JP6210603B2 - リゾクトニア菌抵抗性遺伝子 - Google Patents

リゾクトニア菌抵抗性遺伝子 Download PDF

Info

Publication number
JP6210603B2
JP6210603B2 JP2014560785A JP2014560785A JP6210603B2 JP 6210603 B2 JP6210603 B2 JP 6210603B2 JP 2014560785 A JP2014560785 A JP 2014560785A JP 2014560785 A JP2014560785 A JP 2014560785A JP 6210603 B2 JP6210603 B2 JP 6210603B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dna
seq
plant
protein
amino acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2014560785A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2014123157A1 (ja
Inventor
昌樹 森
昌樹 森
哲 前田
哲 前田
尚起 横谷
尚起 横谷
賢司 小田
賢司 小田
近藤 陽一
陽一 近藤
松井 南
南 松井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Agriculture and Food Research Organization
Original Assignee
National Agriculture and Food Research Organization
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Agriculture and Food Research Organization filed Critical National Agriculture and Food Research Organization
Publication of JPWO2014123157A1 publication Critical patent/JPWO2014123157A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6210603B2 publication Critical patent/JP6210603B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/415Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from plants
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/82Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for plant cells, e.g. plant artificial chromosomes (PACs)
    • C12N15/8241Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology
    • C12N15/8261Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield
    • C12N15/8271Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance
    • C12N15/8279Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance for biotic stress resistance, pathogen resistance, disease resistance
    • C12N15/8282Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance for biotic stress resistance, pathogen resistance, disease resistance for fungal resistance

