JP6216748B2 - 有機酸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機酸の製造方法に関する。
現在、化学製品の原料として主に用いられている石油は、価格の高騰や枯渇が懸念されている。そのため、石油に代わる炭素化合物を原料とする化学製品の製造方法が、鋭意研究されている。石油代替の化学品の原料として、安価で比較的容易に入手することができる二酸化炭素が注目されている。
二酸化炭素を原料とし、高い原子効率で製造できる化学品として、カルボン酸などの有機酸が挙げられる。
二酸化炭素を直接原料に用いる、炭素数が2以上の炭素化合物を合成する方法として、炭化水素と二酸化炭素とを原料とする、カルボン酸の合成が挙げられる。例えば、下記反応式(式1)で示される、メタンと二酸化炭素との反応による酢酸の合成が知られている。この反応は、ΔG=71kJ/molの吸熱反応である。
CH + CO → CHCOOH (式1)
(式1)に示されるような、炭化水素と二酸化炭素からの有機酸の合成は、大きな吸熱反応であり、かつ、標準生成エントロピー差が負であることが多い。このため、熱力学的制約が大きく、高い収率で有機酸を得るためには、非平衡な条件での反応が有力となる。
非平衡な条件での反応の例として、非特許文献1には、メタンと二酸化炭素のみからなる混合ガスを原料として、非平衡プラズマを利用して反応させる、酢酸の合成方法が報告されている。具体的には、少なくとも一方の電極が石英で覆われた一対の電極間に、前記混合ガスを流通させ、誘電体バリア放電によりプラズマ化して反応させる方法である。
Y.Zhang et al., Fuel Processwring Technology (2003), 83, 101−109.
非特許文献1に記載されている方法では、反応時に炭素が誘電体表面に副生されることが予測されるため、反応の経過と共に誘電体を交換することが望ましい。しかし、誘電体バリア放電では、少なくとも一つの誘電体で電極を覆う必要があるため、誘電体の交換は容易ではない。
複数の誘電体を反応器内に充填して行うプラズマ反応では、副生する炭素化合物が付着した誘電体の交換が、少なくとも一つの誘電体で電極を覆う必要がある誘電体バリア放電に比べ容易である。しかし、複数の誘電体を充填した反応器内でのプラズマ反応は、誘電体と原料の接触面積が大きくなることで、炭化水素の脱水素による炭化物堆積が促進され、より高収率に有機酸を製造することは難しい。
よって、本発明が解決しようとする課題は、誘電体の交換が容易であり、高い収率で有機酸を与える、炭化水素と二酸化炭素とを原料とする有機酸の製造方法を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、炭化水素と二酸化炭素とを原料とし、複数の誘電体を充填した反応器でのプラズマ反応による有機酸の合成反応において、充填する誘電体の条件を限定することによって、有機酸合成の収率が向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記の通りのものである。
[1] 反応器内に充填した複数の粒状誘電体間の放電により、炭素数1〜5の炭化水素と二酸化炭素とを含む混合ガスを、プラズマ反応させて、炭素数1〜10の有機酸を得る工程、を含み、
前記複数の誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、炭素数1〜10の有機酸の製造方法。
[2] 炭素数が1〜5である炭化水素と、二酸化炭素とを原料とした、炭素数が1〜10の有機酸の製造方法であって、
複数の粒状誘電体を充填した、一対の電極間に、電圧を印加し、前記炭化水素と前記二酸化炭素とを含む混合ガスを通過させる工程を有し、
前記複数の粒状誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、有機酸の製造方法。
[3] 前記炭化水素と前記二酸化炭素との反応がプラズマ反応である、[2]に記載の方法。
[4] 前記複数の粒状誘電体の少なくとも一組は互いに接している、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5] 前記複数の粒状誘電体は3つ以上の誘電体である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6] 前記複数の粒状誘電体は周期表中の第1〜3族の金属元素を5mmol%〜45mol%で含む、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7] 前記複数の粒状誘電体3gを2mol%の硝酸水溶液30mLで洗浄した後の、洗浄液に含まれる前記第1〜3族の金属元素の濃度を、前記誘電体の表面積で除した値が、2ppm/cm以下である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8] 前記複数の粒状誘電体はガラスである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9] 前記ガラスは、酸洗いを施したものである、[8]に記載の方法。
[10] 前記混合ガス中の炭素数1〜5の炭化水素の炭素数は1又は2である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11] 前記炭素数1又は2の炭化水素は、メタンである、[10]に記載の方法。
[12] 前記混合ガスは炭化水素をモル分率で0.005〜0.995含む、[1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法。
