JP6206739B2 - タービンブレードの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱間鍛造にてタービンブレード用素材を製造する際に用いる、タービンブレード用予備成形体及びタービンブレードの製造方法に関するものである。
近年、蒸気タービンの高効率化の要請により、蒸気タービンに用いられるタービンブレードも長尺化してきている。約1500mmを超える長尺のタービンブレード用素材を製造する場合では、素材を上型と下型の間に挟み込んで、大型のプレス鍛造でタービンブレード用素材に成形する方法が主流である。
この大型タービン翼を製造する方法として、例えば、特開昭63−241118号公報(特許文献1)に開示されているような、三次元形状に複雑に捩れた大型タービン翼を鍛造により製造する方法において、翼根から翼先端に亘って水平状態を維持したまま型鍛造し、該型鍛造終了後タービン翼に所要の捩り加工を施し、かかる状態下において強制拘束矯正を行った後拘束状態で熱処理する大型タービン翼の製造方法の発明がある。
また、タービンブレード用予備成形体に着目した発明としては、例えば、特公平3−136号公報(特許文献2)に開示されているような、単純形状の素材を用い、翼部はダイスにより、一方、翼根部は密閉金型内に前後方押出により成形し、かつ、さらにつば部を据え込みにより成形するタービンブレード用予備成形体の成形方法の発明がある。
特開昭63−241118号公報 特公平3−136号公報
上述した特許文献1に記載の方法では、捩り加工という特殊な加工が必要であり、加工の工数が増えることから経済的ではない。効率よくブレード用素材を熱間鍛造で得ようとするのであれば、ニアネット形状の金型を用いて熱間鍛造を行うのが有利である。しかし、特許文献2で示されるようなタービンブレード用予備成形体では、金型にタービンブレード用予備成形体を載置した際に位置決めを行う手段がないことから、ニアネット形状の金型を用いて熱間鍛造すると位置ずれを起こして欠肉等の欠陥を生じるおそれがある。また、この欠肉を防止するにはタービンブレード用予備成形体の重量を大きくする方法もあるが、歩留まりが悪くなるだけでなく、熱間鍛造時の荷重も大きくなってしまう。
ところで、従来の技術において、タービンブレード用予備成形体の位置決めや、熱間鍛造時の位置ずれを防止する手段に着目されていないのには理由がある。その理由の一つとして、大型の鍛造品を数万トンの荷重で、しかも、1ブローで製造するといった新規な課題に直面していないことが挙げられる。最近では、5万トンクラスの大型熱間鍛造機で大型の製品を熱間鍛造で製造することが始まっている。このような従来にない大型熱間鍛造機で、効率よく欠陥の無い製品を製造する場合、それに用いるタービンブレード用予備成形体の形状を適正にしないと、熱間鍛造後のタービンブレード用素材に欠肉等が発生するといった課題に直面した。
本発明の目的は、大型の熱間鍛造機を用いても金型の位置決めも容易なタービンブレード用予備成形体及びタービンブレードの製造方法を提供することである。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものである。
すなわち本発明は、熱間鍛造されて翼部と根部とを有するタービンブレード用素材となるタービンブレード用予備成形体であって、前記タービンブレード用予備成形体は、鍛造されて翼部になる部分と根部になる部分とが一体に成形された本体部を有し、前記本体部の軸方向の両端部にはそれぞれ軸方向に突出する突起部を備えるタービンブレード用予備成形体である。
また、前記突起部は、前記本体部に接合されていることが好ましい。
また、前記突起部の接合がネジによる嵌め合わせ、及び/または、溶接によって接合されていることが好ましい。
更に前記本体部の材質がTi合金であることが好ましい。
また本発明は、タービンブレード用予備成形体を熱間鍛造型に配置して、熱間鍛造を行い、翼部と根部とを有するタービンブレード用素材を製造する方法であって、前記タービンブレード用予備成形体は、熱間鍛造されて翼部になる部分と根部になる部分とが一体に成形されており、軸方向に厚みの異なる部分を有する本体部と、前記軸方向の両端部にはそれぞれ軸方向に突出する突起部が形成されており、前記熱間鍛造型は上型と下型とを有し、タービンブレードの翼部と根部を形成する型彫り面が形成されており、前記下型にはタービンブレード用予備成形体を配置したときに前記突起部が配置される位置決め溝を有し、前記突起部を前記位置決め溝に配置して、前記タービンブレード用予備成形体を前記下型に配置し、前記上型の押圧により熱間鍛造を行うタービンブレードの製造方法である。
また、前記本体部の材質がTi合金であることが好ましい。
本発明のタービンブレード用予備成形体によれば、予備成形体の本体部の長手方向の軸となる両方の箇所に熱間鍛造位置を決める位置決め部が形成されていることから、鍛造中に予備成形体が位置ずれをおこすおそれがない。そのため、本発明のタービンブレード用予備成形体を用いて熱間鍛造を行うと、欠肉等の欠陥を防止するとともに、予備成形体の重量も軽減でき、歩留まりを向上させることができる。
本発明のタービンブレード用予備成形体の一例を示す模式図である。 本発明のタービンブレード用予備成形体を下型に設置したときの一例を示す模式図である。
本発明を図面を用いて詳しく説明する。
図1は本発明の一例を示すタービンブレード用予備成形体1の模式図である。このタービンブレード用予備成形体1は、熱間鍛造によって翼部になる部分と根部になる部分とが一体に成形されており、軸方向に径の異なる部分を有する本体部2と、前記本体部両端部にはそれぞれ軸方向に突出する突起部3が形成されている。なお、軸方向とは図1に示すように、タービンブレード用予備成形体1の中心軸の方向を言う。なお、軸方向に厚みの異なる部分は、前記の翼部と根部に成形するために径が変化している場所である。
軸方向の両端部にはそれぞれ軸方向に突出する突起部3が形成されている。該突起部3は、図2に示す下型4に設けられた位置決め溝5に設置される。位置決め溝5は、予め、熱間鍛造によって欠肉等の欠陥を生じない箇所に設けられている。そして、突起部3によって、熱間鍛造前にタービンブレード用予備成形体1を所定の位置に載置し、更に、熱間鍛造時にタービンブレード用予備成形体1が熱間鍛造型内で位置ずれを起こすのを防止する。特に、数万トン規模の大きな荷重で、しかも、1ブローで製造しようとすると、熱間鍛造型(上型及び下型)内で、狙い通りの場所から順次押圧が開始されなければ、欠肉等の欠陥となり易い。これを防止するため、熱間鍛造用金型の所望の位置に載置し、熱間鍛造時には所望の押圧場所から順序良く熱間鍛造を行うために、突起部の形成は必要不可欠である。
前述の突起部の形成は、本体部とは別な部品として本体部に接合するのが好ましい。本発明の突起部は、所謂“つかみ代”とは異なり、“位置決め用部材”として機能するものである。そのため、所定の場所に突起部を設けることが重要となる。例えば、熱間鍛造等の熱間加工で本体部と突起部とを一体物として成形しようとすると、突起部が本体部の所望の位置から外れる可能性が高くなる。これに対し、別な部品として本体部に接合すると、確実に所望の位置に突起部を接合することができる。なお、別部品の突起部を本体部に接合する位置は、突起部が接合する面側の本体部の中心位置であれば良い。好ましくは、本体部の中心軸上に接合するのが良い。これにより、より確実に位置ずれを防止し、欠肉等の欠陥を防止することが可能となる。
また、突起部の材質としては、本体部の材質と同一とするのが好ましい。これは、突起部は熱間鍛造後のタービンブレード用素材からバリとともに除去されたとき、バリと共にリサイクルの原料として再利用することができるためである。
また、突起部の接合の方法としては、ネジによる嵌め合わせ、或いは/更に、溶接によって接合するのが簡便である。勿論、ネジによる嵌め合せの後、溶接を行っても良い。また、溶接のみで突起部を接合する場合は、生産性を高めることが可能な摩擦圧接を適用するのが好ましい。
なお、突起部の寸法は、直径が40mm以上の円柱状のものであれば良い。円柱状とするのは、熱間鍛造用金型に形成された位置決め溝への載置が容易であるためである。また、過度に突起部の直径が細くなると、タービンブレード用予備成形体の熱間鍛造温度への加熱時に撓み等の変形を生じるおそれがある。そのため、突起部の直径は40mm以上が良い。突起部の直径の上限は特に限定しないが、50mm以下であれば十分である。突起部は位置決めと、熱間鍛造開始後に熱間鍛造用金型の所望の位置に本体部を設置するものであるため、過度に太い直径の突起部を用いてもコストを上昇させるだけである。
上述する本発明の本体部はTi合金であることが好ましい。Ti合金製のタービンブレードは、今後ますます長翼化、大型化することが予想されることから、本発明のタービンブレード用予備成形体の適用が好適である。
なお、本発明で言う熱間鍛造とは、熱間プレス、ホットダイ鍛造、恒温鍛造を含むものとする。
本発明のタービンブレードの製造方法について実施例で示しながら説明する。
