以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(関連技術)
(湿式画像形成装置の全体構成および動作)
図1は、関連技術における湿式画像形成装置の全体構成を示す図である。図1を参照して、関連技術における湿式画像形成装置200の全体構成について説明する。
図1に示すように、関連技術における湿式画像形成装置200は、像担持体としての感光体ドラム1と、帯電装置2と、露光装置3と、湿式現像装置4と、転写部としての中間転写部材5および2次転写部材6と、像担持体クリーニング装置7と、中間転写部材クリーニング装置8とを備える。
感光体ドラム1は、表面に感光体層(不図示)が形成された円筒形状である。感光体ドラム1は、図1中の矢印A方向に回転駆動する。感光体ドラム1の外周には、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4、中間転写部材5、像担持体クリーニング装置7が、感光体ドラム1の回転方向(A方向)に沿って順次配置されている。
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を所定電位に帯電させる。露光装置3は、感光体ドラム1の表面に光を照射し照射領域内の帯電レベルを低下させて静電潜像を形成する。湿式現像装置4は、感光体ドラム1上に形成された静電潜像を現像する。具体的には、感光体ドラム1の現像領域へ湿式現像剤を搬送し、当該湿式現像剤に含まれるトナー粒子を感光体ドラム1の表面の静電潜像に供給してトナー像を形成する。
現像プロセスにおいては、後述する湿式現像装置4の現像剤担持体9に電源(不図示)から現像バイアス電圧が印加される。感光体ドラム1上の静電潜像の電位と現像剤担持体9の電位とのバランスで生じた電界に従って湿式現像剤中のトナー粒子が感光体ドラム1の静電潜像部分に静電吸着され、感光体ドラム1上の静電潜像が現像される。
中間転写部材5は、感光体ドラム1と対向するように配置されており、感光体ドラム1と接触しながら図中の矢印B方向に回転する。中間転写部材5と感光体ドラム1とのニップ部で、感光体ドラム1から中間転写部材5への一次転写が行なわれる。
一次転写プロセスにおいては、中間転写部材5に電源(不図示)から転写バイアス電圧が印加される。これにより、一次転写位置における中間転写部材5と感光体ドラム1との間に電界が形成され、感光体ドラム1上のトナー像が、中間転写部材5に静電吸着される。この結果、感光体ドラム1上のトナー像が、中間転写部材5上に転写される。
感光体ドラム1上のトナー像が中間転写部材5に転写されると、像担持体クリーニング装置7が感光体ドラム1上の残存トナー像を除去し、次の画像形成が行なわれる。必要に応じて、像担持体クリーニング装置7と帯電装置2との間にはイレーサーランプ10が設置される。
中間転写部材5と2次転写部材6とは、記録材としての記録媒体11を挟んで対向するように配置されており、記録媒体11を介して接触回転する。中間転写部材5と2次転写部材6とのニップ部で、中間転写部材5から記録媒体11への二次転写が行なわれる。記録媒体11は、二次転写のタイミングに合わせて二次転写位置へ図中の矢印C方向に搬送される。
二次転写プロセスにおいては、2次転写部材6に、電源(不図示)から転写バイアス電圧が印加される。これにより、中間転写部材5と2次転写部材6との間に電界が形成され、中間転写部材5と2次転写部材6との間を通過させた記録媒体11上へ中間転写部材5上のトナー像が静電吸着される。この結果、中間転写部材5上のトナー像が記録媒体11上に転写される。
トナー像が記録媒体11上に転写されると、中間転写部材クリーニング装置8が中間転写部材5上の残存トナー像を除去し、次の一次転写が行なわれる。記録媒体11はその後図示しない定着装置へと搬送され、記録媒体11上のトナー粒子を加熱溶融することによりトナー粒子を記録媒体11に定着させる。
なお、図1では、感光体ドラム1と湿式現像装置4とを1組として、単色の湿式画像形成装置200を示しているが、感光体ドラム1と湿式現像装置4とを合計4組用意し、それぞれにCMYK(シアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)、黒(Black))の各色の画像形成をさせ、中間転写部材5上で重ね合わせる構成にしたカラーの画像形成装置に対しても本発明は適用可能である。また、中間転写部材5を省略して感光体ドラム1から直接記録媒体にトナー像を転写させる直接転写方式に対しても本発明は適用可能である。その他、従来から用いられる電子写真各プロセス技術は、画像形成装置の目的に応じて任意の構成と組み合わせることができる。
(湿式現像剤の構成)
現像に用いる湿式現像剤について説明する。湿式現像剤は、溶媒であるキャリア液中に着色されたトナー粒子を分散している。湿式現像剤には、分散剤、荷電制御剤などの添加剤を適宜、選んで添加してもよい。キャリア液としては、絶縁性の溶媒が用いられる。
トナー粒子の体積平均粒子径は、0.1μm以上5μm以下の範囲が適当である。トナー粒子の平均粒子径が0.1μmを下回ると現像性が大きく低下する。一方、平均粒子径が5μmを超えるとドット、ベタを含めた画像の品質が低下する。トナー粒子の体積平均粒子径は、1μm以上2μm以下の範囲がさらに好ましい。トナー粒子の平均粒子径が1μm以上の場合には、クリーニング性がさらに良好となり、トナー粒子の平均粒子径が2μm以下の場合には、画像においてベタ部の均一性がさらに安定する。
湿式現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合は、10%以上50%以下であることが好ましい。湿式現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合が10%以上である場合には、トナー粒子の沈降が生じにくく、長期保管時においてトナー粒子が経時的に高いい安定性を有し、また、所望の画像濃度を得るために必要な湿式現像剤の量を低減することができる。これにより、トナー粒子を定着させる際に多くのキャリア液を乾燥させる必要がなくなり、キャリア液から多くの蒸気が発生することを防止できる。液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合が50%以下である場合には、液体現像剤の粘度が適切な値となり、製造時における取扱いが良好となる。
(湿式現像装置の構成および現像プロセス)
図1に示すように、湿式現像装置4は、現像剤槽13、汲み上げ部材14、供給部材16、現像剤担持体9、規制ブレード15、帯電部としてのトナー帯電装置17、除去部18,除電部19、分散ローラー20および電圧印加部40を含む。
現像剤槽13には、上述の湿式現像剤12が貯留されている。汲み上げ部材14は、現像剤槽13内の湿式現像剤に一部が浸漬するように設けられている。また、汲み上げ部材14は、図中矢印D方向に回転する。汲み上げ部材14としては、ウレタン製またはNBR製のゴムローラー、または、表面に凹部を設けたアニロックスローラーを採用することができる。
供給部材16は、汲み上げ部材14および現像剤担持体9の両方に当接するように、汲み上げ部材14と現像剤担持体9との間に配置されている。供給部材16は、図中矢印E方向に回転する。供給部材16としては、ウレタン製またはNBR(ニトリルブタジエンゴム)製のゴムローラーを採用することができる。
現像剤担持体9は、感光体ドラム1および供給部材16の両方に当接するように、感光体ドラム1と供給部材16との間に配置されている。現像剤担持体9は、図中矢印F方向に回転する。現像剤担持体9の周辺においては、供給部材16、トナー帯電装置17、感光体ドラム1、除電部19、分散ローラー20および除去部18が、現像剤担持体9の回転方向に沿ってこの順に配置されている。
なお、汲み上げ部材14、供給部材16および現像剤担持体9の相対的な回転方向は、上述の回転方向と異なっていてもよい。また、供給部材16を省略して、汲み上げ部材14が後述する供給部材16としての役割を兼ねてもよい。
トナー帯電装置17としては、コロトロン、スコロトロンおよび放電ローラー等を採用することができる。除去部18としては、クリーニングブレード等を採用することができる。
除電部19としては、たとえばコロトロンを採用することができる。除電部19は、現像剤担持体9に向けて開口するシールドケース191と、シールドケース191内に配置された放電部材としての放電電極192と、当該放電電極192に電圧を印加する電源部193(図6参照)とを備える。放電電極192に電圧を印加することにより、現像後の湿式現像剤12を安定して除電することができる。
分散ローラー20は、現像剤担持体9とのニップ部において、現像剤担持体9の移動方向と同一の方向に回転することが好ましい。また、分散ローラー20の周速は、現像剤担持体9の周速と同一となることが好ましい。
