JP6202567B2 - 分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質、その製造方法 - Google Patents

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Description

分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質、及びその製造方法に関する。
近年ドラッグデリバリーシステムの分野では、輸送キャリアとしてリポソームの研究が広く行われている。リポソームとは、細胞膜の脂質二重膜を模して一つの分子上に親水性部分と疎水性部分とを持たせた分子から作られる直径数10nm−数100nmの閉鎖小胞であり、小胞内に抗癌剤などの薬物を安定に内包することができる。しかし、リポソーム製剤は血液中で細網内皮系組織(Reticuloendothelial System:RES)に補捉されてしまうため、血中安定性及び滞留性が低く、十分な薬理効果を得ることができなかった。
この問題を解決するために、リポソームの表面をポリエチレングリコール(PEG)で修飾したPEGリポソームによって生体内挙動を改善する試みがなされている。PEGリポソームは、表面のPEG鎖が形成する水和層とPEG鎖自体の立体障害により、オプソニンのような血清タンパク質や、単核細胞系に属する細胞との相互作用が抑制され、高い血中滞留性を実現することができる。
このリポソームの水和層と血中滞留性とは相関関係があり、水和層を厚くすると血中滞留性が増大することが知られている。そこで、水和層を増大させる目的で、リポソームの構成成分であるPEG脂質誘導体の添加量の増大や、PEG鎖の分子量の増大が検討されている。しかし、PEG鎖の分子量の増大に伴い、リポソーム表面でのPEG鎖の構造が縦方向に伸びたブラシ構造から三次元的な横の広がりを持つマッシュルーム構造へと変化するため、PEG鎖の長さから予想されるより水和層の増大が起こらないという問題があった。
この問題を解決するために、非特許文献1ではPEG鎖の分子量が異なる2種類のPEG脂質誘導体を混合して修飾したリポソームが水和層の厚みを増大させ、リポソームの血中滞溜性を向上させることが報告されている。これは、短鎖PEGのブラシ構造が、長鎖PEGのマッシュルーム構造をブラシ構造へ変化させるため、水和層の厚みが増加したと考えられている。しかし長鎖PEGは短鎖PEGに比べてリポソーム表面から脱離しやすい性質があるため、この混合修飾リポソームは血中及び腫瘍中において水和層の厚みが経時的に減少するという問題があった。
また、1つの分子中に分子量が異なる2種類のPEGを導入したPEGリン脂質誘導体が知られており、これによって修飾されたリポソームは、混合修飾リポソームの場合と同等の厚みの水和層を形成し、維持することができる。このPEGリン脂質誘導体は、中間体としてリン脂質とアミノ酸であるセリンが結合したホスファチジルセリンを使用する。しかしホスファチジルセリンの合成においては、特許文献1にあるようにセリン及び酵素触媒であるホスホリパーゼDが水にしか溶解しないにも関わらず、水系での反応中にホスホリパーゼDの有する加水分解活性によってホスファチジン酸が副生することから、ホスファチジルセリンの純度が低いという問題点がある。また、ホスファチジルセリンと活性化PEG試薬の結合形成反応においても、有機溶剤と水の混合系での反応を必要とすることから、反応中に活性化PEG試薬の分解を伴い、更なる純度の低下を招く。よって最終生成物であるPEGリン脂質誘導体はカラムクロマトグラフィーによる精製を必要とすることから、歩留まりの低下、使用溶媒量の増大及び製造時間の長期化を引き起こし、工業的生産には不向きである。
このように、リポソーム表面の水和層を効果的に増大し、かつ工業的に製造容易なポリエチレングリコール修飾脂質の出現が待望されている。
特開2004−215528号公報
薬学雑誌,2005,125(1),p.149−157
本発明の目的は、リポソーム表面の水和層を増大し、かつ工業的に製造容易な、分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、新規な構造を持つ、分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質、その製造方法及びポリエチレングリコール修飾リポソームを見いだし、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]下記式(1)
Figure 0006202567
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜7の炭化水素基、RCOは炭素数4〜24のアシル基である。m及びnは、それぞれ独立して、オキシエチレン基の平均付加モル数であって、10〜125の間の整数であり、n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たす整数である。X及びXは、それぞれ独立して、以下の式(3)〜(7)で示される基から選択され、Xはカーボネート結合、カーバメート結合及びエーテル結合から選択される。)
Figure 0006202567
(式中、rは1〜5の整数であり、sは2〜5の整数である。)
で表される分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質。
[2]下記式(8)で表される、上記[1]においてXが上記式(7)で示される基、Xが上記式(5)で示される基、Xがカーバメート結合である、分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質。
Figure 0006202567