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本発明は、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する方法に関する。また本発明は、リゾクトニア菌に対する抵抗性を有する形質転換植物体及び当該植物体の製造方法に関する。
植物の病害抵抗性を増強して耐病性作物を作出することは減農薬栽培をするうえで有効である。イネの3大病害はいもち病、白葉枯病、紋枯病である。このうち、いもち病及び白葉枯病に対しては有効な抵抗性遺伝子が多く知られている。
本発明者らはこれまで、イネの完全長cDNAを網羅的に過剰発現した2万以上のシロイヌナズナ系統(イネFOXシロイヌナズナ系統、非特許文献1)について、トマト斑葉細菌病菌(Pseudomonas syringae pv. tomato DC3000, Pst3000)及びアブラナ科野菜類炭疽病菌(Colletotrichum higginsianum)に対する抵抗性スクリーニングを行い、両菌に対し抵抗性を示す系統を選抜し、その原因となるイネ遺伝子を10個以上同定した(非特許文献2及び3)。そのうちの1つである遺伝子BSR1を過剰発現する形質転換イネは、細菌である白葉枯病菌及び子のう菌であるいもち病菌に対し強い抵抗性を示した(特許文献1及び2)。しかし、担子菌であるリゾクトニア菌により引き起こされるイネ紋枯病に対しては、有効な抵抗性遺伝子はほとんど知られていない。
Kondou, Y. et al., (2009) Plant J. 57:883-894 Dubouzet, J. et al., (2011) Plant Biotechnology Journal 9:466-485 Abstracts of 9th International Symposium of Rice Functional Genomics (2011) S12-4 Ito, T. et al., (2000) Plant Cell 12:1541-1550 Fang, W. et al., (2012) Plant J. 70: 929-939 Nakamura, H. et al., (2007) Plant Mol Biol. 65:357-371 Toki, S. et al., (2006) Plant J. 47:969-76
WO 2010/023974 米国特許出願公開番号2011-0258737
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、植物に病原担子菌のリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する方法を提供することを課題とする。具体的には、植物に病原担子菌のリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有する遺伝子による、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する方法を提供することを課題とする。また本発明は、当該遺伝子で形質転換された、リゾクトニア菌に対する抵抗性を有する植物体及び当該植物体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。すなわち、まず本発明者らは、細菌であるトマト斑葉細菌病菌及び子のう菌であるアブラナ科野菜類炭疽病菌両菌に対し抵抗性を示したイネFOXシロイヌナズナ系統にリゾクトニア菌を感染させ、トマト斑葉細菌病菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌両菌に加え、リゾクトニア菌に対しても抵抗性を示す系統を選抜した。選抜された系統はOsPSR1遺伝子を過剰発現していることがわかった。そこで本発明者らは、OsPSR1を過剰発現するイネの作出を試みた。その結果、当該イネがリゾクトニア菌に対して抵抗性を示すことが確認された。
本発明はこのような知見に基づくものであり、以下の〔1〕〜〔8〕を提供する。
〔1〕以下(a)及び(b)の工程を含む、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する方法;
(a)以下(i)から(iv)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターを植物細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入された植物細胞から植物体を再生する工程、
(i)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(ii)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(iii)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(iv)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA。
〔2〕以下(a)から(d)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターを有効成分として含有する、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与するための薬剤;
(a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(d)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA。
〔3〕以下(a)から(d)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターが導入された、リゾクトニア菌に対する抵抗性を有する形質転換植物体;
(a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(d)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA。
〔4〕〔3〕に記載の形質転換植物体の子孫又はクローンである、リゾクトニア菌に対して抵抗性である植物体。
〔5〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換植物体の繁殖材料であって、リゾクトニア菌に対して抵抗性である形質転換植物体の繁殖材料。
〔6〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換植物体から単離された細胞であって、リゾクトニア菌に対して抵抗性である細胞。
〔7〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換植物体から単離された器官であって、リゾクトニア菌に対して抵抗性である器官。
〔8〕以下(a)及び(b)の工程を含む、リゾクトニア菌に対して抵抗性である形質転換植物体の製造方法;
(a)以下(i)から(iv)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターを植物細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入された植物細胞から植物体を再生する工程、
(i)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(ii)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(iii)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(iv)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA。
本発明により、リゾクトニア菌に対して抵抗性の形質を与える新規遺伝子OsPSR1が提供された。本遺伝子を過剰発現したシロイヌナズナは、リゾクトニア菌に抵抗性を示し、本遺伝子を過剰発現したイネはリゾクトニア菌による紋枯病に抵抗性を示した。
図1は、OsPSR1過剰発現シロイヌナズナにおけるR.solaniに対する抵抗性の程度を示すグラフである。Columbia(Col-0)は野生型を示す。OsPSR1:OX-3, -4はOsPSR1を過剰発現している系統を示す。***はCol-0やvector controlと比較して0.1%水準で有意差があることを示す。 図2は、OsPSR1過剰発現シロイヌナズナにおける、a)Pst3000に対する抵抗性、b)C. higginsianumに対する抵抗性の程度を示すグラフである。WTは野生型を示す。Eil-0はC. higginsianum抵抗性のシロイヌナズナエコタイプを示す。OsPSR1:OX-3, -4はOsPSR1を過剰発現している系統を示す。*はWTと比較して5%水準で有意差があることを示す。***はWTやvector controlと比較して0.1%水準で有意差があることを示す。 図3は、OsPSR1過剰発現シロイヌナズナのa)草丈を示すグラフ及びb)花の大きさを示す図である。Columbia(Col-0)は野生型を示す。OsPSR1:OX-1,-2,-5,-6はOsPSR1を過剰発現している系統を示す。**はCol-0と比較して1%水準で有意差があることを示す。 図4は、OsPSR1過剰発現イネにおける紋枯病に対する抵抗性の程度を示すグラフである。a)葉先側半分、b)葉基側半分、を用いた抵抗性検定の結果をそれぞれ示す。接種後8日目の病斑長を示した。日本晴は野生型を示す。OsPSR1:OXはOsPSR1を過剰発現するイネ(T0世代)を示す。*は日本晴と比較して5%水準で有意差があることを示す。 図5は、OsPSR1過剰発現トマトにおけるトマト斑葉細菌病抵抗性の程度を示すグラフである。WTは野生型(トマト品種マイクロトム)を示す。OsPSR1:OXはOsPSR1を過剰発現するトマトを示す。*はWTと比較して5%水準で有意差があることを示す。
本発明は、OsPSR1遺伝子を用いる植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する方法に関する。また本発明は、当該方法によって得られるリゾクトニア菌に対する抵抗性を有する形質転換植物体を提供する。具体的には本発明は、以下(a)及び(b)の工程を含む植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する方法、及び当該方法によって得られる形質転換植物体を提供する。
(a)下記(i)から(iv)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターを植物細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入された植物細胞から植物体を再生する工程、
(i)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(ii)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(iii)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(iv)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA。
本明細書において、上述の(i)から(iv)に記載のDNAを「本発明のDNA」又は「OsPSR1遺伝子」と称する。また本発明のDNAによりコードされるタンパク質を「本発明のタンパク質」又は「OsPSR1タンパク質」と称する。
本発明において「含む」は「含む」及び「からなる」の両方を意味する。
OsPSR1遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号:1及び2に、これらの塩基配列のコード領域によりコードされるタンパク質(OsPSR1タンパク質)のアミノ酸配列を配列番号:3に示す。