分散ローラー20としては、アルミニウム、鉄、ステンレス等の材料によって構成される金属ローラー、当該金属ローラーの基体の外周面を導電性の樹脂や弾性部材で被覆したローラー、さらには導電性の樹脂や弾性部材で被覆したローラーの表面に電界形成可能な程度に薄く絶縁性材料をコーティングしたローラー等の電子写真装置においてバイアス電界形成に使用される公知の各種のローラーを使用することができる。
現像を行なうに際して、まず、汲み上げ部材14が図中に示す矢印D方向に回転することによって、湿式現像剤12が汲み上げ部材14の表面に汲み上げられる。汲み上げ部材14の表面に汲み上げられた湿式現像剤は、汲み上げ部材14に当接して設けられた規制ブレード15によって一定の膜厚に規制される。
湿式現像剤12が規制された後、汲み上げ部材14は、供給部材16に当接して湿式現像剤12を供給部材16に受け渡す。供給部材16は、現像剤担持体9との当接部(ニップ部)において回転方向が逆方向となるように回転しており、受け渡された湿式現像剤12をその方向に搬送する。湿式現像剤12は、その後供給部材16と現像剤担持体9との対向部にて現像剤担持体9上に受け渡される。
現像剤担持体9は、供給部材16から受け渡された湿式現像剤12を担持する。現像剤担持体9に担持された湿式現像剤12に含まれるトナー粒子は、トナー帯電装置17によって正規帯電極性に帯電される。トナー帯電装置17は、印加する電圧に応じてトナー粒子に付与する帯電量を変更することができる。なお、正規帯電極性は、負極性または正極性のいずれか一方である。
トナー粒子が帯電された湿式現像剤12は、現像剤担持体9が図中矢印F方向に回転することにより、感光体ドラム1と現像剤担持体9との対向部である現像ニップ部に移動する。現像ニップ部において、現像剤担持体9上に担持された現像剤に含まれるトナー粒子の一部が、感光体ドラム1に当接して感光体ドラム1上の静電潜像を現像する。
帯電した後のトナー粒子を含む湿式現像剤12を感光体ドラム1に供給した後に、現像剤担持体9上に残留した湿式現像剤12に含まれるトナー粒子は、除電部19によって除電される。分散ローラー20が除電された後の湿式現像剤12を介して現像剤担持体9に接触して回転することにより、除電されたトナー粒子はキャリア液中に分散される。
具体的には、分散ローラー20と現像剤担持体9との間に電圧印加部40によって交流バイアスが印加されることにより交流電界が形成され、除電されたトナー粒子が、この交流電界中を通過することでキャリア液中に分散される。
分散ローラー20によって分散されたトナー粒子を含む湿式現像剤12は、除去部18によって現像剤担持体9上から除去される。このような湿式現像剤12の除去プロセスの詳細については後述する。除去部18により除去された湿式現像剤12は、現像剤回収槽(図示せず)に回収される。
(湿式現像剤の除去プロセス)
図2から図4は、図1に示す湿式現像装置において現像後の湿式現像剤に含まれるトナー粒子の状態、除電部によって除電された後の湿式現像剤に含まれるトナー粒子の状態および分散ローラーによって分散された後の湿式現像剤に含まれるトナー粒子の状態を示す模式図である。図2から図4を参照して、現像剤担持体9上の湿式現像剤12の除去プロセスについて説明する。
除去プロセスにおいては、現像後の湿式現像剤12に含まれるトナー粒子が現像剤担持体9の表面9a上に層状に吸着することによって形成されるトナー層123に対して、まず、除電部19によって除電を行なう。続いて、除電されたトナー層123に含まれるトナー粒子を分散ローラー20と現像剤担持体9との間に交流バイアスを印加することによって分散させる。除電と分散とをこの順で行なうことにより、トナー粒子に対する現像剤担持体9の静電気的な拘束力を十分に解消して、現像剤担持体9上の湿式現像剤12を除去部18によって確実に除去することが可能となる。以下、その理由について説明する。
図2に示すように、感光体ドラム1と現像剤担持体9との現像ニップ部を通過してきたトナー粒子121aは、正規帯電極性(たとえば正極)に帯電している。帯電したトナー粒子は鏡像力によって導電性部材へと引き寄せられる。加えて、静電潜像の領域外であり非画像となる領域では、現像ニップ部において感光体ドラム1と現像剤担持体9との間に印加されるバイアスによって、トナー粒子121aが現像剤担持体9側へ押し付けられる。
このため、現像後のトナー粒子121aは、現像剤担持体9表面にトナー層123を形成して存在している。さらに、トナー粒子121aは、静電気力によって、図中矢印に示すように現像剤担持体9に強く拘束されている。
図3に示すように、現像剤担持体9の表面9aに静電吸着しているトナー層123に対して、まず、除電部19によって除電を行なう。これにより、トナー層123の上層側にトナーの反正規荷電(マイナス荷電)を付与することによって現像時にトナー層123(トナー粒子121a)が持っていた電荷を平均的にキャンセルすることができる。
除電直後のトナー層123内においては、現像前にトナーの正規荷電(正荷電)を付与されて正極性に帯電したトナー粒子121aが現像剤担持体9の表面9a側に局在し、反正規荷電(負荷電)を付与されて負極性に帯電したトナー粒子121bが現像剤担持体9の表面9a側とは反対側のトナー層123の表層側に局在している。このため、図中矢印にて示すように、現像剤担持体9の表面9a側に局在しているトナー粒子121aと現像剤担持体9の表面9aとの間に作用する静電気的な拘束力は、完全に解消されずに一定程度残存したままになる。
続いて、現像剤担持体9に湿式現像剤12を介して当接する分散ローラー20と現像剤担持体9との間に交流バイアスを印加して、上記の状態のトナー層123に含まれるトナー粒子121a,121bを分散させる。
電圧印加部40が分散ローラー20と現像剤担持体9との間に電圧を印加する交流バイアスとしては、矩形波、サイン波、三角波、のこぎり波、ブランク波などの波形を使用することができる。交流バイアスの周波数としては、1000Hz以上100000Hz以下が好ましい。周波数が1000Hz未満である場合には、交流バイアスの印加状態に場所ムラが生じ、分散作用が不十分な領域が生じる。一方、周波数が100000Hzを超えるとトナー粒子が、交流電界の変動に追従することができず分散作用が十分に得られない場合が生じる。
また、交流電圧の振幅は、放電の発生を抑制するために1000V程度までとすることが好ましい。現像剤担持体9の表面9aあるいは分散ローラー20の表面に絶縁性部材をコーティングしている場合には、さらに高電圧まで印加することが可能である。なお、交流バイアスに直流バイアスを重畳してもよい。
交流バイアスを印加することによって分散ローラー20と現像剤担持体9との間に交流電界が形成される。トナー層123内に存在する正極性のトナー粒子121aと負極性のトナー粒子121bとが、交流電界に基づき現像剤担持体9と分散ローラー20との間のニップ部において現像剤担持体9の表面9aから離脱し、互い違いの方向に動かされる。
現像剤担持体9と分散ローラー20との間のニップ部の出口付近において交流電界が徐々に弱まっていく間に、正極性のトナー粒子121aと負極性のトナー粒子121bとがキャリア液122中を浮遊するとともに正極性のトナー粒子121aと負極性のトナー粒子121bとが互いに引き付け合う状態となる。
この結果、図4に示すように、除電後に上層側(表層側)と下層側(現像剤担持体9の表面9a側)とで極性が異なるようにトナー層123内に局在していた正極性のトナー粒子121aと負極性のトナー粒子121bとがペアになってキャリア液122中を浮遊する。
正負のペアになったトナー粒子121a,121bは、実質的に現像剤担持体9に対して静電気力が作用せずに、現像剤担持体による静電気的な拘束力から開放される。このため、複数の正負のペアになったトナー粒子121a,121bは、キャリア液122中に分散される。
次に、トナー粒子121a,121bが分散された湿式現像剤12を除去部18によって現像剤担持体9上から回収する。この際、トナー粒子121a,121bは、現像剤担持体9による静電気的な拘束力から開放されているため、除去部18の端面と現像剤担持体9の表面との間に堆積することなくキャリア液122と一緒に除去部18を伝って現像剤回収槽(不図示)に回収される。
しかしながら関連技術においては、トナー帯電装置17によってトナー粒子に付与する帯電量に応じて、除電部による除電を行っているため、除電後の湿式現像剤中には、静電気的な吸着力を有するトナー粒子が残存している。この静電気的な吸着力を有するトナー粒子を分散ローラー20を用いて分散させた場合には、相当程度のトナー粒子は、正負のペアになるが、一部が静電気的な吸着力を有したままの状態となる。
静電気的な吸着力を有するトナー粒子は、分散ローラー20に付着してしまう場合がある。トナー粒子が過剰に分散ローラーに付着した場合には、分散ローラー20と現像剤担持体9との間に安定して交流電界を発生させることができなくなり、トナー粒子の分散効果が維持できなくなる。かかる場合には、トナー粒子に対する現像剤担持体の静電気的な拘束力を弱めることができず、クリーニング不良を解消できなくなることが懸念される。
そのため、本発明者は、静電気的な吸着力を有するトナー粒子の量をダイレクトに検出し、これを最小化するように除電部の出力を制御することを着想した。以下に説明する本実施の形態に係る湿式現像装置および湿式画像形成装置にあっては、除電部の出力を適正に制御し、これにより、現像後に現像剤担持体上に残留した湿式現像剤を確実に除去することを目的とする。
(実施の形態1)
図5は、本実施の形態に係る湿式画像形成装置の概略構成図を示す図である。図6は、図5に示す湿式現像装置において除電部の出力を制御するための制御構成を示すブロック図である。図5および図6を参照して、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100について説明する。
図5および図6に示すように、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100は、関連技術における湿式画像形成装置200と比較した場合に、トナー量検出センサ111を備え、CPU30がトナー量検出センサ111の検出結果に基づいて除電部19の出力を制御するように構成されている点において相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。
図6に示すように、湿式画像形成装置100は、除電部19の出力を制御するための制御構成として、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)30、メモリ31、電圧印加部40、トナー量検出センサ111を備える。
CPU30は、湿式画像形成装置100の一連の動作を制御するものである。CPU30は、除電部19の出力を可変に制御する。CPU30は、電圧印加部40が現像剤担持体9と分散ローラー20との間に印加する電圧を制御する。CPU30は、後述するトナー量検出センサ111の動作を制御する。CPU30は、後述する発光部112の発光タイミングを指示し、後述する受光部113から検出値Sが入力される。
CPU30は、検出値Sに応じて、電源部193に指示し、除電部19の除電出力を制御するとともに、電源部193から出力中の除電出力Vを取得する。CPU30は、メモリ31に検出値Sおよび除電出力Vを記憶させ、記憶させた検出値Sおよび除電出力Vをメモリ31から適宜読み出すことができる。除電部19の出力を制御する方法については、後述する。
(トナー量検出部)
図7は、図5に示すトナー量検出部を示す模式図である。図7を参照して、トナー量検出センサ111について説明する。トナー量検出センサ111は、分散ローラー20に付着した湿式現像剤に含まれるトナー粒子の量を検出するトナー量検出部として機能する。トナー量検出センサ111は、いわゆる反射型光センサであり、支持部材114、発光部112および受光部113を備える。発光部112は、たとえばLED(Light Emitting Diode)から構成される。受光部113は、たとえばフォトダイオードから構成される。
発光部112は、分散ローラー20側に向けて検出光115を出射し、受光部113は、分散ローラー20側から反射された検出光115を受光する。トナー量検出センサ111は、受光部113が受光した検出光115の受光量に応じてトナー粒子の量を検出するとともに、検出光115の受光量に応じた電圧を検出値SとしてCPU30に出力する。
発光部112から出射される検出光115の光軸と、分散ローラー20の表面に対する法線との間には、入射角θ1が形成される。受光部113に向かう検出光115の光軸と、分散ローラー20の表面に対する法線との間には、反射角θ2が形成される。本実施の形態においては、入射角θ1および反射角θ2が略同一の値となるように、発光部112および受光部113が配置されている。具体的には、発光部112および受光部113は、各々の光軸に沿って支持部材114に穿設された細い孔の底部に配設されている。
分散ローラー20の表面(裸面または地肌面ともいう)は、平滑な形状を有している。発光部112から出射された検出光115のうち、分散ローラー20の表面に照射されたものは、分散ローラー20の表面で鏡面反射(正反射)されやすく、受光部113で受光される検出光115の受光量が多くなる。
一方、発光部112から出射された検出光115のうち、分散ローラー20の表面上に存在しているトナー粒子に照射されたものは、トナー粒子の表面で乱反射されたり、トナー粒子およびトナー粒子中の顔料に吸収されたりする。検出光115のうちの分散ローラー20上のトナー粒子に照射されたものについては、受光部113で受光される検出光115の受光量は少なくなる。
このため、分散ローラー20上に付着するトナー粒子の量が少なく、トナー粒子が存在している部分の面積に比べて分散ローラー20の表面が露出している部分の面積の方が大きくなる場合には、受光部113での受光量が多くなり、検出値Sも高くなる。
一方、分散ローラー20上に付着するトナー粒子の量が多くなり、トナー粒子が存在している部分の面積に比べて分散ローラー20の表面が露出している部分の面積の方が小さくなる場合には、受光部113での受光量が少なくなり、検出値Sも低くなる。
このように、トナー量検出センサ111によって検出された検出値Sに基づいて、分散ローラー20上に付着したトナー粒子の量を検出することができる。なお、トナー量検出センサ111としては、正反射方式および乱反射方式のうちのいずれの構成が採用されてもよい。
また、トナー量検出部として、分散ローラー20上に付着した湿式現像剤を掻き取ってトナー粒子の量を検出する検出手段や、分散ローラー20を撮像して得られた画像からトナー粒子の量を検出する画像認識手段等を採用してもよい。
一般的に反射型光センサは、分散ローラー20とは異なる現像剤担持体9等の担持体上の画像濃度検出に用いられるものである。多くの場合、担持体は適正な画像形成のために表面硬度、弾性、中抵抗等の種々の物性に制約があり、担持体の表面が、黒色等の濃色を有し検出光を吸収しやすい材質で形成されていたり、検出光が反射しにくく、キャリア液との屈折率差が小さい樹脂や弾性体等で形成されていたりした。このため、トナー粒子の付着量に関わらず全体的に受光部で受光される受光量が少なくなり、良好な検出感度を得ることが難しかった。
本実施の形態においては、分散ローラー20上に担持される湿式現像剤は、現像後のものであり、画像形成に与える影響が少ないため、分散ローラー20の材質としては、材質の物性の制約が少ない。このため、分散ローラー20としては、低抵抗で現像剤担持体9に対して湿式現像剤を介して接触回転できるものであればよい。これにより、分散ローラー20の表面の材質として、発光部112からの検出光115を吸収することなく反射率が高いもの、光沢があってキャリア液との屈折率差が大きいものを選択することがでる。この結果、トナー量検出センサ111は、従来に比べて感度良く、分散ローラー20上の湿式現像剤に含まれるトナー粒子の量(トナー濃度)を検出することができる。
(除電部の出力と検出値との関係)
本実施の形態においては、トナー量検出センサ111からCPU30に出力される検出値Sに基づいて、除電部19の出力を制御する。除電部19の出力を制御する制御フローを説明するに先立って、図8および図9を参照して、除電部の出力Vと検出値Sとの関係について説明する。
図8は、図5に示す分散ローラーと現像剤担持体との間に直流成分を含まない交流バイアスを印加した場合における除電部の出力と検出値との関係を示す図である。除電部によって適正な除電を行なえる除電出力の下限値をVLとし、上限値をVHとする。
図8に示すように、直流成分を含まない交流バイアスを分散ローラーと現像剤担持体との間に印加した場合にあっては、除電出力が下限値VLより小さい場合には、現像前に帯電されたトナー粒子が有する電荷を除電部19によって十分にキャンセルすることができずに除電不足となる。
このため、除電後の湿式現像剤に含まれるトナー粒子の多くが、正極性に帯電している。交流バイアスによって、分散ローラー20側が低い電位となった場合に、トナー粒子が分散ローラー20に向けて静電的に移動する。除電不足になるにつれて、分散ローラー20に向けて移動するトナー粒子の量が増えるため、除電出力がVLより小さくなるにつれて検出値Sが小さくなる。
除電出力が上限値VHより大きい場合には、除電部19によって現像後のトナー粒子の多くが、現像前にトナー粒子が有していた正極性と反対の負極性に帯電してしまい、除電過多となる。
この場合には、交流バイアスによって、分散ローラー20側が高い電位となった場合に、トナー粒子が分散ローラー20に向けて静電気的に移動する。除電過多になるにつれて、分散ローラー20に向けて移動するトナー粒子の量が増えるため、除電出力がVHよりも大きくなるにつれて検出値Sが小さくなる。
除電出力がVL以上VH以下の場合には、除電部19によって現像後のトナー粒子を適正に除電することができる。この場合には、現像時にトナー粒子121が持っていた電荷を平均的にキャンセルされた状態または、負極性を有するトナー粒子が若干正極性を有するトナー粒子よりも多い状態となっている。
この場合には、交流バイアスによって、正極性のトナー粒子と負極性のトナー粒子とがペアとなってキャリア液中に分散されるため、静電気力が作用せず、分散ローラー20に向けて移動するトナー粒子の量が非常に少なくなる。このため、除電部19による除電が適正な範囲においては、検出値Sが略一定となる。
図9は、図5に示す分散ローラーと現像剤担持体との間に直流成分を含む交流バイアスを印加した場合における除電部の出力と検出値との関係を示す図である。この場合には、現像剤担持体9に対して分散ローラー20の電位が低くなるように、−50Vの直流成分が交流バイアスに重畳されている。
図9に示すように、除電出力がVLより小さい場合には、上述同様に除電不足となる。この場合には、除電後のトナー粒子の多くは正極に帯電しているため、電位が低い分散ローラー20側に静電気的に引き寄せられる。このため、分散ローラー20に付着するトナー粒子の量は多くなり、検出値Sが小さくなる。また、除電出力がVLより小さくなるにつれて検出値Sが小さくなる。
除電出力がVHより大きい場合には、上述同様に除電過多となる。この場合には、除電後のトナー粒子の多くは、負極に帯電しているため、電位が高い現像剤担持体9側に静電気的に引き寄せられる。このため、分散ローラー20に付着するトナー粒子の量は少なくなり、検出値Sが大きくなる。また、除電出力がVHより大きくなるにつれて検出値Sが大きくなる。
除電出力がVL以上VH以下の場合には、除電部19によって現像後のトナー粒子を適正に除電することができる。除電出力が増加するにつれて、負極性を有するトナー粒子の割合が徐々に増加するため、除電部19による除電が適正な範囲においては、検出値Sが徐々に増加する。
直流成分を含む交流バイアスを印加した場合には、除電出力が増加するにつれて検出値Sが増加する傾向となるため、図8に示すような変曲点P1、P2が明確に現れない。このため、画像形成前において除電部19の除電出力を予め調整する場合には、図8に示すような直流成分を含まないような交流バイアスを印加した場合を利用することが好ましい。
なお、現像剤担持体9の表面上に局在している正極性のトナー粒子を現像剤担持体9から静電気的に引き離す効果を促進するために、画像形成時においては、図9に示すような分散ローラー20と現像剤担持体9との間に、分散ローラー20の電位が現像剤担持体9の電位よりも低くなるような直流成分を含む交流バイアスを印加して、除電部19の出力を制御することが好ましい。
(画像形成前における除電部の出力制御)
図10は、図5に示す湿式画像形成装置を用いて画像を形成するに先立って、除電部の出力制御の基準となる基準検出値を算出するフローを示す図である。図10を参照して、画像を形成するに先立って、除電部19の出力制御の基準となる基準検出値を算出するフローについて説明する。
画像形成に先立って、電源ON等の所望のタイミングでCPU30からの指示によって露光条件、帯電条件、現像条件等を決定する画像安定化処理が開始されることにより、画像形成条件が設定される。また、画像形成前における除電部の出力制御も所望のタイミングでCPU30からの指示によって実施される。
現像後に現像剤担持体9上に残留する湿式現像剤に含まれるトナー粒子の荷電状態は、供給部材16から現像剤担持体9への湿式現像剤の供給量や、トナー帯電装置17の帯電出力に影響される。このため、上記画像安定化処理フローが実施されて供給量や帯電出力が調整される際に、画像形成前における除電部の出力制御も実施されるが好ましい。
なお、画像安定化処理フローが実施され、供給量条件や帯電出力条件を含む最終的な画像形成条件が設定された後に、画像形成前における除電部の出力制御が実施されてもよい。また、帯電出力や供給量の調整フローと画像形成前における除電部の出力制御とを適宜交互に繰り返しながら段階的に画像形成条件を決定するとともに、適正な除電出力値(後述の基準出力値)を算出してもよい。画像形成開始までに、画像形成条件に対して適正な除電出力値が得られる限り、画像形成前における除電部の出力制御の開始のタイミングは適宜変更することができる。
CPU30は、画像形成を開始するに先立って、電圧印加部40が印加する電圧を変化させるとともに除電部19の出力を変化させることによって変動する検出値Sから除電部19の出力を制御する際の基準となる基準検出値SIを算出する。
具体的には、図10に示すように、まず、工程(S0)において、CPU30は、汲み上げ部材14、供給部材16、現像剤担持体9を駆動させる。これにより、現像剤槽13から湿式現像剤12が現像剤担持体9上に供給される。
次に、工程(S1)において、CPU30は、前回の画像形成前における除電部の出力制御にて設定した除電出力V1をメモリ31から読み出し、除電部19の出力をV1に仮設定する。続いて、工程(S2)において、現像前において湿式現像剤に含まれるトナー粒子をトナー帯電装置17によって帯電させる。
次に、工程(S3)において、画像パターンが形成されないように現像する(白ベタ現像を行なう)。この場合には、現像剤担持体9から感光体ドラム1にキャリア液のみが供給され、現像剤担持体9に現像前とほぼ同量のトナー粒子が残留する。続いて、工程(S4)において、CPU30は、分散ローラー20と現像剤担持体9との間に直流成分を含まない交流バイアスが印加される第1状態となるように電圧印加部40を制御する。
次に、工程(S5)において、現像後に現像剤担持体9上に残留した湿式現像剤が、除電部19と現像剤担持体9との対向部に到達すると同時に、除電部19によるトナー粒子の除電を開始する。
続いて、工程(S6)において、除電後の湿式現像剤が分散ローラー20に到達する。分散ローラー20と現像剤担持体9との間に印加した交流バイアスと、除電後のトナー粒子の帯電状態に基づいて、除電後の湿式現像剤に含まれるトナー粒子がキャリア液中に分散されるとともに、一部が湿式現像剤とともに分散ローラー20に付着する。分散ローラー20の回転に伴って、分散ローラー20に付着した湿式現像剤が、分散ローラー20とトナー量検出センサ111との対向部に到達する。当該対向部において、トナー量検出センサ111によって分散ローラー20に付着したトナー粒子の量を検出する。これにより、検出値S1(Sm)が得られる。
次に、工程(S7)において、CPU30は、トナー量検出センサ111から入力された検出値S1(Sm)および、検出されたトナー粒子を除電した際の除電部19の除電出力値V1(Vm)をメモリ31に記憶させる。ここで、mは検出回数を示し、1以上の数字である。
続いて、工程(S8)において、CPU30は、検出回数mが所定の回数nよりも大きいか否かを判断する。CPU30が、検出回数mが所定の回数nよりも大きくないと判断した場合(工程S8:No)には、検出回数mが所定の回数nより大きくなるまで、工程(S17)、工程(S5)、工程(S6)、工程(S7)をこの順で繰り返し行う。
工程(S17)においては、CPU30は、除電部の出力を変化させる。これにより、繰り返し行われる検出毎に、得られる検出値Smが変動し、図8に示す除電部の出力と検出値との関係の少なくとも一部が得られる。
一方、CPU30が、検出回数mが所定の回数nよりも大きいと判断した場合(工程S8:YES)には、工程(S9)が実施される。
工程(S9)において、CPU30は、変曲点P1(下限値VL)と変曲点P2(上限値VH)とが検出されたか否かを判断する。なお、変曲点P1が検出された場合には、P1の値を示す除電部の出力値として、下限値VLも検出される。また、変曲点P2が検出された場合には、P2の値を示す除電部の出力値として、上限値VHも検出される。
CPU30は、変曲点P1(下限値VL)と変曲点P2(上限値VH)とが検出されていないと判断した場合(工程S9:No)には、工程(S14)を実行する。
工程(S14)において、CPU30は、変曲点P1と変曲点P2(上限値VH)とのいずれが検出されていないかを判断する。CPU30は、変曲点P2が検出されていないと判断した場合(工程S9:Yes)には、変曲点P2が検出されるまで、工程(S15)および工程(S5)から工程(S9)をこの順で繰り返し行う。工程(S15)においては、CPU30は、上限値VHを検出するために除電部19の出力を増加させる。
工程(S14)において、CPU30は、変曲点P1が検出されていないと判断した場合(工程S9:No)には、変曲点P1が検出されるまで、工程(S16)および工程(S5)から工程(S9)をこの順で繰り返し行う。工程(S16)においては、CPU30は、下限値VHを検出するために除電部19の出力を減少させる。
一方、工程(S9)において、CPU30は、変曲点P1(下限値VL)と変曲点P2(上限値VH)とが検出されていると判断した場合には、工程(S10)を実行する。
工程(S10)においては、CPU30は、下限値VLと上限値VHとの平均値として、基準出力値Vc(図8参照)を算出し、これを除電部19の出力として設定する。下限値VLと上限値VHとの間の値から基準出力値を選択することにより、適正な除電を行なうことができるが、耐久性や環境の変化等によって生じる誤差に対して余裕を持つため、基準出力値Vcは、下限値VLと上限値VHとの平均値とすることが好ましい。また、CPU30は、基準出力値Vcおよび下限値VLから上限値VHまでの各検出値Smをメモリ31に保存する(記憶させる)。
続いて、工程(S11)において、CPU30は、分散ローラー20と現像剤担持体9との間に直流成分を含む交流バイアスが印加される第2状態となるように電圧印加部40を制御する。この場合には、分散ローラー20の電位が現像剤担持体9の電位よりも低くなるような直流成分を交流バイアスに重畳する。これにより、画像形成時において現像剤担持体9の表面上に局在している正極性のトナーを現像剤担持体9から静電気的に引き離す効果を促進することができる。
次に、工程(S12)において、CPU30は、基準出力値Vcで除電部19を動作させる。この状態で、分散ローラー20に付着したトナー粒子の量をトナー量検出センサ111によって検出する。これにより、除電部19の出力を制御する際の基準となる基準検出値SIが検出される。
次に、工程(S13)において、CPU30は、トナー量検出線さ111から出力された当該基準検出値SIをメモリ31に保存する。これにより、画像形成前における除電部の出力制御が終了する。
(画像形成時における除電部の出力制御)
図11は、図5に示す湿式画像形成装置を用いた画像形成時において、除電部の出力を制御するフローの一例を示す図である。図11を参照して、画像形成時において、除電部19の出力を制御するフローの一例について説明する。
除電部19の出力を制御するフローは、画像形成中における適宜設定されるタイミングで実施される。まず、工程(S21)において、たとえば画像と画像の間の非画像形成領域に画像パターンが形成されないように現像する。この場合には、非画像形成領域においては、現像剤担持体9から感光体ドラム1にキャリア液のみが供給される。このため、非画像形成領域に対応する現像剤担持体9の表面には、現像前とほぼ同量のトナー粒子が残留している。
次に、工程(S22)において、現像後に除電部によって除電された湿式現像剤に含まれるトナー粒子のうち、分散ローラー20に付着したトナー粒子の量をトナー量検出センサ111によって検出する。これにより、検出値SIIが検出されるとともにCPU30に入力される。
なお、画像形成時においては、感光体ドラム1に形成される非画像形成領域に対応する現像剤担持体9の表面から分散ローラー20に付着したトナー粒子の量をトナー量検出センサ111によって検出する。
続いて、工程(S23)において、CPU30は、画像形成前における除電部の出力制御によって算出されるとともにメモリ31に記憶された基準検出値SIをメモリ31から読み出す。CPU30は、検出値SIIと基準検出値SIとを比較し、検出値SIIと基準検出値SIの差分の絶対値が所定の値ΔSを超えているか(所定の範囲外であるか)否かを判断する。
ここで、所定の値ΔSは、予め決定された値でもよいし、画像形成前における除電部の出力制御によって算出された値であってもよい。画像形成前における除電部の出力制御によって算出する場合には、除電部19の出力を下限値VLおよび上限値VHのいずれかに設定して、工程(S11)から工程(S13)に準じた工程を別途実施する。このような工程は、工程(S9)が完了してから画像形成前における除電部の出力制御が終了するまでの間に行なわれる。これにより、下限値VLにおける検出値SLまたは上限値VHにおける検出値SHを検出することができ、検出値SLまたは検出値SHと、基準検出値SIとの差分を求めることにより、図9に示すようなΔSを算出することもできる。
CPU30が、検出値SIIと基準検出値SIの差分の絶対値が所定の値ΔSを超えていない(所定の範囲内である)と判断した場合(工程S23:No)には、除電部19の出力を変更せずに維持する。この場合には、所望のタイミングで工程(S21)からの動作を繰り返す。
一方、CPU30が、検出値SIIと基準検出値SIの差分の絶対値が所定の値ΔSを超えていると判断した場合(工程S23:Yes)には、工程(S24)を実施する。この場合には、除電不足の状態および除電過多の状態にあるかを識別する必要が生じる。
上述したように、直流成分を含む電流を含む交流バイアスを現像剤担持体9と分散ローラー20との間に印加する場合には、図9に示すように、除電不足および除電過多のいずれの場合においても除電部の出力を増減に応じて、検出値も同じ方向に増減する。このため、除電部の出力を変化させるのみでは、除電不足の状態および除電過多の状態にあるかを識別することが困難である。
そこで、工程(S24)においては、CPU30は、現像剤担持体9と分散ローラー20との間に印加される交流バイアスのDuty比を変更するように電圧印加部40を制御する。
図12は、分散ローラーと現像剤担持体との間に印加する交流バイアスのDuty比を変更する場合の一例を示す図である。図12に示すように、交流バイアスのDuty比を変更する場合には、交流バイアスのDuty比を分散ローラー20が現像剤担持体9に対して高い電位になる時間が長くなるように変更する。たとえば、Duty比を50%から70%に変更する。
除電不足であり正極性を有するトナー粒子が多い場合には、Duty比を70%に変更することにより、Duty比が50%である場合と比較して、トナー粒子が現像剤担持体9に静電気的に吸着する時間が長くなる。これにより、分散ローラーに付着するトナー粒子の量が低減し、トナー量検出センサ111によって検出される検出値は、Duty比が50%である場合の検出値よりも大きくなる。
一方、除電過多であり負極性を有するトナー粒子が多い場合には、Duty比を70%に変更することにより、Duty比が50%である場合と比較して、トナー粒子が分散ローラー20に静電気的に吸着する時間が長くなる。これにより、分散ローラーに付着するトナー粒子の量が増加し、トナー量検出センサ111によって検出される検出値は、Duty比が50%である場合の検出値よりも小さくなる。
このように、Duty比を変更に伴う検出値の変動を調べることにより、除電不足の状態および除電過多の状態にあるかを識別することができる。
図11に示すように、次に、工程(S25)において、Duty比を変更した場合に除電部によって除電された湿式現像剤に含まれるトナー粒子のうち、分散ローラー20に付着したトナー粒子の量をトナー量検出センサ111によって検出する。これにより、検出値SIIIが、検出されるとともにCPU30に入力される。続いて、工程(S26)において、Duty比を元の値に戻す。
次に、工程(S27)において、CPU30は、検出値SIIIが検出値SIIよりも小さいか否かを判断する。CPU30が、検出値SIIIが検出値SIIよりも大きいと判断した場合(工程S27:No)には、工程(S28)を実施する。この場合には、除電不足の状態であると識別されるため、工程(S28)においては、CPU30は、除電部の出力を増加させる。
一方、CPU30が、検出値SIIIが検出値SIIよりも小さいと判断した場合(工程S27:Yes)には、工程(S29)を実施する。この場合には、除電過多の状態であると識別されるため、工程(S29)においては、CPU30は、除電部の出力を減少させる。
工程(S28)または工程(S29)が完了した場合には、工程(S30)が実施される。工程(S30)においては、工程(S28)または工程(S29)にて変化させて除電部の出力に基づいて除電された湿式現像剤に含まれるトナー粒子のうち、分散ローラー20に付着したトナー粒子の量をトナー量検出センサ111によって検出する。これにより、検出値SIVが検出されるとともにCPU30に入力される。
次に、工程(S31)において、CPU30は、検出値SIVと基準検出値SIの差分の絶対値が所定の値ΔS以下である(所定の範囲内である)か否かを判断する。CPU30が、検出値SIVと基準検出値SIの差分の絶対値が所定の値ΔSより大きいと判断した場合(工程S31:No)には、検出値SIVと基準検出値SIの差分の絶対値が所定の値ΔS以下になるまで、工程(S24)からの動作を繰り返す。
一方、CPU30が、検出値SIVと基準検出値SIの差分の絶対値が所定の値ΔS以下であると判断した場合(工程S31:Yes)には、除電部の出力が適正に制御されたと判断される。この場合には、所望のタイミングで工程(S21)からの動作を繰り返す。
なお、Duty比を変更することなく、分散ローラー20に印加するバイアスを直流バイアスに変更したり、交流バイアスに重畳させる直流成分をオフセットしたりして、検出値の変動を比較することにより、除電不足の状態であるか除電過多の状態であるかを識別することは可能である。
Duty比を変更する場合には、分散ローラー20に印加するバイアスを直流バイアスに変更する場合と比較して、印加される電圧が直流バイアスのみではないため、交番電界によるトナー粒子の分散効果を維持することができる。
また、交流バイアスに重畳させる直流成分は、現像剤担持体9の表面上に局在している正極性のトナーに作用するものであり、クリーニング性を良好にするために設定される値である。このため、当該値は、短時間でも変更することは好ましくはない。Duty比を変更する場合には、交流バイアスに重畳させる直流成分をオフセットする場合と比較して、クリーニング性を良好に保つことができる。
図13は、図5に示す湿式画像形成装置を用いた画像形成時において、除電部の出力を制御するフローの他の例を示す図である。図13を参照して、画像形成時において、除電部の出力を制御するフローの他の例について説明する。
画像形成時において除電部の出力を制御するフローの他の例は、上述した除電部の出力を制御するフローの一例と比較した場合に、工程(S24)から工程(S26)が省略されている点、工程(S27A)が相違する。
分散ローラー20に印加する交流バイアスに重畳する直流成分の電位差が予め分かっている場合には、フローを簡略化することができる。たとえば、分散ローラー20の方が低い電位になるように直流成分を50Vオフセットさせる場合には、除電部の出力と検出値とは、図9に示すような関係にあることが予め分かっている。
このため、工程(S23)にて、画像形成時に検出された検出値SIIと基準検出値SIとの差分がΔSよりも大きくなる場合には、工程(S27A)にて、検出値SIIと基準検出値SIの大小を比較することで、除電不足の状態であるか除電過多の状態であるかを識別することができる。
検出値SIIが基準検出値SIよりも大きい場合は、除電過多であると認識され、工程(S29)が実施され、検出値SIIが基準検出値SIよりも小さい場合には、除電不足であると認識され、工程(S28)が実施されることになる。
なお、工程(S21)から工程(S23)、工程(S28)から工程(S31)については、上述した除電部の出力を制御するフローの一例に準じた処理が行なわれる。
このように本実施の形態に係る湿式現像装置および湿式現像装置にあっては、トナー量検出センサ111を用いて、除電後の湿式現像剤に含まれる静電気的な吸着力を有するトナー粒子の量をダイレクトに検出し、これを最小化するように除電部の出力を制御することができる。これにより、分散ローラー20に付着するトナー粒子の量を抑制し、分散ローラー20と現像剤担持体9との間に安定して交流電界を発生させることができる。この結果、トナー粒子の分散効果を十分に発揮することができ、現像後に現像剤担持体上に残留した湿式現像剤を確実に除去することができる。
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2に係る湿式画像形成装置に具備されるトナー量検出部を示す概略図である。図15は、図14に示すトナー量検出部から出射される検出光が反射する様子を模式的に示す図である。図14および図15を参照して、本実施の形態に係る湿式画像形成装置について説明する。
図14および図15に示すように、本実施の形態に係る湿式画像形成装置は、実施の形態1に係る湿式画像形成装置100と比較した場合に、反射板部214を備える点およびトナー量検出センサ211の構成が相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。
トナー量検出センサ211は、発光部212、受光部213を有する。受光部213の受光量に応じた検出値SをCPU30に出力する。トナー量検出センサ211にあっては、発光部212から出射された検出光215が、反射板部214側と分散ローラー20側との間で反射を繰り返しながら受光部213に向けて進行し、少なくとも分散ローラー20側で2回以上反射して受光部213に受光される。
反射板部214は、分散ローラー20と対向するように配置される。反射板部214は、分散ローラー20の回転軸方向(図中矢印DR1方向)と平行となる平面部214aを有する。なお、分散ローラー20の回転軸方向と現像剤担持体9の回転軸方向は略平行である。平面部214aは、分散ローラー20上の湿式現像剤に接触しない程度に分散ローラー20に近接している。反射板部214は、発光部212および受光部213を収容する。
図15を用いて、理想的な検出光の反射の様子について説明する。発光部212から出射された検出光L1は、分散ローラー20の表面(これに担持された湿式現像剤を含む)に対して入射角θ1で入射し、分散ローラー20の表面上のP1領域にて正反射されて、反射角θ1で反射する。P1領域にて反射された検出光L2は、反射板部214の平面部214aに対して入射角θ1で入射し、平面部214aのP2領域にて正反射されて、反射角θ1で反射する。
P2領域にて反射された検出光L3は、分散ローラー20の表面上のP3領域にて正反射されて、反射角θ1で反射する。P3領域にて反射された検出光L4は、反射板部214の平面部214aに対して入射角θ1で入射し、平面部214aのP4領域にて正反射されて、反射角θ1で反射する。P4領域にて反射された検出光L4は、分散ローラー20の表面に対して入射角θ1で入射して、分散ローラー20の表面上のP5領域で正反射されて、反射角θ1で反射される。これ以降も、検出光は、反射板部214側および分散ローラー20側にて繰り返し反射し、受光部213によって受光される。
分散ローラー20上にトナー粒子が付着していた場合には、検出光の一部がトナー粒子の表面で乱反射されたり、トナー粒子およびトナー粒子中の顔料に吸収されたりする。このため、受光部213で受光される検出光の受光量は少なくなる。これにより、検出値も小さくなり、当該検出値に基づいてトナー粒子が付着した量を検出することができる。
なお、反射毎に、検出光の一部がトナー粒子の表面で乱反射されたり、トナー粒子およびトナー粒子中の顔料に吸収されたりする場合であっても、後述するように分散ローラーの表面がトナー粒子に被覆されない領域が相当程度存在するため、検出に必要な受光量は十分に確保することができる。
図16は、本発明の実施の形態2に係る湿式現像装置において、湿式現像剤が現像剤担持体から分散ローラーに移動する際の様子を模式的に示す図である。図17は、除電部による除電が適正な場合における分散ローラーの表面状態を模式的に示す図である。
図16に示すように、分散ローラー20および現像剤担持体9は、印加された交流バイアスによる交流電界をニップ部に作用させつつ、湿式現像剤を介して接触回転している。現像剤担持体9と分散ローラー20との間のニップ部の出口付近において湿式現像剤の流体挙動が乱れる。液体現像剤は、分散ローラー20上に移動して現像に供されるもの(湿式現像剤12B)と、現像剤担持体9上に残留するものとに分かれる。この際、現像剤担持体9と分散ローラー20との間には、液柱12Aが形成される。
このような液柱12Aが形成されることにより、分散ローラー20の表面には、図17に示すように、液柱12Aに従って比較的厚い湿式現像剤が担持される部分12Cと、比較的薄く湿式現像剤が担持される部分12Dとが形成される。適正な除電がされている場合には、湿式現像剤中のトナー粒子は、静電気的な吸着力を有さず、正負のペアとなってキャリア液中に浮遊している。このため、液量に応じてトナー粒子も分散ローラー側に移動し、厚い湿式現像剤が担持される部分12Cではトナー粒子の量が多くなり、薄く湿式現像剤が担持される部分12Dではトナー粒子の量が少なくなる。
薄く湿式現像剤が担持される部分12Dにおいては、トナー粒子によってわずかに分散ローラーの表面が被覆されるだけであり、検出光を十分に反射させることができる。このため、検出に対して十分な受光量を確保することができる。
なお、検出光は、分散ローラー20の回転軸方向(図中矢印DR1方向)に沿って、厚い湿式現像剤が担持される部分12Cと湿式現像剤が担持される部分12Dとの両方に跨るように一定程度の領域を持って出射される。
一方、除電が適正でない場合には、湿式現像剤中のトナー粒子は、静電的な吸着力を有する。湿式現像剤が分散ローラー20側に移動する際には、トナー粒子が分散ローラー20に吸着される。トナー粒子は、その周辺に位置する湿式現像剤と同時に移動するため、湿式現像剤は全体的に分散ローラー側に移動する。このため、液柱12Aは形成されるが、厚い湿式現像剤が担持される部分12Cと湿式現像剤が担持される部分12Dとの高低差は、適正な除電がされている場合と比較して軽減される。
また、上述のように、分散ローラーの表面に反射率が高い材質および光沢があってキャリア液との屈折率差が大きい材質を用いることにより、検出光を十分に反射させることができ、検出に対して十分な受光量を確保することができる。
本実施の形態に係るトナー量検出センサ211にあっては、分散ローラー20の回転軸方向に沿って複数個所で検出光が反射するため、複数個所の一部のみにトナー粒子が付着した場合でも検出値が変動する。これにより、局所的に除電のズレが発生し、不適切な除電状態となった場合にも、除電部の出力制御を適正に行なうことができる。この結果、実施の形態1と同等以上の効果が得られる。
なお、本実施の形態においては、平面部214aが分散ローラー20の回転軸方向と平行である場合を例示して説明したが、これに限定されず、複数個所で反射された検出光を受光可能な限り、平行でなくてもよい。また、検出領域を広げるために分散ローラー20の回転軸方向に長い発光部と同軸方向に長い受光部を設けてもよい。
(実施の形態3)
図18は、本実施の形態に係る湿式画像形成装置に具備されるトナー量検出部を示す概略図である。図19は、本実施の形態に係る湿式現像装置において除電部の出力を制御するための制御構成を示すブロック図である。図18および図19を参照して、本実施の形態に係る湿式画像形成装置について説明する。
図18および図19に示すように、本実施の形態に係る湿式画像形成装置は、実施の形態2に係る湿式画像形成装置と比較した場合に、複数のトナー量検出センサ211A、211Bを備えている点およびムラ抑制機構195(図19参照)を備えている点において相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。なお、トナー量検出センサ211A、211Bの構成は、実施の形態2に係るトナー量検出センサ211とほぼ同一である。
トナー量検出センサ211Aおよびトナー量検出センサ211Bは、検出領域が重ならないように分散ローラー20の回転軸方向(図18中矢印B方向)に沿って互いに離間して配置されている。トナー量検出センサ211Aおよびトナー量検出センサ211Bは、分散ローラー20上において分散ローラー20の回転軸方向に沿った互いに異なる領域に位置するトナー粒子の量を検出する。トナー量検出センサ211Aは、第1検出部に相当し、トナー量検出センサ211Bは、第2検出部に相当する。
ムラ抑制機構195は、清掃部194を有する。清掃部194は、シールドケース191および放電電極192を清掃するためのものである。清掃部194は、たとえば発泡材からなる清掃部材であり、移動可能に構成されている。清掃部194は、内周側がワイヤ形状を有する放電電極192に接触し、外周側がシールドケース191に接触するように設けられている。清掃部194は、非動作時においては、現像剤担持体9への放電を妨げないように放電電極192の軸線方向における一端側に退避している。
シールドケース191および放電電極192が湿式現像剤やキャリア液で汚染された場合には、除電ムラが発生する。このため、CPU30は、除電ムラが検出された際に、清掃部194を放電電極の軸線方向に沿って往復移動させることにより、シールドケース191および放電電極192を清掃する。放電電極192およびシールドケース191の汚れを除去することにより、除電ムラを解消することができる。
(画像形成時における除電部の出力制御)
図20は、本実施の形態に係る湿式画像形成装置を用いた画像形成時において除電部の出力を制御するフローを示す図である。
図20に示すように、本実施の形態に係る画像形成時における除電部の出力制御は、基本的に実施の形態1に係る画像形成時において除電部の出力を制御するフローの一例に準じている。
まず、工程(S21)において、画像と画像の間の非画像形成領域に画像パターンが形成されないように現像する。続いて、工程(S22B)において、現像後に除電部によって除電された湿式現像剤に含まれるトナー粒子のうち、分散ローラー20に付着したトナー粒子の量をトナー量検出センサ211Aおよびトナー量検出センサ211Bによって同時に検出する。これにより、検出値Saおよび検出値Sbが検出されるとともにCPU30に入力される。
次に、工程(S23B1)において、CPU30は、検出値Saおよび検出値Sbの双方と、基準検出値SIとの差分の絶対値をそれぞれ算出し、当該差分の絶対値の双方がΔS以下であるか(所定の範囲内であるか)否かを判断する。CPU30が、当該差分の絶対値の双方が所定の範囲内であると判断した場合(工程S23B1:Yes)には、除電部19の出力を変更せずに維持する。この場合には、所望のタイミングで工程(S21)からの動作を繰り返す。
一方、CPU30が、当該差分の絶対値の双方が所定の範囲外であると判断した場合(工程S23B1:No)には、工程(S23B2)を実施する。工程(S23B2)において、CPU30は、上記差分の絶対値の双方がΔSよりも大きいか(所定の範囲外であるか)否かを判断する。
工程(S23B2)において、CPU30が、上記差分の絶対値の双方が所定の範囲外でないと判断した場合(工程S23B2:No)には、工程(S41)が実施される。この場合には、上記差分の絶対値のいずれか一方が所定の範囲内であり、他方が所定の範囲外となる。これにより、現像剤担持体9の回転軸方向に除電ムラが生じ、局所的に除電状態が適正な範囲から外れていることを検出することができる。
工程(S41)においては、CPU30は、清掃部194を放電電極192の軸方向に沿って往復移動させる。次に、工程(S42)において、除電ムラを抑制するための動作が実施された後の除電部によって除電された湿式現像剤に含まれるトナー粒子のうち、分散ローラー20に付着したトナー粒子の量をトナー量検出センサ111によって検出する。これにより、検出値Seおよび検出値Sfが、検出されるとともにCPU30に入力される。
続いて、工程(S43)において、CPU30は、検出値Seおよび検出値Sfの双方と、基準検出値SIとの差分の絶対値をそれぞれ算出し、当該差分の絶対値の双方がΔS以下であるか(所定の範囲内であるか)否かを判断する。CPU30が、当該差分の絶対値の双方が所定の範囲内であると判断した場合(工程S43:Yes)には、除電ムラが解消されたものと判断される。この場合には、所望のタイミングで工程(S21)からの動作を繰り返す。
工程(S43)において、CPU30が、当該差分の絶対値の双方が所定の範囲内でないと判断した場合(工程S43:No)には、工程(S24)を実施する。この場合には、上記差分の絶対値のいずれか一方が所定の範囲内であり、他方が所定の範囲外となる。このため、所定の範囲外であると判断された側の検出値が、所定の範囲内に収まるように、工程(24)からの処理が実施される。
工程(S23B2)において、CPU30が、上記差分の絶対値の双方が所定の範囲外であると判断した場合(工程S23B2:Yes)には、工程(S24)が実施される。この場合には、トナー量検出センサ211Aおよびトナー量検出センサ211Bによって検出するいずれの領域においても、除電出力が均一にずれており、除電ムラが発生していないと判断される。このため、トナー量検出センサ211Aおよびトナー量検出センサ211Bによって検出される検出値の一方が所定の範囲内に収まれば、他方の検出値も所定の範囲に収まることとなる。したがって、一方側の検出値が所定の範囲内に収まるように工程(24)からの処理が実施される。
なお、工程(S24)から工程(S32)までの処理は、実施の形態1に係る画像形成時において除電部の出力を制御するフローの一例に準じて行なわれるため、ここでは、その説明を省略する。
このように本実施の形態に係る湿式現像装置および湿式現像装置にあっては、複数のトナー量検出センサ211A、211Bを用いることにより、除電ムラを検出しつつ、除電後の湿式現像剤に含まれる静電気的な吸着力を有するトナー粒子の量をダイレクトに検出することができる。これにより、除電部の除電出力を適切に制御することができ、実施の形態1と同様の効果が得られる。加えて、除電ムラを解消することもできる。
(トナー量検出部の変形例)
図21は、図18に示すトナー量検出部の変形例を示す概略図である。図21を参照して、図18に示すトナー量検出部の変形例について説明する。
図21に示すように、トナー量検出部の変形例においては、実施の形態3におけるトナー量検出部と比較した場合にトナー量検出センサ211Aとトナー量検出センサ211Bとの位置関係が相違する。トナー量検出センサ211Aおよびトナー量検出センサ211Bは、分散ローラー20の回転軸方向に沿って互いに離間して配置されている。この場合には、トナー量検出センサ211Aの発光部212Aと受光部213Aとの間にトナー量検出センサ211Bの発光部212Bが配置され、トナー量検出センサ211Bの発光部212Bと受光部213Bとの間にトナー量検出センサ211Bの受光部213Aが配置される。
この場合には、分散ローラー20側において、隣接するトナー量検出センサ211Aの検出光の反射領域の間にトナー量検出センサ211Bの検出光の反射領域が位置するようにトナー量検出センサ211Aおよびトナー量検出センサ211Bから検出光が出射されることが好ましい。
このように配置されたトナー量検出センサ211Aとトナー量検出センサ211Bとを用いて、実施の形態3に準じた画像形成時における除電部の出力制御を実施した場合であっても、除電ムラが生じており局所的に適正な除電から外れている領域があると検出することができる。
(除電部の出力を制御するための制御構成の変形例)
図22は、図20に示す除電部の出力を制御するための制御構成の変形例を示すブロック図である。図22を参照して、除電部の出力を制御するための制御構成の変形例について説明する。
図22に示すように、除電部の出力を制御するための制御構成の変形例は、実施の形態3における除電部の出力を制御するための制御構成と比較した場合に、ムラ抑制機構195が、清掃部194ではなく移動機構196を有する点および、放電部材に印加する電圧の絶対値を制御する点において相違する。
放電電極192にマイナスの電圧を印加して放電させる場合は、プラスの電圧を印加して放電させる場合と比較して、不安定になりやすい傾向がある。このため、トナー帯電装置17の出力に応じて、除電部の除電出力を設定した場合であっても、全体としてはトナー粒子の帯電量に対応する除電量を供給できたとしても、現像剤担持体9の回転軸方向に沿って除電ムラが生じる場合がある。
この場合には、ムラ抑制機構195によって放電部材に印加する電圧の絶対値を大きくすることにより、放電の不安定性を解消することができる。しかしながら、放電部材に印加する電圧の絶対値を大きくした場合には、除電部の除電出力が大きくなる。このため、除電出力を制御するフローにて放電部材に印加する電圧の絶対値を大きくする際には、移動機構196によって、放電電極192が現像剤担持体9から遠ざかるように移動させる。移動機構196は、除電部19全体を移動させるように構成されていてもよいし、放電電極192のみを移動させるように構成されていてもよい。
このように放電部材に印加する電圧の絶対値を大きくしつつ、放電電極192を現像剤担持体9から遠ざけることにより、除電部の除電出力を変えずに除電ムラを解消することができる。
このような構成を有するムラ抑制機構195を用いて、実施の形態3に準じた画像形成時における除電部の出力制御を実施することにより、実施の形態3同様に除電ムラを解消しつつ、現像後に現像剤担持体上に残留した湿式現像剤を確実に除去することができる。
図23および図24は、本発明の効果を検証するために行なった検証実験1,2の条件および結果を示す図である。図23および図24を参照して、各実施例および各比較例について行なった検証実験1,2について説明する。
比較例1,2および実施例1については、実施の形態1に係る湿式現像装置4を基本構成として、その構成の一部を変更したものを実験器として使用した。具体的には、除電部の設置または非設置を選択するとともに、分散ローラーの設置または非設置を選択することにより、湿式現像剤の構成を変更した。実施例2については、実施の形態2に係る湿式現像装置を使用した。実施例3については、実施の形態3に係る湿式現像装置を使用した。
なお、現像前にトナー粒子を帯電させる際におけるトナー帯電装置17の電流量は、0.3mA/mとした。また、分散ローラーを用いる場合には、分散ローラーとしてステンレスの金属ローラーを使用した。この際、分散ローラーは、現像剤担持体9とのニップ部において現像剤担持体9の移動方向と同じ方向となるように回転させた。また、分散ローラーの周速が現像剤担持体9の周速と同じになるように回転数を設定した。また、分散ローラーに印加する交流バイアスは周波数10000Hz、振幅300V(Peak−to−Peakで600V)のサイン波形とした。
検証実験1として、比較例1,2および実施例1から実施例3における湿式現像装置を具備する湿式画像形成装置を1時間稼働させて連続印字した際の除去部18のクリーニング性を評価した。クリーニング性の評価としては、除去部18を通過した直後の湿式現像剤12をテープで採取して除去部18と現像剤担持体9との当接部をトナー粒子がすり抜けたか否かを確認した。
この際、多量のトナー粒子が除去部をすり抜けてクリーニング性が良好でないものを「不良」、トナー粒子が除去部をすり抜けずにクリーニング性が良好なものを「良」と評価した。
検証実験2として、除電部の放電電極192に意図的にトナー粒子を付着させて、除電ムラが発生する環境で、上述同様にクリーニング性を評価した。この場合には、実施例3における湿式現像装置を具備する湿式画像形成装置を用いた。
(比較例1)
比較例1では、湿式現像装置として、除電部を設置し、分散ローラーを非設置としたものを用いた。現像剤担持体9の回転方向における除電部と除去部との間に表面電位計を設けた。除電部による除電後におけるトナー層の表面電位がマイナスになるように除電出力を制御した。
(比較例2)
比較例2では、湿式現像装置として、除電部を設置し、分散ローラーを設置したものを用いた。現像剤担持体9の回転方向における除電部と分散ローラーとの間に表面電位計を設けた。除電部による除電後におけるトナー層の表面電位がマイナスになるように除電出力を制御した。
(実施例1)
実施例1においては、湿式現像装置として、除電部および分散ローラーを設置したものを用いた。検出光の反射回数を分散ローラー側で1回とする単一のトナー量検出センサ111を用いて、トナー粒子の量を検出した。この際に得られる検出値Sに基づいて、除電部の除電出力を制御した。
(実施例2)
実施例2においては、湿式現像装置として、除電部および分散ローラーを設置したものを用いた。検出光の反射回数を分散ローラー側で複数回とする単一のトナー量検出センサ211を用いて、トナー粒子の量を検出した。この際に得られる検出値Sに基づいて、除電部の除電出力を制御した。
(実施例3)
実施例3においては、湿式現像装置として、除電部および分散ローラーを設置したものを用いた。また、清掃部194を含むムラ抑制機構195も設置した。検出光の反射回数を分散ローラー側で複数回とする2つのトナー量検出センサ211A,211Bを用いて、トナー粒子の量を検出した。この際に得られる検出値SA,SBに基づいて、除電部の除電出力を制御した。また、検出値SA,SBの一方が、所定の範囲外となる場合については、ムラ抑制機構195を作動させて、清掃部194にて除電部の放電電極192を清掃した。
(実験結果)
検証実験1における比較例1から実施例3についての結果を以下に説明する。比較例1においては、除電部は設置しているものの分散ローラーを設置していない。このため、除電部によって現像後のトナー粒子が有する電荷がキャンセルされた場合であっても、トナー粒子が現像剤担持体の表面に偏在する。このため、クリーニング不良が発生した。
比較例2においては、除電部および分散ローラーを設置しているため、除去部突入時にトナー粒子が分散され、印字開始直後からしばらくの間は、クリーニング不良が発生しなかった。しかし、連続印字を継続し1時間経過後の評価時には、クリーニング不良が発生していた。1時間の連続稼働中に、除電部の除電出力を電圧計で測定したところ、設定された除電出力が測定時毎にばらついていた。また、分散ローラーに付着したトナー粒子の量も多かった。
実施例1から3においては、除電部および分散ローラーを設置するとともに、トナー量検出センサを用いて除電部の出力を適宜制御することにより、クリーニング不良が発生しなかった。1時間の連続稼働中に、除電部の除電出力を電圧計で測定したところ、設定された除電出力のばらつきは小さく、時間とともに傾向を持って変化していた。
分散ローラー上に吸着したトナー粒子の量を検出することにより、現像毎に変動するトナー粒子の分散状態に応じて除電出力を適正に制御することができた。このため、クリーニング性は良好であった。また、除電出力を適正に制御することにより、分散ローラー20に付着したトナー粒子の量も少なかった。
検証実験2における実施例3についての結果を以下に説明する。実施例3においては、2つのトナー量検出センサを設置して、それぞれの検出値と基準検出値とを比較することにより、局所的な除電のばらつきを検出することができた。清掃部を放電電極の軸方向に沿って往復移動させることにより、除電ムラを解消することができた。これにより、除電ムラに起因するクリーニング不良が発生せず、良好なクリーニング性が得られた。
以上より、本実施の形態にあっては、トナー量検出センサを用いて、除電後の湿式現像剤に含まれる静電気的な吸着力を有するトナー粒子の量をダイレクトに検出し、適切に除電部の出力を制御することにより、分散ローラー20に付着するトナー粒子の量を抑制できることが実験的にも証明されたと言える。また、分散ローラー20に付着するトナー粒子の量を抑制することにより、トナー粒子の分散効果を十分に発揮することができ、現像後に現像剤担持体上に残留した湿式現像剤を確実に除去できることが実験的にも証明されたと言える。
また、複数のトナー量検出センサ211A、211Bを用いることにより、局所的な除電状態のばらつきを検出でき、ムラ抑制機構を作動させて除電ムラを解消できることが実験的にも証明されたと言える。除電ムラを解消することで、これに起因する分散ローラー20へのトナー粒子の付着を抑制でき、現像後に現像剤担持体上に残留した湿式現像剤を確実に除去できることが実験的にも証明されたと言える。
なお、上述した実施の形態1から3においては、分散ローラーを導電性部材とし、分散ローラーと現像剤担持体9との間に電圧を印加することにより、現像後に現像剤担持体9上に残留したトナー粒子を分散させる場合を例示して説明したが、これに限定されず、分散ローラーを絶縁性部材としてもよい。この場合には、分散ローラーは、拡散作用を有する表面形状を有することが好ましい。このような場合には、分散ローラーが現像剤担持体に摺擦することにより生成される電位に基づいてトナー粒子が分散ローラー上に移動する。このトナー粒子の量をトナー量検出センサによって検出し、適切に除電部の出力を制御することにより、現像剤担持体上に残留した湿式現像剤を確実に除去することができる。
以上、本発明の実施の形態、変形例および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。