本主題は、本明細書に含まれる好ましい実施形態および実施例の以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解することができる。
詳細な説明
I.定義
本出願の範囲内では、別段の指定のない限り、本出願の用語の定義および技法の実例は、いくつかの周知の参考文献、例えば:Sambrook、J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年);Goeddel、D.編、Gene Expression Technology、Methods in Enzymology、185巻、Academic Press、San Diego、CA(1991年);「Guide to Protein Purification」Deutshcer、M.P.編、Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1989年);Innisら、PCR Protocols:A guide to Methods and Applications、Academic Press、San Diego、CA(1990年);Freshney、R.I.、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique、第2版、Alan Liss、Inc. New York、NY(1987年);Murray、E.J.編、Gene Transfer and Expression Protocols、109〜128頁、The Humana Press Inc.、Clifton、NJおよびLewin、B.、Genes VI、Oxford University Press、New York(1997年)などのいずれかにおいて見ることができる。
本明細書で使用される単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」は、別段の指定のない限り、複数の参照対象を含む。例えば、「a(1つの)」モジュレーターペプチドは、1つ以上のモジュレーターペプチドを包含する。
本明細書で使用される化合物は、化合物を被験体に投与すると、血漿副甲状腺ホルモン(PTH)が、化合物を投与する前の血漿PTH濃度と比較して低減する場合に、「副甲状腺ホルモンレベルを減少させる活性」または「PTHを低減させる活性」を有する。一実施形態では、PTHレベルの減少は、化合物を投与した1時間後に、化合物を投与する前のPTHレベルよりも少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%低いことである。
本明細書で使用される、「ヒスタミン応答がないこと」または「ヒスタミン応答の欠如」は、本明細書に記載のアッセイにおいてin vitroで測定したところ、15倍、14倍、13倍、12倍、11倍、10倍、9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、または3倍未満のヒスタミンの増加をもたらす化合物の用量を意味する。倍数変化は、化合物と一緒にインキュベートする前のヒスタミンレベルおよび化合物と一緒に15分間インキュベートした後のヒスタミンレベルに基づいて決定する。
本明細書で使用される、「被験体」とは、ヒト被験体または動物被験体を指す。ヒト被験体は、「患者」と称することもできる。
本明細書で使用される、「治療有効量」とは、所望の治療効果をもたらすために必要な量である。例えば、状態を処置するための方法において、治療有効量は、状態の発生を阻害する、減少させるまたは逆転させる量である。一態様では、治療有効量とは、血清クレアチニンレベルを減少させるまたは血清クレアチニンレベルの増加を予防するカルシウム模倣化合物の量を意味する。別の態様では、治療有効量とは、血管もしくは他の軟部組織の石灰化の量を低下させる、または血管もしくは他の軟部組織の石灰化の進行を遅らせるカルシウム模倣化合物の量を意味する。別の態様では、治療有効量とは、PTH受容体の発現を増加させる、またはPTH受容体の発現の減少を遅らせるカルシウム模倣化合物の量を意味する。別の態様では、治療有効量とは、肥大した副甲状腺のサイズまたは重量を低下させる、または副甲状腺肥大の進行を遅らせるカルシウム模倣化合物の量を意味する。別の態様では、治療有効量とは、血管または他の軟部組織の石灰化の量を低下させる、または血管または他の軟部組織の石灰化の進行を遅らせるカルシウム模倣化合物の量を意味する。高カルシウム血症の被験体における血清カルシウムを低下させるための方法では、治療有効量は、血清カルシウムレベルを少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%または25%低下させるために必要な量である。カルシウムは、総カルシウムとしてまたはカルシウムイオンとして測定することができる。別の例として、in vivoでPTHを低減させるための方法では、治療有効量は、PTHレベルを少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%または25%低下させるために必要な量である。
本明細書で使用される、「処置」または「処置すること」という用語は、病的状態の発生を阻害する、減少させるまたは逆転させる量の化合物または薬学的組成物を必要とする人への投与を包含する。疾患および障害の処置とは、本明細書では、本発明の化合物(またはその薬学的塩、誘導体もしくはプロドラッグ)または該化合物を含有する薬学的組成物を、それを必要とすると考えられる被験体(すなわち、動物、例えばヒトなどの哺乳動物)への治療的投与も包含するものとする。処置とは、化合物または薬学的組成物を、それを必要とすると診断されていない被験体への投与、すなわち、被験体への予防的投与も包含する。一般に、被験体は、免許を持つ医師および/または権限を与えられた医療実践者によって最初に診断され、本発明の化合物(複数可)または組成物の投与による予防的処置および/または治療的処置のためのレジメンを提案、推奨または処方される。
本明細書で使用される、「経皮的」という用語は、本明細書に記載の処置方法では、治療有効量のカルシウム模倣剤を皮膚に塗布して化合物を体循環に送達し、このようにして所望の治療効果を実現することを意味する。
本明細書で使用される、「アミノ酸」は、天然アミノ酸および非天然アミノ酸を指す。20種の天然に存在するアミノ酸(L−異性体)は接頭辞「L−」を持つ(アキラルであるグリシン以外)3文字コード、また大文字の1文字コードで示される:アラニン(「L−Ala」または「A」)、アルギニン(「L−Arg」または「R」)、アスパラギン(「L−Asn」または「N」)、アスパラギン酸(「L−Asp」または「D」)、システイン(「L−Cys」または「C」)、グルタミン(「L−Gln」または「Q」)、グルタミン酸(「L−Glu」または「E」)、グリシン(「Gly」または「G」)、ヒスチジン(「L−His」または「H」)、イソロイシン(「L−Ile」または「I」)、ロイシン(「L−Leu」または「L」)、リジン(「L−Lys」または「K」)、メチオニン(「L−Met」または「M」)、フェニルアラニン(「L−Phe」または「F」)、プロリン(「L−Pro」または「P」)、セリン(「L−Ser」または「S」)、トレオニン(「L−Thr」または「T」)、トリプトファン(「L−Trp」または「W」)、チロシン(「L−Tyr」または「Y」)およびバリン(「L−Val」または「V」)。L−ノルロイシンおよびL−ノルバリンは、それぞれ(NLeu)および(NVal)と表すことができる。キラルである19種の天然に存在するアミノ酸は、接頭辞「D−」を持つ3文字コードまたは小文字の1文字コードで示される対応するD−異性体を有する:アラニン(「D−Ala」または「a」)、アルギニン(「D−Arg」または「r」)、アスパラギン(「D−Asn」または「a」)、アスパラギン酸(「D−Asp」または「d」)、システイン(「D−Cys」または「c」)、グルタミン(「D−Gln」または「q」)、グルタミン酸(「D−Glu」または「e」)、ヒスチジン(「D−His」または「h」)、イソロイシン(「D−Ile」または「i」)、ロイシン(「D−Leu」または「l」)、リジン(「D−Lys」または「k」)、メチオニン(「D−Met」または「m」)、フェニルアラニン(「D−Phe」または「f」)、プロリン(「D−Pro」または「p」)、セリン(「D−Ser」または「s」)、トレオニン(「D−Thr」または「t」)、トリプトファン(「D−Trp」または「w」)、チロシン(「D−Tyr」または「y」)およびバリン(「D−Val」または「v」)。D−ノルロイシンおよびD−ノルバリンは、それぞれ(dNLeu)および(dNVal)と表すことができる。「アミノ酸残基」は、多くの場合、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の単量体サブユニットに関して使用され、「アミノ酸」は、多くの場合、遊離分子に関して使用されるが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は、重複および変動する。「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という用語は互換的に使用され、文脈に応じてペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の遊離分子または単量体サブユニットを指す場合がある。
2つのアミノ酸配列のパーセント「相同性」またはパーセント「同一性」を決定するために、最適に比較する目的で配列を位置合わせする(例えば、一方のポリペプチドの配列に、他方のポリペプチドと最適に位置合わせするためのギャップを導入することができる)。次に、対応するアミノ酸位のアミノ酸残基を比較する。一方の配列における位置を、他方の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基が占める場合に、それらの分子はその位置において同一である。本明細書で使用されるアミノ酸または核酸の「相同性」は、アミノ酸または核酸の「同一性」に相当する。したがって、2つの配列間のパーセント配列同一性は、それらの配列が共有する同一の位置の数の関数である(すなわち、パーセント配列同一性=同一の位置の数/位置の総数×100)。2つのポリペプチド配列間のパーセント配列同一性は、Vector NTI ソフトウェアパッケージ(Invitrogen Corporation、5791 Van Allen Way、Carlsbad、CA 92008)を使用して決定することができる。ギャップ開始ペナルティ10およびギャップ伸長ペナルティ0.1を、2つのポリペプチドのパーセント同一性を決定するために使用する。他のパラメータは全て初期設定に設定する。
「カチオン性アミノ酸」は、例えば側鎖、または「R基」が、生理的なpHでプロトンを受け取って正に荷電し得るアミン官能基または他の官能基、例えばグアニジン部分またはイミダゾール部分などを含有するアミノ酸残基の場合のように、生理的なpH(7.4)で正味の正電荷を有するアミノ酸残基を意味する。カチオン性アミノ酸残基としては、アルギニン、リジン、ヒスチジン、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)、2,4−ジアミノ酪酸(Dab)、オルニチン、およびホモアルギニンが挙げられる。
「カチオン性サブユニット」は、生理的なpH(7.4)で正味の正電荷を有するサブユニットを意味する。
「非カチオン性アミノ酸」とは、例えば、側鎖、または「R基」が中性(中性極性および中性非極性)のアミノ酸残基および酸性のアミノ酸残基の場合のように、生理的なpH(7.4)で電荷を有さない、または正味の負電荷を有するアミノ酸残基を意図する。非カチオン性アミノ酸としては、炭化水素アルキル部分または芳香族部分であるR基を持つ残基(例えば、バリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン);中性の、極性R基を持つ残基(アスパラギン、システイン、グルタミン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン);または中性の、非極性R基を持つ残基(グリシン、メチオニン、プロリン、バリン、イソロイシン)が挙げられる。酸性のR基を持つ非カチオン性アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
本明細書で使用される、「保存されたアミノ酸置換」は、選択されたポリペプチドまたはタンパク質の活性または三次構造物に顕著な変化をもたらさない置換である。そのような置換は、一般には、選択されたアミノ酸残基を同様の物理化学的性質を有する異なるアミノ酸残基と交換することを含む。アミノ酸およびアミノ酸残基を物理化学的性質によってグループ化することは、当業者に公知である。例えば、天然に存在するアミノ酸の中で、同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されており、それらとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。
「サブユニット」とは、2つ以上の他の単量体単位に結合してポリマー化合物を形成する単量体単位を意図し、サブユニットはポリマー化合物の要素の最も短い繰り返しパターンである。例示的なサブユニットはアミノ酸であり、それが連結すると、当技術分野でペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質と称されるものなどのポリマー化合物が形成される。
