JP6216748B2 - 有機酸の製造方法 - Google Patents
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Description
二酸化炭素を直接原料に用いる、炭素数が2以上の炭素化合物を合成する方法として、炭化水素と二酸化炭素とを原料とする、カルボン酸の合成が挙げられる。例えば、下記反応式(式1)で示される、メタンと二酸化炭素との反応による酢酸の合成が知られている。この反応は、ΔG0=71kJ/molの吸熱反応である。
CH4 + CO2 → CH3COOH (式1)
(式1)に示されるような、炭化水素と二酸化炭素からの有機酸の合成は、大きな吸熱反応であり、かつ、標準生成エントロピー差が負であることが多い。このため、熱力学的制約が大きく、高い収率で有機酸を得るためには、非平衡な条件での反応が有力となる。
すなわち、本発明は下記の通りのものである。
前記複数の誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、炭素数1〜10の有機酸の製造方法。
[2] 炭素数が1〜5である炭化水素と、二酸化炭素とを原料とした、炭素数が1〜10の有機酸の製造方法であって、
複数の粒状誘電体を充填した、一対の電極間に、電圧を印加し、前記炭化水素と前記二酸化炭素とを含む混合ガスを通過させる工程を有し、
前記複数の粒状誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、有機酸の製造方法。
[3] 前記炭化水素と前記二酸化炭素との反応がプラズマ反応である、[2]に記載の方法。
[4] 前記複数の粒状誘電体の少なくとも一組は互いに接している、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5] 前記複数の粒状誘電体は3つ以上の誘電体である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6] 前記複数の粒状誘電体は周期表中の第1〜3族の金属元素を5mmol%〜45mol%で含む、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7] 前記複数の粒状誘電体3gを2mol%の硝酸水溶液30mLで洗浄した後の、洗浄液に含まれる前記第1〜3族の金属元素の濃度を、前記誘電体の表面積で除した値が、2ppm/cm2以下である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8] 前記複数の粒状誘電体はガラスである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9] 前記ガラスは、酸洗いを施したものである、[8]に記載の方法。
[10] 前記混合ガス中の炭素数1〜5の炭化水素の炭素数は1又は2である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11] 前記炭素数1又は2の炭化水素は、メタンである、[10]に記載の方法。
[12] 前記混合ガスは炭化水素をモル分率で0.005〜0.995含む、[1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法。
[13] 前記混合ガスは二酸化炭素をモル分率で0.005〜0.995含む、[1]〜[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14] 前記混合ガス中の炭素数1〜5の炭化水素と二酸化炭素のモル比(炭化水素/二酸化炭素)は0.01〜1.8である、[1]〜[13]のいずれか1項に記載の方法。
[15] 前記混合ガス中の希ガスと、炭化水素と二酸化炭素の和とのモル比(希ガス/(炭化水素+二酸化炭素))は、0.1〜4.4である、[1]〜[14]のいずれか1項に記載の方法。
[16] 前記有機酸の炭素数が1〜4である、[1]〜[15]のいずれか1項に記載の方法。
[17] 前記有機酸の炭素間の結合は全て飽和結合であり、かつ、モノカルボン酸である、[1]〜[16]のいずれか1項に記載の方法。
反応器内に充填した複数の誘電体間の放電により、炭素数1〜5の炭化水素と二酸化炭素とを含む混合ガスを、プラズマ反応させて、炭素数1〜10の有機酸を得る工程、を含み、
前記複数の誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、炭素数1〜10の有機酸の製造方法、である。