先ず、図1に示すようなタービンブレード用予備成形体1を2本用意した。材質は2本ともTi合金である。50インチクラスのタービンブレード用予備成形体1は、本体部2の断面形状を円形状とし、翼部と根部に成形するために体積を変化させた形状である。なお、今回の実施例では、断面形状を円形状としたが、例えば、更に長尺のタービンブレード用素材を得ようとすると、断面は矩形状であっても良い。
前記のタービンブレード予備成形体のうち、1本については本体部1の中心軸の延長線上の翼部側端面と根部側端面にネジ加工を行った。更に、突起部とする直径が40mmの円筒状のTi合金製の突起部3にもネジ加工を行って、本体部と突起部とをネジ止めし、更に溶接を行って、本体部2と突起部3とを接合させて、タービンブレード用予備成形体1とした。なお、突起部のTi合金と本体部のTi合金は共に同一組成である。
また、前記のタービンブレード予備成形体のうち、残りの1本については本体部1の中心軸の延長線上の翼部側端面と根部側端面を研削して、直径が40mmの円筒状の突起部用のTi合金を摩擦圧接にて本体部2と接合させて、本体部1の中心軸の延長線上に突起部を有するタービンブレード用予備成形体1とした。摩擦圧接を適用したものは、前記のネジ止めしたものと比較し、ネジ加工工程が省略でき、工数削減となった。なお、突起部のTi合金と本体部のTi合金は共に同一組成である。
次に、熱間鍛造型(上型と下型)を用意した。1ブローの熱間鍛造にて、ニアネット形状のタービンブレード用素材とするため、熱間鍛造型翼部と根部を形成する型彫り面が形成されたものを用いた。このとき、図2(上面図、側面図)に示すように、下型4にはタービンブレード用予備成形体1を配置したときに前記突起部3が配置される位置決め溝5を有するものを用いた。
次に、前記のタービンブレード用予備成形体に潤滑剤を被覆し、鍛造温度940℃に加熱して、タービンブレード用予備成形体1の突起部3を位置決め溝5に配置するようにタービンブレード用予備成形体1を下型4に配置した。配置後の状態は図2に示すような状態であった。なお、加熱時に突起部の変形は生じなかった。
続いて、上型(図示しない)の押圧により1ブローで熱間鍛造を行った。熱間鍛造は本体部と突起部とをネジ止めしたタービンブレード用予備成形体から開始し、次に本体部と突起部とを摩擦圧接したタービンブレード用予備成形体の順に行った。用いた熱間鍛造機は最大荷重が5万トンの大型熱間鍛造機である。熱間鍛造中に突起部の観察を行ったが、特に熱間鍛造中にタービンブレード用予備成形体が位置ずれを起こした形跡は見られず、所望の形状のタービンブレード用素材を得ることができた。なお、本体部と突起部との接合方法の差異に関係なく、バリは50mm程度はみだしおり、その厚さが8mm程度であり、歩留まりも良好であった。また、熱間鍛造時の荷重も4万トン程度であり、問題なく熱間鍛造が行えた。
この作業を複数回実施したが、何れのタービンブレード用素材も欠陥なく熱間鍛造が行えた。
以上の結果から、予備成形体の本体部の長手方向の軸となる両方の箇所に熱間鍛造位置を決める位置決め部が形成されていることから、鍛造中に予備成形体が位置ずれをおこすこともなく、欠肉等の欠陥を防止することができる。また、予備成形体の重量も軽減でき、歩留まりを向上させることができることは明らかである。
1 タービンブレード用予備成形体
2 本体部
3 突起部
4 下型
5 位置決め溝

Claims (2)

  1. タービンブレード用予備成形体を熱間鍛造型に配置して、熱間鍛造を行い、翼部と根部とを有するタービンブレードを製造する方法であって、
    前記タービンブレード用予備成形体は、熱間鍛造されて翼部になる部分と根部になる部分とが一体に成形されており、軸方向に厚みの異なる部分を有する本体部と、前記軸方向の両端部にはそれぞれ軸方向に突出する突起部が前記本体部の中心位置に形成されており、前記本体部と前記突起部の材質は同一であって、
    前記熱間鍛造型は上型と下型とを有し、タービンブレードの翼部と根部を形成する型彫り面が形成されており、前記下型にはタービンブレード用予備成形体を配置したときに前記突起部が配置される位置決め溝を有し、
    前記突起部を前記位置決め溝に配置して、潤滑剤で被覆して鍛造温度に加熱した前記タービンブレード用予備成形体を前記下型に配置し、前記上型の1回の押圧により熱間鍛造を行うことを特徴とするタービンブレードの製造方法。
  2. 前記本体部の材質がTi合金であることを特徴とする請求項に記載のタービンブレードの製造方法。
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