本明細書で使用される、「化学的架橋」は、2つ以上の分子の共有結合を指す。
ペプチドまたはペプチド断片は、それが少なくとも1つの、親ペプチドまたは親ポリペプチドの5つのアミノ酸残基、より好ましくは8つのアミノ酸残基の連続した配列と同一または相同であるアミノ酸配列を有する場合に、親ペプチドまたは親ポリペプチドに「由来する」。
本明細書で使用される、「副甲状腺機能亢進症」という用語は、別段の指定のない限り、原発性の、二次性の、および三次性の副甲状腺機能亢進症を指す。
「皮内の」という用語は、本明細書に記載の治療方法では、治療有効量のカルシウム模倣化合物を皮膚に塗布して化合物を角質層の下の皮膚の層に送達し、このようにして所望の治療効果を実現することを意味する。
本明細書で使用される、「単離された」または「精製された」ポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分は、組換えDNA技法によって産生された場合は、細胞材料の一部を、または、化学的に合成された場合は、化学的前駆体もしくは他の化学物質を含まない。「細胞材料を実質的に含まない」という言葉は、ポリペプチドが、それが天然に生じた、または組換えによって産生された細胞の細胞構成成分の一部から分離されているポリペプチド調製物を包含する。ポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分が組換えによって産生される場合、培地を実質的に含まない、すなわち、培地が、ポリペプチド調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、および最も好ましくは約5%未満に相当することも好ましい。「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言葉は、ポリペプチドが、ポリペプチドの合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から分離されているポリペプチド調製物を包含する。一実施形態では、「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言葉は、約30%未満の(乾燥重量で)化学的前駆体または他の化学物質、好ましくは約20%未満の化学的前駆体または他の化学物質、より好ましくは約15%未満の化学的前駆体または他の化学物質、さらにより好ましくは約10%未満の化学的前駆体または他の化学物質、および最も好ましくは約5%未満の化学的前駆体または他の化学物質を有するポリペプチド調製物を包含する。好ましい実施形態において、単離されたポリペプチド、またはその生物学的に活性な部分は、ドメインポリペプチドを得たのと同じ生物体由来の汚染ポリペプチドを欠いている。
本明細書で使用される「高分子」は、一般には約900ダルトンを超える分子量を有するペプチド、ポリペプチド、タンパク質または核酸などの分子を指す。
「ポリマー」とは、共有結合によって結合した、2つ以上の同一のサブユニットまたは同一でないサブユニットの直鎖を指す。
本明細書で使用される、「ペプチド」および「ポリペプチド」は、そのサイズにかかわらず、ペプチド結合によって連結したアミノ酸残基の鎖でできている任意のポリマーを指す。「タンパク質」は、多くの場合、比較的大きなポリペプチドに関して使用され、および「ペプチド」は、多くの場合、小さなポリペプチドに関して使用されるが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は、重複および変動する。したがって、簡単にするために、「ペプチド」という用語を本明細書で使用するが、ある場合には、当技術分野では同じポリマーを「ポリペプチド」と称することもある。別段の指定のない限り、ペプチドの配列は、アミノ末端からカルボキシル末端の順に示されている。
本明細書で使用される「チオール含有基」または「チオール含有部分」は、硫黄−水素結合(−SH)を含み、生理的条件下で別のチオールと反応してジスルフィド結合を形成することができる官能基を意味する。別のチオールとジスルフィド結合を形成することができるチオールは、本明細書では「反応性チオール」と称される。好ましい実施形態では、チオール含有基は化合物の主鎖から6原子未満離れている。より好ましい実施形態では、チオール含有基は構造物(−SH−CH2−CH2−C(O)−O−)−を有する。
本明細書で使用される、「低分子」は、有機分子などの高分子以外の分子を指し、一般には1000ダルトン未満の分子量を有する。
別段の指定がない限り、本明細書で言及される全ての文書は、その全体が参照により組み込まれる。
II.カルシウム模倣薬を治療的に使用するための方法
一態様では、本明細書に記載のカルシウム模倣薬を、それを必要とする被験体に投与して、高カルシウム血症に関連する症状を処置および/または改善する。原発性副甲状腺機能亢進症および悪性腫瘍は高カルシウム血症の症例の約90%を占める。高カルシウム血症に関連する他の疾患としては、これらに限定されないが、副甲状腺機能の異常、原発性副甲状腺機能亢進症、孤立性副甲状腺腫(solitary parathyroid adenoma)、原発性副甲状腺過形成、副甲状腺癌、多発性内分泌腫瘍(MEN)、家族性孤立性副甲状腺機能亢進症、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症/家族性良性高カルシウム血症、悪性腫瘍、転移を伴う固形腫瘍(例えば、乳がんまたはPTHrP媒介性であってよい古典的扁平上皮癌)、高カルシウム血症の体液性媒介を伴う固形腫瘍(例えば、肺がん(最も一般的には非小細胞肺がん)、または腎がん、褐色細胞腫)、血液学的悪性疾患(多発性骨髄腫、リンパ腫、白血病)、サルコイドーシスおよび他の肉芽腫性疾患、ビタミンD代謝障害、ビタミンD過剰症(ビタミンD中毒症)、1,25(OH)2Dレベルの上昇、乳児期の特発性高カルシウム血症、横紋筋融解症後の反発性高カルシウム血症(rebound hypercalcaemia)、骨のターンオーバー速度が高いことに関連する障害、甲状腺機能亢進症、骨のパジェット病、腎不全、重度の二次性副甲状腺機能亢進症、ミルク−アルカリ症候群が挙げられる。高カルシウム血症は、リチウムの使用、チアジドの使用、ビタミンA中毒症およびアルミニウム中毒症、ならびに長期にわたる固定にも起因し得る。一実施形態では、カルシウム模倣薬はペプチドである。別の実施形態では、カルシウム模倣薬はAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)である。
別の態様では、本明細書に記載のカルシウム模倣薬を使用して、それを必要とする被験体における腎損傷、血管石灰化、または副甲状腺過形成の進行を阻害する、減少させるまたは低下させる。一実施形態では、カルシウム模倣薬はペプチドである。別の実施形態では、カルシウム模倣薬はAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)である。
一実施形態では、カルシウム模倣薬を、血液透析を受けている末期腎疾患(ESRD)患者におけるCKD−MBDを処置するために週に3回投与される静脈内(IV)生成物として投与する。別の実施形態では、カルシウム模倣薬を毎日の経皮パッチによって投与する(例えば、病期第3期または病期第4期のCKDを有すると分類される被験体に対して)。
一態様では、本明細書に記載のカルシウム模倣薬を、初期慢性腎疾患(CKD)および/または慢性腎疾患に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD−MBD)のリスクがあるまたはそれと診断された被験体に投与する。被験体は透析を受けていてもよく、被験体は透析前であってもよい。いくつかの実施形態では、被験体は、病期第1期、病期第2期、病期第3期、病期第4期または病期第5期のCKDを有すると分類されてよい。
別の態様では、本明細書に記載の組成物を使用して、よく認識されており、慢性腎疾患の一般的な合併症である軟部組織石灰化を示す、またはそれが発生するリスクがある被験体を処置する。そのような個体は、例えば、アテローム性動脈硬化症、狭窄症、再狭窄、腎不全、糖尿病、人工器官移植、組織傷害または加齢性血管疾患などの状態に関連する血管石灰化を有してもよく、またはそれを発生するリスクがあってもよい。別の態様では、本明細書に記載の組成物を使用して、血清クレアチニンレベルの上昇を示す、またはそれが発生するリスクがある被験体を処置する。別の態様では、本明細書に記載の組成物を使用して、副甲状腺肥大を示す、またはそれが発生するリスクがある被験体を処置する。別の態様では、本明細書に記載の組成物を使用して、リンレベルの上昇を示すまたはそれが発生するリスクがある被験体を処置する。別の態様では、本明細書に記載の組成物を使用して、PTH受容体の発現の低下を示すまたはそれが発生するリスクがある被験体を処置する。これらの状態の予後的指標および臨床的指標は当技術分野で公知である。本発明の方法によって処置される個体は、例えば、糖尿病、慢性腎疾患、腎不全、腎移植または腎臓透析に関連する全身ミネラル不均衡を有してよい。
III.本明細書に記載のカルシウム模倣薬の治療有効性
PTHを低下させるためのカルシウム模倣薬の使用を、CKDのラットモデルである5/6腎摘出(5/6Nx;Charles River Laboratories、Wilmingham、MA)を使用して評価した。動物を、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)、(1mg/kg、IV)またはシナカルセト(10mg/kg、PO)で処置した。動物に、28日間、毎日投薬した。血清PTHレベルを最終投薬の6時間後、16時間後および48時間後に測定した。Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物では、長期の毎日の投薬後にPTHが長期にわたって低下した(実施例1A、図1を参照されたい)。シナカルセトで処置した動物では投薬の16時間後および48時間後に血清PTHの増加が示されたが、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物では、最終投薬の6時間後および16時間後にベースラインから50%超の減少が示され、投薬の48時間後にはベースラインPTHから25%〜50%の減少が示された。これらの結果により、カルシウム模倣薬を、これらに限定することなく、CKD、二次性副甲状腺機能亢進症および原発性副甲状腺機能亢進症を含めた、PTHの増加に関連する疾患および状態に対する治療剤として有効に使用することができるという結論が支持される。
別の研究では、5/6Nxラットモデルを使用して、カルシウム模倣薬の副甲状腺の増殖に対する効果を決定した。Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物(3mg/kg、SC)では副甲状腺過形成が劇的に低下した(実施例1B、図2A〜D)。これらの結果により、カルシウム模倣薬を用いた処置が副甲状腺の増殖を低下させることに有効であるという結論が支持される。
5/6Nxラットモデルを使用して別の研究を行って、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の異所性石灰化(すなわち、軟部組織において起こる不適切なバイオミネラリゼーション)に対する効果を調べた。CKD患者では腎臓石灰化の発生率が高い。また、透析を受けているCKDの患者では、年齢を釣り合わせた、冠動脈疾患が血管造影で証明された個体よりも冠状動脈石灰化が2〜5倍多い。石灰化は、アテローム性動脈硬化斑負荷量および心筋梗塞のリスクの増加、末梢血管疾患における虚血性エピソードの増加ならびに血管形成術後の解離のリスクの増加と相関する。
カルシウム模倣薬投与の異所性石灰化に対する効果を、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を5/6Nxラットに投与することによって研究した(実施例1C)。6週間にわたって3mg/kgのAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物では、無処置の5/6Nxラットと比較して腎臓石灰化が低下したことが見いだされた(図3A〜B)。6週間にわたって3mg/kgのAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した5/6Nxラットでは、無処置の対応物よりも大動脈および腎臓組織の石灰化が少なかった(図3C)。その結果により、カルシウム模倣薬を投与することが軟部組織石灰化を低下させることに有効であるという結論が導かれる。
血清クレアチニン(sCr)の測定により、腎不全の進行、および薬学的作用剤(pharmaceutical agent)によりその進行を遅らせることができるかどうかを評価するための手段がもたらされる。クレアチニンのレベルが高いことにより、糸球体濾過速度が低下し、その結果、老廃物を排出する腎臓の能力が低下していることが示される。0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kgおよびビヒクル対照を用いて、6週間にわたって週に3回の投薬で処置した5/6Nxラットにおいて血清クレアチニンレベルをモニターした(実施例1C)。3mg/kgのAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物では、血清中のクレアチニンレベルが減少したが、0.3mg/kgで処置した動物および1mg/kgで処置した動物では2週目には血清クレアチニンのレベルが減少し、また、クレアチニンレベルの増加はビヒクルで処置した動物において観察されたものよりも低かった。そのデータにより、血清クレアチニンの上昇が数週間にわたって用量依存的に抑制されることが示され、カルシウム模倣薬を投与することが腎不全の進行を遅らせることに有効であるという結論が支持される。
