JP6212762B2 - 流量計測方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は、典型例として、液体ロケットエンジンやその地上試験設備等、十分に整流することが難しい流路において、高精度で流量を計測するための方法及び装置に関する。
一般に体積流量は、流路断面を通って単位時間内に流れる流体の体積と定義することができる。一例として、図1に示す流路配管1内を流れる流体の流量Qは、流路断面上の各点における流速のうち、流路断面の法線方向成分の積分値として以下のとおり表される。
…(1)
ただし、
…(2)
…(3)
上記式(1)〜(3)において、Sは流路断面を表わし、流路断面S内の位置を(x,y)で表わす。vzは、流体の流速のうち、流路断面Sの法線方向(z方向)成分を表わし、vz(x,y)は、流路断面S内位置(x,y)における流体の流速のうち、位置(x,y)における法線方向の成分を表わす。ymin(x),ymax(x)は、それぞれ流路断面S内でx座標を定めたときのy座標の最小値、最大値を表わし、xmin,xmaxは、それぞれ流路断面S内でのx座標の最小値、最大値を表わす。また、図1において流路断面S1は流路配管1の軸に直交する平面であるが、流路断面が軸に対して傾いていたり、曲面であったりしても、上記式(1)〜(3)により流量を表わすことができる。
上記式(2)から明らかなとおり、x座標としてあるxiを定めたとき、Vz(xi)は、流路断面S内においてx座標がxiに等しい領域、即ち線分AB(図2)上の各点(x,y)についてのvz(x,y)の平均値を表しており、例えば超音波方式によって計測することが可能である。
一例においては、図3に示すとおり、点A,Bからそれぞれz方向に所定の大きさだけシフトした点をA*,B*として、超音波が点A*から点B*に伝播する場合と点B*から点A*に伝播する場合とで流速に応じた見かけ上の音速差が生じることを利用して、それぞれの方向について計測された伝播時間から、A*,B*間におけるvz(x,y)の平均値を求めることができる。通常、これを線分AB上の平均流速Vz(xi)とみなすことができる。
具体的には、図4に示すとおり、点A*から超音波を送信する超音波素子2aと、点B*から超音波を送信する超音波素子2bとを流路配管1上に配置し、超音波素子2aから送信された超音波が超音波素子2bによって受信されるまでの伝播時間と、超音波素子2bから送信された超音波が超音波素子2aによって受信されるまでの伝播時間とを計測する。単純な一例においては、特許文献1に記載されているとおり、超音波素子2aから超音波素子2bに対して超音波を送信したとき、長さLの経路を通って超音波素子2bに到達するまでの伝播時間をt1とし、超音波素子2bから超音波素子2aに対して超音波を送信したとき超音波素子2aに到達するまでの伝播時間をt2として、以下の式(4)により、vz(x,y)の平均値を決定することができる(超音波の送受信経路とz方向との間の角度をθとする。)。
…(4)
通常、この平均値をVz(xi)として用いることができる。
実用上、計測できるVz(xi)は離散的であることから、多くの場合には数値積分を用いてQの近似値を求める必要がある。また、図4に示すとおり超音波素子のペアを用いて計測する場合には、計測点xiの数に応じた数だけ、超音波素子のペアを流路配管上に配置することが考えられるが、この場合、実装できる計測点には限りがあるため、少ない計測点でも精度のよい計算手法を用いることが必要である。
上記式(1)で表わされる流量Qの近似値を、離散的に計測した流速からガウス求積法(ガウス−ルジャンドル,チェビチェフ,ロバート)によって求める方法が、特許文献2に開示されている。特許文献2が開示する方法は、被積分関数をVz(x)L(x)とし、重み関数を1(定数)としてガウス求積法を用いることにより、以下の近似式
…(5)
によって流量Qの近似値QNを決定するものである。ここで、xi,wiはそれぞれガウス求積法の分点、係数であり、各分点x=xiにおいて計測された離散的な流速Vz(xi)を用いて上記式(5)が計算される。
特許文献3,4においては、半径Rの円管流路を流れる流体の流量の近似値を離散的に計測した流速から求める方法が開示されている。半径Rの円管流路では、流路断面内でx座標を定めたとき、上記式(3)に示すL(x)が
…(6)
と表わされる。これを利用し、特許文献3,4が開示する方法においては重み関数を
…(7)
とし、被積分関数を2RVz(x)として、ガウス求積法(ガウス−チェビチェフ)に従い分点xi,係数wiが計算される。各分点x=xiにおいて計測された離散的な流速Vz(xi)を用いて、以下の近似式
…(8)
により流量Qの近似値QNが決定される。
従来技術においては被積分関数に流速分布そのものが含まれているため、流速分布が大きく歪んでいる場合等では、精度のよい近似値を得るために、より高次の求積法(即ち、より多くの計測点)が必要となるという課題がある。
特開2001−208584号公報 米国特許第3564912号明細書 米国特許第3940985号明細書 特開昭51−129261号公報
以上に鑑み、本発明は、少ない計測点でも精度よく流量を計測する方法及び装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、流路内を流れる流体の流量として、以下の式:
…(9)
ただし、
…(10)
…(11)
(Sは流路断面を表わし、流路断面S内の位置を(x,y)で表わす。vzは、流体の流速のうち、流路断面Sの法線方向(z方向)成分を表わし、vz(x,y)は、流路断面S内位置(x,y)における流体の流速のうち、位置(x,y)における法線方向の成分を表わす。ymin(x),ymax(x)は、それぞれ流路断面S内でx座標を定めたときのy座標の最小値、最大値を表わし、xmin,xmaxは、それぞれ流路断面S内でのx座標の最小値、最大値を表わす。後述の各式においても同様。)
によって表わされる流量Qを計測する方法であって、
流路断面S内の各位置(x,y)における、流速の法線方向成分の推定値をvz0(x,y)としたとき、以下の式:
…(12)
ただし、
…(13)
によって表わされるVz0(x)L(x)を重み関数として、1からN(Nは1以上の任意の自然数)までの自然数iについてガウス求積法の分点xi及び係数wiを決定する段階と、
各々の分点xiについて、Vz(xi)を決定するとともにVz0(xi)を決定する段階と、
流量Qの近似値として、以下の式:
…(14)
を用いて表わされる、近似値QNを決定する段階と、を備えた方法を提供する。
上記のとおり、本発明の方法は、流路断面内Sの推定流速分布(理論計算、シミュレーション、予備実験等により、予め求めておくことができる。)を用いて重み関数Vz0(x)L(x)を構成し、ガウス求積法により流量の近似値を決定することを特徴とする。このとき、被積分関数は
…(15)
となり、あるx座標についての、推定流速分布の平均値に対する実際の流速分布の平均値の比を表わしている。推定流速分布が確からしいほど被積分関数は定数関数に近くなるため、近似精度が向上する。
上記方法は、適当なオフセット関数Vz1(x)によってVz0(x)を修正することで得られるV′z0(x)を用いても実施可能である。
すなわち本発明は、流路内を流れる流体の流量として、上記式(9)〜(11)によって表わされる流量Qを計測する方法であって、
流路断面S内の各位置(x,y)における、流速の法線方向成分の推定値をvz0(x,y)としたとき、オフセット関数Vz1(x)を用いて以下の式:
…(16)
ただし、
…(17)
で表わされるV’z0(x)を用いて、以下の式:
…(18)
によって表わされるV’z0(x)L(x)を重み関数として、1からN(Nは1以上の任意の自然数)までの自然数iについてガウス求積法の分点xi及び係数wiを決定する段階と、
各々の分点xiについて、Vz(xi)を決定するとともに、V’z0(xi),Vz1(xi),及び、以下の式:
…(19)
…(20)
で表わされるQz0,Qz1を決定する段階と、
以下の式:
…(21)
を用いて表わされる、近似値QNを決定する段階とを備えた方法を提供する。
この方法は、オフセット関数Vz1(x)を用いることにより、後述のとおりVz0(x),Vz(x)のゼロ点をずらしてV′z0(x),V’z(x)を導入し、これらを用いて、ゼロ点がずらされた流量Q’にガウス求積法を適用するという発想に基づく。後述のとおり、上記式(9)中、Vz(x)の代わりにV′z(x)を用いてゼロ点をずらした流量Q′を導入し、この流量Q’に、重み関数をV′z0(x)L(x)としたガウス求積法を適用して近似値Q’Nを多項式近似の形で表し、更にQ’NとQNとの間の関係式を用いてQNを多項式近似で表すという手順で、上記式(21)を導出することが可能である。
上記のVz1(x)を用いる方法においては、流路断面S内でV′z0(x)が常にゼロ以上となるよう、又は流路断面S内でV′z0(x)が常にゼロ以下となるよう、前記Vz1(x)を選定することが好ましい。
いわゆる逆流等によって重み関数の符号が一定とはならない場合、ガウス求積法の分点xiを必ずしも積分区間内(流路断面S内のx座標がとる範囲)に取ることができないため、Vz(xi)の計測点xiやV0(xi)の計算点xiを実装できない可能性がある。この場合であっても、重み関数V′z0(x)L(x)の符号が積分区間内で一定となるよう(例えば、Vz0(x)の最小値の絶対値をVz1(x)としたり、Vz0(x)の最大値の絶対値×(―1)をVz1(x)としたりすれば、重み関数V′z0(x)L(x)の符号を一定にできる。)Vz1(x)を選択すれば、ガウス求積法の原理から分点xiも必ず積分区間内に実装できるため、見かけ上逆流を回避して高精度で流量を決定することが可能となる。
ただし、後述のとおり、重み関数の符号が積分区間内で変化する場合であっても、積分区間内に分点xiをとることができる場合もある。したがって、上記のとおり重み関数の符号が一定となるようVz1(x)を選定することは本発明にとって必須ではない。
また本発明は、上述の本発明が提供する方法により近似値QNを決定する段階と、近似値QNよりも信頼性の低い、第2の近似値QSUBを用いて、以下の式:
…(22)
に基づき、近似値QNの誤差範囲を推定する段階とを備えた流量計測方法を提供する。後述のとおり、このような方法で近似値QNの誤差を見積もることが可能である。ここにおいて、「近似値QNよりも信頼性の低い」第2の近似値QSUBとは、本発明の方法を用いる場合には計測点数Nを減らしたり、あるいは後述のとおり、ガウス求積法の被積分関数を各分点xiについて個別に計算するのではなく、その最大値又は最小値で一律に置き換えたりして決定された、近似値QNよりも誤差が大きいと推定される近似値である。
また本発明は、流路内を流れる流体の流量として、上記式(9)〜(11)式によって表わされる流量Qを計測する装置であって、流路断面S内の各位置(x,y)における、流速の法線方向成分の推定値をvz0(x,y)としたとき、上記式(12),(13)によって表わされるVz0(x)L(x)を重み関数として、1からN(Nは1以上の任意の自然数)までの自然数iについてガウス求積法の分点xi及び係数wiを決定する、ガウス求積演算部と、ガウス求積演算部により決定された各々の分点xiについてVz(xi)を決定する、Vz(xi)決定部と、ガウス求積演算部により決定された各々の分点xiについてVz0(xi)を決定する、Vz0(xi)決定部と、流量Qの近似値として、上記式(14)を用いて表わされる近似値QNを決定する、QN決定部と、を備えた装置を提供する。
また本発明は、流路内を流れる流体の流量として、上記式(9)〜(11)によって表わされる流量Qを計測する装置であって、流路断面S内の各位置(x,y)における、流速の法線方向成分の推定値をvz0(x,y)としたとき、オフセット関数Vz1(x)を用いて上記式(16),(17)によって表わされるV’z0(x)を用いて、上記式(18)によって表わされるV’z0(x)L(x)を重み関数として、1からN(Nは1以上の任意の自然数)までの自然数iについてガウス求積法の分点xi及び係数wiを決定する、ガウス求積演算部と、ガウス求積演算部により決定された各々の分点xiについて、Vz(xi)を決定する、Vz(xi)決定部と、ガウス求積演算部により決定された各々の分点xiについてのV’z0(xi),Vz1(xi),及び、上記式(19),(20)で表わされるQz0,Qz1を決定する、V’z0(xi),Vz1(xi),Qz0,Qz1決定部と、上記式(21)を用いて表わされる近似値QNを決定する、QN決定部とを備えた装置を提供する。
上記のVz1(x)を用いる装置においては、前記ガウス求積演算部が、流路断面S内でV′z0(x)が常にゼロ以上となるよう、又は流路断面S内でV′z0(x)が常にゼロ以下となるよう選定された前記Vz1(x)を用いることが好ましい。ただし、既に述べたとおり重み関数の符号が積分区間内で変化する場合であっても、積分区間内に分点xiをとることができる場合もあるため、重み関数の符号が一定となるようVz1(x)を選定することは必須ではない。
上記本発明が提供する装置において、Vz(xi)決定部を、流路を規定する流路配管上で各々の分点xiに対応する位置に設置される超音波素子のペアと、超音波素子のペアに対して超音波の送受信を指示する超音波送受信回路と、超音波の送受信を示す信号を記録する超音波送受信信号記録回路と、超音波送受信信号記録回路に記録された、超音波の送受信を示す信号を用い、各々の分点xiについてVz(xi)を計算する流速計算回路とを備えるよう構成することができる。
また、上記本発明が提供する装置に、近似値QNよりも信頼性の低い第2の近似値QSUBを用いて、上記式(22)に基づき近似値QNの誤差範囲を推定する、誤差範囲推定部を更に備えることができる。
本発明によれば、任意の流速分布に対して最適なガウス求積法を構成することができるため、少ない計測点でも精度よく流量を計測することができる。本発明の方法、装置は、整流されていない歪んだ流速分布に対して特に効果的である。
本発明が用いるガウス求積法において、被積分関数は、流速分布そのものではなく、推定流速分布に対する実際の流速分布の比を表している。ある程度確からしい流速分布を予め推定することができれば、流速分布が大きく歪んでいる場合等でも被積分関数は定数関数に近くなるため、精度のよい流量の近似値を得ることができる。
さらに、本発明が教示する誤差範囲推定の手法によれば、実際に計測した流量の不確かさ(積分の近似誤差範囲に相当)について、簡易的に見当を付けることができる。これにより、必ずしも基準器との比較を行わずに、積分誤差に起因する流量の不確かさを評価することが可能となる。ただし、当然ながら、可能ならば基準器との比較検定を行う方が確実である。なお、この誤差範囲推定手法は従来技術にも適用可能である。
本発明による流量計測を実施可能な流路の一例を示す図である。 図1に示される流路の流路断面S1を示す図である。 図1に示される流路において、超音波が伝播する経路A*B*を示す図である。 図1に示される流路において、超音波が伝播する経路A*B*を、流路の軸に直交する方向から見たときの図である。 流路配管1に接続された、本発明に係る流量計測装置の一実施形態を示す構成図である。なお、超音波素子2a,2bのペアは、計測点xiの数に応じた数の組だけ流路配管1上に設置されるが、図5においては代表して1組だけ描かれている。 円管流路における流速分布の例を示すグラフである。 N=3として本発明による流量計測を実施するときの、超音波の送受信地点Ai*,Bi*を示す図である。ただし、計測点x1〜x3の位置は正確ではない。またAi*,Bi*は、図3と同様に流路断面S1からz方向へ所定の大きさだけシフトされているが、z座標は図7中に示されていない。 流路配管1に接続された、本発明に係る流量計測装置の一実施形態を示す構成図である。なお、超音波素子2a,2bのペアは、計測点xiの数に応じた数の組だけ流路配管1上に設置されるが、図8においては代表して1組だけ描かれている。 図8中の流路配管1の一例として、邪魔板が設けられた円管流路を示す図である。 邪魔板をxy平面内で見たときの平面図である。 従来のガウス求積法(ガウス‐チェビチェフ)によって、図9A中のA地点の断面で流量を計測した時の誤差と、本発明の方法によって同じくA地点の断面で流量を計測した時の誤差とを示すグラフである。 流路断面の別の例として、流路の軸に対して角度φだけ傾いた面S2を示した図である。 流路断面S2を、その法線方向から見たときの図である。 流路断面S2を用いる場合に、流速vの法線方向成分vzを求めるための方法を示す図である。
これより図面を用いて、本発明の流量計測方法、流量計測装置の具体例を説明する。ただし、本発明の流量計測方法、流量計測装置は、以下に説明する具体的態様に限定されるわけではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、実施例1においては半径1の円管流路を流れる流体の流量を計測するが、これ以外の任意の流路を流れる流体の流量であっても、本発明に従って計測することが可能である(ガウス求積法の積分区間は慣例的に[−1,1]とされているが、流路断面のx区間がこれとは異なる場合であっても、適切な変数変換により積分区間を[−1,1]とすることが可能である。)。また、以下の各実施例では、流速の流路断面法線方向成分の平均値を計測する手段として、流路配管上に1計測点ごとに2つの超音波素子を設置し、超音波素子間での双方向における超音波伝播時間の差から流量を決定する方式(伝播時間差方式)を用いるが、この方式に限らず、不透明な液体に適したパルスドップラー方式など、任意の方式を用いてよい。超音波を用いる方式以外の方式として、公知のあらゆる方式、及び将来的に実施可能となるあらゆる方式を用いることも可能である。さらに、以下の実施例では流量Qを体積流量として計測しているが、計測された体積流量に密度を乗じるなどして質量流量を求めることも可能である。そのような質量流量の計測は必然的に体積流量の計測を伴うものであり、即ち本発明の技術的範囲内にある。また、図5,図8で示される各回路は、物理的に隔離された別個の回路であってもよいし、1つの回路中で各機能を担う概念的機能部であってもよい。各回路は複数の回路から構成されてもよく、例えば図8中のV’z0(xi),Vz1(xi),Qz0,Qz1計算回路は、V’z0(xi)を計算するための回路と、Vz1(xi)を計算するための回路と、Qz0を計算するための回路と、Qz1を計算するための回路とからなる回路群であってもよい。本発明を実施するために行われるそれぞれの処理を、1以上の任意の要素に対して任意に分配することが可能である。
本明細書における、ガウス求積法
本明細書、及び特許請求の範囲中で用いられる「ガウス求積法」という用語は、重み関数を用いて有限個の分点及び係数を決定し、これらを用いた多項式近似として実行される数値積分法一般を指す総称である。分点及び係数の具体的な値は、重み関数等の条件に依存する。以下、このような一般的意味におけるガウス求積法を説明する。
(1)重み関数をw(x),積分区間をXとし、
…(23)
とおく。
(2)以下のpk
…(24)
…(25)
を係数とする直交多項式:
…(26)
に対して、PN(x)=0となる根をガウス求積法の分点xi(i=1,2,…,N)とする。
(3)被積分関数がN次未満の多項式である場合に正しい積分値が得られるよう、以下の式(27)によってガウス求積法の係数wiを求める。
…(27)
(4)一般の被積分関数f(x)に対して、以下のとおり有限和で積分値を近似する。
…(28)
誤差項RNは2N次導関数を含む形で表されるため、被積分関数f(x)が2N次未満の多項式である場合、近似誤差は0となる。
本発明による流量計測方法
本発明の一実施形態による流量計測方法によれば、上述のガウス求積法において重み関数w(x)をVz0(x)L(x)とし(式(12))、式(23)〜(27)を用いて分点xi及び係数wiを決定し、被積分関数f(x)をVz(x)/Vz0(x)(式(15))として式(28)で演算することにより、上記式(14)に示される近似値QNを得ることができる。
本発明による誤差範囲推定
また本発明の一実施形態によれば、以下のとおり誤差Q−QNの範囲を推定することが可能である。
上記本発明の一実施形態による流量計測方法に従い、最も確からしいと考えられる流量Qの近似値QNを求める。併せて、QNよりも信頼性の低い近似値QSUB、すなわち以下の式:
…(29)
が成り立つと推定される近似値QSUBを、利用する計測点数を減らした上で本発明の流量計測方法を用いたり、あるいは別の任意の方法を用いたりして求める。
ここで、まずQSUB<QNである場合について考えると、
(1)QN≦Qのとき、
…(30)
より、以下の式が得られる。
…(31)
(2)QN>Qのとき、
まず、仮にQSUB≧Qとすると、QSUB<QNからQSUB−Q<QN−Qとなり、QSUBがQNよりも信頼性が低いという仮定に矛盾するので、QSUB<Qとする。このとき、当該仮定から
…(32)
なので、上記式(32)の両辺にQNを加えて整理することにより上記式(31)が得られる。
次に、QSUB>QNである場合について考えると、
(1)QN≦Qのとき、
まず、仮にQSUB≦Qとすると、QSUB>QNからQ−QSUB<Q−QNとなり、QSUBがQNよりも信頼性が低いという仮定に矛盾するので、QSUB>Qとする。このとき、当該仮定から
…(33)
なので、上記式(33)の両辺からQNを引いて整理することにより、以下の式:
…(34)
が得られる。
(2)QN>Qのとき、
…(35)
より、上記式(34)が得られる。
以上をまとめると、
…(36)
として、QNの誤差範囲を推定することができる。
以下、上記式(36)を用いた誤差範囲推定の一例を示す。本実施例1の流量計測方法に従い、N個の計測点で計測したVz(x)を用いて得られる流量の近似値QNよりも信頼性の低い近似値としては、N個の計測点xiについてそれぞれ求められる、N個の被積分関数値Vz(xi)/Vz0(xi)の最小値、最大値をそれぞれfmin,fmaxとして、

…(37)
で表されるQmin,Qmaxを考えることができる。Qmin<QN<Qmaxであり、また、実用上十分な確からしさで、QNはQmin,Qmaxよりも精度が高いものと考えられる。よって、上記(36)を用いれば、以下の式:
…(38)
によりQNの誤差範囲を概算することができる。
本発明による流量計測装置
本発明の流量計測方法を実施することができる装置の一例を、図5に示す。図5の流量計測装置は、ガウス求積演算回路、流路配管1に設置された少なくとも1組の超音波素子2a,2bのペア、超音波送受信回路、超音波送受信信号記録回路、流速計算回路、Vz0(xi)計算回路、QN決定回路、及び任意で誤差範囲推定回路を備える。これらの要素のうち、少なくとも1組の超音波素子2a,2bのペア、超音波送受信回路、超音波送受信信号記録回路、流速計算回路によってVz(xi)決定部が構成される。
ガウス求積演算回路には、推定流速分布として、流路断面内の各位置(x,y)における流速の、法線方向成分の推定値vz0(x,y)が入力される。図1に示されるとおり、流路配管1の軸に対して直交する流路断面S1を用いる場合には、法線方向(z方向)は軸方向に一致するのであり、推定流速分布としては、流路断面S1内の各位置(x,y)における軸方向の流速の推定値vz0(x,y)が入力される。ガウス求積演算回路は、入力されたvz0(x,y)から重み関数w(x)=Vz0(x)L(x)を構成し、上述のガウス求積法により分点xi及び係数wiを決定する。
超音波素子2a,2bは、図4を用いて既に説明したとおり、流路配管1上に傾斜しつつ対向して配置された超音波素子のペアである。具体的には、ガウス求積演算回路により決定された、1からNまでのiに対する各々の分点xiについて、図2に示すとおりy座標の最大値、最小値に対応する流路断面上の点A,Bが決定され、図3に示すとおり、点A,Bからそれぞれz方向に所定の大きさだけシフトした点をA*,B*として、A*,B*間で超音波の送受信を行うことができる位置に超音波素子2a,2bのペアが設置される。すなわち、超音波素子2a,2bのペアはN組設置されることになる。あるいは、予め多数組の超音波素子2a,2bペアを流路配管1上に設置しておき、ガウス求積演算回路により決定された分点xiに対応する位置にある超音波素子2a,2bペアのみを超音波送受信回路により動作させてもよい。
超音波送受信回路は、超音波素子2a,2bに超音波の送受信を指示する信号を送信し、超音波素子2a,2bが受信した超音波信号を受信するとともに、超音波送受信信号記録回路に対しては超音波の送受信を示す信号を送信する回路である。
超音波送受信信号記録回路は、超音波送受信回路から送信された超音波の送受信を示す信号を記録する回路である。一例においては、上記式(4)中のt1,t2を示す信号が超音波送受信回路から送信されて、超音波送受信信号記録回路に記録される。
流速計算回路は、超音波送受信信号記録回路から超音波の送受信を示す信号を受信し、これを演算して、各々の分点xiに対するVz(xi)を計算する回路である。一例において、流速計算回路は、超音波送受信信号記録回路から上記式(4)中のt1,t2を示す信号を受信して、上記式(4)に基づいてvz(x,y)の平均値を計算により決定し、この平均値をVz(xi)として出力する。なお、上記式(4)中のLやθは、例えばガウス求積演算回路により分点xi、係数wiとともに幾何学計算されて、流速計算回路に入力されるものとする。
z0(xi)計算回路は、ガウス求積演算部により決定された各々の分点xiについて、推定流速分布を用いてVz0(xi)を計算により決定する。各々のx座標に対応するymin(x),ymax(x)は流路断面形状により決定されるため、Vz0(xi)計算回路に予め入力しておくことが可能である。分点xiはガウス求積演算部から入力される。またvz0(x,y)は、あらかじめ入力されていても、ガウス求積演算部から入力されてもよい。
N決定回路は、ガウス求積演算回路により決定された係数wi、流速計算回路により決定されたVz(xi)、及びVz0(xi)計算回路によって決定されたVz0(xi)の、各々の演算回路、計算回路からの入力を受け、これらを用いて、式(14)により流量の近似値QNを計算により決定する回路である。
なお、ガウス求積法を初めとして各回路により行われる演算には解析解が存在しないことが多いため、典型的には計算機等による数値的な演算が行われる。
誤差範囲推定回路は、QN決定回路からQNの入力を受けるとともに、QNよりも信頼性の低い近似値QSUBの入力をQN決定回路又は任意の外部回路等(不図示)から受けて、上記式(36)により誤差範囲を推定する回路である。
実施例1の具体例
次に、半径1の円管流路において、実際の流速分布が以下の式(39),(40):
(層流)
…(39)
(指数則)
ただし、n=5,7,9
…(40)
で表わされるそれぞれの場合(図6)に、N=3として本発明の方法により流量の近似値Q3を得るための、流量計測装置の動作を説明する。
本実施例1においては、流路断面として図1等に示される流路断面S1を用い、流速の法線方向成分の推定値vz0(x,y)が、
…(41)
として、予め与えられているとする。この推定値vz0(x,y)がガウス求積演算回路に入力される。ガウス求積演算回路は、入力されたvz0(x,y)から重み関数:
…(42)
を構成し、上述のガウス求積法により分点xi及び係数wiを決定する。本具体例においてはN=3であるため、x1〜x3及びw1〜w3が決定される。
上記決定された各々の分点x1〜x3に対応して、超音波の送受信点A1*〜A3*,B1*〜B3*が決定される(図7)。具体的には、各々の分点x1〜x3について図2に示す要領で点A1〜A3,B1〜B3を決定し(図2のxiを分点x1として得られる、図2中のA,BをA1,B1とし、図2のxiを分点x2として得られる、図2中のA,BをA2,B2とし、図2のxiを分点x3として得られる、図2中のA,BをA3,B3とする。)、これらの点をz方向に所定の大きさだけシフトさせることにより(図3参照。点Aiと点Biを逆方向にシフトさせる。)、点A1*〜A3*,B1*〜B3*が決定される。A1*,B1*間、A2*,B2*間、及びA3*,B3*間のそれぞれで超音波の送受信を行うことができる位置に、3組の超音波素子2a,2bのペアが配置される。超音波素子の配置は、ガウス求積演算回路に接続された任意のアクチュエータ等(不図示)によって行うことができる。既に述べたとおり、予め多数組の超音波素子2a,2bペアを流路配管1上に設置しておき、ガウス求積演算回路により決定された分点xiに対応する位置にある超音波素子2a,2bペアのみを超音波送受信回路により動作させるならば、超音波素子の配置操作は不要である。
次に、超音波送受信回路が、上記3組の超音波素子2a,2bのペアに対して、超音波の送受信を指示する信号を送信する。3組の超音波素子2a,2bは、それぞれA1*,B1*間、A2*,B2*間、及びA3*,B3*間で双方向に超音波の送受信を行い、各超音波素子が受信した超音波信号を超音波送受信回路へと送信する。超音波送受信回路は、受信した超音波信号から、各送受信経路における、それぞれの方向についての伝播時間t1,t2を計測し、超音波の送受信を示す信号として超音波送受信信号記録回路に送信する。
超音波送受信信号記録回路は、上記各送受信経路における、それぞれの方向についての伝播時間t1,t2を記録する。流速計算回路は、超音波送受信信号記録回路からこれら伝播時間t1,t2を受信して、上記式(4)に従い、分点x1〜x3に対するVz(x1)〜Vz(x3)を計算する。
また、Vz0(xi)計算回路は、分点x1〜x3について、上記式(41)の推定流速分布を用いてVz0(x1)〜Vz0(x3)を計算により決定する(この場合、ymax(x)=√(1−x2)であり、ymin(x)=−√(1−x2)である。)。QN決定回路は、ガウス求積演算回路により決定された係数w1〜w3、流速計算回路により決定されたVz(x1)〜Vz(x3)、及びVz0(xi)計算回路によって決定されたVz0(x1)〜Vz0(x3)を用いて、式(14)により流量の近似値Q3を計算により決定する。
誤差範囲推定回路は、QN決定回路からQ3の入力を受けるとともに、QNよりも信頼性の低い近似値QSUBの入力をQN決定回路又は任意の外部回路等から受けて、上記式(36)により誤差範囲を推定する。近似値QSUBは、上記各回路を用いて3以外のNについて決定された流量の近似値であってもよいし、本発明とは異なる任意の方法により決定された流量の近似値であってもよい。
本発明による流量計測方法を用いた実験
以上の動作のうち、誤差範囲推定以外の動作について、計算機シミュレーションによる模擬実験を行った。ただし、超音波素子2a,2bを用いた伝播時間t1,t2の計測は行わず、上記(39),(40)式のvz(x,y)を用いてVz(xi)を直接計算した。併せて、従来のガウス求積法により同様に流量の近似値を計算した。以下、それらの計算結果を比較する。
表1に、従来のさまざまなガウス求積法、及び本発明の方法において、N=3について計算された分点xi及び係数wiを示す。なお、本発明の求積法では、上記式(41)のvz0(x,y)を用いて、上記式(12),(13)に従い重み関数Vz0(x)L(x)を構成し、上記式(23)〜(27)を用いて分点xi及び係数wiを決定した。
表1中、N=3のときのx2,x3は正負が逆の関係にあり(例えばガウスールジャンドルの従来例ではx1=0.0000,x2,x3=±0.77460)、またw2=w3である(ガウス−ルジャンドルの従来例では、w1=0.88889,w2=w3=0.55556。他の従来例、本発明についても同様)。なお、ロバートの求積法における両端の固定分点は、被積分関数をゼロとみなすことができるため表1中に含まれていない。
表1の分点xi及び係数wiを用いて、各従来例、及び本発明それぞれの方法を用いて流量の近似値Q3を決定した。さらに、実際の流量Qを上記式(39),(40)から計算して、それぞれの方法で決定された近似値Q3の実際の誤差を計算した。これらの結果を表2に示す。
従来技術と本発明の技術に対する積分誤差の理論値を比較すると、ほとんどの場合に本発明の技術が優位である。特に、流速分布がvz0(x,y)に近い場合、その効果が大きい。
既に述べたとおり、逆流等によって重み関数の符号が一定とはならない場合、ガウス求積法の分点xiを必ずしも積分区間内にとれない場合がある。このときに、仮想的に流速分布のゼロ点をずらして逆流を見かけ上回避するための方法を、以下に説明する。
この方法は、適当な関数Vz1(x)を用いて、
…(43)
…(44)
と、Vz0(x),Vz(x)のゼロ点をずらし、特にV′z0(x)が流路断面S内で常にゼロ以上となるように、又は流路断面S内で常にゼロ以下となるようにVz1(x)を選定することで重み関数の符号を一定に保つ、という発想に基づく。ここで、

…(45)
とする。
これらゼロ点をずらしたV′z0(x),V′z(x)を用いて、ゼロ点をずらした流量Q’を
…(46)
と構成し、更に流量Q’に対してガウス求積法を適用するための被積分関数を
…(47)
と、重み関数を
…(48)
と構成することができる。上記式(48)の重み関数を用いてガウス求積法の分点xi及び係数wiを決定すれば、これらを用いて流量Q’の近似値Q’N
…(49)
と表わすことができる。
また、上記式(44)〜(46)より
…(50)
が得られるので、Q,Q’をそれぞれ近似値QN,Q’Nで置き換えることにより、
…(51)
が得られる。さらに、上記式(44),(49),(51)から
…(52)
が得られる。
上記式(52)によって、逆流等がある場合でも流量の近似値QNを決定することが可能となる。具体的には、ゼロ点がずらされた重み関数V’z0(x)L(x)を用いてガウス求積法の分点xi,係数wiを決定し、決定された計測点xiについてVz(xi)を、上述のとおり超音波計測等により決定するとともに、V’z0(xi),Vz1(xi),Qz0,Qz1を、それぞれ定義式に従い計算により決定して上記式(52)に代入することで近似値QNを決定できる。
ここで、既に述べたとおり、重み関数の符号が積分区間内で変化する場合であっても、積分区間内に分点xiをとることができる場合もある。一例として、推定流速分布が
…(53)
で与えられる場合は、−1≦x,y≦1の半径1の円管流路において、Vz0(x)の符号が[−1,1]区間で変化するが、重み関数をVz0(x)L(x)として上記式(23)〜(27)のガウス求積法を適用すると(N=3とする。)、分点x1,x2,x3=0.00,0.75,−0.75、係数w1,w2,w3=0.05,−0.36,−0.36となり、積分区間内に分点xiをとることができる。なお、このときx1〜x3に対応するVz0(xi)=0.19,−0.81,−0.81であり、重み関数の符号は確かに変化している。またオフセット関数Vz1(x)を導入する場合も、例えば推定流速分布を
…(54)
とし、オフセット関数Vz1(x)=1とすれば、このVz1(x)及び上記式(54)のvz0(x,y)を用いて得られるV’z0(x)は上記式(53)を用いて上記式(13)に従い得られる(オフセットを導入しない時の)Vz0(x)と等しくなるため、V’z0(x)L(x)を重み関数としてガウス求積法を実行したときには積分区間内に分点xi(x1,x2,x3=0.00,0.75,−0.75)が得られる。したがって、実施例1,2の両方において、重み関数の符号が積分区間内で変化する場合であっても、理論的には、ガウス求積法により流量の近似値を得ることができる場合がある。
なお、上記式(52)を用いて得られた近似値QNについても、当該QNよりも信頼性の低い近似値QSUBを用いて上記式(36)により誤差範囲を推定することが可能である。
本発明による流量計測装置
本実施例2に示す、本発明の流量計測方法を実施することができる装置の一例を、図8に示す。図8の装置においては、図5の装置中のVz0(xi)計算回路に代わってV’z0(xi),Vz1(xi),Qz0,Qz1計算回路が用いられる。以下、図8の装置の構成、動作を説明するが、図5の装置と同様の部分については説明を省略する。
図8の流量計測装置は、ガウス求積演算回路、流路配管1に設置された少なくとも1組の超音波素子2a,2bのペア、超音波送受信回路、超音波送受信信号記録回路、流速計算回路、V’z0(xi),Vz1(xi),Qz0,Qz1計算回路、QN決定回路、及び任意で誤差範囲推定回路を備える。これらの要素のうち、少なくとも1組の超音波素子2a,2bのペア、超音波送受信回路、超音波送受信信号記録回路、流速計算回路によってVz(xi)決定部が構成される。
ガウス求積演算回路には、推定流速分布として、流路断面内の各位置(x,y)における流速の、法線方向成分の推定値vz0(x,y)が入力されるとともに、好ましくは(ただし必須ではない)上記式(16)で表されるV’z0(x)が流路断面S内で常にゼロ以上となるよう、又は流路断面S内で常にゼロ以下となるよう選定されたオフセット関数Vz1(x)が入力される。ガウス求積演算回路は、入力されたvz0(x,y),Vz1(x)から重み関数w(x)=V’z0(x)L(x)を構成し、上述のガウス求積法により分点xi及び係数wiを決定する。
超音波素子2a,2bは、図5の装置に関して説明したものと同様の素子であってよい。これらを配置すべき計測点xiは、修正された重み関数w(x)=V’z0(x)L(x)を用いて決定される。超音波送受信回路、超音波送受信信号記録回路、流速計算回路も、それぞれ図5の装置に関して説明したものと同様の回路であってよい。
V’z0(xi),Vz1(xi),Qz0,Qz1計算回路は、ガウス求積演算部により決定された各々の分点xiについて、V’z0(xi),Vz1(xi)を計算するとともに、Qz0,Qz1を計算により決定する回路である。分点xiはガウス求積演算部から入力される。またvz0(x,y)は、あらかじめ入力されていても、ガウス求積演算部から入力されてもよい。
N決定回路は、ガウス求積演算回路により決定された係数wi、流速計算回路により決定されたVz(xi)、及びV’z0(xi),Vz1(xi),Qz0,Qz1計算回路によって決定されたV’z0(xi),Vz1(xi),Qz0,Qz1の、各々の演算回路、計算回路からの入力を受け、これら用いて、式(21)により流量の近似値QNを計算により決定する回路である。実施例1と同様に、各回路により行われる演算は典型的に計算機等を用いて行われる。
誤差範囲推定回路は、QN決定回路からQNの入力を受けるとともに、QNよりも信頼性の低い近似値QSUBの入力をQN決定回路又は任意の外部回路等から受けて、上記式(36)により誤差範囲を推定する回路である。
実施例2における、流量計測装置の動作
次に、流速分布がvz(x,y)で表わされる場合に、N=3として本発明の方法により流量の近似値Q3を得るための、流量計測装置の動作を説明する。ただし、実施例1で説明した動作と同様の部分については説明を省略する。
本実施例2においては、流路断面として図1等に示される流路断面S1を用い、流速の法線方向成分の推定値がvz0(x,y)であるとする。この推定値vz0(x,y)がガウス求積演算回路に入力される。さらに、Vz1(x)として、好ましくは(ただし必須ではない)流路断面S1内でV’z0(x)=Vz0(x)+Vz1(x)が常にゼロ以上となるよう、又は常にゼロ以下となるよう選定されたVz1(x)も、ガウス求積演算回路に入力される。
ガウス求積演算回路は、入力されたvz0(x,y),Vz1(x)から重み関数w(x)=V’z0(x)L(x)を構成し、上述のガウス求積法により分点xi及び係数wiを決定する。本具体例においてはN=3であるため、x1〜x3及びw1〜w3が決定される。
上記決定された各々の分点x1〜x3に対応して、超音波の送受信点A1*〜A3*,B1*〜B3*が決定される(図7。ただしx1〜x3の実際の値は実施例1の場合と異なる。)。すなわち、各々の分点x1〜x3について図2に示す要領で点A1〜A3,B1〜B3を決定し(図2のxiを分点x1として得られる、図2中のA,BをA1,B1とし、図2のxiを分点x2として得られる、図2中のA,BをA2,B2とし、図2のxiを分点x3として得られる、図2中のA,BをA3,B3とする。)、これらの点をz方向に所定の大きさだけシフトさせることにより(図3参照。点Aiと点Biを逆方向にシフトさせる。)、点A1*〜A3*,B1*〜B3*が決定される。A1*,B1*間、A2*,B2*間、及びA3*,B3*間のそれぞれで超音波の送受信を行うことができる位置に、3組の超音波素子2a,2bのペアが配置される。
次に、超音波送受信回路が、上記3組の超音波素子2a,2bのペアに対して、超音波の送受信を指示する信号を送信する。3組の超音波素子2a,2bは、それぞれA1*,B1*間、A2*,B2*間、及びA3*,B3*間で双方向に超音波の送受信を行い、各超音波素子が受信した超音波信号を超音波送受信回路へと送信する。超音波送受信回路は、受信した超音波信号から、各送受信経路における、それぞれの方向についての伝播時間t1,t2を計測し、超音波の送受信を示す信号として超音波送受信信号記録回路に送信する。
超音波送受信信号記録回路は、上記各送受信経路における、それぞれの方向についての伝播時間t1,t2を記録する。流速計算回路は、超音波送受信信号記録回路からこれら伝播時間t1,t2を受信して、上記式(4)に従い、分点x1〜x3に対するVz(x1)〜Vz(x3)を計算する。
また、V’z0(xi),Vz1(xi),Qz0,Qz1計算回路は、分点x1〜x3について、V’z0(xi),Vz1(xi)を計算するとともに、Qz0,Qz1を計算により決定する。QN決定回路は、ガウス求積演算回路により決定された係数w1〜w3、流速計算回路により決定されたVz(x1)〜Vz(x3)、及びV’z0(xi),Vz1(xi),Qz0,Qz1計算回路によって決定されたV’z0(x1)〜V’z0(x3),Vz1(x1)〜Vz1(x3),Qz0,Qz1を用いて、式(21)により流量の近似値Q3を計算により決定する。
誤差範囲推定回路は、QN決定回路からQ3の入力を受けるとともに、QNよりも信頼性の低い近似値QSUBの入力をQN決定回路又は任意の外部回路等から受けて、上記式(36)により誤差範囲を推定する。近似値QSUBは、上記各回路を用いて3以外のNについて決定された流量の近似値であってもよいし、本発明とは異なる任意の方法により決定された流量の近似値であってもよい。
本発明による流量計測方法を用いた実験
実用的な流体設備では、流路中の種々の構成機器、構造物によって流速分布が乱される場合があり、流量計測に誤差を生じる要因となる。そのような整流されていない流路における流量計測精度について、本発明の流量計測方法を用いた計測結果と従来技術による計測結果とを比較することにより、本発明の有効性を例示する。
(実施方法)
整流されていない流路の典型例として、曲管(肘部)及び邪魔板(曲管下流の流路断面を部分的に封止)を配置した円管流路を考える(図9A,図9B)。邪魔板は図9A中の位置Xに配置されており、その断面は、図9Bに示すとおり半円形状である。なお、流路断面は直径約83mmの円形である。
図9Aの円管流路には、5(リットル/秒)の一定流量で試験流体(水)が流入し続けている。実施例2に従い、A断面(曲管及び邪魔板の直下。位置Xから軸方向に約200mmの位置。)において流量を計測する。ただし、推定流速分布は事前のシミュレーションによって求める。邪魔板下流に逆流が発生するため、仮想的に流速分布のゼロ点をずらしてガウス求積法を構成する必要がある。本件においては、Vz1(x)を定数関数(推定流速の流路断面平均の1倍)と取ることにより、上記式(16)〜(18)に基づき重み関数を構成し、実施例2の方法に従い流量を計測した。
また比較対象として、特許文献3,4の従来技術(ガウス‐チェビチェフ求積法)に従い、A断面において流量を計測した。さらに、流量の基準値として、汎用の流量計測装置を用いてB断面(曲管及び邪魔板の十分下流。位置Xから軸方向に3000mm以上の位置。)においても流量を計測した。なお、本発明の実施例2の方法により流量を計測したときの、ガウス求積法の分点xi及び係数wi、Vz0(xi),Qz0,Vz1(xi),Qz1の値はそれぞれ以下のとおりである。ただし流路半径を1とし、推定流速は、流路断面平均が1となるよう正規化している。なお、ガウス−チェビチェフ求積法(N=3)により流量を計測したときの分点xiはx1,x2,x3=0.00,0.71,−0.71であり、係数wiはw1,w2,w3=0.79,0.39,0.39であった。

上記B断面で計測した基準流量値と比較することにより、A断面において実施例2の方法と従来技術とでそれぞれ計測した流量の誤差を評価した。
図10に、A断面での流量計測方法として従来のガウス‐チェビチェフ求積法を用いた場合と実施例2の方法を用いた場合とのそれぞれにおける、「B断面において計測した流量」と「A断面において計測した流量」との差の絶対値を示す。本発明により、従来技術と比較して、流量計測誤差を1/10程度に低減することができることが示されている。
なお、既に述べたとおり、流路断面が傾いた面や曲面であったとしても、本発明によって同様の原理で流量を計測することが可能である。例えば、図11に示すとおり、流路の軸に対して角度φだけ傾いた流路断面S2(流路断面S1を、図1のx軸の廻りにφ回転させることで得られる。)を用いる場合には、図12に示すとおり、この流路断面S2上でx座標、y座標を規定し、既に説明した方法と同様の方法で流量を計測することができる。このとき、図11に示すとおり流路配管1の軸方向に流体が流れているならば、流速のうち流路断面S2の法線方向(z方向)成分は、流速の大きさをv(x,y)とすればvz(x,y)=v(x,y)・cosφとなる(図13)。また、超音波の送受信を行う位置A*,B*は、図12に示すA,Bを、それぞれ流路配管1の軸方向逆向きに所定の大きさだけシフトした位置とすればよい。この場合、上述の伝播時間差方式においては、上記式(4)を用いて得られた平均流速にcosφを乗じればVz(xi)を得られる。流路断面が曲面である場合にも、流路断面内の各位置(x,y)に応じた法線方向の成分を用いる(各位置(x,y)で異なるφを用いる)ことにより、同様にvz(x,y)を決定して流量計測を行うことができる。あるいは、最小二乗法等によって当該曲面を最もよく近似する平面を決定し、当該決定された平面を仮想的な流路断面として用いる等して、(4)式を用いて(傾斜角の代表値をφとして、cosφを乗じる。)平均流速を計測し、流量を決定することも可能である。
本発明の計測方法、計測装置を、高精度の流量計測一般に利用できる可能性がある。例えば、実際のプラント等で利用する場合、従来とは異なり整流されていない流速分布下で正確な計測が可能となるため、整流化するために延長していた配管等の圧縮、流量計取り付け位置の自由度の向上等が期待できる。
1 流路配管
2a,2b 超音波素子

Claims (9)

  1. 流路内を流れる流体の流量として、以下の式:
    ただし、

    (Sは流路断面を表わし、該流路断面S内の位置を(x,y)で表わす。vzは、前記流体の流速のうち、流路断面Sの法線方向(z方向)成分を表わし、vz(x,y)は、流路断面S内位置(x,y)における該流体の流速のうち、該位置(x,y)における該法線方向の成分を表わす。ymin(x),ymax(x)は、それぞれ流路断面S内でx座標を定めたときのy座標の最小値、最大値を表わし、xmin,xmaxは、それぞれ該流路断面S内でのx座標の最小値、最大値を表わす。)
    によって表わされる流量Qを計測する方法であって、
    前記流路断面S内の各位置(x,y)における、流速の前記法線方向成分の推定値をvz0(x,y)としたとき、以下の式:
    ただし、
    によって表わされるVz0(x)L(x)を重み関数として、1からN(Nは1以上の任意の自然数)までの自然数iについてガウス求積法の分点xi及び係数wiを決定する段階と、
    各々の分点xiについて、Vz(xi)を決定するとともにVz0(xi)を決定する段階と、
    前記流量Qの近似値として、以下の式:
    を用いて表わされる、近似値QNを決定する段階と
    を備えた方法。
  2. 流路内を流れる流体の流量として、以下の式:
    ただし、

    (Sは流路断面を表わし、該流路断面S内の位置を(x,y)で表わす。vzは、前記流体の流速のうち、流路断面Sの法線方向(z方向)成分を表わし、vz(x,y)は、流路断面S内位置(x,y)における該流体の流速のうち、該位置(x,y)における該法線方向の成分を表わす。ymin(x),ymax(x)は、それぞれ流路断面S内でx座標を定めたときのy座標の最小値、最大値を表わし、xmin,xmaxは、それぞれ該流路断面S内でのx座標の最小値、最大値を表わす。)
    によって表わされる流量Qを計測する方法であって、
    前記流路断面S内の各位置(x,y)における、流速の前記法線方向成分の推定値をvz0(x,y)としたとき、オフセット関数Vz1(x)を用いて以下の式:
    ただし、
    によって表わされるV’z0(x)を用いて、以下の式:
    によって表わされるV’z0(x)L(x)を重み関数として、1からN(Nは1以上の任意の自然数)までの自然数iについてガウス求積法の分点xi及び係数wiを決定する段階と、
    各々の分点xiについて、Vz(xi)を決定するとともに、V’z0(xi),Vz1(xi),及び、以下の式:

    で表わされるQz0,Qz1を決定する段階と、
    以下の式:
    を用いて表わされる、近似値QNを決定する段階と
    を備えた方法。
  3. 流路断面S内でV′z0(x)が常にゼロ以上となるよう、又は流路断面S内でV′z0(x)が常にゼロ以下となるよう、前記Vz1(x)が選定される、請求項2に記載の方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法により前記近似値QNを決定する段階と、
    前記近似値QNよりも信頼性の低い、第2の近似値QSUBを用いて、以下の式:
    に基づき、前記近似値QNの誤差範囲を推定する段階と
    を備えた流量計測方法。
  5. 流路内を流れる流体の流量として、以下の式:
    ただし、

    (Sは流路断面を表わし、該流路断面S内の位置を(x,y)で表わす。vzは、前記流体の流速のうち、流路断面Sの法線方向(z方向)成分を表わし、vz(x,y)は、流路断面S内位置(x,y)における該流体の流速のうち、該位置(x,y)における該法線方向の成分を表わす。ymin(x),ymax(x)は、それぞれ流路断面S内でx座標を定めたときのy座標の最小値、最大値を表わし、xmin,xmaxは、それぞれ該流路断面S内でのx座標の最小値、最大値を表わす。)
    によって表わされる流量Qを計測する装置であって、
    前記流路断面S内の各位置(x,y)における、流速の前記法線方向成分の推定値をvz0(x,y)としたとき、以下の式:
    ただし、
    によって表わされるVz0(x)L(x)を重み関数として、1からN(Nは1以上の任意の自然数)までの自然数iについてガウス求積法の分点xi及び係数wiを決定する、ガウス求積演算部と、
    前記ガウス求積演算部により決定された各々の分点xiについてVz(xi)を決定する、Vz(xi)決定部と、
    前記ガウス求積演算部により決定された各々の分点xiについてVz0(xi)を決定する、Vz0(xi)決定部と、
    前記流量Qの近似値として、以下の式:
    を用いて表わされる近似値QNを決定する、QN決定部と
    を備えた装置。
  6. 流路内を流れる流体の流量として、以下の式:
    ただし、

    (Sは流路断面を表わし、該流路断面S内の位置を(x,y)で表わす。vzは、前記流体の流速のうち、流路断面Sの法線方向(z方向)成分を表わし、vz(x,y)は、流路断面S内位置(x,y)における該流体の流速のうち、該位置(x,y)における該法線方向の成分を表わす。ymin(x),ymax(x)は、それぞれ流路断面S内でx座標を定めたときのy座標の最小値、最大値を表わし、xmin,xmaxは、それぞれ該流路断面S内でのx座標の最小値、最大値を表わす。)
    によって表わされる流量Qを計測する装置であって、
    前記流路断面S内の各位置(x,y)における、流速の前記法線方向成分の推定値をvz0(x,y)としたとき、オフセット関数Vz1(x)を用いて以下の式:
    ただし、
    によって表わされるV’z0(x)を用いて、以下の式:
    によって表わされるV’z0(x)L(x)を重み関数として、1からN(Nは1以上の任意の自然数)までの自然数iについてガウス求積法の分点xi及び係数wiを決定する、ガウス求積演算部と、
    前記ガウス求積演算部により決定された各々の分点xiについて、Vz(xi)を決定する、Vz(xi)決定部と、
    前記ガウス求積演算部により決定された各々の分点xiについてのV’z0(xi),Vz1(xi),及び、以下の式:

    で表わされるQz0,Qz1を決定する、V’z0(xi),Vz1(xi),Qz0,Qz1決定部と、
    以下の式:
    を用いて表わされる近似値QNを決定する、QN決定部と
    を備えた装置。
  7. 前記ガウス求積演算部は、流路断面S内でV′z0(x)が常にゼロ以上となるよう、又は流路断面S内でV′z0(x)が常にゼロ以下となるよう、選定された前記Vz1(x)を用いる、請求項6に記載の装置。
  8. 前記Vz(xi)決定部が、
    前記流路を規定する流路配管上で、前記各々の分点xiに対応する位置に設置される超音波素子のペアと、
    前記超音波素子のペアに対して超音波の送受信を指示する、超音波送受信回路と、
    前記超音波の送受信を示す信号を記録する、超音波送受信信号記録回路と、
    前記超音波送受信信号記録回路に記録された、前記超音波の送受信を示す信号を用い、前記各々の分点xiについてVz(xi)を計算する、流速計算回路と
    を備えることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の装置。
  9. 前記近似値QNよりも信頼性の低い、第2の近似値QSUBを用いて、以下の式:
    に基づき、前記近似値QNの誤差範囲を推定する誤差範囲推定部
    を更に備えた、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の装置。
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