炭素数が1〜5である炭化水素と、二酸化炭素とを原料とした、炭素数が1〜10の有機酸の製造方法であって、
複数の誘電体を充填した、一対の電極間に、電圧を印加し、前記炭化水素と前記二酸化炭素とを含む混合ガスを通過させる工程を有し、
前記複数の誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、有機酸の製造方法、である。
本実施形態の製造方法は、原料である混合ガスを、反応器内に充填した複数の誘電体間の放電によりプラズマ反応させて、有機酸を得る工程を有する。
前記プラズマ反応とは、原料分子に電子を照射して励起し、励起された分子同士が衝突して進む反応などを指す。また、反応器内に充填した複数の誘電体間に、交流電圧またはパルス電圧を印加することで、プラズマを発生させる方法はパックドベット方式と呼ばれる。この方法は間欠的に電子を照射することにより電子温度のみが上昇し、原子あるいは分子が室温に近い温度で存在する、非平衡プラズマ発生方法である。
本実施形態のように、パックドベッド方式によって電子を照射された分子は、解離エネルギーの低い結合から選択的に順次切断される。このため、電子を二酸化炭素や炭化水素に適度に照射し、単原子ラジカル状態まで分解される前に電子照射が終了する条件で反応させれば、原料分子の構造を一部保持したまま反応させることが可能であると考えられる。
一方、アーク放電のような平衡プラズマは、原料分子を瞬時に単原子ラジカルまで解離する。そのため、原料分子の構造を一部保持したままで、カルボン酸などの有機酸を生成するためには、パックドベッド方式によるプラズマ反応が好ましい。
本実施形態の誘電体は、周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含むことを特徴としている。この特徴により、有機酸の収率が向上する。
CO2 + H* → COOH* (式2)
CO2 → CO + O* (式3)
なお、上記H*、O*、およびCOOH*は、水素活性種、酸素活性種、およびカルボキシル基活性種を意味する。
さらに、二酸化炭素は、強度の高い塩基点へ強く吸着する、および/または塩基点数の多い空間を通過することで、放電空間に留まる時間を増やすため、カルボキシル基までの生成を促し、ギ酸の生成は促進するものの、炭化水素の活性化の妨げとなり、炭素数が2以上の有機酸の生成量が低下すると考えられる。
前記放電空間とは、具体的には、複数の誘電体が充填された空間など、を指す。
CH2 * + 2O* → HCOOH (式4)
C2H4 * + 2O* → CH3COOH (式5)
CH4 + 4O* → CO2 + 2H2O (式6)
本実施形態に用いる誘電体は、周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む。二酸化炭素の脱酸素などの過剰な活性化を抑制し、有機酸の収率が向上する点から、第1〜3族金属元素は60mol%以下がより好ましく、45mol%以下がさらに好ましく、30mol%以下が特に好ましく、20mol%以下が最も好ましい。また、二酸化炭素の活性化には、塩基点を有することが好ましいので、誘電体に含まれる周期表中の第1〜3族金属元素は、5mmol%以上がより好ましく、10mmol%以上がさらに好ましい。
パックドベッド方式による反応では、充填する誘電体間で放電が生じる。高い誘電率を持つ誘電体は分極しやすく、放電電流を増大するため、反応を促進すると考えられる。したがって、誘電体は強誘電体が好ましい。高い誘電率を持つ誘電体としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムや、チタン酸鉛などが好ましい。結晶性が高いほど誘電率が高くなるので、誘電体は結晶性であることがより好ましい。また、誘電体表面の第1〜3族元素を減少させる観点から、誘電体は、酸で洗浄することが好ましい。
また、図2の、原料ガスの流れ方向に対して一対の電極が平行に並ぶように配置された場合のように、電極の間に誘電体が挟持されてもよい。
原料である混合ガスがプラズマ発生領域に滞在する時間は、特に限定されないが、滞在時間が長いと炭化水素および二酸化炭素の転化率向上に有利であるので、0.01秒以上が好ましく、0.1秒以上がより好ましく、0.5秒以上がさらに好ましい。また、生成した有機酸の2次反応及び副反応の抑制の観点から、原料がプラズマ発生領域に滞在する時間は、20秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましく、5秒以下がさらに好ましい。
パックドベッド方式によるプラズマの発生方法とは、誘電体間に断続的な電圧を印加することで、プラズマを発生させる方法などである。前記断続的な電圧の印加とは、交流電圧や、パルスで同位相または逆位相電位に電圧を印加することなどを示す。
有機酸の製造装置は、一対の電極、複数の誘電体、電極に電圧を印加する電源、ガスを流すための配管、及び原料タンク等を備える。一対の電極は、それぞれ電圧を印加する電源に接続され、前記電極間には誘電体が充填される。上記の誘電体が充填された電極は、配管内に設置される。配管の一端に原料タンクを接続できる。配管のもう一端には、必要であれば、生成物を回収するためのトラップや保管するためのタンクを設置してもよい。
図1は、原料ガスの流れ方向に対して、一対の電極が垂直に並ぶように配置された反応器の一例の概略図である。図1の反応器は、反応器外殻1と、誘電体2と、第1の電極3と、第2の電極4とを有する。前述のように、誘電体は第1の電極3と第2の電極4との間に充填される。第1の電極3および第2の電極4は、原料ガスの流れ方向に対して垂直に並ぶように、かつ、それぞれの電極が原料ガスの流れ方向に沿って延在するように配置される。原料ガスの流れ方向に対して、平行に延在するように電極が配置されることは、反応器外殻1に沿わすことで電極を安定して固定できる観点から好ましい。特に限定されないが、電極間で偏りなくプラズマを発生させるために、第2の電極4は円筒型であることが好ましく、また、第1の電極3は第2の電極4の中心に配置されることが好ましい。第2の電極4は、反応器外殻1の内側または外側に配置されてもよい。原料との反応による生成物の電極表面への堆積を防ぐ観点から、第2の電極4は反応器外殻1の外側に配置されることが好ましい。
また、電極間に電圧を印加する際の周波数は、1kHz以上1MHz以下であることが好ましい。
原料として導入する混合ガスは、炭素数が1〜5である炭化水素と、二酸化炭素とを含む。混合ガスは、炭化水素と二酸化炭素以外の気体を含んでもよい。
炭化水素と二酸化炭素以外の気体とは、例えば、希ガス、水素、酸素、窒素などの不活性ガス、等が挙げられる。プラズマ寿命が長いと発生させたプラズマを効率良く反応に利用できる観点から、希ガスを含むことが好ましい。ここで示すプラズマ寿命とは、励起して発生したプラズマが緩和するまでに要する平均時間のことである。大気中気体からの精製コストの観点や、炭化水素や二酸化炭素由来のラジカル同士の衝突確率が減少することで副反応が抑制される点から、窒素を含むことが好ましい。
また、炭化水素の酸化を促進するので、酸素などの酸化性気体を含むことが好ましい。気体に酸化性気体を含む場合は、爆発限界以下の濃度とすることが好ましい。
なお、以下の説明において、本実施形態の希ガス、二酸化炭素、炭化水素、およびその他成分のモル分率は、下記式で求めることができる。
[気体のモル分率総量]=[炭化水素のモル分率]+[二酸化炭素のモル分率]+[希ガスのモル分率]+[他成分のモル分率]=1
原料として導入する炭化水素の炭素数は1〜5である。炭化水素は、飽和炭化水素、またはアルケン、アルキン、及び芳香族などの不飽和炭化水素であることが好ましい。プラズマを利用する反応は、触媒反応などの他の反応と比較し、生成物が炭素‐炭素間の不飽和結合を形成することが容易であり、生成物を原料に対しより高エネルギー化することで産業的価値のより高い生成物を製造できる観点から、飽和炭化水素、アルケン、アルキンがより好ましく、飽和炭化水素、アルケンがさらに好ましく、飽和炭化水素が最も好ましい。
前記炭化水素は、同一種類のものを単独で用いてもよいし、異なる複数種類のものを混合して用いてもよい。異なる複数種類の炭化水素を混合して用いる場合として、メタンやエタンを多く含む、天然ガスやシェールガスを利用することなどが考えられる。また、本発明の原料である炭化水素は、反応器の簡便さの観点から、気体で導入されることが好ましい。
導入する気体(混合ガス)に含まれる二酸化炭素のモル分率は、0.005以上0.994以下が好ましい。二酸化炭素の反応確率を向上させ、カルボキシル基の生成量を増加させる観点から、0.02以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。また、炭化水素や希ガスとの混合比の観点から、0.7以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましく、0.3以下がさらに好ましい。
炭化水素と二酸化炭素とのモル比(炭化水素/二酸化炭素)は、0.01以上1.8以下が好ましい。炭素と水素との一重結合は、炭素と酸素との二重結合に比べ結合エネルギーが小さいため、プラズマにより比較的解離し易い。すなわち、炭化水素量が多いことで、プラズマによって炭素―水素結合が解離した活性種が、炭素―炭素結合を形成する反応が進行し易くなり、化学品としてより有用な、炭素数の大きな有機酸の生成に有利である。この観点から、導入する気体に含まれる炭化水素と二酸化炭素とのモル比(炭化水素/二酸化炭素)は、0.02以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましく、0.2以上が最も好ましい。一方、カルボキシル基の生成には二酸化炭素が必要であり、二酸化炭素の比率を向上させることで、カルボン酸の生成に必要なカルボキシル基の生成を増加させる必要がある。したがって、導入する気体に含まれる炭化水素と二酸化炭素とのモル比(炭化水素/二酸化炭素)は、1.6以下がより好ましく、1.1以下がさらに好ましく、0.7以下が最も好ましい。
混合ガスは希ガスを含んでもよく、希ガスとは新IUPAC周期表で示される18族の元素などであり、具体的には、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnなどが挙げられる。希ガスの汎用性の観点から、ArやNeが好ましく、イオン化エネルギーが比較的小さい点から、Heが好ましい。
導入する気体(混合ガス)に含まれる希ガスと、炭化水素と二酸化炭素の和、とのモル比(希ガス/(炭化水素+二酸化炭素))は、0.1以上、4.4以下が好ましい。印加電圧を低減し、過剰な電子照射を抑制することで、目的とする生成物の選択率を向上させつつ、安定なプラズマを発生させるためには、混合する希ガスの濃度が高い方が望ましい。したがって、希ガスと、炭化水素と二酸化炭素の和、とのモル比(希ガス/(炭化水素+二酸化炭素))は、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.8以上、最も好ましくは1.6以上である。一方、希ガス濃度が低くなることで、炭化水素および二酸化炭素の濃度が高くなり、炭化水素と二酸化炭素との衝突、炭化水素同士の衝突、二酸化炭素同士の衝突頻度が向上する観点から、希ガスと、炭化水素と二酸化炭素の和、とのモル比(希ガス/(炭化水素+二酸化炭素))は、3.8以下がより好ましく、2.8以下がさらに好ましく、2.2以下が最も好ましい。
本実施形態の方法によって製造される有機酸は、分子を構成する炭素数が1〜10の有機酸である。有機酸の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは炭素数が1〜6、さらに好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜4である。
前記有機酸は、カルボキシル基を有する有機酸が好ましい。前記有機酸は、直鎖または分岐鎖を有するカルボン酸、炭素間の結合が飽和結合のみのカルボン酸、不飽和結合を有するカルボン酸などが挙げられる。プラズマとの反応では炭化水素末端の水素が解離し易いので、直鎖のカルボン酸がより好ましい。また、プラズマ反応では、過剰な炭化水素の解離を生じにくいので、炭素間の結合がすべて飽和結合であるカルボン酸が好ましい。
前記有機酸としては、例えば、カルボキシル基を一つまたは複数有する、炭素数が1〜10のカルボン酸が挙げられる。具体的にはモノカルボン酸、またはジカルボン酸が挙げられる。モノカルボン酸の具体例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、およびこれらの異性体が挙げられる。ジカルボン酸の具体例として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。
以下に示すような条件で反応を行い、有機酸の生成量について評価した。
なお、各成分のモル分率、有機酸の収率は、つぎのようにして測定した。
[装置]
システムコントローラー:CBM−20A(島津製作所製)
送液ポンプ:LC−20AD(島津製作所製)
電気伝導度検出器:CDD−10Avp(島津製作所製)
[カラム]
Shim−pack SCR−102H(島津製作所製)
[移動相]
5mmol/L p−トルエンスルホン酸
[反応液] 5mmol/L p−トルエンスルホン酸
+ 100μmol/L EDTA + 20mmol/L Bis−Tris
[測定条件]
カラム温度40℃、送液速度0.8mL/min
[装置]
HP−6890/5973N(Agilent社製)
[カラム]
TC−FFAP(30m×0.25mm、膜厚:0.25μm)
[測定条件]
イオン化条件:70eV、カラム温度:50℃定常。
上記GC−MSは、同位体原料を用いた生成物の評価に用いた。
[装置]
SEM:SU−70(日立製作所社製)
EDX:EMAX・Xmax(堀場製作所社製)
[測定条件]
加速電圧(EDX):20kV、WD:15mm
また、炭化水素及び二酸化炭素のモル分率をガスクロマトグラフィーで評価する場合は、アルゴンまたはヘリウムをキャリアガスとし、熱伝導度検出器を用いた。アルゴンのモル分率を測定する場合は、キャリアガスをヘリウムとして熱伝導度検出器のガスクロマトグラフィーを用いた。他の希ガスを評価する際には、測定する希ガスとは異なる希ガスをキャリアガスとすることで評価できる。カラムは、炭化水素及び二酸化炭素の測定については、極性型のカラム(TC−BONDQ、ジーエルサイエンス社製)を用い、希ガスについては、モレキュラーシーブスなど、適宜対象希ガスを分離できるものを用いた。
加速電圧20kVの条件下で、SEM−EDXの面測定を用いて、誘電体材料に含まれる原子の定量分析を行った。測定により得られた各元素のモル分率のうち、第1〜3族金属元素に属する各元素のモル分率の和を求めた。測定は3回行い、第1〜3族金属元素に属する各元素のモル分率の和の平均値を、誘電体材料中の第1〜3族金属元素成分量とした。
誘電体を3g採取し、30mLの2mol%の硝酸水溶液に浸し、5分間超音波処理、1時間静置後に撹拌し、この上澄みを洗浄液として得た。ICPを用いて、洗浄液に含まれる元素の濃度を測定した。第1〜3族金属元素に属する各元素の濃度の和を、洗浄前の前記誘電体の表面積で除した値を、遊離金属元素量(ppm/cm2)とした。なお、ICPはセイコーインスツル株式会社製のSP352UV−DDを用い、高周波パワー1.2kW、キャリアーガスをArとし、三点校正して作成した検量線を元に、洗浄液中の各元素の濃度を得た。また、誘電体の比表面積は後述の方法により測定した。
誘電体の比表面積は、下記装置を用いてBET比表面積法により求めた。
[装置]
オートソーブ3MP(カンタクローム社製)
[測定条件]
吸着ガス:窒素
測定温度:77.4K
測定圧力範囲:相対圧0.05〜0.3
各有機酸の生成量は、反応器下流に設置した水トラップ液、および反応管下流を蒸留水で洗浄した洗浄液を、上述の液体クロマトグラフィーで評価し、水トラップ液中と洗浄液中の有機酸の和を生成量とした。
導入炭化水素量(mol)は、原料気体の圧力P(Pa)、導入炭化水素が占める体積V(L)気体定数R(=8.314)、原料気体の温度(K)から、次式を用いて求めた。
[導入炭化水素量(mol)]=PV/RT
ここで、Vは、次式を用いて求められた。
V=[原料気体の流速(mL min−1)]×原料気体の導入時間(min)]×炭化水素のモル分率]/1000
また原料気体の圧力Pは100kPa、原料気体の温度Kは298Kであった。
有機酸収率は、以下の式から算出した。
[有機酸収率(%)]=[生成有機酸量(mol)]/[導入炭化水素量(mol)]×100
反応装置は、粒状の誘電体材料を約70個充填した石英管に、原料気体の導入方向に対して一対の電極が垂直に並ぶように配置された、パックドベッド方式のプラズマを発生させる装置を用いた。充填した粒状誘電体は、内径10mm、厚さ1.5mmである石英管の内部に、石英ウールで挟み込むことで、石英管の長さ方向に3cm以上設置した。この誘電体材料が充填された範囲の外部に、幅2cmのアルミ箔を巻き付け、これを外部電極とした。また、前記石英管の内部の中心に外径6mmインチのSUS316管を設置し、これを内部電極とした。
石英管内に、原料気体を上から下に流通し、内部電極と外部電極に40kHzの交流電圧を印加させることで、粒状誘電体間にプラズマを発生させ、反応を行った。反応後の気体を水トラップに通過させることで有機酸の回収を行った。水トラップは、5mLのイオン交換水を水面の高さが5cmとなるようにガラス瓶に入れることで設置し、ガラス瓶の底から反応後の気体をバブリングさせて用いた。
ソーダガラスを誘電体部に充填した反応装置を用いて反応を行った。ソーダガラスの比表面積は、47cm2/gであった。原料気体を、CH4:2mL/min、CO2:5mL/min、Ar:12mL/min(モル分率は、CH4:CO2:Ar=0.11:0.26:0.63)とし、プラズマの印加電圧を3.6kVとして、反応を行った。反応開始後、3分後から8分後の5分間、水トラップに反応後の気体を通過させ、有機酸の回収を行った。
