2から、先に測定された溶湯待機槽11の湯面高さhにおいて、追加オーバーシュート高さShADD=ΔShとなる、制御目標湯面高さH到達後の、溶湯遮断弁31の開放の延長時間Δtが算出される。
次に、制御部からの指令により溶湯遮断弁31が開放される。注湯槽21における湯面高さ検知手段22による目標湯面高さHの検知後、溶湯遮断弁31の開放を延長時間Δtだけ延長した後、溶湯遮断弁31が遮断される。その結果、溶湯遮断弁31の遮断後の湯面高さH’は、溶湯待機槽11の湯面高さhに対応するオーバーシュート高さSh(未制御)+溶湯遮断弁31の開放の延長による追加オーバーシュート高さShADD+制御目標湯面高さHの合計となる。これを式で表せば、H’=Sh+(Sh−Sh)+H=Sh+Hとなり、湯面高さH’は、溶湯待機槽11の変動する湯面高さhの影響を受けるオーバーシュート高さShを含まない式で表される。この湯面高さH’を、実質的な目標制御湯面高さとすれば、溶湯待機槽11の湯面高さhに依らず、オーバーシュート高さを一定に制御して、注湯槽21の湯面高さを、湯面高さH’を含む所定範囲に制御可能である。
本実施例1は、一定のオーバーシュート高さShを、溶湯待機槽11の仕様上の最高湯面高さhmaxに対応する、注湯槽21の最高オーバーシュート高さShmaxとするものである。従って、溶湯待機槽11の湯面高さhが、最高湯面高さhmax及びhmin間のいずれ(湯面高さh=最高湯面高さhmaxの場合は除く)であっても、Sh>Shとなるため、鋳込み工程毎に、上記のようなオーバーシュート高さの制御が行われる。また、オーバーシュート高さの制御高さ(制御量)が最大となるため、制御精度も向上させることができる。その結果、注湯槽21の湯面高さを、湯面高さH’を含む極めて狭い所定範囲内に制御可能である。
尚、注湯槽21の実質的な目標制御湯面高さとなる湯面高さH’は、本来の目標制御湯面高さであるHよりも高くならざるを得ない。しかしながら、本実施例1のように、一定のオーバーシュート高さShを、注湯槽21の最高オーバーシュート高さShmaxとした場合でも、目標制御湯面高さHを検知する、湯面高さ検知手段22の湯面高さ検知位置の修正(Hの高さ修正)により、実質的な目標制御湯面高さとなる湯面高さH’を、本来の目標制御湯面高さであるHに近づける変更は可能である。このような変更は、本来の目標制御湯面高さHと、実質的な目標制御湯面高さとなる湯面高さH’の差異により、低圧鋳造上の問題が生じる場合にのみ行えば良い。
その際、新たな目標制御湯面高さHと、溶湯待機槽11の湯面高さhとの高さ関係も変わるため、場合によっては、関係R1及び関係R2を求め直す必要があるが、この高さ関係の変化は、目標制御湯面高さHの変更量に比例するため、新規に求め直さずとも、既に求めた関係R1及び関係R2を、目標制御湯面高さHの変更量に比例させて修正すれば良い。
次に、本発明の実施例2を説明する。本実施例2においては、一定のオーバーシュート高さShを、溶湯待機槽11の仕様上の最高湯面高さhmaxから最低湯面高さhminまでの間の、任意の湯面高さh1に対応する、注湯槽21のオーバーシュート高さSh1とするものである。
例えば、この、溶湯待機槽11の湯面高さh1及び注湯槽21のオーバーシュート高さSh1を、それぞれ、図2及び図3中に示すh1及びSh1とする。本発明に係る、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法を示すフローチャート(図4)、図2及び図3によれば、溶湯待機槽11の湯面高さhを測定した際、湯面高さhが任意の湯面高さh1よりも高い場合(h≧h1)、Sh1=Sh≦Shとなるため、オーバーシュート高さの制御は行われず、注湯槽21の湯面高さH1’は、H1’=H+Sh(Shは変動値)となり、溶湯待機槽11の湯面高さhに応じて変動する。
そして、低圧鋳造が継続され、溶湯待機槽11の湯面高さhを測定した際、湯面高さhが任意の湯面高さh1よりも低くなる(h<h1)と、Sh1=Sh>Shとなるため、先に説明したオーバーシュート高さの制御が行われ、注湯槽21の湯面高さH1’は、H1’=H+Sh(Shは固定値)となり、以降、注湯槽21の湯面高さH1’は、湯面高さH1’を含む所定範囲内に制御される。
先に説明したように、この、オーバーシュート高さSh1を、溶湯待機槽11の最高湯面高さhmaxから最低湯面高さhminまでの間の中間の湯面高さに対応するオーバーシュート高さとした場合でも、注湯槽21におけるオーバーシュート高さの変動を、何も制御を行わない場合に対して、略半分に減少させることができる。また、本実施例2は、低圧鋳造用溶湯保持炉1の溶湯待機槽11への外部からの金属溶湯の補充時において、過補充を防止するため、仕様上の最高湯面高さhmaxまでは金属溶湯を補充せず、それよりも低い、実用上の最高湯面高さh’maxまで金属溶湯を補充するような運用がなされている場合に更に好適である。
この、実用上の最高湯面高さh’maxに対応する、オーバーシュート高さSh’maxを、一定のオーバーシュート高さShとすることにより、溶湯待機槽11の実質的な湯面高さの変動範囲すべてをカバーして、オーバーシュート高さの制御が行われる。また、オーバーシュート高さの制御高さ(制御量)が実質的に最大となるため、制御精度も向上させることができる。その結果、実施例1と同様に、注湯槽21の湯面高さを、湯面高さH’を含む極めて狭い所定範囲内に制御可能である。
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく色々な方法で実施できる。本願発明における、延長時間Δt及び増加高さΔSh間の関係R2は、湯面高さhを細分化してそれぞれの湯面高さh毎にデータ取りを行うことが好ましいことは先に説明したとおりである。一方、溶湯待機槽11の湯面高さhに依らず、注湯槽21のオーバーシュート高さShを一定のオーバーシュート高さShに制御するという本願発明においては、注湯槽21におけるオーバーシュート高さShが大きくなる、溶湯待機槽11の湯面高さhが高い場合の溶湯遮断弁31の開放の延長時間Δtは短く、同オーバーシュート高さShが小さくなる、溶湯待機槽11の湯面高さhが低い場合の溶湯遮断弁31の開放の延長時間Δtが長くなる。
そのため、使用する低圧鋳造用溶湯保持炉において、溶湯遮断弁31の開放の延長時間Δtの制御範囲が、溶湯待機槽11の最低湯面高さhminにおける関係R2の直線部分の最大Δt以下であるような場合、最高湯面高さhmax及び最低湯面高さhmin間の湯面高さhにおける関係R2もその直線部分内のΔtとなる可能性が高い。よって、最低限、溶湯待機槽11の最高湯面高さhmaxと最低湯面高さhminにおける関係R2を求めておけば、最高湯面高さhmax及び最低湯面高さhminにおける関係R2の直線部分の傾きから、その間の湯面高さhにおける関係R2の直線部分の傾きを、湯面高さhに比例させて求めることができる。
また、溶湯遮断弁31の開放の延長時間Δtの制御範囲が、溶湯待機槽11の最低湯面高さhminにおける関係R2の直線部分の最大Δtを超える場合、すなわち、最低湯面高さhminにおける関係R2の曲線部分のΔtとなる場合(例えば、図3中のΔt1C及びΔSh1C)においても、最低限、溶湯待機槽11の最高湯面高さhmaxと最低湯面高さhminにおける関係R2を求めておき、その間の湯面高さhにおける関係R2の曲線部分も、湯面高さhに比例すると仮定して、その仮定した、湯面高さhにおける関係R2に基づき、溶湯遮断弁31の開放の延長時間Δtを求めても良い。
2つの異なる湯面高さにおける2つの関係R2に対して、その間の湯面高さにおける関係R2は、前半の直線部分については、先に説明したように、基準となる2つの湯面高さに比例させて容易にその直線の傾きを求めることができるが、後半の曲線部分については、単純に湯面高さに比例しない場合がある。従って、この求めた溶湯遮断弁31の開放の延長時間Δtが、実際のデータ取りにより求めた、その湯面高さhにおける関係R2に基づく延長時間Δtと比較して、若干の差異が生じる可能性はある。しかしながら、その差異が注湯槽21のオーバーシュート高さに及ぼす影響は少ないため、注湯槽21の湯面高さを、湯面高さH’を含む所定範囲内に制御可能である、という効果を十分に奏することができる。更に、このような差異は、溶湯待機槽11の最高湯面高さhmaxと最低湯面高さhminにおける関係R2に加えて、その間の略中間の湯面高さhにおける関係R2を求め、基準となる2つの湯面高さの範囲を上下2つにすることによって、より小さくすることができる。