配列番号:1の塩基配列は、DDBJのAccession No: AK072163として知られる。配列番号:1に記載の塩基配列におけるタンパク質のコード領域は、106番目の塩基から1761番目の塩基(終止コドンを含む)である。
一方配列番号:2の塩基配列は、RAPDBのAccession No: Os08g054730(Os08t054730-01)として知られる。配列番号:2に記載の塩基配列におけるタンパク質のコード領域は、104番目の塩基から1759番目の塩基(終止コドンを含む)である。配列番号:2に記載の塩基配列では、配列番号:1の塩基配列の冒頭のGTが欠失している。
本発明に用いるDNAの形態に特に制限はなく、cDNAであってもゲノムDNAであってもよい。ゲノムDNA及びcDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可能である。例えば、ゲノムDNAはOsPSR1遺伝子(DDBJ Accession No: AK072163、RAPDB Accession No: Os08g054730)の公知の塩基配列情報(配列番号:1、2)から適当なプライマー対を設計して、目的の植物から調製したゲノムDNAを鋳型にPCRを行い、得られる増幅DNA断片をプローブとしてゲノミックライブラリーをスクリーニングすることによって調製することができる。また、同様にプライマー対を設計して、目的の植物から調製したcDNA又はmRNAを鋳型にPCRを行い、得られる増幅DNA断片をプローブとして用いてcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、本発明のOsPSR1タンパク質をコードするcDNAを調製することができる。さらに市販のDNA合成機を用いれば、目的のDNAを合成により調製することも可能である。
本発明のDNAは、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有している限り、OsPSR1タンパク質(配列番号:3)をコードするDNAのみならず、該タンパク質に構造的に類似したタンパク質をコードするDNA(例えば、変異体、誘導体、アレル、バリアント及びホモログ)を用いることもできる。このようなDNAには、例えば、配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNAが含まれる。
アミノ酸配列が改変されたタンパク質をコードするDNAを調製するための当業者によく知られた方法としては、例えば、site-directed mutagenesis法(Kramer, W. and Fritz, H.J. Oligonucleotide-directed construction of mutagenesis via gapped duplex DNA. Methods in Enzymology. 154, 1987, 350-367.)が挙げられる。また、塩基配列の変異によりコードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは、自然界においても生じ得る。このように天然型のOsPSR1のアミノ酸配列(配列番号:3)において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAであっても、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードする限り、本発明のDNAに含まれる。
改変されるアミノ酸の数は、特に制限はないが、一般的には、50アミノ酸以内、好ましくは30アミノ酸以内、より好ましくは10アミノ酸以内(例えば、5アミノ酸以内、3アミノ酸以内)である。アミノ酸の改変は、好ましくは保存的置換である。改変前と改変後の各アミノ酸についてのhydropathic index(Kyte, J. and Doolittle, R.F. J Mol Biol. 157(1), 1982, 105-132.)やHydrophilicity value(米国特許第4,554,101号)の数値は、±2以内が好ましく、さらに好ましくは±1以内であり、最も好ましくは±0.5以内である。
また、たとえ、塩基配列が変異した場合でも、それがタンパク質中のアミノ酸の変異を伴わない場合(縮重変異)もあり、このような縮重変異体も本発明のDNAに含まれる。
OsPSR1タンパク質(配列番号:3)に構造的に類似したタンパク質をコードするDNAとしては、ハイブリダイゼーション技術(Southern, E.M. Journal of Molecular Biology. 98, 1975, 503.)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki, R.K. et al. Science. 230, 1985, 1350-1354.; Saiki, R.K. et al. Science, 239, 1988, 487-491.)、イン・シリコハイブリダイゼーション技術などを利用して調製したものを用いることも可能である。即ち、当業者にとっては、OsPSR1タンパク質(配列番号:3)をコードするDNAの塩基配列(配列番号:1、2)もしくはその一部をプローブとして、またOsPSR1タンパク質(配列番号:3)をコードするDNAに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、イネや他の植物からOsPSR1タンパク質(配列番号:3)をコードするDNAと高い相同性を有するDNAを単離することは通常行いうることである。このように、ハイブリダイズ技術やPCR技術により単離しうる、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA、あるいは OsPSR1タンパク質と同等の機能(植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能)を有するタンパク質をコードするDNAもまた、本発明のDNAに含まれる。
このようなDNAを単離するためには、好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行う。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、当業者であれば、適宜選択することができる。一例を示せば、25%ホルムアミド、より厳しい条件では50%ホルムアミド、4×SSC、50mM Hepes pH7.0、10×デンハルト溶液、20μg/ml変性サケ精子DNAを含むハイブリダイゼーション溶液中、42℃で一晩プレハイブリダイゼーションを行った後、標識したプローブを添加し、42℃で一晩保温することによりハイブリダイゼーションを行う。その後の洗浄における洗浄液及び温度条件は、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1% SDS、37℃」程度で、より厳しい条件としては「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1% SDS、42℃」程度で、さらに厳しい条件としては「0.2×SSC、0.1% SDS、65℃」程度で実施することができる。このようにハイブリダイゼーションの条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するDNAの単離を期待しうる。但し、上記SSC、SDS及び温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記若しくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーション反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられるが、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。これにより単離されたDNAは、アミノ酸レベルにおいて、OsPSR1タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:3)と高い相同性を有すると考えられる。高い相同性とは、アミノ酸配列全体で、少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%,96%,97%,98%,99%以上)の配列の同一性を指す。アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリン及びアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Karlin, S. and Altschul, S.F. Proc Natl Acad Sci U S A. 87(6), 1990, 2264-2268.; Karlin, S. and Altschul, S.F. Proc Natl Acad Sci U S A. 90(12), 1993, 5873-5877.)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul, S.F. et al. J Mol Biol. 215(3), 1990, 403-410.)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。このような方法によって得られるOsPSR1タンパク質(配列番号:3)をコードするDNAのホモログは、機能的なDNAである可能性が高い。
本発明のDNAは、ベクターに挿入された形態であってもよい。ベクターとしては、植物細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はない。例えば、植物細胞内での恒常的な遺伝子発現を行うためのプロモーター(例えば、ジャガイモ・キチナーゼ遺伝子SK2のプロモーター、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター等)を有するベクターや外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを有するベクターを用いることも可能である。
上記DNAやベクターを導入する植物細胞の種類としては、例えば、イネ、小麦、大麦、トウモロコシ、ソルガム、サトウキビ等の単子葉植物、シロイヌナズナ、ナタネ、トマト、大豆、ジャガイモ、トレニア等の双子葉植物等があげられるがこれらに限定されない。
上記DNAやベクターが導入される植物細胞の形態は、植物体を再生しうるものであれば、特に制限はなく、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれる。
上記DNAやベクターの植物細胞への導入は、例えば、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポーレーション)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法等の当業者に公知の方法によって実施することができる。アグロバクテリウムを介する方法においては、例えばNagelらの方法(Nagel, R. et al. FEMS Microbiol Lett. 67, 1990, 325-328.)にしたがって、上記DNAが挿入された発現ベクターをアグロバクテリウムに導入し、このアグロバクテリウムを直接感染法やリーフディスク法で植物細胞に感染させることにより、上記DNAを植物細胞に導入することができる。
