JP6217042B2 - 呈色反応を用いた定性分析における尿中ケトン体の偽陽性反応判定方法及び同判定方法を用いた定性分析装置 - Google Patents
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Description
尿の分析は、大きく分けて定性分析、定量分析及び沈査分析という3種類の分析方法がある。
尿の定性分析は、尿中に特定の成分が存在しているか否かを判断するための分析である。具体的には、定性分析は、被検出物質と呈色反応する試薬部が設けられた試験紙を、試験管の中の検体に浸漬させたり、前記試験紙の試薬部に検体を点着したりする等した後、呈色反応により変化した後の試薬部の色を、反射光度法等の光学的手法により測定する定性分析装置を用いて行われる。
出願人は、前記定性分析装置として、尿を採取したハルンカップから直接、試験紙の試薬部に尿の点着を行い、尿を点着した後の試薬部の呈色反応による色の変化を光学的に測定する定性分析装置を既に提案している(特許文献1)。
出願人が特許文献1で提案した定性分析装置は、複数の試験紙を収容する試験紙保管装置を備え、この試験紙保管装置から試験紙を一枚ずつ取り出し、始めに尿点着位置に移送し、点着後の試験紙を光学測定位置に移送し、測定後の試験紙を廃棄部に移送するように構成されている。この定性分析装置では、光学測定位置において、尿中の特定成分と呈色反応した後の試薬部の色を測定することができるように試験紙を移送するタイミングが決められている。
特許文献1に示す定性分析装置のように、従来の定性分析装置は、検体中の物質と呈色反応した後の試薬部の色を測定するように構成されている。
しかしながら、試薬部の試薬の呈色反応後の色は、必ずしも目的とする被検出物質と一対一の関係にはならず、被検出物質以外の偽反応物質との反応によっても、呈色反応後の色が同一又は類似の色になることがある。
例えば、尿に含まれる偽反応物質による応答は、被検出物質の応答とは、応答速度が異なるが、従来の定性分析装置は、上記したように、検体中の物質と呈色反応した後の試薬部の色を測定するように構成されているため、偽反応物質による応答か、目的とする被検出物質による応答かを判断することはできない。
出願人は、上記した従来の問題点に鑑みて、偽反応物質による応答か、目的とする被検出物質による応答かを判断する定性分析装置を提案した(特許文献2)。
出願人は、上記した定性分析装置の提案後も、鋭意研究を続け、尿中のケトン体の偽陽性反応を判定することができる特性を見出し本発明を発明するに至った。
本発明は、呈色反応を用いた定性分析における尿中のケトン体の偽陽性反応判定方法及び同判定方法を用いた定性分析装置を提供することを目的としている。
前記赤色反射率は波長625nm〜740nmの光を含み、緑色反射率は波長500nm〜560nmの光を含み、青色反射率は波長445nm〜485nmの光を含む。
また、本発明に係る尿ケトン体の偽陽性反応判定方法では、尿を接触させていない試薬部の色を測定しておき、該測定結果から得られる色情報を基準として、前記尿を接触させた試薬部の色を測定した色情報から得られる前記赤色反射率、緑色反射率及び青色反射率の色情報を補正してもよい。
さらにまた、本発明に係る尿ケトン体の偽陽性反応判定方法では、尿の接触直後の試薬部の色の青色反射率から、呈色反応終了後の試薬部の色の青色反射率を減算した値を変化量とし、該変化量が予め決めた基準値より低ければ偽陽性反応であると判定し得る。
また、本発明に係る尿ケトン体の偽陽性反応判定方法では、尿の接触直後の試薬部の色の赤色反射率から、呈色反応終了後の試薬部の色の赤色反射率を減算した値を変化量とし、該変化量が予め決めた基準値より低ければ偽陽性反応であると判定し得る。
さらに、本発明に係る尿ケトン体の偽陽性反応判定方法では、尿の接触直後の試薬部の色の緑色反射率から、呈色反応終了後の試薬部の色の緑色反射率を減算した値を変化量とし、該変化量が予め決めた基準値より低ければ偽陽性反応であると判定し得る。