[13] 前記混合ガスは二酸化炭素をモル分率で0.005〜0.995含む、[1]〜[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14] 前記混合ガス中の炭素数1〜5の炭化水素と二酸化炭素のモル比(炭化水素/二酸化炭素)は0.01〜1.8である、[1]〜[13]のいずれか1項に記載の方法。
[15] 前記混合ガス中の希ガスと、炭化水素と二酸化炭素の和とのモル比(希ガス/(炭化水素+二酸化炭素))は、0.1〜4.4である、[1]〜[14]のいずれか1項に記載の方法。
[16] 前記有機酸の炭素数が1〜4である、[1]〜[15]のいずれか1項に記載の方法。
[17] 前記有機酸の炭素間の結合は全て飽和結合であり、かつ、モノカルボン酸である、[1]〜[16]のいずれか1項に記載の方法。
本発明によれば、炭化水素と二酸化炭素とを原料としたプラズマ反応による有機酸の合成において、容易に誘電体を交換することができ、かつ、高い収率で有機酸を得ることができる。
原料ガスの流れ方向に対して、一対の電極が垂直に並ぶように配置された反応器の一例の概略図である。 原料ガスの流れ方向に対して、一対の電極が平行に並ぶように配置された反応器の一例の概略図である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に述べる。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態は、
反応器内に充填した複数の誘電体間の放電により、炭素数1〜5の炭化水素と二酸化炭素とを含む混合ガスを、プラズマ反応させて、炭素数1〜10の有機酸を得る工程、を含み、
前記複数の誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、炭素数1〜10の有機酸の製造方法、である。
別の観点で本実施形態は、
炭素数が1〜5である炭化水素と、二酸化炭素とを原料とした、炭素数が1〜10の有機酸の製造方法であって、
複数の誘電体を充填した、一対の電極間に、電圧を印加し、前記炭化水素と前記二酸化炭素とを含む混合ガスを通過させる工程を有し、
前記複数の誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、有機酸の製造方法、である。
(有機酸の製造方法)
本実施形態の製造方法は、原料である混合ガスを、反応器内に充填した複数の誘電体間の放電によりプラズマ反応させて、有機酸を得る工程を有する。
前記プラズマ反応とは、原料分子に電子を照射して励起し、励起された分子同士が衝突して進む反応などを指す。また、反応器内に充填した複数の誘電体間に、交流電圧またはパルス電圧を印加することで、プラズマを発生させる方法はパックドベット方式と呼ばれる。この方法は間欠的に電子を照射することにより電子温度のみが上昇し、原子あるいは分子が室温に近い温度で存在する、非平衡プラズマ発生方法である。
本実施形態のように、パックドベッド方式によって電子を照射された分子は、解離エネルギーの低い結合から選択的に順次切断される。このため、電子を二酸化炭素や炭化水素に適度に照射し、単原子ラジカル状態まで分解される前に電子照射が終了する条件で反応させれば、原料分子の構造を一部保持したまま反応させることが可能であると考えられる。
一方、アーク放電のような平衡プラズマは、原料分子を瞬時に単原子ラジカルまで解離する。そのため、原料分子の構造を一部保持したままで、カルボン酸などの有機酸を生成するためには、パックドベッド方式によるプラズマ反応が好ましい。
(有機酸の収率向上のメカニズム)
本実施形態の誘電体は、周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含むことを特徴としている。この特徴により、有機酸の収率が向上する。
理論には拘束されないが、本実施形態の製造方法により有機酸の収率が向上するメカニズムについて、本発明者らは以下のように推定している。
パックドベッド方式では、充填する誘電体間で放電を生じるため、誘電体の誘電率が、反応生成物に最も大きく影響を与えることが予想される。誘電体の誘電率が高いほど分極し易いために、プラズマの発生に有利であると考えられる。しかし、驚くべきことに、炭化水素と二酸化炭素を原料とする有機酸合成反応には、他の要素が有機酸収率に大きく寄与していることを見出した。
プラズマ反応では、結合エネルギーが低い結合を解離させる反応がより有利に進行するが、炭化水素と二酸化炭素を構成する結合のエネルギーを比較すると、二酸化炭素を構成する炭素と酸素の二重結合(C=O)は、比較的結合エネルギーが大きいため、二酸化炭素の活性化が比較的不利となる。しかし、炭化水素と二酸化炭素を原料とするプラズマ反応による有機酸製造において、有機酸の生成のためには、二酸化炭素の活性化に起因するカルボキシル基(COOH)の生成が必要である。二酸化炭素は、酸素に挟まれた中央の炭素が正の電荷に帯電し易いため、二酸化炭素を活性化させる触媒として、負の電荷を帯びる塩基点を有するものが有効であると考えられる。具体的には、電気陰性度が小さな周期表第1〜3周期の元素を主に含む材料、より具体的には、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化セシウムなど、材料を構成する金属カチオンが第1〜3周期の元素のみであるものが塩基点の形成に顕著である。加えて、チタン酸バリウムなどの複合金属化合物に含まれる第1〜3周期の元素や、ソーダガラスに含まれる、ナトリウムやマグネシウム、カルシウムなどが起因して形成する塩基点が、一般的に二酸化炭素の活性化に効果的である。しかし、発明者らは、塩基点が比較的少ない誘電体材料が、炭化水素と二酸化炭素を原料とする有機酸合成反応に有利であることを見出した。