植物細胞からの植物体の再生は、植物の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である。例えば、イネであればFujimuraら(Fujimura. et al. Tissue Culture Lett. 2, 1995, 74.)の方法が挙げられ、小麦であればHarrisら(Harris, R. et al. Plant Cell Reports. 7, 1988, 337-340)の方法やOzgenら(Ozgen, M. et al. Plant Cell Reports. 18, 1998, 331-335)の方法が挙げられ、大麦であればKiharaとFunatsuki(Kihara, M. and Funatsuki, H. Breeding Sci. 44, 1994, 157-160.)の方法やLursとLorz(Lurs, R. and Lorz, H. Theor. Appl. Genet. 75, 1987, 16-25.)の方法が挙げられ、トウモロコシであればShillitoら(Shillito, R.D., et al. Bio/Technology, 7, 1989, 581-587.)の方法やGordon-Kammら(Gordon-Kamm, W.J. et al. Plant Cell. 2(7), 1990, 603-618.)の方法が挙げられ、ソルガムであればWenら(Wen, F.S., et al. Euphytica. 52, 1991, 177-181.)の方法やHagio(Hagio, T. Breeding Sci. 44, 1994, 121-126.)の方法が挙げられ、サトウキビであれば Ishida Y ら(Ishida Y, Saito H, Ohta S, Hiei Y, Komari T, Kumashiro T.(1996), Nat Biotechnol. 14(6):745-50)の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
またシロイヌナズナであればAkamaら(Akama. et al. Plant Cell Reports. 12, 1992, 7-11.)の方法が挙げられ、ナタネであればWangら(Wang, Y.P. et al. Plant Breeding. 124, 2005, 1-4.)の方法が挙げられ、トマトであればKoblitzとKoblitz(Koblitz, H and Koblitz, D. Plant Cell Reports. 1, 1982, 143-146.)の方法やMorganとCocking(Morgan, A. and Cocking, E.C. Z.Pflanzenpysiol. 106, 1982, 97-104.)の方法が挙げられ、大豆であればLazzeriら(Lazzeri, P.A. et al., Plant Mol. Biol. Rep. 3, 1985, 160-167.)の方法やRanchら(Ranch, J.P. et al., In Vitro Cell Dev. Biol. 21, 1985, 653-658.)の方法が挙げられ、ジャガイモであればVisserら(Visser, R.G.F. et al. Theor. Appl. Genet. 78, 1989, 594-600.)の方法が挙げられ、トレニアであればAida, Rら(Aida, R. and Shibata, M. (1995), Breed. Sci. 45:71-74)の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
なお、本発明の遺伝子が導入された植物細胞から植物体を再生する際には、カルスから再分化したT0植物体をホルモンフリー培地から抜いて、水耕液につけることが好ましい。通常の形質転換イネは、再分化したT0植物体をホルモンフリー培地に移植し1-2週置くと、根が出てくる。しかしながら本発明の遺伝子を過剰発現した植物では根が出てこない。本発明においては、ホルモンフリー培地上で植物体地上部を大きくした後水耕液(木村氏B液等)に移すことにより、徐々に根を発根・伸長させることができる。根が十分に伸長した後は土に移植し、通常の形質転換イネと同様に栽培することができる。すなわち本発明においては、土での栽培に先立ち水耕液で栽培することによって植物体を再生することができる。
一旦、ゲノム内に上記DNAやベクターが導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖又は無性生殖により子孫あるいはクローンを得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。
植物がリゾクトニア菌に対する抵抗性を有するか否かは、対照と比較することによって判断することが出来る。本発明において対照とは、本発明の植物体と同じ種の植物体であって、本発明のDNAが過剰発現していない植物体を意味する。本発明における対照は、本発明の植物体と同じ種の植物体であって本発明のDNAが過剰発現していないものである限り何ら限定されない。従って本発明の対照には、例えば本発明のOsPSR1タンパク質をコードするDNAとは異なるDNAが導入された植物体も含まれる。このような植物体の例としては、例えば、本発明の形質転換植物体と同じ種の植物体であって、本発明のDNA以外のDNAで形質転換された植物体、本発明のDNAの機能欠失変異導入のDNAで形質転換された植物体、本発明のDNAの機能抑制型に変換されたDNAで形質転換された植物体、本発明のDNAの機能発現に不十分な領域のDNA断片で形質転換された植物体などが挙げられるが、これらに制限されない。
通常、イネの紋枯病抵抗性検定(リゾクトニア菌に対する抵抗性の検定)は、出穂前の生殖成長期のイネを用いて行う。しかし本発明のOsPSR1で形質転換されたイネは、上述したように、アグロバクテリウム法でカルスからT0植物体を再分化させた後、ホルモンフリー培地で培養しても、根の伸長が起こらない。そのため本発明の形質転換植物の生育ステージを野生型のそれと合わせるのが難しい。そこで本発明においては、切葉の病斑長を指標に、植物体がリゾクトニア菌に抵抗性を有するかを判定することが好ましい。植物体がリゾクトニア菌に抵抗性を有するか否かは、リゾクトニア菌に感染した植物体の切葉の病斑長を測定し、対照(野生型の植物)と比較することにより判定することができる。リゾクトニア菌への感染は、リゾクトニア菌を培養した後、菌液を切葉にドロップしたり、植物体に塗布することにより行うことができる。形質転換植物における病斑長、あるいは葉長に対する病斑長の比が、対照におけるこれらと比較して統計的に有意に短くなった場合、OsPSR1で形質転換された植物体はリゾクトニア菌に対して抵抗性を有すると判定することができる。
リゾクトニア菌は極めて多犯性の病原菌であり、イネ紋枯病、ジャガイモ黒あざ病、サトウダイコン根腐病、シバ葉腐病、トマト苗立枯病等の病害を引き起こす。生活環は菌糸体だけで完結しており、長期間培養すると菌核を形成する。本発明におけるリゾクトニア菌としては、Rhizoctonia solaniを例示することができるが、上述の特徴を有する限り限定されない。
さらに本発明は、リゾクトニア菌に抵抗性である形質転換植物体を提供する。当該植物体は、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するOsPSR1遺伝子や当該遺伝子を含むベクターを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生することにより得られる。これらの具体的な方法は上に述べた。
一旦、染色体内に本発明のDNAが導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖又は無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから細胞や器官、繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等)を単離し、それらを基に該植物体を量産することも可能である。本発明には、本発明のDNAが人為的に導入された植物細胞、該細胞を含む植物体、該植物体の器官(例えば花、葉、根、茎等)、該植物体の子孫及びクローン、並びに該植物体及びその子孫及びクローンの繁殖材料が含まれる。これらの植物細胞、該細胞を含む植物体、該植物体の器官、該植物体の子孫及びクローン、並びに該植物体及びその子孫及びクローンの繁殖材料は、リゾクトニア菌に対して抵抗性を示す。これらは、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与するための材料として使用することができる。
本発明は、OsPSR1遺伝子あるいは当該遺伝子を発現可能に保持するベクターを含む、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与するための薬剤を包含する。本発明の薬剤に用いるDNAの形態に特に制限はなく、cDNAであってもゲノムDNAであってもよい。また、植物に導入された場合に当該植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与することが可能な限り、OsPSR1タンパク質をコードするDNAのみならず、該タンパク質に構造的に類似したタンパク質をコードするDNA(例えば、変異体、誘導体、アレル、バリアント及びホモログ)を用いることもできる。
本発明の薬剤に含まれるDNAは、ベクターに挿入された形態であってもよい。ベクターとしては、植物細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はない。例えば、植物細胞内での恒常的な遺伝子発現を行うためのプロモーター(例えば、ジャガイモ・キチナーゼ遺伝子SK2のプロモーター、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター等)を有するベクターや外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを有するベクターを用いることも可能である。
本発明の薬剤は、上記DNAや該DNAが挿入されたベクター自体であってもよく、また、これらが植物細胞への導入のための他の成分と混合されているものであってもよい。例えば、上記DNA、上記DNAを挿入したベクター、上記DNAが導入されたアグロバクテリウム、これらを含む生化学的試薬や溶液は、本発明における薬剤に含まれる。
なお本発明は、リゾクトニア菌に抵抗性を付与する限り、リゾクトニア菌以外の糸状菌或いは細菌に対して抵抗性を付与するものも含まれる。このような細菌としてトマト斑葉細菌病菌、糸状菌としてアブラナ科野菜類炭疽病菌などが挙げられるがこれらに限定されない。すなわち本発明は、以下の〔1〕〜〔8〕をも提供する。
〔1〕以下(a)及び(b)の工程を含む、植物に(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対する抵抗性を付与する方法;
(1)リゾクトニア菌、トマト斑葉細菌病菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(2)リゾクトニア菌及びトマト斑葉細菌病菌、
(3)リゾクトニア菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(a)以下(i)から(iv)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターを植物細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入された植物細胞から植物体を再生する工程、
(i)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(ii)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(iii)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、植物に(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(iv)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、植物に(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA。