実施例2〜7は、表1に記載の条件で実施例1と同様に行った。導入総気体の流速は、
実施例1と同じになるように各原料の流量を調整した。また、酸洗いガラスの比表面積は47cm2/gであり、チタン酸バリウムの比表面積は、17cm2/gであった。
また、検出された遊離金属元素量については、以下の通りであった。
ソーダガラス
Na:0.06ppm/cm2、K:0.002ppm/cm2、Ca:0.02ppm/cm2、Mg:0.009ppm/cm2
酸洗いガラス
Na:0.04ppm/cm2、Ca:0.009ppm/cm2、Mg:0.002ppm/cm2
チタン酸バリウム
Na:0.014ppm/cm2、K:0.006ppm/cm2、Ca:0.05ppm/cm2、Ba:0.485ppm/cm2
2 誘電体
3 第1の電極
4 第2の電極
5 網目状電極
Claims (17)
- 反応器内に充填した複数の粒状誘電体間の放電により、炭素数1〜5の炭化水素と二酸化炭素とを含む混合ガスを、プラズマ反応させて、炭素数1〜10の有機酸を得る工程、を含み、
前記複数の誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、炭素数1〜10の有機酸の製造方法。 - 炭素数が1〜5である炭化水素と、二酸化炭素とを原料とした、炭素数が1〜10の有機酸の製造方法であって、
複数の粒状誘電体を充填した、一対の電極間に、電圧を印加し、前記炭化水素と前記二酸化炭素とを含む混合ガスを通過させる工程を有し、
前記複数の粒状誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、有機酸の製造方法。 - 前記炭化水素と前記二酸化炭素との反応がプラズマ反応である、請求項2に記載の方法。
- 前記複数の粒状誘電体の少なくとも一組は互いに接している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記複数の粒状誘電体は3つ以上の誘電体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記複数の粒状誘電体は周期表中の第1〜3族の金属元素を5mmol%〜45mol%で含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記複数の粒状誘電体3gを2mol%の硝酸水溶液30mLで洗浄した後の、洗浄液に含まれる前記第1〜3族の金属元素の濃度を、前記誘電体の表面積で除した値が、2ppm/cm2以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記複数の粒状誘電体はガラスである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ガラスは、酸洗いを施したものである、請求項8に記載の方法。
- 前記混合ガス中の炭素数1〜5の炭化水素の炭素数は1又は2である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記炭素数1又は2の炭化水素は、メタンである、請求項10に記載の方法。
- 前記混合ガスは炭化水素をモル分率で0.005〜0.995含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
- 前記混合ガスは二酸化炭素をモル分率で0.005〜0.995含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記混合ガス中の炭素数1〜5の炭化水素と二酸化炭素のモル比(炭化水素/二酸化炭素)は0.01〜1.8である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
- 前記混合ガス中の希ガスと、炭化水素と二酸化炭素の和とのモル比(希ガス/(炭化水素+二酸化炭素))は、0.1〜4.4である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
- 前記有機酸の炭素数が1〜4である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
- 前記有機酸の炭素間の結合は全て飽和結合であり、かつ、モノカルボン酸である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
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