有機酸の生成には、二酸化炭素からカルボキシル基(COOH)を生成することが重要であるが、二酸化炭素からのカルボキシル基の生成(式2)には、二酸化炭素を過剰に活性化することにより生じる脱酸素(例えば式3)が阻害要因となる可能性がある。塩基点を多く有する、および/または強度の強い塩基点を有する誘電体では、この二酸化炭素からの脱酸素反応を促進してしまうため、有機酸収率が減少すると推測される。
CO + H → COOH (式2)
CO → CO + O (式3)
なお、上記H、O、およびCOOHは、水素活性種、酸素活性種、およびカルボキシル基活性種を意味する。
さらに、二酸化炭素は、強度の高い塩基点へ強く吸着する、および/または塩基点数の多い空間を通過することで、放電空間に留まる時間を増やすため、カルボキシル基までの生成を促し、ギ酸の生成は促進するものの、炭化水素の活性化の妨げとなり、炭素数が2以上の有機酸の生成量が低下すると考えられる。
前記放電空間とは、具体的には、複数の誘電体が充填された空間など、を指す。
その他のカルボン酸生成のメカニズムとして、炭化水素活性種、および複数の炭化水素が縮合した活性種が、二酸化炭素由来の酸素活性種と反応してカルボン酸を生成することが推測される。例えば、炭化水素をメタンとしたときの、メタンやメタン活性種(例えばCH )と酸素活性種からのギ酸の生成反応(例えば式4)、およびメタン2分子が縮合した活性種と酸素活性種からの酢酸生成反応(例えば式5)などが挙げられる。この反応に寄与する酸素活性種は、例えば式3の機構で生成することが考えられる。このとき、酸素活性種量が多い方が、炭化水素や炭化水素活性種からのカルボン酸生成量は増大するが、酸素活性種量が過剰になると、炭化水素や炭化水素活性種の過剰な酸化による副反応(例えば式6)が促進され、カルボン酸生成量は低下する。
CH + 2O → HCOOH (式4)
+ 2O → CHCOOH (式5)
CH + 4O → CO + 2HO (式6)
さらに、式2のような二酸化炭素と炭化水素由来の水素活性種との反応によるカルボキシル基の生成反応と、式4および式5のような炭化水素と二酸化炭素由来の酸素活性種との反応による有機酸生成反応とは協奏反応となっており、誘電体の塩基点量を適切にすることで反応速度のバランスが適当になり、それぞれの反応が促進すると考えられる。
つまり、誘電体中の塩基点量が適切である場合においては、式2のような水素活性種と二酸化炭素によるカルボキシル基の生成は促進されるが、式3のような二酸化炭素からの酸素活性種の生成は抑制される。その結果、式4および式5のような炭化水素活性種と酸素活性種との反応による有機酸生成に適切な酸素活性種量となるため、有機酸の収率が向上すると推測される。
(誘電体材料)
本実施形態に用いる誘電体は、周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む。二酸化炭素の脱酸素などの過剰な活性化を抑制し、有機酸の収率が向上する点から、第1〜3族金属元素は60mol%以下がより好ましく、45mol%以下がさらに好ましく、30mol%以下が特に好ましく、20mol%以下が最も好ましい。また、二酸化炭素の活性化には、塩基点を有することが好ましいので、誘電体に含まれる周期表中の第1〜3族金属元素は、5mmol%以上がより好ましく、10mmol%以上がさらに好ましい。
さらに、この誘電体中の第1〜3族の金属元素の効果は、誘電体の表面で生じる反応に寄与するため、表面に存在する第1〜3族の金属元素がより顕著に反応に効果を及ぼすことが推測される。この表面の第1〜3族の金属元素量は、3gの誘電体を30mLの2mol%硝酸水溶液で洗浄したときの、洗浄液に含まれる第1〜3族の金属元素の濃度を、前記誘電体の表面積(cm)で除した値で評価する(以降本願では、「遊離金属元素量」とも記す。)。この遊離金属元素量は、2ppm/cm以下であることが好ましく、0.4ppm/cm以下であることがより好ましく、0.08ppm/cm以下であることがさらに好ましく、0.06ppm/cm以下であることが最も好ましい。
電気陰性度が小さい元素ほど塩基点を形成するために有利であるので、誘電体に含まれる周期表中の第1〜3族金属元素は、第1族または第2族元素が好ましく、第1族元素が最も好ましい。具体的には、第1〜3族金属元素は、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gdであることが好ましく、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、であることがより好ましく、Li、Na、K、であることがさらに好ましい。
誘電体の例としては、石英ガラス、ソーダガラス、酸化アルミ、チタン酸バリウム、チタン酸鉛などが挙げられる。入手が容易であることから、誘電体としては、石英ガラスやソーダガラスが好ましい。
パックドベッド方式による反応では、充填する誘電体間で放電が生じる。高い誘電率を持つ誘電体は分極しやすく、放電電流を増大するため、反応を促進すると考えられる。したがって、誘電体は強誘電体が好ましい。高い誘電率を持つ誘電体としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムや、チタン酸鉛などが好ましい。結晶性が高いほど誘電率が高くなるので、誘電体は結晶性であることがより好ましい。また、誘電体表面の第1〜3族元素を減少させる観点から、誘電体は、酸で洗浄することが好ましい。
誘電体の形状は特に限定されないが、粒状であることが好ましい。粒状とは、個々の誘電体が輪郭を持った状態のことを指し、例えば、扁平形状であっても、球状であっても、多角形状であってもよい。
充填する誘電体間の距離が長いほど、プラズマの発生により多くのエネルギーを要するので、充填する誘電体は接していることが好ましい。また、誘電体が緻密に充填されるほど、プラズマを均一に発生させるのに有利であり、誘電体の個数が多いほど、緻密に充填するために有利であるので、充填する誘電体の個数は3個以上が好ましく、5個以上がより好ましく、10個以上がさらに好ましい。