〔2〕以下(a)から(d)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターを有効成分として含有する、植物に(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対する抵抗性を付与するための薬剤;
(1)リゾクトニア菌、トマト斑葉細菌病菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(2)リゾクトニア菌及びトマト斑葉細菌病菌、
(3)リゾクトニア菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、植物に(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(d)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、植物に(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA。
〔3〕以下(a)から(d)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターが導入された、(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対する抵抗性を有する形質転換植物体;
(1)リゾクトニア菌、トマト斑葉細菌病菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(2)リゾクトニア菌及びトマト斑葉細菌病菌、
(3)リゾクトニア菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、植物に(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(d)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、植物に(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA。
〔4〕〔3〕に記載の形質転換植物体の子孫又はクローンである、(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対して抵抗性である植物体;
(1)リゾクトニア菌、トマト斑葉細菌病菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(2)リゾクトニア菌及びトマト斑葉細菌病菌、
(3)リゾクトニア菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌。
〔5〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換植物体の繁殖材料であって、(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対して抵抗性である形質転換植物体の繁殖材料;
(1)リゾクトニア菌、トマト斑葉細菌病菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(2)リゾクトニア菌及びトマト斑葉細菌病菌、
(3)リゾクトニア菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌。
〔6〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換植物体から単離された細胞であって、(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対して抵抗性である細胞;
(1)リゾクトニア菌、トマト斑葉細菌病菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(2)リゾクトニア菌及びトマト斑葉細菌病菌、
(3)リゾクトニア菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌。
〔7〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換植物体から単離された器官であって、(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対して抵抗性である器官;
(1)リゾクトニア菌、トマト斑葉細菌病菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(2)リゾクトニア菌及びトマト斑葉細菌病菌、
(3)リゾクトニア菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌。
〔8〕以下(a)及び(b)の工程を含む、(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対して抵抗性である形質転換植物体の製造方法;
(1)リゾクトニア菌、トマト斑葉細菌病菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(2)リゾクトニア菌及びトマト斑葉細菌病菌、
(3)リゾクトニア菌及びアブラナ科野菜類炭疽病菌、
(a)以下(i)から(iv)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターを植物細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入された植物細胞から植物体を再生する工程、
(i)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(ii)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(iii)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、植物に(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(iv)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、植物に(1)又は(2)に記載の糸状菌および細菌もしくは(3)に記載の糸状菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA。
本発明においてトマト斑葉細菌病菌とは、Pseudomonas syringae pv.tomatoを指す。トマト斑葉細菌病は、トマトの果実,果柄,葉柄,葉身に発生する。葉では葉脈に沿った針頭大の褐色の小斑点を多数生ずるか,あるいはハローを伴った円い斑点を生ずる。斑点は融合して大型病斑になり,激しい場合は葉が枯れる。果実,果柄,葉柄ではかいよう状の斑点あるいは小さなしみ状斑点となる。
本発明においてアブラナ科野菜類炭疽病菌とは、子嚢菌類の糸状菌、Colletotrichum higginsianumを指す。アブラナ科野菜類炭疽病菌はカブ、コマツナ、ダイコン、チンゲンサイ等アブラナ科の野菜の葉に斑点を引き起こす。多湿下では病斑がぬれるように広がり、葉腐れを起こす。激しいと苗がとろけるように腐敗する。
また本発明者らは、OsPSR1を過剰発現するイネの種子は大粒であること、及び当該イネは稔性が著しく低いことを見出した。したがって本発明は、以下の〔1〕〜〔8〕をも提供する。
〔1〕以下(a)及び(b)の工程を含む、イネの種子の大きさを増加させる方法;
(a)以下(i)から(iv)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターをイネ細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入されたイネ細胞からイネを再生する工程、
(i)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(ii)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(iii)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、イネの種子の大きさを増加させる機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(iv)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、イネの種子の大きさを増加させる機能を有するDNA。
〔2〕以下(a)から(d)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターを有効成分として含有する、イネの種子の大きさを増加させるための薬剤;
(a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、イネの種子の大きさを増加させる機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(d)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、イネの種子の大きさを増加させる機能を有するDNA。
〔3〕以下(a)から(d)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターが導入された、種子の大きさが増加した形質転換イネ;
(a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、イネの種子の大きさを増加させる機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(d)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、イネの種子の大きさを増加させる機能を有するDNA。
〔4〕〔3〕に記載の形質転換イネの子孫又はクローンである、種子の大きさが増加した形質転換イネ。
〔5〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換イネの繁殖材料であって、種子の大きさが増加した形質転換イネの繁殖材料。
〔6〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換イネから単離された細胞。
〔7〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換イネから単離された器官。
〔8〕以下(a)及び(b)の工程を含む、種子の大きさが増加した形質転換イネの製造方法;
(a)以下(i)から(iv)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターをイネ細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入されたイネ細胞からイネを再生する工程、
(i)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(ii)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(iii)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、イネの種子の大きさを増加させるタンパク質をコードするDNA、及び
(iv)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、イネの種子の大きさを増加させる機能を有するDNA。
あるいは本発明は、以下の〔1〕〜〔8〕をも提供する。
〔1〕以下(a)及び(b)の工程を含む、イネの稔性を減少させる方法;