同様に、慢性腎不全のアデニン誘発性ラットモデルにおいてAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)を使用して、PTHを低下させるためのカルシウム模倣薬の使用を評価した。結果は上記の結果と一致した(実施例2を参照されたい)。
血液透析を週に3回受けている被験体におけるAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の効果を調べるために臨床試験を設計した。その試験は、二重盲検式無作為化プラセボ対照多施設試験であった。実施例3に記載の結果は、本明細書に記載のカルシウム模倣薬により、PTHの分泌および合成を低下させ、同時に、血清PTH、亜リン酸およびカルシウムを低減させ、それにより、CKD−MBDの3つの主要な生化学的異常の全てを改善することができることを示す。
Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の薬物動態プロファイルの試験により、カルシウム模倣薬のクリアランス速度がおよそ2L/時間と比較的遅く、ペプチドへの総血漿曝露は投与した用量に比例したことが示される(実施例3A)。これらのデータは、カルシウム模倣薬の長期にわたる効果を示し、これにより、血液透析患者に1週間当たり2〜3回、またはおそらく1週間当たり2〜4回の頻度で投薬することが支持される。好ましい実施形態では、カルシウム模倣薬はAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)である。
血清iPTHおよびカルシウムレベルを低下させるためのカルシウム模倣薬の有効性もこの臨床試験において観察された。被験体に、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の単回IVボーラスを、血液透析が完了した2〜4時間後に投与し、被験体からの血液を、血清iPTHレベルおよび補正カルシウムレベルの変化について分析した(実施例2B)。投与した用量は5mg、10mg、20mg、40mgまたは60mgであった。図5に示されるように、投薬から30分以内にiPTHの用量依存的な減少が起こった。そのデータにより、約20mg以上の用量で、または約20mgから約100mgまでにわたる用量で、ペプチドによってなされるiPTH抑制が透析間の(interdialytic)期間中持続したので、本明細書に記載のカルシウム模倣薬を血液透析患者に投与することが支持される。例えばIVボーラス、または腹膜注射を用いて、そのような用量により、投薬後5〜45分以内、または投薬後約10分〜30分以内、または投薬後約1時間以内に(with about an hour)血清iPTHの減少がもたらされ得る。
実施例2Bに記載の通り、投与されたカルシウム模倣薬は補正した血清カルシウムレベルの低下にも有効であった。Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の約5mgから約60mgまでにわたる用量により、補正した血清カルシウムが約10%〜14%低下した。試験中のいかなる時点においても、補正カルシウムレベルが7.5mg/dLを下回った被験体はいなかった。
したがって、一実施形態では、CaSR活性を調節するカルシウム模倣薬は、血液中のPTHまたはカルシウムのレベルが過剰である被験体を処置すること、または、例えば、高カルシウム血症と診断された患者などの患者におけるカルシウムの恒常性の喪失の影響を逆転させることに有効である。別の実施形態では、カルシウム模倣薬はペプチドである。
臨床研究により、さらに安全性データがもたらされ、それにより、カルシウム模倣薬を投与することの耐容性は非常に良好であり、下痢、悪心や嘔吐の報告はないことが示された(実施例2C)。したがって、治療有効量の本明細書に記載のカルシウム模倣薬の投与は、治療有効量の経口用カルシウム模倣薬に関連する数および頻度と比較して、副作用の発生が少なく、有害事象の頻度が低い可能性がある。
別の態様では、本明細書に記載のカルシウム模倣薬は疾患修飾効果を有し、したがって、カルシウム模倣薬の治療効果は薬物処置を停止した後数週間にわたって続く。一実施形態では、カルシウム模倣薬はペプチドである。
一実施形態では、カルシウム模倣薬は、CaSR、ビタミンD受容体およびFGF−23補助受容体を含めた、副甲状腺における重要な受容体の喪失を予防することに有効である(実施例1E)。Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を5/6Nxラットに3mg/kgの用量で6週間にわたって投与した後、副甲状腺の切片を作製し、染色して、CaSR、ビタミンD受容体およびFGF−23補助受容体の発現レベルを観察した。それぞれの場合において、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を投与することにより、受容体の発現が、ビヒクル対照で処置したラット由来の腺において認められる発現と比較して増加した。これらのデータにより、本明細書に記載のカルシウム模倣薬を用いた処置は、1つまたは複数の副甲状腺の受容体の発現を維持し、かつ/または増加させ、それにより、疾患の過程を潜在的に改変することによって副甲状腺の応答性を改善することができるという結論が支持される。
別の調査において、5/6Nxラットを、1週間にわたって3mg/kgのAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の4用量で処置し、その後1週間のウォッシュアウトウォッシュアウト期間(薬物の休み)をおいた(実施例3B)。処置したラットでは、1週間のウォッシュアウトウォッシュアウト期間後に測定し、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の第1の用量を投与する前のベースラインPTHと比較したところ、ベースラインPTHが50%低下した。いくつかの実施形態では、治療有効量のカルシウム模倣薬を投与することにより、血液透析を受けている被験体において、血清PTHが、カルシウム模倣薬の第1の用量の前の血清PTHと比較して25%〜75%低下、または40%〜50%低下し、低下は、カルシウム模倣薬の最後の用量を投与した1〜7日後、3〜8日後または5〜10日後に測定された。
上記の疾患修飾効果は、血液透析患者を10mgのAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で1週間当たり3回、4週間にわたって処置した臨床試験においても観察された。患者がAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の次の用量を受ける直前に起こる薬物トラフ時に血清PTHレベルを測定した。実施例4において考察されている通り、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した患者では、27日目に測定したところ、ベースラインPTHが、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の第1の用量の前に測定されたベースラインPTHと比較して約50%低下した。そのデータにより、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)が血液透析患者において疾患修飾効果を有することがさらに支持される。
好ましい実施形態では、腎損傷、血管石灰化、副甲状腺過形成、高カルシウム血症および/または副甲状腺機能亢進症に罹患している被験体を、当該記載のカルシウム模倣薬を使用して処置する。
無処置の、中程度に重度の副甲状腺機能亢進症を伴うSHPT患者は多くの場合、ベースラインの循環しているインタクトなPTHレベル300pg/ml超を有し、600pg/mLを超え得るレベルを有する。好ましい実施形態では、PTHレベルの減少を、処置前のベースラインレベルを下回るインタクトなPTHの減少として測定する。別の実施形態では、所望のPTHの減少とは、米国腎臓財団または腎障害および腎不全の処置における他の専門家によって確立された一般的に認められているガイドライン中の血漿PTHレベルをもたらすことである。
別の態様では、副甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症および/または骨疾患を処置するための方法であって、記載の化合物の治療有効量を投与する工程を含む方法が提供される。別の実施形態では、被験体を、記載の化合物を1つまたは複数の他の治療的に有効な作用剤と組み合わせて処置することができる。
別の態様では、当該記載の化合物を、PTHまたはPTHの影響を低下させるために有効な量で投与する。いくつかの実施形態では、血漿PTHは、当該記載の化合物を投与した後少なくとも10時間にわたって、処置前のベースラインレベルから少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%または30%低下する。特定の実施形態では、血漿PTHは投与した10時間後に少なくとも20%低下する。好ましい実施形態では、血漿PTHは、当該記載の化合物を投与した後少なくとも48時間にわたって、処置前のベースラインレベルから15〜40%、好ましくは20〜50%、より好ましくは30〜70%低下する。
別の態様では、当該記載の化合物を、血清カルシウムまたはカルシウムの影響を減少させるために有効な量で投与する。いくつかの実施形態では、血清カルシウムは、上記化合物を投与した後少なくとも10時間にわたって、処置前のレベルから少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%または25%低下する。いくつかの好ましい実施形態では、血清カルシウムは、投与した10時間後に少なくとも5%低下する。いくつかの好ましい実施形態では、血清カルシウムは、当該記載の化合物を投与した後少なくとも48時間にわたって、処置前のレベルから5〜10%、好ましくは5〜20%低下する。
別の態様では、それを必要とする被験体において腎損傷を低下させるための方法であって、記載の化合物の治療有効量を投与する工程であって、それによって血清クレアチニンのレベルが、投与の約2週間後、4週間後または6週間後に測定した際に処置前のレベルから少なくとも約1%、5%、または10%減少する工程を含む方法が提供される。一実施形態では、血清クレアチニンのレベルは、投与の約2週間後、4週間後または6週間後に測定した際に処置前のレベルから約5%未満、10%未満、20%未満、30%未満または40%未満増加する。
血清カルシウム、骨代謝およびPTHの間の関連性に基づいて、当該記載の化合物は、副甲状腺機能亢進症に加えて、さまざまな形態の骨疾患および/または高カルシウム血症の処置のために有益であると考えられる。当該記載の化合物は、非経口的に投与することができ、胃腸の有害作用を伴わない可能性があり、チトクロムP450によって代謝されず、かつ血漿PTHおよびカルシウムをより有効に低下させることができるので、現在通用している治療剤と比較して利点を有し得る。
上記の通り、当該記載の方法は、上記化合物を、単独で、または1つまたは複数の他の治療的に有効な作用剤と組み合わせて用いることができる。そのような他の治療的に有効な作用剤としては、これらに限定されないが、アレンドロネートおよびリセドロネートなどの吸収抑制ビスホスホネート剤;〈αvβ3アンタゴニストなどのインテグリン遮断薬;ホルモン補充療法において使用される結合型エストロゲン、例えば、Prempro(商標)、Premarin(商標)およびEndometrion(商標);選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えば、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、CP−336,156(Pfizer)およびラソフォキシフェン;カテプシン(cathespin)K阻害剤;ビタミンD療法;ビタミンD類似体、例えば、Zemplar(商標)(パリカルシトール);Calcijex(登録商標)(カルシトリオール)、Hectorol(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)、One−Alpha(登録商標)(アルファカルシドール)およびCytochromから開発された中のCTA−018、CTAP201およびCTAP101として公知の類似体など;Sensipar(登録商標)(シナカルセト)などの他のカルシウム模倣薬;II型ナトリウム依存性リン酸トランスポーターファミリーの阻害剤、SLC34(2つの腎臓アイソフォームであるNaPi−IIaおよびNaPi−IIc、ならびに腸のNaPi−IIbトランスポーターを含む);フォスファトニン(phosphatonin)(FGF−23、sFRP4、MEPEまたはFGF−7を含む);低用量PTH処置(エストロゲンあり、またはなし);カルシトニン;RANKリガンドの阻害剤;RANKリガンドに対する抗体、オステオプロテゲリン;アデノシンアンタゴニスト(adensosine antagonist);およびATPプロトンポンプ阻害剤を用いた処置が挙げられる。
一実施形態では、記載の化合物を、PTHレベルおよび血清カルシウムレベルの両方を減少させるために十分な用量で投与する。別の実施形態では、記載の化合物を、血清カルシウムレベルに有意に影響を及ぼすことなくPTHを減少させるために十分な用量で投与する 。さらなる実施形態では、記載の化合物を、血清カルシウムレベルに有意に影響を及ぼすことなくPTHを増加させるために十分な用量で投与する。
IV.カルシウム感知受容体アゴニスト
本明細書に記載の方法は、カルシウム模倣薬の被験体への投与を含む。そのようなアゴニストは、米国特許第6,011,068号および同第6,031,003号ならびに米国特許公開第2011/0028394号および同第2009/0023652号(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
一実施形態では、当該方法は、カルシウム模倣薬を上記患者に投与する工程を含む。別の実施形態では、カルシウム模倣薬はシナカルセト塩酸塩である。さらに別の実施形態では、カルシウム模倣薬はペプチドである。]]]
一実施形態では、当該方法は、カルシウム模倣薬を上記患者に投与する工程を含む。別の実施形態では、カルシウム模倣薬はペプチドである。さらに別の実施形態では、カルシウム模倣薬は、式:X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7(式中、X1はチオール含有基を含むサブユニットであり;X5はカチオン性サブユニットであり;X6は非カチオン性サブユニットであり;X7はカチオン性サブユニットであり;X2、X3およびX4のうちの少なくとも1つ、好ましくは、2つは、独立して、カチオン性サブユニットである)を含むペプチドを含む。
一実施形態では、カルシウム模倣薬は、配列carrrar(配列番号2)を含む化合物である。別の実施形態では、カルシウム模倣薬は、ペプチドcarrrar(配列番号2)で構成されるコンジュゲートであり、該ペプチドがそのN末端残基においてCys残基とコンジュゲートしている。好ましい実施形態では、コンジュゲートはAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)である。本発明は、配列番号3などの特定の好ましい実施形態に関して記載されている場合があるが、本開示は、米国特許第6,011,068号および同第6,031,003号ならびに米国特許公開第2011/0028394号および同第2009/0023652号(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている化合物およびコンジュゲートを含めた他のカルシウム模倣薬にも適用されることは当業者の理解の範囲内である。同様に、本発明は、血液透析などの特定の好ましい実施形態に関して記載されている場合があるが、本開示は、腹膜透析などの他の形態の透析、および毎日の血液透析などの他の手法にも適用されることは当業者の理解の範囲内である。
好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基はN末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。いくつかの実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、それ自体が配列番号161のアミノ酸配列を含むペプチドである。いくつかの実施形態では、チオール含有コンジュゲート基と上記ペプチドは同じである(すなわち、コンジュゲートは二量体である)。
別の実施形態では、化合物はコンジュゲートの形態であり、X1位にあるチオール含有サブユニットがジスルフィド結合によってL−Cys残基と連結している。これらの化合物は、例えば、以下の構造を有する:
本明細書で使用される表示法では、X1サブユニットのチオール含有部分に連結している化合物は、括弧付きで識別され、これらの例示的なコンジュゲートでは、(C)で示される化合物L−CysはX1サブユニットのチオール含有部分に連結している:Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)およびAc−c(Ac−C)arrrar−NH2(配列番号141)。
当該記載のアゴニストを医薬品としてヒトおよび動物に投与する場合、単独で、または、例えば0.1〜99%(より好ましくは、10〜30%)の活性成分を薬学的に許容されるキャリアと組み合わせて含有する薬学的組成物として、与えることができる。他の実施形態では、薬学的組成物は、0.2〜25%、好ましくは0.5〜5%または0.5〜2%の活性成分を含有してよい。これらの化合物は、療法のために、ヒトおよび他の動物(代理人整理番号 63200−8022 17764070 18)に、例えば、経口、皮下注射、皮下デポ剤、静脈内注射、静脈内注入もしくは皮下注入を含めた任意の適切な投与経路によって投与することができる。
これらのアゴニストは、治療のために、ヒトおよび他の動物に、任意の適切な投与経路によって投与することができる。
ペプチドカルシウム模倣薬は以前に記載されている(米国特許公開第2011/0028394号および同第2009/0023652号(どちらもその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。1つの例示的なペプチドカルシウム模倣薬は、本明細書では、Ac−c(C)arrrar−NH
2(配列番号3)と称され、構造:
を有する。以下の表1において追加的な構造が提供される。
GS=酸化型グルタチオン;dHcy=D−ホモシステイン;Mpa=メルカプトプロピオン酸;PEG=ポリエチレングリコール。
V.製剤
当該記載の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤またはキャリアを含む薬学的組成物が提供される。そのような薬学的組成物を調製する方法は、一般には当該記載の化合物をキャリアおよび、必要に応じて、1つ以上のアクセサリー成分と結びつけるステップを含む。当該記載の化合物および/またはそれを含む薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容できる剤形に製剤化することができる。一般には、製剤は、当該記載の化合物を液体キャリアまたは細かく分割された固体キャリア、またはその両方に結びつけ、次いで、必要であれば、産物を形づくることによって均一かつ密接に調製する。
非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、1つ以上の当該記載の化合物を、糖、アルコール、アミノ酸、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、意図されたレシピエントの血液との等張性を製剤に与える溶質または懸濁剤または増粘剤を含有してよい、1つ以上の薬学的に許容できる滅菌の等張性の水溶液または非水性溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョン、または使用する直前に滅菌の注射可能な溶液もしくは分散液中に再構成することができる滅菌粉末と組み合わせて含む。
本発明の薬学的組成物に利用することができる適切な水性キャリアおよび非水性キャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適切なそれらの混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。妥当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を使用することによって、分散物の場合では必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。
これらの薬学的組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含有してよい。当該記載の化合物に対する微生物の作用の予防は、さまざまな抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることによって確実にすることができる。糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤(agents to control tonicity)などを組成物に含めることも望ましい場合がある。さらに、注射可能な薬学的形態の吸収時間の延長を、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる作用剤を含めることによってもたらすことができる。
場合によっては、薬物の効果を長引かせるために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性が乏しい結晶性材料または非結晶性材料の液体懸濁液を使用することによって実現することができる。このとき、薬物の吸収速度はその溶解速度に左右され、その溶解速度は同様に、結晶サイズおよび結晶形に左右され得る。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、油状のビヒクルに薬物を溶解または懸濁させることによって実現される。
例えば、当該記載の化合物は、固形の薬物を液体で再構成することによって作製された液剤の形態でヒトに送達することができる。この溶液は、注入液、例えば注射用水、0.9%塩化ナトリウム注射液、5%ブドウ糖注射液および乳酸リンゲル注射液などでさらに希釈することができる。再構成され、希釈された液剤は、最大効力を送達するために4〜6時間以内に使用することが好ましい。あるいは、当該記載の化合物は、錠剤またはカプセルの形態でヒトに送達することができる。
注射可能なデポ剤の形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に当該記載の化合物をマイクロカプセル封入したマトリクスを形成することによって作製する。ポリマーに対する薬物の比率、および利用した特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。デポ剤注射製剤は、薬物を体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョンに閉じ込めることによっても調製される。
当該記載の化合物を医薬品としてヒトおよび動物に投与する場合、単独で、または例えば、0.1%〜99%(より好ましくは、10%〜30%)の活性成分を薬学的に許容されるキャリアと組み合わせて含有する薬学的組成物として、与えることができる。他の実施形態では、薬学的組成物は、0.2〜25%、好ましくは0.5〜5%または0.5〜2%の活性成分を含有してよい。これらの化合物は、療法のために、ヒトおよび他の動物に、例えば、皮下注射、皮下デポ剤、静脈内注射、静脈内注入または皮下注入を含めた任意の適切な投与経路によって投与することができる。これらの化合物は、急速に(<1分以内)ボーラスとして、または長期間にわたって(数分間、数時間または数日間にわたって)さらにゆっくりと投与することができる。これらの化合物は、毎日または何日にもわたって、連続的に、または断続的に送達することができる。一実施形態では、化合物は、経皮的に(例えば、パッチ、マイクロニードル、マイクロポア、軟膏剤、マイクロジェットまたはナノジェットを使用して)投与することができる。
選択された投与経路にかかわらず、適切な水和物の形態で使用することができる当該記載の化合物、および/またはその薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容できる剤形に製剤化される。
薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、特定の患者、組成物、および投与形態に対する所望の治療反応を実現するために有効なある量の活性成分を得るために、患者に対して有毒になることなく変更してよい。
選択される投薬レベルは、利用される特定の当該記載の化合物、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、利用されている特定の化合物が排出または代謝される速度、吸収の速度および程度、治療の持続時間、利用される特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、重量、状態、全体的な健康および以前の病歴、および医学の分野で周知の同様の因子を含めた種々の因子に左右される。
当技術分野における通常の技術を有する医師または獣医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物中に利用される当該記載の化合物の用量を、所望の治療効果を実現するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が実現されるまで徐々に投与量を増加させることができる。
一般に、当該記載の化合物の適切な1日用量は、治療効果をもたらすために有効な最低用量である化合物の量になる。そのような有効量は、一般に、上記の因子に左右される。一般に、患者に対する当該記載の化合物の静脈内用量、筋肉内用量、経皮用量、脳室内用量および皮下用量は、示した効果のために使用する場合、1時間当たり体重1キログラム当たり約1μg〜約5mgにわたる。他の実施形態では、用量は、1時間当たり体重1キログラム当たり約5μg〜約2.5mgにわたる。さらなる実施形態では、用量は、1時間当たり体重1キログラム当たり約5μg〜約1mgにわたる。
望ましい場合には、当該記載の化合物の有効な1日用量は、1日を通して適切な間隔で、必要に応じて、単位剤形で別々に投与される、2つの、3つの、4つの、5つの、6つの、またはそれを超える副用量(sub−dose)として投与することができる。一実施形態では、当該記載の化合物を1日当たり1回用量として投与する。さらなる実施形態では、化合物を連続的に、静脈内経路または他の経路を介して投与する。他の実施形態では、化合物を毎日よりも少ない頻度で、例えば、2〜3日ごとに投与する。なおも他の実施形態では、化合物を週に1回以下の頻度の透析治療と併せて投与する。
この治療を受けている被験体は、一般に、霊長類、特にヒト、ならびに他の哺乳動物、例えばウマ、ウシ、ブタおよびヒツジなど;ならびに家禽および愛玩動物を含めた、それを必要とする任意の動物である。
当該記載の化合物は、それとして、または薬学的に許容されるキャリアと混合して投与することができ、抗菌性剤、例えばペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよびグリコペプチドなどと併せて投与することもできる。したがって、連結的療法(conjunctive therapy)は、最初に投与した活性化合物の治療効果が、次の活性化合物が投与されたときに完全には消失していないようなやり方で、活性化合物を逐次的に投与すること、同時に投与すること、および別々に投与することを含む。
開示の化合物の投与経路
これらの化合物は、治療のために、任意の適切な投与経路によってヒトおよび他の動物に投与することができる。本明細書で使用される投与「経路」という用語は、これらに限定されないが、皮下注射、皮下デポ剤、静脈内注射、静脈内注入もしくは皮下注入、眼内注射、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、気管内投与、脂肪内(intraadiposal)投与、関節内投与、くも膜下腔内投与、硬膜外投与、吸入、鼻腔内投与、舌下投与、頬側投与、直腸内投与、膣内投与、槽内投与および局所投与、経皮投与、または局所送達による投与(例えばカテーテルまたはステントによる)を含むものとする。
体に薬物を経皮的に送達することは、生物学的に活性な物質を被験体に全身送達するため、特に、タンパク質およびペプチドなどの経口的な生物学的利用能が乏しい物質を送達するために、望ましく、かつ都合のよい方法である。送達の経皮的経路は、物質が体内に侵入するのに対する有効な関門としての機能を果たす皮膚の角質層外層に浸透することができる小さな(例えば、約1,000ダルトン未満の)親油性化合物、例えば、スコポラミンおよびニコチンで特に成功している。角質層の下は、生存表皮であり、それは血管を含有しないが、いくつかの神経を有する。さらに深部は真皮であり、それは、血管、リンパ管および神経を含有する。角質層関門を横断する薬物は、一般に、吸収および全身への分布のために、真皮内の毛細血管に拡散することができる。
経皮送達における科学技術的な進歩は、タンパク質およびペプチドなどの、親水性の高分子量の化合物を、皮膚を横断して送達することの当技術分野における必要性に取り組むことに焦点が置かれてきた。1つの手法は、化学的方法または物理的方法を使用して角質層を破壊して角質層によってもたらされる関門を弱めることを伴う。低侵襲の技法を使用して皮膚内にミクロン寸法の輸送経路(マイクロポア)(特に、角質層内のマイクロポア)を創出することを伴う皮膚マイクロポレーション技法は、ごく最近の手法である。皮膚(角質層)内にマイクロポアを創出するための技法としては、熱マイクロポレーションまたは熱アブレーション、マイクロニードルアレイ、フォノフォレーシス、レーザーアブレーションおよび高周波アブレーションが挙げられる(PrausnitzおよびLanger(2008年)Nat. Biotechnology 11巻:1261〜68頁;Aroraら、Int. J. Pharmaceutics、364巻:227頁(2008年);Nandaら、Current Drug Delivery、3巻:233頁(2006年);Meidanら American J. Therapeutics、11巻:312頁(2004年))。
上記の通り、PTHの分泌は、副甲状腺細胞の細胞表面で発現されるCaSRによって制御される。したがって、CaSRを活性化するために、作用剤または化合物を副甲状腺細胞に送達しなければならない。カルシウム模倣剤の経皮送達は、角質層をわたる送達を実現し、副甲状腺細胞に到達する全身曝露をもたらさなければならない。今まで、当技術分野では、治療的な利益のために十分な量、具体的には、PTHを減少させるため、かつ/または高カルシウム血症の治療、減弱、緩和および/または軽減のために十分な量でカルシウム模倣化合物を経皮的に送達することができるかどうかは実証されていない。
カルシウム模倣薬に加えて、1,25−(OH)2ビタミンD3類似体が、慢性腎疾患および末期腎疾患に伴う副甲状腺機能亢進症の患者に対して最も一般的に使用される治療薬である。ビタミンD類似体は、腸における食餌性カルシウムの吸収を促進することによって作用し、PTHの合成および分泌を阻害することによってPTHレベルを低下させる。ビタミンDの静脈内送達および経口送達が治療的に使用されてきたが、今まで、当技術分野では、ビタミンD類似体、例えば、ZEMPLAR(商標)(パリカルシトール)、CALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)、ONE−ALPHA(登録商標)(アルファカルシドール)およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)などを、治療的な利益のために十分な量で、具体的には副甲状腺ホルモン(PTH)を減少させるために十分な量で経皮的に送達することができるかどうかは実証されていない。さらに、当技術分野では、カルシウム模倣剤を、ビタミンD類似体と組み合わせて(別々の製剤として、または共製剤(co−formulation)としてのいずれかで)、治療的な利益のために十分な量で、具体的にはPTHを減少させるために十分な量で経皮送達によって同時投与することによって、副甲状腺機能亢進症に罹患している患者に有効な治療がもたらされるかどうかは実証されていない。
カルシウム模倣剤は、副甲状腺ホルモン(PTH)を減少させるため、および/または高カルシウム血症を治療するために局所送達または全身送達するために、角質層、および/または表皮の他の層を横断して投与することができる。一実施形態では、マイクロポレーションによってカルシウム模倣剤を送達する。マイクロポレーションのためのいくつもの技法1つのいずれも意図されており、そのいくつかが簡単に説明されている。
マイクロポレーションは、角質層を突破して、本明細書に記載のカルシウム模倣剤を皮膚の表面を通して、かつ皮膚基底層および/または血流の内部に送達するために、機械的な手段および/または外部駆動力によって実現することができる。
第1の実施形態では、マイクロポレーション技法は、皮膚の特定の領域の角質層を、基底表皮を著しく傷つけることなく角質層を切除するために十分な波長のパルスレーザー光、パルス幅、パルスエネルギー、パルス数、およびパルス繰り返し数を使用して切除することである。次いで、カルシウム模倣剤を切除領域に塗布する。レーザー誘起応力波(LISW)と称される別のレーザーアブレーションマイクロポレーション技法は、強力なパルスレーザーによって生成する広帯域、単極かつ圧縮性の波を伴う。LISWは、組織と相互作用して角質層内の脂質を破壊し、それにより角質層の内部に細胞間チャネルが一過性に創出される。角質層内のこれらのチャネル、またはマイクロポアにより、カルシウム模倣剤が侵入することが可能になる。
ソノフォレーシスまたはフォノフォレーシスは、超音波エネルギーを使用する、別のマイクロポレーション技法である。超音波は、20KHzを超える周波数を保有する音波である。超音波は、連続的に、またはパルス状でのいずれかで適用することができ、さまざまな周波数および強度の範囲で適用することができる(Nandaら、Current Drug Delivery、3巻:233頁(2006年))。
別のマイクロポレーション技法は、マイクロニードルアレイの使用を伴う。マイクロニードルのアレイは、被験体の皮膚領域に適用した場合、角質層に穴をあけ、神経を著しく刺激する深さ、または毛細血管を穿刺する深さまでは浸透しない。したがって患者は、カルシウム模倣剤を送達するマイクロポアを生成するためにマイクロニードルアレイを適用した際、不快感または痛みを感じない、またはわずかしか感じない。
中空または充実したマイクロニードルで構成されるマイクロニードルアレイであって、カルシウム模倣剤を、ニードルの外面にコーティングすることまたは中空のニードルの内部から分配することができるマイクロニードルアレイが意図されている。マイクロニードルアレイの例は、例えば、Nandaら、Current Drug Delivery、3巻:233頁(2006年)およびMeidanら American J. Therapeutics、11巻:312頁(2004年)に記載されている。第1世代のマイクロニードルアレイは、外側に治療剤をコーティングした充実したシリコンマイクロニードルで構成されていた。ニードルのマイクロアレイを皮膚に押しつけ、約10秒後に取り除くと、ニードル上の作用剤の体内への浸透が容易に実現された。第2世代のマイクロニードルアレイは、充実したまたは中空のシリコン、ポリカーボネート、チタンまたは他の適切なポリマーのマイクロニードルで構成され、治療用化合物の液剤でコーティングされている、または治療用化合物の液剤で満たされていた。新しい世代のマイクロニードルアレイは、生分解性ポリマーから調製され、治療剤でコーティングしたニードルの先端部分が角質層内にとどまり、ゆっくりと溶解する。
マイクロニードルは、金属、セラミックス、半導体、有機物、ポリマーおよび複合物を含めた種々の材料から構築することができる。構築物の例示的な材料としては、薬学的グレードのステンレス鋼、金、チタン、ニッケル、鉄、スズ、クロム、銅、パラジウム、白金、これらの金属または他の金属の合金、ケイ素、二酸化ケイ素、およびポリマーが挙げられる。代表的な生分解性ポリマーとしては、乳酸およびグリコール酸などのヒドロキシ酸のポリマー、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド−co−グリコリド、およびポリ(エチレングリコール)との共重合体、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)が挙げられる。代表的な非生分解性ポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリエステル、およびポリアクリルアミドが挙げられる。
マイクロニードルは、まっすぐな軸または先細の軸を有してよい。一実施形態では、マイクロニードルの直径は、マイクロニードルの基部末端において最大であり、基部の遠位末端点まで先細になる。マイクロニードルは、まっすぐな(先細でない)部分および先細の部分の両方を含む軸を有するように製作することもできる。該ニードルは、先細の末端を全く有さなくてもよい、すなわち単に先端部分がとがっていない円柱または先端部分が平らな円柱であってよい。実質的に均一な直径を有するが、1点に向けて先細になっていない中空のマイクロニードルは、本明細書では「マイクロチューブ」と言及される。本明細書で使用される、「マイクロニードル」という用語は、別段の指定のない限り、マイクロチューブおよび先細のニードルの両方を包含する。
電気穿孔は、皮膚にマイクロポアを創出するための別の技法である。この手法では、角質層の内部に一過性の、浸透性の細孔を創出するために、マイクロ秒またはミリ秒の長さの高圧の電気パルスの印加を使用する。
他のマイクロポレーション技法は、皮膚にマイクロチャネルを創出するために電波の使用を含む。熱アブレーションは、分子量が大きい化合物の経皮的な送達を実現するためのさらに別の手法である。
出願人らは、低用量のカルシウム模倣剤を、SHPTを治療するために長期間にわたって治療的に投与することができることを発見した。これは、現在通用している他のカルシウム模倣薬(例えば、シナカルセト塩酸塩)の必要用量と著しく異なる。
VI.併用療法
上記の通り、使用方法は、単独で、または高カルシウム血症および/または骨疾患を治療するための他の手法と組み合わせて使用することができる。そのような他の手法としては、これらに限定されないが、ビスホスホネート剤、インテグリン遮断薬、ホルモン補充療法、選択的なエストロゲン受容体モジュレーター、カテプシンK阻害剤、ビタミンD療法、ビタミンD類似体、例えばZEMPLAR(商標)(パリカルシトール)、CALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)、ONE−ALPHA(登録商標)(アルファカルシドール)およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)など、抗炎症剤、低用量PTH療法(エストロゲンあり、またはなし)、カルシウム模倣薬、ホスフェート結合剤、カルシトニン、RANKリガンドの阻害剤、RANKリガンドに対する抗体、オステオプロテゲリン、アデノシンアンタゴニスト、およびATPプロトンポンプ阻害剤などの作用剤を用いた治療が挙げられる。
一実施形態では、併用療法では、ビタミンDまたはビタミンD類似体をカルシウム模倣剤と組み合わせて使用する。ビタミンDはカルシウムの吸収に役立ち、カルシウムおよびリン(phosphorous)の正常な血中レベルを維持するように機能する。PTHは、腸におけるカルシウムの吸収を、ビタミンDの活性型である1,25−(OH)2ビタミンDの産生を増加させることによって増強するように働く。PTHは、腎臓からのリンの排出も刺激し、骨からの放出を増加させる。
上記の通り、二次性副甲状腺機能亢進症は、活性なビタミンDホルモンのレベルが不十分であることに関連する副甲状腺ホルモン(PTH)の上昇を特徴とする。二次性副甲状腺機能亢進症(hyperparathryoidism)の治療において、ビタミンDまたはビタミンD類似体を使用して、上昇したPTHレベルを低下させることができる。一実施形態では、本発明は、カルシウム模倣剤およびビタミンD類似体を含む薬学的組成物を包含する。
一実施形態では、本発明は、カルシウム模倣剤およびZEMPLAR(商標)(パリカルシトール)を含む薬学的組成物を包含する。パリカルシトールは、ビタミンDの代謝活性型であるカルシトリオールの合成類似体である。Zemplarの推奨初回用量は、ベースラインであるインタクトな副甲状腺ホルモン(iPTH)レベルに基づく。ベースラインのiPTHレベルが500pg/mL以下の場合は、1日用量は1μgであり、「1週間に3回」用量(多くて1日おきで投与される)は2μgである。ベースラインのiPTHが500pg/mLを超える場合は、1日用量は2μgであり、「1週間に3回」用量(1日おき以下で投与される)は4μgである。その後、投薬は、血清カルシウムおよび血清リンをモニターしながら、個別化し、血清血漿iPTHレベルに基づかなければならない。パリカルシトールは、米国特許第5,246,925号および米国特許第5,587,497号に記載されている。
別の実施形態では、本発明は、カルシウム模倣剤およびCALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)を含む薬学的組成物を包含する。カルシトリオールはビタミンDの代謝活性型である。CALCIJEX(登録商業)(経口)に対して推奨される初回投与量は1日当たり0.25μである。この量は、4〜8週間おきに、1日当たり0.25μgずつ増加させることができる。正常なカルシウムレベル、またはほんのわずかだけ低下したカルシウムレベルが、1日おきに0.25μgの投与量に応答し得る。透析を受けている患者に対しては、CALCIJEX(登録商業)(IV)の推奨初回用量は、1週間当たり3回、1日おきに0.02μg/kg(1〜2μg)である。この量は、2〜4週間ごとに0.5〜1μgずつ増加させることができる。カルシトリオールは、米国特許第6,051,567号および米国特許第6,265,392号および米国特許第6,274,169号に記載されている。
一実施形態では、カルシウム模倣剤およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)を含む薬学的組成物が提供される。ドキセルカルシフェロールは、in
vivoにおいて代謝的活性化を受けて、天然に存在する、ビタミンDの生物学的活性型である1α,25−ジヒドロキシビタミンD2を形成する、ビタミンDの合成類似体である。HECTOROL(登録商標)の推奨初回用量は、毎週3回、透析時に(およそ1日おきに)10μgの投与である。初回用量は、必要に応じて、血中iPTHを150〜300pg/mLの範囲に低減させるように、調整するべきである。用量は、iPTHが50%低減されない場合、および標的範囲に到達できない場合は、8週間間隔で2.5μgずつ増加させることができる。HECTOROLの最大の推奨用量は、1週間に3回、透析時に20μg、1週間当たり合計60μgの投与である。ドキセルカルシフェロールは、米国特許第5,602,116号および米国特許第5,861,386号および米国特許第5,869,473号および米国特許第6,903,083号に記載されている。
組み合わせレジメンにおいて利用するための療法(治療法または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療法および/または手順と、実現される所望の治療効果との適合性を考慮にいれる。利用する療法により、同じ障害に対して所望の効果を実現することができる(例えば、発明の化合物は、同じ障害を治療するために使用される別の作用剤と同時に投与することができる)、または、異なる効果を実現することができる(例えば、任意の有害作用の制御)ことも理解されよう。本明細書で使用される、特定の疾患または状態を治療または予防するために通常投与される追加的な治療剤は、「治療されている疾患または状態に適している」ことが公知である。
本明細書で定義した本発明の併用治療は、前記治療の個々の構成成分を同時に、逐次的に、または別々に投与することとして実現することができる。
化合物またはその薬学的に許容される組成物は、埋め込み型の医療用デバイス、生物侵食性(bio−erodible)ポリマー、埋め込み型ポンプ、および坐剤をコーティングするためにも組成物に組み込むことができる。したがって、別の態様では、上で概説されているような当該記載の化合物を含む、埋め込み型デバイスをコーティングするための組成物、および埋め込み型デバイスをコーティングするために適したキャリアが意図されている。さらに別の態様では、上で概説されている化合物を含む組成物、および前記埋め込み型デバイスをコーティングするのに適したキャリアでコーティングされた埋め込み型デバイスが包含される。
適切なコーティングおよびコーティングされた埋め込み型デバイスの一般的な調製は、米国特許番号第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載されている。コーティングは、一般には、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、エチレン酢酸ビニル、ならびにそれらの混合物などの生体適合性ポリマー材料である。コーティングは、必要に応じて、フルオロシリコーン、多糖(polysaccaride)、ポリエチレングリコール、リン脂質またはそれらの組み合わせの適切な保護膜によりさらに覆って、組成物に制御放出特性を与えることができる。
VII.治療の有効性を決定するための潜在的な臨床マーカー
当該記載の治療方法の有効性の決定は、種々の方法によって決定することができる。
血清カルシウムの正常なレベルは、8.8mg/dL〜10.4mg/dL(2.2mmol/L〜2.6mmol/L)の範囲内である。ある特定の場合では、治療の有効性は、これらに限定されないが、血清総カルシウムおよび血清カルシウムイオン、アルブミン、血漿PTH、PTHrP、ホスフェート、ビタミンD、およびマグネシウムを含めた、カルシウムに関連する血清および尿のマーカーを測定することによって決定することができる。
他の場合では、有効性は、骨塩密度(BMD)を測定することによって、または、血清中または尿中の、骨形成および/または骨吸収についての生化学的マーカーを測定することによって決定することができる。潜在的な骨形成マーカーとしては、これらに限定されないが、総アルカリホスファターゼ、骨アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、低カルボキシル化オステオカルシン、C末端I型プロコラーゲンプロペプチド、およびN末端I型プロコラーゲンプロペプチドが挙げられる。潜在的な骨吸収マーカーとしては、これらに限定されないが、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリコシル−ガラクトシルヒドロキシリジン、ガラクトシルヒドロキシリジン、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、I型コラーゲンN末端架橋テロペプチド、I型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、MMPによって生成されたI型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、骨シアロタンパク質、酸性ホスファターゼおよび酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼが挙げられる。
他の場合では、有効性は、投薬前の(ベースライン)レベルと比較したパーセントPTH低下によって、および/または患者に有益であると一般に認められている(例えば、米国腎臓財団によって確立されたガイドライン)望ましいPTHレベルの実現によって決定することができる。さらに他の場合では、有効性は、副甲状腺機能亢進症疾患に関連する副甲状腺過形成における低下を測定することによって決定することができる。
当該記載の治療方法を、治療を必要とする被験体に施すと、治療方法により、例えば、血清総カルシウム、血清カルシウムイオン、血中総カルシウム、血中カルシウムイオン、アルブミン、血漿PTH、血中PTH、PTHrP、ホスフェート、ビタミンD、マグネシウム、骨塩密度(BMD)、総アルカリホスファターゼ、骨アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、低カルボキシル化オステオカルシン、C末端I型プロコラーゲンプロペプチド、N末端I型プロコラーゲンプロペプチド、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリコシル−ガラクトシルヒドロキシリジン、ガラクトシルヒドロキシリジン、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、I型コラーゲンN末端架橋テロペプチド、I型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、MMPによって生成されたI型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、骨シアロタンパク質、酸性ホスファターゼおよび酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼの1つ以上を測定したところ、効果がもたらされることが予想される。効果は、予防的治療ならびに現存する疾患の治療も含む。
生物学的に有効な分子は、共有結合または非共有結合性の相互作用で、当該記載のペプチドに作動可能に連結していてよい。特定の実施形態では、作動可能に連結した生物学的に有効な分子は、連結した分子の一部分として化合物に性質を付与することによって、当該記載の化合物の薬物動態を変化させ得る。生物学的に有効な分子によって当該記載の化合物に付与され得る性質のいくつかとしては、これらに限定されないが、化合物が体内の離れた場所に送達されること;化合物の活性が体の所望の場所に集中し、他の場所でのその効果が低下すること;化合物を用いた治療の副作用が低下すること;化合物の浸透性が変わること;化合物の生物学的利用能または体への送達速度が変わること;化合物を用いた治療の効果の長さが変わること;化合物のin vitroにおける化学的安定性が変化すること;化合物のin vivoにおける安定性、半減期、クリアランス、吸収、分布および/または排出が変化すること;化合物の効果の開始速度および減衰速度が変化すること;化合物が効果を有することが可能になることによって許容作用(permissive action)がもたらされることが挙げられる。
別の態様では、当該記載の化合物は、ポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートさせることができる。選択されたPEGは、任意の都合のよい分子量のものであってよく、直鎖状または分枝状であってよく、必要に応じて、リンカーによってコンジュゲートすることができる。PEGの平均分子量は、好ましくは、約2キロダルトン(kDa)〜約100kDa、より好ましくは約5kDa〜約40kDaにわたる。あるいは、使用するPEG部分は、2kDa、3kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、13kDa、14kDa、15kDa、16kDa、17kDa、18kDa、19kDa、20kDaであってよい。
当該記載の化合物は、化合物上の任意の位置に位置する適切なアミノ酸残基を通じてPEGとコンジュゲートさせることができる。当該記載の化合物は、必要に応じて、PEGがコンジュゲートされた、例えば、リジンなどの追加的なアミン含有残基を含めた追加的なアミノ酸残基を含有してよい。
ペグ化ペプチドにより、コンジュゲートされたペプチドの血清半減期が増加することが当技術分野で公知である。ペグ化ペプチドを形成するための種々の方法が当技術分野で公知である。例えば、PEG部分は、アミノ末端に、カルボキシ末端に、または特許請求されたペプチドの側鎖によって、必要に応じて連結基の存在によって連結させることができる。他の実施形態では、PEG部分はシステインなどのチオール含有アミノ酸の硫黄に連結させることができる、または、リジンなどのアミン含有アミノ酸の側鎖に結び合わせることができる。
PEG基は、一般に、PEG部分の反応性基(例えば、アルデヒド、アミン、オキシム、ヒドラジン チオール、エステル、またはカルボン酸基)を通じて、当該記載の化合物のアミノ末端、カルボキシ末端、または側鎖の位置に位置してよい当該記載の化合物の反応性基(例えば、アルデヒド、アミン、オキシム、ヒドラジン、エステル、酸基またはチオール基)に、アシル化またはアルキル化によって当該記載の化合物に結合する。合成ペプチドのペグ化を調製するための1つの手法は、溶液中でコンジュゲート結合によって、それぞれが他方に対して相互に反応性である官能基を有するペプチドとPEG部分を結合させることからなる。ペプチドは、従来の液相合成技法または固相合成技法を使用して容易に調製することができる。ペプチドとPEGをコンジュゲートすることは、一般には、水相で行い、逆相HPLCによってモニターすることができる。ペグ化ペプチドは、当業者に公知の標準の技法を使用して容易に精製し、特徴づけることができる。
1つ以上の個々の当該記載の化合物のサブユニットは、特定の側鎖または末端残基と反応することが公知のさまざまな誘導体化剤で修飾することもできる。例えば、リジニル(lysinyl)残基およびアミノ末端残基を、リジニル残基またはアミノ残基の電荷を逆転させる無水コハク酸または他の同様のカルボン酸の無水物と反応させることができる。他の適切な試薬としては、例えば、メチルピコリンイミデートなどのイミドエステル;ピリドキサール;ピリドキサールリン酸;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソ尿素;2,4,−ペンタンジオン;およびトランスアミナーゼによって触媒されるグリオキサル酸との反応が挙げられる。アルギニル残基は、従来の作用剤、例えば、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンとの反応によって修飾することができる。
さらに、当該記載の化合物は、生物分析的なELISA測定用の抗体を開発するため、ならびに免疫原性を評価するために有用な免疫原性残基を提供する非カチオン性残基を含むように修飾することができる。例えば、当該記載の化合物は、チロシン残基および/またはグリシン残基を組み込むことによって修飾することができる。チロシル残基の特異的な修飾は、チロシル残基に分光標識を導入することに関して特に興味深い。非限定的な例としては、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応が挙げられる。最も一般的には、N−アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンを使用して、それぞれO−アセチルチロシル誘導体および3−ニトロ誘導体を形成する。
VII.当該開示の化合物を含むキット
本発明は、本発明の治療レジメンを実行するためのキットも提供する。そのようなキットは、治療有効量の、CaSRモジュレーターとしての活性を有する当該記載の化合物を、薬学的に許容される形態で、単独で、または薬学的に許容される形態の他の作用剤と組み合わせて含む。好ましい薬学的形態としては、滅菌生理食塩水、ブドウ糖溶液、緩衝溶液、滅菌水、または他の薬学的に許容される滅菌流体と組み合わせた当該記載の化合物が挙げられる。あるいは、組成物は、抗菌剤または静菌剤を含んでよい。あるいは、組成物は、凍結乾燥または乾燥されていてよい。この場合、キットは、注射用溶液を形成するための、薬学的に許容される溶液、好ましくは滅菌された溶液をさらに含んでよい。別の実施形態では、キットは、組成物を注射するための、好ましくは滅菌形態に包装されたニードルまたはシリンジをさらに含んでよい。他の実施形態では、キットは、組成物を被験体に投与するための指示手段をさらに含む。指示手段は、折込み書面、オーディオテープ、視聴覚テープ、または組成物を被験体に投与することについて指示する任意の他の手段であってよい。
一実施形態では、キットは、(i)CaSRモジュレーターとしての活性を有する当該記載の化合物を含有する第1の容器;および(ii)使用するための指示手段を含む。別の実施形態では、キットは、(i)本明細書に記載の化合物を含有する第1の容器、および(ii)希釈または再構成するための、薬学的に許容されるビヒクルを含有する第2の容器を含む。
別の実施形態では、キットは、(i)CaSRモジュレーターとしての活性を有する当該記載の化合物を含有する第1の容器;(ii)抗高カルシウム血症剤を含有する第2の容器;および(iii)使用するための指示手段を含む。
一実施形態では、抗高カルシウム血症剤は、ビスホスホネート剤、ホルモン補充治療剤、ビタミンD療法、ビタミンD類似体、例えば、ZEMPLAR(商標)(パリカルシトール);CALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)、ONE−ALPHA(登録商標)(アルファカルシドール)およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)、低用量PTH(エストロゲンあり、またはなし)、ならびにカルシトニンからなる群から選択される作用剤である。
関連する態様では、本発明は、上記のキットの内容物を含む製造品を提供する。例えば、本発明は、単独の、または他の作用剤と組み合わせた有効量の当該記載のペプチド、および本明細書に記載の疾患を治療するための使用について示す指示手段を含む製造品を提供する。
以下の実施例は、本明細書に記載の化合物および方法を例示するために提供され、本明細書に記載の化合物および方法を限定するために提供されるのではない。当業者は、本明細書に記載の主題の真の主旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな改変を行うことができる。
(実施例1)
Ac−c(C)arrrar−NH2で処置した動物における疾患の進行
Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の治療有効性を、腎不全の5/6腎摘出(Nx)ラットモデルを使用して評価した。雄の5/6NxラットをCharles River Laboratories(Wilmington、MA)から入手した。これらのラットは一方の腎臓および他方の腎臓の2/3の外科的除去を受けており、また、高リン酸食を与えた。動物を用いる全ての実験手順は、IACUCガイドラインに従って実施した。統計解析はボンフェローニの事後検定を伴う一元配置ANOVAを用いて実施した。p値は全て公称である。
A.PTH抑制
雄の5/6Nxラットに、IV注射による1mg/kgの用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(IV)、食塩水(IV)、または10mg/kgの用量のシナカルセト(PO)を、28日間、毎日投薬した。PTHの測定のために尾静脈血液試料を定期的に取得した。PTHを、Immutopics BioActive Intact ELISA(Cat番号60−2700;Immutopics、San Clemente、CA)を使用して測定した。
4週間後、平均ベースラインPTHレベルは413〜498pg/mLにわたった(図1)。最終投薬の6時間後に取得された測定値により、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物およびシナカルセトで処置した動物においてPTHレベルが低下したことが示される。最終投薬の16時間後および48時間後に取得された測定値により、シナカルセトで処置した動物においてはPTHレベルが増加したが、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物ではPTHレベルが抑制されたままであったことが示される。
B.副甲状腺過形成
雄の5/6Nxラットに、3mg/kgの用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(SC)を週に3回、6週間にわたって投薬した。対照の動物は無処置であった。屠殺時に、副甲状腺過形成の程度を測定するための免疫組織学的(IHC)分析用の組織試料を取り出した。
動物由来の副甲状腺を、ブロモデオキシウリジン(5−ブロモ−2’−デオキシウリジン、BrdU)を使用して分析した。
Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物由来の副甲状腺では、BrdU陽性細胞が無処置の対照と比較して少なく(図2A〜C)、これは、処置した動物において副甲状腺の増殖が低下したことを示していた。
さらに、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物では、副甲状腺の重量が無処置の対照と比較して低下した(図2D)。
C.異所性石灰化
雄の5/6Nxラットに、0.3mg/kg、1mg/kgまたは3mg/kgの用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(SC)、またはビヒクル対照(SC)を週に3回、6週間にわたって投薬した。屠殺時に、残りの腎臓の切片を、フォンコッサ法を用いてカルシウム染色についてIHCによって分析した。図3A〜Bに示されているように、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(3mg/kg)で処置した動物由来の腎臓切片では対照の動物由来の腎臓切片よりも石灰化が少なかった。
雄の5/6Nxラットに、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(SC)を3mg/kgの用量で週に3回、6週間にわたって投薬した。対照の動物は無処置であった。屠殺時に、大動脈組織試料および腎臓組織試料を取り出し、原子発光分析法を用いて分析した。図3Cに示されているように、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物由来の大動脈および腎臓ではカルシウム含有量が無処置の動物よりも実質的に少なかった。
D.腎機能
雄の5/6Nxラットに、0.3mg/kg、1mg/kgまたは3mg/kgの用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(SC)、またはビヒクル対照(SC)を週に3回、6週間にわたって投薬した。尾静脈血液試料を定期的に取得して、QuantiChrom(商標)キット(DICT−500;BioAssay Systems、Hayward、CA)を使用して腎機能のマーカーである血清クレアチニンを測定した。
平均ベースラインクレアチニンレベル(処置前)は、約1.06mg/dLから約1.09mg/dLまでにわたった。6週間の試験にわたって、ビヒクルを受けた動物では血清クレアチニンの大きな増加が示された(図4)。対照的に、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物では、血清クレアチニンの上昇が6週間の試験にわたって用量依存的に抑制された。
E.PTH受容体の発現
雄のNxラットに、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(SC)を3mg/kgの用量で週に3回、6週間にわたって投薬した。年齢を釣り合わせた正常ラットを対照として使用した。屠殺時に、5/6Nxラット由来の副甲状腺および対照由来の副甲状腺を取り出し、抗体を使用して組織切片を染色して、CaSR、ビタミンD受容体およびFGFR1タンパク質を検出した。
Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置した動物の副甲状腺において、正常対照の副甲状腺におけるものよりも高レベルのCaSR(図5A)、FGFR1(図5B)およびビタミンD受容体(図5C)が認められた。
F.ウォッシュアウト後のベースラインPTH
雄のNxラットを、1週間にわたり、1mg/kgまたは3mg/kgの用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(SC)を用いて、1日目、3日目、6日目および8日目に処置した(図6A)。8日目の投薬の後に1週間のウォッシュアウトを行った。
図6Bに示されているように、3mg/kgのAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を受けているラットでは、1週間のウォッシュアウト後に測定したところベースラインPTHが50%低下した。
(実施例2)
Ac−c(C)rrarar−NH2で処置した動物における疾患の進行
Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)の治療有効性を、ラットにおける慢性腎不全のアデニン誘発性モデルを使用して評価した。ラットをCharles River Laboratories(Wilmington、MA)から入手した。ラットに0.75%アデニン(Teklad Custom Diet)を含有する低タンパク質(2.5%)、高リン(0.92%)食を与えた。動物を、ビヒクル(10mMのコハク酸、0.85%NaCl、0.9%ベンジルアルコール、pH4.5)の皮下投薬または0.3mg/kgまたは1mg/kgのAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)(SC)の皮下投薬を、4週間にわたって毎日受けるように無作為に割り当てた。対照群にはアデニン無しの同一の高リン食および組織を与えた。食餌の開始時に処置を開始した。動物を用いる全ての実験手順は、IACUCガイドラインに従って実施した。統計解析はボンフェローニの事後検定を伴う一元配置ANOVAを用いて実施した。p値は全て公称である。
A.PTH抑制
尿毒症のラットにおけるAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)処置のPTHレベルに対する効果が図7に示されている。血漿PTHを、Immunotopics BioActive Intact ELISA(Immutopics、San Clemente、CA)を使用して測定した。Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)を投薬する前には、全ての処置群の血漿PTHレベルは同様であった。アデニンなし対照の動物では、4週間の試験にわたって一貫した血漿PTHレベルが維持された。ビヒクルで処置した尿毒症の動物については試験の経過にわたってPTHレベルが有意に上昇した。0.3mg/kgまたは1mg/kgの用量のAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で2週間および4週間にわたって処置した尿毒症の動物では、ビヒクルで処置した動物よりも血漿PTHが有意に低かった。
B.クレアチニン抑制
Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)処置の血清クレアチニンレベルに対する効果が図8に示されている。QuantiChrom(商標)キット(BioAssay Systems、Hayward、CA)を使用して血清クレアチニンを測定した。ビヒクルで処置した尿毒症の動物からの血清クレアチニンレベルは、4週間の終わりには、尿毒症でない動物の対照群と比較しておよそ8〜10倍高かった。0.3mg/kgおよび1mg/kgの用量のAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で処置した尿毒症の動物では、血清クレアチニンレベルがビヒクルで処置した尿毒症のラットと比較して有意に低かった。1mg/kgのAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)の用量のAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で処置した尿毒症の動物では、血清クレアチニンレベルがビヒクルで処置した対照と比較しておよそ50%低かった。
C.リン抑制
Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)処置の血清リンレベルに対する効果が図9に示されている。血清リンレベルは、尿毒症の動物において尿毒症でない対照と比較して増加したが、0.3mg/kgおよび1mg/kgの用量のAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で4週間にわたって処置した尿毒症の動物では、血清リンレベルの有意な低下が示された。
D.血清カルシウム抑制
Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)処置の血清カルシウムレベルに対する効果が図10に示されている。尿毒症のラットにおける血清カルシウムレベルは対照ラットにおけるカルシウムレベルと同様であったが、0.3mg/kgおよび1mg/kgの用量のAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で4週間にわたって処置した尿毒症の動物では、血清カルシウムがビヒクルで処置したラットと比較して用量依存的に有意に低下した。
E.血清カルシウム−リン抑制
Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)処置の血清カルシウム−リン生成物レベルに対する効果が図11に示されている。Cobas c−501分析器を使用してリンおよびカルシウムを決定した。4週間にわたってビヒクルで処置した尿毒症の動物では、カルシウム−リン生成物が尿毒症でない動物と比較しておよそ2.5倍増加した。0.3mg/kgまたは1mg/kgの用量のAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で4週間にわたって処置した尿毒症の動物では、血清カルシウム−リン生成物がそれぞれおよそ20%および40%の低下を示した。
F.副甲状腺過形成
Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)処置の副甲状腺腫大に対する効果も慢性腎不全のアデニン誘発性ラットモデルを使用して決定した。0.3mg/kgまたは1mg/kgの用量のAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で4週間にわたって処置した後、尿毒症のラットを屠殺し、副甲状腺を取り出し、トリミングし、秤量した。Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で処置した群の副甲状腺の重量はビヒクルで処置した群由来の副甲状腺と比較して有意に低下した。Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で処置した群の副甲状腺の重量は尿毒症でない動物由来の副甲状腺と比較して有意差がなかった。
G.血管石灰化
Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)処置の血管石灰化に対する効果も慢性腎不全のアデニン誘発性ラットモデルを使用して決定した。0.3mg/kgまたは1mg/kgの用量のAc−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で4週間にわたって処置した後、尿毒症のラットを屠殺し、大動脈組織を分析した。大動脈組織を処理し、アリザリンレッドおよびフォンコッサ法によって染色して、血管のミネラル化を可視化した。0〜5のスコアリングシステムを使用して、全ての動物からのフォンコッサ染色された大動脈の同一の切片を盲検式でスコア化した。アリザリンレッドおよびフォンコッサ染色の結果により、Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で処置した尿毒症のラット由来の大動脈ではミネラル化がわずかであった、または全くなかったことが示された。図13に示されているように、ビヒクルで処置した尿毒症の動物の67%(10/15)で大動脈ミネラル化を示す陽性フォンコッサ染色が実証された。Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28)で処置した尿毒症のラットは、感知できるフォンコッサ染色のないことが実証された。0.3mg/kg処置群の動物1匹のみで、いくらかの最小のミネラル化が示された。
(実施例3)
Ac−c(C)arrrar−NH2の単回投薬ならびにiPTHおよびカルシウムに対する効果
臨床研究を実施して、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の漸増単一用量をCKD−BMDおよびSHPTと診断された患者、ならびに血液透析を受けていた患者にIVボーラスによって投与することの安全性および耐容性を評価した。データを生成して、患者の血清中のインタクトなPTH(iPTH)および血清カルシウムの変化ならびに単一用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の生物学的利用能を評価した。
週に3回血液透析(HD)を受けている被験体における二重盲検無作為化プラセボ対照多施設試験を設計し、実施した。主要な組み入れ基準は、試験を開始する前の少なくとも3カ月にわたる血液透析、血清iPTHレベルが300pg/mLを超えること、血清cCa(補正カルシウム)レベルが9.0mg/dL以上であること、および安定した用量の活性ビタミンDまたは類似体、ホスフェート結合剤、およびカルシウム補充剤を受けていることを含んだ。
2期間交叉デザイン(two−period crossover design)でコホート1、2および3を処置した。各コホートに4被験体を登録し、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)、その後にプラセボ、またはプラセボ、その後にAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)へ1:1に無作為化した。コホート1〜3に対するAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の用量レベルは5mg、10mgおよび20mgであった。コホート4には8被験体を登録し、並行群の40mgのAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)またはプラセボへ1:1に無作為化した。コホート5には8被験体を登録し、並行群の60mgのAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)またはプラセボへ1:1に無作為化した。
被験体を、週の最後のHDセッション後に臨床研究ユニットに入院させ、血液透析のために退院する前の3日の透析間の期間にわたって観察した。HD完了の2〜4時間後にAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)またはプラセボをIVボーラス注射によって投与した。
血清iPTHレベルを、Roche Elecsys(登録商標)分析器で電気化学発光免疫測定法(ECLIA)を用いて決定した。カルシウムレベルをアルブミン<4g/dLに対して以下の方程式を用いて調整した:cCa=[mg/dL単位の測定されたCa]+[4−(g/dL単位のアルブミン)]×0.8。
試験薬投与後7日間を通して有害事象を捕捉した。
A.非コンパートメント解析を用いた幾何平均PKパラメータ
処置した被験体から得た試料に対して薬物動態(PK)解析を実施して、投与したAc−c(C)arrrar−NH
2(配列番号3)の生物学的利用能を決定した。以下の表2および図14において示されている結果により、評価した用量範囲にわたって、全身曝露が用量関連様式で増加したことが示されている。C
max値およびAUC
all値に認められるように、観察されたAc−c(C)arrrar−NH
2(配列番号3)総血漿曝露の増加は投与した用量に適度に比例した。幾何平均終末相消失半減期(81.7時間〜175時間)は、評価した用量範囲にわたって適度に同等であるようであった。定常状態(Vss)値としてのクリアランス(CL)および分布容積は評価した範囲にわたって用量に依存しないようである。Ac−c(C)arrrar−NH
2(配列番号3)の総クリアランスは、およそ約2L/時間であった。Ac−c(C)arrrar−NH
2(配列番号3)は血液透析によって中心コンパートメントから容易に消失した。血液透析クリアランスが約33L/時間と推定された。
B.Ac−c(C)arrrar−NH
2の血清中のiPTHレベルおよび補正カルシウムレベルに対する効果
この試験ではAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)投与の血清中のiPTHレベルおよび補正カルシウムレベルに対する効果も決定した。血液透析が完了した2〜4時間後に、被験体にAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の単回IVボーラスを投与した。次いで、各被験体由来の血液を分析して、iPTHレベルおよび補正カルシウムレベルを決定した。Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を投与した後のiPTHレベルのパーセント変化が図15に示されている。Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を用いた処置では、全ての用量でiPTHが用量依存的に減少した。その変化は投薬後30分以内に起こった。iPTH抑制の持続時間も用量依存的であり、3日の透析間の期間中、20mg以上のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の用量に関連して持続的に低下した。
Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)単一用量投与の補正カルシウムレベルに対する効果が図16に示されている。10mg、20mg、40mgまたは60mgを投薬したAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)群における平均補正カルシウムは観察期間中に約10〜14%まで低下し、最も大きな平均減少は40mg群で起こった。プラセボ群および5mgのAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)群では経時的に平均補正カルシウムに明らかな変化はなかった。
C.Ac−c(C)arrrar−NH2の投与に関する安全性プロファイル
被験体のそれぞれで起こった有害事象を、Ac−c(C)arrrar−NH
2(配列番号3)またはプラセボを投与した後7日間記録した。データは以下の表3に示されている。10mg用量コホート内のプラセボで処置した1被験体において単一の重篤な有害事象が起こった。この被験体はAc−c(C)arrrar−NH
2(配列番号3)を受ける前に試験を中止した。悪心、嘔吐または下痢の報告はなかった。
(実施例4)
薬物臨床試験の反復用量
血液透析患者を、10mgのAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で1週間当たり3回、4週間にわたって処置した。被験体が次のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)処置を受ける直前の薬物トラフ時に血清iPTHレベルを測定した。図17に示されているデータにより、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を用いた処置を受けている被験体では、iPTHレベルが4週間にわたって着実に減少したことが示されている。
ベースラインからの血清PTHレベルのパーセント変化に関してもデータを解析した。図18に示されているように、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)投薬の最終日の血清iPTHのベースラインレベルは、投薬の1日目のレベルよりも約50%低い。
Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の最終投薬後の4週間の経過観察期間中、さらに被験体由来の血清試料を分析した。図19に示されているデータは、10mgのAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を投与した4週間の処置期間中および4週間の経過観察期間中の被験体における血清iPTHのレベルを示す。