本実施形態において、誘電体は一対の電極の間に充填されていればよい。電極の配置方法については後述するが、図1の、原料ガスの流れ方向に対して一対の電極が垂直に並ぶように配置された場合のように、第2の電極4の内部に誘電体が充填されてもよい。第2の電極の内部に誘電体を充填する場合は、ガラス繊維やガラス製メッシュ等を誘電体の下に設置して、誘電体を固定してもよい。
また、図2の、原料ガスの流れ方向に対して一対の電極が平行に並ぶように配置された場合のように、電極の間に誘電体が挟持されてもよい。
(プラズマ発生領域に原料が滞在する時間)
原料である混合ガスがプラズマ発生領域に滞在する時間は、特に限定されないが、滞在時間が長いと炭化水素および二酸化炭素の転化率向上に有利であるので、0.01秒以上が好ましく、0.1秒以上がより好ましく、0.5秒以上がさらに好ましい。また、生成した有機酸の2次反応及び副反応の抑制の観点から、原料がプラズマ発生領域に滞在する時間は、20秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましく、5秒以下がさらに好ましい。
(パックドベッド方式によるプラズマの発生方法)
パックドベッド方式によるプラズマの発生方法とは、誘電体間に断続的な電圧を印加することで、プラズマを発生させる方法などである。前記断続的な電圧の印加とは、交流電圧や、パルスで同位相または逆位相電位に電圧を印加することなどを示す。
本実施形態において有機酸を製造する装置は、特に限定されず、複数の誘電体を充填した、一対の電極間に、電圧を印加し、原料ガスを通過させることができればよい。例えば以下の装置を例示することができる。
有機酸の製造装置は、一対の電極、複数の誘電体、電極に電圧を印加する電源、ガスを流すための配管、及び原料タンク等を備える。一対の電極は、それぞれ電圧を印加する電源に接続され、前記電極間には誘電体が充填される。上記の誘電体が充填された電極は、配管内に設置される。配管の一端に原料タンクを接続できる。配管のもう一端には、必要であれば、生成物を回収するためのトラップや保管するためのタンクを設置してもよい。
本実施形態において、電極の配置方法は、特に限定されないが、原料ガスの流れ方向に対して、平行または垂直に並ぶように配置されてもよい。
図1は、原料ガスの流れ方向に対して、一対の電極が垂直に並ぶように配置された反応器の一例の概略図である。図1の反応器は、反応器外殻1と、誘電体2と、第1の電極3と、第2の電極4とを有する。前述のように、誘電体は第1の電極3と第2の電極4との間に充填される。第1の電極3および第2の電極4は、原料ガスの流れ方向に対して垂直に並ぶように、かつ、それぞれの電極が原料ガスの流れ方向に沿って延在するように配置される。原料ガスの流れ方向に対して、平行に延在するように電極が配置されることは、反応器外殻1に沿わすことで電極を安定して固定できる観点から好ましい。特に限定されないが、電極間で偏りなくプラズマを発生させるために、第2の電極4は円筒型であることが好ましく、また、第1の電極3は第2の電極4の中心に配置されることが好ましい。第2の電極4は、反応器外殻1の内側または外側に配置されてもよい。原料との反応による生成物の電極表面への堆積を防ぐ観点から、第2の電極4は反応器外殻1の外側に配置されることが好ましい。
図2は、原料ガスの流れ方向に対して、一対の電極が平行に並ぶように配置された反応器の一例の概略図である。図2の反応器は、反応器外殻1と、誘電体2と、一対の電極5とを有する。前述のように誘電体2は、一対の電極5の間に充填される。一対の電極5は、原料ガスの流れ方向に対して平行に並ぶように、かつ、それぞれの電極が原料ガスの流れ方向に垂直な方向に沿って延在するように配置される。原料ガスの流れ方向に対して、垂直に延在するように電極が配置されることは、反応器を小さくできる観点から好ましい。また、原料ガスが流れる時の圧力損失を小さくする観点から、電極は網目状などの孔を有することが好ましい。
電極間距離は、特に限定されないが、0.1mm以上10m以下が好ましい。装置の簡便さや原料反応物による電極間の短絡防止の観点から、電極間距離は1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、8mm以上が最も好ましい。また、誘電体に印加される電圧の充填位置による差を小さくするために、電極間距離は5m以下が好ましく、1m以下が好ましく、50cm以下がさらに好ましい。
電極間に印加する交流電圧は、正弦波、矩形波、または鋸波であることが好ましい。
また、電極間に電圧を印加する際の周波数は、1kHz以上1MHz以下であることが好ましい。
電極間に電圧を印加する際に投与する電力は、1W以上、200W以下が好ましい。原料分子に照射される電子の数が多すぎると、原料分子の構造を過剰に分解してしまう。プラズマ発生場に投入する電力を調整することによって、原料分子に照射する電子の数は制御できる。原料分子の過剰分解の抑制や投入エネルギーの利用効率の観点から、投入電力は120W以下がより好ましく、80W以下がさらに好ましく、65W以下が最も好ましい。一方、プラズマの安定性や原料の反応性向上の観点から、投入電力は5W以上がより好ましく、20W以上がさらに好ましく、40W以上が最も好ましい。
電極間に印加する電圧は、0.1kV以上、30kV以下が好ましい。原料分子に照射される電子の数が多すぎると、原料分子の構造を過剰に分解してしまう。電極間に印加する電圧を制御することによって、原料分子に照射する電子の数を制御できる。原料分子の過剰分解の抑制やエネルギー効率の観点から、印加電圧は19kV以下が好ましく、8kV以下がより好ましく、4kV以下が最も好ましい。一方、プラズマの安定性や原料の反応性向上の観点から、印加電圧は0.5kV以上が好ましく、1kV以上がより好ましく、2kV以上がさらに好ましい。