(a)以下(i)から(iv)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターをイネ細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入されたイネ細胞からイネを再生する工程、
(i)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(ii)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(iii)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、イネの稔性を減少させる機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(iv)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、イネの稔性を減少させる機能を有するDNA。
〔2〕以下(a)から(d)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターを有効成分として含有する、イネの稔性を減少させるための薬剤;
(a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、イネの稔性を減少させる機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(d)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、イネの稔性を減少させる機能を有するDNA。
〔3〕以下(a)から(d)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターが導入された、稔性が減少した形質転換イネ;
(a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、イネの稔性を減少させる機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(d)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、イネの稔性を減少させる機能を有するDNA。
〔4〕〔3〕に記載の形質転換イネの子孫又はクローンである、稔性が減少した形質転換イネ。
〔5〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換イネの繁殖材料であって、稔性が減少した形質転換イネの繁殖材料。
〔6〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換イネから単離された細胞。
〔7〕〔3〕又は〔4〕に記載の形質転換イネから単離された器官。
〔8〕以下(a)及び(b)の工程を含む、稔性が減少した形質転換イネの製造方法;
(a)以下(i)から(iv)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターをイネ細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入されたイネ細胞からイネを再生する工程、
(i)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(ii)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(iii)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、イネの稔性を減少させる機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
(iv)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、イネの稔性を減少させる機能を有するDNA。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
1.材料と方法
(1)イネFOXナズナ系統
トマト斑葉細菌病菌、アブラナ科野菜類炭疽病菌及びリゾクトニア菌に対し抵抗性を示すイネFOXシロイヌナズナ系統のスクリーニングにはイネFOXナズナ系統のT2種子を使用した。
(2)トマト斑葉細菌病菌抵抗性選抜
Pseudomonas syringae pv. tomato DC3000(Pst3000)を、改良型Dip法(Dubouzet et al.,2011)により、(0.5〜2)×108 CFU/mlの菌濃度で、イネFOXシロイヌナズナ系統に接種した。播種後3週間後のFOX系統を上記の菌液に浸し、6日後に生存の有無で選抜した。
(3) アブラナ科野菜類炭疽病菌抵抗性選抜
アブラナ科野菜類炭疽病菌にはC. higginsianumを用いた。感染は、Pst3000による選抜にも用いた改良型dip法で行った。感染液の分生子濃度は105〜106 conidia/mlである。感染6日後の生存の有無を指標に、アブラナ科野菜類炭疽病菌に抵抗性である系統を選抜した。
(4)リゾクトニア菌抵抗性選抜
リゾクトニア菌(R.solani)にはイネ紋枯病菌を用いた。9cmシャーレのPDA培地(ニッスイ)に継代3日後に、全体に広がった菌と培地全体を乳鉢に移し、50mlの滅菌水で破砕攪拌し接種液を作製した。シロイヌナズナは湿度ほぼ100%の加湿状態で土栽培したものを用いた。接種液をロゼット葉1枚につき5μlずつ、1植物体につき3葉ずつdrop接種した。接種後も加湿条件下で栽培し7日後に病斑長を測定した。評価は葉長に対する病斑長の比で比較した。
(5)トマト斑葉細菌病菌抵抗性及びアブラナ科野菜類炭疽病菌抵抗性の定量的評価
Pst3000抵抗性の定量的評価はDubouzet et al.,(2011)に記載の方法で行った。C. higginsianum抵抗性の定量的評価は、同菌を106conidia/mlの濃度でロゼット葉に10μl drop接種し、15日後の病斑長を測定することにより行った。
(6)形質転換イネの作製
イネの品種は日本晴を用いた。イネでの発現ベクターはpRiceFOX (Nakamura et al. 2007)を用いた。イネの形質転換はアグロバクテリウムEH105株を用いて高速形質転換法(Toki et al. 2006)で行った。
(7)イネ紋枯病抵抗性検定
止め葉より2番目、3番目の葉身を、それぞれ葉先側半分と葉基側半分に切断し、それぞれ接種に使用した。OsPSR1:OXイネはT0植物を使用した。シャーレ中の湿ったシートの上に切り葉を置き、上記のリゾクトニア菌接種液を1枚の葉につき20μlずつdropした。接種後25℃、14時間日長、加湿条件下に置き8日後に病斑長を測定した。
(8)形質転換トマトの作製
トマトの品種は矮性トマトのマイクロトムを用いた。アグロバクテリウムにはEHA105株を用いた。播種後7日目のトマト子葉片を前培養培地(1mg/Lゼアチン、3%スクロース、0.8%寒天を含むMS培地)で2日間前培養したものを外植片として用いた。アグロバクテリウムの接種は外植片を菌懸濁液に3分間浸漬した後、前培養培地上で2日間共存培養させることで行った。共存培養後の外植片は選抜培地(10mg/Lハイグロマイシン、200mg/Lカルベニシリンを含む前培養培地)に移植し、以降、カルスを経て不定芽が再分化するまで2週間おきに新しい選抜培地に移植しながら培養した。再分化した不定芽を発根培地(1%スクロース、0.8%寒天を含む1/2MS培地)上で発根させた後、鉢に入れた培養土に移植した。
(9)トマト斑葉細菌病抵抗性検定
播種後約5週間のトマト植物体をPst3000菌液(5×108cfu/ml)に20秒間浸し、6日後に接種葉の病徴を観察した。定量的な検定では、Pst3000菌液(2×108cfu/ml)に20秒間浸し、3日後に接種葉を磨砕し、磨砕液を希釈してプレートにまくことにより、植物体内の生菌数を計測した。
2.結果
(1)トマト斑葉細菌病菌抵抗性選抜
イネFOXナズナ系統約21,000系統を対象にスクリーニングを行い、最終的にPst3000抵抗性を示す85系統を選抜した。
(2)アブラナ科野菜類炭疽病菌抵抗性選抜
上記の85系統について更にC. higginsianum抵抗性検定を行い、両菌に対して複合抵抗性を示す系統があるかどうか調べた。その結果、18系統で複合抵抗性が確認された。これらの系統についてゲノムDNAを抽出し、挿入されているイネ完全長cDNAをPCRで増幅して末端の塩基配列を決定することにより遺伝子を同定した。
(3)再導入過剰発現シロイヌナズナの作製
上記18系統の挿入遺伝子を同定後、一部のcDNAについては農業生物資源研究所のイネゲノムリソースセンターより完全長cDNAを取寄せ、イネFOXナズナ系統作製に用いられたpBIG2113SFベクター(Kondou et al., 2009)のSfiIサイトに連結した。得られたプラスミドをアグロバクテリウムGV3101に導入し、シロイヌナズナにFloral dip法で導入することにより再導入過剰発現シロイヌナズナ系統を作製した。
(4)リゾクトニア菌抵抗性選抜
上記の再導入系統を用いて更にR.solani抵抗性検定を行い、抵抗性を示す系統を取得した。抵抗性を示した系統は、OsPSR1(AK072163,Os08g0547300)の再導入系統であった(図1)。さらにOsPSR1再導入系統はPst3000抵抗性、C. higginsianum抵抗性を示すことを定量的評価法で確認した(図2)。Blastによる相同性解析から、OsPSR1は新規のチトクロームP450タンパク質をコードしていることが明らかになった。既知タンパク質ではシロイヌナズナのCYP78A9(AT3G61880),CYP78A6(AT2G46660)と相同性が最も高かった。これらの遺伝子が花、鞘等の生殖器官や種子の形態形成に関与する報告はあるものの、病害抵抗性に関しては何ら報告されていない(Ito et al.,2000; Fang et al.,2012)。
(5)OsPSR1過剰発現シロイヌナズナの形態
OsPSR1過剰発現シロイヌナズナの草丈はWTより高く(図3a)、花は大きかった(図3b)。花は花弁、がく片、雄ずい、雌ずい共に大きかった。また鞘は長く、種子は大粒で稔性は低かった。胚軸と葉柄は長く、葉は上扁成長をしていた。
(6)過剰発現イネの作製及び病害抵抗性検定
上記1.(6)の方法によりOsPSR1遺伝子(AK072163)を過剰発現するイネの再分化苗をホルモンフリー培地上で得ることができたが、高発現の苗は何故か根が出てこず、これらは土に移植することは無理であった。そこで再分化苗を水耕液(木村氏B液)に移し水耕栽培を行うと、徐々に根の発根・伸長が認められた。根が十分伸長後、土に移植し通常の形質転換イネと同様に栽培した。イネ紋枯病抵抗性検定はOsPSR1を高発現するイネのT0世代で行い、ほぼ同様の大きさ、生育ステージのイネ(日本晴)を対照として用いた。菌を接種後、WTの日本晴では病徴が拡大していくのに対し、過剰発現体ではほとんど拡大が認められなかった。したがってOsPSR1遺伝子を過剰発現するイネは、紋枯病に抵抗性であることが示された(図4)。なおOsPSR1過剰発現イネの種子は大粒で稔性が著しく低かった。
(7)過剰発現トマトの作製及び病害抵抗性検定
OsPSR1遺伝子(AK072163)を過剰発現するトマト(マイクロトム)を作製し、T1世代でトマト斑葉細菌病抵抗性検定を行った。接種後、WTのトマト葉では病徴が拡大していくのに対し、過剰発現体ではほとんど拡大が認められなかった。さらに、植物体内の生菌数を計測すると過剰発現体では有意に少なかった。したがって、OsPSR1過剰発現トマトはトマト斑葉細菌病に抵抗性であることが示された(図5)。なお、過剰発現トマトの形態はWTと大きな違いは認められなかった。
本発明によりイネやシロイヌナズナなどの植物に病原担子菌R.solaniに対して抵抗性の形質を与える新規遺伝子OsPSR1が提供された。OsPSR1を植物に導入することにより、リゾクトニア菌をはじめとする複数の病原細菌に対する抵抗性の付与が期待できる。本発明は、植物の病害抵抗性を増強して耐病性作物を作出するとともに、減農薬の農業の分野において有用である。