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜7の炭化水素基、RCOは炭素数4〜24のアシル基である。m及びnは、それぞれ独立して、オキシエチレン基の平均付加モル数であって、10〜125の間の整数であり、n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たす整数であり、sは2〜5の整数である。)
[3]下記(A)、(B)、(C)、(D)全ての工程を順番に含むことを特徴とする、上記[2]記載の分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質の製造方法。
工程(A):1,3−ジアミノ−2−プロパノールと、下記式(9)で示されるポリエチレングリコール誘導体(以下、化合物(9)ともいう)を反応させ、アミノ基の1つにポリエチレングリコール鎖を導入した後、もう1つのアミノ基を化学的に不活性な保護基で保護し、下記式(10)で示される化合物(以下、化合物(10)ともいう)を得る工程。
Figure 0006202567
(式中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基である。mはオキシエチレン基の平均付加モル数であって、10〜125の間の整数であり、LはN−スクシンイミジルオキシ基又はp−ニトロフェノキシ基であり、Pはアミノ基の保護基である。)
工程(B):上記式(10)で示される化合物のヒドロキシル基を活性基に変換させた後に、下記式(11)で示されるポリエチレングリコール誘導体(以下、化合物(11)ともいう)を反応させ、2本目のポリエチレングリコール鎖を導入した下記式(12)で示される化合物(以下、化合物(12)ともいう)を得る工程。
Figure 0006202567
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜7の炭化水素基である。m及びnは、それぞれ独立して、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、10〜125の間の整数であって、n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たす整数であり、sは2〜5の整数であり、Pはアミノ基の保護基である。)
工程(C):工程(B)で得られた上記式(12)で示される化合物のアミノ基の保護基を脱保護し、下記式(13)で示される化合物(以下、化合物(13)ともいう)を得る工程。
Figure 0006202567
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜7の炭化水素基である。m及びnは、それぞれ独立して、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、10〜125の間の整数であって、n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たす整数であり、sは2〜5の整数である。)
工程(D):工程(C)で得られた上記式(13)で示される化合物と下記式(14)で示されるジアシルグリセロール誘導体(以下、化合物(14)ともいう)を反応させて下記式(8)で示される分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質を得る工程。
Figure 0006202567
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜7の炭化水素基、RCOは炭素数4〜24のアシル基であり、LはN−スクシンイミジルオキシ基又はp−ニトロフェノキシ基である。m及びnは、それぞれ独立して、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、10〜125の間の整数であって、n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たす整数であり、sは2〜5の整数である。)
本発明による新規な分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質(1)は、脂質部位としてジアシルグリセロール構造を有し、かつ脂質部位とPEG鎖のリンカー部位に非アミノ酸であるグリセリン誘導体である構造を有することを特徴とする。よって、全ての反応工程において有機溶媒中での反応が可能であり、PEG化試薬の活性基の加水分解による反応率の低下を防げるため、カラムクロマトグラフィー等の精製を用いることなく、高い純度で効率的に製造することができる。さらに、本発明のポリエチレングリコール修飾脂質(1)は、リポソーム表面の水和層を効果的に増大するため、血中滞留性に優れたDDSとして有用である。
本明細書中の「C1−7アルキル」としては、特に断りのない限り、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチルなどが挙げられる。本明細書中の「C1−4アルキル」としては、上記「C1−7アルキル」のうち、C1−4のものが挙げられる。
本明細書中の「C2−7アルケニル」としては、特に断りのない限り、例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、2−ブテン−1−イル、4−ペンテン−1−イル、5−へキセン−1−イルなどが挙げられる。
本明細書中の「C2−7アルキニル」としては、特に断りのない限り、例えば、2−ブチン−1−イル、4−ペンチン−1−イル、5−へキシン−1−イルなどが挙げられる。
本明細書中の「C3−7シクロアルキル」としては、特に断りのない限り、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。本明細書中の「C3−6シクロアルキル」としては、上記「C3−7シクロアルキル」のうち、C3−6のものが挙げられる。
本明細書中の「C3−7シクロアルケニル」としては、特に断りのない限り、例えば、シクロプロペニル(例、2−シクロプロペン−1−イル)、シクロブテニル(例、2−シクロブテン−1−イル)、シクロペンテニル(例、1−シクロペンテン−1−イル、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル)、シクロヘキセニル(例、1−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル)などが挙げられる。
本発明の式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜7の炭化水素基を示す。R及びRで示される「炭素数1〜7の炭化水素基」としては、C1−7アルキル基、C2−7アルケニル基、C2−7アルキニル基、C3−7シクロアルキル基、C3−7シクロアルケニル基、C3−6シクロアルキル−C1−4アルキル基、C3−6シクロアルケニル−C1−4アルキル基、フェニル基、ベンジル基が挙げられる。好ましくはC1−7アルキル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
COは、炭素数4〜24(好ましくは、炭素数12〜24)の脂肪酸由来のアシル基を示す。RCOの具体的なものとしては、例えば酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸などの飽和および不飽和の直鎖または分岐の脂肪酸由来のアシル基を挙げることができる。RCOの炭素数が24を超える場合、水相への分散が悪いため、リポソームを形成させる際に問題が生じる。また、RCOの炭素数が4より少ない場合、疎水性が低いため、リポソーム膜への相互作用が弱く、リポソームを形成させる際に問題が生じる。
m及びnは、それぞれ独立して、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、それぞれ独立して、10〜125の間の整数であり、n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たす整数である。n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たさない場合、リポソームを調製した時に2本のポリエチレングリコールの鎖長に由来するコンフォメーションの違いが出ないため、望みの水和層の厚みが形成されない恐れがある。mまたはnが10より小さい場合は、ポリエチレングリコール鎖がもたらす血中滞留性の効果が減少する。また、mまたはnが125より大きい場合は、リポソームを調製した時に化合物(1)自体がリポソームから脱離しやすくなるという問題が生じる。
及びXは、それぞれ独立して、ポリエチレングリコール鎖とグリセリン誘導体の間のリンカーであり、Xはグリセリン誘導体と脂質誘導体の間のリンカーである。X及びXは、それぞれ独立して、以下の式(3)〜(7)で示される基から選択され、Xはカーボネート結合、カーバメート結合及びエーテル結合から選択される。
Figure 0006202567
(式中、rは1〜5の整数であり、sは2〜5の整数である。)
カーバメート結合は、−NH−COO−または−OCO−NH−である。
、X及びXは、原料であるグリセリン誘導体の入手しやすさ及び化学結合の安定性の面から、X及びXは、カーバメート結合を構成する上記式(5)及び式(7)で示される基、並びにアミド結合を構成する上記式(6)で示される基から選択される基が好ましく、Xはカーバメート結合が好ましい。より好ましくは、X及びXは、上記式(5)で示される基または式(7)で示される基であり、Xは−NH−COO−である。特に好ましくはXは上記式(7)で示される基であり、Xは上記式(5)で示される基であり、Xは−NH−COO−である。
(製造方法)
本発明の分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質(8)は例えば次のように製造することができる。
1,3−ジアミノ−2−プロパノールと、下記式(9)で示されるポリエチレングリコール誘導体を反応させ、アミノ基の1つにポリエチレングリコール鎖を導入した後、もう1つのアミノ基を化学的に不活性な保護基で保護し、下記式(10)で示される化合物を得る(工程(A))。次いで、下記式(10)で示される化合物のヒドロキシル基を活性基に変換させた後に、下記式(11)で示されるポリエチレングリコール誘導体を反応させ、2本目のポリエチレングリコール鎖を導入した下記式(12)で示される化合物を得る(工程(B))。次いで、工程(B)で得られた式(12)で示される化合物のアミノ基の保護基を脱保護し、式(13)で示される化合物を得る(工程(C))。最後に式(13)で示される化合物と式(14)で示されるジアシルグリセロール誘導体を反応させることで、式(8)で示される分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質を得ることができる(工程(D))。
分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質(8)の反応経路を下記に示す。
Figure 0006202567
(式中の各記号は前記と同意義である)
以下に各工程の詳細な説明を行う。
化合物(10)の製造方法は特には制限されないが、好ましくは以下の工程(A1)、次いで工程(A2)を経ることで製造することができる。
工程(A1):1,3−ジアミノ−2−プロパノールのアミノ基の1つと、式(9)で示されるポリエチレングリコール誘導体を反応させて、1本目のポリエチレングリコール鎖を導入する工程。
工程(A2):工程(A1)で得られた化合物の未反応のもう1つのアミノ基を化学的に不活性な保護基で保護し、式(10)で示される化合物を得る工程。
化合物(9)において、LはN−スクシンイミジルオキシ基、p−ニトロフェノキシ基である。当該反応は、トルエン、ベンゼン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、t−ブチル−メチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プロトン性溶媒中で行うことができる。無溶媒中ではポリエチレングリコール誘導体2分子と1,3−ジアミノ−2−プロパノールの2つのアミノ基と反応した副反応物が多く生成し、収率が低下する恐れがある。1,3−ジアミノ−2−プロパノールの使用量は、化合物(9)に対して10モル当量以上が好ましい。10モル当量以下の場合は、ポリエチレングリコール誘導体2分子と1,3−ジアミノ−2−プロパノールの2つのアミノ基と反応した副反応物が多く生成し、収率が低下する傾向がある。化合物(9)と1,3−ジアミノ−2−プロパノールの混合方法としては、1,3−ジアミノ−2−プロパノールを含む溶液に、化合物(9)を含む溶液を滴下していくことが好ましい。反応温度は、通常0〜100℃であり、好ましくは、20〜50℃である。反応時間は通常10分〜24時間であり、好ましくは30分〜6時間である。生成した化合物は、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
化合物(10)において、Pはアミノ基の保護基である。保護基としては特に制限されず、例えばPROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS(著者:Peter G.M. WUTS、THEODORA W. GREENE、第4版、2006年、出版元:John Wiley & Sons, Inc)等に記載の公知の保護基が挙げられ、当該保護基の導入では公知の保護化反応を用いることができる。具体的な保護基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、トリメチルシリルエトキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、p−トルエンスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基等が挙げられ、好ましくはtert−ブトキシカルボニル基である。Pがtert−ブトキシカルボニル基の場合、当該反応は工程(A1)で得られた化合物を上述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中で二炭酸ジ−tert−ブチルと反応させて行うことができる。二炭酸−tert−ブチルの使用量は、特に制限はないが、工程(A1)で得られた化合物に対して等モル以上が好ましい。反応温度は、通常0〜100℃であり、好ましくは、20〜80℃である。反応時間は通常10分〜48時間であり、好ましくは30分〜24時間である。生成した化合物は、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
化合物(12)の製造方法は特には制限されないが、好ましくは以下の工程(B1)、次いで工程(B2)を経ることで製造することができる。
工程(B1):化合物(10)のヒドロキシル基を活性化基に変換する工程。
工程(B2):工程(B1)で得られた化合物に式(11)で示されるポリエチレングリコールアミン体を反応させて、2本目のポリエチレングリコール鎖が導入された式(12)で示される化合物を得る工程。
工程(B1)において活性化基とはアミノ基と反応する活性化カーボネート基であれば特に制限されないが、例えば、N−スクシンイミジルカーボネート基、p−ニトロフェニルカーボネート基などが挙げられ、反応性の観点から好ましくはN−スクシンイミジルカーボネート基である。工程(B1)で得られた化合物において、LはN−スクシンイミジルオキシ基、p−ニトロフェノキシ基などであり、上述の理由から好ましくはN−スクシンイミジルオキシ基である。活性化基がN−スクシンイミジルカーボネート基である場合、反応は非プロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中で、化合物(10)に、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基、もしくは炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等の無機塩基および炭酸ジ(N−スクシンイミジル)を加えて行うことができる。また、上記有機塩基、無機塩基は用いなくとも良い。有機塩基、無機塩基の使用量は、特に制限はないが、化合物(10)のヒドロキシル基に対して等モル以上が好ましい。また、有機塩基を溶媒として用いてもよい。炭酸ジ(N−スクシンイミジル)の使用量は化合物(10)のヒドロキシル基に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度は、通常0〜100℃であり、好ましくは、20〜80℃である。反応時間は、通常10分〜48時間であり、好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
工程(B2)の反応は上述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中で行うことができる。化合物(11)の使用量は、特に制限はないが、工程(B1)で得られた化合物に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度は、通常0〜100℃であり、好ましくは、20〜80℃である。反応時間は、通常10分〜48時間であり、好ましくは30分〜24時間である。生成した化合物は、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
化合物(13)の製造方法は特には制限されないが、好ましくは以下の工程(C)にて製造することができる。
工程(C):工程(A2)で導入した保護基を脱保護し、式(13)で示される化合物を得る工程。
脱保護反応は工程(A2)で導入された保護基の種類に応じて行う。例えば化合物(12)のPがtert−ブトキシカルボニル基である場合、上述の非プロトン性溶媒または水、メタノール、エタノールのようなプロトン性溶媒中、酸触媒を加えて行うことができる。酸触媒としては、有機酸、無機酸などが挙げられ、例えば有機酸としてはトリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸等、無機酸としては硫酸、塩酸等が挙げられ、好ましくはメタンスルホン酸である。メタンスルホン酸は上述の他の酸に比べて酸性度が若干低いため、ポリエチレングリコール鎖の分解が少ないという利点がある。脱保護に使用する酸触媒のモル数は、化合物(12)のモル数の1倍〜100倍、好ましくは2倍〜40倍、さらに好ましくは4倍〜20倍である。酸触媒のモル数が100倍より多いと、過剰の酸の除去が困難となり、作業のハンドリングが悪くなる。1倍より少ない場合は、脱保護反応が十分に進行しない可能性がある。
化合物(8)の製造方法は特には制限されないが、好ましくは以下の工程(D)にて製造することができる。
工程(D):化合物(13)と式(14)で示されるジアシルグリセロール誘導体を反応させる工程。
化合物(14)のLはp−ニトロフェノキシ基、N−スクシンイミジルオキシ基であり、反応性の観点から、好ましくはN−スクシンイミジルオキシ基である。当該反応は上述の非プロトン性溶媒性中、塩基触媒存在下で行うことができる。塩基触媒としてはトリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基、もしくは炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等の無機塩基が挙げられる。反応温度は、通常10〜70℃であり、好ましくは15〜55℃である。反応温度が10℃より低いと反応が十分に進まない恐れがある。反応温度が70℃より高いと熱履歴によりジアシルグリセロール誘導体の脂質部分が分解し、モノアシル体が副生してしまう可能性がある。反応時間は、通常10分〜48時間であり、好ましくは30分〜24時間である。生成した化合物は、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。なお、例中の化合物の分析、同定にはH-NMR、GPC及びTOF-MSを用いた。
1H-NMRの分析方法> H-NMR分析では、日本電子データム(株)製JNM-ECP400、JNM-ECP600を用いた。NMR測定値における積分値は理論値である。
<GPCの分析方法> GPC分析では、GPCシステムとしてSHODEX GPC SYSTEM-11を用い、下記条件にて測定を行った。
展開溶媒:テトラヒドロフラン 流速:1mL/min カラム:SHODEX KF-801,KF-803,KF-804(I.D.8mm×30cm) カラム温度:40℃ 検出器:RI×8 サンプル量:1mg/g,
100μLリファレンスにはトリエチレングリコール、PEG4000、PEG20000を用いた。GPC測定値には、高分子量不純物と低分子量不純物を、溶出曲線の変曲点からベースラインを垂直に切って除いたメーンピークの解析値を示した。
Mnは数平均分子量、Mwは重量平均分子量、Mw/Mnは多分散度、Mpはピークトップ分子量を表す。
<TOF-MSの分析方法> TOF-MS分析では、Bruker製 autoflexIIIを用いた。サンプルのマトリックスに1,8,9-Anthracenetriol、リファレンスにAngiotensin II[M+H]1+ Mono 分子量1046.5418、Somatostain 28[M+H]1+Mono 分子量3147.4710を用いた。
(実施例1)
1−([2,3−ジステアロイル]プロポキシカルボニルアミノ)−2−(メチルポリオキシエチレン−オキシプロピルアミノ カルボニルオキシ)−3−(メチルポリオキシエチレン−オキシカルボニルアミノ)−プロパン(化合物(I))の合成(m≒45、n≒11(PEG分子量約2,000、500の場合))
Figure 0006202567
(実施例1−1)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機を付した100mL丸底フラスコへ1,3−ジアミノ−2−プロパノール4.5g(50mmol)、ジクロロメタン80gを入れ、ジクロロメタン50gに溶解させたメトキシポリエチレグリコール−p−ニトロフェニルカーボネート(SUNBRIGHT MENP-20H、重量平均分子量2,000、日油(株)製)10g(5mmol)を1時間かけて窒素雰囲気下で滴下した。滴下後25℃で3時間反応を行った。反応終了後、溶液をろ過した後、25%食塩水で3回洗浄し、有機層をエバポレータで減圧濃縮した。残った濃縮物をトルエン80gで溶解し、硫酸ナトリウム3gを加えて25℃で1時間攪拌し脱水した。その後、溶液をろ過して、KW2000(協和化学工業株式会社製)による処理を2回行った。処理溶液にヘキサン70gを加えて、析出した結晶をろ別した。得られた結晶は酢酸エチル100gを加えて40℃にて加温溶解後、15℃まで冷却し、ヘキサンを添加して晶析を行った。ろ別した結晶をヘキサンで洗浄した後、結晶をろ取し、乾燥し、下記に示す化合物(II)8.5gを得た。(4.3mmol;収率85%)
1H-NMR(CDCl3,内部標準TMS)δ(ppm):2.62 (1H, dd)、2.81 (1H, dd)、3.13 (1H, m)、3.35 (1H, m)、3.38 (3H, s)、3.52-3.78 (180H, m)、4.22 (2H, m)、5.45 (1H, br)
Figure 0006202567
(実施例1−2)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、および冷却管を付した50mL丸底フラスコへ化合物(II)7.5g(3.75mmol)及びトルエン22.5gを加え、窒素雰囲気下で40℃で攪拌し、化合物(II)を溶解させた。二炭酸ジ−tert−ブチル1.03g(4.7mmol)を加えて40℃で3時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル、ヘキサンで晶析を2回繰り返した後にヘキサンで洗浄し、結晶をろ取し、乾燥し下記に示す化合物(III)6.4gを得た。(3.2mmol;収率85%)
1H-NMR(CDCl3,内部標準TMS)δ(ppm):1.44 (9H, s)、3.14-3.33 (4H, m)、3.38 (3H, s)、3.52-3.77 (180H, m)、4.21-4.24 (2H, m)、5.43 (1H, s)、5.61 (1H, s)
GPCMn:2,195、Mw2,245、Mw/Mn:1.011、Mp2,236
Figure 0006202567
(実施例1−3)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機を付した50mL丸底フラスコへ化合物(III)6.1g、及びジクロロメタン15.5gを加え、窒素雰囲気下25℃で攪拌し、化合物(III)を溶解させた。炭酸ジ(N−スクシンイミジル)1.59g(6.2mmol)、次いでトリエチルアミン0.94g (9.3mmol)を加えて25℃で4時間撹拌した。反応終了後、反応溶液をろ過し、エバポレータを用いて濃縮した後、トルエン40gを加えて再び濃縮した。析出物をろ過した後、ろ液にKW700(協和化学工業株式会社製)を加えて精製処理を2回行った。処理溶液にヘキサンを加えて、析出した結晶をろ別した。得られた結晶は酢酸エチルを加えて40℃にて加温溶解後、15℃まで冷却し、ヘキサンを添加して晶析を行った。ろ別した結晶をヘキサンで洗浄した後、結晶をろ取し、乾燥し、下記に示す化合物(IV)5.5gを得た。(2.8mmol;収率90%)
1H-NMR(CDCl3,内部標準TMS)δ(ppm):1.44 (9H, s)、2.84 (4H, s)、3.33-3.34 (1H, m)、3.38 (3H, s)、3.52-3.77 (182H, m)、4.23 (2H, t)、4.85 (1H, t)、5.17 (1H, m)、5.63(1H, s)
Figure 0006202567
(実施例1−4)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機を付した50mL丸底フラスコへ化合物(IV)5.5g(2.75mmol)、トルエン25gを加え、窒素雰囲気下40℃で攪拌し、化合物(IV)を溶解させた。トルエン5gに溶解させたメトキシポリエチレグリコールプロピルアミン(SUNBRIGHT MEPA-05H、重量平均分子量500、日油(株)製)1.7g(3.4mmol)を加えて40℃で3時間撹拌した。反応終了後、反応混合物をイオン交換水により2回洗浄したあと、クロロホルムで2回抽出した。クロロホルム層を濃縮し、硫酸マグネシウムで脱水した後ろ過した。処理溶液をエバポレータで減圧濃縮し、酢酸エチル、ヘキサンによる晶析を15℃で行った。結晶をろ別後、ヘキサンを加え、結晶を洗浄し、下記に示す化合物(V) 4.2gを得た。(1.7mmol;収率76%)
1H-NMR(CDCl3,内部標準TMS)δ(ppm):1.43 (9H, s)、1.77 (2H, t)、3.33-3.34 (4H, m)、3.38 (6H, s)、3.52-3.77 (183H, m)、4.21 (2H, d)、4.73 (1H, t)、5.21 (1H, s)、5.52 (1H, s)、5.60 (1H, s)
GPCMn:2,721、Mw2,780、Mw/Mn:1.022、Mp2,787
Figure 0006202567
(実施例1−5)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機を付した50mL丸底フラスコへ化合物(V) 3.5g(1.4mmol)、ジクロロメタン35gを加え、窒素雰囲気下25℃で攪拌して化合物(V)を溶解させた。メタンスルホン酸2.0g(21mmol、15当量)を加えて25℃で3時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を濃縮脱水した後、エバポレータで減圧濃縮し、酢酸エチル35g、ヘキサン35gによる晶析を15℃で行った。結晶をろ別後、ヘキサン35gを加え、結晶を洗浄し、下記に示す化合物(VI)を2.8g(収率79%)得た。
1H-NMR(CDCl3,内部標準TMS)δ(ppm):1.78 (2H, t)、2.79-2.87 (2H, m)、3.26-3.45 (3H, m)、3.38 (6H, s)、3.52-3.77 (224H, m)、4.21 (2H, t)、4.68 (1H, s)、5.46 (1H, s)
Figure 0006202567
(実施例1−6)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機を付した50mL丸底フラスコへ化合物(VI)2.71g(1.08mmol)、炭酸ナトリウム0.28g、トルエン13.8gを加え、窒素雰囲気下40℃で化合物(VI)を溶解させた。次いでN−スクシンイミジルオキシカルボニルオキシ−ジステアロイルグリセリルエーテル1.01g(1.32mmol)を加え、40℃で3時間撹拌した。反応終了後、KW2000(協和化学工業株式会社製)による処理を4回行い、反応により遊離したN−ヒドロキシスクシンイミドを除去した。次にトルエン溶液を濃縮し、濃縮物をアセトニトリル/ヘキサンで洗浄を繰り返すことにより脂質系不純物を除去した。最後にアセトニトリル層をエバポレータにより減圧濃縮、乾固し、下記に示す化合物(I)を2.8g(収率79%)得た。
得られた化合物(I)は、TLC(薄層クロマトグラフィー:クロロホルム/メタノール=85/15、90/10)にて展開後、ヨウ素発色にて確認したところ、純度は94%以上であった(リファレンスとして分子量2,000の末端メトキシのポリエチレングリコールを使用)。残存脂肪酸の分析は、TLC(薄層クロマトグラフィー:クロロホルム/メタノール=99/5)にて展開し、リン酸硫酸銅の発色にて分析した。その結果、残存ステアリン酸は見られなかった。
1H-NMR(CDCl3,内部標準TMS)δ(ppm):0.88 (6H, t)、1.25-1.31 (56H, m)、1.60 (4H, quint)、1.78 (2H, t)、2.31 (4H, t)、3.26-3.36 (5H, m)、3.38 (6H, s)、3.52-3.77 (224H, m)、4.11-4.30 (6H, m)、4.74 (1H, br)、5.24 (1H, br)、5.53-5.65 (3H, m)
分子量(TOF-MS):3,387
Figure 0006202567
(実施例2)
化合物(VII)の合成(m≒22、n≒11(PEG分子量約1,000、500の場合))
ポリエチレングリコール誘導体として、メトキシポリエチレグリコール−p−ニトロフェニルカーボネート(SUNBRIGHT MENP-10H、重量平均分子量1,000、日油(株)製)及びメトキシポリエチレグリコールプロピルアミン(SUNBRIGHT MEPA-05H、重量平均分子量500、日油(株)製)を用い、実施例1−1〜1−6と同様に合成した。
得られた化合物(VII)は、TLC(薄層クロマトグラフィー:クロロホルム/メタノール=85/15、90/10)にて展開後、ヨウ素発色にて確認したところ、純度は95%以上であった(リファレンスとして分子量1,000の末端メトキシのポリエチレングリコールを使用)。残存脂肪酸の分析は、TLC(薄層クロマトグラフィー:クロロホルム/メタノール=99/5)にて、展開し、リン酸硫酸銅の発色にて分析した。その結果、残存ステアリン酸は検出されなかった。
分子量(TOF-MS):2,370
(実施例3)
化合物(VIII)の合成:(m≒45、n≒22(PEG分子量約2,000、1,000の場合))
ポリエチレングリコール誘導体として、メトキシポリエチレグリコール−p−ニトロフェニルカーボネート(SUNBRIGHT MENP-20H、重量平均分子量2,000、日油(株)製)及びメトキシポリエチレグリコールプロピルアミン(SUNBRIGHT MEPA-10H、重量平均分子量1,000、日油(株)製)を用い、実施例1−1〜1−6と同様に合成した。
得られた化合物(VIII)は、TLC(薄層クロマトグラフィー:クロロホルム/メタノール=85/15、90/10)にて展開後、ヨウ素発色にて確認したところ、純度は97%以上であった(リファレンスとして分子量2,000の末端メトキシのポリエチレングリコールを使用)。残存脂肪酸の分析は、TLC(薄層クロマトグラフィー:クロロホルム/メタノール=99/5)にて、展開し、リン酸硫酸銅の発色にて分析した。その結果、残存ステアリン酸は検出されなかった。
分子量(TOF-MS):4,074
(実施例4)リポソームの調製
L−α−ジステアロイルホスファチジルコリン、コレステロール、L−α−ジステアロイルホスファチジル−DL−グリセロールナトリウム、化合物(I)が100:100:60:15 μmolとなるように秤取し、クロロホルム/メタノール混液(4/1(v/v))に溶解した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去することにより脂質の薄膜を形成した。更にデシケーター内で一晩静置することにより有機溶媒を完全に除去した。その後、9.0 %スクロース 10 mM乳酸緩衝液を用いて再水和し、エクストルージョン法にてサイズコントロールを行いリポソーム懸濁液とした。また、化合物(VII)、化合物(VIII)に関しても同様にリポソームの調製を行った。
(実施例5〜7)水和層の厚み(FALT (Fixed aqueous layer thickness))の算出
異なる濃度のNaCl溶液中と9.0 %スクロース 10 mM乳酸緩衝液を混合した溶液中に実施例4で調製した化合物(I)のリポソームを懸濁し、ゼータ電位を測定した。NaCl濃度より算出したパラメーターκに対して対応するゼータ電位をプロットし、得られた傾きの絶対値を水和層の厚みとした。ゼータ電位の測定にはZetasizer Nano ZS(Malvern Instruments 社製)を用いた。また、化合物(VII)、化合物(VIII)のリポソームに関しても同様にFALTの算出を行い、それぞれ実施例6、及び実施例7とした。
(比較例1)
下記式(IX)で示される、PEG鎖を一本持つ脂質PEG(SUNBRIGHT GS-020、重量平均分子量2,000、日油(株)製)を用いて、実施例4及び5と同様にリポソームの調製、及びFALTの算出を行った。
Figure 0006202567
実施例5〜7及び比較例1のFALTの算出の結果を表1にまとめた。
表1に示すように、本発明の分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質を用いたリポソームは、同じ長さのPEG鎖を1本持つポリエチレングリコール修飾脂質である比較例1と比較して、大きな水和層を形成していることが示された。これは短鎖PEGが長鎖PEGのマッシュルーム構造をブラシ構造へと押し上げているためと考えられる。
Figure 0006202567
