以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
図1は、一実施形態に係る色素増感太陽電池の構造を示す断面図である。
図1に示すように、一実施形態に係る色素増感太陽電池は、基板1上に、第一電極2、電子輸送層3、光増感化合物4、電荷移動層5、第二電極6を有する。第一電極2は、電子輸送性化合物を含む電子輸送層3で被覆されており、第二電極6は、第一電極2と電荷移動層5を介して対向して配設されている。
また、色素増感太陽電池の出力は、第一電極2に接続されたリードライン7及び第二電極6に接続されたリードライン8により取り出される。
以下、各々について詳細に説明する。
<第一電極2>
第一電極2は、可視光に対して透明な導電性物質により形成される。導電性物質は、特に限定されず、通常の光電変換素子又は液晶パネル等に用いられる公知のものを使用できる。
導電性物質としては、例えば、インジウム・スズ酸化物(以下、ITOと称す)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、FTOと称す)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、ATOと称す)、インジウム・亜鉛酸化物、ニオブ・チタン酸化物、グラフェン等が挙げられる。また、これらは単独又は複数積層されていても良い。
第一電極2は、一定の硬性を維持するため、可視光に透明な材質からなる基板1上に設けられることが好ましい。基板1としては、例えば、ガラス、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体等が挙げられる。
第一電極2は、基板1と一体になっているものを用いることもでき、例えば、FTOコートガラス、ITOコートガラス、酸化亜鉛:アルミニウムコートガラス、FTOコート透明プラスチック膜、ITOコート透明プラスチック膜等が挙げられる。
第一電極2は、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン又は陰イオンをドープした透明電極を用いることができる。
また、第一電極2は、メッシュ状、ストライプ状等のように光が透過する構造にした金属電極を、基板1上に形成したものでも良い。
第一電極2の厚さは、5nm〜100μmが好ましく、50nm〜10μmが更に好ましい。
以上、例示した第一電極2は、単独で用いたものでも良く、2種以上を混合又は積層したものでもあっても良い。
更に、第一電極2は、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属を含む金属リード線等を有していても良い。すなわち、蒸着、スパッタリング、圧着等の方法により、基板1上に金属リード線を形成し、金属リード線が形成された基板1上にITO、FTO等を形成しても良い。これにより、第一電極2の電気抵抗をより小さくすることができる。
<電子輸送層3>
電子輸送層3は、電子輸送性化合物を含む半導体膜であり、第一電極2上に形成される。電子輸送層3は、例えば、第一電極2上に形成される緻密な膜(ブロッキング層)と、緻密な膜の上に形成される多孔質状の層(多孔質層)とを有する。ここで、緻密な膜の「緻密」とは、多孔質層中の電子輸送性化合物の充填密度より高密度で電子輸送性化合物が充填されていることを意味する。
ブロッキング層は、第一電極2と電荷移動層5とが電気的に接続されることを防ぐ目的で形成される。従って、ブロッキング層は、第一電極2と電荷移動層5とが電気的に接続されなければ、ピンホールやクラック等が形成されていても良い。
ブロッキング層の膜厚は、第一電極2と電荷移動層5とが電気的に接続されない膜厚であれば良く、その厚さは特に限定されないが、10nm〜1μmが好ましく、20nm〜700nmがより好ましい。
多孔質層は、単層であっても多層であっても良く、当業者が任意に選択することができる。多層の場合には、粒径の異なる半導体微粒子の分散液を多層塗布することも、種類の異なる半導体や、樹脂、添加剤の組成が異なる塗布層を多層塗布することもできる。また、一度の塗布で膜厚が不足する場合には、多層塗布は有効な手段である。
半導体微粒子のサイズは、特に限定されないが、一次粒子の平均粒径は、1〜100nmが好ましく、5〜50nmがより好ましい。また、より大きい平均粒径の半導体微粒子、例えば、50〜500nm、を混合又は積層しても良い。これにより、入射光を散乱させる効果が大きくなり、変換効率を向上させることができる。
単位投影面積当たりに担持される光増感化合物4の量は、電子輸送層3の膜厚が厚くなるほど増加するため、光の捕獲率が高くなる。一方、注入された電子の拡散距離は、電子輸送層3の膜厚が厚くなるほど増えるため、電荷の再結合によるロスが大きくなる。
従って、電子輸送層3の膜厚は、100nm〜100μmとすることが好ましい。これにより、光の捕獲率が高く、電荷の再結合によるロスが小さい電子輸送層3を形成することができる。
また、電子輸送層3に用いられる電子輸送性化合物は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。電子輸送性化合物としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物等を挙げることができる。
金属のカルコゲニドとしては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ若しくはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン若しくはビスマスの硫化物、カドミウム若しくは鉛のセレン化物又はカドミウムのテルル化物等が挙げられる。
他の化合物半導体としては、例えば、亜鉛、ガリウム、インジウム若しくはカドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物又は銅−インジウム−硫化物等が好ましい。
ペロブスカイト構造を有する化合物としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が好ましい。
電子輸送性化合物としては、これらの中でも、ナノ粒子からなるn型の酸化物半導体が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブが好ましく、これらを単独又は2種以上の混合で使用しても良い。
なお、電子輸送性化合物の結晶型は、特に限定されず、単結晶、多結晶、非晶質のいずれであっても良く、これらが混合されたものであっても良い。
次に、電子輸送層3の作製方法を説明する。
電子輸送層3の作製方法は、特に限定されず、例えば、湿式製膜法や、スパッタリング等の真空中で薄膜を形成する方法等がある。
製造コスト等を考慮した場合、特に湿式製膜法が好ましく、半導体微粒子の粉末又はゾルを分散したペーストを調製し、調整した分散液を第一電極2上に塗布する方法が好ましい。
湿式製膜法を用いる場合の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法等を用いることができる。また、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン等を用いた印刷法を用いても良い。
分散液は、機械的粉砕又はミルを使用して作製することができ、例えば、単独の半導体微粒子又は半導体微粒子と樹脂との混合物を、水又は有機溶剤に分散することにより調整される。
なお、樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステル等によるビニル化合物の重合体や共重合体、シリコン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
また、半導体微粒子を分散する溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール若しくはα−テルピネオール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン若しくはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル若しくは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン若しくはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン若しくは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒又はn−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン若しくはクメン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。なお、これらの溶媒は、単独又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。
また、半導体微粒子の分散液又はゾル−ゲル法等によって得られた半導体微粒子のペーストに、塩酸、硝酸若しくは酢酸等の酸、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等の界面活性剤又はアセチルアセトン、2−アミノエタノール若しくはエチレンジアミン等のキレート化剤等を添加することができる。
これにより、半導体微粒子の分散液又はゾル−ゲル法等によって得られた半導体微粒子のペーストに含まれる粒子が再凝集することを防ぐことができる。
また、製膜性を向上させる目的で、増粘剤を添加することも有効な手段である。増粘剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の高分子、エチルセルロース等の増粘剤等が挙げられる。
また、湿式製膜法においては、更に、塗布膜を焼成、マイクロ波照射、電子線照射又はレーザー光照射する処理を行うことが好ましい。塗布膜を焼成することにより、半導体微粒子同士が電子的にコンタクトされ、電子輸送層3は、膜強度が向上し、第一電極2との密着性が向上する。なお、これらの処理は単独で行なっても良く、二種以上を組み合わせて行なっても良い。
塗布膜を焼成する場合の焼成温度は、特に限定されないが、温度を上げ過ぎると電子輸送層3の電気抵抗が高くなる又は基板1が溶融することがあるため、30〜700℃が好ましく、100〜600℃がより好ましい。また、焼成時間は、特に限定されないが、10分〜10時間が好ましい。
塗布膜の焼成後、例えば、四塩化チタンの水溶液や有機溶剤との混合溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理等を行なっても良い。これにより、半導体微粒子の表面積が増大する、光増感化合物4から半導体微粒子への電子注入効率が高くなる等の効果が得られる。
マイクロ波照射は、電子輸送層3が形成された表面から照射しても、電子輸送層3が形成された表面と反対側の裏面から照射しても良い。また、マイクロ波照射の照射時間は、特に限定されないが、1時間以内であることが好ましい。
上述の電子輸送層3の作製方法により、直径が数十nmの半導体微粒子を焼結等によって積層した膜は、多孔質層を形成する。多孔質層は、非常に大きい表面積(ラフネスファクター)を有する。多孔質層のラフネスファクターは、大きいほど好ましいが、電子輸送層3の膜厚との関係もあり、20以上であることが好ましい。
ラフネスファクターとは、本実施形態においては、基板1に塗布した半導体微粒子の面積に対する多孔質内部の実面積を表わす数値である。
<光増感化合物4>
電子輸送性化合物は、色素増感太陽電池の変換効率を向上させるために、下記の一般式(1)で表される光増感化合物4を含む化合物で被覆されている。
一般式(1)において、X1は酸素原子、硫黄原子、セレン原子、窒素原子を挙げることができ、窒素原子はアルキル基又はアリール基を置換基として有しても良い。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ヘキシル基、ビニル基等を挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基、2−ナフチル基、p−トリル基、4−メトキシフェニル基等を挙げることができる。
R1の具体例としては、アルキル基、アリール基又はフリル基、チエニル基等のヘテロ環基を挙げることができる。Yは、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸、フェノール類等、酸化チタンと結合する酸性基を含有するものであり、例えば、(Y−1)〜(Y−30)に示すものを挙げることができる。
A1、A2は、環状構造を形成する置換基を挙げることができる。
なお、電子輸送性化合物は、一般式(1)で表される光増感化合物4を含む化合物により、すべてが被覆されていても良く、一部が被覆されていても良い。
また、一般式(1)に示す光増感化合物4の具体例としては、以下に示す(A−1)〜(A−57)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
光増感化合物4は、一般式(1)に示す化合物を単独で用いても良いが、他の化合物を混合して用いても良い。
光増感化合物4と混合しても良い化合物としては、特表平7−500630号公報、特開平10−233238号公報、特開2000−26487号公報、特開2000−323191号公報若しくは特開2001−59062号公報等に記載の金属錯体化合物、特開平10−93118号公報、特開2002−164089号公報、特開2004−95450号公報若しくはJ. Phys. Chem. C, 7224, Vol.111(2007)等に記載のクマリン化合物、同特開2004−95450号公報若しくはChem. Commun., 4887(2007)等に記載のポリエン化合物、特開2003−264010号公報、特開2004−63274号公報、特開2004−115636号公報、特開2004−200068号、特開2004−235052号公報、J. Am. Chem. Soc., 12218, Vol.126(2004)、Chem. Commun., 3036(2003)若しくはAngew. Chem. Int. Ed., 1923, Vol.47(2008)等に記載のインドリン化合物、J. Am. Chem. Soc., 16701, Vol.128(2006)若しくはJ. Am. Chem. Soc., 14256, Vol.128(2006)等に記載のチオフェン化合物、特開平11−86916号公報、特開平11−214730号公報、特開2000−106224号公報、特開2001−76773号公報若しくは特開2003−7359号公報等に記載のシアニン色素、特開平11−214731号公報、特開平11−238905号公報、特開2001−52766号公報、特開2001−76775号公報若しくは特開2003−7360号等に記載のメロシアニン色素、特開平10−92477号公報、特開平11−273754号公報、特開平11−273755号公報若しくは特開2003−31273号等に記載の9−アリールキサンテン化合物、特開平10−93118号公報若しくは特開2003−31273号等に記載のトリアリールメタン化合物又は特開平9−199744号公報、特開平10−233238号公報、特開平11−204821号公報、特開平11−265738号、J. Phys. Chem., 2342, Vol.91(1987)、J. Phys. Chem. B, 6272, Vol.97(1993)、Electroanal. Chem., 31, Vol.537(2002)、特開2006−032260号公報、J. Porphyrins Phthalocyanines, 230, Vol.3(1999)、Angew. Chem. Int. Ed., 373, Vol.46(2007)若しくはLangmuir, 5436, Vol.24(2008)等に記載のフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物等を挙げることができる。
次に、光増感化合物4を電子輸送性化合物に吸着(被覆)させる方法を説明する。
光増感化合物4を電子輸送性化合物に吸着(被覆)させる方法は、例えば、光増感化合物4の溶液中又は分散液中に半導体微粒子を含有する電子輸送層3を浸漬する方法、光増感化合物4の溶液又は分散液を電子輸送層3に塗布して吸着させる方法、二酸化炭素等を用いた超臨界流体中で光増感化合物4を吸着させる方法等を用いることができる。
光増感化合物4の溶液中又は分散液中に、半導体微粒子を含有する電子輸送層3を浸漬する方法としては、例えば、浸漬法、ディップ法、ローラー法、エアーナイフ法等を用いることができる。
光増感化合物4の溶液又は分散液を電子輸送層3に塗布して吸着させる方法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等を用いることができる。
また、電子輸送性化合物に光増感化合物4を吸着させる際、縮合剤を併用しても良い。縮合剤は、無機物表面に物理的又は化学的に光増感化合物4と電子輸送性化合物とを結合させる触媒的作用をするもの又は化学量論的に作用し、化学平衡を有利に移動させるもの等を用いることができる。なお、縮合剤に加えて、縮合助剤としてチオールやヒドロキシ化合物を添加しても良い。
光増感化合物4を溶解又は分散する溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール若しくはイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン若しくはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル若しくは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン若しくはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン若しくは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒又はn−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン若しくはクメン等の炭化水素系溶媒等を挙げることができる。なお、これらの溶媒は、単独又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。
また、光増感化合物4は、その種類によっては化合物間の凝集を抑制した方がより効果的に働くものが存在するため、共吸着剤(凝集解離剤)と併用して用いても良い。
凝集解離剤としては、コール酸、ケノデオキシコール酸等のステロイド化合物、長鎖アルキルカルボン酸又は長鎖アルキルホスホン酸が好ましく、用いる色素に対して適宜選択される。これらの凝集解離剤の添加量は、色素1質量部に対して0.01〜500質量部が好ましく、0.1〜100質量部がより好ましい。
光増感化合物4を吸着するときの温度としては、−50℃以上、200℃以下が好ましい。
また、光増感化合物4の吸着は、静置しても攪拌しながら行なっても良い。
攪拌する場合の方法としては、例えば、スターラー、ボールミル、ペイントコンディショナー、サンドミル、アトライター、ディスパーザー又は超音波分散等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
吸着に要する時間は、5秒以上、1000時間以下が好ましく、10秒以上、500時間以下がより好ましく、1分以上、150時間が更に好ましい。
また、光増感化合物4の吸着は、暗所で行なうことが好ましい。
<電荷移動層5>
電荷移動層5は、光増感化合物4を担持させた電子輸送層3上に形成される。
電荷移動層5としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した電解液、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリックスに含浸したゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩、固体電解質、無機ホール輸送材料、有機ホール輸送材料等が挙げられる。
(電解液)
電解液は、電解質、溶媒及び添加物を含むことが好ましい。
電解質は、好ましくは、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム若しくはヨウ化カルシウム等の金属ヨウ化物−ヨウ素の組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムヨ−ダイド、ピリジニウムヨーダイド若しくはイミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物のヨウ素塩−ヨウ素の組み合わせ、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム若しくは臭化カルシウム等の金属臭化物−臭素の組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムブロマイド若しくはピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物の臭素塩−臭素の組み合わせ、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩若しくはフェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム若しくはアルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン若しくはコバルト等の金属錯体又はニトロキシドラジカル化合物等が用いられる。
なお、電解質は、単独の組み合わせであっても混合であっても良い。また、電解質としてイミダゾリニウムヨーダイド等のイオン液体を用いた場合は、特に溶媒を用いなくても良い。
電解液における電解質濃度は、0.05〜20Mが好ましく、0.1〜15Mが更に好ましい。
電解液に用いる溶媒は、エチレンカーボネート若しくはプロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル若しくはエチレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール若しくはポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール系溶媒、アセトニトリル若しくはベンゾニトリル等のニトリル系溶媒又はジメチルスルホキシド若しくはスルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が好ましい。また、t−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を併用しても良い。
電解質は、ポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化させることもできる。
ポリマー添加によりゲル化させる場合の好ましいポリマーとしては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等を挙げることができる。
オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合の好ましいゲル化剤としては、例えば、ジベンジルデン−D−ソルビトール、コレステロール誘導体、アミノ酸誘導体、トランス−(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジアミンのアルキルアミド誘導体、アルキル尿素誘導体、N−オクチル−D−グルコンアミドベンゾエート、双頭型アミノ酸誘導体、4級アンモニウム誘導体等を挙げることができる。
多官能モノマーによって重合する場合の好ましいモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングルコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができる。
更に、アクリルアミド若しくはメチルアクリレート等のアクリル酸、α−アルキルアクリル酸から誘導されるエステル類やアミド類、マレイン酸ジメチル若しくはフマル酸ジエチル等のマレイン酸やフマル酸から誘導されるエステル類、ブタジエン若しくはシクロペンタジエン等のジエン類、スチレン、p−クロロスチレン若しくはスチレンスルホン酸ナトリウム等の芳香族ビニル化合物、ビニルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、含窒素複素環を有するビニル化合物、4級アンモニウム塩を有するビニル化合物、N−ビニルホルムアミド、ビニルスルホン酸、ビニリデンフルオライド、ビニルアルキルエーテル類又はN−フェニルマレイミド等の単官能モノマーを含有しても良い。モノマー全量に占める多官能モノマーは、0.5〜70質量%が好ましく、1.0〜50質量%がより好ましい。
上述のモノマーは、ラジカル重合によって重合することができる。ゲル電解質用モノマーは、加熱、光、電子線又は電気化学的にラジカル重合することができる。
架橋高分子が加熱によって形成される場合に使用される重合開始剤は、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)若しくはジメチル−2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系開始剤又はベンゾイルパーオキシド等の過酸化物系開始剤等が好ましい。
これらの重合開始剤の添加量は、モノマー総量に対して、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
ポリマーの架橋反応により電解質をゲル化させる場合、架橋反応に必要な反応性基を含有するポリマー及び架橋剤を併用することが望ましい。
架橋可能な反応性基に好ましい例としては、ピリジン、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、トリアゾール、モルフォリン、ピペリジン、ピペラジン等の含窒素複素環を挙げることができる。好ましい架橋剤としては、例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロリド、イソシアネート等の窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬を挙げることができる。
(無機ホール輸送層)
また、電解質の代わりに無機固体化合物を用いることができる。無機固体化合物を用いる無機ホール輸送層は、例えば、ヨウ化銅、チオシアン化銅等をキャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解メッキ等の手法により電極内部に形成される。
(有機ホール輸送層)
また、電解質の代わりに有機電荷輸送物質を用いることができる。
有機電荷輸送物質を用いる有機ホール輸送層は、単一材料からなる単層構造でも複数の化合物からなる積層構造でも良い。積層構造の場合は、第二電極6に接する有機ホール輸送材料層には、高分子材料を用いることが好ましい。製膜性に優れる高分子材料を用いることにより、多孔質状の電子輸送層3の表面をより平滑化することができ、光電変換特性を向上することができるためである。
高分子材料は、多孔質状の電子輸送層3の内部へ浸透することが困難であるため、電子輸送層3表面の被覆に優れている。これにより、高分子材料は、第二電極6を設ける際の短絡防止としての効果を発揮するため、色素増感太陽電池は、より高い光電変換特性を示す。
単一で用いられる単層構造において用いられる有機ホール輸送材料としては、公知の有機ホール輸送性化合物が用いられ、その具体例としては特公昭34−5466号公報等に示されているオキサジアゾール化合物、特公昭45−555号公報等に示されているトリフェニルメタン化合物、特公昭52−4188号公報等に示されているピラゾリン化合物、特公昭55−42380号公報等に示されているヒドラゾン化合物、特開昭56−123544号公報等に示されているオキサジアゾール化合物、特開昭54−58445号公報に示されているテトラアリールベンジジン化合物又は特開昭58−65440号公報若しくは特開昭60−98437号公報に示されているスチルベン化合物等を挙げることができる。
積層構造において用いられる第二電極6に接する有機ホール輸送層に用いられる高分子材料としては、公知のホール輸送性高分子材料が用いられ、その具体例としては、ポリ(3−n−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−n−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(9,9'−ジオクチル−フルオレン−コ−ビチオフェン)、ポリ(3,3'''−ジドデシル−クォーターチオフェン)、ポリ(3,6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(2,5−ビス(3−デシルチオフェン−2−イル)チエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルチオフェン−コ−チエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(3,6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン−コ−チエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(3,6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン−コ−チオフェン)若しくはポリ(3,6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン−コ−ビチオフェン)等のポリチオフェン化合物、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[2−メトキシ−5−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]若しくはポリ[(2−メトキシ−5−(2−エチルフェキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)−コ−(4,4'−ビフェニレン−ビニレン)]等のポリフェニレンビニレン化合物、ポリ(9,9'−ジドデシルフルオレニル−2,7−ジイル)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレン)−alt−コ−(9,10−アントラセン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレン)−alt−コ−(4,4'−ビフェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレン)−alt−コ−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]若しくはポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジイル)−コ−(1,4−(2,5−ジヘキシルオキシ)ベンゼン)]等のポリフルオレン化合物、ポリ[2,5−ジオクチルオキシ−1,4−フェニレン]、ポリ[2,5−ジ(2−エチルヘキシルオキシ−1,4−フェニレン]等のポリフェニレン化合物、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−コ−(N,N'−ジフェニル)−N,N'−ジ(p−ヘキシルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−コ−(N,N'−ビス(4−オクチルオキシフェニル)ベンジジン−N,N'−(1,4−ジフェニレン)]、ポリ[(N,N'−ビス(4−オクチルオキシフェニル)ベンジジン−N,N'−(1,4−ジフェニレン)]、ポリ[(N,N'−ビス(4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル)ベンジジン−N,N'−(1,4−ジフェニレン)]、ポリ[フェニルイミノ−1,4−フェニレンビニレン−2,5−ジオクチルオキシ−1,4−フェニレンビニレン−1,4−フェニレン]、ポリ[p−トリルイミノ−1,4−フェニレンビニレン−2,5−ジ(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン−1,4−フェニレン]若しくはポリ[4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニルイミノ−1,4−ビフェニレン]等のポリアリールアミン化合物又はポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−コ−(1,4−ベンゾ(2,1',3)チアジアゾール]若しくはポリ(3,4−ジデシルチオフェン−コ−(1,4−ベンゾ(2,1',3)チアジアゾール)等のポリチアジアゾール化合物を挙げることができる。この中で、キャリア移動度やイオン化ポテンシャルを考慮すると、ポリチオフェン化合物とポリアリールアミン化合物が特に好ましい。
また、上記に示した有機ホール輸送化合物に各種添加剤を加えても良い。
添加剤としては、例えば、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化銅、ヨウ化鉄若しくはヨウ化銀等の金属ヨウ化物、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム若しくはヨウ化ピリジニウム等の4級アンモニウム塩、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム若しくは臭化カルシウム等の金属臭化物、臭化テトラアルキルアンモニウム若しくは臭化ピリジニウム等の4級アンモニウム化合物の臭素塩、塩化銅若しくは塩化銀等の金属塩化物、酢酸銅、酢酸銀若しくは酢酸パラジウム等の酢酸金属塩、硫酸銅若しくは硫酸亜鉛等の金属硫酸塩、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩若しくはフェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム若しくはアルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン等、ヨウ化1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾイニウム塩、ヨウ化1−メチル−3−n−ヘキシルイミダゾリニウム塩、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムトリフロオロメタンスルホン酸塩、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムノナフルオロブチルスルホン酸塩若しくは1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチル)スルホニルイミド等のInorg. Chem. 35 (1996) 1168に記載のイオン液体、ピリジン、4−t−ブチルピリジン若しくはベンズイミダゾール等の塩基性化合物又はリチウムトリフルオロメタンスルホニルイミド若しくはリチウムジイソプロピルイミド等のリチウム化合物等を挙げることができる。
また、導電性を向上させる目的で、有機ホール輸送化合物の一部をラジカルカチオンにするための酸化剤を添加しても良い。
酸化剤としては、例えば、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4−ブロモフェニル)アミニウム、ヘキサフルオロアンチモネート銀、ニトロソニウムテトラフルオボラート、硝酸銀等が挙げられる。なお、酸化剤の添加によって全ての有機ホール輸送材料が酸化される必要はなく、一部のみが酸化されていれば良い。また、添加した酸化剤は添加した後、系外に取り出しても、取り出さなくても良い。
有機ホール輸送層は、光増感化合物4を担持させた電子輸送層3の上に、直接形成される。有機ホール輸送層の作製方法は、特に限定されず、例えば、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法等が挙げられる。製造コスト等を考慮した場合、特に湿式製膜法が好ましく、電子輸送層3上に塗布する方法が好ましい。
湿式製膜法を用いる場合、塗布方法は特に限定されず、公知の方法に従って行なうことができる。塗布方法は、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法等を用いることができる。また、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン等を用いた印刷法を用いても良い。また、超臨界流体又は亜臨界流体中で製膜しても良い。
超臨界流体としては、気体と液体が共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝集性高密度流体として存在し、圧縮しても凝集せず、臨界温度以上、かつ臨界圧力以上の状態にある流体であれば特に限定されない。超臨界流体は、当業者が目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましい。
超臨界流体は、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、メタノール、エタノール若しくはn−ブタノール等のエルコール系溶媒、エタン、プロパン、2,3−ジメチルブタン、ベンゼン若しくはトルエン等の炭化水素系溶媒、塩化メチレン若しくはクロロトリフロロメタン等のハロゲン系溶媒又はジメチルエーテル等のエーテル系溶媒が好適である。
これらの中でも、二酸化炭素は、臨界圧力が7.3MPa、臨界温度が31℃であることから、容易に超臨界状態をつくり出せるとともに、不燃性で取扱いが容易であるため、特に好ましい。また、これらの流体は、単独であっても二種以上の混合であっても良い。
亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において、高圧液体として存在する限り特に限定はなく、当業者が目的に応じて適宜選択することができる。
なお、上述した超臨界流体として挙げられる化合物は、亜臨界流体としても好適に使用することができる。
また、超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力は特に限定されず、当業者が目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度としては、−273℃以上300℃以下が好ましく、0℃以上200℃以下が特に好ましい。
さらに、上述の超臨界流体及び亜臨界流体に加え、有機溶媒やエントレーナーを併用することもできる。有機溶媒及びエントレーナーの添加により、超臨界流体中での溶解度の調整をより容易に行なうことができる。
このような有機溶媒としては、特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン若しくはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル若しくは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン若しくはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン若しくは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒又はn−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン若しくはクメン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。
また、有機ホール輸送材料を設けた後、プレス処理を施しても良い。プレス処理を施すことにより、有機ホール輸送材料がより多孔質層を含む電子輸送層3と密着するため、光電変換特性が改善すると考えられる。
プレス処理方法は、特に限定されず、例えば、IR錠剤整形器に代表されるような平板を用いたプレス成型法、ローラー等を用いたロールプレス法等を挙げることができる。プレス処理する圧力としては、10kgf/cm2以上が好ましく、30kgf/cm2以上がより好ましい。プレス処理する時間は、特に限定されず、1時間以内で行なうことが好ましい。また、プレス処理時に熱を加えても良い。
また、上述のプレス処理の際、プレス機と電極間に離型材を挟んでも良い。離型材としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリクロロ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレン四フッ化エチレン共重合体、エチレンクロロ三フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂を挙げることができる。
上記プレス処理工程を行った後、第二電極6を設ける前に、有機ホール輸送化合物と第二電極6との間に金属酸化物を設けても良い。金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケル等を挙げることができ、特に酸化モリブデンが好ましい。
金属酸化物をホール輸送材料上に設ける方法は、特に限定されず、スパッタリングや真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法が挙げることができる。
湿式製膜法は、金属酸化物の粉末又はゾルを分散したペーストを調製し、ホール輸送層上に塗布する方法が好ましい。
湿式製膜法を用いた場合、塗布方法は特に限定されず、公知の方法に従って行なうことができる。塗布方法は、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法等を用いることができる。また、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン等を用いた印刷法を用いても良い。
金属酸化物の膜厚は、特に限定されないが、0.1〜50nmが好ましく、1〜10nmがより好ましい。
<第二電極6>
第二電極6は、例えば、電子輸送層3上に、第二電極6を貼り合わせた後、電子輸送層3と第二電極6との隙間に液状の電荷移動層5を挟み込む方法又は電子輸送層3上に電荷移動層5を形成した後、第二電極6を形成する方法等によって形成される。
液状の電荷移動層5の挟み込み方法は、例えば、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセスと常圧より低い圧力にして気相を液相に置換する真空プロセス等が挙げられる。
電荷移動層5を形成した後、第二電極6を形成する際に、液状の電荷移動層5を用いる場合には未乾燥の状態で第二電極6を形成し、エッジ部の液漏洩防止を施す必要がある。
また、電荷移動層5としてゲル電解液を用いる場合には、湿式で電荷移動層5を塗布して重合等の方法により乾燥、固定化させた後、第二電極6を形成しても良い。
また、電荷移動層5として無機ホール輸送材料、有機ホール輸送材料を用いる場合には、第二電極6は、ホール輸送層形成後に形成される。第二電極6の形成方法は、用いられるホール輸送材料の種類により、適宜選択可能であり、例えば、ホール輸送層上に塗布、ラミネート、蒸着、CVD、貼り合わせ等の方法を用いることができる。
第二電極6としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム若しくはインジウム等の金属、グラファイト、フラーレン若しくはカーボンナノチューブ等の炭素系化合物、ITO若しくはFTO等の導電性金属酸化物又はポリチオフェン若しくはポリアニリン等の導電性高分子等が挙げられる。
第二電極6の膜厚は、特に限定されない。また、第二電極6は、上述の材料を単独又は2種以上を混合又は積層して用いても良い。
第二電極6は、用いられる材料の種類やホール輸送層の種類により、適宜ホール輸送層上に塗布、ラミネート、蒸着、CVD、貼り合わせ等の手法により形成可能である。
以上、色素増感太陽電池の構造を実施形態により説明したが、色素増感太陽電池の構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
例えば、色素増感太陽電池を光電変換素子として動作させるためには、第一電極2と第二電極6の少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本実施形態の色素増感太陽電池においては、第一電極2が透明であり、太陽光を第一電極2側から入射させる方法が好ましい。この場合、第二電極6側には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、あるいは金属薄膜が好ましい。
また、基板1の太陽光の入射側に反射防止層を設けることも色素増感太陽電池の変換効率を向上させるための有効な方法である。
<用途>
本発明の色素増感太陽電池は、太陽電池を用いた電源装置等に応用できる。
応用例としては、従来から用いられている太陽電池やそれを用いた電源装置を利用している機器類であれば、いずれのものでも可能である。
例えば、電子卓上計算機や腕時計用の太陽電池に用いてもよいが、本発明の色素増感太陽電池の特徴を特に活用する一例として、携帯電話、電子手帳、電子ペーパー等の電源装置等が挙げられる。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として用いることもできる。
<合成例>
以下、本発明の一実施形態に係る光増感化合物4の合成例を示す。
例示化合物(A−23)の合成
例示化合物(A−23)は、例えば、下記の方法により合成される。
上記(B−01)で示されるアルデヒド化合物(0.50g)、シアノ酢酸(0.16g)、ピペリジン(0.32g)を、アセトニトリル(10ml)中、窒素気流下で還流攪拌する。2時間後、クロロベンゼン(3ml)を追加し、同温で更に1.5時間還流攪拌する。
反応終了後、反応液を水に注ぎ込み、酢酸エチルを用いて抽出する。有機層を2回水洗することにより分離し、更に硫酸マグネシウムで乾燥させることにより溶媒を留去する。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製(エルエント:トルエン/メタノール=9/1)した後、再結晶化させることで更に精製し、例示化合物(A−23)が0.82g得られた。
例示化合物(A−23)は、黄色固体であり、そのIRスペクトルは図2に示す通りである。
(例示化合物A−41)の合成
例示化合物(A−41)は、例えば、下記の方法により合成される。
上記(B−01)で示されるアルデヒド化合物(0.50g)、上記(B−02)で示されるローダニン化合物(0.328g)、酢酸アンモニウム(36mg)を、酢酸(10ml)中、窒素気流下、80℃で3時間加熱攪拌する。
次に、室温まで冷却後、反応液を水に注ぎ込み、分液ロートに移してトルエンと酢酸エチルの混合液により抽出する。有機層を2回水洗することにより分離し、更に硫酸マグネシウムで乾燥させることにより溶媒を留去する。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製(エルエント:トルエン/メタノール=9/1)し、例示化合物(A−41)が0.277g得られた。
例示化合物(A−41)は、黒色固体であり、そのIRスペクトルは図3に示すとおりである。
例示化合物(A−52)の合成
例示化合物(A−52)は、例えば、下記の方法により合成される。
上記(B−03)で示されるアルデヒド化合物(0.35g)、シアノ酢酸(96mg)、ピペリジン(0.19g)をクロロベンゼン(10ml)中、窒素気流下、80℃で1.5時間加熱攪拌し、120℃で1時間加熱攪拌する。次に、シアノ酢酸(0.5g)、ピペリジン(0.7g)を追加し、105℃で7.5時間加熱攪拌する。
次に、室温まで冷却後、溶媒を留去する。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製(エルエント:トルエン/メタノール=9/1)し、例示化合物(A−52)が0.23g得られた。
例示化合物(A−52)は、赤色固体であり、そのIRスペクトルは図4に示す通りである。
比較化合物(C−01)の合成
比較化合物(C−01)は、例えば、下記の方法により合成される。
上記(B−04)で示されるアルデヒド化合物(0.50g)、シアノ酢酸(0.18g)、ピペリジン(0.35g)をアセトニトリル(20ml)中、窒素気流下で還流攪拌する。1.5時間後、クロロベンゼン(3ml)を追加し、同温で更に1.5時間還流攪拌する。
反応終了後、反応液を水に注ぎ込み、酢酸エチルを用いて抽出する。有機層を2回水洗することにより分離し、更に硫酸マグネシウムで乾燥させることにより溶媒を留去する。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製(エルエント:トルエン/メタノール=10/1)した後、再結晶化させることにより更に精製し、比較化合物(C−01)が0.89g得られた。
比較化合物(C−01)は、黄色固体であり、そのIRスペクトルは図5に示す通りである。
比較化合物(C−02)の合成
比較化合物(C−02)は、例えば、下記の方法により合成される。
上記(B−04)で示されるアルデヒド化合物(0.50g)、上記(B−02)で示されるローダニン化合物(0.36g)、酢酸アンモニウム(40mg)を酢酸(10ml)中、窒素気流下、80℃で3時間加熱攪拌する。
次に、室温まで冷却後、反応液を水に注ぎ込み、分液ロートに移してトルエンと酢酸エチルの混合液により抽出する。有機層を2回水洗することにより分離し、更に硫酸マグネシウムで乾燥させることにより溶媒を留去する。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製(エルエント:トルエン/メタノール=10/1)し、再結晶化させることにより更に精製し、比較化合物(C−02)が0.03g得られた。
比較化合物(C−02)は、黒色固体であり、そのIRスペクトルは図6に示す通りである。
次に、本発明による具体的な実施例について説明する。
[実施例1]
チタニウムテトラ−n−プロポキシド(2ml)、酢酸(4ml)、イオン交換水(1ml)、2−プロパノール(40ml)を混合し、FTOガラス基板上にスピンコートし、室温で乾燥後、空気中において450℃で30分間焼成した。再度、同一溶液を用いて、得られた電極上に膜厚100nmになるようにスピンコートにより塗布し、空気中において450℃で30分間焼成して緻密な電子輸送層3を形成した。
次に、酸化チタン(日本アエロジル社製P−25)(3g)、アセチルアセトン(0.3g)を水(5.5g)、エタノール(1.2g)と共にビーズミル処理を12時間施した。
得られた分散液に界面活性剤(和光純薬社製ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)(0.3g)、ポリエチレングリコール(#20,000)(1.2g)を加えてペーストを作製した。
このペーストを、上記緻密な電子輸送層3上に膜厚10μmになるように塗布し、室温で乾燥後、空気中において500℃で30分間焼成し、多孔質状の電子輸送層3を形成した。
上記酸化チタン半導体電極を、0.5mMに調整した例示化合物(A−23)で示される光増感化合物4のクロロベンゼン溶液中に室温で15時間、暗所にて静置して光増感化合物4を吸着させた。
次に、電子輸送層3上に、FTO上に白金をスパッタリングした第二電極6を、厚さ30μmのスペーサーを電子輸送層3と第二電極6との間に挟み込み貼り合わせた。
次に、電子輸送層3と第二電極6との間に、電解液を注入して色素増感太陽電池を作製した。
なお、電解液は、ヨウ素(0.05M)、リチウムヨーダイド(0.1M)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリニウムヨーダイド(0.6M)、t−ブチルピリジン(0.05M)をアセトニトリル/バレロニトリル=17/3の混合液に溶解したものを用いた。
上記により作製した色素増感太陽電池について、擬似太陽光照射下(AM1.5、100mW/cm2)における太陽電池特性を評価した。その結果、太陽電池特性は、開放電圧が0.65V、短絡電流密度が12.5mA/cm2、形状因子が0.63、変換効率が5.12%と良好な値を示した。
[実施例2〜10]
実施例2〜10の色素増感太陽電池は、実施例1における例示化合物(A−23)を、表1に示す光増感化合物4に変更した以外は実施例1と同様にして作製した。
実施例2〜10の色素増感太陽電池について、擬似太陽光照射下(AM1.5、100mW/cm2)における太陽電池特性を評価した結果を表1に示す。表1に示すように、何れの実施例における色素増感太陽電池も良好な特性を示した。
[実施例11]
実施例11の色素増感太陽電池は、実施例1における0.5mMに調整した例示化合物(A−23)を、0.5mMに調整した例示化合物(A−23)と1.0mMに調整したケノデオキシコール酸の混合溶液に変更した以外は実施例1と同様にして作製した。
実施例11の色素増感太陽電池について、擬似太陽光照射下(AM1.5、100mW/cm2)における太陽電池特性を評価した。その結果、太陽電池特性は、開放電圧が0.69V、短絡電流密度が13.2mA/cm2、形状因子が0.64、変換効率が5.83%と良好な値を示した。
[実施例12]
実施例12の色素増感太陽電池は、実施例11における混合溶液を、0.5mMに調整した例示化合物(A−41)と1.0mMに調整したケノデオキシコール酸の混合溶液に変更した以外は実施例11と同様にして太陽電池を作製した。
実施例12の色素増感太陽電池について、擬似太陽光照射下(AM1.5、100mW/cm2)における太陽電池特性を評価した。その結果、太陽電池特性は、開放電圧が0.65V、短絡電流密度が13.9mA/cm2、形状因子が0.66、変換効率が5.96%と良好な値を示した。
[比較例1]
実施例1における0.5mMに調整した例示化合物(A−23)で示される光増感化合物4のクロロベンゼン溶液を、0.5mMに調整した比較化合物(C−01)のクロロベンゼン溶液に変更した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
比較例1の色素増感太陽電池について、擬似太陽光照射下(AM1.5、100mW/cm2)における太陽電池特性を評価した。その結果、太陽電池特性は、開放電圧が0.60V、短絡電流密度が7.6mA/cm2、形状因子が0.55、変換効率が2.51%と実施例の光増感化合物4と比較して低い変換効率であった。
[比較例2]
実施例1における0.5mMに調整した例示化合物(A−23)で示される光増感化合物4のクロロベンゼン溶液を、0.5mMに調整した比較化合物(C−02)のクロロベンゼン溶液に変更した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
比較例2の色素増感太陽電池について、擬似太陽光照射下(AM1.5、100mW/cm2)における太陽電池特性を評価した。その結果、太陽電池特性は、開放電圧が0.48V、短絡電流密度が2.2mA/cm2、形状因子が0.57、変換効率が0.60%と実施例の光増感化合物4と比較して低い変換効率であった。
[実施例13]
実施例1で作製した太陽電池の外周をエポキシ樹脂で封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。加熱処理前の変換効率が5.12%であるのに対して、加熱処理後の変換効率は4.98%であり、変換効率の加熱処理による低下率は0.03%であり、耐久性に優れていることが分かった。
[比較例3]
比較例1で作製した太陽電池の外周をエポキシ樹脂で封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。加熱処理前の変換効率が2.51%であるのに対して、加熱処理後の変換効率は0.64%であり、変換効率の加熱処理による低下率は75%と熱に対する耐久性が実施例と比較して劣っていることがわかった。
以上に説明したように、本実施例によれば、変換効率が高く、長期安定性が高い色素増感太陽電池を提供することができる。
以上、色素増感太陽電池を実施例により説明したが、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。