本発明に係る尿定性分析装置は、尿ケトン体と呈色反応する試薬部を備えた検査体の試薬部の色を、少なくとも、尿との接触直後と、呈色反応終了後との二回測定する光学測定手段と、前記光学測定手段により測定された試薬部の色情報から得られる青色反射率、赤色反射率又は緑色反射率の変化量に基づいて尿ケトン体の陽性反応及び偽陽性反応を判別する判定手段とを備えていることを特徴とする。
また、本発明に係る尿定性分析装置は、尿定性分析装置において、尿ケトン体と呈色反応する試薬部を備えた検査体の試薬部の色を、少なくとも、尿との接触直後と、呈色反応終了後との二回測定する光学測定手段と、前記光学測定手段により測定された試薬部の色情報から得られる青色反射率、赤色反射率又は緑色反射率の変化量に基づいて尿ケトン体の陽性反応及び偽陽性反応を判別する判定手段とを備えているので、呈色反応を用いた定性分析装置において尿ケトン体の陽性反応及び偽陽性反応を精度よく判別することが可能になるという効果を奏する。
図1(a)及び(b)は、測定結果を赤色反射率、緑色反射率及び青色反射率の三原色に分離してプロットしたグラフであり、各グラフにおいて菱形のプロットは赤色反射率(R帯波長光:625nm〜740nm)であり、四角形のプロットは緑色反射率(G帯波長光:500nm〜560nm)であり、三角形のプロットは青色反射率(B帯波長光:445nm〜485nm)である。図1(a)は陽性試料の測定結果であり、図1(b)は偽陽性試料の測定結果である。本実施例では、赤色反射率、緑色反射率及び青色反射率は、それぞれの色の反射率である。
図1の測定結果から、三原色の全ての成分(青成分、緑成分、赤成分)反射率の経時的な変化、即ち、各成分の反射率の変化量が、陽性資料と偽陽性試料とで顕著に異なることが分かり、尿を接触させた直後から呈色反応終了までの間の各成分の変化量を用いて尿ケトン体の陽性反応と偽陽性反応とを判別することができることが確認できる。
尚、図1から分かるように、陽性試料及び偽陽性試料共に、点着前と点着直後(本実施例では2秒後)との間で各成分の反射率が大きく変動しているが、これは、乾燥した試薬部に液体である試料を点着したことによる変動であり呈色反応とは関係がないので、変化量は、この呈色反応とは関係がない変動の影響を受けないように、点着直後(本実施例では2秒後)の測定値を用いて算出され得る。
具体的には、青色反射率の変化量を用いる場合には、青色反射率の変化量が所定の値(例えば、15)より低ければ偽陽性反応であると判定し得る(図2)。
また、具体的には、緑色反射率の変化量を用いる場合には、緑色反射率の変化量が所定の値(例えば、25)より低ければ偽陽性反応であると判定し得る(図3)。
さらに、具体的には、赤色反射率の変化量を用いる場合には、赤色反射率の変化量が所定の値(例えば、15)より低ければ偽陽性反応であると判定し得る(図4)。
図5は、尿定性分析装置の構成を示す概略ブロック図である。
図中、符号1は検査体を構成する試験紙を示し、この試験紙1には、尿ケトン体と呈色反応する試薬が設けられた試薬部1aが設けられている。
図中符号2は光学測定部であり、該光学測定部2は例えばCCD等の撮像素子を有し、該撮像素子を用いて試薬部1aを撮像する。
光学測定部2で撮像された画像は、画像処理部3に送られ、画像処理記憶部3では、撮像された画像から試薬部1aの赤成分(赤反射率)、緑成分(緑反射率)及び青成分(青反射率)が演算されて記憶される。
判定部4は、画像処理記憶部3に記憶された試薬部の色情報に基づいて、尿の接触直後から呈色反応終了までの間の青成分の変化量又は青成分比率、赤成分比率若しくは緑成分比率の変化量を算出し、これらの変化量に基づいて尿ケトン体の陽性反応及び偽陽性反応を判別し、プリンタやモニター等からなる出力部5に判定結果を出力する。
光学測定部2は、尿が点着される前の試薬部1aの画像を撮像する。同画像は画像処理記憶部3に送られ、画像処理記憶部3は同画像から、尿が点着される前の試薬部1aの色の赤成分(赤反射率)、緑成分(緑反射率)及び青成分(青反射率)を演算して記憶する。
試薬部1aに尿が点着されると、光学測定部2は点着直後(本実施例では2秒後)に試薬部1aを撮像し、次いで、呈色反応終了後(本実施例では34秒後)に試薬部1aを撮像し、その都度、画像処理記憶部3に画像を送る。
画像処理記憶部3は、送られてきた画像から、試薬部1aの色の赤成分(赤反射率)、緑成分(緑反射率)及び青成分(青反射率)を演算し、演算結果を撮像時間と関連付けして記憶する。
判定部4は、画像処理記憶部3に記憶された試薬部の色情報に基づいて、尿の接触直後から呈色反応終了までの間の青成分、緑成分又は赤成分の変化量を算出し、算出した変化量に基づいて尿ケトン体の陽性反応及び偽陽性反応を判別し、プリンタやモニター等からなる出力部5に判定結果を出力する。
具体的には、判定部4は、本実施例では、点着の2秒後の色情報から得られる青成分、緑成分又は赤成分から、34秒後の色情報から得られる青成分、緑成分又は赤成分を減算することで各成分の変化量を算出し、同変化量が予め決めた所定値(例えば、青成分の変化量の場合には15、緑成分の変化量の場合には25、赤成分の変化量の場合には15)より低ければ偽陽性反応であると判定して、判定結果を出力部5を介して出力する。
前記判定部4は、必要に応じて、尿が点着される前の試薬部1aの色の赤成分(赤反射率)、緑成分(緑反射率)及び青成分(青反射率)に基づいて、尿の点着後の画像から得られる色情報を補正して判定をするように構成することができる。
1a 試薬部
2 光学測定部
3 画像処理記憶部
4 判定部
5 出力部
Claims (7)
- 尿ケトン体と呈色反応する試薬が設けられた検査体の試薬部に尿を接触させるステップと、
前記試薬部の色を、少なくとも、尿との接触直後と、呈色反応終了後との二回測定するステップと、
測定した試薬部の色情報から得られる青色反射率、赤色反射率又は緑色反射率の変化量に基づいて尿ケトン体の偽陽性反応を判別するステップと
から成ることを特徴とする
呈色反応を用いた定性分析における尿ケトン体の偽陽性反応判定方法。 - 前記赤色反射率が波長625nm〜740nmの光を含み、緑色反射率が波長500nm〜560nmの光を含み、青色反射率が波長445nm〜485nmの光を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の判定方法。 - 尿を接触させていない試薬部の色を測定し、該測定結果から得られる色情報を基準として、前記尿を接触させた試薬部の色を測定した色情報から得られる前記赤色反射率、緑色反射率及び青色反射率の色情報を補正する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の判定方法。 - 尿の接触直後の試薬部の色の青色反射率から、呈色反応終了後の試薬部の色の青色反射率を減算した値を変化量とし、
該変化量が予め決めた基準値より低ければ偽陽性反応であると判定する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の判定方法。 - 尿の接触直後の試薬部の色の赤色反射率から、呈色反応終了後の試薬部の色の赤色反射率を減算した値を変化量とし、
該変化量が予め決めた基準値より低ければ偽陽性反応であると判定する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の判定方法。 - 尿の接触直後の試薬部の色の緑色反射率から、呈色反応終了後の試薬部の色の緑色反射率を減算した値を変化量とし、
該変化量が予め決めた基準値より低ければ偽陽性反応であると判定する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の判定方法。 - 尿定性分析装置において、
尿ケトン体と呈色反応する試薬部を備えた検査体の試薬部の色を、少なくとも、尿との接触直後と、呈色反応終了後との二回測定する光学測定手段と、
前記光学測定手段により測定された試薬部の色情報から得られる青色反射率、赤色反射率又は緑色反射率の変化量に基づいて尿ケトン体の陽性反応及び偽陽性反応を判別する判定手段と
を備えていることを特徴とする尿定性分析装置。
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