本発明によれば、新規な構造を持つ、分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質、その製造方法、及びポリエチレングリコール修飾リポソームを提供できる。本発明のポリエチレングリコール修飾脂質は、工業的に製造容易であり、かつ、リポソーム表面の水和層を効果的に増大するため、血中滞留性に優れたDDSとして有用である。

Claims (3)

  1. 下記式(1)
    Figure 0006202567

    (式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜7の炭化水素基、RCOは炭素数4〜24のアシル基である。m及びnは、それぞれ独立して、オキシエチレン基の平均付加モル数であって、10〜125の間の整数であり、n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たす整数である。X及びXは、それぞれ独立して、以下の式(3)〜(7)で示される基から選択され、Xはカーボネート結合、カーバメート結合及びエーテル結合のいずれかより選択される。)
    Figure 0006202567

    (式中、rは1〜5の整数であり、sは2〜5の整数である。)
    で表される分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質。
  2. 下記式(8)で表される、請求項1においてXが上記式(7)で示される基、Xが上記式(5)で示される基、Xがカーバメート結合である、分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質。
    Figure 0006202567

    (式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜7の炭化水素基、RCOは炭素数4〜24のアシル基である。m及びnは、それぞれ独立して、オキシエチレン基の平均付加モル数であって、10〜125の間の整数であり、n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たす整数であり、sは2〜5の整数である。)
  3. 下記(A)、(B)、(C)、(D)全ての工程を順番に含むことを特徴とする、請求項2記載の分子量の異なるポリエチレングリコール鎖を2本含有する分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質の製造方法。
    工程(A):1,3−ジアミノ−2−プロパノールと、下記式(9)で示されるポリエチレングリコール誘導体を反応させ、アミノ基の1つにポリエチレングリコール鎖を導入した後、もう1つのアミノ基を化学的に不活性な保護基で保護し、下記式(10)で示される化合物を得る工程。
    Figure 0006202567

    (式中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基である。mはオキシエチレン基の平均付加モル数であって、10〜125の間の整数であり、LはN−スクシンイミジルオキシ基又はp−ニトロフェノキシ基であり、Pはアミノ基の保護基である。)
    工程(B):上記式(10)で示される化合物のヒドロキシル基を活性基に変換させた後に、下記式(11)で示されるポリエチレングリコール誘導体を反応させ、2本目のポリエチレングリコール鎖を導入した下記式(12)で示される化合物を得る工程。
    Figure 0006202567

    (式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜7の炭化水素基である。m及びnは、それぞれ独立して、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、10〜125の間の整数であって、n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たす整数であり、sは2〜5の整数であり、Pはアミノ基の保護基である。)
    工程(C):工程(B)で得られた上記式(12)で示される化合物のアミノ基の保護基を脱保護し、下記式(13)で示される化合物を得る工程。
    Figure 0006202567

    (式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜7の炭化水素基である。m及びnは、それぞれ独立して、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、10〜125の間の整数であって、n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たす整数であり、sは2〜5の整数である。)
    工程(D):工程(C)で得られた上記式(13)で示される化合物と下記式(14)で示されるジアシルグリセロール誘導体を反応させて下記式(8)で示される分岐型ポリエチレングリコール修飾脂質を得る工程。
    Figure 0006202567

    (式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜7の炭化水素基、RCOは炭素数4〜24のアシル基であり、LはN−スクシンイミジルオキシ基又はp−ニトロフェノキシ基である。m及びnは、それぞれ独立して、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、10〜125の間の整数であって、n≦25かつ2n≦m、またはm≦25かつ2m≦nを満たす整数であり、sは2〜5の整数である。)
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