プラズマ発生場の圧力は、特に限定されないが、ゲージ圧で0.0001Pa以上、1MPa以下が好ましい。減圧のためのエネルギーは少ない方が好ましいので、0.001Pa以上が好ましく、0.01Pa以上がより好ましく、0.05Pa以上がさらに好ましい。また、導入する原料分子の平均自由工程が長い方がプラズマ発生に有利であるので、圧力は0.6MPa以下が好ましく、0.3MPa以下が好ましく、0.2MPa以下が好ましい。減圧および加圧にエネルギーを必要としないので、大気圧が最も好ましい。
プラズマ発生場の温度は、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。プラズマ発生場の温度が30℃未満であると、生成カルボン酸などの低沸成分が反応器に蓄積するため、好ましくない。また、プラズマ発生場の温度は、300℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。プラズマ発生場の温度が300℃を超えると、生成された有機酸の分解反応が促進されるため、好ましくない。
(混合ガス)
原料として導入する混合ガスは、炭素数が1〜5である炭化水素と、二酸化炭素とを含む。混合ガスは、炭化水素と二酸化炭素以外の気体を含んでもよい。
炭化水素と二酸化炭素以外の気体とは、例えば、希ガス、水素、酸素、窒素などの不活性ガス、等が挙げられる。プラズマ寿命が長いと発生させたプラズマを効率良く反応に利用できる観点から、希ガスを含むことが好ましい。ここで示すプラズマ寿命とは、励起して発生したプラズマが緩和するまでに要する平均時間のことである。大気中気体からの精製コストの観点や、炭化水素や二酸化炭素由来のラジカル同士の衝突確率が減少することで副反応が抑制される点から、窒素を含むことが好ましい。
また、炭化水素の酸化を促進するので、酸素などの酸化性気体を含むことが好ましい。気体に酸化性気体を含む場合は、爆発限界以下の濃度とすることが好ましい。
なお、以下の説明において、本実施形態の希ガス、二酸化炭素、炭化水素、およびその他成分のモル分率は、下記式で求めることができる。
[気体のモル分率総量]=[炭化水素のモル分率]+[二酸化炭素のモル分率]+[希ガスのモル分率]+[他成分のモル分率]=1
(炭素数が1〜5である炭化水素)
原料として導入する炭化水素の炭素数は1〜5である。炭化水素は、飽和炭化水素、またはアルケン、アルキン、及び芳香族などの不飽和炭化水素であることが好ましい。プラズマを利用する反応は、触媒反応などの他の反応と比較し、生成物が炭素‐炭素間の不飽和結合を形成することが容易であり、生成物を原料に対しより高エネルギー化することで産業的価値のより高い生成物を製造できる観点から、飽和炭化水素、アルケン、アルキンがより好ましく、飽和炭化水素、アルケンがさらに好ましく、飽和炭化水素が最も好ましい。
プラズマを利用する反応では、炭素‐炭素結合が解離し易いため、原料の炭化水素が長鎖であるほど炭素鎖が解離される機会が増え、炭素骨格を維持しにくい。一方、原料が炭素鎖の短い炭化水素であれば、炭素鎖が解離される機会は少なく、原料の炭素鎖を維持した生成物が得やすい。よって、生成物のコントロールの観点から、原料として導入する炭化水素の炭素数は、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましく、1が最も好ましい。
炭化水素としては、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、ペンテン、及びこれらの異性体などが挙げられる。上述の理由から、炭化水素は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、及びこれらの異性体であることが好ましく、より好ましくはメタン、エタン、プロパン、エチレンであり、最も好ましくはメタン、エタンである。
前記炭化水素は、同一種類のものを単独で用いてもよいし、異なる複数種類のものを混合して用いてもよい。異なる複数種類の炭化水素を混合して用いる場合として、メタンやエタンを多く含む、天然ガスやシェールガスを利用することなどが考えられる。また、本発明の原料である炭化水素は、反応器の簡便さの観点から、気体で導入されることが好ましい。
導入する気体(混合ガス)に含まれる炭化水素のモル分率は、0.005以上、0.994以下が好ましい。炭化水素の反応確率を向上させる観点から、0.01以上がより好ましく、0.02以上がさらに好ましい。また、二酸化炭素や希ガスとの混合比の観点から、0.7以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましく、0.3以下がさらに好ましい。
(二酸化炭素)
導入する気体(混合ガス)に含まれる二酸化炭素のモル分率は、0.005以上0.994以下が好ましい。二酸化炭素の反応確率を向上させ、カルボキシル基の生成量を増加させる観点から、0.02以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。また、炭化水素や希ガスとの混合比の観点から、0.7以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましく、0.3以下がさらに好ましい。
(炭化水素と二酸化炭素とのモル比)