延長時間Δt及び増加高さΔSh間の関係R2は、湯面高さhを細分化してそれぞれの湯面高さh毎にデータ取りを行わずとも、上記のように簡易的に求めても良い。このように簡易的に求めた関係R2に基づいて本発明を実施した場合においても、本発明と略同じ効果を奏することができる。
1 低圧鋳造用溶湯保持炉
11 溶湯待機槽
12 開閉蓋
21 注湯槽
22 湯面高さ検知手段
23 出湯管
30 補給口
31 溶湯遮断弁
31a 弁体
32 遮断・開閉機構

Claims (2)

  1. 遮断・開放可能な溶湯遮断弁を備える補給口を介して連通する溶湯待機槽と注湯槽とを有し、前記溶湯遮断弁を開放させて、前記溶湯待機槽から前記注湯槽へ金属溶湯を供給させ、前記注湯槽における湯面高さ検知手段による制御目標湯面高さHの検知により、前記溶湯遮断弁を遮断させた後、前記注湯槽の湯面を加圧させることにより、前記注湯槽の所定量の金属溶湯を、前記注湯槽と鋳造金型のキャビティとを連通させた出湯路を介して、前記鋳造金型のキャビティ内に圧送させる低圧鋳造用溶湯保持炉において、
    前記溶湯待機槽の湯面高さhに依らず、前記溶湯遮断弁の遮断後の前記注湯槽の湯面高さが、前記制御目標湯面高さHに、一定のオーバーシュート高さShを加えた湯面高さH’になるように、予め求めた、前記注湯槽のオーバーシュート特性に基づき、前記注湯槽における前記湯面高さ検知手段による前記制御目標湯面高さHの検知後も前記溶湯遮断弁の開放を延長させる、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法であって、
    前記一定のオーバーシュート高さSh を、前記溶湯待機槽の最高湯面高さh max に対応する、前記注湯槽の最高オーバーシュート高さSh max とする、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法
  2. 遮断・開放可能な溶湯遮断弁を備える補給口を介して連通する溶湯待機槽と注湯槽とを有し、前記溶湯遮断弁を開放させて、前記溶湯待機槽から前記注湯槽へ金属溶湯を供給させ、前記注湯槽における湯面高さ検知手段による制御目標湯面高さHの検知により、前記溶湯遮断弁を遮断させた後、前記注湯槽の湯面を加圧させることにより、前記注湯槽の所定量の金属溶湯を、前記注湯槽と鋳造金型のキャビティとを連通させた出湯路を介して、前記鋳造金型のキャビティ内に圧送させる低圧鋳造用溶湯保持炉において、
    前記溶湯待機槽の湯面高さhに依らず、前記溶湯遮断弁の遮断後の前記注湯槽の湯面高さが、前記制御目標湯面高さHに、一定のオーバーシュート高さSh を加えた湯面高さH’になるように、予め求めた、前記注湯槽のオーバーシュート特性に基づき、前記注湯槽における前記湯面高さ検知手段による前記制御目標湯面高さHの検知後も前記溶湯遮断弁の開放を延長させる、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法であって、
    前記一定のオーバーシュート高さShを、前記溶湯待機槽の最高湯面高さhmaxから最低湯面高さhminまでの間の、中間の湯面高さ以上の、任意の湯面高さh1に対応する、前記注湯槽のオーバーシュート高さSh1とし、前記溶湯待機槽の湯面高さhが、前記湯面高さh1より低下した後、前記溶湯遮断弁の開放を延長させる、低圧鋳造用溶湯保持炉の注湯槽の湯面高さ制御方法。
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