Claims (2)

  1. 以下(a)及び(b)の工程を含む、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する方法;
    (a)以下(i)から(iv)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターを植物細胞に導入する工程、及び
    (b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入された植物細胞から植物体を再生する工程、
    (i)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
    (ii)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
    (iii)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは50以内のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
    (iv)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、配列番号:1又は2に記載の塩基配列に対し90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA。
  2. 以下(a)から(d)からなる群より選択されるDNA又は該DNAを含むベクターを有効成分として含有する、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与するための薬剤;
    (a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
    (b)配列番号:1又は2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
    (c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1もしくは50以内のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNA、及び
    (d)配列番号:1又は2に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、配列番号:1又は2に記載の塩基配列に対し90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、植物にリゾクトニア菌に対する抵抗性を付与する機能を有するDNA。
JP2014560785A 2013-02-05 2014-02-05 リゾクトニア菌抵抗性遺伝子 Expired - Fee Related JP6210603B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013020066 2013-02-05
JP2013020066 2013-02-05
PCT/JP2014/052684 WO2014123157A1 (ja) 2013-02-05 2014-02-05 リゾクトニア菌抵抗性遺伝子

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2014123157A1 JPWO2014123157A1 (ja) 2017-02-02
JP6210603B2 true JP6210603B2 (ja) 2017-10-11