炭化水素と二酸化炭素とのモル比(炭化水素/二酸化炭素)は、0.01以上1.8以下が好ましい。炭素と水素との一重結合は、炭素と酸素との二重結合に比べ結合エネルギーが小さいため、プラズマにより比較的解離し易い。すなわち、炭化水素量が多いことで、プラズマによって炭素―水素結合が解離した活性種が、炭素―炭素結合を形成する反応が進行し易くなり、化学品としてより有用な、炭素数の大きな有機酸の生成に有利である。この観点から、導入する気体に含まれる炭化水素と二酸化炭素とのモル比(炭化水素/二酸化炭素)は、0.02以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましく、0.2以上が最も好ましい。一方、カルボキシル基の生成には二酸化炭素が必要であり、二酸化炭素の比率を向上させることで、カルボン酸の生成に必要なカルボキシル基の生成を増加させる必要がある。したがって、導入する気体に含まれる炭化水素と二酸化炭素とのモル比(炭化水素/二酸化炭素)は、1.6以下がより好ましく、1.1以下がさらに好ましく、0.7以下が最も好ましい。
(希ガス)
混合ガスは希ガスを含んでもよく、希ガスとは新IUPAC周期表で示される18族の元素などであり、具体的には、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnなどが挙げられる。希ガスの汎用性の観点から、ArやNeが好ましく、イオン化エネルギーが比較的小さい点から、Heが好ましい。
導入する気体(混合ガス)に含まれる希ガスのモル分率は、0.001以上0.990以下が好ましい。プラズマを安定化させる観点や、プラズマ発生の開始印加電圧を小さくする観点から、プラズマ寿命の長い希ガスを、モル分率で0.001以上導入することが好ましい。上記の観点から、希ガスのモル分率は、0.15以上がより好ましく、0.45以上がさらに好ましく、0.60以上が特に好ましい。炭化水素や二酸化炭素のモル分率を高める観点から、0.98以下が好ましく、0.93以下がさらに好ましく、0.88以下がより好ましい。
(希ガスのモル比)
導入する気体(混合ガス)に含まれる希ガスと、炭化水素と二酸化炭素の和、とのモル比(希ガス/(炭化水素+二酸化炭素))は、0.1以上、4.4以下が好ましい。印加電圧を低減し、過剰な電子照射を抑制することで、目的とする生成物の選択率を向上させつつ、安定なプラズマを発生させるためには、混合する希ガスの濃度が高い方が望ましい。したがって、希ガスと、炭化水素と二酸化炭素の和、とのモル比(希ガス/(炭化水素+二酸化炭素))は、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.8以上、最も好ましくは1.6以上である。一方、希ガス濃度が低くなることで、炭化水素および二酸化炭素の濃度が高くなり、炭化水素と二酸化炭素との衝突、炭化水素同士の衝突、二酸化炭素同士の衝突頻度が向上する観点から、希ガスと、炭化水素と二酸化炭素の和、とのモル比(希ガス/(炭化水素+二酸化炭素))は、3.8以下がより好ましく、2.8以下がさらに好ましく、2.2以下が最も好ましい。
(炭素数が1〜10の有機酸)
本実施形態の方法によって製造される有機酸は、分子を構成する炭素数が1〜10の有機酸である。有機酸の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは炭素数が1〜6、さらに好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜4である。
前記有機酸は、カルボキシル基を有する有機酸が好ましい。前記有機酸は、直鎖または分岐鎖を有するカルボン酸、炭素間の結合が飽和結合のみのカルボン酸、不飽和結合を有するカルボン酸などが挙げられる。プラズマとの反応では炭化水素末端の水素が解離し易いので、直鎖のカルボン酸がより好ましい。また、プラズマ反応では、過剰な炭化水素の解離を生じにくいので、炭素間の結合がすべて飽和結合であるカルボン酸が好ましい。
前記有機酸としては、例えば、カルボキシル基を一つまたは複数有する、炭素数が1〜10のカルボン酸が挙げられる。具体的にはモノカルボン酸、またはジカルボン酸が挙げられる。モノカルボン酸の具体例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、およびこれらの異性体が挙げられる。ジカルボン酸の具体例として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下に示すような条件で反応を行い、有機酸の生成量について評価した。
なお、各成分のモル分率、有機酸の収率は、つぎのようにして測定した。
(液体クロマトグラフィー)
[装置]
システムコントローラー:CBM−20A(島津製作所製)
送液ポンプ:LC−20AD(島津製作所製)
電気伝導度検出器:CDD−10Avp(島津製作所製)
[カラム]
Shim−pack SCR−102H(島津製作所製)
[移動相]
5mmol/L p−トルエンスルホン酸
[反応液] 5mmol/L p−トルエンスルホン酸
+ 100μmol/L EDTA + 20mmol/L Bis−Tris
[測定条件]
カラム温度40℃、送液速度0.8mL/min
(GC−MS)
[装置]
HP−6890/5973N(Agilent社製)
[カラム]
TC−FFAP(30m×0.25mm、膜厚:0.25μm)
[測定条件]
イオン化条件:70eV、カラム温度:50℃定常。
上記GC−MSは、同位体原料を用いた生成物の評価に用いた。
(SEM−EDX)
[装置]
SEM:SU−70(日立製作所社製)
EDX:EMAX・Xmax(堀場製作所社製)
[測定条件]
加速電圧(EDX):20kV、WD:15mm
(モル分率)
また、炭化水素及び二酸化炭素のモル分率をガスクロマトグラフィーで評価する場合は、アルゴンまたはヘリウムをキャリアガスとし、熱伝導度検出器を用いた。アルゴンのモル分率を測定する場合は、キャリアガスをヘリウムとして熱伝導度検出器のガスクロマトグラフィーを用いた。他の希ガスを評価する際には、測定する希ガスとは異なる希ガスをキャリアガスとすることで評価できる。カラムは、炭化水素及び二酸化炭素の測定については、極性型のカラム(TC−BONDQ、ジーエルサイエンス社製)を用い、希ガスについては、モレキュラーシーブスなど、適宜対象希ガスを分離できるものを用いた。
(誘電体材料中の第1〜3族金属元素成分量)
加速電圧20kVの条件下で、SEM−EDXの面測定を用いて、誘電体材料に含まれる原子の定量分析を行った。測定により得られた各元素のモル分率のうち、第1〜3族金属元素に属する各元素のモル分率の和を求めた。測定は3回行い、第1〜3族金属元素に属する各元素のモル分率の和の平均値を、誘電体材料中の第1〜3族金属元素成分量とした。
(誘電体の遊離金属元素量)
誘電体を3g採取し、30mLの2mol%の硝酸水溶液に浸し、5分間超音波処理、1時間静置後に撹拌し、この上澄みを洗浄液として得た。ICPを用いて、洗浄液に含まれる元素の濃度を測定した。第1〜3族金属元素に属する各元素の濃度の和を、洗浄前の前記誘電体の表面積で除した値を、遊離金属元素量(ppm/cm)とした。なお、ICPはセイコーインスツル株式会社製のSP352UV−DDを用い、高周波パワー1.2kW、キャリアーガスをArとし、三点校正して作成した検量線を元に、洗浄液中の各元素の濃度を得た。また、誘電体の比表面積は後述の方法により測定した。
(誘電体の比表面積)
誘電体の比表面積は、下記装置を用いてBET比表面積法により求めた。
[装置]
オートソーブ3MP(カンタクローム社製)
[測定条件]
吸着ガス:窒素
測定温度:77.4K
測定圧力範囲:相対圧0.05〜0.3
(生成有機酸量)
各有機酸の生成量は、反応器下流に設置した水トラップ液、および反応管下流を蒸留水で洗浄した洗浄液を、上述の液体クロマトグラフィーで評価し、水トラップ液中と洗浄液中の有機酸の和を生成量とした。
(導入炭化水素量)
導入炭化水素量(mol)は、原料気体の圧力P(Pa)、導入炭化水素が占める体積V(L)気体定数R(=8.314)、原料気体の温度(K)から、次式を用いて求めた。
[導入炭化水素量(mol)]=PV/RT
ここで、Vは、次式を用いて求められた。
V=[原料気体の流速(mL min−1)]×原料気体の導入時間(min)]×炭化水素のモル分率]/1000
また原料気体の圧力Pは100kPa、原料気体の温度Kは298Kであった。
(有機酸収率)
有機酸収率は、以下の式から算出した。
[有機酸収率(%)]=[生成有機酸量(mol)]/[導入炭化水素量(mol)]×100
(反応装置)
反応装置は、粒状の誘電体材料を約70個充填した石英管に、原料気体の導入方向に対して一対の電極が垂直に並ぶように配置された、パックドベッド方式のプラズマを発生させる装置を用いた。充填した粒状誘電体は、内径10mm、厚さ1.5mmである石英管の内部に、石英ウールで挟み込むことで、石英管の長さ方向に3cm以上設置した。この誘電体材料が充填された範囲の外部に、幅2cmのアルミ箔を巻き付け、これを外部電極とした。また、前記石英管の内部の中心に外径6mmインチのSUS316管を設置し、これを内部電極とした。
石英管内に、原料気体を上から下に流通し、内部電極と外部電極に40kHzの交流電圧を印加させることで、粒状誘電体間にプラズマを発生させ、反応を行った。反応後の気体を水トラップに通過させることで有機酸の回収を行った。水トラップは、5mLのイオン交換水を水面の高さが5cmとなるようにガラス瓶に入れることで設置し、ガラス瓶の底から反応後の気体をバブリングさせて用いた。
実施例1〜実施例12では、炭化水素と二酸化炭素を含む混合気体をプラズマと反応させて、有機酸を製造し、有機酸の収率について評価した。
<実施例1>
ソーダガラスを誘電体部に充填した反応装置を用いて反応を行った。ソーダガラスの比表面積は、47cm/gであった。原料気体を、CH:2mL/min、CO:5mL/min、Ar:12mL/min(モル分率は、CH:CO:Ar=0.11:0.26:0.63)とし、プラズマの印加電圧を3.6kVとして、反応を行った。反応開始後、3分後から8分後の5分間、水トラップに反応後の気体を通過させ、有機酸の回収を行った。
<実施例2〜7>
実施例2〜7は、表1に記載の条件で実施例1と同様に行った。導入総気体の流速は、
実施例1と同じになるように各原料の流量を調整した。また、酸洗いガラスの比表面積は47cm/gであり、チタン酸バリウムの比表面積は、17cm/gであった。
実施例の条件を表1に示す。また、実施例で得られた有機酸の収量、及び収率を表2に示す。
実施例1〜6で用いた誘電体であるソーダガラスと、酸洗いガラス中のSEM−EDX評価による第1〜3元素量は等しく、いずれもNa:6mol%、K:1mol%、Mg:3mol%、Ca:4mol%であった。また、実施例7で用いたチタン酸バリウムに含まれる第1〜3元素は、バリウムが50mol%であった。
また、検出された遊離金属元素量については、以下の通りであった。
ソーダガラス
Na:0.06ppm/cm、K:0.002ppm/cm、Ca:0.02ppm/cm、Mg:0.009ppm/cm
酸洗いガラス
Na:0.04ppm/cm、Ca:0.009ppm/cm、Mg:0.002ppm/cm
チタン酸バリウム
Na:0.014ppm/cm、K:0.006ppm/cm、Ca:0.05ppm/cm、Ba:0.485ppm/cm
Figure 0006216748
Figure 0006216748
実施例1、2、7を比較すると、誘電体材料以外の条件が等しいにも関わらず、有機酸の収量は変化したことから、誘電体材料が有機酸の生成に大きく影響を与えることがわかる。また、強誘電体であるチタン酸バリウムはプラズマ発生に有利であるにも関わらず、チタン酸バリウムを用いて反応を行うと有機酸収量は減少した。また、チタン酸バリウムは用いた誘電体材料の中では、一番材料中に含まれる第1〜3族元素の金属量が多く、酸洗浄時の洗浄液中の成分量も一番多かった。この結果は、パックドベッド方式での炭化水素と二酸化炭素からの有機酸合成には、充填する誘電体の誘電率よりも、含まれる第1〜3族元素の金属量がより大きく影響を与えることがわかる。
また、実施例1、2を比較すると、共にガラスを用いているにも関わらず、有機酸生成量は異なり、表面に存在する第1〜3族元素の金属量により有機酸収量は大きく影響を受けることがわかる。ソーダガラスを用いた際には、ギ酸生成に有利であったが、表面に存在する第1〜3族元素量が少ない酸洗いガラスでは、炭素数が2以上の有機酸生成に有利であった。この結果から、ソーダガラス中の第1〜3族元素により、二酸化炭素を強く吸着する塩基点を形成し、この強い吸着が二酸化炭素と炭化水素の反応を阻害したために、ギ酸の生成に有利となり、表面の第1〜3族元素量が減少した酸洗いガラスでは塩基点が少なくなり、より炭化水素と反応したために、炭素数2以上の有機酸の生成に有利であったことが推測される。
実施例2〜4を比較すると、導入する混合ガスの炭化水素と二酸化炭素の比は、1:2程度が望ましいことがわかる。二酸化炭素が多いことで、カルボキシル基の生成は促進されるものの、二酸化炭素が多くなり過ぎると脱酸素が促進される、および/または水素の生成量が不足するために有機酸収量は減少し、炭化水素が多くなり過ぎると二酸化炭素の過剰な還元が進行してしまうために、有機酸収量は減少したことが推測される。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明に係る、プラズマを利用した、炭化水素と二酸化炭素とを原料とする有機酸の製造方法は、本明細書に示したような、適した反応条件とすることで、有機酸の高収率化を発現することができるものとなり、工業的に有機酸を製造する方法において、好適に利用可能である。
1 反応器外殻
2 誘電体
3 第1の電極
4 第2の電極
5 網目状電極

Claims (17)

  1. 反応器内に充填した複数の粒状誘電体間の放電により、炭素数1〜5の炭化水素と二酸化炭素とを含む混合ガスを、プラズマ反応させて、炭素数1〜10の有機酸を得る工程、を含み、
    前記複数の誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、炭素数1〜10の有機酸の製造方法。
  2. 炭素数が1〜5である炭化水素と、二酸化炭素とを原料とした、炭素数が1〜10の有機酸の製造方法であって、
    複数の粒状誘電体を充填した、一対の電極間に、電圧を印加し、前記炭化水素と前記二酸化炭素とを含む混合ガスを通過させる工程を有し、
    前記複数の粒状誘電体は周期表中の第1〜3族金属元素を1mmol%〜80mol%含む、有機酸の製造方法。
  3. 前記炭化水素と前記二酸化炭素との反応がプラズマ反応である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記複数の粒状誘電体の少なくとも一組は互いに接している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記複数の粒状誘電体は3つ以上の誘電体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記複数の粒状誘電体は周期表中の第1〜3族の金属元素を5mmol%〜45mol%で含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記複数の粒状誘電体3gを2mol%の硝酸水溶液30mLで洗浄した後の、洗浄液に含まれる前記第1〜3族の金属元素の濃度を、前記誘電体の表面積で除した値が、2ppm/cm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記複数の粒状誘電体はガラスである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記ガラスは、酸洗いを施したものである、請求項8に記載の方法。
  10. 前記混合ガス中の炭素数1〜5の炭化水素の炭素数は1又は2である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記炭素数1又は2の炭化水素は、メタンである、請求項10に記載の方法。
  12. 前記混合ガスは炭化水素をモル分率で0.005〜0.995含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記混合ガスは二酸化炭素をモル分率で0.005〜0.995含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記混合ガス中の炭素数1〜5の炭化水素と二酸化炭素のモル比(炭化水素/二酸化炭素)は0.01〜1.8である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記混合ガス中の希ガスと、炭化水素と二酸化炭素の和とのモル比(希ガス/(炭化水素+二酸化炭素))は、0.1〜4.4である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記有機酸の炭素数が1〜4である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記有機酸の炭素間の結合は全て飽和結合であり、かつ、モノカルボン酸である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
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