Family

ID=51299749

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014560785A Expired - Fee Related JP6210603B2 (ja) 2013-02-05 2014-02-05 リゾクトニア菌抵抗性遺伝子

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6210603B2 (ja)
WO (1) WO2014123157A1 (ja)

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005185101A (ja) * 2002-05-30 2005-07-14 National Institute Of Agrobiological Sciences 植物の全長cDNAおよびその利用

Also Published As

Publication number Publication date
WO2014123157A1 (ja) 2014-08-14
JPWO2014123157A1 (ja) 2017-02-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2465933B1 (en) Disease-inducible promoters
Wang et al. Functional analysis of OsPGIP1 in rice sheath blight resistance
US20130019334A1 (en) Corn event mzdt09y
US11479784B2 (en) Modulation of seed vigor
WO2013020486A1 (zh) 一种植物抗高温基因及其应用
WO2014069339A1 (ja) 植物に多収性を付与する核酸、収量が増加した形質転換植物を作製する方法、植物の収量を増大させる方法
EP1992219B1 (en) Plant having improved growth ability and disease resistance and method for production thereof
US10017779B2 (en) Gene implicated in abiotic stress tolerance and growth accelerating and use thereof
CN109068642B (zh) 含有三磷酸腺苷双磷酸酶基因组合的改良植物和用于制备具有三磷酸腺苷双磷酸酶组合的改良植物的方法
JP5591703B2 (ja) 広範な病害抵抗性を付与するイネ遺伝子
CN115927370A (zh) 海刀豆CrHsf2基因及其应用
JP6210603B2 (ja) リゾクトニア菌抵抗性遺伝子
US7105654B1 (en) Ethylene receptor gene from Glycine max and its use
US7405346B2 (en) Gene capable of imparting salt stress resistance
JP5858368B2 (ja) 農業形質を最適化した複合病害抵抗性単子葉植物
KR102230148B1 (ko) 식물의 저온 스트레스 내성을 증진시키는 조성물 및 이를 이용한 형질전환 식물체
EP2840141A1 (en) Gene implicated in abiotic stress tolerance and growth accelerating and use thereof
KR101438738B1 (ko) 비생물학적 스트레스 내성 및 생장 촉진 관련 유전자 및 그의 용도
KR101446253B1 (ko) 비생물학적 스트레스 내성 및 생장 촉진 관련 유전자 및 그의 용도
WO2002048378A2 (en) Enhancement of freezing tolerance in transgenic plants
KR20190118471A (ko) CaUBP12를 이용한 식물체의 건조 스트레스 저항성 증진방법
MALIK Development of transgenic wheat (Triticum aestivum L.) for drought tolerance
KR20140102637A (ko) 비생물학적 스트레스 내성 및 생장 촉진 관련 유전자 및 그의 용도
CA2426948A1 (en) Enhancement of freezing tolerance in transgenic plants
US20130217019A1 (en) Corn event mzdt09y

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170628

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170724

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170907

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170908

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6210603

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees